ASBJ 企業会計基準委員会

第83回企業会計基準委員会議事要旨

日時 2005年6月24日(金) 13時30分~16時30分
場所 財務会計基準機構 会議室

議題

審議事項

  1. 企業結合(のれん)の会計処理について
  2. 会社法対応専門委員会の検討状況について
  3. 企業結合・事業分離専門委員会(合同委員会)における検討状況について
  4. 退職給付専門委員会における検討状況について
  5.  ストック・オプション等専門委員会における検討状況について
  6. 専門委員の追加選任について

報告事項

  1. 国際対応専門委員会の議事概要

議事概要

審議事項

(1)企業結合(のれん)の会計処理について

西川副委員長及び布施専門研究員より、企業結合(のれん)の会計処理に関する参考人(楽天株式会社 代表取締役会長兼社長 三木谷浩史氏)の意見聴取を踏まえた企業結合・事業分離専門委員会(合同委員会)での審議状況の報告及び当委員会での今後の検討案等が説明され、意見交換が行われた。(意見聴取の内容については、第82回企業会計基準委員会議事要旨の添付資料「のれんの会計処理に関する意見聴取の議事概要」をご覧下さい。)

なお、今回の検討事項として事務局から挙げられた論点は以下のとおりである。

  1. 参考人による意見は、”のれん”の会計処理については「非償却+減損」とするべきであり、それが認められない場合については企業結合に伴い発生する”のれん”について、発生時に一括償却し、その償却額を特別損失に計上できるとする会計処理を認めるべきとしているが、企業結合会計基準の枠組みを前提に次の事項をどのように考えるか。
    1. 企業結合日に”のれん”を全額償却することができるか。
    2. もし、”のれん”の効果の及ぶ期間が1年と合理的に見込まれるような場合には企業結合年度に全額費用処理することはできるか。
    3. 減損処理以外の事由で、”のれん”の償却費を特別損失に計上することはできるか(上記2. の場合を含む)。
  2. 企業会計基準の定めを離れて、”のれん”を非償却とする会計処理の是非について
    以上の論点に基づいて審議が行われた。審議における主な発言は以下のとおりである。
    • 1.の1. については、経営者が全く価値のないものを購入するなど特殊なケースがない限り考えらないのではないか。また2. については現実的に1年と合理的に見込めるケースが前提であればあり得る。さらに3. については基本的には特別損失に計上するということは通常あり得ないのではないか。
    • 2について、”のれん”が無形資産とはいってもビジネスモデルは変化し技術革新もあり得る中で、事業価値そのものの減少というのは必ずあるのではないか。企業そのものが自らの事業構造を変えていく中で、”のれん”の質的変化もあり得ると考えられることから、”のれん”の減価があり得ないということはないのではないか。
    • “のれん”に関しては無形資産の要素を考慮するべきであり、米国会計基準では無形資産の計上に関して非常に厳しい基準となっている。無形資産の償却年数が20年より短くなると、米国基準を適用しようという方法はより厳しくなるのではないか。
(2)会社法対応専門委員会の検討状況について

西川副委員長及び秋葉統括研究員より、会社法対応専門委員会における検討状況について説明がなされた。
会社法案では、現金以外の財産配当(現物配当)が認められており、また、人的分割(分割型の会社分割)の定めがなくなり、「物的分割(分社型の会社分割)+剰余金の分配」という構成で考えられていることから、現物配当の会計処理(分配側と受取側の会計処理)について主要な論点の提示がなされた。

具体的に分配側の会計処理では、【論点1】分配する現物に係る損益の計上、【論点2】子会社株式又は関連会社株式を按分的に分配した場合の損益計上、【論点3】非按分的に分配した場合の損益計上に場合分けし、それぞれの論点において時価又は帳簿価額で計上する場合の考え方が、現行の米国基準の取扱いも参考にしながら設例に基づき説明された。

また、受取側の会計処理についても、分配された現物に係る損益計上の是非を基本的な論点としつつ、分配側の原資に従って区別する案や投資の継続又は清算により区別する案が設例に基づいて説明された。さらには分割型分割において、分割会社株主が分離先企業の株式を受け取った場合の会計処理(派生論点1.)や株主優待制度の会計処理に影響するか(派生論点2. )についての考え方も説明がなされた。
審議における主な発言は以下のとおりである。

  • 【論点3】ついては、具体的なイメージとしておそらく現物配当した企業の株主が入れ替わるようなケースが多いと考えられるがどうかという質問に対して、事務局から現物配当ではなく、自己株式を現物で取得する場合には必然的に非按分という形になるのではないかとの回答がなされた。
  • 【論点2】において現物資産の帳簿価額をもって、資本の減少とする案については、事実上同じ投資が継続するため、受け取った株主側でも別段の処理をしないという事務局案はあり得るのではないか。
  • 派生論点2. について、株主優待制度による分配は「現物分配」とは異なるものと考えられる場合、現行の会計処理と同様になるという案が示されているが、具体的にどのような会計処理になるのかという質問に対して、事務局から現物分配には様々な形態があって、それぞれの対応があることから、現物分配と異なる場合には、現在行われているものの処理と同じになる旨の回答がなされた。
(3)企業結合・事業分離専門委員会(合同委員会)における検討状況について

西川副委員長、片山専門研究員及び布施専門研究員より、企業結合・事業分離専門委員会(合同委員会)における検討状況についての説明がなされた。今回は、各結合当事企業における資本勘定の考え方と、移転損益を認識しない場合の分離元企業の税効果会計についての説明がなされ、意見交換が行われた。
審議における主な発言は以下のとおりである。

  • (移転損益を認識しない場合の分離元企業の税効果会計の追加検討に関連して)日本公認会計士協会監査委員会報告66号(以下、監査委員会報告)の例示区分2. 、3. 、4.の但し書きの会社について、「取得した分離先企業株式に係る一時差異のスケジューリングが不能であっても、全額回収可能性があると判断できるものとする。」という事務局案が示されているが、これは差異の解消が長期にわたるものでない一般の差異はスケジューリングによって回収可能と認められる範囲までであることに比べて甘いのではないか。
  • 分離元企業が取得した分離先企業株式には移転前の繰延税金資産は含まないとする考え方に基づいた適用指針の公表がなされた場合に、実務上では主流となっていると考えられる現行の会計制度委員会研究報告第7号「会社分割に関する会計処理」と異なる形になることから、何らかの手当てが必要となってくるのではないか。
  • 持分プーリング法における利益剰余金の引継ぎが説明すべき焦点になっている印象を受けるが、そもそも持分プーリング法の場合に資本勘定を簿価で引き継ぐことと、資本勘定の内訳を引き継ぐことの議論は別であると考えられるのではないか。
(4)退職給付専門委員会における検討状況について

西川副委員長及び秋葉統括研究員より、退職給付専門委員会における検討状況についての説明がなされた。今回は厚生年金保険法の改正の背景及び同法改正に伴う会計上の論点(案)が具体的に示され、意見交換が行われた。

審議における主な発言は以下のとおりである。

  • 国からの交付金の負担減という要素を「『退職給付債務(PBO)から控除し、新たに最低責任準備金(又はそれに近い金額)とする。」という案が示されているが、合理的に計算することは困難ではないか。
  • 法律上では、負債は最低責任準備金であると解釈されることから、企業負担は最低責任準備金を積み、1年間の利息負担だけをすればよいと考えられる。従って法律上で国が支払うという金額を超過してPBOを積み立てることは、投資家の株主配当を抑制してしまうのではないか。
  • 企業が最低責任準備金を積み、それを代行返上した場合と継続している場合では取扱いが異なってくるのではないか。代行返上した場合では上述の通りと考えられるが、継続している場合はあくまで企業が給付責任を持っているため、同様の解釈とはならないのではないか。
  • 厚生年金保険法の改正によって、厚生年金基金にどの程度の義務が生じているのか、また同基金がリスクからどのように解放されているのかについて整理すべきではないか。
(5)ストック・オプション等専門委員会における検討状況について

西川副委員長及び豊田専門研究員より、ストック・オプション等専門委員会における検討状況についての説明がなされた。今回は、会計基準(案)での開示項目や開示の意義、海外基準の開示目的等を踏まえ、専門委員会で審議された適用指針(案)における注記項目の開示項目(案)の考え方や論点が示され、意見交換が行われた

審議における主な発言は以下のとおりである。

  • 適用指針の開示項目のストック・オプションの規模及び契約状況等において、事務局案は契約毎の開示が必要であるかのように示されて煩雑である一方、国際会計基準では全体を集約した形になっておりシンプルで分かりやすい。どのレベルまで開示が必要なのかコスト・ベネフィットを勘案した上で検討すべきではないか。
  • 開示とは全体とのバランスを勘案していくべきものと考えられ、ストック・オプションの部分だけ開示項目が膨大になることだけは避けるべきではないか。
  • 同じオプションであっても権利行使価格が異なる場合があるため、開示項目に複数の契約の集約あるいは平均が用いられていると、トレース時に意味を持たなくなる可能性もある。従って実務上の煩雑さは勘案した上で、可能な限りデータは盛り込んでもよいのではないか。
(6)専門委員の追加選任について

西川副委員長より、会社法対応専門委員会における専門委員の追加選任についての提案がなされ、承認された。

(7)国際対応専門委員会の議事概要について

西川副委員長より、国際対応専門委員会の議事概要についての説明がなされた。

以上