ASBJ 企業会計基準委員会

第79回企業会計基準委員会議事要旨

日時 2005年4月26日(火) 10時00分~12時30分
場所 財務会計基準機構 会議室

議題

審議事項

  1. ストック・オプション等専門委員会における検討状況について
  2. 貸借対照表表示検討専門委員会の検討状況について
  3. 退職給付専門委員会における検討について
  4. 収益認識及び測定の検討について
  5. 棚卸資産専門委員会(仮称)の設置について
  6. IASBリエゾン国会議報告とIASBリエゾン国会議のあり方について

報告事項

  1. 国際対応専門委員会の議事概要

議事概要

(1)ストック・オプション等専門委員会における検討状況について

西川副委員長及び豊田専門研究員より、ストック・オプション等専門委員会における検討状況について説明が行われた。説明では、公開草案に寄せられたコメントの概要とそれに対する対応案について説明がなされ、意見交換が行われた。 なお、審議における主な発言は以下のとおりである。

  • 敵対的買収の対策として、既存株主に大量の自社株式オプションを付与する場合は、本基準の適用範囲になるのかについて適用指針で検討する案が提示されているが、役員や従業員等に付与する前提と異なり、労働の対価性がないと判断することができることなどから、検討の範囲外となるのではないか。
  • 上述の問題は、会社法施行後に発生する可能性があるなど緊急性の高い問題であることから、この問題の扱いの要否や今後の方針を明らかにしたほうがよいのではないか。

なお、この問題については適用の範囲になるか否かについても含めて適用指針の検討事項として取り上げ、緊急性に鑑みて議論すべきとの提案がなされた。

(2)貸借対照表表示検討専門委員会の検討状況について

西川副委員長及び秋葉統括研究員より、貸借対照表表示検討委員会における検討状況の説明がなされた。説明では、1. 中間区分を設けない国際的な調和と2. 『純利益』に対する『資本』の明示の2点を検討の進め方の前提とした「試案」に基づく検討状況について説明がなされた。討議資料が既に前提となる2点を満たしているため、「試案」は討議資料も素料として作成されている。審議の前提となる主な内容は以下のとおりである。

「純資産-その他の要素」の区分と表示に関しては、討議資料の「財務諸表の構成要素」における純資産の項目(内容については「討議資料『財務会計の概念フレームワーク』(財務諸表の構成要素 第6項、第7項)」をご覧下さい。)に基づき、専門委員会で大勢を占めていた以下の案を前提に「いずれにも帰属しないもの」(親会社株主持分割合)についての表示方法や現在の「資本の部」の合計との連続性が絶たれることについてどのように考えるか、また貸借対照表における「純資産の部」の具体的な表示案について説明がなされた。


審議における主な発言は以下のとおりである。

  • 専門委員会では「いずれにも帰属しないもの」を「その他包括利益累積額」とする案に肯定的な意見が多かったとあるが、日本においては「その他包括利益」という考え方がまだ浸透していないと考えられることから、「その他」や「評価換算差額」等の表示も考えられるのではないか。
  • 「純資産の部」の表示に関して、日本の企業の場合では、米国等と比較して少数株主持分というのが統計的にも多いことや、親会社説と経済単一体説では資本の算定方法が異なっていることなども勘案し、連結財務諸表原則の基本的な考え方である親会社説に基づく「純資産の部」とわかる表示をした方がよいのではないか。
  • ストック・オプションの公開草案に対して貸方項目に関するコメントが寄せられているが、貸借対照表表示検討専門委員会でその対応案も含めて議論し、検討プロセスを経た上で基準の形にしていくことが望ましいのではないか。
(3)退職給付専門委員会における検討について

西川副委員長及び秋葉統括研究員より、退職給付専門委員会における検討開始の説明がなされた。説明では厚生年金基金において、国から交付金があった場合等の会計処理について検討していくことが提案され、了承された。

(4)収益認識及び測定の検討について

西川副委員長及び吉田専門研究員より、テーマ協議会から提言された「収益認識及び測定」における具体的な検討内容と今後の進め方についての説明がなされた。

具体的な検討内容としては、実態のあるスルー取引やUターン取引等に関する総額・純額表示の区分、検収基準の具体的適用に関連した収益の認識時点、ライセンス使用許諾と保守の一体契約のような複数の要素のある取引が事務局案として提示され、今後のスケジュールとあわせて意見交換が行われた。

審議における主な発言内容は以下のとおりである。

  • IT産業という言葉の定義も曖昧な中、議論を進めていくことは、他の業界に波及する重大な問題もはらんでいるのではないか。具体的な検討内容を絞り込んでテーマアップすべきと考える。また「実務対応報告」の確定までのスケジュールも含めて再度検討してほしい。
  • 上述に関連して、現状として情報サービス産業において問題になっていることは事実であるが、IT産業という用語の定義によっては、検収基準あるいは出荷基準の適用といった議論も考えられ、従って実態調査によって的確に判断した上で実務対応報告を確定していくべきではないか。
  • ソフトウェアの開発業務に関してはその特性による取扱いが難しく、問題点の重要性等を実証的に補足していない現状にある中では、緊急の「実務対応報告」の範囲で網羅できるかの見極めも必要となってくるのではないか。
  • 米国等、国際的な会計基準における収益の認識及び測定についても研究を進めることとする事務局案が提示されているが、方針も定まっていない中で研究を進めて、その検討次第で取扱いを見直していく手法は、むしろ問題を複雑化するだけではないか。
  • 上述に関連して、海外での収益の認識が実務上あるいは基準においてどのようになっているのか調査するという理解であれば、国際的な動きについても明確に意識しておくべきではないか。
(5)棚卸資産専門委員会(仮称)の設置について

石井委員及び湯川専門研究員より、棚卸資産の評価基準に関する会計処理の今後の検討の進め方について、実務上の問題点を踏まえた具体的な検討も行っていく必要性があることから、今後専門委員会を設置し、検討していくことが提案され、了承された。

スケジュールの概要については以下のとおりである。

  • 平成17年秋頃 論点整理公表
  • 平成18年前半 企業会計基準(案)、同適用指針(案)を公表
  • 平成18年度内 企業会計基準、同適用指針の公表
(6)IASBリエゾン国会議報告とIASBリエゾン国会議のあり方について

秋葉統括研究員から4月20日に開催されたリエゾン国会議についての報告がなされ、その後石原研究員より「リエゾン国会議のあり方」についてのコメント案の説明がなされ、審議の後に了承された。 なお、審議における主な発言は以下のとおりである。

  • 日本におけるコンバージェンスの取組みは、IASBと合意のもとに進んでおり、一方NSSを考慮した形でリエゾン国会議においても役割を果たしていく内容の発言がなされたことは重要であり、評価できるのではないか。
(7)国際対応専門委員会の議事概要

西川副委員長より、国際対応専門委員会の議事概要についての説明がなされた。

以上