ASBJ 企業会計基準委員会

第77回企業会計基準委員会議事要旨

日時 2005年3月29日(火) 10時00分~12時30分
場所 財務会計基準機構 会議室

議題

審議事項

  1. リース事業協会からの検討状況の報告
  2. テーマ協議会からの提言事項の報告について
  3. ストック・オプション等専門委員会の検討状況について
  4. 貸借対照表表示検討専門委員会の検討状況について

報告事項

  1. 国際対応専門委員会の議事概要について

議事概要

1.リース事業協会からの検討状況の報告

リース事業協会平井会長及び同協会税務会計委員会服部委員長より、リース事業協会における検討状況の報告がなされた。企業会計基準委員会ではファイナンス・リース取引の会計処理に関する検討について、昨年3月に「中間報告」を公表しており、その中で当委員会における検討を一時中断し、実際にリースビジネスを営む関連業界に対して解決の方向性についての検討を依頼するとともに、概ね一年を目途にその検討状況の報告を受けることとしていたものである。

(本件においては、社団法人リース事業協会(http://www.leasing.or.jp/)から3月29日に公表された「リース会計基準に関する検討について(検討状況の報告)」の資料等を審議資料として使用した。)

審議における質疑応答の内容、主な発言は以下のとおりである。

  • 公表されている資料の【別記】「検討の内容とその問題点」の中において、考え方が3点示されており、「『リース債務計上、損益計算書上賃貸借処理』」という考え方Aと「個別財務諸表と連結財務諸表とで異なる会計処理」という考え方Cについては純粋に会計上の問題であり、「リースを使用権の売買とみる会計処理」という考え方Bは、会計と税務の問題が混在しているとの理解でよいかとの質問に対して、リース事業協会から商法等法律の問題が絡んではくるものの、基本的にはその区分でよいとの認識が示された。
  • 上述の考え方Aと考え方Cについては、今後企業会計基準委員会で継続して審議していくことでよいかとの質問に対して、リース事業協会から税務や法律の問題、会計の問題や国際的動向を踏まえることを視野に入れ、場合によってはメンバーを拡充させるなど総合的に検討していきたい旨の発言がなされた。
  • 上述の考え方Bに関連して、企業会計基準委員会が中間報告で指摘したとおり、税務処理との関係の問題と切り離して考えることが困難であるとの立場から、リース事業協会に1年間という期間で問題解決の方策を依頼した経緯があったが、報告書の中では単に「税務との調整についても検討が必要になる」との示されているだけで、具体的な1年間の税務当局との調整内容や解決策が示されていないとの指摘がなされた。その指摘に対してリース事業協会からは、確定決算主義等税務上の問題解決のための期間としては短く、むしろ複雑な問題を顕在化する懸念があることから、税務当局との折衝は未だ行っておらず、今後税務当局や税の専門家等、さらには企業会計基準委員会からメンバーを募って拡大検討委員会を設定し、検討を深めていきたい旨の発言がなされた。
  • この検討状況の報告は、税務との調整問題やファイナンス・リースというのが、サービスやファイナンス等の要素を包含した複合取引であるという点が会計処理を考える上での障害であるということなど、今後詰めるべき問題点が整理されている状況報告であるとの発言がなされた。

なお、石井委員より今後の進め方については、当委員会において改めて審議することが提案され、了承された。

2.テーマ協議会からの提言事項の報告について

テーマ協議会の川北議長より、平成17年3月18日に行われた第9回テーマ協議会における議事概要の報告がなされた。「収益の認識及び測定」については、2001年11月に提言済みで、開発期間を中長期としているが、今回は、特に「『情報サービス産業における会計処理に関わる収益認識及び測定の問題」について優先度が高く、緊急性がある事項としてテーマアップすべきとの提言がなされた。

(内容については、「第9回テーマ協議会議事概要」「テーマ協議会提言書(3月29日付)」をご覧下さい。)

テーマ協議会提言書に対する主な発言は以下のとおりである。

  • 今回IT産業の収益認識と測定の提案であるが、例えば「検討の範囲」として取り上げられている総額・純額表示の区分についてはIT産業以外、商社等も含まれてくる可能性もあるなど、限定的な議論とならないのではないか。
  • 収益認識の基準そのものについては、情報産業においてだけではなく基準の全体的な部分にも関わってくることから、慎重に議論を行うべきであり、2006年3月期決算に間に合うように検討を進めていくことは困難ではないか。
  • 総額・純額表示区分の検討で、特に問題となるとして示されているスルー取引、クロス取引及びUターン取引等のいわゆる取引の実態がないものについては、通常売上でも収益でもなく、従って基準全体の見直しにつなげることに疑問がある。現行の基準で見識を持って監査することで十分対応できるのではないか。

西川副委員長より、テーマ協議会から提言された事項については、実務界のニーズ、概念フレームワークとの整合性等を勘案しながら「検討の範囲」を決めてスタートさせることが重要であり、当委員会で「検討の範囲」を整理していく旨の提案がなされた。

また、テーマ協議会の議事概要に対する主な発言は以下のとおりである。

  • テーマ協議会議題の「その他」で取り上げられた、公認会計士協会から公表の「ディスクロージャー制度の信頼性確保に向けて(監査人の厳正な対応等について)」では、リサーチ・センター審理情報〔No.21〕「監査上の留意事項について」に言及しているが、これは会計原則注解18引当金について、ロス・コントラストの引当てのような日本の会計慣行上、希薄であると思われる考え方を広範囲に適用するということなどが考えられ、極めて大きな内容をはらんでいる問題ではないか。
  • 上述に関連して、売上契約、売買契約や請負工事など、損失を見込んで引当て計上することなどは、日本の会計慣行にはない話と思われ、あまりに唐突すぎるのではないか。どのような契約で見込まれた損失が引当て対象となるのか整理しないと、実務上あるいは会計監査の現場で混乱をきたすのではないか。
  • 今回は、決算日の直前になって上述のような通牒が公表されたことが問題であって、会計基準に係るもの、あるいはかかわりそうで重要な問題があれば、決算日のある程度前に日本公認会計士協会と企業会計基準委員会の間で話し合うべきではないか。
3.ストック・オプション等専門委員会の検討状況について

西川副委員長及び湯川専門研究員より、ストック・オプション等専門委員会における検討状況の説明がなされた。説明では、「ストック・オプションと業務執行や労働サービスとの対応関係の認定と合理的な配分方法について」の検討内容が提示され、意見交換が行われた。

なお、審議における主な発言は以下のとおりである。

  • 今回様々な会計処理の提示がなされたが、可能であれば国際会計基準や米国会計基準における扱いも整理したほうがよいのではないか。
4.貸借対照表表示検討専門委員会の検討状況について

西川副委員長及び秋葉統括研究員より、貸借対照表表示検討専門委員会における検討状況の説明がなされた。説明では討議資料「財務会計の概念フレームワーク」(財務諸表の構成要素)を基礎とした専門委員会での検討内容が提示され、意見交換が行われた。

なお、審議における主な発言は以下のとおりである。

  • 「資本」を何と表示するかという論点に関連して、「株主資本」とする案の理由として実務上既に浸透しているとされているが、どのような意味なのか。場合によっては「株主資本」と表記にすることで混乱を招くことにつながるのではないか。
  • 貸借対照表表示の検討では、貸方科目で議論をすすめているが、損益計算書には全く触れずに進めていくのかどうか検討しておいたほうがよいのではないか。
5.国際対応専門委員会の議事概要について

西川副委員長より、国際対応専門委員会の議事概要についての説明が行われた。

以上