ASBJ 企業会計基準委員会

第29回企業会計基準委員会議事要旨

日時 2003年4月17日(木) 10時00分~12時00分
場所 (財)財務会計基準機構会議室

議題

審議事項

  1. テーマ協議会からの提言について
  2. (減損会計及び時価評価の適用に関する緊急検討)

議事概要

冒頭に、金融庁の羽藤参事官より、与党金融政策PTから金融庁及び財務会計基準機構(企業会計基準委員会)への要請(注)に至った経緯の説明があった。内容は、①与党の要請が企業会計のルールとして一般に公正妥当と認められるものであるか検討をお願いしたい、②検討は、早急かつ市場関係者の意見を広く吸い上げる形でお願いしたい、というものであった。

(注)緊急金融対応策(平成15年3月24日、与党金融政策PT)からの抜粋

「(6)  固定資産の減損会計、有価証券の強制評価減の見直し
現下の経済情勢、企業活動に与える影響に鑑み、①固定資産の減損会計に係る強制適用開始時期の延期(2年)、②長期保有の有価証券の時価評価及び強制評価減の見直し(選択制)を、金融庁・財務会計基準機構(企業会計基準委員会)に強く要請する。」

これらの説明に対して、西川副委員長から、早急に検討することであっても、当委員会での検討においては公開での議論や公開草案の公表などのデュー・プロセスが必要であり、今回の運営についても同様とすることで良いかとの質問があった。これに対し、羽藤参事官は、特に異論はないが、早急な検討が与党より要請されている趣旨を勘案いただきたいとのコメントがあった。

(1)次に、川北議長より、テーマ協議会における審議の状況及び以下を企業会計基準委員会のテーマとして取り上げることに関する提言内容の説明があった。

①固定資産の減損会計に係る強制適用開始時期の延期について

②長期保有の有価証券の時価評価及び強制評価減の見直し(選択制)について

(詳細な内容については、テーマ協議会の提言書(平成15年4月17日)をご覧下さい。)


(2)続いて、上記のテーマ協議会よりの提言を受けて、これらを当委員会で取り上げるか否かの審議が行われた。まず、西川副委員長より、整理のために、以下の検討項目が列挙された。

  • 企業会計基準委員会でテーマとして取り上げるか
  • 以下、テーマとして取り上げる場合
  • 検討する組織は委員会とするか(専門委員会での議論は必要か)
  • 固定資産の減損会計と長期保有の有価証券の時価評価及び強制評価減は、同時に議論するか、別々に議論するか
  • 長期保有の有価証券の時価評価及び強制評価減については、一時的な措置として必要かどうかという観点で議論を行うか
  • 長期保有の有価証券の強制評価減について、商法との関係をどう考えるか
  • 長期保有の有価証券の時価評価及び強制評価減について、検討の範囲をどう考えるか
  • 長期保有の有価証券の時価評価及び強制評価減について、平成15年3月期決算を対象に含めるか
  • 検討は可及的速やかに行うことでよいか
  • 次回以降の進め方

これらに対する各委員の主な意見等は以下の通り。

  • 企業会計基準委員会のテーマとして取り上げること自体は賛成である。市場の声を吸い上げた判断をするのであるから専門委員会ではなく、企業会計基準委員会で検討すべきである。
  • 本テーマについては、一般論として議論する必要があるのか疑問である。特定業種の問題なのではないか。
  • 特定業種のみの問題(ニーズ)かどうかは、関係者に意見を聴取しないと判断できないため、少なくとも当面は幅広く検討してよいのではないか。
  • 本テーマの検討は、会計によって市場の信頼をどのように得るかに係る問題である。
  • テーマとして取り上げることに反対はしないが、「一般に公正妥当と認められる会計基準(GAAP)」という観点から妥当かどうか判断することに関しては、本テーマはなじまないのではないか。むしろ、取り上げるにあたっては、会計以外の観点からの検討を行うことになるのではないか。
  • 当委員会は、市場関係者の意見を集約する立場から、広く意見を聞き、検討を行うことになるのではないかと考える。
  • 現在の不況・デフレといった経済環境を踏まえた上で、マクロ経済政策の視点からも検討する必要があると思われる。
  • 固定資産の減損会計と長期保有の有価証券の強制評価減は損益に影響し、長期保有の有価証券の時価評価はバランスシートへの影響のみで損益には影響しない。したがって、仮に長期保有の有価証券の時価評価を選択制としたとしても、企業業績に変わりがなく、これらは別々に議論すべきであろう。
  • 長期保有の有価証券の強制評価減を見直すことは、強行法規である商法の規定を越えることにもなり、会計上、本質的な議論となる。これには相当の時間が必要であり、早急には検討できない。
  • ここでは「そもそも論」をする必要はなく、また、そうしないよう、テーマとして取り上げる際には、一時的な措置が必要かという観点から検討せざるをえないのではないか。
  • 一時的な措置として必要かという視点から検討をするとしても、必要とならないという結論に至ることも当然ありうる。
  • 平成15年3月期決算については、決算発表されていなくとも、現状、ほとんど決算数値が固まっている。すでに実施している長期保有の有価証券の時価評価及び強制評価減を見直すことにつき、平成15年3月期決算を対象に含めて検討することは、対応する時間と決算実務の手続上、現実的に困難である。
  • 公開企業の場合は、無理と思われるが、非公開企業の場合には、平成15年3月期決算の確定までには、多少、時間的余裕はあるかもしれない。
  • 決算日を過ぎた後に会計基準を変更し遡って適用することは、ルール設定上、妥当ではないのではないか。

本日の議論は、一般的に関心の高い事項であるため、委員会における確認事項については、文書化して本日中に公表することとした(「減損会計及び時価評価の適用に関する緊急検討」について(平成15年4月17日)をご覧下さい)。なお、次回22日以降の委員会において参考人招致ができるよう手配することとされた。

以上