ASBJ 企業会計基準委員会

第7回企業会計基準委員会議事要旨

日時 2002年1月16日(火) 10時00分~11時40分
場所 (財)財務会計基準機構会議室

議題

審議事項

  1. IASBリエゾン国会議の議事対応について

報告事項

  1. IASB理事会の報告
  2. 日中韓会計基準設定主体会議について
  3. IASBリエゾン国会議への対応についての国際対応専門委員会における検討結果の報告

議事概要

1. IASBリエゾン国会議の議事対応について
  • 今月21、22日にロンドンで開催されるIASBリエゾン国会議(IASB各国会計基準設定主体会議)に、当委員会より斎藤委員長、西川副委員長が出席する予定である。そこで、同会議においてテーマとなることが予定されるJWG金融商品ドラフト基準に関し、荻原専門研究員より、同基準に対するコメントの分析作業等の説明がなされ、今後の取扱いに係る当委員会の意見・対応(案)等について、質疑応答・意見交換が行われた。
  • JWG金融商品ドラフト基準に対するコメントの分析結果は以下の通り(コメントの分析はカナダ会計基準審議会が行っている。)。
    1. JWG金融商品ドラフト基準については、全体として反対意見の方が多数であった。
    2. しかしながら、分析者(カナダ会計基準審議会事務局)は、長期的に同ドラフト基準で提案した公正価値モデルに取って代わる会計処理はないと考えている。
    3. 従って、今後の対応として、以下の提案を行う。
      1. 厳格なフィールド・テストを実施し、併せて公正価値モデルの考え方を浸透させる。
      2. 概念的な問題及び技術的な問題について、更なる研究を行う。
  • これに対し、当委員会が提示した意見(案)は以下の通り。
    1. 時価評価と原価評価の混合アプローチを排除することは、かえって会計情報のRelevanceを失わせる結果となるおそれがある。
    2. 金融商品以外の事業用資産は、元々公正価値評価を前提としておらず、金融商品だけを公正価値評価で統一しても、混合アプローチとしての性格が完全に解消される訳ではない。また、現実に金融商品の測定を事業用資産と全く切り離して考えることは不可能である。いくら金融商品の中だけの整合性を追求しても、事業用資産との相互関連の局面(例えば予定取引のヘッジ等)で、新たな不整合を生み出す結果となる。
    3. 金融資産の中には性質として事業用資産に近いと考えられるものもあり(例えば関連会社株式の会計処理等)、現行の混合アプローチの方が、実質を外形よりも重視するというIASBの概念フレームワークにむしろ適合している部分もある。
    4. 公正価値評価は経営者の意図による操作を排除できるという点についても、そもそもディスクロージャー制度そのものが、情報非対称下の市場における経営者からの情報提供であるから、完全に経営者の意図や見積りを排除した会計情報を追求することに意味があるとは思えない。
    5. このドラフト基準には、利益という重要な会計情報についての概念の検討が欠けている。新たな利益概念を採用する前に、従来からの実現利益概念について、合理性の確認等を行う必要がある。
    6. ヘッジ会計の廃止には反対である。投資のリターンが時価の変動ではなく、キャッシュ・フローで測られ、その変動を避けるためにキャッシュ・フローを確定させているポジションがある場合には、いわゆるキャッシュ・フロー・ヘッジの会計手法が必要と考えられる。
    7. 本件を含め、会計基準を巡る最近の議論では、投資家による企業評価と、それに必要な情報を開示するためのバランスシート上の評価とが、しばしば混同されているように見受けられるが、この2つは全く別の問題である。投資家に代わって、経営者に企業価値を評価させるのが会計基準の目的ではない。
  • 本件審議に際しての各委員よりの主な発言は以下の通り。
    「このドラフト基準の今後の取り扱いはどうなるのか。これだけ反対があっても、IASBで正式に採り上げられるのか。」
    「一般に、製造業においては、従来の混合アプローチで時価は既にある程度バランスシートに反映しているから、こうした公正価値評価を全面的にやっても、労多くしてほとんど結果には差がないのではないか。」
    「反対論の内容を見ると、このドラフト基準は、実務に配慮するために時間をかけて検討すべき性格のものというよりも、理論的な枠組み・考え方自体に重大な疑義ありとする受け止め方をされていると判断してよい。我が国としては、その点を強調すべきである。」
    「フィールド・テストというのは、基準が実際に適用可能かどうかを確かめるために実施するものである。まず理論的な面での検討を先にすべきではないか。」
2. IASB会議の報告
  • 12月18~20日に開催された第8回IASB会議の内容について、山田辰己オブザーバー(IASB理事)より報告が行われ(内容については、IASB会議報告(第8回)を参照のこと)、質疑応答がなされた。なお、その際の各委員よりの主な発言は以下の通り。
    「3月のIASB会議は東京で行われるが、その際当委員会あるいは日本の経済界として言うべきことをきちんと取りまとめておく必要があるのではないか。」
3. 日中韓会計基準設定主体会議について
  • 西川副委員長より、掲題会議について2月8日(金)に第1回の開催を予定している旨説明があった。今回は、中国財務省、韓国KASB及び当委員会が、それぞれの置かれている状況や問題意識について、全般的な意見交換を行うこととしており、今後定期的に開催することを検討しているものである。なお、その際の各委員よりの主な発言は以下の通り。
    「会計上の技術論のみならず、現在のIASBの運営上の問題等についても、幅広く中国・韓国と意見交換をすべきである。」
4. IASBリエゾン国会議への対応についての国際対応専門委員会における検討結果の報告
  • 西川副委員長より、今回のIASBリエゾン国会議においてテーマとなることが予定される(「認識の中止」を中心とした)IAS39号の改訂及びIFRSの初度適用に関して、前日開催された国際対応専門委員会での議論についての報告がなされ、意見交換が行われた。

以上