ASBJ 企業会計基準委員会

第3回企業会計基準委員会議事要旨

日時 2001年10月16日(火) 10時00分~12時15分
場所 (財)財務会計基準機構会議室

議題

審議事項

  1. 「企業結合(IASB)」に対する当委員会意見のIASB及び主要各国会計基準設定主体への送付について
  2. 「退職給付会計」に関する共同プロジェクトの設置について
  3. 自己株式等専門委員会の基本的合意と専門委員の選任について
  4. 国際対応専門委員会の専門委員の追加承認について

報告事項

  1. 「連結納税の会計処理」に関するプロジェクトの立ち上げについて
  2. 第1回国際対応専門委員会の議事概要について

議事概要

1. 「企業結合(IASB)に対する当委員会意見のIASB及び主要各国会計基準設定主体への送付について
  • 斎藤委員長より、前回のIASBリエゾン国会議におけるわが国の主張を確認する意味で、IASBの企業結合プロジェクトに対する当委員会の意見を、IASB及び主要各国(米・英・独・仏・加・豪・ニュージーランド)の会計基準設定主体に書面により送付したいとの提案がなされた。これは、IASBの持分プーリング法廃止・パーチェス法への一元化及びのれんの非償却という動きに対し、当委員会として反対である旨をあらためて主張するものである。
  • 小賀坂専門研究員より、上記意見案につき説明がなされた。内容は以下の通りである。
    • (1)持分プーリング法とパーチェス法の選択について
      (結論)
      企業会計基準委員会(ASB)は、持分プーリング法の廃止とパーチェス法への一元化に反対する。
      (理由)
      1. パーチェス法においては、継続企業である取得会社の存在を前提にして、被取得会社の資産・負債だけを時価で受け入れる。一方フレッシュ・スタート法は、結合当事会社が全て清算されるものと擬制し、取得会社についても継続性を無視して資産・負債を評価替えする。もしフレッシュ・スタート法が認められるなら、通常の継続企業でも分割・合併を繰り返すことで継続的な資産・負債の再評価が可能となる。企業結合に相当する大規模な投資をした時も同じである。継続企業の清算を擬制するフレッシュ・スタート法は、パーチェス法と両立せず、継続企業を前提とした現行の会計基準に馴染まない。
      2. このようにパーチェス法を原則とし、論理上フレッシュ・スタート法が適用できない会計基準においては、取得会社を特定できない企業結合には当事会社をいずれも継続企業とみて、従来の簿価を引き継ぐ持分プーリング法を適用する以外にない。また、そのような場合に無理にパーチェス法を適用すると、恣意的な操作により取得会社を変更することが可能となり、比較可能性が失われる。我々は、持分プーリング法の乱用のみを危惧するIASBや各国と異なり、パーチェス法やフレッシュ・スタート法を利用した評価替えの乱用も同様に危惧している。
    • (2)のれんの償却について
      (結論)
      のれんの償却については、まだ国際的な議論がされていない。従って拙速にIASBの公開草案を公表するのではなく、ディスカッション・ペーパーを公表して議論を進めるべきである。
      のれんは、被結合会社の超過収益力など、その効果が即時に消失しないものも含まれるので、一時償却しない点は賛成である。しかし、超過収益力は、競争の進展によって通常は価値が減耗するはずであり、非償却の処理は支持できない。のれんを償却しないのは、追加投資による自己創設のれんを計上するのに実質的に等しく、現行の会計基準と整合しない。
      (理由)
      1. のれんの償却費と自己創設のれんを生じさせる費用とが二重計上となるという批判については、この両者が全くの別物であり、二重計上の問題は生じないと考える。
      2. アナリスト等、会計情報の利用者がのれんの償却費を足し戻して分析しているから償却処理が不要だとする見解については、アナリストは様々な目的のために各種の財務諸表項目の調整を行っているので、それをもって償却不要の論拠とするのはおかしいと考える。
      3. IASBが参考にしている米国におけるのれんの会計処理基準は、本年7月に導入されたばかりであり、その有効性に関する実証はまだなされていない。IFRSは国際的な会計基準であり、その設定は慎重に行うべきであるから、米国基準の有効性の検証を待つべきでははないか。
  • 意見交換・質疑応答の後、審議が行われ、意見案については内容を一部修正の上、IASB及び主要各国会計基準設定主体に対し、当委員会の意見として送付することについて了承された。その際の各委員よりの主な発言は以下の通り。
    「この問題について、なかなか日本の主張が通らないというのは充分承知しているが、このように意見表明をすることには大いに賛成する。今後も必要に応じてこのような意見を出し続けるべきである。」
    「(このような)意見表明の形については、内容の重要性によって、委員長名や専門研究員名、担当者名等のメリハリをつけることを考える必要がある。」
    「一片の資料のみで相手を納得させることはやはり困難であろう。同時にロビー活動も必要なのではないか。」
    「アメリカでは対等合併は稀だというが、日本では幾つもある。従って日本には持分プーリング法を採用する必要性がある。そういうニュアンスをより強く打ち出すべきだ。」
2. 「退職給付会計」に関する共同プロジェクトの設置について
  • 西川副委員長より、「退職給付会計」に関する共同プロジェクトの発足について説明があった。これは確定給付企業年金法及び確定拠出年金法の制定に伴い、制度移行時に発生する会計処理の実務上の取扱いを明らかにする必要があるため、日本公認会計士協会との共同プロジェクトを設置するとしたものである。
  • 続いて、今給黎(いまきいれ)専門研究員より、同プロジェクトにおける主要論点についての説明がなされた。内容は以下の通り。
    〔主な論点(検討すべき事項)〕
    1. 厚生年金基金の代行部分の返上に関する会計処理
    2. 確定拠出年金へ移行する場合の会計処理
    3. 退職給付制度の清算及び縮小に関する会計処理
  • 上記説明を受けて、斎藤委員長より、同プロジェクトの設置についての提案がなされ、審議の上、了承された。なお、その際の各委員の主な発言は以下の通り。
    「この問題は産業界にとって非常に影響が大きな問題である。また、各官庁にまたがる問題でもあるので、関係各方面とのリンケージが重要である。」
    「制度の切換え時の会計処理の検討に際しては、法律の趣旨が実体経済にうまく反映するように、経過的な手当てについても配慮すべきである。」
    「すでに法律は施行されているので、企業としては早期に経営判断をする必要がある。そのためには、会計処理についても早期に決める必要がある。」
    「例えば制度変更時の退職金水準の変更に伴う処理や会社分割や買収に伴う退職給付債務の処理など、各論的な部分についての検討も併せて行って欲しい。」
    「会計処理に影響する、会計以外の前提条件が多いので、ある程度それらについてのフレームワークを固めた上で大胆な割り切りが必要だと思う。」
3. 自己株式等専門委員会の基本的合意と専門委員の選任について
  • 西川副委員長より、自己株式等専門委員会の専門委員の選任(前回は常勤のみ選任)について報告がなされた。
  • 続いて、小賀坂専門研究員より、10月12日(金)に開催された第1回自己株式等専門委員会における、自己株式の会計処理並びに減資差益及び資本準備金の取り崩しの会計処理等の審議状況についての報告と、同専門委員会において基本的に合意を得た項目等についての説明がなされた。 
  • 上記説明を受けて、斎藤委員長より、第1回自己株式等専門委員会における基本的合意について当委員会での了解を得たい旨提案がなされ、審議の上、了解された。本件についての各委員よりの主な発言は以下の通り。
    「(その他の剰余金よりの配当について)受取る側が受取配当金として計上するのか、投資の減少とするのかは重要な問題であるから、単にコストとベネフィットの観点だけで判断すべきではなく、一貫した処理を検討するべきである。」
    「商法の主たる関心事は、配当限度額を決めることである。従って、開示については企業会計の方で主導することになるだろう。企業会計の方で、資本取引を源泉とするものと、損益取引を源泉とするものとは区別されるべきであるという考え方が支配的なのであれば、商法は基本的にはそれを受け入れるような形での取扱いになるのではないか。」
    「自己株式の取得及び消却時の費用についての処理についても検討して欲しい。」
4. 国際対応専門委員会の専門委員の追加承認について
  • 新たに、国際対応専門委員会の専門委員として、逆瀬重郎委員、樋口哲朗専門研究員、板橋淳志研究員を追加することについて承認された。
5. 「連結納税の会計処理」に関するプロジェクトの立ち上げについて
  • 都常勤委員より、連結納税に係る会計処理に関するプロジェクトの設置について報告があり、質疑応答が行われた。これは、平成14年度より導入が予定されている連結納税制度に係る税効果等の会計処理の実務上の取扱いについて、早急に対応する必要があることから、その前準備として論点の整理等の作業を行うことを目的とするものである。
6. 第1回国際対応専門委員会の議事概要について
  • 西川副委員長より、10月9日(火)に開催された第1回国際対応専門委員会の議事概要についての報告があり、質疑応答が行われた。

以上