会計基準設定主体国際フォーラム(International Forum of Accounting Standard Setters;IFASS)は、各国会計基準設定主体及びその他の会計基準に関連する諸問題に対する関心の高い組織による非公式ネットワークであり、元カナダ会計基準設定主体の議長であり元国際会計基準審議会(IASB)メンバーであるトリシア・オマリー氏が議長を務めている。毎年、春秋の2回、会合が開催される。
今回の会議は、2014年3月6日と7日の2日間にわたりインドのデリーで開催された。参加者は、英国、ドイツ、フランス、イタリア、ノルウェー、スペイン、オーストラリア、ニュージーランド、日本、韓国、香港、シンガポール、インド、米国、カナダ、メキシコ、南アフリカ、シエラレオネなどの各基準設定主体からの代表者に加えて欧州財務報告諮問グループ(EFRAG)からの代表者及びその他の地域グループの代表者、国際公会計基準審議会(IPSASB)からの代表者など総勢71名であった。IASBからはイアン・マッキントッシュ副議長、アラン・テシイラシニア・ディレクター他が参加した。
企業会計基準委員会(ASBJ)からは、西川委員長(当時)、小賀坂副委員長、関口常勤委員が出席し、太田専門研究員がオブザーバーとして参加した。
No | 議題 | 担当 |
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2014年3月6日 | ||
1 | IASBワークプラン及びIFRS財団の最近の状況について | |
⑴プロジェクトの状況に関する議論 | IASB、カナダ(*1) | |
⑵解釈及び適用ガイダンス、年次修正プロセスにおける問題を含む判断規準に関する報告 | ドイツ、IASB | |
2 | メンバーによるプロジェクトの報告 | |
⑴財務報告における事業モデルの役割 | EFRAG、フランス、英国 | |
⑵のれんの減損及び償却に関するプロジェクト | EFRAG、日本、インド、イタリア | |
3 | 国際公会計基準審議会からのアップデート | IPSASB |
4 | 概念フレームワーク | |
⑴概念フレームワークの役割と目的 | ニュージーランド | |
⑵財務業績計算書での表示と測定との関連 | 米国財務会計基準審議会(FASB) | |
⑶開示に関する取組み | IASB | |
5 | ベスト・プラクティス・ステートメントの更新 | IFASS議長 |
⑴IASBと会計基準設定主体との協力関係 | ||
⑵IFASS憲章 | ||
2014年3月7日 | ||
6 | IASBによる主要なアジェンダに関する近況報告(ブレークアウトセッション) | IASB |
⑴リース | ||
⑵金融商品 | ||
⑶開示に関する取組み | ||
7 | 時事的な問題 | |
⑴割引率 | ドイツ | |
⑵IFRS第11号「共同支配の取決め」適用上の課題 | イタリア | |
⑶マクロヘッジ活動の会計処理 | オーストラリア | |
⑷国際競争入札の下での組込デリバティブの分離 | インド | |
⑸持分法:測定基礎なのか一行連結なのか? | EFRAG | |
8 | 地域グループからの報告 ・アジア・オセアニア基準設定主体グループ(AOSSG) ・欧州財務報告諮問グループ(EFRAG) ・ラテンアメリカ会計基準設定主体グループ(GLASS) ・全アフリカ会計士連盟(PAFA) |
各地域グループ |
9 | メンバーによる新たなプロジェクト | |
⑴キャッシュ・フロー計算書 | 英国 | |
⑵年次報告の複雑性 | EFRAG | |
⑶資本提供者による情報の利用 | EFRAG | |
10 | 社会及び経済発展への会計基準の貢献:機会と脅威 | シエラレオネ |
11 | IFASS会議の運営について | IFASS議長 |
カナダ会計基準審議会(AcSB)から、IFRS財団のトラスティーの戦略及びガバナンス、IASBの作業計画について説明がなされた。
IASBの作業計画に関しては、リース、収益認識、IFRS第3号「企業結合」の適用後レビュー、概念フレームワークなどの各プロジェクトの状況が説明された。参加者とIASBとの質疑応答等の概要は次のとおりである。
(リース)
リースについては、IASBのマッキントッシュ副議長から、貸手サイド、借手サイドいずれも論点が絞り込まれており、2014年末までに最終基準化する方向で検討している旨の説明があった。
(収益認識)
参加者から、組成が予定されている移行支援グループの位置づけやガバナンスなどについての質問があった。これに対して、IASB のマッキントッシュ副議長とFASBのリンズマイヤー理事は、次のように回答した。
(IFRS第3号の適用後レビュー)
IFRS第3号の適用後レビューに関しては、IASBのシニア・ディレクターから、主に次の説明がなされた。
(概念フレームワーク)
IFASS議長から、概念フレームワークの完了予定ついての質問があった。これに対して、IASBのマッキントッシュ副議長は、次のように回答した。
ドイツ会計基準委員会(DRSC)からIFRSの修正に関する最近の状況について説明があった。DRSCの代表者は、主に、IFRS解釈指針委員会の活動に関連し、主要な改善と主要でない改善・解釈指針等がいつ行われるかが明確でない点を指摘した。また、多くの参加者から、IFRS解釈指針員会へのリクエストに対して十分な対応が取られていないとの意見が示された。
この点、IASBのシニア・ディレクターから、IFRS解釈指針員会は実務の適用にばらつきがあるかどうかを重要視しており、事実と状況に基づいて判断が求められる事項や、まだ適用されていない又は適用間もない基準についての解釈の相違、ある法域の法制度等に関連する特有の事項などに関しては、IFRS解釈指針委員会から解釈を出すべき事項とは考えていない旨の発言があった。これに対して、参加者から、次の発言があった。
他方、フランスから、IASBやIFRS解釈指針員会が多くの狭い修正や解釈により個別に対処するよりは、基準の修正を中止する期間を確保するとともに、次のアジェンダ・コンサルテーションまで待ちより幅広いプロジェクトで対応するかどうかを決定した方が良いという意見も聞かれた。
その他、複数の参加者からIASBが行うアウトリーチの実施方法について改善を求める意見が寄せられた。
ASBJからは、アウトリーチの結果をIASBへ報告することは各国基準設定主体にとって義務ではないため、対応が難しければ対応する必要がない旨をコメントしたほか、アウトリーチから会計基準設定主体が学べることが多くある旨の発言を行った。
EFRAGは、2013年6月に、Bulletin「より良いフレームワークを目指して─事業モデルの役割」(以下「本Bulletin」という。)を公表している(*2)。
今回のIFASS会議では、EFRAGは、本Bulletinの内容を説明した上で、IASBのディスカッション・ペーパー(DP)「概念フレームワーク」に記載されている事業モデルの役割に対するEFRAGの見解を説明した。EFRAGの説明の概要は次のとおりである。
EFRAGの説明に対して、ASBJからは、事業モデルが概念フレームワークにて定義可能かどうかについては懐疑的であるが、会計単位と測定に関して事業モデルが重要となると考えられ、特に測定については未実現利益を純損益により表示するのかどうかを決定する際に、事業モデル(広義)の考え方を考慮に入れることは重要である旨の発言を行った。
FASBからは、概念フレームワークの忠実な表現や認識に関して、事業モデルの記述の必要性については疑問であり、測定に関しても未実現損益の表示に事業モデルが必ずしも必要ではないと考えている旨の発言があった。
ASBJ、EFRAG、イタリア会計基準委員会(OIC)(以下「リサーチ・グループ」という。)は、共同で行っているのれんの償却及び減損に関するリサーチについて説明を行った。
このプロジェクトは、金融危機において、のれんの減損が適時に認識されなかったという指摘や、のれんの減損に関する開示が十分でなかったという指摘がされたことを踏まえ、OICがEFRAGと開始したプロジェクトであり、ASBJは、2012年秋のIFASS会議にこのプロジェクトに参加した。その後、のれんの事後の会計処理に関して、EFRAGとOICが国際的に市場関係者に対する調査を行い、また、ASBJが日本国内の市場関係者に対して調査を行った。2つの調査によると、見解は分かれているものの、現行ののれんの減損テストについては改善の余地があることが示されたほか、のれんの償却を廃止したことが未だに議論となっていることが示された。
今回のIFASS会議では、リサーチ・グループから、市場関係者に対する調査結果を踏まえて、のれんの事後の会計処理に関して次の3つの観点から代替的な改善案について報告がなされた(なお、下記3つの代替的な改善案は相互排他的なものでない。)。
リサーチ・グループからは、のれんの会計処理に関する歴史的経緯を踏まえた上で、のれんの償却を再導入することが妥当であるという見解、及び、のれんの償却を復活させることなく、減損テストの改善と開示要求の改善によって指摘されている課題への対処は可能であるという見解の双方について報告がなされた。
これに対して、スペインから、のれんの償却についてEU会計指令が改訂され、また、IFRS for SMEsでも償却期間についての修正提案がなされていることを踏まえると、議論を行うには良いタイミングであると考えられる旨の発言があった。また、他の参加者からは、のれんの会計処理に関して次の見解が示された。
また、FASB参加者からは次の見解が示された。
FASBからの意見に対して、ASBJからは、支払った対価が公正価値を表すのは会計の前提であり、支払った対価に過大支払いや過大評価があり資産の定義を満たさないという概念を導入すると、のれんに限らず現在の会計全体の前提を覆す議論になるという旨の意見を述べた。
IPSASBより、現在取り組んでいる公的セクターの財務報告に関する概念フレームワークの開発状況について報告が行われた。
IPSASBの概念フレームワーク・プロジェクトは、次のとおり4つのフェーズに分けて進められており、2014年6月にすべての項目が最終化されることが予定されている。
フェーズ | 項目 | 公表(予定)次期 |
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フェーズ1 | 目的及び質的特性 | 2013年最終化 |
フェーズ2 | 構成要素と認識 | 2012年11月公開草案 |
フェーズ3 | 測定 | 2012年11月公開草案 |
フェーズ4 | 表示 | 2013年4月公開草案 |
各フェーズの公表文書には、IASBの概念フレームワークとの比較も示されている。IPSASBの概念フレームワークは、基本的にはIASBと異なる立場を追求するものではないが、その特徴として、構成要素の中に繰延インフロー(アウトフロー)(*3)が含まれていること、測定においては、現在価値の測定基礎を、市場価格、再調達原価、正味売却価格、使用価値などに分けて測定基礎の概念を明らかにしていることが挙げられる。
IPSASBの説明に対して、参加者からは、IPSASBの概念フレームワークとIASBの概念フレームワークとの相違点について関心が示された。
ニュージーランド会計基準委員会(NZASB)から、概念フレームワークの役割と目的に関する発表が行われた。NZASBの概念フレームワークの役割と目的に関する見解の概要は次のとおりである。
NZASBの説明に対して、ASBJからは、概念フレームワークは随時改訂されるべきものであることを述べた上で、概念フレームワークからの離脱は必要な場合はあるものの、概念フレームワークへの信頼を維持するためにも最小限にとどめるべきである旨の発言を行った。
FASBのリンズマイヤー理事より、概念フレームワークに関連して、「財務業績計算書における表示の改訂モデル:測定に対して生じる可能性のある含意」(以下「本ペーパー」という。)がIFASS会議に提出され、説明が行われた。本ペーパーは、財務業績の報告モデルの改訂を提案し、測定に対する影響の可能性を探ることを目的としたものであり、概要は次のとおりである。
リンズマイヤー理事の説明に対して、ASBJからは本ペーパーに対して次の発言を行った。
これに対して、リンズマイヤー理事から、貸借対照表において公正価値測定が求められるが財務業績の観点から公正価値測定が求められない場合は多くは生じないと考えられるが、それがどのような場合なのかを検討することは有用である旨の発言があった。
また、複数の参加者から、報告期間末日における現在価値測定の有用性とその再測定による差額をOCIに含めることをどのように考えるか質問があった。これに対して、リンズマイヤー理事から、次の回答があった。
IASBは、報告企業の外部の利用者との財務情報に関するコミュニケーションを改善してより効率的にすることを目的として、開示に関する取組みのプロジェクトに着手している。今回のIFASS会議では、現在進行中のXBRLのタクソノミに関する公開草案、短期の取組みの1つである重要性、中期の取組みの1つであるIFRSにおける開示原則について説明がなされた。
重要性及びIFRSにおける開示原則に関しては、ブレークアウト・セッションでも論点として取り上げられており、このセッションでは、主にブレークアウト・セッションにおいて取り上げられない現在進行中のXBRLのタクソノミについて参加者間で議論が行われた。
IFASS議長より「憲章 IASBと他の会計基準設定主体」、「IFASS憲章」の改訂草案が示され、これに関する議論が行われた。今回の改訂草案は、前回のIFASS会議以降に各法域から寄せられたコメントに基づき修正が行われた
もので、最終案として提示された。
「憲章 IASBと他の会計基準設定主体」について会議に提示された文案は、前回会議で議論された版と比較して、主にIASBと他の会計基準設定主体の協力関係について修正が行われたほか、「IFASS憲章」は、メンバーシップに関する文言が削除すること等が行われている。
会議中、議論を踏まえ、幾つかの点について修正が合意されたが、IFASS議長から修正文案についてIFASS参加者に電子メールにて回付の上、確認を求めることとされた。
IASBによる主要なアジェンダに関して、小グループに分かれて議論を行うブレークアウト・セッションが行われ、リース、金融商品、開示に関する取組みの各プロジェクトについて議論がされた。
筆者が参加した金融商品のセッションでは、IASBのディレクターから、IFRS第9号を適用するにあたっての経過措置や、分類及び測定及び減損に関するIASBとFASBとのコンバージェンスの状況について説明がされたほか、マクロヘッジ活動の会計に関するプロジェクトに関してIASBにおける主な検討事項について説明がされた上で、参加者との間で質疑応答が行われた。特に、マクロヘッジ活動の会計に関するプロジェクトについて、特にパイプライン取引の定義やその提案される会計処理について質問がされた。
IAS第19号「従業員給付」の年次改善(2012─2014年サイクル)の公開草案では、IAS第19号第83項に規定する優良社債に厚みのある市場が存在するか否かの評価を、同一の通貨を共有する複数の国から構成される地域市場(例:ユーロ圏)において行う場合、この評価を「各国レベル」で行うのではなく、「通貨レベル」で評価すべきことが提案されている。これについて、DRSCから、次の異なる2つの考え方が存在することが示された。
見解A: 世界中の入手可能なすべての同一通貨建ての優良社債を常に考慮して決定する。
見解B: 国内に優良社債の厚みのある市場がない場合のみに、世界中の同一通貨の優良社債を考慮して決定する。
この年次改善に対して、参加者からは、次のような懸念が示された。
ASBJからは、おそらくIASBの意図は、見解Bであると考えるが、IASBの意図が明確になるよう少なくとも結論の背景へ趣旨の記載が必要であるという旨の発言を行った。
イタリア会計基準設定主体(OIC)は、前回のIFASS会議に引き続き、IFRS第11号「共同支配の取決め」に関する適用上の課題を説明した。OICは、IFRS解釈指針委員会に寄せられたIFRS第11号から生じる適用上の論点及びIFRS解釈指針委員会での検討状況などを説明した後、新たに次の論点について問題提起を行った。
①負債に対する義務の性質
共同支配の取決めの当事者が負債に対する一次的な義務を有さない場合(例えば保証のみを提供している場合)に、それのみで共同支配の取決めを共同支配事業としては分類しない(すなわち共同支配企業として分類する)と判断するのか、共同支配の取決めの当事者が資産に対する権利を有するか否かさらなる検討が必要であるかが明らかではない。
②共同支配の取決めを共同支配事業に分類するようストラクチャリングを行うことは可能か
IFRS第11号B31項及びB32項に従い「その他の事実及び状況」を考慮する際に、IFRS第11号では、会計単位として関連する契約を検討する規定がなく、共同支配の取決めを共同支配事業に分類するようストラクチャリングを行うことが可能であると考えられる。
③個別財務諸表における別個のビークルを通じて組成された共同支配事業に対する持分の会計処理
IFRS第11号では、別個のビークルを通じて組成された共同支配事業に対する持分を会計処理する際に、共同支配事業者が個別財務諸表において連結財務諸表と同じ方法に従うことを要求している。OICによると、7IASBがIAS第27号を修正し、共同支配事業者の個別財務諸表において、共同支配企業と同じ方法で会計処理を行うこと(すなわち、取得原価又は公正価値で)を認めるべきであると考えている(*4)。
OICのこれらの問題提起に対して、カナダからIFRS第11号では望む結果を得るためにストラクチャリングすることが可能である旨の発言があった。
オーストラリア会計基準委員会(AASB)より、今後IASBが公表を予定しているディスカッション・ペーパー「マクロヘッジ活動の会計処理」(DP)に関して、発表が行われた。発表の概要は次のとおりである。
①金融商品のオープンポートフォリオに関する会計で既知の問題
ヘッジ対象の多くの資産は期限前償還オプションを有するがヘッジ手段は期限前償還オプションを有さない場合や、企業はネットポジションでヘッジしている場合があり、このような場合には、IAS第39号「金融商品:認識及び測定」のヘッジ会計の要件を満たさない場合がある。
②金融商品のオープンポートフォリオに関して利用可能な現行IFRSの会計処理
オーストラリアでは、IAS第39号を適用している場合には、公正価値マクロヘッジ(ポートフォリオの金利リスクに関する公正価値ヘッジ)やキャッシュ・フロー・マクロヘッジ、公正価値オプション、又はこれらの組合せが用いられている。
③DPに対する予備的コメント
AASBは、IASBのDP(これまでのIASBスタッフ・ペーパーに基づく)に対して、主に次の予備的なコメントを有している。
上記①②に関しては、カナダやドイツから、多くの金融機関では、ヘッジ活動として将来キャッシュ・フローをヘッジしており、IAS第39号上、マクロヘッジ活動の会計を適用している企業は限られている旨の発言があった。
上記③に関しては、参加者から主に次の見解が示された。
また、ASBJからは、次の発言を行った。
インド勅許会計士協会(ICAI)より、国際競争入札(ICB)の下で契約された金融商品ではない主契約に組み込まれた外貨デリバティブを、IFRS第9号「金融商品」B4.3.8項⒟に従い、ICBの下での契約で使用される外貨が「売買契約に通常使用されている通貨」の要件を常に満たしており、外貨デリバティブを主契約から分離することが求められないかについて問題提起があった。
これに対して、IASBのマッキントッシュ副議長から、ICBを定義することが困難であると考えられること、また、提示されている記載のみで通常使用されている通貨といえるかどうか判断がつきかねる旨の発言があった。
EFRAGより、2014年1月に簡潔検討(shortdiscussion)シリーズとして公表した「持分法:測定基礎なのか一行連結なのか?」(コメント期限:2014年5月15日)の内容の説明が行われた。
EFRAGは、「持分法:測定基礎なのか一行連結なのか?」の中で、持分法の歴史を整理した上で、持分法がどの程度、測定基礎なのか一行連結なのか、又はそれらの混合なのかを検討している。
本資料では、持分法が、歴史的な背景として、連結会計の開発が進む前に非連結の子会社に適用されてきたことを踏まえると、一行連結であったとしている。しかしながら、IFRS第3号、IFRS第10号、IFRS第11号の開発にあたり、支配を排他的な概念として、報告企業の範囲や、会計処理が決定されるようになったこと等を踏まえると、投資者は持分法が適用される関連会社や共同支配企業を支配していないため、概念的には、一行連結といえるかどうか議論になるとしている。また、持分法は、投資先の業績を描写するための基礎として、原価や公正価値による測定よりも目的適合的な情報を提供するとの見解もあるとされている。
EFRAGの説明後、参加者からは、次のような見解が示された。
また、IASBのシニア・ディレクターから、持分法の適用上の懸念に関しては短期プロジェクトとして可能な限り迅速に対処する旨の発言があったが、英国からは、短期の修正が問題に必ずしも対処していない旨の発言があった。
地域グループから、主に次のような説明がされた。
英国財務報告評議会(FRC) は、キャッシュ・フロー計算書の改善を目的としたリサーチ活動を行っている。このリサーチ活動は、投資家からの現行のキャッシュ・フロー計算書では欲しいと考える情報が表示されていない場合があるとの懸念に対応するものであり、リサーチ結果がIASBに提供される予定である。ただし、リサーチ活動は、現在、現行のキャッシュ・フロー計算書の課題を識別する予備的段階にある。
今回のIFASS会議では、FRCが識別した主に次のキャッシュ・フロー計算書の課題について説明が行われた。
①一体性(Cohesiveness)
キャッシュ・フロー計算書の有用性は、他の財務諸表との関連性が明確になることにより高められ、その1つの方法として、キャッシュ・フロー計算書と他の財務諸表との関連を示す調整表を作成することが考えられる。
②キャッシュ・フロー計算書の目的
従来より、キャッシュ・フロー計算書は、業績の測定値を提供する(おそらく企業評価(valuation)のためのインプットとして)ため、又は、流動性や支払能力の評価のため、純利益の質の評価のためなどに用いられているといわれているが、特に投資家が重要視している利用方法を理解することが望まれる。
③直接法と間接法
企業は、直接法を用いて営業活動によるキャッシュ・フローを報告することが推奨されるが、間接法も認められる。多くの利用者は直接法により開示されることを望むが、作成者は直接法によるコストが過大であると主張している。
④営業キャッシュ・フローと純利益の調整
間接法によるキャッシュ・フロー計算書において、損益計算書におけるどの項目(純損益か営業利益等の小計)をスタートとするかに関して課題がある。
FRCからの説明後、参加者からは、次のような見解が示された。
ASBJからは、財務業績の評価という観点からは、キャッシュ・フロー計算書は、包括利益計算書よりも重要性が低いと考えられ、キャッシュ・フロー計算書の一体性や直接法は、過去の表示のプロジェクトにおいて市場関係者からの強い反対にあったことを踏まえて議論を進めた方が良いと考えられる旨の発言を行った。
EFRAGは、2014年2月に公表したBulletin「より良いフレームワークを目指して─ 複雑性(Complexity)」(コメント期限:2014 年4月30日)(以下「本Bulletin」という。)の内容を説明した。
本Bulletinでは、複雑性を企業と利害関係者の間の財務報告を通じた効果的なコミュニケーションを阻害するとともに、市場の非効率性を創出し、資本の有効な配分の妨げになるものとしている。このため、可能な場合、複雑性を最小化することが重要とした上で、複雑性を次の2つに区分して議論している。
⑴回避不能な複雑性…事業活動がより高度化され、理解が困難になったことによるもの。
⑵回避可能な複雑性…基準設定や規制、教育、情報の送信が効果的でなかったために生じるもの。
本Bulletinにおいて、EFRAG、及びフランス、英国並びにイタリアは、概念フレームワークの理解可能性、コスト便益の制約において、複雑性に関する議論が含まれるべきとしているが、ドイツは、現行の概念フレームワークにおいて、IASBが複雑性の問題を扱うツールが既に存在しているとしている。
EFRAGの説明後、参加者からは、次のような見解が示された。
IASBのマッキントッシュ副議長から個人的な意見として、複雑性はコストと便益に関係するに違いないが、複雑性は概念上の決定要因ではないため、複雑性を概念フレームワークに記載すると混乱の原因になると考える旨の発言があった。
ASBJからは、次の発言を行った。
EFRAGは、2014年1月に簡潔な検討(short discussion)シリーズとして公表した「資本提供者による情報の利用:基準設定に対する示唆」の内容を説明した。
本資料は、EFRAG及びスコットランド勅許会計士協会(ICAS)が行った 資本提供者による情報の利用に関する学術文献のレビュー結果を、EFRAGが基準設定主体への示唆としてとりまとめたものである。概要は次のとおりである。
シエラレオネの会計基準設定主体(CSAAG)の委員長より、「社会及び経済発展への会計基準の貢献:機会と脅威」と題した研究に関するプレゼンテーションが行われた。このセッションでは、プロフェッショナルは競争への負担が小さい価値や慣習を保つべきであり、道徳性をもって会計基準を設定すべきである旨の発表が行われた。
前回会議の評価結果が報告された後、2014年の秋のIFASS会議はロンドンで開催され、また、2015年春のIFASS会議はヨルダンで開催されることとされた。