ASBJ 企業会計基準委員会

IASBが、財務報告における開示の有効性改善に関して前進

2014年12月18日

100か国以上が使用を要求している国際財務報告基準(IFRS)に責任を有する国際会計基準審議会(IASB)は、本日、財務報告書における表示及び開示を改善するための大規模な取組みの一環としてIAS第1号「財務諸表の表示」の修正を公表した。

開示の有効性改善は、財務報告における最も重要かつ困難な課題の1つと多くの人々が考えている。2012年に完了したIASBのアジェンダ協議に対するコメント提出者の多くが、IASBに、基準を見直し、開示要求を改善する方法を検討するよう求めた。IASBは、開示に関する取組み(対象を絞った対応と、開示要求の広範囲で意欲的な見直しとを含んだプロジェクトのポートフォリオである)を通じてこの課題に対応している。

本日公表したIAS第1号の修正は、どのような情報を財務諸表で開示するのかを決定する際に、企業が専門的な判断を適用することをさらに促すことを図っている。例えば、本修正は、重要性は財務諸表全体に適用される旨や、重要性のない情報の記載が財務開示の有用性を損なう場合がある旨を明確にしている。さらに、本修正は、企業が財務開示のどこに、どのような順序で情報を表示するのかを決定する際に、専門的な判断を使用すべきである旨を明確化している。

本修正は、2013年討議フォーラムを受けてIASBが識別した5つの狭い範囲の開示要求の改善の完了を示すものである。IASBは、各国及び地域の会計基準設定主体と緊密に協力を進めており、彼らが自らの法域で実施した作業や具体的なプロジェクトを活用している。

開示に関する取組みの一環として、IASBは、本日、IAS第7号「キャッシュ・フロー計算書」の修正案の公開草案も、一般のコメントを求めるために公表した。当該提案は、企業の財務活動並びに現金及び現金同等物残高に関する開示の改善を求めた投資者からの要望に対応するものである。

IASB議長Hans Hoogervorst氏は次のように述べた。

「財務報告における開示の改善に対して真に要望がある。開示の問題はIASBだけで解決できるものではないが、我々には果たすべき重要な役割がある。本日の発表は、我々がこの挑戦をやり遂げるつもりであることを示している。」

IAS第1号の修正は直ちに適用可能であり、2016年1月1日以後開始する事業年度に強制適用となる。

IAS第7号の修正案に関するコメントは、2015年4月17日までにIASBに送付のこと。公開草案(これには初めて、IFRSタクソノミへの関連する変更案の記述が含まれている)は、IFRSウェブサイトの ‘Open for comment’ セクションからアクセスできる。

開示に関する取組みとその進展に関する詳細情報は http://go.ifrs.org/Disclosure-Initiative参照。

以上

プレス関係の問い合わせ先 

Mark Byatt, Director of Communications and External Affairs
Telephone: +44 (0)20 7246 6472
Email: mbyatt@ifrs.org

Viv Rees, Communications Adviser, IFRS Foundation
Telephone: +44 (0)20 7246 6960
Email: vrees@ifrs.org

専門的な内容に関する問い合わせ先

Kristy Robinson, Technical Principal, IASB
Telephone: +44 (0)20 7246 6933
Email: krobinson@ifrs.org

編集担当者への注釈

開示に関する取組みについて

IASBは、財務報告における開示をどのように改善できるのかを検討するための幅広い取組みを行っている。開示に関する取組みは、2013年1月に開催された財務報告開示の討議フォーラム(2013年5月に公表したフィードバック文書においてこれを要約している)により情報を与えられたものである。開示に関する取組み(IASBの10項目の計画で述べているいくつかの適用及び調査研究のプロジェクトで構成される)の進展を以下に示している。

完了した対応

最終基準「開示に関する取組み」(IAS第1号の修正)には以下の対応の完了が含まれている。

  • IAS第1号の重要性に関するガイダンスを修正し、以下を明確化
    • 重要性のない情報により有用な情報が損なわれることがあり得る。
    • 重要性は財務諸表の全体に適用される。
    • 重要性はIFRSの各開示要求に適用される。
  • 会計方針を含め注記の順序に関するガイダンスを修正
    • 財務諸表注記の順序を規定しているものと解釈されてきた文言をIAS第1号から削除
    • 企業が財務諸表のどこに会計方針を開示するのかに関して柔軟性がある旨を明確化
  • 新たな基準を開発する際に開示要求について規範性を弱めた文言を使用
    • これは現在進行中である

進行中の対応 

  • 本日の公開草案「開示に関する取組み」(IFRS第7号の修正案)の公表(債務に関する開示を改善するための要求事項を提案している)
  • 重要性に関する全般的な適用指針又は教育マテリアルのいずれかの開発(重要性プロジェクト・ページ参照)
    • IASBは、重要性に関する実務記述書案を2015年半ばに公表する予定である。
    • 重要性の定義の議論を「開示原則」ディスカッション・ペーパーに含める(次の項目参照)。
  • IAS第1号、IAS第7号及びIAS第8号「会計方針、会計上の見積りの変更及び誤謬」の根本的な見直し(それらの基準を置き換えることを目標に)(開示原則プロジェクト・ページ参照)
    • IASBは、ディスカッション・ペーパー「開示原則」に含めるべき論点を2014年を通じて議論してきている。
    • ディスカッション・ペーパーは2015年半ばに公表を予定している。
    • FRC(英国)及びOIC(イタリア)が、この作業の2つの部分に関する作業を行っている。
    • DRSC(ドイツ)が、IASBスタッフと協力して作業するスタッフメンバーを提供している。
  • 現行の基準における開示要求の全般的な見直し
    • 見直しを開始済み。作業の一部は、ニュージーランド外部報告審議会のスタッフと協力して行っている。

開示に関する取組みに関する追加情報については、プロジェクト・ページを参照されたい。

国際会計基準審議会について

IASBの設立は2001年で、独立の民間非営利組織たるIFRS財団の基準設定機関である。IASBは、公益のため、高品質の国際的な会計基準(一般目的の財務諸表において高品質で透明かつ比較可能な情報を提供する)の単一のセットの開発に取り組んでいる。

この目的に向け、IASBは広範な公開協議を行い、世界中の国際機関及び国内機関の協力を求めている。IASBには世界中から選出された多様な職歴をもつ14名の常勤メンバーがいる。ボードメンバーはIFRS財団の評議員会により選任され、評議員会への説明責任を負う。評議員会に求められているのは、専門的能力と多様な国際的ビジネス及び市場の経験との最善の利用可能な組合せを選択することである。評議員会は、その職務上、当局者のモニタリング・ボードへの説明責任を負っている。


公開草案「開示に関する取組み(IAS第7号の修正案)」の日本語訳は以下からダウンロード可能です。この翻訳は、企業会計基準委員会スタッフが参考のために作成したものです。ご利用にあたっては、必ず原文をご参照ください。

なお、本資料はPDFファイルのみでの提供ですので、あらかじめご了承ください。

IASB公開草案「開示に関する取組み(IAS第7号の修正案)」の和訳