ASBJ 企業会計基準委員会

IFRS財団がIFRSの国際的なアドプションに向けての進捗状況を図表化

2013年6月5日

IFRS財団は、本日、IFRSの国際的なアドプションへ向けての進捗状況を評価するための重要な取組みの第1フェーズを完了した。G20は、高品質な財務報告基準の単一のセットの国際的なアドプションを求めてきた。この取組みは、利害関係者がその目標の達成に向けての各法域の進捗状況をまとめることを可能にする中心となる情報源の提供を意図したものである。

本プロジェクトの第1フェーズの完了により、G20の全法域とともに、各法域内の会計基準に全般的責任を有する各国及び地域団体を対象としたアンケート調査に回答した追加の46の法域についてのIFRSプロフィールを公表している。このプロフィールは、IFRSウェブサイトのhttp://go.ifrs.org/Global-Standardsで入手できる。本プロジェクトの第2フェーズが進行中で、追加のプロフィールが今後数か月の間にウェブサイトに掲載される予定である。2013年末までに世界中の大部分の法域についてプロフィールを提供することを最終的な目標としている。

アンケート調査に回答した66の法域のうち、

  • 95%が、国際的な適用に適合する財務報告基準の単一のセットとしてIFRSの支持を公約している。
  • 80%が、証券が公開取引されている企業のすべて又はほぼすべてに対する要求としてIFRSをすでに採用している。残りの法域の大半は、IFRSの使用に向けて大幅に進展している。
  • IFRSを採用している法域がIFRSに加えている変更はごく少数である。加えられた少数の変更は一般的に、当該法域がIFRSを採用するための計画における一時的な措置とみなされている。さらに、ほぼすべてのケースで、IASBには、当該法域が変更を加えている基準を改訂するための活動中のプロジェクトがある。
  • 半数以上の法域が、中小企業向けIFRS(IFRS for SMEs)をすでに採用しているか又は近い将来に採用することを計画して
    いる。

プロフィールは、IFRSの使用に関する各法域の決定を記述している。また、該当がある場合には、各国の法律又は規制の下でのIFRSのアドプション又はエンドースメントのための各法域の手続も、自国の言語へのIFRSの翻訳のための手続(もしあれば)とともに扱っている。

2012年2月の戦略レビュー報告書において、評議員会は、IFRSのアドプションは、個々の法域における立法及び規制機関による自発的な公共の利益に関する決定であり、個々の公的機関がIFRSを国内の法律に組み込むための最も適切な方法を決定するものであることを認識した。IFRSアドプションの仕組みに関係なく、最終結果は同じとなるべきである。すなわち、国際的な会計基準の単一のセットという目標を達成するためのIFRSの完全なアドプションである。

各法域のプロフィールは、前IASBメンバーPaul Pacter氏の指導の下で、IFRS財団が複数の情報源からの情報に基づいて作成したものである。出発点は、世界中でのIFRSの適用に関して当財団が2012年8月から12月の間に実施したアンケート調査に対して基準設定機関及び他の関連団体が提供した回答であった。当財団はプロフィールの草案を作成し、アンケート調査の回答者及び他の関係者(規制機関及び国際的な監査事務所を含む)に草案のレビューを依頼した。彼らのコメントは、公表されたプロフィールの中に反映されている。

この取組みに関するコメントとして、IFRS財団評議員会の議長Michel Prada氏は次のように述べた。

「これは、国際的な会計基準の単一のセットというG20が承認している目標へ向けた世界中での進捗状況を描写することを図る重要な取組みである。全体として、このプロフィールは、素晴らしい進展が10年強の間に達成されたことを示している。各国はIFRSアドプションへの道筋に沿ったさまざまな段階にいるが、旅の方向は明確であり、この勢いは止められるものではない。

私は、このプロジェクトで支援をいただいている世界中の多くの方々、特に前IASBメンバーPaul Pacter氏に感謝したい。彼の知識が、我々がこのような素晴らしい情報のライブラリーをまとめるのに役立った。」

また、本日、IASBの議長Hans Hoogervorst氏は、香港でのIFRSアジア・オセアニア・ポリシー・フォーラムで行ったスピーチの中でこのプロジェクトに関して幅広く語った。「Are we there yet?」という題名のスピーチの原稿は、IFRSウェブサイトのIASBスピーチセクションからダウンロード可能である。

以上

プレス関係のお問い合わせ先

Mark Byatt, Director of Communications and External Affairs, IFRS Foundation
Telephone: +44 (0)20 7246 6472
Email: mbyatt@ifrs.org

Chris Welsh, Communications Manager, IFRS Foundation
Telephone: +44 (0)20 7246 6410
Email: cwelsh@ifrs.org

編集担当者への注釈

国際財務報告基準(IFRS)が66の法域でどのように適用されているのかを記述した最初の66のプロフィールで報告されたデータに関して、次のような全体的な観察を示すことができる。

1. 国際的会計基準の単一のセットへの公約

ほぼすべての法域(66のうち63)が、高品質で国際的な会計基準の単一のセットを支持する公約を行っている。アルバニア、マカオ、及びスイスのみがまだ公約を行っていない。

2.IFRSへの公約

66の法域のうち1つ(スイス)を除く全法域における関係当局が、IFRSが国際的な会計基準の単一のセットとなるべきであると考えている。

3.IFRSのアドプション

55法域(プロフィールの80%以上)が自らの資本市場で少なくとも一部の企業についてIFRSを採用している。そのうちの2つを除く全法域がすでにIFRSの使用を開始している。ブルネイとコロンビアはそれぞれ2014年と2015年にIFRSの使用を開始する。まだ採用していない残りの11の法域のうち、 

  1.  2つ(パキスタンとシンガポール)は、国内基準の一部としてIFRSの大部分を採用しているが全部ではなく、一部の変更がある。
  2.  3つは、IFRSを国内発行者ないしは外国発行者に対して任意ベースで認めている(インド、日本、米国)。
  3.  1つ(サウジアラビア)は、IFRSを限定的に要求している(銀行と保険会社のみ)。
  4.  2つ(ブータンとボリビア)は、IFRSを採用していないが、それでも一部の企業がIFRSを使用している。ブータンはアドプション手続を開始している。
  5.  1つ(中国)は、国内基準がIFRSと大幅にコンバージェンスしている。
  6.  2つ(マカオとインドネシア)は、一部のIAS/IFRSを採用しているが、完全なアドプションの計画や日程を発表していない。

IFRS採用済みに分類された55の法域には、IAS第39号の「カーブアウト」が適用されるEU加盟国が含まれている。このカーブアウトが影響を与えているのは、欧州の規制対象市場で証券が取引されている8,000社のIFRS企業のうち24行足らずの銀行である。

この55の法域には、IFRSの一語一句を自国の会計基準に採用しているいくつかの法域も含まれている(オーストラリア、香港、ニュージーランド)。

また、この55の法域には、最近の版ではあるが最新版ではないBound Volumeを採用している4つの法域も含まれている。マケドニア(2009年版)、ミャンマー(2010年版)、スリランカ(2011年版)、ベネズエラ(2008年版)である。これらの法域は、アドプションを最新版に更新する作業を行っている。

66のプロフィールの中には、欧州連合の27の加盟国のうち14か国が含まれている。欧州連合では、IFRSが規制対象市場で証券が取引されている全企業に要求されている。残りの13のEUプロフィールは7月半ばに掲載の予定である。

4.IFRS使用の範囲

50の法域が、公開取引されている全企業にIFRSを要求している。他の5つの法域は、金融機関以外の公開取引されている全企業にIFRSを要求している。公開取引されている全企業にIFRSを要求している50の法域のうちの約60%が、他の企業(一般的には金融機関や大規模な非上場企業)にもIFRSを要求している。公開取引されている全企業にIFRSを要求している50法域のうち90%以上が、公開取引されていない企業の全部又は大部分にもIFRSを認めている。

5.ごく少数の変更

66の法域がIFRSに加えている変更はごく少数である。加えられた少数の変更は一般的に、各法域がIFRSを採用するための計画における一時的な措置とみなされている。例えば、EU自身がIAS第39号の「カーブアウト」を「一時的」であると記述しており、「カーブアウト」を適用しているのは、欧州の規制対象市場で証券が取引されている8,000社のIFRS企業のうち24行足らずの銀行である。IASBには現在、他の変更の大半に対処するためのプロジェクトがアジェンダにある。その中には、個別財務諸表上の子会社の会計処理への持分法の使用、貸付金の損失引当、果実生物資産の会計処理がある。いくつかの法域は、一部の基準(特にIFRS第10号、IFRS第11号、IFRS第12号及びIFRIC第15号)の発効日を延期している。

6.監査報告書

IFRSを採用している55の法域のうち32の法域で、監査報告書がIFRSへの準拠に言及している。17の法域では、監査報告書がEUの採用したIFRSへの準拠に言及している。残りの6つの法域では、監査報告書が国内基準への準拠に言及している(香港財務報告基準、ミャンマー財務報告基準、韓国が採用したIFRS、セルビアが採用したIFRS、スリランカ会計基準、ウルグアイ会計基準)。

7.IFRS for SMEs

66の法域のうち29がIFRS for SMEsを採用している。さらに8つの法域が現在検討中である。

IFRS財団について

IFRS財団は、国際会計基準審議会(IASB)の監督機関である。財団は、IASBを通じて、公益に資するよう、一般目的財務諸表において透明性があり比較可能な情報を要求する高品質かつ国際的な会計基準の単一のセットの開発に取り組んでいる。

IFRS 財団の評議員会は、国際会計基準審議会(IASB)の作業とIFRS の厳格な適用を推進しているが、基準に関する技術的事項の決定には関与していない。その責任はIASBのみに委ねられている。