ASBJ 企業会計基準委員会

IASB、金融資産の減損についての提案を公表

2009年11月5日

国際会計基準審議会(IASB)は、本日、金融商品の償却原価測定と減損についての公開草案を、一般のコメントを募集するために公表した。本提案は、IAS第39号「金融商品:認識及び測定」を、IFRS第9号「金融商品」と呼ばれることになる新基準に置き換える3部構成のプロジェクトの第2部を構成するものである。金融商品の分類及び測定についての提案は7月に公表され、近日中に最終基準の公表を予定しているが、ヘッジ会計についての提案は引き続き開発中である。

国際財務報告基準(IFRS)と米国会計基準は、現在は金融資産の減損について発生損失モデルを使用している。発生損失モデルは、反証(損失事象又はトリガー事象)が識別されるまでは、すべての貸付金が返済されると仮定する。その時点でのみ、減損した貸付金(又は貸付金のポートフォリオ)は、より低い価額まで評価減される。

世界的な金融危機は、発生損失モデルに対する批判につながった。それは、貸倒損失が全くないという当初の過度に楽観的な評価を表示した後に、いったんトリガー事象が発生すると大きな修正が生じるという点についてである。

G20の首脳等からの要請に対応して、2009年6月にIASBは、予想損失モデルへの移行の実務上の可能性についての情報の要請を公表した。これに対する回答は、本公開草案を開発する際に、IASBにより考慮されている。

本提案においては、予想損失の認識は、損失事象が識別された後だけではなく、貸付金(又は償却原価で測定される他の金融資産)の存続期間にわたって行われる。これは、現状では損失事象が識別される前に発生する金利収益の前倒し計上を避け、貸出の決定をより良く反映することとなる。したがって、本提案においては、貸倒損失に対する引当は、金融資産の存続期間にわたって積み上げられていく。広範な開示要求により、投資家は、企業が必要と判断した損失の見積りについての理解を得ることとなる。

IASBは、予想損失モデルへの移行が重大な実務上の難題であることを認識している。このため、信用リスク管理の専門家で構成される専門家諮問パネル(EAP)が、当審議会に助言を与えるために創設される。 企業の組織内におけるこのような変更の影響を企業が検討するのに十分な期間を与えるために、8か月のコメント期間が設けられている。
IASBは、金融商品の会計を改良するにあたって現在実行中の前例のないレベルのアウトリーチ活動を継続する。IASBはまた、金融資産の減損についての共通のアプローチに合意することを目指して、米国財務会計基準審議会(FASB)と緊密に協力する。

本公開草案の紹介として、IASB議長David Tweedie卿は次のように述べた。

「G20等からの要請と整合して、IASBは、金融商品会計を改良するために迅速に動いている。 償却原価で測定される金融資産の減損についてのこれらの提案は、本プロジェクトの第2部を構成するものである。単一の減損モデルへの移行は複雑性を大幅に低減させるが、予想損失モデルを適用するという難題を甘くみるべきではない。このため、IASBは、慎重に歩を運び、進め方を決定する前に広範な関係者からのインプットを求める。」

本提案のハイレベルの要約であるIASB「スナップショット」も、IASBウェブサイトのプロジェクトのセクションから無料でダウンロードできる。

公開草案「金融商品:償却原価及び減損」における提案は、2010年6月30日までコメントを募集するために公開される。本公開草案に関して受け取ったコメントを検討した後、IASBは2010年に、約3年後に強制適用となり早期適用が認められるIFRSを公表することを予定している。 本公開草案は、www.iasb.orgの‘Open for Comment’セクションで入手可能である。 購読者は、eIFRSsで本文書を見ることもできる。

本公開草案の印刷版(ISBN978-1-907026-43-0)は、IASC財団出版部から£12(及び郵送料)で、間もなく購入可能となる予定である。

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プレス関係の問い合わせ先 

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専門的な内容に関する問い合わせ先

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Martin Friedhoff, Project Manager, IASB
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編集担当者への注釈

国際会計基準審議会(IASB)について

国際会計基準審議会(IASB)は、2001年に設立され、独立した民間の非営利組織である国際会計基準委員会(IASC)財団の基準設定機関である。 IASBは、公益に資するよう、一般目的財務諸表において透明性があり比較可能な情報を提供する、高品質かつ国際的な会計基準の単一のセットを開発することを公約している。 この目的を追求するため、IASBは、広範にわたる公開の協議を行っているほか、世界中の国際機関や各国機関と協力している。 15名の常勤のメンバーは、10か国から選ばれ、幅広い職務上の経歴を有している。 2012年までに16名のメンバーに拡大される。 メンバーは、IASC財団の評議員会から選任されるとともに、これに対して説明責任を負っており、専門的な能力と、国際的なビジネス及び市場に関する経験の多様性に関して、選択し得る最良の組み合わせを選択することが要求されている。 彼らの作業において、評議員会は、公的機関のモニタリング・ボードに対して説明責任を負っている。


公開草案「金融商品:償却原価及び減損」の日本語訳は以下よりダウンロードすることが可能です。本訳は、企業会計基準委員会スタッフによる参考のための資料です。ご利用にあたっては、必ず原文をご参照ください。

なお、本資料はPDFファイルのみでの提供ですのであらかじめご了承ください。