ASBJ 企業会計基準委員会

IASB、中小企業向けIFRSを公表

2009年7月9日

国際会計基準審議会(IASB)は本日、中小規模の企業が使用するために設計された国際財務報告基準(IFRS)を公表した。中小企業は企業全体の約95%以上を占めると推定されている(*1)。本基準は、世界中の中小企業との広範な協議を伴う5年の開発過程の成果である。

「中小企業向けIFRS」は、中小企業のニーズと能力に合わせて作られた約230ページの独立した基準である。資産、負債、収益及び費用の認識と測定に関する完全版IFRSの原則の多くを簡素化し、中小企業に関連性のない項目は省略するとともに、要求される開示の数を大幅に削減している。中小企業の報告上の負荷をさらに軽減するために、IFRSの改訂は3年に1回に限定される。

便益

「中小企業向けIFRS」は、完全版IFRSよりもずっと簡素な中小企業向けの厳格な共通の会計基準のセットを求めていた、先進国と新興経済国の双方からの強い国際的な要望に対応している。特に、「中小企業向けIFRS」は以下の役割を果たすであろう。

  • 会計の利用者にとっての比較可能性の改善
  • 中小企業の会計に対する全体的な信頼性の強化、及び
  • 国内ベースの基準の維持に伴う多額のコストの削減。

「中小企業向けIFRS」は、完全版IFRSの適用が要求される公開の資本市場への上場を準備中の成長企業のためのプラットフォームともなるであろう。

「中小企業向けIFRS」は、完全版IFRSとは切り離されており、そのため、完全版IFRSを採用しているかどうかにかかわらず、どの法域でも利用可能である。どの企業が本基準を使用すべきかを決定するのも各国である。本基準は、公表後ただちに発効する。

厳格な開発

「中小企業向けIFRS」を開発するにあたり、IASBは世界中で広範に協議を行った。 40名の中小企業の専門家によるワーキング・グループが、本IFRSの構造と内容に関して開発のさまざまな段階でIASBに助言した。 2007年に公表された本IFRSの公開草案は、中小企業が提案に回答するのを助けるために、5つの言語に翻訳された。 50回以上の円卓会議やセミナーが、直接のフィードバックを受けるために開催され、IFRS案について20カ国で100以上の小企業によるフィールドテストが行われた。 その結果、最終の基準書ではいっそうの簡素化が達成されている。

Paul Pacter(IASBのSME基準ディレクター)は、本基準の国際的な採用を支援するためのグループを主導することに同意している。このグループの詳細は間もなく発表される。

世界的な教育イニシアチブ

「中小企業向けIFRS」の導入を支援するために、IASC財団は、包括的な研修教材を開発している。 当財団は、特に発展途上国及び新興経済国の国内で、研修教材の使用について「講師を研修する」地域別ワークショップにインストラクターを派遣するために国際的な開発機関との共同作業も行っている。 英語版の教材は、2009年の後半にIASBのウェブサイトから無料でダウンロードできるようになる。

完全版「中小企業向けIFRS」(結論の根拠、財務諸表の例示、表示と開示のチェックリストが付属している)は、本日から http://go.iasb.org/IFRSforSMEs より無料でダウンロードできる。

「中小企業向けIFRS」の紹介として、IASB議長David Tweedie卿は次のように述べた。

「中小企業向けIFRSの公表は、世界中の企業にとって画期的なものである。初めて、中小企業が、共通の高品質で国際的に評価される会計上の規定のセットを持つこととなる。我々は、先進国と新興経済国の双方が便益を感じるであろうと考えている。

プロジェクトを率いたPaul Pacter氏のたゆまぬ努力と、本IFRSの開発に協力した世界中の多数の人々と中小企業に感謝している。」

本発表について、Paul Pacter(IASBのSME基準ディレクター)は、次のように述べた。

「中小企業向けIFRSは、国内で又は国際的に資本を調達するためのパスポートを企業に提供することであろう。」

プレス関係の問い合わせ先

Mark Byatt, Director of Corporate Communications, IASB
Telephone: +44 (0)20 7246 6472,
Email: mbyatt@iasb.org

Sonja Horn, Communications Adviser, IASB
Telephone: +44 (0)20 7246 6463,
Email: shorn@iasb.org

専門的な内容に関する問い合わせ先

Paul Pacter, Director of Standards for SMEs, IASB
Telephone: +852 2852 5896 (Hong Kong, GMT+8),
Email: ppacter@iasb.org

編集担当者への注釈

「中小企業向けIFRS」に関するファクト・シートは、本プレスリリースに添付されている。また、IASBウェブサイトの新しい中小企業向けIFRSページ http://go.iasb.org/IFRSforSMEsからもダウンロード可能である。

印刷版「中小企業向けIFRS」(セットでISBN 978-1-907026-16-4)は、IASCF出版部から£20(及び郵送料)で間もなく購入可能となる予定である。

IASC Foundation Publications Department,
30 Cannon Street, London EC4M 6XH, United Kingdom.
Tel: +44 (0)20 7332 2730,
Fax: +44 (0)20 7332 2749
Email: publications@iasb.org
Web: www.iasb.org

国際会計基準審議会(IASB)について

国際会計基準審議会(IASB)は、2001年に設立され、独立した民間の非営利組織である国際会計基準委員会(IASC)財団の基準設定機関である。 IASBは、公益に資するよう、一般目的財務諸表において透明性があり比較可能な情報を提供する、 高品質かつ国際的な会計基準の単一のセットを開発することを公約している。 この目的を追求するため、IASBは、広範にわたる公開の協議を行っているほか、世界中の国際機関や各国機関と協力している。 15名の常勤のメンバーは、10か国から選ばれ、幅広い職務上の経歴を有している。 2012年までに16名に拡大される。 メンバーは、IASC財団の評議員会から選任されるとともに、これに対して説明責任を負っており、専門的な能力と、国際的なビジネス及び市場に関する経験の多様性に関して、選択し得る最良の組み合わせを選択することが要求されている。 彼らの作業において、評議員会は、公的機関のモニタリング・ボードに対して説明責任を負っている。


  1. OECD要覧2004年版からのデータ