ASBJ 企業会計基準委員会

IASB、共同支配契約に関する会計処理の改善を提案(公開草案第9号)

IASBプレスリリース 2007年9月13日

国際会計基準審議会(IASB)は本日、一般のコメントを募集するために、共同支配契約(Joint Arrangements)の会計処理を改善するための提案を公表した。公開草案第9号「共同支配契約」は、現行のIAS第31号「ジョイント・ベンチャーに対する持分」を置き換えることを提案しており、これは、1990年にIAS第31号が公表されて以来、はじめての大幅な改訂となる。

この見直しは、IFRSと米国会計基準間の差異を縮小するための、IASBとFASBとの間の短期コンバージェンス・プロジェクトの一部を構成するものである。

今回の提案の主眼は、高品質な財務報告を達成するための障害となっているとIASBが考えている、共同支配契約の現在の会計処理に関する2つの点である。

  • 共同支配契約に係る現在の会計処理は、事業が行われる際の法的な形式に従っている。これは、必ずしも当事者間で合意された契約上の権利義務を反映するとは限らない。これらの権利や義務に焦点を移すことによって、当事者の財務報告に、共同支配契約を現実的に反映することになる。
  • 現在の会計基準は、共同支配の事業体に対する持分を会計処理するにあたり、財務諸表作成者に対して選択肢を認めているため、比較可能性が損なわれている。公開草案第9号「共同支配契約」は当事者に対し、たとえ共同支配契約が別の事業体において運営されている場合であっても、権利を持つ個々の資産及び債務を負っている個々の負債を認識することを求めることによって、選択肢を排除することを提案している。当事者が、活動の成果の持分相当に対する権利のみを有しているような場合には、共同支配契約に対する正味の持分が、持分法により認識されることになる。

この提案は、共同支配契約を通じて事業を行っている企業に関する、より多くの情報が財務諸表利用者に提供されるように意図されており、共同支配契約の内容に関する記述やジョイント・ベンチャーに対する持分に関する要約財務情報を含んでいる。

公開草案第9号「共同支配契約」は、eIFRS購読者においては本日から入手可能であり、9月27日以降は、ウェブサイトから無料で入手可能となる。コメントは、2008年1月11日まで募集される。
提案されたIFRS「共同支配契約」(ISBN 978-1-905590-37-7)の印刷物は、IASCF出版部から£10で間もなく入手可能となる。eIFRSの購読希望者はwww.iasb.orgのオンラインショップ、又は下記にお問い合わせいただきたい。

IASC Foundation Publications Department,
30 Cannon Street, London EC4M 6XH, United Kingdom.
Tel: +44 (0)20 7332 2730,
Fax: +44 (0)20 7332 2749,
Email: publications@iasb.org
Web: www.iasb.org

プレス関係の問い合わせ先

Mark Byatt, Director of Corporate Communications, IASB,
Telephone: +44 (0)20 7246 6472,
Email: mbyatt@iasb.org

Sonja Horn, Communications Adviser, IASB,
Telephone: +44 (0)20 7246 6463,
Email: shorn@iasb.org

専門的な内容に関する問い合わせ先

Wayne Upton, Director of Research, IASB,
Telephone: +44 (0)20 7246 6449,
Email: wupton@iasb.org

Alan Teixeira, Senior Project Manager, IASB
Telephone: +44 (0)20 7246 6442,
Email: ateixeira@iasb.org

Patrina Buchanan, Project Manager, IASB
Telephone: +44 (0)20 7246 6468,
Email: pbuchanan@iasb.org

編集者への注釈

これまでの経緯

 公開草案第9号「共同支配契約」は、共同支配契約における持分に対する会計処理を変更すること、及びIAS第31号「ジョイント・ベンチャーに対する持分」を置き換えることを提案している。IAS第31号は、IASBの前身であるIASCにより、1990年に公表された。1990年の公表以来、IAS第31号の規定は大きな変更がないまま現在に至っている。

共同支配契約とは何か?

 共同支配契約は、それによって2あるいはそれ以上の当事者が、経済的活動を共同で行い、当該活動に係る意思決定を共有する契約上の合意である。共同支配契約は、共同支配の資産、共同支配の営業及びジョイント・ベンチャーを含む。

IAS第31号見直しの目的は何か?

 公開草案第9号「共同支配契約」の主な狙いは、IAS第31号の2つの点を改善することである。第1点は、共同支配契約の様式が会計処理の主要な決定要因となっている点、第2点は共同支配の事業体に係る会計処理に選択肢があるという点である。
  共同支配契約に係る会計処理を改善することに加えて、審議会は共同支配契約、子会社及び関連会社にかかる開示の規定の見直しも行うこととした。

この提案によって、誰が影響を受けるのか?  

新基準は、大半の企業の貸借対照表には影響しないと考えられる。なぜなら、個別の資産及び負債に対する会計処理を行う大半の状況においては、比例連結をした場合と同様の結果になるからである。

企業が、共同支配契約に対する個別の資産や負債(及び関連する収益と費用)に対して権利や義務を有している場合において、共同支配契約が法的な事業体ではないか、あるいは事業体であっても従来から比例連結で会計処理されているときは、新基準の適用は財務諸表に対してほとんど影響を与えない。同様に、企業が共同支配契約の活動成果の持分相当に対してのみ権利を有する場合には、共同支配契約が従来から持分法により会計処理されているときは、ほとんど影響はない。

企業が比例連結を用いて、資産・負債に対する権利義務がないにもかかわらず、自らの財務諸表に資産や負債を認識していた場合や、企業が資産・負債に対する権利義務があるにもかかわらず、持分法を適用しているためにこれらの権利や義務を財務諸表に認識していなかったような場合には、新基準適用による影響は、より大きなものとなろう。

なぜ開示の規定を拡大する必要があるのか?

現在、共同支配契約を通じて行われる企業の活動の性質及びその量を、説明することは難しい。より整合的で、投資のタイプにかかわらず横断的にカバーする開示規定を提供するため、共同支配契約に係る開示を拡大するのに加えて、審議会は、子会社及び関連会社に関するIFRS(前者がIAS第27号「連結及び個別財務諸表」、後者がIAS第28号「関連会社に対する投資」)の改訂を提案している。

IAS第31号の見直しにより、米国の会計基準を採用するのか?

そうではない。公開草案での今回の提案は米国基準と整合しているが、米国の共同支配契約に係る既存の文書には特定業種向けのガイダンスが含まれているため、まだ差異が残っている。IFRSは通常、多くのセクターにまたがる活動について、特定の業種向けのガイダンスの提供は行っていない。

IASBについて

国際会計基準審議会(IASB)は、2001年に設立された、IASC財団の基準設定機関であり、独立した民間の非営利組織である。IASBは、公共の利益のため、一般目的の財務諸表において透明で比較可能な情報を提供する、高品質かつ国際的な会計基準の単一のセットを開発することを公約している。この目的を追求するため、IASBは、広範にわたる公開の協議を行っているほか、世界中の国際機関や各国機関と協力している。その14人のメンバー(うち12人は常勤)は、9か国から選ばれ、幅広い職務上の経歴を有している。彼らは、専門的な能力と、国際的なビジネス及び市場に関する経験の多様性に関して、選択し得る最良の組み合わせを選択することが要求される、IASC財団の評議員会から選任されるとともに、これに対して説明責任を負っている。