ASBJ 企業会計基準委員会

第73回会議

IASB(国際会計基準審議会)の第73回会議が、2007年11月13日から16日までの4日間にわたりロンドンのIASB本部で開催された。今回のIASB会議では、1. 企業結合第2フェーズ、2. 財務諸表の表示、3. 収益認識、4. 公正価値測定、5. 概念フレームワーク(測定)、6. 保険会計、7. IFRS第2号(株式報酬)、8. プットできる金融商品、9. IAS第24号(関連当事者の開示)の改訂及び10. 国際財務報告基準解釈指針委員会の活動状況についての検討が行われた。教育セッションとして、支配力に基づく連結範囲の決定に関するスタッフの検討の方向性が紹介され、議論された。
IASB会議には理事13名が参加した(欠員の理事が1名)。本稿では、このうち、1. から6. までに関する議論の内容を紹介する。

1.  企業結合(第2フェーズ)

企業結合に関するIFRS第3号(企業結合)の改訂案は、既に2007年6月にボードメンバーの承認を得ている。しかし、このプロジェクトでは、米国財務会計基準審議会(FASB)と同一の最終基準案を用いて議論をしていたため、承認後にその内容をIFRSのスタイルに変換する作業が行われている。さらに、新たな試みとして、IASBが受領したコメントにどのように対応して最終基準を作成したかに関して記述する「フィードバック・ステートメント」を最終基準と同時に公表することとされたため、このための作業が行われている。これらの作業に時間がかかり、最終基準の公表が2008年1月となることがほぼ確実となってきたため、基準の導入に十分な準備期間を確保する観点から、適用開始日を2009年1月1日から7月1日に変更することがスタッフから提案され、これが承認された。

2. 財務諸表の表示

今回は、財務諸表の表示に関する残された問題として、1. キャッシュ・フロー計算書における営業セクション(事業カテゴリーの一部分)の作成方法(直接法と間接法のいずれを要求すべきか)、2. キャッシュ・フロー計算書と包括利益計算書との間の差異調整表の表示区分のコンバージェンスのための検討及び3. 小計及び合計の表示の仕方についての3つの論点が議論された。

(1)キャッシュ・フロー計算書における営業セグメントの作成方法

現行の米国会計基準及びIAS第7号(キャッシュ・フロー計算書)では、キャッシュ・フロー計算書の事業セクションの中で営業活動からのキャッシュ・フローを報告する際に、直接法による表示を推奨するものの、間接法による表示も認めている。この問題に対するFASBの意見は、直接法のみを要求すべきというものであるが、IASBの意見は、直接法による表示を推奨するものの、間接法による表示も認めるというものである。また、2007年9月に開催されたワーキンググループの会合では、作成者から直接法を用いることによって生じる費用に対する懸念が表明されたが、一方、利用者からは直接法を強制することに賛成する意見が表明されている。また、その際に、直接法に代え、包括利益計算書で示される収益及び費用、さらに棚卸資産及び営業債権債務の期中変動を用いてキャッシュ・フローの期中変動を示す間接的直接法(indirect-direct method)であれば、作成負担を軽減することができるという点についても議論された。このような状況を踏まえて、ディスカッション・ペーパーでこの問題に対する予備的見解をどのように表明するかが議論された。

議論の結果、ディスカッション・ペーパーでは、IASBは、営業セクションでは、直接法を用いてキャッシュ・フローに関する情報を表示することを理論的には選好することを示すとともに、作成負担を軽減する方法としての間接的直接法について説明することが暫定的に合意された。また、この問題に対するコメントを求めることも暫定的に合意された。

(2)差異調整表の表示区分

キャッシュ・フロー計算書と包括利益計算書との間の差異調整表において、差異をどのように区分して表示すべきかについてFASBとIASBとの間に考え方の相違があるため、今回、両者の相違の調整を図るための議論が行われた。
FASBは、差異調整表を、収益に影響しないキャッシュ・フロー項目と収益に影響を与える非キャッシュ項目に大きく分け、後者を更に、1. 契約上の発生項目(主としてタイミングの差異に起因する債権債務の変動)、2. その他の発生項目、システマティックな配分及びその他の非再測定項目(減価償却や貸倒引当金)、3. 反復性のある公正価値の変動及び4. 反復性のある公正価値の変動以外の再測定に分けて表示することを考えている。

一方、IASBは、1. 収益に影響しないキャッシュ・フロー項目、2. 評価調整(資産及び負債を当初認識後に公正価値を含む現在価値によって測定することによる変動)及び3. その他のすべての変動の3つに分けている。このように両者には、差異をどのように分けて表示するかに関して見解の相違がある。

議論の結果、IASBは、FASBとのコンバージェンスを図るため、最低限、差異を1. 収益に影響しないキャッシュ・フロー項目、2. 発生主義及びシステマティックな配分、3. 反復性のある評価変動及び4. 反復性のある評価変動以外の再測定に分けることに暫定的に合意した。また、FASBは、キャッシュ・フロー計算書と包括利益計算書との間の差異に含まれる「異常又は頻繁ではない事象又は取引(unusual or infrequent events or transactions)」を差異調整表上で明示することを決めていたが、IASBはこのような情報を差異調整表に含めることを選好しないことに暫定的に合意した。

(3)小計及び合計

小計及び合計をどのように表示するかについて議論が行われた。
議論の結果、次の点が暫定的に合意された。

(a)合計は、事業、財務、法人所得税及び資本といったカテゴリー及びそれより1つ下のセクション(例えば、営業、投資、財務資産、財務負債)については、必ず作成しなければならない。それ以外の小計及び合計については、そのような表示が企業の財政状態及びその変動の理解に適合する場合には企業の任意の選択により表示することができる。また、小計は、セクションの順序に従って作成し(セクションの順序に従わない小計の設定は認めない)、また、任意に表示される小計は、表示が要求されている小計より目立つように表示してはならない。

(b)区分表示を行う財政状態計算書では、資産及び負債を流動項目と長期項目に区分して表示しなければならない。

(c)財政状態計算書では、営業資産は営業負債と区分して表示しなければならない。これにより、財政状態計算書の営業セクションでは、営業資産から営業負債を控除する形で表示することとされているが、その際、営業資産の小計及び営業負債の小計を示した上で、これらの純額が表示されることになる。

(d) ディスカッション・ペーパーには包括利益計算書の様式の代替案として、短期的及び長期的代替案をそれぞれ2つずつ示すこととされている。これらにおける小計及び合計として、次のものを表示することが求められる。

  • すべての代替案において、総利益(gross profit)及び純包括利益(net comprehensive income)を示す。これに加えて、各代替案で次のような使いの小計が示される。
  • 代替案1 (短期的な包括利益計算書の様式で、各カテゴリーの中でその他包括利益の変動を示した上で、カテゴリー合計を表示する)では、各カテゴリーにおいて、「その他包括利益前利益」(例えば、その他包括利益前営業利益)及び「包括(営業、投資又は財務)利益」(例えば、包括営業利益)を小計として示す。さらに、法人所得税の前で、「税引前包括利益」を示す。
  • 代替案2(短期的な包括利益計算書の様式で、事業及び財務カテゴリーの後に、それらと同等なレベルとしてその他包括利益を独立して表示し、その後で、法人所得税を控除して、純包括利益を表示する)では、「その他包括利益前税引前利益」、「その他包括利益」及び「税引前包括利益」を小計として示す。
  • 代替案3(長期的な包括利益計算書の様式で、市場の変動による損益のうち核となる利益獲得活動に関連するものとそれ以外とを2つの欄に分けて表示するというもの)では、それぞれの欄で「税引前利益」を示し、さらに「他の市場関連変動前純利益」に「他の市場関連変動利益(税引後)」を加算して、「純包括利益」を示す。
  • 代替案4(長期的な包括利益計算書の様式で、各カテゴリーの中でその他包括利益の変動を示した上で、カテゴリー合計を表示するという点では、代替案1 と類似するが、その他包括利益のみの小計を示さず、さらに、リサイクリングを行わない点が異なる。)では、「税引前包括利益」を小計として示す。

(e) カテゴリー及びセクションは、財政状態計算書、包括利益計算書及びキャッシュ・フロー計算書で同じ順序で表示しなければならないが、その表示の順序を規定することはしない。例えば、カテゴリーの場合、事業、財務、廃止事業及び法人所得税といったものがあるが、これらの表示順序は、事業、廃止事業、そして財務と表示することもできる。

3. 収益認識

2007年10月にこの問題が1 年ぶりに議論されたが、今回は、そこで示された2つのモデル(測定モデルと配分モデル)のうち、測定モデルについて詳細な議論が行われた。なお、今回の議論は、教育的な意味合いの強いもので、モデルを理解することに重点が置かれていた。また、今回測定モデルに関するすべての議論を終了できなかったので、1 2月の会議でも引き続き議論が行われる予定である。

(1)これまでの経緯

本プロジェクトは、IASBとFASBの共同プロジェクトで、2002年6月から議論を続けてきている。その目的は、収益認識のための単一の首尾一貫した資産・負債モデルの開発である。そのようなモデルの下では、資産・負債の変動によって収益が認識されることになり、実現及び利益稼得過程(an earning process)の完成によって収益を認識するという考え方は採用されない。実現及び利益稼得過程に基づくモデルでは、業界又は業種が異なると利益稼得過程にも違いが生じることがあり、このため、同一の履行義務が業種の違いによって異なるタイミングで認識されたり、測定値が異なったりすることがあり得るため、このような問題を避けるため、資産・負債モデルが採用された。
販売契約の締結によって企業は履行義務(負債)を負うが、資産・負債モデルの下では、その履行義務の消滅(又は変動)によって収益が認識されることになる。言い換えると、このモデルでは、当期にどれだけの業績(performance)が達成されたかを直接測定するのではなく、認識すべき収益の金額は、当期中に契約によって生じた負債又は資産がどれだけ変動したかに基づいて測定される。資産・負債モデルの下では、企業が契約によって引き受ける履行義務は、「法的解放金額(legal layoff amount)」と「顧客対価額(customer consideration amount)」という2つの考え方で捉えることができる。前者を「測定モデル」と呼び、後者を「配分モデル」と呼んでいる。本プロジェクトでは、この2つの考え方を記述したディスカッション・ペーパーを公表してコメントを求め、最終的には、これら2つを元に収益認識のための首尾一貫した単一モデルの開発を目指している。

(2) 測定モデルの特徴

測定モデルの特徴として次の点が示された。

  • 測定モデルで認識される資産又は負債(以下、「特定資産」又は「特定負債」という。)は、強制力のある契約から直接生じ、残存している未履行の権利又は未履行の義務を表している。未履行の権利が未履行の義務を上回っている時には契約は資産となり、その逆の場合には、契約は負債となる。例えば、既に顧客から代金を前受けしている場合には、顧客に対する代金請求権はないので、売主の商品を引き渡さなければならない履行義務が特定負債として認識される。
  • 契約を測定するために、契約上の権利又は義務は、現在出口価値(current exit price)で測定される。当該測定は、当初認識時及びその後の測定においても用いられる。現在出口価値は、市場参加者が、契約で規定される権利及び義務の残余部分を取得する(又は引き受ける)ために支払うであろう(支払うことを要求される)価格と定義される。なお、現在出口価値を用いるのは、次の理由による。
    1. 当該測定は、契約で規定される権利及び義務の残余部分に関連する将来キャッシュ・フローを反映する。
    2. 当該測定は、契約で規定される義務の残余部分すべてに対する測定日現在でのマージンを含んでいる。
    3. 当該測定は、現時点のものである。
    4. 当該測定は、比較可能性を補強する。
  • 収益は、1. 契約によって生じる特定の資産又は負債の認識時及び2. 特定資産の増加及び特定負債の減少によって生じる(どれくらいの履行が当期に行われたかという評価によって収益を認識するのではなく、未履行の権利又は義務の変動に基づいて収益を認識する)。
  • したがって、収益は、次の2つの場合に認識される。
    1. 契約の取得時(契約当初)に、特定資産が特定負債を上回る場合(顧客に対する請求(対価)額が履行義務の価値を上回る場合)
    2. 契約の取得後、契約に基づく履行義務を物品サービスの提供により実行する場合(履行義務を履行した場合)
  • 収益として認識される金額は、契約に基づく特定資産の出口価値の増加、又は特定負債の出口価値の減少として計算される。このため、例えば、履行義務以外の要素(例えば、商品価格の上昇)によって履行義務が変動した場合には、特定負債が増加し、それが収益に反映されることとなる。

今回は、測定モデルの概要を理解するための議論が中心であったが、今後、次の点について更に検討する必要があることが認識された。

  • 測定モデルが、利用者が将来キャッシュ・フローを予測するためにより役立つモデルであるかどうかを評価する必要がある。
  • 契約が解約可能な場合に、いつの時点で企業が契約の当事者となるかを明確にする必要がある。
  • 契約当初に収益が認識されるかもしれないことに対する懸念は、契約資産の当初測定時に誤謬が生じる可能性に関する懸念だけであるかどうかを明確にする必要がある。

4. 公正価値測定

本プロジェクトの目的は次の2点である(2007年1 0月に確認された内容)。

  1. 現在出口価値に基づく測定ベースに関する原則及び測定ガイダンスを開発すること。
  2. IFRSの各基準の測定ベースが出口価値であるかどうかを評価するために、基準ごとに求められている又は許容されている公正価値測定の内容の検討を完成させる。そして、もし測定ベースが出口価値でないと判断された場合には、どのような測定ベースが要求されているのか(例えば入口価値)、また、それに対して測定ガイダンスを開発する必要があるのかを個別に検討する。

今回は、今後の分析に用いる現在出口価値及び現在入口価値の定義に関する議論が行われた。スタッフからは、次のような定義が提案された。

資産 現在入口価値 測定日における市場参加者間の通常の取引で資産を購入するために支払うであろう価格
現在出口価値 測定日における市場参加者間の通常の取引で資産を売却して得られるであろう価格
負債 現在入口価値 定日における市場参加者間の通常の取引で負債を引き受けることで受け取るであろう価格
現在出口価値 移転価格:
測定日における市場参加者間の通常の取引で負債を移転するために支払うであろう価格

決済価格:
測定日における市場参加者間の通常の取引で負債を決済するために支払うであろう価格

議論の結果、これらの定義が暫定的に合意された。なお、今後は、これらを用いて、それぞれのIFRSが要求又は許容している公正価値による測定が、現在出口価値又は現在入口価値のいずれを意図しているのかを評価していくことになる。その評価の過程で上記の定義が変更される可能性は残されている。

5. 概念フレームワーク

今回は、フェーズC(測定)に関して、1. マイルストーンⅠ(測定属性の候補)のレビュー、2. 今後の作業計画の見直し案の検討及び3. 測定属性を評価し選定するための意思決定ツールの開発の3点が議論された。

(1)マイルストーンⅠのレビュー

これまでのマイルストーンⅠの議論において、9つの測定属性候補が識別されている。今回は、これらの概念を資産及び負債のそれぞれに分けて定義した一覧表(掲載は省略)がスタッフから提示され、これについて議論が行われた。示された一覧表では、定義とともにその例も示され、また、これらと類似の用語も紹介されている。今回は、この一覧表における定義や例示などについて議論が行われ、今後この議論を踏まえて、いくつかについてスタッフが内容を更新する予定である。

【測定属性の候補】

過去 現在 将来
過去入口価値 現在入口価値 将来入口価値
過去出口価値 現在出口価値 将来出口価値
修正過去金額 現在均衡価格
使用価値

(2)今後の作業計画の見直し

フェーズCでは、マイルストーンⅠからⅢまでの3つのステージに分けて、測定の問題を扱うこととしている。当初案では、1. マイルストーンⅠにおいて、測定属性の候補を絞り込み、それらの定義と特徴を明確にすることが予定され、2. マイルストーンⅡでは、概念フレームワークの質的特徴を用いた測定属性候補の評価を行うこと、そして、3. マイルストーンⅢでは、測定属性候補の個別の評価を踏まえて、測定属性間の比較を行い、それらのランク付けを明確にすることが予定されていた。また、マイルストーンⅢでは、1つの測定属性をすべての財務諸表目的で用いるかどうか、目的によって異なる測定属性を用いるべきか(例えば、当初測定とその後の測定や資産と負債など)などが議論される予定であった。

スタッフから今回提案された見直し案では、マイルストーンⅡにおいて、単に測定属性候補の評価を行うだけでなく、測定属性を異なる文脈(例えば、概念レベルの議論か、それとも基準レベルの議論か)の中で評価しランク付けするための意思決定ツールを開発することとし、当該意思決定ツールを2008年には完成させることが提案されている。また、意思決定ツールには、測定属性間の比較を行い、それらのランク付けを行うプロセスも含まれるため、マイルストーンⅢで予定されていた検討が一部前倒しされることになる。さらに、マイルストーンⅢに関連しては、1つの測定属性をすべての財務諸表目的で用いるかどうかといった問題は、フェーズE(表示及び開示(財務報告の境界を含む))で取り扱うことが提案され、結果として、マイルストーンⅢでは、目的によって異なる測定属性を用いるべきか(例えば、当初測定とその後の測定や資産と負債など)が議論される提案となっている。

議論の結果、この提案が了承された。

(3)意思決定ツールの開発

今回は、測定属性間の比較を行い、それらのランク付けを行う意思決定ツールが提示され、議論が行われた。スタッフからは、1. 意思決定ツールの目的は、企業に対する資本提供者の意思決定に役立つ情報を提供すること(一般目的外部財務報告と同じ目的)であることが示され、さらに、2. 9つの測定属性のうち4つ(過去出口価値、現在均衡価格、将来入口価値及び将来出口価値)を当面の検討対象から除外した上で(これらはあまり現実に使用されていない測定属性と判断された)、3. 意思決定に用いる判断規準を示し、さらに、4. それらがどのような文脈で用いられるためのものかといった、意思決定ツールの考え方の流れが説明された。

意思決定規準としては、1. 適合性、2. 忠実な表現、3. 立証可能性、4. 比較可能性、5. 理解可能性及び6. 適時性といった概念フレームワークの質的特性が用いられている。また、意思決定ツールでは、測定属性がどのような文脈で利用されるために評価されるかをも考慮しなければならない。すなわち、1. 概念的に理想的な測定属性を識別する文脈、2. すべての財務諸表に理想的な測定属性を適用することは不可能であり、財務諸表によって理想的な測定属性の代理となる測定属性を指定するという文脈及び3. 実務的な基準レベルでの選択という文脈という3つの文脈で利用されることが想定されている。

意思決定ツールでは、複数の測定属性候補の中からある文脈(例えば、実務的な基準の作成)で測定属性を選択する必要があるときには、複数の測定属性候補と意思決定規準を組み合わせたマトリックスを作り、それらを総合的に判断することとしている。今回は、スタッフから考え方の概要が示されただけであり、2008年の早い時期に、詳しい検討が行われる予定である。

6. 保険会計

2007年5月に公表した保険会計に関するディスカッション・ペーパー(保険契約に関する予備的見解)では、保険契約の一方の当事者である保険会社の会計処理に焦点を当てているが、保険契約者の会計処理には言及していない。しかし、ディスカッション・ペーパーでは、本プロジェクトでは、保険契約者の会計処理も取り扱うことが明記されている。それにもかかわらず保険契約者の会計処理が含まれていないのは、この問題の重要度が他の問題に比べてそれほど高くないと考えられたためである。

今回は、保険契約者の会計処理に関する問題をどのように取り扱うかが議論された。FASBが2007年8月に保険契約に関してコメントを求めるペーパーを公表したこともあり、今後これらに対する反応がさらに保険契約者の会計処理に関する議論に手掛かりを提供してくれるものと期待される。さらに、今後議論する保険会社に関する議論が保険契約者の会計処理にも貢献するものと期待される。このような状況を勘案して、今回、保険契約者の会計処理に関する問題は、ディスカッション・ペーパーを公表することなく、公開草案の作成過程で議論していくことが暫定的に合意された。

以上
(国際会計基準審議会理事 山田辰己)

*本会議報告は、会議に出席された国際会計基準審議会理事である山田辰己氏より、議論の概要を入手し、掲載したものである。