ASBJ 企業会計基準委員会

第53回会議

IASB(国際会計基準審議会)の第53回会議が、2006年1月25日、26日の2日間にわたりロンドンのIASB本部で開催された。今回の会議では、1. 企業結合第2フェーズ、2. 業績報告、3. 米国会計基準との短期統合化(借入費用及び1株当たり利益)、4. 中小規模企業(SME)の会計基準、5. 金融商品及び保険ワーキンググループ会議報告および6. 国際財務報告基準解釈指針委員会(IFRIC)の活動状況の検討が行われた。

1.企業結合

  • 第2フェーズ公開草案は、企業結合に関連するものと非支配持分に関連するものに分かれるが、企業結合に関連するものには282通、非支配持分に関連するものには、FASBで49通、IASBで95通のコメントを受領。
  • 企業結合に関連する公開草案の9原則を議論。
    1. 原則1:企業結合は、取得企業が1つ又は複数の事業の支配を獲得する取引又はその他の事象である。
    2. 原則2:取得日は、取得企業が被取得企業の支配を獲得する日である。
    3. 原則3:取得企業は、それぞれの企業結合において識別されなければならない。
    4. 原則4:取得企業は、取得日に全体としての被取得企業の公正価値を測定し、かつ認識しなければならない。
    5. 原則5:譲渡した対価の取得日の公正価値は、譲渡した対価が最善の証拠でないことが証明できる場合を除いて、被取得企業の公正価値を測定するために用いられなければならない。
    6. 原則6:取得企業は、取得日時点での被取得企業の識別可能な資産及び負債の公正価値を認識することによって、被取得企業の公正価値を測定し、かつ認識しなければならない。
    7. 原則7:資産及び負債の中には、実務的理由及び初日以降の複雑性を避けるために、公正価値ではなく、その他の基準に従って測定し、かつ認識されなければならないものがある。
    8. 原則8:被取得企業との実際の交換部分だけが企業結合の一部分として会計処理されなければならない。
    9. 原則9:取得企業は、被取得企業と取得した資産及び引き受けた負債の取得日における公正価値を識別し、測定するために必要な情報を入手するために合理的な期間が認められる(測定期間)。
  • コメントに基づいて分析された一覧表から今後議論を行なうべき項目の選定について議論。
  • 今後の検討予定についても議論(2006年中に各論点の議論を行なう)。

2.業績報告

  • セグメントAの公開草案に向けた最後の論点を議論。
  • 1組の財務諸表には、期首の貸借対照表を含めることを確認。

3.米国会計基準との短期統合化(借入費用及び1株当たり利益)

  • IAS第23号を改訂し、適格資産に係る借入費用は資産化することは2005年11月に決定済み。
  • 経過措置について議論し、将来に向かって適用することに暫定合意。ただし、発効日前の特定日以降の前適格資産に対して遡及的に適用することを容認。
  • 1株当たり利益の計算において、オプションやワラントがある場合における希薄化後1株当たり利益の計算で用いられる「金庫株方式(treasury stock method)」に関して、IAS第33号の改訂は2005年11月に合意済み。すなわち、オプションやワラントの行使によって受領される金額(assumed proceeds)の定義を変更し、権利行使や決済によって消滅する負債簿価を「受領される金額」に含めることに合意済み。
  • この取扱いを転換金融商品にも拡大することに暫定合意(’if-converted’ methodの適用廃止)。

4.中小規模企業(SME)の会計基準

  • 公開草案ドラフトが提示され、その方向性や体系について議論。
  • ドラフトでは、冒頭にSME概念フレームワークを置き、さらに、主要原則をその中で掲げており、それに続いて、貸借対照表及び損益計算書の勘定科目配列に従って、規定が示されている。
  • SME概念フレームワーク及びその中の主要原則(SME基準に規定がない場合には主要原則に戻って判断する)という体系の是非について議論。
  • 勘定科目ごとの基準の内容は2006年2月に議論する予定。

5.IFRICの活動状況

  • IFRIC活動状況の報告。
  • IFRIC「組込みデリバティブの再評価(Reassessment of Embedded Derivatives)」を承認。(組込みデリバティブをホスト契約から分離するかどうかの判断は、契約当初及び商業的実態がある契約変更が行われた時点のみに行なう)

以上
(国際会計基準審議会理事 山田辰己)

本会議の報告は、会議に出席された国際会計基準審議会理事である山田辰己氏より議論の概要を入手し掲載したものである。