©公益財団法人 財務会計基準機構最終更新日:2026/03/04
実務対応報告第6号デット・エクイティ・スワップの実行時における債権者側の会計処理に関する実務上の取扱い
- 金融商品に関する会計処理は、平成11年1月22日に企業会計審議会から公表された「金融商品に係る会計基準」(平成18年8月に企業会計基準第10号「金融商品に関する会計基準」(以下「金融商品会計基準」という。)として改正されている。)及び平成12年1月31日に日本公認会計士協会から公表された「金融商品会計に関する実務指針」に基づいて行われている。
- 最近、会社再建の一手法として行われているデット・エクイティ・スワップの実行は、債権者側においては金融資産に係る取引であるため、その会計処理も金融商品会計基準及び「金融商品会計に関する実務指針」に基づいて行われることとなるが、当該会計処理に関する質問が多いことから、本実務対応報告で実務上の取扱いを下記のように確認することとした。
- 本実務対応報告は、第21回企業会計基準委員会に出席した委員11名全員の賛成により承認された。

1. 本実務対応報告の対象とするデット・エクイティ・スワップ(債務の株式化)
- デット・エクイティ・スワップは、債権者と債務者の事後の合意に基づき、債権者側から見て債権を株式とする取引であり、債務者が財務的に困難な場合(実行時に、貸倒懸念債権、破産更生債権等に該当する場合に限らない。)に、債権者の合意を得た再建計画等の一環として行われる場合が多い。こうした中、本実務対応報告は、債務者が財務的に困難な場合に行われるデット・エクイティ・スワップを対象とする。
- また、我が国においてデット・エクイティ・スワップは、通常、再建計画等に基づき当該債権者がその債権を債務者に現物出資することによって行われる。したがって、本実務対応報告も現物出資による場合を想定している。ただし、債務者が第三者割当増資を行い、債権者がこれを引き受け、払い込んだ現金により債権を回収することによっても同じ効果が得られるため、金銭出資(第三者割当増資の引受け)と債権の回収が一体と考えられる場合も、現物出資による場合と同じ会計処理をすべきものと考えられる。ここで、一体と考えられる場合とは、債権の弁済を受けることを目的として第三者割当増資に応じるなど、実質的に金銭出資と債権の回収が一体性を有し、現物出資によるデット・エクイティ・スワップと同様の効果をもたらす場合が該当するものと考えられる。なお、金銭出資と債権回収の実質的な一体性については、当該金銭出資又は債権の回収の目的の他、金銭出資による払込と債権の回収の間の期間などを考慮して判断する必要がある。金銭出資による払込の直前直後に債権回収を行った場合には、一体ではないことが明らかに示されない限り、金銭出資と債権回収は一体とみなされる。
- なお、デット・エクイティ・スワップを行うにあたり、債権者が一定額の債権放棄を行う場合もある。また、特定の債権者を対象に行う場合もあるが、債権者が一律に対象となる場合もある。
2. デット・エクイティ・スワップ実行時における債権者側の会計処理
- (1) 考え方
- 債権者がその債権を債務者に現物出資した場合、債権と債務が同一の債務者に帰属し当該債権は混同により消滅する(民法第520条)ため、支配が他に移転したかどうかを検討するまでもなく金融資産の消滅の認識要件を満たすものと考えられる(金融商品会計基準第8項及び第9項)。したがって、債権者は当該債権の消滅を認識するとともに、消滅した債権の帳簿価額とその対価としての受取額との差額を、当期の損益として処理することとなる(金融商品会計基準第11項)。
- なお、デット・エクイティ・スワップ実行時における債権者側の会計処理に関するこの考え方は、債務者側の会計処理にかかわらず適用されることに留意する。
- (2) 取得した株式の取扱い
- デット・エクイティ・スワップにより、債権者が取得する株式は、通常、債権とは異種の資産と考えられることから、新たな資産と考えられる(移管指針第9号「金融商品会計に関する実務指針」(以下「金融商品実務指針」という。)第36項)。この場合には、債権者が取得する株式の取得時の時価が対価としての受取額(譲渡金額)となり、消滅した債権の帳簿価額と取得した株式の時価の差額を当期の損益として処理し、当該株式は時価で計上されることとなる(金融商品会計基準第11項から第13項、金融商品実務指針第29項及び第37項)。
- ここでいう消滅した債権の帳簿価額は、取得原価又は償却原価から貸倒引当金を控除した後の金額をいう(金融商品実務指針第57項(4)参照)。なお、控除する貸倒引当金には、貸倒懸念債権、破産更生債権等に対して個別に引当てたもののみならず、例えば、銀行等金融機関における要管理先に対する債権に係る貸倒引当金など総括的な引当金のうち当該債権に対応する部分も含まれる。また、デット・エクイティ・スワップを行うにあたり、債権者が一定額の債権放棄を行う場合には、当該債権放棄後の帳簿価額をいう。
- (3) 取得した株式の取得時の時価
- 取得した株式の取得時の時価は、算定日において市場参加者間で秩序ある取引が行われると想定した場合の、当該取引における資産の売却によって受け取る価格とする(金融商品会計基準第6項)。
- 当該時価を算定するにあたっては、市場参加者が算定日において当該資産又は負債の時価を算定する際に考慮する当該資産又は負債の特性を考慮する(企業会計基準適用指針第31号「時価の算定に関する会計基準の適用指針」第4項(1))ために、債権放棄額や増資額などの金融支援額の十分性(例えば、実質的な債務超過を回避したと考えられるかどうか。)、債務者の再建計画等の実行可能性(例えば、近い将来に完了することが予想されるかどうか。)、株式の条件(例えば、優先株式の場合は配当や償還の条件、普通株式への転換の条件など)等、市場参加者が考慮する要因を適切に考慮したうえで、時価を算定する(注1)。この場合、本実務対応報告が対象とするデット・エクイティ・スワップについては、債務者が財務的に困難な場合に債務者の再建の一手法として行われており、債権者が取得する債務者の発行した株式の時価は、消滅した債権に関する直前の決算期末(第二種中間財務諸表を作成する場合の中間期末を含む)の帳簿価額(注2)を上回らないと想定される。すなわち、実行時点において利益が発生するのは、極めて例外的な状況に限られることとなる。
- また、市場価格のない株式については、取得した株式の取得時の時価を直接的に算定する方法に代えて、適切に算定された実行時の債権の時価を用いて、当該株式の時価を算定することも考えられる。ただし、この場合にも、当該時価は、消滅した債権に関する直前の決算期末(第二種中間財務諸表を作成する場合の中間期末を含む)の帳簿価額(注2)を上回らないと想定され、実行時点では、利益が発生しないこととなる。
- なお、債権切捨てと実質的に同様の効果となる場合(例えば、債権放棄の代わりに債権者がデット・エクイティ・スワップに応じる場合)には、取得する債務者の発行した株式の時価はゼロに近くなると考えられる。
- (注1) この時価の算定は、市場価格のない株式等の減損処理における発行会社の財政状態の悪化の判断や回復可能性の判定(金融商品実務指針第92項参照(これに係る移管指針第12号「金融商品会計に関するQ&A」Q33及びQ34も参照のこと。))とは異なることに留意する必要がある。
- (注2) 債権放棄後、債権の一部についてデット・エクイティ・スワップが実行された場合で、残った債権の回収可能性が直前の決算期末(第二種中間財務諸表を作成する場合の中間期末を含む)に比べ大きく改善されないようなケースでは、単に債権放棄後の帳簿価額をさすのではなく、消滅した当該債権の一部分の取得原価又は償却原価に、直前の決算期末(第二種中間財務諸表を作成する場合の中間期末を含む)の当該債権全体の帳簿価額(帳簿価額については、「(2)取得した株式の取扱い」を参照のこと。)を取得原価又は償却原価で除した比率を乗じた金額として考えることが適当である。
3. 適用時期
- 本実務対応報告は、公表日以降に生じた取引から適用する。ただし、公表日前に生じた取引であっても、公表日を含む事業年度(当該事業年度を構成する中間会計期間を含む)に生じた取引について、本実務対応報告を適用することが望ましい。なお、公表日を含む事業年度開始後、公表日前に生じた取引について、本実務対応報告で確認された会計処理と異なる会計処理を行っていた場合で、重要性があるものについては、その内容を注記する。
- 以 上
注
- 1 この他、平成12年9月14日に日本公認会計士協会 会計制度委員会から公表された「金融商品会計に関するQ&A」がある。