©公益財団法人 財務会計基準機構最終更新日:2026/03/04
実務対応報告第33号リスク分担型企業年金の会計処理等に関する実務上の取扱い
目 的
- 1. 平成27年6月30日に閣議決定された「『日本再興戦略』改訂2015」に基づき実施する施策として、新たな確定給付企業年金の仕組みが導入されている。
- 当委員会では、当該企業年金について、これまで公表されている企業会計基準第26号「退職給付に関する会計基準」(以下「退職給付会計基準」という。)等における会計処理及び開示の取扱いを踏まえ、必要と考えられる会計処理及び開示を明らかにするために、本実務対応報告を公表する。
範 囲
- 2. 本実務対応報告は、確定給付企業年金法(平成13年法律第50号)に基づいて実施される企業年金のうち、確定給付企業年金法施行規則(平成14年厚生労働省令第22号)(以下「施行規則」という。)第1条第3号に規定するリスク分担型企業年金、すなわち、給付額の算定に関して、施行規則第25条の2に規定される調整率(積立金の額、掛金額の予想額の現価、通常予測給付額の現価及び財政悪化リスク相当額(通常の予測を超えて財政の安定が損なわれる危険に対応する額。以下同じ。)に応じて定まる数値)が規約に定められる企業年金の会計処理及び開示に適用する。
会計処理
会計上の退職給付制度の分類
- 3. リスク分担型企業年金のうち、企業の拠出義務が、給付に充当する各期の掛金として、規約に定められた標準掛金相当額(給付に要する費用に充てるため、事業主が将来にわたって平準的に拠出する掛金に相当する額。以下同じ。)、特別掛金相当額(年金財政計算における過去勤務債務の額に基づき計算される掛金に相当する額。以下同じ。)及びリスク対応掛金相当額(財政悪化リスク相当額に対応するために拠出する掛金に相当する額。以下同じ。)の拠出に限定され、企業が当該掛金相当額の他に拠出義務を実質的に負っていないものは、退職給付会計基準第4項に定める確定拠出制度に分類する(注)。
- (注) リスク分担型企業年金では、標準掛金額に相当する額、特別掛金額に相当する額及びリスク対応掛金額に相当する額を合算した額が掛金として規約に定められるため、本実務対応報告では、規約に定められる掛金の内訳として「標準掛金相当額」、「特別掛金相当額」及び「リスク対応掛金相当額」という用語を用いている。
- 4. 前項以外のリスク分担型企業年金は、退職給付会計基準第5項に定める確定給付制度に分類する。
- 5. 退職給付会計基準第4項に定める確定拠出制度に分類されるリスク分担型企業年金については、直近の分類に影響を及ぼす事象が新たに生じた場合、本実務対応報告第3項及び第4項に従い、会計上の退職給付制度の分類を再判定する。
退職給付会計基準第4項に定める確定拠出制度に分類されるリスク分担型企業年金の会計処理
- 6. 退職給付会計基準では、退職給付会計基準第4項に定める確定拠出制度については、当該制度に基づく要拠出額をもって費用処理するとされている(退職給付会計基準第31項)。
- 7. 退職給付会計基準第4項に定める確定拠出制度に分類されるリスク分担型企業年金については、規約に基づきあらかじめ定められた各期の掛金の金額(本実務対応報告第10項(3)に基づき未払金等として計上した特別掛金相当額を除く。)を、各期において費用として処理する。
退職給付制度間の移行に関する取扱い
退職給付会計基準第5項に定める確定給付制度に分類される退職給付制度から退職給付会計基準第4項に定める確定拠出制度に分類されるリスク分担型企業年金への移行に関する取扱い
- 8. 企業会計基準適用指針第1号「退職給付制度間の移行等に関する会計処理」(以下「制度移行適用指針」という。)では、退職給付会計基準第4項に定める確定拠出制度に分類される退職給付制度への資産の移換は、退職給付制度の終了に該当するとされている(制度移行適用指針第4項(3))。
- 9. 退職給付会計基準第5項に定める確定給付制度に分類される退職給付制度から退職給付会計基準第4項に定める確定拠出制度に分類されるリスク分担型企業年金に移行する場合、退職給付制度の終了に該当する。
- 10. この場合、次の会計処理を行う([設例1]及び[設例2])。
- (1) リスク分担型企業年金への移行の時点で、移行した部分に係る退職給付債務と、その減少分相当額に係るリスク分担型企業年金に移行した資産の額との差額を、損益として認識する。移行した部分に係る退職給付債務は、移行前の計算基礎に基づいて数理計算した退職給付債務と、移行後の計算基礎に基づいて数理計算した退職給付債務との差額として算定する。
- (2) 移行した部分に係る未認識過去勤務費用及び未認識数理計算上の差異は、損益として認識する。移行した部分に係る金額は、移行した時点における退職給付債務の比率その他合理的な方法により算定する。
- (3) 上記(1)及び(2)で認識される損益の算定において、リスク分担型企業年金への移行の時点で規約に定める各期の掛金に特別掛金相当額が含まれる場合、当該特別掛金相当額の総額を未払金等として計上する。
- (4) 上記(1)から(3)で認識される損益は、原則として、特別損益に純額で表示する。
開 示
退職給付会計基準第4項に定める確定拠出制度に分類されるリスク分担型企業年金の注記事項
- 11. 退職給付会計基準では、退職給付会計基準第4項に定める確定拠出制度については、次の事項を注記するとされており、また、連結財務諸表において注記している場合には、個別財務諸表において記載することを要しないとされている(退職給付会計基準第32-2項)。
- (1) 企業の採用する確定拠出制度の概要
- (2) 確定拠出制度に係る退職給付費用の額
- (3) その他の事項
- 12. 退職給付会計基準第4項に定める確定拠出制度に分類されるリスク分担型企業年金については、退職給付会計基準第32-2項に定められている注記事項として、次の事項を記載する。
- (1) 企業の採用するリスク分担型企業年金の概要
退職給付会計基準第4項に定める確定拠出制度に分類されるリスク分担型企業年金の概要として、例えば、次の内容を記載する。 - ① 標準掛金相当額の他に、リスク対応掛金相当額があらかじめ規約に定められること
- ② 毎事業年度におけるリスク分担型企業年金の財政状況に応じて給付額が増減し、年金に関する財政の均衡が図られること
- (2) 退職給付会計基準第4項に定める確定拠出制度に分類されるリスク分担型企業年金に係る退職給付費用の額
退職給付会計基準第4項に定める確定拠出制度に分類されるリスク分担型企業年金に係る退職給付費用の額については、本実務対応報告第7項に基づき費用処理した額を確定拠出制度に係る退職給付費用の額として注記する。 - (3) 翌期以降に拠出することが要求されるリスク対応掛金相当額及び当該リスク対応掛金相当額の拠出に関する残存年数
規約に定められる所定の方法によりあらかじめ定められた、翌期以降に拠出することが要求されるリスク対応掛金相当額及び当該リスク対応掛金相当額の拠出に関する残存年数を注記する。
適用時期
- 13. 本実務対応報告は、平成29年1月1日以後適用する。
議 決
- 14. 本実務対応報告は、第350回企業会計基準委員会に出席した委員13名全員の賛成により承認された。
結論の背景
経 緯
- 15. 平成27年11月に開催された第324回企業会計基準委員会において、公益財団法人財務会計基準機構内に設けられている基準諮問会議より、リスク分担型企業年金に係る会計上の取扱いについて検討を求める提言がなされ、当委員会では、同年12月より、これまで公表されている退職給付会計基準等における会計処理及び開示の取扱いを踏まえ、必要と考えられる会計処理及び開示を明らかにするため、リスク分担型企業年金の会計処理及び開示に関する検討を行うこととなった。
- 本実務対応報告は、平成28年6月に公表した実務対応報告公開草案第47号「リスク分担型企業年金の会計処理等に関する実務上の取扱い(案)」に対して寄せられた意見を踏まえて検討を行い、公開草案の内容を一部修正した上で公表するに至ったものである。
範 囲
- 16. 本実務対応報告が取り扱うリスク分担型企業年金は、法令上は確定給付企業年金法に基づいて実施するものであり、主な特徴は、次のとおりである。
- (1) 標準掛金額(給付に要する費用に充てるため、事業主が将来にわたって平準的に拠出する掛金)は、その算定基礎となる率(予定利率、予定死亡率、予定脱退率等)に基づき計算される掛金の額である。特別掛金額は、年金財政計算における過去勤務債務の額に基づき計算される掛金の額である。リスク対応掛金額は、財政悪化リスク相当額に対応するために拠出する掛金の額である。
- (2) 財政悪化リスク相当額は、事業主が拠出するリスク対応掛金額及び毎事業年度における財政状況に応じた加入者等への給付の調整額によって分担され、各々の範囲は労使合意によりあらかじめ定められる。
- (3) 各期のリスク対応掛金額は、次のいずれかの方法で計算される。なお、いずれの方法においても、リスク対応掛金額の各期における拠出額又は拠出額の算定に用いる一定の割合があらかじめ規約に定められる。
- ① 5年以上20年以内の範囲内においてあらかじめ規約で定めた期間(以下「予定拠出期間」という。)で均等に拠出する方法。拠出開始後5年を経過するまでの間に定期的かつ引上げ額が経年的に大きくならない方法で、段階的に拠出額を引き上げて、それ以降の拠出額を均等とすることも認められる。
- ② 下限リスク対応掛金額(上記①の方法で拠出する金額)以上、上限リスク対応掛金額(予定拠出期間ごとに定められた最短期間で拠出する場合の金額)以下の範囲内で拠出する方法
- ③ 予定拠出期間において、リスク対応掛金額の未拠出額に15%以上50%以下の範囲内において規約で定めた一定の割合を乗じた金額を拠出する方法
- (4) リスク分担型企業年金における各期の掛金額として、リスク分担型企業年金を導入するときの財政計算において、標準掛金額に相当する額、特別掛金額に相当する額及び上記(3)①から③のいずれかの方法で算定されたリスク対応掛金額に相当する額を合算した額が規約に定められる。
- (5) 財政計算時(少なくとも5年ごとに行われる。)に財政悪化リスク相当額、給付現価及び掛金収入現価は再計算されるが、新たな労使合意に基づく規約の改訂がない限りは、当初に規約に定められた掛金は見直されない。
- (6) リスク分担型企業年金における受給者への給付額は、既存の確定給付企業年金と同様に加入者期間又は当該加入者期間における給与の額等に基づいて算定された金額に、財政状況に応じた調整率を乗じて算出される。例えば、積立金と掛金収入現価の合計が給付現価を下回る場合は、一を下回る調整率を乗じることで給付額が減額調整される。当該調整率は、財政計算時及び毎事業年度の財政決算時に見直しが行われる。
リスク分担型企業年金は、毎事業年度における財政状況に応じて定まる調整率による調整を通じて、自動的に給付額が増減して財政の均衡が図られるように制度設計されている。
会計処理
会計上の退職給付制度の分類
- 17. 退職給付会計基準では、確定拠出制度を「一定の掛金を外部に積み立て、事業主である企業が、当該掛金以外に退職給付に係る追加的な拠出義務を負わない退職給付制度」と定義し(退職給付会計基準第4項)、確定給付制度を「確定拠出制度以外の退職給付制度」と定義している(退職給付会計基準第5項)。これらの定義の中で、ある退職給付制度を確定拠出制度と確定給付制度のいずれに分類するかは、(1)事業主である企業が一定の掛金以外に退職給付に係る追加的な拠出義務を負うか否か及び(2)一定の掛金を外部に積み立てているか否かが判断基準になる。
- 18. ここで、前項で示した「(1)事業主である企業が一定の掛金以外に退職給付に係る追加的な拠出義務を負うか否か」に関して、リスク分担型企業年金は、その特徴(第16項(6)参照)にみられるように、毎事業年度における財政状況に応じて、自動的に給付額が増減して財政の均衡が図られることによって、企業に追加の掛金拠出が要求されないことが想定されているため、基本的に、企業は追加的な拠出義務を負っていないと考えられる。
- この点、例えば、実際に発生することは稀と想定されるが、ある事業年度において積立金の額が零となることが見込まれる場合に、当該事業年度中における給付に充てるために必要な掛金(施行規則第64条の規定に基づき拠出される掛金で、実務上、特例掛金と称されることがある。)の拠出に関する事項を規約にあらかじめ定め、規約に定められた標準掛金相当額、特別掛金相当額及びリスク対応掛金相当額に追加して当該掛金を拠出することがあり得ると考えられる。
- このような場合、企業は、規約に定められた標準掛金相当額、特別掛金相当額及びリスク対応掛金相当額の他に拠出義務を実質的に負っているか否かを判断することが求められるが、将来拠出する他の掛金を減額することで、掛金の現価相当額の総額が変わらないように拠出する旨を規約にあらかじめ定める場合を除いては、企業は追加的な拠出義務を実質的に負っていると考えられる。
- 19. また、第17項で示した「(2)一定の掛金を外部に積み立てているか否か」に関して、リスク分担型企業年金は、その特徴(第16項(3)参照)にみられるように、一定の拠出方法に基づく各期のリスク対応掛金相当額等が当該制度の導入時にあらかじめ規約に定められるため、一定の掛金を外部に積み立てているものと考えられる。
- 20. これらのことから、リスク分担型企業年金のうち、企業の拠出義務が、給付に充当する各期の掛金として、規約に定められた標準掛金相当額、特別掛金相当額及びリスク対応掛金相当額の拠出に限定され、企業が当該掛金相当額の他に拠出義務を実質的に負っていないものは、退職給付会計基準第4項に定める確定拠出制度に分類することとし(第3項参照)、それ以外のリスク分担型企業年金は、退職給付会計基準第5項に定める確定給付制度に分類することとした(第4項参照)。なお、リスク分担型企業年金の実施に要する事務費を負担するための掛金が規約に定められる場合があるため、拠出義務を判断する対象について、給付に充当する各期の掛金の拠出義務に限定している。
- また、企業が当該掛金相当額の他に拠出義務を実質的に負っているか否かの判断にあたって、リスク分担型企業年金における給付額の減額調整に対応して、企業がリスク分担型企業年金以外の退職給付制度における給付額を増額する義務を負う場合、企業に追加的な負担が求められるため、当該給付額を増額する義務を考慮する必要がある。
- なお、審議の過程では、企業が規約に定められた一定の掛金相当額の他に拠出義務を実質的に負っているか否かを判断する基準を示すべきであるとの意見が聞かれたが、当該判断には個々の企業における事実関係に即した判断が求められるため、本実務対応報告で取扱いを示した場合を除いて、具体的な判断基準を示していない。
- 21. 退職給付会計基準第5項に定める確定給付制度に分類されるリスク分担型企業年金の会計処理及び開示に関する取扱いは、退職給付会計基準等に従うことに特段の論点はないため、本実務対応報告において、当該取扱いを示していない。
- 22. 退職給付会計基準第4項に定める確定拠出制度に分類されるリスク分担型企業年金については、直近の分類に影響を及ぼす事象が新たに生じた場合(例えば、新たな労使合意に基づく規約の改訂が行われた場合)、本実務対応報告第3項の要件を満たさなくなる可能性があるため、会計上の退職給付制度の分類を再判定することとした(第5項参照)。当該分類の再判定においては、個々の企業における事実関係に即して、直近の分類に影響を及ぼす事象が新たに生じたか否かを判断することが求められる。
- なお、退職給付会計基準第4項に定める確定拠出制度に分類されるリスク分担型企業年金が、分類の再判定の結果、退職給付会計基準第5項に定める確定給付制度に分類されることとなった場合の会計処理が論点になる。この点、リスク分担型企業年金を導入している企業が本実務対応報告の公表時には存在しない中、このような場合が実際にどの程度生じるか不明であることや、本論点に係る会計上の取扱いを示すためには、退職給付会計基準における会計処理全般の検討に波及する可能性があることから、基準諮問会議からの提言において緊急性の高い対応が要請されていたことも踏まえ、当該取扱いについては、今後の運用状況等も勘案し、必要に応じて検討することとした。
退職給付会計基準第4項に定める確定拠出制度に分類されるリスク分担型企業年金の会計処理
- 23. リスク分担型企業年金が退職給付会計基準第4項に定める確定拠出制度に分類される場合、当該制度に基づく要拠出額をもって費用処理することとなるが(退職給付会計基準第31項)、確定拠出年金における掛金は定額又は給与に一定の率を乗じる方法等により定められるのに対して、各期のリスク対応掛金相当額については一定の幅の範囲内で掛金を拠出する方法(第16項(3)②参照)が認められているため、費用配分の観点から、各期の費用処理額が論点になる。
- 24. この点、財政悪化リスク相当額に対応するために拠出するリスク対応掛金相当額は、拠出の総額が決まっているものの、各期における労働サービスの提供との対応関係は必ずしも明らかではなく、また、労働サービスの価値は信頼性をもって測定することが不可能なため、一般に、支払額をもって報酬費用とみなされている。
- これらの点を踏まえ、退職給付会計基準第4項に定める確定拠出制度に分類されるリスク分担型企業年金については、規約に基づきあらかじめ定められた各期の掛金の金額(本実務対応報告第10項(3)に基づき未払金等として計上した特別掛金相当額を除く。)を、各期において費用処理することとした(第7項参照)。
- 25. なお、リスク分担型企業年金では、制度の導入時にリスク対応掛金相当額の総額が算定され、基金の解散又は規約の終了がない限りは、企業はリスク対応掛金相当額の拠出の義務を負っているため、当該制度の導入時に、総額を負債として全額計上すべきか否かが論点になる。
- この点、次の理由により、リスク対応掛金相当額の総額を負債として計上しないこととした。
- (1) 特別掛金相当額は、制度の導入時に既に生じた積立不足に対応するものであり、制度の導入時に総額の費用計上が必要とされ、対応する負債が計上される。一方、リスク対応掛金相当額は、制度の導入時に算定される財政悪化リスク相当額の水準を踏まえ、標準掛金相当額に追加して拠出するものであり、制度の導入時に費用計上する必要はなく、費用計上に対応した負債を計上する必要はないと考えられる。
- (2) 仮に総額の債務性に着目しリスク対応掛金相当額の総額を負債として計上するとともに、第24項に記載した費用配分を勘案し、見合いの資産を計上したとしても、当該負債及び資産より得られる情報は、必ずしも有用ではない。
退職給付制度間の移行に関する取扱い
退職給付会計基準第5項に定める確定給付制度に分類される退職給付制度から退職給付会計基準第4項に定める確定拠出制度に分類されるリスク分担型企業年金への移行に関する取扱い
- 26. 制度移行適用指針の公表時には、法令上、確定給付企業年金法に基づいて実施されるものの、会計上は退職給付会計基準第4項に定める確定拠出制度に分類される制度は、想定されていなかった。このため、退職給付会計基準第5項に定める確定給付制度に分類される退職給付制度から、退職給付会計基準第4項に定める確定拠出制度に分類されるリスク分担型企業年金への移行をどのように会計処理するかについては必ずしも明確ではない。
- 27. この点、リスク分担型企業年金が退職給付会計基準第4項に定める確定拠出制度に分類される場合、退職給付会計基準第5項に定める確定給付制度に分類される退職給付制度から退職給付会計基準第4項に定める確定拠出制度に分類されるリスク分担型企業年金への移行については、退職給付制度間の移行又は制度の改訂により退職給付債務がその減少分相当額の支払等を伴って減少するため(制度移行適用指針第4項)、退職給付制度の終了に該当することとなる(第9項参照)。
- 28. ここで、退職給付会計基準第5項に定める確定給付制度に分類される退職給付制度から退職給付会計基準第4項に定める確定拠出制度に分類されるリスク分担型企業年金への移行において、規約に定める各期の掛金に特別掛金相当額が含まれる場合の取扱いが論点となる。
- この点、会計上の確定給付制度から会計上の確定拠出制度への移行という点が、実務対応報告第2号「退職給付制度間の移行等の会計処理に関する実務上の取扱い」(以下「制度移行実務対応報告」という。)Q11に示された事項と共通しているため、当該特別掛金相当額のうち移行前の退職給付に係る負債を上限に負債を計上する必要があるとの意見が聞かれたが、制度移行実務対応報告Q11は確定給付制度間の移行における例外的な取扱いを定めているものである。
- 一方、退職給付会計基準第5項に定める確定給付制度に分類される退職給付制度から退職給付会計基準第4項に定める確定拠出制度に分類されるリスク分担型企業年金への移行は退職給付制度の終了に該当し、特別掛金相当額は制度の導入時に既に生じた積立不足に対応し、制度の導入時に算定された総額は導入後に見直されない。したがって、特別掛金相当額は、移行前の確定給付制度に関する事業主からの支払又は現金拠出額の確定額(制度移行適用指針第4項(2))に該当し、退職給付制度の終了に伴って当該特別掛金相当額の総額を負債として計上することが適切であると考えられるため、当該特別掛金相当額の総額を未払金等として計上することとした(第10項(3)参照)。
退職給付会計基準第4項に定める確定拠出制度に分類されるリスク分担型企業年金から既存の確定給付企業年金への移行等の退職給付制度間の移行に関する取扱い
- 29. 退職給付会計基準第4項に定める確定拠出制度に分類されるリスク分担型企業年金から既存の確定給付企業年金へ移行する場合や、既存の確定給付企業年金にリスク対応掛金額の仕組みを導入した後に、退職給付会計基準第4項に定める確定拠出制度に分類されるリスク分担型企業年金へ移行する場合等についても、移行の会計処理が論点になり得る。
- この点、分類の再判定の結果、退職給付会計基準第5項に定める確定給付制度に分類されることとなった場合の取扱いを示さないこととした理由(第22項参照)に加えて、既存の確定給付企業年金へ移行する場合の会計上の取扱いを示すためには、第22項に記載した場合の取扱いとの関係を整理する必要があることから、基準諮問会議からの提言において緊急性の高い対応が要請されていたことも踏まえ、当該取扱いについては、今後の運用状況等も勘案し、必要に応じて検討することとした。
開 示
退職給付会計基準第4項に定める確定拠出制度に分類されるリスク分担型企業年金の注記事項
- 30. リスク分担型企業年金が導入され、複数の制度が退職給付会計基準第4項に定める確定拠出制度に分類されることを受けて、退職給付会計基準を改正し、財務諸表利用者が確定拠出制度に分類される制度の内容を理解できるようにするために、退職給付会計基準第4項に定める確定拠出制度について、「企業の採用する確定拠出制度の概要」及び「その他の事項」を注記事項として追加した(退職給付会計基準第32-2項)。
- 31. リスク分担型企業年金は確定拠出年金とは異なる特徴を有するため(第16項参照)、本実務対応報告では、退職給付会計基準第4項に定める確定拠出制度に分類されるリスク分担型企業年金に関する「企業の採用する確定拠出制度の概要」として、標準掛金相当額の他に、リスク対応掛金相当額があらかじめ規約に定められることや、毎事業年度におけるリスク分担型企業年金の財政状況に応じて給付額が増減し、年金に関する財政の均衡が図られること等を例示することとした(第12項(1)参照)。
- なお、リスク分担型企業年金は新たな企業年金であるため、現時点においては、当該制度の特徴について注記する一定の意義があると考えられるが、将来的に内容が周知された場合は、企業が簡略な記載に見直すことも考えられる。
- 32. 定額又は給与に一定の率を乗じる方法等により算定される確定拠出年金における掛金は将来の拠出の総額が確定していない一方で、リスク対応掛金相当額は、制度の導入時に総額が算定され拠出の義務を負っており、確定拠出年金とは異なる特徴を有している。このため、将来キャッシュ・フローの金額及び将来の各期の損益への影響を財務諸表利用者が理解することができる情報を提供することを目的として、翌期以降に拠出することが要求されるリスク対応掛金相当額及び当該リスク対応掛金相当額の拠出に関する残存年数の注記を求めることとした(第12項(3)参照)。
- また、リスク対応掛金相当額は、あらかじめ定めた期間にわたって標準掛金相当額と併せて拠出され、当該リスク対応掛金相当額の拠出が完了すれば、それ以降は標準掛金相当額のみが拠出されるため、財務諸表利用者は、当該注記によって、将来キャッシュ・フローの変化を予測することもできると考えられる。
適用時期
- 33. リスク分担型企業年金は新たな企業年金であり、実際の運用が今後開始される予定であること、また、本実務対応報告は、リスク分担型企業年金における退職給付会計に係る実務上の取扱いをより明確にするものであり、特段の周知期間は必要ないと考えられることから、本実務対応報告は、確定給付企業年金法施行令の一部を改正する政令(平成28年政令第375号)及び確定給付企業年金法施行規則等の一部を改正する省令(平成28年厚生労働省令第175号)の施行日である平成29年1月1日以後適用することとした(第13項参照)。
設 例
- [設例1] 確定給付型からリスク分担型企業年金への退職給付制度間の移行
- (移行の時点で規約に定める掛金に特別掛金相当額が含まれていないケース)
- 1 前提条件
- A社は従来、確定給付企業年金を採用していたが、X1年4月1日に退職給付会計基準第4項に定める確定拠出制度に分類されるリスク分担型企業年金へ移行した。移行前の確定給付企業年金の退職給付債務は6,500であり、移行前の確定給付企業年金の年金資産4,000全額をリスク分担型企業年金へ移行した。移行の時点で規約に定める掛金に特別掛金相当額は含まれていない。税効果会計については考慮していない。
- なお、設例で用いている記号は以下のとおりである。
- P: 年金資産移換額
- A: 未認識数理計算上の差異の費用処理額

- 2 会計処理
①個別財務諸表上の会計処理 - 退職給付制度終了に伴う処理
- リスク分担型企業年金への移行に伴う、移行前の確定給付企業年金の終了により、退職給付債務の消滅を認識する(第9項参照)。このため、移行した部分に係る退職給付債務(6,500)と年金資産の移換額(4,000)の差(2,500)を損益として認識する(第10項(1)参照)。

- 未認識項目の移行時の処理
- 未認識数理計算上の差異は、消滅した退職給付債務の比率その他合理的な方法で算定した金額を損益に認識する(第10項(2)参照)。このため、未認識数理計算上の差異(50)を損益に計上する。

②連結財務諸表上の会計処理- 連結修正仕訳
- 個別貸借対照表の「退職給付引当金」の科目を連結上、「退職給付に係る負債」に振り替える。
- また、未認識数理計算上の差異は、「退職給付に係る調整額」に振り替える。

- 3 年金財政状態(参考)

- [設例2] 確定給付型からリスク分担型企業年金への退職給付制度間の移行
- (移行の時点で規約に定める掛金に特別掛金相当額が含まれるケース)
- 1 前提条件
- A社は従来、確定給付企業年金を採用していたが、X1年4月1日に退職給付会計基準第4項に定める確定拠出制度に分類されるリスク分担型企業年金へ移行した。移行前の確定給付企業年金の退職給付債務は6,500であり、移行前の確定給付企業年金の年金資産4,000全額をリスク分担型企業年金へ移行した。移行の時点で規約に定める掛金に含まれる特別掛金相当額の総額は456である。税効果会計については考慮していない。
- なお、設例で用いている記号は以下のとおりである。
- P: 年金資産移換額
- A: 未認識数理計算上の差異の費用処理額

- 2 会計処理
①個別財務諸表上の会計処理 - 退職給付制度終了に伴う処理
- 移行の時点で規約に定める掛金に含まれる特別掛金相当額の総額は456である。そのため、456の特別掛金相当額の総額を未払金として計上し、損益を認識する(第10項(3)参照)。
- リスク分担型企業年金への移行に伴う、移行前の確定給付企業年金の終了により、退職給付債務の消滅を認識する(第9項参照)。このため、移行した部分に係る退職給付債務(6,500)と年金資産の移換額(4,000)の差(2,500)を損益として認識する(第10項(1)参照)。

- 未認識項目の移行時の処理
- 未認識数理計算上の差異は、消滅した退職給付債務の比率その他合理的な方法で算定した金額を損益に認識する(第10項(2)参照)。このため、未認識数理計算上の差異(50)を損益に計上する。

②連結財務諸表上の会計処理- 連結修正仕訳
- 個別貸借対照表の「退職給付引当金」の科目を連結上、「退職給付に係る負債」に振り替える。
- また、未認識数理計算上の差異は、「退職給付に係る調整額」に振り替える。

- 3 貸借対照表

- 4 年金財政状態(参考)

- 以 上