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実務対応報告第43号電子記録移転有価証券表示権利等の発行及び保有の会計処理及び開示に関する取扱い
目 的
- 1. 本実務対応報告は、「金融商品取引業等に関する内閣府令」(平成19年内閣府令第52号。以下「金商業等府令」という。)第1条第4項第17号に規定される「電子記録移転有価証券表示権利等」を発行又は保有する場合の会計処理及び開示に関する取扱いを明らかにすることを目的とする。
範 囲
- 2. 本実務対応報告は、株式会社が前項に記載した電子記録移転有価証券表示権利等を発行又は保有する場合の会計処理及び開示を対象とする。
用語の定義
- 3. 本実務対応報告における用語の定義は、次のとおりとする。
- (1) 「電子記録移転有価証券表示権利等」とは、金商業等府令第1条第4項第17号に規定される権利をいい、金融商品取引法(昭和23年法律第25号)第2条第2項に規定される有価証券とみなされるもの(以下「みなし有価証券」という。)のうち、電子情報処理組織を用いて移転することができる財産的価値に表示される場合に該当するものをいう。
- (2) 「金融負債」とは、支払手形、買掛金、借入金及び社債等の金銭債務並びにデリバティブ取引により生じる正味の債務等をいう。
実務上の取扱い
Ⅰ.電子記録移転有価証券表示権利等の発行の会計処理
- 4. 電子記録移転有価証券表示権利等を発行する場合、その発行に伴う払込金額を第5項及び第6項の定めに従い、負債、株主資本又は新株予約権として会計処理を行う。
- 5. 電子記録移転有価証券表示権利等の発行に伴う払込金額が負債に区分される場合には、金融負債として、企業会計基準第10号「金融商品に関する会計基準」(以下「金融商品会計基準」という。)第7項の定めに従って発生の認識を行い、その金額は金融商品会計基準第26項、又は第36項、第38項(1)及び企業会計基準適用指針第17号「払込資本を増加させる可能性のある部分を含む複合金融商品に関する会計処理」(以下「複合金融商品適用指針」という。)の定めに従う。
- 6. 電子記録移転有価証券表示権利等の発行に伴う払込金額が株主資本又は新株予約権に区分される場合には、その内訳項目は企業会計基準第5号「貸借対照表の純資産の部の表示に関する会計基準」(以下「純資産会計基準」という。)第5項から第7項の定めに従い、その金額は会社法(平成17年法律第86号)第445条及び第446条の規定、又は金融商品会計基準第36項、第38項(2)及び複合金融商品適用指針の定めに従う。
Ⅱ.電子記録移転有価証券表示権利等の保有の会計処理
- 7. 金融商品取引法第2条第1項及び第2項に定義される金融商品取引法上の有価証券については、金融商品会計基準及び実務指針第9号「金融商品会計に関する実務指針」(以下「金融商品実務指針」という。また、以下、金融商品会計基準及び金融商品実務指針を合わせて「金融商品会計基準等」という。)上、有価証券として取り扱われるものと有価証券として取り扱われないものがある(金融商品実務指針第8項及び第58項)。
- 本実務対応報告において、電子記録移転有価証券表示権利等の保有の会計処理については、金融商品会計基準等上の有価証券に該当する場合と該当しない場合に分けて定める。
金融商品会計基準等上の有価証券に該当する場合
- 8. 金融商品会計基準等上の有価証券に該当する電子記録移転有価証券表示権利等の発生及び消滅の認識については、金融商品会計基準第7項から第9項及び金融商品実務指針の定めに従って行う。
- ただし、電子記録移転有価証券表示権利等の売買契約について、契約を締結した時点から電子記録移転有価証券表示権利等が移転した時点までの期間が短期間である場合は、金融商品実務指針第22項の定めにかかわらず、契約を締結した時点で買手は電子記録移転有価証券表示権利等の発生を認識し、売手は電子記録移転有価証券表示権利等の消滅を認識する。
- 9. 金融商品会計基準等上の有価証券に該当する電子記録移転有価証券表示権利等の貸借対照表価額の算定及び評価差額に係る会計処理は、金融商品会計基準第15項から第22項及び金融商品実務指針の定めに従って行う。
金融商品会計基準等上の有価証券に該当しない場合
- 10. 金融商品会計基準等上の有価証券に該当しない電子記録移転有価証券表示権利等の会計処理は、金融商品実務指針及び実務対応報告第23号「信託の会計処理に関する実務上の取扱い」(以下「実務対応報告第23号」という。)の定めに従って行う。
- ただし、金融商品会計基準等上の有価証券に該当しない電子記録移転有価証券表示権利等のうち、金融商品実務指針及び実務対応報告第23号の定めに基づき、結果的に有価証券として又は有価証券に準じて取り扱うこととされているものについての発生の認識(信託設定時を除く。)及び消滅の認識は、金融商品実務指針及び実務対応報告第23号の定めにかかわらず、本実務対応報告第8項の定めに従って行う。
Ⅲ.開 示
表 示
- 11. 電子記録移転有価証券表示権利等を発行又は保有する場合の表示方法は、みなし有価証券が電子記録移転有価証券表示権利等に該当しない場合に求められる表示方法と同様とする。
注記事項
- 12. 電子記録移転有価証券表示権利等を発行又は保有する場合の注記事項は、みなし有価証券が電子記録移転有価証券表示権利等に該当しない場合に求められる注記事項と同様とする。
適用時期
- 13. 本実務対応報告は、2023年4月1日以後開始する事業年度の期首から適用する。ただし、本実務対応報告の公表日以後終了する事業年度及び四半期会計期間から適用することができる。
議 決
- 14. 本実務対応報告は、第485回企業会計基準委員会に出席した委員13名全員の賛成により承認された。
結論の背景
Ⅰ.経緯等
- 15. 2019年5月に成立した「情報通信技術の進展に伴う金融取引の多様化に対応するための資金決済に関する法律等の一部を改正する法律」(令和元年法律第28号)により、金融商品取引法が改正された(以下「改正金融商品取引法」という。)。改正金融商品取引法では、いわゆる投資性ICO(Initial Coin Offering。企業等がトークン(電子的な記録・記号)を発行して、投資家から資金調達を行う行為の総称である。)を金融商品取引法により規律することとされ、各種規定の整備が行われた。
- 具体的には、これまで流通する蓋然性が低いものとされ、いわゆる第二項有価証券として分類されてきた金融商品取引法第2条第2項各号に規定される信託受益権、合名会社、合資会社及び合同会社(以下、合名会社、合資会社及び合同会社を合わせて「持分会社」という。)の社員権、並びに民法上の任意組合契約に基づく権利、商法上の匿名組合契約に基づく権利、投資事業有限責任組合契約に基づく権利、有限責任組合契約に基づく権利等(以下合わせて「集団投資スキーム持分等」という。)について、電子情報処理組織を用いて移転することができる財産的価値に表示される場合、株式等と同様に事実上流通し得ることを踏まえ、そのようなものを「電子記録移転権利」と定義し(金融商品取引法第2条第3項)、いわゆる第一項有価証券に含めることで原則として開示規制を課し、その業としての取扱いに第一種金融商品取引業の登録を求めることとされた。
- 16. また、いわゆる投資性ICO以外のICOトークンについては、併せて改正された「資金決済に関する法律」(平成21年法律第59号。以下「資金決済法」という。)第2条第5項に規定される「暗号資産」に該当する範囲において、引き続き資金決済法の規制対象に含めることとされた。
- 17. このように金融商品取引法及び資金決済法が改正されたことを受けて、2019年11月に開催された第421回企業会計基準委員会において、公益財団法人財務会計基準機構内に設けられている基準諮問会議より、金融商品取引法上の電子記録移転権利又は資金決済法上の暗号資産に該当するICOトークンの発行・保有等に係る会計上の取扱いの検討を求める提言がなされ、当委員会は、同年12月より検討を開始した。
- 18. その後、2020年5月に改正府令が施行された金商業等府令において電子記録移転権利よりも広い概念である「電子記録移転有価証券表示権利等」が定められた。これは、集団投資スキーム持分等を含む、金融商品取引法第2条第2項に規定されるみなし有価証券のうち、電子情報処理組織を用いて移転することができる財産的価値に表示される場合に該当するものであり、株式や社債などの有価証券表示権利も、電子情報処理組織を用いて移転することができる財産的価値に表示される場合には、これに含まれるとされている。金融商品取引業者としてこれを取り扱う場合には、その旨を記載した登録申請書を提出しなければならないなど、追加的な規制が課されている。
Ⅱ.範 囲
検討の範囲
- 19. 基準諮問会議から提言を受けた金融商品取引法上の電子記録移転権利と資金決済法上の暗号資産とでは、権利としての性格が異なると考えられるため、当委員会は、両者を分けてプロジェクトを進めることとした。
- 20. 金融商品取引法上の電子記録移転権利については、改正金融商品取引法が2020年5月より施行され、これまで流通する蓋然性が低いものとしていわゆる第二項有価証券として分類されてきた集団投資スキーム持分等が、事実上、流通し得るものとしていわゆる第一項有価証券に分類されたことなどにより、会計処理に及ぼし得る影響を可能な限り早期に明らかにするニーズがあると考えられた。
- 21. また、金商業等府令において規定された電子記録移転有価証券表示権利等(本実務対応報告第18項参照)についても、電子記録移転権利と同様に会計基準を開発する一定のニーズが存在するものと考えられたため、本実務対応報告においては、電子記録移転権利のみを取り扱うのではなく、より範囲の広い金商業等府令第1条第4項第17号に規定される電子記録移転有価証券表示権利等を本実務対応報告の範囲として取り扱うこととした。
- なお、これまで当委員会では、基本的に株式会社における会計処理を明らかにしてきており、本実務対応報告においては株式会社による発行及び保有の会計処理のみを検討の対象とすることとした(本実務対応報告第24項から第26項参照)。
- 22. 一方、資金決済法上の暗号資産については、ICOトークンの発行件数が、国際的に2017年から2018年半ばにかけて増加したものの、その後急減している。また、国際的な会計基準において、ICOトークンの発行及び保有の会計処理は確立されておらず、基準開発を行うにあたり難易度が高い論点が識別されている。
- そのため、資金決済法上の暗号資産に該当するICOトークンに係る会計上の取扱いの検討においては、基準開発の時期及び基準開発を行う場合に取り扱うべき会計上の論点について、実務対応報告公開草案第63号「電子記録移転有価証券表示権利等の発行及び保有の会計処理及び開示に関する取扱い(案)」の公表に合わせて、2022年3月に関係者からの意見を募集することを目的とした「資金決済法上の暗号資産又は金融商品取引法上の電子記録移転権利に該当するICOトークンの発行及び保有に係る会計処理に関する論点の整理」(以下「論点整理」という。)を公表した。
- 23. なお、電子記録移転有価証券表示権利等は、今後どのように取引が発展していくかは現時点では予測することが困難であるため、次の論点については論点整理の中で関係者からの意見を募集することとし、そこでの要望に基づき別途の対応を図ることの要否を判断することとしていた。
- (1) 株式会社以外の信託、持分会社、民法上の任意組合、商法上の匿名組合、投資事業有限責任組合及び有限責任事業組合(以下合わせて「会社に準ずる事業体等」という。)における発行及び保有の会計処理
- (2) 株式又は社債を電子記録移転有価証券表示権利等として発行する場合に財又はサービスの提供を受ける権利が付与されるときの会計処理
- (3) 暗号資産建の電子記録移転有価証券表示権利等の発行の会計処理
- (4) 組合等への出資のうち電子記録移転権利に該当する場合の保有の会計処理
- 当委員会は、論点整理のうち電子記録移転有価証券表示権利等の発行及び保有に関する論点に対して寄せられたコメントについて審議した。(4)の論点に関して、有価証券に係る現行の定めを準用すべきかどうかを検討することが必要であるとするコメントが寄せられたが、現時点でその取引量が少なく市場性の有無が不明確であることを考慮すると、早期に検討することは困難であると考えられた。また、それ以外の論点に関しても、電子記録移転有価証券表示権利等に関する取引が今後どのように発展していくかを予測することが現時点では依然として困難であると考えられた。その結果、早期に会計基準を開発することを優先する観点から、これらの論点については本実務対応報告では取り扱わないこととした。
株式会社以外の会社に準ずる事業体等による電子記録移転有価証券表示権利等の発行及び保有の会計処理
- 24. これまで当委員会では、基本的に株式会社における会計処理を明らかにしてきており、株式会社以外の会社に準ずる事業体等の会計処理に関しては、投資事業組合を子会社の範囲に含めるかどうかの考え方について実務対応報告第20号「投資事業組合に対する支配力基準及び影響力基準の適用に関する実務上の取扱い」に定めがあるほか、実務対応報告第23号において受託者の会計処理が定められているなど限定的である。
- 25. ここで、電子記録移転有価証券表示権利等と従来のみなし有価証券(電子記録移転有価証券表示権利等に該当しないみなし有価証券を指す。以下同じ。)の権利の内容は同一であると考えられることから、会社に準ずる事業体等による電子記録移転有価証券表示権利等の発行及び保有の会計処理を検討するにあたっては、会社に準ずる事業体等が従来のみなし有価証券を発行又は保有する場合の会計処理を参考にすることが考えられるが、会社に準ずる事業体等の会計処理は、関係法令又は実務によっており、会計基準上、必ずしも明らかではない。
- 26. そのため、会社に準ずる事業体等による電子記録移転有価証券表示権利等の発行及び保有の会計処理を定める場合、会社に準ずる事業体等における従来のみなし有価証券の発行及び保有の会計処理を明らかにする必要があると考えられるが、その場合、電子記録移転有価証券表示権利等の会計処理を取り扱うとする本プロジェクトの範囲を超えて基準開発を行うこととなる。したがって、可能な限り早期に本実務対応報告を公表し利害関係者のニーズに資するという便益を優先し、本実務対応報告においては株式会社による発行及び保有の会計処理のみを検討の対象とすることとした。
- なお、会社に準ずる事業体等が発行した電子記録移転有価証券表示権利等を株式会社が保有する場合が想定されるため、株式会社による保有の会計処理においては、発行者がいずれの事業体等であるかにかかわらず、電子記録移転有価証券表示権利等を保有する場合の会計処理を取り扱うこととした。
Ⅲ.実務上の取扱い
電子記録移転有価証券表示権利等の会計処理の基本的な考え方
- 27. 電子記録移転有価証券表示権利等は、金融商品取引法において、金融商品取引法第2条第2項に規定されるみなし有価証券のうち、当該権利に係る記録又は移転の方法その他の事情等を勘案し、内閣府令で定めるものに限るとされており(金融商品取引法第29条の2第1項第8号)、金商業等府令では、電子情報処理組織を用いて移転することができる財産的価値に表示される場合に該当するものとされている(金商業等府令第6条の3)。したがって、電子記録移転有価証券表示権利等は、その定義上、従来のみなし有価証券と権利の内容は同一であると考えられる。すなわち、電子記録移転有価証券表示権利等と従来のみなし有価証券との発行及び保有における差は、その発行及び保有がいわゆるブロックチェーン技術等を用いてなされるか否かのみであると考えられる。
- したがって、電子記録移転有価証券表示権利等の発行及び保有の会計処理は、基本的に従来のみなし有価証券の発行及び保有の会計処理と同様に取り扱うこととした。
電子記録移転有価証券表示権利等の発行の会計処理
- 28. 前項に記載のとおり、電子記録移転有価証券表示権利等に該当する金融商品会計基準等上の有価証券を発行する場合は、従来のみなし有価証券を発行する場合と同様の会計処理を行うこととした(本実務対応報告第4項から第6項参照)。
- 29. ここで、一部の信託受益権(金融商品取引法第2条第2項第1号及び第2号に該当するもの)については、金融商品取引法上の有価証券に該当するものの、金融商品会計基準等上、有価証券として取り扱われない場合がある(金融商品実務指針第8項及び第58項)。そのため、電子記録移転有価証券表示権利等に該当するこれらの一部の信託受益権について、受託者による信託の会計処理が問題となるが、本実務対応報告第26項に記載のとおり、本実務対応報告では株式会社による会計処理のみを定めることとしたため、金融商品会計基準等上の有価証券に該当しない電子記録移転有価証券表示権利等の発行の会計処理は取り扱っていない。
(負債か株主資本かの区分)
- 30. 有価証券を発行した場合、払込金額が負債となるのか株主資本となるのかについての明確な会計基準は存在せず、有価証券の法的形式等を勘案して、実務上の対応が行われていると考えられる。したがって、電子記録移転有価証券表示権利等を発行した場合の払込金額の区分についても、特段の定めを置かないこととした。この場合、現行の実務を参考にすることが考えられる。
(払込金額が負債となる場合)
- 31. 有価証券を発行し、払込金額が負債に区分される場合、金融負債として金融商品会計基準第7項及び第10項の定めに基づき発生及び消滅の認識を行い、その金額は金融商品会計基準第26項、又は第36項、第38項(1)及び複合金融商品適用指針に基づき算定することとしている。したがって、電子記録移転有価証券表示権利等を発行し、その払込金額が負債に区分される場合もこれらの定めに従うこととした(本実務対応報告第5項参照)。
(払込金額が株主資本又は新株予約権となる場合)
- 32. 有価証券を発行し、払込金額が株主資本に区分される場合、その内訳は純資産会計基準第5項及び第6項の定めに基づき区分され、その金額は会社法の規定により決定される(会社法第445条及び第446条)。また、払込金額が新株予約権に区分される場合、その内訳は純資産会計基準第7項の定めに基づき区分され、その金額は金融商品会計基準第36項、第38項(2)及び複合金融商品適用指針の定めに基づき算定することとしている。したがって、電子記録移転有価証券表示権利等を発行し、その払込金額が株主資本又は新株予約権に区分される場合もこれらの定めに従うこととした(本実務対応報告第6項参照)。
電子記録移転有価証券表示権利等の保有の会計処理
- 33. 金融商品取引法上の有価証券について、金融商品会計基準等上、有価証券として取り扱われるものと有価証券として取り扱われないものがある(金融商品実務指針第8項及び第58項)。株式会社はいずれも保有することが考えられるため、電子記録移転有価証券表示権利等の保有の会計処理については、金融商品会計基準等上の有価証券に該当する場合と該当しない場合に分けて、それぞれ定めることとした(本実務対応報告第7項参照)。
金融商品会計基準等上の有価証券に該当する場合
- 34. 本実務対応報告第27項に記載のとおり、電子記録移転有価証券表示権利等の権利の内容は、金融商品取引法上の従来のみなし有価証券と同一であると考えられることから、金融商品会計基準等上の有価証券に該当する電子記録移転有価証券表示権利等を保有する場合の会計処理は、金融商品会計基準等上の有価証券に該当する従来のみなし有価証券を保有する場合と同様とすることが考えられる。
- そのため、金融商品会計基準等上の有価証券に該当する電子記録移転有価証券表示権利等の貸借対照表価額の算定及び評価差額に係る会計処理については、従来のみなし有価証券を保有する場合と同様に、金融商品会計基準第15項から第22項及び金融商品実務指針(組合等への出資の会計処理(金融商品実務指針第132項及び第308項)を含む。)の定めに従うこととした(本実務対応報告第9項参照)。
- 35. 一方、電子記録移転有価証券表示権利等の売買契約における発生及び消滅の認識については、次のとおり、本実務対応報告において別途の定めを置くことの検討を行った。
(発生及び消滅の認識)
- 36. 金融資産の発生の認識について、金融商品会計基準においては、金融資産の契約上の権利を生じさせる契約を締結したときは、原則として、当該金融資産の発生を認識しなければならないとしている(金融商品会計基準第7項)。金融資産の売買契約においては、この原則は、厳密には当該売買契約自体を認識するのであって、契約日と受渡日が異なる固定価格による売買契約は先渡契約であるから当該売買契約そのものを先渡契約として認識し、市場相場の変動に伴う当該契約の権利義務から生じる価値を金融資産又は金融負債として認識すべきことを意味しており、売買対象となった金融資産そのものを認識するのではないと解される(金融商品実務指針第233項)。
- また、金融資産の消滅の認識について、金融商品会計基準においては、金融資産の契約上の権利を行使したとき、権利を喪失したとき又は権利に対する支配が他に移転したときは、当該金融資産の消滅を認識しなければならないとしており(金融商品会計基準第8項)、金融資産の契約上の権利に対する支配の他への移転の要件を定めている(金融商品会計基準第9項)。
- ただし、有価証券の売買契約の認識については、金融商品実務指針において、約定日から受渡日までの期間が市場の規則又は慣行に従った通常の期間である場合、原則として、売買約定日に買手は有価証券の発生を認識し、売手は有価証券の消滅の認識を行う(以下「約定日基準」という。)こととされている(金融商品実務指針第22項)。すなわち、有価証券の売買契約の認識については、金融商品実務指針において、金融商品会計基準における原則に対する別途の定めが置かれている。
- 37. 本実務対応報告第34項に記載のとおり、電子記録移転有価証券表示権利等に該当する金融商品会計基準等上の有価証券を保有する場合の会計処理は、従来のみなし有価証券を保有する場合と同様とすることが考えられるため、発生及び消滅の認識についても、前項に記載した金融商品会計基準等の定めに従うことが考えられる。
- しかしながら、電子記録移転有価証券表示権利等の売買に係る事例が限定的である現状を踏まえると、電子記録移転有価証券表示権利等の売買契約においても金融商品実務指針第22項における約定日基準の定めに従うこととする場合、約定日及び受渡日が明確ではない場合も生じ得ると考えられ、また、実務上、約定日から受渡日までの期間が市場の規則又は慣行に従った通常の期間であるかどうかの判断が困難である可能性がある。そのため、電子記録移転有価証券表示権利等の売買契約において、約定日に相当する時点、受渡日に相当する時点及び約定日に相当する時点から受渡日に相当する時点までの期間について検討の上、本実務対応報告において、電子記録移転有価証券表示権利等の売買契約における発生及び消滅の認識について別途の定めを置くこととした。
約定日に相当する時点
- 38. 金融商品実務指針における約定日基準の定めは、売買対象となった有価証券そのものを、売買契約を締結した時点において認識するとの考え方を基礎としていると考えられることから、金融商品実務指針における約定日に相当する時点は、電子記録移転有価証券表示権利等の売買契約を締結した時点とすることとした。
- なお、約定日が明確である場合には、当該約定日が売買契約を締結した時点に該当すると考えられる。
受渡日に相当する時点
- 39. 金融商品実務指針における受渡日においては、通常、有価証券に表示される権利が移転すると考えられることから、電子記録移転有価証券表示権利等の売買において、金融商品実務指針における受渡日に相当する時点は、電子記録移転有価証券表示権利等が移転した時点とすることとした。
- なお、電子記録移転有価証券表示権利等が移転した時点は、個々の権利ごとの根拠法に基づき判断することが考えられるが、受渡日が明確である場合には、当該受渡日を電子記録移転有価証券表示権利等が移転した時点として取り扱うことが考えられる。
約定日に相当する時点から受渡日に相当する時点までの期間
- 40. 本実務対応報告第37項に記載のとおり、電子記録移転有価証券表示権利等の売買取引においては、実務上、約定日に相当する時点から受渡日に相当する時点までの期間が市場の規則又は慣行に従った通常の期間であるかどうかの判断が困難である可能性がある。
- 41. ここで、金融商品実務指針において、有価証券を約定日基準で認識することが定められた理由の1つとして、通常の受渡期間による売買契約を締結した有価証券については、受渡期間が短いため、約定日において金融資産の消滅の認識における法的保全の要件を満たしていなくとも、短期間に受渡しが履行され法的要件を満たすことが説明されている(金融商品実務指針第234項)。
- この点、電子記録移転有価証券表示権利等の売買取引においても、取引の安定化を図るために、約定日に相当する時点から短期間に法的保全の要件が満たされることが想定されることから、約定日に相当する時点から受渡日に相当する時点までの期間が短期間である場合に限り、約定日に相当する時点で電子記録移転有価証券表示権利等の発生及び消滅を認識することとした。
- 42. なお、本実務対応報告第15項に記載のとおり、改正金融商品取引法では、金融商品取引法第2条第2項各号に規定されるみなし有価証券が電子情報処理組織を用いて移転することができる財産的価値に表示される場合、株式等と同様に事実上流通し得ることを踏まえ、そのようなものをいわゆる第一項有価証券に含めることで規制が強化されている。また、電子記録移転有価証券表示権利等の売買においては、いわゆるブロックチェーン技術等を用いることにより、売買契約の締結、権利の移転及び決済を即時に行うことも可能になると考えられる。これらのことを踏まえると、電子記録移転有価証券表示権利等の売買における約定日に相当する時点から受渡日に相当する時点までの期間は、通常、長くとも我が国の上場株式における受渡しに係る期間を超えることはないことが想定される。
- そのため、電子記録移転有価証券表示権利等の売買において、約定日に相当する時点から受渡日に相当する時点までの期間が短期間かどうかは、我が国の上場株式における受渡しに係る通常の期間と概ね同期間かそれより短い期間であるかどうかに基づいて判断することが考えられる。
電子記録移転有価証券表示権利等における取扱い
- 43. 以上より、電子記録移転有価証券表示権利等の発生及び消滅の認識については、金融商品会計基準が定める原則に従って行うこととするが、その売買契約について、契約を締結した時点から電子記録移転有価証券表示権利等が移転した時点までの期間が短期間である場合に限り、契約を締結した時点において認識することとした(本実務対応報告第8項参照)。
金融商品会計基準等上の有価証券に該当しない場合
- 44. 本実務対応報告第29項に記載のとおり、一部の信託受益権については、金融商品取引法上の有価証券に該当するものの、金融商品会計基準等上、有価証券として取り扱われない場合があり(金融商品実務指針第8項及び第58項)、これらの会計処理については、金融商品実務指針及び実務対応報告第23号に定めがある。
- 45. ここで、本実務対応報告第27項に記載のとおり、電子記録移転有価証券表示権利等の権利の内容は、金融商品取引法上の従来のみなし有価証券と同一であると考えられることから、電子記録移転有価証券表示権利等に該当する前項に示した信託受益権を保有する場合の会計処理についても、金融商品実務指針及び実務対応報告第23号の定めに従うこととした(本実務対応報告第10項参照)。
- 46. しかしながら、発生及び消滅の認識については、従来の有価証券の売買契約とは異なり、約定日及び受渡日が明確ではない場合も生じ得ると考えられることなどから、金融商品会計基準等上の有価証券に該当する電子記録移転有価証券表示権利等について、従来の有価証券の定めとは異なる定めを置いている(本実務対応報告第8項及び第36項から第43項参照)。
- そのため、金融商品会計基準等上の有価証券に該当しない電子記録移転有価証券表示権利等のうち、金融商品実務指針及び実務対応報告第23号の定めに基づき、結果的に有価証券として又は有価証券に準じて取り扱うこととされているものについての発生の認識(信託設定時を除く。)及び消滅の認識は、本実務対応報告第8項の定めに従うこととした(本実務対応報告第10項ただし書き参照)。
開 示
- 47. 本実務対応報告第27項に記載のとおり、電子記録移転有価証券表示権利等の権利の内容は、従来のみなし有価証券と同一であると考えられ、電子記録移転有価証券表示権利等の開示に関して、従来のみなし有価証券を発行又は保有する場合に適用される開示の定めに従うことにより、有用な情報が開示されるものと考えられる。そのため、電子記録移転有価証券表示権利等を発行又は保有する場合の表示方法及び注記事項は、みなし有価証券が電子記録移転有価証券表示権利等に該当しない場合に求められる表示方法及び注記事項と同様とすることとした(本実務対応報告第11項及び第12項参照)。
Ⅳ.適用時期
- 48. 本実務対応報告は、電子記録移転有価証券表示権利等を保有する場合の発生及び消滅の認識について、金融商品実務指針における有価証券の定めとは異なる定めを置いていることから(本実務対応報告第8項及び第36項から第43項参照)、本実務対応報告の適用にあたっては、一定の周知期間を設けることが有用と考えられる。そのため、2023年4月1日以後開始する事業年度の期首から適用することとした。
- また、本実務対応報告第20項に記載のとおり、改正金融商品取引法は既に2020年5月より施行されており、本実務対応報告を速やかに適用することへのニーズが想定されることから、本実務対応報告を公表日以後終了する事業年度及び四半期会計期間から早期適用することを認めることとした(本実務対応報告第13項参照)。
- 以 上
本実務対応報告の公表による他の会計基準等についての修正
- 本実務対応報告により、当委員会が公表した会計基準等については、次の修正を行う(下線は追加部分、取消線は削除部分を示す。)。
(略) - 以 上
