©公益財団法人 財務会計基準機構最終更新日:2026/03/04
企業会計基準適用指針第8号貸借対照表の純資産の部の表示に関する会計基準等の適用指針
目 的
- 1. 本適用指針は、企業会計基準第5号「貸借対照表の純資産の部の表示に関する会計基準」(以下「純資産会計基準」という。)を適用する際の指針を定めるものである。
適用指針
範 囲
- 2. 本適用指針を適用する範囲は、純資産会計基準における範囲と同様とする。また、本適用指針では、次の項目についても取り扱っている。
- (1) (削 除)
- (2) 企業会計基準第22号「連結財務諸表に関する会計基準」(以下「連結会計基準」という。)及び企業会計基準第16号「持分法に関する会計基準」(以下「持分法会計基準」という。)の適用指針の一部として、資本連結における子会社の資本及び持分法の適用における被投資会社の資本
- (3) 「外貨建取引等会計処理基準」(以下「外貨基準」という。)の適用指針の一部として、在外子会社の純資産の換算
純資産の部の表示
- 3. 純資産の部の表示は、次の例による。

純資産の部における項目と会計処理
(削除)
資本連結における子会社の資本及び持分法の適用における被投資会社の資本
- 5. 連結貸借対照表の作成にあたり、資本連結において親会社の子会社に対する投資と相殺消去される子会社の資本は、次の(1)及び(2)に(3)の項目を加えたものとなる(なお、いずれもこれらに関する、当期までの期間に課税された、法人税その他利益に関連する金額を課税標準とする税金(以下「法人税等」という。)及び税効果を控除した後の金額とする。以下同じ。)。
- (1) 子会社の個別貸借対照表上の純資産の部における株主資本(親子会社間の会計処理の統一及びその他個別財務諸表の修正による損益処理後)
- (2) 子会社の個別貸借対照表上の純資産の部における評価・換算差額等[設例1]
- (3) 子会社の資産及び負債の時価と当該資産及び負債の個別貸借対照表上の金額との差額(評価差額)
- 6. 持分法の適用にあたり、被投資会社の資本は、第5項に準ずるものとする。このうち、被投資会社の資産及び負債を時価により評価する方法は、次による。
- (1) 被投資会社が非連結子会社の場合には、全面時価評価法による。
- (2) 被投資会社が関連会社の場合には、部分時価評価法の原則法(関連会社の資産及び負債のうち投資会社の持分に相当する部分については、株式の取得日ごとに当該日における時価により評価する方法)による。ただし、これと計算結果が著しく相違しない場合には、部分時価評価法の簡便法(関連会社の資産及び負債のうち投資会社の持分に相当する部分について、持分法適用開始日における時価により一括して評価する方法)によることができる。
在外子会社の純資産の換算
- 7. 連結財務諸表の作成又は持分法の適用にあたり、外国にある子会社の外国通貨で表示されている財務諸表項目のうち、純資産に属する項目(連結貸借対照表の作成又は持分法の適用にあたり子会社の資本とされた評価差額を含む。)の換算は、次の方法による。
- (1) 親会社による株式の取得時における株主資本及び評価・換算差額等に属する項目、並びに子会社の資産及び負債の評価差額については、株式取得時の為替相場による円換算額を付する。具体的には、全面時価評価法により、支配獲得時の為替相場により換算する。
- (2) 親会社による株式の取得後に生じた株主資本に属する項目については、当該項目の発生時の為替相場による円換算額を付する。
また、親会社による株式の取得後に生じた評価・換算差額等に属する項目については、決算時の為替相場による円換算額を付する。 - (3) 新株予約権については、発生時の為替相場による円換算額を付する。ただし、新株予約権に係る為替換算調整勘定は、新株予約権に含めて表示することとする。また、新株予約権が行使された場合には、行使時の為替相場により換算した円貨額をもって払込資本に振り替えることとし、失効した場合には、失効時の為替相場により換算した円貨額をもって当期の損益に振り替えることとする。なお、行使時又は失効時の為替相場については、期中平均相場によることを妨げない。[設例2]
- (4) 非支配株主持分については、従来どおり、決算時の為替相場による円換算額を付する。
適用時期
- 8. 2005年(平成17年)に公表された本適用指針(以下「2005年(平成17年)適用指針」という。)は、純資産会計基準の実施に合わせて適用されることとなる。
- 8-2. 2009年(平成21年)に改正された本適用指針(以下「2009年(平成21年)改正適用指針」という。)は、2009年(平成21年)に改正された純資産会計基準の実施に合わせて適用されることとなる。
- 8-3. 2013年(平成25年)に改正された本適用指針(以下「2013年(平成25年)改正適用指針」という。)の適用時期は、2013年(平成25年)に改正された純資産会計基準と同様とする。
- 8-4. 2021年に改正された本適用指針(以下「2021年改正適用指針」という。)の適用時期は、2021年に改正された純資産会計基準と同様とする。
議 決
- 9. 2005年(平成17年)適用指針は、第94回企業会計基準委員会に出席した委員12名全員の賛成により承認された。
- 9-2. 2009年(平成21年)改正適用指針は、第173回企業会計基準委員会に出席した委員13名全員の賛成により承認された。
- 9-3. 2013年(平成25年)改正適用指針は、第272回企業会計基準委員会に出席した委員13名全員の賛成により承認された。
- 9-4. 2021年改正適用指針は、第450回企業会計基準委員会に出席した委員14名全員の賛成により承認された。
結論の背景
純資産の部の表示
- 10. 本適用指針では、純資産会計基準を踏まえ、貸借対照表の純資産の部の表示について、標準的な記載例を示している(第3項参照)。
- 11. これまで、新株式払込金又は申込期日経過後における新株式申込証拠金は、資本金の区分の次に区分を設けて表示されてきた。しかし、2004年(平成16年)の改正商法及び会社法では、払込期日から株主になるため、もはや新株式払込金は生じないこととなる。また、申込期日経過後における新株式申込証拠金は、実質上、株主からの出資金が期日前に払い込まれたものにすぎず、すぐに払込資本となることから、従来どおり、資本金の区分の次に区分を設けて表示されることとなる。
- 12. 従来から資本の部に計上されている土地再評価差額金は、継続的に評価替えされず、また、売却等を行った際に損益計算書を経由せず当期未処分利益に繰り入れられている。これは、その他有価証券評価差額金などの会計処理とは異なるが、時限立法である土地の再評価に関する法律に基づく臨時的かつ例外的な会計処理であり、土地再評価差額金は、土地の再評価により生じ、税効果を調整した評価差額であることから、純資産の部において、評価・換算差額等に表示する。
- 12-2. 第10項から前項までに示された取扱いは2005年(平成17年)適用指針において定められたものであるが、2013年(平成25年)改正適用指針においてもこれらの取扱いを踏襲している。
純資産の部における項目と会計処理
- 13. 2005年(平成17年)に公表された純資産会計基準では、貸借対照表の純資産の部の表示を定めることを目的としており、表記上、それまでの資本の部を純資産の部に代え、新株予約権や非支配株主持分を当該純資産の部に記載することとした。また、純資産の部においては、評価・換算差額等を区分し、これには繰延ヘッジ損益も含まれることとされた。しかし、表示を除く会計処理については、既存の会計基準によることとしていた(純資産会計基準第1項及び第26項)。
- 2013年(平成25年)に改正された純資産会計基準においても、これらの取扱いを踏襲している。
- (1) (削 除)
- (2) (削 除)
- (3) (削 除)
- 14. 純資産の部に新株予約権や非支配株主持分、繰延ヘッジ損益を記載することとしたことから、本適用指針では、連結会計基準、持分法会計基準や外貨基準の適用指針の一部として、資本連結における子会社の資本及び持分法の適用における被投資会社の資本(第5項及び第6項参照)や在外子会社の純資産の換算(第7項参照)について明確にしている。
- なお、評価・換算差額等については、これらに関する、当期までの期間に課税された法人税等及び繰延税金資産又は繰延税金負債を控除して計上することとなり、当該法人税等及び繰延税金資産又は繰延税金負債の取扱いについては、企業会計基準第27号「法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準」第5項から第5-5項並びに企業会計基準適用指針第28号「税効果会計に係る会計基準の適用指針」第9項、第11項から第13項及び第27項によることとなる。
(削除)
- 15. (削 除)
- 16. (削 除)
- 17. (削 除)
- 18. (削 除)
- 19. (削 除)
- 19-2. (削 除)
資本連結における子会社の資本及び持分法の適用における被投資会社の資本
- 20. 連結会計基準第18項において、連結貸借対照表は、親会社及び子会社の個別貸借対照表における資産、負債及び純資産の金額を基礎とし、子会社の資産及び負債の評価、連結会社相互間の投資と資本及び債権と債務の相殺消去等の処理を行って作成するとされている。純資産会計基準では、貸借対照表の表記上、これまでの資本の部を純資産の部に代え、新株予約権や非支配株主持分、繰延ヘッジ損益を当該純資産の部に記載することとしたが、表示を除く会計処理については、従来とは異なる定めはしていない。このため、本適用指針でも、資本連結において相殺消去の対象となる子会社の資本は、従来どおり、子会社の貸借対照表上の純資産の部における株主資本及び評価・換算差額等を基礎とし、子会社の資産及び負債の評価差額を加減した額となるものとしている(第5項参照)。
- 21. したがって、子会社の貸借対照表において、純資産の部に記載することとされた子会社の新株予約権や非支配株主持分は、次の理由により、これまでと同様に、子会社の資本には含まれないものと考えられる。
- (1) 子会社の新株予約権は、子会社において払込資本となるか利益となるか未確定であるが、いずれの場合でも株主に帰属する部分となるため、子会社の資本にあたるという考え方がある。しかしながら、子会社の新株予約権は、これまでも資本連結において子会社の資本には含まれていない。これは、新株予約権者が、株主とは異なり報告主体の所有者ではないことや、子会社の新株予約権は、行使されれば非支配株主持分を増加させるが、行使されなければ持分比率に応じて親会社及び非支配株主に帰属するため、未行使の段階においては帰属が未確定であることなどによるものと考えられる。このため、本適用指針でも、従来どおり、子会社の株主資本や子会社の資産及び負債の評価差額とは区別し、子会社の資本にはあたらないものとしている。
なお、子会社の新株予約権は、これまでと同様に子会社の資本には含まれないものとすることから、これを持分比率に基づき、親会社持分と非支配株主持分とに按分しない。
また、親会社が子会社の新株予約権を保有している場合には、連結会社相互間の債権と債務の相殺消去(連結会計基準第31項)に準じて処理する。 - (2) 子会社で計上されている非支配株主持分は、孫会社の非支配株主の持分であるため、親会社の子会社への投資に対応する子会社の資本には含まれない。
- 22. 子会社の貸借対照表上、純資産の部に直接計上されている評価・換算差額等は、従来どおり、資本連結において子会社の資本に含まれ(第5項(2)参照)、親会社の投資との相殺消去及び非支配株主持分への振替によって消去されることとなる。したがって、連結子会社における評価・換算差額等は、従来どおり、原則として、持分比率により親会社持分額と非支配株主持分額とに按分される。
- なお、子会社における当該評価・換算差額等は、純資産会計基準において、報告主体の所有者に帰属するものではなく株主資本には含めないこととしていることから、子会社の所有者である親会社及び非支配株主による投資に対応しないのではないかという見方がある。しかし、純資産会計基準では、表示を除く会計処理については、従来とは異なる定めはせず、連結貸借対照表上、連結子会社における評価・換算差額等の非支配株主持分割合は非支配株主持分に含めるものとしている(純資産会計基準第7項なお書き)ため、本適用指針では、これまでと同様に、資本連結においては子会社の資本に該当するものとしている。
- 23. 子会社の繰延ヘッジ損益を、評価差額として親会社の子会社への投資に対応する子会社の資本に含めている場合には、非支配株主持分に相当する部分も含めて資本連結の対象となり、非支配株主持分に相当する部分の繰延ヘッジ損益は、非支配株主持分に含められることとなる。
- 24. 持分法の適用に際しては、被投資会社の財務諸表について、原則として、連結子会社の場合と同様の処理を行うものとする(持分法会計基準第8項)とされている。このため、被投資会社の資本は、第5項に準じ、被投資会社の貸借対照表上の純資産の部における株主資本及び評価・換算差額等を基礎とし、被投資会社の資産及び負債の評価差額を加減した額(ただし、それぞれ当期までの期間に課税された法人税等及び税効果額の控除後)となる(第6項参照)。
- 25. 持分法の適用にあたり、被投資会社が非連結子会社の場合には、全面時価評価法による。また、被投資会社が関連会社の場合には、従来どおり、原則として、部分時価評価法の原則法によって処理するため、株式の取得日ごとに当該日における評価差額は被投資会社の資本に含まれることとなる(第6項参照)。
- 25-2. 第20項から前項までに示された取扱いは2005年(平成17年)適用指針において定められたものであるが、2013年(平成25年)改正適用指針においてもこれらの取扱いを踏襲している。
- 25-3. 実務対応報告第41号「取締役の報酬等として株式を無償交付する取引に関する取扱い」第49項においては、株式引受権はストック・オプションにおける新株予約権と同様の特徴を有するとしており、子会社の株式引受権は子会社の新株予約権と同様に資本連結における子会社の資本には含まれないものと考えられるため、2021年改正適用指針においては第5項の修正は行っていない。
在外子会社の純資産の換算
- 26. 在外子会社の財務諸表の換算について、外貨基準では、資産及び負債は決算時の為替相場により円換算し、親会社による株式の取得時における資本に属する項目は株式取得時の為替相場により円換算するものとしている。ここでいう資本に属する項目とは、連結財務諸表の作成にあたり資本連結等の対象となる項目と考えられる。このため、親会社による株式の取得時における資本に属する項目は、これまでと実質的に同じ範囲となるように、在外子会社の貸借対照表上の純資産の部における株主資本、及び評価・換算差額等に属する項目、並びに在外子会社の資産及び負債の評価差額とすることが適当と考えられる(第7項(1)参照)。
- 27. また、外貨基準では、親会社による株式の取得後に生じた資本に属する項目は発生時の為替相場により円換算するものとしている。ここでいう親会社による株式の取得後に生じた資本に属する項目は、これまでと実質的に同じ範囲となるように、在外子会社の貸借対照表上の純資産の部における株主資本及び評価・換算差額等に属する項目とすることが適当と考えられる(第7項(2)参照)。
- この際、例えば、その他有価証券評価差額金のような評価・換算差額等に属する項目については、基本的に決算時において洗い替えられるため、本適用指針では、外貨基準にいう当該項目の発生時の為替相場は、決算時の為替相場が該当するものと考え、その旨を示すこととした(第7項(2)また書き参照)。
- 28. この結果、資本連結において在外子会社の資本は、支配獲得時の為替相場により換算する(第7項(1)参照)。このため、親会社持分と非支配株主持分を合計した全体に係る評価差額が支配獲得時の為替相場により円換算されることになり、株式の追加取得又は一部売却があっても、当該会社が連結子会社である限り、外貨額及び円換算額とも固定され、資本連結において、親会社持分と非支配株主持分に配分されることになる。
- 29. 在外子会社で計上されている新株予約権については、発生時の為替相場による円換算額を付するという考え方と、決算時の為替相場による円換算額を付するという考え方がある。従来の取扱いは必ずしも明確ではないが、新株予約権は仮勘定として負債の部に計上し、外貨基準において、資産及び負債は決算時の為替相場により円換算するものとしていることから、これまでは決算時の為替相場により円換算していたものと考えられる。
- しかしながら、本適用指針では、在外子会社で計上されている新株予約権の換算については、親会社が新株予約権を保有している場合との整合性や国際的な調和に配慮して、発生時の為替相場による円換算額を付するものとした(第7項(3)参照)。ただし、新株予約権に係る為替換算調整勘定は、新株予約権に含めて表示することとしたため、当該為替換算調整勘定を新株予約権に振り替えた後の円貨表示の新株予約権は、新株予約権の外貨額を決算時の為替相場により換算した額と同じになる。
- また、本適用指針では、親会社が新株予約権を保有している場合との整合性などに照らして、在外子会社で計上されている新株予約権が行使された場合には、行使時の為替相場により換算した円貨額をもって払込資本に振り替えることとし、また、失効した場合には、失効時の為替相場により換算した円貨額をもって当期の損益に振り替えることとした。
- 30. 在外子会社で計上されている非支配株主持分についても、これまでの取扱いは必ずしも明確ではないが、非支配株主持分が負債から中間区分に変更となった連結財務諸表原則(1997年(平成9年)6月改正)の後に改訂された外貨基準では特に明示されていないため、従来の負債の換算と同様に、これまで決算時の為替相場により円換算していたものと考えられる。
- また、在外子会社の財務諸表の換算については、(1)子会社の個別財務諸表と孫会社の個別財務諸表を各々換算する方法であっても、(2)子会社が作成した孫会社を含む連結財務諸表を親会社で換算する方法であっても、連結した結果が同一となるという理由から、(1)及び(2)の方法がいずれも認められている(移管指針第2号「外貨建取引等の会計処理に関する実務指針」(以下「外貨実務指針」という。)第38項)。(1)の方法については、為替換算調整勘定は持分比率に基づき、親会社持分割合と非支配株主持分割合とに区分され、非支配株主持分割合は非支配株主持分に振り替えられ、連結貸借対照表上の非支配株主持分に含めて表示される(外貨実務指針第41項)。この結果、為替換算調整勘定を振り替えた後の円貨表示の非支配株主持分は、外貨表示の非支配株主持分額を決算時の為替相場により換算した額と同じになるため、(2)の方法においても、(1)の方法と同一の結果となる決算時の為替相場による円換算が適当と考えられる。
- このような理由により、在外子会社で計上されている非支配株主持分については、従来どおり、決算時の為替相場による円換算額が付されることとなる(第7項(4)参照)。
- なお、この方法には、連結修正手続上、在外子会社で計上されている非支配株主持分を発生時の為替相場により換算し、当該非支配株主持分に係る為替換算調整勘定を、非支配株主持分に含めて表示することも含まれる。
- 30-2. 第26項から前項までに示された取扱いは2005年(平成17年)適用指針において定められたものであるが、2013年(平成25年)改正適用指針においてもこれらの取扱いを踏襲している。
- 30-3. 株式引受権は我が国における会社法の規定に基づき行われる取引によって計上されるものであることから、在外子会社において株式引受権が計上されることはないと考えられ、2021年改正適用指針においては第7項の修正は行っていない。
設 例
- 以下の設例は、本適用指針で示された内容について理解を深めるためのものであり、仮定として示された前提条件の記載内容は、経済環境や各企業の実情等に応じて異なることとなることに留意する必要がある。
設例
- [設例1] 子会社で計上されている繰延ヘッジ損益と資本連結
- 1 前提条件
- X1年3月31日
- ① P社は、X1年3月31日に、S社株式10%を150で取得した。
- ② S社のX1年3月期の抜粋貸借対照表は次のとおりである(借入金の金利固定化スワップについて時価評価を行い、評価差額200から税効果額80を控除した残額120を純資産の部に繰延ヘッジ利益として計上した。なお、S社の金利スワップ以外の資産及び負債には、重要な時価評価による簿価修正額はないものとする。)。

- X2年3月31日
- ③ P社は、X2年3月31日に、S社株式50%を750で追加取得し、S社を60%子会社とした。
- ④ S社のX2年3月期の抜粋貸借対照表は次のとおりである(借入金の金利固定化スワップの時価評価差額400から税効果額160を控除した残額240を純資産の部に繰延ヘッジ利益として計上している。)。

- 2 会計処理

- (*1) 150+750=900
- (*2) (500+300+240)×40%=416
- (*3) 900-(500+300+240)×60%=276
- [設例2] 在外子会社で計上されている新株予約権の換算
- 1 前提条件
- ① 親会社P社は、在外子会社S社株式の100%(発行済株式数540株)を保有している。S社は、X1年3月31日に、現金を対価とする新株予約権を発行した。両社の決算日は3月31日である。
- ② 新株予約権の数:100個
- ③ 新株予約権の発行時の時価:$200/個
- ④ 行使価額:$1,000(新株予約権1個の行使により発行する株式1株の発行価額)
- ⑤ 行使期限:X4年3月31日
- ⑥ X2年3月31日に、新株予約権の60%が行使された。
- ⑦ X3年3月31日に、新株予約権の30%が行使された。
- ⑧ X4年3月31日に、残る新株予約権(10%)のすべてが失効した。
- ⑨ 決算日の為替相場
- X1年3月31日: $1=\100
- X2年3月31日: $1=\101
- X3年3月31日: $1=\102
- X4年3月31日: $1=\103
- ⑩ 在外子会社の収益及び費用については、決算時の為替相場による円換算額を付している。
- 2 在外子会社における会計処理
- X1年3月31日

- (*1) $200/個×100個=$20,000
- X2年3月31日

- (*1) $1,000×60個=$60,000
- (*2) $200/個×60個=$12,000
- X3年3月31日

- (*1) $1,000×30個=$30,000
- (*2) $200/個×30個=$6,000
- X4年3月31日

- (*1) $200/個×10個=$2,000
- 抜粋貸借対照表(単位:$)-( )書きは貸方

- 3 親会社における円換算
- X1年3月31日($1=\100)

- X2年3月31日($1=\101)

- (*1) 現金払込分6,060,000円(=$60,000×@\101)と行使した新株予約権分1,212,000円(=$12,000×@\101)との合計7,272,000円
- (*2) 為替換算調整勘定8,000円は、新株予約権の残高に係るもの($8,000×(@\101-@\100))であり、新株予約権に振り替え、新株予約権は808,000円となる。
- X3年3月31日($1=\102)

- (*1) 当期の払込資本の増加は、現金払込分3,060,000円(=$30,000×@\102)と行使した新株予約権分612,000円(=$6,000×@\102)との合計3,672,000円であり、これと前期末7,272,000円との合計となる。
- (*2) 為替換算調整勘定76,000円は、新株予約権の残高分4,000円($2,000×(@\102-@\100))とX2年の増加資本72,000円($72,000×(@\102-@\101))の合計であり、このうち、新株予約権の残高に係る4,000円を、新株予約権に振り替え、新株予約権は204,000円となる。
- X4年3月31日($1=\103)

- (*1) 当期の払込資本の増加はないため、前期末10,944,000円となる。
- (*2) 新株予約権の当期失効分は206,000円(=$2,000×@\103)
- (*3) 為替換算調整勘定180,000円は、X2年の増加資本144,000円($72,000×(@\103-@\101))とX3年の増加資本36,000円($36,000×(@\103-@\102))との合計である。
- 抜粋貸借対照表(単位:千円)-( )書きは貸方

- 4 親会社における連結財務諸表上の会計処理
- (1) 在外子会社が発行する新株予約権を親会社が全額引受けている場合
- S社がX1年3月31日に現金を対価として発行した新株予約権を、親会社P社が全額引き受け、その他有価証券としているものとする。
- <親会社における外貨建保有新株予約権>
- 外貨建の抜粋精算表(単位:$)-( )書きは貸方

- 円貨建での抜粋精算表(単位:千円)-( )書きは貸方

- (*1) 現金払込分6,060千円(=$60,000×@\101)と行使した新株予約権分1,200千円(=$12,000×取得時の為替相場@\100)との合計7,260千円
- (*2) 新株予約権に係るその他有価証券評価差額金8千円($8,000×(@\101-@\100))
- (*3) 支出した現金に係る為替差損20千円(=$80,000×@\101-8,060千円)
- (*4) 現金払込分3,060千円(=$30,000×@\102)と行使した新株予約権分600千円(=$6,000×@\100)との合計3,660千円
- (*5) 新株予約権に係るその他有価証券評価差額金4千円($2,000×(@\102-@\100))
- (*6) 支出した現金に係る当期の為替差損80千円(=$110,000×@\102-11,140千円)と前期分20千円の合計100千円
- (*7) 支出した現金に係る当期の為替差損110千円(=$110,000×@\103-11,220千円)と前期分100千円の合計210千円
- (*8) ここでは、理解を容易にするために、損益項目別に利益剰余金の内訳を示している。
- <新株予約権に係る連結修正仕訳>
- X1年3月31日

- X2年3月31日

- (*1) $8,000×(@\101-@\100)=8,000円
- 子会社では、新株予約権に発生時の為替相場による円換算額を付し、新株予約権に係る為替換算調整勘定は新株予約権に含めて表示するが、親会社の保有するその他有価証券(新株予約権)との相殺消去にあたっては、当該為替換算調整勘定も考慮する。

- (*2) $12,000×(@\101-@\100)=12,000円
- 新株予約権が行使された場合、子会社では行使時の為替相場により換算した円貨額をもって払込資本に振り替えることとなるが、行使された新株予約権に係る為替換算調整勘定についても、資本連結において親会社の子会社に対する投資と相殺消去する。この結果、為替相場による消去差額は生じないこととなる。
- X3年3月31日

- (*1) $2,000×(@\102-@\100)=4,000円

- (*2) 前期末 7,272,000円+行使による払込分 3,672,000円{現金払込分($30,000×@\102)+新株予約権分($6,000×@\102)}=10,944,000円
- (*3) $12,000×(@\101-@\100)+$6,000×(@\102-@\100)=24,000円
- X4年3月31日

- (*1) $2,000×(@\103-@\100)=6,000円

- (*2) $12,000×(@\101-@\100)+$6,000×(@\102-@\100)=24,000円
- <抜粋連結貸借対照表(単位:千円)>

- (2) 在外子会社が発行する新株予約権を親会社以外の第三者が全額引受けている場合
- S社(P社が発行済株式(540株)の100%を有する。)がX1年3月31日に現金を対価として発行した新株予約権を、親会社P社以外の第三者が全額引き受けているものとする。なお、S社の純資産の部は以下のとおりであるものとする。

- <新株予約権に係る連結修正仕訳>
- X1年3月31日

- X2年3月31日

- (*1) 為替換算調整勘定の非支配株主持分への振替
- 前期末の資本金 $540,000×(@\101-@\100)×10%=54,000円
- (*2) 親会社P社以外の第三者が新株予約権を行使することによりP社の持分比率は、100%から90%(=540株/600株)になった。この結果、増加する非支配株主持分(10%)は、次のようになる。
- 子会社の資本61,272,000円(=$540,000×@\100+$72,000×@\101)×10%=6,127,200円
- X3年3月31日

- (*1) 為替換算調整勘定の非支配株主持分への振替
- {当期末の為替換算調整勘定 1,152,000円(=$540,000×(@\102-@\100)+$72,000×(@\102-@\101))-前期末の為替換算調整勘定 540,000円}×10%=61,200円
- (*2) 当期の新株予約権行使による払込分
- 現金払込分($30,000×@\102)+新株予約権分($6,000×@\102)=3,672,000円
- (*3) 非支配株主が全額引受け行使したS社の新株予約権を、いったん従来の持分比率(90%)でP社も引受け行使したものとみなす。
- 3,672,000×90%=3,304,800円
- (*4) 非支配株主が新株予約権を行使することによりP社の持分比率は、90%から85.7%(=540株/630株)になった。この結果、増加する非支配株主持分(4.3%)は、次のようになる。
- {子会社の資本 64,944,000円(=$540,000×@\100+$72,000×@\101+$36,000×@\102)+当期末の為替換算調整勘定 1,152,000円}×4.3%=2,842,128円
- (*5) 当期末の為替換算調整勘定 1,152,000円×4.3%=49,536円
- X4年3月31日

- (*1) 新株予約権戻入益の非支配株主持分への振替 206,000円×14.3%=29,458円
- (*2) 為替換算調整勘定の非支配株主持分への振替
- {当期末の為替換算調整勘定 1,800,000円(=$540,000×(@\103-@\100)+$72,000×(@\103-@\101)+$36,000×(@\103-@\102))-前期末の為替換算調整勘定 1,152,000円}×14.3%=92,664円
- <抜粋連結貸借対照表(単位:円)>

- (*1) 為替換算調整勘定の分析
- X2年3月31日
- 在外子会社の資本に係る為替換算調整勘定
- $540,000×(@\101-@\100)=540,000円・・・①
- ・為替換算調整勘定のうち、非支配株主持分(連結財務諸表上、非支配株主持分として表示)
- ①×10%=54,000円 ・・・ A
- ・為替換算調整勘定のうち、親会社持分(連結財務諸表上、為替換算調整勘定として表示)
- ①×90%=486,000円 ・・・ B
- X3年3月31日
- 在外子会社の資本に係る為替換算調整勘定
- $540,000×(@\102-@\100)+$72,000×(@\102-@\101)=1,152,000円・・・②
- ・為替換算調整勘定のうち、非支配株主持分(連結財務諸表上、非支配株主持分として表示)
- 前期末54,000円+当期増減分61,200円+持分変動分 49,536円
- =②×14.3%=164,736円 ・・・ C
- ・為替換算調整勘定のうち、親会社持分(連結財務諸表上、為替換算調整勘定として表示)
- ②×85.7%=987,264円 ・・・ D
- X4年3月31日
- 在外子会社の資本に係る為替換算調整勘定
- $540,000×(@\103-@\100)+$72,000×(@\103-@\101)+$36,000×(@\103-@\102)
- =1,800,000円・・・③
- ・為替換算調整勘定のうち、非支配株主持分(連結財務諸表上、非支配株主持分として表示)
- 前期末164,736円+当期増減分92,664円
- =③×14.3%=257,400円 ・・・ E
- ・為替換算調整勘定のうち、親会社持分(連結財務諸表上、為替換算調整勘定として表示)
- ③×85.7%=1,542,600円 ・・・ F
- (*2) 非支配株主持分の分析
- X2年3月31日
- 在外子会社の資本 61,272,000円(=$540,000×@\100+$72,000×@\101)×10%+為替換算調整勘定 54,000円(A)=6,181,200円 ・・・ G
- X3年3月31日
- 在外子会社の資本 64,944,000円(=$540,000×@\100+$72,000×@\101+$36,000×@\102)×14.3%+為替換算調整勘定 164,736円(C)=9,451,728円 ・・・ H
- X4年3月31日
- 在外子会社の資本 65,150,000円(=$540,000×@\100+$72,000×@\101+$36,000×@\102+$2,000×@\103)×14.3%+為替換算調整勘定257,400円(E)=9,573,850円 ・・・ I
- (*3) ここでは、理解を容易にするために、損益項目別に利益剰余金の内訳を示している。
- (*4) 親会社の子会社に対する投資に要した現金に係る為替差損
- X2年3月31日
- $540,000×(@\101-@\100)=540,000円
- X3年3月31日
- $540,000×(@\102-@\100)=1,080,000円
- X4年3月31日
- $540,000×(@\103-@\100)=1,620,000円
- 以 上