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実務対応報告第42号グループ通算制度を適用する場合の会計処理及び開示に関する取扱い
目 的
- 1. 2020年3月27日に成立した「所得税法等の一部を改正する法律」(令和2年法律第8号)(以下「改正法人税法」という。)において、連結納税制度を見直しグループ通算制度へ移行することとされた。
- 2. 本実務対応報告は、グループ通算制度を適用する場合における法人税及び地方法人税並びに税効果会計の会計処理及び開示の取扱いを明らかにすることを目的とする。
範 囲
- 3. 本実務対応報告は、グループ通算制度を適用する企業の連結財務諸表及び個別財務諸表並びに連結納税制度から単体納税制度に移行する企業の連結財務諸表及び個別財務諸表に適用する。
- なお、本実務対応報告は、通算税効果額の授受を行うことを前提としており、通算税効果額の授受を行わない場合の会計処理及び開示については取り扱っていない。
用語の定義
- 4. 本実務対応報告において、「法人税」、「地方法人税」、「住民税」、「事業税」及び「所得」は、企業会計基準第27号「法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準」(以下「法人税等会計基準」という。)における定義と同様とし、「納税主体」、「法人税等」、「一時差異」、「一時差異等」、「将来減算一時差異」、「将来加算一時差異」、「連結財務諸表固有の一時差異」、「課税所得」、「税務上の欠損金」及び「超過課税による税率」は、企業会計基準適用指針第28号「税効果会計に係る会計基準の適用指針」(以下「税効果適用指針」という。)における定義と同様とし、「スケジューリング不能な一時差異」、「スケジューリング可能な一時差異」及び「一時差異等加減算前課税所得」は、企業会計基準適用指針第26号「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」(以下「回収可能性適用指針」という。)における定義と同様とする。
- 5. また、本実務対応報告において、次のとおり用語を定義する。
- (1) 「通算会社」とは、グループ通算制度を適用する企業をいう。
- (2) 「通算親会社」とは、通算会社のうち、法人税法第2条第12号の6の7に規定する通算親法人をいう。
- (3) 「通算子会社」とは、通算会社のうち、法人税法第2条第12号の7に規定する通算子法人をいう。
- (4) 「通算グループ」とは、通算親会社及び通算親会社との間に完全支配関係がある通算子会社により構成される企業集団をいう。
- (5) 「通算前所得」とは、法人税法第64条の5に規定する通算前所得金額をいい、課税所得から損益通算(本項(8)参照)及び欠損金の通算(本項(9)参照)による損金算入額又は益金算入額等を除いた額をいう。
- (6) 「通算前欠損金」とは、法人税法第64条の5に規定する通算前欠損金額をいい、税務上の欠損金から損益通算(本項(8)参照)及び欠損金の通算(本項(9)参照)による損金算入額又は益金算入額等を除いた額をいう。
- (7) 「特定繰越欠損金」とは、法人税法第64条の7第2項に規定する特定欠損金額をいい、グループ通算制度を適用する前に生じた税務上の繰越欠損金であって一定の要件を満たす場合にグループ通算制度適用後にも控除可能な税務上の繰越欠損金等をいう。
- (8) 「損益通算」とは、法人税法第64条の5に規定する損益通算をいい、通算グループ内で通算前欠損金が生じている通算会社(以下「欠損会社」という。)の通算前欠損金の合計額を、通算前所得が生じている通算会社(以下「所得会社」という。)の通算前所得の合計額を限度として、所得会社の通算前所得の金額の比で配分し、所得会社において損金に算入するとともに、損金に算入された金額の合計額を欠損会社の通算前欠損金の金額の比で配分した額を、欠損会社において益金に算入することをいう。
- (9) 「欠損金の通算」とは、法人税法第64条の7に規定する欠損金の通算をいい、通算グループ全体の特定繰越欠損金以外の繰越欠損金の合計額を通算会社の損金算入限度額の比で配分した金額を、通算会社において損金に算入することなどをいう。
- (10) 「通算税効果額」とは、法人税法第26条第4項に規定する通算税効果額をいい、損益通算、欠損金の通算及びその他のグループ通算制度に関する法人税法上の規定を適用することにより減少する法人税及び地方法人税の額に相当する金額として、通算会社と他の通算会社との間で授受が行われた場合に益金の額又は損金の額に算入されない金額をいう。
- (11) 「一時差異等加減算前通算前所得」とは、将来の事業年度における通算前所得の見積額から、当該事業年度において解消することが見込まれる当期末に存在する将来加算一時差異及び将来減算一時差異の額を除いた額をいう([設例1])。
- (12) 「投資簿価修正」とは、法人税法施行令第119条の3第5項等に従って、通算会社が保有する他の通算会社の株式等の帳簿価額について、当該他の通算会社が通算会社でなくなる時点において、当該他の通算会社の税務上の簿価純資産価額(税務上の資産の帳簿価額の合計額から税務上の負債(新株予約権及び株式引受権に係る義務を含む。)の帳簿価額の合計額を減算した金額に、所定の要件を満たす場合には資産調整勘定対応金額及び負債調整勘定対応金額などを加算及び減算した金額)との差額を加算又は減算することをいう。
会計処理
I. 法人税及び地方法人税に関する会計処理
- 6. 本実務対応報告に定めのあるものを除き、法人税及び地方法人税に関する会計処理は、法人税等会計基準の定めに従う。
- 7. 個別財務諸表において、通算税効果額は当事業年度の所得に対する法人税及び地方法人税に準ずるものとして取り扱う。
II. 税効果会計に関する会計処理
- 8. 本実務対応報告に定めのあるものを除き、税効果会計に関する会計処理については、企業会計審議会が1998年10月に公表した「税効果会計に係る会計基準」(以下「税効果会計基準」という。)及び同注解、企業会計基準第28号「『税効果会計に係る会計基準』の一部改正」(以下「企業会計基準第28号」という。)、税効果適用指針並びに回収可能性適用指針(以下、税効果会計基準及び同注解、企業会計基準第28号、税効果適用指針並びに回収可能性適用指針を合わせて「税効果会計基準等」という。)の定めに従う。
- なお、グループ通算制度の対象とされていない住民税及び事業税については、それぞれ法人税及び地方法人税とは区別して、税効果会計基準等を適用する。また、住民税の税額計算は、グループ通算制度によって算定された法人税額からグループ通算制度による影響を控除して算定するため、これを考慮して繰延税金資産の回収可能性の判断を行う。
繰延税金資産及び繰延税金負債の計算に用いる税率
- 9. 本実務対応報告に定めのあるものを除き、繰延税金資産及び繰延税金負債の計算に用いる税率は税効果適用指針第45項から第49項の定めに従い、利益に関連する金額を課税標準とする税金の種類(以下「税金の種類」という。)ごとに適用する税率を算定する。
- また、繰延税金資産の回収可能性が法人税及び地方法人税と事業税とで異なる場合又は繰延税金資産の回収可能性が住民税と事業税とで異なる場合で、かつ、回収可能性が異なることによる重要な影響がある場合には、その影響を考慮した税率で繰延税金資産の計算を行う([設例5])。
法人税及び地方法人税に係る繰延税金資産の回収可能性の判断
個別財務諸表における繰延税金資産の回収可能性
- 10. 本実務対応報告に定めのあるものを除き、個別財務諸表における将来減算一時差異及び税務上の繰越欠損金に係る繰延税金資産の回収可能性の判断については、回収可能性適用指針第6項から第34項の定めに従う。
(繰延税金資産の回収可能性の判断に関する手順)
- 11. 個別財務諸表における繰延税金資産の回収可能性の判断に関する手順について、回収可能性適用指針第11項(5)及び(6)を適用する際には、通算税効果額の影響を考慮して、次のとおり取り扱う([設例2])。
- (1) 回収可能性適用指針第11項(1)から(4)により将来加算一時差異の解消見込額と相殺し切れなかった将来減算一時差異の解消見込額については、まず、通算会社単独の将来の一時差異等加減算前通算前所得の見積額と解消見込年度ごとに相殺し、その後、損益通算による益金算入見積額(当該年度の一時差異等加減算前通算前所得の見積額がマイナスの場合には、マイナスの見積額に充当後)と解消見込年度ごとに相殺する。
- (2) (1)で相殺し切れなかった将来減算一時差異の解消見込額については、解消見込年度の翌年度以降において、特定繰越欠損金以外の繰越欠損金として取り扱われることから、次項に従って、税務上の繰越欠損金の控除見込年度ごとの損金算入のスケジューリングに従って回収が見込まれる金額と相殺する。
- 12. 個別財務諸表における繰延税金資産の回収可能性の判断に関する手順について、回収可能性適用指針第11項また書きを適用する際には、次のとおり取り扱う([設例3])。
- 特定繰越欠損金と特定繰越欠損金以外の繰越欠損金ごとに、その繰越期間にわたって、将来の課税所得の見積額(税務上の繰越欠損金控除前)に基づき、税務上の繰越欠損金の控除見込年度ごとに損金算入限度額計算及び翌期繰越欠損金額の算定手続に従って損金算入のスケジューリングを行い、回収が見込まれる金額を繰延税金資産として計上する。
(企業の分類に応じた繰延税金資産の回収可能性に関する取扱い)
- 13. 個別財務諸表における繰延税金資産の回収可能性の判断を行うにあたっての企業の分類について、回収可能性適用指針第15項から第32項を適用する際には、次のとおり取り扱う([設例4])。
- (1) 通算グループ内のすべての納税申告書の作成主体を1つに束ねた単位(以下「通算グループ全体」という。)の分類と通算会社の分類をそれぞれ判定する。なお、通算グループ全体の分類は、本実務対応報告第17項に従って判定し、通算会社の分類は、損益通算や欠損金の通算を考慮せず、自社の通算前所得又は通算前欠損金に基づいて判定する。
- (2) 将来減算一時差異に係る繰延税金資産の回収可能性の判断については、通算グループ全体の分類が、通算会社の分類と同じか上位にある場合は、通算グループ全体の分類に応じた判断を行う。また、通算グループ全体の分類が、通算会社の分類の下位にある場合は、当該通算会社の分類に応じた判断を行う。
- (3) 税務上の繰越欠損金に係る繰延税金資産の回収可能性の判断において、特定繰越欠損金以外の繰越欠損金については通算グループ全体の分類に応じた判断を行う。また、特定繰越欠損金については、損金算入限度額計算における課税所得ごとに、通算グループ全体の課税所得は通算グループ全体の分類に応じた判断を行い、通算会社の課税所得は通算会社の分類に応じた判断を行う。
連結財務諸表における繰延税金資産の回収可能性
- 14. 連結財務諸表における将来減算一時差異及び税務上の繰越欠損金に係る繰延税金資産の回収可能性については、通算グループ全体について回収可能性適用指針第6項から第34項に従って判断を行い、個別財務諸表において計上した繰延税金資産の合計額との差額は、連結上修正する([設例2])。
(繰延税金資産の回収可能性の判断に関する手順)
- 15. 連結財務諸表における繰延税金資産の回収可能性の判断に関する手順について、回収可能性適用指針第11項を適用する際は、同項の「将来減算一時差異」は「通算グループ全体の将来減算一時差異の合計」と、「将来加算一時差異」は「通算グループ全体の将来加算一時差異の合計」と、「一時差異等加減算前課税所得の見積額」は「通算グループ全体の一時差異等加減算前課税所得の見積額の合計」と読み替えた上で、回収可能性の判断を行う([設例2])。
- 16. 連結財務諸表における繰延税金資産の回収可能性の判断に関する手順について、回収可能性適用指針第11項(6)及び同項また書きを適用する際には、本実務対応報告第12項と同様に取り扱い、特定繰越欠損金と特定繰越欠損金以外の繰越欠損金ごとに損金算入のスケジューリングを行い、回収が見込まれる金額を繰延税金資産として計上する。
(企業の分類に応じた繰延税金資産の回収可能性に関する取扱い)
- 17. 連結財務諸表における通算グループ全体の企業の分類の判断においては、回収可能性適用指針第15項から第32項における「一時差異等」や「課税所得」、「税務上の欠損金」、「一時差異等加減算前課税所得」等の通算会社ごとに生じる項目は、その合計が通算グループ全体で生じるものとして取り扱い、通算グループ全体の分類を判断する([設例4])。
- また、税務上の繰越欠損金に係る繰延税金資産の回収可能性の判断については、本実務対応報告第13項(3)と同様に取り扱う。
未実現損益の消去に係る一時差異の取扱い
- 18. 連結財務諸表における未実現損益の消去に係る連結財務諸表固有の一時差異については、税効果適用指針第34項から第37項に従って処理する。
- ただし、繰延税金資産及び繰延税金負債の計上対象となる法人税及び地方法人税に係る未実現損益の消去に係る一時差異の上限について、税効果適用指針第35項における「売却元の連結会社の売却年度における課税所得」を「通算グループ全体の課税年度における課税所得の合計」と、税効果適用指針第36項における「売却元の連結会社の売却年度における当該未実現損失に係る税務上の損金を算入する前の課税所得」を「通算グループ全体の課税年度における当該未実現損失に係る税務上の損金を計上する前の課税所得の合計」と読み替えた上で適用する。
投資簿価修正に関する取扱い
- 19. 投資簿価修正による他の通算会社の株式等の帳簿価額の修正額は、投資簿価修正が行われる年度の課税所得を増額又は減額する効果を有することから、期末時点における他の通算会社の株式等の帳簿価額と税務上の簿価純資産価額との差額は、一時差異と同様に取り扱い、個別財務諸表において次のように会計処理を行う([設例6])。
- (1) 税務上の簿価純資産価額が他の通算会社の株式等の帳簿価額を上回り、投資簿価修正によって、当該帳簿価額が増額修正される場合((3)の場合を除く。)、当該増額修正される部分については、将来の課税所得を減額する効果を有することから、次のいずれも満たす場合、繰延税金資産を計上する。
- ① 予測可能な将来の期間に、他の通算会社の株式等の売却等(投資簿価修正が行われる場合に限る。以下同じ。)を行う意思決定又は実施計画が存在する場合
- ② 回収可能性適用指針に従って、当該繰延税金資産の回収可能性があると判断される場合
- (2) 税務上の簿価純資産価額が他の通算会社の株式等の帳簿価額を下回り、投資簿価修正によって、当該帳簿価額が減額修正される場合((3)の場合を除く。)、当該減額修正される部分については、将来の課税所得を増額する効果を有することから、次のいずれも満たす場合を除き、繰延税金負債を計上する。
- ① 他の通算会社に対する株式等の売却等を、当該株式等を保有する会社自身で決めることができる場合
- ② 予測可能な将来の期間に、他の通算会社の株式等の売却等を行う意思がない場合
- (3) 他の通算会社の株式等について評価損(グループ通算制度の適用前に当該株式等について行った評価損を含む。)を計上している場合で、当該評価損に係る繰延税金資産を計上したときには、他の通算会社の株式等の評価損計上前の帳簿価額と税務上の簿価純資産価額との差額について税効果を合わせて認識する。また、当該評価損に係る繰延税金資産を計上していない場合で、税務上の簿価純資産価額が他の通算会社の株式等の評価損計上前の帳簿価額を下回るとき(当該下回る部分が評価損に係る将来減算一時差異の範囲内である場合に限る。)は、当該下回る部分に係る繰延税金負債を認識しない。
- 20. 連結財務諸表においては、個別財務諸表における前項の会計処理によって計上した繰延税金資産及び繰延税金負債を取り崩した上で、連結貸借対照表における通算子会社に対する投資の連結貸借対照表上の価額と税務上の簿価純資産価額との差額を連結財務諸表固有の一時差異と同様に取り扱い、税効果適用指針第20項から第23項に従って処理する。
適用時、加入時及び離脱時の取扱い
適用時の取扱い
- 21. グループ通算制度を新たに適用する場合には、グループ通算制度の適用の承認があった日又は承認があったものとみなされた日の前日を含む連結会計年度及び事業年度(期中会計期間を含む。)の連結財務諸表及び個別財務諸表から、翌年度よりグループ通算制度を適用するものとして、税効果会計を適用する。
- ただし、適用の承認を受けていない場合であっても、翌年度よりグループ通算制度を適用することが明らかな場合であって、かつ、グループ通算制度に基づく税効果会計の会計処理が合理的に行われると認められる場合には、これらを満たした時点を含む連結会計年度及び事業年度(期中会計期間を含む。)の連結財務諸表及び個別財務諸表から、翌年度よりグループ通算制度を適用するものと仮定して、税効果会計を適用することができる。
加入時の取扱い
- 22. 株式の取得等によって、新たに通算子会社となる(以下「加入」という。)企業がある場合、次のように取り扱う。
- (1) 加入前の時点で連結子会社である企業が、株式の取得等によって新たに通算子会社となる場合であって、当該企業を将来、通算子会社とすることについての意思決定がなされ、かつ、実行される可能性が高いと認められる場合には、これらを満たした時点を含む連結会計年度及び事業年度(期中会計期間を含む。)の連結財務諸表及び個別財務諸表から、その影響を考慮して税効果会計を適用する。
- (2) 加入前の時点で連結子会社でない企業が、株式の取得等によって新たに通算子会社となる場合には、通算子会社となった時から、その影響を考慮して税効果会計を適用する。
ただし、通算子会社となることによって、税務上の繰越欠損金の引継制限(法人税法第57条第6項及び第8項)や特定資産に係る譲渡等損失額の損金算入制限(法人税法第64条の14第1項)が課される場合で、通算子会社となる可能性が高く、かつ、当該企業においてもその事実が明らかになっていると認められる場合には、これらを満たした時点を含む事業年度(期中会計期間を含む。)の個別財務諸表から、損金算入が見込まれない税務上の繰越欠損金及び特定資産に係る将来減算一時差異について繰延税金資産の回収可能性はないものとする。
離脱時の取扱い
- 23. 株式の売却等によって、通算子会社でなくなる(以下「離脱」という。)企業がある場合であって、将来、通算子会社でなくなることについての意思決定がなされ、かつ、実行される可能性が高いと認められる場合には、これらを満たした時点を含む連結会計年度及び事業年度(期中会計期間を含む。)の連結財務諸表及び個別財務諸表から、その影響を考慮して税効果会計を適用する。
開 示
表 示
法人税及び地方法人税に関する表示
- 24. 本実務対応報告に定めのあるものを除き、法人税及び地方法人税に関する表示は、法人税等会計基準の定めに従う。
- 25. 通算税効果額を損益に計上する場合には法人税及び地方法人税を示す科目に含めて個別財務諸表における損益計算書に表示し、株主資本又は評価・換算差額等に計上する場合には貸借対照表の純資産の部の対応する内訳項目から控除して表示する。
- また、通算税効果額に係る債権及び債務は、未収入金や未払金などに含めて個別財務諸表における貸借対照表に表示する。
繰延税金資産及び繰延税金負債に関する表示
個別財務諸表における表示
- 26. 通算会社で計上した繰延税金資産及び繰延税金負債の表示は、税効果会計基準等の定めに従う。
連結財務諸表における表示
- 27. 法人税及び地方法人税に係る繰延税金資産及び繰延税金負債は、企業会計基準第28号第2項の定めによらず、通算グループ全体の繰延税金資産の合計と繰延税金負債の合計を相殺して、連結貸借対照表の投資その他の資産の区分又は固定負債の区分に表示する。
注記事項
本実務対応報告の適用に関する注記
- 28. グループ通算制度の適用により、本実務対応報告に従って法人税及び地方法人税の会計処理又はこれらに関する税効果会計の会計処理を行っている場合には、その旨を次項の注記の内容とあわせて注記する。
税効果会計に関する注記
- 29. 連結財務諸表及び個別財務諸表における税効果会計基準第四及び企業会計基準第28号第3項に定める注記は、法人税及び地方法人税と住民税及び事業税を区分せずに、これらの税金全体で注記する。
連帯納付義務に関する注記
- 30. 通算会社が負っている連帯納付義務については、偶発債務としての注記を要しない。
適用時期等
- 31. 本実務対応報告は、2022年4月1日以後に開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用する。
- ただし、税効果会計に関する会計処理及び開示については、2022年3月31日以後に終了する連結会計年度及び事業年度の期末の連結財務諸表及び個別財務諸表から適用することができる。
- 32. 税効果会計の会計処理及び開示に関する経過的な取扱いは、次のとおりとする。
- (1) 連結納税制度を適用している企業がグループ通算制度に移行する場合、本実務対応報告の適用は、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更に該当するが、会計方針の変更による影響はないものとみなす。また、会計方針の変更に関する注記は要しない。
- (2) 単体納税制度を適用している企業が2022年4月1日以後最初に開始する連結会計年度及び事業年度の期首からグループ通算制度に移行する場合の本実務対応報告に基づく税効果会計の適用時期については、第21項の定めによらず、前項に定める時期から適用する。
- 33. 連結納税制度を適用している企業が単体納税制度に移行する場合、第31項の定めにかかわらず、グループ通算制度を適用しない旨の届出書を提出した日の属する会計期間(四半期会計期間を含む。)から、2022年4月1日以後最初に開始する事業年度より単体納税制度を適用するものとして税効果会計を適用する。
- 34. 次の実務対応報告については、本実務対応報告の適用により、当該実務対応報告を適用する企業が存在しなくなった段階で廃止する。
- (1) 実務対応報告第5号「連結納税制度を適用する場合の税効果会計に関する当面の取扱い(その1)」(以下「実務対応報告第5号」という。)
- (2) 実務対応報告第7号「連結納税制度を適用する場合の税効果会計に関する当面の取扱い(その2)」(以下「実務対応報告第7号」という。)
- (3) 実務対応報告第39号「連結納税制度からグループ通算制度への移行に係る税効果会計の適用に関する取扱い」(以下「実務対応報告第39号」という。)
議 決
- 35. 本実務対応報告は、第463回企業会計基準委員会に出席した委員14名全員の賛成により承認された。
結論の背景
経 緯
- 36. 2020年3月27日に成立した改正法人税法において、従来の連結納税制度が見直され、グループ通算制度に移行することとされた。連結納税制度を適用する場合の会計処理及び開示については、実務対応報告第5号及び実務対応報告第7号(以下合わせて「実務対応報告第5号等」という。)を定めていたが、グループ通算制度への移行に伴い、グループ通算制度を適用する場合における法人税及び地方法人税並びに税効果会計の会計処理及び開示の取扱いを定める必要が生じたことから、当委員会において検討を行った。
- 本実務対応報告は、2021年3月に公表した実務対応報告公開草案第61号「グループ通算制度を適用する場合の会計処理及び開示に関する取扱い(案)」に対して寄せられた意見を踏まえて検討を行い、公開草案の内容を一部修正した上で公表するに至ったものである。
- なお、税効果会計を適用するにあたっては、決算日において国会で成立している税法に規定されている方法に基づいて計算を行う必要がある(税効果適用指針第44項)が、本実務対応報告の公表前においては、グループ通算制度における繰延税金資産の回収可能性等の判断を行うことが困難であるとの意見が聞かれたことから、実務対応報告第39号において、改正前の税法の規定に基づくことができるものとする特例的な取扱いを定めていた。
範 囲
通算税効果額の授受を行わない場合の取扱い
- 37. 通算会社が申告納付を行う税額は、通算前所得に対して通算グループ内の他の通算会社との損益通算や欠損金の通算を行った後の課税所得を基に算定されたものであり、当該通算等による税額の減少額を通算税効果額として、通算会社間で金銭等の授受が行われることが想定されている。ただし、通算税効果額の授受を行うか否かは任意であり、授受を行った場合は、各通算会社で益金の額又は損金の額に算入されないこととなる(法人税法第26条第4項及び第38条第3項)。
- 38. 前項のように、通算税効果額の授受は任意であり、実務上、通算税効果額の授受を行わない場合が生じるか否かが定かではないが、連結納税制度においては個別帰属額(各連結事業年度の連結所得に対する法人税の負担額として帰せられ、又は当該法人税の減少額として帰せられる金額(改正前法人税法第81条の18))の授受を行っている場合が多いと考えられ、グループ通算制度においても一般的には通算税効果額の授受を行うことが想定される。また、通算税効果額の授受を行わない場合の取扱いの検討には一定の困難性があるものと考えられる。よって、本実務対応報告においては通算税効果額の授受を行うことを前提として会計処理及び開示を定めており、通算税効果額の授受を行わない場合の会計処理及び開示については、連結納税制度における取扱いを踏襲するか否かも含め取り扱っていない(第3項なお書き参照)。そのため、通算税効果額の授受を行わない場合の具体的な定めは存在せず、企業会計基準第24号「会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」第4-3項に定める「関連する会計基準等の定めが明らかでない場合」に該当することになると考えられる。
実務対応報告第5号等との関係
- 39. グループ通算制度は、連結納税制度を見直したものであるが、連結納税制度が企業グループ全体を1つの納税単位とする制度であるのに対して、グループ通算制度は法人格を有する各法人を納税単位として、課税所得金額及び法人税額の計算並びに申告は各法人がそれぞれ行うこと(個別申告方式)が基本とされている。また、同時に企業グループの一体性に着目し、課税所得金額及び法人税額の計算上、企業グループをあたかも1つの法人であるかのように捉え、損益通算等の調整を行う仕組みとされている。
- このような相違点に対して、内閣府に設置されている税制調査会の第24回総会において提出された「連結納税制度の見直しについて」では、「企業グループの一体性に着目し、完全支配関係にある企業グループ内における損益通算を可能とする基本的な枠組みは維持しつつ、制度の簡素化により、企業の事務負担の軽減を図ることで、企業グループの事務処理能力の差が制度の選択に与える影響をできる限り小さくし、同様の経営を行っている企業グループ間での課税の中立性・公平性を確保する必要がある。」とされている。
- 40. このように、連結納税制度とグループ通算制度とでは、全体を合算した所得を基に納税申告を親法人が行うか、各法人の所得を基にそれらを通算した上で納税申告を各法人が行うかなどの申告手続は異なるが、企業グループの一体性に着目し、完全支配関係にある企業グループ内における損益通算を可能とする基本的な枠組みは同じであることから、グループ通算制度を適用する場合の本実務対応報告の開発にあたっては、基本的な方針として、連結納税制度とグループ通算制度の相違点に起因する会計処理及び開示を除き、連結納税制度における実務対応報告第5号等の会計処理及び開示に関する取扱いを踏襲することとした。
- 41. なお、実務対応報告第5号等では、法人税等会計基準又は税効果会計基準等に定めのある事項に従う場合でもその旨を記載していたが、本実務対応報告においては、本実務対応報告に定めのあるものを除き、法人税等会計基準又は税効果会計基準等の定めに従うこととしており(本実務対応報告第6項及び第8項参照)、グループ通算制度に特有の会計処理及び開示のみを示している。
- この点、前項に記載した申告手続以外にも税法の取扱いが連結納税制度から改正されている点があるが、これらのうち本実務対応報告に定めのないものについては法人税等会計基準又は税効果会計基準等の定めに従うことになる。
会計処理
法人税及び地方法人税に関する会計処理
- 42. 法人税等会計基準は、我が国の法令に従い納付する税金のうち法人税、住民税及び事業税等に関する会計処理及び開示に適用することとしており(法人税等会計基準第2項(1))、グループ通算制度を適用する場合の法人税及び地方法人税についても法人税等会計基準を適用することを明示した(本実務対応報告第6項参照)。
通算税効果額の取扱い
- 43. 連結納税制度では、連結納税制度を適用する各会社(以下「連結納税会社」という。)の個別帰属額が計算され各社に配分されており、実務対応報告第5号等では、個別帰属額は各社の課税所得に対する法人税及び地方法人税として負担すべき額であることから、個別帰属額を「法人税、住民税及び事業税」と同様に取り扱うこととしていた。
- 44. グループ通算制度における通算税効果額は、グループ通算制度を適用したことによる税額の減少額であり(第37項参照)、令和2年度税制改正の財務省による解説(連結納税制度の見直しに関する法人税法等の改正)において「個別帰属額と同様に法人税に相当する金額であることから、益金不算入・損金不算入とされている」とされている。
- そのため、通算税効果額についても、連結納税制度における個別帰属額の取扱いを踏襲し、個別財務諸表における損益計算書において、当事業年度の所得に対する法人税及び地方法人税に準ずるものとして取り扱うこととした(第7項参照)。
税効果会計に関する会計処理
- 45. 連結納税制度を適用する場合の税効果会計について、実務対応報告第5号等では、繰延税金資産及び繰延税金負債は、法人税及び地方法人税、住民税並びに事業税に区別して把握する必要が生じる場合があるとしていた。グループ通算制度についても住民税及び事業税は対象とされておらず、税額計算及び課税所得の計算は、法人税及び地方法人税と異なることから、連結納税制度における取扱いを踏襲し、これらを区別して税効果会計を適用することとした(第8項なお書き参照)。
- また、住民税は通常は法人税額を課税標準としているが、連結納税制度においては、個別帰属額を基礎として、連結納税制度を適用することによる影響を控除して税額計算が行われることから、実務対応報告第7号では、これを考慮して繰延税金資産の回収可能性の判断をすることとしていた。グループ通算制度においても、損益通算や欠損金の通算を行った後の法人税額を基礎として、損益通算や欠損金の通算等の影響を控除して住民税額が計算され、税額計算がグループ通算制度を適用しない場合と異なることから、連結納税制度における取扱いを踏襲し、繰延税金資産の回収可能性の判断を行うにあたってはこれを考慮することとした(第8項なお書き参照)。
税効果会計を適用する上での会計処理の単位
- 46. 税効果会計を適用する上では、連結財務諸表において連結決算手続上生じた将来減算一時差異に係る繰延税金資産を納税主体ごとに各個別財務諸表における繰延税金資産と合算して回収可能性の判断を行う(回収可能性適用指針第9項)など、「納税主体」ごとに繰延税金資産及び繰延税金負債の計算を行うことが想定されており、本実務対応報告の適用前における税効果適用指針第4項(1)では、「納税主体」を「納税申告書の作成主体をいい、通常は企業が納税主体となる。ただし、連結納税制度を適用している場合、連結納税の範囲に含まれる企業集団が同一の納税主体となる。」と定義していた。
- ここで、納税主体を「納税申告書の作成主体」としつつも、連結納税制度を適用する場合は「納税申告書の作成主体」である連結納税親会社ではなく、企業グループ全体を納税主体としており、納税主体が何を指すのかが必ずしも明らかではなかったと考えられる。
- 47. この点、連結納税制度は企業グループの一体性に着目し、企業グループ全体をあたかも1つの法人であるかのように捉えて課税が行われており、親会社が「納税申告書の作成主体」であるものの、連結財務諸表においては「課税される単位」を連結納税主体として税効果会計を適用していたものと考えられる。
- 一方、グループ通算制度においては、各通算会社が納税申告を行うことから、「納税申告書の作成主体」は各通算会社となるが、企業グループの一体性に着目し、完全支配関係にある企業グループ内における損益通算を可能とする基本的な枠組みは連結納税制度と同様であるとされており(第40項参照)、グループ通算制度を適用する通算グループ全体が「課税される単位」となると考えられる。そのため、連結財務諸表においては、「通算グループ内のすべての納税申告書の作成主体を1つに束ねた単位」に対して、税効果会計を適用することとした(第14項参照)。
繰延税金資産及び繰延税金負債の計算に用いる税率
- 48. 連結納税制度を適用する場合の繰延税金資産及び繰延税金負債の計算に用いる税率について、実務対応報告第5号等では、税金の種類ごとに税務上の繰越欠損金の取扱いが異なることなどにより、税金の種類ごとに適用する税率を定めていた。
- グループ通算制度についても法人税及び地方法人税、住民税並びに事業税を区別して税効果会計を適用することとしており(第8項なお書き参照)、連結納税制度と同様に、税金の種類ごとに適用する税率を算定することとした(第9項参照)。
- 49. また、実務対応報告第7号では、繰延税金資産の回収可能性が法人税及び地方法人税と事業税で異なる場合又は住民税と事業税で異なる場合で、かつ、その影響が大きい場合には、当該影響を考慮する必要があるとしており、グループ通算制度においても税金の種類ごとに回収可能性の判断が異なることがあり得ることから、連結納税制度における当該取扱いを踏襲し、回収可能性が異なることによる重要な影響がある場合には当該影響を考慮した税率で繰延税金資産の計算を行うこととした(第9項また書き参照)。
法人税及び地方法人税に係る繰延税金資産の回収可能性の判断
(個別財務諸表における繰延税金資産の回収可能性)
- 50. 連結納税制度を適用する場合の税効果会計について、実務対応報告第5号等では、個別帰属額を「法人税、住民税及び事業税」と同様に取り扱うこととしている(第43項参照)ことから、個別財務諸表における繰延税金資産の回収可能性の判断においても同様に個別帰属額を考慮することとしていた。
- この点、グループ通算制度においても、通算税効果額を法人税及び地方法人税に準ずるものとして取り扱うこととしている(第7項参照)ことから、連結納税制度における取扱いを踏襲し、個別財務諸表における繰延税金資産の回収可能性の判断にあたっては、他の通算会社からの通算税効果額を考慮することとした(第10項から第13項参照)。
繰延税金資産の回収可能性の判断に関する手順
- 51. 連結納税制度を適用する場合の個別財務諸表における繰延税金資産の回収可能性の判断に関する手順について、実務対応報告第7号では、期末における将来減算一時差異の解消見込額を、スケジューリングに基づく解消見込年度ごとに(1)各連結納税会社の個別所得見積額、(2)連結法人税の個別帰属額(受取個別帰属法人税額)の見積額を課税所得に換算した金額(当該年度の個別所得見積額がマイナスの場合には、マイナスの個別所得見積額に充当後の残額)の順に相殺し、(1)と(2)で相殺し切れなかった額は、解消年度に発生した連結欠損金個別帰属額と同様に取り扱い、(3)その後の各事業年度において損金の額に算入される連結欠損金相当額のうち税務上の規定により当該連結納税会社に帰せられることとなる金額の見積額と相殺することとしていた。
- この点、グループ通算制度においては、課税所得の計算において、まず、(1)通算前所得が計算され、その後、(2)損益通算や(3)欠損金の通算を行って課税所得が計算されることから、連結納税制度における当該取扱いを踏襲し、期末における将来減算一時差異の解消見込額(将来加算一時差異の解消見込額との相殺後)を(1)一時差異等加減算前通算前所得の見積額、(2)損益通算による益金算入見積額の順に相殺し、相殺し切れなかった額は、(3)特定繰越欠損金以外の繰越欠損金として損金算入のスケジューリングに従って回収が見込まれる金額と相殺することとした(第11項及び第12項参照)。
企業の分類に応じた繰延税金資産の回収可能性に関する取扱い
- 52. 連結納税制度を適用する場合の個別財務諸表における繰延税金資産の回収可能性を判断する際の企業の分類について、実務対応報告第7号では、連結納税主体の分類と連結納税会社の分類をそれぞれ判定し、将来減算一時差異に係る繰延税金資産の回収可能性では、連結納税主体の分類と連結納税会社の分類のいずれか上位の分類に応じた判断を行うこととしていた。
- また、連結欠損金個別帰属額に係る繰延税金資産の回収可能性では、連結欠損金に特定連結欠損金が含まれていない場合には連結納税主体の連結所得見積額を考慮し、連結欠損金に特定連結欠損金が含まれている場合には連結所得見積額及び個別所得見積額の両方を考慮して判断を行うこととしていた。
- この点、グループ通算制度においても、連結納税制度における当該取扱いを踏襲している(第13項参照)。
- また、連結納税制度における連結納税会社の分類の判定について、実務においては各社における個別所得額のみを用いて判定が行われていたものと考えられることから、グループ通算制度における通算会社の分類は、損益通算や欠損金の通算を考慮せず、自社の通算前所得又は通算前欠損金に基づいて判定することを明確にした(第13項(1)参照)。
(連結財務諸表における繰延税金資産の回収可能性)
- 53. 連結納税制度を適用する場合の連結財務諸表について、実務対応報告第5号では、連結納税主体を一体とみなした上で、回収可能性適用指針第6項に従って、繰延税金資産の回収可能性を判断することとしており、また、実務対応報告第7号では、連結納税会社の個別財務諸表における計上額を単に合計するのではなく、連結納税主体として回収可能性を見直すことが適当であるとし、連結納税主体を一体として計算した繰延税金資産の回収可能見込額と、個別財務諸表における繰延税金資産の計上額の合計との差額を連結修正として処理することとしていた。
- グループ通算制度においても、連結財務諸表においては通算グループ全体に対して税効果会計を適用することとしており(本実務対応報告第47項参照)、連結納税制度における取扱いを踏襲することとした(本実務対応報告第14項から第17項参照)。
未実現損益の消去に係る一時差異の取扱い
- 54. 税効果適用指針第35項及び第36項では、未実現損益に関する繰延税金資産及び繰延税金負債を計上するための上限は、それぞれ「売却元の連結会社の売却年度における課税所得」と「売却元の連結会社の売却年度における当該未実現損失に係る税務上の損金を算入する前の課税所得」としている。この点、連結納税制度について実務対応報告第7号では、「売却元の課税所得」を「連結納税主体の連結所得」に読み替えることが適当としており、グループ通算制度においても、通算グループ全体に対して課税が行われることから、当該取扱いを踏襲することとした(本実務対応報告第18項参照)。
投資簿価修正に関する取扱い
- 55. 投資簿価修正は、株式等の売却等を行う時点において税務上の投資簿価を修正するものであり、売却等を行う時点までの間は税務上の帳簿価額が修正されるものではないことから、投資簿価修正による影響は売却等を行う時点までの間は税効果適用指針第4項(3)における「一時差異」には該当しないものと考えられる。
- しかし、連結納税制度では、実務対応報告第5号等において、売却等によって解消するときにその年度の課税所得を増額又は減額する効果を有することから、一時差異と同様に取り扱うものとしていた。
- グループ通算制度においては、投資簿価修正の方法が税務上の簿価純資産価額との差額を加算又は減算する方法に変更されているが、売却等によってその年度の課税所得を増額又は減額する効果を有する点は同様であることから、連結納税制度における取扱いを踏襲し、期末時点における他の通算会社の株式等の帳簿価額と税務上の簿価純資産価額との差額を、一時差異と同様に取り扱うこととした(本実務対応報告第19項及び第20項参照)。
適用時、加入時及び離脱時の取扱い
- 56. 連結納税制度においては、適用、加入及び離脱について、実務対応報告第5号等でそれぞれ次のような取扱いとしていた。
- (1) 連結納税制度を新たに適用する場合、原則として連結納税についての承認日から適用による影響を反映する。
- (2) 連結子会社が連結納税会社として加入する場合、加入の意思決定がなされ実行される可能性が高い場合に、加入による影響を反映することとし、連結子会社でない会社が加入する場合は、加入後に税務上の繰越欠損金を引き継ぐことができない場合で、一定の要件を満たす場合を除き、当該取扱いは適用されない。
- (3) 連結納税子会社が連結納税から離脱する場合、離脱の意思決定がなされ、実行される可能性が高い場合に、離脱による影響を反映する。
- この点、グループ通算制度においては、適用、加入及び離脱の承認手続が連結納税制度から原則として変更されておらず、連結納税制度におけるこれらの取扱いを踏襲することとした(第21項から第23項参照)。
- なお、(2)の連結子会社でない会社が加入する場合で、税務上の繰越欠損金を引き継ぐことができない場合の取扱いに関して、グループ通算制度においては、税務上の繰越欠損金だけでなく、特定資産に係る譲渡等損失額についても適用後の損金算入制限が課されることになったため、損金算入が見込まれない特定資産に係る将来減算一時差異についても、税務上の繰越欠損金と同様に取り扱うこととした(第22項(2)ただし書き参照)。
開 示
表 示
法人税及び地方法人税に関する表示
(個別財務諸表における通算税効果額の表示)
- 57. 連結納税制度を適用する場合の個別財務諸表における個別帰属額の表示について、実務対応報告第5号では、個別帰属額を「法人税、住民税及び事業税」と同様に取り扱うこととしている(第43項参照)ことから、「法人税、住民税及び事業税」に含めて表示することとしていた。グループ通算制度における通算税効果額についても法人税及び地方法人税に準ずるものとして取り扱うこととしている(第7項参照)ことから、連結納税制度における当該取扱いを踏襲することとした(第25項参照)。
(個別財務諸表における通算税効果額に係る債権及び債務の表示)
- 58. 連結納税制度を適用する場合の個別財務諸表における個別帰属額に係る債権及び債務の表示について、実務対応報告第5号では、連結納税親会社が、連結法人税及び地方法人税として納付すべき額を「未払法人税等」に含めて表示するとともに、連結納税親会社及び連結納税子会社における個別帰属額に係る債権及び債務については、未収入金及び未払金として計上することとしていた。グループ通算制度における通算税効果額に係る債権及び債務の表示についても、連結納税制度における当該取扱いを踏襲することとした(第25項また書き参照)。
繰延税金資産及び繰延税金負債に関する表示
(個別財務諸表における表示)
- 59. 連結納税制度では、個別財務諸表における繰延税金資産及び繰延税金負債に関する表示について、同一納税主体の繰延税金資産と繰延税金負債は、双方を相殺して表示し、異なる納税主体の繰延税金資産と繰延税金負債は、双方を相殺せずに表示するとした企業会計基準第28号第2項の定めに従っていた。グループ通算制度においても、当該取扱いを踏襲することとした(本実務対応報告第26項参照)。
(連結財務諸表における表示)
- 60. 連結納税制度を適用する場合の連結財務諸表における繰延税金資産及び繰延税金負債に関する表示について、実務対応報告第5号では、「連結納税主体は、法人税及び地方法人税について同一の納税主体となることから、連結財務諸表上の連結会社のうち、連結納税主体の法人税及び地方法人税に係る繰延税金資産と繰延税金負債は、双方を相殺して表示することとなる。」としていた。
- グループ通算制度においては、通算会社は異なる納税主体となるが、連結財務諸表においては通算グループ全体に対して税効果会計を適用することとしていることから(第14項参照)、連結納税制度における当該取扱いを踏襲することとした(第27項参照)。
注記事項
本実務対応報告の適用に関する注記
- 61. 連結納税制度における特有の注記事項として、実務対応報告第5号では、「連結納税制度を適用した場合又は取りやめた場合における最初の連結財務諸表及び財務諸表においては、その旨を注記することが適当であると考えられる。」としていたが、実務においては、多くの企業が適用初年度のみならず、その後の年度においても、重要な会計方針に連結納税制度を適用している旨の注記を行っていた。
- グループ通算制度においても、適用開始から取りやめまでの期間において適用していることを示すことが、財務諸表利用者にとって有用となると考えられるため、グループ通算制度を適用した場合又は取りやめた場合に加えて、本実務対応報告により会計処理を行っている間は、その旨を注記することとした(第28項参照)。
税効果会計に関する注記
(税金の種類ごとに繰延税金資産の回収可能性が異なる場合の注記)
- 62. 税効果会計基準及び企業会計基準第28号では繰延税金資産及び繰延税金負債の発生原因別の主な内訳等を注記することとされているが、当該注記に関する連結納税制度における取扱いとして、実務対応報告第7号では、その内訳を税金の種類ごとに注記する必要はないとしており、グループ通算制度においても、連結納税制度における取扱いを踏襲することとした(本実務対応報告第29項参照)。
- なお、実務対応報告第7号では、連結納税制度における取扱いとして、繰延税金資産から控除された金額(評価性引当額)について、税金の種類によって回収可能性が異なる場合には、税金の種類を示して注記することが望ましいとしていた。しかし、評価性引当額を税金の種類ごとに開示することによる情報の有用性は限定的であると考えられ、また、連結納税制度における実務において、当該定めに基づき注記を行っている企業はごく少数であることから、注記をすることが望ましいとの記載を踏襲しないこととした。ただし、税金の種類によって回収可能性が異なる場合に、評価性引当額について税金の種類を示すことを禁止する趣旨ではなく、注記することを妨げるものではない。
(個別財務諸表における繰延税金資産に関する注記)
- 63. 連結納税制度について、実務対応報告第7号では、連結納税親会社の個別財務諸表における法人税及び地方法人税に係る繰延税金資産の計上額が、連結財務諸表における回収可能見込額を大幅に上回り、その上回る部分の金額に重要性がある場合には、連結納税親会社の個別財務諸表に追加情報として注記することが必要になるとしていた。これは、個別財務諸表において計上した繰延税金資産が連結財務諸表において取り崩される場合、個別財務諸表において分配可能額に含まれるものが連結財務諸表では資産性がないものとして扱われる点について、連結納税制度導入当初においては、財務諸表利用者に十分に認識されていないと考えられたことによるものと考えられる。
- この点、個別財務諸表における連結会社間の未実現損益が連結財務諸表において取り崩される場合も同様であり、連結納税制度が導入されてから十数年が経過し仕組みが周知されていると考えられることから、上記のような趣旨において要求されていた取崩しの注記は不要であると考えられ、連結納税制度における取扱いを踏襲せず、特段の定めを置かないこととした。
(連帯納付義務に関する注記)
- 64. 連結納税制度における連帯納付義務について、実務対応報告第5号では、通常、連結納税子会社が連帯納付義務を履行する可能性は極めて低いと考えられ、そのような場合には偶発債務の注記を行う必要はないものとしていた。
- この点、連結納税制度では子会社が親会社の債務に対する連帯納付義務を負っているのに対して、グループ通算制度では通算子会社だけではなく通算親会社も連帯納付義務を負っている点などの相違があるものの、連帯納付義務は制度に内在する義務でありグループ通算制度を適用している旨を注記することとしていることから(第28項参照)、別途偶発債務としての注記を行う有用性は高くないと考えられ、連帯納付義務について偶発債務としての注記を要しないこととした(第30項参照)。
適用時期等
- 65. 本実務対応報告は、基本的に連結納税制度における取扱いを踏襲することとしているものの、グループ通算制度における税金の計算過程は連結納税制度と異なり、繰延税金資産の回収可能性の判断など税効果会計を適用するにあたっても、その計算過程が異なることなどから、実務上、システム対応等の一定の準備期間を要する可能性がある。しかし、税法においては2022年4月1日以後に開始する事業年度からグループ通算制度が適用されることを考慮し、2022年4月1日以後に開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用することとした(第31項参照)。
- 66. また、連結納税制度を適用している企業又は単体納税制度を適用している企業がグループ通算制度に移行する場合、税効果会計に関する会計処理及び開示については、より早期に企業の実態を適切に反映させる観点から、2022年3月31日以後に終了する連結会計年度及び事業年度の期末の連結財務諸表及び個別財務諸表から早期適用することを認めることとした(第31項ただし書き参照)。なお、十分な周知期間を確保することや、年度内における首尾一貫性を確保することから、四半期会計期間からの早期適用は認めないこととした。
- 67. 連結納税制度を適用している企業がグループ通算制度に移行する場合においては、本実務対応報告の適用により、税制の変更による影響と会計方針の変更による影響があると考えられ、税制の変更による税効果会計上の影響については、例えば、組織再編税制との整合性の観点での改正の影響などがあると考えられる。一方、会計方針の変更による影響については、本実務対応報告は実務対応報告第5号等の会計上の取扱いを踏襲しており(第40項参照)、会計方針の変更によって重要な影響は生じないと考えられる。そのため、会計方針の変更による影響はないものとみなすこととした(第32項(1)参照)。ここで、本実務対応報告の公表より前の期間に遡及適用する場合、過去の時点に入手可能であった情報と事後的に入手した情報とを客観的に区別することが実務上困難であると考えられることから、当該みなしの定めについては、選択適用を認めるのではなく、一律に適用を求めることとした。
- なお、実務対応報告第39号の特例的な取扱いを採用している企業について、本実務対応報告の適用前においては税制の変更による影響が考慮されておらず、本実務対応報告の適用によって考慮することになることから、本実務対応報告の適用時において、税制の変更による影響を損益(資産又は負債の評価替えにより生じた評価差額等をその他の包括利益で認識した上で純資産の部のその他の包括利益累計額に計上する場合又は直接純資産の部の評価・換算差額等に計上する場合には、その他の包括利益又は評価・換算差額等)として計上することとなる。
- 68. また、単体納税制度を適用している企業がグループ通算制度に移行する場合について、通常の適用時の取扱いでは、グループ通算制度の適用の承認があった日を含む年度から、翌事業年度よりグループ通算制度を適用するものとして、税効果会計を適用することとしているが(第21項参照)、税法におけるグループ通算制度への移行が行われる年度においては一定の準備期間を要すると考えられることから、当該定めによらず、原則適用及び早期適用の定めに従うこととした(第32項(2)参照)。
連結納税制度から単体納税制度への移行
- 69. グループ通算制度への移行に伴い、連結納税制度を適用している企業において、届出書の提出により、単体納税制度に移行することができることとされている。単体納税制度に移行する場合、税効果会計基準等の原則的な取扱いに従って会計処理を行うこと、また、連結納税制度を適用している間も事業税については損益通算等を考慮せず繰延税金資産の回収可能性の判断が行われており、システム対応が必要な場合であっても限定的と考えられることから、特段の準備期間は不要と考えられ、届出書を提出した日の属する会計期間から単体納税制度を適用するものとして税効果会計を適用することとした(本実務対応報告第33項参照)。
設 例
- 次の設例は、本実務対応報告で示された内容について理解を深めるためのものであり、仮定として示された前提条件の記載内容は、経済環境や各企業の実情等に応じて異なる点に留意する必要がある。
- なお、簡便化のため、税務上の繰越欠損金の損金算入額は課税所得(税務上の繰越欠損金控除前)の金額を限度とする。
- また、通算税効果額の授受を行うことを前提としている。
設例
- [設例1] 一時差異等加減算前通算前所得の算定方法
- 1.前提
- P社及びS社は、同じ通算グループに属する通算会社であり、当該通算グループはP社とS社のみで構成されている。
- P社とS社に共通する一時差異等に関する前提条件
- (1) 賞与については、税務上、賞与を支給する事業年度に全額損金に算入される。
- (2) それぞれの事業年度の期末において、賞与引当金繰入限度超過額及び減価償却超過額以外の将来減算一時差異、将来加算一時差異及び税務上の繰越欠損金は有していない。
- P社に関する前提条件
- (3) 一時差異(賞与引当金):X1年(当期)に賞与引当金繰入額400を認識した。X2年に同額の賞与の支給を予定している。
- (4) 一時差異(固定資産):X1年(当期)に固定資産Aの減価償却費40を認識した。固定資産Aは過年度に取得したものであり、その会計上の償却期間はX1年に終了した。固定資産AのX1年における税務上の償却限度額は20であり、X1年において減価償却超過額20が損金不算入項目として税務上加算される。当該減価償却超過額は、X2年に10が、X3年に10がそれぞれ認容され、損金に算入される。
- (5) 税引前当期純利益の予測:X2年の税引前当期純利益の予測を500とする。当該予測にあたっては、賞与引当金繰入額350を見込んでいる。なお、X2年に見込んでいる固定資産の減価償却費は税務上の償却限度額(固定資産Aの償却限度額を除く。)と一致している。
- S社に関する前提条件
- (6) 一時差異(賞与引当金):X1年(当期)に賞与引当金繰入額270を認識した。X2年に同額の賞与の支給を予定している。
- (7) 税引前当期純利益の予測:X2年の税引前当期純利益の予測を50とする。当該予測にあたっては、賞与引当金繰入額180を見込んでいる。
- 2.期末における将来減算一時差異
- P社
- X1年の期末においては、税務上、賞与引当金繰入限度超過額400及び減価償却超過額20が加算される。したがって、X1年の期末において、賞与引当金繰入限度超過額に係る将来減算一時差異400及び減価償却超過額に係る将来減算一時差異20を有している。
- なお、当該将来減算一時差異は、X2年に410(賞与引当金繰入限度超過額に係る将来減算一時差異400及び減価償却超過額に係る将来減算一時差異10)及びX3年に10(減価償却超過額に係る将来減算一時差異10)解消することが見込まれている。
- S社
- X1年の期末においては、税務上、賞与引当金繰入限度超過額270が加算される。したがって、X1年の期末において、賞与引当金繰入限度超過額に係る将来減算一時差異270を有している。
- なお、当該将来減算一時差異は、X2年に270(賞与引当金繰入限度超過額に係る将来減算一時差異270)解消することが見込まれている。
- 3.一時差異等加減算前通算前所得の算定
- 一時差異等加減算前通算前所得とは、将来の事業年度における通算前所得の見積額から、当該事業年度において解消することが見込まれる当期末に存在する将来加算一時差異及び将来減算一時差異の額を除いた額をいう(第5項(11)参照)。
- (1) P社のX1年の期末におけるX2年の一時差異等加減算前通算前所得の見積額の算定
- ① X1年の期末において、X2年の通算前所得の見積額は(表1)のとおりである。

- ② X1年の期末におけるX2年の一時差異等加減算前通算前所得の見積額の算定過程
(表1)のX2年における加減算項目のうち、X1年の期末に存在する将来減算一時差異に関する加減算項目は、賞与引当金繰入限度超過額の認容△400及び減価償却超過額の認容△10である。X2年における一時差異等加減算前通算前所得は、X1年の期末に存在する将来加算一時差異又は将来減算一時差異を加算又は減算する前のものであるため、X2年の通算前所得の見積額に賞与引当金繰入限度超過額の認容△400及び減価償却超過額の認容△10を調整して算定する。具体的には、X2年における一時差異等加減算前通算前所得は、次のとおり算定される。 
- (2) S社のX1年の期末におけるX2年の一時差異等加減算前通算前所得の見積額の算定
- ① X1年の期末において、X2年の通算前所得の見積額は(表2)のとおりである。

- ② X1年の期末におけるX2年の一時差異等加減算前通算前所得の見積額の算定過程
(表2)のX2年における加減算項目のうち、X1年の期末に存在する将来減算一時差異に関する加減算項目は賞与引当金繰入限度超過額の認容△270である。X2年における一時差異等加減算前通算前所得は、X1年の期末に存在する将来加算一時差異又は将来減算一時差異を加算又は減算する前のものであるため、X2年の通算前所得の見積額に賞与引当金繰入限度超過額の認容△270を調整して算定する。具体的には、X2年における一時差異等加減算前通算前所得は、次のとおり算定される。 
- [設例2] 将来減算一時差異に係る繰延税金資産の回収可能性
- 1.前提
- (1) P社、S1社及びS2社は、同じ通算グループに属する通算会社であり、当該通算グループはP社、S1社及びS2社のみで構成されている。
- (2) X1年(当期)末の将来減算一時差異は、P社500、S1社100、S2社300であり、すべてX2年に解消が見込まれるものとする。また、将来加算一時差異及び税務上の繰越欠損金は有していない。
- (3) X2年の一時差異等加減算前通算前所得の見積額は、P社600、S1社△350、S2社400とする。
- (4) X3年以降の一時差異等加減算前通算前所得の見積額は、0とする。
- 2.回収可能性の判断の手順(個別財務諸表)
- (1) 各通算会社は、X1年末に存在する将来減算一時差異の解消見込額(将来加算一時差異の解消見込額と相殺後。以下同じ。)をX2年の一時差異等加減算前通算前所得の見積額と相殺する(第11項(1)参照)。
- (2) (1)で相殺し切れなかった将来減算一時差異の解消見込額は、X2年における損益通算による益金算入見積額と相殺する。ただし、S1社は、X2年の一時差異等加減算前通算前所得の見積額がマイナスであるため、X2年の一時差異等加減算前通算前所得のマイナスの見積額に充当した後の損益通算による益金算入見積額と相殺する(第11項(1)参照)。
- (3) (2)で相殺し切れなかった将来減算一時差異の解消見込額は、解消見込年度の翌年度以降において、特定繰越欠損金以外の繰越欠損金として取り扱われることから、税務上の繰越欠損金の控除見込年度ごとの損金算入のスケジューリングに従って回収が見込まれる金額と相殺する(第11項(2)参照)。
- 以上を表に示すと次のようになる。

- 3.回収可能性の判断の手順(連結財務諸表)
- (1) 連結財務諸表における通算グループ全体についての回収可能性の判断として、X1年末に存在する通算グループ全体の将来減算一時差異の合計の解消見込額をX2年の通算グループ全体の一時差異等加減算前課税所得の見積額と相殺する(第15項参照)。
- (2) (1)で相殺し切れなかった通算グループ全体の将来減算一時差異の合計の解消見込額は、解消見込年度の翌年度以降において、特定繰越欠損金以外の繰越欠損金として取り扱われることから、税務上の繰越欠損金の控除見込年度ごとの損金算入のスケジューリングに従って回収が見込まれる金額と相殺する(第16項参照)。
- 以上を表に示すと次のようになる。

- [設例3] 税務上の繰越欠損金に係る繰延税金資産の回収可能性
- 1.前提
- (1) X1年末の税務上の繰越欠損金の額は、P社0、S1社0、S2社△500とする。
- (2) X2年(当期)より、親会社P社と100%子会社S1社、S2社はグループ通算制度を適用することとなった。X1年末のS2社の税務上の繰越欠損金は特定繰越欠損金に該当する。
- (3) X2年の課税所得(税務上の繰越欠損金控除前)は、P社△100、S1社△150、S2社0とし、P社及びS1社の課税所得のマイナスについては、各通算会社の税務上の繰越欠損金としてX3年に繰り越している。
- (4) X3年の課税所得の見積額(税務上の繰越欠損金控除前)(通算前所得に損益通算を考慮した課税所得の見積額となる。以下同じ。)は、P社300、S1社0、S2社100とする。
- (5) X4年以降の課税所得の見積額(税務上の繰越欠損金控除前)は、0とする。
- 2.回収可能性の判断の手順
- (1) 特定繰越欠損金と特定繰越欠損金以外の繰越欠損金ごとに、その繰越期間にわたって、将来の課税所得の見積額(税務上の繰越欠損金控除前)に基づき、回収可能性の判断を行う(第12項参照)。まず、最も古い年度に発生したX1年末の税務上の繰越欠損金について、X3年の課税所得の見積額(税務上の繰越欠損金控除前)と相殺できるか検討を行う。X1年末の税務上の繰越欠損金はS2社の特定繰越欠損金だけであるため、S2社の課税所得の見積額(税務上の繰越欠損金控除前)と通算グループ全体の課税所得の見積額の合計(税務上の繰越欠損金控除前)のうちいずれか小さい額と相殺する。
- (2) (1)で相殺し切れなかったX1年末の税務上の繰越欠損金に係る繰延税金資産の回収可能性について、X4年以降のS2社の課税所得の見積額(税務上の繰越欠損金控除前)は0であるため、回収可能性はないと判断される。
- (3) 続いてX2年の税務上の繰越欠損金について、X3年の課税所得の見積額(税務上の繰越欠損金控除前)と相殺できるか検討を行う。X2年の税務上の繰越欠損金はP社及びS1社の特定繰越欠損金以外の繰越欠損金であり、通算グループ全体の課税所得の見積額の合計(税務上の繰越欠損金控除前)から(1)で相殺された金額を控除した金額と相殺する。
- 以上を表に示すと次のようになる。

- [設例4] 企業の分類に応じた繰延税金資産の回収可能性
- 1.前提
- (1) P社、S1社及びS2社は、同じ通算グループに属する通算会社であり、当該通算グループはP社、S1社及びS2社のみで構成されている。
- (2) 当期(X4年)末の将来減算一時差異は、次のとおりであった。スケジューリング可能な一時差異はすべて5年以内に解消するものとする。また、当期末の税務上の繰越欠損金はいずれの会社も0であった。

- (3) X1年からX4年の各期の課税所得は次のとおりであった。

- (4) X5年からX9年の各期の通算前所得の見積額は次のとおりとする。

- 2.繰延税金資産の回収可能性における企業の分類と回収可能見込額

- (1) 通算グループ全体の分類
- 通算グループ全体でみた場合、過去(3年)及び当期のすべての事業年度において、課税所得が、期末における将来減算一時差異△2,500を下回るものの、安定的に生じていると判断した場合には(なお、重要な税務上の欠損金は生じておらず、X4年末において、近い将来に経営環境に著しい変化は見込まれていないものとする。)、回収可能性適用指針第19項の(分類2)の企業に該当することとなる。この場合、スケジューリング不能な一時差異△1,000を除く、スケジューリング可能な一時差異△1,500に係る繰延税金資産の回収可能性があると判断される(第13項及び第17項参照)。
- (2) P社の分類
- P社は、過去(3年)及び当期のすべての事業年度において、期末における将来減算一時差異△1,000を十分に上回る通算前所得が生じていると判断した場合には(なお、X4年末において、近い将来に経営環境に著しい変化は見込まれていないものとする。)、回収可能性適用指針第17項の(分類1)の企業に該当することとなる。この場合、繰延税金資産の全額について回収可能性があると判断される(第13項参照)。
- (3) S1社の分類
- S1社は、過去(3年)及び当期のすべての事業年度において、通算前所得が、期末における将来減算一時差異△700を下回るものの、安定的に生じていると判断した場合には(なお、重要な税務上の欠損金は生じておらず、X4年末において、近い将来に経営環境に著しい変化は見込まれていないものとする。)、回収可能性適用指針第19項の(分類2)の企業に該当することとなる。この場合、スケジューリング不能な一時差異△300を除く、スケジューリング可能な一時差異△400に係る繰延税金資産の回収可能性があると判断される(第13項参照)。
- (4) S2社の分類
- S2社は、過去(3年)及び当期において、臨時的な原因により生じたものを除いた通算前所得が大きく増減しており、X1年及びX3年に生じた通算前欠損金が重要でないと判断した場合には、回収可能性適用指針第22項の(分類3)の企業に該当することとなる。一方で、(1)のとおり、通算グループ全体の分類が(分類2)であることから、通算グループ全体に応じた判断を行い、スケジューリング不能な一時差異△200を除く、スケジューリング可能な一時差異△600に係る繰延税金資産の回収可能性があると判断される(第13項参照)。
- (5) 連結財務諸表における繰延税金資産の回収可能性の見直し

- 個別財務諸表における回収可能見込額の合計△2,000と連結財務諸表における通算グループ全体での回収可能見込額△1,500とが一致せず、連結財務諸表において繰延税金資産の回収可能性の見直しによって、連結上修正が必要となる(第14項参照)。
- これは、P社の分類である(分類1)が通算グループ全体の分類である(分類2)を上回っており、個別財務諸表においては個社の分類である(分類1)に基づいて、スケジューリング不能な一時差異△500に係る繰延税金資産を計上したが、連結財務諸表においては、通算グループ全体の分類の(分類2)に基づいて、スケジューリング不能な一時差異△500に係る繰延税金資産を取り崩す必要があることによるものである。
- [設例5] 繰延税金資産及び繰延税金負債の計算に用いる税率
- 1.前提
- (1) X1年末の将来減算一時差異は100とし、すべてX2年に解消が見込まれるものとする。また、将来減算一時差異以外に一時差異等はないものとする。
- (2) 解消が見込まれる年度における税率は、法人税率は23.2%、地方法人税率は10.3%、住民税率は10.4%(超過課税による税率)、事業税率(所得割部分)は3.78%(超過課税による税率)とする。
- 2.税金の種類ごとの繰延税金資産の回収可能性が異なることによる重要な影響がない場合
- 税金の種類ごとに繰延税金資産の回収可能性が異ならない場合、又は回収可能性が異なることによる重要な影響がない場合、次のように適用税率を算定することになると考えられる(第9項参照)。
- 法人税及び地方法人税:
法人税率×(1+地方法人税率)/(1+事業税率)=23.2%×(1+10.3%)/(1+3.78%)=24.66% - 住民税:法人税率×住民税率/(1+事業税率)=23.2%×10.4%/(1+3.78%)=2.32%
- 事業税:事業税率/(1+事業税率)=3.78%/(1+3.78%)=3.64%
- 3.税金の種類ごとの繰延税金資産の回収可能性が異なることによる重要な影響がある場合
- 繰延税金資産の回収可能性が法人税及び地方法人税と事業税とで異なる場合又は住民税と事業税とで異なる場合等、計上する繰延税金資産に対応する一時差異等(以下「計上対象一時差異等」という。)の金額が税金の種類により異なる場合で、かつ、回収可能性が異なることによる重要な影響がある場合には、その影響を考慮した税率で繰延税金資産の計算を行う(第9項また書き参照)。
- その場合、法人税、地方法人税及び住民税の適用税率計算に使用される事業税率を次のように修正する方法も考えられる。
- 例えば、将来減算一時差異(100)に対する繰延税金資産のうち、法人税及び地方法人税について回収可能性があると認められる部分が100%(計上対象一時差異等は100)、住民税について回収可能性があると認められる部分が10%(計上対象一時差異等は10)、事業税について回収可能性があると認められる部分が20%(計上対象一時差異等は20)とする。
- この場合に、税金の種類ごとの繰延税金資産の回収可能性が異なることによる重要な影響がある場合には、適用税率計算に使用される事業税率は次のように、法人税及び地方法人税に係る繰延税金資産の回収可能見込額の計算においては0.76%、住民税に係る回収可能額の計算においては7.56%に修正される。
- 法定税率(3.78%)×事業税計上対象一時差異等(20)/法人税及び地方法人税計上対象一時差異等(100)=0.76%
- 法定税率(3.78%)×事業税計上対象一時差異等(20)/住民税計上対象一時差異等(10)=7.56%
- この結果、法人税及び地方法人税に係る修正実効税率は25.40%(=23.2%×(1+10.3%)/(1+0.76%))、住民税に係る修正実効税率は2.24%(=23.2%×10.4%/(1+7.56%))となり、繰延税金資産の回収可能見込額は、計上対象一時差異等に修正実効税率を乗じて計算される場合には、次のとおりとなる。
- 法人税及び地方法人税に係る繰延税金資産:
100×(23.2%×(1+10.3%)/(1+0.76%)=25.40%)=25.40 - 住民税に係る繰延税金資産:10×(23.2%×10.4%/(1+7.56%)=2.24%)=0.22
- 事業税に係る繰延税金資産:20×(3.78%/(1+3.78%)=3.64%)=0.73
- 合 計:25.40+0.22+0.73=26.35
- [設例6] 個別財務諸表において通算子会社株式の評価損を計上した場合の投資簿価修正の取扱い
- 1.前提
- (1) 通算子会社株式の評価損計上前の個別財務諸表上の帳簿価額が100の場合に、評価損70を計上し、評価損計上後の個別財務諸表上の帳簿価額は30となったとする。税務上、当該評価損70は損金算入が認められない。
- (2) X1年の期末における税務上の簿価純資産価額は80とする。
- 2.一時差異
- (1) 税務上の帳簿価額と会計上の帳簿価額の差額
- 税務上損金算入が認められない評価損を計上した場合の一時差異は、次のように、評価損に関する一時差異と、投資簿価修正によって一時差異と同様に取り扱う部分から構成されることとなる。

- (2) 税務上損金算入が認められない評価損の部分
- 税務上損金算入が認められない評価損70については、当該通算会社の個別財務諸表における将来減算一時差異となる。
- 当該将来減算一時差異については、税効果会計基準等の定めに従って、繰延税金資産の回収可能性の判断を行うこととなる。例えば、予測可能な将来、売却される可能性が高く、かつ、当該将来減算一時差異に係る繰延税金資産の回収可能性があると判断される場合には、税務上損金算入が認められない評価損70に係る繰延税金資産を計上することになる。
- (3) 投資簿価修正によって一時差異と同様に取り扱う部分
- 原則として、投資簿価修正相当額△20に係る将来加算一時差異について、次のいずれも満たす場合を除き、繰延税金負債を計上する(第19項(2)参照)。
- ① 他の通算会社に対する株式等の売却等を、当該株式等を保有する会社自身で決めることができる場合
- ② 予測可能な将来の期間に、他の通算会社の株式等の売却等を行う意思がない場合
- ただし、上記(2)の税務上損金算入が認められない通算子会社株式の評価損70(グループ通算制度適用前に当該株式について計上した評価損を含む。)について、予測可能な将来、売却される可能性が高く、かつ、回収可能性があると判断されたことなどによって、繰延税金資産を計上した場合には、投資簿価修正相当額△20に係る当該繰延税金負債を計上する。また、評価損に係る繰延税金資産を計上していない場合には、投資簿価修正相当額△20に係る当該繰延税金負債を計上しない(第19項(3)参照)。
- 以 上
本実務対応報告の公表による他の会計基準等についての修正
- 70. 本実務対応報告により、当委員会が公表した会計基準等については、次の修正を行う(下線は追加部分、取消線は削除部分を示す。)。
(略) - 以 上
