©公益財団法人 財務会計基準機構最終更新日:2026/03/04
実務対応報告第41号取締役の報酬等として株式を無償交付する取引に関する取扱い
目 的
- 1. 2019年12月に成立した「会社法の一部を改正する法律」(令和元年法律第70号。以下「改正法」という。)により、「会社法」(平成17年法律第86号)第202条の2において、金融商品取引法第2条第16項に規定する金融商品取引所に上場されている株式を発行している株式会社が、取締役等の報酬等として株式の発行等をする場合には、金銭の払込み等を要しないことが新たに定められた。
- 2. 本実務対応報告は、前項に記載した取締役等の報酬等として金銭の払込み等を要しないで株式の発行等をする場合における会計処理及び開示を明らかにすることを目的としている。
範 囲
- 3. 本実務対応報告は、第1項に記載した取締役等の報酬等として金銭の払込み等を要しないで株式の発行等をする取引に適用される。
用語の定義
- 4. 本実務対応報告における用語の定義は、次のとおりとする。
- (1) 「取締役の報酬等として株式を無償交付する取引」とは、会社法第202条の2に基づいて、取締役等の報酬等として金銭の払込み等を要しないで株式の発行等をする取引をいう。
- (2) 「取締役等」とは、会社法第326条に規定される取締役及び第402条に規定される執行役をいう。
- (3) 「報酬等」とは、会社法第361条に規定される報酬、賞与その他の職務執行の対価として株式会社から受ける財産上の利益をいう。
- (4) 「金銭の払込み等」とは、会社法第199条に規定される募集株式と引換えにする金銭の払込み又は財産の給付をいう。
- (5) 「株式の発行等」とは、自社の新株の発行又は自己株式の処分をいう。
- (6) 「割当日」とは、会社法第202条の2第1項第2号に基づいて定められる株式の発行等が行われる日(会社法第209条第4項)をいう。
- (7) 「事前交付型」とは、取締役の報酬等として株式を無償交付する取引のうち、対象勤務期間の開始後速やかに、契約上の譲渡制限が付された株式の発行等が行われ、権利確定条件が達成された場合には譲渡制限が解除されるが、権利確定条件が達成されない場合には企業が無償で株式を取得する取引をいう。
- (8) 「事後交付型」とは、取締役の報酬等として株式を無償交付する取引のうち、契約上、株式の発行等について権利確定条件が付されており、権利確定条件が達成された場合に株式の発行等が行われる取引をいう。
- (9) 「付与日」とは、取締役の報酬等として株式を無償交付する取引に関する契約が企業と取締役等との間で締結された日をいう。
- (10) 「権利確定日」とは、権利確定条件を達成するか否かが確定した日をいい、事前交付型においては、譲渡制限が解除されるか否かが確定した日がこれにあたり、事後交付型においては、株式の発行等が行われるか否かが確定した日がこれにあたる。
- (11) 「対象勤務期間」とは、株式と引換えに提供されるサービスの提供期間をいい、通常は、契約において定められた期間となる。契約において対象勤務期間が定められていない場合は、付与日から権利確定日までの期間を対象勤務期間とみなす。
- (12) 「権利確定条件」とは、事前交付型においては譲渡制限が解除されるための条件を、事後交付型においては株式の発行等が行われるための条件をいう。権利確定条件には、勤務条件(本項(13))や業績条件(本項(14))がある。
- (13) 「勤務条件」とは、取締役等の一定期間の勤務や職務執行に基づく条件をいう。
- (14) 「業績条件」とは、一定の業績(株価を含む。)の達成又は不達成に基づく条件をいう。
- (15) 「公正な評価額」とは、市場価格(市場において形成されている取引価格、気配値又は指標その他の相場)に基づいて、契約条件等を反映するように必要に応じて調整を加えた合理的に算定された価額をいう。また、単位当たりの公正な評価額を「公正な評価単価」という。
- (16) 「没収」とは、事前交付型において、権利確定条件が達成されなかったことによって、企業が無償で株式を取得することが確定することをいう。また、「失効」とは、事後交付型において、権利確定条件が達成されなかったことによって、取締役等に株式が交付されないことが確定することをいい、「失効」と「没収」を合わせて「失効等」という。
会計処理
事前交付型の会計処理
取締役等の報酬等として新株の発行を行う場合の会計処理
- 5. 取締役等に対して新株を発行し、これに応じて企業が取締役等から取得するサービスは、その取得に応じて費用として計上する。
- 6. 各会計期間における費用計上額は、株式の公正な評価額のうち、対象勤務期間を基礎とする方法その他の合理的な方法に基づき当期に発生したと認められる額である。株式の公正な評価額は、公正な評価単価に株式数を乗じて算定する。
- 7. 前項に定める株式の公正な評価単価は、付与日において算定し、原則として、その後は見直さない。
- また、失効等の見込みについては株式数に反映させるため、公正な評価単価の算定上は考慮しない。
- 8. 第6項の株式数の算定及びその見直しによる会計処理は、次のように行う。
- (1) 株式数は、付与された株式数(失効等を見込まない場合の株式数。以下同じ。)から、権利確定条件(勤務条件や業績条件)の不達成による失効等の見積数を控除して算定する。
- (2) 付与日から権利確定日の直前までの間に、権利確定条件(勤務条件や業績条件)の不達成による失効等の見積数に重要な変動が生じた場合には、原則として、これに応じて株式数を見直す。
株式数を見直した場合には、見直し後の株式数に基づく株式の公正な評価額に基づき、その期までに費用として計上すべき額と、これまでに計上した額との差額を見直した期の損益として計上する。 - (3) 権利確定日には、株式数を権利の確定した株式数(以下「権利確定数」という。)と一致させる。
これにより株式数を修正した場合には、修正後の株式数に基づく株式の公正な評価額に基づき、権利確定日までに費用として計上すべき額と、これまでに計上した額との差額を権利確定日の属する期の損益として計上する。 - 9. 第5項から第8項までの会計処理により年度通算で費用が計上される場合は対応する金額を資本金又は資本準備金に計上し、年度通算で過年度に計上した費用を戻し入れる場合は対応する金額をその他資本剰余金から減額する。
- 当該会計処理の結果、会計期間末においてその他資本剰余金の残高が負の値となった場合には、企業会計基準第1号「自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準」(以下「自己株式等会計基準」という。)第12項により会計処理を行う。
- 10. なお、期中会計期間においては、第5項から第8項までの会計処理により計上される損益に対応する金額はその他資本剰余金の計上又は減額として処理する。当該会計処理の結果、期中会計期間末においてその他資本剰余金の残高が負の値となった場合、前項後段と同様に処理する。当該処理は洗替えにより行う。
- また、年度の財務諸表においては、前項の処理に置き換える。
- 11. 没収によって無償で株式を取得した場合は、企業会計基準適用指針第2号「自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準の適用指針」(以下「自己株式等会計適用指針」という。)第14項により処理を行う。
取締役等の報酬等として自己株式を処分する場合の会計処理
- 12. 割当日において、処分した自己株式の帳簿価額を減額するとともに、同額のその他資本剰余金を減額する。なお、当該会計処理の結果、会計期間末においてその他資本剰余金の残高が負の値となった場合には、自己株式等会計基準第12項により会計処理を行う。
- 13. 取締役等に対して自己株式を処分し、これに応じて企業が取締役等から取得するサービスは、第6項から第8項と同様にサービスの取得に応じて費用を計上し、対応する金額をその他資本剰余金として計上する。
- 14. 没収によって無償で株式を取得した場合は、自己株式等会計適用指針第14項の定めによらず、本実務対応報告第12項により減額した自己株式の帳簿価額のうち、無償取得した部分に相当する額の自己株式を増額し、同額のその他資本剰余金を増額する。
事後交付型の会計処理
取締役等の報酬等として新株の発行を行う場合の会計処理
- 15. 取締役の報酬等として株式を無償交付する取引に関する契約を締結し、これに応じて企業が取締役等から取得するサービスは、第6項から第8項と同様にサービスの取得に応じて費用を計上し、対応する金額は、株式の発行等が行われるまでの間、貸借対照表の純資産の部の株主資本以外の項目に株式引受権として計上する。
- 16. 割当日において、新株を発行した場合には、株式引受権として計上した額(前項参照)を資本金又は資本準備金に振り替える。
取締役等の報酬等として自己株式を処分する場合の会計処理
- 17. 第15項と同様に処理する。
- 18. 割当日において、自己株式を処分した場合には、自己株式の取得原価と、株式引受権の帳簿価額との差額を、自己株式処分差額として、自己株式等会計基準第9項、第10項及び第12項により会計処理を行う。
その他の会計処理
- 19. 本実務対応報告に定めのないその他の会計処理については、類似する取引又は事象に関する会計処理が、企業会計基準第8号「ストック・オプション等に関する会計基準」(以下「ストック・オプション会計基準」という。)又は企業会計基準適用指針第11号「ストック・オプション等に関する会計基準の適用指針」(以下「ストック・オプション適用指針」という。)に定められている場合には、これに準じて会計処理を行う。
開 示
- 20. 年度の財務諸表において、次の事項を注記する。
- (1) 事前交付型について、取引の内容、規模及びその変動状況(各会計期間において権利未確定株式数が存在したものに限る。)
- ① 付与対象者の区分(取締役、執行役の別)及び人数
- ② 当該会計期間において計上した費用の額とその科目名称
- ③ 付与された株式数(当該企業が複数の種類の株式を発行している場合には、株式の種類別に記載を行う。④において同じ。)
- ④ 当該会計期間中に没収した株式数、当該会計期間中に権利確定した株式数並びに期首及び期末における権利未確定残株式数
- ⑤ 付与日
- ⑥ 権利確定条件
- ⑦ 対象勤務期間
- ⑧ 付与日における公正な評価単価
- (2) 事後交付型について、取引の内容、規模及びその変動状況(各会計期間において権利未確定株式数が存在したものに限る。ただし、⑤を除く。)
- ① 付与対象者の区分(取締役、執行役の別)及び人数
- ② 当該会計期間において計上した費用の額とその科目名称
- ③ 付与された株式数(当該企業が複数の種類の株式を発行している場合には、株式の種類別に記載を行う。④、⑤において同じ。)
- ④ 当該会計期間中に失効した株式数、当該会計期間中に権利確定した株式数並びに期首及び期末における権利未確定残株式数
- ⑤ 権利確定後の未発行株式数
- ⑥ 付与日
- ⑦ 権利確定条件
- ⑧ 対象勤務期間
- ⑨ 付与日における公正な評価単価
- (3) 付与日における公正な評価単価の見積方法
- (4) 権利確定数の見積方法
- (5) 条件変更の状況
- 21. 前項の注記事項に関する具体的な内容や記載方法の他、本実務対応報告に会計処理の定めのない事項に係る注記については、ストック・オプション適用指針第27項、第28項(2)、第29項、第30項、第33項及び第35項の定めに準じて注記を行う。
- 22. 1株当たり情報に関する注記において、事後交付型におけるすべての権利確定条件を達成した場合に株式が交付されることとなる契約は、企業会計基準第2号「1株当たり当期純利益に関する会計基準」(以下「1株当たり当期純利益会計基準」という。)第9項の「潜在株式」として取り扱い、潜在株式調整後1株当たり当期純利益の算定において、ストック・オプションと同様に取り扱う。
- また、株式引受権の金額は1株当たり純資産の算定上、企業会計基準適用指針第4号「1株当たり当期純利益に関する会計基準の適用指針」(以下「1株当たり当期純利益適用指針」という。)第35項の期末の純資産額の算定にあたっては、貸借対照表の純資産の部の合計額から控除する。
適用時期等
- 23. 本実務対応報告は、改正法の施行日である2021年3月1日以後に生じた取引から適用する。なお、その適用については、会計方針の変更には該当しない。
議 決
- 24. 本実務対応報告は、第450回企業会計基準委員会に出席した委員14名全員の賛成に より承認された。
結論の背景
経 緯
- 25. 改正法の施行前においては、会社法第199条第1項の募集に係る新株の発行又は自己株式の処分をしようとするときは、その都度、募集株式の払込金額又はその算定方法を定めなければならないこととされている。そのため、取締役等の報酬等として株式を交付しようとする株式会社においては、実務上、いわゆる現物出資構成により、金銭を取締役等の報酬等とした上で、取締役等に株式会社に対する報酬支払請求権を現物出資財産として給付させることによって株式を交付することがされているが、このような方法は技巧的であり、かつ、このように株式を交付した場合の資本金等の取扱いが明確でないと指摘されていた。
- そこで、改正法においては、より円滑に株式を報酬等として取締役等に交付することができるように、上場会社は、取締役等の報酬等として新株の発行又は自己株式の処分をするときは、金銭の払込み等を要しないこととされた(会社法第202条の2第1項等)。
- 新株の発行により計上すべき資本金又は資本準備金の額は、原則として、新株の発行に際して株主となる者が当該株式会社に対して払込み又は給付をした財産の額を基礎として計算される(会社法第445条第1項から第3項まで)が、取締役等の報酬等として金銭の払込み等を要しないで株式を発行する場合には、この規律を適用するのではなく、一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行も踏まえた規律とすべきであるとされたことから、2019年12月に公益財団法人財務会計基準機構内に設けられている基準諮問会議に対して、新規テーマの提案がなされた。
- これを受けて、2020年1月に開催された第424回企業会計基準委員会において、基準諮問会議より、取締役等の報酬等として金銭の払込み等を要しないで株式の発行等をする場合の会計上の取扱いの検討を求める提言がなされ、当委員会は、同年2月に開催された第425回企業会計基準委員会において、新規テーマとすることを決定した。
- 本実務対応報告は、2020年9月に公表した実務対応報告公開草案第60号「取締役の報酬等として株式を無償交付する取引に関する取扱い(案)」に対して寄せられた意見を踏まえて検討を行い、公開草案の内容を一部修正した上で公表するに至ったものである。
- 26. なお、いわゆる現物出資構成による取引については、会計処理に関する定めはなく、様々な実務が行われているものと考えられるが、本実務対応報告は基準諮問会議から提言を受けた取引を対象としており、いわゆる現物出資構成による取引については適用されない。ここで、本実務対応報告が対象とする取引は、会社法上、株式の無償発行であるのに対して、いわゆる現物出資構成による取引は株式の有償発行であるなど、法的な性質が異なる点がある。したがって、いわゆる現物出資構成による取引の会計処理のうち払込資本の認識時点など、法的な性質に起因する会計処理については異なる会計処理になるものと考えられる。
用語の定義
- 27. 本実務対応報告は、会社法第202条の2に基づく、取締役の報酬等として株式を無償交付する取引に適用されることとしており(第3項参照)、会社法で規定されている用語のうち、必要と考えられるものについて、本実務対応報告の用語の定義に含めている。
- 28. また、費用の認識や測定については、ストック・オプション会計基準の定めに準じることとしており(本実務対応報告第38項参照)、ストック・オプション会計基準の用語の定義のうち、必要と考えられるものについて、必要な修正を加えた上で、本実務対応報告の用語の定義に含めている。
付与日
- 29. ストック・オプション会計基準第2項(6)では、「付与日」を「ストック・オプションが付与された日をいう。会社法(平成17年法律第86号)にいう、募集新株予約権の割当日(会社法第238条第1項第4号)がこれにあたる。」と定義し、付与日(会社法上の割当日)を公正な評価単価の算定の基準日としている。
- これは、付与したストック・オプションと企業が期待するサービスが契約成立の時点において等価で交換されていると考え(ストック・オプション会計基準第49項)、また付与日以後のストック・オプションの公正な評価単価の変動はサービスの価値とは直接的な関係を有しないとの考えに基づくものである(ストック・オプション会計基準第50項)。
- 30. この点、取締役の報酬等として株式を無償交付する取引においても、ストック・オプション会計基準における考え方と同様に、交付する株式とその対価である取締役等が提供するサービスが等価で交換されているとみなすことが適切であると考えられ、その等価であることを表す時点は企業と取締役等が合理的な意思をもって条件付の契約を締結した時点であると考えられる。ここで、契約を締結した時点については、書面、口頭を問わず、条件に実質的に合意した日になると考えられる。
- 31. なお、ストック・オプションでは企業と対象者との間で書面による契約が締結されるとは限らないことを踏まえ、ストック・オプション会計基準においては、付与日の時点を会社法上の割当日としている。一方、取締役の報酬等として株式を無償交付する取引においては、通常は、企業と取締役等との間で書面による契約が締結されることが想定されること、また、事後交付型においては、当初の時点においてストック・オプションのような法令に基づいて設定する日がないことから、前項の考え方に従って、契約が締結された時点を付与日とし、株式の公正な評価単価の算定の基準日とした(本実務対応報告第4項(9)及び第7項参照)。
対象勤務期間
- 32. ストック・オプション会計基準第2項(9)では、「対象勤務期間」を「ストック・オプションと報酬関係にあるサービスの提供期間であり、付与日から権利確定日までの期間をいう。」と定義し、対象勤務期間を基礎とする方法その他の合理的な方法に基づき、費用配分を行うこととしている。このように対象勤務期間を付与日から権利確定日までの期間としているのは、ストック・オプション会計基準公表当時の調査において、契約上、権利確定日や対象勤務期間が示されていない事例が多く見られたことから、会計基準において対象勤務期間を明示的に定めたものと考えられる。
- 33. この点、取締役の報酬等として株式を無償交付する取引においては、通常は、企業と取締役等との間で書面による契約が締結されることが想定され(本実務対応報告第31項参照)、契約において「対象勤務期間」が定められていれば、当該期間において費用配分を行うことが適切と考えられる。そこで、本実務対応報告においては、「対象勤務期間」を、通常は契約において定められた期間となるとした。また、契約において対象勤務期間が定められていない場合には、ストック・オプション会計基準と同様に、付与日から権利確定日までの期間を対象勤務期間とみなすこととした(本実務対応報告第4項(11)参照)。
- なお、対象勤務期間は、株式と引換えに提供されるサービスの提供期間であることから、勤務条件や業績条件を考慮して条件を達成するために実質的に取締役等の勤務が求められる期間と、契約において定められた期間や付与日から権利確定日までの期間が異なる場合は、条件を達成するために実質的に取締役等の勤務が求められる期間が対象勤務期間となると考えられる。
失効等
- 34. ストック・オプション会計基準第2項(13)では、「失効」を「ストック・オプションが付与されたものの、権利行使されないことが確定することをいう。」と定義している。ここで、事前交付型においては、権利確定条件が達成されない場合には企業が無償で株式を取得することから、失効という用語をそのまま用いることは適切ではないと考えられる。よって、事前交付型については、権利確定条件が達成されなかったことによって、企業が無償で株式を取得することが確定することを「没収」と定義した上で、事後交付型における「失効」と合わせて「失効等」ということとした(本実務対応報告第4項(16)参照)。
会計処理
基本的な考え方
- 35. 我が国では、自社の株式オプションを報酬として用いる取引について、ストック・オプション会計基準があるが、自社の株式を報酬として用いる取引に関する包括的な会計基準はない。
- 本実務対応報告の適用対象としている取締役の報酬等として株式を無償交付する取引については、いわゆる事前交付型と事後交付型が想定されるが、自社の株式を報酬として用いる点で、自社の株式オプションを報酬として用いるストック・オプションと類似性があると考えられることから、検討にあたっては、取締役の報酬等として株式を無償交付する取引とストック・オプションとの比較を行っている。
- 36. まず、自社の株式オプションを報酬として用いるストック・オプションには次のような特徴があると考えられる。
- (1) 企業から取締役等や従業員に報酬として付与するものである。
- (2) 企業は、取締役等や従業員に付与したストック・オプションのインセンティブ効果により、取締役等や従業員から追加的なサービスの提供を期待する。
- (3) 権利行使価格が時価未満の価格である場合の差額は、取締役等や従業員にとってのストック・オプションの経済的価値となり、企業の株価に応じて取締役等や従業員にとっての価値が変動する。
- (4) 権利確定条件が達成されない場合、オプションを行使する権利を喪失し、また、権利確定条件が達成された場合も権利が行使されるまでは自社の株式は交付されず、取締役等や従業員は株主としての権利を得ない。
- 37. 前項のような特徴に対して、取締役の報酬等として株式を無償交付する取引との異同は次のとおり整理される。
- (1) 会社法における特則(第202条の2)は、上場会社が自社の株式を取締役等に報酬等として交付することを想定したものであり、報酬として付与するものである点で、ストック・オプションと同様であると考えられる。
- (2) 改正法において、取締役等への適切なインセンティブの付与のための規律の整備の一環として、取締役等の報酬等に関する規律の見直しが行われており、インセンティブ効果による追加的なサービスの提供を期待する点で、ストック・オプションと同様であると考えられる。
- (3) 事前交付型、事後交付型いずれも、企業の株価に応じて取締役等にとっての経済的価値が変動する点で、ストック・オプションと同様であると考えられる。
- (4) 事後交付型では、権利確定条件が達成されない場合、取締役等は株式の交付を受けることができず、株主としての権利を得ない点はストック・オプションと同様である。
一方、事前交付型については、株式の譲渡が制限され、権利確定条件が達成されるまでの間は、譲渡による経済的利益を享受することができない。ただし、株式の割当日に株主となることから(会社法第209条第4項)、割当日から権利確定までの間も配当請求権や議決権等の株主としての権利を有することになり、その点ではストック・オプションと異なる。 - 38. 前項のとおり、ストック・オプション及び事後交付型と、事前交付型では株主となるタイミングが異なり、その差は提供されるサービスに対する対価の会計処理(純資産の部の株主資本以外の項目となるか株主資本となるか。)に現れるものの、インセンティブ効果を期待して自社の株式又は株式オプションが付与される点では同様であるため、費用の認識や測定についてはストック・オプション会計基準の定めに準じることとした。
事前交付型の会計処理
取締役等の報酬等として新株の発行を行う場合の会計処理
(報酬費用の認識及び測定)
- 39. 取締役の報酬等として株式を無償交付する取引においては、株式を交付することによるインセンティブ効果によって、取締役等からサービスの提供を受けていると考えられることから、ストック・オプション会計基準に準じて、サービスの取得に応じて費用として計上することとし(本実務対応報告第5項参照)、費用の測定についても、株式の公正な評価額に基づき行うこととした(本実務対応報告第6項から第8項参照)。
(払込資本の認識時点)
- 40. 事前交付型においては、割当日(第4項(6)参照)に取締役等は株主となり、譲渡が制限されているものの、配当請求権や議決権等の株主としての権利を有することになる。ただし、割当日においては、資本を増加させる財産等の増加は生じていないため、割当日においては払込資本を増加させず、取締役等からサービスの提供を受けることをもって、分割での払込みがなされていると考え、サービスの提供の都度、払込資本を認識することとした。
(払込資本の内訳項目)
- 41. 2020年11月27日に公布された会社法施行規則等の一部を改正する省令(令和2年法務省令第52号)による改正後の会社計算規則(平成18年法務省令第13号)においては、会社法第202条の2第1項の規定により募集株式を引き受ける者の募集を行う場合において、当該募集株式を引き受ける取締役等が株式会社に対し当該募集株式に係る割当日後にその職務の執行として当該募集株式を対価とする役務を提供するときは、各事業年度の末日(臨時決算日を含む。以下同じ。)において、取締役等が当該募集において発行される新株を対価として当該株式会社に提供した役務の公正な評価額のうち、直前の事業年度の末日から当事業年度の末日までの増加額に相当する資本金又は資本準備金の額が増加することとされている(会社計算規則第42条の2第1項から第3項)。
- 42. この点、会計上の資本金の額は、法律における資本金の額と合わせることとされており、前項の会社計算規則における取扱いを踏まえ、年度の財務諸表においては、年度通算で費用が計上される場合には、対応する金額を資本金又は資本準備金に計上することとした。一方、ストック・オプション会計基準の定めに準じて、権利確定条件(勤務条件や業績条件)の不達成による失効等の見積数に重要な変動が生じた場合には、見積数の変動に伴う差額を費用計上する(又は費用を戻し入れる)ことになり、年度通算で過年度に計上した費用を戻し入れる場合もあると考えられ、その場合には、対応する金額をその他資本剰余金から減額することとした(本実務対応報告第9項参照)。また、期中会計期間においては、その他資本剰余金の計上又は減額として処理することとした(本実務対応報告第10項参照)。
(没収の会計処理)
- 43. ストック・オプションにおいては、権利確定条件の不達成により、失効した場合には新株予約権の効力が無くなるが、事前交付型においては、権利確定条件が達成されない場合には、企業が無償で株式を取得することになる(本実務対応報告第4項(7)及び(16)参照)。自己株式の無償取得の会計処理は自己株式等会計適用指針第14項に定められており、同項に従い会計処理は行わず自己株式の数のみの増加として処理することとした(本実務対応報告第11項参照)。
取締役等の報酬等として自己株式を処分する場合の会計処理
- 44. 自己株式等会計基準では、自己株式の処分については新株の発行と同様の経済的実態を有すると整理している(自己株式等会計基準第37項)。よって、事前交付型で自己株式の処分を行った場合の基本的な会計処理である報酬費用の認識及び測定や払込資本の認識時点については、事前交付型で新株を発行した場合と同様とすることが考えられる。
- なお、報酬費用と自己株式の帳簿価額との差額は、自己株式処分差額として、その他資本剰余金とすることが適切と考えられるため、自己株式の消滅の認識時点及び報酬費用の認識時点においては、その他資本剰余金を増額又は減額することとしている。
- 45. ここで、割当日に自己株式の処分を行う場合、自己株式の帳簿価額の会計処理をどのように行うか、具体的には自己株式の消滅をいつ認識するかが論点となる。この点については、次の2つの方法が考えられる。
- (1) 割当日に自己株式の帳簿価額を減額する方法
- (2) 勤務が終了し権利が確定した時に自己株式の帳簿価額を減額する方法
- 46. 前項の(1)の方法は、株式が企業から取締役等に移転する事実に応じて自己株式の帳簿価額を減額するものである。また、(2)の方法は、最終的に没収によって自己株式を改めて取得する可能性があることから、没収となるか否かが確定するまでは、自己株式を計上し、没収とならないことが確定した段階で、確定したもののみを減額するものである。
- 前項の(1)と(2)のいずれの方法も採り得るが、本実務対応報告では、次の理由から(1)の割当日に自己株式の帳簿価額を減額する方法を採用し、割当日において、処分した自己株式の帳簿価額を減額するとともに、同額のその他資本剰余金を減額し、その後の報酬費用の計上に応じてその他資本剰余金を計上することとした(本実務対応報告第12項及び第13項参照)。
- (1) 通常、自己株式の処分は対価の払込期日に認識することとしているが、これは会社法上、自己株式の処分の効力が生じるのは払込期日とされているためである(自己株式等会計適用指針第34項)。取締役の報酬等として株式を無償交付する場合は、その効力が生じるのが「割当日」であることから、割当日に自己株式の帳簿価額を減額する方法は、自己株式等会計適用指針の考え方と整合する。
- (2) 勤務が終了し権利が確定した時に、自己株式の帳簿価額を減額する方法を採用した場合、自己株式を企業がもはや保有しておらず、譲渡制限付の株式の保有者として取締役等が株主になっているにもかかわらず、自己株式として計上され続けることになる。
- (3) 自己株式は処分によって、処分の対価に相当する額の分配可能額が増加する効果があると捉えられているが、勤務が終了し権利が確定した時に、自己株式の帳簿価額を減額する方法を採用した場合、このような効果のない自己株式が計上され続けることになるため、財務諸表の利用者に誤解を与えるおそれがある。
- なお、割当日にその他資本剰余金を減額することによって、その他資本剰余金の残高が負の値になった場合、自己株式等会計基準第12項により、会計期間末において、その他資本剰余金の残高を零とし、当該負の値をその他利益剰余金(繰越利益剰余金)から減額することになる(本実務対応報告第12項参照)が、自己株式等会計基準では、このように払込資本に生じた毀損を留保利益で埋め合わせるのは、その期に完結する処理としている(自己株式等会計基準第43項)。したがって、過年度にその他利益剰余金で補てんを行った後、当年度に報酬費用の計上を行った場合(本実務対応報告第14項の没収による自己株式の無償取得により自己株式を増額した場合も含む。)でも、過年度に充当した留保利益を元に戻すことはせず、その他資本剰余金を増額することとした。
(没収の会計処理)
- 47. 前項のように、割当日に自己株式の帳簿価額を減額する方法によれば、割当日に自己株式の帳簿価額を減額するとともに、同額のその他資本剰余金を減額することになるが、権利確定条件が達成されずいったん取締役等に交付した株式を没収する場合、報酬費用は計上されず、その他資本剰余金が増額されないこととなる。そのため、没収による自己株式の無償取得を、自己株式等会計適用指針第14項に従って、自己株式の数のみの増加として処理することとした場合、割当日に減額したその他資本剰余金が減額されたままとなる。
- この点、没収による自己株式の無償取得が生じたのは、取締役等から条件を満たすサービスの提供が受けられず、当初意図した交換取引が成立しなかったことによるものと考えられることから、通常の自己株式の無償取得と同様に処理するのは適切ではないと考えられる。
- よって、没収による自己株式の無償取得が生じた場合、割当日に減額したその他資本剰余金を戻し入れる処理、すなわち、割当日に減額した自己株式の帳簿価額のうち、無償取得した部分に相当する金額の自己株式を増額し、同額のその他資本剰余金を増額することとした(本実務対応報告第14項参照)。
事後交付型の会計処理
- 48. 事後交付型については、対象勤務期間後に株式を交付するため、対象勤務期間中に計上された費用に対応する金額は、将来的に株式を交付する性質のものとして累積させ、権利確定日以後の割当日において払込資本に振り替えることになると考えられる。
- 49. 前項に記載した対象勤務期間中に費用計上し、対象勤務期間後に株式の発行等を行う特徴は、ストック・オプションと同様であるため、報酬費用の相手勘定についても、ストック・オプションにおける新株予約権と同様に、貸借対照表の純資産の部の株主資本以外の項目に株式引受権として計上することとした(第15項及び第17項参照)。
- 50. 審議の過程で、現在行われているいわゆる現物出資構成による取引における実務では、負債として計上されている事例があることが指摘された。この点、取締役の報酬等として株式を無償交付する取引では、取締役等が提供するサービスの対価として、自社の株式を直接交付する点で支払義務がないなど、必ずしも負債としての性質を満たすかどうかが明らかではないため、本実務対応報告の対象とする取引においては、前項のとおりストック・オプションとの類似性を重視して純資産の部の株主資本以外の項目として計上することとした。
その他の会計処理
- 51. 本実務対応報告では、費用の認識や測定についてはストック・オプション会計基準の定めに準じることとしているが(本実務対応報告第38項参照)、本実務対応報告の適用対象としている取締役の報酬等として株式を無償交付する取引は、本実務対応報告の開発段階においては改正法の施行前であり、当該取引の詳細は定かではないことから、基本となる会計処理のみを定めている。
- そのため、本実務対応報告に定めのないその他の会計処理については、類似する取引又は事象に関する会計処理が、ストック・オプション会計基準又はストック・オプション適用指針に定められている場合には、これに準じて会計処理を行うこととした(本実務対応報告第19項参照)。
開示
注記
- 52. 本実務対応報告では、費用の認識や測定についてはストック・オプション会計基準の定めに準じることとしており(本実務対応報告第38項参照)、注記の検討を行うにあたってもストック・オプション会計基準及びストック・オプション適用指針における注記事項を基礎として、個々の注記事項を定めるとともに、本実務対応報告に定めのない事項については、ストック・オプション適用指針の定めに準じて注記を行うこととした(本実務対応報告第21項参照)。
- また、取締役の報酬等として株式を無償交付する取引においては、権利行使が行われた場合にのみ株式が交付されるストック・オプションと異なり、権利行使のプロセスが存在しない点や、事前交付型と事後交付型とでプロセスが異なる点を考慮して、ストック・オプション会計基準及びストック・オプション適用指針における注記事項のうち必要と考えられる項目を定めている(本実務対応報告第20項参照)。
1株当たり情報
- 53. 1株当たり情報の算定にあたり、事前交付型においては、払込資本を増加させる前の割当日において発行済株式総数又は自己株式数が変動するため、当該株式数の変動を反映させるか否かが論点となる。この点については、取締役等は割当日に株主となり配当請求権等の権利を得ることから、割当日における株式数の変動を1株当たり情報の算定に反映することが適切と考えられる。
- 一方、事後交付型においては、株式が交付されるのは権利確定日以後になるが、株式が交付されることとなる契約は、当初の契約時点において「その保有者が普通株式を取得することができる権利若しくは普通株式への転換請求権又はこれらに準じる権利が付された証券又は契約」としている「潜在株式」(1株当たり当期純利益会計基準第9項)の定義を満たし、潜在株式調整後1株当たり当期純利益の算定において考慮することになると考えられる。
- ここで、事後交付型において潜在株式調整後1株当たり当期純利益の算定上どのように考慮するかについては、事後交付型の対象勤務期間中に費用計上し、対象勤務期間後に株式の発行等を行う特徴は、ストック・オプションと同様である(本実務対応報告第49項参照)ため、潜在株式調整後1株当たり当期純利益の算定においてもストック・オプションと同様に取り扱うこととした(本実務対応報告第22項参照)。よって、業績条件が付されている場合は、条件付発行可能潜在株式と同様に取り扱い、勤務条件のみが付されている場合は、ワラントと同様に取り扱う(1株当たり当期純利益適用指針第53項)ことになると考えられる。
- 54. また、1株当たり純資産額の算定において、株式引受権は新株予約権や非支配株主持分と同様に普通株主に関連しない項目であり、「期末の純資産額」の算定にあたっては、貸借対照表の純資産の部の合計額から控除することになると考えられる(第22項参照)。
関連当事者との取引
- 55. 取締役の報酬等として株式を無償交付する取引は、取締役等との取引であり、企業会計基準第11号「関連当事者の開示に関する会計基準」(以下「関連当事者会計基準」という。)における関連当事者との取引に該当すると考えられる。一方で、関連当事者会計基準第9項(2)において、「役員に対する報酬、賞与及び退職慰労金の支払い」は開示対象外としている。
- ここで、取締役の報酬等として株式を無償交付する取引においては、取締役等への報酬等としての性質に加え、株式が交付されることから資本取引の性質も有する。当該取引を関連当事者会計基準第9項(2)の取引に該当する報酬等と捉えた場合、開示対象外となると考えられるが、一方で、資本取引として捉えた場合、取引条件が一般の取引と同様であることが明白である場合を除き、開示対象になると考えられる。この点、次の理由から、関連当事者との取引に関する開示を行う必要性は必ずしも高くなく、報酬等としての側面を重視して、関連当事者との取引に関する開示は要しないと考えられる。
- (1) 取締役の報酬等として株式を無償交付する取引においては、権利行使時に権利行使価格の払込みを受けて株式が交付されるストック・オプションとは異なり、交付する株式についての払込みがサービスの提供のみによってなされ、報酬費用の計上と株式の発行等(資本取引)が同額で行われるため、報酬費用とは別に株式の発行等に関する関連当事者との取引に関する注記を行う必要性が乏しいと考えられること。
- (2) 関連当事者との取引として開示が求められる項目のうち、取引の内容や取引金額、取引条件に関する情報は、概ね、本実務対応報告における注記事項(本実務対応報告第20項参照)として開示されることとなり、利用者が取引内容や条件を判断するための一定の情報は提供されるものと考えられること。
適用時期等
- 56. 本実務対応報告は、改正法における会社法の規定に基づいて行われる取引を対象としており、改正法の施行前は取引が行われていないと考えられることから、改正法の施行日である2021年3月1日以後に生じた取引から適用することとした。また、新たな取引に対して適用するものであり、従来採用していた会計方針は存在しないことから、会計方針の変更には該当しないことを明記した(第23項参照)。
設 例
- 次の設例は、本実務対応報告で示された内容についての理解を深めるために参考として示されたものであり、仮定として示された前提条件の記載内容は、経済環境や各企業の実情等に応じて異なることに留意する必要がある。
設例
[設例1] 事前交付型
- [設例1-1] 取締役等の報酬等として新株の発行を行う場合
- A社は、X1年6月の株主総会において、会社法第361条に基づく報酬等としての募集株式の数の上限等を決議し、同日の取締役会において、取締役10名に対して報酬等として会社法第202条の2に基づく新株の発行を行うことを決議した。また、同年7月1日に取締役との間で契約を締結し、同日に株式を割り当てるとともに、割り当てた株式に対してX4年7月1日に解除される譲渡制限を付し、前日までに取締役が自己都合で退任した場合、当該取締役に割り当てた株式はすべて会社が無償取得することとした。
- 前提は、次のとおりである。
① 株式の数:取締役1名当たり1,000株
② 取締役と契約を締結したX1年7月1日を付与日とした。また、同日における株式の契約条件等に基づく調整を行った公正な評価単価は、6,000円/株であった。
③ X1年7月の付与日において、X4年6月末までに1名の自己都合による退任に伴う株式の無償取得を見込んでいる。
④ X4年3月期中に1名の自己都合による退任が発生した。X4年3月末に将来の退任見込みを修正し、X4年6月末までに自己都合による退任が追加で1名発生することを見込んだ。
⑤ X4年4月からX4年6月末までに2名の自己都合による退任が発生した。
⑥ 割り当てた株式数及び年度ごとの無償取得した株式数の実績は次のとおりである。 
⑦ 報酬費用に対応して計上する払込資本は、全額資本金とする。
- (1) X2年3月期
- <新株の発行>

- ・発行済株式総数が増加するが、資本を増加させる財産等の増加は生じていないため、払込資本は増加しない。
- <報酬費用の計上>

- ・期末時点において将来の退任見込みを修正する必要はないと想定している。
- ・年度通算で費用が計上されるため、対応する金額を資本金として計上する。
- ・対象勤務期間:36月(X1年7月-X4年6月)
- ・対象勤務期間のうちX2年3月末までの期間:9月(X1年7月-X2年3月)
- (2) X3年3月期
- <報酬費用の計上>

- ・期末時点において将来の退任見込みを修正する必要はないと想定している。
- ・年度通算で費用が計上されるため、対応する金額を資本金として計上する。
- ・対象勤務期間:36月(X1年7月-X4年6月)
- ・対象勤務期間のうちX3年3月末までの期間:21月(X1年7月-X3年3月)
- (3) X4年3月期
- <報酬費用の計上>

- ・期中において取締役1名が自己都合により退任したため、自己株式の無償取得を行った。
- ・期末時点において将来の退任見込みを修正し、X4年6月末までに自己都合による退任が追加で1名発生することを見込んだ。
- ・年度通算で費用が計上されるため、対応する金額を資本金として計上する。
- ・対象勤務期間:36月(X1年7月-X4年6月)
- ・対象勤務期間のうちX4年3月末までの期間:33月(X1年7月-X4年3月)
- <没収による自己株式の無償取得>

- ・取締役1名の退任に伴い、没収により自己株式1,000株を取得しているが、無償であるため、自己株式の数のみの増加として処理する。
- (4) X5年3月期
- <報酬費用の戻入れ>

- ・期中において取締役2名が自己都合により退任したため、自己株式の無償取得を行った。
- ・権利確定日において退任数を実績に修正した。
- ・年度通算で過年度に計上した費用を戻し入れるため、対応する金額をその他資本剰余金から減額する。
- ・対象勤務期間:36月(X1年7月-X4年6月)
- ・対象勤務期間のうちX4年6月末までの期間:36月(X1年7月-X4年6月)
- <没収による自己株式の無償取得>

- ・取締役2名の退任に伴い、没収により自己株式2,000株を取得しているが、無償であるため、自己株式の数のみの増加として処理する。
- [設例1-2] 取締役等の報酬等として自己株式を処分する場合
- B社は、X1年6月の株主総会において、会社法第361条に基づく報酬等としての募集株式の数の上限等を決議し、同日の取締役会において、取締役10名に対して報酬等として会社法第202条の2に基づく自己株式の処分を行うことを決議した。また、同年7月1日に取締役との間で契約を締結し、同日に株式を割り当てるとともに、割り当てた株式に対してX4年7月1日に解除される譲渡制限を付し、前日までに取締役が自己都合で退任した場合、当該取締役に割り当てた株式はすべて会社が無償取得することとした。
- 前提は、次のとおりである。
① 株式の数:取締役1名当たり1,000株
② 取締役と契約を締結したX1年7月1日を付与日とした。また、同日における株式の契約条件等に基づく調整を行った公正な評価単価は、6,000円/株であった。
③ 交付した自己株式(10,000株)の帳簿価額の総額は50,000,000円である(単価5,000円/株)。
④ X1年7月の付与日において、X4年6月末までに1名の自己都合による退任に伴う株式の無償取得を見込んでいる。
⑤ X4年3月期中に1名の自己都合による退任が発生した。X4年3月末に将来の退任見込みを修正し、X4年6月末までに自己都合による退任が追加で1名発生することを見込んだ。
⑥ X4年4月からX4年6月末までに2名の自己都合による退任が発生した。
⑦ 割り当てた株式数及び年度ごとの無償取得した株式数の実績は次のとおりである。 
- (1) X2年3月期
- <自己株式の処分>

- ・割当日において、処分した自己株式の帳簿価額を減額するとともに、同額のその他資本剰余金を減額する。
- <報酬費用の計上>

- ・期末時点において、将来の退任見込みを修正する必要はないと想定している。
- ・報酬費用に対応する金額をその他資本剰余金として計上する。
- ・対象勤務期間:36月(X1年7月-X4年6月)
- ・対象勤務期間のうちX2年3月末までの期間:9月(X1年7月-X2年3月)
- (2) X3年3月期
- <報酬費用の計上>

- ・期末時点において将来の退任見込みを修正する必要はないと想定している。
- ・報酬費用に対応する金額をその他資本剰余金として計上する。
- ・対象勤務期間:36月(X1年7月-X4年6月)
- ・対象勤務期間のうちX3年3月末までの期間:21月(X1年7月-X3年3月)
- (3) X4年3月期
- <報酬費用の計上>

- ・期中において取締役1名が自己都合により退任したため、自己株式の無償取得を行った。
- ・期末時点において将来の退任見込みを修正し、X4年6月末までに自己都合による退任が追加で1名発生することを見込んだ。
- ・報酬費用に対応する金額をその他資本剰余金として計上する。
- ・対象勤務期間:36月(X1年7月-X4年6月)
- ・対象勤務期間のうちX4年3月末までの期間:33月(X1年7月-X4年3月)
- <没収による自己株式の無償取得>

- ・取締役1名の退任に伴い、没収による自己株式1,000株の無償取得が生じたため、割当日に減額した自己株式の帳簿価額のうち、無償取得した部分に相当する金額の自己株式(5,000円/株 × 1,000株 = 5,000,000円)を増額し、同額のその他資本剰余金を増額する。
- (4) X5年3月期
- <報酬費用の戻入れ>

- ・期中において取締役2名が自己都合により退任したため、自己株式の無償取得を行った。
- ・権利確定日において退任数を実績に修正した。
- ・費用の戻入れが生じており、対応する金額をその他資本剰余金から減額する。
- ・対象勤務期間:36月(X1年7月-X4年6月)
- ・対象勤務期間のうちX4年6月末までの期間:36月(X1年7月-X4年6月)
- <没収による自己株式の無償取得>

- ・取締役2名の退任に伴い、没収による自己株式2,000株の無償取得が生じたため、割当日に減額した自己株式の帳簿価額のうち、無償取得した部分に相当する金額の自己株式(5,000円/株 × 2,000株 = 10,000,000円)を増額し、同額のその他資本剰余金を増額する。
[設例2] 事後交付型-取締役等の報酬等として新株の発行を行う場合
- C社は、X1年6月の株主総会において、会社法第361条に基づく報酬等としての募集株式の数の上限等を決議し、同日の取締役会において、取締役10名に対して報酬等として、一定の条件を達成した場合に、会社法第202条の2に基づく新株の発行を行うこととする契約を取締役と締結することを決議し、同年7月1日に取締役との間で条件について合意した契約を締結した。
- 前提は、次のとおりである。
① 割り当てる株式の数:取締役1名当たり1,000株
② 割当ての条件:X1年7月1日からX4年6月30日の間、取締役として業務を行うこと
③ 割当ての条件を達成できなかった場合、契約は失効する。
④ 取締役と契約を締結したX1年7月1日を付与日とした。また、同日における株式の契約条件等に基づく調整を行った公正な評価単価は、4,500円/株であった。
⑤ X1年7月の付与日において、X4年6月末までに1名の自己都合による退任に伴う失効を見込んでいる。
⑥ X4年3月期中に1名の自己都合による退任が発生した。X4年3月末に将来の退任見込みを修正し、X4年6月末までに自己都合による退任が追加で1名発生することを見込んだ。
⑦ X4年4月からX4年6月末までに2名の自己都合による退任が発生した。
⑧ 権利確定した株式について、X4年7月に取締役会決議により新株を発行している。
⑨ 割当予定の株式数及び年度ごとの失効した株式数の実績は次のとおりである。 
⑩ 新株の発行に伴って増加する払込資本は、全額資本金に計上する。
- (1) X2年3月期
- <報酬費用の計上>

- ・期末時点において、将来の退任見込みを修正する必要はないと想定している。
- ・報酬費用に対応する金額を純資産の部の株主資本以外の項目に株式引受権として計上する。
- ・対象勤務期間:36月(X1年7月-X4年6月)
- ・対象勤務期間のうちX2年3月末までの期間:9月(X1年7月-X2年3月)
- (2) X3年3月期
- <報酬費用の計上>

- ・期末時点において将来の退任見込みを修正する必要はないと想定している。
- ・報酬費用に対応する金額を株式引受権として計上する。
- ・対象勤務期間:36月(X1年7月-X4年6月)
- ・対象勤務期間のうちX3年3月末までの期間:21月(X1年7月-X3年3月)
- (3) X4年3月期
- <報酬費用の計上>

- ・期末時点において将来の退任見込みを修正し、X4年6月末までに自己都合による退任が追加で1名発生することを見込んだ。
- ・報酬費用に対応する金額を株式引受権として計上する。
- ・対象勤務期間:36月(X1年7月-X4年6月)
- ・対象勤務期間のうちX4年3月末までの期間:33月(X1年7月-X4年3月)
- (4) X5年3月期
- <報酬費用の戻入れ>

- ・期中において取締役2名が自己都合により退任したため、権利確定日において退任数を実績に修正した。
- ・費用の戻入れが生じており、対応する金額を株式引受権から減額する。
- ・対象勤務期間:36月(X1年7月-X4年6月)
- ・対象勤務期間のうちX4年6月末までの期間:36月(X1年7月-X4年6月)
- <新株の発行>

- ・権利確定条件の達成に伴い新株を発行した時点で、対応する株式引受権の残高を資本金に振り替える。
- 以 上