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実務対応報告第38号資金決済法における暗号資産の会計処理等に関する当面の取扱い
目 的
- 1. 平成28年に公布された「情報通信技術の進展等の環境変化に対応するための銀行法等の一部を改正する法律」(平成28年法律第62号)により、「資金決済に関する法律」(平成21年法律第59号。以下「資金決済法」という。)が改正され、暗号資産が定義された上で、暗号資産交換業者に対して登録制が導入された。
- 2. 本実務対応報告は、暗号資産の会計処理及び開示に関する当面の取扱いとして、必要最小限の項目について、実務上の取扱いを明らかにすることを目的とする。
範 囲
- 3. 本実務対応報告は、資金決済法に規定する暗号資産を対象とする。
- ただし、自己(自己の関係会社を含む。)の発行した資金決済法に規定する暗号資産は除く。
用語の定義
- 4. 本実務対応報告における用語の定義は、次のとおりとする。
- (1) 「暗号資産」とは、資金決済法第2条第14項に規定する暗号資産をいう。
- (2) 「暗号資産交換業者」とは、資金決済法第2条第16項に規定する暗号資産交換業者をいう。
- (3) 「暗号資産利用者」とは、暗号資産を利用する企業のうち、暗号資産交換業者以外の者をいう。
- (4) 「暗号資産取引所」とは、暗号資産交換業者又は外国において暗号資産の売買若しくは他の暗号資産との交換、又はそれらの行為の媒介、取次ぎ若しくは代理を行う者が運営主体となり、暗号資産の売り注文と買い注文について、当該注文に関する内容(価格、数量)に基づき、暗号資産の取引を成立させるための交換市場をいう。
- (5) 「暗号資産販売所」とは、暗号資産交換業者又は外国において暗号資産の売買若しくは他の暗号資産との交換、又はそれらの行為の媒介、取次ぎ若しくは代理を行う者が暗号資産取引の相手方となって購入価格又は売却価格を提示し、当該購入価格又は売却価格での暗号資産の売買を行う交換市場をいう。
- (6) 「時価」とは、公正な評価額であり、取引を実行するために必要な知識を持つ自発的な独立第三者の当事者が取引を行うと想定した場合の取引価額をいう。なお、時価は、市場価格に基づく価額と市場価格がない場合の合理的に算定された価額により構成される。
- (7) 「市場価格」とは、市場(取引所及びこれに類する市場のほか、随時、売買・換金等を行うことができる取引システム等も含まれる。)において形成されている取引価格(取引により成立している価格をいう。以下同じ。)、気配又は指標その他の相場をいう。なお、市場価格が公正な評価額を示している場合には、当該市場価格に基づく価額は時価に該当する。
- (8) 「取得原価」とは、一定時点における同一の暗号資産の取得価額(支払対価に手数料等の付随費用を加算した額)の合計額から、前回計算時点より当該一定時点までに売却した部分に一定の評価方法を適用して計算した売却原価を控除した価額をいう。
- (9) 「関係会社」とは、企業の親会社(企業会計基準第22号「連結財務諸表に関する会計基準」第6項に定める親会社をいう。)、子会社(同項に定める子会社をいう。)及び関連会社(企業会計基準第16号「持分法に関する会計基準」第5項に定める関連会社をいう。以下同じ。)並びに企業が他の企業の関連会社である場合における当該他の企業をいう。
実務上の取扱い
Ⅰ.暗号資産交換業者又は暗号資産利用者が保有する暗号資産の会計処理
1.期末における暗号資産の評価に関する会計処理
- 5. 暗号資産交換業者及び暗号資産利用者は、保有する暗号資産(暗号資産交換業者が預託者から預かった暗号資産を除く。以下同じ。)について、活発な市場が存在する場合、市場価格に基づく価額をもって当該暗号資産の貸借対照表価額とし、帳簿価額との差額は当期の損益として処理する。
- 6. 暗号資産交換業者及び暗号資産利用者は、保有する暗号資産について、活発な市場が存在しない場合、取得原価をもって貸借対照表価額とする。期末における処分見込価額(ゼロ又は備忘価額を含む。)が取得原価を下回る場合には、当該処分見込価額をもって貸借対照表価額とし、取得原価と当該処分見込価額との差額は当期の損失として処理する。
- 7. 前期以前において、前項に基づいて暗号資産の取得原価と処分見込価額との差額を損失として処理した場合、当該損失処理額について、当期に戻入れを行わない。
2.活発な市場の判断規準
- 8. 第5項における活発な市場が存在する場合とは、暗号資産交換業者又は暗号資産利用者の保有する暗号資産について、継続的に価格情報が提供される程度に暗号資産取引所又は暗号資産販売所において十分な数量及び頻度で取引が行われている場合をいうものとする。
3.活発な市場が存在する暗号資産の市場価格
- 9. 暗号資産交換業者及び暗号資産利用者は、保有している活発な市場が存在する暗号資産の期末評価において、市場価格として暗号資産取引所又は暗号資産販売所で取引の対象とされている暗号資産の取引価格を用いるときは、保有する暗号資産の種類ごとに、通常使用する自己の取引実績の最も大きい暗号資産取引所又は暗号資産販売所における取引価格(取引価格がない場合には、暗号資産取引所の気配値又は暗号資産販売所が提示する価格)を用いることとする。
- なお、期末評価に用いる市場価格には取得又は売却に要する付随費用は含めないものとする。
- 10. 暗号資産交換業者において、前項の通常使用する自己の取引実績の最も大きい暗号資産取引所又は暗号資産販売所が自己の運営する暗号資産取引所又は暗号資産販売所である場合、当該暗号資産交換業者は、自己の運営する暗号資産取引所又は暗号資産販売所における取引価格等(取引価格、暗号資産取引所の気配値及び暗号資産販売所が提示する価格をいう。以下同じ。)が第4項(7)に記載のとおり「公正な評価額」を示している市場価格であるときに限り、時価として期末評価に用いることができる。
4.暗号資産の取引に係る活発な市場の判断の変更時の取扱い
- 11. 暗号資産交換業者又は暗号資産利用者が保有する暗号資産について、活発な市場が存在する暗号資産が、その後、活発な市場が存在しない暗号資産となった場合、活発な市場が存在しない暗号資産となる前に最後に観察された市場価格に基づく価額をもって取得原価とし、評価差額は当期の損益として処理する。活発な市場が存在しない暗号資産となった後の期末評価は、第6項に基づいて行う。
- 12. 暗号資産交換業者又は暗号資産利用者が保有する暗号資産について、活発な市場が存在しない暗号資産が、その後、活発な市場が存在する暗号資産となった場合、その後の期末評価は、第5項に基づいて行う。
5.暗号資産の売却損益の認識時点
- 13. 暗号資産交換業者及び暗号資産利用者は、暗号資産の売却損益を当該暗号資産の売買の合意が成立した時点において認識する。
Ⅱ.暗号資産交換業者が預託者から預かった暗号資産の会計処理
1.暗号資産交換業者が預託者から預かった暗号資産に係る資産及び負債の認識
- 14. 暗号資産交換業者は、預託者との預託の合意に基づいて暗号資産を預かった時に、預かった暗号資産を資産として認識する。当該資産の当初認識時の帳簿価額は、預かった時の時価により算定する。
- また、暗号資産交換業者は、同時に、預託者に対する返還義務を負債として認識する。当該負債の当初認識時の帳簿価額は、預かった暗号資産に係る資産の帳簿価額と同額とする。
2.暗号資産交換業者が預託者から預かった暗号資産に係る期末の資産の評価及び負債の貸借対照表価額
- 15. 暗号資産交換業者は、預託者から預かった暗号資産に係る資産の期末の帳簿価額について、暗号資産交換業者が保有する同一種類の暗号資産から簿価分離したうえで、活発な市場が存在する暗号資産と活発な市場が存在しない暗号資産の分類に応じて、第5項及び第6項に定める暗号資産交換業者の保有する暗号資産と同様の方法により評価を行う。
- また、暗号資産交換業者は、預託者への返還義務として計上した負債の期末の貸借対照表価額を、対応する預かった暗号資産に係る資産の期末の貸借対照表価額と同額とし、預託者から預かった暗号資産に係る資産及び負債の期末評価からは損益を計上しない。
Ⅲ.開 示
1.表 示
- 16. 暗号資産交換業者又は暗号資産利用者が暗号資産の売却取引を行う場合、当該暗号資産の売却取引に係る売却収入から売却原価を控除して算定した純額を損益計算書に表示する。
2.注記事項
- 17. 暗号資産交換業者又は暗号資産利用者が期末日において保有する暗号資産、及び暗号資産交換業者が預託者から預かっている暗号資産について、次の事項を注記する。
- (1) 暗号資産交換業者又は暗号資産利用者が期末日において保有する暗号資産の貸借対照表価額の合計額
- (2) 暗号資産交換業者が預託者から預かっている暗号資産の貸借対照表価額の合計額
- (3) 暗号資産交換業者又は暗号資産利用者が期末日において保有する暗号資産について、活発な市場が存在する暗号資産と活発な市場が存在しない暗号資産の別に、暗号資産の種類ごとの保有数量及び貸借対照表価額。ただし、貸借対照表価額が僅少な暗号資産については、貸借対照表価額を集約して記載することができる。
- ただし、暗号資産交換業者は、暗号資産交換業者の期末日において保有する暗号資産の貸借対照表価額の合計額及び預託者から預かっている暗号資産の貸借対照表価額の合計額を合算した額が資産総額に比して重要でない場合、注記を省略することができる。また、暗号資産利用者は、暗号資産利用者の期末日において保有する暗号資産の貸借対照表価額の合計額が資産総額に比して重要でない場合、注記を省略することができる。
適用時期
- 18. 本実務対応報告は、平成30年4月1日以後開始する事業年度の期首から適用する。ただし、本実務対応報告の公表日以後終了する事業年度及び四半期会計期間から適用することができる。
議 決
- 19. 本実務対応報告は、第380回企業会計基準委員会に出席した委員14名全員の賛成により承認された。
結論の背景
Ⅰ.経 緯
- 20. 平成28年に改正された資金決済法では、暗号資産が定義された上で、暗号資産交換業者に対して登録制が新たに導入され、平成29年4月1日の属する事業年度の翌事業年度より、暗号資産交換業者に対しては、その財務諸表の内容について公認会計士又は監査法人による財務諸表監査が義務付けられている(資金決済法第63条の14第3項)。
- 21. これを受けて、平成29年3月に開催された第357回企業会計基準委員会において、基準諮問会議より、暗号資産交換業者に対する財務諸表監査制度の円滑な運用の観点及び暗号資産に係る会計処理が明確にされない場合には多様な会計実務が形成される可能性がある点を踏まえ、暗号資産に係る会計上の取扱いについて早急に検討を求める提言がなされ、当委員会は、同年4月より暗号資産に係る会計上の取扱いに関する検討を開始した。
- 本実務対応報告は、平成29年12月に公表した実務対応報告公開草案第53号「資金決済法における仮想通貨の会計処理等に関する当面の取扱い(案)」に対して寄せられた意見を踏まえて検討を行い、公開草案の内容を一部修正した上で公表するに至ったものである。
- 22. 本実務対応報告は、暗号資産に関連するビジネスが初期段階にあり、現時点では今後の進展を予測することは難しいことや暗号資産の私法上の位置づけが明らかではないことを踏まえ、当面必要と考えられる最小限の項目に関する会計上の取扱いのみを定めている。
- なお、本実務対応報告において定めのない事項については、今後の暗号資産のビジネスの発展や会計に関連する実務の状況により、市場関係者の要望に基づき、別途の対応を図ることの要否を判断することになると考えられる。
- 22-2. 企業会計基準第30号「時価の算定に関する会計基準」(以下「時価算定会計基準」という。)等の公表に併せて、日本公認会計士協会 会計制度委員会報告第14号「金融商品会計に関する実務指針」(以下「金融商品実務指針」という。)の時価の算定に関する定めが削除されているが、暗号資産は時価算定会計基準の範囲外であるため、内容の変更はない。
Ⅱ.範 囲
- 23. いわゆる暗号資産(crypto assets)は、FATF(The Financial Action Task Force、金融活動作業部会)から公表されたガイダンスによると「電子的に取引可能であり、かつ、交換手段、計量単位、又は価値の蓄積として機能する電子的な価値の表章であるが、いかなる法域においても法定通貨(すなわち、債権者に供された場合に、法的に有効な支払の提供となるもの)としての地位を有さないもの」であるとされている。
- また、暗号資産は、法定通貨及び電子マネー(e-money)との比較で以下のような特徴を有するとされている。
- (1) 暗号資産は、硬貨や紙幣である各法域の法定通貨とは異なる。法定通貨は法的に通貨として指定され、流通し、発行国において交換媒体として使用され、受け入れられている。
- (2) 暗号資産は、電子的価値として移転され、法定通貨の単位で表示された電子マネーとは異なる。電子マネーは、法定通貨の電子的な価値移転に係る仕組みであり、法定通貨としての価値を電子的に移転する。
- 24. 一方、資金決済法上の暗号資産は、次のいずれかに該当するもの(ただし、金融商品取引法第29条の2第1項第8号に規定する権利を表示するものを除く。)と定義されている(資金決済法第2条第14項第1号及び第2号)。
- (1) 物品等を購入し、若しくは借り受け、又は役務の提供を受ける場合に、これらの代価の弁済のために不特定の者に対して使用することができ、かつ、不特定の者を相手方として購入及び売却を行うことができる財産的価値(電子機器その他の物に電子的方法により記録されているものに限り、本邦通貨及び外国通貨、通貨建資産並びに電子決済手段(通貨建資産に該当するものを除く。)を除く。)であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの
- (2) 不特定の者を相手方として、(1)の暗号資産と相互に交換を行うことができる財産的価値(電子機器その他の物に電子的方法により記録されているものに限り、本邦通貨及び外国通貨、通貨建資産並びに電子決済手段(通貨建資産に該当するものを除く。)を除く。)であって、電子情報処理組織を用いて移転することができるもの
- 25. 資金決済法では、前払式支払手段発行者が発行するいわゆる「プリペイドカード」や、ポイント・サービス(財・サービスの販売金額の一定割合に応じてポイントを発行するサービスや、来場や利用ごとに一定額のポイントを発行するサービス等)における「ポイント」は、資金決済法上の暗号資産には該当しないとされている。また、いわゆる暗号資産が資金決済法上の暗号資産に該当するか否かは、個別事例ごとに取引の実態に即して実質的に判断されるとされている。
- 26. 本実務対応報告では、暗号資産交換業者に対する財務諸表監査制度の円滑な運用が契機であったこと、及び適用範囲を明確にすることから、本実務対応報告の適用範囲を資金決済法上の暗号資産とした(第3項本文参照)。
- 当該適用範囲に関して、公開草案に寄せられたコメントでは、企業が暗号資産を発行した場合の会計処理を明確にすべきとの意見があった。
- この点、第22項に記載のとおり、本実務対応報告においては、当面必要と考えられる最小限の項目に関する会計上の取扱いのみを定めることとしている。また、企業が発行した暗号資産に関する論点としては、例えば、対価を得て発行した暗号資産について負債を計上するのか利益を計上するのか、自己に割り当てた暗号資産を会計処理の対象とするのか等が考えられるが、公開草案における会計処理等の検討に際しては、自己以外の者により発行されている暗号資産の会計処理についてのみ議論が行われており、自己の発行した暗号資産の取引の実態とそこから生じる論点が網羅的に把握されていない状況にある。
- したがって、自己の発行した暗号資産(発行した時点においては暗号資産に該当しないが、その後暗号資産に該当することとなったものを含む。)については、本実務対応報告の範囲から除外することとした。なお、自己の関係会社により暗号資産の発行が行われる事例が見られるため、自己の関係会社が発行した暗号資産(発行した時点においては暗号資産に該当しないが、その後暗号資産に該当することとなったものを含む。)も、本実務対応報告の範囲から除外することとした(第3項ただし書き参照)。
- なお、いわゆる「マイニング」(採掘)などにより取得した暗号資産は、通常、自己(自己の関係会社を含む。)以外の者により発行されているため、ここでいう自己(自己の関係会社を含む。)の発行した暗号資産には該当しないことから、本実務対応報告の範囲に含まれる。
Ⅲ.実務上の取扱い
1.暗号資産交換業者又は暗号資産利用者が保有する暗号資産の会計処理
(1)暗号資産の会計上の資産性の有無
- 27. 暗号資産は現時点において、私法上の位置づけが明確でなく、暗号資産に何らかの法律上の財産権を認め得るか否かについては明らかではないものと考えられる(資金決済法においては、第24項のとおり「財産的価値」と定義されている。)。
- ここで、我が国における会計基準では、多くの場合、法律上の権利を会計上の資産として取り扱っている。ただし、必ずしも法律上の権利に該当することが会計上の資産に該当するための要件とはされておらず、例えば、繰延税金資産や自社利用のソフトウェア等についても資産計上がなされている。
- この点、暗号資産は、法律上の権利に該当するかどうかは明らかではないが、売買・換金を通じて資金の獲得に貢献する場合も考えられることから、暗号資産を会計上の資産として取り扱い得るとした。
(2)既存の会計基準との関係
- 28. 暗号資産を会計上の資産として取り扱う場合、既存の会計基準との関係は、以下のとおり整理される。
- 29. 暗号資産は、外国通貨のように、本邦通貨ベースでみれば価値の変動を伴うものの、決済手段として利用する目的で保有される場合があり、外国通貨として会計処理することが候補となる。
- ここで、会計基準における通貨の定めは、国際的な会計基準も含め、一般的に法定通貨であることが想定されているが、暗号資産は中央銀行等の裏付けのある法定通貨ではないことから、暗号資産を外国通貨として会計処理することは適当ではないと考えられる。
- 30. 暗号資産は、暗号資産利用者により投資目的で保有される場合があり、有価証券などの金融資産に類似した性格を有するため、金融資産として会計処理することも候補となる。
- 我が国の会計基準においては、金融資産について「現金、他の企業から現金若しくはその他の金融資産を受け取る契約上の権利、潜在的に有利な条件で他の企業とこれらの金融資産若しくは金融負債を交換する契約上の権利、又は他の企業の株式その他の出資証券である。」(移管指針第9号「金融商品会計に関する実務指針」第4項)と定めている。また、国際的な会計基準においても、金融商品とは、一方の企業にとっての金融資産と、他の企業にとっての金融負債又は資本性金融商品の双方を生じさせる契約と考えられている。これらの考え方を踏まえれば、暗号資産は現金以外の金融資産にも該当しないと考えられる。
- 31. 暗号資産は、暗号資産利用者により投資目的で保有される場合は、主に実需以外の要因で価値が変動する現物商品(コモディティ)である金地金に類似した性格も有しているため、トレーディング目的で保有する棚卸資産として会計処理することも候補となる。また、暗号資産交換業者が営業目的を達成するために所有し、かつ、売却を予定して保有する場合も棚卸資産として会計処理することが候補となる。
- ここで、企業会計基準第9号「棚卸資産の評価に関する会計基準」(以下「棚卸資産会計基準」という。)では、棚卸資産は通常の販売目的で保有する棚卸資産とトレーディング目的で保有する棚卸資産の2つに分類され、いずれについても「営業目的を達成するために所有し、かつ、売却を予定する資産」であるとしているが、暗号資産は決済手段として利用されるなど棚卸資産と異なる目的としても利用されるため、すべての暗号資産が棚卸資産の定義を満たすものとすることは適当ではないと考えられる。
- 32. 暗号資産は、資金決済法において電子的に記録され移転可能な財産的価値とされており、電子的に記録され移転可能な無形の価値を有することから、無形固定資産として会計処理することも候補となる。
- この点、国際的な会計基準も含め、一般的にトレーディング目的で保有される無形固定資産という分類は想定されていないことから、暗号資産を無形固定資産として会計処理することも適当ではないと考えられる。
- 33. 前項までの整理を踏まえると、暗号資産については、直接的に参照可能な既存の会計基準は存在しないことから、本実務対応報告においては、暗号資産に関する会計処理について既存の会計基準を適用せず、暗号資産独自のものとして新たに会計処理を定めている。
(3)期末における暗号資産の評価に関する会計処理
(基本的な考え方)
- 34. 期末における暗号資産の評価に関する会計処理を検討するにあたっては、これまでの我が国の会計基準における評価基準に関する考え方を参考に、資産の保有目的や活発な市場の有無の観点から、基本的な考え方を整理した。
- 35. これまでの我が国の会計基準では、資産の保有目的について、売買目的有価証券やトレーディング目的で保有する棚卸資産など時価の変動により利益を得ることを目的として保有する資産については時価で評価することが適当とされており、通常の販売目的で保有する棚卸資産や製造設備など時価の変動ではなく事業活動を通じた資金の獲得を目的として保有する資産については取得原価で評価することが適当とされている。
- 36. ここで、活発な市場が存在する暗号資産は、主に時価の変動により売却利益を得ることや決済手段として利用すること、暗号資産交換業者が業務の一環として暗号資産販売所を営むために暗号資産を一時的に保有することを目的として保有されることが現時点において想定される。このため、活発な市場が存在する暗号資産は、いずれも暗号資産の時価の変動により保有者が価格変動リスクを負うものであり、時価の変動により利益を得ることを目的として保有するものに分類することが適当と考えられる。なお、時価は市場価格に基づく価額と市場価格がない場合の合理的に算定された価額の2つに区分されているが(第4項(6)参照)、活発な市場が存在する暗号資産については、活発な市場における市場価格が存在することから、市場価格に基づく価額を時価として使用することになると考えられる。
- 37. 一方、活発な市場が存在しない暗号資産は、時価を客観的に把握することが困難であることが多く、また、時価により直ちに売買・換金を行うことに事業遂行上等の制約があることから、時価の変動を企業活動の成果とは捉えないことが適当と考えられる。
- 38. 以上より、暗号資産の評価基準については、資産の保有目的や活発な市場の有無の観点から、活発な市場が存在する暗号資産については市場価格に基づく価額をもって貸借対照表価額とし、帳簿価額との差額は当期の損益として処理することとし、活発な市場が存在しない暗号資産については取得原価をもって貸借対照表価額とすることとした。
- 39. なお、審議の過程では、暗号資産交換業者又は暗号資産利用者が一度に売買・換金できないほどに暗号資産を大量に保有している場合、市場価格に基づく価額により時価評価を行ったときには、時価を過大に評価する懸念があることから、取得原価で評価すべきではないかとの意見が聞かれた。
- この点、第8項に記載のとおり、活発な市場の判断規準を、継続的に価格情報が提供される程度に暗号資産取引所又は暗号資産販売所において十分な数量及び頻度で取引が行われていることとしたため、暗号資産に活発な市場が存在する場合には、当該暗号資産の大量保有による市場価格への影響を考慮する必要性は高くないと判断した。
(活発な市場が存在する暗号資産の評価基準)
- 40. 第38項に記載のとおり、活発な市場が存在する暗号資産は、市場価格に基づく価額をもって貸借対照表価額とすることとし、帳簿価額との差額は当期の損益として処理することとした(第5項参照)。
(活発な市場が存在しない暗号資産の評価基準)
- 41. 第38項に記載のとおり、活発な市場が存在しない暗号資産は、取得原価をもって貸借対照表価額とすることとした(第6項参照)。
- 42. また、我が国の会計基準においては、取得原価をもって貸借対照表価額とする資産の収益性が低下した場合、取得原価基準の下で回収可能性を反映させるように、過大な帳簿価額を減額し、将来に損失を繰り延べないために回収可能価額まで帳簿価額を切り下げる会計処理が行われている。この点を踏まえると、活発な市場が存在しない暗号資産についても、売買・換金によって資金の回収を図ることが想定されるため、評価時点における資金回収額を示す正味売却価額(時価から処分見込費用を控除して算定される金額をいう。以下同じ。)がその帳簿価額を下回っているときには、収益性が低下していると考え、帳簿価額の切下げを行うことが適当であると考えられる。
- 43. ここで、活発な市場が存在しない暗号資産は、市場価格がなく、客観的な価額としての時価を把握することが困難な場合が多いと想定されることから、一般的に時価を基礎とした正味売却価額を見積ることは困難であると考えられる。このため、棚卸資産における期末評価時の時価を基礎とした正味売却価額の見積りが困難な場合の定めとして、期末日における処分見込価額(ゼロ又は備忘価額を含む。)を用いる取扱いが認められていることを踏まえ、活発な市場が存在しない暗号資産についても、期末における処分見込価額(ゼロ又は備忘価額を含む。)が取得原価を下回る場合には、処分見込価額(ゼロ又は備忘価額を含む。)まで帳簿価額を切り下げることとした(第6項参照)。
- なお、具体的な処分見込価額の見積りは、例えば、独立第三者の当事者との相対取引を行った場合の価額等、資金の回収が確実な金額に基づくことが考えられるが、資金の回収が確実な金額を見積ることが困難な場合にはゼロ又は備忘価額を処分見込価額とすることになると考えられる。
- 44. また、前期以前に行った資産の帳簿価額の切下げの会計処理については、切放し法(前期以前に計上した損失処理額の戻入れを、当期に行わない方法をいう。)と洗替え法(前期以前に計上した損失処理額の戻入れを、当期に行う方法をいう。)の2つの方法があるが、これまでの我が国の会計基準では、損失の発生の可能性の高さによって切放し法と洗替え法のいずれを採用するかを決定すべきという考え方がある一方で、将来に損失を繰り延べないために行われる会計処理において、いったん費用処理した金額を戻し入れることは適切ではないという考え方がある。
- ここで、活発な市場が存在しない暗号資産の場合、現時点において、その取引形態や価格形成の仕組みが現状において明らかではないことから、期末日における処分を前提として処分見込価額(ゼロ又は備忘価額を含む。)まで簿価を切り下げた後には、保守的に切放し法のみを認めることとした(第7項参照)。
(4)活発な市場の判断規準
- 45. 我が国の会計基準において、市場は、「市場には、公設の取引所及びこれに類する市場のほか、随時、売買・換金等を行うことができる取引システム等も含まれる」とされており(企業会計基準第10号「金融商品に関する会計基準」(注2))、「取引所及び店頭において取引が行われていなくても、随時、売買・換金等を行う取引システム(例えば、金融機関・証券会社間の市場、ディーラー間の市場、電子媒体取引市場)が流通性を確保する上で十分に整備されている場合には、そこで成立する取引価格を市場価格とすることができる」とされている(金融商品実務指針第51項)。よって、随時に、売買・換金を行うことができる暗号資産取引所や暗号資産販売所は、ここでいう市場に含まれ得ると考えられる。
- 46. また、我が国の会計基準においては、「活発な市場」の状況について、例えば、棚卸資産会計基準第3項において「売却には、通常の販売のほか、活発な市場が存在することを前提として、棚卸資産の保有者が単に市場の価格の変動により利益を得ることを目的とするトレーディングを含む。」との定めがある。また、金融商品実務指針第53項②では、市場(取引所若しくは店頭)において取引がなされていても実際の売買事例が極めて少ない金融資産又は市場価格が存在しない金融資産については、活発な市場における市場価格がないものに該当するとしている。
- 47. これらの定めにおいて、「活発な市場」の定義は行われていないが、国際的な会計基準においては「活発な市場」の判断規準についての考え方が示されていることから、これらを参考に、暗号資産交換業者又は暗号資産利用者の保有する暗号資産について、継続的に価格情報が提供される程度に暗号資産取引所又は暗号資産販売所において十分な数量及び頻度で取引が行われている場合をいうこととした(第8項参照)。
- なお、「継続的に価格情報が提供される程度に暗号資産取引所又は暗号資産販売所において十分な数量及び頻度で取引が行われている場合」については、保有する暗号資産の種類、当該保有する暗号資産の過去の取引実績及び当該保有する暗号資産が取引の対象とされている暗号資産取引所又は暗号資産販売所の状況等を勘案し、個々の暗号資産の実態に応じて判断することが考えられる。
- 上記の判断に際して、例えば、合理的な範囲内で入手できる価格情報が暗号資産取引所又は暗号資産販売所ごとに著しく異なっていると認められる場合や、売手と買手の希望する価格差が著しく大きい場合には、通常、市場は活発ではないと判断されるものと考えられる。
(5)活発な市場が存在する暗号資産の市場価格
- 48. 我が国の会計基準では、例えば、金融資産について、複数の市場で取引されている場合は、当該金融資産の取引が最も活発に行われている市場の取引価格を市場価格として適用することが定められている(金融商品実務指針第257項)。また、金融商品実務指針第102項においては、複数の市場で気配値を入手できるデリバティブ取引について、会社が通常使用する市場での価格を使用することが定められており、国際的な会計基準でも、反証がない限り、企業が通常使用する市場での価格を公正価値測定において使用することとされている。
- 49. ここで、現時点では、海外も含めた各暗号資産取引所又は暗号資産販売所の取引量を網羅的に把握し、取引が最も活発に行われている暗号資産取引所又は暗号資産販売所における取引価格等を決定することは困難であると考えられるため、通常使用する自己の取引実績の最も大きい暗号資産取引所又は暗号資産販売所における取引価格等を市場価格として使用することとした(第9項参照)。
- 50. なお、暗号資産交換業者において、通常使用する自己の取引実績が最も大きい暗号資産取引所又は暗号資産販売所における取引価格等が、自己の運営する暗号資産取引所又は暗号資産販売所における取引価格等となる場合、時価は公正な評価額であることが前提となるため、当該取引価格等が「公正な評価額」を示している市場価格であるときに限り、時価として期末評価に用いることができるものとした(第10項参照)。
(6)暗号資産の取引に係る活発な市場の判断の変更時の取扱い
- 51. 活発な市場が存在する暗号資産と活発な市場が存在しない暗号資産では、第38項に記載のとおり、暗号資産の評価基準が異なることから、暗号資産交換業者及び暗号資産利用者は、活発な市場が存在する暗号資産が活発な市場が存在しない暗号資産となった場合又は活発な市場が存在しない暗号資産が活発な市場が存在する暗号資産となった場合、保有する暗号資産の評価基準を変更するものとした(第11項及び第12項参照)。
- 例えば、活発な市場が存在しない暗号資産は、第7項に記載のとおり、前期以前に行った資産の帳簿価額の切下げの会計処理については前期以前に計上した損失処理額の戻入れを行わない切放し法のみが認められているが、その後、活発な市場が存在する暗号資産となった場合には、第5項に基づき、市場価格に基づく価額をもって当該暗号資産の貸借対照表価額とし、帳簿価額との差額は当期の損益として処理することとなるため、結果的に、前期以前に計上した損失処理相当額が当該差額に含まれることにより当期の損益として処理されることがあり得ると考えられる。
(7)暗号資産の売却損益の認識時点
- 52. 我が国の会計基準においては、売却損益の認識時点に関する具体的な判断基準として、売買の合意が行われた時に売却損益の認識を行う約定日基準と、引渡時に売却損益の認識を行う受渡日基準の2つの方法が見られる。
- 53. ここで、暗号資産の売買取引については、売買の合意が行われた後において、取引情報がネットワーク上の有高として記録されるプロセス等は暗号資産の種類や暗号資産交換業者により様々であるものの、通常、売手は売買の合意が成立した時点で売却した暗号資産の価格変動リスク等に実質的に晒されておらず、売却損益は確定していると考えられる。
- そのため、売却損益の認識時点として売買の合意が成立した時点とする判断基準を示すことにより、確定した売却損益を財務諸表に反映させることができ、かつ、暗号資産の売却損益の認識時点に関する判断の実務上の多様性も抑えられると考えられることから、暗号資産の売却損益の認識時点を売買の合意が成立した時点とする方法を採用することとした(第13項参照)。
2.暗号資産交換業者が預託者から預かった暗号資産の会計処理
(1)暗号資産交換業者が預託者から預かった暗号資産に係る資産及び負債の認識
- 54. 暗号資産交換業者は、預託者との預託の合意に基づき、例えば、暗号資産交換業者が預託者に保有する暗号資産を売却した後に預託者の暗号資産を預かることや預託者から暗号資産の送付を受けることにより、暗号資産の預託を受けることがある。
- この点、これまでの我が国の実務慣行においては、原則として、預託者から預かった資産について、法律上の権利の受託者への移転に着目し、預かった資産を会計上の資産として計上するか否かを判断しているが、暗号資産は、私法上の位置づけが明確ではないため、法律上の権利の受託者への移転の判断を行うことができない。また、審議の過程において、預託者から預かった暗号資産を当該預託者が処分することを指図することができ、かつ、当該預託者が暗号資産に係るリスク及び経済価値を有するのであれば、暗号資産交換業者が預かった暗号資産は当該預託者に帰属しているのではないかとの意見が聞かれた。
- 55. ここで、暗号資産交換業者が預託者との預託の合意に基づいて預かった暗号資産は、自己が保有する暗号資産と明確に区分し、かつ、預かった暗号資産についてどの預託者から預かった暗号資産であるかが直ちに判別できる状態(各預託者の暗号資産の数量が帳簿により直ちに判別できる状態を含む。)で管理することが「暗号資産交換業者に関する内閣府令」(平成29年内閣府令第7号)において求められているものの、暗号資産の私法上の位置づけが明確ではない中で、一般に暗号資産自体には現金と同様に個別性がなく、預かった暗号資産については暗号資産交換業者が処分に必要な暗号鍵等を保管することから、暗号資産交換業者は預託者から預かった暗号資産を自己の保有する暗号資産と同様に処分することができる状況にある。また、預かり資産として預託者の暗号資産を受け入れた場合に、暗号資産交換業者が破産手続の開始決定を受けたときには、現時点においては、暗号資産交換業者の破産財団に組み込まれた預託者の暗号資産について預託者の所有権に基づく取戻権は認められていないと言われている。
- 56. これらの状況を踏まえ、自己が保有する暗号資産との同質性を重視し、現金の預託を受ける場合と同様に、暗号資産交換業者は預託者との預託の合意に基づいて預かった時において、その時点の時価により資産として計上することとした(第14項参照)。
(2)暗号資産交換業者が預託者から預かった暗号資産に係る期末の資産の評価及び負債の貸借対照表価額
- 57. 暗号資産交換業者が預託者から預かった暗号資産は、前項のとおり、自己が保有する暗号資産との同質性を重視する観点から、保有する暗号資産と同様の方法で、期末評価を行うことが適当と考えた(第15項参照)。
- 58. また、預託者から預かった暗号資産に係る価格変動リスク等は暗号資産交換業者が負うものではなく、暗号資産交換業者が預託者から預かった暗号資産から損益を生じさせることは適当ではないため、預託者から預かった暗号資産に係る負債の期末の貸借対照表価額は、当該預かった暗号資産に係る資産の期末の貸借対照表価額と同額とすることとした(第15項参照)。
3.開 示
(1)表 示
(暗号資産交換業者が暗号資産を売却する場合の損益計算書上の表示)
- 59. 我が国の会計基準においては、売却収入及び売却原価の表示に関しては、売却収入と売却原価とをそれぞれ表示する取扱いと、売却収入から売却原価を差し引いた純額を表示する取扱いがみられる。
- 60. ここで、暗号資産交換業者が行う活発な市場が存在する暗号資産の売買取引は、通常、同一種類に対する購入及び売却が反復的・短期的に行われ、購入価格と売却価格の差益を獲得するために行われているものと考えられる。この特徴を踏まえ、暗号資産交換業者が行う暗号資産の取引に係る売却損益は、売買取引に伴って得られる差益をその発生した期間における企業活動の成果として純額で表示することが適切であると考えられる。
- 61. また、暗号資産交換業者が活発な市場が存在しない暗号資産を保有する場合においては、反復的・短期的な売買取引の対象とはならないが、暗号資産の売買取引に伴って得られる差益の獲得を目的として保有する点では活発な市場が存在する暗号資産と同様であると考えられることから、活発な市場が存在する暗号資産と同様に、売却収入から売却原価を控除して算定した純額で表示することとした(第16項参照)。
(暗号資産利用者が暗号資産を売却する場合の損益計算書上の表示)
- 62. 暗号資産利用者は、時価の変動により利益を得ることや決済手段として利用することを目的として暗号資産を保有することが想定される。これらの目的で保有する場合、暗号資産交換業者と同様に、その発生した期間における企業活動の成果として売買取引に伴って得られる差益を純額で表示することが適切であると考えられ、暗号資産交換業者が暗号資産を売却する場合の損益計算書上の表示と同様に、売却収入から売却原価を控除して算定した純額を表示することとした(第16項参照)。
(2)注記事項
- 63. 暗号資産は、通常、価値の裏付けがないことから、保有に伴う価格変動リスクが外国通貨や金融資産と比較しても大きく、また、取引の仕組みなどに内在するリスクが存在するため、外国通貨や金融資産と異なる性質を有する。また、このようなリスクは暗号資産の種類ごとに異なるものと考えられる。このため、期末に保有する暗号資産の種類ごとの保有数量及び貸借対照表価額を開示することにより、財務諸表利用者は暗号資産交換業者又は暗号資産利用者が保有する暗号資産の種類ごとのリスクの評価が可能になると考えられる。
- さらに、現時点において、暗号資産の種類によっては、同一種類の暗号資産であっても複数の暗号資産取引所又は暗号資産販売所で異なる取引価格等が形成される可能性があるため、暗号資産交換業者及び暗号資産利用者の期末における暗号資産の種類ごとの内訳の開示は、財務諸表利用者にとって有用な情報と考えられる。このため、期末に保有する暗号資産の種類ごとの保有数量及び貸借対照表価額を開示することにより、財務諸表利用者は暗号資産交換業者又は暗号資産利用者が保有する暗号資産の種類ごとの情報を把握することが可能になると考えられる。
- したがって、暗号資産交換業者及び暗号資産利用者に対して、期末日において保有する暗号資産の貸借対照表価額の合計額及び預託者から預かっている暗号資産の貸借対照表価額の合計額を区分した注記を求めるとともに、期末日において保有する暗号資産について、活発な市場が存在する暗号資産と活発な市場が存在しない暗号資産の別に、暗号資産の種類ごとの保有数量及び貸借対照表価額の注記を求めることとした(第17項参照)。
Ⅳ.適用時期
- 64. 本実務対応報告の適用にあたっては、一定の周知期間を設けることが有用と考えられることから、平成30年4月1日以後開始する事業年度の期首から適用することとした。
- また、第20項に記載のとおり、平成28年の資金決済法の改正に伴って、暗号資産交換業者に対する登録制の導入及び平成29年4月1日の属する事業年度の翌事業年度からの暗号資産交換業者に対する財務諸表監査制度の実際の運用が既に開始され、本実務対応報告を速やかに適用することへのニーズが想定されることから、本実務対応報告を公表日以後終了する事業年度及び四半期会計期間から早期適用することを認めることとした(第18項参照)。
- 以 上
