ASSET-ASBJ

実務対応報告第36号従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与する取引に関する取扱い
目 的
範 囲
- 2. 本実務対応報告は、概ね次の内容で発行される権利確定条件付き有償新株予約権を対象とする。
- (1) 企業は、従業員等を引受先として、新株予約権の募集事項(募集新株予約権の内容(行使価格、権利確定条件等を含む。)及び数、払込金額、割当日、払込期日等)を決議する。当該新株予約権は、市場価格4がないものを対象とする。
- (2) 募集新株予約権には、権利確定条件として、勤務条件及び業績条件が付されているか、又は勤務条件は付されていないが業績条件は付されている。
- (3) 募集新株予約権を引き受ける従業員等は、申込期日までに申し込む。
- (4) 企業は、申込者から募集新株予約権を割り当てる者及びその数を決定する。割当てを受けた従業員等は、割当日に募集新株予約権の新株予約権者となる。
- (5) 新株予約権者となった従業員等は、払込期日までに一定の額の金銭を企業に払い込む。
- (6) 新株予約権に付されている権利確定条件が満たされた場合、当該新株予約権は行使可能となり、当該権利確定条件が満たされなかった場合、当該新株予約権は失効する。
- (7) 新株予約権者となった従業員等は、権利行使期間において権利が確定した新株予約権を行使する場合、行使価格に基づく額を企業に払い込む。
- (8) 企業は、新株予約権が行使された場合、当該新株予約権を行使した従業員等に対して新株を発行するか、又は自己株式を処分する。
- (9) 新株予約権が行使されずに権利行使期間が満了した場合、当該新株予約権は失効する。
用語の定義
- 3. 本実務対応報告に、ストック・オプション会計基準第2項に定義されている用語が使われている場合、当該用語の定義に従う。
会計処理
- 4. 従業員等に対して本実務対応報告の対象となる権利確定条件付き有償新株予約権(本実務対応報告第2項参照)を付与する場合、当該権利確定条件付き有償新株予約権は、ストック・オプション会計基準第2項(2)に定めるストック・オプションに該当するものとする。
- ただし、権利確定条件付き有償新株予約権が従業員等から受けた労働や業務執行等のサービスの対価(ストック・オプション会計基準第2項(4))として用いられていないことを立証できる場合、当該権利確定条件付き有償新株予約権は、ストック・オプション会計基準第2項(2)に定めるストック・オプションに該当しないものとし(ストック・オプション会計基準第16項(7)及び第29項)、当該権利確定条件付き有償新株予約権を付与する取引についての会計処理は、企業会計基準適用指針第17号「払込資本を増加させる可能性のある部分を含む複合金融商品に関する会計処理」(以下「複合金融商品適用指針」という。)に従う。
- 5. 従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与する取引について、権利確定日以前の会計処理は次のように行う。
- (1) 権利確定条件付き有償新株予約権の付与に伴う従業員等からの払込金額を、純資産の部に新株予約権として計上する。
- (2) 権利確定条件付き有償新株予約権の付与に伴い企業が従業員等から取得するサービスは、その取得に応じて費用として計上し、対応する金額を、当該権利確定条件付き有償新株予約権の権利の行使又は失効が確定するまでの間、純資産の部に新株予約権として計上する(ストック・オプション会計基準第4項)。
- (3) 各会計期間における費用計上額として、権利確定条件付き有償新株予約権の公正な評価額から払込金額(本項(1)参照)を差し引いた金額のうち、対象勤務期間を基礎とする方法その他の合理的な方法に基づき当期に発生したと認められる額を算定する。当該権利確定条件付き有償新株予約権の公正な評価額は、公正な評価単価に権利確定条件付き有償新株予約権数を乗じて算定する。
- (4) 権利確定条件付き有償新株予約権の公正な評価単価の算定は、次のとおり行う。
- ① 公正な評価単価は付与日において算定し、ストック・オプション会計基準第10項(1)に定める条件変更の場合を除き見直さない(ストック・オプション会計基準第6項(1))。
- ② 権利確定条件付き有償新株予約権の公正な評価単価における算定技法の利用については、ストック・オプション会計基準第6項(2)に従う。なお、失効の見込みについては権利確定条件付き有償新株予約権数に反映させるため、公正な評価単価の算定上は考慮しない(ストック・オプション会計基準第6項(2))。
- (5) 権利確定条件付き有償新株予約権数の算定及びその見直しによる会計処理は、次のとおり行う。
- ① 権利確定条件付き有償新株予約権数は、付与日において、付与された権利確定条件付き有償新株予約権数(以下「付与数」という。)から、権利不確定による失効の見積数を控除して算定する(ストック・オプション会計基準第7項(1))。
- ② 付与日から権利確定日の直前までの間に、権利不確定による失効の見積数に重要な変動が生じた場合(ストック・オプション会計基準第11項の条件変更による場合を除く。)、これに伴い権利確定条件付き有償新株予約権数を見直す。
権利確定条件付き有償新株予約権数を見直す場合、見直し後の権利確定条件付き有償新株予約権数に基づく権利確定条件付き有償新株予約権の公正な評価額から払込金額(本項(1)参照)を差し引いた金額のうち合理的な方法に基づき見直しを行った期までに発生したと認められる額(本項(3)参照)と、これまでに費用計上した額(当該見直しの直前の権利確定条件付き有償新株予約権数に基づく権利確定条件付き有償新株予約権の公正な評価額から払込金額(本項(1)参照)を差し引いた金額のうち合理的な方法に基づき計上した額(本項(3)参照))との差額を、見直しを行った期の損益として計上する。 - ③ 権利確定日には、権利確定条件付き有償新株予約権数を権利の確定した権利確定条件付き有償新株予約権数に修正する。
権利確定条件付き有償新株予約権数を修正する場合、修正後の権利確定条件付き有償新株予約権数に基づく権利確定条件付き有償新株予約権の公正な評価額から払込金額(本項(1)参照)を差し引いた金額と、これまでに費用計上した額(当該修正の直前の権利確定条件付き有償新株予約権数に基づく権利確定条件付き有償新株予約権の公正な評価額から払込金額(本項(1)参照)を差し引いた金額のうち合理的な方法に基づき計上した額(本項(3)参照))との差額を、権利確定日の属する期の損益として計上する。 - (6) 新株予約権として計上した払込金額(本項(1)参照)は、権利不確定による失効に対応する部分を利益として計上する。
- 6. 従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与する取引について、権利確定日後の会計処理は次のように行う。
- (1) 権利確定条件付き有償新株予約権が権利行使され、これに対して新株を発行した場合、新株予約権として計上した額のうち、当該権利行使に対応する部分を払込資本に振り替える(ストック・オプション会計基準第8項)。
- (2) 権利不行使による失効が生じた場合、新株予約権として計上した額のうち、当該失効に対応する部分を利益として計上する。この会計処理は、当該失効が確定した期に行う(ストック・オプション会計基準第9項)。
- 7. 第5項及び第6項における権利確定日は、次のとおりとする。
- (1) 勤務条件及び業績条件が付されている場合、これらの条件のうちいずれかを満たすことにより権利が確定するときは、当該いずれかの条件を満たした日を権利確定日とする(企業会計基準適用指針第11号「ストック・オプション等に関する会計基準の適用指針」(以下「ストック・オプション適用指針」という。)第19項(1))。
- (2) 勤務条件及び業績条件が付されている場合、これらの条件のすべてを満たすことにより権利が確定するときは、これらのすべての条件を満たした日を権利確定日とする(ストック・オプション適用指針第19項(2))。
- (3) 勤務条件は付されていないが業績条件は付されている場合、業績の達成又は達成しないことが確定する日を権利確定日とする。
- 8. 本実務対応報告に定めのないその他の会計処理については、ストック・オプション会計基準及びストック・オプション適用指針の定めに従う。
開 示
- 9. 従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与する取引に関する注記は、ストック・オプション会計基準第16項及びストック・オプション適用指針第24項から第35項に従って行う。
適用時期等
- 10. 本実務対応報告の適用時期等に関する取扱いは、次のとおりとする。
- (1) 本実務対応報告は、平成30年4月1日以後適用する。ただし、本実務対応報告の公表日以後適用することができる。
- (2) 本項(1)の定めに従い遡及適用するにあたり、本実務対応報告の公表日より前に権利確定条件付き有償新株予約権が権利行使され、これに対して新株を発行している場合、新たな会計方針に基づき新株予約権として計上された額のうち、当該権利行使に対応する部分を払込資本に振り替えたことによる払込資本の増加額は、その他資本剰余金に計上する。
- (3) 本項(1)の定めにかかわらず、本実務対応報告の適用日より前に従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与した取引については、本実務対応報告の会計処理によらず、従来採用していた会計処理を継続することができる。この場合、第9項の定めに代えて当該取引について次の事項を注記する。
- ① 権利確定条件付き有償新株予約権の概要(各会計期間において存在した権利確定条件付き有償新株予約権の内容、規模(付与数等)及びその変動状況(行使数や失効数等))。ただし、付与日における公正な評価単価については、記載を要しない。
- ② 採用している会計処理の概要
- (4) 本実務対応報告の適用初年度において、これまでの会計処理と異なることとなる場合及び本項(3)を適用し従来採用していた会計処理を継続する場合、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として取り扱う。
議 決
- 11. 本実務対応報告は、第376回企業会計基準委員会に出席した委員12名全員の賛成により承認された。
結論の背景
経 緯
- 12. 近年、企業がその従業員等に対して新株予約権を付与する場合に、当該新株予約権の付与に伴い当該従業員等が一定の額の金銭を企業に払い込む取引が見られる。当該取引は、ストック・オプション会計基準の公表時には想定されていなかったことから、当該取引が、ストック・オプション会計基準の適用範囲に含まれるのか、複合金融商品適用指針の適用範囲に含まれるのかが必ずしも明確ではなかった5ため、平成26年12月に開催された第301回企業会計基準委員会において、公益財団法人財務会計基準機構内に設けられている基準諮問会議より、当該新株予約権を発行する企業の会計処理について審議を行うことが提言された。この提言を受けて当委員会において審議を行い、本実務対応報告において必要と考えられる取扱いを示すこととし、平成29年5月に実務対応報告公開草案第52号「従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与する取引に関する取扱い(案)」を公表して広く意見を求めた。本実務対応報告は、公開草案に対して寄せられた意見を踏まえて検討を行い、公開草案の内容を一部修正した上で公表するに至ったものである。
- 13. なお、公開草案に対して、従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与する取引は、ストック・オプション会計基準の公表時には想定されていなかったことから、ストック・オプション会計基準における報酬概念の見直しを含む包括的な検討が必要であるとの意見が寄せられた。
- 14. この意見について当委員会において審議した結果、従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与する取引については、以下の点から、現行のストック・オプション会計基準の枠組みで対応することが適切であるとの結論に至った。
- (1) ストック・オプション会計基準は自社株式オプションを従業員等に付与する取引等を整理した基準であり、従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与する取引が有する、引受先が従業員等に限定されるという特徴や権利確定条件が付されているという特徴は、ストック・オプション会計基準が想定している取引と類似している。
- (2) 本項(1)の特徴を踏まえると、従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与する取引は、ストック・オプション会計基準第2項(4)に定める報酬としての性格を有していると整理し得る(本実務対応報告第18項から第28項参照)。
範 囲
適用対象とする取引
- 15. 本実務対応報告は、従業員等に対して第2項に記載した権利確定条件付き有償新株予約権を付与する取引を対象としているが、取引の内容が第2項(1)から(9)に記載された内容と大きく異ならない取引について本実務対応報告の対象となるかどうかを、実態に応じて適切に判断できるようにするため、第2項において、「概ね次の内容で発行される」という表現を用いている。
- 16. 審議の過程では、企業がその子会社の従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与する取引など第2項に定める取引以外の取引についても取扱いを示すべきとの意見が聞かれた。しかしながら、本実務対応報告は、第12項に記載しているとおり、現状における取扱いが必ずしも明確ではないとの要請から開発したものであるため、現在行われている典型的な取引を対象としており、本実務対応報告の対象範囲を第2項に定める取引以外の取引に広げないこととした。なお、本実務対応報告で取り扱っていない取引については、内容に応じて、本実務対応報告を参考にすべきかどうかを判断することが考えられる。また、今後の実務の状況により、必要に応じて、別途の対応を図ることも考えられる。
適用する会計基準
取引の内容
- 17. 従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与する取引は、第2項に記載のとおり、次の特徴が挙げられる。
- (1) 権利確定条件付き有償新株予約権の引受先が従業員等に限定される。
- (2) 権利確定条件付き有償新株予約権には、権利確定条件として、勤務条件及び業績条件が付されているか、又は勤務条件は付されていないが業績条件は付されている。
- (3) 権利確定条件付き有償新株予約権の割当てを受けた従業員等は、払込期日までに一定の額の金銭を企業に払い込む。
- 18. 当該取引は、ストック・オプション会計基準の公表時には想定されていなかったことから、権利確定条件付き有償新株予約権が、ストック・オプション会計基準第2項(2)に定めるストック・オプション(企業がその従業員等に報酬として付与するもの)に該当し、ストック・オプション会計基準の適用範囲に含まれるのか、複合金融商品適用指針の適用範囲に含まれるのかが必ずしも明確ではなかった。
- 19. 適用する会計基準を判断するにあたっては、本実務対応報告第17項に記載した取引の特徴を踏まえて、従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与する取引が、ストック・オプション会計基準第2項(4)に定める報酬としての性格を有していると考えるのか否かが論点となる。
- この点、権利確定条件付き有償新株予約権に勤務条件が付されているか否かにより結論が変わり得るため、権利確定条件付き有償新株予約権に付されている権利確定条件の内容を次のように分けて、それぞれについて記載する。
- (1) 勤務条件及び業績条件が付されている有償新株予約権
- (2) 勤務条件は付されていないが業績条件は付されている有償新株予約権
勤務条件及び業績条件が付されている有償新株予約権
- 20. 従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与する取引は、従業員等が一定の額の金銭を企業に払い込むという点で、資金調達としての性格や投資の機会の提供としての性格を有すると考えられるが、一方で、企業が従業員等に対して勤務条件及び業績条件が付されている有償新株予約権を付与する場合、次の理由を勘案すると、ストック・オプション会計基準第2項(4)に定める報酬としての性格を併せ持つと考えられる。
- (1) 権利確定条件付き有償新株予約権は、その付与に伴い従業員等が一定の額の金銭を企業に払い込むという特徴を除けば、引受先が従業員等に限定される点や権利確定条件が付されている点をはじめ(本実務対応報告第17項(1)及び(2)参照)、ストック・オプション会計基準を設定した当初に主に想定していたストック・オプション取引(付与に伴い従業員等が一定の額の金銭を企業に払い込まない取引)と類似している。
- (2) ストック・オプション会計基準第23項において、「従業員等に付与される自社株式オプションは、一般的に報酬としての性格を持つと考えられる。」とされており、企業は引受先を従業員等に限定して権利確定条件付き有償新株予約権を付与するため、基本的には、企業は追加的なサービスの提供を期待しているものと考えられる。
- (3) 権利確定条件付き有償新株予約権を付与する取引を実施した企業の大半は、勤労意欲の増進等のインセンティブ効果を目的の1つに掲げているため、権利確定条件付き有償新株予約権の付与に伴い従業員等が一定の額の金銭を企業に払い込むかどうかにかかわらず、追加的なサービスの提供を期待して当該権利確定条件付き有償新株予約権を付与しているものと考えられる。
- (4) 企業が従業員等に対して勤務条件が付されている有償新株予約権を付与する場合、一定期間のサービスの提供を期待せずに当該権利確定条件付き有償新株予約権を従業員等に付与する意義を合理的に説明することは通常困難であると考えられるため、勤務が要求されている期間のサービスの提供を期待して当該権利確定条件付き有償新株予約権を付与しているものと考えられる。
また、企業が従業員等に対して業績条件が付されている有償新株予約権を付与する場合、業績条件が満たされないと権利を得られないことから当該権利確定条件付き有償新株予約権の付与は権利確定日までの間のインセンティブ効果に結び付き、権利確定日までの追加的なサービスの提供を期待して当該権利確定条件付き有償新株予約権を付与しているものと考えられる。 - (5) 権利確定条件付き有償新株予約権に業績条件が付されている場合、業績達成の可能性の見積りに高い不確実性があることにより、当該権利確定条件付き有償新株予約権の評価額には一定の幅があることとなるが、従業員等が当該評価額に基づく払込金額を割安であると考えて当該権利確定条件付き有償新株予約権の募集に応じる場合、業績条件が満たされないと権利を得られないため、業績達成のインセンティブ効果を有することとなり、企業は従業員等からの追加的なサービスの提供を期待して当該権利確定条件付き有償新株予約権を付与しているものと考えられる。
- 21. なお、審議の過程では、付与時点(払込時点)において、従業員等は権利確定条件付き有償新株予約権と交換に一定の額の金銭を企業に払い込むことから、報酬としての性格を有していないのではないかとの意見が聞かれた。また、公開草案に対して、従業員等が企業に払い込む金額は、時価に基づき算出された額であることから、投資の機会の提供としての性格を有しており、報酬としての性格を有していないとの意見が寄せられた。
- 22. この点、従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与する取引は、引受先が従業員等に限定されていることや、権利確定条件として、勤務条件及び業績条件が付されていることから、本実務対応報告第20項(3)から(5)の記載のとおり、業績達成のインセンティブ効果を有することとなる。このため、付与時点において従業員等から一定の額の金銭が企業に払い込まれ、投資の機会の提供としての性格を有するとしても、同時に、企業は従業員等からの追加的なサービスの提供を期待しているとも考えられることから、従業員等から企業に払い込まれる金額が時価に基づき算出された額であるか否かにかかわらず、従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与する取引はストック・オプション会計基準第2項(4)に定める報酬としての性格を併せ持つと考えられる。
- また、ストック・オプション会計基準では、付与時に、勤務条件や業績条件が満たされないことによる失効数を見積り公正な評価単価を乗じて公正な評価額を算出し、権利が確定するまでの間に当該失効の見積数に重要な変動が生じる場合、変動後の見積数による公正な評価額に基づき報酬費用の総額を変更する方法を採っている(ストック・オプション会計基準第7項)。
- 当該方法に従うと、付与時に、勤務条件や業績条件が満たされないことによる失効数を見積り公正な評価単価を乗じて算出した権利確定条件付き有償新株予約権の公正な評価額と付与時の当該権利確定条件付き有償新株予約権の払込金額との差額が概ねゼロであったとしても、権利が確定するまでの間に当該失効の見積数に重要な変動が生じる場合、変動後の見積数により当該権利確定条件付き有償新株予約権の公正な評価額を変更することとなる。この結果として算出された公正な評価額の増加分は、本実務対応報告第20項(3)から(5)に記載しているような業績達成のインセンティブ効果を反映するものであり、権利確定日までの追加的なサービスの提供と考えられるため、ストック・オプション会計基準第2項(4)に定める報酬としての性格を有すると考えられる。
- 23. このほか、公開草案に対して、従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与する取引は、従業員持株会を通じて株式を取得する取引に類似した投資制度であるとの意見が寄せられた。この意見について当委員会において審議した結果、これらの取引は、従業員等が自らの金銭を対価として、企業の資本性金融商品を取得する点で類似するものの、従業員持株会を通じて株式を取得する場合、従業員等は株式の取得にあたって特段の条件を満たすことを要求されないのに対し、権利確定条件付き有償新株予約権については、権利確定条件が付されていることから、両者の性格は異なるものと考えられ、従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与する取引は、本実務対応報告第20項に記載した理由により、ストック・オプション会計基準第2項(4)に定める報酬としての性格を併せ持つと考えられるとの結論に至った。
- 24. これらを踏まえ、従業員等に対して勤務条件及び業績条件が付されている有償新株予約権を付与する取引は、ストック・オプション会計基準第2項(4)に定める報酬として付与するものと考えられるため、当該権利確定条件付き有償新株予約権は、企業が従業員等から払い込まれる金銭の対価及び従業員等から受ける労働や業務執行等のサービスの対価として付与するものと整理し、ストック・オプション会計基準第2項(2)に定めるストック・オプションに該当するものとして取り扱うこととした(本実務対応報告第4項参照)。
- 25. なお、本実務対応報告では、ストック・オプション会計基準第29項6と同様に、勤務条件及び業績条件が付されている有償新株予約権が従業員等から受ける労働や業務執行等のサービスの対価(ストック・オプション会計基準第2項(4))として用いられていないことを立証できる場合、当該権利確定条件付き有償新株予約権は、ストック・オプション会計基準第2項(2)に定めるストック・オプションに該当しないものとすることとした(本実務対応報告第4項ただし書き参照)。
勤務条件は付されていないが業績条件は付されている有償新株予約権
- 26. 従業員等に対して勤務条件は付されていないが業績条件は付されている有償新株予約権を付与する場合、業績の達成又は達成しないことが確定する日までの期間の勤務が明示的には要求されていないが、本実務対応報告第20項から第22項に記載した理由に加えて、次の理由も勘案すると、当該権利確定条件付き有償新株予約権は、第20項で検討した権利確定条件付き有償新株予約権と同様に、ストック・オプション会計基準第2項(4)に定める報酬としての性格を併せ持つと考えられる。
- (1) 業績条件として数年後の業績指標等が設定されている場合、付与日から業績の達成又は達成しないことが確定する日までの期間において従業員等の退職があらかじめ想定されることは稀であると考えられ、通常、勤務条件が明示されていなくとも当該期間の勤務が期待されていると考えられる。
- (2) ストック・オプション会計基準第2項(4)に定める報酬は、「企業が従業員等から受けた労働や業務執行等のサービスの対価として、従業員等に給付されるもの」とされており、ストック・オプション会計基準においては権利確定条件が付されているかどうかにかかわらず、従業員等に報酬として付与される自社株式オプションを対象としている(ストック・オプション会計基準第2項(2))ため、勤務条件が付されていないことのみをもって当該報酬としての性格を持たないとすることは適当ではない。
- 27. したがって、従業員等に対して勤務条件は付されていないが業績条件は付されている有償新株予約権を付与する取引は、ストック・オプション会計基準第2項(4)に定める報酬として付与するものと考えられるため、当該権利確定条件付き有償新株予約権は、ストック・オプション会計基準第2項(2)に定めるストック・オプションに該当するものとして取り扱うこととした(本実務対応報告第4項参照)。
- 28. なお、本実務対応報告第25項と同様に、勤務条件は付されていないが業績条件は付されている有償新株予約権が従業員等から受ける労働や業務執行等のサービスの対価(ストック・オプション会計基準第2項(4))として用いられていないことを立証できる場合、当該権利確定条件付き有償新株予約権は、ストック・オプション会計基準第2項(2)に定めるストック・オプションに該当しないものとすることとした(本実務対応報告第4項ただし書き参照)。
会計処理
付与日から権利確定日までの取扱い
- 29. 権利確定条件付き有償新株予約権は、その付与に伴い従業員等が一定の額の金銭を企業に払い込むという特徴を除けば、引受先が従業員等に限定される点や権利確定条件が付されている点をはじめ(本実務対応報告第17項(1)及び(2)参照)、ストック・オプション会計基準を設定した当初に主に想定していたストック・オプション取引(付与に伴い従業員等が一定の額の金銭を企業に払い込まない取引)と類似している(本実務対応報告第20項(1)参照)ことを踏まえ、従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与する取引の会計処理を定めるにあたっては、ストック・オプション会計基準第4項から第7項に準拠した会計処理を定めた上で、次の事項を追加している。
- (1) 権利確定条件付き有償新株予約権の付与に伴う従業員等からの払込金額を、純資産の部に新株予約権として計上する(本実務対応報告第5項(1)参照)。
- (2) 権利確定条件付き有償新株予約権の公正な評価額から払込金額を差し引いた金額に基づき、各会計期間における費用計上額を算定する(本実務対応報告第5項(3)並びに(5)②及び③参照)。
- (3) 新株予約権として計上した払込金額は、権利不確定による失効に対応する部分を利益として計上する(本実務対応報告第5項(6)参照)。
- 30. なお、本実務対応報告では、権利確定条件付き有償新株予約権における費用計上額は、当該権利確定条件付き有償新株予約権の公正な評価額から払込金額を差し引いた金額に基づいている。これは、ストック・オプション会計基準第44項では、「企業は、ストック・オプションを付与(給付)する対象者に対して、権利確定条件(勤務条件や業績条件)を満たすようなサービスの提供(反対給付)を期待し、契約締結時点であるストック・オプションの付与時点において、企業が期待するサービスと等価であるストック・オプションを付与していると考えられる。」とされているように、企業と従業員等との間で等価での交換がなされているとの考えと整合性を図ったものである。
- 権利確定条件付き有償新株予約権を付与する取引をこの等価交換の考えに当てはめると、企業からの給付、すなわち、付与された権利確定条件付き有償新株予約権は、付与日の公正な評価単価(権利確定条件を考慮しないもの)に、権利確定日の権利が確定した権利確定条件付き有償新株予約権数を乗じた額として算定される。また、従業員等からの反対給付は、従業員等からの権利確定条件(勤務条件や業績条件)を満たすようなサービスの提供と当該権利確定条件付き有償新株予約権の付与に伴い従業員等が払い込む金額の合計となる。この結果、権利確定条件付き有償新株予約権における費用計上額は、当該権利確定条件付き有償新株予約権の公正な評価額から払込金額を差し引いた金額となる(本実務対応報告第5項(3)及び第29項(2)参照)。
- したがって、権利確定条件付き有償新株予約権の付与に伴う従業員等からの払込金額が、付与日の公正な評価額に近似している場合、各会計期間における費用計上額は概ねゼロとなるが、業績条件の達成見込みにより権利不確定による失効の見積数に重要な変動が生じ権利確定条件付き有償新株予約権数を見直した場合、当該見直し後の権利確定条件付き有償新株予約権数に基づく公正な評価額から払込金額を差し引いた金額に基づき、見直しを行った期以降の会計期間に費用を計上することとなる。
権利確定日に関する取扱い
- 31. 各会計期間における費用計上額は、権利確定条件付き有償新株予約権の公正な評価額から払込金額を差し引いた金額のうち、対象勤務期間を基礎とする方法その他の合理的な方法に基づき当期に発生したと認められる額を算定する(本実務対応報告第5項(3)参照)。また、ストック・オプション会計基準第2項(9)では、「「対象勤務期間」とは、ストック・オプションと報酬関係にあるサービスの提供期間であり、付与日から権利確定日までの期間をいう。」とされており、どの時点を権利確定日として取り扱うかが会計処理に関係する。
- 32. これに関連し、ストック・オプション適用指針第51項では、ストック・オプションと対応するサービスの提供期間は付与日から条件達成に要する期間までとされ、勤務条件が付されている場合、権利確定日は「勤務条件を満たし権利が確定する日」と定められている(ストック・オプション適用指針第17項(1)及び第50項)。また、業績条件が付されている場合、通常、企業は従業員等に勤務条件を明示していなくとも、付与日から業績の達成又は達成しないことが確定する日までの期間の勤務を期待し、当該期間の報酬として付与していると考えられる(本実務対応報告第26項(1)参照)。
- 33. この考えを踏まえ、勤務条件及び業績条件が付されている有償新株予約権について、これらの条件のうちいずれかの条件を満たすことにより権利が確定する場合、ストック・オプション適用指針第19項(1)と同様に、権利確定条件付き有償新株予約権と報酬関係にあるサービスの提供期間は、付与日から当該いずれかの条件を満たし権利が確定する日までとした(本実務対応報告第7項(1)参照)。また、勤務条件及び業績条件のすべての条件を満たすことにより権利が確定する場合、ストック・オプション適用指針第19項(2)と同様に、権利確定条件付き有償新株予約権と報酬関係にあるサービスの提供期間は、付与日から当該すべての条件を満たし権利が確定する日までとした(本実務対応報告第7項(2)参照)。
- 34. 一方、勤務条件は付されていないが業績条件は付されている有償新株予約権を付与する場合の権利確定日については、第32項に記載しているように、付与日から業績の達成又は達成しないことが確定する日までの期間の勤務を期待しているとの考えに基づき、業績の達成又は達成しないことが確定する日を権利確定日とすることとした(第7項(3)参照)。
- 35. なお、勤務条件は付されていないが業績条件は付されている有償新株予約権については、第26項(1)に記載しているように、稀ではあるが、付与日から業績の達成又は達成しないことが確定する日までの期間において従業員等の退職があらかじめ想定される等、付与日以前の報酬として付与されるケースもあると考えられる。このケースにおいても、ストック・オプション会計基準に従うと、付与時から権利が確定するまでの間に失効の見積数に重要な変動が生じる場合、変動後の見積数による公正な評価額に基づき報酬費用の総額を変更することとなるため、前項と同様に、業績の達成又は達成しないことが確定する日を権利確定日とすることになると考えられる。
適用時期等
- 36. 本実務対応報告の適用にあたっては、本実務対応報告の適用日より前に従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与した取引に係る会計処理を遡及的に適用することが、企業間の比較可能性の向上に資すると考えられるため、遡及適用を原則とした(第10項(1)参照)。
- 37. なお、本実務対応報告を遡及適用するにあたり、本実務対応報告の公表日より前に権利確定条件付き有償新株予約権が権利行使され、これに対して新株を発行している場合、新たな会計方針に基づき新株予約権として計上された額のうち、当該権利行使に対応する部分を払込資本に振り替えることにより払込資本が増加することとなるが、払込資本の内訳項目(資本金、資本準備金又はその他資本剰余金)は、会社法の規定に基づき決定することとなる。
- この点、会計方針の変更により、新たな会計方針を遡及適用した場合であっても、新株予約権の行使があった場合の「資本金等増加限度額」(会社計算規則第13条第1項)の基礎となる「行使時における当該新株予約権の帳簿価額」(会社計算規則第17条第1項第1号)を修正するものではないことから、新たな会計方針を遡及適用したことにより払込資本の金額が増加する場合、当該増加額は、その他資本剰余金として処理することとした(第10項(2)参照)。
- 38. 本実務対応報告の適用にあたっては、遡及適用を原則としているが、従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与する取引の開始から数年経過している企業が少なくないことを考慮すると、本実務対応報告の適用日より前に付与された当該権利確定条件付き有償新株予約権について過去に遡って付与日における公正な評価単価や失効の見積数を算定する場合、実務上の困難を伴う可能性が高いと考えられる。
- したがって、本実務対応報告の適用日より前に従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与した取引については、本実務対応報告の会計処理によらず、従来採用していた会計処理を継続することができることとした(第10項(3)参照)。
- 39. 公開草案では、適用時期について、公表日より前に従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与した取引について従来採用していた会計処理を継続することができる取扱いを定めているため、特段の準備期間は必要ないと考えられることや、可能な限り早い時期に適用することへのニーズが高いことから、公表日以後適用することとしていた。しかしながら、公開草案に対して、実務上の混乱を避けるためにも、一定の準備期間を設けるべきとの意見が寄せられた。
- この点、本実務対応報告では、公表日より前に従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与した取引について従来採用していた会計処理を継続する場合には一定の事項を注記する必要があることなどを踏まえると、本実務対応報告の適用にあたって一定の周知期間を設けることも有用と考えられる。そのため、本実務対応報告は平成30年4月1日以後適用することとした。また、本実務対応報告が公表された時点から新たな定めに従った会計処理の採用を求める要請がある可能性を考慮し、本実務対応報告の公表日以後適用できることとした(第10項参照)。
- 40. なお、本実務対応報告の適用日より前に従業員等に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与した取引について本実務対応報告の会計処理によらず、従来採用していた会計処理を継続する場合、情報の有用性を補うために、本実務対応報告の適用日より前に付与されていた当該取引に関する情報について定量的な情報の開示を求めることが望ましいと考えられる。ただし、その場合も第38項と同様に、実務上の困難を伴う可能性が高いと考えられるため、一定程度の内容が理解できるように、定性的な情報を開示することとした(第10項(3)参照)。
設 例
- 次の設例は、本実務対応報告で示された内容についての理解を深めるために参考として示されたものであり、仮定として示された前提条件の記載内容は、経済環境や各企業の実情等に応じて異なることに留意する必要がある。
[設例] 従業員に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与する取引
- A社は、X1年10月10日に、従業員20名に対して権利確定条件付き有償新株予約権を付与することを決議し、同年11月1日に従業員20名から金銭が払い込まれ、当該従業員に権利確定条件付き有償新株予約権を付与した。
- ① 権利確定条件付き有償新株予約権の数:1名当たり40千個(合計800千個)であり、新株予約権の一部行使はできないものとする。
- ② 権利確定条件付き有償新株予約権の行使により与えられる株式の数:合計800千株
- ③ 権利確定条件付き有償新株予約権の発行を決議した日(X1年10月10日)の前日の株価の終値:600円
- ④ 権利確定条件付き有償新株予約権の行使時の払込金額:1株当たり600円
- ⑤ 権利確定条件付き有償新株予約権の権利確定日:X4年3月末日
- ⑥ 権利確定条件付き有償新株予約権の行使期間:X4年4月1日からX6年6月末日
- ⑦ 権利行使条件(その1):X4年3月期の営業利益が10億円を超えることを要する。
- ⑧ 権利行使条件(その2):行使時において従業員の地位にあることを要する。
- ⑨ 付与された権利確定条件付き有償新株予約権は、他者に譲渡できない。
- ⑩ 付与日における権利確定条件付き有償新株予約権の業績条件を考慮しない公正な評価単価(第5項(4)参照)は100円/個であり、払込金額の合計額は3,200,000円である。
- ⑪ 権利確定条件付き有償新株予約権の付与日(X1年11月1日)において、勤務条件について従業員の退職による失効見込みはゼロ、業績条件を考慮すると、権利確定が見込まれる権利確定条件付き有償新株予約権の数量は32千個(見積失効数は768千個)であることを十分な信頼性をもって見積ることができるものと仮定する。
- ⑫ X2年3月期及びX3年3月期において、権利不確定による失効数の見積りを変更する状況の変化はなかった。
- ⑬ X4年3月末日(X4年3月期)にX4年3月期の営業利益が10億円を超える業績条件を充足することが明らかとなった。そのため、権利確定が見込まれる権利確定条件付き有償新株予約権の数量は800千個であることが判明した。
- ⑭ X5年5月(X6年3月期)に、20名全員が権利を行使した。

- ⑮ 権利確定条件付き有償新株予約権が行使された際、新株を発行する場合には、権利行使に伴う払込金額及び行使された権利確定条件付き有償新株予約権の金額の合計額を資本金に計上する。
- (1) X1年11月1日(払込日/付与日)
- <新株予約権の計上>
- 権利確定条件付き有償新株予約権の付与に伴う従業員からの本新株予約権の払込金額3,200,000円を、純資産の部に新株予約権として計上する。

- (2) X2年3月期
- 付与日における権利確定条件付き有償新株予約権の公正な評価額から払込金額を差し引いた金額のうち、対象勤務期間を基礎とする方法その他の合理的な方法に基づき当期に発生したと認められる額を費用計上額として算定する。X2年3月期における費用計上額は、公正な評価額のうち、付与日から権利確定日までの対象勤務期間(29か月)を基礎とする方法に基づき、X2年3月期に発生したと認められる額として算定する。
- 付与日以降失効数の見積りに変化がないため、費用として計上する額はない。

- (3) X3年3月期
- 付与日以降失効数の見積りに変化がないため、費用として計上する額はない。

- (4) X4年3月期
- <人件費の計上>
- 業績条件を満たす可能性が高くなったことにより、権利不確定による失効の見積数に重要な変動が生じたため、これに伴い権利確定条件付き有償新株予約権数を見直す。これにより、見直し後の権利確定条件付き有償新株予約権数に基づく権利確定条件付き有償新株予約権の公正な評価額から払込金額を差し引いた金額に基づき、X4年3月期(見直しを行った期)までに費用として計上すべき額(全額)を算定している。

- (5) X5年3月期(権利行使期間開始)
- 権利行使されていないため、仕訳はない。

- (6) X6年3月期(権利行使)
- <権利確定条件付き有償新株予約権の行使>
- 権利確定条件付き有償新株予約権の行使を受け、A社は新株を発行する。

- 以 上
注
- 1 「従業員等」とは、企業と雇用関係にある使用人のほか、企業の取締役、会計参与、監査役及び執行役並びにこれに準ずる者をいう(企業会計基準第8号「ストック・オプション等に関する会計基準」(以下「ストック・オプション会計基準」という。)第2項(3))。
- 2 ストック・オプション会計基準第2項(2)では、「ストック・オプションには、権利行使により対象となる株式を取得することができるというストック・オプション本来の権利を獲得すること(以下「権利の確定」という。)につき条件が付されているものが多い。当該権利の確定についての条件(以下「権利確定条件」という。)には、勤務条件(本項(10))や業績条件(本項(11))がある。」とされている。
「勤務条件」とは、ストック・オプションのうち、条件付きのものにおいて、従業員等の一定期間の勤務や業務執行に基づく条件をいう(ストック・オプション会計基準第2項(10))。
「業績条件」とは、ストック・オプションのうち、条件付きのものにおいて、一定の業績(株価を含む。)の達成又は不達成に基づく条件をいう(ストック・オプション会計基準第2項(11))。 - 3 本実務対応報告は、当該取引に関する法律的な解釈を示すことを目的とするものではなく、当該取引が、法的に有効であることを前提としている。
- 4 市場価格とは、市場において形成されている取引価格、気配値又は指標その他の相場をいう(ストック・オプション会計基準第2項(12))。
- 5 平成30年改正前の複合金融商品適用指針第34項では、「ストック・オプション会計基準では、企業がその従業員等に対してストック・オプションを付与する取引の他、企業が財貨又はサービスを取得するときの対価として自社株式オプション(新株予約権)を付与する取引についても取り扱っているが、企業が現金を取得するときの対価として自社株式オプション(新株予約権)を付与する取引は前提としていない(ストック・オプション会計基準第3項)。」とされており、権利確定条件付き有償新株予約権のように、割当てを受けた従業員等が払込期日までに一定の額の金銭を企業に払い込む自社株式オプションについての取扱いが明確ではなかった。
- 6 ストック・オプション会計基準第29項において、次のように記載されている。
(1) 「本会計基準は、付与した自社株式オプションや交付した自社の株式が、取得の対価として用いられることが前提となっている。経済的に合理的な行動を行う企業が自社株式オプションや自社の株式を付与又は交付するからには、それらは基本的に対価性を有していると考えられる。そうではない場合は、企業が当該企業の株主としての地位を有する者に対して、その地位に基づき自社株式オプションや自社の株式を付与又は交付したが、それらの者の一部がたまたま従業員等でもあるといった場合を除いては、極めて稀であると考えられる。」
(2) 「本会計基準の導入に際しては、企業が自社株式オプションや自社の株式を付与又は交付する取引であっても、対価性の存在しないことを立証できる場合には、本会計基準の適用対象外とした。ただし、対価性がないと判断するためには、対価性の推定を覆すに足りるだけの明確な反証が必要と考えられ、その反証の内容につき開示を求めることとした(第16項(7))。」
