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実務対応報告第10号種類株式の貸借対照表価額に関する実務上の取扱い
目的
2003年実務対応報告
- 2001年(平成13年)の商法改正における種類株式制度の見直しにより、優先株式をはじめとした種類株式1の内容が多様化するとともに、その発行金額が増加している。この中には、最近、会社再建の一手法として行われているデット・エクイティ・スワップの実行により生じた種類株式なども含まれている。
- 株式の貸借対照表価額は、1999年(平成11年)1月22日に企業会計審議会から公表された「金融商品に係る会計基準の設定に関する意見書」及び「金融商品に係る会計基準」(2006年(平成18年)8月に企業会計基準第10号「金融商品に関する会計基準」(以下「金融商品会計基準」という。)として改正されている。)並びに2000年(平成12年)1月31日に日本公認会計士協会から公表された「金融商品会計に関する実務指針」2において定められている。これらにおける株式の貸借対照表価額の定めは、普通株式を念頭においたものと考えられる。
- 原則として、種類株式も金融商品会計基準及び「金融商品会計に関する実務指針」の定めに従うものと考えられるが、種類株式の中には、債券と同様の性格を有すると考えられるものや、発行会社の普通株式の市場価格との密接な連動性を有するものもあり、普通株式の場合とは異なる考慮が働く余地がある。このように種類株式の貸借対照表価額の取扱いについては、実務上、必ずしも明らかではない部分があるため、当委員会では、2002年(平成14年)10月9日に実務対応報告第6号「デット・エクイティ・スワップの実行時における債権者側の会計処理に関する実務上の取扱い」の公表後、種類株式の貸借対照表価額に関する取扱いの検討を行ってきた。
- 本実務対応報告では、様々な内容を有する種類株式のうち、現状において実務上の取扱いを明確にする必要性が高いと考えられる種類株式の貸借対照表価額について、金融商品会計基準及び「金融商品会計に関する実務指針」の考え方を踏まえた取扱いを公表するものである。すなわち、まず、形式的には株式であっても債券と同様の性格を持つと考えられるものは、債券の評価と同様に取り扱うことが適当であり(Q1参照)、それ以外の場合で、市場価格のある種類株式は時価で、市場価格のない種類株式は取得原価をもって貸借対照表価額とすることとなる(Q2参照)。また、市場価格のない種類株式の減損処理にあたっては、評価モデルを利用する方法によって実質価額を算定し、当該方法による価額を得ることが困難である場合には、1株当たりの純資産額を基礎とする方法や優先的な残余財産分配請求額を基礎とする方法によって実質価額を算定する(Q3参照)。
- なお、本実務対応報告は、種類株式のうち、現状において実務上の取扱いを明確にする必要性が高いと考えられるもののみを取り上げたものであり、今後、必要がある場合には、その貸借対照表価額についての取扱いを追加することがある。また、本実務対応報告は、種類株式の保有者側の取扱いを明らかにしたものであり、発行者側の会計処理は取り扱っていない。
2025年改正実務対応報告
- 2024年年次改善プロジェクトにおいて、本実務対応報告の「目的」の脚注における本実務対応報告の適用対象となる種類株式に関する定めにおいて、会社法の施行に伴い削除された商法(以下「旧商法」という。)の条文を参照したままとなっていることを検出した。当委員会は、検出された内容への対応に関する審議を行い、2024年11月に公開草案「2024年年次改善プロジェクトによる企業会計基準等の改正(案)」を公表して広く意見を求めた。2025年に改正された本実務対応報告(以下「2025年改正実務対応報告」という。)は、公開草案に寄せられた意見を踏まえて検討を行い、公開草案の内容を一部修正した上で公表するに至ったものである。
- 2025年改正前の本実務対応報告が参照していた旧商法の規定に基づき会社法施行日前に発行されていた種類株式は、「会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律」(平成17年法律第87号)において、会社法上の種類株式とみなされるとされている。具体的には、当該旧商法の規定が、会社法第108条第1項が掲げる事項の一部に該当するとみなされている。このため、本実務対応報告の適用対象となる種類株式の定義を、会社法第108条第1項を参照する形で定義することとした。
- 会社法第108条第1項では旧商法で認められていなかった種類の株式を発行することが可能とされ、旧商法で認められていた種類の株式についても設計の柔軟化が図られている。したがって、会社法第108条第1項に従い発行する株式を本実務対応報告の種類株式と定義する場合には、2025年改正実務対応報告の適用対象は本実務対応報告の開発時において想定されていなかった種類株式にまで拡大することとなる。
- この点、旧商法で認められていなかった種類の株式を適用対象から除くように、会社法第108条第1項各号のうち一部のみを参照することも考えられるが、次の理由により、会社法第108条第1項に従って発行した株式として定義することとしている。
- (1) 会社法では会社法第108条第1項各号に定められた内容を自由に組み合わせて設計した株式の発行が可能とされており、会社法第108条第1項各号のうち一部のみを参照する定義は、当該会社法の趣旨と整合しない。
- (2) 本実務対応報告は、普通株式とは異なる定めがある場合の考慮事項を定めることを目的としているが、普通株式とは異なる定めがある点は本実務対応報告の開発時において想定されていなかった種類株式についても同様であると考えられるため、本実務対応報告の定めが有用となることが考えられる。
用語の定義
- 本実務対応報告において、種類株式とは、会社法第108条第1項に従い内容の異なる2以上の種類の株式を発行する場合の標準となる株式以外の株式をいう。
会計処理
債券と同様の性格を持つと考えられる種類株式
- Q1.

- A 形式的には株式であっても、発行会社が一定の時期に一定額で償還すると定めている種類株式や、発行会社や保有者が一定額で償還する権利を有し取得時点において一定の時期に償還されることが確実に見込まれる種類株式は、経済的には清算時の弁済順位を除き、債券と同様の性格を持つと考えられるため、その貸借対照表価額は債券の貸借対照表価額(金融商品会計基準第15項、第16項、第18項、第20項、第22項及び第23項)と同様に取り扱うことが適当である。
債券と同様の性格を持つと考えられるもの以外の種類株式
- Q2.

- A Q1のAで記述されているような債券と同様の性格を持つもの以外の種類株式の貸借対照表価額については、以下の取扱いとなる。
- (1) 市場価格のある種類株式
- 市場価格のある種類株式は、時価(ただし、子会社及び関連会社が発行した種類株式は、取得原価)をもって貸借対照表価額とされる(金融商品会計基準第15項、第17項及び第18項)。また、売買目的有価証券以外の市場価格のある種類株式について、時価が著しく下落したときは、回復する見込みがあると認められる場合を除き、時価をもって貸借対照表価額とし、評価差額は当期の損失として処理(減損処理)される(金融商品会計基準第20項及び移管指針第9号「金融商品会計に関する実務指針」(以下「金融商品実務指針」という。)第91項)。
- なお、種類株式自体は市場で取引されていなくとも転換を請求できる権利を行使して、容易に市場価格のある普通株式に転換し取引できるような場合(例えば、現時点で保有者によって市場価格のある普通株式に転換請求が可能であって、ディープ・イン・ザ・マネーの状態にある場合)も、市場価格のある株式として取り扱われると考えられる。
- (2) 市場価格のない種類株式
- 市場価格のない種類株式は、取得原価をもって貸借対照表価額とされ、当該株式の発行会社の財政状態の悪化により実質価額が著しく低下したときは、相当の減額を行い、評価差額は当期の損失として処理(減損処理)される(金融商品会計基準第21項及び金融商品実務指針第92項)。
- これは、市場価格のない株式は、たとえ何らかの方式により価額の算定が可能としても、それを時価とはしないことによる(金融商品会計基準第19項)。
市場価格のない種類株式の減損処理
- Q3.

- A 市場価格のない株式の減損処理を行うにあたり、実質価額とは、通常、一般に公正妥当と認められる会計基準に準拠して作成した財務諸表を基礎に資産等の時価評価に基づく評価差額等を加味して算定した1株当たりの純資産額に、所有株式数を乗じた金額とされている(金融商品実務指針第92項参照)。
- これは普通株式を念頭においた取扱いであると考えられ、優先株式その他の種類株式については、普通株式と異なる考慮が必要と考えられる。市場価格のない種類株式のうち、債券と同様の性格を持つと考えられる株式(Q1参照)以外のものに関する実質価額の算定及び減損処理については、原則として、以下による。
- (1) 評価モデルを利用する方法
- 市場価格のない種類株式のうち、例えば、満期の定めのない永久債に類似したようなものや、現在は転換できないが、将来、転換を請求できる権利を行使して市場価格のある普通株式に転換できること等により普通株式の市場価格と関連性を有するものについては、困難であると認められる場合を除き、割引将来キャッシュ・フロー法やオプション価格モデルなどを利用した評価モデルによる価額を実質価額とする。当該評価モデルについては、原則として、毎期同様のものを使用する。
- なお、このように評価モデルを利用して算定された価額が、取得原価に比べて50%程度以上低下した場合には、原則として、当該価額まで減額し評価差額は当期の損失として処理しなければならない(金融商品実務指針第92項及び第285項参照)。また、50%程度以上低下しないときでも、金融商品実務指針第91項に準じて、当該価額に基づく減損処理の要否を判断することが適当である。
- (2) 評価モデルを利用して算定された価額を得ることが困難である場合
- (1)の評価モデルを利用して算定された価額を得ることが困難である場合には、以下の①又は②のような方法により実質価額を算定する。こうした方法により算定された実質価額が、少なくとも取得原価に比べて50%程度以上低下した場合には、当該実質価額まで減額し、評価差額は当期の損失として処理しなければならない(金融商品実務指針第92項及び第285項参照(これに係る移管指針第12号「金融商品会計に関するQ&A」 Q33及びQ34も参照のこと。))。
- なお、普通株式の市場価格と連動性があると想定される種類株式については、評価モデルを利用した価額を得ることが困難であっても、普通株式の市場価格が当該種類株式の取得時点に比べて著しく下落した場合には、当該種類株式の実質価額も著しく低下していると想定され、減損処理を行うことが合理的と考えられる場合が多いことに留意する必要がある。
- ① 1株当たりの純資産額を基礎とする方法
- 利益配当請求権に関する普通株式との異同や転換を請求できる権利の条件等を考慮して、種類株式の普通株式相当数を算定することが可能な場合には、資産等の時価評価に基づく評価差額等を加味して算定した発行会社の純資産額(この点については金融商品実務指針第92項参照)を、種類株式の普通株式相当数と普通株式数の合計で除した1株当たりの純資産額に、所有する当該種類株式の普通株式相当数を乗じて実質価額を算定することが考えられる。ここでいう種類株式の普通株式相当数とは、例えば、普通株式への転換を仮定した場合の普通株式数(転換価格が固定されている場合には当該転換価格、普通株式の市場価格に基づいて決定・修正される場合には貸借対照表日現在の普通株式の市場価格に基づいて算定された転換価格による。)など、1株当たり純資産額を基礎とする方法に用いられる当該種類株式の株式数に対応すると考えられる普通株式数をいう。
- ② 優先的な残余財産分配請求額を基礎とする方法
- 普通株式よりも利益配当請求権及び残余財産分配請求権が優先的であるような場合には、優先的な残余財産分配請求額を基礎とする方法によって実質価額を算定することも考えられる。この場合、①の方法と同様に、資産等の時価評価に基づく評価差額等を加味して算定した発行会社の純資産額が、優先的な残余財産分配請求権総額を下回っている場合には、当該純資産額(当該純資産額が、優先的な残余財産分配請求権総額を上回っている場合には、当該残余財産分配請求権総額に配当可能限度額のうち種類株式相当分を加えた金額)を、当該種類株式数で除した1株当たりの純資産額に、所有する当該種類株式数を乗じて実質価額を算定することが考えられる。
種類株式を発行している場合の市場価格のない普通株式の減損処理
- Q4.

- A 市場価格のない普通株式の減損処理は、Q3のAで記述されているように、一般に公正妥当と認められる会計基準に準拠して作成した財務諸表を基礎に資産等の時価評価に基づく評価差額等を加味して算定した1株当たりの純資産額(会社の超過収益力や経営権等を反映する場合もある。)に、所有株式数を乗じた実質価額に基づいて行われる(金融商品実務指針第92項参照)。
- この際、市場価格のない普通株式を発行している会社が種類株式も発行している場合、市場価格のない普通株式の1株当たりの純資産額は、発行会社の純資産額をそのまま用いて算定するのではなく、金融商品実務指針第92項に基づく発行会社の純資産額から、種類株式に帰属すべき純資産額を控除して算定されることに留意する。
適用時期等
2003年実務対応報告
- 2003年に公表された本実務対応報告(以下「2003年実務対応報告」という。)は、2003年(平成15年)4月1日以後開始する事業年度に係る財務諸表から適用する。ただし、デット・エクイティ・スワップによって取得した種類株式(取得時に、実務対応報告第6号が適用されていないものも含む。)については、公表日の属する事業年度に係る財務諸表から適用する3。それ以外の株式についても、2003年(平成15年)3月31日以前に開始する事業年度に係る財務諸表について、本実務対応報告を適用することが望ましい。
2025年改正実務対応報告
- 2025年改正実務対応報告は、2025年4月1日以後最初に開始する連結会計年度及び事業年度の期首以後取得する種類株式について適用する。
- また、2025年4月1日以後最初に開始する連結会計年度及び事業年度の期首より前に取得した種類株式のうち、2025年4月1日以後最初に開始する連結会計年度及び事業年度の前連結会計年度及び前事業年度の末日において保有する種類株式については、次のいずれかの方法を選択できる。
- (1) 従前の会計方針を継続する。
- (2) 2025年改正実務対応報告を2025年3月31日以後最初に終了する連結会計年度及び事業年度の末日から将来にわたって適用する。
- (3) 2025年改正実務対応報告を2025年4月1日以後最初に開始する連結会計年度及び事業年度の期首から将来にわたって適用する。
議決
- 2003年実務対応報告は、第28回企業会計基準委員会に出席した委員11名全員の賛成により承認された。
- 2025年改正実務対応報告は、第542回企業会計基準委員会に出席した委員13名全員の賛成により承認された。
- 以 上
注
- 1 2003年3月13日の本実務対応報告公表当時においては、本実務対応報告公表当時の商法に基づき、数種の株式(商法第222条)、転換予約権付株式(商法第222条ノ2から第222条ノ7)及び強制転換条項付株式(第222条ノ8から第222条ノ10)を種類株式と呼んでいた。
- 2 この他、2000年(平成12年)9月14日に日本公認会計士協会 会計制度委員会から公表された「金融商品会計に関するQ&A」がある。
- 3 これは、デット・エクイティ・スワップによって取得した種類株式については、会計処理を早期に明らかにし実施することが要請されており、本来、期末時の会計処理も含めて定めるべきところを、実行時における会計処理のみ先行して実務対応報告第6号として公表し、その後速やかに追加検討を行うとしていた経緯による。
