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実務対応報告第9号1株当たり当期純利益に関する実務上の取扱い
目 的
- 1株当たり当期純利益、潜在株式調整後1株当たり当期純利益及び1株当たり純資産額の算定及び開示については、企業会計基準委員会から企業会計基準第2号「1株当たり当期純利益に関する会計基準」(以下「会計基準」という。)及び企業会計基準適用指針第4号「1株当たり当期純利益に関する会計基準の適用指針」(以下「適用指針」という。)が公表されている。本実務対応報告は、会計基準及び適用指針に関連する事項について、質問の多い点を中心に、実務上の取扱いを明らかにするために公表するものである。
- 当委員会は、会社法(平成17年法律第86号)が公布されたこと及び企業会計基準第4号「役員賞与に関する会計基準」が公表されたことなどに伴い、平成18年に会計基準及び適用指針を改正し、あわせて本実務対応報告についても所要の改正を行った。
- また、平成22年に会計基準及び適用指針を改正するにあたって、ワラントの行使価格等が期中に修正された場合の取扱いについてもあわせて検討し、改正を行うこととした。
1株当たり当期純利益の算定
自己株式の消却の取扱い
- Q1.

- A 会社法においては、いわゆる株式の消却について、自己株式の取得及び取得した自己株式の消却(会社法第178条第1項)として整理されている。自己株式の取得は、すべての株主に対して平等に行われるものではなく、また、通常、取得は時価により行われることから、株式併合の取扱いとは異なり、1株当たり当期純利益の算定上、自己株式の取得をその時点以降の自己株式の増加として期中平均株式数に反映させることとなる。この結果、すでに自己株式を取得した時点で、1株当たり当期純利益の算定上、分母から控除されており、自己株式の消却時には普通株式の発行済株式数と自己株式数がともに減少し社外に流通する株式数に変化はなく、自己株式の消却は、1株当たり当期純利益の算定上、影響がない。
潜在株式調整後1株当たり当期純利益の算定
時価発行増資等の取扱い
- Q2.

- A 期末日現在、時価発行増資に係る新株式申込証拠金や自己株式の処分に係る自己株式申込証拠金が計上されている場合、申込人は、割当株数に応じて申込証拠金をすでに支払い、払込期日に株式を取得する権利を保有する。この場合、通常は申込期間が短く、また、時価相当分の入金により自己株式方式では希薄化効果を有していないことから、その算定にあたって、申込人が保有するこの権利をワラント(会計基準第10項)として取り扱う必要はないと考えられる。
- このため、当該取引は潜在株式調整後1株当たり当期純利益の算定には含まれず、また、算定上の基礎(会計基準第33項)として「希薄化効果を有しないため、潜在株式調整後1株当たり当期純利益の算定に含まれなかった潜在株式の概要」(適用指針第38項(5))に開示する必要もない。
未公開企業である子会社又は関連会社が発行するストック・オプションについて
- Q3.

- A 子会社が発行した一定の期間の勤務を条件とするストック・オプションも、すでに行使期間が開始した子会社のワラントとして取り扱われる(適用指針第22項)ため、潜在株式調整後1株当たり当期純利益の算定にあたっては自己株式方式(会計基準第55項)が適用される(適用指針[設例7])。このため、その行使価格が子会社株式の期中平均株価を下回る場合、権利の行使を仮定し、親会社等の持分比率の変動があったとみなして算定した連結上の親会社株主に帰属する当期純利益が減少するときは、当該ストック・オプションを連結上の潜在株式調整後1株当たり当期純利益の算定にあたって考慮することとなる(適用指針第33項)。自己株式方式では、期首にワラントが行使され、この入金額を用いて期中平均株価で自己株式の買受を行うと仮定する(会計基準第56項)ため、原則として、子会社株式の期中平均株価(市場価格がない場合、市場価格に準ずると認められる価格によることを含む。以下同じ。)を用いる必要がある。
- しかしながら、未公開企業である子会社の場合には、ワラントの行使により発行される株式に市場価格がないうえ、未公開企業である子会社のワラントが連結上の潜在株式調整後1株当たり当期純利益の算定に与える影響は、通常小さいものと考えられる。このため、ストック・オプションの価値を算定する際に算出した付与日(条件変更が行われ、見直した場合は条件変更日を含む。)の子会社株式の価値や各期末において合理的と考えられる評価方法によって算出した子会社株式の価値をもとに、前期末(付与日の属する会計期間においては付与日)と当期末の平均値を期中平均株価とみなすような簡便的な方法を採用することも認められる。
転換負債の当期純利益調整額
- Q4.

- A それぞれ以下のように取り扱うものと考えられる。
- (1) 転換仮定方式では、転換証券が期首に転換されたと仮定した結果、転換証券が期首から存在しなかったとみなしている(会計基準第58項(2))。この仮定により、普通株式に係る当期純利益に、分母となる株式数の調整に伴う当期純利益調整額を加え、潜在株式調整後1株当たり当期純利益の分子とするが、当期純利益調整額には、転換を仮定することに伴う収益及び費用の変動がすべて含まれるものと考えられる。したがって、例えば、期首に転換されたと仮定した場合には転換負債の償還は行われないことになるため、損益計算書上の当期純利益(連結損益計算書上は親会社株主に帰属する当期純利益)に含まれる償還損益や償還に伴って発生する支払手数料は、当期純利益調整額に含まれることとなる。また、外貨建転換社債型新株予約権付社債の決算時あるいは権利行使時の換算によって生じた為替差損益も同様である。これに対して、社債発行費は、転換を仮定しても発生額に変わりはなく、また、繰延資産として計上されている未償却残高を当期純利益調整額とした場合、翌年度以降の潜在株式調整後1株当たり当期純利益の算定にも反映されるおそれがあるため、当期の損益計算書に計上されている社債発行費(償却額を含む)は当期純利益調整額に含まれないとすることが適当と考えられる。
なお、このような事務手数料等の費用で、重要性の乏しいものは、当期純利益調整額の算定に含めないことができるとされている(適用指針第25項(1))。 - (2) 当期純利益調整額の算定にあたって、転換負債に係る当期の支払利息等の金額に課税されたと仮定した場合の税額相当額は、法定実効税率を用いて算定するとされている(適用指針第25項(2))。これは、一般的に永久差異に係る項目の影響は小さいこと、また、転換仮定後の繰延税金資産の回収可能性まで実務上の判断を求めない便宜的な取扱いであることによると考えられる。このため、将来にわたり税金費用(法人税等及び法人税等調整額)が発生しないことが見込まれる場合(例えば、税務上の繰越欠損金に対する繰延税金資産が計上されない場合など)に、税額相当額を控除する必要はないと考えられる。
転換請求可能期間が未到来である転換証券の取扱い
- Q5.

- A 潜在株式調整後1株当たり当期純利益の算定は、企業の成果を過去の情報として開示する(会計基準第38項)という目的や時系列比較等を可能とする観点から行われるものであり、転換証券の場合もワラントと同じように(適用指針第22項)、転換請求可能期間が未到来であっても、単に時間の経過によって転換請求権が生じる場合には、すでに転換可能として取り扱うこととなると考えられる。
- なお、単なる時間の経過だけでなく、特定の利益水準や株価水準の達成などの条件が付されている場合には、条件付発行可能潜在株式として取り扱うこととなる(適用指針第53項)。
- Q5のそれぞれのケースは、潜在株式調整後1株当たり当期純利益の算定上、以下のように取り扱われるものと考えられる。
- (1) 当初転換価格が株価に依存せず、固定的に決まっているケース
このケースでは、当初転換価格を潜在株式調整後1株当たり当期純利益算定上の転換価格として用いる。 - (2) 当初転換価格が将来の株価に基づいて決定されるため、期末までには決まっていないケース

- 転換価格が決まっていないという事実は、転換請求権が生じる条件には該当しないため、条件付発行可能潜在株式(適用指針第53項)として取り扱われるものではなく、この場合も、希薄化効果を有する場合には、潜在株式調整後1株当たり当期純利益の算定にあたって、転換証券を考慮するものと考えられる。この場合、転換仮定方式では当期首(又は発行時)に転換を仮定する(会計基準第30項)ことから、当初転換価格の算定条件に当期首(又は発行時)までの株価の状況を織り込んで、潜在株式調整後1株当たり当期純利益算定上の転換価格を算定することが適当である。例えば、転換価格が転換請求可能期間到来日直前の一定日の株価とされる場合は、潜在株式調整後1株当たり当期純利益算定上の転換価格を当期首の株価とすることが考えられる。これは、転換仮定方式における転換の時点と転換価格の算定時点の整合性を重視したものである(図1参照)。
ワラントの行使価格等が期中に修正された場合の取扱い
- Q5-2.

- A
- (1) ワラントの行使価格が期中に修正された場合
ワラントの行使価格が期中に修正された場合は、潜在株式調整後1株当たり当期純利益算定上も、当該修正を反映して計算を行うことが適当であると考えられる。したがって、行使価格修正日前までの期間については期首の行使価格により普通株式増加数(会計基準第26項)を算定し、行使価格修正日以後の期間については修正後の行使価格により算定する (図2参照)。 
- (2) 転換証券の転換価格が期中に修正された場合
転換証券の転換価格が期中に修正された場合、(1)の考え方と同様に、潜在株式調整後1株当たり当期純利益算定上、転換価格の修正を反映して、転換価格修正日前までは当期首の転換価格を利用し、転換価格修正日以後は修正後の転換価格を利用することが適当であると考えられる。
なお、平成18年に改正された本実務対応報告(以下「平成18年改正実務対応報告」という。)では、転換請求可能期間中に株価の変動によって転換価格が修正される場合、Q5 (2)の転換請求可能期間が未到来の場合の考え方と同様に転換仮定方式における転換の時点と転換価格の算定時点の整合性を重視し、当期中に転換価格が修正されても、潜在株式調整後1株当たり当期純利益算定上の転換価格として、当期首における転換価格を利用することが適当と考えられていたが、平成22年に改正された本実務対応報告(以下「平成22年改正実務対応報告」という。)では、ワラントの行使価格が修正される場合を考慮し、(1)の場合と同様に取り扱うこととした。
1株当たり純資産額の算定
普通株式に係る純資産額がマイナスの場合の取扱い
適用時期等
- Q7.

- A 平成18年改正実務対応報告は、会社法施行日以後終了する中間連結会計期間及び中間会計期間に係る中間連結財務諸表及び中間財務諸表並びに連結会計年度及び事業年度に係る連結財務諸表及び財務諸表から適用する。
- なお、平成18年改正実務対応報告の適用前の1株当たり当期純利益及び潜在株式調整後1株当たり当期純利益並びに1株当たり純資産額の算定については、平成18年改正前の本実務対応報告による。
- 平成22年改正実務対応報告の適用時期は、平成22年改正の会計基準と同様とする。
- なお、平成22年改正実務対応報告の適用については、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として取り扱うことに留意する必要がある。
- 以 上

