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企業会計基準適用指針第31号時価の算定に関する会計基準の適用指針
目 的
- 1. 本適用指針は、企業会計基準第30号「時価の算定に関する会計基準」(以下「会計基準」という。)を適用する際の指針を定めることを目的とする。
適用指針
Ⅰ.範 囲
- 2. 本適用指針を適用する範囲は、会計基準における範囲と同様とする。
Ⅱ.用語の定義
- 3. 本適用指針における用語の定義は、会計基準における用語の定義と同様とする。
Ⅲ.時価の算定
1.時価の算定の前提
- 4. 時価は、会計基準第5項の定義に従ったうえで、次の前提に基づき算定する。
- (1) 資産又は負債の時価を算定するにあたっては、市場参加者が算定日において当該資産又は負債の時価を算定する際に考慮する当該資産又は負債の特性(例えば、資産の所在地、当該資産の売却に対する制約)を考慮する([設例5])。
- (2) 対象となる資産又は負債は、現在の市場の状況を踏まえ、算定日に資産の売却又は負債の移転を行う市場参加者間の秩序ある取引において交換されるものと仮定する。
- (3) 資産を売却する又は負債を移転する取引は、企業が算定日において利用できる主要な市場で行われるものと仮定する。ただし、主要な市場が存在しない場合には、企業が算定日において利用できる最も有利な市場で行われるものと仮定する([設例1])。
反証できる場合を除き、企業が取引を通常行っている市場が、主要な市場又は最も有利な市場と推定される。 - (4) 市場参加者が資産又は負債の時価を算定する際に用いる評価技法及びインプットを用いて、市場参加者が自らの経済的利益を最大化するように行動すると仮定する。
- (5) 時価の算定にあたって用いる主要な市場又は最も有利な市場における価格は、取得又は売却に要する付随費用について調整しないが、所在地が資産の特性である場合には、当該資産を現在の所在地から当該市場に移動させるために生じる輸送費用について調整する([設例1])。
- (6) 当初認識時の時価は取引価格と同一となることが多いが、次の状況では、取引価格が当初認識時の時価を表すものではない可能性がある([設例2])。
- ① 取引が関連当事者間の取引であること
- ② 取引が他から強制された取引であるか又は売手が当該取引価格を受け入れざるを得ないこと
- ③ 取引価格を表す単位が、時価を算定する資産又は負債の単位と異なること
- ④ 取引が行われた市場が、主要な市場又は最も有利な市場と異なること
2.時価の算定方法
(1)評価技法
- 5. 時価を算定するにあたって用いる評価技法(会計基準第8項)には、例えば、次の3つのアプローチがある。
- (1) マーケット・アプローチ
マーケット・アプローチとは、同一又は類似の資産又は負債に関する市場取引による価格等のインプットを用いる評価技法をいう。当該評価技法には、例えば、倍率法や主に債券の時価算定に用いられるマトリックス・プライシングが含まれる。 - (2) インカム・アプローチ
インカム・アプローチとは、利益やキャッシュ・フロー等の将来の金額に関する現在の市場の期待を割引現在価値で示す評価技法をいう。当該評価技法には、例えば、現在価値技法やオプション価格モデルが含まれる([設例7])。 - (3) コスト・アプローチ
コスト・アプローチとは、資産の用役能力を再調達するために現在必要な金額に基づく評価技法をいう。 - 6. 評価技法又はその適用を変更する場合(会計基準第10項)としては、時価の精度をより高めることとなる場合があるが、その状況としては、例えば、次のものがある。
- (1) 新しい市場が出現すること
- (2) 新しい情報が利用可能となること
- (3) これまで使用していた情報が利用できなくなること
- (4) 評価技法が向上すること
- (5) 市場の状況が変化すること
(2)インプット
(インプットの調整)
- 7. 時価を算定するにあたっては、市場における通常の日次取引高では売却できないほどに金融商品を大量に保有している場合であっても、当該金融商品を一度に売却する際に生じる価格の低下についての調整を行わない。当該金融商品が活発な市場で取引されている場合には、個々の資産又は負債の活発な市場における相場価格に保有数量を乗じたものを時価とする。
- 8. レベル1のインプット(会計基準第11項(1))を用いる場合を除き、他の企業の持分を支配するにあたって市場参加者である買手が支払う追加的な金額である支配プレミアム等、市場参加者が資産又は負債の時価を算定する際に考慮する特性を時価の算定に反映する。
(買気配と売気配)
- 9. 時価を算定する資産又は負債に買気配及び売気配がある場合、当該資産又は負債の状況を考慮し、買気配と売気配の間の適切な価格をインプットとして用いる。これは、実務上の簡便法として用いられる仲値等の利用を妨げるものではない。
(レベル1のインプット)
- 10. 対象となる資産又は負債について、レベル1のインプット(会計基準第11項(1))を決定するにあたっては、次の両方を評価する。
- (1) 当該資産又は負債に係る主要な市場、あるいは、主要な市場がない場合には、当該資産又は負債に係る最も有利な市場
- (2) 当該資産又は負債に関する取引について、時価の算定日に企業が主要な市場又は最も有利な市場において行うことができる場合の価格
- 11. レベル1のインプットに対する調整は、次の(1)から(3)の場合にのみ認められる。レベル1のインプットについて調整する場合には、当該調整により算定された時価は、レベル2の時価又はレベル3の時価に分類される。
- (1) 類似の資産又は負債を大量に保有しており、当該資産又は負債について活発な市場における相場価格が利用できるが、時価の算定日において個々の資産又は負債について相場価格を入手することが困難な場合(この場合、例えば、債券についてマトリックス・プライシングを用いることができる。)
- (2) 活発な市場における相場価格が時価の算定日時点の時価を表さない場合
- (3) 負債又は払込資本を増加させる金融商品について、活発な市場で資産として取引されている同一の金融商品の相場価格を用いて時価を算定する場合で、かつ、当該相場価格を調整する場合(第21項参照)
(レベル2のインプット)
- 12. レベル1のインプットでないが、資産又は負債の契約期間のほぼ全体を通じて観察可能であるインプットは、レベル2のインプット(会計基準第11項(2))となる。レベル2のインプットには、例えば、次のものが含まれる。
- (1) 活発な市場における類似の資産又は負債に関する相場価格
- (2) 活発でない市場における同一又は類似の資産又は負債に関する相場価格
- (3) 相場価格以外の観察可能なインプット
- (4) 相関関係等に基づき観察可能な市場データから得られる又は当該データに裏付けられるインプット
- 13. 時価の算定にとって重要なレベル2のインプットを調整するにあたって、重要な観察できないインプットを使用する場合には、算定される時価はレベル3の時価に分類される可能性がある。
(レベル3のインプット)
- 14. レベル3のインプット(会計基準第11項(3))を用いるにあたっては、市場参加者が資産又は負債の時価を算定する際に用いる仮定を反映する。この際、合理的に入手できる市場参加者の仮定に関する情報を考慮する。
- 15. レベル3のインプットを決定するにあたっては、その状況において入手できる最良の情報を用いる。この際、企業自身のデータを用いることができるが、合理的に入手できる情報により次のいずれかの事項が識別される場合には、当該企業自身のデータを調整する。
- (1) 他の市場参加者が異なるデータを用いること
- (2) 他の市場参加者が入手できない企業に固有の特性が存在すること
(3)資産又は負債の取引の数量又は頻度が低下している場合等
(資産又は負債の取引の数量又は頻度が著しく低下している場合)
- 16. 資産又は負債の取引の数量又は頻度が、当該資産又は負債に係る通常の市場における活動に比して著しく低下しているかどうか(会計基準第13項)については、入手できる情報に基づき、例えば、次の要因の重要性及び関連性を評価して判断する([設例8])。
- (1) 直近の取引が少ないこと
- (2) 相場価格が現在の情報に基づいていないこと
- (3) 相場価格が時期又は市場参加者間で著しく異なっていること
- (4) これまで資産又は負債の時価と高い相関があった指標が相関しなくなったこと
- (5) 企業の将来キャッシュ・フローの見積りと比較して、相場価格に織り込まれている流動性リスク・プレミアム等が著しく増加していること
- (6) 買気配と売気配の幅が著しく拡大していること
- (7) 同一又は類似の資産又は負債についての新規発行市場における取引の活動が著しく低下しているか又は当該市場がないこと
- (8) 公表されている情報がほとんどないこと
(秩序ある取引ではない取引の取扱い)
- 17. 資産又は負債の取引の数量又は頻度が当該資産又は負債に係る通常の市場における活動に比して著しく低下していると判断した場合、取引が秩序ある取引であるかどうかを判断し、取引が秩序ある取引であるかどうかに応じて、次のとおり時価の算定又はリスクに関する調整(会計基準第13項)を行う。
- (1) 取引が秩序ある取引ではない(例えば、強制された清算取引や投売り)と判断したときには、取引価格は他の入手できるインプットほどには考慮しない。
- (2) 取引が秩序ある取引であると判断したときには、時価の算定にあたって、取引価格を考慮するが、その考慮する程度は、例えば、次の状況により異なる。
- ① 当該取引の数量
- ② 当該取引を時価の算定対象となる資産又は負債に当てはめることが適切であるか
- ③ 当該取引が時価の算定日に近い時点で行われたか
- (3) 取引が秩序ある取引であるかどうかを判断するために十分な情報を入手できないときには、取引価格が時価を表さない可能性を踏まえたうえで、取引価格を考慮する。
(第三者から入手した相場価格の利用)
- 18. 取引相手の金融機関、ブローカー、情報ベンダー等、第三者から入手した相場価格が会計基準に従って算定されたものであると判断する場合には、当該価格を時価の算定に用いることができる。
- 資産又は負債の取引の数量又は頻度が当該資産又は負債に係る通常の市場における活動に比して著しく低下していると判断した場合には、第三者から入手した相場価格が秩序ある取引を反映した現在の情報に基づいているかどうか又は市場参加者の仮定を反映した評価技法に基づいているかどうかを評価して、当該価格を時価の算定に考慮する程度について判断する([設例8])。
(4)負債又は払込資本を増加させる金融商品の時価
- 19. 時価の算定日における市場参加者への負債又は払込資本を増加させる金融商品の移転(会計基準第14項)については、当該負債又は払込資本を増加させる金融商品の消滅が認識されることなく、市場参加者である譲受人が当該債務を履行する又は当該払込資本を増加させる金融商品に関する権利を引き継ぐことを仮定する。
- 20. 負債又は払込資本を増加させる金融商品の時価は、次を用いることにより算定する。
- (1) 活発な市場における相場価格([設例6])
- (2) (1)が入手できない場合、他の者が資産として保有する同一の項目に係る活発な市場における相場価格
- (3) (1)及び(2)が入手できない場合、他の観察可能なインプット(例えば、他の者が資産として保有する同一の項目に係る活発でない市場における相場価格)
- (4) (1)から(3)が入手できない場合、インカム・アプローチ([設例7])又はマーケット・アプローチ(第5項参照)
- 21. 他の者が資産として保有する同一又は類似の項目の相場価格を用いる場合(前項(2)及び(3)参照)には、負債又は払込資本を増加させる金融商品の時価の算定に反映できない当該資産に固有の要素(例えば、資産の相場価格に第三者の信用補完が反映されている場合の当該信用補完)を除外して、負債又は払込資本を増加させる金融商品の時価を算定する([設例6])。
- 22. 負債の時価の算定にあたっては、信用リスクの影響及び当該負債の履行見込みに影響を与える可能性のある要因を当該負債の時価の算定に反映する。
- 23. 要求払の特徴を有する金融負債(例えば、要求払預金)の時価については、要求払の額の支払が要求される可能性のある最も早い日から当該要求払の額を割り引いた金額を下回らない。
3.その他の取扱い
(第三者から入手した相場価格の利用)
- 24. 第18項の定めにかかわらず、総資産の大部分を金融資産が占め、かつ総負債の大部分を金融負債及び保険契約から生じる負債が占める企業集団又は企業(以下「企業集団等」という。)以外の企業集団等においては、第三者が客観的に信頼性のある者で企業集団等から独立した者であり、公表されているインプットの契約時からの推移と入手した相場価格との間に明らかな不整合はないと認められる場合で、かつ、レベル2の時価に属すると判断される場合には、次のデリバティブ取引については、当該第三者から入手した相場価格を時価とみなすことができる。
- (1) インプットである金利がその全期間にわたって一般に公表されており観察可能である同一通貨の固定金利と変動金利を交換する金利スワップ(いわゆるプレイン・バニラ・スワップ)
- (2) インプットである所定の通貨の先物為替相場がその全期間にわたって一般に公表されており観察可能である為替予約又は通貨スワップ
- なお、オプションを含むような取引については、利用されるボラティリティの種類によってはレベル3の時価に分類されると考えられるため、本項の適用の対象外とする。
(投資信託の時価の算定に関する取扱い)
投資信託財産が金融商品である投資信託の取扱い
- 24-2. 投資信託財産が金融商品である投資信託(契約型及び会社型の双方の形態を含む。以下同じ。)について、市場における取引価格が存在せず、かつ、解約又は買戻請求(以下合わせて「解約等」という。)に関して市場参加者からリスクの対価を求められるほどの重要な制限がない場合、基準価額を時価とする。ただし、会計基準における時価の定義を満たす、他の算定方法により算定された価格の利用を妨げるものではない。
- 24-3. 投資信託財産が金融商品である投資信託について、市場における取引価格が存在せず、かつ、解約等に関して市場参加者からリスクの対価を求められるほどの重要な制限がある場合、次のいずれかに該当するときは、基準価額を時価とみなすことができる。
- (1) 当該投資信託の財務諸表が国際財務報告基準(IFRS)又は米国会計基準に従い作成されている場合
- (2) 当該投資信託の財務諸表がIFRS及び米国会計基準以外の会計基準に従い作成され、当該会計基準における時価の算定に関する定めがIFRS第13号「公正価値測定」又はAccounting Standards Codification(米国財務会計基準審議会(FASB)による会計基準のコード化体系)のTopic 820「公正価値測定」と概ね同等であると判断される場合
- (3) 当該投資信託の投資信託財産について、一般社団法人投資信託協会が定める「投資信託財産の評価及び計理等に関する規則」に従い評価が行われている場合
- 24-4. 前項の「解約等に関して市場参加者からリスクの対価を求められるほどの重要な制限がある場合」における、その重要性の判断は、仮にその解約等に関する制限により基準価額を調整する際の金額的重要性により行う。例えば、次のような制限のみがある場合はこれに該当しない。
- (1) 条件が満たされる蓋然性が低い条件付きの解約制限(金融商品取引所の取引停止などやむを得ない事情がある場合にのみ、一部解約等を制限する場合など)
- (2) 解約に応じる投資信託委託会社の事務手続の便宜のための最低解約額の設定
- (3) 解約可能日が定期的に設定されており、その間隔が短い(例えば、1か月程度)もの
- 24-5. また、海外の法令に基づいて設定された投資信託(以下「海外で設定された投資信託」という。)に対して第24-3項の取扱いを適用する際、時価の算定日と基準価額の算定日との間の期間が短い(通常は1か月程度と考えられるが、投資信託財産の流動性などの特性も考慮する。)場合に限り、基準価額を時価とみなすことができる。
- 24-6. 第24-2項の取扱いを適用し、基準価額を時価とする場合、解約等に関して市場参加者からリスクの対価を求められるほどの重要な制限がなく、当該基準価額により解約等ができることで、第三者から入手した相場価格が会計基準に従って算定されたものであると判断することができる(第18項参照)。
- また、第24-3項の取扱いを適用し、基準価額を時価とみなす場合、第24-3項(1)から(3)のいずれかに該当することで、第三者から入手した相場価格が会計基準に従って算定されたものであるとみなすことができる(第18項参照)。
- 24-7. 本適用指針第24-3項の取扱いを適用した投資信託については、企業会計基準適用指針第19号「金融商品の時価等の開示に関する適用指針」(以下「金融商品時価開示適用指針」という。)第4項に定める事項を他の金融商品と合わせて注記したうえで、当該投資信託の貸借対照表計上額の合計額が重要性に乏しい場合を除き、本適用指針第24-3項の取扱いを適用した投資信託が含まれている旨を併せて注記する。
- また、金融商品時価開示適用指針第5-2項に定める事項を注記しないこととし、その場合、他の金融商品における金融商品時価開示適用指針第5-2項(1)の注記に併せて、次の事項を注記する。なお、連結財務諸表において注記している場合には、個別財務諸表において記載することを要しない。
- (1) 本適用指針第24-3項の取扱いを適用しており、金融商品時価開示適用指針第5-2項に定める事項を注記していない旨
- (2) 本適用指針第24-3項の取扱いを適用した投資信託の貸借対照表計上額の合計額
- (3) (2)の合計額が重要性に乏しい場合を除き、(2)の期首残高から期末残高への調整表
調整表を作成するにあたっては、以下を区別して示す。 - ① 当期の損益に計上した額及びその損益計算書における科目
- ② 当期のその他の包括利益に計上した額及びその包括利益計算書における科目
- ③ 購入、売却及び償還のそれぞれの額(ただし、これらの額の純額を示すこともできる。)
- ④ これまで本適用指針第24-3項の取扱いを適用しておらず、当期に本適用指針第24-3項の取扱いを適用することとした額及びこれまで本適用指針第24-3項の取扱いを適用していたものの、当期に本適用指針第24-3項の取扱いを適用しないこととした額
- また、①に定める当期の損益に計上した額のうち貸借対照表日において保有する投資信託の評価損益及びその損益計算書における科目を注記する。
- (4) (2)の合計額が重要性に乏しい場合を除き、(2)の時価の算定日における解約等に関する制限の内容ごとの内訳
解約等に関する制限の内容が異なる投資信託を複数保有している場合、本適用指針第24−3項の取扱いを適用するとした判断の前提となった解約等に関する制限の内容が類似する投資信託ごとに集計したうえで、当該投資信託の貸借対照表計上額の合計額に重要性があるものを対象として、解約等に関する制限の主な内容及び貸借対照表計上額の合計額を注記することができる。
投資信託財産が不動産である投資信託の取扱い
- 24-8. 投資信託財産が不動産である投資信託(契約型及び会社型の双方の形態を含む。以下同じ。)について、市場における取引価格が存在せず、かつ、解約等に関して市場参加者からリスクの対価を求められるほどの重要な制限がない場合、基準価額を時価とする。ただし、会計基準における時価の定義を満たす、他の算定方法により算定された価格の利用を妨げるものではない。
- 24-9. 投資信託財産が不動産である投資信託について、市場における取引価格が存在せず、かつ、解約等に関して市場参加者からリスクの対価を求められるほどの重要な制限がある場合、基準価額を時価とみなすことができる。なお、時価の算定日における基準価額がない場合は、入手し得る直近の基準価額を使用する。
- 24-10. 前項の「解約等に関して市場参加者からリスクの対価を求められるほどの重要な制限がある場合」における、その重要性の判断は、仮にその解約等に関する制限により基準価額を調整する際の金額的重要性により行う。また、これに該当しない例示は投資信託財産が金融商品である投資信託の第24-4項と同様である。
- 24-11. 第24-8項の取扱いを適用し、基準価額を時価とする場合、解約等に関して市場参加者からリスクの対価を求められるほどの重要な制限がなく、当該基準価額により解約等ができることで、第三者から入手した相場価格が会計基準に従って算定されたものであると判断することができる(第18項参照)。
- また、第24-9項の取扱いを適用し、基準価額を時価とみなす場合、第三者から入手した相場価格が会計基準に従って算定されたものであるとの判断は要しない(第18項参照)。
- 24-12. 本適用指針第24-9項の取扱いを適用した投資信託については、金融商品時価開示適用指針第4項に定める事項を他の金融商品と合わせて注記したうえで、当該投資信託の貸借対照表計上額の合計額が重要性に乏しい場合を除き、本適用指針第24-9項の取扱いを適用した投資信託が含まれている旨を併せて注記する。
- また、金融商品時価開示適用指針第5-2項に定める事項を注記しないこととし、その場合、他の金融商品における金融商品時価開示適用指針第5-2項(1)の注記に併せて、次の事項を注記する。なお、連結財務諸表において注記している場合には、個別財務諸表において記載することを要しない。
- (1) 本適用指針第24-9項の取扱いを適用しており、金融商品時価開示適用指針第5-2項に定める事項を注記していない旨
- (2) 本適用指針第24-9項の取扱いを適用した投資信託の貸借対照表計上額の合計額
- (3) (2)の合計額が重要性に乏しい場合を除き、(2)の期首残高から期末残高への調整表
調整表を作成するにあたっては、本適用指針第24-7項(3)と同様とし、「本適用指針第24-3項」は「本適用指針第24-9項」と読み替えるものとする。
投資信託財産が金融商品である投資信託及び投資信託財産が不動産である投資信託の共通の取扱い
- 24-13. 投資信託財産が金融商品と不動産の両方を含む場合、投資信託財産が金融商品である投資信託又は投資信託財産が不動産である投資信託のどちらの取扱いを適用するかは、投資信託財産に含まれる主要な資産等によって判断する。
- 24-14. 投資信託財産が不動産の信託に係る受益権である場合は、信託財産たる不動産そのものが投資信託財産であるのと同様に取り扱う。
- 24-15. 投資信託の解約等を行う際に投資家が負担する信託財産留保額は、投資信託の時価の算定上の調整項目に含めない。
(貸借対照表に持分相当額を純額で計上する組合等への出資の時価の注記に関する取扱い)
- 24-16. 貸借対照表に持分相当額を純額で計上する組合等への出資(移管指針第9号「金融商品会計に関する実務指針」(以下「金融商品実務指針」という。)第132項及び第308項)については、金融商品時価開示適用指針第4項(1)に定める事項の注記を要しないこととし、その場合、他の金融商品における金融商品時価開示適用指針第4項(1)の注記に併せて、次の事項を注記する。なお、連結財務諸表において注記している場合には、個別財務諸表において記載することを要しない。
- (1) 本項の取扱いを適用しており、金融商品時価開示適用指針第4項(1)に定める事項を注記していない旨
- (2) 本項の取扱いを適用した組合等への出資の貸借対照表計上額の合計額
Ⅳ.適用時期等
1.適用時期
- 25. 2019年公表の本適用指針(以下「2019年適用指針」という。)の適用時期等は、会計基準と同様とする。
- 25-2. 2021年改正の本適用指針(以下「2021年改正適用指針」という。)は、2022年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用する。
- 25-3. 前項の定めにかかわらず、2021年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から2021年改正適用指針を適用することができる。また、2022年3月31日以後終了する連結会計年度及び事業年度における年度末に係る連結財務諸表及び個別財務諸表から2021年改正適用指針を適用することができる。
2.経過措置
- 26. (削 除)
- 27. (削 除)
- 27-2. 2021年改正適用指針の適用初年度においては、2021年改正適用指針が定める新たな会計方針を将来にわたって適用する。この場合、その変更の内容について注記する。
- 27-3. 2019年適用指針第26項の経過措置を適用し、金融商品時価開示適用指針第5-2項の注記をしていなかった投資信託に関する金融商品時価開示適用指針第5-2項の注記事項については、2021年改正適用指針の適用初年度において、連結財務諸表及び個別財務諸表に併せて表示される前連結会計年度及び前事業年度に関する注記(以下合わせて「比較情報」という。)を要しない。
- 27-4. 2021年改正適用指針を年度末に係る連結財務諸表及び個別財務諸表から適用する場合には、2021年改正適用指針の適用初年度における本適用指針第24-7項(3)及び第24-12項(3)の注記並びに2019年適用指針第26項の経過措置を適用し、金融商品時価開示適用指針第5-2項の注記をしていなかった投資信託で、本適用指針第24-3項及び第24-9項の取扱いを適用しないものに関する金融商品時価開示適用指針第5-2項(4)②の注記を省略することができる。
- また、この場合、適用初年度の翌年度においては、本適用指針第24-7項(3)及び第24-12項(3)の比較情報並びに2019年適用指針第26項の経過措置を適用し、金融商品時価開示適用指針第5-2項の注記をしていなかった投資信託で、本適用指針第24-3項及び第24-9項の取扱いを適用しないものに関する金融商品時価開示適用指針第5-2項(4)②の比較情報は要しない。
Ⅴ.議 決
- 28. 2019年適用指針は、第411回企業会計基準委員会に出席した委員14名全員の賛成により承認された。
- 28-2. 2021年改正適用指針は、第459回企業会計基準委員会に出席した委員14名全員の賛成により承認された。
結論の背景
経 緯
- 29. 当委員会は、時価の算定に関する会計基準を定めるため、2019年7月に会計基準を公表し、併せて2019年適用指針を公表した。
- 29-2. 日本公認会計士協会における2019年7月4日の改正の直前の金融商品実務指針第62項の取扱いでは、投資信託の時価は、取引所の終値若しくは気配値又は業界団体が公表する基準価格が存在する場合には当該価格とし、当該価格が存在しない場合には投資信託委託会社が公表する基準価格、ブローカーから入手する評価価格又は情報ベンダーから入手する評価価格とすることとされていた。2019年適用指針においては、投資信託の時価の算定については、関係者との協議等に一定の期間が必要と考えられるため、会計基準公表後概ね1年をかけて検討を行うこととした。
- 当委員会では、投資信託の時価の算定について、投資信託財産が会計基準の対象に含まれる金融商品である投資信託及び投資信託財産が会計基準の対象に含まれない不動産である投資信託に区分したうえで審議を行い、2021年1月に企業会計基準適用指針公開草案第71号(企業会計基準適用指針第31号の改正案)「時価の算定に関する会計基準の適用指針(案)」(以下「2021年公開草案」という。)を公表し広く意見を求めた。2021年改正適用指針は、2021年公開草案に対して寄せられた意見を踏まえて検討を行い、2021年公開草案の内容を一部修正したうえで公表に至ったものである。
- また、投資信託の時価の算定を検討するにあたっては、現状では多様な取扱いがなされている市場価格のない投資信託財産が不動産である投資信託の貸借対照表価額を時価に統一するか否かについても検討を行っている(第49-9項及び第49-10項参照)。
- 29-3. また、貸借対照表に持分相当額を純額で計上する組合等への出資については、時価を把握することが極めて困難と認められることを理由に時価の注記を行っていないケースが従来みられているが、2019年適用指針においては、一定の検討を要するため、前項の投資信託に関する取扱いを改正する際に取扱いを明らかにすることとしていた。
- 当委員会においては、貸借対照表に持分相当額を純額で計上する組合等への出資の時価の注記に関する取扱いについて審議を行い、2021年公開草案を公表し広く意見を求めた。2021年改正適用指針は、2021年公開草案に対して寄せられた意見を踏まえて検討を行い、公表に至ったものである。
Ⅰ.時価の算定
1.時価の算定の前提
- 30. 第4項(3)では、資産を売却する又は負債を移転する取引は、企業が算定日において利用できる主要な市場又は最も有利な市場で行われるものと仮定することとしているが、次の点について留意することが必要であると考えられる。
- (1) 主要な市場と最も有利な市場は同一であることが多いが、資産又は負債に係る主要な市場がある場合には、他の市場における価格が有利となる可能性があるとしても、当該主要な市場における価格を表すように時価を算定する。
- (2) 主要な市場は、対象となる資産又は負債についての取引の数量又は頻度に基づいて判断するものであり、特定の市場における企業の取引の数量又は頻度に基づいて判断するものではない。
- (3) 企業が利用できる主要な市場又は最も有利な市場は、企業自身の判断に基づき決定するため、異なる活動を行う企業間では異なる可能性があり、同様に、市場参加者も企業間で異なる可能性がある。
- (4) 主要な市場又は最も有利な市場について、企業が利用可能である市場でなければならないが、当該市場での価格に基づいて時価を算定できるための条件として、算定日において特定の資産の売却又は特定の負債の移転を行えることは必要ではない。
- 31. 第4項(4)では、市場参加者が資産又は負債の時価を算定する際に用いる評価技法及びインプットを用いて、市場参加者が自らの経済的利益を最大化するように行動すると仮定することとしているが、次の点について留意することが必要であると考えられる。
- (1) 算定日現在の資産の売却又は負債の移転に係る相場価格の情報を提供する市場がない場合でも、時価の算定にあたっては、当該資産又は負債を保有する市場参加者の観点を考慮して、当該算定日に生じる取引を仮定する。
- (2) 市場参加者を想定するにあたっては、具体的な市場参加者を特定する必要はないが、次の要因を考慮して想定する。
- ① 対象となる資産又は負債
- ② ①の資産又は負債に関する主要な市場又は最も有利な市場
- ③ ②の市場で企業が取引を行う市場参加者
- 32. 時価の算定にあたって用いる主要な市場又は最も有利な市場における価格は、取得又は売却に要する付随費用について調整しないとしている(第4項(5)参照)。これは、取得又は売却に要する付随費用は、資産又は負債の特性ではなく、取引に固有のものであり、企業の取引の形態により異なるためである。
- ただし、例えば、現物商品(コモディティ)について、その所在地が資産の特性である場合には、資産の特性(資産の所在地)を変化させる輸送費用について、主要な市場又は最も有利な市場における価格を調整することに留意する必要がある。
- 33. 会計基準第31項(2)において、時価は出口価格であるとしている。取引価格は、交換取引において資産を取得するために支払った価格又は負債を引き受けるために受け取った価格であり入口価格であるため、必ずしも時価とは同一とはならない。もっとも、取引日において資産を取得する取引が当該資産が売却される市場で行われる場合には、当初認識時の時価が取引価格と同一となることが多い。そのため、企業は、取引及び資産又は負債に固有の要因を考慮して、当初認識時の時価が取引価格と同一となるかどうかを判断する必要があると考えられる(第4項(6)参照)。
2.時価の算定方法
(1)評価技法
(当初認識後の補正)
- 34. 取引価格が当初認識時の時価であり、当初認識より後における時価を算定するために観察できないインプットを使用する評価技法(第5項参照)が用いられる場合には、当初認識時において評価技法を用いた結果が取引価格と同一となるように、評価技法を補正する必要があると考えられる。
(現在価値技法)
- 35. インカム・アプローチ(第5項(2)参照)には、現在価値技法が含まれる。現在価値技法にはさまざまな方法があるが、どのような方法を用いるかは、対象となる資産又は負債に固有の事実及び状況や十分なデータが利用できるかどうかによる。また、時価の算定に現在価値技法を用いるにあたっては、次の点について留意することが必要であると考えられる。
- (1) 市場参加者の観点から算定日における次の要素のすべてを考慮する。
- ① 対象となる資産又は負債の将来キャッシュ・フローの見積り
- ② キャッシュ・フローに固有の不確実性を表すキャッシュ・フローの金額及び時期の変動の可能性についての予想
- ③ 貨幣の時間価値(信用リスクフリーレート)
- ④ キャッシュ・フローに固有の不確実性を負担するための対価(リスク・プレミアム)
- ⑤ その状況において市場参加者が考慮に入れる他の要素
- ⑥ 負債については、負債の不履行リスク
- (2) 現在価値技法の使用における一般的な原則は、次のとおりである。
- ① キャッシュ・フロー及び割引率は、市場参加者が資産及び負債の時価を算定する際に用いる仮定を反映する。
- ② キャッシュ・フロー及び割引率は、対象となる資産又は負債に起因する要因のみを考慮する。
- ③ リスク要因の影響を二重に計算しないように又はリスク要因の影響が除かれないように、割引率はキャッシュ・フローに固有の仮定と整合する仮定を反映する。
例えば、貸付金のキャッシュ・フローとして契約上のキャッシュ・フローを用いる場合には、割引率は将来の債務不履行に関する予想を反映する(割引率調整法)。一方、期待キャッシュ・フローを用いる場合には、当該期待キャッシュ・フローに将来の債務不履行に関する不確実性に係る仮定が既に反映されているため、割引率調整法と同じ割引率ではなく、当該期待キャッシュ・フローに固有のリスクと整合的な割引率を用いる(期待現在価値法)。 - ④ キャッシュ・フロー及び割引率に関する仮定は、相互に整合的なものとする。
例えば、物価上昇の影響を含む名目キャッシュ・フローは、物価上昇の影響を含んだ割引率で割り引き、物価上昇の影響を除く実質キャッシュ・フローは、物価上昇の影響を除く割引率で割り引く。また、同様に、税引後のキャッシュ・フローは税引後の割引率で割り引き、税引前のキャッシュ・フローは、当該キャッシュ・フローと整合する割引率で割り引く。 - ⑤ 割引率は、キャッシュ・フローが表示される通貨の基礎的な経済的要因と整合したものとする。
- (3) 現在価値技法においては、キャッシュ・フローの見積りに不確実性が存在するため、市場参加者がキャッシュ・フローに固有の不確実性に対する対価として要求する金額を反映するリスク・プレミアムを含める。適切なリスク・プレミアムの決定に関する困難さの度合いのみでは、リスク・プレミアムを含めない十分な根拠とはならない。
- (4) 現在価値技法には、リスクの調整方法及び用いるキャッシュ・フローの種類により、例えば、次の方法がある。
- ① 割引率調整法
リスク調整後の割引率と、契約上の若しくは約束された、又は最も可能性の高いキャッシュ・フローを用いる方法([設例3]及び[設例8]) - ② 期待現在価値法(確実性等価法)
リスク調整後の期待キャッシュ・フローと信用リスクフリーレートを用いる方法([設例4]) - ③ 期待現在価値法(リスク調整法)
リスク調整を行わない期待キャッシュ・フローと、市場参加者が要求するリスク・プレミアムを含めるように調整した割引率(①で用いる割引率とは異なる。)を用いる方法([設例4]) - (5) (4)①の割引率調整法は、発生し得ると考えられる単一のキャッシュ・フローを用いる方法であり、当該キャッシュ・フローは特定の事象の発生を条件とする(例えば、債務者の債務不履行が発生しないことを条件とする。)。
また、割引率調整法で用いる割引率は、市場で取引されている類似の資産又は負債についての観察可能な利回りから算出する。当該割引率の算出にあたって、資産又は負債が類似のものかどうかを判断する際には、次の要因を考慮する。 - ① キャッシュ・フローの性質(例えば、キャッシュ・フローが契約上のものであるのか、経済状況の変化に同様に反応するのか等)
- ② その他の要因(例えば、信用度、担保、デュレーション、制限条項、流動性等)
なお、単一の類似の資産又は負債が、時価の算定対象となる資産又は負債のキャッシュ・フローに固有のリスクを適切に反映していない場合には、複数の類似の資産又は負債に関するデータについて、信用リスクのないイールド・カーブを用いて割引率を算出することができる可能性がある([設例3])。 - (6) (4)②及び③の期待現在価値法は、将来キャッシュ・フローの見積りに期待値(発生し得ると考えられる金額を確率で加重平均した金額)を用いる方法であり、当該キャッシュ・フローは、発生し得るすべてのキャッシュ・フローが確率加重されているものであるため、特定の事象の発生を条件とするものではない。
その方法としては、次の確実性等価法とリスク調整法があるが、理論上は同じ算定結果となるものであり、時価の算定対象となる資産又は負債に固有の事実と状況及び入手できる情報等を勘案して、いずれかの方法を選択する。 - ① 確実性等価法は、特定の資産又は負債に固有のものではない市場におけるリスクを期待キャッシュ・フローに反映するように調整し、そのリスク調整後の期待キャッシュ・フロー(確実性等価キャッシュ・フロー)を信用リスクフリーレートで割り引くことにより、現在価値を算定する方法である。確実性等価キャッシュ・フローは、期待キャッシュ・フローと交換することが市場参加者にとって無差別となるような確実に得られるキャッシュ・フローである([設例4])。
- ② リスク調整法は、特定の資産又は負債に固有のものではない市場におけるリスクを信用リスクフリーレートに加算して割引率を算定し、将来キャッシュ・フローの期待値を当該割引率で割り引くことにより、現在価値を算定する方法である。当該割引率は、リスク資産の価格算定モデル(例えば、資本資産価格モデル(CAPM))を用いて見積ることができる。なお、当該割引率は、特定の事象の発生を条件とするキャッシュ・フローに対応する割引率ではないため、割引率調整法における特定の事象の発生を条件とするキャッシュ・フローに対応する割引率より、通常、小さくなる([設例4])。
(2)インプット
(インプットの調整)
- 36. 時価を算定するにあたっては、資産又は負債の特性に基づきインプットの調整を行うかどうかを考慮する。その際には、次の点に留意することが必要であると考えられる。
- (1) 当該調整は、対象となる資産又は負債に適用される会計処理又は開示における単位(会計基準第6項)と整合的なものとする。
- (2) 資産又は負債の保有規模について、資産又は負債に固有の特性(例えば、支配プレミアム(第8項参照))として時価に反映するかどうかを考慮する。
- (3) 資産又は負債の保有規模について、企業による保有の特性(例えば、市場における通常の日次取引高では売却できないほどに金融商品を大量に保有している状況(第7項参照))は時価に反映しない。
(レベル2のインプット)
- 37. レベル2のインプット(第12項参照)としては、例えば、次のものがある。
- (1) 全期間にわたり観察可能なスワップ・レート
スワップ・レートに基づく固定受・変動払の金利スワップに関して、スワップ・レートが金利スワップのほぼ全期間にわたり一般的に公表されている間隔で観察可能である場合、当該スワップ・レートはレベル2のインプットとなる。 - (2) ほぼ全期間にわたり観察可能な外貨建イールド・カーブに基づくスワップ・レート
外貨建イールド・カーブに基づく固定受・変動払の金利スワップに関して、外貨建イールド・カーブに基づくスワップ・レートが金利スワップのほぼ全期間にわたり一般的に公表されている間隔で観察可能である場合、当該外貨建イールド・カーブに基づくスワップ・レートはレベル2のインプットとなる。
例えば、金利スワップの期間が10年であり、9年目までのスワップ・レートは一般的に公表されている間隔で観察可能であるが、10年目のスワップ・レートについてはイールド・カーブから合理的に推定することにより算出している場合に、当該推定が金利スワップ全体の時価に対して重要性に乏しいときが該当する。 - (3) 観察可能な市場データに裏付けられるインプライド・ボラティリティ
3年物の株式オプションに関して、当該株式に係る1年物と2年物の株式オプションの価格が観察可能であり、かつ、推定により算出した3年物の株式オプションのインプライド・ボラティリティが当該オプションのほぼ全期間について観察可能な市場データの裏付けがある場合、3年目までの推定によるインプライド・ボラティリティはレベル2のインプットとなる。
具体的には、当該インプライド・ボラティリティは、1年物及び2年物の株式オプションのインプライド・ボラティリティとの相関関係があることを前提として、1年物及び2年物の株式オプションのインプライド・ボラティリティからの推定によって算出され、比較可能な類似企業の3年物の株式オプションのインプライド・ボラティリティによって裏付けられる場合である。
(レベル3のインプット)
- 38. レベル3のインプットを用いるにあたっては、市場参加者が資産又は負債の時価を算定する際に用いる仮定を反映するとしている(第14項参照)。当該仮定には、特定の評価技法に固有のリスク及びインプットに固有のリスクが含まれると考えられる。
例えば、資産又は負債の取引の数量又は頻度が著しく低下し、取引価格又は相場価格が時価を表していないと判断した場合等、時価の算定に重要な不確実性が存在する場合には、リスクに関する調整を時価の算定に反映することが必要となる可能性がある。 - 39. レベル3のインプット(第14項参照)としては、例えば、次のものがある。
- (1) 観察可能な市場データによる裏付けがないスワップ・レート
長期の通貨スワップに関して、各通貨のイールド・カーブからスワップ・レートを算出しているが、所定の通貨のイールド・カーブが、当該通貨スワップのほぼ全期間にわたり一般的に公表されている間隔で観察可能な市場データによる裏付けがない場合、当該スワップ・レートはレベル3のインプットとなる。 - (2) ヒストリカル・ボラティリティ
3年物の株式オプションに関して、過去の株価から算出されたヒストリカル・ボラティリティはレベル3のインプットとなる。通常、ヒストリカル・ボラティリティは、オプションの価格に利用できる唯一の情報であるとしても、将来のボラティリティに対する市場参加者の現在の期待を表すものではない。 - (3) 観察可能な市場データによる裏付けがない価格調整
金利スワップに関して、当該スワップについての第三者から提供された取引可能ではない価格に対する調整が、観察可能な市場データによる裏付けのないデータを用いて決定された場合、当該価格調整はレベル3のインプットとなる。
(3)資産又は負債の取引の数量又は頻度が低下している場合等
(資産又は負債の取引の数量又は頻度が著しく低下している場合)
- 40. 資産又は負債の取引の数量又は頻度が当該資産又は負債に係る通常の市場における活動に比して著しく低下している場合には、当該資産又は負債の時価の算定に影響を及ぼす可能性がある。そのため、入手できる情報に基づき、要因の重要性及び関連性を評価して判断することとした(第16項参照)。
(秩序ある取引ではない取引の取扱い)
- 41. 資産又は負債の取引の数量又は頻度が当該資産又は負債に係る通常の市場における活動に比して著しく低下している場合、取引が秩序ある取引かどうかを判断するとしている(第17項参照)。そうした判断には困難が伴うが、そのような状況において、当該市場におけるすべての取引が秩序ある取引ではない(すなわち、強制的な清算取引又は投売り)と結論付けることは適切ではないことに留意する必要がある。取引が秩序ある取引かどうかを判断するにあたっては、例えば、次の秩序ある取引ではないことを示す状況を考慮することが考えられる。
- (1) 現在の市場環境の下で、当該取引に関して通常かつ慣習的な市場における活動ができるように、時価の算定日以前の一定期間について取引が市場に十分さらされていないこと
- (2) 通常かつ慣習的な市場における活動の期間があったが、売手が一人の買手としか交渉していないこと
- (3) 売手が破綻又は破綻寸前であること
- (4) 売手が規制上又は法的な要請から売却せざるを得ないこと
- (5) 直近の同一又は類似の取引と比較して、取引価格が異常値であること
- 42. 取引が秩序ある取引であるかどうかを判断するために十分な情報を入手できているかどうかに関して(第17項(3)参照)、企業が取引当事者である場合、当該取引が秩序ある取引かどうかを判断するための十分な情報を有するとみなすことが適当と考えられる。
(第三者から入手した相場価格の利用)
- 43. 第三者から入手した相場価格が会計基準に従って算定されたものであると判断する場合には、当該価格を時価の算定に用いることができるとしている(第18項参照)。当該判断にあたっては、例えば、企業は次のような手続を実施することが考えられる。なお、次の手続は例示であり、状況に応じて選択して実施する。また、記載したもの以外の手続によることも考え得る。
- (1) 当該第三者から入手した価格と企業が計算した推定値とを比較し検討する。
- (2) 他の第三者から会計基準に従って算定がなされていると期待される価格を入手できる場合、当該他の第三者から入手した価格と当該第三者から入手した価格とを比較し検討する。
- (3) 当該第三者が時価を算定する過程で、会計基準に従った算定(インプットが算定日の市場の状況を表しているか、観察可能なものが優先して利用されているか、また、評価技法がそのインプットを十分に利用できるものであるかなど)がなされているかを確認する。
- (4) 企業が保有しているかどうかにかかわらず、会計基準に従って算定されている類似銘柄(同じアセットクラスであり、かつ同格付銘柄など)の価格と比較する。
- (5) 過去に会計基準に従って算定されていると確認した当該金融商品の価格の時系列推移の分析など商品の性質に合わせた分析を行う。
- 44. 資産又は負債の取引の数量又は頻度が当該資産又は負債に係る通常の市場における活動に比して著しく低下していると判断した場合には、第三者から入手した相場価格を時価の算定に考慮する程度について判断するとしている(第18項参照)。その際には、当該相場価格の性質(例えば、当該相場価格が参考価格であるのか又は当該第三者と取引可能な価格であるのか)を考慮する。例えば、第三者から入手した相場価格が、当該第三者と取引可能な価格である場合は、参考価格である場合に比べて時価の算定に考慮する程度を高くすることに留意する必要があると考えられる。
(4)負債又は払込資本を増加させる金融商品の時価
- 45. 負債の時価の算定にあたっては、当該負債の時価を算定する単位に基づき、負債の不履行リスクの影響を反映するとしている(会計基準第15項及び本適用指針第22項参照)。第三者の信用補完(例えば、第三者による債務保証)が付された負債であって、当該第三者の信用補完が負債とは別に処理される場合には、負債の時価の算定には、保証人である第三者の信用リスクではなく、企業自身の信用リスクを考慮することに留意する(第21項参照)。
- 46. 負債又は払込資本を増加させる金融商品の時価を算定するにあたっては、負債又は払込資本を増加させる金融商品の移転に関する制約の影響について、次の点に留意することが必要であると考えられる。
- (1) 負債又は払込資本を増加させる金融商品の移転に関する制約の影響は、通常、時価の算定におけるインプットに反映されているため、当該制約の影響についてインプットを調整しない。
例えば、負債の取引日において、移転に関する制約が当該負債に含まれていることを認識したうえで、債権者と債務者の双方が当該負債の取引価格に合意した場合、移転に関する制約の影響は取引価格に反映されているため、追加的な調整は行わない。これは、その後の時価の算定日においても同様である。 - (2) ただし、移転に関する制約が時価の算定におけるインプットに反映されていないことを認識している場合には、当該制約の影響についてインプットを調整する。
- 47. 要求払の特徴を有する金融負債の時価については、多くの場合、観察される市場価格は債権者からの要求に応じて直ちに支払われる金額であり、支払が要求される可能性のある最も早い日から当該支払われる金額を割り引いた金額を下回らない(第23項参照)。これにより、例えば、時価は預金額を当該預金が残存すると企業が予想する期間にわたって割り引いた金額にはなり得ない。
3.その他の取扱い
- 48. 本適用指針では、これまで我が国で行われてきた実務等に配慮し、財務諸表間の比較可能性を大きく損なわせない範囲で、個別項目に対するその他の取扱いを定めている。
(第三者から入手した相場価格の利用)
- 49. 総資産の大部分を金融資産が占め、かつ総負債の大部分を金融負債及び保険契約から生じる負債が占める企業とは、銀行、保険会社、証券会社、ノンバンク等が想定される。これら以外の企業集団等においては、実務におけるコストと便益を比較衡量した結果、時価の算定の不確実性が相当程度低いと判断される特定のデリバティブ取引については、第三者から提供された価格を時価とみなすことができるとするその他の取扱いを定めることとした(第24項参照)。
(投資信託の時価の算定に関する取扱い)
投資信託財産が金融商品である投資信託の取扱い
- 49-2. 会計基準第5項に定める時価の定義により、金融商品取引所(それに類する外国の法令に基づき設立されたものを含む。)に上場しており、その市場が主要な市場となる投資信託で、その市場における取引価格が存在する場合、当該価格が時価になると考えられる。なお、ここでの「市場における取引価格」は当該金融商品取引所における取引価格を意図しており、仮に相対市場における取引価格が存在する場合でも、「市場における取引価格」には該当しない。
- また、市場における取引価格が存在せず、一般に基準価額による解約等が主要な清算手段となっている投資信託については、投資信託の購入及び解約等の際の基準となる基準価額を出口価格として取り扱うことができると考え、投資信託について、市場における取引価格が存在せず、かつ、解約等に関して市場参加者からリスクの対価を求められるほどの重要な制限がない場合、基準価額も時価となることを示した(本適用指針第24-2項参照)。
- なお、本適用指針第29-2項に記載の金融商品実務指針第62項においては、投資信託の定義は定められておらず、契約型又は会社型のいずれの形態を指すのかが必ずしも明らかではなかったが、本適用指針では両者を含むことを明らかにした。また、基準価格という用語を、一般社団法人投資信託協会が定める規則に合わせ基準価額という用語に変更しているが、内容の変更を意図するものではない。
- 49-3. 一方、市場における取引価格が存在せず、かつ、解約等に関して市場参加者からリスクの対価を求められるほどの重要な制限がある場合は、第4項(1)に定める時価を算定する際に考慮する資産の特性に該当し、投資信託財産の評価額の合計額を投資信託の総口数で割った一口当たりの価額である基準価額が時価となるわけではなく、基準価額を基礎として時価を算定する場合には何らかの調整が必要になるものと考えられる。
- ここで、基準価額に対して調整を行うことを求めた場合、投資信託が業種を問わず広く保有されていることを踏まえると、その影響も広範囲にわたることが予想され、実務的な対応に困難を伴うことが想定される。
- そのため、投資信託財産が金融商品である投資信託の解約等に関して市場参加者からリスクの対価を求められるほどの重要な制限がある場合、一定の要件に該当するときは、基準価額を時価とみなすことができるとした(第24-3項参照)。なお、当該要件について、投資信託を構成する個々の投資信託財産の評価において、会計基準と整合する評価基準が用いられているかを確認することを求めると、適用の困難さが生じると考えられるため、第24-3項(1)及び(2)においては、当該投資信託の財務諸表が、IFRS、米国会計基準又はこれらの基準における時価の算定に関する定めと概ね同等と判断される会計基準に従い作成されているかを確認すればよいこととした。
- 49-4. ここで、会計基準の公表に伴う2019年改正の企業会計基準第10号「金融商品に関する会計基準」(以下「金融商品会計基準」という。)により、市場価格のない株式等を除き、時価を把握することが極めて困難と認められる有価証券の定めを削除したことに関連し、2021年公開草案に寄せられたコメントとして、投資信託財産が市場価格のない株式等である投資信託について、市場価格のない株式等を直接保有している場合と、投資信託財産として間接的に保有している場合とで貸借対照表価額が異なることとなることに懸念する意見が聞かれた。
- この点、一般に、投資信託は投資家から集めた資金の運用を専門家に任せ、運用成果を投資家に分配する金融商品であり、その商品特性を踏まえると、事業投資の目的で保有されることも多いと考えられる市場価格のない株式等を直接保有している場合と、投資信託財産の価値の増加を目的として投資信託として間接的に保有している場合とでは、適用される会計処理も異なるものと考えられ、投資信託について時価をもって貸借対照表価額とすることが適切と考えられる。ここで、投資信託自体の時価の算定においては、前項のとおり、解約制限などその投資信託自体の特性を考慮して時価を算定する必要があり、投資信託財産の評価額の合計額を当該投資信託の総口数で割った一口当たりの価額(すなわち基準価額)が必ずしも時価となるわけではない。
- したがって、投資信託財産が市場価格のない株式等である投資信託について、2019年改正の金融商品会計基準の取扱いを修正しないこととした。
- 49-5. また、解約等に関する制限がある場合において、それが市場参加者からリスクの対価を求められるほどの重要性があるか否かの判断が困難であることが懸念されたため、解約等に関して市場参加者からリスクの対価を求められるほどの重要な制限がある場合に該当しない例を示すこととした。ここで、審議において、その重要性の判断は、解約等に関する制限自体の重要性ではなく、仮にその解約等に関する制限により基準価額を調整する際の金額的重要性により行うことを明らかにすべきであるとの意見が聞かれたため、これを示した(第24-4項参照)。
- 一方、解約等に関する制限の金額的重要性があるものの具体的な例示について、定量的な目安を示すことは困難であり、そうした目安のない例示は有用性の乏しいものになると考えられるため、記載しないこととした。
- 49-6. このほか、会計基準第5項の時価の定義を踏まえると、原則として、時価の算定日において算定される基準価額を使用することとなるが、国内で設定された投資信託と異なり、海外で設定された投資信託については情報の入手が困難である可能性があることを踏まえ、時価の算定日と基準価額の算定日との間の期間が短い場合に限り、基準価額を時価とみなすことができるとした(第24-5項参照)。
- なお、時価の算定日と基準価額の算定日との間の期間が短い場合については、一般に、その投資信託財産が金融商品である、海外で設定された投資信託は、実務上、月次で基準価額が算定されることが多いため、通常は1か月程度と考えられるとし、それとともに、投資信託財産の流動性が低い場合には、市場からの影響を受けにくく、基準価額を時価の算定日で更新しても重要な差異が生じないこともあると考えられるため、1か月を超える場合については、投資信託財産の流動性などの特性も考慮することとした。
- 49-7. なお、基準価額は投資信託委託会社等が公表するものであり、第18項に定める第三者から入手した相場価格に該当するため、会計基準に従って算定されたものであると判断する必要がある。第24-2項又は第24-3項の取扱いを適用する場合、それを適用するための要件を満たすことをもって、会計基準に従って算定されたものであると判断ができる又は会計基準に従って算定されたものであるとみなすことができると考えられるため、第43項に例示した手続によらないことができることとした(第24-6項参照)。
- 49-8. 本適用指針第24-3項の取扱いを適用した場合、会計基準の本則に従っていれば基準価額に対して調整を行うべきところ、一定の要件を満たすことを条件として基準価額を時価とみなしているため、金融商品時価開示適用指針第4項に定める事項を注記するにあたっては、他の金融商品と合わせて注記したうえで、基準価額を時価とみなしている投資信託も当該注記に含まれていることを理解できるように、重要性に乏しい場合を除き、本適用指針第24-3項の取扱いを適用した投資信託が含まれている旨を併せて注記することとした。
- 一方、本適用指針第24-3項の取扱いを適用した場合、会計基準の本則に従って基準価額に対して調整を行っていれば利用したであろうインプットのレベルは把握されないこととなる。基準価額のインプットのレベルのみによって時価のレベルを決定することが適切ではないことから、金融商品時価開示適用指針第5-2項に定める事項を注記しないこととした。
- そのような取扱いとした場合、何らかの補完的な情報が必要と考えられ、本適用指針第24-3項の取扱いを適用した投資信託の貸借対照表計上額の合計額が重要性に乏しい場合を除いて、調整表の注記を求めることとした(本適用指針第24-7項(3)参照)。これにより、基準価額で貸借対照表に計上されている投資信託について、その増減が購入及び売却等によって生じたのか、時価とみなしている基準価額の上昇及び下落による評価替えによって生じたのか等が分かり、企業の対応の変化を理解することができるため、財務諸表利用者にとって有用な情報を提供することになると考えられる。
- そのほか、当該取扱いを適用している投資信託が財務諸表に及ぼす影響について理解するために最低限必要とされる情報を提供するため、本適用指針第24-7項に定める事項を注記することとした。当該注記は他の金融商品における金融商品時価開示適用指針第5-2項(1)の注記に併せて記載することとしており、金融商品時価開示適用指針第5-2項(1)の注記と同様に、連結財務諸表において注記している場合には、個別財務諸表において記載することを要しないこととした。
- ここで、解約等に関する制限の内容ごとに投資信託の貸借対照表計上額を集計したうえで注記することができるとしているが(本適用指針第24-7項(4)参照)、ある投資信託について、複数の種類の解約等に関する制限がある場合、コストと便益を考慮し、最も重要な解約等に関する制限の内容を特定したうえで、当該制限の内容に基づき集計することも認められると考えられる。
- なお、時価をもって貸借対照表価額としないものの、時価の注記を求める投資信託は想定されないため、当該投資信託について、本適用指針第24-3項の取扱いを適用した場合に注記する事項の定めを設けないこととした。
投資信託財産が不動産である投資信託の取扱い
- 49-9. 市場価格のない投資信託財産が不動産である投資信託については、投資信託財産が不動産である投資信託に関する特段の定めがないことに起因し、実務上、会計処理に多様性が生じており、次のケースが識別されている。
- (1) 時価をもって貸借対照表価額としているケース
- (2) 時価を把握することが極めて困難と認められることを理由に取得原価をもって貸借対照表価額としているケース
- 49-10. ここで、会計基準において時価のレベルに関する概念を取り入れ、たとえ観察可能なインプットを入手できない場合であっても、入手できる最良の情報に基づく観察できないインプットを用いて時価を算定することとしているため、このような時価の考え方の下では、時価を把握することが極めて困難と認められる有価証券は想定されないとしており(金融商品会計基準第81-2項)、たとえ何らかの方式により価額の算定が可能としても、それを時価とはしないとする市場価格のない株式等を除き、時価をもって貸借対照表価額とすることとしている。
- また、投資信託財産が不動産である投資信託であったとしても、投資信託財産が金融商品である投資信託と同様に通常は金融投資目的で保有される金融資産であると考えられ、時価をもって貸借対照表価額とすることは、財務諸表利用者に対する有用な財務情報の提供につながるものと考えられる。
- これらを踏まえ、市場価格のない投資信託財産が不動産である投資信託について、経過措置として、本適用指針第29-2項に記載の金融商品実務指針第62項の取扱いを踏襲した本適用指針第26項を削除し、金融商品会計基準に従い、一律に時価をもって貸借対照表価額とすることで会計処理を統一することとした。
- 49-11. これを踏まえ、第49-2項は、投資信託財産が不動産である投資信託についても同様であるため、市場における取引価格が存在せず、かつ、解約等に関して市場参加者からリスクの対価を求められるほどの重要な制限がない場合、基準価額も時価となることを示した(第24-8項参照)。
- 49-12. また、市場における取引価格が存在せず、かつ、解約等に関して市場参加者からリスクの対価を求められるほどの重要な制限がある場合は、基準価額に何らかの調整が必要になるものと考えられる。この点、第49-3項と同様の理由により、基準価額を時価とみなすことができるとした(第24-9項参照)。
- その際、第49-6項に記載のとおり、基準価額は時価の算定日に算定されるものを使用することが原則と考えられるが、投資信託財産が不動産である投資信託は、基準価額の算定頻度が低く、時価の算定日における基準価額がない場合が考えられる。この場合、たとえ時価の算定日と基準価額の算定日との間の期間が短いとは言えないとしても、取得原価より直近の基準価額の方が有用な情報と考えられるため、投資信託財産が不動産である投資信託については、時価の算定日における基準価額がない場合は、入手し得る直近の基準価額を使用することとした。
- また、投資信託財産である不動産については、時価の算定が会計基準の対象に含まれないことから、当該投資信託を構成する個々の投資信託財産の評価について会計基準と整合する評価基準が用いられている等の要件は設けないこととした。
- 49-13. 投資信託財産が金融商品である投資信託と同様に(第49-7項参照)、第24-8項の取扱いを適用する場合、それを適用するための要件を満たすことをもって、第三者から入手した相場価格が会計基準に従って算定されたものであると判断することができることとした。
- また、基準価額を時価として用いる場合には、当該基準価額の適切性を確認することになるが、第24-9項の取扱いを適用する場合、投資信託財産である不動産の時価の算定が会計基準の対象に含まれないことから、投資信託財産の評価が会計基準に基づいているか否かを確認することにより、基準価額が会計基準に従って算定されたものであるか否かを判断することが困難であることが考えられる。したがって、そのような手続までは求めないこととした(第24-11項参照)。
- 49-14. 第24-9項の取扱いを適用した場合、第49-8項と同様の理由で、金融商品時価開示適用指針第5-2項に定める事項を注記しないこととし、第24-12項に定める事項を注記することとした。また、第49-8項と同様に、連結財務諸表において注記している場合には、個別財務諸表において記載することを要しないこととした。
- なお、第49-12項のとおり、投資信託財産である不動産については、時価の算定が会計基準の対象に含まれないことから、投資信託財産が金融商品である投資信託における第24−7項と同様に解約等に関する制限の内容の注記を求めたとしても、会計基準との差異を理解するための有用な情報にはならないと考えられる。したがって、解約等に関する制限の内容の注記は求めないこととした。
投資信託財産が金融商品である投資信託及び投資信託財産が不動産である投資信託の共通の取扱い
- 49-15. 投資信託財産が金融商品と不動産の両方を含む場合、投資信託財産が金融商品である投資信託又は投資信託財産が不動産である投資信託のどちらの取扱いを適用するか、企業が実態に合わせて判断することが必要となるため、投資信託財産に含まれる主要な資産等によって判断することとした(第24-13項参照)。
- 49-16. 投資信託の解約等を行う際に、基準価額から所定の信託財産留保額を控除することが定められている場合がある。
- 信託財産留保額は、投資信託における将来に発生することが見込まれる取引又は管理等にかかる費用に充当するために、投資信託財産内に留保されることとされている。このような性格を踏まえ、第4項(5)に定める売却に要する付随費用と考えられるため、投資信託の時価の算定上の調整項目に含めないこととした(第24-15項参照)。
(貸借対照表に持分相当額を純額で計上する組合等への出資の時価の注記に関する取扱い)
- 49-17. 組合等への出資は金融資産であるため、金融商品会計基準では、従来から金融商品時価開示適用指針第4項(1)に定める時価の注記を求めているが、時価を把握することが極めて困難と認められることを理由に時価の注記を行っていないケースもみられた。
- ここで、組合等への出資の会計処理については、有価証券とは異なり時価をもって貸借対照表価額とすることは求めておらず、次の方法のいずれかにより会計処理することとされている(金融商品実務指針第308項)。
- (1) 貸借対照表及び損益計算書双方について持分相当額を純額で取り込む方法
- (2) 貸借対照表について持分相当額を純額で、損益計算書については損益項目の持分相当額を計上する方法
- (3) 組合財産のうち持分割合に相当する部分を出資者の資産及び負債として貸借対照表に計上し、損益計算書についても同様に処理する方法
- 49-18. 現状ではこれらの会計処理の使い分けの状況は必ずしも明らかではない可能性があるため、どのようなケースで時価の注記を求めるかについては、どのようなケースで時価をもって貸借対照表価額とすることが必要であるかと併せて検討する必要があると考えられる。したがって、会計処理について今後の検討課題であることを認識したうえで、2021年改正適用指針においては、貸借対照表に持分相当額を純額で計上する組合等への出資について、時価の注記を要しないこととした(第24-16項参照)。
Ⅱ.適用時期等
1.適用時期
- 49-19. 2021年公開草案では、会計基準は2021年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用されること、及び2021年改正適用指針による場合、企業にとって追加的な作業を要すると考えられるものの一定の実務への配慮を行っていることから、2021年改正適用指針は、2022年3月31日以後終了する連結会計年度及び事業年度における年度末に係る連結財務諸表及び個別財務諸表から適用することを提案していた。しかしながら、こうした提案に対して、特に投資信託を大量に保有している企業にとっては、解約等に関する制限の内容の確認等に十分な準備期間が必要であるとの意見や、システムの開発等の対応が必要となる企業もあるとの意見が寄せられたことから、2022年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用することとした(第25-2項参照)。
- ただし、速やかに適用することへの一定のニーズがあると想定されることから、2021年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から、また、2022年3月31日以後終了する連結会計年度及び事業年度における年度末に係る連結財務諸表及び個別財務諸表から2021年改正適用指針を早期適用することができることとした(第25-3項参照)。
2.経過措置
- 50. 2019年適用指針の公開草案(企業会計基準適用指針公開草案第63号「時価の算定に関する会計基準の適用指針(案)」をいう。)では、第三者から入手した相場価格の利用にあたっては、第18項の定めを適用するために一定の準備期間を要すると考えられたため、原則的な適用時期からさらに1年間の準備期間を設け、2021年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度から適用する経過措置を提案していた。当該経過措置については、会計基準の適用時期をその公開草案(企業会計基準公開草案第63号「時価の算定に関する会計基準(案)」)における提案から変更したことに伴い、2019年適用指針の原則的な適用時期を2021年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度からと変更したことから、削除している。
- 51. (削 除)
- 52. (削 除)
- 53. 2021年改正適用指針の適用初年度においては、会計基準第19項の適用初年度の経過措置における取扱いに合わせ、2021年改正適用指針が定める新たな会計方針(会計基準の定める時価を新たに算定する場合や取得原価をもって貸借対照表価額としていたものから時価をもって貸借対照表価額とする場合など)を将来にわたって適用し、その変更の内容について注記することとした(第27-2項参照)。
設 例
- <設例全般の留意点について>
- 本適用指針の設例は、会計基準及び本適用指針で示された内容についての理解を深めるために参考として示されたものである。仮定として示された前提条件の記載内容は、経済環境や各企業の実情等に応じて異なり得るものであり、異なる前提条件の下では会計処理が変わる可能性がある。










