©公益財団法人 財務会計基準機構最終更新日:2026/03/04
実務対応報告第44号グローバル・ミニマム課税制度に係る税効果会計の適用に関する取扱い
目 的
- 1. 2021年10月に経済協力開発機構(OECD)/主要20か国・地域(G20)の「BEPS包摂的枠組み(Inclusive Framework on Base Erosion and Profit Shifting)」において、当該枠組みの各参加国によりグローバル・ミニマム課税について合意が行われた。これを受けて、我が国においてもグローバル・ミニマム課税制度を導入するための法人税法の改正が数年にわたって行われる予定である。本実務対応報告は、グローバル・ミニマム課税制度に係る税効果会計の適用に関する取扱いを示すことを目的とする。
範 囲
- 2. 本実務対応報告は、企業会計審議会が1998年10月に公表した「税効果会計に係る会計基準」(以下「税効果会計基準」という。)が適用される連結財務諸表及び個別財務諸表に適用する。
会計処理
- 3. 当委員会が本実務対応報告の適用を終了するまでの間、連結会計年度及び事業年度の決算における税効果会計の適用にあたっては、企業会計基準適用指針第28号「税効果会計に係る会計基準の適用指針」(以下「税効果適用指針」という。)の定めにかかわらず、グローバル・ミニマム課税制度の影響を反映しないこととする。
- 3-2. 前項の取扱いは、期中財務諸表並びに第二種中間連結財務諸表及び第二種中間財務諸表においても適用する。
適用時期
- 4. 2023年に公表された本実務対応報告(以下「2023年実務対応報告」という。)は、公表日以後適用する。
- 4-2. 2024年に改正された本実務対応報告(以下「2024年改正実務対応報告」という。)は、公表日以後適用する。
議 決
- 5. 2023年実務対応報告は、第498回企業会計基準委員会に出席した委員12名全員の賛成により承認された。
- 5-2. 2024年改正実務対応報告は、第522回企業会計基準委員会に出席した委員12名全員の賛成により承認された。
結論の背景
経 緯
2023年実務対応報告
- 6. 2023年3月28日に成立した「所得税法等の一部を改正する法律」(令和5年法律第3号)(以下「令和5年法律第3号」という。)において、グローバル・ミニマム課税制度が創設された。グローバル・ミニマム課税制度の適用は2024年4月1日以後開始する対象会計年度からであるが、その適用が見込まれる企業は、令和5年法律第3号の成立日以後に終了する連結会計年度及び事業年度の決算(四半期連結決算及び四半期決算を含む。)において、税効果適用指針の定めに基づき、グローバル・ミニマム課税制度を前提として税効果会計を適用するか否かを検討する必要がある。しかしながら、グローバル・ミニマム課税制度を前提とした税効果会計の適用については、実務上対応が困難であるとの意見が聞かれたことから、当委員会では、2023年実務対応報告において、当面の間、必要と考えられる特例的な取扱いを示すこととした。
- 2023年実務対応報告は、2023年2月に公表した実務対応報告公開草案第64号「グローバル・ミニマム課税に対応する法人税法の改正に係る税効果会計の適用に関する当面の取扱い(案)」に対して寄せられた意見を踏まえて検討を行い、公表するに至ったものである。
- 7. また、国際会計基準審議会(IASB)が、2023年1月に公表したIASB公開草案「国際的な税制改革-第2の柱モデルルール(IAS第12号の修正案)」においては、経済協力開発機構(OECD)が公表した第2の柱モデルルールの適用から生じる繰延税金資産及び繰延税金負債の会計処理に関して、国際会計基準(IAS)第12号「法人所得税」(以下「IAS第12号」という。)の要求事項からの一時的な例外を設け、一定の事項の開示を提案しているが、2023年実務対応報告は主として2023年3月期決算に向けた短期的な対応をその目的としていることから、開示については求めないこととした。
2024年改正実務対応報告
- 7-2. 2021年10月に経済協力開発機構(OECD)/主要20か国・地域(G20)の「BEPS包摂的枠組み(Inclusive Framework on Base Erosion and Profit Shifting)」において合意が行われたグローバル・ミニマム課税のルールには、所得合算ルール(Income Inclusion Rule(IIR))、軽課税所得ルール(Undertaxed Profits Rule(UTPR))及び国内ミニマム課税(Qualified Domestic Minimum Top-up Tax(QDMTT))がある。このうち、所得合算ルール(IIR)に係る取扱いが令和5年法律第3号において定められたことに対応して、当委員会は、2023年3月に2023年実務対応報告を公表した。
- 7-3. 我が国においては、グローバル・ミニマム課税制度を導入するための法人税法の改正は数年にわたって行われる予定であり、令和6年度税制改正において所得合算ルール(IIR)に係る取扱いの見直しが予定されている。また、軽課税所得ルール(UTPR)及び国内ミニマム課税(QDMTT)に係る取扱いについては今後の税制改正での法制化が予定されているものの、IASBが2023年5月に公表した「国際的な税制改革-第2の柱モデルルール(IAS第12号の修正)」(以下「修正IAS第12号」という。)では、所得合算ルール(IIR)のみならず、軽課税所得ルール(UTPR)及び国内ミニマム課税(QDMTT)も含めて、第2の柱モデルルールの適用から生じる繰延税金資産及び繰延税金負債を認識しないこととしている。このため、当委員会においても、所得合算ルール(IIR)に係る取扱いのみならず、軽課税所得ルール(UTPR)及び国内ミニマム課税(QDMTT)等の取扱いが今後法制化された場合のこれらの取扱いも含めたグローバル・ミニマム課税制度に係る税効果会計の取扱いについて審議を行い、実務対応報告公開草案第68号(実務対応報告第44号の改正案)「グローバル・ミニマム課税制度に係る税効果会計の適用に関する当面の取扱い(案)」(以下「2024年公開草案」という。)として公表し広く意見を求めた。2024年改正実務対応報告は、2024年公開草案に対して寄せられた意見を踏まえて検討を行い、公表するに至ったものである。
範 囲
- 8. 本実務対応報告を適用する範囲について、グローバル・ミニマム課税制度の課税の範囲は多国籍企業グループ等のうち、各対象会計年度の直前の4対象会計年度のうち2以上の対象会計年度の総収入金額が7億5,000万ユーロ相当額以上であるもの等とされている。そのため、特例的な取扱いの対象は、決算日において、グローバル・ミニマム課税制度の適用が見込まれる企業とすることも考えられた。しかしながら、審議の過程において、本実務対応報告は、税効果適用指針の定めにかかわらず、特例的な取扱いを定めるものであるが、グローバル・ミニマム課税制度の適用が見込まれるか否かの判断について、企業が適時にかつ適切に行えるか懸念があるとの意見が聞かれた。こうした意見を踏まえ、本実務対応報告を適用する範囲については税効果会計基準が適用される連結財務諸表及び個別財務諸表に適用することとし、グローバル・ミニマム課税制度の適用が見込まれるか否かについての判断を企業に求めないこととした。
会計処理
2023年実務対応報告
- 9. 税効果適用指針第44項では、「繰延税金資産及び繰延税金負債の額は、決算日において国会で成立している税法(以下、法人税等の納付税額の計算方法が規定されている我が国の法律を総称して『税法』という。)に規定されている方法に基づき第8項に定める将来の会計期間における減額税金又は増額税金の見積額を計算する。なお、決算日において国会で成立している税法とは、決算日以前に成立した税法を改正するための法律を反映した後の税法をいう。」としている。そのため、グローバル・ミニマム課税制度の対象となることが見込まれる企業では、令和5年法律第3号の成立日以後に終了する連結会計年度及び事業年度の決算(期中決算を含む。)において、グローバル・ミニマム課税制度を前提とした税効果会計を適用すべきか否かを検討する必要がある。
- 10. 税効果会計基準第一では、「税効果会計は、企業会計上の資産又は負債の額と課税所得計算上の資産又は負債の額に相違がある場合において、法人税その他利益に関連する金額を課税標準とする税金(以下『法人税等』という。)の額を適切に期間配分することにより、法人税等を控除する前の当期純利益と法人税等を合理的に対応させることを目的とする手続である。」とされており、税効果会計は、利益に関連する金額を課税標準とする税金を対象として認識するものとされている。
- ここで、グローバル・ミニマム課税制度に基づく基準税率(15%)までの上乗せ税額(以下「上乗せ税額」という。)は、多国籍企業グループ等を構成する事業体等について国別に算定された実効税率が基準税率を下回る場合、国別に集計された純所得に対する基準税率に至るまでの税額を、親会社等がその所在地国の税務当局に支払うものである。そのため、上乗せ税額の課税の源泉となる純所得(利益)が生じる企業と、納税義務が生じる企業が相違することとなり、このような場合、現行の枠組みにおいて税効果会計を適用すべきか否かが、税効果会計基準及び税効果適用指針等において明らかではないと考えられる。
- 11. また、仮に税効果会計を適用する場合、グローバル・ミニマム課税制度に基づく税効果会計の会計処理については、次の点が明らかではないと考えられる。
- (1) グローバル・ミニマム課税制度の適用によって、企業が、既存の税法の下で認識した繰延税金資産及び繰延税金負債を見直す必要があるかどうか
- (2) 上乗せ税額を加味すると、税効果会計に使用する税率がどのような影響を受けるか
- (3) グローバル・ミニマム課税制度に基づき、追加的な一時差異を認識すべきかどうか
- 12. このように、グローバル・ミニマム課税制度に基づく税効果会計の取扱いについては、その考え方が必ずしも明らかではないことに加え、実務上の負担も想定されることから、令和5年法律第3号の成立日以後に終了する連結会計年度及び事業年度の決算(期中決算を含む。)において、グローバル・ミニマム課税制度の適用を前提とした税効果会計を適用することは困難であると考えられる。
- 13. したがって、2023年実務対応報告では、令和5年法律第3号の成立日以後に終了する連結会計年度及び事業年度の決算(期中決算を含む。)における税効果会計については、税効果適用指針の定めにかかわらず、グローバル・ミニマム課税制度の影響を反映しないこととした。
- 14. この点、特例的な取扱いを定めるにあたっては、原則的な取扱いの適用が困難であると考えられることを踏まえて当該取扱いを定めるものであり、原則的な取扱いの適用を妨げるものではないこととし、特例的な取扱いを選択適用とすることも考えられた。しかしながら、審議の過程において、本実務対応報告第10項に記載のとおりグローバル・ミニマム課税制度を前提とした税効果会計については、現行の枠組みにおいて適用すべきか否かが明らかではないと考えられること、また、本実務対応報告第11項に記載のとおり仮に税効果会計を適用する場合、グローバル・ミニマム課税制度に基づく税効果会計の会計処理については明らかではないと考えられる点があることを踏まえると、原則的な取扱いの適用を認めることについて懸念があるとの意見が聞かれた。こうした意見を踏まえ、グローバル・ミニマム課税制度を前提とした税効果会計については、税効果適用指針の定めにかかわらず、特例的な取扱いを一律に適用することとした。
- 15. また、当該特例的な取扱いは、グローバル・ミニマム課税制度の具体的な内容やグローバル・ミニマム課税制度の適用を前提として税効果会計を適用すべきかどうかが今後明らかになるまでの当面の取扱いであるため、特例的な取扱いを適用する期間は、当委員会が本実務対応報告の適用を終了するまでの間とすることとした。
2024年改正実務対応報告
- 15-2. 第7-2項に記載のとおり、2023年実務対応報告は所得合算ルール(IIR)に係る取扱いを定めた令和5年法律第3号に対応したものであったため、軽課税所得ルール(UTPR)及び国内ミニマム課税(QDMTT)に係る取扱いについて今後の税制改正での法制化が予定されていることを踏まえて、所得合算ルール(IIR)に係る取扱いのみならず、軽課税所得ルール(UTPR)及び国内ミニマム課税(QDMTT)等の取扱いが今後法制化された場合のこれらの取扱いも含めたグローバル・ミニマム課税制度に係る税効果会計の取扱いを検討した。
- 15-3. 2023年実務対応報告では、グローバル・ミニマム課税制度に係る税効果会計の会計処理について、第11項(1)から(3)に記載した点が明らかではないと考えられるとしており、第12項に記載のとおり、グローバル・ミニマム課税制度に係る税効果会計の取扱いについては、実務上の負担も想定されるとしていた。軽課税所得ルール(UTPR)及び国内ミニマム課税(QDMTT)もグローバル・ミニマム課税を構成するルールであることから、こうした状況は変わらないものと考えられる。
- 15-4. また、IASBが2023年5月に公表した修正IAS第12号では、IAS第12号の要求事項からの一時的な例外として、第2の柱モデルルールの適用から生じる繰延税金資産及び繰延税金負債について、企業は認識することもそれらに関する情報を開示することもしてはならないとしており、所得合算ルール(IIR)のみならず、軽課税所得ルール(UTPR)及び国内ミニマム課税(QDMTT)も含めて、第2の柱モデルルールの適用から生じる繰延税金資産及び繰延税金負債を認識しないこととしている。さらに、IASBは、修正IAS第12号における一時的な例外をどれだけ長く残すのかは定めないことを決定している。このため、今後の税制改正により法制化される予定の軽課税所得ルール(UTPR)及び国内ミニマム課税(QDMTT)等の取扱いも含めて、税効果会計の適用にあたっては、税効果適用指針の定めにかかわらず、グローバル・ミニマム課税制度の影響を反映しないことで、当該取扱いが現時点の国際的な会計基準における取扱いと整合することとなる。
- 15-5. 本実務対応報告第15-3項及び前項に記載した状況を踏まえて、2024年改正実務対応報告では、所得合算ルール(IIR)に係る取扱いのみならず、今後の税制改正により法制化される予定の軽課税所得ルール(UTPR)及び国内ミニマム課税(QDMTT)等の取扱いも含めて、国際的な動向等に変化が生じない限り、税効果会計の適用にあたっては、税効果適用指針の定めにかかわらず、グローバル・ミニマム課税制度の影響を反映しないこととする取扱いを継続することとした。
開 示
- 16. グローバル・ミニマム課税制度の影響が見込まれる企業において本実務対応報告を適用した旨を注記することも考えられるが、第8項に記載のとおり、企業がグローバル・ミニマム課税制度の適用が見込まれるか否かの判断を適時にかつ適切に行うことについて懸念があるとの意見が聞かれたため、本実務対応報告はこれを求めないこととした。
- 以 上