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企業会計基準第30号時価の算定に関する会計基準
目 的
- 1. 本会計基準は、本会計基準の範囲(第3項参照)に定める時価の算定について定めることを目的とする。
- 2. 2019年7月に、本会計基準を適用する際の指針を定めた企業会計基準適用指針第31号「時価の算定に関する会計基準の適用指針」(以下「適用指針」という。)が公表されている。本会計基準の適用にあたっては、適用指針も参照する必要がある。
会計基準
Ⅰ.範 囲
- 3. 本会計基準は、次の項目の時価に適用する。
- (1) 企業会計基準第10号「金融商品に関する会計基準」(以下「金融商品会計基準」という。)における金融商品
- (2) 企業会計基準第9号「棚卸資産の評価に関する会計基準」(以下「棚卸資産会計基準」という。)におけるトレーディング目的で保有する棚卸資産
Ⅱ.用語の定義
- 4. 本会計基準における用語の定義は、次のとおりとする。
- (1) 「市場参加者」とは、資産又は負債に関する主要な市場又は最も有利な市場において、次の要件のすべてを満たす買手及び売手をいう。
- ① 互いに独立しており、関連当事者(企業会計基準第11号「関連当事者の開示に関する会計基準」(以下「関連当事者会計基準」という。)第5項(3))ではないこと
- ② 知識を有しており、すべての入手できる情報に基づき当該資産又は負債について十分に理解していること
- ③ 当該資産又は負債に関して、取引を行う能力があること
- ④ 当該資産又は負債に関して、他から強制されるわけではなく、自発的に取引を行う意思があること
- (2) 「秩序ある取引」とは、資産又は負債の取引に関して通常かつ慣習的な市場における活動ができるように、時価の算定日以前の一定期間において市場にさらされていることを前提とした取引をいう。他から強制された取引(例えば、強制された清算取引や投売り)は、秩序ある取引に該当しない。
- (3) 「主要な市場」とは、資産又は負債についての取引の数量及び頻度が最も大きい市場をいう。
- (4) 「最も有利な市場」とは、取得又は売却に要する付随費用を考慮したうえで、資産の売却による受取額を最大化又は負債の移転に対する支払額を最小化できる市場をいう。
- (5) 「インプット」とは、市場参加者が資産又は負債の時価を算定する際に用いる仮定(時価の算定に固有のリスクに関する仮定を含む。)をいう。インプットには、相場価格を調整せずに時価として用いる場合における当該相場価格も含まれる。
インプットは、次の観察可能なインプットと観察できないインプットにより構成される。 - ① 「観察可能なインプット」とは、入手できる観察可能な市場データに基づくインプットをいう。
- ② 「観察できないインプット」とは、観察可能な市場データではないが、入手できる最良の情報に基づくインプットをいう。
- (6) 「活発な市場」とは、継続的に価格情報が提供される程度に十分な数量及び頻度で取引が行われている市場をいう。
Ⅲ.時価の算定
1.時価の定義
- 5. 「時価」とは、算定日において市場参加者間で秩序ある取引が行われると想定した場合の、当該取引における資産の売却によって受け取る価格又は負債の移転のために支払う価格をいう。
2.時価の算定単位
- 6. 資産又は負債の時価を算定する単位は、それぞれの対象となる資産又は負債に適用される会計処理又は開示による。
- 7. 前項の定めにかかわらず、次の要件のすべてを満たす場合には、特定の市場リスク(市場価格の変動に係るリスク)又は特定の取引相手先の信用リスク(取引相手先の契約不履行に係るリスク)に関して金融資産及び金融負債を相殺した後の正味の資産又は負債を基礎として、当該金融資産及び金融負債のグループを単位とした時価を算定することができる。なお、本取扱いは特定のグループについて毎期継続して適用し、重要な会計方針において、その旨を注記する。
- (1) 企業の文書化したリスク管理戦略又は投資戦略に従って、特定の市場リスク又は特定の取引相手先の信用リスクに関する正味の資産又は負債に基づき、当該金融資産及び金融負債のグループを管理していること
- (2) 当該金融資産及び金融負債のグループに関する情報を企業の役員(関連当事者会計基準第5項(7))に提供していること
- (3) 当該金融資産及び金融負債を各決算日の貸借対照表において時価評価していること
- (4) 特定の市場リスクに関連して本項の定めに従う場合には、当該金融資産及び金融負債のグループの中で企業がさらされている市場リスクがほぼ同一であり、かつ、当該金融資産及び金融負債から生じる特定の市場リスクにさらされている期間がほぼ同一であること
- (5) 特定の取引相手先の信用リスクに関連して本項の定めに従う場合には、債務不履行の発生時において信用リスクのポジションを軽減する既存の取決め(例えば、取引相手先とのマスターネッティング契約や、当事者の信用リスクに対する正味の資産又は負債に基づき担保を授受する契約)が法的に強制される可能性についての市場参加者の予想を時価に反映すること
3.時価の算定方法
(1)評価技法
- 8. 時価の算定にあたっては、状況に応じて、十分なデータが利用できる評価技法(そのアプローチとして、例えば、マーケット・アプローチやインカム・アプローチがある。)を用いる。評価技法を用いるにあたっては、関連性のある観察可能なインプットを最大限利用し、観察できないインプットの利用を最小限にする。
- 9. 時価の算定にあたって複数の評価技法を用いる場合には、複数の評価技法に基づく結果を踏まえた合理的な範囲を考慮して、時価を最もよく表す結果を決定する。
- 10. 時価の算定に用いる評価技法は、毎期継続して適用する。当該評価技法又はその適用(例えば、複数の評価技法を用いる場合のウェイト付けや、評価技法への調整)を変更する場合は、会計上の見積りの変更(企業会計基準第24号「会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」(以下「企業会計基準第24号」という。)第4項(7))として処理する。この場合、企業会計基準第24号第18項の注記を要しないが、当該連結会計年度及び当該事業年度の年度末に係る連結財務諸表及び個別財務諸表において変更の旨及び変更の理由を注記する(企業会計基準適用指針第19号「金融商品の時価等の開示に関する適用指針」第5-2項(3)②)。
(2)インプット
- 11. 時価の算定に用いるインプットは、次の順に優先的に使用する(レベル1のインプットが最も優先順位が高く、レベル3のインプットが最も優先順位が低い。)。
- (1) レベル1のインプット
レベル1のインプットとは、時価の算定日において、企業が入手できる活発な市場における同一の資産又は負債に関する相場価格であり調整されていないものをいう。当該価格は、時価の最適な根拠を提供するものであり、当該価格が利用できる場合には、原則として、当該価格を調整せずに時価の算定に使用する。 - (2) レベル2のインプット
レベル2のインプットとは、資産又は負債について直接又は間接的に観察可能なインプットのうち、レベル1のインプット以外のインプットをいう。 - (3) レベル3のインプット
レベル3のインプットとは、資産又は負債について観察できないインプットをいう。当該インプットは、関連性のある観察可能なインプットが入手できない場合に用いる。 - 12. 前項のインプットを用いて算定した時価は、その算定において重要な影響を与えるインプットが属するレベルに応じて、レベル1の時価、レベル2の時価又はレベル3の時価に分類する。なお、時価を算定するために異なるレベルに区分される複数のインプットを用いており、これらのインプットに、時価の算定に重要な影響を与えるインプットが複数含まれる場合、これら重要な影響を与えるインプットが属するレベルのうち、時価の算定における優先順位が最も低いレベルに当該時価を分類する。
(3)資産又は負債の取引の数量又は頻度が著しく低下している場合等
- 13. 資産又は負債の取引の数量又は頻度が当該資産又は負債に係る通常の市場における活動に比して著しく低下していると判断した場合、取引価格又は相場価格が時価を表しているかどうかについて評価する。
- 当該評価の結果、当該取引価格又は相場価格が時価を表していないと判断する場合(取引が秩序ある取引ではないと判断する場合を含む。)、当該取引価格又は相場価格を時価を算定する基礎として用いる際には、当該取引価格又は相場価格について、市場参加者が資産又は負債のキャッシュ・フローに固有の不確実性に対する対価として求めるリスク・プレミアムに関する調整を行う。
(4)負債又は払込資本を増加させる金融商品の時価
- 14. 負債又は払込資本を増加させる金融商品(例えば、企業結合の対価として発行される株式)については、時価の算定日に市場参加者に移転されるものと仮定して、時価を算定する。
- 15. 負債の時価の算定にあたっては、負債の不履行リスクの影響を反映する(適用指針[設例7])。負債の不履行リスクとは、企業が債務を履行しないリスクであり、企業自身の信用リスクに限られるものではない。また、負債の不履行リスクについては、当該負債の移転の前後で同一であると仮定する。
Ⅳ.適用時期等
1.適用時期
- 16. 本会計基準は、2021年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用する。
- 17. 前項の定めにかかわらず、2020年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から本会計基準を適用することができる。また、2020年3月31日以後終了する連結会計年度及び事業年度における年度末に係る連結財務諸表及び個別財務諸表から本会計基準を適用することができる。なお、これらのいずれかの場合には、本会計基準と同時に改正された金融商品会計基準及び棚卸資産会計基準についても同時に適用する必要がある。
- 18. 前項の適用にあたって、第20項の定めに従い遡及適用をした場合には、適用した連結会計年度及び事業年度の翌年度に係る四半期(又は中間)連結財務諸表及び四半期(又は中間)個別財務諸表においては、その比較情報である適用初年度に係る四半期(又は中間)連結財務諸表及び四半期(又は中間)個別財務諸表について、第20項に該当する定めを当該年度の期首に遡って適用する。
2.経過措置
- 19. 本会計基準の適用初年度においては、本会計基準が定める新たな会計方針を将来にわたって適用する。この場合、その変更の内容について注記する。
- 20. ただし、前項の定めにかかわらず、時価の算定にあたり観察可能なインプットを最大限利用しなければならない定めなどにより、本会計基準の適用に伴い時価を算定するために用いた方法を変更することとなった場合で、当該変更による影響額を分離することができるときは、会計方針の変更に該当するものとし、当該会計方針の変更を過去の期間のすべてに遡及適用することができる。また、適用初年度の期首より前に新たな会計方針を遡及適用した場合の累積的影響額を、適用初年度の期首の利益剰余金及びその他の包括利益累計額又は評価・換算差額等に加減し、当該期首残高から新たな会計方針を適用することもできる。これらの場合、企業会計基準第24号第10項に定める事項を注記する。
3.その他
- 21. 本会計基準の適用により、実務対応報告第25号「金融資産の時価の算定に関する実務上の取扱い」は廃止する。
Ⅴ.議 決
- 22. 本会計基準は、第411回企業会計基準委員会に出席した委員14名全員の賛成により承認された。なお、出席した委員は以下のとおりである。
- (略)
結論の背景
経 緯
- 23. 我が国においては、金融商品会計基準等において、公正価値に相当する時価(公正な評価額)の算定が求められているものの、算定方法に関する詳細なガイダンスは定められていない。一方、国際会計基準審議会(IASB)及び米国財務会計基準審議会(FASB)は、公正価値測定についてほぼ同じ内容の詳細なガイダンスを定めている(国際財務報告基準(IFRS)においてはIFRS第13号「公正価値測定」(以下「IFRS第13号」という。)、米国会計基準においてはAccounting Standards Codification(FASBによる会計基準のコード化体系)のTopic 820「公正価値測定」(以下「Topic 820」という。))。
- 当委員会は、2010年に公正価値測定について国際的な整合性を図ることを提案する公開草案を公表したものの、国際的に整合性を図る取組み全体の方針を検討する中で、最終化をするに至らず、その後検討は中断されていた。
- 一方で、IFRS第13号又はTopic 820で要求されている公正価値に関する開示の多くは日本基準で定められていないことなどから、特に金融商品を多数保有する金融機関において国際的な比較可能性が損なわれているのではないかとの意見が聞かれており、2016年8月に当委員会が公表した中期運営方針において、日本基準を国際的に整合性のあるものとするための取組みに関する今後の検討課題の1つとして時価に関するガイダンス及び開示を取り上げていた。
- これらの状況を踏まえ、当委員会は、2018年3月に開催された第381回企業会計基準委員会において、金融商品の時価に関するガイダンス及び開示に関して、国際的な会計基準との整合性を図る取組みに着手する旨を決定し検討を開始した。
- 当委員会では、検討を重ねたうえで、2019年1月に企業会計基準公開草案第63号「時価の算定に関する会計基準(案)」等を公表して広く意見を求めた。本会計基準は、公開草案に対して寄せられた意見を踏まえて検討を行い、公開草案の内容を一部修正したうえで公表するに至ったものである。
開発にあたっての基本的な方針
- 24. 当委員会では、本会計基準の開発にあたっての基本的な方針として、統一的な算定方法を用いることにより、国内外の企業間における財務諸表の比較可能性を向上させる観点から、IFRS第13号の定めを基本的にすべて取り入れることとした。なお、相場価格を調整せずに時価として用いる場合における当該相場価格もインプットに含まれる旨をインプットの定義に記載したように(第4項(5)参照)、市場関係者の理解に資すると考えられるものについては、IFRS第13号の表現を一部見直しているが、IFRS第13号の内容と異なる定めを設けることを意図したものではない。
- ただし、これまで我が国で行われてきた実務等に配慮し、財務諸表間の比較可能性を大きく損なわせない範囲で、個別項目に対するその他の取扱いを定めることとした。
- 25. また、IFRS第13号では公正価値という用語が用いられているが、本会計基準では代わりに時価という用語を用いている。これは、我が国における他の関連諸法規において時価という用語が広く用いられていること等を配慮したものである。
Ⅰ.範 囲
- 26. 国際的な会計基準では、公正価値の測定及び開示の首尾一貫性を高めるために、公正価値の測定が求められる(又は認められる)項目のうち、一部の項目を除いてすべての公正価値の測定及び開示に対してIFRS第13号又はTopic 820が適用され、金融商品のみならず固定資産等の公正価値測定も当該基準の範囲に含まれている。
- ここで、金融商品については、国際的な会計基準と整合させることにより国際的な企業間の財務諸表の比較可能性を向上させる便益が高いものと判断し、会計基準の範囲に含めることとした(第3項(1)参照)。そのため、例えば、年金資産については、その額を期末における時価により計算することとされており(企業会計基準第26号「退職給付に関する会計基準」第22項)、金融商品が年金資産を構成する場合には、当該金融商品の時価の算定に本会計基準が適用される。
- 一方、金融商品以外の資産及び負債について、時価の算定が求められる主要な項目としては、賃貸等不動産の時価の開示(企業会計基準第20号「賃貸等不動産の時価等の開示に関する会計基準」)や企業結合における時価を基礎とした取得原価の配分(企業会計基準第21号「企業結合に関する会計基準」第28項)が挙げられる。賃貸等不動産については時価の開示が求められるものの、貸借対照表には時価で計上されず損益にも影響を及ぼさないこと、また企業結合における時価を基礎とした取得原価の配分については当初認識時のみの処理であり、毎期時価の算定が求められるわけではないことなどから、金融商品に比して国際的に整合性を図る必要性は高くないと考えられる。これらを含む金融商品以外の資産及び負債を本会計基準の範囲に含めた場合の整合性を図るためのコストと便益を考慮し、原則として、金融商品以外の資産及び負債は本会計基準の範囲に含めないこととした。
- 27. ただし、棚卸資産会計基準におけるトレーディング目的で保有する棚卸資産については、売買目的有価証券と同様に毎期時価をもって貸借対照表価額とし、評価差額は当期の損益とする処理が求められており(棚卸資産会計基準第15項)、時価の算定についても金融商品と整合性を図ることが適切と考えられることから、本会計基準の範囲に含めている(第3項(2)参照)。
- 他方で、これに類似する実務対応報告第38号「資金決済法における暗号資産の会計処理等に関する当面の取扱い」(以下「実務対応報告第38号」という。)における暗号資産については、現時点では、取引が最も活発に行われている暗号資産取引所又は暗号資産販売所における取引価格等を決定することは困難であると考えられることから、通常使用する自己の取引実績の最も大きい暗号資産取引所又は暗号資産販売所における取引価格を市場価格として使用するとしており(実務対応報告第38号第49項)、現時点で見直す必要性は乏しいと考えられるため、本会計基準の範囲に含めないこととした。
- 28. 本会計基準は、本会計基準の範囲(第3項参照)に含まれる時価をどのように算定すべきかを定めるものであり、どのような場合に資産、負債又は払込資本を増加させる金融商品を時価で算定すべきかを定めるものではない。
- どのような場合に時価で算定すべきかについては、他の会計基準の定めに従う。例えば、市場価格のない株式等については、時価評価しないこととされている(金融商品会計基準第19項)。
Ⅱ.用語の定義
- 29. 本会計基準では、IFRS第13号における用語の定義のうち、必要と考えられるものについて、本会計基準の用語の定義に含めている(第4項参照)。
- 30. 関連当事者は市場参加者ではない(第4項(1)①参照)としているが、関連当事者との取引が市場における条件で行われたという証拠を有している場合には、当該関連当事者との取引の価格を時価算定のインプットとして用いることができる。
Ⅲ.時価の算定
1.時価の定義
- 31. 時価を算定する目的は、現在の市場環境の下で、時価の算定日における市場参加者間の秩序ある取引が行われると想定した場合の、当該取引における資産の売却によって受け取る価格又は負債の移転のために支払う価格(第5項参照)を見積ることである。本会計基準では、本会計基準の定義する時価について、次の基本的な考え方を示している(第5項及び第8項参照)。
- (1) 時価の算定は、市場を基礎としたものであり、対象となる企業に固有のものではない。
- (2) 時価は、直接観察可能であるかどうかにかかわらず、算定日における市場参加者間の秩序ある取引が行われると想定した場合の出口価格(資産の売却によって受け取る価格又は負債の移転のために支払う価格)であり、入口価格(交換取引において資産を取得するために支払った価格又は負債を引き受けるために受け取った価格)ではない。
なお、時価の定義における出口価格の概念は、IFRS第13号及びTopic 820において採用されているものであり、本会計基準の範囲に含まれる項目の時価の定義について国際的に整合性を図る観点から、本会計基準においても採用することとした。 - (3) 同一の資産又は負債の価格が観察できない場合に用いる評価技法には、関連性のある観察可能なインプットを最大限利用し、観察できないインプットの利用を最小限にする。
ただし、観察可能なインプット(レベル1のインプット及びレベル2のインプット)のみを使用することによっても時価を適切に算定することにはならず、観察可能なインプットを調整する必要がある状況があるため、インプットの観察可能性のみがインプットを選択する際に適用される唯一の判断規準ではなく、観察可能なインプットのうち関連性のあるものを最大限利用することとしている。 - (4) 時価を算定するにあたっては、市場参加者が資産又は負債の時価を算定する際の仮定を用いるが、資産の保有や負債の決済又は履行に関する企業の意図は反映しない。
2.時価の算定単位
- 32. 資産又は負債の時価を算定する単位は、それぞれの対象となる資産又は負債に適用される会計処理又は開示によるとしており(第6項参照)、時価の算定が個々の資産又は負債を対象とするのか、あるいは資産又は負債のグループを対象とするのかについては、個々の会計処理又は開示を定める会計基準による。金融商品については、通常、個々の金融商品が時価の算定の対象となる。
- 33. 第7項の定めは、金融資産及び金融負債のグループの管理について、市場リスク又は信用リスクのいずれかに対する金融資産及び金融負債を相殺した後の正味の資産又は負債を基礎として行っている場合に、例外的な取扱いを認めるものである。この場合、金融資産及び金融負債のグループを単位とした時価は、市場参加者が算定日において正味の資産又は負債の時価を算定する方法と整合的に算定する。
- 34. 本会計基準第7項の定めは、金融資産と金融負債の貸借対照表における相殺表示(移管指針第9号「金融商品会計に関する実務指針」第140項)には適用されない。グループを単位として算定した時価の調整をグループ内の個々の金融資産及び金融負債の時価に配分する場合には、状況に応じた合理的な方法を毎期継続して適用する。
- 35. 第7項の定めを特定の市場リスクに適用するにあたっては、特定の市場リスクに対する金融資産及び金融負債を相殺した後の正味の資産又は負債について、買気配と売気配の間の適切な価格を適用する。
3.時価の算定方法
(1)評価技法
- 36. 時価の算定にあたっては、単一の評価技法が適切となる場合(例えば、同一の資産又は負債に関する活発な市場における相場価格を用いて資産又は負債の時価を算定する場合)もあるが、複数の評価技法が適切となる場合もある。
- なお、適切な評価技法は状況によって異なる可能性があり、評価技法の適切性を一律に判断することは困難であるため、評価技法のレベルを設けていない。
(2)インプット
- 37. インプットが観察可能となる可能性のある市場としては、例えば、取引所市場、ディーラー市場、ブローカー市場、相対市場等がある。
- 38. インプットの入手可能性及びその主観性が評価技法の選択に影響を及ぼす可能性がある(第8項参照)が、時価を分類するレベル(第12項参照)は、評価技法に用いるインプットのレベルに基づくものであり、評価技法に基づくものではない。
(3)資産又は負債の取引の数量又は頻度が著しく低下している場合等
- 39. 資産又は負債の取引の数量又は頻度が著しく低下している場合等の定めについては、観察可能な市場が通常存在しない資産又は負債には適用しない。
- 40. 資産又は負債の取引の数量又は頻度が当該資産又は負債に係る通常の市場における活動に比して著しく低下したと判断した場合には、取引価格又は相場価格が時価を表しているかどうかについての評価(第13項参照)が必要である。取引の数量又は頻度が低下したのみでは、取引価格又は相場価格が時価を表していないとも当該市場の取引が秩序あるものではないともいえない。
- 41. リスク・プレミアムに関する調整(第13項参照)は、現在の市場環境の下で、時価の算定日における市場参加者の秩序ある取引を反映するものであり、その算定の困難さのみでは、リスク・プレミアムに関する調整を行わない十分な根拠とはならない。
- 42. 資産又は負債の取引の数量又は頻度が著しく低下している場合には、評価技法の変更又は複数の評価技法の利用が適切となる可能性がある。
- 43. 資産又は負債の取引の数量又は頻度が著しく低下している場合であっても、時価の算定にあたっては、時価の定義(第5項参照)に基づき、算定日における事実及び状況を考慮する。時価の算定は、市場を基礎としたものであり、対象となる企業に固有のものではないため、資産の保有あるいは負債の決済又は履行に関する企業の意図は、時価を算定する際に考慮しない。
(4)負債又は払込資本を増加させる金融商品の時価
- 44. 負債の不履行リスクが当該負債の移転の前後で同一であるとの仮定(第15項参照)は現実的なものではないが、負債を引き受ける企業(譲受人)の信用リスクを特定しなければ、市場参加者である譲受人の特性を企業がどのように仮定するかによって、当該負債の時価が大きく異なる可能性があるため、当該仮定を定めている。
Ⅳ.適用時期等
1.適用時期
- 45. 公開草案では、早期に国際的な整合性を図ることが望ましいと考えられることから、2020年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用することを提案し、また、審議の過程で財務諸表の作成やその監査に向けた相応の準備期間を要するとの意見が聞かれたことから、2021年3月31日以後終了する連結会計年度及び事業年度の年度末に係る連結財務諸表及び個別財務諸表から適用することも認めることを提案していた。しかしながら、こうした提案に対して、システムの開発やプロセスの整備及び運用までを含めると十分な準備期間が必要であるとの意見や、具体的な実務の運用を検討するためにより時間を要するとの意見が寄せられたことから、2021年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用することとした(第16項参照)。
- ただし、速やかに適用することへの一定のニーズがあると想定されることから、2020年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から、また、2020年3月31日以後終了する連結会計年度及び事業年度における年度末に係る連結財務諸表及び個別財務諸表から本会計基準を早期適用することができることとした(第17項参照)。
2.経過措置
- 46. 本会計基準では、次の会計基準等に定める特定の経過的な取扱い(企業会計基準第24号第6項(1))を定めている。
- (1) 本会計基準の適用初年度においては、原則として将来にわたって適用することとした(第19項参照)。これは、IFRS第13号や米国財務会計基準書(SFAS)第157号「公正価値測定」が原則として将来にわたって適用するとした際の理由(公正価値を測定するために用いた方法の変更は新たな事象の発生又は新たな情報の入手による公正価値測定の変更と不可分であるため、会計上の見積りの変更と同様の取扱いとしたこと)は、本会計基準においても同様であると考えられるためである。
- (2) ただし、例えば、時価の算定にあたり観察可能なインプットを最大限利用しなければならない定めなど、従来の時価算定の内容を実質的に変更する新たな定めの適用に伴い時価を算定するために用いた方法を変更する場合は、比較可能性の観点からは遡及適用する方が有用である可能性があるため、その影響額が分離可能なときには、当該部分については遡及適用することができるとした(第20項参照)。
本会計基準の公表による他の会計基準等についての修正
- 本会計基準により、当委員会が公表した会計基準等については、次の修正を行う(下線は追加部分、取消線は削除部分を示す。)。
- (略)
- 以 上
