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企業会計基準第7号事業分離等に関する会計基準
目 的
- 1. 企業会計基準第21号「企業結合に関する会計基準」(以下「企業結合会計基準」という。)では、企業結合に該当する取引を対象とし、結合企業を中心に結合当事企業の会計処理を定めている。これを受けて本会計基準では、会社分割や事業譲渡などの場合における事業を分離する企業(分離元企業)の会計処理(移転損益を認識するかどうか。第10項参照)や、合併や株式交換などの企業結合における結合当事企業の株主に係る会計処理(交換損益を認識するかどうか。第32項参照)などを定めることを目的とする。
- 2. 本会計基準の適用にあたっては、企業会計基準適用指針第10号「企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針」も参照する必要がある。
会計基準
用語の定義
- 2-2. 「企業」とは、会社及び会社に準ずる事業体をいい、会社、組合その他これらに準ずる事業体(外国におけるこれらに相当するものを含む。)を指す。
- 3. 「事業」とは、企業活動を行うために組織化され、有機的一体として機能する経営資源をいう。
- 4. 「事業分離」とは、ある企業を構成する事業を他の企業(新設される企業を含む。)に移転することをいう。なお、複数の取引が1つの事業分離を構成している場合には、それらを一体として取り扱う。
- 5. 「分離元企業」とは、事業分離において、当該企業を構成する事業を移転する企業をいう。
- 6. 「分離先企業」とは、事業分離において、分離元企業からその事業を受け入れる企業(新設される企業を含む。)をいう。
- 7. 「結合当事企業」とは、企業結合に係る企業をいい、このうち、他の企業又は他の企業を構成する事業を受け入れて対価(現金等の財産や自社の株式)を支払う企業を「結合企業」、当該他の企業を「被結合企業」という。また、企業結合によって統合された1つの報告単位となる企業を「結合後企業」という。
- 8. 「事業分離日」とは、分離元企業の事業が分離先企業に移転されるべき日をいい、通常、事業分離を定める契約書等に記載され、会社分割の場合は分割期日、事業譲渡の場合は譲渡期日となる。また、事業分離日の属する事業年度を「事業分離年度」という。
範 囲
- 9. 本会計基準は、以下の会計処理を定める。
- (1) 事業分離における分離元企業の会計処理
- (2) 資産を移転し移転先の企業の株式を受け取る場合(事業分離に該当する場合を除く。)の移転元の企業の会計処理
- (3) 共同支配企業の形成及び共通支配下の取引以外の企業結合における結合当事企業の株主(被結合企業又は結合企業の株主)に係る会計処理
なお、分離元企業(分割会社)がある事業を分離先企業(承継会社又は新設会社)に移転し、移転に係る対価である当該承継会社又は新設会社の株式を事業分離日(分割期日)に直接、分割会社の株主に交付していると考えられる吸収分割又は新設分割(いわゆる「分割型の会社分割」)における当該分割会社の株主に係る会計処理も定める(第49項から第51項参照)。
また、株主が現金以外の財産(ただし、分割型の会社分割による新設会社又は承継会社の株式を除く。以下同じ。)の分配を受けた場合も、企業結合に該当しないが、本会計基準では、当該株主の会計処理も定めている(第52項参照)。
分離元企業の会計処理
- 10. 分離元企業は、事業分離日に、次のように会計処理する。
- (1) 移転した事業に関する投資が清算されたとみる場合には、その事業を分離先企業に移転したことにより受け取った対価となる財の時価と、移転した事業に係る株主資本相当額(移転した事業に係る資産及び負債の移転直前の適正な帳簿価額による差額から、当該事業に係る評価・換算差額等及び新株予約権を控除した額をいう。以下同じ。)との差額を移転損益として認識するとともに、改めて当該受取対価の時価にて投資を行ったものとする。
現金など、移転した事業と明らかに異なる資産を対価として受け取る場合には、投資が清算されたとみなされる(第14項から第16項及び第23項参照)。ただし、事業分離後においても、分離元企業の継続的関与(分離元企業が、移転した事業又は分離先企業に対して、事業分離後も引き続き関与すること)があり、それが重要であることによって、移転した事業に係る成果の変動性を従来と同様に負っている場合には、投資が清算されたとみなされず、移転損益は認識されない。 - (2) 移転した事業に関する投資がそのまま継続しているとみる場合、移転損益を認識せず、その事業を分離先企業に移転したことにより受け取る資産の取得原価は、移転した事業に係る株主資本相当額に基づいて算定するものとする。
子会社株式や関連会社株式となる分離先企業の株式のみを対価として受け取る場合には、当該株式を通じて、移転した事業に関する事業投資を引き続き行っていると考えられることから、当該事業に関する投資が継続しているとみなされる(第17項から第22項参照)。 - いずれの場合においても、分離元企業において、事業分離により移転した事業に係る資産及び負債の帳簿価額は、事業分離日の前日において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠した適正な帳簿価額のうち、移転する事業に係る金額を合理的に区分して算定する。
- 11. 事業分離に要した支出額は、発生時の事業年度の費用として処理する。
- 12. 移転損益を認識する場合の受取対価となる財の時価は、受取対価が現金以外の資産等の場合には、受取対価となる財の時価と移転した事業の時価のうち、より高い信頼性をもって測定可能な時価で算定する。
- 13. 市場価格のある分離先企業の株式が受取対価とされる場合には、受取対価となる財の時価は、事業分離日の株価を基礎にして算定する。
受取対価が現金等の財産のみである場合の分離元企業の会計処理
子会社を分離先企業として行われた事業分離の場合
- 14. 現金等の財産のみを受取対価とする事業分離において、子会社へ事業分離する場合、分離元企業(親会社)は次の処理を行う。
- (1) 個別財務諸表上、共通支配下の取引として、分離元企業が受け取った現金等の財産は、移転前に付された適正な帳簿価額により計上する。この結果、当該価額と移転した事業に係る株主資本相当額との差額は、原則として、移転損益として認識する。
- (2) 連結財務諸表上、移転損益は、企業会計基準第22号「連結財務諸表に関する会計基準」(以下「連結会計基準」という。)における未実現損益の消去に準じて処理する。
関連会社を分離先企業として行われた事業分離の場合
- 15. 現金等の財産のみを受取対価とする事業分離において、関連会社へ事業分離する場合、分離元企業は次の処理を行う。
- (1) 個別財務諸表上、分離元企業が受け取った現金等の財産は、原則として、時価により計上する。この結果、当該時価と移転した事業に係る株主資本相当額との差額は、原則として、移転損益として認識する。
- (2) 連結財務諸表上、移転損益は、企業会計基準第16号「持分法に関する会計基準」(以下「持分法会計基準」という。)における未実現損益の消去に準じて処理する。
子会社や関連会社以外を分離先企業として行われた事業分離の場合
- 16. 現金等の財産のみを受取対価とする事業分離において、子会社や関連会社以外へ事業分離する場合、分離元企業が受け取った現金等の財産は、原則として、時価により計上し、移転した事業に係る株主資本相当額との差額は、原則として、移転損益として認識する。
受取対価が分離先企業の株式のみである場合の分離元企業の会計処理
分離先企業が子会社となる場合
- 17. 事業分離前に分離元企業は分離先企業の株式を有していないが、事業分離により分離先企業が新たに分離元企業の子会社となる場合、分離元企業(親会社)は次の処理を行う。
- (1) 個別財務諸表上、移転損益は認識せず、当該分離元企業が受け取った分離先企業の株式(子会社株式)の取得原価は、移転した事業に係る株主資本相当額に基づいて算定する。
- (2) 連結財務諸表上、分離元企業(親会社)の事業が移転されたとみなされる額と、移転した事業に係る分離元企業(親会社)の持分の減少額との間に生じる差額については、資本剰余金とする。
なお、分離元企業は、分離先企業を取得することとなるため、分離元企業の連結財務諸表上、パーチェス法を適用する。 - 18. 事業分離前に分離元企業は分離先企業の株式を有しその他有価証券(売買目的有価証券の場合を含む。以下同じ。)又は関連会社株式としており、事業分離により分離先企業が新たに分離元企業の子会社となる場合、分離元企業(親会社)は次の処理を行う。
- (1) 個別財務諸表上、前項(1)と同様に、移転損益は認識せず、当該分離元企業が追加的に受け取った分離先企業の株式の取得原価は、移転した事業に係る株主資本相当額に基づいて算定する。
- (2) 連結財務諸表上、分離元企業(親会社)の事業が移転されたとみなされる額と、移転した事業に係る分離元企業(親会社)の持分の減少額との間に生じる差額については、資本剰余金とする。
なお、分離元企業の連結財務諸表上、分離先企業を被取得企業としてパーチェス法を適用する際、分離先企業に対して投資したとみなされる額は、分離元企業が追加的に受け取った分離先企業の株式の取得原価((1)参照)と事業分離前に有していた分離先企業の株式の支配獲得時(事業分離日)の時価との合計額とし、当該時価と、その適正な帳簿価額との差額(その他有価証券としていた場合)又はその持分法評価額との差額(関連会社株式としていた場合)は、当期の段階取得に係る損益として処理する。また、当該投資したとみなされる額と、これに対応する分離先企業の事業分離直前の資本との差額をのれん(又は負ののれん)とする。 - 19. 事業分離前に分離元企業は分離先企業の株式を有し子会社株式としており、事業分離により分離先企業の株式(子会社株式)を追加取得した場合、分離元企業(親会社)は次の処理を行う。
- (1) 個別財務諸表上、第17項(1)と同様に、移転損益は認識せず、当該分離元企業が追加取得した分離先企業の株式(子会社株式)の取得原価は、移転した事業に係る株主資本相当額に基づいて算定する。
- (2) 連結財務諸表上、追加取得により、子会社に係る分離元企業(親会社)の持分の増加額(追加取得持分)と、移転した事業に係る分離元企業(親会社)の持分の減少額との間に生じる差額は、資本剰余金とする。
分離先企業が関連会社となる場合
- 20. 事業分離前に分離元企業は分離先企業の株式を有していないが、事業分離により分離先企業が新たに分離元企業の関連会社となる場合(共同支配企業の形成の場合は含まれない。次項及び第22項において同じ。)、分離元企業は次の処理を行う。
- (1) 個別財務諸表上、移転損益は認識せず、当該分離元企業が受け取った分離先企業の株式(関連会社株式)の取得原価は、移転した事業に係る株主資本相当額に基づいて算定する。
- (2) 連結財務諸表上、持分法適用において、関連会社に係る分離元企業の持分の増加額と、移転した事業に係る分離元企業の持分の減少額との間に生じる差額は、次のように処理する。
- ① 分離先企業に対して投資したとみなされる額と、これに対応する分離先企業の事業分離直前の資本(関連会社に係る分離元企業の持分の増加額)との間に生じる差額については、のれん(又は負ののれん)として処理する。
- ② 分離元企業の事業が移転されたとみなされる額と、移転した事業に係る分離元企業の持分の減少額との間に生じる差額については、持分変動差額として取り扱う。
ただし、①と②のいずれかの金額に重要性が乏しいと考えられる場合には、重要性のある他の金額に含めて処理することができる(次項及び第22項において同じ。)。 - 21. 事業分離前に分離元企業は分離先企業の株式を有しその他有価証券としており、事業分離により分離先企業が新たに分離元企業の関連会社となる場合、分離元企業は次の処理を行う。
- (1) 個別財務諸表上、前項(1)と同様に、移転損益は認識せず、当該分離元企業が追加取得した分離先企業の株式の取得原価は、移転した事業に係る株主資本相当額に基づいて算定する。
- (2) 連結財務諸表上、持分法適用において、次のようにのれん(又は負ののれん)と持分変動差額を処理する。
- ① 分離先企業の株式を受け取った取引ごとに分離先企業に対して投資したとみなされる額の合計と、その取引ごとに対応する分離先企業の資本の合計との間に生じる差額については、のれん(又は負ののれん)として処理する。
- ② 分離元企業の事業が移転されたとみなされる額と、移転した事業に係る分離元企業の持分の減少額との間に生じる差額については、持分変動差額として取り扱う。
- 22. 事業分離前に分離元企業は分離先企業の株式を有し関連会社株式としており、事業分離により分離先企業の株式(関連会社株式)を追加取得した場合、分離元企業は次の処理を行う。
- (1) 個別財務諸表上、第20項(1)と同様に、移転損益は認識せず、当該分離元企業が追加取得した分離先企業の株式(関連会社株式)の取得原価は、移転した事業に係る株主資本相当額に基づいて算定する。
- (2) 連結財務諸表上、持分法適用において、追加取得により、関連会社に係る分離元企業の持分の増加額(追加取得持分)と、移転した事業に係る分離元企業の持分の減少額との間に生じる差額は、次のように処理する。
- ① 分離先企業に対して追加投資したとみなされる額と、これに対応する分離先企業の事業分離直前の資本(追加取得持分)との間に生じる差額については、のれん(又は負ののれん)として処理する。
- ② 分離元企業の事業が移転されたとみなされる額と、移転した事業に係る分離元企業の持分の減少額との間に生じる差額については、持分変動差額として取り扱う。
分離先企業が子会社や関連会社以外となる場合
- 23. 分離先企業の株式のみを受取対価とする事業分離により分離先企業が子会社や関連会社以外となる場合(共同支配企業の形成の場合を除く。)、分離元企業の個別財務諸表上、原則として、移転損益が認識される。また、分離先企業の株式の取得原価は、移転した事業に係る時価又は当該分離先企業の株式の時価のうち、より高い信頼性をもって測定可能な時価に基づいて算定される。
受取対価が現金等の財産と分離先企業の株式である場合の分離元企業の会計処理
分離先企業が子会社となる場合
- 24. 現金等の財産と分離先企業の株式を受取対価とする事業分離において、分離先企業が子会社となる場合や子会社へ事業分離する場合、分離元企業は次の処理を行う。
- (1) 個別財務諸表上、共通支配下の取引又はこれに準ずる取引として、分離元企業が受け取った現金等の財産は、移転前に付された適正な帳簿価額により計上する。この結果、当該価額が移転した事業に係る株主資本相当額を上回る場合には、原則として、当該差額を移転利益として認識(受け取った分離先企業の株式の取得原価はゼロとする。)し、下回る場合には、当該差額を受け取った分離先企業の株式の取得原価とする。
- (2) 連結財務諸表上、移転利益は、連結会計基準における未実現損益の消去に準じて処理する。また、子会社に係る分離元企業の持分の増加額と、移転した事業に係る分離元企業の持分の減少額との間に生じる差額は、第17項から第19項に準じ、資本剰余金とする。
なお、事業分離前に分離先企業の株式をその他有価証券又は関連会社株式として保有していた場合には、当該分離先企業の株式は、事業分離日における時価をもって受け取った分離先企業の株式の取得原価に加算し、その時価と適正な帳簿価額との差額は当期の段階取得に係る損益として認識する。
分離先企業が関連会社となる場合
- 25. 現金等の財産と分離先企業の株式を受取対価とする事業分離において、分離先企業が関連会社となる場合や関連会社へ事業分離する場合、分離元企業は次の処理を行う。
- (1) 個別財務諸表上、分離元企業で受け取った現金等の財産は、原則として、時価により計上する。この結果、当該時価が移転した事業に係る株主資本相当額を上回る場合には、原則として、当該差額を移転利益として認識(受け取った分離先企業の株式の取得原価はゼロとする。)し、下回る場合には、当該差額を受け取った分離先企業の株式の取得原価とする。
- (2) 連結財務諸表上、移転利益は、持分法会計基準における未実現損益の消去に準じて処理する。また、関連会社に係る分離元企業の持分の増加額と、移転した事業に係る分離元企業の持分の減少額との間に生じる差額は、第20項から第22項に準じ、原則として、のれん(又は負ののれん)と持分変動差額に区分して処理する。
分離先企業が子会社や関連会社以外となる場合
- 26. 現金等の財産と分離先企業の株式を受取対価とする事業分離により、分離先企業が子会社や関連会社以外となる場合には、分離先企業の株式のみを受取対価とする場合における分離元企業の会計処理(第23項参照)に準じて行う。
開 示
損益計算書における表示
- 27. 移転損益は、原則として、特別損益に計上する。
注記事項
(事業分離の注記事項)
- 28. 事業分離年度において、共通支配下の取引や共同支配企業の形成に該当しない重要な事業分離を行った場合、分離元企業は次の事項を注記する。なお、個々の取引については重要性が乏しいが、事業分離年度における取引全体について重要性がある場合には、(1)及び(2)について、当該取引全体で注記する。また、連結財務諸表における注記と個別財務諸表における注記が同じとなる場合には、個別財務諸表においては、連結財務諸表に当該注記がある旨の記載をもって代えることができる。
- (1) 事業分離の概要
分離先企業の名称、分離した事業の内容、事業分離を行った主な理由、事業分離日及び法的形式を含む取引の概要 - (2) 実施した会計処理の概要(第18項(2)なお書き及び第24項(2)なお書きにより認識された損益の金額を含む。)
- (3) セグメント情報の開示において、当該分離した事業が含まれていた区分の名称
- (4) 当期の損益計算書に計上されている分離した事業に係る損益の概算額
- (5) 分離先企業の株式を子会社株式又は関連会社株式として保有すること以外で分離元企業の継続的関与があるにもかかわらず、移転損益を認識した場合、当該継続的関与の主な概要。ただし、軽微なものについては注記を省略することができる。
- 29. (削 除)
(重要な開示後発事象等の注記事項)
- 30. 分離元企業は、貸借対照表日後に完了した事業分離や貸借対照表日後に主要条件が合意された事業分離が、重要な開示後発事象に該当する場合には、第28項(ただし、貸借対照表日後に主要条件が合意された事業分離にあっては、(1)及び(3)に限る。)に準じて注記を行う。
また、当事業年度中に事業分離の主要条件が合意されたが、貸借対照表日までに事業分離が完了していない場合(ただし、重要な開示後発事象に該当する場合を除く。)についても、第28項(1)及び(3)に準じて注記を行う。
資産の現物出資等における移転元の企業の会計処理
- 31. 資産を移転し移転先の企業の株式を受け取る場合(事業分離に該当する場合を除く。)において、移転元の企業の会計処理は、事業分離における分離元企業の会計処理に準じて行う。
結合当事企業の株主に係る会計処理
被結合企業の株主に係る会計処理
- 32. 被結合企業の株主は、企業結合日に、次のように会計処理する。
- (1) 被結合企業に関する投資が清算されたとみる場合には、被結合企業の株式と引き換えに受け取った対価となる財の時価と、被結合企業の株式に係る企業結合直前の適正な帳簿価額との差額を交換損益として認識するとともに、改めて当該受取対価の時価にて投資を行ったものとする。
現金など、被結合企業の株式と明らかに異なる資産を対価として受け取る場合には、投資が清算されたとみなされる(第35項から第37項及び第41項参照)。ただし、企業結合後においても、被結合企業の株主の継続的関与(被結合企業の株主が、結合後企業に対して、企業結合後も引き続き関与すること)があり、それが重要であることによって、交換した株式に係る成果の変動性を従来と同様に負っている場合には、投資が清算されたとみなされず、交換損益は認識されない。 - (2) 被結合企業に関する投資がそのまま継続しているとみる場合、交換損益を認識せず、被結合企業の株式と引き換えに受け取る資産の取得原価は、被結合企業の株式に係る適正な帳簿価額に基づいて算定するものとする。
被結合企業が子会社や関連会社の場合において、当該被結合企業の株主が、子会社株式や関連会社株式となる結合企業の株式のみを対価として受け取る場合には、当該引き換えられた結合企業の株式を通じて、被結合企業(子会社や関連会社)に関する事業投資を引き続き行っていると考えられることから、当該被結合企業に関する投資が継続しているとみなされる(第38項から第40項及び第42項から第44項参照)。 - 33. 交換損益を認識する場合の受取対価となる財の時価は、受取対価が現金以外の資産等の場合には、受取対価となる財の時価と引き換えた被結合企業の株式の時価のうち、より高い信頼性をもって測定可能な時価で算定する。
- 34. 市場価格のある結合企業の株式が受取対価とされる場合には、受取対価となる財の時価は、企業結合日の株価を基礎にして算定する。
受取対価が現金等の財産のみである場合の被結合企業の株主に係る会計処理
子会社を被結合企業とした企業結合の場合
- 35. 子会社を被結合企業とする企業結合により、子会社株式である被結合企業の株式が現金等の財産のみと引き換えられた場合、当該被結合企業の株主(親会社)に係る会計処理は、事業分離における分離元企業の会計処理(第14項から第16項参照)に準じて行う。
関連会社を被結合企業とした企業結合の場合
- 36. 関連会社を被結合企業とする企業結合により、関連会社株式である被結合企業の株式が現金等の財産のみと引き換えられた場合、被結合企業の株主は次の処理を行う。
- (1) 個別財務諸表上、被結合企業の株主が受け取った現金等の財産は、原則として、時価により計上する。この結果、当該時価と引き換えられた被結合企業の株式の適正な帳簿価額との差額は、原則として、交換損益として認識する。
- (2) 被結合企業の株主の子会社又は他の関連会社を結合企業とする場合、連結財務諸表上、交換損益は、連結会計基準及び持分法会計基準における未実現損益の消去に準じて処理する。
子会社や関連会社以外の投資先を被結合企業とした企業結合の場合
- 37. 子会社や関連会社以外の投資先を被結合企業とする企業結合により、子会社株式や関連会社株式以外の被結合企業の株式が、現金等の財産のみと引き換えられた場合、被結合企業の株主は次の処理を行う。
- (1) 個別財務諸表上、被結合企業の株主が受け取った現金等の財産は、原則として、時価により計上する。この結果、当該時価と引き換えられた被結合企業の株式の適正な帳簿価額との差額は、原則として、交換損益として認識する。
- (2) 被結合企業の株主の子会社又は関連会社を結合企業とする場合、連結財務諸表上、交換損益は、連結会計基準及び持分法会計基準における未実現損益の消去に準じて処理する。
受取対価が結合企業の株式のみである場合の被結合企業の株主に係る会計処理
子会社を被結合企業とした企業結合の場合
(被結合企業の株主(親会社)の持分比率が減少する場合)
- 38. 子会社を被結合企業とする企業結合により、子会社株式である被結合企業の株式が結合企業の株式のみと引き換えられ、当該被結合企業の株主(親会社)の持分比率が減少する場合、当該被結合企業の株主(親会社)に係る会計処理は、事業分離における分離元企業の会計処理(第17項から第23項参照)に準じて行う。
(被結合企業の株主(親会社)の持分比率が増加する場合)
- 39. 子会社を被結合企業とする企業結合により、子会社株式である被結合企業の株式が結合企業の株式のみと引き換えられ、企業結合前に、被結合企業の株主が被結合企業の株式(子会社株式)に加え結合企業の株式(子会社株式)も有していることから、当該被結合企業の株主としての持分比率が増加(結合企業の株主としての持分比率は減少)する場合、当該被結合企業の株主としての持分の増加については、追加取得に準じて処理し、当該結合企業の株主としての持分の減少については、第17項における分離元企業の会計処理に準じて行う。
関連会社を被結合企業とした企業結合の場合
(被結合企業の株主の持分比率が減少する場合)
- 40. 関連会社を被結合企業とする企業結合により、関連会社株式である被結合企業の株式が結合企業の株式のみと引き換えられ、当該被結合企業の株主の持分比率は減少するが、結合後企業が引き続き当該被結合企業の株主の関連会社である場合(関連会社株式から関連会社株式)、被結合企業の株主は次の処理を行う。
- (1) 個別財務諸表上、交換損益は認識せず、結合後企業の株式(関連会社株式)の取得原価は、引き換えられた被結合企業の株式(関連会社株式)に係る企業結合直前の適正な帳簿価額に基づいて算定する。
- (2) 連結財務諸表上、持分法適用において、関連会社となる結合後企業に係る被結合企業の株主の持分の増加額と、従来の被結合企業に係る被結合企業の株主の持分の減少額との間に生じる差額は、次のように処理する。
- ① 被結合企業に対する持分が交換されたとみなされる額と、これに対応する企業結合直前の結合企業の資本(関連会社となる結合後企業に係る被結合企業の株主の持分の増加額)との間に生じる差額については、のれん(又は負ののれん)として処理する。
- ② 被結合企業の株式が交換されたとみなされる額と、従来の被結合企業に係る被結合企業の株主の持分の減少額との間に生じる差額については、持分変動差額として取り扱う。
ただし、①と②のいずれかの金額に重要性が乏しいと考えられる場合には、重要性のある他の金額に含めて処理することができる。 - 41. 関連会社を被結合企業とする企業結合により、関連会社株式である被結合企業の株式が結合企業の株式のみと引き換えられ、当該被結合企業の株主の持分比率が減少し、結合後企業が当該被結合企業の株主の関連会社に該当しないこととなる場合(関連会社株式からその他有価証券)、被結合企業の株主は次の処理を行う。
- (1) 個別財務諸表上、原則として、交換損益を認識する。結合後企業の株式の取得原価は、当該結合後企業の株式の時価又は被結合企業の株式の時価のうち、より高い信頼性をもって測定可能な時価に基づいて算定される。
- (2) 連結財務諸表上、これまで関連会社としていた被結合企業の株式は、個別貸借対照表上の帳簿価額をもって評価する。
(被結合企業の株主の持分比率が増加する場合)
- 42. 関連会社を被結合企業とする企業結合により、関連会社株式である被結合企業の株式が結合企業の株式のみと引き換えられ、企業結合前に、被結合企業の株主が被結合企業の株式(関連会社株式)に加え結合企業の株式(子会社株式又は関連会社株式)も有していることから、当該被結合企業の株主としての持分比率が増加(結合企業の株主としての持分比率は減少)する場合、当該被結合企業の株主としての持分の増加については、追加取得に準じて処理する。
- また、当該結合企業の株主としての持分の減少については、結合後企業が子会社となる場合には、第17項における分離元企業の会計処理に準じて行い、結合後企業が関連会社となる場合には、子会社の時価発行増資等により支配を喪失して関連会社になる場合における親会社の会計処理又は関連会社の時価発行増資等における投資会社の会計処理に準じて行う。
子会社や関連会社以外の投資先を被結合企業とした企業結合の場合
(結合後企業が子会社や関連会社以外の投資先となる場合)
- 43. 子会社や関連会社以外の投資先を被結合企業とする企業結合により、子会社株式や関連会社株式以外の被結合企業の株式が結合企業の株式のみと引き換えられ、結合後企業が引き続き、当該株主の子会社や関連会社に該当しない場合(その他有価証券からその他有価証券)、被結合企業の株主の個別財務諸表上、交換損益は認識されず、結合後企業の株式の取得原価は、引き換えられた被結合企業の株式に係る企業結合直前の適正な帳簿価額に基づいて算定する。
(結合後企業が子会社や関連会社となる場合)
- 44. 子会社や関連会社以外の投資先を被結合企業とする企業結合により、子会社株式や関連会社株式以外の被結合企業の株式が結合企業の株式のみと引き換えられ、企業結合前に、被結合企業の株主が被結合企業の株式に加え結合企業の株式(子会社株式又は関連会社株式)も有していることから、当該被結合企業の株主としての持分比率が増加(結合企業の株主としての持分比率は減少)し、結合後企業は当該株主の子会社又は関連会社となる場合(その他有価証券から子会社株式又は関連会社株式)、当該被結合企業の株主としての持分の増加については、段階取得に準じて処理する。
- また、当該結合企業の株主としての持分の減少については、結合後企業が子会社となる場合には、第17項における分離元企業の会計処理に準じて行い、結合後企業が関連会社となる場合には、子会社の時価発行増資等により支配を喪失して関連会社になる場合における親会社の会計処理又は関連会社の時価発行増資等における投資会社の会計処理に準じて行う。
受取対価が現金等の財産と結合企業の株式である場合の被結合企業の株主に係る会計処理
子会社を被結合企業とした企業結合の場合
- 45. 子会社を被結合企業とする企業結合により、子会社株式である被結合企業の株式が、現金等の財産と結合企業の株式とに引き換えられ、当該被結合企業の株主(親会社)の持分比率が減少する場合、当該被結合企業の株主(親会社)に係る会計処理は、事業分離における分離元企業の会計処理(第24項から第26項参照)に準じて行う。
- なお、企業結合前に、被結合企業の株主が被結合企業の株式(子会社株式)に加え結合企業の株式(子会社株式)も有していることから、当該被結合企業の株主としての持分比率が増加(結合企業の株主としての持分比率は減少)する場合、第39項に準じて処理する。また、連結財務諸表上、交換利益は、連結会計基準における未実現損益の消去に準じて処理する。
関連会社を被結合企業とした企業結合の場合
- 46. 関連会社を被結合企業とする企業結合により、関連会社株式である被結合企業の株式が、現金等の財産と結合企業の株式とに引き換えられ、当該被結合企業の株主の持分比率は減少するが、結合後企業が引き続き当該被結合企業の株主の関連会社である場合(関連会社株式から関連会社株式)、被結合企業の株主は次の処理を行う。
- (1) 個別財務諸表上、被結合企業の株主が受け取った現金等の財産は、原則として、時価により計上する。この結果、当該時価が引き換えられた被結合企業の株式に係る適正な帳簿価額を上回る場合には、原則として、当該差額を交換利益として認識(受け取った結合企業の株式の取得原価はゼロとする。)し、下回る場合には、当該差額を受け取った結合企業の株式の取得原価とする。
- (2) 連結財務諸表上、持分法適用において、交換利益は、持分法会計基準における未実現損益の消去に準じて処理する。また、関連会社となる結合後企業に係る被結合企業の株主の持分の増加額と、従来の被結合企業に係る被結合企業の株主の持分の減少額との間に生じる差額は、第40項(2)に準じ、原則として、のれん(又は負ののれん)と持分変動差額に区分して処理する。
- なお、企業結合前に、被結合企業の株主が被結合企業の株式(関連会社株式)に加え結合企業の株式(子会社株式又は関連会社株式)も有していることから、当該被結合企業の株主としての持分比率が増加(結合企業の株主としての持分比率は減少)する場合、第42項に準じて処理する。
- また、結合後企業が子会社や関連会社に該当しないこととなる場合には、第36項及び第41項に準じて処理する。
子会社や関連会社以外の投資先を被結合企業とした企業結合の場合
- 47. 子会社や関連会社以外の投資先を被結合企業とする企業結合により、子会社株式や関連会社株式以外の被結合企業の株式が、現金等の財産と結合企業の株式とに引き換えられた場合、被結合企業の株主は、企業会計基準第10号「金融商品に関する会計基準」(以下「金融商品会計基準」という。)に準じて処理する。
- なお、企業結合前に、被結合企業の株主が被結合企業の株式に加え結合企業の株式(子会社株式又は関連会社株式)も有していることから、当該被結合企業の株主としての持分比率が増加(結合企業の株主としての持分比率は減少)し、結合後企業は当該株主の子会社又は関連会社となる場合(その他有価証券から子会社株式又は関連会社株式)、第44項に準じて処理する。また、連結財務諸表上、交換損益は、連結会計基準及び持分法会計基準における未実現損益の消去に準じて処理する。
結合企業の株主に係る会計処理
- 48. 結合企業の株主は、次の処理を行う。
- (1) 企業結合により結合企業の株主の持分比率が減少する場合
- ① 子会社を結合企業とする企業結合により、当該結合企業の株主の持分比率が減少する場合、子会社を被結合企業とする企業結合における被結合企業の株主の会計処理(第38項参照)に準じて処理する。また、関連会社を結合企業とする企業結合により、当該結合企業の株主の持分比率が減少する場合、関連会社を被結合企業とする企業結合における被結合企業の株主の会計処理(第40項及び第41項参照)に準じて処理する(結合企業の株主が被結合企業の株式も有しており、結合後企業は当該株主の子会社又は関連会社となる場合については、第39項、第42項及び第44項参照)。
- ② 子会社や関連会社以外の投資先を結合企業とする企業結合により、当該結合企業の株主の持分比率が減少する場合(その他有価証券からその他有価証券)、結合企業の株主は何も会計処理しない。
- (2) 企業結合により結合企業の株主の持分比率が増加する場合
- ① 企業結合前に、結合企業の株主が結合企業の株式に加え被結合企業の株式(子会社株式又は関連会社株式)も有していることから、当該結合企業の株主としての持分比率が増加(被結合企業の株主としての持分比率は減少)し、結合後企業は当該株主の子会社又は関連会社となる場合、有している被結合企業の株式が子会社株式であるときには第38項、有している被結合企業の株式が関連会社株式であるときには第40項による。
- ② 企業結合前に、結合企業の株主が結合企業の株式に加え被結合企業の株式(その他有価証券)も有していることから、当該結合企業の株主としての持分比率が増加(被結合企業の株主としての持分比率は減少)するが、結合後企業が引き続き子会社や関連会社以外の投資先である場合(その他有価証券からその他有価証券)、結合企業の株主は何も会計処理しない。
分割型の会社分割における分割会社の株主に係る会計処理
受取対価が新設会社又は承継会社の株式のみである場合の分割会社の株主に係る会計処理
- 49. 分割型の会社分割により分割会社の株主が新設会社又は承継会社の株式のみを受け取った場合、当該分割会社の株主は、これまで保有していた分割会社の株式の全部又は一部と実質的に引き換えられたものとみなして、被結合企業の株主に係る会計処理(第38項から第44項参照)に準じて処理する。
- 50. 前項(次項の場合を含む。)を適用するにあたっては、被結合企業の株主に係る会計処理における被結合企業の株式に係る企業結合直前の適正な帳簿価額に代えて、分割した部分に係る分割会社の株式の適正な帳簿価額を用いる。これは、分割直前の分割会社の株式の適正な帳簿価額のうち、引き換えられたものとみなされる部分を合理的な方法によって按分し算定する。
受取対価が現金等の財産と新設会社又は承継会社の株式である場合の分割会社の株主に係る会計処理
- 51. 分割型の会社分割により分割会社の株主が現金等の財産と新設会社又は承継会社の株式を受け取った場合、当該分割会社の株主は、これまで保有していた分割会社の株式の全部又は一部と実質的に引き換えられたものとみなして、被結合企業の株主に係る会計処理(第45項から第47項参照)に準じて処理する。
現金以外の財産の分配を受けた場合の株主に係る会計処理
- 52. 株主が現金以外の財産の分配を受けた場合、企業結合に該当しないが、当該株主は、原則として、これまで保有していた株式と実質的に引き換えられたものとみなして、被結合企業の株主に係る会計処理(第35項から第37項参照)に準じて処理する。
- この際、これまで保有していた株式のうち実質的に引き換えられたものとみなされる額は、分配を受ける直前の当該株式の適正な帳簿価額を合理的な方法によって按分し算定する。
開 示
損益計算書における表示
- 53. 交換損益は、原則として、特別損益に計上する。
注記事項
(子会社を結合当事企業とする株主(親会社)の注記事項)
- 54. 子会社を結合当事企業とする株主(親会社)は、結合当事企業(子会社)の企業結合により、子会社に該当しなくなった場合には、当該企業結合日の属する連結会計年度において、連結財務諸表上、当該企業結合に関する次の事項を注記する。
- ただし、重要性が乏しい取引については、注記を省略することができるものとし、個々の取引については重要性が乏しいが、連結会計年度における取引全体について重要性がある場合には、(1)及び(2)を当該取引全体で注記する。
- (1) 子会社が行った企業結合の概要
各結合当事企業の名称、その事業の内容、企業結合を行った主な理由、企業結合日及び法的形式を含む取引の概要 - (2) 実施した会計処理の概要(第44項に定める段階取得に準じた処理の結果認識された損益の金額を含む。)
- (3) セグメント情報の開示において、当該結合当事企業が含まれていた区分の名称
- (4) 当期の連結損益計算書に計上されている結合当事企業に係る損益の概算額
- (5) 結合後企業の株式を関連会社株式として保有すること以外で結合当事企業の株主の継続的関与があるにもかかわらず、交換損益を認識した場合、当該継続的関与の主な概要。ただし、軽微なものについては注記を省略することができる。
- 55. (削 除)
(重要な開示後発事象等の注記事項)
- 56. 子会社を結合当事企業とする株主(親会社)は、貸借対照表日後に完了した企業結合や貸借対照表日後に主要条件が合意された企業結合が、重要な開示後発事象に該当する場合には、第54項(ただし、貸借対照表日後に主要条件が合意された企業結合にあっては、(1)及び(3)に限る。)に準じて注記を行う。
また、当事業年度中に企業結合の主要条件が合意されたが、貸借対照表日までに企業結合が完了していない場合(ただし、重要な開示後発事象に該当する場合を除く。)についても、第54項(1)及び(3)に準じて注記を行う。
適用時期等
- 57. 平成17年公表の本会計基準(以下「平成17年会計基準」という。)は、平成18年4月1日以後開始する事業年度から適用する。
- 57-2. 平成20年改正の本会計基準(以下「平成20年改正会計基準」という。)は、平成22年4月1日以後実施される事業分離等から適用する。
ただし、平成21年4月1日以後開始する事業年度において最初に実施される事業分離等から適用することができる。この場合、企業結合会計基準、連結会計基準、企業会計基準第23号「『研究開発費等に係る会計基準』の一部改正」及び平成20年に改正された持分法会計基準についても適用する。 - 57-3. 平成20年改正会計基準の適用初年度においては、会計基準の変更に伴う会計方針の変更として取り扱う。ただし、会計方針の変更による影響額の注記は要しない。
また、平成20年改正会計基準の適用前に実施された事業分離等に係る会計処理の従前の取扱いは、平成20年改正会計基準の適用後においても継続し、平成20年改正会計基準の適用日における会計処理の見直し及び遡及的な処理は行わない。 - 57-4. 平成25年に改正された本会計基準(以下「平成25年改正会計基準」という。)の適用時期等に関する取扱いは、次のとおりとする。
- (1) 平成27年4月1日以後開始する事業年度の期首から適用する。
- (2) (1)の定めにかかわらず、平成26年4月1日以後開始する事業年度の期首から適用することができる。なお、その場合には、平成25年改正会計基準と同時に改正された企業結合会計基準及び連結会計基準(第39項を除く。)も同時に適用する必要がある。
- (3) (1)及び(2)の適用にあたっては、非支配株主との取引について過去の期間のすべてに新たな会計方針を遡及適用した場合の適用初年度の期首時点の累積的影響額を、適用初年度の期首の資本剰余金及び利益剰余金に加減し、当該期首残高から新たな会計方針を適用する。
- (4) また、(3)の定めによらず、平成25年改正会計基準が定める新たな会計方針を適用初年度の期首から将来にわたって適用することができる。
- (5) 平成25年改正会計基準の適用初年度においては、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として取り扱う。
議 決
- 58. 平成17年会計基準は、第95回企業会計基準委員会に出席した委員12名全員の賛成により承認された。
- 59. 第95回企業会計基準委員会に出席した委員は、以下のとおりである。
- (略)
- 59-2. 平成20年改正会計基準は、第168回企業会計基準委員会に出席した委員12名全員の賛成により承認された。なお、出席した委員は、以下のとおりである。
- (略)
- 59-3. 平成25年改正会計基準は、第272回企業会計基準委員会に出席した委員13名全員の賛成により承認された。なお、出席した委員は、以下のとおりである。
- (略)
結論の背景
経 緯
平成17年会計基準
- 60. 企業会計審議会から、平成15年10月に公表された「企業結合に係る会計基準の設定に関する意見書」 四 3.では、企業結合会計基準を実務に適用する場合の具体的な指針等については、今後、関係府令を整備するとともに、企業会計基準委員会において適切に措置していくことが適当であるとしていた。このため、当委員会では、具体的な指針等を取りまとめるために、平成15年11月以降、企業結合専門委員会を設置し、審議を行った。
- 61. 平成15年10月に公表された「企業結合に係る会計基準」(以下「平成15年企業結合会計基準」という。)では、企業結合に該当する取引を対象とし、結合企業を中心に結合当事企業の会計処理を定めていたが、企業再編(組織再編)では、その他に、分離元企業の会計処理や結合当事企業の株主に係る会計処理なども検討する必要があった。このため、当委員会では、別途、事業分離専門委員会を設置し審議を行い、それまでの議論を、平成16年4月には「事業分離等に係る会計処理に関する論点の整理」として、また、平成17年1月には「『事業分離等に係る会計基準』の検討状況の整理」としてそれぞれ公表した。その後、これらに対して寄せられたコメントも参考にし、論点として掲げた項目を含め、審議を行い、平成17年7月に、企業会計基準公開草案第5号「事業分離等に関する会計基準(案)」を公表し、広く各界の意見を求めた。当委員会では、当該公開草案に対して寄せられた意見も参考にしてさらに審議を重ね、その内容を一部修正して、平成17年会計基準を公表した。
平成20年改正会計基準
- 61-2. 当委員会は、平成19年8月に国際会計基準審議会(IASB)と共同で公表したいわゆる東京合意に基づき、平成15年企業結合会計基準における企業結合に係る会計処理のうち、平成20年までの短期コンバージェンス・プロジェクトとして掲げた項目について審議を行い、平成20年12月に企業結合会計基準を改正・公表した。企業結合会計基準では、企業結合に係る会計処理に関する従来の定めを見直すものが含まれているが、それらの見直しの結果、平成17年会計基準も併せて見直すことが必要となった。平成20年改正会計基準は、平成20年6月に公表した公開草案に対して一般から寄せられた意見を参考にしつつ審議を重ね、公開草案の内容を一部修正し公表したものである。
平成25年改正会計基準
- 61-3. 平成20年改正会計基準の公表後、当委員会では、いわゆる東京合意に基づき中期的に対応することとしていた既存の差異に関連するプロジェクト項目の検討を行い、平成21年7月に、「企業結合会計の見直しに関する論点の整理」(以下「平成21年論点整理」という。)を公表した。そして、一般から寄せられた意見を参考にしつつ審議を重ね、平成25年1月に「企業結合に関する会計基準(案)」を始めとした企業結合に関する一連の会計基準の公開草案の一つとして少数株主持分(非支配株主持分)の取扱いを主な見直し内容とする「事業分離等に関する会計基準(案)」を公表した。平成25年改正会計基準は、公開草案に対して一般から寄せられた意見を踏まえてさらに検討を行い、公開草案の内容を一部修正した上で公表するものである。
- なお、平成25年に改正された連結会計基準では、少数株主持分を非支配株主持分に変更することとしたため、過去の経緯等を示す場合にも、便宜上、非支配株主持分の用語を使用している場合がある。
用語の定義と範囲
事業分離
- 62. 事業分離は、会社分割や事業譲渡、現物出資等の形式をとり、分離元企業が、その事業を分離先企業に移転し対価を受け取る。分離元企業から移転された事業と分離先企業(ただし、新設される企業を除く。)とが1つの報告単位に統合されることになる場合の事業分離は、企業結合(企業結合会計基準第5項)でもある。この場合には、分離先企業は結合企業にあたり、事業分離日と企業結合日とは同じ日となる。
- なお、複数の取引が1つの事業分離又は企業結合を構成している場合には、それらを一体として取り扱うことに留意する(この点については、第4項及び企業結合会計基準第5項を参照のこと)。通常、複数の取引が1事業年度内に完了する場合には、一体として取り扱うことが適当であると考えられるが、1つの事業分離又は企業結合を構成しているかどうかは状況によって異なるため、当初取引時における当事者間の意図や当該取引の目的等を勘案し、実態に応じて判断することとなる。
分割型の会社分割
- 63. 従来、人的分割ともいわれた分割型の会社分割(第9項(3)なお書き参照)には、分割会社の株主の保有する株式数の割合に応じて交付される按分型と、その株式数の割合とは異なる割合で交付される非按分型がある。
- このような分割型の会社分割については、分割会社の株主に対する現物の分配と同様の1つの取引と考える見方があるが、会社法(平成17年法律第86号)においては、会社分割(従来は物的分割ともいわれた分社型の会社分割をいう。)とこれにより受け取った承継会社又は新設会社の株式の分配という2つの取引と考える見方がなされていることから、本会計基準においては、原則として、2つの取引と考えている。このため、分割型の会社分割に係る分離元企業(分割会社)の会計処理については、特段の定めをしていない。
現物出資等
- 64. 現物出資などにより、事業には該当しない資産を移転し移転先の企業の株式を受け取る場合がある。また、会社法においては、自己株式の処分等に際して、現金以外の財産が給付される場合の手続等も示されている。このため、本会計基準では、事業分離に該当する場合のほか、事業分離には該当しないが、資産を移転し移転先の企業の株式を受け取る場合における移転元の企業の会計処理を示している。
被結合企業の株主
- 65. 企業結合により被結合企業の株主は、現金等の財産(負債の引受けを含む。)や結合企業の株式を得る。合併や株式交換・株式移転等による企業結合では、被結合企業の株主が保有していた被結合企業の株式は、結合企業の株式と引き換えられることが多い。
結合企業の株主
- 66. 本会計基準における結合当事企業の株主に係る会計処理には、被結合企業の株式を保有していた株主の会計処理のみならず、結合企業の株式を保有している株主の会計処理も含んでいる。これは、企業結合により、結合企業の株主は当該結合企業の株式を直接引き換えないが、当該結合企業に対する持分比率が変動する場合があり、その場合の結合企業の株主に係る会計処理を定める必要があることによる。
会計処理の考え方
企業結合会計基準における持分の継続
- 67. 一般的な会計処理においては、企業と外部者との間で財を受払いした場合、企業の支払対価が現金及び現金等価物のときには、購入(新規の投資)の会計処理が行われ、企業の受取対価が現金及び現金等価物のときには、売却(投資の清算)の会計処理が行われる。また、企業と外部者との間で現金及び現金等価物以外の財と財とが受払いされたときには、交換の会計処理が行われる。
- しかしながら、企業結合においては、企業と外部者の間の取引ではなく、企業自体が取引の対象となる場合があるため、必ずしも一般的な会計処理のように企業の観点からは判断できず、この場合には、総体としての株主にとっての投資が継続しているかどうかを判断せざるを得ない。このため、企業結合会計基準は、結合当事企業に対する総体としての株主の観点から、持分の継続が断たれた側では、いったん投資を清算し、改めて当該資産及び負債に対して投資を行ったと考えられるものとし、持分が継続している側では、これまでの投資がそのまま継続していると考えられるものとしている。
- 68. 企業結合会計基準では、持分プーリング法を廃止することとしたものの、持分の継続か非継続かという概念を用いて企業結合を整理している。すなわち、企業結合には、取得企業の持分は継続しているが被取得企業の持分はその継続が断たれたとみなされる「取得」と、すべての結合当事企業の持分が継続しているとみなされる「持分の結合」という異なる経済的実態を有するものが存在するとし、「取得」に対しては対応する資産及び負債を時価で引き継ぐ方法により、「持分の結合」に対しては対応する資産及び負債を帳簿価額で引き継ぐ方法により会計処理することが考えられる(企業結合会計基準第75項)。これらは、一般的な会計処理に照らせば、次のように考えられる(この点については、企業結合会計基準第74項を参照のこと)。
- (1) 「取得」と判定された場合に用いられる方法は、購入(新規の投資)の会計処理に該当する。また、企業の損益計算の観点からいえば、企業結合時点での資産及び負債の時価を新たな投資原価とし、そのような投資原価を超えて回収できれば、その超過額が企業にとっての利益となる。
- (2) 「持分の結合」と判定された場合に用いられる方法は、ある種の非貨幣財同士の交換の会計処理に該当する。また、企業の損益計算の観点からいえば、投資の清算と再投資は行われていないのであるから、結合後企業にとっては企業結合直前の帳簿価額がそのまま投資原価となり、この投資原価を超えて回収できれば、その超過額が企業にとっての利益となる。
持分の継続と分離元企業の会計処理及び結合当事企業の株主に係る会計処理の考え方
- 69. 企業結合会計基準において示されている「持分の継続・非継続」という考え方は、企業結合の会計処理に固有のものではなく、むしろ一般に事業の成果をとらえる際の投資の継続・清算とも整合した概念であり、実現概念に通ずる考え方(第71項参照)である(企業結合会計基準第67項及び第68項)。すなわち、第67項で示されたように、企業結合には、企業自体が取引の対象となる場合があり、総体としての株主にとっての投資が継続しているかどうかを判断せざるを得ないときがあるため、その特徴を踏まえ、企業結合の会計処理を、結合当事企業にとって一般的な会計処理と整合することができるように考えられたのが「持分の継続・非継続」という概念である。このため、企業結合における結合企業の会計処理のみならず、分離元企業や結合当事企業の株主も合わせた組織再編の会計処理を、同じ考え方に沿って統一的に行うことが考えられる。
- 70. 「持分の継続・非継続」の基礎になっている考え方、すなわち、一般に事業の成果をとらえる際の投資の継続・清算という概念によって整理すれば、分離元企業の会計処理及び結合当事企業の株主に係る会計処理は、次のように考えられる。
- (1) 売却や異種資産の交換の会計処理に見られるように、いったん投資を清算したとみて移転損益や交換損益を認識するとともに、改めて時価にて投資を行ったとみる場合
この場合には、事業分離時点や交換時点での時価が新たな投資原価となり、その後の損益計算の観点からは、そのような投資原価を超えて回収できれば、その超過額が企業にとっての利益となる。 - (2) 同種資産の交換の会計処理に見られるように、これまでの投資がそのまま継続しているとみて、移転損益や交換損益を認識しない場合
この場合には、事業分離や株式の交換によっても投資の清算と再投資は行われていないとみるため、移転や交換直前の帳簿価額がそのまま投資原価となり、その後の損益計算の観点からは、この投資原価を超えて回収できれば、その超過額が企業にとっての利益となる。 - 71. 投資の継続・清算という概念は、投資が実際に続いているのか終了したのかということではなく、会計上の利益計算において観念的に用いられている考え方であり、実現概念とも表裏の関係をなしている。実現概念の核心や本質をどこに見出すのかについては、これまでにもさまざまな議論が繰り返されてきたが、投資から得られる成果がその主要なリスクから解放されたかどうかに着目する考え方は、比較的有力なものと思われる。
- 事業投資に係る利益の計算においては、当該事業投資の担い手たる企業の期待(投資額を上回る資金の獲得)がどれだけ事実へと転化したのかに着目して成果をとらえることが適当である。ただし、事実への転化は、必ずしも資金それ自体の流入を意味するわけではなく、将来の環境変化や経営者の努力に成果の大きさが左右されなくなった場合や、企業が従来負っていた成果の変動性(すなわち事業投資のリスク)を免れるようになった場合には、投資は清算されたものとみなされ、事業投資の成果は確定したものといい得る。
- このため、損益計算の観点からは、分離元企業や結合当事企業の株主にとって、事業分離や企業結合により従来の事業投資の成果が確定したものといえるのかどうかを考察することとなる。
- 72. 企業結合会計基準では、企業結合に該当する取引を対象とし、結合企業(分離先企業)を中心に結合当事企業の会計処理を定めている。結合企業(分離先企業)が、移転する事業に係る資産及び負債の移転直前の適正な帳簿価額を引き継ぐ場合、原則として、分離元企業が対価として受け取る分離先企業の株式等の取得原価は、当該適正な帳簿価額となるため、移転損益は生じないと考えられる。
- 一方、結合企業(分離先企業)が、取引時点の取得の対価となる財の時価をもって取得原価とする場合でも、必ずしも、分離元企業が対価として受け取る分離先企業の株式等の取得原価をその時価とし、移転損益を認識することとなるとは限らない。これは、一般的な売買又は交換取引においても、例えば、売却代金の回収リスクが相当程度ある場合や売却後に重要な継続的関与がある場合のように、資産の譲受者が新規の購入として取得の対価となる財の時価をもって取得原価とする場合でも、それによって必ず資産の譲渡者が投資の清算として実現損益を認識するとは限らないことにも見られるものである。また、総体としての株主にとっての投資が継続しているかどうかの観点から、企業結合が取得又は持分の結合と判定されたことをもって、結合当事企業の個々の株主に係る会計処理が必ずしも決まるわけではない。これらは、各企業の会計処理が、取引の相手企業の会計処理と常に対称となるわけではなく、個々の企業の判断によって行われていることから生じるものと考えられる。
- このため、本会計基準では、結合企業(分離先企業)において企業結合会計基準に従いパーチェス法により会計処理するときであっても、必ずしも分離元企業が移転損益を認識するわけではなく、また、結合当事企業の株主が交換損益を認識するわけではないという考え方に立っている。
分離元企業の会計処理と結合当事企業の株主に係る会計処理の考え方の関係
- 73. 次のように、事業分離における分離元企業と、100%子会社を被結合企業とする企業結合における当該被結合企業の株主(親会社)とでは、経済的効果が実質的に同じであることから、両者の会計処理を整合的なものとすることが適当と考えられる。
- (1) 事業分離は、分離元企業が100%所有(支配)する事業を分離先企業に移転し、当該分離元企業が対価を受け取る。
- (2) 被結合企業の株式をすべて保有している場合(100%子会社を被結合企業とする場合)の企業結合は、当該被結合企業の株主(親会社)が子会社である被結合企業の株式を通じて100%所有(支配)する事業を結合企業に移転し、当該結合企業から対価を受け取る。
- さらに、被結合企業の株主が親会社である場合には、被結合企業の株式をすべて保有しているとき(被結合企業が100%子会社の場合)でも、すべては保有していないとき(被結合企業が100%子会社以外の子会社の場合)でも整合的な会計処理とすることが適当と考えられる。
分離元企業の会計処理
分離元企業の会計処理の基本的な考え方
移転損益を認識するかどうかについて
- 74. 本会計基準では、一般に事業の成果をとらえる際の投資の継続・清算という概念に基づき、実現損益を認識するかどうかという観点から、分離元企業の会計処理を考えている。これは、企業結合の会計処理を一般的な会計処理と整合させるために考えられた「持分の継続・非継続」という概念の根底にある考え方である(第69項参照)。分離した事業に関する投資が継続しているとみるか清算されたとみるかによって、一般的な売却や交換に伴う損益認識と同様に、分離元企業において移転損益が認識されない場合と認識される場合がある(第10項参照)。
- 75. 投資が継続しているとみるか清算されたとみるかを判断するためには、具体的に明確な事実として観察することが可能な要件を定める必要がある。平成15年企業結合会計基準では、企業結合における「持分の継続」を「対価の種類」と「支配」という2つの観点から判断することとしていたため、事業分離においても、これらを要件としてはどうかという意見がある。
- しかしながら、事業分離の場合には、移転損益が認識されるかどうかが論点となるため、一般的な購入、売却や交換の会計処理と同様に、企業結合と事業分離の会計処理における観察可能な具体的要件が必ずしも同じになるとは限らない。
- 本会計基準では、企業結合会計基準と同様に、一般に事業の成果をとらえる際の投資の継続・清算という概念に基づいて、事業分離の会計処理を考えるものの、観察可能な具体的要件については、他の会計基準の考え方との整合性を踏まえると、対価が移転した事業と異なるかどうかという「対価の種類」は該当するが、「支配」については必ずしも該当しないものと考えている。
- 76. さらに、一般的な売却や交換の会計処理に照らせば、例えば、買戻しの条件が付されている事業分離のように、継続的関与があり、それが重要である場合には、移転損益を認識することはできないと考えられる。分離先企業が子会社や関連会社にあたるかどうかを判断する際、持分比率以外の要素も加味するため、一定の継続的関与(例えば、分離元企業が分離した事業又は分離先企業に対して、多くの融資や重要な営業又は事業上の取引を行うことなど)は既に考慮されているものと考えられる。しかし、それ以外に、分離元企業の継続的関与がある場合には、移転損益の認識にあたり、実現概念や投資のリスクからの解放という考え方(第71項参照)に照らして実質的に判断する必要がある。この結果、重要な継続的関与によって、移転した事業に係る成果の変動性を従来と同様に負っていると考えられる場合には、移転損益を認識することはできないこととなる(第10項(1)参照)。もっとも、一般的な売却や交換と同じように、分離先企業の株式を子会社株式又は関連会社株式として保有するため、連結上は移転した事業に係る成果の変動性を従来と同様に負っていても、個別上、それ以外に分離元企業の重要な継続的関与がなく、現金等の財産を受け取る場合には、移転損益を認識することとなる。また、継続的関与があっても重要ではなく、移転損益を認識する場合もあるが、この場合には、当該継続的関与の主な概要を注記することが適当である(第28項(5)参照)。
- なお、重要な継続的関与があるため、受取対価に現金を含むものの移転損益を認識しない場合には、移転した事業を裏付けとする金融取引として会計処理することとなると考えられる。
分離元企業における移転した事業に係る資産及び負債の帳簿価額
- 77. 分離元企業において、移転した事業に関する投資が清算されたとみる場合には、移転損益を認識し(第10項(1)参照)、投資が継続しているとみる場合には、移転損益を認識せず、移転直前の適正な帳簿価額をそのまま投資原価とする(第10項(2)参照)。
- いずれの場合においても、分離元企業において、事業分離により移転した事業に係る資産及び負債の帳簿価額は、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠した適正な帳簿価額であることが必要である。したがって、分離元企業は、重要な会社分割などの場合には、事業分離日の前日に決算又は仮決算を行い、適正な帳簿価額を確定させる必要がある。
- 78. さらに、事業分離における分離元企業の場合には、合併における被合併会社と異なり、事業分離日の前日における分離元企業の適正な帳簿価額を、事業分離により移転する事業に係る部分と分離元企業に残る部分とに分割計画や分割契約、事業譲渡契約に従い、適切に区分する必要がある。
- 79. 事業分離に要した支出額は、発生時の事業年度の費用として処理する。これは、移転した事業に関する投資が継続しているとみる場合には、事業分離によって受け取る対価を構成しないと考えられること、また、投資が清算されたとみる場合でも、通常の売却に要した支出額は発生時の費用として処理することによる。
- なお、移転した事業に関する投資が清算されたとみる場合において、現金以外の財の受取りに要した支出額についても同様に処理する。
分離元企業において移転損益を認識する場合の時価
- 80. 分離元企業において、移転した事業に関する投資が清算されたと考えられる場合、通常、事業分離日において移転損益を認識する。この際、受取対価の金額の算定は、一般的な交換取引における考え方と同様に、その交換のために引き渡された財の時価と受け入れた財の時価のうち、より高い信頼性をもって測定可能な時価で測定される(企業結合会計基準第84項)。
- 81. 移転損益は事業分離日に認識するとしても、いつの時点の時価で測定すべきか、すなわち、売却価額といえる移転する事業の時価又は受取対価となる財の時価は、事業分離の合意公表日(事業分離の主要条件が合意され公表された時点)の時価で測定されるべきか、事業分離日の時価で測定されるべきかという論点がある。特に、分離元企業が対価として分離先企業の株式を受け取る場合においては、主要な交換条件が合意されて公表された時点での株価を用いるべきか、事業分離日の株価を用いるべきかが論点となる。
- この点につき、平成17年会計基準では、市場価格のある分離先企業の株式が受取対価とされる場合には、受取対価となる財の時価は、原則として、事業分離の合意公表日前の合理的な期間における株価を基礎に算定することとされていた。しかしながら、平成20年改正会計基準では、企業結合会計基準第86項で示されているとおり、株式以外の財産を引き渡した場合の測定日と株式を交付した場合の測定日が異なるのは整合的でないとする見方があることや、主要条件が合意され公表された時点では未だ取得原価は確定していないとも考えられるといった意見もあることを踏まえつつ、企業結合会計基準において国際的なコンバージェンスを図るべく見直しが行われたことから、受取対価となる市場価格のある分離先企業の株式の時価は、事業分離日の時価に基づいて算定するものとした(第13項参照)。
受取対価が現金等の財産のみである場合の分離元企業の会計処理
- 82. 第71項で示されたように、ある事象が生じたときに投資の清算とみるかどうかということは、投資が実際に終了したのかということではなく、会計上の利益計算において観念的に用いられている考え方であり、投資のリスクから解放されたかどうかによりとらえられてきたものと考えられる。この際、事業分離の対象となる事業への投資(事業投資)は、これまでの会計基準においても、事前に期待される成果がどれだけ事実へと転化したのかに着目して成果がとらえられており、事業分離により、企業が従来負っていた成果の変動性(すなわち事業投資のリスク)を免れるようになった場合に、投資は清算されたものとみなされる。このため、分離元企業が現金など、移転した事業と明らかに異なる財産を受取対価としてある事業を移転した場合には、通常、分離元企業の投資が清算されたとみなされる。
- 83. 事業分離において、分離先企業が子会社となる場合や子会社を分離先企業とする場合には、共通支配下の取引又はそれに準ずる取引となり、親会社の立場からは企業集団内における純資産等の移転取引として内部取引と考え、個別財務諸表の作成にあたっても、基本的には、企業結合の前後で当該純資産等の帳簿価額が相違することにならないよう、企業集団内における移転先の企業は移転元の帳簿価額により計上することとなる(企業結合会計基準第119項)。したがって、共通支配下の取引又はこれに準ずる取引のうち、分離先企業の株式を受取対価とする場合には原則として移転損益を認識しないものの、現金等の財産を受取対価とする場合において、分離元企業が受け取った現金等の財産の移転前に付された適正な帳簿価額が、移転した事業に係る株主資本相当額と異なるときには、当該差額を移転損益として認識せざるをえないこととなる(第14項(1)参照)。
- 移転した事業と明らかに異なる現金等の財産のみを受取対価とし、関連会社へ事業分離する場合には、共通支配下の取引には該当しないため、子会社や関連会社以外へ事業分離する場合(第16項参照)と同様に、分離元企業で受け取った現金等の財産は、原則として、時価で計上することが適当と考えられる。この結果、当該時価と移転した事業に係る株主資本相当額との差額は、分離元企業の個別財務諸表上、原則として、移転損益として認識する(第15項(1)参照)。
- 84. 分離元企業の連結財務諸表上、子会社や関連会社を分離先企業として行った事業分離により認識された移転損益を内部取引として消去するにあたっては、連結会計基準及び持分法会計基準における未実現損益の消去に準じて処理する(第14項(2)及び第15項(2)参照)。この場合、分離元企業において、事業分離により移転した事業に係る資産及び負債の適正な帳簿価額を算定するために生じた減損損失などの損益は、消去される内部取引に該当しないことに留意する。
受取対価が分離先企業の株式のみである場合の分離元企業の会計処理
- 85. 分離先企業の株式を受取対価とする事業分離は、現金等の財産のみを受取対価とする事業分離と異なり、当該株式を通じて移転した事業と引き続き関係を有することとなるため、投資の継続とみなされる可能性がある。
- 86. 分離元企業が分離先企業の株式を受け取る結果、持分比率等により、分離先企業は、分離元企業の子会社や関連会社となる場合がある。このため、本会計基準では、分離元企業の会計処理について、企業結合会計基準や連結会計基準による定めとの関係から、個別財務諸表上の取扱いと連結財務諸表上の取扱いをそれぞれ定めている。
分離先企業が子会社となる場合
(移転損益を認識するかどうかについて)
- 87. 分離先企業の株式のみを受取対価とする事業分離において、分離先企業が新たに分離元企業の子会社となる場合、経済実態として、分離元企業における当該事業に関する投資がそのまま継続していると考えられる。したがって、当該取引において、移転損益は認識されず、当該分離元企業が受け取った分離先企業の株式(子会社株式)の取得原価は、移転した事業に係る株主資本相当額に基づいて算定する(第17項(1)参照)。このような考え方は、次のように、企業結合会計基準においても、具体的に示されている。
- (1) 新設分割による子会社の設立(企業結合会計基準第118項)
- (2) 現物出資又は吸収分割による子会社化の形式をとる企業結合(企業結合会計基準第114項)
(分離元企業の連結財務諸表上において生じる差額について)
- 88. このように、分離先企業が子会社となる場合、親会社となる分離元企業において移転損益は認識されないが、分離元企業の連結財務諸表上、移転した事業に係る株主資本相当額と分離先企業に対する分離元企業(親会社)の持分との間に差額が生じる場合がある。
- 89. 当該差額については、次のような見方が考えられる。
- (1) 事業分離によって分離先企業が新たな子会社となるため、企業結合時(支配獲得時)に生じたのれん(又は負ののれん)を構成するものとして取り扱う見方
- (2) 事業は既に支配されているため、支配獲得後における子会社の時価発行増資等において生じる持分変動差額として取り扱う見方
- (1)の見方による場合、連結上のパーチェス法の適用につき、連結上、増加した非支配株主持分の額を取得原価とすることとなるが、企業結合会計基準における取得原価の算定は、支払対価となる財の時価と受け入れた資産の時価のうち、より高い信頼性をもって測定可能な時価で測定されるため、当該差額は企業結合会計基準におけるのれん(又は負ののれん)には該当しないと考えられる。
- 平成20年改正会計基準では、(2)の見方、すなわち、企業結合会計基準の考え方に沿って、分離元企業における当該事業に関する投資が継続しているとみるとともに、連結会計基準に従い、支配獲得後に生じた当該差額は、子会社の時価発行増資等に伴い生じる親会社持分の増減額(持分変動差額)として取り扱う見方によっていた。
- 90. 平成25年改正会計基準では、平成25年に改正された連結会計基準及び企業結合会計基準において、非支配株主との取引によって生じた親会社の持分変動による差額を資本剰余金とした(連結会計基準第28項から第30項、企業結合会計基準第46項)ことに伴い、分離元企業の連結財務諸表上において生じる差額は、資本剰余金とすることとした(第17項(2)参照)。
- 91. (削 除)
(事業分離前に分離先企業の株式をその他有価証券又は関連会社株式として保有している場合であって、事業分離により分離先企業が子会社となるときの当該保有していた株式の取扱いについて)
- 91-2. 分離元企業が事業分離前に分離先企業の株式を保有している場合、平成17年会計基準では、当該株式がその他有価証券と関連会社株式のいずれのときにおいても、事業分離前の帳簿価額が、分離先企業に対して投資したとみなされる額を構成するものとされていた。平成20年改正会計基準では、分離元企業が追加的に受け取った分離先企業の株式の取得原価については平成17年会計基準と同様であるものの、支配の獲得が複数の取引により達成された場合(段階取得)の被取得企業の連結財務諸表における取得原価は、支配を獲得するに至った個々の取引すべての企業結合日における時価で算定し、当該支配を獲得するに至った個々の取引ごとの原価の合計額との差額は損益として処理するものとした企業結合会計基準(企業結合会計基準第25項)と平仄を合わせるため、事業分離前にその他有価証券又は関連会社株式として保有していた分離先企業の株式は、連結財務諸表上、事業分離日における時価をもって分離先企業に対して投資したとみなされる額を構成するものとし、その時価と適正な帳簿価額との差額は当期の段階取得に係る損益として認識するものとした(第18項(2)及び第24項(2)参照)。
(分離元企業の連結財務諸表上において取得が複数の取引により達成された場合のパーチェス法の適用について)
- 92. 取得又は支配が複数の取引により達成された場合、平成15年企業結合会計基準におけるパーチェス法の適用は、「連結財務諸表原則」における全面時価評価法の適用と整合的ではあるが、部分時価評価法の適用とは整合的ではないことから、これらとの関係をどのように考えるかという論点があった。これについて平成17年会計基準では、部分時価評価法か全面時価評価法かという子会社の資産及び負債の評価方法は、現金による取得を前提とした連結財務諸表上の会計処理の原則及び手続であり、それ以外による取得については企業結合会計基準によるものと解していた。
- 平成20年に公表された連結会計基準では、全面時価評価法のみとされたため、今後は、この点に関する連結会計基準との整合性についての論点はないこととなる。
(子会社への事業分離による分離先企業(子会社)の株式の追加取得について)
- 93. 分離先企業の株式(子会社株式)を受取対価とする子会社への事業分離は、企業結合会計基準の定めから、企業集団を構成する子会社の株主と子会社を支配している親会社との間の取引である非支配株主との取引に準じて処理することが考えられる。この考え方によれば、個別財務諸表上、子会社株式の取得原価は、当該株式の時価又は支出した対価となる財の時価で測定され、この金額と移転した事業に係る株主資本相当額との差額は移転損益として計上されることとなる。
- しかしながら、分離先企業の株式のみを受取対価とする事業分離により、分離先企業が新たに分離元企業の子会社となる場合と同様に、分離先企業の株式(子会社株式)を追加取得する事業分離において、当該事業に関する投資は継続しているものとみなされ移転損益は認識されないと考えられることから、そのような会計処理は適当ではない。このため、分離元企業の個別財務諸表においては、共通支配下の取引と同様に移転損益は認識されず、追加取得した分離先企業の株式(子会社株式)の取得原価は、移転した事業に係る株主資本相当額に基づいて算定する(第19項(1)参照)。
- 94. 一方、分離元企業の連結財務諸表上、事業分離前後の分離元企業(親会社)の持分は、一般に増減することとなる。このうち、分離先企業(子会社)に対して追加投資したとみなされる額と、これに対応する分離先企業の事業分離直前の資本(追加取得持分)との間に生じる差額は、子会社株式の追加取得から生じるものであり、企業結合会計基準における非支配株主との取引(企業結合会計基準第46項)に該当するものである。したがって、平成17年会計基準において、非支配株主との取引に準じ、その差額は、のれん(又は負ののれん)として処理することとしていた。
- しかし、平成25年改正会計基準では、平成25年に改正された連結会計基準及び企業結合会計基準において、非支配株主との取引によって生じた親会社の持分変動による差額を資本剰余金としたことから、当該差額も同様に取り扱うこととした(第19項(2)参照。この考え方については第89項及び第90項も参照のこと。)。
- 95. (削 除)
分離先企業が関連会社となる場合
(移転損益を認識するかどうかについて)
- 96. 分離先企業の株式のみを受取対価とする事業分離において、分離先企業が新たに関連会社となる場合、分離元企業による当該事業に関する投資は清算されたものとみて移転損益を認識するという見方と、投資が継続しているものとみて移転損益を認識しないという見方がある。
- 97. 投資の清算に該当するという見方は、次のような理由によるものと考えられる。
- (1) 事業分離により分離先企業の株式(子会社株式)を受け取る場合とは異なり、この場合には、分離元企業の事業の多くと分離先企業の事業の多くとが引き換えられるため、事前に期待していた当該投資の成果が事実に転化されたとみることができる。
- (2) 移転された事業に関する分離元企業の支配が失われることをもって投資の清算と考えることは、支配をより重視する最近の国際的な動向にも配慮した企業結合会計基準の考え方にも沿っている。
- (3) 事業分離により分離先企業が関連会社となる場合には、分離先企業のこれまでの株主が、総体として当該事業を支配することとなるため取得と判断される。分離先企業において取得と判断されるときに、分離元企業において売却とすることは理解しやすい。
- (4) 投資の継続とみる場合、新たに関連会社となる事業分離のみならず、関連会社への事業分離による関連会社株式の追加取得でも移転損益は生じないこととなるが、企業結合会計基準では、共通支配下の取引についてのみ、特段の定めをしているにすぎない。
- 98. これに対し、本会計基準では、次のような理由から、投資の継続に該当するという見方によっている(第20項(1)参照)。
- (1) 関連会社株式は、関連会社への影響力の行使を目的として保有することから、子会社株式の場合と同じく事実上の事業投資と同様の会計処理を行うこととされている(金融商品会計基準第74項)。これを踏まえれば、事業分離により、移転された事業に対する支配は失われているが、関連会社への影響力の行使を通じて、子会社と同様に、移転された事業に関する事業投資を引き続き行っているとみることができることから、当該事業に関する投資が継続していると考えられることとなる。
- (2) 事業分離により分離先企業が子会社となる場合と関連会社となる場合には、分離元企業の事業の一部と分離先企業の事業の一部が引き換えられる程度が、基本的に過半になるか否かに違いがある。いずれの場合も投資のリスクは変質しているものの、過半になるか否かという程度によって、事前に想定されていた当該投資の成果がリスクから解放され、期待に対応する事実が生じたと言える積極的な理由はない。また、移転された事業に対する分離元企業の支配(事業の財務及び経営方針を左右する能力)が失われることをもって投資の清算と考えることは、事前の期待が支配自体にあった場合には該当するが、移転された事業の活動から便益を享受することが事前の期待であれば、支配の有無は投資の清算を考える際の絶対的な要件とは言えない。
むしろ、現行の会計基準等における考え方からは、事業分離により子会社株式を保有する場合と同様に関連会社株式の保有によっても、その投資の性質は変わらないものとみて、移転された事業に関する投資が継続していると考える方が適当と考えられる。 - (3) 分離先企業において取得のときに分離元企業において売却と解することは理解しやすいが、もともと分離先企業の取扱いにより分離元企業の会計処理が必ずしも決まる必要はない。
- (4) 企業結合会計基準では、共通支配下の取引を定めているが、これと矛盾した考え方でない限り、企業結合会計基準が他の取扱いを妨げているわけではないため、前項(4)のような指摘はあたらない。
- 99. 事業分離により分離先企業が新たに関連会社となる場合における分離元企業の会計処理は、現行の会計基準等における考え方を踏まえれば、事業分離により分離先企業が新たに子会社となる場合と同様に、移転された事業に関する投資が継続しているとみることが適当と考えられる。
- すなわち、金融商品会計基準において、関連会社株式は、子会社株式の場合と同じく事実上の事業投資と同様の会計処理を行うことが適当であるため、取得原価をもって貸借対照表価額とすること、連結会計基準や持分法会計基準等において、持分法は、一行連結といわれるように、その当期純利益及び純資産に与える影響は同一であり、連結(完全連結)のいわば簡便的な会計処理であるととらえられていることから、事業分離において、分離先企業が新たに関連会社となる場合には、子会社となる場合と同様に、投資は継続しているとみる考え方が整合的である。
- 100. この論点は、現行の会計基準等との整合性を重視するか、それよりも、移転された事業に対する分離元企業の支配の喪失が、当該事業投資のリスクから解放され、移転損益を認識するという不可逆的な成果が得られた状態を指すものと考えられるかどうかという問題ともいえる。
- もし、支配の喪失によって移転損益を認識することが、事業分離を伴う投資の実態や本質であると判断された場合には、その考え方を通じ、前述したような持分法の位置付けや関連会社株式の貸借対照表価額等、他の会計処理を今後、これと整合的になるよう改廃していくことが考えられる。
- 事業分離の会計処理を考えるにあたっては、移転された事業に対する分離元企業の支配が継続しているか失われたかが最も重要であるという立場も有力であるが、本会計基準では、その立場をとってまで他の会計基準等を含む体系に影響を与える意義は薄いという考え方により、必ずしも支配が失われることをもって投資の清算とみることとはしていない。
(分離元企業の連結財務諸表上において生じる差額について)
- 101. 投資の継続に該当するという見方において、分離元企業の連結財務諸表上、持分法適用により、関連会社に係る分離元企業の持分の増加額と、移転した事業に係る分離元企業の持分の減少額との間に生じる差額については、次のような考え方がある。
- (1) 当該差額は、のれん(又は負ののれん)とする。
- (2) 当該差額は、持分変動差額とする。
- (3) 当該差額のうち、移転した事業に係る分は持分変動差額として、持分が増加した事業に係る分はのれん(又は負ののれん)とする。
- 本会計基準では、(3)の見方が適当であると考えている(第20項(2)参照)。これは、既存の企業に事業分離し当該分離先企業が新たに関連会社となる場合と、新設した関連会社に事業分離し当該関連会社が他の企業や他の企業の事業を受け入れ分離元企業の持分比率が減少する場合とは、経済的に同一の効果となるため、同じような会計処理になることが適当であるという意見に基づくものであり、また、持分法適用において、持分が増加した事業に係る差額はのれん(又は負ののれん)とすべきことによる。
- さらに、当該差額のうち移転した事業に係る分は、分離元企業の事業の時価に、増加した分離元企業以外の株主の持分比率を乗じた額(分離元企業の事業が移転されたとみなされる額)と、移転した事業に係る株主資本相当額に増加した分離元企業以外の株主の持分比率を乗じた額(移転した事業に係る分離元企業の持分の減少額)との差額に等しくなるため、その部分がいわば分離元企業以外の株主に売却されたと言えるのではないかという意見にも対応するものである。
- 102. (削 除)
- 103. (削 除)
分離先企業が子会社や関連会社以外となる場合
- 104. 分離先企業の株式のみを受取対価とする事業分離により分離先企業が子会社や関連会社以外となる場合(共同支配企業の形成の場合を除く。)、分離元企業の財務諸表において、分離先企業の株式はその他有価証券に分類されることとなる。
- 事業分離により受け取る分離先企業の株式が子会社株式や関連会社株式に分類される場合、支配又は重要な影響により、移転した事業を含む当該株式の保有を通じて、移転した事業に関する事業投資としての性格が継続しているとみるが、その他有価証券に分類されることとなる場合には、これとは異なり、もはや移転した事業に関する投資は継続していないものとみて、原則として、移転損益を認識する(第23項参照)。
受取対価が現金等の財産と分離先企業の株式である場合の分離元企業の会計処理
分離先企業が子会社となる場合
- 105. 事業分離の受取対価が分離先企業の株式のみであり、分離先企業の株式が子会社株式となるときには、移転損益が認識されない。しかし、分離先企業が子会社となる場合において、受取対価に現金等の財産を一部含む場合に移転損益を認識するかどうかについては、一般的な売却や交換の会計処理と同様に、次のような考え方がある。
- (1) 投資が継続しているとみるためには、受取対価のすべてが、原則として、分離先企業の株式であることが要件となるという考え方(したがって、受取対価に現金等の財産が含まれている場合には、原則として、移転損益が認識されることになる。)(次項参照)
- (2) 投資が継続しているとみるためには、受取対価に含まれる現金等の財産が一定の割合以下であることが要件となるという考え方(したがって、受取対価のうち現金等の財産が一定の割合を超える場合には、移転損益が認識されることになる。)(第107項参照)
- (3) 投資が継続しているかどうかは、受取対価の種類ごとに区別して判断するという考え方(したがって、受取対価のうち、分離先企業の株式に対応する部分は移転損益が認識されず、受取対価が現金等の財産に対応する部分は移転損益が認識されることになる。)(第108項参照)
- 106. 平成15年企業結合会計基準では、持分の結合と判定されるための要件として、対価の種類の観点からは、企業結合に際して支払われた対価のすべてが、原則として、議決権のある株式であることとしていた。この点を考慮すると、分離元企業において投資が継続しているとみるためには、前項(1)のように、受取対価のすべてが分離先企業の議決権のある株式であることが要件となるという考え方が整合的である。
- 107. しかしながら、一般的な売却や交換の会計処理に照らせば、事業分離の場合には、第105項(2)のように、受取対価に現金等の財産が含まれていても、それが一定の割合以下の場合、移転損益は認識されないという会計処理が考えられる。もっとも、一定の割合以下とはどの程度を指すか、共通支配下の取引にあたる場合に現金等の財産が一定の割合を超えれば当該現金等の財産を時価とすることは企業結合会計基準の定めとは異なるのではないかという問題がある。
- 108. 第105項(1)や(2)は、受取対価に現金等の財産が、少しでも含まれているか一定割合以上含まれているかという違いはあるが、投資の清算とみる場合には一括して移転損益を認識し、投資の継続とみる場合には移転損益をまったく認識しないという点では共通である。これに対し、第105項(3)のように、受取対価の種類ごとに区別し、受取対価のうち現金等の財産に対応する部分について移転損益を認識する場合には、現金等の財産の比率に応じて移転損益が認識されることとなる。しかしながら、このような会計処理は必ずしも一般的ではない。また、この場合には、受け取った分離先企業の株式の取得原価が、移転損益の認識に応じて増減し、共通支配下の取引にあたる場合には、移転された資産及び負債の適正な帳簿価額に基づいて算定されたとは言えないため、企業結合会計基準の定めと異なるのではないかという問題がある。
- 109. 本会計基準では、これらの考え方ではなく、まず、企業結合会計基準における共通支配下の取引の会計処理の定めに従い、現金等の財産と分離先企業の株式を受取対価とする事業分離において、分離先企業が子会社となる場合や子会社へ事業分離する場合、分離元企業が受け取った現金等の財産は、移転前に付された適正な帳簿価額により計上するものとした。次に、分離元企業が受け取った現金等の財産の移転前に付された適正な帳簿価額が、移転した事業に係る株主資本相当額を上回る場合には、当該差額を移転利益として認識するものとした(第24項(1)参照)。
- これは、分離先企業の株式を受け取っていることや共通支配下の取引であることから積極的に損益を認識するわけではないが、移転した事業と明らかに異なる現金等の財産も受け取っているため、子会社株式の保有以外に重要な継続的関与(第76項参照)がない限り、移転利益とするという考えによるものである。
- なお、受け取った現金等の財産の価額が移転した事業に係る株主資本相当額を下回る場合に生じる差額は、共通支配下の取引の会計処理の定めに従い、分離先企業の株式の取得原価とすることとなる(第24項(1)参照)。このような取引の場合には、移転損失は生じないこととなるが、事業分離直前に移転した事業に係る資産及び負債の適正な帳簿価額を算定するにあたって、分離元企業は、減損損失等を適切に計上する必要があることに留意する。また、適正な帳簿価額を算定するために計上された減損損失等は、分離元企業の連結財務諸表上、消去される内部取引に該当しない。
- 109-2. 平成17年会計基準では、連結財務諸表上は、移転利益を、連結会計基準における未実現損益の消去に準じて処理するとともに、受取対価が分離先企業の株式のみである場合において分離先企業が子会社となるときの会計処理に準ずるものとしていた。この結果、子会社に係る分離元企業の持分の増加額と、移転した事業に係る分離元企業の持分の減少額との間に生じる差額は、のれん(又は負ののれん)と持分変動差額に区分して処理することとしていた。
- しかし、平成25年改正会計基準では、平成25年に改正された連結会計基準及び企業結合会計基準において、非支配株主との取引によって生じた親会社の持分変動による差額は資本剰余金としたことから、その差額も同様に取り扱うこととした(第24項(2)参照)。
分離先企業が関連会社となる場合
- 110. 本会計基準では、受取対価が分離先企業の株式のみであって、分離先企業が関連会社となる場合や関連会社へ事業分離する場合には、投資は継続しているものとみている。現金等の財産と分離先企業の株式を受取対価とする事業分離においても、その考え方を踏まえているが、この場合には共通支配下の取引にあたらないため、分離元企業が受け取った現金等の財産は、原則として、時価で計上することが適当と考えられる。この結果、当該現金等の財産の時価が、移転した事業に係る株主資本相当額を上回る場合には、原則として、当該差額を移転利益として認識する(第25項(1)参照)。
開 示
損益計算書における表示
- 111. 移転損益は、通常、臨時的に生じる損益であるため、原則として、特別損益に計上する。
注記事項
- 112. 諸外国の会計基準では、損益計算書上、過年度分も含めて、分離した事業に係る損益を非継続事業による損益として区分掲記することが求められている。我が国においては、財務諸表の開示が1年を単位として独立しており過年度の遡及的な処理の慣行はないこと等を考慮して、本会計基準では、当期の損益計算書に計上されている分離した事業に係る損益の概算額を注記するものとした(第28項(4)参照)。
- なお、本会計基準は、その適用範囲を超えて、事業分離前後の比較可能性を高める追加的な情報を任意で開示することを妨げるものではない。
- 113. 分離元企業は、継続的関与があるものの移転損益を認識した場合、継続的関与が軽微であるものを除き、当該継続的関与の主な概要を注記することが適当と考えられる(第28項(5)参照)。なお、継続的関与があり、それが重要である場合には、移転損益を認識することはできないと考えられることに留意する(第76項参照)。
資産の現物出資等における移転元の企業の会計処理
- 114. 財を受け入れ自社の株式を引き渡す場合には、受け入れた財が資産であれば、のれん(又は負ののれん)は計上されないが、事業であれば企業結合となり、通常、のれん(又は負ののれん)が計上されることとなる。しかしながら、財を移転し移転先の企業の株式を受け取る場合には、移転した財が資産か事業かの相違によって、移転元の企業の会計処理が大きく異なる理由は見当たらない。
- また、各企業の会計処理は、取引の相手企業の会計処理と常に対称となるわけではなく、個々の企業の判断によって行われる。このため、移転元の企業の会計処理と移転先の企業の会計処理とは、必ずしも対称的になる必要はないと考えられる。
- したがって、現物出資や現金以外の財産による移転先の自己株式の処分により、資産を移転し移転先の企業の株式を受け取る移転元の企業の会計処理は、事業分離に該当しない場合であっても、共通支配下の取引の会計処理を含む事業分離における分離元企業の会計処理に準じて行うことが適当であると考えられる。
結合当事企業の株主に係る会計処理
被結合企業の株主に係る会計処理の基本的な考え方
交換損益を認識するかどうかの判定
- 115. 本会計基準では、一般に事業の成果をとらえる際の投資の継続・清算という概念に基づき、実現損益を認識するかどうかという観点から、分離元企業の会計処理(第74項参照)と同様に、被結合企業の株主に係る会計処理を考えている。したがって、企業結合により、保有していた被結合企業の株式が、結合企業の株式などの財と引き換えられた場合に、その投資が継続しているとみるか清算されたとみるかによって、被結合企業の株主に係る会計処理でも、一般的な売却や交換に伴う損益認識と同様に、交換損益が認識されない場合と認識される場合が考えられる(第32項参照)。
- なお、金融商品会計基準では、金融資産の交換について直接取り扱ってはいないが、金融資産の譲渡に係る消滅の認識は財務構成要素アプローチによること(金融商品会計基準第58項)とされている。株式は金融資産であることから、金融商品会計基準との関係も考慮する必要がある。
被結合企業の株主において交換損益を認識する場合の時価
- 116. 被結合企業の株主において、保有していた株式に関する投資が清算されたと考えられる場合、通常、企業結合日において交換損益を認識する。この際、受取対価の金額の算定は、一般的な交換取引における考え方と同様に、引き渡された被結合企業の株式の時価と受け取った結合企業の株式の時価のうち、より高い信頼性をもって測定可能な時価で測定される(企業結合会計基準第84項)。
- 117. 交換損益は企業結合日に認識するとしても、企業結合の合意公表日の時価で測定されるべきか、企業結合日の時価で測定されるべきかという論点がある。本会計基準では、結合企業や分離元企業の会計処理と同様にとらえ、原則として、企業結合日の時価に基づいて算定するものとした。
受取対価が現金等の財産のみである場合の被結合企業の株主に係る会計処理
- 118. 事業分離における分離元企業の会計処理と同様に、当該株主が保有していた被結合企業の株式がそれとは明らかに異なる現金等の財産と引き換えられた場合、通常、被結合企業の株主の投資が清算されたとみなされる(第35項から第37項参照)。
- また、株主が投資先から現金等の財産を受け取る場合には、投資の清算とみるか投資の継続とみた上で投資成果の分配とみるかという論点がある。企業結合により、保有していた被結合企業の株式が、現金等の財産のみと引き換えられた場合には、投資先自体が企業結合により消滅し、被結合企業の株主は現金等の財産を受け取り、保有していた株式と引き換えられるものであるため、一般的には、投資が清算されたとみなされる。
- 119. 事業分離(第76項参照)と同様に、例えば、被結合企業の株式を買戻す条件が付されているときのように、被結合企業の株主の継続的関与があり、それが重要であるため、交換した株式に係る成果の変動性を従来と同様に負っていると考えられる場合には、交換損益を認識することはできない。結合後企業が子会社や関連会社にあたるかどうかを判断する際、持分比率以外の要素も加味するため、一定の継続的関与は考慮されるものと考えられるが、継続的関与には様々な態様があるため、交換損益の認識にあたっては、実現概念や投資のリスクからの解放という考え方(第71項参照)に照らして実質的に判断する。
受取対価が結合企業の株式のみである場合の被結合企業の株主に係る会計処理
- 120. 被結合企業の株主が保有していた被結合企業の株式は、企業結合により、現金等の財産のみと引き換えられるよりも、結合企業の株式と引き換えられることが多く、この場合には、当該株式を通じて引き換えられた株式と引き続き関係を有することとなるため、投資の継続とみなされる可能性がある。
- 121. 本会計基準では、結合当事企業が子会社又は関連会社の場合における被結合企業の株主に係る会計処理については、個別財務諸表上の取扱いと連結財務諸表上の取扱いをそれぞれ定めている。
子会社を被結合企業とした企業結合の場合
- 122. 事業分離における分離元企業と、100%子会社を被結合企業とする企業結合における当該被結合企業の株主(親会社)とでは、経済的効果が実質的に同じであることから、これらの会計処理は整合的であることが適当と考えられる。その上で、被結合企業の株式をすべて保有している場合(被結合企業が100%子会社の場合)と整合性を保つように、被結合企業の株式のすべては保有していないが子会社である場合(被結合企業が100%子会社以外の子会社の場合)において、被結合企業の株主に係る会計処理を考慮することが適当と考えられる(第73項参照)。
- 123. 金融商品会計基準では、被結合企業の株主の個別財務諸表上、子会社株式は金融資産としており、当該金融商品会計基準による会計処理との関係では、企業結合により、保有していた子会社株式の消滅を認識し、対価として受け取る結合企業の株式は、新たな資産又は残存部分として取り扱われる(金融商品会計基準第11項から第13項)。当該結合企業の株式は、交換損益が認識される場合には新たな資産として、交換損益が認識されない場合には残存部分として取り扱われることとなる。
関連会社を被結合企業とした企業結合の場合
- 124. 企業結合前に被結合企業の株主が結合企業の株式を有していないものとすると、企業結合により、被結合企業の株主の結合後企業に対する持分比率は、従来の被結合企業に対する持分比率より減少する。このため、被結合企業がその株主の関連会社であった場合、当該株主にとって結合後企業は、関連会社になる場合(第40項参照)もあるが、関連会社に該当しない場合(第41項参照)もある。このような場合に、被結合企業の株主の投資は清算されたとみるか継続しているとみるかが論点となる。
- なお、被結合企業が関連会社であった場合、被結合企業の株主は、もともと当該被結合企業を支配していないため、支配の有無をもって投資の継続にあたるかどうかを判断することはできない。
- 125. 受取対価が現金等の財産であれば、一般に、重要な継続的関与がない限り、期待が事実に転化したと考えられ、損益が認識される。しかしながら、他の財との引き換えがあっても、以前と同様の資産を獲得した場合には、期待が事実に転化していないと判断され、損益は認識されない。このような例は、次のような場合に見られる。
- (1) 一般的な非貨幣財同士の交換において、獲得したのは同種の資産の場合
- (2) 金融商品会計基準における消滅の認識において、受取対価が残存部分の場合
- このような他の会計処理に鑑み、本会計基準では、これまでの被結合企業の株式への投資の性格が、企業結合により、当該被結合企業を含む結合後企業の株式と引き換えられたことによっても同じであるかどうか、具体的には、事業投資と同様の性格を引き続き有しているか否かによって判断することとした。これは、収益認識の有力な考え方である投資のリスクからの解放、すなわち、企業の期待がどれだけ事実に転化したのかに着目して成果をとらえる考え方に通ずるものである。
- 126. 関連会社株式は、子会社株式の場合と同じく事実上の事業投資と同様の会計処理を行うこととされている(金融商品会計基準第74項)。このため、企業結合により、関連会社である被結合企業の株式が当該被結合企業を含む結合後企業の株式と引き換えられたことによっても、結合後企業が関連会社である場合には、当該株式を通じて、被結合企業に関する事業投資を引き続き行っているとみられることから、交換損益は認識されないことが考えられる。
- もっとも、関連会社という分類は同じであっても、まったく異なる事業を営んでいたりその規模が大きく異なったりするなどのために、異種の資産と引き換えられたと考えられるときがあるのではないかという意見がある。しかしながら、金融商品会計基準では、子会社株式の場合と同じく事実上の事業投資と同様の会計処理を行うこととされている。企業結合の前後で子会社である場合には、その株主は被結合企業に関する事業投資を引き続き行っており、したがって、投資が継続しているとみるものとすれば、被結合企業がその株主の関連会社であって当該株主にとって結合後企業は関連会社である場合にも同様に考え、交換損益は認識されないものとみることとなる(第40項参照)。
- 127. 一方、本会計基準では、企業結合により、関連会社である被結合企業の株式が当該被結合企業を含む結合後企業の株式と引き換えられたことによって、結合後企業は関連会社に該当しないこととなる場合には、もはや被結合企業に関する事業投資は継続していないものとみて、交換損益を認識することとした(第41項参照)。
- 128. なお、被結合企業の株主にとって、当該企業結合の前後において投資の継続にあたるかどうかについては、次のように他にもいくつかの判断規準が考えられるが、本会計基準では必ずしも適当とは考えていない。
- (1) 被結合企業が被取得企業であるかどうか
これは、結合当事企業が取得企業となる場合と被取得企業となる場合の会計処理とに整合性をもたせ、取得企業の株主は交換損益を認識しないが、被取得企業の株主は交換損益を認識することとなるという考え方である。
しかしながら、企業結合において取得か否かを区別する持分の継続・非継続という考え方は、企業結合の会計処理に固有のものではなく、むしろ一般に事業の成果をとらえる際の投資の継続・清算と整合した概念であり、実現概念に通ずる考え方である(第69項及び第71項参照)。また、一般的な売買又は交換取引において、資産の譲受者と譲渡者が必ず対称的に会計処理を行うとは限らない。このため、取得にあたる事業分離において、分離元企業が移転損益の認識を行うとは限らないし、同様に、結合当事企業の個々の株主が交換損益の認識を行うとは限らない。個々の株主の会計処理は、総体としての株主ではなく、個々の株主の観点から別途、判断することが適当と考えられる(第72項参照)。 - (2) 事業に連続性があるかどうか
これは、個々の株主の会計処理は、個々の株主の観点から、一般の非貨幣財同士の交換や金融商品会計基準に照らして、被結合企業の事業と結合企業の事業に連続性があるかどうか(事業の継続)により判断する考え方である。
しかしながら、投資先が大規模な事業の入れ替え等を行い、事業に連続性がない場合でも、株式が引き換えられないときには、通常、株主は損益を認識しないこと、また、株式が引き換えられた場合でも、個々の株主が、投資先の事業に連続性があるかどうかを判断することが可能かどうかなどの問題があると考えられる。 - 129. また、現行の金融商品会計基準の適用においては、子会社株式又は関連会社株式の売却により持分比率が減少し、子会社株式又は関連会社株式に該当しなくなった場合(子会社株式又は関連会社株式からその他有価証券)には、帳簿価額をもって変更後の区分に振り替えることから、子会社又は関連会社である被結合企業の株式が当該被結合企業を含む結合後企業の株式と引き換えられたことによって、結合後企業が子会社や関連会社に該当しないこととなっても、交換損益は認識されないのではないかという意見がある。
- しかしながら、株主が同一の株式を売却し持分比率が減少した場合と、投資先の企業が他の企業又は事業を受け入れたことに伴い持分比率が減少した場合とは、必ずしも同じ状況ではないため、同じ会計処理を行う必要はないものと考えられる。本会計基準では、子会社又は関連会社の企業結合により、被結合企業の株式が当該被結合企業を含む結合後企業の株式と引き換えられたことによって、子会社株式又は関連会社株式に該当しなくなった場合には、異種の資産と引き換えられたものとみなして、交換損益を認識するものとした。
子会社や関連会社以外の投資先を被結合企業とした企業結合の場合
- 130. 企業結合前に被結合企業の株主が結合企業の株式を有していないものとすると、企業結合により、被結合企業の株主の結合後企業に対する持分比率は、従来の被結合企業に対する持分比率より減少する。このため、被結合企業がその株主の子会社や関連会社以外の投資先であった場合、当該株主にとって結合後企業の株式は、引き続き、子会社株式や関連会社株式に該当しないこととなる(その他有価証券からその他有価証券。なお、本項から第135項にあるその他有価証券には、売買目的有価証券の場合は含まないものとする。)。
- 131. 本会計基準では、被結合企業がその株主の子会社や関連会社以外の投資先であった場合において、当該企業結合が被結合企業の株主にとって投資の継続にあたるかどうかにつき、被結合企業が関連会社であった場合(第125項参照)と同様に、企業結合により被結合企業を含む結合後企業の株式と引き換えられたことによっても、これまでの被結合企業の株式(その他有価証券)への投資の性格が同じと考えられるかどうかによって判断することを考えている。
- この場合、企業結合によって持分比率が減少しても、被結合企業の株主は、当該被結合企業を含む結合後企業の株式(その他有価証券)の保有を通じた投資を行っている。それは、売買目的有価証券(金融投資)と子会社株式及び関連会社株式(事業投資)との中間的な性格を有するものとしてとらえられており(金融商品会計基準第75項)、当該企業結合によって、企業が事前に考えていた当該投資の成果が期待されていたような結果になったとは必ずしも言えないため、交換損益を認識しないことが考えられる。
- 132. さらに、企業結合により、被結合企業の株式が、仮に異種の資産と考えられる結合企業の株式と引き換えられたときでも、その他有価証券に分類している場合には、当該被結合企業の株主自身の積極的な意思によるものとは言い難いため、実務上、交換損益を認識することは適当ではないという考え方がある。
- 133. これらの考え方に対して、その他有価証券という分類は同じであっても、株式自体の流動性が大きく異なっていたり株式を通じた業務上の関係等が変化したりするなど、異種の資産と引き換えられたと考えられるときがあるのではないかという意見がある。これは、その他有価証券が、業務上の関係を有する企業の株式等から市場動向によっては売却を想定している有価証券まで多様な性格を有しており、保有目的等自体も多義的であり、かつ、変遷していく面があること等から、金融投資と事業投資との中間的な性格を有するものとして一括してとらえられており、様々な性格を有することによるものである。
- しかしながら、金融商品会計基準では、その多様な性格に鑑み保有目的等を識別・細分化する客観的な基準を設けることが困難であるため、一括してその他有価証券としており、改めて、個々の保有目的等に応じてその性格付けをさらに細分化してそれぞれの会計処理を定めることは容易ではない。さらに、いわゆる財務構成要素アプローチが採られている現行の金融商品会計基準の適用において、被結合企業の株式をその他有価証券とし、結合後企業の株式がその他有価証券とされる場合でも、結合後企業の株式を新たな資産とはせず、したがって、損益は認識されていないと考えられる。
- 134. また、結合当事企業が取得企業となる場合と被取得企業となる場合との会計処理に整合性をもたせ、取得企業の株主は交換損益を認識しないが、被取得企業の株主は交換損益を認識するという意見もある。しかし、第128項(1)にて示されたように、個々の株主の会計処理は、総体としての株主ではなく、個々の株主の観点から別途、判断することが適当と考えられる。この際、取得企業となる場合でも被取得企業となる場合でも、個々の株主にとって投資のリスクは変質しているものの、その他有価証券に分類した投資先が他社を取得したか他社に取得されたかによって、個々の株主の期待に対応する事実が生じたと言えるかどうか疑問と考えられる。
- 135. 本会計基準では、これらを総合的に考え、企業結合によって被結合企業の株式が、当該被結合企業を含む結合後企業の株式と引き換えられたことによっても、結合後企業の株式がその他有価証券という同じ分類となる場合には、その投資の性格に変化がないとみて、投資の継続に該当するものとしている。
- なお、引き換えの前後においてその他有価証券という同じ分類となる場合でも、企業結合とは別に、単純な株式同士の交換のように、ある企業の株式が他の企業の株式と引き換えられた場合には、異種の資産を受け取ったものとみて投資の清算に該当すると考え、通常、交換損益が認識されるものと考えられる。
受取対価が現金等の財産と結合企業の株式である場合の被結合企業の株主に係る会計処理
- 136. 被結合企業の株式が、結合企業の株式と引き換えられる場合であっても、分離元企業の会計処理と同様に、受取対価に現金等の財産が一部含まれているときの被結合企業の株主に係る会計処理には、いくつかの考え方がある。
- 137. 子会社株式や関連会社株式は、金融商品であるものの事業投資と同様の性格を有しているため、金融商品会計基準の定めにかかわらず、これらを被結合企業とする企業結合により、その株式が引き換えられた場合の会計処理は、事業分離における分離元企業の会計処理と整合的に行うことが適当と考えられる(第45項及び第46項参照)。
- 138. これに対して、子会社や関連会社以外の投資先を被結合企業とする企業結合により、子会社株式や関連会社株式以外の被結合企業の株式が引き換えられた場合は、金融商品会計基準に準じて処理することが適当と考えられる(第47項参照)。
結合企業の株主に係る会計処理
- 139. 結合当事企業の株主のうち、結合企業の株式を保有している株主は、企業結合によっても当該結合企業の株式を直接引き換えないが、当該企業結合に伴い、当該結合企業に対する持分比率が変動する。この場合における結合企業の株主に係る会計処理は、連結会計基準や金融商品会計基準等に従えば、次のように考えられる。
- (1) 結合企業の株主の個別財務諸表
結合企業の株主が結合企業を子会社としていたが、企業結合により当該株主(親会社)の持分比率が減少し子会社に該当しなくなった場合には、結合企業の株主の個別財務諸表上、子会社株式から関連会社株式やその他有価証券に取得原価で振り替え、損益を認識しない。
また、結合企業の株主が結合企業を関連会社としていたが、企業結合により当該株主(投資会社)の持分比率が減少し関連会社に該当しなくなった場合には、関連会社株式からその他有価証券に取得原価で振り替え、損益を認識しないこととなる。 - (2) 結合企業の株主の連結財務諸表
結合企業の株主が結合企業を子会社としており、企業結合により当該株主(親会社)の持分比率が減少した場合、親会社の持分の一部が非支配株主持分に振り替わることから生じる差額は、親会社の持分変動により生じた差額として、資本剰余金として処理することとなる。
また、結合企業の株主が結合企業を関連会社としており、企業結合により当該株主(投資会社)の持分比率が減少した場合、投資会社の持分の一部が他の持分に振り替わることから生じる差額は、原則として、持分変動差額として処理することとなる。 - これらの会計処理は、企業結合によっても結合企業の株主においては、結合企業の株式を直接、他の財とは引き換えられないことを前提としているように考えられる。
- 140. これに対し、個々の株主にとっては、企業結合により、被結合企業の株主が新たに結合企業の株主となっても、引き続き結合企業の株主であっても、同様の経済的効果を有する場合がある。例えば、子会社であった被合併会社が合併により消滅し、被合併会社の株主は新たに合併会社を関連会社とする場合と、子会社であった合併会社が、合併により持分比率が減少し関連会社となった場合とは、結合当事企業の株主にとって、それぞれの合併による経済的効果は実質的に同じであるものと考えられる。このような場合には、被結合企業の株主に係る会計処理と結合企業の株主に係る会計処理とは、同様になるべきであると考えられる。このため、結合企業の株主に係る会計処理は、被結合企業の株主に係る会計処理に準じて行うものとした(第48項参照)。
分割型の会社分割における分割会社の株主に係る会計処理
- 141. 分割型の会社分割では、分割会社の株主が保有していた分割会社の株式は、新設会社又は承継会社の株式と直接引き換えられない。このため、当該分割会社の株主は、被結合企業の株主には該当しない。しかしながら、分割会社の株主が新たに受け取った新設会社又は承継会社の株式は、分割会社の事業が新設会社又は承継会社に移転されたことにより受け取るものと考えられる。したがって、被結合企業の株主に準じ、これまで保有していた分割会社の株式と実質的に引き換えられたものとみなすことが適当であると考えられる。
- その上で、分割会社の株主が保有していた分割会社の株式に関する投資が清算されたとみる場合には、交換損益を認識し、投資が継続しているとみる場合には、交換損益を認識しないこととなる(第49項参照)。
- 142. 株主が、投資先から現金等の財産を受け取った場合、一般に、当該投資が清算されたとみて損益が認識される場合のほか、投資が継続しているとみるときにおいて、投資先から投資成果の分配を受けたとみなされ損益が認識される場合がある(第144項また書き参照)。
- しかしながら、分割型の会社分割において、分割会社の株主が新設会社又は承継会社の株式を受け取ることは、投資先である分割会社の事業分離により、投資先から財産を受け取ることを意味し、投資先から投資成果の分配を受けたものとはみなされない。このため、投資が継続しているとみる場合には、交換損益を認識しないこととなる。
現金以外の財産の分配を受けた場合の株主に係る会計処理
- 143. 株主が現金以外の財産の分配を受けた場合、これまでの現金配当の実務にあわせた処理を考慮すれば、当該株主の会計処理は、分配側の原資(払込資本か留保利益か)に従って区別することが考えられる。しかしながら、そもそも分配側の原資により、自動的に受取側の会計処理(投資の払戻か投資成果の分配か)が決定されるわけではない。現金以外の財産の分配を受けた株主の会計処理は、むしろ、交換等の一般的な会計処理の考え方に準じて、会計処理することが適当である。したがって、本会計基準では、原則として、これまで保有していた株式が実質的に引き換えられたものとみなして、被結合企業の株主に係る会計処理に準じて行うものとした(第52項参照)。
- 144. 被結合企業の株主は、被結合企業の株式と明らかに異なる資産を対価として受け取る場合には、通常、投資が清算されたとみなされる(第32項(1)参照)。このため、現金以外の財産の分配を受けた株主は、原則として、現金以外の財産の時価と受け取った部分に係る株式の適正な帳簿価額との差額を損益として認識することとなる。
- しかしながら、当初から現金以外の財産での分配を期待している場合など、投資が継続しているとみなされるときもあり、この場合には、分配された財産の取得価額は、これまで保有していた株式のうち実質的に引き換えられたものとみなされる額とすることとなる。
- また、投資後に生じた利益の分配など、投資が継続しているとみなされる中で当該投資の成果として現金以外の財産の分配が行われた場合には、分配された財産の時価をもって収益として計上することが合理的と考えられる。
開 示
損益計算書における表示
- 145. 交換損益は、通常、臨時的に生じる損益であるため、原則として、特別損益に計上する。
注記事項
- 146. 本会計基準では、事業分離における分離元企業と、企業結合において、100%子会社を被結合企業とする当該被結合企業の株主(親会社)とでは、経済的効果が実質的に同じであり、また、被結合企業の株主が親会社である場合の会計処理は、被結合企業が100%子会社の場合でも100%子会社以外の子会社の場合でも整合的に行うものとしている(第73項及び第122項参照)。このため、注記事項についても、子会社を結合当事企業とする株主(親会社)は、事業分離における分離元企業と同様の開示を行うことが適当である。
適用時期等
- 147. 平成17年会計基準は、平成15年企業結合会計基準と合わせて適用することが適当であると考えられるため、平成18 年4 月1 日以後開始する事業年度から適用する。
- 148. 平成20年改正会計基準の適用初年度においては、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として取り扱うこととなるが、この場合であっても、事業分離等は一般に毎期継続して行われるものではないこと、また、平成20年改正会計基準の適用前に実施された事業分離等に係る従前の取扱いは平成20年改正会計基準の適用後においても継続することとされたこと、さらには、事業分離等が行われたときにはその概要等の注記が求められていることから(例えば、第28項参照)、会計方針の変更による影響額の注記は要しないものとした(第57-3項参照)。
- 149. 平成20年改正会計基準の適用初年度において、事業年度の事業分離等に関する会計処理が当該事業年度を構成する中間又は四半期会計期間における会計処理と異なることとなる場合であっても、いわゆる中間又は四半期・年度の首尾一貫性が保持されていない場合には該当しない。
ただし、平成20年改正会計基準の適用日の前後において、経済的に同一の事象と考えられる事業分離等が同一事業年度(又は同一中間若しくは四半期会計期間)内に行われており、かつ、適用される会計処理が異なる場合には、会計処理の相違が重要なものについて、その旨及びその内容を追加情報として財務諸表に注記することが適当である。 - 150. 平成25年改正会計基準適用前の財務諸表に対して、平成25年改正会計基準が定める新たな会計方針の遡及適用(企業会計基準第24 号第4 項(9))を行うためには、過去の事業分離等について、長期にわたり相当程度の情報を入手することが必要になることが多く、そうした場合は実務的な対応に困難を伴うため、平成25年改正会計基準適用前の財務諸表への遡及適用は求めるべきではないとの意見があった。一方、比較的最近の事業分離等の取引のみである場合等、遡及適用が可能な場合にはあえてその適用を妨げる必要はないとの意見もあった。
- これらの点を踏まえ、また、遡及適用による実務上の負担を考慮すべきという公開草案に寄せられた意見も検討した結果、平成25年改正会計基準は、企業会計基準第24号第6項(1)の会計基準等に定める特定の経過的な取扱いとして、非支配株主との取引について過去の期間のすべてに新たな会計方針を遡及適用した場合の適用初年度の期首時点の累積的影響額を、適用初年度の期首の資本剰余金及び利益剰余金に加減し、当該期首残高から新たな会計方針を適用することとした。そのうえで、前述のように通常は遡及適用を行うことは困難であることを考慮し、遡及適用を行わない場合、それが困難である等の条件は付さず、非支配株主との取引について新たな会計方針を適用初年度の期首から将来にわたって適用できることとした(第57-4項(4)参照)。
- なお、平成25年改正会計基準の適用初年度においては、企業会計基準第24 号第10項(1)から(6)に定める所定の注記を行うことに留意する。
- 以 上
