ASSET-ASBJ

企業会計基準第27号法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準
目 的
- 1. 本会計基準は、主として法人税、地方法人税、住民税、事業税及び特別法人事業税(以下「法人税、住民税及び事業税等」という。)に関する会計処理及び開示を定めることを目的とする。
会計基準
範 囲
- 2. 本会計基準は、連結財務諸表及び個別財務諸表における次の事項に適用する。
- (1) 我が国の法令に従い納付する税金のうち法人税、住民税及び事業税等に関する会計処理及び開示
- (2) 我が国の法令に従い納付する税金のうち受取利息及び受取配当金等に課される源泉所得税に関する開示
- (3) 外国の法令に従い納付する税金のうち外国法人税に関する開示
- なお、本会計基準は、特に明示しない限り、個別財務諸表における会計処理及び開示を想定して定めている。連結財務諸表における会計処理及び開示は、個別財務諸表における会計処理及び開示に準じて行う。
- 3. 実務対応報告第42号「グループ通算制度を適用する場合の会計処理及び開示に関する取扱い」において、グループ通算制度を適用する場合の法人税及び地方法人税に係る会計処理及び開示の具体的な取扱いが定められている場合、当該取扱いが適用される。
用語の定義
- 4. 本会計基準における用語の定義は次のとおりとする。
- (1) 「法人税」とは、法人税法(昭和40年法律第34号)の規定に基づく税金をいう。
- (2) 「地方法人税」とは、地方法人税法(平成26年法律第11号)の規定に基づく税金をいう。
- (3) 「住民税」とは、地方税法(昭和25年法律第226号)の規定に基づく税金のうち、道府県民税及び市町村民税をいう。なお、道府県に関する規定は都に、市町村に関する規定は特別区に準用することとされている(地方税法第1条第2項)。
- (4) 「事業税」とは、地方税法の規定に基づく税金であり、法人の行う事業に対して都道府県が課すものをいう。事業税には、付加価値額によって課すもの(以下「事業税(付加価値割)」という。)、資本金等の額によって課すもの(以下「事業税(資本割)」という。)、所得によって課すもの(以下「事業税(所得割)」という。)がある。
- (4-2) 「特別法人事業税」とは、「特別法人事業税及び特別法人事業譲与税に関する法律」(平成31年法律第4号)(以下「特別法人事業税等法」という。)の規定に基づく税金をいう。特別法人事業税には、基準法人所得割額(地方税法の規定により計算した所得割額(税率については地方税法に規定する標準税率による。))によって課すもの(以下「特別法人事業税(基準法人所得割)」という。)がある。
- (5) 「受取利息及び受取配当金等に課される源泉所得税」とは、所得税法(昭和40年法律第33号)第174条各号に規定する利子等、配当等、給付補塡金、利息、利益、差益、利益の分配又は賞金の支払を受ける場合に、同法の規定により課される所得税をいう。
- (6) 「外国法人税」とは、外国の法令により課される法人税に相当する税金で政令に定めるもの(法人税法第69条及び法人税法施行令(昭和40年政令第97号)第141条)をいう。外国法人税には、法人税法等に基づき税額控除の適用を受けるものと税額控除の適用を受けないものがある。
- (7) 「所得」とは、法人税の関係法令又は事業税の関係法令の規定に基づき算定した各事業年度の益金の額から当該事業年度の損金の額を控除した金額をいう。
- (8) 「更正」とは、法人税、住民税及び事業税等について、提出した納税申告書に記載された課税標準又は税額の計算が法令に従っていなかった場合やその他当該課税標準又は税額が税務署長又は地方公共団体の長の調査したところと異なる場合に、その調査により、当該納税申告書に係る課税標準又は税額を変更することをいう。
- (9) 「修正申告」とは、法人税、住民税及び事業税等について、提出した納税申告書に納付すべきものとして記載した税額に不足額がある場合や提出した納税申告書に記載した純損失の金額が過大であった場合に、当該納税申告書に記載された課税標準又は税額を修正する納税申告書を税務署長又は地方公共団体の長に提出することにより、提出した納税申告書に係る課税標準又は税額を変更することをいう。
- なお、本会計基準において、更正及び修正申告を「更正等」という。
会計処理
当事業年度の所得等に対する法人税、住民税及び事業税等
- 5. 当事業年度の所得等に対する法人税、住民税及び事業税等(注)については、次を除き、法令に従い算定した額(税務上の欠損金の繰戻しにより還付を請求する法人税額及び地方法人税額を含む。)を損益に計上する。
- (1) 企業の純資産に対する持分所有者との直接的な取引のうち、損益に反映されないものに対して課される当事業年度の所得に対する法人税、住民税及び事業税等
- (2) 資産又は負債の評価替えにより生じた評価差額等(企業会計基準第5号「貸借対照表の純資産の部の表示に関する会計基準」第8項に定める評価・換算差額等に区分されるものをいう。以下「評価差額等」という。)に対して課される当事業年度の所得に対する法人税、住民税及び事業税等
- (注) 「所得等に対する法人税、住民税及び事業税等」には、所得に対する法人税、地方法人税、住民税、事業税(所得割)及び特別法人事業税(基準法人所得割)のほかに、住民税(均等割)、事業税(付加価値割)及び事業税(資本割)を含むものとする。
- 5-2. 前項(1)及び(2)の当事業年度の所得に対する法人税、住民税及び事業税等については、次の区分に計上する。
- (1) 前項(1)の当事業年度の所得に対する法人税、住民税及び事業税等については、純資産の部の株主資本の区分に計上する。具体的には、当該法人税、住民税及び事業税等を株主資本の対応する内訳項目から控除する。
- (2) 前項(2)の当事業年度の所得に対する法人税、住民税及び事業税等については、個別財務諸表上、純資産の部の評価・換算差額等の区分に計上し、連結財務諸表上、その他の包括利益で認識した上で純資産の部のその他の包括利益累計額の区分に計上する。具体的には、当該法人税、住民税及び事業税等を、個別財務諸表上は評価・換算差額等の対応する内訳項目から控除し、連結財務諸表上はその他の包括利益の対応する内訳項目から控除する。
- 5-3. 前2項の定めにかかわらず、次のいずれかの場合には、該当する法人税、住民税及び事業税等を損益に計上することができる。
- (1) 第5項(1)又は(2)の法人税、住民税及び事業税等の金額に重要性が乏しい場合
- (2) 課税の対象となった取引や事象(以下「取引等」という。)が、損益に加えて、第5-2項(1)又は(2)の区分に関連しており、かつ、第5項(1)又は(2)の法人税、住民税及び事業税等の金額を算定することが困難である場合
- 5-4. 第5-2項に従って計上する法人税、住民税及び事業税等については、課税の対象となった取引等について、株主資本、評価・換算差額等又はその他の包括利益に計上した額に、課税の対象となる企業の対象期間における法定実効税率を乗じて算定する。この場合、第5項に従って損益に計上する法人税、住民税及び事業税等の額は、法令に従い算定した額から、法定実効税率に基づいて算定した株主資本、評価・換算差額等又はその他の包括利益に計上する法人税、住民税及び事業税等の額を控除した額となる。
ただし、課税所得が生じていないことなどから法令に従い算定した額がゼロとなる場合に第5-2項に従って計上する法人税、住民税及び事業税等についてもゼロとするなど、他の合理的な計算方法により算定することができる。 - 5-5. 第5-2項(2)に従って計上した法人税、住民税及び事業税等については、過年度に計上された資産又は負債の評価替えにより生じた評価差額等を損益に計上した時点で、これに対応する税額を損益に計上する。
更正等による追徴及び還付
- 6. 過年度の所得等に対する法人税、住民税及び事業税等について、更正等により追加で徴収される可能性が高く、当該追徴税額を合理的に見積ることができる場合、企業会計基準第24号「会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」(以下「企業会計基準第24号」という。)第4項(8)に定める誤謬に該当するときを除き、原則として、当該追徴税額を損益に計上する。なお、更正等による追徴に伴う延滞税、加算税、延滞金及び加算金については、当該追徴税額に含めて処理する。
- 7. 過年度の所得等に対する法人税、住民税及び事業税等について、更正等により還付されることが確実に見込まれ、当該還付税額を合理的に見積ることができる場合、企業会計基準第24号第4項(8)に定める誤謬に該当するときを除き、当該還付税額を損益に計上する。
- 8. 過年度の所得等に対する法人税、住民税及び事業税等について、更正等により追徴税額を納付したが、当該追徴の内容を不服として法的手段を取る場合において、還付されることが確実に見込まれ、当該還付税額を合理的に見積ることができる場合、第7項と同様に、企業会計基準第24号第4項(8)に定める誤謬に該当するときを除き、当該還付税額を損益に計上する。
- 8-2. 本会計基準第6項から第8項の定めに従って計上する過年度の所得に対する法人税、住民税及び事業税等のうち、本会計基準第5項に従って損益に計上されない法人税、住民税及び事業税等については、企業会計基準第24号第4項(8)に定める誤謬に該当する場合を除き、本会計基準第5-2項から第5-5項に準じて処理する。
開 示
当事業年度の所得等に対する法人税、住民税及び事業税等
- 9. 第5項、第5-3項及び第5-5項に基づき損益に計上する法人税、地方法人税、住民税、事業税(所得割)及び特別法人事業税(基準法人所得割)は、損益計算書の税引前当期純利益(又は損失)の次に、「法人税、住民税及び事業税」等の適切な科目をもって表示する。
- 10. 事業税(付加価値割)及び事業税(資本割)は、原則として、損益計算書の販売費及び一般管理費として表示する。ただし、合理的な配分方法に基づきその一部を売上原価として表示することができる。
- 11. 法人税、住民税及び事業税等のうち納付されていない税額は、貸借対照表の流動負債の区分に、未払法人税等などその内容を示す科目をもって表示する。
- 12. 法人税、住民税及び事業税等の税額が、中間申告により納付された税額を下回る場合等により還付されるとき、当該還付税額のうち受領されていない税額は、貸借対照表の流動資産の区分に、未収還付法人税等などその内容を示す科目をもって表示する。
受取利息及び受取配当金等に課される源泉所得税
- 13. 受取利息及び受取配当金等に課される源泉所得税のうち法人税法等に基づき税額控除の適用を受けない税額は、損益計算書の営業外費用として表示する。ただし、当該金額の重要性が乏しい場合、「法人税、住民税及び事業税」等の適切な科目(第9項参照)に含めて表示することができる。
外国法人税
- 14. 外国法人税のうち法人税法等に基づき税額控除の適用を受けない税額は、その内容に応じて適切な科目に表示する。なお、外国子会社(法人税法第23条の2)からの受取配当金等に課される外国源泉所得税のうち法人税法等に基づき税額控除の適用を受けない税額は、「法人税、住民税及び事業税」等の適切な科目(第9項参照)に含めて表示する。
更正等による追徴及び還付
- 15. 第6項から第8項に基づき損益に計上する法人税、地方法人税、住民税、事業税(所得割)及び特別法人事業税(基準法人所得割)の更正等による追徴税額及び還付税額は、「法人税、住民税及び事業税」等の適切な科目(第9項参照)の次に、その内容を示す科目をもって表示する。ただし、これらの金額の重要性が乏しい場合、「法人税、住民税及び事業税」等の適切な科目(第9項参照)に含めて表示することができる。
- 16. 事業税(付加価値割)及び事業税(資本割)の更正等による追徴税額及び還付税額は、原則として、損益計算書の販売費及び一般管理費として表示する。ただし、合理的な配分方法に基づきその一部を売上原価として表示することができる(第10項参照)。
- 17. 法人税、住民税及び事業税等の更正等による追徴税額のうち納付されていない税額は、当事業年度の所得等に対する法人税、住民税及び事業税等のうち納付されていない税額に含めて表示する(第11項参照)。
- 18. 法人税、住民税及び事業税等の更正等による還付税額のうち受領されていない税額は、当事業年度の所得等に対する法人税、住民税及び事業税等の還付税額のうち受領されていない税額に含めて表示する(第12項参照)。
適用時期等
- 19. 2017年に公表した本会計基準(以下「2017年会計基準」という。)は、公表日以後適用する。
- 20. 2017年会計基準の適用については、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更に該当しないものとして取り扱う。
- 20-2. 2022年に改正した本会計基準(以下「2022年改正会計基準」という。)は、2024年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用する。
ただし、2023年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用することができる。 - 20-3. 2022年改正会計基準の適用初年度においては、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として取り扱い、原則として、新たな会計方針を過去の期間のすべてに遡及適用する。
ただし、適用初年度の期首より前に新たな会計方針を遡及適用した場合の適用初年度の累積的影響額を、適用初年度の期首の利益剰余金に加減するとともに、対応する金額を資本剰余金、評価・換算差額等又はその他の包括利益累計額のうち、適切な区分に加減し、当該期首から新たな会計方針を適用することができる。 - 20-4. 2025年に改正した本会計基準(以下「2025年改正会計基準」という。)は、2025年4月1日以後最初に開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用する。
ただし、2025年3月31日以後最初に終了する連結会計年度及び事業年度の年度末に係る連結財務諸表及び個別財務諸表から適用することができる。この場合、2025年改正会計基準と同時に改正された企業会計基準適用指針第28号「税効果会計に係る会計基準の適用指針」(以下「2025年改正税効果適用指針」という。)についても同時に適用する必要がある。ここで、早期適用を行う場合であっても、当該連結会計年度及び事業年度の中間連結財務諸表及び中間個別財務諸表並びに四半期連結財務諸表及び四半期個別財務諸表については、2025年改正会計基準を適用しない。 - 20-5. 2025年改正会計基準の適用初年度において、2025年改正会計基準を適用することによりこれまでの会計処理と異なることとなる場合、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として取り扱い、原則として、新たな会計方針を過去の期間のすべてに遡及適用する。
ただし、適用初年度の期首より前に新たな会計方針を遡及適用した場合の適用初年度の累積的影響額を適用初年度の期首の資本剰余金、利益剰余金及び評価・換算差額等又はその他の包括利益累計額に加減し、当該期首から新たな会計方針を適用することができる。この場合、2025年改正税効果適用指針第65-5項ただし書きについても適用する必要がある。 - 20-6. 2025年改正会計基準の適用初年度において、過年度に課税された特別法人事業税(基準法人所得割)に関する表示方法について、2025年改正会計基準を適用することによりこれまでの表示方法と異なることとなる場合、企業会計基準第24号第14項の定めにかかわらず、適用初年度の比較情報について、新たな表示方法に従い組替えを行わないことができる。
- 21. 2017年会計基準の公表に伴い、実務対応報告第12号「法人事業税における外形標準課税部分の損益計算書上の表示についての実務上の取扱い」(以下「実務対応報告第12号」という。)は廃止する。
- 22. 当委員会は、日本公認会計士協会に、監査・保証実務委員会実務指針第63号「諸税金に関する会計処理及び表示に係る監査上の取扱い」(以下「監査保証実務指針第63号」という。)の改廃を検討することを依頼する。
議 決
- 23. 2017年会計基準は、第356回企業会計基準委員会に出席した委員13名全員の賛成により承認された。なお、出席した委員は以下のとおりである。
- (略)
- 23-2. 2022年改正会計基準は、第489回企業会計基準委員会に出席した委員14名の賛成により承認された。なお、出席した委員は以下のとおりである。
- (略)
- 23-3. 2025年改正会計基準は、第542回企業会計基準委員会に出席した委員13名全員の賛成により承認された。なお、出席した委員は以下のとおりである。
- (略)
結論の背景
経 緯
2017年会計基準
- 24. 2013年(平成25年)12月に開催された第277回企業会計基準委員会において、公益財団法人財務会計基準機構内に設けられている基準諮問会議より、日本公認会計士協会における税効果会計に関する実務指針(会計に関する部分)について当委員会で審議を行うことが提言された。この提言を受けて、当委員会は、税効果会計専門委員会を設置して、2014年(平成26年)2月から審議を開始した。
- その後、当委員会は、繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針を先行して開発することとし、2015年(平成27年)12月に、企業会計基準適用指針第26号「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」(以下「回収可能性適用指針」という。)を公表した。
- 25. 当委員会では、回収可能性適用指針の公表後、日本公認会計士協会における税効果会計に関する実務指針のうち回収可能性適用指針に含まれないものについて、当委員会に移管すべく審議を行っていた。当該審議においては、監査保証実務指針第63号についても税効果会計に関連するため、併せて当委員会の会計基準として開発することとした。
- 具体的には、監査保証実務指針第63号及び日本公認会計士協会 会計制度委員会「税効果会計に関するQ&A」(以下「税効果Q&A」という。)における税金の会計処理及び開示に関する部分のほか、実務対応報告第12号に定められていた事業税(付加価値割及び資本割)の開示について、基本的にその内容を踏襲した上で表現の見直しや考え方の整理等を行い、2016年(平成28年)11月に企業会計基準公開草案第59号「法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準(案)」を公表して広く意見を求めた。2017年会計基準は、公開草案に対して寄せられた意見を踏まえて検討を行い、公開草案の内容を一部修正した上で公表するに至ったものである。
2022年改正会計基準
- 25-2. 当委員会では、2018年2月に企業会計基準第28号「『税効果会計に係る会計基準』の一部改正」等(以下「企業会計基準第28号等」という。)を公表し、日本公認会計士協会における税効果会計に関する実務指針の当委員会への移管を完了した。当該審議の過程では、その他の包括利益に計上された取引等が課税所得計算上の益金又は損金に算入され、法人税、住民税及び事業税等が課される場合の、当該法人税、住民税及び事業税等の計上区分については、企業会計基準第28号等の公表後に改めて検討を行うこととしていた。
例えば、グループ通算制度の適用を開始する又はグループ通算制度に加入する子法人がグループ通算制度の開始又は加入時において、市場価格のあるその他有価証券を保有している場合には、会計上は、評価差額等(その他有価証券評価差額金)を評価・換算差額等又はその他の包括利益累計額に計上しているが、課税所得計算上は、当該評価差額等が益金又は損金に算入され、法人税、住民税及び事業税等が課される場合がある。2017年会計基準では、当事業年度の所得等に対する法人税、住民税及び事業税等は、法令に従い算定した額を損益に計上することとしていたため、当該評価差額等は、会計上は、評価・換算差額等又はその他の包括利益累計額に計上される一方で、当該評価差額等に対して課される法人税、住民税及び事業税等は損益に計上されることとなり、税引前当期純利益と税金費用の対応関係が図られていないのではないかとの意見が聞かれた。
2022年改正会計基準は、このような評価差額等に対して課される法人税、住民税及び事業税等のほか、株主資本に対して課される法人税、住民税及び事業税等も含めて、所得に対する法人税、住民税及び事業税等の計上区分についての見直しを行うために、所要の改正を行ったものである。
2025年改正会計基準
- 25-3. 2025年改正会計基準は、2024年年次改善プロジェクトにおいて、特別法人事業税の取扱いの明確化を図ったものである。特別法人事業税は、2019年3月27日に成立した特別法人事業税等法において国税として創設され、2019年10月1日以後に開始する事業年度から課せられている。
- 25-4. 本会計基準は、具体的な税金を挙げて、当該税金について規定する税法を参照することにより特定して会計処理及び開示について定めているが(第1項及び第4項参照)、2025年改正前の本会計基準においては、特別法人事業税の取扱いについて個別の定めが設けられていなかった。
- 25-5. この点、当委員会が2023年11月17日に公表した実務対応報告公開草案第67号「グローバル・ミニマム課税制度に係る法人税等の会計処理及び開示に関する取扱い(案)」に寄せられたコメントにおいて、特別法人事業税の取扱いを明記するとともに2025年改正前の本会計基準についても変更を行う必要があるとの意見があった。このため、当委員会は、特別法人事業税の取扱いについて審議を行い、2024年11月に公開草案「2024年年次改善プロジェクトによる企業会計基準等の改正(案)」(以下「2024年公開草案」という。)を公表して広く意見を求めた。2025年改正会計基準は、2024年公開草案に対して寄せられた意見を踏まえて検討を行い、2024年公開草案の内容を一部修正した上で公表するに至ったものである。
範 囲
- 26. 監査保証実務指針第63号において取り扱う税金は、「法人税、都道府県民税及び市町村民税、事業税、事業所税並びに特別土地保有税」とされていたが、これらを適用範囲とした理由については、監査保証実務指針第63号には特段記載されていなかった。監査保証実務指針第63号を本会計基準に移管するにあたっては、本会計基準に含める税金の適用範囲について、金額的な重要性や検討すべき課題の有無等により、実務において会計上の取扱いを明らかにする必要性が高いものとすることが考えられる。
- 法人税、住民税及び事業税等については、一般的に金額的な重要性が高く、追徴税額や還付税額の取扱いを明らかにする必要性が高いと考えられるため、これらに関する会計処理及び開示を本会計基準の適用範囲に含めることとした。これに伴い、事業税については、利益に関連する金額を課税標準とする事業税(所得割)だけではなく、それ以外の事業税(付加価値割及び資本割)も本会計基準の適用範囲とし、実務対応報告第12号の内容を本会計基準に統合することとした(第10項及び第16項参照)。
- 一方、監査保証実務指針第63号において取り扱っていた事業所税及び特別土地保有税については、一般的に金額的な重要性が高いとは言えず、営業費用等で会計処理を行っている実務が浸透しており、会計上の取扱いを明らかにする必要性が高くはないことから、本会計基準の適用範囲に含めないこととした。
- また、消費税については、日本公認会計士協会の消費税の会計処理に関するプロジェクトチームより、「消費税の会計処理について(中間報告)」が公表されており、実務上、当該報告に従って、一部の企業を除き、税抜方式で会計処理を行っている実務が浸透しており、会計上の取扱いを明らかにする必要性が高くはないと考えられることや、検討中の収益認識に関する会計基準の開発にあたって論点となり得ることから、本会計基準の適用範囲に含めないこととした。
- さらに、固定資産税については、一部の業種を除き、一般的に金額的な重要性が高いとは言えないため、会計上の取扱いを明らかにする必要性が高くはないと考え、本会計基準の適用範囲に含めないこととした。
- なお、監査保証実務指針第63号において、法人税法等の税額控除に関連し、受取利息及び受取配当金等に課される源泉所得税の表示についても定められていたことから、本会計基準においては当該記載内容を踏襲し、本会計基準の適用範囲に含めることとした(第2項(2)参照)。
- 27. 審議の過程では、在外子会社や在外支店等が所在地国の法令に従い納付する税金を適用範囲に含めるかどうかについて検討を行った。
- 在外子会社が所在地国の法令に従い納付する税金については、在外子会社の財務諸表が、国際財務報告基準(IFRS)又は米国会計基準に準拠して作成される場合、実務対応報告第18号「連結財務諸表作成における在外子会社等の会計処理に関する当面の取扱い」に基づき、当該財務諸表を連結決算手続上利用できるものと整理されているため、当該税金は、IFRS又は米国会計基準に従って処理されることが考えられる。
- 在外支店等が所在地国の法令に従い納付する税金については、当該税金の種類は多様であるため、従来どおり、その会計処理を実務の判断に委ねることが考えられる。
- したがって、在外子会社や在外支店等が所在地国の法令に従い納付する税金の会計処理については、本会計基準の適用範囲に含めないこととした。ただし、これまでの実務を踏まえ、親会社及び国内子会社が外国の法令に従い納付する税金のうち外国法人税の表示については、監査保証実務指針第63号及び税効果Q&Aの記載内容を基本的に踏襲し、本会計基準の適用範囲に含めることとした(第2項(3)参照)。
用語の定義
- 28. 本会計基準では、監査保証実務指針第63号等において使用されている用語のうち、必要と考えられる用語の定義を定めることとした(第4項参照)。
会計処理
当事業年度の所得等に対する法人税、住民税及び事業税等
(2017年会計基準)
- 29. 監査保証実務指針第63号では、法人税、住民税及び事業税について、表示に関する取扱いは、「法人税、住民税及び利益に関連する金額を課税標準として課される事業税は、「法人税、住民税及び事業税」として損益計算書の税引前当期純利益金額又は税引前当期純損失金額の次に記載する。」と記載されていたが、会計処理に関する取扱いは記載されていなかった。
- このため、2017年会計基準では、当事業年度の所得等に対する法人税、住民税及び事業税等についての会計処理に関する取扱いとして、法令に従い算定した額を損益に計上することを明示することとした(第5項参照)。
(2022年改正会計基準)
- 29-2. 2022年改正会計基準の審議においては、前項における所得に対する法人税、住民税及び事業税等の計上区分に関して、次の2つの考え方について検討を行った。
- (1) 当該法人税、住民税及び事業税等を、その発生源泉となる取引等の処理と整合させ、所得を課税標準とする税金については、損益、株主資本及びその他の包括利益の各区分に計上する考え方
- (2) 法人税、住民税及び事業税等の支払は、税金の発生源泉となる取引等の処理にかかわらず、課税当局(国又は地方公共団体)への納付であるため、当該法人税、住民税及び事業税等は損益に計上する考え方
- この点、国際的な会計基準においては、所得を課税標準として課される税金(法人所得税)については、(1)の考え方のように、税金が純損益の外で認識される項目に関するものである場合には、その他の包括利益及び資本項目に配分することとされている。また、企業会計基準適用指針第28号「税効果会計に係る会計基準の適用指針」(以下「税効果適用指針」という。)においては、(1)の考え方と同様に、税効果額は、税効果会計が適用される取引等が計上される区分(損益、株主資本又はその他の包括利益)と同一の区分で計上する取扱いとしている。
- 29-3. 前項(1)の考え方を採用した場合、税引前当期純利益と所得に対する法人税、住民税及び事業税等の間の税負担の対応関係が図られ、税引前当期純利益と税金費用から算定される税負担率を基礎として将来の当期純利益を予測することが可能となるため、将来の業績予測に資する情報が提供され得ると考えられる。また、当事業年度の所得に対する法人税、住民税及び事業税等の計上区分が、税効果会計における税効果額の計上区分と整合することとなるとともに、国際的な会計基準における処理との整合性を図ることができると考えられる。
そのため、2022年改正会計基準では、当事業年度の所得に対する法人税、住民税及び事業税等を、損益、株主資本及びその他の包括利益に区分して計上することとした(第5項及び第5-2項参照)。 - 29-4. なお、2022年改正会計基準では、前項に基づいて、株主資本に対して課される当事業年度の所得に対する法人税、住民税及び事業税等を純資産の部の株主資本の区分に計上する取扱いを定めている(本会計基準第5項(1)及び第5-2項(1)参照)が、このような場合として、例えば次のようなものが考えられる。
- (1) 子会社等が保有する親会社株式等を企業集団外部の第三者に売却した場合の連結財務諸表における法人税等に関する取扱い(企業会計基準適用指針第2号「自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準の適用指針」第16項)
- (2) 子会社等が保有する親会社株式等を当該親会社等に売却した場合の連結財務諸表における法人税等に関する取扱い(税効果適用指針第40項)
- (3) 子会社に対する投資の一部売却後も親会社と子会社の支配関係が継続している場合における親会社の持分変動による差額に対応する法人税等相当額についての売却時の取扱い(税効果適用指針第28項)
重要性が乏しい場合の取扱い
- 29-5. 2022年改正会計基準の審議の過程では、当事業年度の所得に対する法人税、住民税及び事業税等を、損益、株主資本及びその他の包括利益に区分して計上する取扱い(第5項及び第5-2項参照)を一律に求める場合、コストが便益に見合わないこともあるとの意見が聞かれた。これを踏まえて、損益に計上されない当事業年度の所得に対する法人税、住民税及び事業税等の金額に重要性が乏しい場合には、当該法人税、住民税及び事業税等を当期の損益に計上することができることとした(第5-3項(1)参照)。
複数の区分に関連することにより、株主資本又はその他の包括利益に計上する金額を算定することが困難な場合の取扱い
- 29-6. 2022年改正会計基準の審議の過程では、退職給付に関して、例えば、確定給付制度を採用している場合に、確定給付企業年金に係る規約に基づいて支出した掛金等の額が、税務上、支出の時点で損金の額に算入される点について、会計上、掛金等の額は退職給付に係る負債の減額として扱われ、当該退職給付に係る負債は連結財務諸表上、その他の包括利益として計上した未認識数理計算上の差異等を含むことから、その他の包括利益に対して課税されていることになるか否かについて検討を行った。
この点、掛金等の額は確定給付企業年金制度等に基づいて計算されているが、当該計算と会計上の退職給付計算は、その方法や基礎が異なることから、掛金等の額を数理計算上の差異等と紐づけることは困難であり、掛金等の額に数理計算上の差異等に対応する部分が含まれるか否かは一概には決定できず、また、そのような金額の算定は困難であると考えられる。
また、仮に、何らかの仮定に基づいて金額の算定を行うこととした場合、そのような仮定に基づいて会計処理された情報の有用性は限定的であると考えられる。
そこで、退職給付に関しては、当事業年度の所得に対する法人税、住民税及び事業税等を、損益、株主資本及びその他の包括利益に区分して計上する取扱いに対する例外を定めることとして検討を行った。 - 29-7. 前項の例外を定めるにあたり、退職給付に関する論点以外に、同様の論点が生じる状況は限定的であると考えられるが、今後、株主資本やその他の包括利益を用いた会計処理を定めた場合や、税法が改正された場合に、同様に株主資本又はその他の包括利益に対して課税されている部分を算定することが困難な状況が生じる可能性がある。
そのため、例外的な定めとして、課税の対象となった取引等が、損益に加えて、株主資本又はその他の包括利益に関連しており、かつ、株主資本又はその他の包括利益に対して課された法人税、住民税及び事業税等の金額を算定することが困難である場合には、当該税額を損益に計上することができることとした(本会計基準第5-3項(2)参照)。当該例外的な定めを選択するか否かは、企業会計基準第24号第4項(1)に定める「会計方針」の選択に該当すると考えられる。
なお、当該定めに該当する取引として、2022年改正会計基準の開発時点においては、退職給付に関する取引を想定している。
株主資本又はその他の包括利益に計上する金額の算定に関する取扱い
- 29-8. 当事業年度の所得に対する法人税、住民税及び事業税等を、損益、株主資本及びその他の包括利益に区分して計上する取扱いに関して、各区分に計上する金額をどのように算定するかが論点となる。
この点、従来から、子会社に対する投資を一部売却した後も親会社と子会社の支配関係が継続している場合において、親会社の持分変動による差額として計上される資本剰余金から控除する法人税等相当額は、売却元の課税所得や税金の納付額にかかわらず、原則として、親会社の持分変動による差額に法定実効税率を乗じて計算することとしており(税効果適用指針第28項)、また、当該取扱いは、税金の納付が生じていない場合に資本剰余金から控除する額をゼロとするなど他の合理的な計算方法によることを妨げるものではないとしている(税効果適用指針第118項)。
このような子会社に対する投資の一部売却に関する取扱いは、税務上の繰越欠損金がある場合など複雑な計算を伴う場合があることから、実務に配慮しつつ、個々の状況に応じて適切な判断がなされることを意図したものであると考えられる。子会社に対する投資の一部売却以外の株主資本又はその他の包括利益に対して課税される場合についても、同様に実務上の配慮が必要になると考えられることなどから、当事業年度の所得に対する法人税、住民税及び事業税等を、株主資本又はその他の包括利益に区分して計上する場合についても同様に取り扱うこととした(本会計基準第5-4項参照)。
その他の包括利益の組替調整(リサイクリング)に関する取扱い
- 29-9. 当事業年度の所得に対する法人税、住民税及び事業税等を、損益、株主資本及びその他の包括利益に区分して計上する場合、法人税、住民税及び事業税等がその他の包括利益累計額(又は評価・換算差額等)に計上されることがある。この場合、その他の包括利益累計額に計上された法人税、住民税及び事業税等を組替調整(リサイクリング)するか否かが論点となる。
この点、これまで我が国においては、当期純利益の総合的な業績指標としての有用性の観点から、その他の包括利益に計上された項目については、当期純利益にリサイクリングすることを会計基準に係る基本的な考え方としていることを踏まえ、当該法人税、住民税及び事業税等が課される原因となる取引等が損益に計上された時点で、対応する税額についてもリサイクリングを行い、損益に計上することとした(第5-5項参照)。 - 29-10. 当該リサイクリングに関連し、当事業年度の所得に対する法人税、住民税及び事業税等をその他の包括利益累計額(又は評価・換算差額等)に計上した後、リサイクリングがなされるまでに税法の改正に伴い法人税、住民税及び事業税等の税率が変更される場合において、税率の変更に係る差額をリサイクリングすべきか否かについて、税効果会計における税率の変更に関する取扱いとの整合性の観点から論点となった。
この点、税率が変更された場合、税効果会計においては繰延税金資産及び繰延税金負債の再計算に伴い資産及び負債が変動するのに対して、その他の包括利益累計額に計上された過年度の所得に対する法人税、住民税及び事業税等については、関連する資産又は負債である未収還付法人税等又は未払法人税等は通常は税率変更の時点では確定した税額として還付又は納付済みであると考えられ、資産及び負債の変動はない。したがって、税法の改正に伴い税率が変更される場合であっても、税法の改正時に税率の変更に係る差額をリサイクリングする必然性はないものと考えられる。
ここで、税率の変更に係る差額をリサイクリングする処理は、過年度に計上された資産又は負債の評価替えにより生じた評価差額等を損益に計上した時点における税引前当期純利益と税金費用の比率を法定実効税率に近似させることを重視する観点からは考え得る処理である。
しかし、税引前当期純利益と税金費用の比率は必ずしも法定実効税率とは一致せず、両者の差異の主要な要因を注記により開示していること、及び当該処理は実務上煩雑であるとの意見が聞かれたことを踏まえ、税率の変更に係る差額をリサイクリングする処理は採用せず、過年度に計上された資産又は負債の評価替えにより生じた評価差額等を損益に計上した時点のみにおいて、リサイクリングを求めることとした(第5-5項参照)。
(2025年改正会計基準)
- 29-11. 特別法人事業税(基準法人所得割)は、事業税のうち所得割額を標準税率によって計算した金額に対して課すこととされているため、所得に対して課される税金である点では事業税(所得割)と共通の性質を有していると考えられる。このような特別法人事業税(基準法人所得割)の性質を考慮すると、特別法人事業税(基準法人所得割)は、事業税(所得割)と同様の取扱いを行うこととなると考えられる。
- 29-12. 前項の取扱いを明確化するため、特別法人事業税の定義を追加し(第4項(4-2)参照)、事業税(所得割)に適用される本会計基準における会計処理に関する定めが特別法人事業税(基準法人所得割)に適用されることを明確化するための変更を行うこととした(第1項及び第5項参照)。
更正等による追徴及び還付
- 30. 監査保証実務指針第63号では、更正等による追徴及び還付について、「法人税等の更正、決定等による追徴税額及び還付税額は、過年度遡及会計基準及び過年度遡及適用指針に基づき処理することになる(過年度遡及会計基準第55項参照)。なお、これらが過去の誤謬に起因するものでない場合には、損益計算書上、「法人税、住民税及び事業税」の次にその内容を示す名称を付した科目をもって記載する。」と記載され、企業会計基準第24号第55項が参照されていた。本会計基準では、この定めの内容を基本的に踏襲している。
- 31. また、監査保証実務指針第63号では、還付の会計処理については、「還付されることが確定しているもの及び還付額を合理的に見積もることが可能な」ものを計上することが記載されていたが、追徴の会計処理については、どの時点で認識すべきかについて記載がなかったため、本会計基準において追徴と還付の会計処理をどのように記載するかについて検討を行った。
- 32. 追徴の会計処理については、監査保証実務指針第63号では第30項に引用した記載以外は記載されていなかったため、偶発事象を負債として認識する場合の我が国における一般的な考え方を参考に、更正等により追加で徴収される可能性が高く、当該追徴税額を合理的に見積ることができる場合、当該追徴税額を損益に計上することとした(第6項参照)。
- 一方、還付の会計処理については、「還付額を合理的に見積もることが可能な」という表現を踏襲しつつ、同様に、偶発事象を資産として認識する場合の我が国における一般的な考え方を参考に、還付されることが確実に見込まれ、当該還付税額を合理的に見積ることができる場合、当該還付税額を損益に計上することとした(第7項参照)。
- 33. なお、本会計基準において、追徴税額に関する負債の認識の閾値と還付税額に関する資産の認識の閾値を異なるものとしているが、国際的な会計基準(米国会計基準ではFASB Accounting Standards Codification(FASBによる会計基準のコード化体系)のTopic740「法人所得税」に定められ、IFRSではIFRS解釈指針委員会より「法人所得税務処理に関する不確実性」に関するIFRIC解釈指針の公開草案が公表されている。)では、両者の認識の閾値を同じものとしているため、これらの会計基準における記載は、本会計基準のものと相違することとなる。
- この点、今回の実務指針の移管においては、我が国のこれまでの会計慣行に照らした取扱いを重視し、追徴税額に関する負債の認識の閾値と還付税額に関する資産の認識の閾値を異なるものとしている。
追徴税額について課税を不服として法的手段を取る場合の取扱い
- 34. 監査保証実務指針第63号では、追徴税額について法的手段を取る場合の取扱いについて、「追徴税額に関して、課税を不服としてその撤回を求め法的手段を取ることを会社が予定している場合も想定されるが、その場合であっても、法的手段を取る会社の意思のみでは未納付額の不計上あるいは納付税額の仮払処理を行うことは適当ではない。」と記載されている。本会計基準では、当該取扱いにおいて追徴税額を費用として計上せず納付税額を資産として計上するケースが実務では基本的には見られなかったものの、資産として計上するケースが排除されていない表現であったことを踏まえ、「原則として、当該追徴税額を損益に計上する。」との表現を用いている(第6項参照)。
- 35. 監査保証実務指針第63号では、追徴税額の還付可能性の判断について、「法的手段を取った後の経緯、会社及び課税当局(国外を含む。)の主張、相互協議の成否、裁判になった場合は当該裁判の中での双方の主張等総合的に判断し、追徴税額の還付可能性を判断する必要がある。」と記載されていた。当該記載には「双方の主張」等監査上の観点から用いられていた表現があると考えられるため、本会計基準にはこの記載を踏襲していないが、第8項を適用するにあたっては、従来と同様に企業の置かれた状況を総合的に判断する必要があると考えられる。
開 示
2017年会計基準
- 36. 本会計基準は、監査保証実務指針第63号、税効果Q&A及び実務対応報告第12号に記載されている表示に関する取扱いのうち、本会計基準の適用範囲とした税金の表示に関する取扱いの内容を踏襲している。
(当事業年度の所得等に対する法人税、住民税及び事業税等)
- 37. 実務対応報告第12号では、事業税(付加価値割)を、原則として、損益計算書の販売費及び一般管理費として表示する理由に、「付加価値割の課税標準についても、企業の活動価値を表すものと考えられ、課税所得とは異なる考え方に基づき算定される」ため、「利益に関連する金額を課税標準とする事業税ではないと判断される」ことを挙げていた。また、「付加価値割の課税標準は一体として意味を持つものであり、課税標準を分解して取扱いを違えることは不合理であると考えられるため、付加価値割のうち利益に関連する金額に対応する税額のみを分離して「法人税、住民税及び事業税」に計上するといった考え方は採用していない。」との考えが示されていた。本会計基準では、当該考えを踏襲している(第10項参照)。
(受取利息及び受取配当金等に課される源泉所得税)
- 38. 監査保証実務指針第63号では、受取利息及び受取配当金等に課される源泉所得税について、「受取利子・配当等に課される源泉所得税のうち、法人税法及び地方税法上の税額控除の適用を受ける金額は、損益計算書上、「法人税、住民税及び事業税」に含めて処理する。」と記載されていた。この記載について、税額控除の適用を受ける場合、第5項に定めた当事業年度の所得等に対する法人税、住民税及び事業税等の額に含まれ、「法人税、住民税及び事業税」等の適切な科目に含めて表示することが明らかであるため、本会計基準では踏襲していない。
(外国法人税)
- 39. 監査保証実務指針第63号では、外国法人税について、「外国法人税のうち、法人税法上の税額控除の適用を受ける金額は、損益計算書上、「法人税、住民税及び事業税」に含めて処理する。」とされていた記載についても、第38項と同様の理由により、本会計基準では踏襲していない。
- 40. 税効果Q&Aでは、「外国子会社からの配当等の額に係る外国源泉所得税は、当該子会社の利益に関する金額を課税標準とする税金と考えられるため、「法人税、住民税及び事業税」に含めて表示することが適当と考えられます。」とされていた。本会計基準では、この内容を踏襲している(第14項参照)。
2025年改正会計基準
- 40-2. 2025年改正会計基準において特別法人事業税の取扱いを明確化するにあたり、本会計基準における開示に関する定めについては、事業税(所得割)に適用される本会計基準における開示に関する定めが特別法人事業税(基準法人所得割)に適用されることを明確化するための変更を行うこととした(第9項及び第15項参照)。
- 40-3. 前項と併せて、2025年改正前の本会計基準第9項における「法人税、住民税及び事業税などその内容を示す科目をもって表示する」とする記載における「法人税、住民税及び事業税」が表示科目の例を示していることがより明確となるように表現の変更を行うこととした(第9項、第13項、第14項及び第15項参照)。
適用時期等
- 41. 2017年会計基準では、監査保証実務指針第63号等における税金の会計処理及び開示に関する部分について、基本的にその内容を踏襲した上で表現の見直しや考え方の整理等を行っており、実質的な内容の変更は意図していないため、公表日以後適用することとした。また、同様の理由により、2017年会計基準の適用については、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更に該当しないものとして取り扱うこととした(第19項及び第20項参照)。
- 42. 2022年改正会計基準では、法人税、住民税及び事業税等の計上区分に関する基本となる考え方を変更することとしており、その他の包括利益に対して課税される場合の会計処理などが変更になることから、一定の周知期間又は準備期間が必要となると考えられる。そのため、公表から適用開始までに1年以上の期間を設けることとし、2024年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用することとした(第20-2項参照)。
- また、早期適用への一定のニーズがあると考えられることから、2023年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首からの早期適用を認めることとした(第20-2項ただし書き参照)。
- 43. 2022年改正会計基準の適用における前項のような会計方針の変更は、企業会計基準第24号第6項(1)の会計基準等の改正に伴う会計方針の変更に該当する。新たな会計方針を過去の期間に遡及適用することを求めた場合、新たな会計方針に従って過去の期間の会計処理を行った上で、開示についての組替などを行うことが必要となり、財務諸表作成者の過度な負担が生じる可能性があることから、特定の経過的な取扱いについて検討を行った。
- 経過的な取扱いを定めるにあたり、例えば、過年度にその他の包括利益に対して課税され、その後、当期までの期間にその他の包括利益のリサイクリングが行われていない場合、会計方針の変更によって、その他の包括利益に対して課された税額をその他の包括利益累計額とする必要があることから、過年度に生じた取引等についての会計方針の変更による累積的影響が生じる。このような場合において、仮に当該累積的影響額を当期の財務諸表に反映しないこととした場合、将来のリサイクリングを行う期間において、リサイクリング部分についての法人税、住民税及び事業税等の額が損益に計上されないことから、当該期間における税引前当期純利益と税金費用の対応関係が図られないこととなる。
- そのため、過年度に生じた取引等についての累積的影響額を当期の財務諸表に反映させることが考えられるが、これは、新たな会計方針を過去の期間に遡及適用しない場合でも、当該累積的影響額を当期の財務諸表の期首時点の純資産の部に反映することによって達成されると考えられる。
- また、このような累積的影響額については、原則として、過年度において課税されたその他の包括利益の金額に、当該年度の法定実効税率を乗じて算定することになるが(本会計基準第5-4項参照)、このような情報は、過去の実績値であり、また、重要性が乏しい場合には、損益に計上することができることとしていることから(本会計基準第5-3項(1)参照)、情報の入手が可能な場合は多いと考えられる。
- 以上に加え、新たな会計方針を過去の期間に遡及適用することによる便益が限定的と考えられることも考慮し、経過的な取扱いとして、会計方針の変更による累積的影響額を2022年改正会計基準の適用初年度の期首の利益剰余金に加減するとともに、対応する金額を資本剰余金、評価・換算差額等又はその他の包括利益累計額のうち、適切な区分に加減し、当該期首から新たな会計方針を適用することができることとした(本会計基準第20-3項ただし書き参照)。
- 44. 2025年改正会計基準は、特別法人事業税の取扱いの明確化を図ったものであり、影響を受ける企業の数は限定的と考えられることから、一定の周知期間又は準備期間を確保する必要性は高くないと考えられる。このため、2025年4月1日以後最初に開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用することとした(本会計基準第20-4項参照)。
- また、早期適用への一定のニーズがあると想定されることから、2025年3月31日以後最初に終了する連結会計年度及び事業年度の年度末に係る連結財務諸表及び個別財務諸表からの早期適用を認めることとした。この場合、2025年の本会計基準の改正に伴う税効果適用指針の改正も特別法人事業税の取扱いの明確化を図るものであるため、2025年改正税効果適用指針についても同時に適用することとした(本会計基準第20-4項ただし書き参照)。
- 45. 2025年改正会計基準を適用することによりこれまでの会計処理と異なることとなる場合であって、2025年改正会計基準が定める新たな会計方針の遡及適用を求めたとき、過年度に株主資本及びその他の包括利益(又は評価・換算差額等)に計上された法人税、住民税及び事業税等の金額を変更後の法定実効税率を用いて再計算するための一定の負荷が生じる可能性があると考えられる。この点、当該法人税、住民税及び事業税等の金額に重要性がある企業の数は限定的と考えられることを考慮し、経過的な取扱いとして、適用初年度の期首より前に新たな会計方針を遡及適用した場合の適用初年度の累積的影響額を適用初年度の期首の資本剰余金、利益剰余金及び評価・換算差額等又はその他の包括利益累計額に加減し、当該期首から新たな会計方針を適用することができることとした。この場合、2025年の税効果適用指針の改正は、2025年の本会計基準の改正に伴うものであるため、2025年改正税効果適用指針第65-5項ただし書きについて併せて適用することとした(本会計基準第20-5項ただし書き参照)。
- 46. また、2025年改正会計基準の適用により、過年度に課税された特別法人事業税に関する表示科目を変更する影響を受ける企業の数は限定的と考えられることを考慮し、経過的な取扱いとして、適用初年度より新たな表示方法を適用することができることとした(第20-6項参照)。
設 例
- [設例1] 評価・換算差額等に対して課税される場合
- 1. 前提条件
- (1) A社の決算日は、3月31日である。
- (2) A社は、取得原価が1,000のその他有価証券を保有しており、X1年3月期の期末において、その他有価証券の時価は1,500であった。その他有価証券評価差額金500は、X1年3月期において課税所得に含まれ課税されるものとする。
A社は、当該その他有価証券評価差額金を除いても課税所得が生じている。X1年3月期の期末における法人税、住民税及び事業税等の税率並びに法定実効税率は30%であった。 - (3) X2年3月期の期末における当該その他有価証券の時価は1,300であった。X2年3月期の期末における法人税、住民税及び事業税等の税率並びに法定実効税率はX1年3月期の期末と同じく30%であった。
- (4) X3年3月期の期末における当該その他有価証券の時価は、X2年3月期と同じく1,300であった。X3年3月期において税法の改正が行われ、当該期末における法人税、住民税及び事業税等の税率並びに法定実効税率は20%となった。
- (5) X4年3月期の期中に、当該その他有価証券を1,300で売却し、その他有価証券の売却益が300生じた。
A社は、当該その他有価証券の売却損益を除いても課税所得が生じている。X4年3月期の期末における法人税、住民税及び事業税等の税率並びに法定実効税率はX3年3月期の期末と同じく20%であった。 - (6) その他有価証券の税務上の帳簿価額はX1年3月期の期末からX4年3月期の売却時まで1,500であった。
- (7) 繰延税金資産の全額について回収可能性があるものとする。
- 2. 会計処理
- (1) X1年3月期

- (2) X2年3月期

- (3) X3年3月期

- (4) X4年3月期

2022年改正会計基準の公表による他の会計基準等についての修正
- 2022年改正会計基準により、当委員会が公表した会計基準等については、次の修正を行う(下線は追加部分、取消線は削除部分を示す。)。
(略)
2025年改正会計基準の公表による他の会計基準等についての修正
- 2025年改正会計基準により、当委員会が公表した会計基準等については、次の修正を行う(下線は追加部分、取消線は削除部分を示す。)。
- (略)
- 以 上
