ASSET-ASBJ

企業会計基準第41号後発事象に関する会計基準
目 的
- 1. 本会計基準は、後発事象に関する会計処理及び開示について定めることを目的とする。
なお、本会計基準の範囲に定める後発事象に関する開示については、「企業会計原則」に定めがあるが、本会計基準が優先して適用される。 - 2. 本会計基準を適用する際の指針を定めた企業会計基準適用指針第35号「後発事象に関する会計基準の適用指針」(以下「適用指針」という。)が公表されているため、本会計基準の適用にあたっては、当該適用指針も参照する必要がある。
会計基準
範 囲
- 3. 本会計基準は、後発事象に関する会計処理及び開示に適用する。
用語の定義
- 4. 「後発事象」とは、決算日後に発生した企業の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす事象のうち、評価期間の末日までに発生した事象をいう。後発事象には、修正後発事象及び開示後発事象がある。
連結財務諸表においては、「決算日後」を「連結決算日後」と読み替える。さらに、連結子会社及び持分法適用会社(以下「連結子会社等」という。)については、「連結決算日後」を「連結子会社等の決算日後」とする。 - 5. 「修正後発事象」とは、決算日後に発生した事象ではあるが、その実質的な原因が決算日現在において既に存在しており、決算日現在の状況に関連する会計上の判断又は見積りをする上で、追加的又はより客観的な証拠を提供するものとして考慮しなければならない事象をいう。
- 6. 「開示後発事象」とは、決算日後において発生し、当期の財務諸表には影響を及ぼさないが、翌期以降の財務諸表に影響を及ぼす事象をいう。
評価期間
- 7. 第4項における評価期間の末日は、原則として、財務諸表の公表の承認日とする。
会計処理
修正後発事象に関する取扱い
- 8. 重要な修正後発事象については、財務諸表を修正する。
開 示
開示目的
- 9. 重要な開示後発事象に関する注記における開示目的は、開示後発事象が発生した場合に当該開示後発事象が将来の企業の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に及ぼす影響を財務諸表利用者が理解できるようにするための十分な情報を開示することにある。
注記事項
財務諸表の公表の承認
- 10. 財務諸表の公表の承認について、次の事項を注記する。
- (1) 財務諸表の公表の承認日
- (2) 財務諸表の公表を承認した機関又は個人の名称
重要な開示後発事象
- 11. 重要な開示後発事象について、第9項の開示目的を達成するため、次の事項を注記する。
- (1) 重要な開示後発事象の内容及び影響額等
- (2) (1)の影響額の見積りができない場合、その旨及び理由
- 12. 前項の注記について、連結財務諸表を作成している場合に連結財務諸表における注記と個別財務諸表における注記が同一の内容であるときには、個別財務諸表においては、その旨の記載をもって代えることができる。
適用時期等
適用時期
- 13. 本会計基準は、2027年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用する。
経過措置
- 14. 本会計基準の適用初年度においては、本会計基準を2027年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から将来にわたって適用する。
議 決
- 15. 本会計基準は、第566回企業会計基準委員会に出席した委員13名全員の賛成により承認された。なお、出席した委員は、以下のとおりである。
- (略)
結論の背景
経 緯
- BC1. 我が国では、これまで後発事象に関する取扱いを定めた包括的な会計基準はなく、日本公認会計士協会が公表した監査・保証基準委員会 監査基準報告書560実務指針第1号「後発事象に関する監査上の取扱い」(以下「監基報560実1」という。)において、定義や取扱いなどが定められ実務が行われてきた。一方、国際的な会計基準では、IFRS会計基準において、国際会計基準(IAS)第10号「後発事象」(以下「IAS第10号」という。)に取扱いが定められており、米国会計基準においても、FASB Accounting Standards Codification(米国財務会計基準審議会(FASB)による会計基準のコード化体系)のTopic 855「後発事象」(以下「Topic 855」という。)に取扱いが定められている。
- BC2. この我が国の状況に対して、日本公認会計士協会等の関係者から後発事象に関する会計基準の策定の必要性が指摘され、2010年8月に開催された第208回企業会計基準委員会において、公益財団法人財務会計基準機構内に設けられている基準諮問会議より、後発事象の考え方を整理した上で、IFRS会計基準等と同様に、後発事象の定義、会計処理、開示等を規定する会計基準等を策定することが適切であると考えられることが当委員会に提言された。これを受けて、当委員会は、2010年9月から審議を開始した。
- BC3. しかしながら、審議では、会社法(平成17年法律第86号)に基づく開示制度及び金融商品取引法(昭和23年法律第25号)に基づく開示制度の下で財務情報の提供が要求されている現状において、それぞれの財務情報に対して実務上適用可能な会計基準を開発することは困難ではないかという意見が多数を占めた。このため、合意に至ることはできず、2011年3月に開催された第220回企業会計基準委員会を最後に審議を停止した。
- BC4. 他方、当委員会及び日本公認会計士協会は、日本公認会計士協会が公表した企業会計に関する実務指針(Q&Aを含む。以下「実務指針等」という。)を当委員会に移管するプロジェクトの下、2023年6月に「日本公認会計士協会が公表した実務指針等の移管に関する意見の募集」(以下「意見募集文書」という。)を公表した。
- BC5. 意見募集文書に対して寄せられた意見では、会計に関する指針のみを扱う実務指針等以外の実務指針等のうち、継続企業と後発事象に関する実務指針等の移管に係る実行可能性について調査研究を行うことを支持する意見が聞かれた。この意見を踏まえ、当委員会は、調査研究を実施し、2024年6月にその結果を「継続企業及び後発事象に関する調査研究」として公表した。
- BC6. 調査研究の結果、監基報560実1における定めを会計に関する内容と監査に関する内容に切り分けて、会計に関する内容について会計基準で用いられる表現に見直した上で当委員会に移管することは原則として可能と整理された。当該調査研究の結果を踏まえると、監基報560実1を当委員会の会計基準に移管することにより、我が国の会計基準の全体像を把握しにくいなどの指摘されている課題に対応することとなり、会計基準の体系の完全性の改善が見込まれることから、当委員会は、2024年8月に開催された第531回企業会計基準委員会において後発事象に関する会計基準の開発を再開することとした。
- BC7. ここで、監基報560実1で設けられていた、修正後発事象が計算書類及び附属明細書(以下「計算書類等」という。)に対する監査報告書日後に発生した場合に金融商品取引法に基づいて作成される財務諸表において当該修正後発事象を開示後発事象に準じて取り扱う特例的な取扱いについては、国際的な会計基準とは異なる取扱いとなっているが、当該取扱いを廃止して国際的な会計基準と整合性を図るべきとの意見と、会社法と金融商品取引法の開示制度が併存する我が国固有の状況を踏まえ当該取扱いを踏襲すべきとの意見の両論が聞かれており、当該取扱いを抜本的に見直すことについては、短期的に合意を得ることが難しいと考えられた。このような状況を踏まえ、本会計基準の開発にあたっては、後発事象の定義、会計処理及び開示等を取り扱う包括的な会計基準を設定することを優先的な課題とし、原則として監基報560実1で示されている会計に関する内容を踏襲して移管することを基本的な方針とした。したがって、特例的な取扱いについては基本的に踏襲することとし、当該取扱いの抜本的な見直しを行うか否かの検討時期については、有価証券報告書と事業報告等の一体開示の検討の状況等を踏まえて今後判断することとした。
- BC8. 当委員会は、後発事象に係る会計処理及び開示に関して監基報560実1で示されていた「修正後発事象についての基本的な考え方」及び「開示後発事象についての基本的な考え方」を踏襲した上で、表現の見直し及び後発事象の評価期間の整理等を行い、2025年7月に企業会計基準公開草案第87号「後発事象に関する会計基準(案)」等(以下「公開草案」という。)を公表して広く意見を求めた。本会計基準は、公開草案に対して寄せられた意見を踏まえて検討を行い、公開草案の内容を一部修正した上で公表するに至ったものである。
範 囲
- BC9. 後発事象に関する会計処理及び開示については、本会計基準のほかに具体的な指針が定められている場合がある。この場合、本会計基準を適用するにあたり、当該指針が定められている会計基準等も参照する必要がある。
用語の定義
- BC10. 監基報560実1においては、後発事象は、「決算日後に発生した会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす会計事象をいい、このうち、監査対象となる後発事象は、監査報告書日までに発生した後発事象のことをいう。」と定義されていた。この定義では、次の点について監査の観点から記述がなされている。
- (1) 後発事象の範囲が「監査対象となる後発事象」として定められている点
- (2) 後発事象の評価期間が「監査報告書日まで」として定められている点
- BC11. 後発事象の範囲が「監査対象となる後発事象」として定められている点については、会計基準において企業の観点から後発事象の定義を定める場合、監査対象となる後発事象に範囲を制限する必要はないと考えられるため、監基報560実1の表現を踏襲していない。
- BC12. また、後発事象の評価期間が「監査報告書日まで」として定められている点については、次の(1)及び(2)の点を踏まえ、監基報560実1の取扱いを踏襲していない(第4項及び第7項参照)。
- (1) 会計基準の定めは財務諸表の監査が行われることが前提となっておらず、国際的な会計基準においては監査報告書日までが後発事象の評価期間とされていないこと
- (2) 企業が監査を受けることを前提に会計基準を定めるとしても財務諸表に対する二重責任の原則が前提となると考えられること
- BC13. 監基報560実1の後発事象の定義においては、「決算日後に発生した会社の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす会計事象」とされており、公開草案においては、当該定義を踏襲することを提案した。公開草案に寄せられたコメントの中には、会計事象が示す対象の明確化を求める意見があった。
ここで、決算日後に発生する事象には、会計に関する事象のほか、例えば、経営者の交代など会計に関しない事象もあると考えられるため、監基報560実1においては、対象となる後発事象が会計に関する事象であることを明確化するために会計事象と表現されていたと考えられる。
この点、本会計基準における後発事象の定義においては、「決算日後に発生した企業の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす」ものに限り後発事象の対象としているため、当該定義において会計事象ではなく事象と表現しても、後発事象の対象は会計に関する事象であることは明らかであると考えられる。また、事象と表現することにより、企業会計原則における後発事象の定義の表現とも整合することとなる。これらを踏まえ、会計事象の表現を踏襲せず、事象とすることとした(本会計基準第4項参照)。 - BC14. 連結財務諸表においては、企業会計基準第22号「連結財務諸表に関する会計基準」(注4)により、一定の場合、子会社の正規の決算を基礎として連結決算を行うことができるとされているため、子会社の決算日が連結決算日と異なることがある。また、企業会計基準第16号「持分法に関する会計基準」第10項では、持分法の適用にあたって投資会社は被投資会社の直近の財務諸表を使用することとしているため、被投資会社の決算日が連結決算日と異なることがある。この点、監基報560実1では、連結子会社等の決算日が連結決算日と異なる場合の修正後発事象及び開示後発事象に関する取扱いが定められていた。本会計基準では、監基報560実1における当該取扱いを踏襲している(本会計基準第4項参照)。
評価期間
- BC15. 後発事象の評価期間を新たに定めるにあたって、国際的な会計基準を参考にする場合、IAS第10号の定めを参考に「財務諸表の公表の承認日」までとすること又はTopic 855の定めを参考に「財務諸表が公表される日」までとすることの2つが考えられる。この点、次の(1)から(3)を考慮し、後発事象の評価期間の末日に係る原則的な取扱いについて、IAS第10号と同様、財務諸表の公表の承認日とすることとした(第7項参照)。
- (1) 財務諸表利用者にとって有用な情報を提供する観点からは、財務諸表を利用する直近までに発生した事象が反映される財務諸表が公表される日までを後発事象の評価期間とすることが望ましいと考えられる。一方、財務諸表の公表の承認日以後に財務諸表が公表され、実務上、双方の日付の差はあまりないことが通常であると考えられるものの、財務諸表が公表される日までを後発事象の評価期間とする場合の実務上の負担に配慮し、財務諸表の公表の承認日までを後発事象の評価期間とすることが考えられる。
- (2) 財務諸表の公表の承認日までを後発事象の評価期間とする場合、2007年8月に当委員会と国際会計基準審議会(IASB)との間で「会計基準のコンバージェンスの加速化に向けた取組みへの合意」(東京合意)が公表された後は、我が国の会計基準が基本的にIFRS会計基準を国際的な整合性を図る対象としてきていることとも整合する。
- (3) 財務諸表の公表の承認日までを後発事象の評価期間とする場合、我が国のサステナビリティ開示基準における取扱いとも整合する。
- BC16. ここで、「財務諸表の公表の承認日」は、財務諸表を公表することを承認する権限を有する社内の機関又は個人が公表を承認した日付を指すものと考えられる。また、「財務諸表を公表することを承認する権限を有する社内の機関又は個人」は、企業の経営とガバナンスの構造に基づき決定されると考えられるため、企業ごとに異なり得ると考えられる。
- BC17. なお、本会計基準第7項では、後発事象の評価期間の末日の一般的な取扱いとして財務諸表の公表の承認日とすることを定めており、計算書類等又は連結計算書類に関する取扱いについては適用指針に別途定めを設けているため、「原則として」との表現を用いている。
会計処理
修正後発事象に関する取扱い
- BC18. 後発事象の中には、決算日後に発生した事象ではあるが、その実質的な原因が決算日現在において既に存在しており、決算日現在の状況に関連する会計上の判断又は見積りをする上で、追加的又はより客観的な証拠を提供するものであって、これによって当該事象が発生する前の段階における判断又は見積りを修正する必要が生じる場合がある(第5項参照)。このような事象は、当期の財務諸表に影響を及ぼすことから、重要な後発事象については、財務諸表の修正を行うことが必要となると考えられる(第8項参照)。なお、修正後発事象について財務諸表を修正する場合、関連する注記にも反映されることとなる。
- BC19. 修正後発事象としては、例えば、次のような事象が挙げられる。
- (1) 決算日後における訴訟事件の解決により、決算日時点において既に負債が存在したことが明確となった場合。この場合には、単に偶発債務として開示するのではなく、既に計上している引当金を修正する又は新たに引当金を計上することになると考えられる。
- (2) 決算日後に発生した販売先の倒産により、決算日において既に顧客との契約から生じた債権に損失が存在していたことが裏付けられた場合。この場合には、貸倒引当金を追加で計上することになると考えられる。
開 示
開示目的
- BC20. 本会計基準は、開示目的を定めることにより、重要な開示後発事象に関する注記が開示目的を満たすのに十分であるかどうかを評価することを企業に求めることとなり、より有用な情報が財務諸表利用者にもたらされると考えられるため、重要な開示後発事象に関する情報を注記するにあたっての開示目的を定めている(第9項参照)。
重要な開示後発事象に関する注記に記載する具体的な項目及びその詳細さの判断にあたっては、開示目的に照らして重要性を考慮することになる。当該重要性の判断に関しては、重要な後発事象の開示に関する判断の要素(BC26項(1)及び(2)参照)を勘案することが考えられる。
注記事項
財務諸表の公表の承認
- BC21. 本会計基準では、後発事象の評価期間の末日に係る原則的な取扱いを財務諸表の公表の承認日としているため、財務諸表の公表の承認日後に発生した事象は、財務諸表本表及び注記には反映されない。このため、どの時点までに発生した事象が財務諸表本表及び注記に反映されているかに関する情報は、財務諸表の作成の基礎に関する情報を提供するものであり、財務諸表利用者が財務諸表を理解する上で必要な情報であると考えられることから、後発事象が生じているかどうかにかかわらず、IAS第10号と同様、財務諸表の公表の承認日の注記を行うこととした(第10項(1)参照)。
- BC22. また、財務諸表の公表の承認日は、財務諸表を公表することを承認する適切な権限を有する社内の機関又は個人が公表を承認した日付であると考えられ、当該承認を行う権限を有する者は、企業ごとに異なり得ると考えられる(BC16項参照)。このため、財務諸表の公表を承認した機関又は個人の名称に関する情報は、財務諸表利用者が財務諸表の公表の承認日を理解する上で重要な補足情報となると考えられることから、IAS第10号と同様、当該情報の注記を行うこととした(第10項(2)参照)。
重要な開示後発事象
(重要な開示後発事象の内容及び影響額等)
- BC23. 企業会計原則注解(注1-3)では、「重要な後発事象を注記事項として開示することは、当該企業の将来の財政状態及び経営成績を理解するための補足情報として有用である。」との考え方が示されている。この考え方に沿って、本会計基準においては、将来の企業の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況が理解できるように、監基報560実1の定めを踏襲し、重要な開示後発事象に関する注記として重要な開示後発事象の内容及び影響額等の記載を求めることとした(本会計基準第11項(1)参照)。
- BC24. 開示後発事象の内容としては、例えば、事象の概要、事象の発生の原因又は目的、その後の進展の見通し又はスケジュール等が挙げられる。また、影響額については、今後において、これらの事象が企業の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に及ぼす影響額を開示することが考えられる。なお、影響額を見積る場合には、信頼度の高い資料にその根拠を求める等により客観的に見積る必要があると考えられる。
- BC25. また、監基報560実1においては、「影響額を客観的に見積もることができない場合には、その旨及び理由等の開示が必要となる。」とされていた。影響額を客観的に見積ることができない状況にある場合、将来の企業の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況を理解するための重要な情報が財務諸表利用者に提供されないこととなるため、本会計基準においては、影響額の見積りができない状況が理解できるように、監基報560実1の開示の定めの内容を踏襲し、影響額の見積りができない場合にはその旨及び理由の注記を求めることとした(第11項(2)参照)。
(重要な後発事象の開示に関する判断)
- BC26. 企業会計原則注解(注1-3)では、「財務諸表には、損益計算書及び貸借対照表を作成する日までに発生した重要な後発事象を注記しなければならない。」とされている。また、監基報560実1では、「開示後発事象のうち開示の対象となるものは重要な後発事象である」とされていた。本会計基準では、重要な後発事象の開示に関する判断について、監基報560実1に示されていた「開示に関する判断」の内容を踏襲している。具体的には、重要な後発事象の開示(本会計基準第11項(1)参照)に関する判断にあたっては、後発事象の定義(本会計基準第4項参照)及び開示後発事象の定義(本会計基準第6項参照)を踏まえると、次の3つの要素に留意する必要があると考えられる。
- (1) 翌期以降の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす事象であること
- (2) 財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を及ぼす事象であること
- (3) 決算日後に発生した事象であること
- BC27. 前項(1)の要素については、「財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に影響を及ぼす事象」であることから、翌期以降の財務諸表に直接影響を及ぼす既に発生した事象のほか、影響を及ぼすことが確実に予想される事象を含むものと考えられる。なお、財務諸表に開示される財務情報には、財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況を補足して説明するための注記事項も含まれる。したがって、翌期以降にこれらに重要な影響を及ぼす事象も開示後発事象の対象になるものと考えられる。
- BC28. BC26項(2)の要素について、後発事象として開示される事象は、「財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に重要な影響を及ぼす」ものである。この場合、「重要な影響を及ぼす事象」とは、経営活動の中で臨時的、非経常的に生じる事象であって、その影響が質的及び金額的に重要性があるものであると考えられる。
- BC29. BC26項(3)の要素について、後発事象は、「決算日後に発生した事象」であるが、この場合の「発生」の時点は、事象の性質に応じて、例えば、次のようになると考えられる。
- (1) 新株の発行等のように企業の意思決定により進めることができる事象([設例1])
当該意思決定があったとき - (2) 合併のように企業が他の企業等との合意等に基づいて進めることができる事象([設例2])
当該合意等の成立又は事実の公表があったとき - (3) 災害事故等のように企業の意思に関係のない事象
当該事象の発生日又は当該事象を知ったとき
(連結財務諸表を作成している場合の個別財務諸表における注記事項)
- BC30. 財務諸表の公表の承認日に関する情報(第10項(1)参照)は、後発事象が発生しているかどうかにかかわらず、どの時点までに発生した事象が財務諸表本表及び注記に反映されているかを表すものであるため、財務諸表の公表の承認日の注記は財務諸表の作成の基礎に関する情報を提供すると考えられる。また、財務諸表の公表を承認した機関又は個人の名称に関する情報(第10項(2)参照)は、財務諸表の公表の承認日を理解する上で重要な補足情報となると考えられる。ここで、財務諸表の公表の承認は、連結財務諸表と個別財務諸表のそれぞれが対象となると考えられる。したがって、財務諸表の公表の承認に関する注記については、連結財務諸表を作成している場合、連結財務諸表及び個別財務諸表の双方で注記を求めている。
これに対し、重要な開示後発事象に関する注記については、連結財務諸表を作成している場合に連結財務諸表における注記と個別財務諸表における注記が同一の内容であるときには、個別財務諸表においては、その旨の記載をもって代えることができることとした(第12項参照)。これは、連結財務諸表と個別財務諸表の双方に同一の内容を重複して記載する財務諸表作成者の負担を考慮したためである。
適用時期等
適用時期
- BC31. 本会計基準では、財務諸表の公表の承認日までを後発事象の評価期間とする変更を行っており一定の周知期間及び準備期間を設ける必要があると考えられる。また、日本公認会計士協会より公表されている監査に関する実務指針等の改正手続に一定の期間を要することに加えて、その周知期間及び準備期間を設ける必要があると考えられる。これらを考慮し、本会計基準は、早期適用の定めを設けず、2027年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から一律に適用することとした(第13項参照)。
経過措置
- BC32. 本会計基準の適用後に財務諸表の公表の承認プロセスを改めて構築する必要がある場合、財務諸表の公表の承認日を遡及的に定め、重要な開示後発事象に関する注記を当該財務諸表の公表の承認日時点における記載に遡及的に修正することや、財務諸表の公表の承認に関する注記を遡及的に求めることは適切ではないと考えられる。したがって、本会計基準の適用初年度においては、本会計基準を2027年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から将来にわたって適用することとした(第14項参照)。
設 例
- 以下の設例は、本会計基準で示された内容についての理解を深めるために参考として示されたものであり、具体的な判断は、各企業の状況や事象に応じて異なることに留意する必要がある。
設 例
- [設例1] 新株の発行
- 1. 前提条件
- ケース(1)
- A社は、決算日後、財務諸表の公表の承認日(以下「公表承認日」という。)までに新株の発行に関する取締役会決議を行い、公表承認日後に新株の払込みがなされた。
- ケース(2)
- B社は、決算日以前に新株の発行に関する取締役会決議を行い、決算日後公表承認日までに新株の払込みがなされた。
- ケース(3)
- C社は、決算日以前に新株の発行に関する取締役会決議を行い、公表承認日後に新株の払込みがなされた。

- 2. 具体的な判断例
- ケース(1)
- 本ケースでは、新株の発行に関する取締役会決議は、決算日後に行われているが、新株の払込みは公表承認日後になされている。このため、当該新株の発行に関する取締役会決議は、当期の財務諸表には影響を及ぼさないが、新株の払込みがなされる翌期以降の財務諸表に影響を及ぼすこととなる。したがって、A社は、新株の発行に関する取締役会の決議があったことが開示後発事象に該当すると判断した。
- ケース(2)
- 本ケースでは、新株の発行に関する取締役会の決議が決算日以前に行われているため、B社は、取締役会の決議が決算日後に発生した事象に該当しないと判断した。一方、当該決議に基づく新株の払込みが決算日後公表承認日までになされているため、当該払込みは、決算日後に発生しており、かつ、当期の財務諸表には影響を及ぼさないが、払込みがなされた翌期の財務諸表に影響を及ぼす事象に該当すると判断した。したがって、B社は、当該払込みのあったことが開示後発事象に該当すると判断した。
- ケース(3)
- 本ケースでは、新株の発行に関する取締役会の決議が決算日以前に行われているため、C社は、取締役会の決議が決算日後に発生した事象に該当しないと判断した。また、当該決議に基づく新株の払込みは公表承認日までになされていないため、C社は、当該新株の払込みが開示後発事象に該当しないと判断した。
- [設例2] 合 併
- 1. 前提条件
- A社は、当期中にB社との合併について主要条件に合意し公表を行った。その後、公表承認日においても合併承認手続は未了となっている。
- 2. 具体的な判断例
- 本設例では、B社との合併の主要条件について合意及び公表が当期中に行われているため、A社は、B社との合併の主要条件についての合意及び公表が決算日後に発生した事象に該当しないと判断した。また、決算日後公表承認日までの間に合併承認手続は未了であるため、A社は、決算日後公表承認日までの間に発生した事象はないと判断した。したがって、A社は、B社との合併に関して、当期の後発事象に該当する事象はないと判断した。
- ただし、A社はB社と当期中に合併の主要条件について合意及び公表したが、貸借対照表日までに企業結合が完了していないため、A社は、B社との合併について、企業会計基準第21号「企業結合に関する会計基準」第55項また書きに従い、重要な開示後発事象の注記に準じた注記を行う必要があると判断した(本会計基準BC9項参照)。
本会計基準の公表による他の会計基準等についての修正
- 本会計基準により、当委員会が公表した会計基準等については、次の修正を行う(下線は追加部分、取消線は削除部分を示す。)。
- (略)
- 以 上
