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実務対応報告第47号非化石価値の特定の購入取引における需要家の会計処理に関する当面の取扱い
目 的
- 1. 本実務対応報告は、非化石価値の特定の購入取引における需要家の会計処理に関して、当面必要と考えられる実務上の取扱いを明らかにすることを目的とする。
範 囲
- 2. 本実務対応報告は、非化石価値取引において需要家による非化石価値の転売(子会社又は関連会社への融通を除く。以下同じ。)が想定されておらず、発電事業者から需要家に電力の取引を伴わずに非化石価値を移転する契約のうち概ね次の特徴を有するものに適用する。
- (1) 発電事業者と需要家の相対の契約である。
- (2) 需要家は、発電事業者との間で、契約で指定された再生可能電力発電設備の発電量に応じた量の非化石価値を購入する契約を締結する。
- (3) 需要家は、当該非化石価値を買い取る義務を負う。
- 3. 前項に加えて、本実務対応報告は、非化石価値取引において需要家による非化石価値の転売が想定されておらず、特定卸供給事業者等から需要家に電力の取引を伴わずに非化石価値を移転する契約のうち次の特徴を有するものに適用する。
- (1) 特定卸供給事業者等と需要家の相対の契約である。
- (2) 需要家は、特定卸供給事業者等との間で、再生可能電力発電設備で発電を行う者の再生可能電力発電設備を契約で指定し、当該再生可能電力発電設備の発電量に応じた量の非化石価値を特定卸供給事業者等から購入する契約を締結する。
- (3) 需要家は、当該非化石価値を買い取る義務を負う。
- 4. 前項(1)から(3)の特徴を有する契約に本実務対応報告を適用するにあたっては、第5項(4)及び第8項における「発電事業者」を「特定卸供給事業者等」と読み替えるものとする。
用語の定義
- 5. 本実務対応報告における用語の定義は、次のとおりとする。
- (1) 「非化石価値」とは、「エネルギー供給事業者によるエネルギー源の環境適合利用及び化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律施行規則」(平成22年経済産業省令第43号)(以下「高度化法施行規則」という。)第4条第1項第2号に規定するエネルギー源の環境適合利用に由来する電気の非化石電源としての価値のうち、「エネルギー供給事業者によるエネルギー源の環境適合利用及び化石エネルギー原料の有効な利用の促進に関する法律」(平成21年法律第72号)(以下「高度化法」という。)第2条第3項に規定する再生可能エネルギー源を利用する電源としての価値をいう。
- (2) 「需要家」とは、第2項又は第3項に掲げる特徴を有する契約を締結する者のうち、非化石価値を自己使用目的で購入する者をいう。
ただし、第2項又は第3項に掲げる特徴を有する契約を締結する者が、その子会社又は関連会社に融通する目的で非化石価値を購入する場合において、当該子会社又は関連会社が非化石価値を自己使用目的で取得するときは、第2項又は第3項に掲げる特徴を有する契約を締結する者を「需要家」として取り扱う。 - (3) 「発電事業者」とは、「電気事業法」(昭和39年法律第170号)第2条第1項第15号に規定する発電事業を営むことについて同法第27条の27第1項の規定による経済産業大臣への届出をした者をいう。
- (4) 「国による電力量の認定時点」とは、国が発電事業者から報告を受けた非化石価値に係る電力量が正確な値であることを認定した時点をいう。
- (5) 「特定卸供給事業者等」とは、電気事業法第2条第1項第15号の4に規定する特定卸供給事業を営むことについて同法第27条の30第1項の規定による経済産業大臣への届出をした者及びこれに準ずる者をいう。
実務上の取扱い
非化石価値を受け取る権利及び対価の支払義務に関する会計処理
- 6. 需要家は、非化石価値を受け取る権利について、契約で指定された再生可能電力発電設備による発電が行われ、かつ、金額を信頼性をもって測定できる時点において費用処理を行う。遅くとも国による電力量の認定時点(第5項(4)参照)では、金額を信頼性をもって測定できるものとして取り扱う。
- 7. 前項の費用処理の時点において、対価の支払義務に係る負債を計上する。
対価の差金決済を行う場合の取扱い
- 8. 非化石価値の対価として、契約上の固定価格と卸電力市場で決定される電力価格(以下「卸電力市場価格」という。)の差額に契約で指定された再生可能電力発電設備の発電に応じた電力量を乗じて得た金額を発電事業者と需要家との間で決済する(以下「差金決済」という。)場合において、卸電力市場価格が契約上の固定価格を上回ることにより、需要家が対価を受け取ることとなるときは、当該対価を費用から減額する。
子会社又は関連会社に融通する目的で非化石価値を購入する場合の子会社又は関連会社との間の取引についての取扱い
- 9. 需要家がその子会社又は関連会社に融通する目的で非化石価値を購入する場合(第5項(2)ただし書き参照)、当該需要家とその子会社又は関連会社との間の取引については、両者の合意内容に基づき会計処理を行う。
適用時期等
- 10. 本実務対応報告は、2026年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用する。
ただし、公表日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から本実務対応報告を適用することができる。 - 11. 本実務対応報告の適用初年度において、本実務対応報告を適用することによりこれまでの会計処理と異なることとなる場合、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として取り扱う。需要家に生じた非化石価値を受け取る権利で、契約で指定された再生可能電力発電設備により適用初年度の期首までに発電が行われ、かつ、金額を信頼性をもって測定できるものについては、当該非化石価値を受け取る権利の金額を適用初年度の期首の利益剰余金に加減する。この場合、当該期首時点で国による電力量の認定時点(第5項(4)参照)が到来しているものに係る金額は、適用初年度の期首の利益剰余金に加減する金額に含めることとする。
議 決
- 12. 本実務対応報告は、第563回企業会計基準委員会に出席した委員12名全員の賛成により承認された。
結論の背景
経 緯
- BC1. 近年、多くの企業が脱炭素、低炭素化に向けた取組みを活発化させており、当該取組みの1つとして、いわゆるバーチャル電力購入契約(Virtual Power Purchase Agreement)(以下「バーチャルPPA」という。)により取得した非化石価値と別途調達する再生可能電力でない電力を組み合わせることで実質的に再生可能電力を調達したことと同じ効果を得られる手法がみられる。本実務対応報告の開発時点においてバーチャルPPAについての明確な定義はないが、再生可能電力発電設備の所有者である発電事業者から需要家へ、事前に合意した価格及び期間に基づき、電力の取引を伴わずに非化石価値を移転する契約がバーチャルPPAと呼ばれることが多いと考えられる。
- BC2. 今後も各企業の環境意識の高まりとともに、バーチャルPPAの利用がさらに拡大することが見込まれる中、バーチャルPPAに関する会計上の取扱いが明確ではないとして、2023年11月に公益財団法人財務会計基準機構内に設けられている企業会計基準諮問会議に対して、バーチャルPPAの需要家における会計処理について検討するよう要望が寄せられた。
- BC3. これを受けて、2024年7月に開催された第530回企業会計基準委員会において、企業会計基準諮問会議より、バーチャルPPAの会計処理に関して、本実務対応報告の開発時点の我が国におけるバーチャルPPAに関する実務を考慮してニーズの高い領域について当面の取扱いを定めた上で、実務の進展や国際的な会計基準の審議の動向を注視し、国際的な会計基準における取扱いがより明確になったこと等を契機として必要に応じて見直しを行うことが当委員会に提言された。
- BC4. 当該提言を受けて当委員会は、バーチャルPPAの会計処理に関する当面の取扱いについて検討することとして2024年9月より審議を開始し、2025年3月に実務対応報告公開草案第70号「非化石価値の特定の購入取引における需要家の会計処理に関する当面の取扱い(案)」(以下「公開草案」という。)を公表した。本実務対応報告は、公開草案に対して寄せられた意見を踏まえて検討を行い、公開草案の内容を一部修正した上で公表するに至ったものである。
なお、今後の非化石価値取引の進展や会計実務の状況により、本実務対応報告において定めのない事項に対して別途の対応を図ることの要望が市場関係者により当委員会に提起された場合には、公開の審議により、別途の対応を図ることの要否を当委員会において判断することとした。
範 囲
本実務対応報告の対象者の範囲
- BC5. 企業会計基準諮問会議に寄せられたテーマ提案では、第2項に掲げる特徴を有する契約の当事者である需要家及び発電事業者の双方の会計上の取扱いを検討する場合には一定の時間を要することが予想される中、早期の対応が必要であることに鑑み、より広範囲に影響があると考えられる需要家の会計上の取扱いのみを検討することが提案された。これを踏まえて、当委員会は、本実務対応報告において需要家の会計上の取扱いを定めることとし、発電事業者の会計上の取扱いは定めないこととした(第1項参照)。
- BC6. 本実務対応報告の開発時点における我が国の制度上、調達の効率化や与信面等を理由にグループの親会社が調達した非化石価値をグループ内の他社に融通したいという要望があったことを背景として、親会社が購入した非化石価値を会社法(平成17年法律第86号)上の子会社又は会社計算規則(平成18年法務省令第13号)上の関連会社に融通することが認められている。融通は、あらかじめ融通先となる子会社又は関連会社のリストを国に提出し、国が当該リストを確認した後、親会社において一般社団法人日本卸電力取引所(以下「取引所」という。)が用意するコンピュータ・システム(以下「非化石価値取引システム」という。)上で非化石価値の他社利用の処理をすることで行うとされている。
- BC7. グループ内の他社への融通について、調達の効率化や与信面等の理由から子会社又は関連会社に代わり親会社がまとめて非化石価値を購入することはグループ経営の一環として通常考え得ることから、親会社から子会社又は関連会社への融通を「転売」として本実務対応報告の適用対象外とするのではなく、子会社又は関連会社において自己使用目的となる場合には、グループ全体としては自己使用目的であるとして本実務対応報告の適用対象とすることが考えられる。
- BC8. ここで、親会社と子会社又は関連会社のどちらを本実務対応報告の需要家として取り扱うかについては、最終的に非化石価値を自己使用目的で取得することとなるのは子会社又は関連会社であるため、子会社又は関連会社を需要家とする考え方もある。しかしながら、子会社又は関連会社を本実務対応報告の需要家として取り扱う場合、子会社又は関連会社は発電事業者又は特定卸供給事業者等との契約の当事者ではないことから、第2項又は第3項の適用についての判断が複雑となる可能性がある。これを踏まえると、発電事業者又は特定卸供給事業者等との契約の当事者である親会社を本実務対応報告における需要家として取り扱うことが考えられる。
- BC9. したがって、親会社から子会社又は関連会社への融通は「転売」として取り扱わないこととし(第2項参照)、第2項又は第3項に掲げる特徴を有する契約を締結する者が、その子会社又は関連会社に融通する目的で非化石価値を購入する場合において、当該子会社又は関連会社が非化石価値を自己使用目的で取得するときは、第2項又は第3項に掲げる特徴を有する契約を締結する者を「需要家」として取り扱うこととした(第5項(2)参照)。
本実務対応報告を適用する契約の範囲
- BC10. 企業会計基準諮問会議からの提言は、本実務対応報告の開発時点の我が国におけるバーチャルPPAに関する実務を考慮して当面の取扱いを定めた上で、実務の進展や国際的な会計基準の審議の動向を注視し、国際的な会計基準における取扱いがより明確になったこと等を契機として必要に応じて見直しを行うというものであった(BC3項参照)。これを踏まえて、当委員会は、当面の取扱いを検討するにあたって、現在我が国において行われているバーチャルPPAの一般的な取引形態において需要家が取得する非化石価値の性質や取引条件等を基礎として、本実務対応報告を適用する契約の範囲について整理を行うこととした。
- BC11. 本実務対応報告の開発時点の我が国における非化石価値取引の制度上、取引所が運営する非化石価値取引市場における取引を通じて発電事業者が非化石価値を売却するほか、発電事業者が相対で小売電気事業者又は需要家に売却することが可能とされており(発電事業者から需要家への売却は、本実務対応報告を適用する契約に基づいて行う場合を含む一定の条件を満たす場合に可能となる。)、非化石価値を売却することができるのは発電事業者であることから、需要家が非化石価値を転売することは想定されていない(第2項参照)。
- BC12. 本実務対応報告を適用する契約は発電事業者と需要家が相対で締結するものであり、需要家は、自己使用目的の下、想定する自社の電力の消費量の範囲内で、当該契約で指定された再生可能電力発電設備の発電量に応じた量の非化石価値を購入することを約束し、当該非化石価値を買い取る義務を負うこととなると考えられることを考慮して、第2項(1)から(3)のとおり、本実務対応報告を適用する契約が有する特徴を列挙するとともに、第5項(2)のとおり需要家の定義を定めている。
- BC13. 公開草案では、発電事業者と需要家の相対の契約であることを本実務対応報告を適用することとなる契約が有する特徴の1つとすることを提案した。公開草案に寄せられたコメントの中には、本実務対応報告の開発時点の制度上、需要家は特定卸供給事業者との直接取引においても非化石価値を購入することが可能であり、需要家にとっては、相対の契約先が発電事業者であるか特定卸供給事業者であるかによって、経済的効果に違いはないとの意見があった。
- BC14. 特定卸供給事業者との取引はさまざまな類型があるが、特定卸供給事業者と需要家の相対で締結された非化石価値の移転に関する契約で、再生可能電力発電設備で発電を行う者の再生可能電力発電設備を指定した上で、当該再生可能電力発電設備の発電量に応じた量の非化石価値を特定卸供給事業者から需要家が購入し、需要家が当該非化石価値を買い取る義務を負う場合には、本実務対応報告を適用して会計処理を行うことが考えられる。したがって、第3項(1)から(3)に列挙した特徴を有する契約に本実務対応報告を適用することとした。
- BC15. ここで、需要家が非化石価値の移転に関する契約を締結する相手方になり得る者として、電気事業法における特定卸供給事業者の定義を満たす者のほか、電気事業法上の特定卸供給事業者の定義は満たさないが、複数の再生可能電力発電設備を束ねることで再生可能電力発電設備の発電変動を吸収し、安定した供給力として卸電力市場などへ電力の供給を行う者も挙げられる。このため、本実務対応報告では、このような役割を担う者を特定卸供給事業者に準ずる者として、特定卸供給事業者とまとめて「特定卸供給事業者等」と定義した上で(第5項(5)参照)、本実務対応報告を適用するにあたり、「国による電力量の認定時点」の定義(第5項(4)参照)と対価の差金決済を行う場合の取扱い(第8項参照)における「発電事業者」を「特定卸供給事業者等」と読み替えるものとする定めを置くこととした(第4項参照)。
- BC16. また、本実務対応報告の開発時点の制度上、特定卸供給事業者等は電気事業法上の発電事業者から非化石価値を調達するほか、それ以外の発電者から非化石価値を調達することも想定されているため、再生可能電力発電設備で発電を行う者は電気事業法上の発電事業者に限らないこととしている(第3項(2)参照)。
- BC17. なお、企業会計基準諮問会議に寄せられたテーマ提案では、非化石価値の対価の支払条件について、発電事業者の収入を固定化するために、発電事業者は契約で指定された再生可能電力発電設備で発電した電力を卸電力市場で売却するとともに、需要家は非化石価値の対価として契約上の固定価格と卸電力市場価格の差額を発電事業者に支払うことが一般的であるとされており、本実務対応報告を適用する契約の特徴の1つとして挙げられていた。この場合、需要家が支払う対価は差金決済による変動価格となるが、例えば、特定の補助金制度を適用する場合には、固定価格とする契約もあるとされている。このため、対価の支払条件が変動価格となることも固定価格となることも想定されることから、対価の支払条件については、本実務対応報告を適用する契約が有する特徴には含めないこととした。
用語の定義
- BC18. 本実務対応報告では、現在我が国において行われているバーチャルPPAの一般的な取引形態において需要家が取得する非化石価値の性質や取引条件等を基礎として整理を行っている。本実務対応報告における非化石価値の定義に関して、公開草案では、高度化法施行規則における「エネルギー源の環境適合利用に由来する電気の非化石電源としての価値」という記載を用いた定義を行うことを提案した。
- BC19. 公開草案に寄せられたコメントの中には、非化石価値を「非化石電源としての価値」と定義することを提案しているにもかかわらず、高度化法等における非化石価値は再生可能エネルギー源から生じるもののみではないため、本実務対応報告を適用する契約における非化石価値が「再生可能電力発電設備」による発電で生じる(第2項(2)、BC12項及びBC23項(1)参照)とした点について、矛盾が生じているとの意見があった。
- BC20. この点、本実務対応報告を適用する契約における非化石価値が「再生可能エネルギー源」から生じるものであることの明確化を図った(第5項(1)参照)。
実務上の取扱い
非化石価値の特徴と会計上の考え方
- BC21. 企業会計基準諮問会議に寄せられたテーマ提案では、非化石価値の移転に係る対価の差金決済を行うことが一般的であるとされ、差金決済の想定元本等にあたると考えられる電力量が発電実績に応じて変動するため、契約期間中の想定元本等の量が定まらないような場合に、デリバティブに該当するか否かについて明確化することを検討することが挙げられていた。
- BC22. この点に関して、第2項に掲げる特徴を有する契約には、需要家が支払う対価を固定価格とするものもあり、契約上の固定価格と卸電力市場価格の差額を非化石価値の価格とすることは需要家が支払う対価を決定する1つの方法であると考えられる。このため、当委員会は、契約に含まれる差金決済という特徴のみに着目してデリバティブに該当するか否かの検討を行うのではなく、需要家にとって契約の主たる目的であると考えられる非化石価値の取得について、非化石価値取引の概要や非化石価値の特徴を踏まえてどのような会計処理が経済実態を表すのかの検討を行うこととした。
非化石価値取引の概要
- BC23. 本実務対応報告の開発時点において、第2項に掲げる特徴を有する契約に基づく非化石価値取引は、概ね以下から構成される。
- (1) 契約の締結
需要家は、発電事業者との間で、指定された再生可能電力発電設備の発電量に応じた量の非化石価値を購入する契約を締結する。 - (2) 発電事業者による発電
発電事業者は、契約で指定された再生可能電力発電設備で発電を行う。 - (3) 発電事業者による電力量の申請
発電事業者は、発電月から2か月後の末日までに、一般送配電事業者から通知された電力量に基づき電力量を国へ申請する。 - (4) 国による電力量の認定
国は、取引される非化石価値の信頼性を担保するため、発電事業者から報告を受けた電力量が正確な値であることを認定する。当該認定により、需要家が受け取る非化石価値の量が確定する。認定結果は発電月から3か月後の月末(電力量の申請期限から1か月後)に、国から発電事業者へ通知される。また、国は、認定した電力量を取引所へ通知する。 - (5) 発電事業者の口座残高の増加
取引所は非化石価値取引の参加者ごとに非化石価値を管理する口座を設けており、取引参加者は保有する非化石価値の量を確認することができる。取引所は、国から通知された電力量に基づき、非化石価値取引システムにおいて発電事業者の非化石価値の口座残高を増加させる。 - (6) 非化石価値の移転
非化石価値は、発電事業者と需要家が契約において合意した日に発電事業者から需要家へ移転する。 - (7) 需要家による対価の支払
需要家は、契約で定められた日に非化石価値の対価を発電事業者に支払う。 - (8) 需要家の口座残高の増加
取引所は、発電事業者からの非化石価値の移転の申請に基づき、非化石価値取引システムにおいて発電事業者の口座残高を減少させるとともに、需要家の口座残高を増加させる。非化石価値の移転の申請が行われる時期は毎月又は3か月ごとなど個々の契約により異なるが、遅くとも本項(10)の口座の凍結までには当該申請が行われ、取引所は需要家の口座残高を増加させる。 - (9) 非化石価値の使用
需要家は、非化石価値を「地球温暖化対策の推進に関する法律」(平成10年法律第117号)(以下「温対法」という。)の報告等に使用する。 - (10) 口座の凍結
取引所の口座は毎年6月に凍結される。
非化石価値の特徴
- BC24. 本実務対応報告を適用する契約における非化石価値は、第2項に記載している本実務対応報告を適用する契約の範囲、前項に記載している非化石価値取引の概要及び本実務対応報告の開発時点の我が国における制度を踏まえると、次の特徴を有すると考えられる。
- (1) 非化石価値は、需要家により転売されることが想定されておらず、本実務対応報告を適用する契約では、需要家による自己使用目的で購入される。このため、需要家が非化石価値を第三者に売却することによる直接的な経済的便益の流入はないと考えられる。
- (2) 本実務対応報告の開発時点の我が国における制度において、需要家に温室効果ガスの排出量の削減義務は課されていないため、非化石価値は、当該削減義務を履行するための直接的な将来の経済的資源の流出を削減する効果は有していないと考えられる。
- (3) 非化石価値は、需要家が別途調達する再生可能電力でない電力と組み合わせることで、温対法に基づく温室効果ガスの排出量の報告において削減された温室効果ガスの排出量として報告すること等に使用することができる。このため、間接的にではあるが、将来の経済的便益の流入又は経済的資源の流出の削減をもたらす蓋然性があると考えられる。
- (4) 非化石価値は、報告に使用した時点で消滅すると考えられるが、温対法に基づく報告、企業が自らの事業に使用する電力の100%を再生可能電力で賄うことを目指す国際的な取組みであるRE100に係る報告等、複数の報告に使用することができるため、複数の報告に使用する場合には、ある報告に使用しても消滅しないとも考えられる。
- (5) 前項(4)のとおり、非化石価値は発電月から3か月後に国により認定されるため、1月から12月の発電に応じた非化石価値は4月から翌年3月にかけて認定されることとなる。さらに、温対法では、4月から翌年3月までに国により認定された非化石価値は需要家が4月から翌年3月までに使用した電力に係る温室効果ガスの排出量の削減に充てるために使用され、報告期限は翌年6月末日又は7月末日とされている。このため、発電時点と非化石価値が認定される時点は異なっている。また、発電時点と温対法の報告において非化石価値を温室効果ガスの排出量の削減に充てることができる時点も異なっている。
- (6) 契約によっては、温対法において使用した電力に係る温室効果ガスの排出量の削減に充てられる期間(4月から翌年3月まで)の後に需要家の非化石価値の口座残高が増加することがあるとされている。例えば、需要家の口座残高の増加が国による電力量の認定が行われた2か月後(すなわち、発電月から5か月後)となる場合があり、このような場合、12月に発電された電力に係る非化石価値については、翌年3月までに使用した電力に係る温室効果ガスの排出量の削減に充てることができるが、需要家の口座残高の増加は翌年5月に行われることとなる。このように、非化石価値は、引渡しよりも前に使用した電力に係る温室効果ガスの排出量の削減に充てることができるという性質を有しており、この点において棚卸資産等の一般的な財とは異なっていると考えられる。
非化石価値を受け取る権利及び対価の支払義務に関する会計処理
非化石価値を受け取る権利及び対価の支払義務の認識時点
- BC25. BC23項に記載している非化石価値取引の概要を踏まえると、本実務対応報告を適用する契約では、需要家が契約で指定された再生可能電力発電設備の発電量に応じた量の非化石価値を購入することをあらかじめ約束しているため、発電により将来非化石価値を受け取る権利及び対価の支払義務が需要家に生じていると考えられる。これを考慮すると、発電時点において需要家が非化石価値を受け取る権利及び対価の支払義務の会計処理を行うことが考えられる。
- BC26. しかしながら、国による電力量の認定時点より前は非化石価値の量が確定していないことや、発電時点では発電事業者から需要家に発電量の通知が行われていない可能性があることから、発電時点において会計処理を行うことが実務的に困難な場合があることが想定される。このため、公開草案では、需要家は、発電により生じた、非化石価値を受け取る権利について、金額を合理的に見積ることが可能となった時点で会計処理を行うことを提案した。また、具体的にどの時点で金額を合理的に見積ることが可能となるかは個々の契約により異なると考えられ、実務上過大な負担とならずに入手可能な情報を用いて合理的な見積りを行うことができるかどうかで判断することとなると考えられるが、国による電力量の認定(BC23項(4)参照)により非化石価値の量が確定することとなり、この時点においては、契約内容や卸電力市場価格等に基づき価格についても見積ることができると考えられるため、遅くとも国による電力量の認定時点までに金額を合理的に見積り、会計処理を行うことを提案した。
- BC27. 公開草案に寄せられたコメントの中には、状況によって発電事業者における発電より前に「金額を合理的に見積る」ことが可能と判断された場合に、発電を待たずに非化石価値の取得の会計処理を行うとの誤解が生じることを懸念し、非化石価値を受け取る権利及び対価の支払義務の認識時点が「発電」時以降であることを明確化すべきであるとの意見があった。
- BC28. この点、「金額を合理的に見積ることが可能となった時点」ではなく、発電が行われ、かつ、金額を信頼性をもって測定できる時点において会計処理を行うことを明確化した(第6項参照)。実務上は、発電時点において費用処理を行うことが困難な場合があることが想定されることから、発電時に費用処理の金額について信頼性をもって測定できない場合、信頼性をもって測定できるようになるまで費用処理を行わないことが考えられる。一方、国による電力量の認定時点(第5項(4)参照)では、非化石価値の量が確定することとなり、契約内容や卸電力市場価格等に基づき価格についても情報を得ることができると考えられるため、遅くとも当該時点においては金額を信頼性をもって測定できるものとして取り扱うこととした(第6項参照)。
- BC29. また、公開草案に寄せられたコメントの中には、決算日後に国による電力量の認定が行われたこと等により、金額を合理的に見積ることが可能となった場合の取扱いを明らかにすべきとの意見があった。この点、決算日において発電が完了しているものの、非化石価値の量や価格に係る情報を収集できていない等の状況下で、需要家が非化石価値を受け取る権利の金額を信頼性をもって測定することができなかった場合には、当該需要家は非化石価値を受け取る権利に係る費用を計上することはなく、したがって、仮に決算日後の事実と状況により信頼性をもって測定することが可能となったとしても、修正後発事象として非化石価値を受け取る権利に係る費用計上の修正を行う必要はないと考えられる。
ただし、決算日において発電が完了しており、かつ、非化石価値の量や価格に係る必要な情報を収集したことで需要家が非化石価値を受け取る権利の金額を信頼性をもって測定したことにより、当該需要家が非化石価値を受け取る権利に係る費用を計上した場合には、当該需要家が決算日後により精緻な測定が可能となる情報を入手したことを受けて、重要性に応じて計上した費用の金額を修正することが考えられる。 - BC30. なお、審議の過程では、需要家の口座残高の増加の時点で会計処理を行うという意見も聞かれたが、BC25項のとおり、本実務対応報告では非化石価値そのものの移転ではなく、非化石価値を受け取る権利に着目していることから、需要家の口座残高の増加より前の時点で会計処理を行うこととした。
非化石価値を受け取る権利の認識時点の会計処理
- BC31. 我が国の会計基準では、資産の定義及び認識要件は明示的に定められていないが、将来の経済的便益の流入又は将来の経済的資源の流出の削減をもたらす蓋然性が高い項目について、会計上、資産を認識していると考えられる。
- BC32. この点、本実務対応報告の開発時点の我が国における制度において、需要家が取得する非化石価値は第三者への転売が想定されていないため、非化石価値の売却による直接的な将来の経済的便益の流入はないと考えられる(BC24項(1)参照)。また、本実務対応報告の開発時点の我が国における制度において、需要家に温室効果ガスの排出量の削減義務は課されていないため、当該削減義務を履行するための直接的な将来の経済的資源の流出の削減もないと考えられる(BC24項(2)参照)。
- BC33. 一方、非化石価値は、温室効果ガスの排出量の報告において温室効果ガスの削減相当量として報告すること等を通じて、間接的に将来の経済的便益の流入又は経済的資源の流出の削減をもたらす蓋然性はあるため(BC24項(3)参照)、会計上、資産を認識するという考え方があると考えられる。また、非化石価値について資産を認識する考え方に基づき、非化石価値を受け取る権利についても、会計上、資産を認識するという考え方があると考えられる。
- BC34. このように、非化石価値及び非化石価値を受け取る権利は、会計上、資産を認識するという考え方があると考えられるが、将来の経済的便益の流入又は経済的資源の流出の削減を間接的にしか捉えることができず、将来の経済的便益の流入又は経済的資源の流出の削減をもたらすかどうかについて不確実性があると考えられることから、費用処理することとした(第6項参照)。
対価の差金決済を行う場合の取扱い
- BC35. 非化石価値の対価の支払条件について、差金決済が一般的であるとされていることから(BC17項及びBC21項参照)、審議の過程では、対価の差金決済を行う場合に、卸電力市場価格の上昇により、需要家が非化石価値を取得して対価を受け取る、すなわち、需要家が支払う対価がマイナスとなる事例が将来発生する可能性を考慮して、会計処理を定めるかどうか検討すべきであるとの意見が聞かれた。
- BC36. 本実務対応報告を適用する契約において差金決済を行う目的は、発電事業者が契約で指定された再生可能電力発電設備で発電した電力を卸電力市場で売却するとともに(価格は卸電力市場価格)、非化石価値を需要家へ売却する(価格は契約上の固定価格と卸電力市場価格の差額)ことにより、発電事業者の収入を固定化することにあるとされている。一方、需要家は、非化石価値を取得することを目的に本実務対応報告を適用する契約を締結しており、契約期間中の卸電力市場価格の変動により支払額が増減することを考慮した上で、契約時点において対価の支払条件に合意しているものと考えられる。
- BC37. また、対価の差金決済を行う場合において、契約上の固定価格と卸電力市場価格の差額に電力量を乗じて得た金額を対価として決定することが一般的であると考えられることを考慮すると、需要家が支払う対価がマイナスとなるのは、卸電力市場価格が当該契約上の固定価格を上回る場合であり、電力量がマイナスとなって需要家が発電事業者に対して非化石価値を引き渡す義務を負うことはない。
- BC38. 前2項を踏まえると、需要家は常に非化石価値を取得しており、その対価はプラスにもマイナスにもなり得るものと考えられる。このため、非化石価値を受け取る権利について費用処理することとしていることから(第6項参照)、需要家が支払う対価がマイナスとなる場合には、マイナスの対価を費用から減額することとした(第8項参照)。
子会社又は関連会社に融通する目的で非化石価値を購入する場合の子会社又は関連会社との間の取引についての取扱い
- BC39. 需要家が子会社に融通する目的で非化石価値を購入した場合、需要家は、子会社へ融通する分も含めて第6項から第8項に従って費用処理を行った上で、需要家と子会社の取引について取引の経済実態を適切に表すように両者の合意内容に基づき会計処理を行う(第9項参照)。例えば、子会社に代わり需要家がまとめて非化石価値を購入することを前提とすると、子会社が需要家に対して実費精算のために支払った額について、子会社において費用として計上し、需要家において費用の減額とすることが考えられる。また、合意内容によっては、いったん需要家の個別財務諸表において立替等の会計処理を行う場合もあると考えられる。
- BC40. 関連会社へ融通する場合においても、子会社に融通する目的で非化石価値を購入した場合と同様の取扱いとするという考え方から、需要家と関連会社との取引についても、その経済実態を適切に表すように両者の合意内容に基づき会計処理を行う(第9項参照)。
開示に関する検討
- BC41. 企業会計基準諮問会議において、バーチャルPPAが長期の取引であり、対価の差金決済を行う場合があることから一定の開示を求める意見が聞かれたため、当委員会は、本実務対応報告を適用する契約に関して追加的な開示を求めるかどうかの検討を行った。
- BC42. 公開草案の審議の過程では、本実務対応報告を適用する契約から生じる損益及びキャッシュ・フローの性質、金額、時期及び不確実性を財務諸表利用者が理解できるようにするために、本実務対応報告を適用する契約が当期の財務諸表に与える影響及び当該影響がどのような契約から生じているかを理解するための基礎となる情報を開示することが検討された。一方、本実務対応報告の範囲を自己使用目的での非化石価値の取得に限定していることから、契約期間が長期にわたる他の契約において価格変動が想定される場合のコストに関する開示の実務を踏まえて追加的な開示の要否を検討すべきであるとの意見が聞かれた。
- BC43. この点、公開草案においては、非化石価値を自己使用目的で取得するという本実務対応報告の範囲では、次の理由から、特段の開示を求めないことを提案した。
- (1) 本実務対応報告を適用する契約では、自己使用目的の下、自社の電力の消費量の範囲で非化石価値を購入するものと想定される。本実務対応報告の開発時点で観察される契約における非化石価値の金額は、電力料金に比べて相対的に少額であり、財務諸表において、電力関連費用を区分して開示していない実務が多い中、非化石価値に関してのみ開示を求めた場合には、電力関連費用の一部のみが開示されることとなり、有用性は乏しいと考えられる。
- (2) 自己使用目的で財又はサービスを購入する長期契約(例えば、商品や材料を購入する長期契約)については、本実務対応報告の開発時点の実務において特段の開示は求められていないと考えられる。
- (3) 本実務対応報告を適用する契約では、対価の差金決済を行う場合、卸電力市場価格が下落したときは、需要家の支払額が増加することとなるが、支払額は契約上の固定価格が上限となると考えられる。
- BC44. 公開草案に寄せられたコメントの中には、本実務対応報告を適用する契約の影響が本実務対応報告の開発時点の想定を超えるような場合には開示の要否の検討が必要となることを明記すべきとの意見や、利害関係者が企業集団又は企業の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に関する適正な判断を行うために必要と認められる事項がある場合は、本実務対応報告を適用する契約から生じる損益及びキャッシュ・フローの性質、金額、時期及び不確実性を財務諸表利用者が理解できるようにするための十分な情報を開示すべきであるとの意見があった。
- BC45. この点、本実務対応報告の開発時点で観察される契約における非化石価値の金額が電力料金に比べて相対的に少額である中で、その開示の有用性を勘案し、非化石価値を自己使用目的で取得するという本実務対応報告の範囲では、公開草案と同様に開示に関する定めは設けないこととした。ただし、本実務対応報告を適用する契約が財務諸表全体の観点から重要であり、利害関係者が企業集団又は企業の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況に関する適正な判断を行うために必要と認められる場合には、「財務諸表等の用語、様式及び作成方法に関する規則」(昭和38年大蔵省令第59号)等に基づき、追加情報として開示することとなると考えられる。
適用時期等
- BC46. 本実務対応報告は、第2項又は第3項に掲げる特徴を有する契約における需要家の非化石価値の購入取引に関して会計処理を明確化するものであるが、審議の過程では、本実務対応報告の開発時点の実務において第6項に基づき費用処理を行う時点よりも遅い時点で会計処理が行われている場合もあるとの意見が聞かれており、本実務対応報告の適用開始日より前に締結されている契約については、本実務対応報告の適用により会計処理の変更が生じる場合があると考えられる。したがって、一定の準備期間を確保するために、本実務対応報告については、2026年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用することとした(第10項参照)。
ただし、企業会計基準諮問会議に寄せられたテーマ提案では、早期に会計処理を明確化することが要望されており、できるだけ速やかに適用可能とすることへのニーズは一定程度あると考えられることから、公表日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用することができることとした(第10項ただし書き参照)。 - BC47. 本実務対応報告の経過措置に関して、公開草案では、本実務対応報告を遡及適用する場合、どの時点で金額を合理的に見積ることが可能となるかを判断することになるが、当該判断にあたり用いた情報が対象となる過去の財務諸表が作成された時点で入手可能であった情報か、又はその後に判明した情報であるかどうかを判断することが困難な場合があると考えられるとしていた。ただし、この場合であっても、適用初年度の期首において既に需要家が非化石価値を受け取る権利を有しているものについては、当該期首時点において金額を合理的に見積ることが可能かどうかの判断を行うことができると考えられるともしていた。このため、本実務対応報告の適用にあたっては、遡及適用を求めないこととし、経過措置として、適用初年度の期首において既に需要家が非化石価値を受け取る権利を有しており、当該期首における事実及び状況に基づき金額を合理的に見積ることができるものについては、当該金額を適用初年度の期首の利益剰余金に加減することを提案した。
- BC48. この点、BC27項及びBC28項に記載のとおり、公開草案に寄せられたコメントを踏まえて、契約で指定された再生可能電力発電設備による発電が行われ、かつ、金額を信頼性をもって測定できる時点において会計処理を行うことを明確化し、適用初年度の期首時点で国による電力量の認定時点(第5項(4)参照)が到来しているものに係る金額は、適用初年度の期首の利益剰余金に加減する金額に含めることとした(第11項参照)。
- 以 上
