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企業会計基準適用指針第33号リースに関する会計基準の適用指針
目 的
- 1. 本適用指針は、企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」(以下「会計基準」という。)を適用する際の指針を定めるものである。なお、地上権(本適用指針第4項(3)参照)の開示については「企業会計原則」に定めがあるが、当該地上権を含む借地権の設定に係る権利金等(本適用指針第4項(9)参照)に関する開示については、本適用指針を優先して適用する。
適用指針
Ⅰ.範 囲
- 2. 本適用指針を適用する範囲は、会計基準における範囲と同様とする。
Ⅱ.用語の定義
- 3. 本適用指針における用語の定義は、会計基準における用語の定義と同様とする。
- 4. 前項のほか、本適用指針では、次のとおり用語を定義する。
- (1) 「使用期間」とは、資産が顧客との契約を履行するために使用される期間(非連続の期間を含む。)をいう。
- (2) 「短期リース」とは、リース開始日において、借手のリース期間が12か月以内であり、購入オプションを含まないリースをいう。
- (3) 「借地権」とは、建物の所有を目的とする地上権又は土地の賃借権をいう(借地借家法(平成3年法律第90号)附則第2条の規定による廃止前の借地法(以下「借地法」という。)第1条及び借地借家法第2条第1号)。
- (4) 「借地権者」とは、借地権を有する者をいう。
- (5) 「借地権設定者」とは、借地権者に対して借地権を設定している者をいう。
- (6) 「旧借地権」とは、借地法の規定により設定された借地権をいう。
- (7) 「普通借地権」とは、定期借地権以外の借地権(旧借地権を除く。)をいう。
- (8) 「定期借地権」とは、借地借家法第22条第1項、第23条第1項及び第2項又は第24条第1項の規定による定めのある借地権をいう。
- (9) 「借地権の設定に係る権利金等」とは、借地権の設定において借地権者である借手が借地権設定者である貸手に支払った権利金、及び借手と貸手との間で借地契約を締結するにあたり当該貸手が第三者と借地契約を締結していた場合に、当該借手が当該第三者に対して支払う借地権の譲渡対価をいう。
- (10) 「リースの契約条件の変更の発効日」とは、契約の両方の当事者がリースの契約条件の変更に合意した日をいう。
- (11) 「セール・アンド・リースバック取引」とは、売手である借手が資産を買手である貸手に譲渡し、売手である借手が買手である貸手から当該資産をリース(以下「リースバック」という。)する取引をいう。
- (12) 「サブリース取引」とは、原資産が借手から第三者にさらにリース(以下「サブリース」という。)され、当初の貸手と借手との間のリースが依然として有効である取引をいう。以下、当初の貸手と借手との間のリースを「ヘッドリース」、ヘッドリースにおける借手を「中間的な貸手」という。
Ⅲ.会計処理
1.リースの識別
(1)リースの識別の判断
- 5. 契約の締結時に、契約の当事者は、当該契約がリースを含むか否かを判断する(会計基準第25項)。当該判断にあたり、当該契約が特定された資産の使用を支配する権利を一定期間にわたり対価と交換に移転する場合、当該契約はリースを含む(会計基準第26項)。
特定された資産の使用期間(本適用指針第4項(1)参照)全体を通じて、次の(1)及び(2)のいずれも満たす場合、当該契約の一方の当事者(サプライヤー)から当該契約の他方の当事者(顧客)に、当該資産の使用を支配する権利が移転している([設例1]、[設例2-2]、[設例3-2]、[設例4-2]、[設例5]及び[設例6])。 - (1) 顧客が、特定された資産の使用から生じる経済的利益のほとんどすべてを享受する権利を有している。
- (2) 顧客が、特定された資産の使用を指図する権利を有している。
(特定された資産)
- 6. 資産は、通常は契約に明記されることにより特定される。ただし、資産が契約に明記されている場合であっても、次の(1)及び(2)のいずれも満たすときには、サプライヤーが当該資産を代替する実質的な権利を有しており、当該資産は特定された資産に該当しない([設例1]から[設例3])。
- (1) サプライヤーが使用期間全体を通じて当該資産を他の資産に代替する実質上の能力を有している。
- (2) サプライヤーにおいて、当該資産を他の資産に代替することからもたらされる経済的利益が、代替することから生じるコストを上回ると見込まれるため、当該資産を代替する権利の行使によりサプライヤーが経済的利益を享受する。
- 7. 顧客が使用することができる資産が物理的に別個のものではなく、資産の稼働能力の一部分である場合には、当該資産の稼働能力部分は特定された資産に該当しない。ただし、顧客が使用することができる資産が物理的に別個のものではないものの、顧客が使用することができる資産の稼働能力が、当該資産の稼働能力のほとんどすべてであることにより、顧客が当該資産の使用から生じる経済的利益のほとんどすべてを享受する権利を有している場合は、当該資産の稼働能力部分は特定された資産に該当する([設例1]及び[設例4])。
(使用を指図する権利)
- 8. 顧客は、次の(1)又は(2)のいずれかの場合にのみ、使用期間全体を通じて特定された資産の使用を指図する権利を有している([設例1]、[設例5]及び[設例6])。
- (1) 顧客が使用期間全体を通じて使用から得られる経済的利益に影響を与える資産の使用方法を指図する権利を有している場合
- (2) 使用から得られる経済的利益に影響を与える資産の使用方法に係る決定が事前になされており、かつ、次の①又は②のいずれかである場合
- ① 使用期間全体を通じて顧客のみが、資産を稼働する権利を有している又は第三者に指図することにより資産を稼働させる権利を有している。
- ② 顧客が使用期間全体を通じた資産の使用方法を事前に決定するように、資産を設計している。
(2)リースを構成する部分とリースを構成しない部分の区分
- 9. 借手及び貸手は、リースを含む契約について、原則として、リースを構成する部分とリースを構成しない部分とに分けて会計処理を行う(会計基準第28項)。
(借 手)
- 10. 借手は、契約におけるリースを構成する部分について、会計基準及び本適用指針に定める方法により会計処理を行い、契約におけるリースを構成しない部分について、該当する他の会計基準等に従って会計処理を行う。
- 11. 借手は、契約における対価の金額について、リースを構成する部分とリースを構成しない部分とに配分するにあたって、それぞれの部分の独立価格の比率に基づいて配分する。また、借手は、契約における対価の中に、借手に財又はサービスを移転しない活動及びコストについて借手が支払う金額が含まれる場合、当該金額を契約における対価の一部としてリースを構成する部分とリースを構成しない部分とに配分する([設例7])。
(貸 手)
- 12. 貸手は、契約におけるリースを構成する部分について、会計基準及び本適用指針に定める方法によりファイナンス・リース又はオペレーティング・リースの会計処理を行い、契約におけるリースを構成しない部分について、該当する他の会計基準等に従って会計処理を行う。
- 13. 貸手は、契約における対価の金額について、リースを構成する部分とリースを構成しない部分とに配分するにあたって、それぞれの部分の独立販売価格の比率に基づいて配分する。貸手は、契約における対価の中に、借手に財又はサービスを移転しない活動及びコストについて借手が支払う金額、あるいは、原資産の維持管理に伴う固定資産税、保険料等の諸費用(以下「維持管理費用相当額」という。)が含まれる場合、当該配分にあたって、次の(1)又は(2)のいずれかの方法により会計処理を行う([設例7])。
- (1) 契約における対価の中に借手に財又はサービスを移転しない活動及びコストについて借手が支払う金額が含まれる場合に、当該金額を契約における対価の一部としてリースを構成する部分とリースを構成しない部分とに配分する方法
- (2) 契約における対価の中に維持管理費用相当額が含まれる場合に、当該維持管理費用相当額を契約における対価から控除し収益に計上する、又は貸手の固定資産税、保険料等の費用の控除額として処理する方法
- ただし、(2)の方法を選択する場合で、維持管理費用相当額がリースを構成する部分の金額に対する割合に重要性が乏しいときは、当該維持管理費用相当額についてリースを構成する部分の金額に含めることができる。
- 14. 本適用指針第12項及び前項にかかわらず、リースを含む契約についてリースを構成しない部分が企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準」(以下「収益認識会計基準」という。)の適用対象であって、かつ、次の(1)及び(2)のいずれも満たす場合には、貸手は、契約ごとにリースを構成する部分と関連するリースを構成しない部分とを合わせて取り扱うことができる。
- (1) リースを構成する部分と関連するリースを構成しない部分の収益の計上の時期及びパターンが同じである。
- (2) リースを構成する部分がオペレーティング・リースに分類される。
- 15. 貸手が前項の取扱いを適用する場合、リースを構成する部分がリースを含む契約の主たる部分であるかどうかに応じて次の(1)又は(2)により会計処理を行う。
- (1) リースを構成する部分がリースを含む契約の主たる部分であるときは、リースを構成する部分と関連するリースを構成しない部分とを分けずに合わせてリースを構成する部分としてオペレーティング・リースに係る会計処理を行う(本適用指針第82項参照)。
- (2) (1)に該当しないときは、リースを構成する部分と関連するリースを構成しない部分とを分けずに合わせて収益認識会計基準に従って単一の履行義務として会計処理を行う。
(独立したリースの構成部分)
- 16. 原資産を使用する権利は、次の(1)及び(2)の要件のいずれも満たす場合、独立したリースを構成する部分である。
- (1) 当該原資産の使用から単独で借手が経済的利益を享受することができること、又は、当該原資産と借手が容易に利用できる他の資源を組み合わせて借手が経済的利益を享受することができること
- (2) 当該原資産の契約の中の他の原資産への依存性又は相互関連性が高くないこと
2.リース期間
- 17. 借手は、借手のリース期間について、借手が原資産を使用する権利を有する解約不能期間に、借手が行使することが合理的に確実であるリースの延長オプションの対象期間及び借手が行使しないことが合理的に確実であるリースの解約オプションの対象期間の両方の期間を加えて決定する(会計基準第31項)。
借手は、借手が延長オプションを行使すること又は解約オプションを行使しないことが合理的に確実であるかどうかを判定するにあたって、経済的インセンティブを生じさせる要因を考慮する([設例8-2]から[設例8-5])。これには、例えば、次の要因が含まれる。 - (1) 延長オプション又は解約オプションの対象期間に係る契約条件(リース料、違約金、残価保証、購入オプションなど)
- (2) 大幅な賃借設備の改良の有無
- (3) リースの解約に関連して生じるコスト
- (4) 企業の事業内容に照らした原資産の重要性
- (5) 延長オプション又は解約オプションの行使条件
3.借手のリース
(1)リース開始日の使用権資産及びリース負債の計上額
- 18. 借手は、リース開始日に会計基準第34項に従い算定された額によりリース負債を計上する。また、当該リース負債にリース開始日までに支払った借手のリース料、付随費用及び資産除去債務に対応する除去費用を加算し、受け取ったリース・インセンティブを控除した額により使用権資産を計上する(会計基準第33項)。
- 19. 借手は、リース負債の計上額を算定するにあたって、原則として、リース開始日において未払である借手のリース料からこれに含まれている利息相当額の合理的な見積額を控除し、現在価値により算定する方法による(会計基準第34項)。
(短期リースに関する簡便的な取扱い)
- 20. 借手は、短期リース(本適用指針第4項(2)参照)について、会計基準第33項の定めにかかわらず、リース開始日に使用権資産及びリース負債を計上せず、借手のリース料を借手のリース期間にわたって原則として定額法により費用として計上することができる。借手は、この取扱いについて、対応する原資産を自ら所有していたと仮定した場合に貸借対照表において表示するであろう科目ごと又は性質及び企業の営業における用途が類似する原資産のグループごとに適用するか否かを選択することができる。
- 21. 連結財務諸表においては、個別財務諸表において個別貸借対照表に表示するであろう科目ごと又は性質及び企業の営業における用途が類似する原資産のグループごとに行った前項の選択を見直さないことができる。
(少額リースに関する簡便的な取扱い)
- 22. 次の(1)と(2)のいずれかを満たす場合、借手は、会計基準第33項の定めにかかわらず、リース開始日に使用権資産及びリース負債を計上せず、借手のリース料を借手のリース期間にわたって原則として定額法により費用として計上することができる。なお、(2)については、①又は②のいずれかを選択できるものとし、選択した方法を首尾一貫して適用する。
- (1) 重要性が乏しい減価償却資産について、購入時に費用処理する方法が採用されている場合で、借手のリース料が当該基準額以下のリース
ただし、その基準額は当該企業が減価償却資産の処理について採用している基準額より利息相当額だけ高めに設定することができる。また、この基準額は、通常取引される単位ごとに適用し、リース契約に複数の単位の原資産が含まれる場合、当該契約に含まれる原資産の単位ごとに適用することができる。 - (2) 次の①又は②を満たすリース
- ① 企業の事業内容に照らして重要性の乏しいリースで、かつ、リース契約1件当たりの金額に重要性が乏しいリース
この場合、1つのリース契約に科目の異なる有形固定資産又は無形固定資産が含まれているときは、異なる科目ごとに、その合計金額により判定することができる。 - ② 新品時の原資産の価値が少額であるリース
この場合、リース1件ごとにこの方法を適用するか否かを選択できる。 - 23. 前項(2)①に該当するリースに前項で定める会計処理を適用するにあたり、リース契約1件当たりの金額の算定の基礎となる対象期間は、原則として、借手のリース期間とする。ただし、当該借手のリース期間に代えて、契約上、契約に定められた期間(以下「契約期間」という。)とすることができる。また、リース契約1件当たりの金額の算定にあたり維持管理費用相当額の合理的見積額を控除することができる。
(指数又はレートに応じて決まる借手の変動リース料)
- 24. 指数又はレートに応じて決まる借手の変動リース料(会計基準第35項(2))には、市場における賃料の変動を反映するように当事者間の協議をもって見直されることが契約条件で定められているリース料が含まれる。
- 25. 借手は、指数又はレートに応じて決まる借手の変動リース料について、リース開始日には、借手のリース期間にわたりリース開始日現在の指数又はレートに基づきリース料を算定する([設例13])。
- 26. 前項の定めにかかわらず、借手は、指数又はレートに応じて決まる借手の変動リース料について、合理的な根拠をもって当該指数又はレートの将来の変動を見積ることができる場合、リース料が参照する当該指数又はレートの将来の変動を見積り、当該見積られた指数又はレートに基づきリース料及びリース負債を算定することを、リースごとにリース開始日に選択することができる。
(借地権の設定に係る権利金等)
- 27. 借地権の設定に係る権利金等(第4項(9)参照)は、使用権資産の取得価額に含め、原則として、借手のリース期間を耐用年数とし、減価償却を行う。
ただし、旧借地権の設定に係る権利金等又は普通借地権の設定に係る権利金等のうち、次の(1)又は(2)の権利金等については、減価償却を行わないものとして取り扱うことができる。 - (1) 本適用指針の適用前に旧借地権の設定に係る権利金等及び普通借地権の設定に係る権利金等を償却していなかった場合、本適用指針の適用初年度の期首に計上されている当該権利金等及び本適用指針の適用後に新たに計上される権利金等の双方
- (2) 本適用指針の適用初年度の期首に旧借地権の設定に係る権利金等及び普通借地権の設定に係る権利金等が計上されていない場合、本適用指針の適用後に新たに計上される権利金等
(資産除去債務)
- 28. 借手は、資産除去債務を負債として計上する場合の関連する有形固定資産が使用権資産であるとき、企業会計基準第18号「資産除去債務に関する会計基準」(以下「資産除去債務会計基準」という。)第7項に従って当該負債の計上額と同額を当該使用権資産の帳簿価額に加える。
(建設協力金等の差入預託保証金)
建設協力金等
- 29. 預り企業である貸手から、差入企業である借手に将来返還される建設協力金等の差入預託保証金(敷金を除く。)に係る当初認識時の時価は、返済期日までのキャッシュ・フローを割り引いた現在価値である。差入企業である借手は、当該差入預託保証金の支払額と当該時価との差額を使用権資産の取得価額に含める。また、当初時価と返済額との差額は、弁済期又は償還期に至るまで毎期一定の方法で受取利息として計上する([設例14])。
- 30. 建設協力金に関して、差入企業である借手が対象となった土地建物に抵当権を設定している場合、現在価値に割り引くための利子率は、原則としてリスク・フリーの利子率を使用する。
- 31. 差入企業である借手は、本適用指針第29項の定めにかかわらず、返済期日までの期間が短いもの等、その影響額に重要性がない将来返還される差入預託保証金(敷金を除く。)について、本適用指針第29項の会計処理を行わないことができる。本適用指針第29項の会計処理を行わない差入預託保証金(敷金を除く。)については、債権に準じて会計処理を行う(企業会計基準第10号「金融商品に関する会計基準」(以下「金融商品会計基準」という。)第14項)。
- 32. 差入企業である借手は、差入預託保証金(敷金を除く。)のうち、差入預託保証金の預り企業である貸手から差入企業である借手に将来返還されないことが契約上定められている金額について、使用権資産の取得価額に含める。
敷 金
- 33. 差入企業である借手は、差入敷金のうち、差入敷金の預り企業である貸手から差入企業である借手に将来返還される差入敷金について、取得原価で計上する。ただし、第29項及び第30項に準じて会計処理を行うことができる。
- 34. 差入企業である借手は、差入敷金のうち、差入敷金の預り企業である貸手から差入企業である借手に返還されないことが契約上定められている金額を使用権資産の取得価額に含める。
- 35. 企業会計基準適用指針第21号「資産除去債務に関する会計基準の適用指針」第9項に従い、敷金の回収が最終的に見込めないと認められる金額を合理的に見積り、そのうち当期の負担に属する金額を費用に計上する方法を選択する場合、同項に従って差入敷金の会計処理を行う。
貸倒引当金
- 36. 建設協力金等の差入預託保証金について差入預託保証金の預り企業である貸手の支払能力から回収不能と見込まれる金額がある場合、金融商品会計基準に従って貸倒引当金を設定する。
(現在価値の算定に用いる割引率)
- 37. 借手がリース負債の現在価値の算定のために用いる割引率は、次のとおりとする([設例9-1]、[設例11]及び[設例18-1])。
- (1) 貸手の計算利子率(第66項参照)を知り得る場合、当該利率による。
- (2) 貸手の計算利子率を知り得ない場合、借手の追加借入に適用されると合理的に見積られる利率による。
(2)利息相当額の各期への配分
- 38. 借手のリース料は、原則として、利息相当額部分とリース負債の元本返済額部分とに区分計算し、前者は支払利息として会計処理を行い、後者はリース負債の元本返済として会計処理を行う。借手のリース期間にわたる利息相当額の総額は、リース開始日における借手のリース料とリース負債の計上額との差額になる。
- 39. 前項において、利息相当額の総額を借手のリース期間中の各期に配分する方法は、原則として、利息法による(会計基準第36項)。利息法においては、各期の利息相当額をリース負債の未返済元本残高に一定の利率を乗じて算定する([設例9-1])。
(使用権資産総額に重要性が乏しいと認められる場合の取扱い)
- 40. 使用権資産総額に重要性が乏しいと認められる場合は、次のいずれかの方法を適用することができる([設例9-1])。
- (1) 第38項の定めによらず、借手のリース料から利息相当額の合理的な見積額を控除しない方法。この場合、使用権資産及びリース負債は、借手のリース料をもって計上し、支払利息は計上せず、減価償却費のみ計上する。
- (2) 第39項の定めによらず、利息相当額の総額を借手のリース期間中の各期に定額法により配分する方法
- 41. 使用権資産総額に重要性が乏しいと認められる場合とは、未経過の借手のリース料の期末残高が当該期末残高、有形固定資産及び無形固定資産の期末残高の合計額に占める割合が10パーセント未満である場合をいう。
- 42. 連結財務諸表においては、前項の判定を、連結財務諸表の数値を基礎として見直すことができる。見直した結果、個別財務諸表の結果の修正を行う場合、連結修正仕訳で修正を行う。
(3)使用権資産の償却
- 43. 会計基準第37項における契約上の諸条件に照らして原資産の所有権が借手に移転すると認められるリースとは、次の(1)から(3)のいずれかに該当するものをいう。
- (1) 契約期間終了後又は契約期間の中途で、原資産の所有権が借手に移転することとされているリース
- (2) 契約期間終了後又は契約期間の中途で、借手による購入オプションの行使が合理的に確実であるリース
- (3) 原資産が、借手の用途等に合わせて特別の仕様により製作又は建設されたものであって、当該原資産の返還後、貸手が第三者に再びリース又は売却することが困難であるため、その使用可能期間を通じて借手によってのみ使用されることが明らかなリース
(4)リースの契約条件の変更
- 44. 借手は、リースの契約条件の変更が生じた場合、変更前のリースとは独立したリースとして会計処理を行うか、又は、リース負債の計上額の見直しを行う(会計基準第39項)。
リースの契約条件の変更が次の(1)及び(2)のいずれも満たす場合、借手は、当該リースの契約条件の変更を独立したリースとして取り扱い、当該独立したリースのリース開始日に、リースの契約条件の変更の内容に基づくリース負債を計上し、当該リース負債にリース開始日までに支払った借手のリース料、付随費用等を加減した額により使用権資産を計上する([設例15-1])。 - (1) 1つ以上の原資産を追加することにより、原資産を使用する権利が追加され、リースの範囲が拡大されること
- (2) 借手のリース料が、範囲が拡大した部分に対する独立価格に特定の契約の状況に基づく適切な調整を加えた金額分だけ増額されること
- 45. 借手は、リースの契約条件の変更のうち、前項に従い独立したリースとしての会計処理が行われないリースの契約条件の変更について、リースの契約条件の変更の発効日に、次の会計処理を行う([設例15-2]から[設例15-5])。
- (1) リース負債について、変更後の条件を反映した借手のリース期間を決定し、変更後の条件を反映した借手のリース料の現在価値まで修正する。
- (2) 使用権資産について、次のことを行うことによって、(1)のリース負債の見直しに対応する会計処理を行う。
- ① リースの契約条件の変更のうちリースの範囲が縮小されるものについては、リースの一部又は全部の解約を反映するように使用権資産の帳簿価額を減額する。このとき、使用権資産の減少額とリース負債の修正額とに差額が生じた場合は、当該差額を損益に計上する。
- ② 他のすべてのリースの契約条件の変更については、リース負債の修正額に相当する金額を使用権資産に加減する。
(5)リースの契約条件の変更を伴わないリース負債の見直し
- 46. 借手は、リースの契約条件の変更が生じていない場合で、次のいずれかに該当するときには、該当する事象が生じた日にリース負債について当該事象の内容を反映した借手のリース料の現在価値まで修正し、当該リース負債の修正額に相当する金額を使用権資産に加減する([設例16])。
- (1) 借手のリース期間に変更がある場合(会計基準第41項及び第42項)
- (2) 借手のリース期間に変更がなく借手のリース料に変更がある場合(本適用指針第47項から第49項参照)
- ただし、使用権資産の帳簿価額をゼロまで減額してもなお、リース負債の測定の減額がある場合には、残額を損益に計上する。
(借手のリース期間に変更がなく借手のリース料に変更がある場合)
- 47. リースの契約条件や借手のリース期間に変更がなく借手のリース料に変更がある状況として、例えば、次のようなものが挙げられる。
- (1) 原資産を購入するオプションの行使についての判定に変更がある場合
- (2) 残価保証に基づく支払見込額に変動がある場合
- (3) 指数又はレートに応じて決まる借手の変動リース料に変動がある場合(第48項及び第49項参照)
指数又はレートに応じて決まる借手の変動リース料
- 48. 借手は、指数又はレートに応じて決まる借手の変動リース料について、当該指数又はレートが変動し、そのことにより、今後支払うリース料に変動が生じたときにのみ、残りの借手のリース期間にわたり、変動後の指数又はレートに基づきリース料及びリース負債を修正し、リース負債の修正額に相当する金額を使用権資産に加減する([設例13])。
- 49. 借手は、第26項によりリース料が参照する指数又はレートの将来の変動を見積り、当該見積られた指数又はレートに基づきリース料及びリース負債を算定している場合、前項の定めにかかわらず、決算日ごとに参照する指数又はレートの将来の変動を見積り、当該見積られた指数又はレートに基づきリース料及びリース負債を修正し、リース負債の修正額に相当する金額を使用権資産に加減する。
(6)短期リースに係る借手のリース期間の変更
- 50. 借手は、第44項から第46項の定めにかかわらず、短期リースに関する簡便的な取扱いを適用していたリース(第20項参照)について、借手のリース期間に変更がある場合で、変更前の借手のリース期間の終了時点から変更後の借手のリース期間の終了時点までが12か月以内であるときは、次のいずれかの方法を選択することができる。
- (1) 変更後のリースについて短期リースとして取り扱う方法
- (2) 変更後のリースのうち、借手のリース期間の変更時点から変更後の借手のリース期間の終了時点までが12か月以内である場合のみ、短期リースとして取り扱う方法
- この取扱いについては、対応する原資産を自ら所有していたと仮定した場合に貸借対照表において表示するであろう科目ごと又は性質及び企業の営業における用途が類似する原資産のグループごとに適用することができる。
(7)リース負債に含めなかった借手の変動リース料
- 51. 借手は、リース負債の計上額に含めなかった借手の変動リース料について、当該変動リース料の発生時に損益に計上する([設例13])。
(8)借手のリース期間に含まれない再リース
- 52. 借手は、会計基準第31項に基づきリース開始日に再リース期間を借手のリース期間に含めていない場合又は本適用指針第44項若しくは第45項の適用において会計基準第31項に基づき直近のリースの契約条件の変更の発効日に再リース期間を借手のリース期間に含めていない場合、会計基準第41項及び第42項にかかわらず、再リースを当初のリースとは独立したリースとして会計処理を行うことができる。
(9)セール・アンド・リースバック取引
(セール・アンド・リースバック取引に該当するかどうかの判断)
- 53. セール・アンド・リースバック取引とは、売手である借手が資産を買手である貸手に譲渡し、売手である借手が買手である貸手から当該資産をリースする取引をいう(本適用指針第4項(11)参照)。
リースバックが行われる場合であっても、売手である借手による資産の譲渡が次のいずれかであるときはセール・アンド・リースバック取引に該当しない。 - (1) 収益認識会計基準に従い、一定の期間にわたり充足される履行義務(収益認識会計基準第36項)の充足によって行われるとき
- (2) 企業会計基準適用指針第30号「収益認識に関する会計基準の適用指針」(以下「収益認識適用指針」という。)第95項を適用し、工事契約における収益を完全に履行義務を充足した時点で認識することを選択するとき
- 54. 売手である借手が原資産を移転する前に原資産に対する支配を獲得しない場合、当該資産の移転と関連するリースバックについては、セール・アンド・リースバック取引に該当せず、リースとして会計処理を行う。
(セール・アンド・リースバック取引に該当する場合の会計処理)
- 55. セール・アンド・リースバック取引に該当する場合に次の(1)又は(2)のいずれかを満たすときは、売手である借手は、当該セール・アンド・リースバック取引について資産の譲渡とリースバックを一体の取引とみて、金融取引として会計処理を行う。
- (1) 収益認識会計基準などの他の会計基準等に従うと売手である借手による資産の譲渡が損益を認識する売却に該当しない。
- (2) 収益認識会計基準などの他の会計基準等に従うと売手である借手による資産の譲渡が損益を認識する売却に該当するが、リースバックにより、売手である借手が資産からもたらされる経済的利益のほとんどすべてを享受することができ、かつ、資産の使用に伴って生じるコストのほとんどすべてを負担することとなる。
- 56. セール・アンド・リースバック取引に該当する場合に前項(1)及び(2)を満たさないときは、売手である借手は、資産の譲渡について収益認識会計基準などの他の会計基準等に従い損益を認識し、リースバックについて会計基準及び本適用指針に従い借手の会計処理を行う。
(資産の譲渡対価が明らかに時価ではない場合又は借手のリース料が明らかに市場のレートではない場合)
- 57. 前項において資産の譲渡対価が明らかに時価ではない場合又は借手のリース料が明らかに市場のレートでのリース料ではない場合、売手である借手は、当該資産の譲渡対価と借手のリース料について次のとおり取り扱う。
- (1) 資産の譲渡対価が明らかに時価を下回る場合、時価を用いて譲渡について損益を認識し、譲渡対価と時価との差額について使用権資産の取得価額に含める。
- (2) 借手のリース料が明らかに市場のレートでのリース料を下回る場合、借手のリース料と市場のレートでのリース料との差額について譲渡対価を増額した上で譲渡について損益を認識し、当該差額について使用権資産の取得価額に含める。
- (3) 資産の譲渡対価が明らかに時価を上回る場合、時価を用いて譲渡について損益を認識し、譲渡対価と時価との差額について金融取引として会計処理を行う。
- (4) 借手のリース料が明らかに市場のレートでのリース料を上回る場合、借手のリース料と市場のレートでのリース料との差額について譲渡対価を減額した上で譲渡について損益を認識し、当該差額について金融取引として会計処理を行う。
- 資産の譲渡対価が明らかに時価ではないかどうか又は借手のリース料が明らかに市場のレートでのリース料ではないかどうかは、資産の時価と市場のレートでのリース料のいずれか容易に算定できる方を基礎として判定する。(1)又は(2)は、譲渡対価を増額する場合に適用し、(3)又は(4)は、譲渡対価を減額する場合に適用する。
- 58. 前項の取扱いは、セール・アンド・リースバック取引に該当しない第53項(1)及び(2)の取引にも適用する。
4.貸手のリース
(1)リースの分類
(ファイナンス・リースに該当するリース)
- 59. ファイナンス・リースとは、次の(1)及び(2)のいずれも満たすリースをいう(会計基準第11項)。
- (1) 契約期間の中途において当該契約を解除することができないリース又はこれに準ずるリース(以下合わせて「解約不能のリース」という。)
- (2) 借手が、原資産からもたらされる経済的利益を実質的に享受することができ、かつ、当該原資産の使用に伴って生じるコストを実質的に負担することとなるリース(以下「フルペイアウトのリース」という。)
- 60. 解約不能のリースに関して、法的形式上は解約可能であるとしても、解約に際し、相当の違約金(以下「規定損害金」という。)を支払わなければならない等の理由から、事実上解約不能と認められるリースを解約不能のリースに準ずるリースとして取り扱う(会計基準BC26項)。リースの条件により、このような取引に該当するものとしては、次のようなものが考えられる。
- (1) 解約時に、未経過の契約期間に係るリース料の概ね全額を、規定損害金として支払うこととされているリース
- (2) 解約時に、未経過の契約期間に係るリース料から、借手の負担に帰属しない未経過の契約期間に係る利息等として、一定の算式により算出した額を差し引いたものの概ね全額を、規定損害金として支払うこととされているリース
- 61. 本適用指針第59項(2)の「原資産からもたらされる経済的利益を実質的に享受する」場合とは、当該原資産を自己所有するとするならば得られると期待されるほとんどすべての経済的利益を享受する場合をいい、また、「当該原資産の使用に伴って生じるコストを実質的に負担する」場合とは、当該原資産の取得価額相当額、維持管理等の費用、陳腐化によるリスク等のほとんどすべてのコストを負担する場合をいう(会計基準BC26項)。
(具体的な判定基準)
- 62. リースがファイナンス・リースに該当するかどうかについては、本適用指針第59項の要件をその経済的実質に基づいて判断すべきものであるが、次の(1)又は(2)のいずれかに該当する場合には、ファイナンス・リースと判定される([設例9]から[設例12])。
- (1) 現在価値基準
貸手のリース料(会計基準第23項)の現在価値が、原資産の現金購入価額の概ね90パーセント以上であること(以下「現在価値基準」という。) - (2) 経済的耐用年数基準
貸手のリース期間(会計基準第16項)が、原資産の経済的耐用年数の概ね75パーセント以上であること(ただし、原資産の特性、経済的耐用年数の長さ、原資産の中古市場の存在等を勘案すると、上記(1)の判定結果が90パーセントを大きく下回ることが明らかな場合を除く。)(以下「経済的耐用年数基準」という。) - 63. 前項(2)に関して、貸手のリース期間が経済的耐用年数の概ね75パーセント以上であっても借手が原資産に係るほとんどすべてのコストを負担しないことが明らかな場合、現在価値基準のみにより判定を行う。
(現在価値基準の判定における取扱い)
残価保証の取扱い
- 64. リースに残価保証が含まれる場合、貸手は、残価保証額を貸手のリース料に含める([設例11])。
なお、貸手においては、借手以外の第三者による残価保証額も貸手のリース料に含める。
製造又は販売を事業とする貸手等の取扱い
- 65. 製造又は販売を事業とする貸手が当該事業の一環で行うリース又は貸手が事業の一環以外で行うリースにおいては、第62項(1)における現金購入価額は貸手の製作価額や現金購入価額によらず、当該原資産の借手に対する現金販売価額を用いる。
現在価値の算定に用いる割引率
- 66. 現在価値の算定を行うにあたっては、貸手のリース料の現在価値と貸手のリース期間終了時に見積られる残存価額で残価保証額以外の額(以下「見積残存価額」という。)の現在価値の合計額が、当該原資産の現金購入価額又は借手に対する現金販売価額と等しくなるような利率(以下「貸手の計算利子率」という。)を用いる([設例9-1])。
連結財務諸表における判定
- 67. 連結財務諸表において現在価値基準の判定を行う場合、必要に応じて、親会社における貸手のリース料及び連結子会社における貸手のリース料を合算した金額に基づき判定を行う。ただし、重要性が乏しい場合には、親会社及び連結子会社の個別財務諸表における結果の修正を要しない。
(不動産に係るリースの取扱い)
- 68. 土地、建物等の不動産のリースについても、第59項から前項に従い、ファイナンス・リースに該当するか、オペレーティング・リースに該当するかを判定する。ただし、土地については、第70項の(1)又は(2)のいずれかに該当する場合を除き、オペレーティング・リースに該当するものと推定する。
- 69. 土地と建物等を一括したリース(契約上、建物賃貸借契約とされているものも含む。以下同じ。)は、原則として、貸手のリース料を合理的な方法で土地に係る部分と建物等に係る部分に分割した上で、建物等について、第62項(1)に定める現在価値基準の判定を行う。
(2)ファイナンス・リースの分類
- 70. 貸手は、ファイナンス・リースについて、所有権移転ファイナンス・リースと所有権移転外ファイナンス・リースとに分類する(会計基準第44項)。本適用指針第62項でファイナンス・リースと判定されたもののうち、次の(1)から(3)のいずれかに該当する場合、所有権移転ファイナンス・リースに分類し、いずれにも該当しない場合、所有権移転外ファイナンス・リースに分類する([設例9]から[設例12])。
- (1) 契約上、契約期間終了後又は契約期間の中途で、原資産の所有権が借手に移転することとされているリース
- (2) 契約上、借手に対して、契約期間終了後又は契約期間の中途で、名目的価額又はその行使時点の原資産の価額に比して著しく有利な価額で買い取る権利(以下合わせて「割安購入選択権」という。)が与えられており、その行使が確実に予想されるリース
- (3) 原資産が、借手の用途等に合わせて特別の仕様により製作又は建設されたものであって、当該原資産の返還後、貸手が第三者に再びリース又は売却することが困難であるため、その使用可能期間を通じて借手によってのみ使用されることが明らかなリース
(3)ファイナンス・リース
(所有権移転外ファイナンス・リース)
基本となる会計処理
- 71. 貸手は、ファイナンス・リースについて、通常の売買取引に係る方法に準じた会計処理を行う(会計基準第45項)。貸手として行ったリースが所有権移転外ファイナンス・リースと判定される場合、貸手は、事業の一環で行うリースについて取引実態に応じ、次の(1)又は(2)のいずれかにより会計処理を行う。
- (1) 製造又は販売を事業とする貸手が当該事業の一環で行うリース([設例12])
- ① リース開始日に、貸手のリース料からこれに含まれている利息相当額を控除した金額で売上高を計上し、同額でリース投資資産を計上する。また、原資産の帳簿価額により売上原価を計上する。原資産を借手の使用に供するために支払う付随費用がある場合、当該付随費用を売上原価に含める。
ただし、売上高と売上原価の差額(以下「販売益相当額」という。)が貸手のリース料に占める割合に重要性が乏しい場合は、原資産の帳簿価額(付随費用がある場合はこれを含める。)をもって売上高及び売上原価とし、販売益相当額を利息相当額に含めて処理することができる。 - ② 各期に受け取る貸手のリース料(以下「受取リース料」という。)を利息相当額とリース投資資産の元本回収とに区分し、前者を各期の損益として処理し、後者をリース投資資産の元本回収額として会計処理を行う。
- (2) 製造又は販売以外を事業とする貸手が当該事業の一環で行うリース([設例9-1])
- ① リース開始日に、原資産の現金購入価額(原資産を借手の使用に供するために支払う付随費用がある場合は、これを含める。)により、リース投資資産を計上する。
- ② 受取リース料の会計処理は、(1)②と同様とする。
- 72. 貸手が事業の一環以外で行うリースについて、当該リースが所有権移転外ファイナンス・リースと判定される場合、貸手は、次の会計処理を行う。
- (1) リース開始日に、貸手のリース料からこれに含まれている利息相当額を控除した金額と原資産の帳簿価額との差額を売却損益として計上し、貸手のリース料からこれに含まれている利息相当額を控除した金額でリース投資資産を計上する。原資産を借手の使用に供するために支払う付随費用がある場合、当該付随費用を含めて売却損益に計上する。
ただし、当該売却損益が貸手のリース料に占める割合に重要性が乏しい場合は、当該売却損益を利息相当額に含めて処理することができる。 - (2) 受取リース料の会計処理は、前項(1)②と同様とする。
利息相当額の各期への配分
- 73. 利息相当額の総額を貸手のリース期間中の各期に配分する方法は、原則として、利息法による(会計基準第47項)。この場合に用いる利率は、本適用指針第66項の貸手の計算利子率とする([設例9-1])。
- 74. 貸手としてのリースに重要性が乏しいと認められる場合、前項の定めによらず、利息相当額の総額を貸手のリース期間中の各期に定額で配分することができる。ただし、リースを主たる事業としている企業は、当該取扱いを適用することはできない([設例9-1])。
- 75. 前項の「貸手としてのリースに重要性が乏しいと認められる場合」とは、未経過の貸手のリース料及び見積残存価額の合計額の期末残高が当該期末残高及び営業債権の期末残高の合計額に占める割合が10パーセント未満である場合をいう。
なお、連結財務諸表においては、上記の判定を、連結財務諸表の数値を基礎として見直すことができる。見直した結果、個別財務諸表の結果の修正を行う場合、連結修正仕訳で修正を行う。
リース期間終了時及び再リースの処理
- 76. 貸手のリース期間の終了により、借手から原資産の返却を受けた場合、貸手は当該原資産を見積残存価額でリース投資資産からその後の保有目的に応じ貯蔵品又は固定資産等に振り替える([設例9-3])。当該原資産を処分した場合、処分価額と帳簿価額との差額を処分損益に計上する。
貸手が再リース期間を貸手のリース期間に含めない場合の再リース料は、その発生時に収益に計上する。この場合、リース投資資産は、貸手のリース期間の終了により固定資産に振り替え、当該固定資産について、再リース開始時点の見積再リース期間にわたり減価償却を行う。この場合の固定資産の取得価額は、リース投資資産から振り替えた金額とする。
中途解約の処理
- 77. リースが中途解約された場合に受け取る規定損害金については、損益計算書上、当該規定損害金と中途解約時のリース投資資産残高(中途解約時点での見積残存価額控除後)との差額を損益として計上する([設例9-1])。
(所有権移転ファイナンス・リース)
基本となる会計処理
- 78. 貸手の行ったリースが所有権移転ファイナンス・リースと判定される場合の基本となる会計処理は、第71項及び第72項と同様とする。この場合、第71項及び第72項にある「リース投資資産」は「リース債権」と読み替える。また、割安購入選択権がある場合、当該割安購入選択権の行使価額を貸手のリース料及び受取リース料に含める([設例10])。
利息相当額の各期への配分
- 79. 利息相当額の各期への配分は、第73項と同様とする。
再リースの処理
- 80. 貸手が再リース期間を貸手のリース期間に含めない場合の再リース料は、その発生時に収益に計上する。
中途解約の処理
- 81. リースが中途解約された場合に受け取る規定損害金については、損益計算書上、当該規定損害金と中途解約時のリース債権残高との差額を損益として計上する。
(4)オペレーティング・リース
- 82. 貸手のオペレーティング・リースについては、通常の賃貸借取引に係る方法に準じた会計処理を行う(会計基準第48項)。貸手は、オペレーティング・リースによる貸手のリース料について、貸手のリース期間にわたり原則として定額法で計上する。
ただし、貸手が貸手のリース期間について会計基準第32項(2)の方法を選択して決定する場合に当該貸手のリース期間に無償賃貸期間が含まれるときは、貸手は、契約期間における使用料の総額(ただし、将来の業績等により変動する使用料を除く。)について契約期間にわたり計上する。
(5)建設協力金等の預り預託保証金
(建設協力金等)
- 83. 預り預託保証金の預り企業である貸手から、差入企業である借手に将来返還される建設協力金等の預り預託保証金(敷金を除く。)に係る当初認識時の時価は、返済期日までのキャッシュ・フローを割り引いた現在価値である。預り企業である貸手は、当該預り預託保証金の受取額と当該時価との差額を長期前受家賃として計上し、契約期間にわたって各期の損益に合理的に配分する。また、当初時価と返済額との差額を契約期間にわたって配分し支払利息として計上する。
- 84. 預り企業である貸手は、返済期日までの期間が短いもの等、その影響額に重要性がない預り預託保証金(敷金を除く。)について、前項の会計処理を行わないことができる。前項の会計処理を行わない預り預託保証金は、債務に準じて会計処理を行う。
- 85. 預り企業である貸手は、預り預託保証金(敷金を除く。)のうち、預り企業である貸手から差入企業である借手に将来返還されないことが契約上定められている金額について、賃貸予定期間にわたり定額法により収益に計上する。
(敷 金)
- 86. 預り企業である貸手は、将来返還する預り敷金について、債務額をもって貸借対照表価額とする。預り敷金のうち、預り敷金の預り企業である貸手から差入企業である借手に返還されないことが契約上定められている金額について、賃貸予定期間にわたり定額法により収益に計上する。
(6)セール・アンド・リースバック取引
- 87. セール・アンド・リースバック取引におけるリースバックが、ファイナンス・リースに該当するかどうかの貸手による判定は、第59項から第69項に示したところによる。ただし、この判定において、経済的耐用年数については、リースバック時における原資産の性能、規格、陳腐化の状況等を考慮して見積った経済的使用可能予測期間を用いるとともに、当該原資産の借手の現金購入価額については、借手の実際売却価額を用いるものとする。
- 88. 当該リースバックがファイナンス・リースに該当する場合の会計処理は、第70項から第81項までと同様とし、当該リースバックがオペレーティング・リースに該当する場合の会計処理は、第82項と同様とする。
5.サブリース取引
(1)基本となる会計処理
- 89. サブリース取引(本適用指針第4項(12)参照)では、中間的な貸手は、ヘッドリースについて、借手のリースの会計処理(会計基準第33項から第42項)を行い、サブリースについて、サブリースがファイナンス・リースとオペレーティング・リースのいずれに該当するか(本適用指針第91項参照)により、次の会計処理を行う([設例18])。
- (1) サブリースがファイナンス・リースに該当する場合([設例18-1])
サブリースのリース開始日に、次の会計処理を行う。 - ① サブリースした使用権資産の消滅を認識する。
- ② サブリースにおける貸手のリース料の現在価値と使用権資産の見積残存価額の現在価値の合計額でリース投資資産又はリース債権を計上する。
- ③ リース投資資産又はリース債権の計上及び使用権資産の取崩しに伴う損益は、原則として純額で計上する。
- (2) サブリースがオペレーティング・リースに該当する場合([設例18-2])
サブリースにおける貸手のリース期間中に、サブリースから受け取る貸手のリース料について、オペレーティング・リースの会計処理を行う(会計基準第48項)。 - 90. 前項(1)②に係る現在価値の算定を行うにあたっては、次の(1)の金額が(2)の金額と等しくなるような利率を用いる。
- (1) サブリースにおける貸手のリース料の現在価値と使用権資産の見積残存価額の現在価値の合計額
- (2) 当該使用権資産に係るサブリースのリース開始日に現金で全額が支払われるものと仮定した場合のリース料。このとき、当該リース料は、サブリースを実行するために必要な知識を持つ自発的な独立第三者の当事者が行うと想定した場合のリース料とする。また、当該リース料の算定にあたっては、サブリースがヘッドリースのリース期間の残存期間にわたって行われるものと仮定する。当該リース料は、以下において「独立第三者間取引における使用権資産のリース料」という。
- ただし、当該利率の算出が容易でない場合、ヘッドリースに用いた割引率を用いることができる。
- 91. 次の(1)又は(2)のいずれかに該当する場合、中間的な貸手のサブリースは、ファイナンス・リースと判定される(第59項(2)参照)([設例18])。
- (1) 現在価値基準
サブリースにおける貸手のリース料の現在価値が、独立第三者間取引における使用権資産のリース料(前項(2)参照)の概ね90パーセント以上であること - (2) 経済的耐用年数基準
サブリースにおける貸手のリース期間が、ヘッドリースにおける残りの借手のリース期間の概ね75パーセント以上であること(ただし、上記(1)の判定結果が90パーセントを大きく下回ることが明らかな場合を除く。) - なお、ヘッドリースについて短期リース又は少額リースに関する簡便的な取扱いを適用して使用権資産及びリース負債を計上していない場合(第20項及び第22項参照)、サブリースはオペレーティング・リースに分類する。
(2)中間的な貸手がヘッドリースに対してリスクを負わない場合
- 92. サブリース取引のうち、次の要件をいずれも満たす取引について、中間的な貸手は、第89項にかかわらず、貸借対照表においてヘッドリースにおける使用権資産及びリース負債を計上せず、かつ、損益計算書においてサブリースにおいて受け取るリース料の発生時又は当該リース料の受領時のいずれか遅い時点で貸手として受け取るリース料と借手として支払うリース料の差額を損益に計上することができる。
- (1) 中間的な貸手は、サブリースの借手からリース料の支払を受けない限り、ヘッドリースの貸手に対してリース料を支払う義務を負わない。
- (2) 中間的な貸手のヘッドリースにおける支払額は、サブリースにおいて受け取る金額にあらかじめ定められた料率を乗じた金額である。
- (3) 中間的な貸手は、次のいずれを決定する権利も有さない。
- ① サブリースの契約条件(サブリースにおける借手の決定を含む。)
- ② サブリースの借手が存在しない期間における原資産の使用方法
(3)転リース取引
- 93. サブリース取引のうち、ヘッドリースの原資産の所有者から当該原資産のリースを受け、さらに同一資産を概ね同一の条件で第三者にリースする取引を転リース取引という。中間的な貸手は、第89項にかかわらず、転リース取引のうち、貸手としてのリースがヘッドリースの原資産を基礎として分類する場合にファイナンス・リースに該当するとき、次のとおり会計処理を行うことができる([設例19])。
- (1) 貸借対照表上、リース債権又はリース投資資産とリース負債の双方を計上する。
- (2) 損益計算書上、支払利息、売上高、売上原価等は計上せずに、貸手として受け取るリース料と借手として支払うリース料との差額を手数料収入として各期に配分し、転リース差益等の名称で計上する。
- なお、リース債権又はリース投資資産とリース負債は利息相当額控除後の金額で計上することを原則とするが、利息相当額控除前の金額で計上することができる。リース債権又はリース投資資産から利息を控除するにあたって使用する割引率は、リース負債から利息相当額を控除する際の割引率を使用する。
Ⅳ.開 示
1.注記事項
(1)開示目的
- 94. 会計基準第54項の開示目的を達成するために必要な情報は、リースの類型等により異なるものであるため、注記する情報は、会計基準第55項に掲げる注記事項に限定することを意図しておらず、会計基準第55項に掲げる注記事項以外であっても、会計基準第54項の開示目的を達成するために必要な情報は、リース特有の取引に関する情報として注記する。
- 95. 前項に照らして借手が注記する情報には、例えば、次のようなものがある。
- (1) 借手のリース活動の性質
- (2) 借手が潜在的に晒されている将来キャッシュ・アウトフローのうちリース負債の測定に反映されていないもの(例えば、借手の変動リース料、延長オプション及び解約オプション、残価保証、契約しているがまだ開始していないリース)
- (3) 借手がリースにより課されている制限又は特約
- (4) 借手がセール・アンド・リースバック取引を行う理由及び取引の一般性
- 96. 第94項に照らして貸手が注記する情報には、例えば、次のようなものがある。
- (1) 貸手のリース活動の性質
- (2) 貸手による原資産に関連したリスクの管理戦略や当該リスクを低減している手段(例えば、買戻契約、残価保証、所定の限度を超える使用に対して変動するリース料)
(2)借手及び貸手の注記
(借手の注記)
会計方針に関する情報
- 97. 「会計方針に関する情報」(会計基準第55項(1)①)については、リースに関して企業が行った会計処理について理解することができるよう、次の会計処理を選択した場合、その旨及びその内容を注記する。
- (1) リースを構成する部分とリースを構成しない部分とを分けずに、リースを構成する部分と関連するリースを構成しない部分とを合わせてリースを構成する部分として会計処理を行う選択(会計基準第29項)
- (2) 指数又はレートに応じて決まる借手の変動リース料に関する例外的な取扱いの選択(本適用指針第26項参照)
- (3) 借地権の設定に係る権利金等に関する会計処理の選択(本適用指針第27項及び第127項から第129項参照)
- 上記の会計方針を重要な会計方針として注記している場合、リースに関する注記として繰り返す必要はなく、重要な会計方針の注記を参照することができる。
リース特有の取引に関する情報
- 98. 「リース特有の取引に関する情報」(会計基準第55項(1)②)については、リースが企業の財政状態又は経営成績に与える影響を理解できるよう、本適用指針第99項から第101項の内容を注記する。
- 99. 貸借対照表において次の(1)から(3)に定める事項を区分して表示していない場合、それぞれについて、次の事項を注記する。
- (1) 使用権資産の帳簿価額について、対応する原資産を自ら所有していたと仮定した場合の表示科目ごとの金額。当該注記を行うにあたって、表示科目との関係が明らかである限りにおいて、より詳細な区分により使用権資産の帳簿価額の金額を注記することを妨げない。
- (2) 第26項の定めを適用し指数又はレートに応じて決まる借手の変動リース料に関する例外的な取扱いにより会計処理を行ったリースに係るリース負債が含まれる科目及び金額
- (3) 借地権について、第27項ただし書き又は第127項の定めを適用する場合、償却していない旧借地権の設定に係る権利金等又は普通借地権の設定に係る権利金等が含まれる科目及び金額
- 100. 損益計算書において次の(1)及び(2)に定める事項を区分して表示していない場合、それぞれについて、次の事項を注記する。
- (1) 第20項を適用して会計処理を行った短期リースに係る費用の発生額が含まれる科目及び当該発生額。この費用には借手のリース期間が1か月以下のリースに係る費用及び少額リース(第22項参照)に係る費用を含めることを要しない。
- (2) リース負債に含めていない借手の変動リース料(第51項参照)に係る費用の発生額が含まれる科目及び当該発生額
- 101. セール・アンド・リースバック取引及びサブリース取引について、次の事項を注記する。
- (1) セール・アンド・リースバック取引
- ① セール・アンド・リースバック取引から生じた売却損益を損益計算書において区分して表示していない場合、当該売却損益が含まれる科目及び金額
- ② 第55項を適用して会計処理を行ったセール・アンド・リースバック取引について、当該会計処理を行った資産がある旨並びに当該資産の科目及び金額
- ③ 第56項を適用して会計処理を行ったセール・アンド・リースバック取引について、当該セール・アンド・リースバック取引の主要な条件
- (2) サブリース取引
- ① 使用権資産のサブリースによる収益(第89項参照)を損益計算書において区分して表示していない場合、当該収益が含まれる科目及び金額
- ② 第92項の定めを適用し中間的な貸手がヘッドリースに対してリスクを負わない場合のサブリース取引について計上した損益を損益計算書において区分して表示していない場合、当該損益が含まれる科目及び金額
- ③ 第93項なお書きの定めを適用し転リース取引に係るリース債権又はリース投資資産とリース負債を利息相当額控除前の金額で計上する場合に、当該リース債権又はリース投資資産及びリース負債を貸借対照表において区分して表示していないとき、当該リース債権又はリース投資資産及びリース負債が含まれる科目並びに金額
当期及び翌期以降のリースの金額を理解するための情報
- 102. 「当期及び翌期以降のリースの金額を理解するための情報」(会計基準第55項(1)③)については、当期及び翌期以降のリースの金額を理解できるよう、次の事項を注記する。
- (1) リースに係るキャッシュ・アウトフローの合計額(少額リースに係るキャッシュ・アウトフローを除く。)
- (2) 使用権資産の増加額
- (3) 対応する原資産を自ら所有していたと仮定した場合に貸借対照表において表示するであろう科目ごとの使用権資産に係る減価償却の金額(当該事項を注記するにあたって、貸借対照表において表示するであろう科目との関係が明らかである限りにおいて、より詳細な区分により使用権資産に係る減価償却の金額の注記を行うことを妨げない。)
(貸手の注記)
ファイナンス・リースの貸手の注記
リース特有の取引に関する情報
- 103. 「リース特有の取引に関する情報」(会計基準第55項(2)①)については、リースが企業の財政状態又は経営成績に与える影響を理解できるよう、本適用指針第104項及び第105項の内容を注記する。
- 104. リース債権及びリース投資資産に関して、貸借対照表において次の(1)及び(2)に定める事項を区分して表示していない場合、当該(1)及び(2)に定める事項を注記する。
- (1) リース投資資産について、将来のリース料を収受する権利(以下「リース料債権」という。)部分及び見積残存価額部分の金額並びに受取利息相当額。なお、リース料債権部分及び見積残存価額部分の金額は、利息相当額控除前の金額とする([設例9-3])。
- (2) リース債権について、リース料債権部分の金額及び受取利息相当額。なお、リース料債権部分の金額は、利息相当額控除前の金額とする。
- ただし、リース債権の期末残高が、当該期末残高及びリース投資資産の期末残高の合計額に占める割合に重要性が乏しい場合、(1)と(2)を合算して注記することができる。
- 105. リース債権及びリース投資資産に含まれない将来の業績等により変動する使用料に係る収益を損益計算書において区分して表示していない場合、当該収益が含まれる科目及び金額を注記する。
当期及び翌期以降のリースの金額を理解するための情報
- 106. 「当期及び翌期以降のリースの金額を理解するための情報」(会計基準第55項(2)②)については、当期及び翌期以降のリースの金額を理解できるよう、次の事項を注記する。
- (1) リース債権の残高に重要な変動がある場合のその内容
- (2) リース投資資産の残高に重要な変動がある場合のその内容
- (3) リース債権に係るリース料債権部分について、貸借対照表日後5年以内における1年ごとの回収予定額及び5年超の回収予定額。なお、リース料債権部分の金額は、利息相当額控除前の金額とする。
- (4) リース投資資産に係るリース料債権部分について、貸借対照表日後5年以内における1年ごとの回収予定額及び5年超の回収予定額。なお、リース料債権部分の金額は、利息相当額控除前の金額とする。
- ただし、リース債権の期末残高が、当該期末残高及びリース投資資産の期末残高の合計額に占める割合に重要性が乏しい場合、(1)及び(2)並びに(3)及び(4)のそれぞれを合算して注記することができる。
- 107. 前項におけるリース債権及びリース投資資産の残高の変動の例として、次のものが挙げられる。
- (1) 企業結合による変動
- (2) リース投資資産における見積残存価額の変動
- (3) リース投資資産における貸手のリース期間の終了による見積残存価額の減少(見積残存価額の貯蔵品又は固定資産等への振替)(第76項参照)
- (4) 残価保証額の変動
- (5) 中途解約による減少
- (6) 新規契約による増加
- なお、当期中のリース債権及びリース投資資産の残高の重要な変動を注記するにあたり、必ずしも定量的情報を含める必要はない。
オペレーティング・リースの貸手の注記
リース特有の取引に関する情報
- 108. 「リース特有の取引に関する情報」(会計基準第55項(2)①)については、リースが企業の経営成績に与える影響を理解できるよう、オペレーティング・リースに係る貸手のリース料に含まれない将来の業績等により変動する使用料に係る収益を損益計算書において区分して表示していない場合、当該収益が含まれる科目及び金額を注記する。
当期及び翌期以降のリースの金額を理解するための情報
- 109. 「当期及び翌期以降のリースの金額を理解するための情報」(会計基準第55項(2)②)については、当期及び翌期以降のリースの金額を理解できるよう、オペレーティング・リースに係る貸手のリース料について、貸借対照表日後5年以内における1年ごとの受取予定額及び5年超の受取予定額を注記する。
2.連結財務諸表を作成している場合の個別財務諸表における表示及び注記事項
- 110. 連結財務諸表を作成している場合、個別財務諸表においては、会計基準第55項及び本適用指針第94項から第109項の定めにかかわらず、会計基準第55項に掲げる事項のうち、(1)②及び(2)①の「リース特有の取引に関する情報」並びに(1)③及び(2)②の「当期及び翌期以降のリースの金額を理解するための情報」について注記しないことができる。
- 111. 連結財務諸表を作成している場合、個別財務諸表においては、会計基準第55項(1)①の「会計方針に関する情報」を記載するにあたり、連結財務諸表における記載を参照することができる。
Ⅴ.適用時期等
1.適用時期
- 112. 本適用指針の適用時期は、会計基準と同様とする。
2.経過措置
(1)企業会計基準第13号を適用した際の経過措置
(リース取引開始日が企業会計基準第13号の適用初年度開始前である所有権移転外ファイナンス・リース取引の取扱い(借手))
- 113. リース取引開始日が企業会計基準第13号「リース取引に関する会計基準」(以下「企業会計基準第13号」という。)の適用初年度開始前の所有権移転外ファイナンス・リース取引について、企業会計基準適用指針第16号「リース取引に関する会計基準の適用指針」(以下「企業会計基準適用指針第16号」という。)の定めにより、企業会計基準第13号の適用初年度の前年度末における未経過リース料残高又は未経過リース料期末残高相当額(利息相当額控除後)を取得価額とし、企業会計基準第13号の適用初年度の期首に取得したものとしてリース資産に計上する会計処理を行っている場合、会計基準適用後も、当該会計処理を継続することができる。この場合、企業会計基準第13号適用後の残存期間における利息相当額については、本適用指針第39項の定めによらず、利息相当額の総額をリース期間中の各期に定額で配分することができる。
- 114. さらに、リース取引開始日が企業会計基準第13号の適用初年度開始前のリース取引で、企業会計基準第13号に基づき所有権移転外ファイナンス・リース取引と判定されたものについて、企業会計基準適用指針第16号の定めにより、引き続き通常の賃貸借取引に係る方法に準じた会計処理を行っている場合、会計基準適用後も、当該会計処理を継続することができる。この場合、リース取引開始日が企業会計基準第13号の適用初年度開始前のリース取引について、引き続き通常の賃貸借取引に係る方法に準じた会計処理を適用している旨及び「リース取引に係る会計基準」(1993年6月 企業会計審議会第一部会)(以下「1993年リース取引会計基準」という。)で必要とされていた事項(本適用指針参考参照)を注記する。
(リース取引開始日が企業会計基準第13号の適用初年度開始前である所有権移転外ファイナンス・リース取引の取扱い(貸手))
- 115. リース取引開始日が企業会計基準第13号の適用初年度開始前の所有権移転外ファイナンス・リース取引について、企業会計基準適用指針第16号の定めにより、企業会計基準第13号の適用初年度の前年度末における固定資産の適正な帳簿価額(減価償却累計額控除後)をリース投資資産の企業会計基準第13号の適用初年度の期首の価額として計上する会計処理を行っている場合、会計基準適用後も、当該会計処理を継続することができる。この場合、当該リース投資資産に関して、企業会計基準第13号適用後の残存期間においては、本適用指針第73項の定めによらず、利息相当額の総額をリース期間中の各期に定額で配分することができる。
- 116. さらに、リース取引開始日が企業会計基準第13号の適用初年度開始前のリース取引で、企業会計基準第13号に基づき所有権移転外ファイナンス・リース取引と判定されたものについて、企業会計基準適用指針第16号の定めにより、引き続き通常の賃貸借取引に係る方法に準じた会計処理を行っている場合、会計基準適用後も、当該会計処理を継続することができる。この場合、リース取引開始日が企業会計基準第13号の適用初年度開始前のリース取引について、引き続き通常の賃貸借取引に係る方法に準じた会計処理を適用している旨及び1993年リース取引会計基準で必要とされていた事項(本適用指針参考参照)を注記する。
- 117. リース取引を主たる事業としている企業は、前項の定めを適用することができない。また、リース取引を主たる事業としている企業においては、本適用指針第115項を適用した場合に重要性が乏しいときを除き、企業会計基準第13号の適用初年度の企業会計基準第13号適用後の残存期間の各期において、リース取引開始日が企業会計基準第13号適用初年度開始前のリース取引についても、企業会計基準第13号及び企業会計基準適用指針第16号に定める方法により会計処理した場合の税引前当期純損益と本適用指針第115項を適用した場合の税引前当期純損益との差額を注記する。
(2)会計基準を適用する際の経過措置
- 118. 会計基準の適用初年度においては、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として取り扱い、原則として、新たな会計方針を過去の期間のすべてに遡及適用する。
ただし、適用初年度の期首より前に新たな会計方針を遡及適用した場合の適用初年度の累積的影響額を適用初年度の期首の利益剰余金に加減し、当該期首残高から新たな会計方針を適用することができる。
(リースの識別)
- 119. 前項ただし書きの方法を選択する場合、次の(1)及び(2)の方法のいずれか又は両方を適用することができる。
- (1) 適用初年度の前連結会計年度及び前事業年度の期末日において企業会計基準第13号を適用しているリース取引に、会計基準第25項及び第26項並びに本適用指針第5項から第8項を適用して契約にリースが含まれているか否かを判断することを行わずに会計基準を適用すること
- (2) 適用初年度の期首時点で存在する企業会計基準第13号を適用していない契約について、当該時点で存在する事実及び状況に基づいて会計基準第25項及び第26項並びに本適用指針第5項から第8項を適用して契約にリースが含まれているか否かを判断すること
(借 手)
ファイナンス・リース取引に分類していたリース
- 120. 本適用指針第118項ただし書きの方法を選択する借手は、企業会計基準第13号においてファイナンス・リース取引に分類していたリースについて、適用初年度の前連結会計年度及び前事業年度の期末日におけるリース資産及びリース債務の帳簿価額のそれぞれを適用初年度の期首における使用権資産及びリース負債の帳簿価額とすることができる。このとき、適用初年度の前連結会計年度及び前事業年度の期末日におけるリース資産及びリース債務の帳簿価額に残価保証額が含まれる場合、当該金額は、適用初年度の期首時点における残価保証に係る借手による支払見込額に修正する。これらのリースについては、適用初年度の期首から会計基準を適用して使用権資産及びリース負債について会計処理を行う。この方法はリース1件ごとに適用することができる。
- 121. 前項の定めを適用する借手は、適用初年度の期首以後に第41項における使用権資産総額に重要性が乏しいと認められる場合の判断基準である10パーセントを超える場合であっても、適用初年度の期首における使用権資産及びリース負債については、第40項において認められる方法のうち企業会計基準適用指針第16号において選択していた方法を継続して適用することができる。
- 122. 本適用指針第118項ただし書きの方法を選択する借手は、企業会計基準適用指針第16号において、個々のリース資産に重要性が乏しいと認められる場合に通常の賃貸借取引に係る方法に準じた会計処理を行っていたリースについては、本適用指針第20項又は第22項にかかわらず、当該会計処理を継続することができる。
オペレーティング・リース取引に分類していたリース等
- 123. 本適用指針第118項ただし書きの方法を選択する借手は、企業会計基準第13号においてオペレーティング・リース取引に分類していたリース及び会計基準の適用により新たに識別されたリースについて、次のとおり会計処理を行うことができる([設例20])。
- (1) 適用初年度の期首時点における残りの借手のリース料を適用初年度の期首時点の借手の追加借入利子率を用いて割り引いた現在価値によりリース負債を計上する。
- (2) リース1件ごとに、次のいずれかで算定するかを選択して使用権資産を計上する。
- ① 会計基準がリース開始日から適用されていたかのような帳簿価額。ただし、適用初年度の期首時点の借手の追加借入利子率を用いて割り引く。
- ② (1)で算定されたリース負債と同額。ただし、適用初年度の前連結会計年度及び前事業年度の期末日に貸借対照表に計上された前払又は未払リース料の金額の分だけ修正する。
- (3) 適用初年度の期首時点の使用権資産に「固定資産の減損に係る会計基準」(2002年(平成14年)8月 企業会計審議会)を適用する。
- (4) 本適用指針第22項を適用して使用権資産及びリース負債を計上しないリースについては修正しない。
- なお、本項の会計処理は、企業会計基準適用指針第16号に従ってファイナンス・リース取引に分類していた建物に係るリースについて、土地と建物がそれぞれ独立したリースを構成する部分(本適用指針第16項参照)に該当しない場合にも適用することができる。
- 124. 前項の方法を選択する借手は、前項を適用するにあたって次の(1)から(4)の方法の1つ又は複数を適用することができる。これらの方法はリース1件ごとに適用することができる。
- (1) 特性が合理的に類似した複数のリースに単一の割引率を適用すること
- (2) 適用初年度の期首から12か月以内に借手のリース期間が終了するリースについて、前項(1)及び(2)を適用せずに、第20項の方法で会計処理を行うこと
- (3) 付随費用を適用初年度の期首における使用権資産の計上額から除外すること
- (4) 契約にリースを延長又は解約するオプションが含まれている場合に、借手のリース期間や借手のリース料を決定するにあたってリース開始日より後に入手した情報を使用すること
- 125. 本適用指針第118項ただし書きの方法を選択する借手は、企業会計基準第24号「会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」(以下「企業会計基準第24号」という。)第10項(5)の注記に代えて、次の事項を注記する。
- (1) 適用初年度の期首の貸借対照表に計上されているリース負債に適用している借手の追加借入利子率の加重平均
- (2) 次の①と②との差額の説明
- ① 適用初年度の前連結会計年度及び前事業年度の期末日において企業会計基準第13号を適用して開示したオペレーティング・リースの未経過リース料((1)の追加借入利子率で割引後)
- ② 適用初年度の期首の貸借対照表に計上したリース負債
セール・アンド・リースバック取引
- 126. 売手である借手は、適用初年度の期首より前に締結されたセール・アンド・リースバック取引を次のとおり取り扱う。
- (1) 売手である借手による資産の譲渡について、収益認識会計基準などの他の会計基準等に基づき売却に該当するかどうかの判断を見直すことは行わない。
- (2) 資産の譲渡価額が明らかに時価ではない場合又は借手のリース料が明らかに市場のレートではない場合の取扱い(本適用指針第57項参照)を適用しない。
- (3) リースバックを適用初年度の期首時点に存在する他のリースと同様に会計処理を行う。
- (4) 企業会計基準第13号におけるセール・アンド・リースバック取引の定めにより、リースの対象となる資産の売却に伴う損益を長期前払費用又は長期前受収益等として繰延処理し、リース資産の減価償却費の割合に応じ減価償却費に加減して損益に計上する取扱いを適用している場合、会計基準の適用後も当該取扱いを継続し、使用権資産の減価償却費の割合に応じ減価償却費に加減して損益に計上する。
借地権の設定に係る権利金等
- 127. 本適用指針第27項第1段落に定める原則的な取扱いを適用する借手が会計基準の適用初年度の期首に計上されている旧借地権の設定に係る権利金等又は普通借地権の設定に係る権利金等を償却していなかった場合、当該権利金等を使用権資産の取得価額(本適用指針第18項参照)に含めた上で、当該権利金等のみ償却しないことができる。
- 128. 借手が次の(1)又は(2)のいずれかの場合に本適用指針第118項ただし書きの方法を選択するとき、会計基準の適用初年度の前連結会計年度及び前事業年度の期末日における借地権の設定に係る権利金等の帳簿価額を適用初年度の期首における使用権資産の帳簿価額とすることができる。
- (1) 会計基準の適用前に定期借地権の設定に係る権利金等を償却していた場合
- (2) 旧借地権の設定に係る権利金等又は普通借地権の設定に係る権利金等について本適用指針第27項第1段落の原則的な取扱いを適用する借手が会計基準の適用前に当該権利金等を償却していた場合
- これらの場合、借手は当該帳簿価額を会計基準の適用初年度の期首から残りの借手のリース期間で償却する。このとき、借手のリース期間の決定にあたりリース開始日より後に入手した情報を使用することができる。
- 129. 本適用指針第27項第1段落の原則的な取扱いを適用する借手が、会計基準の適用前に旧借地権の設定に係る権利金等又は普通借地権の設定に係る権利金等について償却していなかった場合に本適用指針第118項ただし書きの方法を選択するときには、会計基準の適用初年度における使用権資産の期首残高に含まれる当該権利金等については、当該権利金等を計上した日から借手のリース期間の終了までの期間で償却するものとして、当該権利金等を計上した日から償却した帳簿価額で計上することができる。このとき、借手のリース期間の決定にあたりリース開始日より後に入手した情報を使用することができる。
ただし、当該償却した後の帳簿価額が前連結会計年度及び前事業年度の期末日における当該権利金等の帳簿価額を上回る場合には、当該適用初年度の前連結会計年度及び前事業年度の期末日における当該権利金等の帳簿価額をもって、当該適用初年度の期首における当該権利金等の帳簿価額とする。
建設協力金等の差入預託保証金
- 130. 本適用指針第118項ただし書きの方法を選択する借手は、本適用指針第29項、第32項及び第34項の定めにかかわらず、次の(1)及び(2)について、会計基準の適用前に採用していた会計処理を継続することができる。
- (1) 将来返還される建設協力金等の差入預託保証金(敷金を除く。)
- (2) 差入預託保証金(建設協力金等及び敷金)のうち、将来返還されない額
- また、(1)に係る長期前払家賃及び(2)について、適用初年度の前連結会計年度及び前事業年度の期末日の帳簿価額を適用初年度の期首における使用権資産に含めて会計処理を行うこともできる。
(貸 手)
ファイナンス・リース取引に分類していたリース
- 131. 本適用指針第118項ただし書きの方法を選択する貸手は、企業会計基準第13号においてファイナンス・リース取引に分類していたリースについて、適用初年度の前連結会計年度及び前事業年度の期末日におけるリース債権及びリース投資資産の帳簿価額のそれぞれを適用初年度の期首におけるリース債権及びリース投資資産の帳簿価額とすることができる。これらのリースについては、適用初年度の期首から会計基準を適用してリース債権及びリース投資資産について会計処理を行う。
ただし、企業会計基準第13号において、貸手における製作価額又は現金購入価額と借手に対する現金販売価額の差額である販売益を割賦基準により処理している場合、適用初年度の前連結会計年度及び前事業年度の期末日の繰延販売利益の帳簿価額は適用初年度の期首の利益剰余金に加算する。
オペレーティング・リース取引に分類していたリース等
- 132. 本適用指針第118項ただし書きの方法を選択する貸手は、企業会計基準第13号においてオペレーティング・リース取引に分類していたリース及び会計基準の適用により新たに識別されたリースについて、適用初年度の期首に締結された新たなリースとして、会計基準を適用することができる。
サブリース取引
- 133. 本適用指針第118項ただし書きの方法を選択するサブリースの貸手は、サブリース取引(サブリース取引における例外的な取扱い(本適用指針第92項及び第93項参照)を適用する場合を除く。)におけるサブリースについて、次の修正を行う。
- (1) 企業会計基準第13号においてオペレーティング・リース取引として会計処理していた会計基準におけるサブリース及び会計基準の適用により新たに識別されたサブリースについて、適用初年度の期首時点におけるヘッドリース及びサブリースの残りの契約条件に基づいて、サブリースがファイナンス・リースとオペレーティング・リースのいずれに該当するかを決定する。
- (2) (1)においてファイナンス・リースに分類されたサブリースについて、当該サブリースを適用初年度の期首に締結された新たなファイナンス・リースとして会計処理を行う。
(国際財務報告基準を適用している企業)
- 134. 本適用指針第118項から第125項及び第127項から第133項の定めにかかわらず、国際財務報告基準(IFRS)を連結財務諸表に適用している企業(又はその連結子会社)が当該企業の個別財務諸表に会計基準を適用する場合、会計基準の適用初年度において、次のいずれかの定めを適用することができる。
- (1) IFRS第16号「リース」(以下「IFRS第16号」という。)の経過措置の定めを適用していたときには、IFRS第16号の経過措置の定め
- (2) IFRS第16号を最初に適用するにあたってIFRS第1号「国際財務報告基準の初度適用」(以下「IFRS第1号」という。)の免除規定の定めを適用していたときには、IFRS第1号の免除規定の定め
- (1)又は(2)のいずれかの定めを適用する場合、連結財務諸表において当該定めを適用した時から会計基準の適用初年度までIFRSを適用していたかのように算定した使用権資産及びリース負債並びに正味リース投資未回収額の適用初年度の期首の帳簿価額を会計基準の適用初年度の期首の使用権資産及びリース負債並びにリース債権及びリース投資資産の帳簿価額とし、適用初年度の累積的影響額を適用初年度の期首の利益剰余金に加減する。ただし、この場合であっても本適用指針第126項に定めるセール・アンド・リースバック取引に関する取扱いを適用する。
- 135. 前項(1)又は(2)のいずれの定めを適用する場合でも、連結会社相互間におけるリースとして、相殺消去されたリースに第118項から第133項の定めを適用することができる。
(開 示)
- 136. 本適用指針第118項ただし書きの方法を選択する借手は、会計基準の適用初年度においては、適用初年度の比較情報について、新たな表示方法に従い組替えを行わない。
- 137. 本適用指針第118項ただし書きの方法を選択する借手及び貸手は、会計基準の適用初年度においては、会計基準第55項に記載した内容を適用初年度の比較情報に記載せず、企業会計基準第13号及び企業会計基準適用指針第16号に定める事項を注記する。
Ⅵ.議 決
- 138. 本適用指針は、第532回企業会計基準委員会に出席した委員13名全員の賛成により承認された。
結論の背景
経 緯
1994年リース取引実務指針の公表
- BC1. 1993年リース取引会計基準の実務上の指針として、日本公認会計士協会から「リース取引の会計処理及び開示に関する実務指針」(日本公認会計士協会 会計制度委員会 1994年1月18日、以下「1994年リース取引実務指針」という。)が公表された。
企業会計基準適用指針第16号の公表
- BC2. 企業会計基準適用指針第16号は、1994年リース取引実務指針を改正するものとして、主として、1994年リース取引実務指針における所有権移転外ファイナンス・リース取引の通常の売買取引に係る方法に準じた会計処理に関する見直しを行った。
本適用指針の公表
- BC3. 当委員会は2024年9月に会計基準を公表し、合わせて本適用指針を公表した。
開発にあたっての基本的な方針
主要な定め
- BC4. 本適用指針においては、借手の会計処理に関してIFRS第16号のすべての定めを取り入れるのではなく、主要な定めの内容のみを取り入れることにより、簡素で利便性が高く、かつ、IFRSを任意適用して連結財務諸表を作成している企業(以下「IFRS任意適用企業」という。)がIFRS第16号の定めを個別財務諸表に用いても、基本的に修正が不要となることを想定して会計基準の開発を行った(会計基準BC13項)。
主要な定めの内容のみを取り入れる場合であっても、企業は、当該内容に基づいて判断を行い、企業の経済実態を表す会計処理を行うことができると考えられる。また、我が国の会計基準を適用するにあたって、取り入れた主要な定めの内容のみに基づいて判断を行うことで足りるため、IFRS第16号におけるガイダンスや解釈等を参照する実務上の負担が生じないと考えられる。一方、各企業における判断が必要となることにより、財務諸表作成コスト及び監査コストは、相対的に大きくなる可能性がある。
このようなコストの増加への対応として、主要な定めの内容として取り入れない項目について、会計基準の本文は主要な定めのみとするものの、結論の背景や設例において詳細なガイダンスを定めることにより、IFRS第16号と同じ適用結果となることを求めるべきであるとする意見が聞かれた。
しかしながら、IFRS第16号の主要な定めの内容のみを取り入れる開発方針は、取り入れなかった項目についてもIFRS第16号と同じ適用結果となることを意図するものではなく、取り入れた主要な定めの内容に基づき判断が行われることを意図するものである。したがって、適切な会計処理は、IFRS第16号における詳細な定めに基づき会計処理を行った結果に限定されないこととなる。 - BC5. 前項の方針により、会計基準の本文において主要な定めの内容として取り入れない項目については、設例についてもIFRS第16号の設例の内容を本適用指針に取り入れないこととした。
また、本適用指針では、実務に配慮した方策として国際的な比較可能性を大きく損なわせない範囲で代替的な取扱いを定め、また、経過的な措置を定めることとした。
目 的
- BC6. 企業会計原則 第三 貸借対照表原則 四 (一) B においては、地上権は無形固定資産に属するものとされている。本適用指針では、地上権を含む借地権について、その設定に係る権利金等は、使用権資産の取得価額に含めることとした(第27項参照)。そのため、本適用指針では、借地権の設定に係る権利金等に関する開示について、本適用指針を優先して適用することとしている(第1項参照)。
Ⅰ.範 囲
- BC7. 本適用指針においては、借地権は有形固定資産である土地に関する使用権資産として取り扱っている(本適用指針第27項参照)。このため、借手において、借地権は、無形固定資産のリース(会計基準第4項)には該当せず、本適用指針の範囲に含まれる。
Ⅱ.用語の定義
- BC8. 本適用指針では、会計基準における用語の定義(会計基準第5項から第24項)に含まれるもの以外のIFRS第16号における用語の定義のうち、本適用指針に関連のあるものを用語の定義に含めている。また、本適用指針では、借地権の設定に係る権利金等の会計処理を定めており(本適用指針第27項参照)、借地権に係る用語の定義を定めている。
Ⅲ.会計処理
1.リースの識別
(1)リースの識別の判断
- BC9. 本適用指針では、リースの識別の判断について、次の定めを置いている(第5項参照)。
- (1) 契約の締結時に、契約の当事者は、当該契約がリースを含むか否かを判断する。
- (2) 当該判断にあたり、当該契約が特定された資産の使用を支配する権利を一定期間にわたり対価と交換に移転する場合、当該契約はリースを含む。
- (3) 特定された資産の使用期間全体を通じて、①顧客が、当該資産の使用から生じる経済的利益のほとんどすべてを享受する権利を有し、かつ、②顧客が、当該資産の使用を指図する権利を有する場合、サプライヤーから当該資産の使用を支配する権利が顧客に移転する。
- 当該判断における「顧客」及び「サプライヤー」は、リースを含む場合にそれぞれ「借手」及び「貸手」に該当することになる。リースの識別において、「借手」及び「貸手」の用語を使用せずに「顧客」及び「サプライヤー」という用語を使用しているのは、リースの識別の判断の段階は契約がリースを含むか否かを判断する段階であり、契約がリースを含まない場合があるためである。
(特定された資産)
- BC10. 契約がリースを含むか否かの判断(第5項参照)に関して、IFRS第16号では、資産が契約に明記されない場合でも黙示的に定められることによって特定され得るとの定めがあるが、本適用指針では当該定め及びこれに関するIFRS第16号の設例を取り入れないこととした。これは、当該定めを置かなくとも、顧客が資産の使用から生じる経済的利益のほとんどすべてを享受する権利を有し、かつ、顧客が当該資産の使用を指図する権利を有している場合には、資産が契約に明記されていなくとも事実と状況によりリースが含まれることが明らかであるときがあり、このときにはリースの識別に関する適切な判断がなされると考えられるためである。反対に、リースが含まれていないことが明らかな場合にまでリースの識別の判断を行う必要はないと考えられる。
- BC11. また、資産が契約に明記されている場合であっても、サプライヤーが資産を代替する実質的な権利を有しているときには、当該資産は特定された資産に該当しない(第6項参照)。第6項の判断における、「サプライヤーが使用期間全体を通じて当該資産を他の資産に代替する実質上の能力を有している」(第6項(1)参照)場合としては、例えば、顧客はサプライヤーが資産を入れ替えることを妨げることができず、かつ、サプライヤーが代替資産を容易に利用可能であるか又は合理的な期間内に調達できる場合等がある。
サプライヤーが資産を代替する実質的な権利に関して、IFRS第16号では詳細な定めがあるが、「開発にあたっての基本的な方針」(BC4項参照)に記載のとおり、当該定めを本適用指針に取り入れなくとも、各企業が判断に基づいて経済実態を表す会計処理を行うことができると考えられるため、本適用指針に当該定めを取り入れないこととした。
(使用を指図する権利)
- BC12. 顧客が使用期間全体を通じて使用から得られる経済的利益に影響を与える資産の使用方法を指図する権利を有している場合、顧客は使用期間全体を通じて当該資産の使用を指図する権利を有している(第8項(1)参照)。この場合、顧客が当該資産の使用から生じる経済的利益のほとんどすべてを享受する権利を有しているときには、顧客が当該資産の使用を支配する権利を有するため、契約はリースを含むこととなる。これに対し、サプライヤーが資産の使用を指図する権利を有している場合、契約はリースを含まない。
- BC13. 顧客が使用期間全体を通じて特定された資産の使用を指図する権利を有しているか否かの判断を行うにあたっては、使用期間全体を通じて使用から得られる経済的利益に影響を与える資産の使用方法に係る意思決定を考慮する。当該意思決定は、資産の性質及び契約の条件に応じて、契約によって異なると考えられる。
当該意思決定に関して、IFRS第16号では具体的な例示があるが、本適用指針に当該例示を取り入れないこととした。これは、IFRS第16号の基準の本文では、資産の使用方法及び使用目的に係る意思決定は資産の性質及び契約の条件に応じて、契約によって異なる可能性が高いと定められているのに対し、これらの例示を示すことで資産の使用方法及び使用目的が限定的に解釈される可能性があるためである。
(2)リースを構成する部分とリースを構成しない部分の区分
- BC14. 本適用指針では、借手及び貸手は、リースを含む契約について、原則として、リースを構成する部分とリースを構成しない部分とに分けて会計処理を行うこととしている(第9項参照)。また、契約における対価の金額のリースを構成する部分とリースを構成しない部分への配分は、それぞれの部分の独立価格(BC17項参照)又は独立販売価格(BC22項参照)の比率に基づいて行うこととしている(第11項及び第13項参照)。
- BC15. 企業会計基準適用指針第16号では、借手が負担するリース料の中に含まれる固定資産税、保険料等の諸費用を「維持管理費用相当額」として定め、これを原則としてリース料総額から控除する定めとしていた。一方、IFRS第16号では、「維持管理費用相当額」に類似するものとして「借手に財又はサービスを移転しない活動及びコスト」がリースを構成する部分とリースを構成しない部分の区分に関する定めにおいて言及されている。当該コストには、固定資産税及び保険料のほか、例えば、契約締結のために貸手に生じる事務コストの借手への請求等、借手に財又はサービスを移転しない活動に係る借手への請求が含まれる。
「維持管理費用相当額」と「借手に財又はサービスを移転しない活動及びコスト」の範囲は一致することが多いと考えられるが、「借手に財又はサービスを移転しない活動及びコスト」は、借手に財又はサービスを移転するかどうかを評価する定めである一方、「維持管理費用相当額」は借手に財又はサービスを移転するかどうかの評価を求めない点で、「維持管理費用相当額」と「借手に財又はサービスを移転しない活動及びコスト」の範囲は異なる可能性がある。
本適用指針では、両者に関する借手及び貸手における取扱いについて、それぞれ検討を行った(本適用指針BC18項からBC21項及びBC23項参照)。 - BC16. 企業会計基準適用指針第16号は、典型的なリース、すなわち役務提供相当額のリース料に占める割合が低いものを対象としており、役務提供相当額は重要性が乏しいことを想定し、維持管理費用相当額に準じて会計処理を行うこととしていた。この点、本適用指針においては、これまで役務提供相当額として取り扱ってきた金額は、リースを構成しない部分に含まれることになると考えられる。
(借 手)
- BC17. 本適用指針では、借手は、契約における対価の金額について、リースを構成する部分とリースを構成しない部分とに配分するにあたって、それぞれの部分の独立価格の比率に基づいて配分することとしている(第11項参照)。
このとき、借手は、リースを構成する部分とリースを構成しない部分の独立価格の比率について、貸手又は類似のサプライヤーが当該構成部分又は類似の構成部分について企業に個々に請求するであろう価格に基づいて算定する。借手においてリースを構成する部分とリースを構成しない部分の独立価格が明らかでない場合、借手は、観察可能な情報を最大限に利用して、独立価格を合理的な方法で見積る。 - BC18. また、本適用指針では、借手は、契約における対価の金額の配分にあたり、契約における対価の中に、借手に財又はサービスを移転しない活動及びコストについて借手が支払う金額が含まれる場合、当該金額を契約における対価から控除せず、リースを構成する部分とリースを構成しない部分とに配分することとしている(第11項また書き参照)。
- BC19. 審議の過程では、借手が負担するリース料の中に含まれる固定資産税、保険料等の配分について、企業会計基準適用指針第16号における「維持管理費用相当額」の定めの維持を求める意見や当該「維持管理費用相当額」の範囲及び合理的見積額に関する追加的なガイダンスの定めを求める意見等が聞かれた。
この点、企業会計基準適用指針第16号において、維持管理費用相当額をリース料総額から控除することとした理由の1つに、当該金額をリース料総額に含めることにより、リースの分類(ファイナンス・リース取引又はオペレーティング・リース取引のいずれになるのか)に影響を及ぼす可能性があったことが挙げられる。
しかしながら、本適用指針においては、借手については、ファイナンス・リースとオペレーティング・リースの区分を廃止したため、リースを分類する観点から維持管理費用相当額の取扱いを定める必要はないものと考えられる。また、貸手が支払う固定資産税や保険料等はリース料に含めて回収されることになると考えられるが、リース料に含まれるこれらの金額が借手に示されることは通常は想定されないため、借手がこれらの金額を算定することは困難であると考えられる。 - BC20. 公開草案に寄せられたコメントの中には、借手においても維持管理費用相当額に関する企業会計基準適用指針第16号の定めを適用することを認めてはどうかとの意見があった。この点、維持管理費用相当額の金額を借手が貸手から入手することの困難さは国際的にも指摘されていること、使用権資産の計上の対象となるリースはオペレーティング・リース等も含まれていることから、企業がすべてのリースについて一貫して維持管理費用相当額を算定し控除することは困難であると考えられる。
- BC21. BC19項及び前項を総合的に勘案し、借手においては維持管理費用相当額に関する企業会計基準適用指針第16号の定めは引き継がず、IFRS第16号と同様に、借手に財又はサービスを移転しない活動及びコストを独立価格の比率に基づきリースを構成する部分とリースを構成しない部分とに配分する方法のみ定めることとした。
(貸 手)
- BC22. 企業会計基準適用指針第16号は、典型的なリース、すなわち役務提供相当額のリース料に占める割合が低いものを対象としていたが(本適用指針BC16項参照)、本適用指針は、役務提供相当額のリース料に占める割合にかかわらず、リースを含む契約におけるリースを適用範囲とするため、企業会計基準適用指針第16号の適用時よりも、会計基準の適用対象となる契約に役務提供等が含まれるケースが増加する可能性があると考えられる。そのため、IFRS第16号と整合的に、貸手についてもリースを構成する部分とリースを構成しない部分とに分けて会計処理を行うこととした(本適用指針第12項参照)。
また、本適用指針では、貸手は、契約における対価の金額について、リースを構成する部分とリースを構成しない部分とに配分する際に、それぞれの部分の独立販売価格の比率に基づいて配分することとしている(本適用指針第13項参照)。貸手における対価の配分は、収益認識会計基準との整合性を図るものであり、「独立販売価格」は、収益認識会計基準第9項における定義(「財又はサービスを独立して企業が顧客に販売する場合の価格をいう。」)を参照する。 - BC23. 契約における対価の中に借手に財又はサービスを移転しない活動及びコストについて借手が支払う金額が含まれる場合には、当該金額を契約における対価の一部としてリースを構成する部分とリースを構成しない部分とに配分することとした(本適用指針第13項(1)参照)。
また、貸手の会計処理については基本的に企業会計基準適用指針第16号の定めを踏襲する方針(会計基準BC13項)との関係から、企業会計基準適用指針第16号における「維持管理費用相当額」に関する定めを維持すべきであるとの意見が聞かれた。この点、貸手は、借手と異なり本適用指針においても、リースの分類(ファイナンス・リース又はオペレーティング・リースのいずれになるのか)を行っており、また、固定資産税や保険料等の金額を把握している。これらを踏まえ、本適用指針においては、貸手は、企業会計基準適用指針第16号における「維持管理費用相当額」に関する定めも選択できることとした(本適用指針第13項(2)参照)。 - BC24. 公開草案に寄せられたコメントの中には、契約に含まれるリースがオペレーティング・リースに分類される場合、貸手も、借手と同様にリースを構成する部分とリースを構成しない部分とを分けずにリースを構成する部分として会計処理を行うことを認めるべきとの意見があった。しかしながら、リースを構成する部分と関連するリースを構成しない部分の収益の計上の時期及びパターンが同じではない場合、貸手がリースを構成する部分とリースを構成しない部分とを分けずに会計処理を行うことはリース及びサービスのいずれの経済実態も適切に表さないことになると考えられる。
- BC25. これに対し、リースを構成する部分と関連するリースを構成しない部分の収益の計上の時期及びパターンが同じである場合には、双方を分けて会計処理を行ったときの収益の計上額と双方を分けずに会計処理を行ったときの収益の計上額は変わらないと考えられる。この点を踏まえると、貸手においてリースを構成する部分とリースを構成しない部分とを合わせて取り扱い会計処理を行うこととしても情報の有用性が大きく損なわれないと考えられる。したがって、適用上のコストと複雑性の低減を図る観点から、米国会計基準を参考として貸手のオペレーティング・リースについてリースを構成する部分とリースを構成しない部分の区分に係る代替的な取扱いを定めることとした(第15項参照)。
また、リースを構成する部分とリースを構成しない部分とを区分して会計処理が行われる場合、より詳細な情報が開示されることを踏まえ、契約ごとに当該代替的な取扱いを選択することができることとした(第14項参照)。
(独立したリースの構成部分)
- BC26. 契約には、複数のリースを構成する部分が含まれる場合がある。この点、IFRS第16号では、リースを含む契約が単一のリースを構成する部分を含むのか又は複数のリースを構成する部分を含むのかの判定に関する定めが置かれている。企業会計基準適用指針第16号においては、リースの会計単位に関する定めがない中で実務上の判断が行われていたと考えられるものの、審議の過程で次のような意見が聞かれ、独立したリースの構成部分の判定に関する定めをIFRS第16号の主要な定めとして本適用指針に取り入れることとした(本適用指針第16項参照)。
- (1) 貸手が機器とソフトウェアのリースを同時に行う場合、すなわち、機器のリースと知的財産のライセンスの供与を同時に行う場合の会計単位の判断が困難である。
- (2) 少額リースに関する簡便的な取扱いにおいて、「新品時の原資産の価値が少額であるリース」の簡便的な取扱いを選択するときの「リース1件ごと」の判断(本適用指針第22項(2)②参照)が不明瞭である。
- なお、IFRS第16号では、当該独立したリースの構成部分の定めは、履行義務の識別に関するIFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」(以下「IFRS第15号」という。)の要求事項と同様の要求事項をIFRS第16号に含めたものであるとされている。本適用指針における独立したリースの構成部分の定めは、収益認識会計基準第34項における定めと整合的なものである。
- BC27. 貸手による知的財産のライセンスの供与が機器のリースとは別個の財又はサービス(収益認識会計基準第32項及び第34項)に該当する場合、当該知的財産のライセンスの供与については、会計基準第3項(2)ただし書きを適用する場合を除き、収益認識会計基準を適用し会計処理を行うことになると考えられる。これに対し、貸手による知的財産のライセンスの供与が機器のリースとは別個の財又はサービスに該当しない場合、会計基準の範囲に含まれると考えられる。この場合、独立したリースの構成部分(本適用指針第16項参照)の要件を満たさないときは、当該知的財産のライセンスの供与について機器のリースに含めて会計処理を行うことになると考えられる。
2.リース期間
- BC28. 本適用指針では、借手は、借手のリース期間について、IFRS第16号との整合性を図り、借手が原資産を使用する権利を有する解約不能期間に、借手が行使することが合理的に確実であるリースの延長オプションの対象期間及び借手が行使しないことが合理的に確実であるリースの解約オプションの対象期間を加えて決定することとした(第17項参照)。この点、審議の過程では、次のような懸念が聞かれた。
- (1) 「合理的に確実」の判断にばらつきが生じる懸念及び過去実績に偏る懸念
- ① 「合理的に確実」の解釈のばらつきにより、企業間及び国際間の比較可能性が損なわれる可能性がある。
- ② 「合理的に確実」は、高い閾値にもかかわらず、実務的に閾値が低くなる可能性がある。
- ③ IFRS第16号には「過去の実務慣行等を考慮してリース期間を検討する」との定めがあり、1つの有用な方法と思われるが、過度に考慮すべきではなく、将来の見積りに焦点を当てるべきである。
- ④ 解約不能期間が比較的短期である場合の延長オプションの行使について蓋然性を考慮して借手のリース期間を決定することに困難を伴う可能性がある。
- (2) 不動産リースに関する具体的な懸念
- ① 普通借地契約及び普通借家契約について、借手のリース期間を判断することに困難が伴う。
- ② リース物件における附属設備の耐用年数や資産計上された資産除去債務に対応する除去費用の償却期間と借手のリース期間との整合性を考慮する場合、実務上の負荷が生じる可能性がある。
- BC29. 前項(1)の「合理的に確実」の判断にばらつきが生じる懸念及び過去実績に偏る懸念への対応として、借手が延長オプションを行使する可能性又は解約オプションを行使しない可能性が「合理的に確実」であるかどうかの判断は、借手が行使する経済的インセンティブを有しているオプション期間を借手のリース期間に含めるものであることを踏まえ、当該判断の際に考慮する経済的インセンティブの例を本適用指針に示すこととした(本適用指針第17項参照)。
なお、会計基準第15項及び第31項に記載している「合理的に確実」は、蓋然性が相当程度高いことを示している。この点、IFRS第16号には「合理的に確実」に関する具体的な閾値の記載はないが、米国会計基準会計基準更新書第2016-02号「リース(Topic 842)」の結論の根拠では、「合理的に確実」が高い閾値であることを記載した上で、米国会計基準の文脈として、発生する可能性の方が発生しない可能性より高いこと(more likely than not)よりは高いが、ほぼ確実(virtually certain)よりは低いであろうことが記載されている。 - BC30. 延長オプション又は解約オプションの対象期間に関しては、リース開始日において、借手が延長オプションを行使する可能性又は解約オプションを行使しない可能性について第17項に例示したような経済的インセンティブを生じさせる要因を考慮した上で、借手のリース期間を決定することになる。したがって、借手のリース期間は、経営者の意図や見込みのみに基づく年数ではなく、借手が行使する経済的インセンティブを生じさせる要因に焦点を当てて決定される。例えば、借手が原資産を使用する期間が超長期となる可能性があると見込まれる場合であっても、借手のリース期間は必ずしもその超長期の期間となるわけではない。借手のリース期間は、借手が延長オプションを行使する経済的インセンティブを有し、当該延長オプションを行使することが合理的に確実であるかどうかの判断の結果によることになる。
- BC31. 借手のリース期間終了後の代替資産の調達に要するコストを考慮すると、リースの解約不能期間が短いほど、借手が延長オプションを行使する可能性又は解約オプションを行使しない可能性が高くなる場合があると考えられる。他方で、リースの解約不能期間が十分に長い場合には、借手が延長オプションを行使する可能性又は解約オプションを行使しない可能性が低くなる場合があると考えられる。
- BC32. 第17項では借手が延長オプションを行使すること又は解約オプションを行使しないことが合理的に確実であるかどうかを判定するにあたって考慮する経済的インセンティブを生じさせる要因を次のとおり例示している。
- (1) 延長オプション又は解約オプションの対象期間に係る契約条件(リース料、違約金、残価保証、購入オプションなど)
- (2) 大幅な賃借設備の改良の有無
- (3) リースの解約に関連して生じるコスト
- (4) 企業の事業内容に照らした原資産の重要性
- (5) 延長オプション又は解約オプションの行使条件
- ここで、(5)の「延長オプション又は解約オプションの行使条件」について、例えば、オプションの行使条件が借手にとって有利である場合には、経済的インセンティブが生じ得ると考えられる。
- BC33. 借手が特定の種類の資産を通常使用してきた過去の慣行及び経済的理由が、借手のオプションの行使可能性を評価する上で有用な情報を提供する可能性がある。ただし、一概に過去の慣行に重きを置いてオプションの行使可能性を判断することを要求するものではなく、将来の見積りに焦点を当てる必要がある。合理的に確実であるかどうかの判断は、諸要因を総合的に勘案して行うことに留意する必要がある。
- BC34. BC28項(2)の不動産リースに関する具体的な懸念については、次のとおり対応することとした。
- (1) 普通借地契約及び普通借家契約に係る借手のリース期間を判断することの困難さについては、実務上の判断に資するため、設例を示すこととした([設例8-1]から[設例8-5])。なお、設例は、具体的な会計処理を行うための手掛かりを与えるための例示であり、各企業の実情に応じて、例示されていない会計処理も適当と判断される場合があるものである。そのため、借手のリース期間を判断する際の思考プロセスを示すことに重点を置き、事実及び状況によって判断が異なり得ることを示す設例とした。
- (2) リース物件における附属設備の耐用年数と借手のリース期間との関係については、次のような関係になると考えられる。
- ① 借手のリース期間の判断について、借手が延長オプションを行使する可能性又は解約オプションを行使しない可能性が、合理的に確実であるかどうかを判定する際の考慮要因の1つとして、大幅な賃借設備の改良の有無を例示に含めている(第17項(2)参照)。賃借設備の改良が借手のリース期間の判断に影響を与える「大幅な賃借設備の改良」に該当するか否かは、例えば、賃借設備の改良の金額、移設の可否、資産を除去するための金額等の事実及び状況に基づく総合的な判断が必要になると考えられる。
- ② 借手のリース期間とリース物件における附属設備の耐用年数は、相互に影響を及ぼす可能性があるが、それぞれの決定における判断及びその閾値は異なるため、借手のリース期間とリース物件における附属設備の耐用年数は、必ずしも整合しない場合があると考えられる。一方、リース物件における附属設備について、借手のリース期間中の除去及び借手のリース期間後の使用を見込んでいない場合、当該附属設備の耐用年数が借手のリース期間と整合する場合もあると考えられる。
3.借手のリース
(1)借手における費用配分の基本的な考え方
- BC35. 会計基準及び本適用指針は、借手におけるリースの費用配分の方法については、リースがファイナンス・リースであるかオペレーティング・リースであるかにかかわらず、すべてのリースについて使用権資産に係る減価償却費及びリース負債に係る利息相当額を計上するIFRS第16号と同様の単一の会計処理モデルによることとしている(会計基準BC39項)。
(2)リース開始日の使用権資産及びリース負債の計上額
- BC36. 本適用指針では、借手は、使用権資産について、リース開始日に算定されたリース負債の計上額にリース開始日までに支払った借手のリース料、付随費用及び資産除去債務に対応する除去費用を加算し、受け取ったリース・インセンティブを控除して算定することとしている(本適用指針第18項参照)。
ここで、企業会計基準適用指針第16号では、リース債務の評価の側面だけでなくリース資産の評価の側面も合わせて考慮し、リース資産の計上額についてリース料総額の割引現在価値と貸手の購入価額又は借手の見積現金購入価額のいずれか低い額によるとしていた。
一方、本適用指針では、ファイナンス・リースに限らず、借手のすべてのリースについて資産及び負債を計上することを求めることとしたため、使用権資産の計上額については、企業会計基準適用指針第16号における貸手の購入価額又は借手の見積現金購入価額と比較を行う方法を踏襲せず、借手のリース料の現在価値を基礎として算定するIFRS第16号と整合的な定めとしている。
(短期リースに関する簡便的な取扱い)
- BC37. 短期リースについては、重要性が乏しい場合が多いため、リース開始日に使用権資産及びリース負債を計上せず、借手のリース料を借手のリース期間にわたって原則として定額法により費用として計上することができることとした(第20項参照)。
- BC38. 短期リースについては、企業会計基準適用指針第16号及びIFRS第16号のいずれにおいても簡便的な取扱いが認められていることから、本適用指針においても、簡便的な取扱いを認めることとした。短期リースに関する簡便的な取扱いは、対応する原資産を自ら所有していたと仮定した場合に貸借対照表において表示するであろう科目ごと又は性質及び企業の営業における用途が類似する原資産のグループごとに適用するか否かを選択できることとしている(本適用指針第20項参照)。
(少額リースに関する簡便的な取扱い)
- BC39. 通常の固定資産の取得でも購入時に費用処理される少額なものについては、重要性が乏しい場合が多いため、短期リースと同様に、リース開始日に使用権資産及びリース負債を計上せず、借手のリース料を借手のリース期間にわたって原則として定額法により費用として計上することができることとした(第22項(1)参照)。このときの基準額を企業が減価償却資産の処理について採用している基準額より利息相当額だけ高めに設定することができるのは、借手のリース料には原資産の取得価額のほかに利息相当額が含まれているためである(第22項(1)ただし書き参照)。
- BC40. このほか、事務機器等の比較的少額な資産がリースの対象となる場合があることを踏まえ、一定の金額以下のリースについては、リース開始日に使用権資産及びリース負債を計上せず、借手のリース料を借手のリース期間にわたって原則として定額法により費用として計上することができることとした(第22項(2)参照)。
- BC41. 企業会計基準適用指針第16号では、企業の事業内容に照らして重要性の乏しいリースで、リース契約1件当たりのリース料総額が300万円以下のリースについて、簡便的な取扱いを認めていた。一方、IFRS第16号の結論の根拠では、IFRS第16号の開発当時の2015年において新品時に5千米ドル以下程度の価値の原資産を念頭に置いて、リース1件ごとに簡便的な取扱いを選択適用することができるとの考え方が示されている。企業会計基準適用指針第16号における300万円以下のリースに関する簡便的な取扱いと、IFRS第16号における簡便的な取扱いを比較した場合、適用単位の定め方、数値及び条件が異なるため、どちらの取扱いが広範であるかは一概にはいえないと考えられる。
企業会計基準適用指針第16号における300万円以下のリースに関する簡便的な取扱いを適用している企業においては、これを継続することを認めることにより、追加的な負担を減らすことができると考えられる。一方、IFRS任意適用企業においては、IFRS第16号における簡便的な取扱いを認めることにより、「IFRS第16号の定めを個別財務諸表に用いても、基本的に修正が不要となる」ことを目指す方針(会計基準BC13項)と整合することになると考えられる。このように、これらの簡便的な取扱いについては優劣がつけがたいと考えられる。 - BC42. 前項を踏まえ、企業の事業内容に照らして重要性の乏しいリースで、かつ、リース契約1件当たりの金額に重要性が乏しいリースに関する簡便的な取扱い(第22項(2)①参照)と新品時の原資産の価値が少額であるリースに関する簡便的な取扱い(第22項(2)②参照)のいずれかを選択適用することを認めることとした。
- BC43. 本適用指針第22項(2)①のリース契約1件当たりの金額に重要性が乏しいリースは、企業会計基準適用指針第16号において定められていたリース契約1件当たりのリース料総額が300万円以下であるかどうかにより判定する方法を踏襲することを目的として取り入れたものである。この適用にあたっては、リース契約1件ごとにこの方法を適用するか否かを選択することは想定しておらず、リース契約1件当たりの金額を判定する際に複数の契約を結合する(会計基準BC24項)ことまでは想定していない。
- BC44. 少額リースに関する簡便的な取扱いは使用権資産及びリース負債の計上に関わるため、第22項(2)①のリース契約1件当たりの金額に重要性が乏しいリースに該当するかどうかの判定において、その算定の基礎となる対象期間は、原則として、借手のリース期間とすることとしている(第23項参照)。
公開草案に寄せられたコメントの中には、少額リースに関する簡便的な取扱いの適用にあたり延長オプション及び解約オプションの行使可能性を判断することの実務上の負担が大きいとの意見があった。この点、リース契約1件当たりの金額の算定の基礎となる対象期間を借手のリース期間に代えて契約期間とする取扱いを認めることにより延長オプション及び解約オプションの対象期間の見積りに関する適用上のコストが軽減されること、また、当該取扱いを認めたとしても企業の事業内容に照らして重要であるリースについては使用権資産及びリース負債が計上されることを踏まえ、当該取扱いを認めることとした(第23項ただし書き参照)。 - BC45. 第22項(2)②の新品時の原資産の価値が少額であるリースは、IFRS第16号と同様の方法を認めることを目的として取り入れたものである。当該方法は、IFRS第16号の結論の根拠で示されているIFRS第16号の開発当時の2015年において新品時に5千米ドル以下程度の価値の原資産のリースを念頭においている。
(指数又はレートに応じて決まる借手の変動リース料)
- BC46. 借手は、指数又はレートに応じて決まる借手の変動リース料について、リース開始日には、借手のリース期間にわたりリース開始日現在の指数又はレートに基づきリース料を算定する(第25項参照)。IFRS第16号においては、リース負債を計上するにあたり、指数又はレートに応じて決まる借手の変動リース料について参照する指数又はレートの将来の変動を見積るべきであるとする考え方が示されている。しかしながら、参照する指数又はレートの将来の変動を見積るためには、企業によっては容易に利用可能ではない可能性があるマクロ経済情報が必要となる場合があり、見積りに必要な情報を入手するためのコストが正当化されない可能性があるとして、参照する指数又はレートがリース開始日以降にリース期間にわたり変動しないとみなしてリース負債を測定する定めが置かれたとされている。本適用指針においても、指数又はレートの将来の変動を見積ることにより生じるコスト及び国際的な比較可能性を考慮し、IFRS第16号と整合的な定めを置くこととした。
- BC47. 審議の過程では、指数又はレートに応じて決まる借手の変動リース料は、原資産の経年劣化等により、リース開始日現在の指数又はレートに基づくリース料と比して、リース開始日以降の指数又はレートの変動を反映したリース料の方が小さくなることがあり、このような場合にも参照する指数又はレートがリース開始日以降借手のリース期間にわたり変動しないとみなしてリース料を算定することで、結果としてリース負債が過大となるとの意見が聞かれた。
- BC48. この点、指数又はレートに応じて決まる借手の変動リース料が参照する指数又はレートについては、必ずしも借手である企業の活動に左右されるものではなく、比較的客観的なものであることから、参照する指数又はレートの将来の変動を見積るための十分な情報が入手できる場合や、参照する指数又はレートの将来の変動を見積るためのマクロ経済情報が容易に利用可能である場合も存在すると考えられる。
- BC49. BC47項及び前項に関する点並びに財務諸表利用者に対する有用な情報を提供する観点から、指数又はレートに応じて決まる借手の変動リース料に関する例外的な取扱いはIFRS第16号に置かれていないものの、本適用指針においては、合理的な根拠をもって指数又はレートの将来の変動を見積ることができることを条件に、リース料が参照する指数又はレートの将来の変動を見積り、当該見積られた指数又はレートに基づきリース料及びリース負債を算定することを、リースごとにリース開始日に選択することができるとする例外的な取扱いを置くこととした(第26項参照)。
当該例外的な取扱いを選択する場合、決算日ごとに参照する指数又はレートの将来の変動を見積り、当該見積られた指数又はレートに基づきリース料及びリース負債を見直すこととした上で(第49項参照)、当該取扱いを選択した旨及びその内容を「会計方針に関する情報」として注記し(第97項(2)参照)、また、当該取扱いを選択したリースに係るリース負債の金額の開示を求めることとした(第99項(2)参照)。
(借地権の設定に係る権利金等)
- BC50. 我が国においては、土地の賃貸借契約の締結時に借地権の設定対価として権利金の授受が行われることがあり、また、当該権利金の名目で授受される金銭の性質はさまざまであるといわれている。本適用指針においては、次の(1)及び(2)を想定して会計処理を定めることとした。
- (1) 借手が貸手と借地契約を締結するにあたり、貸手に対して支払う借地権の設定対価
- (2) 借手が貸手と借地契約を締結するにあたり、当該貸手が借手以外の第三者と借地契約を締結していた場合に当該借手が当該第三者から借地権の譲渡を受けるときの当該第三者に対する当該借地権の譲渡対価
- これらの借地権の設定に係る権利金等の授受が行われる場合、借地権を除く底地に対して毎月支払う賃料が設定され、借地権の価格の土地の更地価格に対する割合が高い場合には当該賃料は低くなるという一定の関係性があるといわれている。
- BC51. 借地権は土地を使用する権利に他ならず、土地の賃貸借においては借手が土地を賃借しながら借地権のみを第三者に譲渡することはできないと考えられること及び通常当該権利金等の支払は土地の賃貸借契約と同時又はほぼ同時に行われることを踏まえ、本適用指針では、借地権の設定と土地の賃貸借とを一体として取り扱い、借地権の設定に係る権利金等の対価は、使用権資産の取得価額に含めることとした。
旧借地権の設定に係る権利金等又は普通借地権に係る権利金等に係る取扱い
- BC52. ここで、借手の権利が強く保護されている旧借地権又は普通借地権の設定対価については、次の2つの見方がある。
- (1) 借地権の設定対価は、減価しない土地の一部取得に準ずるとの見方
- (2) 借地契約の期間が長期にわたるとしても無期限にはならないため、借地権の設定対価も賃借期間に要するコストであるとの見方
- BC53. 旧借地権又は普通借地権は法定更新制度や正当事由制度により借手の権利が強く保護されてはいるものの、契約で期間を定めている場合には契約期間(契約で期間を定めていない場合には法定存続期間)がある上で契約の更新の権利があるものであると考えられるため、通常、借地権は無期限ではないと考えられる。
本適用指針では、借地権は土地を使用する権利に他ならず土地の賃貸借においては借手が土地を賃借しながら借地権のみを第三者に譲渡することはできないという一定の関係性(BC51項参照)があるもとで前項(2)の見方に基づき、旧借地権の設定に係る権利金等又は普通借地権の設定に係る権利金等と当該賃料とを一体で使用権資産の取得価額に含め、借手のリース期間を耐用年数とし、減価償却を行うこととした(第27項第1段落参照)。 - BC54. 審議の過程では、旧借地権の設定に係る権利金等又は普通借地権の設定に係る権利金等と賃料とを一体で使用権資産の取得価額に含め減価償却を行う場合、借地権の設定に係る権利金等について残存価額を考慮すべきとの意見が聞かれた。この点、借手のリース期間の終了時に残存価額があると認められる場合には借手のリース期間の終了時における残存価額を見積った上で残存価額を控除した金額により減価償却を行うことが考えられる。
しかしながら、次の理由により、借地権の設定に係る権利金等の残存価額を設定することは困難な場合も想定されると考えられる。 - (1) 借地権の設定対価は貸手から基本的に返還されない中で、かつ、次の借手との間で相対取引により譲渡対価が決まると考えられる。
- (2) 借地権の取引慣行の成熟の程度によっては売却価額の見積りを行うことが難しい場合があると考えられる。
- また、仮に残存価額を設定する場合、当該残存価額を毎期見直すことになると考えられるが、予想される売却価額の見積りを毎期行うことには相応のコストを要するものと考えられる。
これらの状況により、借地権の承継が行われる可能性を見込むことや借手のリース期間の終了時に予想される売却価額を見積ることができない場合には、残存価額をゼロとすることも考えられる。 - BC55. 一方、審議の過程では、本適用指針BC52項(1)の見方、すなわち、我が国の取引慣行においては、旧借地権の設定に係る権利金等又は普通借地権の設定に係る権利金等の支払は、減価しない土地の一部取得に準ずるとの見方を支持する意見も聞かれた。この見方は、旧借地権又は普通借地権に関して借手の権利が強く保護されており契約の更新が可能であることを踏まえ、減価しない土地の一部取得に準ずると捉えられるものと考えられる。
我が国における借地権の取引慣行を踏まえ、本適用指針の適用前に旧借地権の設定に係る権利金等及び普通借地権の設定に係る権利金等を償却していなかった場合、本適用指針の適用初年度の期首に計上されている当該権利金等及び本適用指針の適用後に新たに計上される権利金等の両方について減価償却を行わないものとして取り扱うことを認めることとした。また、本適用指針の適用初年度の期首に旧借地権の設定に係る権利金等及び普通借地権の設定に係る権利金等が計上されていない場合、本適用指針の適用後に新たに計上される権利金等について減価償却を行わないものとして取り扱うことを認めることとした(本適用指針第27項ただし書き参照)。
なお、本適用指針BC51項に記載した理由により当該権利金等を別個のものとして取り扱うことは適切ではないと考えられるため、当該権利金等について減価償却を行わない場合においても、当該権利金等は会計基準第49項に従って表示することになる。
旧借地権の設定に係る権利金等又は普通借地権に係る権利金等に係る経過措置
- BC56. 本適用指針が公表される前に締結した土地の賃貸借契約に関して支払った旧借地権の設定に係る権利金等又は普通借地権の設定に係る権利金等については、これまで我が国の会計基準において当該権利金等に関する会計処理が明らかではなく、本適用指針BC52項の2つの見方がある中で、仮に本適用指針における原則的な取扱い(本適用指針第27項第1段落参照)を一律に適用することを求める場合、当初の契約の意図が会計処理に反映されなくなる可能性がある。また、前項に記載のとおり、旧借地権の設定に係る権利金等及び普通借地権の設定に係る権利金等について減価償却を行わないものとして取り扱うことを認める中で、本適用指針の適用後に生じる権利金等に限り減価償却を行うとしても財務報告の改善が図られる一定の効果があると考えられる。
これらを考慮し、本適用指針第27項第1段落に定める原則的な取扱いを適用する借手が会計基準の適用初年度の期首に計上されている旧借地権の設定に係る権利金等又は普通借地権の設定に係る権利金等を償却していなかった場合、当該権利金等のみ償却しないことができるとする経過措置を定めることとした(本適用指針第127項参照)。
定期借地権の設定に係る権利金等の取扱い
- BC57. 定期借地権が設定される土地の賃貸借契約は、賃借期間の満了時に当該賃貸借契約が終了するため、定期借地権の設定に係る権利金等は、賃貸借契約の期間に係るコストと考えられる。したがって、当該権利金等は、使用権資産の取得価額に含めて借手のリース期間を耐用年数とし、減価償却を行うこととした(第27項第1段落参照)。
(資産除去債務)
- BC58. 資産除去債務会計基準では、「資産除去債務に対応する除去費用は、資産除去債務を負債として計上した時に、当該負債の計上額と同額を、関連する有形固定資産の帳簿価額に加える。」(資産除去債務会計基準第7項)と定めている。また、資産除去債務会計基準では、「有形固定資産には、財務諸表等規則において有形固定資産に区分される資産のほか、それに準じる有形の資産も含む。」(資産除去債務会計基準第23項)としている。したがって、関連する有形固定資産が使用権資産の場合、当該負債の計上額と同額を使用権資産の帳簿価額に加えることとした(本適用指針第28項参照)。
(建設協力金等の差入預託保証金)
- BC59. 移管指針第9号「金融商品会計に関する実務指針」(以下「金融商品実務指針」という。)では、建設協力金等及び敷金については、これらが金融商品に該当する(金融商品実務指針第10項)ことから、関連する定めは金融商品実務指針に記載されていた。しかし、これらの項目は、主にリースの締結により生じる項目であるため、これらの具体的な会計処理の定めについては、金融商品実務指針から削除し、本適用指針において定めることとした(本適用指針第29項から第36項参照)。
建設協力金等
- BC60. 建設協力金は、建物建設時に消費寄託する建物等の賃貸に係る預託保証金であり、契約に定めた期日に預り企業である貸手が現金を返還し差入企業である借手がこれを受け取る契約であるため、金融商品である。建設協力金の典型例としては、当初無利息であり10年経過すると低利の金利が付き、その後10年間にわたり現金で返済されるものが挙げられる。
- BC61. 金融商品実務指針においては、将来返還される建設協力金等の差入預託保証金(敷金を除く。)について、「建設協力金は、建物等の賃貸に係る預託保証金であり、金利が付かない期間又は低金利の期間、賃借人にとって機会金利を賃料として計上する方法が考えられる。また、建設協力金等が、流動化の目的で売却されたときに現在価値で計上していない矛盾が売却損という形で顕在化する。これに対し、建設協力金等は、売却しなければ寄託債権という金銭債権であり、取得価額で計上され時価評価されないから、当初認識は取得価額で十分との考え方もあるが、売却した場合としない場合で整合性のある処理を定めるべきと考えた。当初認識時の時価は、返済期日までのキャッシュ・フローを割り引いた現在価値が建設協力金等の時価である。」として、次の会計処理が定められていた。
- (1) 「支払額と当該時価との差額は、長期前払家賃として計上し、契約期間にわたって各期の純損益に合理的に配分する」
- (2) 「当初時価と返済金額との差額を契約期間にわたって配分し受取利息として計上する」
- また、「差入預託保証金のうち、将来返還されない額は、賃借予定期間にわたり定額法により償却する」こととされていた。
- BC62. 本適用指針においては、会計基準における借手のリース料の定義(借手が借手のリース期間中に原資産を使用する権利に関して行う貸手に対する支払)を踏まえ、金融商品実務指針において長期前払家賃として取り扱われていたものについては、利息の受取を低額とすることによる賃料の支払の性質を有すると考えられるため、リース料として使用権資産の取得価額に含めることとした(本適用指針第29項参照)。
また、差入預託保証金(敷金を除く。)のうち、預り企業である貸手から差入企業である借手に将来返還されないことが契約上定められている金額は、借手が賃貸借契約に基づいて原資産を使用する権利に関する支払である点で、毎月支払われるリース料と相違はないと考えられるため、当該金額を使用権資産の取得価額に含めることとした(本適用指針第32項参照)。 - BC63. 建設協力金に関して、差入企業である借手が対象となった土地建物に抵当権を設定している場合、現在価値に割り引くための利子率は、原則としてリスク・フリーの利子率を使用する(第30項参照)。当該利子率としては、例えば、契約期間と同一の期間の国債の利回りが考えられる。
敷 金
- BC64. 敷金は、賃料及び修繕の担保的性格を有し償還期限は賃貸借契約満了時であり、法的には契約期間満了時に返還請求権が発生すると解されており、通常無金利である。したがって、差入敷金については、建設協力金と異なり取得原価で計上することとしていた金融商品実務指針の取扱いを踏襲している(本適用指針第33項参照)。
ただし、本適用指針においては、IFRS任意適用企業がIFRS第16号の定めを個別財務諸表に用いても、基本的に修正が不要となる会計基準の開発を行う方針(会計基準BC13項)を考慮し、差入敷金について建設協力金と同様の会計処理も認めることとした(本適用指針第33項ただし書き参照)。 - BC65. 本適用指針においては、差入敷金のうち、預り企業である貸手から差入企業である借手に将来返還されないことが契約上定められている金額について、リースの借手が賃貸借契約に基づいて原資産を使用する権利に関する支払である点で、毎月支払われるリース料と相違はないと考えられるため、当該金額を使用権資産の取得価額に含めることとした(第34項参照)。
(現在価値の算定に用いる割引率)
- BC66. 借手がリース負債の現在価値の算定に用いる割引率は、貸手の計算利子率を借手が知り得るときにはこれによるが、知り得ないときには借手が割引率を見積ることになる。本適用指針では、後者の場合には借手の追加借入に適用されると合理的に見積られる利率によるとしており(第37項参照)、これには例えば、次のような利率を含む。
- (1) 借手のリース期間と同一の期間におけるスワップレートに借手の信用スプレッドを加味した利率
- (2) 新規長期借入金等の利率
- ① 契約時点の利率
- ② 契約が行われた月の月初又は月末の利率
- ③ 契約が行われた月の平均利率
- ④ 契約が行われた半期の平均利率
- なお、(2)の場合には、借手のリース期間と同一の期間の借入れを行う場合に適用される利率を用いる。
(3)利息相当額の各期への配分
- BC67. リース開始日における借手のリース料とリース負債の計上額との差額は、利息相当額として取り扱い、当該利息相当額の各期への配分は利息法による(第38項及び第39項参照)。これは、借手については、すべてのリースについて使用権資産に係る減価償却費及びリース負債に係る利息相当額を計上するIFRS第16号と同様の単一の会計処理モデルを採用しているためである。
ただし、実務上の負担に配慮し、使用権資産総額に重要性が乏しいと認められる場合には、借手のリース料から利息相当額の合理的な見積額を控除しない方法や利息相当額の総額を借手のリース期間中の各期に定額法により配分する方法を認めている(第40項から第42項参照)。
(使用権資産総額に重要性が乏しいと認められる場合の取扱い)
- BC68. 企業全体の使用権資産の総額に重要性が見られるケースがある一方、企業全体の使用権資産の総額に重要性が乏しいケースもあると想定される。
企業全体の使用権資産総額に重要性が乏しいかどうかの判断基準は、未経過の借手のリース料の期末残高が当該期末残高、有形固定資産及び無形固定資産の期末残高の合計額に占める割合が10パーセント未満である場合としている(第41項参照)。ここで、未経過の借手のリース料を使用しているのは、割引計算により使用権資産を求める煩雑さを避けるためである。無形固定資産を判断基準に加えているのは、無形固定資産のリースへの会計基準の適用は任意としているものの、無形固定資産のリースを会計基準の範囲に含めているためである。
また、使用権資産総額に重要性が乏しいかどうかを判断する割合については、次のことを考慮し算定することが考えられる。 - (1) 本適用指針第20項又は第22項によりリース開始日に使用権資産及びリース負債を計上せず借手のリース料を借手のリース期間にわたって原則として定額法により費用として計上することとしたものや、本適用指針第39項に従い利息相当額を利息法により各期に配分している使用権資産に係るものがある場合、これらについては未経過の借手のリース料の期末残高から除く。
- (2) 有形固定資産及び無形固定資産の期末残高について未経過の借手のリース料の期末残高と二重になる場合、未経過の借手のリース料、有形固定資産及び無形固定資産の期末残高の合計額の算定上、二重にならないように調整を行う。
- BC69. これらの判断基準を満たした企業については、使用権資産及びリース負債を計上した上で、煩雑な計算を避ける意味で、「借手のリース料から利息相当額の合理的な見積額を控除しない方法」又は「利息相当額の総額を借手のリース期間中の各期に定額法により配分する方法」を採用することができることとしている(本適用指針第40項参照)。IFRS第16号ではこれらの簡便的な取扱いは定められていないが、実務の追加的な負担を軽減することを目的として企業会計基準適用指針第16号に定められていたものであり、実務において浸透していることから、本適用指針においても、これらの簡便的な取扱いを踏襲することとした。
- BC70. 前項の簡便的な取扱いは、企業会計基準適用指針第16号では所有権移転外ファイナンス・リース取引のみについて認めていたが、本適用指針においては、これらの対象範囲は、これまでオペレーティング・リース取引に分類されていたリース及びこれまで所有権移転ファイナンス・リース取引に分類されていたリースにまで拡大することになる。審議の過程では、不動産に係るリースとその他のリースを合わせて重要性の判断を行う場合、これまで簡便的な取扱いが認められていたその他のリースについて、これらの簡便的な取扱いが認められなくなる懸念があるため、例えば、不動産に係るリースとその他のリースを分けて重要性の判断を行う取扱いを設けてはどうかとの意見が聞かれた。
この点、企業全体に対する影響に基づいて簡便的な取扱いを適用することの可否を判断すべきであることや借手の費用配分に単一の会計処理モデルを提案していることとの整合性から、リースの種類によって重要性の判断基準を分けないこととした。
(4)使用権資産の償却
- BC71. 使用権資産の償却については、契約上の諸条件に照らして原資産の所有権が借手に移転すると認められるリースに該当するか否かによって、異なる定めを置いている(会計基準第37項及び第38項)。
この点、契約上の諸条件に照らして原資産の所有権が借手に移転すると認められるリースに該当するか否かの定めについては、基本的に企業会計基準適用指針第16号における所有権移転ファイナンス・リース取引に該当するか否かの定めを踏襲している(本適用指針第43項参照)。
ただし、購入オプションについて、企業会計基準適用指針第16号では、リース契約上、借手に対して割安購入選択権が与えられており、その行使が確実に予想される場合としていた。この点、割安かどうかのみではなく他の要因も考慮して購入オプションの行使が合理的に確実な場合とする方が、借手への所有権移転の可能性を反映して減価償却費の算定が可能となるため、本適用指針では購入オプションの行使が合理的に確実である場合に変更している(本適用指針第43項(2)参照)。
また、使用権資産の償却にあたり、原資産が特別仕様であって、その使用可能期間を通じて借手によってのみ使用されるか否かを考慮することについては、IFRS第16号では設けられていない定めであるが、原資産が特別仕様であり使用可能期間を通じて借手によってのみ使用されることが明らかであるリースは、原資産を自ら所有する場合と同様の期間にわたって使用されるものであるため、企業会計基準適用指針第16号における定めを踏襲し、原資産を自ら所有していたと仮定した場合に適用する減価償却方法と同一の方法とすることとした(本適用指針第43項(3)参照)。
(5)リースの契約条件の変更
- BC72. 企業会計基準適用指針第16号では、リースの契約条件の変更に関する取扱いを定めていなかったが、本適用指針では、当該取扱いを明確にするために、IFRS第16号におけるリースの契約条件の変更に関する取扱いをIFRS第16号における主要な定めとして本適用指針に取り入れることとしている(本適用指針第44項及び第45項参照)。
- BC73. リースの契約条件の変更が第44項(1)及び(2)の要件をいずれも満たす場合、実質的に変更前のリースとは独立したリースが生じるものと考えられる。この場合、変更前のリース開始日の会計処理と同様に、借手は、当該リースの契約条件の変更を独立したリースとして取り扱い、当該独立したリースのリース開始日に、リースの契約条件の変更の内容に基づくリース負債を計上し、当該リース負債にリース開始日までに支払った借手のリース料、付随費用等を加減した額により使用権資産を計上する(第44項参照)。
ここで、契約期間のみが延長されるリースの契約条件の変更は、原資産の追加に該当しないため、第44項(1)の要件を満たさない。
また、第44項(2)の要件における「特定の契約の状況に基づく適切な調整」は、例えば、類似の資産を顧客にリースする際に生じる販売費を貸手が負担する必要がない場合に借手に値引きを行うとき、独立価格を値引額について調整することが考えられる。 - BC74. 第44項に従い独立したリースとして会計処理されないリースの契約条件の変更のうち、リースの範囲が縮小されるものについては、リースの契約条件の変更前のリースの一部又は全部を解約するものと考えられる。したがって、借手は、リースの契約条件の変更の発効日において、変更後の条件を反映してリース負債を修正し、また、リースの一部又は全部の解約を反映するように使用権資産の帳簿価額を減額し、使用権資産の減少額とリース負債の修正額とに差額が生じた場合、当該差額を損益に計上する(第45項(1)及び(2)①参照)。このようなリースの契約条件の変更には、例えば、不動産の賃貸借契約においてリースの対象となる面積が縮小される場合や契約期間が短縮される場合等が含まれると考えられる。
- BC75. 第44項に従い独立したリースとして会計処理されないリースの契約条件の変更のうち、リースの範囲が縮小されるもの以外のものについては、変更前のリースは解約されておらず、借手は引き続き、リースの契約条件の変更前のリースにおいて特定されていた原資産を使用する権利を有するものと考えられる。したがって、借手は、リースの契約条件の変更の発効日において、変更後の条件を反映してリース負債を修正し、リース負債の修正額に対応する金額を使用権資産に加減することにより、変更前のリースを修正する会計処理を行う(第45項(1)及び(2)②参照)。このようなリースの契約条件の変更には、例えば、リース料の単価のみが変更される場合や契約期間が延長される場合等が含まれると考えられる。
- BC76. リースの契約条件の変更に関連して、IFRS第16号は、状況ごとに使用する割引率(変更前の割引率又は変更後の割引率)を定めている。この点、本適用指針においても、IFRS第16号と同様に使用する割引率を定めることも考えられたが、次の理由から、定めないこととした。
- (1) IFRS第16号の定めは、使用する割引率について状況ごとに詳細な会計処理を定めるものである。主要な定めの内容のみを取り入れることにより、簡素で利便性が高い会計基準を開発するという方針(会計基準BC13項)を考慮した場合、IFRS第16号の割引率に関する定めを本適用指針に取り入れないことが、当該開発方針と整合する。
- (2) 本適用指針では、使用権資産総額に重要性が乏しいと認められる場合に借手のリース料から利息相当額の合理的な見積額を控除しない方法(本適用指針第40項(1)参照)も認めており、IFRS第16号よりも幅広い割引の取扱いを認めていることと整合する。
(6)リースの契約条件の変更を伴わないリース負債の見直し
- BC77. 企業会計基準適用指針第16号では、リースの契約条件の変更を伴わないリース負債の見直しに相当する取扱いを定めていなかったが、本適用指針では、当該取扱いを明確にするために、IFRS第16号におけるリース負債の見直しに関する取扱いをIFRS第16号における主要な定めとして本適用指針に取り入れることとしている(本適用指針第46項から第49項参照)。
- BC78. 借手が原資産を購入するオプションを行使することが合理的に確実であるかどうかの見直し(本適用指針第47項(1)参照)についても、延長オプションを行使すること又は解約オプションを行使しないことが合理的に確実であるかどうかの見直しと同様、会計基準第41項(1)及び(2)に示している重要な事象及び重要な状況が生じたときにリース負債の計上額の見直しを行うことになると考えられる。
- BC79. リースの契約条件の変更を伴わないリース負債の見直しに関連して、IFRS第16号は、状況ごとに使用する割引率(変更前の割引率又は変更後の割引率)を定めている。この点、本適用指針においても、IFRS第16号と同様に使用する割引率を定めることも考えられたが、リースの契約条件の変更と同様の理由(BC76項参照)から、定めないこととした。
(7)短期リースに係る借手のリース期間の変更
- BC80. 本適用指針では、短期リースに関する簡便的な取扱いを適用していたリースの借手のリース期間に変更がある場合に関する定めを置いている(第50項参照)。このような場合には、例えば、当初の契約条件に含まれている延長オプションの対象期間を借手のリース期間に含めないことを決定していた場合に、当該延長オプションを行使したとき等が含まれる。
(8)借手のリース期間に含まれない再リース
- BC81. 我が国では、再リース期間は1年以内とするのが通常であり、再リース料も少額であるのが一般的であることから、企業会計基準適用指針第16号では、再リース期間をリース資産の耐用年数に含めない場合の再リース料は、原則として、発生時の費用として処理する取扱いを定めていた。当該取扱いは、IFRS第16号では設けられていない取扱いである。しかしながら、再リースは我が国固有の商慣習であり、当該取扱いを引き続き設けることにより、国際的な比較可能性を大きく損なわせずに、財務諸表作成者の追加的な負担を減らすことができると考えられる。
したがって、借手は、リース開始日に再リース期間を借手のリース期間に含めていない場合又は直近のリースの契約条件の変更の発効日に再リース期間を借手のリース期間に含めていない場合、会計基準第41項及び第42項にかかわらず、再リースを当初のリースとは独立したリースとして会計処理を行うことができることとしている(本適用指針第52項参照)。なお、この取扱いを採用しない場合、借手においては、再リース期間は延長オプションの対象期間に含まれると考えられる。
我が国の再リースの一般的な特徴は、再リースに関する条項が当初の契約において明示されており、経済的耐用年数を考慮した解約不能期間経過後において、当初の月額リース料程度の年間リース料により行われる1年間のリースであることが挙げられる(会計基準BC27項)。したがって、再リースに該当するかどうかは、通常は明確であると考えられるが、判断を要する場合もあると考えられる。当該再リースの特徴は貸手の再リースにおいても同様である。
(9)セール・アンド・リースバック取引
- BC82. 資産の譲渡とリースバックは形式上別個の取引であるが、これらの取引が組み合わされることで、次のような論点が生じる可能性があると考えられる。
- (1) リースバックにより、売手である借手が、買手である貸手に譲渡された資産から生じる経済的利益を引き続き享受しているにもかかわらず、当該資産を譲渡した時点で譲渡に係る損益が認識される。
- (2) セール・アンド・リースバック取引においては、資産の譲渡とリースバックが、パッケージとして交渉されることが多く、資産の譲渡対価とリースバックにおける借手のリース料との間に相互依存性があると考えられる。資産の譲渡対価及び関連するリースバックにおける借手のリース料が、それぞれ時価及び市場のレートでのリース料よりも高い(低い)金額で取引されることにより、一体としての利益の総額が同じであっても、資産の譲渡に係る損益が過大(過小)に計上される可能性がある。
- BC83. 前項(1)の論点への対応としてセール・アンド・リースバック取引における資産の譲渡の取扱いを、前項(2)の論点への対応として資産の譲渡損益を適切に計上するための取扱いをそれぞれ定めることとした(第53項から第58項参照)。
(セール・アンド・リースバック取引に該当するかどうかの判断)
- BC84. 我が国では、建設工事請負契約と一括借上契約が同時に締結される取引などにおいて、収益が一定の期間にわたり認識される場合、セール・アンド・リースバック取引の定めが適用されるか否かについて論点になり得るとの意見が聞かれた。
この点、IFRS第16号においては、セール・アンド・リースバック取引の定めが適用される範囲、特に収益が一定の期間にわたり認識される場合であってもセール・アンド・リースバック取引の定めが適用されるのか否かについて明確にされていない。我が国の実務において当該論点は重要な論点であり、多様な解釈がなされることを懸念する関係者からの意見を踏まえ、本適用指針における取扱いについて検討を行った。 - BC85. 本適用指針においてセール・アンド・リースバック取引は、IFRS第16号と同様に売手である借手が資産を買手である貸手に譲渡し、売手である借手が買手である貸手から当該資産をリースする取引と定義している(第4項(11)参照)。この定義においては、譲渡された資産とリースされた資産が同一であることが重要な要素となっている。
- BC86. セール・アンド・リースバック取引に該当するか否かを検討する対象となる資産の譲渡とリースバックにおいて、売手である借手による資産の譲渡が収益認識会計基準などの他の会計基準等により一時点で損益を認識する売却に該当すると判断される場合、売手である借手は、当該資産を買手である貸手に譲渡し、譲渡した当該資産をリースしているものと考えられる。この場合、譲渡された資産とリースされた資産は同一であると考えられることから、これらの取引についてはセール・アンド・リースバック取引に該当するものとして会計処理を定めることとした(本適用指針第55項及び第56項参照)。
- BC87. 一方、セール・アンド・リースバック取引に該当するか否かを検討する対象となる資産の譲渡とリースバックにおいて、売手である借手による資産の譲渡が次のいずれかである取引については、資産の譲渡により売手である借手から買手である貸手に支配が移転されるのは仕掛中の資産であり、移転された部分だけでは資産の使用から生じる経済的利益を享受できる状態にない。これに対し、リースバックにより売手である借手が支配を獲得する使用権資産は、完成した資産に関するものであるため、譲渡された資産とリースされた資産は同一ではないと考えられる。
- (1) 収益認識会計基準に従い、一定の期間にわたり充足される履行義務(収益認識会計基準第36項)の充足によって行われる場合
- (2) 収益認識適用指針第95項を適用し、工事契約における収益を完全に履行義務を充足した時点で認識することを選択する場合
- したがって、これらの取引はセール・アンド・リースバック取引として取り扱わないこととした(本適用指針第53項参照)。
- BC88. 前項の考え方は、資産の譲渡とリースバックの関係をIFRS第15号と同等である収益認識会計基準の考え方により整理したものであり、IFRSにおいて認められる解釈の1つと考えられるため、国際的な比較可能性を大きく損なわせるものではないと考えられる。ただし、本適用指針におけるこのセール・アンド・リースバック取引の範囲の明確化は、これがIFRS第16号における唯一の解釈であると示すことを意図するものではない。
- BC89. 売手である借手が原資産を移転する前に原資産に対する支配を獲得しない場合、当該資産の移転と関連するリースバックについては、セール・アンド・リースバック取引に該当しない(第54項参照)。例えば、取引の都合上、借手が貸手を通さずに資産を第三者から購入して当該資産を貸手に譲渡し当該貸手から原資産としてリースするような場合、売手である借手が当該原資産に対する法的所有権を獲得したとしても、資産が貸手に移転される前に借手が当該原資産に対する支配を獲得しないときには、当該取引はセール・アンド・リースバック取引ではないと考えられる。
(セール・アンド・リースバック取引に該当する場合の会計処理)
- BC90. セール・アンド・リースバック取引は、資産の譲渡とリースバックを組み合わせた取引である。資産の譲渡に係る損益を認識するためには、収益認識会計基準などの他の会計基準等に従い、売手である借手による資産の譲渡が売却に該当するかどうかを判断する。ここで、顧客との契約から生じる収益は、収益認識会計基準の適用範囲に含まれるが(収益認識会計基準第3項)、顧客との契約から生じるものではない場合の固定資産の譲渡は収益認識会計基準の適用範囲に含まれない(収益認識会計基準第108項)。収益認識会計基準に含まれない固定資産の譲渡については一般的な実現主義の原則(企業会計原則 第二 損益計算書原則 三 B)が適用されると解されるが、特定の不動産取引については、譲渡に係る損益の認識時期等の具体的な判断について、次の指針等が定められている。
- (1) 日本公認会計士協会 監査委員会報告第27号「関係会社間の取引に係る土地・設備等の売却益の計上についての監査上の取扱い」
- (2) 日本公認会計士協会 審理室情報No.6「土地の信託に係る監査上の留意点について」
- (3) 移管指針第10号「特別目的会社を活用した不動産の流動化に係る譲渡人の会計処理に関する実務指針」及び移管指針第13号「特別目的会社を活用した不動産の流動化に係る譲渡人の会計処理に関する実務指針についてのQ&A」
- (4) 日本公認会計士協会 監査・保証実務委員会実務指針第90号「特別目的会社を利用した取引に関する監査上の留意点についてのQ&A」
- BC91. この点、IFRS第16号においては、資産の譲渡が売却に該当するのは、IFRS第15号における要求事項を満たす場合のみであるとされている。また、IFRS第15号により収益が認識されると判断される場合、買手である貸手に移転された権利部分については権利の譲渡に係る利得又は損失を譲渡時に認識し、リースバックにより売手である借手が継続して保持する権利部分については権利の譲渡に係る利得又は損失を繰り延べることとされている。
- BC92. 一方、売却に該当するか否かの判断について、FASB Accounting Standards Codification(米国財務会計基準審議会(FASB)による会計基準のコード化体系)のTopic 842「リース」(以下「Topic 842」という。)においてはリースバックが次の(1)から(5)のいずれかを満たす場合、当該リースバックはファイナンス・リースに分類され、このとき、Topic 606「顧客との契約から生じる収益」(以下「Topic 606」という。)の収益認識要件を満たさないものとして、譲渡資産の認識を中止せずに、その他のTopicに従い受領した金額を金融負債として会計処理を行うこととされている。
- (1) リースにより、リース期間終了までに借手に原資産の所有権が移転される。
- (2) リースにより、借手が合理的に確実に行使する原資産の購入オプションが借手に付与される。
- (3) リース期間が原資産の残余の経済的耐用年数の大部分である。
- (4) リース料総額の現在価値とリース料に反映されていない借手による残余価値保証額の合計が、原資産の公正価値のほとんどすべてと同額又はそれを超過する。
- (5) 原資産が、リース期間終了時に、貸手の代替的な使用が予定されていない特殊な性質のものである。
- Topic 842における当該定めについては、売手である借手のリースバックがファイナンス・リースである場合、売手である借手が、譲渡した資産を直ちに買い戻していることと実質的に異ならず、売手である借手による資産の譲渡を資産の売却とすることが適切ではないと考えられたことが説明されている。
これに対し、資産の譲渡がTopic 606の収益認識要件を満たす場合には、収益をTopic 606の取引価格で測定して、原資産の認識を中止、すなわち、譲渡損益の全額を認識し、リースバックについては、オペレーティング・リースとして会計処理を行うこととされている。 - BC93. 本適用指針BC91項及び前項に記載したIFRS第16号における会計上の考え方とTopic 842における会計上の考え方を比較衡量した結果、本適用指針においては、Topic 842における定めを参考に、資産の譲渡が売却に該当するか否かに関して、収益認識会計基準などの他の会計基準等に従うと売手である借手による資産の譲渡が損益を認識する売却に該当しない場合のほか、リースバックにより、売手である借手が資産からもたらされる経済的利益のほとんどすべてを享受することができ、かつ、資産の使用に伴って生じるコストのほとんどすべてを負担することとなる場合(フルペイアウトのリースの場合)には資産の譲渡は売却に該当しないこととし、当該資産の譲渡とリースバックを一体の取引とみて、金融取引として会計処理を行うこととした(本適用指針第55項参照)。
一方、セール・アンド・リースバック取引について、売手である借手による資産の譲渡が収益認識会計基準などの他の会計基準等により売却に該当する場合かつフルペイアウトのリースに該当しない場合には、売手である借手は、当該資産の譲渡について収益認識会計基準などの他の会計基準等に従い損益を認識し、リースバックについて会計基準及び本適用指針に従い借手の会計処理を行うこととした(本適用指針第56項参照)。これらの定めを置いた主な理由は、次のとおりである。 - (1) 資産の譲渡について収益認識会計基準などの他の会計基準等の定めにより損益を認識すると判断する場合、当該資産の譲渡に係る損益が全額計上される。これに対し、IFRS第16号の定めと同様の定めを本適用指針に含めた場合、資産の譲渡について収益認識会計基準などの他の会計基準等の定めにより損益を認識すると判断される場合であっても、当該資産の譲渡に係る損益の調整を求めることになり、収益認識会計基準などの他の会計基準等の考え方とは異なる考え方を採用することとなる。
- (2) IFRS第16号においては、リースバックにより売手である借手が継続して保持する権利に係る利得又は損失は売却時に認識しないため売却損益の調整が必要となる分、Topic 842のモデルよりも複雑となる可能性があると考えられる。このようなIFRS第16号における資産の譲渡に係る損益の調整に代えて、セール・アンド・リースバック取引についての開示を要求することが有用な情報の提供につながると考えられる。
- BC94. 公開草案に寄せられたコメントの中には、第55項(2)におけるフルペイアウトのリースの要件を満たすかどうかを判断するにあたり第62項を適用して判定するのかどうかを明らかにすべきとの意見があった。この点、本適用指針では第55項(2)におけるフルペイアウトの判定の要件を具体的に定めていないが、仮に第62項の判定基準を用いて判断する場合には、売手である借手が当該要件を満たすかどうかを判断することになるため、借手のリース期間及び借手のリース料をもとに判定を行うことが考えられる。
- BC95. 公開草案に寄せられたコメントの中には、IFRS任意適用企業の個別財務諸表においてIFRS第16号と同様の会計処理の選択適用を認めるべきとの意見があった。この点、次の理由から、IFRS第16号と同様の会計処理を代替的な取扱いとして定めないこととした。
- (1) 本適用指針BC93項(1)に記載のとおり本適用指針におけるセール・アンド・リースバック取引に係る会計処理がIFRS第16号と異なっているのは収益認識会計基準などの他の会計基準の定めとの整合性を優先させるという会計上の考え方の相違によるものであるため、IFRS第16号と同様の会計処理の選択適用を認めることは適切ではないと考えられる。
- (2) セール・アンド・リースバック取引は日常的に行われるものではないと考えられる。
- (3) これまでごく一部の例外を除きIFRS任意適用企業に対してのみ適用される代替的な取扱いを置いていない。
(資産の譲渡対価が明らかに時価ではない場合又は借手のリース料が明らかに市場のレートではない場合)
- BC96. 本適用指針BC82項に記載のとおり、セール・アンド・リースバック取引においては、資産の譲渡とリースバックが、パッケージとして交渉されることが多く、資産の譲渡対価とリースバックにおける借手のリース料との間に相互依存性があると考えられる。
収益認識会計基準では独立販売価格に基づく取引価格(対価)の配分を定めており(収益認識会計基準第68項)、本適用指針においてもリースを構成する部分とリースを構成しない部分への対価の配分について独立販売価格に基づく配分を求めることとしている(本適用指針第13項参照)。
これらの取扱いと整合するように、セール・アンド・リースバック取引において、資産の譲渡対価が明らかに時価ではない場合又は借手のリース料が明らかに市場のレートではない場合、当該資産の時価又は市場のレートでのリース料により譲渡損益を計上する定めを置くこととした(本適用指針第57項参照)。セール・アンド・リースバック取引においては、資産の譲渡対価が時価で、借手のリース料が市場のレートである場合が多いと考えられるため、本適用指針第57項の定めを適用することが求められる場合は限定的であると考えられる。 - BC97. 資産の譲渡対価と借手のリース料がそれぞれ時価と市場のレートでのリース料よりも高い(低い)金額で取引される可能性は、資産の譲渡に係る損益が一定の期間にわたり認識されるものであるのか一時点で認識されるものであるのかにかかわらず存在するため、いずれの場合も同様に取り扱うこととした(第58項参照)。
4.貸手のリース
- BC98. 貸手の会計処理については、リースの定義及びリースの識別並びに収益認識会計基準との整合性を図る点を除き、基本的に企業会計基準適用指針第16号を踏襲している。したがって、貸手におけるリースは、ファイナンス・リースとオペレーティング・リースとに分類した上で、ファイナンス・リースについてはさらに所有権移転ファイナンス・リースと所有権移転外ファイナンス・リースとに分類する(会計基準第43項及び第44項)。
(1)リースの分類
(ファイナンス・リースに該当するリース)
- BC99. 本適用指針では、会計基準におけるファイナンス・リースの定義を受けて、「解約不能」と「フルペイアウト」の2つをファイナンス・リースの条件としている(本適用指針第59項参照)。
第1の条件の「解約不能」とは、契約期間の定めがあることを前提としている。この契約期間は、実務上、「拘束期間」、「賃貸借期間」等のさまざまな文言で表現されている。本適用指針では、契約期間中は解約不能であることが明記されているもの以外に、これと同様に取り扱われる取引として事実上解約不能と認められるリースを2つ例示している(本適用指針第60項参照)。解約可能であることが明記されていなければ解約不能として取り扱われるわけではなく、事実上解約不能であるかどうかは、契約条項の内容、商慣習等を勘案し契約の実態に応じ判断されることになる。 - BC100. 第2の条件である「フルペイアウト」について、「借手が、原資産からもたらされる経済的利益を実質的に享受することができ、かつ、当該原資産の使用に伴って生じるコストを実質的に負担すること」(本適用指針第59項(2)参照)としている。借手が原資産の使用に伴って生じるコスト(当該原資産の取得価額相当額、維持管理等の費用、陳腐化によるリスク等)を実質的に負担する場合、借手は原資産からもたらされる経済的利益を実質的に享受することになると推定できる。同様に、借手が原資産からもたらされる経済的利益を実質的に享受することができる場合には、通常、借手は原資産の使用に伴って生じるコストを負担することになると推定できる。本適用指針におけるファイナンス・リースの判定基準については、このような「フルペイアウト」の考え方が前提となっている。
(具体的な判定基準)
- BC101. 本適用指針では、ファイナンス・リースの判定基準を、(1)貸手のリース料の現在価値が、原資産の現金購入価額の概ね90パーセント以上であること(現在価値基準)と、(2)貸手のリース期間が、原資産の経済的耐用年数の概ね75パーセント以上であること(経済的耐用年数基準)のいずれかに該当することとしている(第62項参照)。
- BC102. 現在価値基準を適用する場合の貸手のリース料の現在価値は推定額であるが、当該現在価値が原資産の現金購入価額の概ね90パーセント以上の場合、借手が当該原資産の取得価額相当額、維持管理等の費用等ほとんどすべてのコストを負担することになり、したがって、ほとんどすべての経済的利益を享受するものと推定できるため、当該リースはファイナンス・リースと判定する。
- BC103. 経済的耐用年数基準を適用する場合の原資産の経済的耐用年数は、物理的使用可能期間ではなく経済的使用可能予測期間に見合った年数による。経済的耐用年数基準に該当するリースは、通常、借手が原資産からもたらされるほとんどすべての経済的利益を享受することができ、したがって、ほとんどすべてのコストを負担するものと推定できるため、当該リースはファイナンス・リースと判定する。
- BC104. 本適用指針では、現在価値基準がフルペイアウトの判定を行う原則的な基準であると考えているが、現在価値の計算をすべてのリースについて行うことは実務上極めて煩雑と考えられるところから、簡便法としての経済的耐用年数基準を設けている。リースの実態から判断すると、貸手のリース期間が経済的耐用年数の概ね75パーセント以上である場合、借手がその原資産からもたらされる経済的利益を実質的に享受すると考えられることが多い。
しかし、原資産の特性、経済的耐用年数の長さ、原資産の中古市場の存在等により、借手が原資産に係るほとんどすべてのコストを負担することにはならない場合もあるとの指摘があり、そのような場合には原則的な基準である現在価値基準により判定を行うものとした(第63項参照)。
なお、現在価値基準と経済的耐用年数基準の具体的数値として、それぞれの基準において「概ね90パーセント以上」又は「概ね75パーセント以上」としているのは、現在価値基準の判定に見積りの要素が多いためであり、例えば、それぞれの数値が88パーセント又は73パーセントといった場合でも実質的にフルペイアウトと考えられる場合には、ファイナンス・リースと判定されることになる。
(現在価値基準の判定における取扱い)
- BC105. 1つの契約が多数の原資産から構成されているような場合、個々の原資産ごとに現在価値基準の判定を行わずに契約全体で判定を行うことも認められる。
- BC106. 現在価値の算定を行うにあたっては、貸手の計算利子率を用いる(本適用指針第66項参照)。
貸手の計算利子率については、企業会計基準適用指針第16号の定めを踏襲しており、IFRS第16号におけるリースの計算利子率とは主に貸手の当初直接コストを考慮しない点が異なる。
IFRS第16号のリースの計算利子率は、リース料の現在価値と無保証残存価値の現在価値の合計額が、原資産の公正価値と貸手の当初直接コストの合計額と等しくなる利子率である。
本適用指針における貸手の計算利子率は、貸手のリース料の現在価値と見積残存価額(貸手のリース期間終了時に見積られる残存価額で残価保証額以外の額)の現在価値の合計額が、当該原資産の現金購入価額又は借手に対する現金販売価額と等しくなるような利率(本適用指針第66項参照)である。
(経済的耐用年数基準の判定における取扱い)
- BC107. 本適用指針では、経済的耐用年数基準の判定に用いられる「経済的耐用年数」は、物理的使用可能期間ではなく経済的使用可能予測期間に見合った年数によるものとしている(BC103項参照)。この「経済的耐用年数」は、これまでの取扱いと同様に、企業の状況に照らし、不合理と認められる事情のない限り、法人税法に定められた耐用年数を用いて判定を行うことも認められると考えられる(日本公認会計士協会 監査・保証実務委員会実務指針第81号「減価償却に関する当面の監査上の取扱い」第24項)。
なお、1つの契約が多数の原資産から構成されているような場合、個々の原資産ごとに経済的耐用年数基準の判定を行わずにすべての原資産の加重平均耐用年数により判定を行うことも認められると考えられる。
(不動産に係るリースの取扱い)
- BC108. 本適用指針では、土地については、第70項の(1)又は(2)のいずれかに該当する場合を除き、オペレーティング・リースに該当するものと推定することとしている(第68項ただし書き参照)。これは、土地の経済的耐用年数は無限であるため、第70項の(1)又は(2)のいずれかに該当する場合を除いては、通常、フルペイアウトのリースに該当しないと考えられることによる。
- BC109. 土地と建物等を一括したリースは、土地が無限の経済的耐用年数を有し建物等と異なる性格を有することを踏まえ、貸手のリース料を合理的な方法で土地に係る部分と建物等に係る部分に分割した上で、建物等について、第62項(1)に定める現在価値基準の判定を行うこととしている(第69項参照)。貸手のリース料を土地に係る部分と建物等に係る部分に合理的に分割する方法としては次の(1)又は(2)が考えられ、このうち最も実態に合った方法を採用する。
- (1) 賃貸借契約書等で、適切な土地の賃料が明示されている場合には、貸手のリース料から土地の賃料を差し引いた額を、建物等のリース料とする。
- (2) 貸手のリース料から土地の合理的な見積賃料を差し引いた額を、建物等のリース料とみなす。合理的な見積賃料には、近隣の水準などを用いることが考えられる。
- なお、土地及び建物を一括でサブリースする場合に当該土地と建物がそれぞれ独立したリースを構成する部分(第16項参照)に該当しないときは、中間的な貸手は、リースの分類及び会計処理のために、貸手のリース料を土地に係る部分と建物に係る部分とに必ずしも分割することを要しないと考えられる。
(2)ファイナンス・リースの分類
- BC110. 本適用指針では、ファイナンス・リースと判定されたもののうち、所有権移転条項のある場合、借手に割安購入選択権がありその行使が確実に予想される場合、特別仕様の原資産の場合のいずれかに該当するときに、所有権移転ファイナンス・リースに該当するものとし、それ以外のファイナンス・リースは、所有権移転外ファイナンス・リースに該当するものとしている(第70項参照)。
このうち、「特別仕様の原資産」の中には、第70項(3)において「借手の用途等に合わせて特別の仕様により製作又は建設されたもの」とされているように、専用性の高い機械装置等以外に特別仕様の建物等の不動産も含まれる。
(3)ファイナンス・リース
(貸手における収益配分の基本的な考え方)
- BC111. ファイナンス・リースは、通常の売買取引に係る方法に準じた会計処理を行う(会計基準第45項)。本適用指針では、貸手の会計処理について、基本的に企業会計基準適用指針第16号の定めを踏襲する一方、収益認識会計基準との整合性を図ることとしている(会計基準BC13項)。
(基本となる会計処理)
- BC112. 企業会計基準適用指針第16号では、ファイナンス・リース取引の会計処理について、次の3つの方法を定めていた。
- (1) リース取引開始日に売上高と売上原価を計上する方法
- (2) リース料受取時に売上高と売上原価を計上する方法
- (3) 売上高を計上せずに利息相当額を各期へ配分する方法
- BC113. 会計基準第45項では、ファイナンス・リースについては、通常の売買取引に係る方法に準じて会計処理を行うとされており、本適用指針では、リースの取引実態に応じて会計処理を行うこととしている(本適用指針第71項及び第72項並びに第78項参照)。
- BC114. 製造又は販売を事業とする貸手が当該事業の一環で行うリース(本適用指針第71項(1)参照)は、主として製造業、卸売業等を営む企業が製品又は商品を販売する手法として行うリースを想定している。当該リースは、製品又は商品の販売とは必ずしも同一ではないが、両者の経済的実質は、取引の対象となる資産を使用する権利が移転される点で類似している。このようなリースについては、原資産の引渡時に貸手は売上高を計上し同時に販売益相当額を計上することが、収益認識会計基準における収益認識の時期に関する取扱いと整合的になるものと考えられる。したがって、本適用指針では、製造又は販売を事業とする貸手が当該事業の一環で行うリースについては、企業会計基準適用指針第16号で定められていた販売益相当額を繰り延べて会計処理を行う方法は踏襲せず、リース開始日に貸手のリース料からこれに含まれている利息相当額を控除した金額で売上高を計上し、原資産の帳簿価額により売上原価を計上することとした(本適用指針第71項(1)①参照)。
また、利息相当額の取扱いについても、収益認識会計基準における重要な金融要素に関する取扱いと整合的になるように、原則として、リース開始日に貸手のリース料からこれに含まれている利息相当額を控除した金額で売上高を計上し、受取リース料のうち当該利息相当額を各期の損益として処理することとした(本適用指針第71項(1)①及び②参照)。ただし、当該処理が煩雑になる場合があると考えられることから、企業会計基準適用指針第16号では、売上高と売上原価の差額である販売益相当額が貸手のリース料に占める割合に重要性が乏しい場合、当該販売益相当額を利息相当額に含めて処理する簡便的な取扱いを認めていた。本適用指針では、当該簡便的な取扱いを認めることにより本適用指針の適用によるコストの増加に対応できること及び貸手の会計処理については基本的に企業会計基準適用指針第16号の取扱いを踏襲していることから、当該簡便的な取扱いを踏襲することとした(本適用指針第71項(1)①ただし書き参照)。 - BC115. 製造又は販売以外を事業とする貸手が当該事業の一環で行うリースに係る会計処理については、リース取引が有する複合的な性格の中でも、金融的な側面に着目し、リース料総額とリース物件の現金購入価額の差額を受取利息相当額として取り扱い、リース期間にわたり各期へ配分するという企業会計基準適用指針第16号で定められていた会計処理を基本的に踏襲している(本適用指針第71項(2)参照)。
- BC116. 企業会計基準適用指針第16号では、本適用指針第71項の基本となる会計処理のみが定められていたと考えられる。
公開草案に寄せられたコメントの中には、例えば、貸手が主たる事業の一環以外で行う不動産を原資産とするファイナンス・リースのように、原資産の取得日とリース開始日が近接しないことにより原資産の帳簿価額と借手に対する現金販売価額との差があるリースに係る会計処理を明らかにすべきとの意見があった。当該リースにおいては、原資産の帳簿価額と借手に対する現金販売価額の差額である販売益相当額は、製造又は販売を事業とする貸手が当該事業の一環で行うリースと同様、リースの開始日に損益として計上することになると考えられることから、本適用指針では貸手が事業の一環以外で行うリースの会計処理を明らかにしている(本適用指針第72項参照)。 - BC117. 企業会計基準適用指針第16号では、リース期間中の各期の受取リース料を売上高として計上する方法(本適用指針BC112項(2)参照)が定められていた。
本適用指針では、収益認識会計基準において対価の受取時にその受取額で収益を計上することが認められなくなったことを契機としてリースに関する収益の計上方法を見直した結果、当該方法を廃止することとした。
(利息相当額の各期への配分)
- BC118. 所有権移転ファイナンス・リースは、原資産の売却とリース債権の回収取引と考えられるため、各期のリース債権残高に対して一定の利益率になるように利息法により受取利息相当額を配分することとしている(第79項参照)。
- BC119. 一方、所有権移転外ファイナンス・リースの場合、その金融的な側面に着目すると、所有権移転ファイナンス・リースと同様に利息法により受取利息相当額を配分することが整合的であり、また、貸手の原価の大半が資金調達コストである場合には、その費用配分処理と整合的な処理となる。したがって、所有権移転外ファイナンス・リースについても、受取利息相当額を利息法で配分することを原則的な取扱いとしている(本適用指針第73項参照)。
しかしながら、企業会計基準適用指針第16号では、リースを主たる事業としていない企業による所有権移転外ファイナンス・リース取引について、すべての収益配分が各期の投資額に対して一定の利益率になるようにされているわけではないものとして、重要性が乏しく、一定の要件を満たした場合には、定額法による受取利息相当額の配分を簡便的な取扱いとして認めていた。本適用指針では、当該簡便的な取扱いを認めることで本適用指針の適用によるコストの増加に対応できること及び貸手の会計処理については基本的に企業会計基準適用指針第16号を踏襲していることから、当該簡便的な取扱いを踏襲することとした(本適用指針第74項及び第75項参照)。なお、当該簡便的な取扱いを適用する貸手としてのリースに重要性が乏しいかどうかを判断する割合については、次のことを考慮し算定することが考えられる。 - (1) 本適用指針第73項に従い利息相当額を利息法により各期に配分しているリースに係るものがある場合、これを未経過の貸手のリース料及び見積残存価額の合計額の期末残高から除く。
- (2) 営業債権の期末残高について未経過の貸手のリース料の期末残高と二重になる場合、未経過の貸手のリース料及び営業債権の期末残高の合計額の算定上、二重にならないように調整を行う。
- (3) 本適用指針第75項でいう営業債権には契約資産(収益認識会計基準第10項)が含まれる。
(4)オペレーティング・リース
- BC120. 貸手は、オペレーティング・リースについて、通常の賃貸借取引に係る方法に準じた会計処理を行うこととしている(会計基準第48項)。企業会計基準適用指針第16号は、ファイナンス・リース取引の会計処理のみを示し、オペレーティング・リース取引の会計処理は示していなかった。この点、貸手のオペレーティング・リースは、通常、貸手のリース期間にわたり時の経過とともに収益を計上することが取引実態を表すと考えられるため、原則として定額法により収益を計上することとしている(本適用指針第82項参照)。
- BC121. また、審議の過程で、実務においては、フリーレント(契約開始当初数か月間賃料が無償となる契約条項)やレントホリデー(例えば、数年間賃貸借契約を継続する場合に一定期間賃料が無償となる契約条項)等の無償賃貸期間に関する会計処理が必ずしも明らかでなく、企業会計基準第13号におけるオペレーティング・リース取引の会計処理の実務に多様性が生じており、企業間の比較可能性が損なわれているとの意見が聞かれた。
貸手のオペレーティング・リースの会計処理について、収益認識会計基準との整合性を図り、取引価格に相当する貸手のリース料を貸手のリース期間にわたり原則として定額法により収益に計上することは、リースの会計処理について企業間の比較可能性を高めることになると考えられる。また、リースの定義を満たさずに収益認識会計基準の適用範囲に含まれるリースと経済実態が類似した契約の会計処理との整合性が図られることとなる。さらに、リース事業における企業の主たる営業活動の成果であるリースの収益が、収益認識会計基準の適用範囲に含まれる他の事業における企業の主たる営業活動の成果である収益と比較可能性が高まることも望ましいと考えられる。
ここで、貸手のリース期間については、借手のリース期間と同様に決定する方法(会計基準第32項(1))と借手が原資産を使用する権利を有する解約不能期間にリースが置かれている状況からみて借手が再リースする意思が明らかな場合の再リース期間を加えて決定する方法(会計基準第32項(2))のいずれかを選択して決定することを認めている。我が国におけるオペレーティング・リースについては解約不能期間が著しく短い契約も見受けられることから、企業が後者の会計基準第32項(2)の方法を選択する場合に契約に無償賃貸期間が含まれるときは、当該解約不能期間を基礎としてオペレーティング・リースの収益を計上することは取引実態を正しく反映しない可能性がある。
これらを踏まえ、貸手は、オペレーティング・リースによる貸手のリース料について貸手のリース期間にわたり原則として定額法で計上することとし、貸手のリース期間について会計基準第32項(2)の方法を選択して決定する場合に当該貸手のリース期間に無償賃貸期間が含まれるときは、貸手は、契約期間における使用料の総額(ただし、将来の業績等により変動する使用料を除く。)について契約期間にわたり計上することとした(本適用指針第82項参照)。
(5)建設協力金等の預り預託保証金
- BC122. 本適用指針BC59項に記載のとおり、建設協力金等及び敷金については、これらの項目が、主にリースの締結により生じる項目であるため、これらの具体的な会計処理の定めについては、金融商品実務指針から削除し、本適用指針に定めることとした(本適用指針第83項から第86項参照)。貸手の会計処理については、基本的に企業会計基準第13号の定めを踏襲することとした(会計基準BC13項)ことから、預り預託保証金に関する貸手の会計処理は、金融商品実務指針の定めを踏襲することとした。
5.サブリース取引
(1)基本となる会計処理
- BC123. 中間的な貸手がサブリースの貸手におけるリースの分類を行うにあたり、IFRS第16号ではヘッドリースに係る使用権資産を参照して分類するのに対してTopic 842ではヘッドリースの原資産を参照して分類する違いがある。
本適用指針では、次の理由によりIFRS第16号と同様に中間的な貸手は、サブリースの貸手におけるリースの分類を行うにあたり、ヘッドリースに係る使用権資産を参照して分類することとした(本適用指針第91項参照)。 - (1) 貸手が所有している資産そのものをリースする場合と中間的な貸手が使用権資産をサブリースする場合では経済実態が異なると考えられる。中間的な貸手がリスクと経済価値のほとんどすべてを移転するかどうかを判断する対象は当該中間的な貸手が貸借対照表に計上している資産となると考えられるため、原資産ではなく使用権資産のリスクと経済価値がどの程度借手に移転しているかによりリースを分類することが適切であると考えられる。
- (2) 借手の会計処理についてIFRS第16号と同様の単一の会計処理モデルによる(会計基準BC39項)ことと整合的な取扱いとなると考えられる。
- BC124. サブリース取引については、ヘッドリースとサブリースの契約は一般的に別個に交渉されており、中間的な貸手にとってヘッドリースから生じる義務は、一般にサブリースの契約条件によって消滅することはないことから、原則として、ヘッドリースとサブリースを2つの別個の契約として借手と貸手の両方の会計処理を行うこととした(第89項参照)。
- BC125. IFRS第16号においては、前項の会計処理に対する例外は設けられていないが、本適用指針の審議の過程では、一部のサブリース取引について、サブリースの締結後もヘッドリースが有効であることからサブリース取引には該当するものの、中間的な貸手がヘッドリースとサブリースを2つの別個の契約として借手と貸手の両方の会計処理を行うことが適切ではない場合があるとの意見が聞かれ、サブリース取引の例外的な定めとして、中間的な貸手がヘッドリースに対してリスクを負わない場合の取扱いと転リース取引の取扱いを定めることとした(第92項及び第93項参照)。
- BC126. 中間的な貸手がヘッドリースに対してリスクを負わない場合の取扱いと転リース取引の取扱いは、それぞれの取扱いにおける適用の要件を定めており、あるサブリース取引が、中間的な貸手がヘッドリースに対してリスクを負わない場合の取扱いと転リース取引の取扱いの両方の要件に該当することは想定していない。
- BC127. 本適用指針では、サブリースがファイナンス・リースに該当する場合、中間的な貸手はサブリース取引に係る損益を原則として純額で計上することとしている(第89項(1)参照)。ただし、例えば中間的な貸手が財の販売やサービスの提供を行う中でサブリースを組み合わせて利用するようなときに、財又はサービスに係る収益とサブリースに係る収益を整合的に計上する観点から中間的な貸手はサブリース取引に係る損益を総額で計上する方が適切であると考えられる場合がある。
(2)中間的な貸手がヘッドリースに対してリスクを負わない場合
- BC128. 典型的には我が国の不動産取引において、法的にヘッドリースとサブリースがそれぞれ存在する場合であっても、中間的な貸手がヘッドリースとサブリースを2つの別個の契約として借手と貸手の両方の会計処理を行い、貸借対照表において資産及び負債を計上することが取引の実態を反映しない場合があるとの意見が聞かれた。
- BC129. 審議の結果、中間的な貸手が、サブリース取引について、法的に別個に存在する借手及び貸手としての契約を貸借対照表において別個の契約とせずに資産及び負債を計上しないことができる例外を定めることを目的として、国際的な比較可能性を大きく損なわせない範囲で我が国における例外的な取扱いを定めるため、次の3つの要件をいずれも満たす取引のみを例外的な取扱いの対象とすることとした(第92項参照)。
- (1) 中間的な貸手は、サブリースの借手からリース料の支払を受けない限り、ヘッドリースの貸手に対してリース料を支払う義務を負わない。
- (2) 中間的な貸手のヘッドリースにおける支払額は、サブリースにおいて受け取る金額にあらかじめ定められた料率を乗じた金額である。
- (3) 中間的な貸手は、次のいずれを決定する権利も有さない。
- ① サブリースの契約条件(サブリースにおける借手の決定を含む。)
- ② サブリースの借手が存在しない期間における原資産の使用方法
- (1)及び(2)の要件について、サブリース取引の中には、ヘッドリースにおける支払条件として、サブリースの借手からリース料の支払を受けない限りヘッドリースの貸手に対してリース料を支払う義務を負わず、かつ、サブリースにおいて受け取る金額にあらかじめ定められた料率を乗じた金額とされる場合がある。中間的な貸手におけるヘッドリースへの支払義務が、サブリースからの支払を受けた場合にのみ、その一定割合の金額について生じるとする要件を設けることで、中間的な貸手がヘッドリースに対して一切のリスクを負わず貸借対照表においてヘッドリースのリース負債を計上しないことが適切である限定的な取引を特定することとした。
(3)の要件について、サブリース取引の中には、サブリースの条件についての最終決定権をヘッドリースの貸手が有する場合や、ヘッドリースの契約が存在している期間においても、中間的な貸手がサブリースの対象となる原資産の使用方法を自由に決定できない場合がある。中間的な貸手が、サブリースの契約条件及びサブリースの借手が存在しない期間における原資産の使用方法を決定する権利を有さないとする要件を設けることで、中間的な貸手のヘッドリースに対する権利が限定的であり、貸借対照表において使用権資産を計上しないことが適切である取引を特定することとした。 - BC130. 中間的な貸手がヘッドリースに対してリスクを負わない場合の取扱いは、前項のとおり貸借対照表において別個の契約とせずに資産及び負債を計上しないことができる特例を定めるものである。しかしながら、前項の要件はヘッドリースに対して一切のリスクを負わないとする取引を特定するための要件であり、例えば、収益認識適用指針において「企業が在庫リスクを有していること」が本人の指標とされていること(収益認識適用指針第47項(2))などに鑑みれば代理人として会計処理を行う場合と同様に純額表示することが適切となるとの意見も聞かれたため、次の(1)及び(2)の会計処理を行うことを認めることとした(本適用指針第92項参照)。
- (1) 貸借対照表においてヘッドリースにおける使用権資産及びリース負債を計上しない。
- (2) 損益計算書において貸手として受け取るリース料と借手として支払うリース料の差額を損益に計上する。
- BC131. 収益及び費用の認識時点について、これらの認識は発生時に行うことが原則であるが、当該例外的な取扱いにおける会計処理を定めるにあたっては、サブリースの借手からリース料の支払を受けない限り、中間的な貸手がヘッドリースの貸手にリース料を支払う義務を負わないことをこの例外的な取扱いの要件としたことから、当該要件に合わせる形で、サブリースにおいて受け取るリース料の発生時又はリース料の受領時のいずれか遅い時点で、貸手として受け取るリース料と借手として支払うリース料との差額を損益に計上する会計処理を行うこととした(第92項参照)。
(3)転リース取引
- BC132. 主に機器等のリースについて仲介の役割を果たす中間的な貸手の会計処理として実務に浸透している企業会計基準適用指針第16号における転リース取引の取扱いは、次の理由から、サブリース取引の例外的な取扱いとして、本適用指針において企業会計基準適用指針第16号の定めを変更せずに踏襲することとした(本適用指針第93項参照)。
- (1) 貸借対照表上はリース債権又はリース投資資産とリース負債の双方を計上した上で、収益及び費用を純額とする定めであり、借手のすべてのリースについて資産及び負債の計上を求めるとする本適用指針の主たる改正目的についての例外を定めるものではないこと
- (2) サブリース取引の会計処理による財務諸表作成者の負担の増加への対応となること
- BC133. 企業会計基準適用指針第16号において、転リース取引は、借手としてのリース取引及び貸手としてのリース取引の双方がファイナンス・リース取引に該当する取引を対象としており、本適用指針においてもこの範囲を踏襲することとした。本適用指針においては、借手のリースは分類しないこととしたため、貸手としてのリースがヘッドリースの原資産を参照して分類する場合にファイナンス・リースに該当する場合として定めることとした(本適用指針第93項参照)。
- BC134. 企業会計基準適用指針第16号は、「セール・アンド・リースバック取引によるリース物件を、さらに概ね同一の条件で第三者にリースした場合で、当該転リース取引の貸手としてのリース取引がファイナンス・リース取引に該当し、かつ、その取引の実態から判断して当該物件の売買損益が実現していると判断されるときは、その売買損益は繰延処理せずに損益に計上することができる」取扱いを定めていた。
本適用指針では、セール・アンド・リースバック取引が本適用指針第55項を満たす場合、金融取引として会計処理を行うこととしている。この場合、当該貸手は、このような一連の取引のうちセール・アンド・リースバック取引を金融取引として会計処理を行った上で、当該貸手が第三者との間で行うサブリース取引をファイナンス・リースとして会計処理を行うこととなるものと考えられる。したがって、本適用指針の定めを適用すると、このような一連の取引においては転リース取引にならないと考えられるため、企業会計基準適用指針第16号における当該取扱いを踏襲していない。 - BC135. 中間的な貸手がヘッドリースに対してリスクを負わない場合の取扱いと転リース取引の取扱いは、IFRS第16号では定められていないため、IFRS任意適用企業がIFRS第16号の定めを個別財務諸表に用いても基本的に修正を不要とする開発の基本的な方針(BC4項参照)を考慮して、中間的な貸手がヘッドリースに対してリスクを負わない場合の取扱いと転リース取引の取扱いの適用は任意とすることとした(第92項及び第93項参照)。
(4)サブリースしている場合のヘッドリースに関する簡便的な取扱い
- BC136. IFRS第16号においては、借手が資産をサブリースしている場合、ヘッドリースについて少額リースに関する簡便的な取扱いを適用することができない取扱いとされているが、本適用指針においては、実務負担の増加への対応から、当該取扱いは取り入れないこととした。
Ⅳ.開 示
1.注記事項
(1)開示目的
- BC137. 会計基準第54項の開示目的を達成するために必要な情報はリースの類型により異なるものであるため、注記する情報は会計基準第55項に掲げる注記事項に限定せずに、会計基準第54項の開示目的を達成するために必要な情報を記載する(本適用指針第94項参照)。借手及び貸手のいずれにも該当する企業は、借手及び貸手としてそれぞれ記載する情報を検討するにあたって、借手及び貸手のそれぞれの立場から開示目的を達成するかどうかを判断する。
IFRS第16号では、多くのリースは、変動リース料、解約及び延長オプション、残価保証など複雑な要素を含んでおり、すべての企業に対する標準的な開示要求のみでは財務諸表利用者のニーズを満たさない可能性が高いことから、開示目的を満たすために必要な追加の定性的情報及び定量的情報の例が示されていることが説明されている。本適用指針においても、リースはさまざまな要素を含む場合があり、標準的な開示要求に加えて、開示目的に照らした追加の情報の注記を求めることとした。また、財務諸表作成者及び監査人の負担の増加を考慮して、追加の情報の注記が必要とされる事項の例を示すこととした(本適用指針第95項及び第96項参照)。
ここで、追加の情報を「リース特有の取引に関する情報」として注記することとしているのは、追加の情報の注記に関して、連結財務諸表を作成している場合の個別財務諸表における注記事項の取扱いを明確にするためである(本適用指針第110項参照)。
(2)借手及び貸手の注記
(借手の注記)
会計方針に関する情報
- BC138. 重要な会計方針の注記について、企業会計原則注解(注1-2)においては、「財務諸表には、重要な会計方針を注記しなければならない。会計方針とは、企業が損益計算書及び貸借対照表の作成に当たつて、その財政状態及び経営成績を正しく示すために採用した会計処理の原則及び手続並びに表示の方法をいう。」とされている。また、企業会計基準第24号第4-4項は、「財務諸表には、重要な会計方針を注記する。」と定めている。重要な会計方針として注記する内容については、原則として、企業会計原則注解及び企業会計基準第24号に照らして企業が判断するものである。
- BC139. 一方、収益認識会計基準においては、少なくとも、企業の主要な事業における主な履行義務の内容及び企業が当該履行義務を充足する通常の時点(収益を認識する通常の時点)について、重要な会計方針として注記することを求めている(収益認識会計基準第80-2項及び第163項)。リースに関する会計方針については、次の理由から、すべての企業について自動的に企業会計原則注解及び企業会計基準第24号に定める「重要な会計方針」として識別される項目はないものと考えた。
- (1) 企業によりリースの利用度合いは異なり、リースの重要性は異なる。
- (2) 会計基準における選択肢の多くは、重要性が乏しい場合を対象としている。
- BC140. しかしながら、「重要な会計方針」に該当するか否かにかかわらず、企業による選択を注記することが、財務諸表利用者が企業の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローを評価する上で有用な会計方針については、「リースに関する注記」として注記することが有用な場合があると考え、次の会計処理を選択した場合、「リースに関する注記」において、会計方針に関する情報として注記することを求めることとした(第97項参照)。
- (1) リースを構成する部分とリースを構成しない部分とを分けずに、リースを構成する部分と関連するリースを構成しない部分とを合わせてリースを構成する部分として会計処理を行う選択
- (2) 指数又はレートに応じて決まる借手の変動リース料に関する例外的な取扱いの選択
- (3) 借地権の設定に係る権利金等に関する会計処理の選択
リース特有の取引に関する情報
- BC141. 「リース特有の取引に関する情報」においては、リースが企業の財政状態又は経営成績に与える影響を理解するための情報を注記することとしている(第98項参照)。
- BC142. 第99項(1)に掲げる、対応する原資産を自ら所有していたと仮定した場合の表示科目ごとの使用権資産の帳簿価額の開示は、借手のリース活動の性質を理解する上で、また、資産をリースしている企業と資産を購入している企業とを比較する上で有用な情報を提供すると考えられるため、求めることとした。なお、当該開示を行うにあたっては、表示科目との関係が明らかである限りにおいて、より詳細な区分により開示を行うことを妨げないものとした。また、土地及び建物に係るリースについてそれぞれが独立したリース(第16項参照)ではない場合、当該リースについて土地と建物に区分せずに注記することが考えられる。
- BC143. 第99項(2)及び(3)並びに第101項(2)②及び③に掲げる次の開示は、企業が代替的な会計処理を選択した場合に求める開示であり、当該注記は、財務諸表利用者が企業の財務諸表の分析を行うことを可能とし、財務諸表利用者が、企業の財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローを評価する上で有用であると考えられるため、求めることとした。
- (1) 第26項の定めを適用し指数又はレートに応じて決まる借手の変動リース料に関する例外的な取扱いにより会計処理を行ったリースに係るリース負債が含まれる科目及び金額(第99項(2)参照)
- (2) 借地権について、第27項ただし書き又は第127項の定めを適用する場合、償却していない旧借地権の設定に係る権利金等又は普通借地権の設定に係る権利金等が含まれる科目及び金額(第99項(3)参照)
- (3) 第92項の定めを適用し中間的な貸手がヘッドリースに対してリスクを負わない場合の取扱いにより計上した損益が含まれる科目及び金額(第101項(2)②参照)
- (4) 第93項なお書きの定めを適用し転リース取引に係るリース債権又はリース投資資産とリース負債を利息相当額控除前の金額で計上する場合の当該リース債権又はリース投資資産及びリース負債が含まれる科目並びに金額(第101項(2)③参照)
- BC144. 本適用指針第100項に掲げる短期リースに係る費用及びリース負債に含めていない借手の変動リース料に係る費用の開示は、資産及び負債が貸借対照表に計上されていないリース料に関する情報を提供すると考えられるため、求めることとした。なお、企業結合日において残りの借手のリース期間が12か月以内であるリースについて取得原価を配分しない場合に企業結合日後に計上した費用を損益計算書において区分して表示していないとき、当該費用について、本適用指針第100項(1)に掲げる短期リースに係る費用の開示に含めて注記する(企業会計基準適用指針第10号「企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針」第61-3項)。
- BC145. 短期リース及び少額リースに関する簡便的な取扱いについては、重要性が乏しいことから原則的な取扱いを求めず費用処理する簡便的な取扱いを認めているものであり、重要性が乏しい項目については開示を要求すべきではないとの意見が聞かれた。
- BC146. 前項の意見を踏まえ、短期リース及び少額リースに係る費用の開示の要否について検討した。ここで、短期リースについては、借手のリース期間の判断で簡便的な取扱いの対象となるかどうかが変更になることから恣意的な操作の対象となる可能性があると考えられることや、金額的に重要性のあるリース負債がオフバランスとなる可能性があるという点から、財務諸表利用者が財政状態及び経営成績を評価するために有用な情報を提供することになると考え、短期リースに係る費用の開示を求めることとした。一方、少額リースについては、簡便的な取扱いの対象となるかどうかについて、短期リースのような判断は不要であり、また、金額的な重要性が乏しい少額リースを対象としていることから、少額リースに係る費用の開示は求めないこととした。
- BC147. 公開草案に対して寄せられたコメントの中には、短期リースかつ少額リースに該当するリースについては短期リースに係る費用の発生額の注記に含めないことを認めるべきとの意見があった。前項に記載のとおり、短期リースに係る費用の開示は金額的に重要性のあるリース負債がオフバランスとなる可能性があることに着目し開示を求めている趣旨及び開示のコストと便益を考慮し、短期リースかつ少額リースに該当するリースについては短期リースに係る費用の発生額の注記に含めないことを認めることとした(第100項(1)参照)。
- BC148. 第101項(1)①及び③に掲げるセール・アンド・リースバック取引から生じた売却損益並びに第56項を適用して会計処理を行ったセール・アンド・リースバック取引の主要な条件の開示は、セール・アンド・リースバック取引が有する独特の特徴及び当該取引が借手の経営成績に与える影響をより適切に理解する上で有用であると考えられるため、求めることとした。
- BC149. また、第101項(1)②に掲げる第55項を適用して会計処理を行った資産の開示は、資産の処分に関して自己が所有権を有する他の資産と異なると考えられる資産が貸借対照表に計上されていることを明らかにする点で、売手である借手の財政状態を理解する上で有用であると考えられるため、求めることとした。なお、関連する債務を示す科目の名称及び金額の開示については、資産の処分に制限がある場合、債務の返済に充当することはできない点で、これらの情報の有用性が必ずしも明らかではないことから、求めないこととした。
- BC150. 第101項(2)①に掲げる使用権資産のサブリースによる収益の開示は、リースに係る費用に関する開示とともに、企業のリース活動の全体的な損益計算書への影響を表し、有用であると考えられるため、求めることとした。
当期及び翌期以降のリースの金額を理解するための情報
- BC151. 第102項(1)に掲げるリースに係るキャッシュ・アウトフローの合計額の注記は、リース負債からのキャッシュ・アウトフローとリース負債に計上されていないリースに係るキャッシュ・アウトフローの合計額の注記であり、財務諸表利用者にリースのキャッシュ・フローに関する有用な情報を提供する。当該注記は、財務諸表利用者が、当期及び翌期以降のリースの金額を予測するために有用と考えられるため、求めることとした。
- BC152. リースに係るキャッシュ・アウトフローの合計額の注記は、会計期間中に損益計算書に計上されたリースに係る費用及び会計期間中のリース負債の減少額をリースに関するキャッシュ・アウトフローに関連付けて翌期以降のこれらの金額の予測に役立てることを目的としている。したがって、キャッシュ・アウトフローの合計額の注記は、借手のリース料の開示と整合したものとすることとした(第102項(1)参照)。
- BC153. また、第102項(2)に掲げる使用権資産の増加額の注記は、使用権資産及び所有資産に対しての設備投資に関する比較可能な情報を提供し、当期及び翌期以降のリースによる設備投資の金額を理解するために有用な情報を提供すると考えられるため、求めることとした。
- BC154. さらに、第102項(3)に掲げる、対応する原資産を自ら所有していたと仮定した場合に貸借対照表において表示するであろう科目ごとの使用権資産に係る減価償却の金額の注記は、借手のリース活動の性質を理解する上で、また、資産をリースしている企業と資産を購入している企業とを比較する上で有用な情報を提供すると考えられるため、求めることとした。なお、当該開示を行うにあたっては、貸借対照表において表示するであろう科目との関係が明らかである限りにおいて、より詳細な区分により開示を行うことを妨げないものとした。また、土地及び建物に係るリースについてそれぞれが独立したリース(第16項参照)ではない場合、当該リースに係る使用権資産の減価償却の金額については土地部分と建物部分に区分せずに注記することが考えられる。
(貸手の注記)
リース特有の取引に関する情報
- BC155. 本適用指針第104項(1)及び(2)に掲げるリース料債権部分及び見積残存価額部分の金額並びに受取利息相当額の開示は、財務諸表利用者がリース債権及びリース投資資産の構成要素を理解することを可能にする有用な情報を提供すると考えられるため、求めることとした。なお、企業会計基準第13号においては、リース債権の構成要素に係る開示を求めていなかったが、リース投資資産とは性質の異なるリース債権について、リース料債権部分と受取利息相当額を区分した情報が財務諸表利用者にとって有用であることから、リース債権についても構成要素の開示を求めることとした。
- BC156. また、第105項及び第108項に掲げる将来の業績等により変動する使用料に係る収益の開示は、ファイナンス・リースにおいてリース債権及びリース投資資産に計上されていないリース料並びにオペレーティング・リースにおいて定額法で計上する対象とならないリース料に関して、会計期間中に認識されたリース収益について構成要素に分解して開示することで、会計期間中に認識した収益の内訳を財務諸表利用者が理解することを可能にする有用な情報を提供すると考えられるため、求めることとした。
当期及び翌期以降のリースの金額を理解するための情報
- BC157. 本適用指針第106項(1)及び(2)に掲げるリース債権及びリース投資資産の残高に重要な変動がある場合のその内容の開示は、収益認識会計基準において契約資産及び契約負債の残高並びにそれらに重要な変動がある場合にその内容の注記が求められていることと同様に、財務諸表利用者がリース債権及びリース投資資産の重要な変動を理解することを可能にする有用な情報を提供すると考えられるため、求めることとした。
- BC158. 前項の注記については、例えば、リース債権及びリース投資資産の残高の重要な変動が1つの要因で発生している場合、金額的な影響額を開示しなくても、当該要因が重要な変動の主要因であることを開示することにより、財務諸表利用者に有用な情報が開示される場合もあると考えられるため、当該注記には必ずしも定量的情報を含める必要はないこととした(第107項なお書き参照)。
- BC159. 第106項(3)及び(4)に掲げるリース料債権部分の回収予定額並びに第109項に掲げる貸手のリース料の受取予定額を一定の期間に区分した開示は、財務諸表利用者が将来のリースのキャッシュ・フローの予測と流動性の見積りを正確に行うことを可能にする有用な情報を提供すると考えられるため、求めることとした。
2.連結財務諸表を作成している場合の個別財務諸表における表示及び注記事項
- BC160. これまで当委員会では、原則として、会計基準等の開発を行う際に、会計処理については、連結財務諸表と個別財務諸表の両方に同様に適用されるものとして開発してきているが、注記事項については、会計基準ごとに、個別財務諸表において連結財務諸表の内容をどの程度取り入れるかを定めてきている。
- BC161. また、金融商品取引法(昭和23年法律第25号)に基づき作成される個別財務諸表については、2013年6月20日に企業会計審議会から公表された「国際会計基準(IFRS)への対応のあり方に関する当面の方針」の内容を踏まえ簡素化が図られてきている。
- BC162. 連結財務諸表を作成している場合の個別財務諸表における会計基準及び本適用指針に関する表示及び注記事項については、これまでの簡素化の趣旨、財務諸表利用者が個別財務諸表におけるリースの状況を分析できるようにする観点及び財務諸表作成者の負担等を考慮し、会計基準第55項(1)①に記載した「会計方針に関する情報」について注記を求めることとした(本適用指針第110項参照)。ただし、「会計方針に関する情報」を記載するにあたり、連結財務諸表における記載を参照することができることとした(本適用指針第111項参照)。
Ⅴ.適用時期等
1.経過措置
(1)企業会計基準第13号を適用する際の経過措置
(リース取引開始日が企業会計基準第13号の適用初年度開始前である所有権移転外ファイナンス・リース取引の取扱い)
- BC163. 会計基準及び本適用指針の開発にあたり、企業会計基準第13号を定めたときの経過措置の取扱いについて検討を行った。
この点、借手及び貸手について、企業会計基準第13号を定めたときの経過措置を会計基準及び本適用指針においても継続する場合、借手のすべてのリースについて資産及び負債を計上するという、会計基準の主たる目的が一部のリースについて達成されないこととなる。
しかしながら、これらの経過措置は、企業会計基準第13号を定めたときに認めることとした簡便的な取扱いであり、会計基準の適用に伴い当該簡便的な取扱いを認めないことにより、これらの経過措置を適用してきたリースの会計処理についてコストが増加することが想定される。したがって、企業会計基準第13号を定めたときの経過措置を、会計基準及び本適用指針においても認めることとした(本適用指針第113項から第117項参照)。
(2)会計基準を適用する際の経過措置
- BC164. IFRS第16号においては、適用初年度における実務上の負担を軽減するためにさまざまな経過措置が設けられている。IFRS第16号において経過措置が置かれている趣旨を考慮し、会計基準の経過措置においても、我が国の会計基準を基礎とした場合に関連すると考えられるIFRS第16号の経過措置を可能な限り取り入れることとした。IFRS第16号の経過措置を取り入れるにあたっては、企業会計基準第13号の会計処理からの移行であることを考慮し、IFRS第16号の経過措置の一部について修正を行っている(本適用指針第118項から第126項及び第131項から第133項参照)。
(リースの識別)
- BC165. 会計基準におけるリースの識別の定め(会計基準第25項及び第26項)は企業会計基準第13号では置かれていなかった定めである。会計基準の適用によってこれまで企業会計基準第13号により会計処理されていなかった契約にリースが含まれると判断される場合があると考えられる。ここで、リースの識別の定めに基づき契約がリースを含むか否かの判断について、経過措置を定めない場合、新たな会計方針を過去の期間のすべてに遡及適用することになり、相当のコストが生じることとなると考えられる。したがって、本適用指針の経過措置では、リースの識別について、次の(1)及び(2)の方法のいずれか又は両方を適用することができることとした(本適用指針第119項参照)。
- (1) 適用初年度の前連結会計年度及び前事業年度の期末日において企業会計基準第13号を適用しているリース取引に、会計基準第25項及び第26項並びに本適用指針第5項から第8項を適用して契約にリースが含まれているか否かを判断することを行わずに会計基準を適用すること
- (2) 適用初年度の期首時点で存在する企業会計基準第13号を適用していない契約にリースが含まれているか否かを、当該時点で存在する事実及び状況に基づいて会計基準第25項及び第26項並びに本適用指針第5項から第8項を適用して判断すること
- BC166. 前項に記載したリースの識別に関する経過措置に関して、IFRS第16号では、実務上の便法として、契約がリースを含むか否かを見直さないことを選択できる経過措置が置かれている。この点について、IFRS第16号の結論の根拠では、従前の基準書とIFRS第16号との適用結果の差異が限定的であり、すべてのリースを見直すことを要求することによるコストが正当化されないために、IFRS第16号の経過措置が設けられたことが説明されている。
一方、前項に記載のとおり、会計基準におけるリースの識別の定めを適用することにより、これまで企業会計基準第13号により会計処理されていなかった契約にリースが含まれると判断される場合があると考えられる。
このような我が国の会計基準とIFRSとの背景の違いを考慮した結果、本適用指針におけるリースの識別に関する経過措置について、IFRS第16号とは異なる経過措置を取り入れることとした。
(借 手)
オペレーティング・リース取引に分類していたリース等
- BC167. 本適用指針第123項(2)①を適用してリース開始日から会計基準を適用されていたかのような帳簿価額を算定する場合、本適用指針第123項(3)及び(4)並びに第124項の取扱いを除き、リース開始日の使用権資産及びリース負債の計上額に係る定め並びにリース開始日後における使用権資産の償却、リースの契約条件の変更等に係る定めを適用して算定することになると考えられる。
借地権の設定に係る権利金等
- BC168. 借手の権利が強く保護されている旧借地権又は普通借地権の設定対価については、減価しない土地の一部取得に準ずるとの見方がある(本適用指針BC52項(1)参照)。これまで我が国の会計基準においては、借地権の設定に係る権利金等に係る会計処理は明らかではなかった。このため、旧借地権の設定に係る権利金等又は普通借地権の設定に係る権利金等について、仮に使用権資産の取得価額に含めて減価償却を行う原則的な会計処理(本適用指針第27項第1段落参照)を一律に求める場合、当該権利金等の支払に関する契約の締結時の企業の意図が会計処理に適切に反映されなくなる可能性がある。
また、本適用指針の適用を機に当該原則的な会計処理を行うことは、本適用指針の適用後において当該権利金等について減価償却を行わないものとして取り扱う例外的な会計処理(本適用指針第27項ただし書き参照)を認めていることから、本適用指針の適用後に新たに支払う権利金等についてのみ減価償却を行うとしても、財務報告の改善を図る一定の効果があると考えられる。
したがって、当該原則的な取扱いを適用する借手が会計基準の適用初年度の期首に計上されている旧借地権の設定に係る権利金等及び普通借地権の設定に係る権利金等を償却していなかった場合、当該権利金等を使用権資産の取得価額に含めた上で、当該権利金等のみ償却しないことができることとした(本適用指針第127項参照)。 - BC169. 旧借地権の設定に係る権利金等又は普通借地権の設定に係る権利金等について、本適用指針の適用前においては償却しない会計処理を選択していた場合に、使用権資産の取得価額に含めて減価償却を行う原則的な会計処理(第27項第1段落参照)を選択するとき、第118項ただし書きの方法を適用すると、当該権利金等の適用初年度の期首残高をリース開始日から本適用指針が適用されていたかのような帳簿価額により計上することになる。旧借地権又は普通借地権が設定されている土地の賃貸借契約においては、事後的にリース開始日を確認することが実務上困難である可能性があるため、当該権利金等を計上した日から借手のリース期間の終了までの期間で償却するものとして、当該権利金等を計上した日から償却した帳簿価額で算定することができることとした(第129項参照)。
なお、第118項ただし書きの方法を適用する場合に、当該権利金等に残存価額を設定する(BC54項参照)ときには、適用初年度の期首時点において見積った残存価額によることができるものと考えられる。
建設協力金等の差入預託保証金
- BC170. 本適用指針においては、将来返還される建設協力金等の差入預託保証金(敷金を除く。)及び差入預託保証金(建設協力金等及び敷金)のうち将来返還されない額について、次の理由から、本適用指針の適用前に採用していた会計処理を継続することができることとした(本適用指針第130項第1段落参照)。
- (1) 本適用指針における原則的な会計処理を本適用指針の適用前に締結された契約に対して一律に求める場合、当初の企業の契約の意図が反映されなくなる可能性がある。特に、建設協力金については、2024年改正前の金融商品実務指針において、長期前払家賃を償却する期間及び返済額と建設協力金の時価との差額を受取利息として計上する期間はいずれも「契約期間」として定められており、建設協力金を伴う賃貸借契約における単一の契約期間により、長期前払家賃の償却及び受取利息の計上を行うことを前提として契約が行われている場合があると考えられる。
- (2) 財務諸表作成者による遡及適用のコスト及び財務諸表利用者の便益を比較した場合、必ずしも後者が前者を上回るとは考えられない。
- また、将来返還される建設協力金等の差入預託保証金(敷金を除く。)に係る長期前払家賃及び差入預託保証金(建設協力金等及び敷金)のうち将来返還されない額について、本適用指針の適用初年度の前連結会計年度及び前事業年度の期末日の帳簿価額を適用初年度の期首における使用権資産に含めて会計処理を行うことができることとした(本適用指針第130項第2段落参照)。
(貸 手)
オペレーティング・リース取引に分類していたリース等
- BC171. 貸手のオペレーティング・リースの会計処理については、企業会計基準第13号においては、「通常の賃貸借取引に係る方法に準じて会計処理を行う」ことのみを定めていた。一方、本適用指針においては収益認識会計基準との整合性も考慮し、原則として定額法で会計処理を行うこととした(本適用指針第82項参照)。この会計処理の変更は、主に不動産契約におけるフリーレントやレントホリデーの会計処理に影響が生じると想定しており(本適用指針BC121項参照)、オペレーティング・リース取引に分類していたリース等の経過措置を置くことで、フリーレント期間が終了している不動産契約は修正が求められないこととなる(本適用指針第132項参照)。
(国際財務報告基準を適用している企業)
- BC172. IFRSを連結財務諸表に適用している企業(又はその連結子会社)が当該企業の個別財務諸表に会計基準を適用する場合には、実務上の負担を軽減する観点から、当該企業がIFRS第16号を適用した際に適用した経過措置の定めを適用可能とするため、会計基準の適用初年度において、IFRS第16号の経過措置又はIFRS第1号の免除規定を適用することができるとの定めを本適用指針に含めることとした(本適用指針第134項第1段落参照)。
なお、本適用指針はセール・アンド・リースバック取引についてIFRS第16号と異なる会計処理を定めているため、本適用指針第134項の経過措置を適用する場合であっても、本適用指針第126項の定めを適用することになると考えられる。
これらの定めを適用する場合、連結会社相互間におけるリースとして相殺消去されたリースに本適用指針第118項から第133項の定めを適用することができる(本適用指針第135項参照)。
設 例
- 本適用指針の設例は、会計基準及び本適用指針で示された内容についての理解を深めるために参考として示すものである。各設例に示されている会計処理は、本適用指針に従って具体的な会計処理や開示の実務を行うための手掛かりを与えるための例示であり、各企業のリースの実情等に応じ、以下に例示されていない会計処理も適当と判断される場合があることに留意する必要がある。
Ⅰ. リースの識別
[設例1]リースの識別に関するフローチャート
- [設例1] リースの識別に関するフローチャート
- リースを含むかどうかの判断
- 契約の締結時に、契約の当事者は、当該契約がリースを含むか否かを判断する。契約は、(1)資産が特定され、かつ、(2)特定された資産の使用を支配する権利を移転する場合にリースを含む(第5項参照)。
- (1) 資産が特定されているかどうかの判断
資産は、通常は契約に明記されることにより特定される。ただし、資産が契約に明記されている場合であっても、サプライヤーが、①使用期間全体を通じて当該資産を代替する実質上の能力を有し(第6項(1)参照)、かつ、②資産の代替により経済的利益を享受する場合(第6項(2)参照)、サプライヤーは資産を代替する実質的な権利を有しており、当該資産は特定された資産に該当しない。 - (2) 資産の使用を支配する権利が移転しているかどうかの判断
顧客が、特定された資産の使用期間全体を通じて、①資産の使用から生じる経済的利益のほとんどすべてを享受する権利を有し(第5項(1)参照)、かつ、②資産の使用を指図する権利を有する場合(第5項(2)参照)、資産の使用を支配する権利が移転する。
顧客は、次のいずれかの場合に、使用期間全体を通じて特定された②資産の使用を指図する権利を有している。
(ア) 顧客が使用期間全体を通じて使用から得られる経済的利益に影響を与える資産の使用方法を指図する権利を有している(第8項(1)参照)。
(イ) 使用から得られる経済的利益に影響を与える資産の使用方法に係る決定が事前になされている場合に、(i)顧客のみが資産の稼働に関する権利を有しているか、又は、(ii)資産の設計を行っている(第8項(2)参照)。
[設例2]鉄道車両(特定された資産)
- [設例2] 鉄道車両(特定された資産)
- [設例2-1] 資産を他の資産に代替する権利が実質的である場合
- リースを含むかどうかの判断
- 契約は、(1)資産が特定され、かつ、(2)特定された資産の使用を支配する権利を移転する場合にリースを含む。
- (1) 資産が特定されているかどうかの判断
サプライヤーが、①使用期間全体を通じて資産を他の資産に代替する実質上の能力を有し(第6項(1)参照)、かつ、②資産を代替する権利の行使により経済的利益を享受する場合(第6項(2)参照)、サプライヤーは資産を代替する実質的な権利を有しており、資産は特定されていない。 - ① サプライヤーが使用期間全体を通じて資産を他の資産に代替する実質上の能力
B社は、複数の鉄道車両を有しており、A社の承認なしに鉄道車両を入れ替えることができるため、B社は、使用期間全体を通じて資産を他の資産に代替する実質上の能力を有している。すなわち、第6項(1)が満たされている。 - ② サプライヤーが資産を代替する権利の行使により経済的利益を享受すること
①により、第6項(1)が満たされているため、サプライヤーが資産の代替により経済的利益を享受するかを判断する。
B社はどの鉄道車両を使用するかを決定することでB社の業務の効率化を図っており、鉄道車両を他のものに代替することからもたらされる経済的利益が代替することから生じるコストを上回るように決定するため、B社は、資産を代替する権利の行使により経済的利益を享受することになる。すなわち、第6項(2)が満たされている。
①及び②により、第6項(1)及び(2)のいずれも満たされているため、A社及びB社は契約において資産は特定されていないと判断した。 - (2) 資産の使用を支配する権利が移転しているかどうかの判断
(1)により、資産が特定されていないため、資産の使用を支配する権利が移転しているかどうかの判断は行わない。 - (3) リースを含むかどうかの判断
(1)により、資産が特定されていないため、A社及びB社は契約にリースは含まれていないと判断した。 - [設例2-2] 資産を他の資産に代替する権利が実質的でない場合
- リースを含むかどうかの判断
- 契約は、(1)資産が特定され、かつ、(2)特定された資産の使用を支配する権利を移転する場合にリースを含む。
- (1) 資産が特定されているかどうかの判断
サプライヤーが、①使用期間全体を通じて資産を他の資産に代替する実質上の能力を有し(第6項(1)参照)、かつ、②資産を代替する権利の行使により経済的利益を享受する場合(第6項(2)参照)、サプライヤーは資産を代替する実質的な権利を有しており、資産は特定されていない。 - ① サプライヤーが使用期間全体を通じて資産を他の資産に代替する実質上の能力
B社が鉄道車両の入替えを行うことができるのは、保守又は修理が必要な場合のみであるため、B社は使用期間全体を通じて資産を他の資産に代替する実質上の能力を有していない。すなわち、第6項(1)が満たされていない。
①により、第6項(1)が満たされていないため、A社及びB社は契約において資産は特定されていると判断した(第6項(2)の判断は行っていない。)。 - (2) 資産の使用を支配する権利が移転しているかどうかの判断
顧客が、特定された資産の使用期間全体を通じて、①資産の使用から生じる経済的利益のほとんどすべてを享受する権利を有し(第5項(1)参照)、かつ、②資産の使用を指図する権利を有する場合(第5項(2)参照)、資産の使用を支配する権利が移転する。 - ① 顧客が資産の使用から生じる経済的利益のほとんどすべてを享受する権利
A社は、5年の使用期間全体を通じて鉄道車両を独占的に使用することができるため、5年の使用期間全体を通じて特定された資産の使用から生じる経済的利益のほとんどすべてを享受する権利を有している。すなわち、第5項(1)が満たされている。 - ② 顧客が資産の使用を指図する権利
①により、第5項(1)が満たされているため、顧客が資産の使用を指図する権利を有するかを判断する。
ここでは、前提条件4より、A社は、使用期間全体を通じて鉄道車両の使用を指図する権利を有している。すなわち、第5項(2)が満たされている。
①及び②により、使用期間全体を通じて第5項(1)及び(2)のいずれも満たされているため、A社及びB社は鉄道車両の使用を支配する権利がB社からA社に移転していると判断した。 - (3) リースを含むかどうかの判断
(1)により、資産が特定され、かつ、(2)により、特定された資産の使用を支配する権利がB社からA社に移転しているため、A社及びB社は契約にリースが含まれていると判断した。
[設例3]小売区画(特定された資産)
- [設例3] 小売区画(特定された資産)
- [設例3-1] 資産を他の資産に代替する権利が実質的である場合
- リースを含むかどうかの判断
- 契約は、(1)資産が特定され、かつ、(2)特定された資産の使用を支配する権利を移転する場合にリースを含む。
- (1) 資産が特定されているかどうかの判断
サプライヤーが、①使用期間全体を通じて資産を他の資産に代替する実質上の能力を有し(第6項(1)参照)、かつ、②資産を代替する権利の行使により経済的利益を享受する場合(第6項(2)参照)、サプライヤーは資産を代替する実質的な権利を有しており、資産は特定されていない。 - ① サプライヤーが使用期間全体を通じて資産を他の資産に代替する実質上の能力
空港内の搭乗エリアには契約に定められた仕様を満たす多くの区画が存在しており、B社は、A社の承認なしにA社が使用する区画をいつでも契約に定められた仕様を満たす他の区画に変更する権利を有しているため、B社は使用期間全体を通じて資産を他の資産に代替する実質上の能力を有している。すなわち、第6項(1)が満たされている。 - ② サプライヤーが資産を代替する権利の行使により経済的利益を享受すること
①により、第6項(1)が満たされているため、サプライヤーが資産の代替により経済的利益を享受するかを判断する。
前提条件3より、B社は区画の入替えを行うことで、コストを上回る経済的利益を享受すると見込まれるため、B社は資産を代替する権利の行使により経済的利益を享受することになる。すなわち、第6項(2)が満たされている。
①及び②により、第6項(1)及び(2)のいずれも満たされているため、A社及びB社は契約において資産は特定されていないと判断した。 - (2) 資産の使用を支配する権利が移転しているかどうかの判断
(1)により、資産が特定されていないため、資産の使用を支配する権利が移転しているかどうかの判断は行わない。 - (3) リースを含むかどうかの判断
(1)により、資産が特定されていないため、A社及びB社は契約にリースは含まれていないと判断した(資産の使用を支配する権利が移転しているかどうかの判断は行っていない。)。 - [設例3-2] 資産を他の資産に代替する権利が実質的でない場合
- リースを含むかどうかの判断
- 契約は、(1)資産が特定され、かつ、(2)特定された資産の使用を支配する権利を移転する場合にリースを含む。
- (1) 資産が特定されているかどうかの判断
サプライヤーが、①使用期間全体を通じて資産を他の資産に代替する実質上の能力を有し(第6項(1)参照)、かつ、②資産を代替する権利の行使により経済的利益を享受する場合(第6項(2)参照)、サプライヤーは資産を代替する実質的な権利を有しており、資産は特定されていない。 - ① サプライヤーが使用期間全体を通じて資産を他の資産に代替する実質上の能力
B社は、A社が使用する区画をいつでも契約に定められた仕様を満たす他の区画に変更する権利を有しているため、B社は使用期間全体を通じて資産を他の資産に代替する実質上の能力を有している。すなわち、第6項(1)が満たされている。 - ② サプライヤーが資産を代替する権利の行使により経済的利益を享受すること
①により、第6項(1)が満たされているため、サプライヤーが資産の代替により経済的利益を享受するかを判断する。
B社が区画の入替えから生じるコストを上回る経済的利益を享受することができるのは、B社が新たな大口テナントと小売エリア内の区画を使用する契約を締結したときのみであり、前提条件3のとおり、その状況の生じる可能性は高くないことが見込まれることから、当該資産を他の資産に代替することからもたらされる経済的利益が、代替することから生じるコストを上回ることは見込まれない。したがって、B社は、資産を代替する権利の行使により経済的利益を享受することとならない。すなわち、第6項(2)が満たされていない。
①により、第6項(1)は満たされているが、②により、第6項(2)が満たされていないため、①及び②の両方を満たす契約ではなく、A社及びB社は契約において資産は特定されていると判断した。 - (2) 資産の使用を支配する権利が移転しているかどうかの判断
顧客が、特定された資産の使用期間全体を通じて、①資産の使用から生じる経済的利益のほとんどすべてを享受する権利を有し(第5項(1)参照)、かつ、②資産の使用を指図する権利を有する場合(第5項(2)参照)、資産の使用を支配する権利が移転する。 - ① 顧客が資産の使用から生じる経済的利益のほとんどすべてを享受する権利
A社は、5年の使用期間全体を通じて区画Xを独占的に使用することができるため、5年の使用期間全体を通じて資産の使用から生じる経済的利益のほとんどすべてを享受する権利を有している。すなわち、第5項(1)が満たされている。 - ② 顧客が資産の使用を指図する権利
①により、第5項(1)が満たされているため、顧客が資産の使用を指図する権利を有するかを判断する。
ここでは、前提条件5より、A社は、5年の使用期間全体を通じて区画Xの使用を指図する権利を有している。すなわち、第5項(2)が満たされている。
①及び②により、使用期間全体を通じて第5項(1)及び(2)のいずれも満たされているため、A社及びB社は割り当てられた区画Xの使用を支配する権利がB社からA社に移転していると判断した。 - (3) リースを含むかどうかの判断
(1)により、資産が特定され、かつ、(2)により、特定された資産の使用を支配する権利がB社からA社に移転しているため、A社及びB社は契約にリースが含まれていると判断した。
[設例4]ガスの貯蔵タンク(特定された資産)
- [設例4] ガスの貯蔵タンク(特定された資産)
- [設例4-1] 稼働能力部分が特定された資産に該当しない場合
- リースを含むかどうかの判断
- 契約は、(1)資産が特定され、かつ、(2)特定された資産の使用を支配する権利を移転する場合にリースを含む。
- (1) 資産が特定されているかどうかの判断
顧客が使用できる資産が物理的に別個のものではなく、資産の稼働能力の一部分である場合、当該資産の稼働能力部分は特定された資産に該当しない。ただし、顧客が使用することができる資産の稼働能力が、当該資産の稼働能力のほとんどすべてであることにより、顧客が当該資産の使用から生じる経済的利益のほとんどすべてを享受する権利を有する場合、当該資産の稼働能力部分は特定された資産に該当する(第7項参照)。
A社が使用できるB社が指定する貯蔵タンクの容量の70%は、物理的に別個のものではなく、また、貯蔵タンクの容量の70%は貯蔵タンクの容量全体のほとんどすべてに該当しない。A社が使用することができる資産の稼働能力は、当該資産の稼働能力のほとんどすべてに該当しないため、A社は貯蔵タンクの使用から生じる経済的利益のほとんどすべてを享受する権利を有することとはならない。したがって、A社及びB社は、契約においてA社が使用できる稼働能力部分は、特定された資産に該当しないと判断した。 - (2) リースを含むかどうかの判断
(1)により、資産が特定されていないため、A社及びB社は契約にリースは含まれていないと判断した(資産の使用を支配する権利が移転しているかどうかの判断は行っていない。)。 - [設例4-2] 稼働能力部分が特定された資産に該当する場合
- リースを含むかどうかの判断
- 契約は、(1)資産が特定され、かつ、(2)特定された資産の使用を支配する権利を移転する場合にリースを含む。
- (1) 資産が特定されているかどうかの判断
顧客が使用できる資産が物理的に別個のものではなく、資産の稼働能力の一部分である場合、当該資産の稼働能力部分は特定された資産に該当しない。ただし、顧客が使用することができる資産の稼働能力が、当該資産の稼働能力のほとんどすべてであることにより、顧客が当該資産の使用から生じる経済的利益のほとんどすべてを享受する権利を有する場合、当該資産の稼働能力部分は特定された資産に該当する(第7項参照)。
A社が使用できるB社が指定する貯蔵タンクの容量の99.9%は、物理的に別個のものではないものの、貯蔵タンクの容量の99.9%は貯蔵タンクの容量全体のほとんどすべてに該当する。A社が使用することができる資産の稼働能力が、当該資産の稼働能力のほとんどすべてに該当することにより、A社は貯蔵タンクの使用から生じる経済的利益のほとんどすべてを享受する権利を有することとなる。したがって、A社及びB社は、契約においてA社が使用できる稼働能力部分は、特定された資産に該当すると判断した。 - (2) 資産の使用を支配する権利が移転しているかどうかの判断
顧客が、特定された資産の使用期間全体を通じて、①資産の使用から生じる経済的利益のほとんどすべてを享受する権利を有し(第5項(1)参照)、かつ、②資産の使用を指図する権利を有する場合(第5項(2)参照)、資産の使用を支配する権利が移転する。 - ① 顧客が資産の使用から生じる経済的利益のほとんどすべてを享受する権利
A社が使用することができる貯蔵タンクの稼働能力は、当該資産の稼働能力のほとんどすべてであるため、A社は使用期間全体を通じて資産の使用から生じる経済的利益のほとんどすべてを享受する権利を有している。すなわち、第5項(1)が満たされている。 - ② 顧客が資産の使用を指図する権利
①により、第5項(1)が満たされているため、顧客が資産の使用を指図する権利を有するかを判断する。
ここでは、前提条件2より、A社は、使用期間全体を通じて当該貯蔵タンクの使用を指図する権利を有している。すなわち、第5項(2)が満たされている。
①及び②により、使用期間全体を通じて第5項(1)及び(2)のいずれも満たされているため、A社及びB社は当該貯蔵タンクの使用を支配する権利がB社からA社に移転していると判断した。 - (3) リースを含むかどうかの判断
(1)により、資産が特定され、かつ、(2)により、特定された資産の使用を支配する権利がB社からA社に移転しているため、A社及びB社は契約にリースが含まれていると判断した。
[設例5]ネットワーク・サービス(使用を指図する権利)
- [設例5] ネットワーク・サービス(使用を指図する権利)
- [設例5-1] 顧客が資産の使用を指図する権利を有していない場合
- リースを含むかどうかの判断
- 契約は、(1)資産が特定され、かつ、(2)特定された資産の使用を支配する権利を移転する場合にリースを含む。
- (1) 顧客が資産の使用を指図する権利
①使用期間全体を通じて使用から得られる経済的利益に影響を与える資産の使用方法を指図する権利を顧客が有しているか(第8項(1)参照)、又は、②使用から得られる経済的利益に影響を与える資産の使用方法に係る決定が事前になされている場合に、(ア)使用期間全体を通じて顧客のみが資産の稼働に関する権利を有しているとき、若しくは、(イ)顧客が使用期間全体を通じた資産の使用方法を事前に決定するように資産の設計を行っているとき(第8項(2)参照)に、顧客が資産の使用を指図する権利を有している。すなわち、第5項(2)が満たされる。
ここでは、次のとおり、B社が資産の使用を指図する権利を有しており、第8項(1)及び(2)のいずれも満たされていない。したがって、A社は、使用期間全体を通じて資産の使用を指図する権利を有していない。すなわち、第5項(2)が満たされていない。
・ A社が有する唯一の決定権は、当該ネットワーク・サービスの水準(サーバーのアウトプット)を当該ネットワーク・サービスを利用する契約の締結時に決定することのみであり、契約を変更しない限り当該水準を変更することはできない。
・ A社は、サーバーを使用してどのようにデータを送信するのか、サーバーを再設定するのか、他の目的でサーバーを使用するのかどうかなどのサーバーの使用方法を指図する権利を有していない(第8項(1)参照)。
・ A社は、サーバーを稼働する権利を有しておらず、設計にも関与していない(第8項(2)①及び②参照)。 - (2) リースを含むかどうかの判断
(1)により、顧客が資産の使用を指図する権利を有していないため、A社及びB社は契約にリースは含まれていないと判断した(資産が特定されているかどうかの判断は行っていない。)。 - [設例5-2] 顧客が資産の使用を指図する権利を有している場合
- リースを含むかどうかの判断
- 契約は、(1)資産が特定され、かつ、(2)特定された資産の使用を支配する権利を移転する場合にリースを含む。
- (1) 資産が特定されているかどうかの判断
ここでは、前提条件4より、A社が使用するサーバーは特定されている。 - (2) 資産の使用を支配する権利が移転しているかどうかの判断
顧客が、特定された資産の使用期間全体を通じて、①資産の使用から生じる経済的利益のほとんどすべてを享受する権利を有し(第5項(1)参照)、かつ、②資産の使用を指図する権利を有する場合(第5項(2)参照)、資産の使用を支配する権利が移転する。 - ① 顧客が資産の使用から生じる経済的利益のほとんどすべてを享受する権利
A社は、3年の使用期間全体を通じて自社の敷地に設置されたサーバーを自社のために使用することができるため、使用期間全体を通じて資産の使用から生じる経済的利益のほとんどすべてを享受する権利を有している。すなわち、第5項(1)が満たされている。 - ② 顧客が資産の使用を指図する権利
①により、第5項(1)が満たされているため、顧客が資産の使用を指図する権利を有するかを判断する。
(ア)使用期間全体を通じて使用から得られる経済的利益に影響を与える資産の使用方法を指図する権利を顧客が有しているか(第8項(1)参照)、又は、(イ)使用から得られる経済的利益に影響を与える資産の使用方法に係る決定が事前になされている場合に、(i)使用期間全体を通じて顧客のみが資産の稼働に関する権利を有しているとき、若しくは、(ii)顧客が使用期間全体を通じた資産の使用方法を事前に決定するように資産の設計を行っているとき(第8項(2)参照)に、顧客が資産の使用を指図する権利を有している。すなわち、第5項(2)が満たされる。
A社は、3年の使用期間全体を通じて当該サーバーの使用方法(A社の事業においてサーバーをどのように使用するのかや、当該サーバーにどのデータを保管するのか)を決定する権利を有することにより、使用期間全体を通じて資産の使用から得られる経済的利益に影響を与える資産の使用方法を指図する権利を有している。すなわち、第8項(1)が満たされている。したがって、A社は、使用期間全体を通じて資産の使用を指図する権利を有している。すなわち、第5項(2)が満たされている。
①及び②により、使用期間全体を通じて第5項(1)及び(2)のいずれも満たされているため、A社及びB社は当該サーバーの使用を支配する権利がB社からA社に移転していると判断した。 - (3) リースを含むかどうかの判断
(1)により、資産が特定され、かつ、(2)により、特定された資産の使用を支配する権利がB社からA社に移転しているため、A社及びB社は契約にリースが含まれていると判断した。
[設例6]電力(使用を指図する権利)
- [設例6] 電力(使用を指図する権利)
- [設例6-1] 使用方法が契約で定められており、顧客が資産の使用を指図する権利を有していない場合
- リースを含むかどうかの判断
- 契約は、(1)資産が特定され、かつ、(2)特定された資産の使用を支配する権利を移転する場合にリースを含む。
- (1) 資産が特定されているかどうかの判断
ここでは、前提条件5より、A社が購入する電力を産出する発電所は特定されている。 - (2) 資産の使用を支配する権利が移転しているかどうかの判断
顧客が、特定された資産の使用期間全体を通じて、①資産の使用から生じる経済的利益のほとんどすべてを享受する権利を有し(第5項(1)参照)、かつ、②資産の使用を指図する権利を有する場合(第5項(2)参照)、資産の使用を支配する権利が移転する。 - ① 顧客が資産の使用から生じる経済的利益のほとんどすべてを享受する権利
A社は、3年の使用期間全体を通じて当該発電所が産出する電力のすべてを得る権利を有するため、3年の使用期間全体を通じて資産の使用から生じる経済的利益のほとんどすべてを享受する権利を有している。すなわち、第5項(1)が満たされている。 - ② 顧客が資産の使用を指図する権利
①により、第5項(1)が満たされているため、顧客が資産の使用を指図する権利を有するかを判断する。
(ア)使用期間全体を通じて使用から得られる経済的利益に影響を与える資産の使用方法を指図する権利を顧客が有しているか(第8項(1)参照)、又は、(イ)使用から得られる経済的利益に影響を与える資産の使用方法に係る決定が事前になされている場合に、(i)使用期間全体を通じて顧客のみが資産の稼働に関する権利を有しているとき、若しくは、(ii)顧客が使用期間全体を通じた資産の使用方法を事前に決定するように資産の設計を行っているとき(第8項(2)参照)に、顧客が資産の使用を指図する権利を有している。すなわち、第5項(2)が満たされる。
当該発電所の使用方法は契約で事前に定められており、次のとおり、第8項(1)及び(2)のいずれも満たされていない。したがって、A社は、使用期間全体を通じて資産の使用を指図する権利を有していない。すなわち、第5項(2)が満たされていない
・ A社は、使用期間全体を通じて当該発電所の事前に決定されている使用方法を変更することができないため、当該発電所の使用方法を指図する権利を有していない(第8項(1)参照)。
・ A社は、使用期間全体を通じて当該発電所を稼働する権利を有していない(第8項(2)①参照)。また、A社は、当該発電所を設計していない(第8項(2)②参照)。
①により、第5項(1)が満たされているが、②により、第5項(2)が満たされていないため、A社及びB社は当該発電所の使用を支配する権利はB社からA社に移転していないと判断した。 - (3) リースを含むかどうかの判断
(1)により、資産は特定されたが、(2)により、特定された資産の使用を支配する権利がB社からA社に移転していないため、A社及びB社は契約にリースが含まれていないと判断した。 - [設例6-2] 使用方法が契約で定められており、顧客が資産の使用を指図する権利を有している場合
- リースを含むかどうかの判断
- 契約は、(1)資産が特定され、かつ、(2)特定された資産の使用を支配する権利を移転する場合にリースを含む。
- (1) 資産が特定されているかどうかの判断
ここでは、前提条件5より、A社が購入する電力を産出する発電所は特定されている。 - (2) 資産の使用を支配する権利が移転しているかどうかの判断
顧客が、特定された資産の使用期間全体を通じて、①資産の使用から生じる経済的利益のほとんどすべてを享受する権利を有し(第5項(1)参照)、かつ、②資産の使用を指図する権利を有する場合(第5項(2)参照)、資産の使用を支配する権利が移転する。 - ① 顧客が資産の使用から生じる経済的利益のほとんどすべてを享受する権利
A社は、10年の使用期間全体を通じて当該発電所が産出する電力のすべてを得る権利を有するため、10年の使用期間全体を通じて資産の使用から生じる経済的利益のほとんどすべてを享受する権利を有している。すなわち、第5項(1)が満たされている。 - ② 顧客が資産の使用を指図する権利
①により、第5項(1)が満たされているため、顧客が資産の使用を指図する権利を有するかを判断する。
(ア)使用期間全体を通じて使用から得られる経済的利益に影響を与える資産の使用方法を指図する権利を顧客が有しているか(第8項(1)参照)、又は、(イ)使用から得られる経済的利益に影響を与える資産の使用方法に係る決定が事前になされている場合に、(i)使用期間全体を通じて顧客のみが資産の稼働に関する権利を有しているとき、若しくは、(ii)顧客が使用期間全体を通じた資産の使用方法を事前に決定するように資産の設計を行っているとき(第8項(2)参照)に、顧客が資産の使用を指図する権利を有している。すなわち、第5項(2)が満たされる。
A社は、契約により当該発電所の使用方法を決定する権利を有する。すなわち、第8項(1)が満たされている。したがって、A社は、使用期間全体を通じて資産の使用を指図する権利を有している。すなわち、第5項(2)が満たされている。
①及び②により、使用期間全体を通じて第5項(1)及び(2)のいずれも満たされているため、A社及びB社は当該発電所の使用を支配する権利がB社からA社に移転していると判断した。 - (3) リースを含むかどうかの判断
(1)により、資産が特定され、かつ、(2)により、特定された資産の使用を支配する権利がB社からA社に移転しているため、A社及びB社は契約にリースが含まれていると判断した。 - [設例6-3] 使用方法が設計によって事前に決定されており、顧客が資産の使用を指図する権利を有している場合
- リースを含むかどうかの判断
- 契約は、(1)資産が特定され、かつ、(2)特定された資産の使用を支配する権利を移転する場合にリースを含む。
- (1) 資産が特定されているかどうかの判断
ここでは、前提条件5より、A社が購入する電力を産出する太陽光ファームは特定されている。 - (2) 資産の使用を支配する権利が移転しているかどうかの判断
顧客が、特定された資産の使用期間全体を通じて、①資産の使用から生じる経済的利益のほとんどすべてを享受する権利を有し(第5項(1)参照)、かつ、②資産の使用を指図する権利を有する場合(第5項(2)参照)、資産の使用を支配する権利が移転する。 - ① 顧客が資産の使用から生じる経済的利益のほとんどすべてを享受する権利
A社は、20年の使用期間全体を通じて当該太陽光ファームが産出する電力のすべてを得る権利を有するため、使用期間全体を通じて資産の使用から生じる経済的利益のほとんどすべてを享受する権利を有している。すなわち、第5項(1)が満たされている。 - ② 顧客が資産の使用を指図する権利
①により、第5項(1)が満たされているため、顧客が資産の使用を指図する権利を有するかを判断する。
(ア)使用期間全体を通じて使用から得られる経済的利益に影響を与える資産の使用方法を指図する権利を顧客が有しているか(第8項(1)参照)、又は、(イ)使用から得られる経済的利益に影響を与える資産の使用方法に係る決定が事前になされている場合に、(i)使用期間全体を通じて顧客のみが資産の稼働に関する権利を有しているとき、若しくは、(ii)顧客が使用期間全体を通じた資産の使用方法を事前に決定するように資産の設計を行っているとき(第8項(2)参照)に、顧客が資産の使用を指図する権利を有している。すなわち、第5項(2)が満たされる。
当該太陽光ファームの使用方法に係る決定は、当該太陽光ファームの設計によって事前になされており、かつ、使用期間全体を通じた当該太陽光ファームの使用方法を事前に決定するように、A社が当該太陽光ファームを設計している。すなわち、第8項(2)が満たされている。したがって、A社は、使用期間全体を通じて資産の使用を指図する権利を有している。すなわち、第5項(2)が満たされている。
①及び②により、使用期間全体を通じて第5項(1)及び(2)のいずれも満たされているため、A社及びB社は当該太陽光ファームの使用を支配する権利がB社からA社に移転していると判断した。 - (3) リースを含むかどうかの判断
(1)により、資産が特定され、かつ、(2)により、特定された資産の使用を支配する権利がB社からA社に移転しているため、A社及びB社は契約にリースが含まれていると判断した。
[設例7]リースを構成する部分とリースを構成しない部分への対価の配分
- [設例7] リースを構成する部分とリースを構成しない部分への対価の配分
- 1.借 手
- (1) リースを構成する部分とリースを構成しない部分とに分けて会計処理する場合(会計基準第28項)
- ① リースを構成する部分とリースを構成しない部分への対価の配分
借手は、契約における対価の金額について、リースを構成する部分とリースを構成しない部分とに配分するにあたって、それぞれの部分の独立価格の比率に基づいて配分する。契約における対価の中に、借手に財又はサービスを移転しない活動及びコストについて借手が支払う金額が含まれる場合、借手は、当該金額を契約における対価の一部としてリースを構成する部分とリースを構成しない部分とに配分する。借手は、固定資産税及び保険料の金額を把握していたとしても、これを対価から控除することはしない(本適用指針第11項また書き及びBC18項参照)。 - ② 会計処理
- X1年4月1日(リース開始日)
- X1年9月30日(第1回支払日・中間決算日)
- 以後も同様な会計処理を行う。
- (2) リースを構成する部分とリースを構成しない部分とを合わせてリースを構成する部分として会計処理する場合(会計基準第29項)
- ① リースを構成する部分とリースを構成しない部分への対価の配分
リースを構成する部分と関連するリースを構成しない部分とを合わせてリースを構成する部分として会計処理するため、対価の配分は不要となる。 - ② 会計処理
- X1年4月1日(リース開始日)
- X1年9月30日(第1回支払日・中間決算日)
- 以後も同様な会計処理を行う。
- 2.貸 手
- (1) 借手に財又はサービスを移転しない活動及びコストを契約における対価の一部としてリースを構成する部分とリースを構成しない部分とに配分する場合(本適用指針第13項(1)参照)
- ① リースを構成する部分とリースを構成しない部分への対価の配分
リースを構成する部分とリースを構成しない部分の独立販売価格の比率に基づいて、借手に財又はサービスを移転しない活動及びコスト(固定資産税及び保険料)を含む契約における対価の金額について、リースを構成する部分とリースを構成しない部分とに配分する。このとき、固定資産税及び保険料に相当する額を対価に含めていたとしても、別個に会計処理を行うことはしない。 - ② 会計処理
- X1年4月1日(リース開始日)
- X1年9月30日(第1回回収日・中間決算日)
- 以後も同様な会計処理を行う。
- (2) 維持管理費用相当額を契約における対価から控除する場合(本適用指針第13項(2)参照)
- ① リースを構成する部分とリースを構成しない部分への対価の配分
リースを構成する部分とリースを構成しない部分の独立販売価格の比率に基づいて、契約における対価の金額から維持管理費用相当額(固定資産税及び保険料)を控除した金額について、リースを構成する部分とリースを構成しない部分とに配分する。
なお、ここでは、維持管理費用相当額がリースを構成する部分の金額に占める割合に重要性が乏しいとはいえないと判断している。 - ② 会計処理
- X1年4月1日(リース開始日)
- X1年9月30日(第1回回収日・中間決算日)
- 以後も同様な会計処理を行う。
Ⅱ. 借手のリース期間
[設例8]普通借地契約及び普通借家契約における借手のリース期間
- [設例8] 普通借地契約及び普通借家契約における借手のリース期間
- [設例8]の普通借地契約及び普通借家契約の設例における解約不能期間の判断、経済的インセンティブの分析、シナリオ、借手のリース期間の判断等については、借手のリース期間の決定に至る思考プロセスや借手のリース期間の判断のための手掛かりの例示であり、前提条件や企業のビジネスモデルが異なる場合には結論も異なり得ることに留意する必要がある。また、各設例は、会計基準及び本適用指針における借手のリース期間の判断に資するために示すものであり、借地借家法等の法的解釈を示すものではない。
- [設例8-1] 普通借家契約(延長オプションを含むか否かの判断)
- 延長オプションを含むか否かの判断
- (1) 契約期間は1年であるが、借地借家法により、貸手は、正当な事由があると認められる場合でなければ、更新の拒絶の通知を行うことができない。
- (2) 前提条件4より、B社が更新を拒絶する正当な事由があると認められるとは考えられないとされており、A社は、借地借家法を根拠として、契約期間である1年を超える期間について借手のリース期間を決定するための延長オプションを有すると判断した。
- (3) A社は、借手のリース期間を決定するにあたっては、解約不能期間である3か月を超えて、借手が行使することが合理的に確実であるリースの延長オプションの対象期間及び借手が行使しないことが合理的に確実であるリースの解約オプションの対象期間を考慮することとなる(会計基準第31項)。
- (4) A社が延長オプションを行使すること又は解約オプションを行使しないことが合理的に確実であるかどうかは、経済的インセンティブを生じさせる要因の有無を総合的に勘案して評価し、判断する必要がある([設例8-2]から[設例8-5])。
- [設例8-2] 普通借家契約(延長オプションを行使することが合理的に確実である場合(1))
- 借手のリース期間の決定
- (解約不能期間の決定)
- (1) 前提条件3より、A社は、賃貸借契約の契約期間である1年間の途中で解約することはできないため、当該契約における解約不能期間は1年であると判断した。また、1年経過後、当該契約を毎年更新することができるため、1年を超える期間について借手のリース期間を決定するために考慮すべき延長オプションを有すると判断した。これを踏まえて、A社は、借手のリース期間の決定にあたって、当該解約不能期間を超えて、借手が行使することが合理的に確実であるリースの延長オプションの対象期間及び借手が行使しないことが合理的に確実であるリースの解約オプションの対象期間を考慮することとなる(会計基準第31項)。
- (前提条件の分析)
- (2) A社は、行使することが合理的に確実である延長オプション又は行使しないことが合理的に確実である解約オプションの対象期間を決定するにあたって、例えば、次の要因を考慮する(本適用指針第17項参照)。
- ① 延長オプション又は解約オプションの対象期間に係る契約条件(リース料、違約金、残価保証、購入オプションなど)
- ② 大幅な賃借設備の改良の有無
- ③ リースの解約に関連して生じるコスト
- ④ 企業の事業内容に照らした原資産の重要性
- ⑤ 延長オプション又は解約オプションの行使条件
- (3) (2)①(本適用指針第17項(1))の要因については、前提条件3のとおり、A社は、更新時の市場レートの賃料で当該契約を更新することができ、また、延長オプションの対象期間に係るその他の契約条件が特に付されていないことから、A社は経済的インセンティブの観点から特に考慮すべきものはないと判断した。
- (4) (2)②及び③(本適用指針第17項(2)及び(3))の要因については、前提条件4のとおり、A社は、リース開始日において当該店舗に対して重要な建物附属設備を設置していることから、大幅な賃借設備の改良を行っていると考えた。また、この状況において延長オプションを行使しない場合には建物附属設備が除却されるため、延長オプションを行使する経済的インセンティブがあると判断した。一方、前提条件5のとおり、A社のX事業では、営業上の観点から定期的に店舗のリニューアルを行う必要があり、概ね5年で当該建物附属設備の一部について入替えのため除却と追加コストの発生が見込まれる。したがって、A社は経済的インセンティブの観点から当該店舗の損益状況によってはリニューアルを行ってまで延長オプションを行使しない可能性があると判断した。
- (5) (2)④(本適用指針第17項(4))の要因については、前提条件6のとおり、当該店舗は戦略的に重要な店舗ではなく、損益の状況によっては撤退することがあり得るため、A社は企業の事業内容に照らした原資産の重要性は必ずしも高くないと判断した。
- (6) (2)⑤(本適用指針第17項(5))の要因については、前提条件3のとおり、延長オプションの行使条件は付されていないため、A社は経済的インセンティブの観点から特に考慮すべきものはないと判断した。
- (借手のリース期間の決定)
- (7) A社は、リース開始日において借手のリース期間として確実である1年の解約不能期間を出発点として、(3)から(6)の経済的インセンティブを生じさせる要因の有無を総合的に勘案して評価し、その期間までは延長する可能性が合理的に確実といえるまで高いが、その期間を超えると合理的に確実よりは延長する可能性が低下すると判断するその期間を借手のリース期間として決定する。
- (8) ここで、A社は、自社のビジネスモデルに基づき現実的に想定し得る次の2つのシナリオについて検討を行った。
(シナリオ1)5年経過時点まで延長オプションを行使する。
(シナリオ2)10年経過時点まで延長オプションを行使する。 - (9) まずシナリオ1について、当該店舗に対して重要な建物附属設備を設置している状況において早期に延長オプションを行使しない場合には建物附属設備が除却されるため、解約不能期間の経過後、店舗のリニューアルを行う前までの期間(5年間)については、延長オプションを行使する可能性は合理的に確実よりも高いと判断した。
- (10) 次にシナリオ2について、5年経過後に店舗のリニューアルを行い追加コストが必要となるが、当該店舗は戦略的に重要な店舗ではなく企業の事業内容に照らした原資産の重要性は必ずしも高くない状況において店舗のリニューアルを行ってまで延長オプションを行使するかどうかは当該店舗の損益の状況次第であることから、A社は、シナリオ2の10年経過時点まで延長オプションを行使する可能性は、シナリオ1の5年経過時点まで延長オプションを行使する可能性よりも相対的に低く、合理的に確実よりも低いと判断した。
- (11) 以上から、A社は、借手のリース期間を5年と決定した。これを図示すると、次の[図8-2]のとおりとなる。
- [設例8-3] 普通借家契約(延長オプションを行使することが合理的に確実である場合(2))
- 借手のリース期間の決定
- (解約不能期間の決定)
- (1) 前提条件3より、A社は賃貸借契約の契約期間である1年間の途中で解約することはできないため、当該契約における解約不能期間は1年であると判断した。また、1年経過後は当該契約を毎年更新することができるため、1年を超える期間について借手のリース期間を決定するために考慮すべき延長オプションを有すると判断した。これを踏まえて、A社は借手のリース期間の決定にあたって、当該解約不能期間を超えて、借手が行使することが合理的に確実であるリースの延長オプションの対象期間及び借手が行使しないことが合理的に確実であるリースの解約オプションの対象期間を考慮することとなる(会計基準第31項)。
- (前提条件の分析)
- (2) A社は、行使することが合理的に確実である延長オプション又は行使しないことが合理的に確実である解約オプションの対象期間を決定するにあたって、例えば、本適用指針第17項に例示する要因を考慮する。
- (3) 本適用指針第17項(1)の要因については、前提条件3のとおり、A社は更新時の市場レートの賃料で当該契約を更新することができ、また、延長オプションの対象期間に係るその他の契約条件が特に付されていないことから、A社は経済的インセンティブの観点から特に考慮すべきものはないと判断した。
- (4) 本適用指針第17項(2)及び(3)の要因については、前提条件4のとおり、A社は、リース開始日において当該店舗を戦略的に重要な店舗の一つと位置付けており、他の店舗に比べて多額の投資を行い重要な建物附属設備を設置していることから、大幅な賃借設備の改良を行っていると考えた。また、この状況において延長オプションを行使しない場合には建物附属設備が除却されるため、延長オプションを行使する経済的インセンティブがあると判断した。一方、前提条件5のとおり、A社のX事業では、営業上の観点から定期的なリニューアルを行う必要があり、概ね5年で当該建物附属設備の一部について入替えのための除却と追加コストの発生が見込まれる。したがって、A社は経済的インセンティブの観点から延長オプションを行使しない可能性があると判断した。
- (5) 本適用指針第17項(4)の要因については、前提条件6のとおり、店舗の立地がX事業にとって最良であり、A社は戦略的に重要な店舗の一つとして営業することを想定していることに加え、損益の状況のみで撤退の判断を行わないとしていることから、A社は企業の事業内容に照らした原資産の重要性は高いと判断した。
- (6) 本適用指針第17項(5)の要因については、前提条件3のとおり延長オプションの行使条件は付されていないため、A社は経済的インセンティブの観点から特に考慮すべきものはないと判断した。
- (借手のリース期間の決定)
- (7) A社は、リース開始日において借手のリース期間として確実である1年の解約不能期間を出発点として、(3)から(6)の経済的インセンティブを生じさせる要因の有無を総合的に勘案して評価し、その期間までは延長する可能性が合理的に確実といえるまで高いが、その期間を超えると合理的に確実よりは延長する可能性が低下すると判断するその期間を借手のリース期間として決定する。
- (8) ここで、A社は、自社のビジネスモデルに基づき現実的に想定し得る次の3つのシナリオについて検討を行った。
(シナリオ1)5年経過時点まで延長オプションを行使する。
(シナリオ2)10年経過時点まで延長オプションを行使する。
(シナリオ3)20年経過時点まで延長オプションを行使する。 - (9) まずシナリオ1について、A社は当該店舗について戦略的に重要な店舗の一つと位置付けており、他の店舗に比べて多額の投資を行い重要な建物附属設備を設置している状況において早期に延長オプションを行使しない場合には、他の店舗よりも大規模に建物附属設備が除却されることとなる。また、当該店舗は損益の状況のみで撤退の判断を行わない戦略的に重要な店舗の一つであることからも、A社は解約不能期間の経過後、店舗のリニューアルを行う前までの期間(5年間)については、延長オプションを行使する可能性は合理的に確実よりも高いと判断した。
- (10) 次にシナリオ2について、A社は当該店舗については損益の状況のみで撤退の判断を行わない戦略的に重要な店舗の一つと位置付けていることから、延長オプションを行使しない場合に他の店舗に比べて大規模の除却が行われ、かつ、その戦略的な位置付けからリニューアルによる建物附属設備の一部について入替えのための除却と追加コストが発生したとしても延長オプションを行使する可能性は合理的に確実よりも高いと判断した。また、さらにその後5年間が経過するまでの期間については、経済的インセンティブの観点から考慮すべきものは特にないことから、A社は、重要な建物附属設備の物理的使用可能期間である10年まで延長オプションを行使する可能性は合理的に確実よりも高いと判断した。
- (11) 一方、シナリオ3について、A社が建物附属設備の物理的使用可能期間の10年目以後も店舗の営業を継続する場合には、全面的に建物附属設備を再設置することが必要となる。当該店舗は損益の状況のみで撤退の判断を行わない戦略的に重要な店舗で原資産の重要性はあるが、全面的な建物附属設備の再設置を行ってまで延長オプションを行使するかどうかは再設置に要する金額やその時点の経済状況などによるため、A社は、シナリオ3において20年経過時点まで延長オプションを行使する可能性は、シナリオ2において10年経過時点まで延長オプションを行使する可能性よりも相対的に低く、合理的に確実よりも低いと判断した。
- (12) 以上から、A社は、借手のリース期間を10年と決定した。これを図示すると、次の[図8-3]のとおりとなる。
- [設例8-4] 普通借地契約(解約オプションを行使しないことが合理的に確実である場合)
- 借手のリース期間の決定
- (解約不能期間の決定)
- (1) 前提条件3より、A社が6か月前に解約の旨を通知すれば契約を解約できるとされることから、当該賃貸借契約における解約不能期間は6か月であると判断した。また、6か月を超える期間について借手のリース期間を決定するために考慮すべき解約オプションを有すると判断した。これを踏まえて、A社は、借手のリース期間の決定にあたって、当該解約不能期間を超えて、借手が行使することが合理的に確実であるリースの延長オプションの対象期間及び借手が行使しないことが合理的に確実であるリースの解約オプションの対象期間を考慮することとなる(会計基準第31項)。
- (前提条件の分析)
- (2) A社は、行使することが合理的に確実である延長オプション又は行使しないことが合理的に確実である解約オプションの対象期間を決定するにあたって、例えば、本適用指針第17項に例示する要因を考慮する。
- (3) 本適用指針第17項(1)の要因については、前提条件3のとおり、A社は6か月前に解約の旨を通知すれば契約を解約することができ、また、解約オプションの対象期間に係るその他の契約条件が特に付されていないことから、A社は経済的インセンティブの観点から特に考慮すべきものはないと判断した。
- (4) 本適用指針第17項(2)及び(3)の要因については、前提条件1のとおり、A社は当該土地に店舗用の建物を建設しており、途中で賃貸借契約を解約した場合には建物を除却し、その解体費用が発生する。この状況においてこれらのコストを負担してまで解約するかどうかという観点からA社は解約オプションを行使しない経済的インセンティブがあると判断した。加えて、前提条件8のとおり、新店舗の立地は交通の便の良い繁華街であり、他の事業に容易に転用することができるため、当該観点からもA社は解約オプションを行使しない経済的インセンティブがあると判断した。
- (5) 本適用指針第17項(4)の要因については、前提条件8のとおり、当該店舗はX事業にとって戦略的に重要な店舗ではないため、A社は企業の事業内容に照らした原資産の重要性は必ずしも高くないと判断した。
- (6) 本適用指針第17項(5)の要因については、前提条件3のとおり、解約オプションの行使条件は付されていないため、A社は経済的インセンティブの観点から特に考慮すべきものはないと判断した。
- (7) その他、前提条件7に示されたとおり、A社はX事業を10年以上継続することを見込んでいる。また、前提条件5に示されたとおり、A社は20年後に同様の建物に建て替えることが可能であるが、建替えの計画については今後検討する予定である。
- (借手のリース期間の決定)
- (8) A社は、リース開始日において借手のリース期間として確実である6か月の解約不能期間を出発点として、(3)から(6)の経済的インセンティブを生じさせる要因の有無を総合的に勘案して評価し、その期間までは解約しない可能性が合理的に確実といえるまで高いが、その期間を超えると合理的に確実よりは解約しない可能性が低下すると判断するその期間を借手のリース期間として決定する。
- (9) ここでA社は、自社のビジネスモデルに基づき現実的に想定し得る次の2つのシナリオについて検討を行った。
(シナリオ1)20年経過時点まで解約オプションを行使しない。
(シナリオ2)20年経過時点を超えて解約オプションを行使せず契約を継続する。 - (10) まずシナリオ1について、20年経過時点までに解約オプションを行使した場合には建物の解体に関連するコストが発生する。また、収益が計画どおりに上がらない場合には建物を残りの物理的使用可能期間について転貸することを予定している。このため、A社は、建物の物理的使用可能期間である20年間は現在のX事業又は転貸により建物を使用するとして、20年経過時点まで解約オプションを行使しない可能性は合理的に確実よりも高いと判断した。
- (11) 次にシナリオ2について、20年を超えて当該土地の使用を続ける場合、店舗建物の建替えが必要となり、当該建替えコストを考慮するとシナリオ2の20年経過時点を超えて解約オプションを行使しない可能性は、シナリオ1の20年経過時点まで解約オプションを行使しない可能性よりも相対的に低く、合理的に確実よりも低いと判断した。
- (12) 以上から、A社は、借手のリース期間を20年と決定した。これを図示すると、次の[図8-4]のとおりとなる。
- [設例8-5] 普通借家契約(経済的インセンティブとして考慮すべきものが特にない場合)
- 借手のリース期間の決定
- (解約不能期間の決定)
- (1) 前提条件3より、A社は賃貸借契約の契約期間である5年間の途中で解約することはできないため、当該契約における解約不能期間は5年であると判断した。また、5年経過後、当該契約を更新することができるため、5年を超える期間について借手のリース期間を決定するために考慮すべき延長オプションを有すると判断した。これを踏まえて、A社は借手のリース期間の決定にあたって、当該解約不能期間を超えて、借手が行使することが合理的に確実であるリースの延長オプションの対象期間及び借手が行使しないことが合理的に確実であるリースの解約オプションの対象期間を考慮することとなる(会計基準第31項)。
- (前提条件の分析)
- (2) A社は、行使することが合理的に確実である延長オプション又は行使しないことが合理的に確実である解約オプションの対象期間を決定するにあたって、例えば、本適用指針第17項に例示する要因を考慮する。
- (3) 本適用指針第17項(1)の要因については、前提条件3のとおり、A社は更新時の市場レートの賃料で当該契約を更新することができ、また、延長オプションの対象期間に係るその他の契約条件が特に付されていないことから、A社は経済的インセンティブの観点から特に考慮すべきものはないと判断した。
- (4) 本適用指針第17項(2)及び(3)の要因については、前提条件4のとおり、A社は重要な建物附属設備の設置は行わないため、A社は経済的インセンティブの観点から特に考慮すべきものはないと判断した。
- (5) 本適用指針第17項(4)の要因については、前提条件5のとおり、オフィスの立地は現在のA社の事業に適しているものの、他に代替する立地を探すことが可能であるため、A社は企業の事業内容に照らした原資産の重要性は必ずしも高くないと判断した。
- (6) 本適用指針第17項(5)の要因については、前提条件3のとおり、賃貸借契約には延長オプションの行使条件は付されておらず、A社は経済的インセンティブの観点から特に考慮すべきものはないと判断した。
- (7) その他、前提条件5に示されたとおり、A社は過去に他の立地においてオフィスを10年間賃借していた経験を有する。
- (借手のリース期間の決定)
- (8) A社は、リース開始日において借手のリース期間として確実である5年の解約不能期間を出発点として、(3)から(6)の経済的インセンティブを生じさせる要因の有無を総合的に勘案して評価し、その期間までは延長する可能性が合理的に確実といえるまで高いが、その期間を超えると合理的に確実よりは延長する可能性が低下すると判断するその期間を借手のリース期間として決定する。
- (9) ここで、A社は過去に他の立地においてオフィスを10年間賃借していた経験があるが、他に代替する立地を探すことが可能である状況も踏まえ、将来の見積りに焦点を当てると経済的インセンティブを生じさせる要因として考慮すべきものが特にないため、A社は、解約不能期間である5年を超えてリースの延長オプションを行使する可能性は合理的に確実より低いと判断した。
- (10) 以上から、A社は、借手のリース期間を5年と決定した。
Ⅲ. 借手及び貸手のリース
[設例9]借手のリース及び貸手の所有権移転外ファイナンス・リース
- [設例9] 借手のリース及び貸手の所有権移転外ファイナンス・リース
- [設例9-1] リース料が当月末払いとなる場合
- 会計処理
- (1) 借 手
- ① 利息相当額を利息法で会計処理する場合(会計基準第36項)(本適用指針第39項参照)
借手は貸手の計算利子率を知り得ないため、借手の追加借入利子率である年8%を用いて借手のリース料60,000千円を現在価値に割り引くと、次のとおり49,318千円がリース開始日におけるリース負債及び使用権資産の計上額となる(本適用指針第37項参照)。 - リース負債の返済スケジュールは、[表9-1-1]のとおりである。
- 例えば、X1年4月30日返済合計の内訳と月末元本の計算は次のとおりである。
- 利息分 49,318千円×8%×1か月/12か月=329千円
- 元本分 1,000千円-329千円=671千円
- 月末元本 49,318千円-671千円=48,647千円
- X1年4月1日(リース開始日)
- X1年4月30日(第1回支払日)
- X1年6月30日(第3回支払日・第1四半期決算日)
- X2年3月31日(第12回支払日・決算日)
- 以後も同様な会計処理を行う。
- X6年3月31日(最終回の支払と原資産の返却)
- ② 借手のリース料から利息相当額の合理的な見積額を控除しないで会計処理する場合(本適用指針第40項(1)参照)
- X1年4月1日(リース開始日)
- X1年4月30日(第1回支払日)
- X1年6月30日(第3回支払日・第1四半期決算日)
- X2年3月31日(第12回支払日・決算日)
- 以後も同様な会計処理を行う。
- X6年3月31日(最終回の支払と原資産の返却)
- ③ 利息相当額の総額を借手のリース期間中の各期にわたり定額で配分する場合(本適用指針第40項(2)参照)
- X1年4月1日(リース開始日)
- X1年4月30日(第1回支払日)
- X1年6月30日(第3回支払日・第1四半期決算日)
- X2年3月31日(第12回支払日・決算日)
- 以後も同様な会計処理を行う。
- X6年3月31日(最終回の支払と原資産の返却)
- (2) 貸 手
- ① リースの分類
ア.現在価値基準による判定(本適用指針第62項(1)参照)
貸手のリース料を現在価値に割り引く利率は、貸手のリース料の現在価値と見積残存価額の現在価値の合計額が、当該原資産の現金購入価額と等しくなるような貸手の計算利子率によること(本適用指針第66項参照)になるが、見積残存価額がゼロであり、現金購入価額が48,000千円であることから年9.154%となる([表9-1-2]及び②ア参照)。原資産の見積残存価額がゼロであるため、貸手のリース料を年9.154%で割り引いた現在価値48,000千円は、貸手の現金購入価額48,000千円と等しくなる。
現在価値48,000千円/現金購入価額48,000千円=100%≧90%
したがって、このリースはファイナンス・リースに該当する。
イ.経済的耐用年数基準による判定(本適用指針第62項(2)参照)
このリースは、アにより、ファイナンス・リースに該当すると判断されたため、経済的耐用年数基準による判定は不要となる。なお、経済的耐用年数基準による判定を必要とする場合の計算結果は次のとおりとなる。
貸手のリース期間5年/経済的耐用年数8年=62.5%<75%
ウ.ファイナンス・リースの分類
所有権移転条項又は割安購入選択権がなく、また、原資産は特別仕様ではないため、所有権移転ファイナンス・リースには該当しない(本適用指針第70項参照)。
したがって、ア及びウにより、このリースは所有権移転外ファイナンス・リースに該当する。 - ② 会計処理
ア.利息相当額を利息法で会計処理する場合(本適用指針第73項参照)
貸手の計算利子率は、現在価値の算定を行うにあたって用いられる利率である(本適用指針第66項参照)。 - リース投資資産の回収スケジュールは、[表9-1-2]のとおりである。
- X1年4月1日(リース開始日)
- X1年4月30日(第1回回収日)
- X1年6月30日(第3回回収日・第1四半期決算日)
- X2年3月31日(第12回回収日・決算日)
- 以後も同様な会計処理を行う。
- X6年3月31日(最終回の回収)
- イ.利息相当額の総額を貸手のリース期間中にわたり定額で配分する場合(本適用指針第74項参照)
- X1年4月1日(リース開始日)
- X1年4月30日(第1回回収日)
- X1年6月30日(第3回回収日・第1四半期決算日)
- X2年3月31日(第12回回収日・決算日)
- 以後も同様な会計処理を行う。
- X6年3月31日(最終回の回収)
- ウ.中途解約の場合(本適用指針第77項参照)
- X4年3月31日(第36回の回収と中途解約)
- [設例9-2] リース料が前払い又は後払いとなる場合
- 会計処理
- (1) 借 手
- ① 前払いの場合
当月分を前月末に支払う場合(前払いの1つの例)について、借手の追加借入利子率である年8%を用いて借手のリース料60,000千円を現在価値に割り引くと、次のとおり49,647千円がリース開始日におけるリース負債及び使用権資産の計上額となる(ただし、計算の便宜のため、月末と月初の1日の違いについて利息計算上無視する。)。 - 借手のリース料の支払が前払いとなる場合のリース負債の返済スケジュールは、[表9-2-1]のとおりである。
- X1年4月1日(リース開始日・第1回支払日)
- X1年4月30日(第2回支払日)
- X1年6月30日(第4回支払日・第1四半期決算日)
- 以後も同様な会計処理を行う。
- ② 後払いの場合
当月分を翌月初に支払う場合(後払いの1つの例)について、借手の追加借入利子率である年8%を用いて借手のリース料60,000千円を現在価値に割り引くと、次のとおり49,318千円がリース開始日におけるリース負債及び使用権資産の計上額となる(ただし、計算の便宜のため、月末と月初の1日の違いについて利息計算上無視する。)。 - 借手のリース料の支払が後払いとなる場合のリース負債の返済スケジュールは、[表9-2-2]のとおりである。
- X1年4月1日(リース開始日)
- X1年5月1日(第1回支払日)
- X1年6月30日(第1四半期決算日)
- X1年7月1日(第2四半期期首・第3回支払日)
- 以後も同様な会計処理を行う。
- (2) 貸 手
- ① リースの分類
貸手の計算利子率は次のように算定される(ただし、計算の便宜のため、月末と月初の1日の違いについて利息計算上無視する。)。 - ア.前払いの場合
- イ.後払いの場合
- これらの場合は、上記の貸手の計算利子率で割り引いた貸手のリース料の現在価値(48,000千円)が、貸手の現金購入価額(48,000千円)の90%以上であるため、ファイナンス・リースに該当する(第62項参照)。
さらに、所有権移転条項又は割安購入選択権がなく、また、原資産は特別仕様ではないため、所有権移転ファイナンス・リースには該当しない(第70項参照)。
したがって、これらのリースは所有権移転外ファイナンス・リースに該当する。この場合、貸手は、原資産の現金購入価額48,000千円でリース投資資産を計上する。 - ② 会計処理
ア.前払いの場合
貸手のリース料の支払が前払いとなる場合のリース投資資産の回収スケジュールは、[表9-2-3]のとおりである。 - X1年4月1日(リース開始日・第1回回収日)
- X1年4月30日(第2回回収日)
- X1年6月30日(第4回回収日・第1四半期決算日)
- 以後も同様な会計処理を行う。
- X6年2月28日(最終回回収日)
- この回収で、元本はすべて回収されるため、X6年3月は受取利息は計上されないこととなる。
- X6年3月31日(原資産の返却日)
- イ.後払いの場合
貸手のリース料の支払が後払いとなる場合のリース投資資産の回収スケジュールは、[表9-2-4]のとおりである。 - X1年4月1日(リース開始日)
- X1年5月1日(第1回回収日)
- X1年6月30日(第1四半期決算日)
- X1年7月1日(第2四半期期首・第3回回収日)
- 以後も同様な会計処理を行う。
- X6年3月31日(決算日)
- X6年4月1日(最終回回収日)
- [設例9-3] 貸手の見積残存価額がある場合
- 会計処理
- (1) 借 手
[設例9-1](1)借手と同様な会計処理を行う。 - (2) 貸 手
- ① リースの分類
- 貸手の計算利子率は次のように算定される。
- この貸手の計算利子率を用いて貸手のリース料60,000千円を現在価値に割り引くと、
- したがって、このリースはファイナンス・リースに該当する(第62項参照)。
- さらに、所有権移転条項又は割安購入選択権がなく、また、原資産は特別仕様ではないため、所有権移転ファイナンス・リースには該当しない(第70項参照)。
- 以上により、このリースは所有権移転外ファイナンス・リースに該当する。この場合、貸手は計算利子率年9.587%を適用利率としてリース投資資産の回収スケジュールを作成し、[設例9-1](2)貸手と同様な会計処理を行うことになる。
- ② 会計処理
- リース投資資産の回収スケジュールは、[表9-3]のとおりである。
- X1年4月1日(リース開始日)
- X6年3月31日(最終回の回収と原資産の受領)
- 《貸手の注記-リース投資資産の内訳(X2年3月31日)(第104項(1)参照)》
[設例10]借手のリース及び貸手の所有権移転ファイナンス・リース
- [設例10] 借手のリース及び貸手の所有権移転ファイナンス・リース
- 1.借 手
- 借手が購入オプションを行使することが合理的に確実であり、契約上の諸条件に照らして原資産の所有権が借手に移転すると認められるリースに該当するため、耐用年数を経済的使用可能予測期間、残存価額を合理的な見積額として、使用権資産の減価償却費について、原資産を自ら所有していたと仮定した場合に適用する減価償却方法と同一の方法により算定する(会計基準第37項)こと及び購入オプションによるリース料の差異以外は、[設例9-1](1)借手と同様である。
- 2.貸 手
- (1) リースの分類
- ① 現在価値基準による判定(本適用指針第62項(1)参照)
- 貸手の計算利子率は次のように算定される。
- この貸手の計算利子率を用いて貸手のリース料61,000千円(貸手のリース期間の月額リース料の合計額60,000千円に、行使が確実に予想される割安購入選択権によるリース料1,000千円を加えた金額)を現在価値に割り引くと、
- したがって、このリースはファイナンス・リースに該当する。
- ② ファイナンス・リースの分類
- 前提条件2により、借手は割安購入選択権を有し、その行使が契約時において確実に予想されるリースに該当する(本適用指針第70項参照)。
- ①及び②により、このリースは所有権移転ファイナンス・リースに該当する。
- (2) 会計処理(本適用指針第78項参照)
- リース債権の回収スケジュールは、[表10]のとおりである。
- X1年4月1日(リース開始日)
- X1年6月30日(第3回回収日・第1四半期決算日)
- 以後も同様な会計処理を行う。
- X6年3月31日(最終回の回収と借手による購入オプション(割安購入選択権)の行使)
[設例11]残価保証がある場合
- [設例11] 残価保証がある場合
- 1.借 手
- 会計処理
- 借手は貸手の計算利子率を知り得ないため、借手の追加借入利子率である年8%を用いて借手のリース料63,000千円(借手のリース期間の月額リース料の合計額60,000千円に借手の残価保証による支払見込額3,000千円を加えた金額)を現在価値に割り引くと、次のとおり52,639千円がリース開始日におけるリース負債及び使用権資産の計上額となる(会計基準第35項(3))(本適用指針第37項参照)。
- リース負債の返済スケジュールは、[表11-1]のとおりである。
- X1年4月1日(リース開始日・第1回支払日)
- X1年9月30日(中間決算日)
- X1年10月1日(下期首・第2回支払日)
- 以後も同様な会計処理を行う。
- X6年3月31日(決算日)
- X6年3月31日(原資産の返却)
- 借手のリース期間終了後(残価保証支払額の確定時)
- なお、残価保証支払額の確定時に一括して、次のような会計処理を行うこともできる。
- 2.貸 手
- (1) リースの分類
- ① 現在価値基準による判定(本適用指針第62項(1)参照)
- 貸手の計算利子率は次のように算定される(貸手のリース料には残価保証額を含む(本適用指針第64項参照)。)。
- この計算利子率を用いて貸手のリース料65,000千円(残価保証額を含む。)を現在価値に割り引くと53,000千円となる。
- 現在価値53,000千円/現金購入価額53,000千円=100%≧90%
- したがって、このリースはファイナンス・リースに該当する。
- ② ファイナンス・リースの分類
- 所有権移転条項又は割安購入選択権がなく、また、原資産は特別仕様ではないため、所有権移転ファイナンス・リースには該当しない(本適用指針第70項参照)。
- ①及び②により、このリースは所有権移転外ファイナンス・リースに該当する。
- (2) 会計処理
- リース投資資産の回収スケジュールは、[表11-2]のとおりである。
- X1年4月1日(リース開始日・第1回回収日)
- X6年3月31日(貸手のリース期間終了と原資産の受領時)
- 原資産処分額及び残価保証受取額の確定時
[設例12]製造又は販売を事業とする貸手が当該事業の一環で行うリース
- [設例12] 製造又は販売を事業とする貸手が当該事業の一環で行うリース
- 1.リースの分類
- (1) 現在価値基準による判定(第62項(1)参照)
- 貸手の計算利子率は次のように算定される。
- この計算利子率を用いて貸手のリース料を現在価値に割り引くと、
- したがって、このリースはファイナンス・リースに該当する。
- (2) ファイナンス・リースの分類
- 所有権移転条項又は割安購入選択権がなく、また、原資産は特別仕様ではないため、所有権移転ファイナンス・リースには該当しない(第70項参照)。
- (1)及び(2)により、このリースは所有権移転外ファイナンス・リースに該当する。
- 2.会計処理
- (1) 原則的な取扱い
- リース投資資産の回収スケジュールは、[表12-1]のとおりである。
- X1年4月1日(リース開始日)
- X2年3月31日(第1回回収日・決算日)
- X6年3月31日(貸手のリース期間終了と原資産の受領時)
- (2) 販売益相当額に重要性がない場合の簡便的な取扱い(※)(第71項(1)①ただし書き参照)
(※)本設例は、あくまで販売益相当額に重要性がないケースの取扱いを例示するものであり、本設例で示された販売益相当額が貸手のリース料に比して重要性が乏しいことを示すものではない。 - 販売益相当額を利息相当額に含めて処理するため、貸手の計算利子率は次のように算定される。
- リース投資資産の回収スケジュールは、[表12-2]のとおりである。
- X1年4月1日(リース開始日)
- X2年3月31日(第1回回収日・決算日)
- X6年3月31日(貸手のリース期間終了と原資産の受領時)
[設例13]借手の変動リース料
- [設例13] 借手の変動リース料
- 会計処理
- X1年4月1日(リース開始日)
- X2年3月31日(期末日)
- 使用権資産の償却に係る会計処理は、[設例9-1](1)借手と同様であることから、説明は省略している。
- X2年4月1日(X2年期首・リース負債の見直し)
- X2年4月1日(X2年期首・リース料の支払)
[設例14]建設協力金
- [設例14] 建設協力金
- 会計処理
- 将来返還される建設協力金等の差入預託保証金に係る当初認識時の時価は、返済期日までのキャッシュ・フローを割り引いた現在価値である。借手は、当該差入預託保証金の支払額と当該時価との差額を使用権資産の取得価額に含める(第29項参照)。
- 前提条件6より、年5%を用いてビル建設に要する資金20,000千円の契約上のキャッシュ・フローを現在価値に割り引くと、次のとおり14,410千円となる。
- X1年4月1日(建設協力金の支払日)
- また、各年度の利息計上額、長期貸付金の帳簿価額等は次の[表14]のとおりである。
- 建設協力金等の差入預託保証金は返済期日に回収されるため、当初時価と返済額との差額は、弁済期又は償還期に至るまで毎期一定の方法で受取利息として計上する(第29項参照)。
- 無利息期間中のX2年3月期、元本分割返済と2%の利息支払が開始されるX7年3月期及び元本最終償還期であるX11年3月期について、仕訳で示すと次のとおりである。
- なお、長期貸付金の1年以内償還部分の短期への振替は省略している。
- X2年3月31日(無利息期間)
- X7年3月31日(元本分割返済及び利息支払開始時)
- X11年3月31日(最終償還期)
[設例15]リースの契約条件の変更
- [設例15] リースの契約条件の変更
- [設例15-1] 独立したリースとして会計処理する場合
- 会計処理
- 前提条件5の変更は、リースの契約条件の変更に該当し、次の(1)及び(2)のいずれも満たすため、A社は、当該リースの契約条件の変更について、独立したリースとして取り扱い、当該独立したリースのリース開始日に、リースの契約条件の変更の内容に基づくリース負債を計上し、当該リース負債にリース開始日までに支払った借手のリース料、付随費用等を加減した額により使用権資産を計上する(第44項参照)。
- (1) 1つ以上の原資産を追加することにより、原資産を使用する権利が追加され、リースの範囲が拡大されること
- (2) 借手のリース料が、範囲が拡大した部分に対する独立価格に特定の契約の状況に基づく適切な調整を加えた金額分だけ増額されること
- A社は、独立したリースのリース開始日(X6年9月30日)に、追加の3,000平方メートルの事務所スペースのリースに係る使用権資産及びリース負債を計上する。A社は、変更前の2,000平方メートルの事務所スペースのリースの会計処理について修正を行わない。
- [設例15-2] リース料の単価の増額を伴いリースの範囲が縮小される場合
- 会計処理
- 前提条件7の変更は、リースの契約条件の変更に該当し、リース料の単価の増額を伴い、かつ、事務所スペースの縮小によりリースの範囲が縮小されるものである。A社は、当該リースの契約条件の変更に関して、事務所スペースの縮小とリース料の単価の増額のそれぞれについて、別個に会計処理を行う(第45項参照)。
- リースの契約条件の変更前の使用権資産及びリース負債は、[表15-2]のとおりである。
- (1) 事務所スペースの縮小
事務所スペースを縮小する変更は、リースの契約条件の変更に該当し、リースの範囲が縮小されるものである。A社は、当該リースの契約条件の変更について、当該リースの契約条件の変更の発効日に、変更後の条件を反映してリース負債を修正し、リースの一部又は全部の解約を反映するように使用権資産の帳簿価額を減額する。このとき、使用権資産の減少額とリース負債の修正額とに差額が生じた場合は、当該差額を損益に計上する(第45項(1)及び(2)①参照)。本設例では、前提条件9により、変更前の割引率を使用する。 - X6年4月1日(リースの契約条件の変更の発効日)
- (2) リース料の単価の増額
リース料の単価が増額される変更は、リースの契約条件の変更に該当するものの、①1つ以上の原資産を追加するリースの範囲の拡大ではなく(第44項参照)、また、②リースの範囲の縮小にも該当しない(第45項(2)①参照)、リース料の変更である(第45項(2)②参照)。A社は、当該リースの契約条件の変更について、当該リースの契約条件の変更の発効日に、変更後の条件を反映してリース負債を修正し、当該リース負債の修正額に相当する金額を使用権資産に加減する(第45項(1)及び(2)②参照)。本設例では、前提条件9により、変更後の割引率を使用する。 - X6年4月1日(リースの契約条件の変更の発効日)
- [設例15-3] リースの範囲の拡大と縮小の両方が生じる場合
- 会計処理
- 前提条件7の変更は、リースの契約条件の変更に該当し、変更前の事務所スペースに係る契約期間の短縮によるリースの範囲の縮小と、事務所スペースの追加によるリースの範囲の拡大の両方を生じさせるものである。A社は、当該リースの契約条件の変更に関して、変更前の事務所スペースに係る契約期間の短縮と事務所スペースの追加のそれぞれについて、別個に会計処理を行う(第45項参照)。
- リースの契約条件の変更前の使用権資産及びリース負債は、[表15-3]のとおりである。
- (1) 変更前の事務所スペースに係る契約期間の短縮(リースの範囲の縮小)
変更前の2,000平方メートルの事務所スペースに係る契約期間が短縮される変更は、リースの契約条件の変更に該当し、リースの範囲が縮小されるものである。A社は、当該リースの契約条件の変更について、当該リースの契約条件の変更の発効日に、変更後の条件を反映してリース負債を修正し、リースの一部又は全部の解約を反映するように使用権資産の帳簿価額を減額する。このとき、使用権資産の減少額とリース負債の修正額とに差額が生じた場合は、当該差額を損益に計上する(第45項(1)及び(2)①参照)。本設例では、前提条件9により、変更前の割引率を使用する。その後、変更後の割引率を使用してリース負債を修正し、当該リース負債の修正額に相当する金額を使用権資産に加減する(第45項(1)及び(2)②参照)。 - X6年4月1日(リースの契約条件の変更の発効日)
- (2) 事務所スペースの追加(リースの範囲の拡大)
追加の1,500平方メートルの事務所スペースに係る変更は、1つ以上の原資産の追加により原資産を使用する権利が追加され、リースの範囲が拡大されているものの、対応するリース料の増額は、範囲が拡大した部分に対する独立価格に特定の契約の状況に基づく適切な調整を加えた金額分だけ増額しているものではない。したがって、A社は、追加の1,500平方メートルの事務所スペースに係る変更について独立したリースとして会計処理しない(第44項参照)。すなわち、A社は、当該リースの契約条件の変更について、当該リースの契約条件の変更の発効日に、変更後の条件を反映してリース負債を修正し、当該リース負債の修正額に相当する金額を使用権資産に加減する(第45項(1)及び(2)②参照)。本設例では、前提条件9により、変更後の割引率を使用する。 - X6年4月1日(リースの契約条件の変更の発効日)
- [設例15-4] 契約期間が延長される場合
- 会計処理
- 前提条件7の変更は、リースの契約条件の変更に該当するものの、①1つ以上の原資産を追加するリースの範囲の拡大ではなく(第44項参照)、また、②リースの範囲の縮小にも該当しない(第45項(2)①参照)、リース料及び契約期間の変更である(第45項(2)②参照)。A社は、当該リースの契約条件の変更について、当該リースの契約条件の変更の発効日に、変更後の条件を反映してリース負債を修正し、当該リース負債の修正額に相当する金額を使用権資産に加減する(第45項(1)及び(2)②参照)。本設例では、前提条件8により、変更後の割引率を使用する。
- リースの契約条件の変更前の使用権資産及びリース負債は、[表15-4]のとおりである。
- X7年4月1日(リースの契約条件の変更の発効日)
- [設例15-5] 契約上のリース料のみが変更される場合
- 会計処理
- 前提条件5の変更は、リースの契約条件の変更に該当するものの、①1つ以上の原資産を追加するリースの範囲の拡大ではなく(第44項参照)、また、②リースの範囲の縮小にも該当しない(第45項(2)①参照)、契約上のリース料のみの変更である(第45項(2)②参照)。A社は、当該リースの契約条件の変更について、当該リースの契約条件の変更の発効日に、変更後の条件を反映してリース負債を修正し、当該リース負債の修正額に相当する金額を使用権資産に加減する(第45項(1)及び(2)②参照)。本設例では、前提条件8により、変更後の割引率を使用する。
- リースの契約条件の変更前の使用権資産及びリース負債は、[表15-5]のとおりである。
- X6年4月1日(リースの契約条件の変更の発効日)
[設例16]リースの契約条件の変更を伴わないリース負債の見直し
- [設例16] リースの契約条件の変更を伴わないリース負債の見直し
- 会計処理
- 延長オプションを行使することが合理的に確実であるかどうかについての見直し前の使用権資産及びリース負債は[表16]のとおりである。
- 前提条件9における延長オプションを行使することが合理的に確実であるかどうかについての見直しは、リースの契約条件の変更を伴わない借手のリース期間の変更である。A社は、当該変更に関して、当該変更が生じた日にリース負債について当該変更の内容を反映した借手のリース料の現在価値まで修正し、当該リース負債の修正額に相当する金額を使用権資産に加減する(第46項参照)。なお、本設例では、前提条件11により、変更後の割引率を使用する。
- X7年3月31日(変更が生じた日)
[設例17]使用権資産総額に重要性が乏しいと認められなくなった場合
- [設例17] 使用権資産総額に重要性が乏しいと認められなくなった場合
- X1年4月1日に開始した機械装置のリースに関する返済スケジュールは[表17-1]のとおりである。
- X2年4月1日に開始した機械装置のリースに関する返済スケジュールは[表17-2]のとおりである。
- この場合、すべてのリースを利息法で処理する方法と新たなリースのみを利息法で処理する方法が考えられる。
- 1. すべてのリースを利息法で処理する方法
- (1) 前事業年度
- X1年4月1日(リース開始日)
- X1年6月30日(第3回支払日・第1四半期決算日)
- X2年3月31日(第12回支払日・決算日)
- (2) 当事業年度
- X2年4月1日(新リース開始日)
- X2年6月30日(各第15回/第3回支払日・第1四半期決算日)
- 以後も同様な会計処理を行う。
- 2. 新たなリースのみを利息法で処理する方法
- (1) 前事業年度
- X1年4月1日(リース開始日)
- X1年6月30日(第3回支払日・第1四半期決算日)
- X2年3月31日(第12回支払日・決算日)
- (2) 当事業年度
- X2年4月1日(新リース開始日)
- X2年6月30日(各第15回/第3回支払日・第1四半期決算日)
- 以後も同様な会計処理を行う。
Ⅳ. サブリース取引
[設例18]サブリース取引
- [設例18] サブリース取引
- [設例18-1] サブリースがファイナンス・リースに該当する場合
- 会計処理
- (1) X2年3月31日まで
- ① ヘッドリースの借手(中間的な貸手)
- ヘッドリースの借手(中間的な貸手)は、ヘッドリースの貸手の計算利子率を知り得ないため、借手の追加借入利子率である年8%を用いて借手のリース料60,000千円を現在価値に割り引くと、次のとおり49,318千円がリース開始日に算定されたリース負債及び使用権資産の計上額となる(第37項及び第89項参照)。
- リース負債の返済スケジュールは、[表18-1-1]のとおりである。
- X1年4月1日(ヘッドリースの開始日)
- X2年3月31日(ヘッドリースの第12回支払日・決算日)
- (2) X2年4月1日以降
- ① サブリースの貸手(中間的な貸手)
- ア.サブリースの分類(第91項参照)
- サブリース期間4年/ヘッドリース期間の残存期間4年=100%≧75%
- このリースはファイナンス・リースに該当する。
- なお、サブリースにおける貸手のリース期間による判定でファイナンス・リースに該当しない場合、現在価値基準における判定を行う。
- 前提条件2①から③より、サブリースに所有権移転条項又は割安購入選択権がなく、また、原資産は特別仕様ではないため、所有権移転ファイナンス・リースには該当しない。したがって、サブリースは、所有権移転外ファイナンス・リースに該当する。
- イ.サブリースの会計処理(第89項(1)参照)
- サブリースの貸手(中間的な貸手)がヘッドリースに使用した借手の追加借入利子率である年8%を用いて貸手のリース料を現在価値に割り引いた金額である49,154千円が、リース投資資産の計上額となる。
- この場合のリース投資資産の回収スケジュールは、[表18-1-2]のとおりである。
- X2年4月1日(サブリースの開始日)
- X2年4月30日(サブリースの第1回回収日)
- 以後も同様な会計処理を行う。
- ② ヘッドリースの借手(中間的な貸手)
- X2年4月30日(ヘッドリースの第13回支払日)
- 以後も同様な会計処理を行う。
- [設例18-2] サブリースがオペレーティング・リースに該当する場合
- 会計処理
- (1) X2年3月31日まで
- ① ヘッドリースの借手(中間的な貸手)
[設例18-1]と同様な会計処理を行う。 - (2) X2年4月1日以降
- ① サブリースの貸手(中間的な貸手)
- ア.サブリースの分類(第91項参照)
- サブリース期間1年/ヘッドリース期間の残存期間4年=25%<75%
- なお、サブリースにおける貸手のリース期間に係る貸手のリース料の現在価値と独立第三者間取引における使用権資産のリース料の比較においては、経済的利益とコストのほとんどすべてが移転しないことは明らかである。
- したがって、サブリースはオペレーティング・リースに該当する。
- イ.サブリースの会計処理(第89項(2)参照)
- X2年4月1日(サブリースの開始日)
- X2年4月30日(サブリースの第1回回収日)
- 以後も同様な会計処理を行う。
- ② ヘッドリースの借手(中間的な貸手)
- X2年6月30日(ヘッドリースの第15回支払日・第1四半期決算日)
[設例19]転リース取引
- [設例19] 転リース取引
- 1.リースの分類
- B社の貸手としてのリースは、ヘッドリースの原資産の見積残存価額がゼロであるため、貸手のリース料を貸手の計算利子率で割り引いた現在価値は、貸手による原資産の見積現金購入価額と等しくなる。なお、当該現在価値は[設例9-1]と同様、48,000千円となる。
- 現在価値48,000千円/見積現金購入価額48,000千円=100%≧90%
- 前提条件3①から③より、B社の貸手としてのリースに所有権移転条項又は割安購入選択権がなく、また、原資産は特別仕様ではないため、所有権移転外ファイナンス・リースに該当する。
- 2.会計処理
- B社の借手としてのリース負債の算定方法は、[設例9-1](1)借手と同様である。
- リース投資資産の回収スケジュール及びリース負債の返済スケジュールは、[表19]のとおりである。
- X1年4月1日(リース開始日)
- X1年4月30日(第1回回収日)
- X1年4月30日(第1回支払日)
- 以後も同様な会計処理を行う。
- なお、第93項に従い、リース投資資産とリース負債を利息相当額控除前の金額で計上する場合、X1年4月30日(第1回回収日・第1回支払日)において、上記の預り金部分を、リース投資資産の回収及びリース負債の返済として処理することとなる。
Ⅴ. 経過措置
[設例20]企業会計基準第13号においてオペレーティング・リース取引に分類していたリース
- [設例20] 企業会計基準第13号においてオペレーティング・リース取引に分類していたリース
- リース開始日から5年間にわたる借手のリース期間の借手のリース料を会計基準等の適用初年度の期首時点の借手の追加借入利子率(5%)を用いて割り引いた場合のリース負債の返済スケジュールは、[表20]のとおりである。
- 借 手
- (1) X2年3月31日以前(会計基準等の適用開始日前)に計上された仕訳の合計
- (2) 会計基準等の適用初年度の会計処理
- ① 本適用指針第123項(2)①を適用して、会計基準が使用権資産についてリース開始日から適用されていたかのような帳簿価額とした場合
- ② 本適用指針第123項(2)②を適用して、使用権資産をリース負債と同額にした場合
参 考
1993年リース取引会計基準で必要とされていた注記事項
(借 手)
- 1. 本適用指針第114項に定める1993年リース取引会計基準で必要とされていた注記事項とは、次の事項をいう。(注1)
- (1) リース物件の取得価額相当額、減価償却累計額相当額、減損損失累計額相当額及び期末残高相当額
- ① リース物件の取得価額相当額は、リース取引開始時に合意されたリース料総額から、これに含まれている利息相当額の合理的な見積額を控除した額に基づいて算定する。(注2)
- ② リース物件の減価償却累計額相当額は、通常の減価償却の方法に準じて算定する。(注3)
- ③ リース物件の期末残高相当額は、当該リース物件の取得価額相当額から減価償却累計額相当額及び減損損失累計額相当額を控除することによって算定する。
- ④ リース物件の取得価額相当額、減価償却累計額相当額、減損損失累計額相当額及び期末残高相当額は、リース物件の種類別に記載する。リース物件の種類は、貸借対照表記載の固定資産の科目に準じて分類する。
- (2) 未経過リース料期末残高相当額等
- ① 未経過リース料期末残高相当額は、期末現在における未経過リース料(貸借対照表日後のリース期間に係るリース料をいう。以下同じ。)から、これに含まれている利息相当額の合理的な見積額を控除することによって算定する。(注2)
- ② 未経過リース料期末残高相当額は、貸借対照表日後1年以内のリース期間に係るリース料の額と1年を超えるリース期間に係るリース料の額とに分けて記載する。
- ③ リース資産減損勘定(リース資産に配分された減損損失に対応する負債をいう。以下同じ。)
- (3) 当期の支払リース料、リース資産減損勘定の取崩額、減価償却費相当額、支払利息相当額及び減損損失(注2)
- (4) 減価償却費相当額及び利息相当額の算定方法
利息相当額の算定方法には、利息相当額の合理的な見積額の算定方法及び当該利息相当額の各期への配分方法を記載する。
(貸 手)
- 2. 本適用指針第116項に定める1993年リース取引会計基準で必要とされていた注記事項とは、次の事項をいう。
- (1) リース物件の取得価額、減価償却累計額、減損損失累計額及び期末残高
貸借対照表記載の固定資産に含まれているリース物件の取得価額、減価償却累計額、減損損失累計額及び期末残高をリース物件の種類別に記載する。リース物件の種類は、貸借対照表記載の固定資産の科目に準じて分類する。
期末残高を算定するにあたっては、減損損失累計額を控除する。 - (2) 未経過リース料期末残高相当額
- ① 未経過リース料期末残高相当額は、期末現在における未経過リース料及び見積残存価額の合計額から、これに含まれている利息相当額を控除することによって算定する。(注4)(注5)
- ② 未経過リース料期末残高相当額は、貸借対照表日後1年以内のリース期間に係るリース料の額と1年を超えるリース期間に係るリース料の額とに分けて記載する。
- (3) 当期の受取リース料、減価償却費及び受取利息相当額(注5)
- (4) 利息相当額の算定方法
利息相当額の算定方法には、利息相当額の各期への配分方法を記載する。 - (注1) リース期間が1年未満のリース取引及び企業の事業内容に照らして重要性の乏しいリース取引でリース契約1件当たりの金額が少額なリース取引(リース契約1件当たりのリース料総額(維持管理費用相当額のリース料総額に占める割合が重要な場合には、その合理的見積額を除くことができる。)が300万円以下のものとする。ただし、1つのリース契約に科目の異なる有形固定資産(有形固定資産以外の資産をファイナンス・リース取引の対象とする場合は、当該資産を含む。)が含まれている場合は、異なる科目ごとに、その合計金額によることができる。)については、注記を省略することができる。
- (注2) 未経過リース料の期末残高(通常の売買取引に係る方法に準じて会計処理されている部分を除く。)が当該期末残高及び有形固定資産の期末残高の合計額(有形固定資産以外の資産をファイナンス・リース取引の対象とする場合には、当該資産の属する科目の期末残高を含む。以下同じ。)に占める割合に重要性が乏しい場合には、リース物件の取得価額相当額及び未経過リース料期末残高相当額の算定に当たり、リース取引開始時に合意されたリース料総額及び期末現在における未経過リース料から、これらに含まれている利息相当額の合理的な見積額を控除しない方法(以下「支払利子込み法」という。)によることができる。上記算式により算出した割合に重要性が乏しい場合とは、当該割合が10パーセント未満の場合とする。
ただし、前段落の規定にかかわらず、ファイナンス・リース取引の対象となる資産の属する科目が当該会社の事業内容に照らして重要性が乏しい場合において、当該期末における当該科目に属するリース物件に係る未経過リース料の期末残高が当該未経過リース料の期末残高及び有形固定資産の期末残高の合計額に占める割合に重要性が乏しい場合には、当該科目に属するリース物件に係る取得価額相当額及び未経過リース料残高相当額を支払利子込み法により算定することができる。上記算式により算出した割合に重要性が乏しい場合とは、当該割合が5パーセント未満の場合とする。
上記の未経過リース料の期末残高には、次のようなリース取引に係るものは含まれないものとする。
① 売買処理が行われているリース取引
② リース期間が1年未満のリース取引
③ (注1)により重要性が乏しいものとして注記をしないものとしたリース取引
④ 利息相当額の合理的な見積額を控除する方法によっているリース取引 - (注3) リース契約上の諸条件に照らしてリース物件の所有権が借手に移転すると認められるもの以外のファイナンス・リース取引に係るリース物件の減価償却費相当額は、リース期間を耐用年数とし、残存価額をゼロとして算定する。
- (注4) 利息相当額の総額は、リース開始時に合意されたリース料総額及び見積残存価額の合計額から、これに対応するリース物件の取得価額を控除することによって算定する。
- (注5) 未経過リース料及び見積残存価額の合計額の期末残高が当該期末残高及び営業債権の期末残高の合計額に占める割合に重要性が乏しい場合には、リース物件に係る未経過リース料期末残高相当額の算定に当たり、期末現在における未経過リース料及び見積残存価額の合計額から、これに含まれている利息相当額を控除しない方法によることができる。上記の算式により算出した割合に重要性が乏しい場合とは、当該割合が10パーセント未満の場合とする。
なお、上記の未経過リース料及び見積残存価額の合計額には、次のようなリース取引に係るものは含まれないものとする。
① 売買処理が行われているリース取引
② 利息相当額の合理的な見積額を控除する方法によっているリース取引 - 以 上