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企業会計基準適用指針第10号企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針
目 的
- 1. 本適用指針は、企業会計基準第21号「企業結合に関する会計基準」(以下「企業結合会計基準」という。)及び企業会計基準第7号「事業分離等に関する会計基準」(以下「事業分離等会計基準」という。)の2つの会計基準を適用する際の指針を定めることを目的とする(第334項から第336項参照)。
- なお、本適用指針は、2005年(平成17年)12月27日に公表された企業会計基準適用指針第10号「企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針」について、2006年(平成18年)及び2007年(平成19年)に所要の改正を行ったものである(第338-2項及び第338-3項参照)。
また、2008年(平成20年)及び2013年(平成25年)に企業結合会計基準及び事業分離等会計基準を改正したことに伴い、本適用指針についても改正を行っている(第338-4項及び第338-5項参照)。 - 1-2. 2019年(平成31年)に改正された本適用指針では、2019年(平成31年)に企業結合会計基準を改正したことに伴い、所要の改正を行った。また、結合当事企業の株主に係る会計処理に関する適用指針の記載について事業分離等会計基準の記載と整合性を図るなどの改正を行った(第338-6項参照)。
- 2. 本適用指針の構成は、原則として、企業結合の会計上の分類(取得、共同支配企業の形成、共通支配下の取引)ごと、かつ、代表的な組織再編の形式(合併、会社分割、事業譲渡・譲受、株式交換、株式移転等)ごとに個別財務諸表上及び連結財務諸表上の会計処理を示している(第334項参照)。
適用指針
Ⅰ.範 囲
- 3. 本適用指針は、企業結合会計基準及び事業分離等会計基準が適用される連結財務諸表及び個別財務諸表について適用する。
Ⅱ.用語の定義
- 4. 本適用指針における用語の定義は、企業結合会計基準及び事業分離等会計基準における用語の定義と同様とする。
- 5. 前項の他に、本適用指針では、以下の用語を定義する。
- (1) 「吸収合併存続会社」とは、吸収合併後存続する会社をいう(会社法第749条第1項)。
- (2) 「吸収合併消滅会社」とは、吸収合併により消滅する会社をいう(会社法第749条第1項第1号)。
- (3) 「新設合併設立会社」とは、新設合併により設立する会社をいう(会社法第753条第1項)。
- (4) 「新設合併消滅会社」とは、新設合併により消滅する会社をいう(会社法第753条第1項第1号)。
- (5) 「吸収分割承継会社」とは、吸収分割において、ある会社が事業に関して有する権利義務の全部又は一部を当該会社から承継する会社をいう(会社法第757条)。
- (6) 「吸収分割会社」とは、吸収分割において、事業に関して有する権利義務の全部又は一部をある会社に承継させる会社をいう(会社法第758条第1号)。
- (7) 「新設分割設立会社」とは、新設分割により設立する会社をいう(会社法第763条)。
- (8) 「新設分割会社」とは、新設分割をする会社をいう(会社法第763条第5号)。
- (9) 「株式交換完全親会社」とは、株式交換において、ある株式会社の発行済株式の全部を取得する会社をいう(会社法第767条)。
- (10) 「株式交換完全子会社」とは、株式交換において、発行済株式の全部を取得される株式会社をいう(会社法第768条第1項第1号)。
- (11) 「株式移転設立完全親会社」とは、株式移転により設立する株式会社をいう(会社法第773条第1項第1号)。
- (12) 「株式移転完全子会社」とは、株式移転において、株式移転設立完全親会社に発行済株式の全部を取得させる株式会社をいう(会社法第773条第1項第5号)。
- (13) 「吸収合併存続会社等」とは、吸収合併存続会社及び新設合併設立会社をいう。
- (14) 「吸収合併消滅会社等」とは、吸収合併消滅会社及び新設合併消滅会社をいう。
- (15) 「吸収分割承継会社等」とは、吸収分割承継会社及び新設分割設立会社をいう。
- (16) 「吸収分割会社等」とは、吸収分割会社及び新設分割会社をいう。
- (17) 「株式交換完全親会社等」とは、株式交換完全親会社及び株式移転設立完全親会社をいう。
- (18) 「株式交換完全子会社等」とは、株式交換完全子会社及び株式移転完全子会社をいう。
- 6. (以下、第28項まで削除)
Ⅲ.取得の会計処理
1.取得の会計処理の概要
- 29. パーチェス法では、被取得企業から受け入れる資産及び負債の取得原価を、原則として、対価として交付する現金及び株式等の時価とする。
- 30. パーチェス法は、取得企業の観点から企業結合をみるもので、取得企業は企業結合日において被取得企業が企業結合日前に認識していなかったものも含めて、受け入れた資産及び引き受けた負債のうち識別可能なものに取得原価を配分する。取得原価と取得原価の配分額との差額がのれん(又は負ののれん)であり、のれんについては20年以内のその効果の及ぶ期間にわたり、合理的な方法により規則的に償却する。
- 31. 取得企業は、被取得企業の経営成績及びキャッシュ・フローの状況を企業結合日から損益計算書及びキャッシュ・フロー計算書に取り込むことになる。
なお、企業結合日とは、被取得企業若しくは取得した事業に対する支配が取得企業に移転した日、又は結合当事企業の事業のすべて若しくは事実上すべてが統合された日(企業結合会計基準第15項)をいい、会社法における組織再編の効力が発生する日と同じ日となる。本適用指針では、企業結合日を、合併の場合には合併期日、会社分割の場合には分割期日、株式交換の場合には株式交換日、株式移転の場合には株式移転日と記載している。 - 31-2. 企業結合に適用すべき会計基準として、企業結合会計基準及び企業会計基準第22号「連結財務諸表に関する会計基準」(以下「連結会計基準」という。)がある。従来、企業結合会計基準は、合併、株式交換・株式移転、会社分割、事業譲渡・譲受、現物出資等に対して適用され、連結会計基準は、現金を対価とした子会社株式の取得に対して適用されるものとされていた。
2008年(平成20年)改正の企業結合会計基準及び連結会計基準において、企業結合に該当する取引はすべて企業結合会計基準が適用されることとされたため、現金を対価とする子会社株式の取得についても連結会計基準に定めのない企業結合及び事業分離等に関する事項については、連結財務諸表上、企業結合会計基準及び事業分離等会計基準並びに本適用指針の定めに従って会計処理及び注記をすることとなる。
なお、企業とは、会社及び会社に準ずる事業体をいう(企業結合会計基準第4項及び事業分離等会計基準第2-2項)が、本適用指針では、企業が株式会社の場合を前提としており、それ以外の場合においては、株式会社の場合に準じて取り扱う。
2.取得企業の決定
取得企業の決定規準の考え方
連結会計基準の考え方の利用
- 32. 取得企業を決定するためには、連結会計基準の考え方を用いることとされている(企業結合会計基準第18項)。これには、結合後企業に支配株主が存在するとき、当該株主により企業結合前から支配されていた結合当事企業(子会社)を取得企業とすることも含まれる(第354項参照)。
総体としての株主が占める相対的な議決権比率の大きさ
- 32-2. 主な対価の種類が株式である企業結合の場合、総体としての株主が占める相対的な議決権比率の大きさ(企業結合会計基準第20項(1))についても、一般に組織再編は様々な形態をとることが考えられる(企業結合会計基準第80項)ことから、他の要素とともに総合的に勘案することによって、取得企業を最終的に決定することとなる。
また、当該議決権比率の判断にあたっては、潜在株式の存在についても考慮しなければならないとされているが、権利行使の可能性がないと見込まれる場合には、これを考慮しないことが適切と考えられる。
最も大きな議決権比率を有する株主の存在
- 32-3. 企業結合会計基準第20項(2)では、ある株主又は株主グループ以外には重要な議決権比率を有していない場合を前提としているが、これは、関連会社にあたる程度にまで議決権比率を有しているような株主又は株主グループが他には存在しない場合が該当する。
株式の交換条件
- 32-4. ある結合当事企業が他の結合当事企業の企業結合前における株式の時価を超えるプレミアムを支払う場合(企業結合会計基準第20項(5))とは、例えば、株式の交換比率の算定にあたり、企業結合の主要条件が合意された日などの企業結合前における株式の市場価格(株価)に加えて、支配する対価としてのプレミアムが反映されている場合が該当する。
会社分割の場合の取扱い
- 32-5. 組織再編の形式が会社分割(共同新設分割又は吸収分割)の場合には、取得企業としては、分離先企業における分離元企業から移転された事業自体を指すことがある。
- 33. (削 除)
3.本適用指針で取り扱う取得とされた組織再編の形式ごとの会計処理
- 34. 本適用指針では、取得とされた企業結合を大きく2つに分けて整理している。
- (1) 企業又は事業の直接取得
ある結合当事企業が他の結合当事企業又は事業を直接取得する組織再編の形式には、合併、会社分割、事業譲受及び現物出資が含まれる。 - (2) 企業の間接取得
ある結合当事企業が他の結合当事企業の株式の取得を通じて、他の結合当事企業を間接取得する組織再編の形式には、株式交換及び株式移転が含まれる(株式移転の場合には、株式移転設立完全親会社を経由した株式の取得)。 - このような企業又は事業の直接取得と間接取得、あるいは、組織再編の形式の相違は、原則として、連結財務諸表上の会計処理には影響しないものの、個別財務諸表上の会計処理には影響がある。
このため、本適用指針では、代表的な組織再編の形式として次の3つを取り上げ、それぞれの会計処理を示している。 - ① 吸収合併、吸収分割、事業譲受及び現物出資(第35項から第88項参照)
なお、吸収分割による企業結合が取得とされた場合の吸収分割会社(分離元企業)の会計処理は、第89項から第108項にて示している。
また、共同新設分割が取得とされた場合の新設分割設立会社の会計処理は、単独新設分割により設立された複数の新設分割設立会社が、その設立直後に合併したものとみなして会計処理する。具体的には、最初に単独新設分割の会計処理を行い(新設分割設立会社の会計処理は第261項(第227項)参照。なお、新設分割会社の会計処理は第260項(第226項)参照)、次に、取得企業とされた新設分割設立会社が他の新設分割設立会社を被取得企業として合併の会計処理を行うことになる。 - ② 株式交換(第110項から第119項参照)
- ③ 株式移転(第120項から第126項参照)
4.取得とされた吸収合併、吸収分割、事業譲受及び現物出資の会計処理
本適用指針における取得企業の取扱い
- 35. 第36項から第83項までの定めは、吸収合併存続会社、吸収分割承継会社、事業譲受会社及び現物出資の受入会社が取得企業となる場合を前提としている。なお、「逆取得」の会計処理は第84項から第88項にて示している。
5.取得原価の算定方法
(1)取得原価の算定方法の概要
- 36. 被取得企業(吸収合併消滅会社)又は取得した事業(会社分割、事業譲受又は現物出資により移転された事業)の取得原価は、原則として、取得の対価(支払対価)となる財の企業結合日における時価で算定するとされている(企業結合会計基準第23項)。
(2)支払対価が現金以外の場合の取得の対価の算定
- 37. 「支払対価が現金以外の資産の引渡し、負債の引受け又は株式の交付の場合には、支払対価となる財の時価と被取得企業又は取得した事業の時価のうち、より高い信頼性をもって測定可能な時価で算定する」(企業結合会計基準第23項)とされている。支払対価が取得企業の株式の交付の場合には、第38項から第43項に従い、取得の対価を算定する。
(3)支払対価が取得企業の株式の場合の取得の対価の算定
- 38. 支払対価として取得企業の株式が交付された場合の取得の対価は、原則として、当該株式の企業結合日における時価により算定する。
なお、非公開企業同士の株式の交換において、企業結合会計上の測定値として妥当と認められる時価純資産が算定されている場合(第357項参照)には、被取得企業から受け入れた識別可能資産及び負債の企業結合日の時価を基礎とした正味の評価額をもって評価することもできる。 - 39. 前項(なお書きを除く。)において、株式の交換比率を算定する目的で算定された価額であっても、被取得企業又は取得した事業の時価や取得の対価となる財の時価に適切に調整しており、かつ企業結合日までに重要な変動が生じていないと認められる場合には、取得の対価とすることができる。
- 40. (削 除)
- 41. (削 除)
(4)(削 除)
- 42. (削 除)
- 43. (削 除)
(5)支払対価が現金の場合の取得の対価の算定
- 44. 支払対価が現金の場合には、取得の対価は現金の支出額とするとされている(企業結合会計基準第84項)。
(6)支払対価が自社以外の株式(例えば親会社株式)の場合の取得の対価の算定
- 45. 支払対価が自社以外の株式(例えば親会社株式)の場合の取得の対価は、第38項に準じて算定する。
(7)取得が複数の取引により達成された場合(段階取得)の取得の対価の算定
個別財務諸表上の会計処理
- 46. 取得が複数の取引により達成された場合(以下「段階取得」という。)、個別財務諸表上、支配を獲得するに至った個々の取引ごとの原価の合計額をもって、被取得企業の取得原価とする(企業結合会計基準第25項(1))とされている。
例えば、取得企業(吸収合併存続会社)の株式が交付され、取得企業が吸収合併直前に被取得企業の株式を保有していた場合の取得の対価は、取得企業が交付する取得企業の株式の時価(第38項参照)と合併期日の被取得企業の株式の帳簿価額(移管指針第9号「金融商品会計に関する実務指針」(以下「金融商品会計実務指針」という。)第57項(4))を合算して算定される。[設例4]
なお、企業結合日直前の被取得企業の株式の帳簿価額については、以下の点に留意する必要がある。 - (1) 被取得企業の株式をその他有価証券に分類し、期末に時価による評価替えを行っていても、被取得企業の株式の帳簿価額は、時価による評価前の価額となる。ただし、その他有価証券の評価差額の会計処理として部分純資産直入法を採用しており、当該有価証券について評価差損を計上している場合には、時価による評価後の価額となる。
- (2) 被取得企業の株式に対して投資損失引当金を計上している場合には、当該金額を控除した価額となる。
- (3) 被取得企業の株式を企業結合日前に減損処理している場合には、減損処理後の帳簿価額を基礎とする。
連結財務諸表上の会計処理
- 46-2. 段階取得の場合、連結財務諸表上、支配を獲得するに至った個々の取引すべての企業結合日における時価をもって、被取得企業の取得原価を算定する。なお、当該被取得企業の取得原価と、支配を獲得するに至った個々の取引ごとの原価の合計額との差額は、当期の段階取得に係る損益として処理する(企業結合会計基準第25項(2))とされている。
例えば、取得企業(吸収合併存続会社)の株式が交付され、取得企業が吸収合併直前に被取得企業の株式を保有していた場合の取得の対価は、取得企業が交付する取得企業の株式の時価(第38項参照)と吸収合併直前の被取得企業の株式の時価(第38項に準じて算定)を合算して算定され、吸収合併直前の被取得企業の株式の帳簿価額と合併期日の時価との差額は、当期の段階取得に係る損益として処理される。また、これに見合う金額は、個別財務諸表において計上されたのれん(又は負ののれん)の修正として処理される。[設例4]
投資会社が持分法適用関連会社と企業結合した場合には、支配を獲得するに至った個々の取引ごとの原価は持分法による評価額を指す(企業結合会計基準第25項(2)なお書き)ため、その場合には、企業結合日直前の被取得企業の株式(関連会社株式)の持分法による評価額と企業結合日の時価との差額は、当期の段階取得に係る損益とし、これに見合う金額は、のれん(又は負ののれん)の修正として処理される。なお、企業結合日直前の個別財務諸表上の関連会社株式の帳簿価額と持分法による評価額との差額は、のれん(又は負ののれん)の修正として処理される。[設例4]
また、持分法による評価額には、関連会社株式に含めて処理されているのれんの未償却残高、未実現損益に関する修正額が含まれる。
(8)条件付取得対価の会計処理
- 47. 条件付取得対価の会計処理は、次のように行うものとされている。
- (1) 将来の業績に依存する条件付取得対価[設例5]
条件付取得対価(企業結合会計基準(注2))が企業結合契約締結後の将来の業績に依存する場合(企業結合会計基準(注3))において、追加的に対価が交付される又は引き渡されるときには、条件付取得対価の交付又は引渡しが確実となり、その時価が合理的に決定可能となった時点で、支払対価を取得原価として追加的に認識するとともに、のれんを追加的に認識する又は負ののれんを減額する(企業結合会計基準第27項(1))。
一方、対価の一部が返還されるときには、条件付取得対価の返還が確実となり、その時価が合理的に決定可能となった時点で、返還される対価の金額を取得原価から減額するとともに、のれんを減額する又は負ののれんを追加的に認識する(企業結合会計基準第27項(1))。
追加的に認識する又は減額するのれん又は負ののれんは企業結合日時点で認識又は減額されたものと仮定して計算し、追加認識又は減額する事業年度以前に対応する償却額及び減損損失額は損益として処理する(企業結合会計基準(注4))。
なお、条件付取得対価は、その追加的な交付若しくは引渡し又は返還が企業結合日後に行われるものに限定されるものと解される。 - (2) 特定の株式又は社債の市場価格に依存する条件付取得対価[設例5]
「特定の株式又は社債の特定の日又は期間の市場価格に応じて当初合意した価額に維持するために、取得企業が追加で株式又は社債を交付する条項がある場合等」(企業結合会計基準 (注5))、「条件付取得対価が特定の株式又は社債の市場価格に依存する場合には、条件付取得対価の交付又は引渡しが確実となり、その時価が合理的に決定可能となった時点で、次の処理を行う」(企業結合会計基準第27項(2))とされている。 - ① 追加で交付可能となった条件付取得対価を、その時点の時価に基づき認識する。
- ② 企業結合日現在で交付している株式又は社債をその時点の時価に修正し、当該修正により生じた社債プレミアムの減少額又はディスカウントの増加額を将来にわたって規則的に償却する。
(9)(削 除)
- 48. (削 除)
(10)株式交付費の取扱い
- 49. 企業結合の際の株式の交付に伴い発生する費用(登録免許税、証券会社への業務委託手数料等)は、企業結合の対価というよりは、支払対価の種類に影響される財務的な活動としての性格が強い支出と考えられるため、取得原価には含めず、別途、株式交付費として会計処理する。
(11)吸収合併存続会社が新株予約権等を交付したときの会計処理
- 50. 吸収合併が取得とされた場合において、吸収合併存続会社が、新株予約権等を交付したときの会計処理は次のように行う。
- (1) 吸収合併消滅会社の株主に対して、当該吸収合併消滅会社株式と引き換えに、吸収合併存続会社の新株予約権を交付したときは、取得の対価として処理する。このとき、吸収合併存続会社が交付した新株予約権に付すべき帳簿価額は、合併期日の時価(第38項に準じて算定)による。
- (2) 吸収合併消滅会社の新株予約権者に対して、吸収合併消滅会社の新株予約権と引き換えに、吸収合併存続会社の新株予約権又は現金を交付したときは、当該新株予約権又は現金は取得原価に含める(第361項参照)。新株予約権に付すべき帳簿価額は、原則として、合併期日の時価による。ただし、吸収合併消滅会社の新株予約権者に対して、吸収合併存続会社の新株予約権を交付する際に交付した新株予約権の時価と吸収合併消滅会社が付していた新株予約権の帳簿価額との差異が重要でないと見込まれるときには、吸収合併存続会社は、当該帳簿価額をもって交付した新株予約権の帳簿価額とすることができる。
- これらの取扱いは、吸収合併以外の取得とされた組織再編についても適用する。
6.取得原価の配分方法
(1)取得原価の配分方法の概要
- 51. 取得原価(第36項参照)は、被取得企業から受け入れた資産及び引き受けた負債のうち企業結合日において識別可能なもの(識別可能資産及び負債)に対して、その企業結合日における時価を基礎として配分し、取得原価と取得原価の配分額との差額はのれん(又は負ののれん)とするとされている(企業結合会計基準第28項から第31項)(第448項参照)。
(2)識別可能資産及び負債の範囲
- 52. 識別可能資産及び負債の範囲は、「被取得企業の企業結合日前の貸借対照表において計上されていたかどうかにかかわらず、企業がそれらに対して対価を支払って取得した場合、原則として、我が国において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準の下で認識されるものに限定する」(企業結合会計基準第99項)とされている。
(3)識別可能資産及び負債への取得原価の配分額の算定
- 53. 識別可能資産及び負債への取得原価の配分額は、企業結合日における次の時価を基礎として、算定するとされている(企業結合会計基準第102項及び第103項)(第362項参照)。
- (1) 観察可能な市場価格に基づく価額
- (2) (1)がない場合には、合理的に算定された価額
合理的に算定された価額による場合には、市場参加者が利用するであろう情報や前提等が入手可能である限り、それらに基礎を置くこととし、そのような情報等が入手できない場合には、見積りを行う企業が利用可能な独自の情報や前提等に基礎を置くものとされている。
合理的に算定された価額は、一般に、コスト・アプローチ、マーケット・アプローチ、インカム・アプローチなどの見積方法が考えられ、資産の特性等により、これらのアプローチを併用又は選択して算定することとなる(企業会計基準適用指針第6号「固定資産の減損に係る会計基準の適用指針」(以下「減損会計適用指針」という。)第28項(2))。
なお、金融商品、退職給付に係る負債など個々の識別可能資産及び負債については、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準において示されている時価等の算定方法が利用されることとなる。
(4)取得原価の配分額の算定における簡便的な取扱い
- 54. 前項にかかわらず、次のいずれの要件も満たす場合には、被取得企業の適正な帳簿価額を基礎として取得原価の配分額を算定できる(第363項参照)。
- (1) 被取得企業が、企業結合日の前日において、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に従って資産及び負債の適正な帳簿価額を算定していること
- (2) (1)の帳簿価額と企業結合日の当該資産又は負債の時価との差異が重要でないと見込まれること
(5)時価が一義的に定まりにくい資産への配分額の特例
- 55. 受け入れた資産に大規模工場用地や近郊が開発されていない郊外地のように時価が一義的には定まりにくい資産が含まれ、これを評価することにより、負ののれんが多額に発生することが見込まれる場合には、「その金額を当該固定資産等に合理的に配分した評価額も、ここでいう合理的に算定された時価であると考える」(企業結合会計基準第103項)とされている。
したがって、当該資産に対する取得原価の配分額は、負ののれんが発生しない範囲で評価した額とすることができる。ただし、企業結合条件の交渉過程で取得企業が利用可能な独自の情報や前提など合理的な基礎に基づき当該資産の価額を算定しており、それが取得の対価の算定にあたり考慮されている場合には、その価額を取得原価の配分額とする(第364項参照)。[設例6]
(6)無形資産への取得原価の配分
- 56. (削 除)
- 57. (削 除)
法律上の権利
- 58. 企業結合会計基準第29項にいう「法律上の権利」とは、特定の法律に基づく知的財産権(知的所有権)等の権利をいう。特定の法律に基づく知的財産権(知的所有権)等の権利には、産業財産権(特許権、実用新案権、商標権、意匠権)、著作権、半導体集積回路配置、商号、営業上の機密事項、植物の新品種等が含まれる。
分離して譲渡可能な無形資産
- 59. 企業結合会計基準第29項にいう「分離して譲渡可能な無形資産」とは、受け入れた資産を譲渡する意思が取得企業にあるか否かにかかわらず、企業又は事業と独立して売買可能なものをいい、そのためには、当該無形資産の独立した価格を合理的に算定できなければならない(第367項参照)。
- 59-2. 特定の無形資産に着目して企業結合が行われた場合など、企業結合の目的の1つが特定の無形資産の受入れであり、その無形資産の金額が重要になると見込まれる場合には、当該無形資産は分離して譲渡可能なものとして取り扱う。したがって、このような場合には、企業結合会計基準第28項及び第29項により、当該無形資産を識別可能資産として、取得原価を配分することとなる(第367-2項参照)。
- 60. (削 除)
- 61. (削 除)
(6-2)リースに係る使用権資産及びリース負債への取得原価の配分
- 61-2. リースに係るリース負債は、当該リースが企業結合日現在で新規のリースであったかのように残りの借手のリース料(企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」(以下「リース会計基準」という。)第19項)の現在価値を基礎として取得原価の配分額を算定することができる。
この場合、リースに係る使用権資産は、リース負債に次の金額を加減した金額を基礎として使用権資産への取得原価の配分額を算定する。 - (1) リースの条件が市場の条件と比較して有利又は不利になる場合における市場と異なる条件の影響額
- (2) 借地権の設定に係る権利金等(企業会計基準適用指針第33号「リースに関する会計基準の適用指針」(以下「リース適用指針」という。)第4項(9))が識別されている場合における当該権利金等の時価
- 61-3. リース適用指針第22項に定める少額リースについては、取得原価を配分しないことができる。
また、企業結合日において残りの借手のリース期間が12か月以内であるリースについては、取得原価を配分しないことができる。この場合、企業結合日後に計上した費用について、損益計算書において区分して表示していないとき、リース適用指針第100項(1)の短期リースに係る費用の発生額に含めて注記する。
(7)企業結合に係る特定勘定への取得原価の配分
- 62. 「取得後に発生することが予測される特定の事象に対応した費用又は損失であって、その発生の可能性が取得の対価の算定に反映されている場合には、負債として認識する」(企業結合会計基準第30項)とされている(第372項参照)。
当該負債(以下「企業結合に係る特定勘定」という。)の計上は、次項及び第64項を満たしている場合に限られる。なお、認識の対象となった事象が貸借対照表日後1年内に発生することが明らかなものは流動負債として表示する(第451項参照)。
企業結合に係る特定勘定に計上できる費用又は損失の範囲
- 63. 「取得後に発生することが予測される特定の事象に対応した費用又は損失」(前項参照)は、企業結合日において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準(ただし、当該企業結合に係る特定勘定に適用される基準を除く。)の下で認識される識別可能負債に該当しないもののうち、企業結合日後に発生することが予測され、被取得企業に係る特定の事象に対応した費用又は損失(ただし、識別可能資産への取得原価の配分額に反映されていないものに限る。)をいう(第374項参照)。
取得の対価の算定に反映されている場合
- 64. 「取得の対価の算定に反映されている場合」(第62項参照)とは、次のいずれかの要件を満たしている場合をいう(第375項参照)。
- (1) 当該事象及びその金額が契約条項等(結合当事企業の合意文書)で明確にされていること
- (2) 当該事象が契約条項等で明確にされ、当該事象に係る金額が取得の対価(株式の交換比率など)の算定にあたり重視された資料に含まれ、当該事象が反映されたことにより、取得の対価が減額されていることが取得企業の取締役会議事録等により確認できること
- (3) 当該事象が取得の対価の算定にあたって考慮されていたことが企業結合日現在の事業計画等により明らかであり、かつ当該事象に係る金額が合理的に算定されること(ただし、この場合には、のれんが発生しない範囲で評価した額に限る。)
- 65. (削 除)
企業結合日以後の企業結合に係る特定勘定の会計処理
- 66. 企業結合に係る特定勘定は、認識の対象となった事象が発生した事業年度又は当該事象が発生しないことが明らかになった事業年度に取り崩すことになる。ただし、企業結合日以後、引当金又は未払金など、他の負債としての認識要件を満たした場合には、企業結合に係る特定勘定から他の適当な負債科目に振り替えることが必要になる(第377項参照)。
また、当該事象が発生しないことが明らかになった場合の取崩額は、原則として、特別利益に計上する(第303項参照)。
(8)退職給付に係る負債への取得原価の配分
- 67. 確定給付制度による退職給付に係る負債は、企業結合日において、受け入れた制度ごとに「退職給付に関する会計基準」(2012年(平成24年)5月に企業会計基準第26号「退職給付に関する会計基準」に改正されている。)に基づいて算定した退職給付債務及び年金資産の正味の価額を基礎として取得原価を配分する。したがって、被取得企業における未認識項目は取得企業に引き続がれない。
退職給付債務については、原則として、企業結合日において受け入れる従業員等の分について、企業結合日の計算基礎により数理計算をするが、企業結合日前の一定日における被取得企業が計算した退職給付債務を基礎に、取得企業が適切に調整して算定した額を用いることができる。
なお、被取得企業の退職給付制度について、制度の改訂が予定されている場合であっても、退職給付債務に関する測定は、企業結合日における適切な諸条件に基づいて行う。また、企業結合により、被取得企業の従業員に関する退職一時金や早期割増退職金の支払予定額が取得の対価の算定に反映されているときなど、第63項及び第64項の要件のすべてを満たしている場合には、「企業結合に係る特定勘定」として取得原価の配分の対象となる。
(9)被取得企業においてヘッジ会計が適用されていた場合の取得原価の配分
- 68. 被取得企業でヘッジ会計を適用していたか否かにかかわらず、受け入れた金融資産又は引き受けた金融負債(デリバティブを含む。)は、企業会計基準第10号「金融商品に関する会計基準」(以下「金融商品会計基準」という。)に従って算定した時価を基礎として取得原価を配分する。したがって、被取得企業においてヘッジ会計が適用されており、繰延ヘッジ損失及び繰延ヘッジ利益が計上されていても、取得企業はそれらを引き継ぐことはできない。
取得企業において、受け入れた資産又は引き受けた負債に対してヘッジ会計を適用する場合は、企業結合日において新たにヘッジ指定を行うこととする。キャッシュ・フローを固定するヘッジ取引とする場合には、企業結合日に取得原価が配分されたデリバティブの時価相当額を前受利息等に振り替え、ヘッジ対象が損益として実現する期間の損益として処理する。[設例7]
(10)取得原価の配分における暫定的な会計処理の対象となる科目
- 69. 取得原価の配分は、企業結合日以後1年以内に行わなければならないとされ(企業結合会計基準第28項)、また、「企業結合日以後の決算において、配分が完了していなかった場合は、その時点で入手可能な合理的な情報等に基づき暫定的な会計処理を行い、その後追加的に入手した情報等に基づき配分額を確定させる」(企業結合会計基準(注6))とされている。
暫定的な会計処理の対象となる項目は、繰延税金資産及び繰延税金負債のほか(第73項参照)、土地、無形資産、偶発債務に係る引当金など、実務上、取得原価の配分額の算定が困難な項目に限られる。[設例8]
ただし、企業結合日以後最初に到来する取得企業の決算日までの期間が短い場合など、被取得企業から受け入れた識別可能資産及び負債への取得原価の配分額が確定しない場合(被取得企業の適正な帳簿価額の算定が企業結合日以後最初に到来する取得企業の決算には間に合わない場合等)も想定されるので、このような場合には、被取得企業から受け入れた資産及び引き受けた負債のすべてを暫定的な会計処理の対象とすることができる(第378項参照)。
(11)暫定的な会計処理の確定処理
- 70. 暫定的な会計処理の確定により取得原価の配分額を見直した場合には、企業結合日におけるのれん(又は負ののれん)の額も取得原価が再配分されたものとして会計処理を行う。
なお、取得原価の配分は、企業結合日以後1年以内に行わなければならないとされている(企業結合会計基準第28項)。このため、暫定的な会計処理の確定が、企業結合年度ではなく企業結合年度の翌年度において行われた場合には、企業結合年度に当該確定が行われたかのように、会計処理を行う。この場合において、企業結合年度の翌年度の財務諸表と併せて企業結合年度の財務諸表を表示するときには、当該企業結合年度の財務諸表に暫定的な会計処理の確定による取得原価の配分額の見直しを反映させる(企業結合会計基準(注6))。[設例8]
(12)取得企業の税効果会計
繰延税金資産及び繰延税金負債への取得原価の配分
- 71. 組織再編の形式が、事業を直接取得することとなる合併、会社分割等の場合には、取得企業は、企業結合日において、被取得企業又は取得した事業から生じる一時差異等(取得原価の配分額(繰延税金資産及び繰延税金負債を除く。)と課税所得計算上の資産及び負債の金額との差額並びに取得企業に引き継がれる被取得企業の税務上の繰越欠損金等)に係る税金の額を、将来の事業年度において回収又は支払が見込まれない額を除き、繰延税金資産又は繰延税金負債として計上する。繰延税金資産及び繰延税金負債は、暫定的な会計処理の対象とする。[設例32]
- 72. のれん(又は負ののれん)は取得原価の配分残余であるため、のれん(又は負ののれん)に対する税効果は認識しない(第378-3項参照)。
繰延税金資産及び繰延税金負債への取得原価の配分額の確定
- 73. 企業結合日に認識された繰延税金資産及び繰延税金負債への取得原価の配分額の見直しは、次の場合がある。
- (1) 暫定的な会計処理の対象としていた識別可能資産及び負債の取得原価への配分額の見直しに伴うもの
- (2) 将来年度の課税所得の見積りの変更等による繰延税金資産の回収見込額の見直しによるもの
- (1)及び(2)のいずれの場合も、第70項に従い会計処理する。
- ただし、(2)については、その見直し内容が明らかに企業結合年度における繰延税金資産の回収見込額の見直しと考えられる場合や、企業結合日に存在していた事実及び状況に関して、その後追加的に入手した情報等に基づき繰延税金資産の回収見込額の見直しを行う場合に限る(第379項及び第379-2項参照)。[設例32]
- 74. 前項(2)の繰延税金資産の回収見込額の修正は、企業結合日と取得企業の事業年度との関係から、具体的には次のように処理することになる。
- (1) 企業結合日が取得企業の事業年度期首の場合
企業結合日の1年後(企業結合年度末)に繰延税金資産への取得原価の配分額を確定し、その額が企業結合日の繰延税金資産への取得原価の配分額となる。 - (2) 企業結合日が取得企業の事業年度の期首の翌日以降の場合
企業結合年度末においては、その時点で入手可能な合理的な情報等に基づき計上する。これは基本的に「暫定的な会計処理」(第69項参照)として取り扱う。
企業結合日から1年を経過した日(実務上は、1年経過後最初に到来する期中会計期間末又は事業年度末)において、企業結合日における繰延税金資産への取得原価の配分額が確定する。企業結合日において計上した繰延税金資産の額を修正する場合は前項に従い会計処理する。 - (3) (削 除)
繰延税金資産の回収可能性
- 75. 繰延税金資産の回収可能性は、取得企業の収益力に基づく一時差異等加減算前課税所得等により判断し(企業会計基準適用指針第26号「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」(以下「回収可能性適用指針」という。)第6項)、企業結合による影響は、企業結合年度から反映させる。
将来年度の課税所得の見積額による繰延税金資産の回収可能性を過去の業績等に基づいて判断する場合には、企業結合年度以後、取得した企業又は事業に係る過年度の業績等を取得企業の既存事業に係るものと合算した上で課税所得を見積る。[設例32]
(13)のれんの会計処理
- 76. 「のれんは、資産に計上し、20年以内のその効果の及ぶ期間にわたって、定額法その他の合理的な方法により規則的に償却する」(企業結合会計基準第32項)とされている。
のれんの償却にあたり、次の事項に留意する必要がある(第380項から第382-2項及び第448項参照)。 - (1) のれんの償却開始時期は、企業結合日となる。なお、みなし取得日(第117項及び第121項また書き参照)による場合には、当該みなし取得日が期首であるときには、償却開始は期首からであり、期末であるときには翌期首からとなる。
- (2) のれんを企業結合日に全額費用処理することはできない(ただし(4)の場合を除く。)。
- (3) のれんの償却額は販売費及び一般管理費に計上することとし、減損処理以外の事由でのれんの償却額を特別損失に計上することはできない。
- (4) 「のれんの金額に重要性が乏しい場合には、当該のれんが生じた事業年度の費用として処理することができる」(企業結合会計基準第32項)とされている。当該費用の表示区分は販売費及び一般管理費とする。
- (5) 関連会社と企業結合したことにより発生したのれんは、持分法による投資評価額に含まれていたのれん(2008年(平成20年)12月26日に改正された企業会計基準第16号「持分法に関する会計基準」(以下「持分法会計基準」という。)第11項)の未償却部分と区別せず、企業結合日から新たな償却期間にわたり償却する。
- (6) のれんの償却期間及び償却方法は、企業結合ごとに取得企業が決定する。
- 77. のれんの未償却残高は、減損処理の対象となる(「固定資産の減損に係る会計基準」(以下「減損会計基準」という。)一 及び 二 8.)。特に、次の場合には、企業結合年度においても減損の兆候が存在すると考えられるときがあるとされている(企業結合会計基準第109項)。
- (1) 取得原価のうち、のれんやのれん以外の無形資産に配分された金額が相対的に多額になる場合
- (2) 被取得企業の時価総額を超えて多額のプレミアムが支払われた場合や、取得時に明らかに識別可能なオークション又は入札プロセスが存在していた場合
- なお、のれんの減損損失を認識すべきであるとされた場合には、減損損失として測定された額を特別損失に計上することになる。
在外子会社株式の取得等により生じたのれんの会計処理
- 77-2. 在外子会社株式の取得等により生じたのれんは、在外子会社等の財務諸表項目が外国通貨で表示されている場合には、当該外国通貨で把握し、決算日の為替相場により換算する。なお、当該外国通貨で把握されたのれんの当期償却額については、当該在外子会社等の他の費用と同様に換算することとなる(外貨建取引等会計処理基準三)(第382-2項参照)。
(14)負ののれんの会計処理
- 78. 負ののれんの会計処理にあたり、次の事項に留意する必要がある。
- (1) 負ののれんは、原則として、特別利益に計上する(企業結合会計基準第48項)。
- (2) 関連会社と企業結合したことにより発生した負ののれんは、連結会計基準第64項なお書きにより、持分法による投資評価額に含まれていたのれん(持分法会計基準第11項)の未償却部分と相殺し、のれん(又は負ののれん)が新たに計算される。
7.取得企業の増加資本の会計処理
(1)新株を発行した場合の会計処理
- 79. 企業結合の対価として、取得企業が新株を発行した場合には、払込資本(資本金又は資本剰余金)の増加として会計処理する。
なお、増加すべき払込資本の内訳項目(資本金、資本準備金又はその他資本剰余金)は、会社法の規定に基づき決定する(第384項、第385項、第408項及び第409項参照)。
また、増加すべき株主資本の額は、第38項の取得の対価の算定に準じて算定する。
(2)自己株式を処分した場合の会計処理
- 80. 企業結合の対価として、取得企業が自己株式を処分した場合(新株の発行を併用した場合を含む。以下同じ。)には、増加すべき株主資本の額(自己株式の処分の対価の額。新株の発行と自己株式の処分を同時に行った場合には、新株の発行と自己株式の処分の対価の額。)から処分した自己株式の帳簿価額を控除した額を払込資本の増加(当該差額がマイナスとなる場合にはその他資本剰余金の減少)として会計処理する(第388項参照)。[設例9]
- なお、増加すべき払込資本の内訳項目(資本金、資本準備金又はその他資本剰余金)は、会社法の規定に基づき決定する。また、増加すべき株主資本の額は、第38項の取得の対価の算定に準じて算定する。
(3)取得企業の株式以外の財産を交付した場合の会計処理
- 81. 企業結合の対価として、取得企業が自社の株式以外の財産を交付した場合には、当該交付した財産の時価と企業結合日の前日における適正な帳簿価額との差額を損益に計上する(第389項参照)。
(4)子会社が親会社株式を交付した場合(いわゆる三角合併などの場合)の会計処理
- 82. 子会社が親会社株式を支払対価として他の企業と企業結合する場合(いわゆる三角合併などの場合)には、次のように会計処理する(第390項参照)。
- (1) 個別財務諸表上の会計処理
前項に準じて会計処理を行う。 - (2) 連結財務諸表上の会計処理
個別財務諸表において計上された損益を、連結財務諸表上は資本取引として自己株式処分差額に振り替え、企業会計基準第1号「自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準」(以下「自己株式等会計基準」という。)第9項、第10項及び第12項の定めに従って処理する。
8.吸収合併消滅会社の最終事業年度の会計処理
- 83. 吸収合併が取得とされた場合の吸収合併消滅会社の最終事業年度の財務諸表は、吸収合併消滅会社が継続すると仮定した場合の適正な帳簿価額による(第391項参照)。
9.逆取得となる吸収合併の会計処理
(1)吸収合併存続会社(被取得企業)の個別財務諸表上の会計処理
増加資本の会計処理
(自社の株式を交付した場合の会計処理)
- 84. 企業結合が合併の形式をとる場合において、取得企業が法律上存続する会社(吸収合併存続会社)と異なる場合、吸収合併存続会社の個別財務諸表では、吸収合併消滅会社(取得企業)の資産及び負債を合併直前の適正な帳簿価額により計上し(企業結合会計基準第34項)、当該資産及び負債の差額を次のように会計処理する。[設例10]
なお、吸収合併存続会社が受け入れた自己株式(吸収合併消滅会社が保有していた吸収合併存続会社株式)は、吸収合併消滅会社における適正な帳簿価額により、吸収合併存続会社の株主資本からの控除項目として表示する。 - (1) 新株を発行した場合の会計処理(第408項参照)
- ① 株主資本項目の取扱い
- ア 原則的な会計処理
吸収合併消滅会社(取得企業)の合併期日の前日の適正な帳簿価額による株主資本の額を払込資本(資本金又は資本剰余金)として処理する。増加すべき払込資本の内訳項目(資本金、資本準備金又はその他資本剰余金)は、会社法の規定に基づき決定する。なお、抱合せ株式等がある場合には、第84-2項による。
また、吸収合併消滅会社の合併期日の前日の適正な帳簿価額による株主資本の額がマイナスとなる場合及び抱合せ株式等の会計処理(第84-2項参照)により株主資本の額がマイナスとなる場合には、払込資本をゼロとし、その他利益剰余金のマイナスとして処理する。 - イ 認められる会計処理
合併の対価として吸収合併存続会社(被取得企業)が新株のみを発行している場合には、吸収合併消滅会社の合併期日の前日の資本金、資本準備金、その他資本剰余金、利益準備金及びその他利益剰余金の内訳科目(ただし、積立目的の趣旨は同じであるが、吸収合併存続会社と吸収合併消滅会社の間でその名称が形式上異なる場合に行う積立金の名称変更を除く。)を、抱合せ株式等の会計処理(第84-2項参照)を除き、そのまま引き継ぐことができる。当該取扱いは、吸収合併消滅会社の適正な帳簿価額による株主資本の額がマイナスとなる場合も同様である。
また、吸収合併の手続とともに、株主資本の計数の変動手続(会社法第447条から第452条)が行われ、その効力が合併期日に生じる場合には、合併期日において、企業の意思決定機関で定められた結果に従い、株主資本の計数を変動させることができる。なお、株主資本の計数の変動に際しては、資本剰余金と利益剰余金の混同とならないように留意する必要がある(自己株式等会計基準第19項)。 - ② 株主資本以外の項目の取扱い
吸収合併存続会社(被取得企業)は、吸収合併消滅会社(取得企業)の合併期日の前日の評価・換算差額等及び新株予約権の適正な帳簿価額を引き継ぐ。したがって、例えば、吸収合併消滅会社のその他有価証券評価差額金や土地再評価差額金の適正な帳簿価額もそのまま引き継ぐことになる。 - (2) 自己株式を処分した場合の会計処理(第410項参照)
- ① 株主資本項目の取扱いにおける原則的な会計処理
吸収合併存続会社(被取得企業)は、吸収合併消滅会社(取得企業)の合併期日の前日の適正な帳簿価額による株主資本の額から処分した自己株式の帳簿価額を控除した差額を払込資本の増加(当該差額がマイナスとなる場合にはその他資本剰余金の減少)として会計処理する。なお、抱合せ株式等がある場合には、第84-3項による。 - ② 株主資本項目の取扱いにおける認められる会計処理
合併の対価として吸収合併存続会社(被取得企業)の自己株式を処分した場合には、吸収合併消滅会社の合併期日の前日の株主資本の構成をそのまま引き継ぎ、処分した自己株式の帳簿価額をその他資本剰余金から控除する(第410項参照)。なお、抱合せ株式等がある場合には、第84-3項による。 - なお、株主資本以外の項目については、(1)②に準じて会計処理する。
(抱合せ株式等の会計処理)
- 84-2. 逆取得となる吸収合併において新株を発行した場合、次の株式(抱合せ株式等)の額については、(1)又は(2)の処理を行う。
・吸収合併消滅会社等が保有していた当該会社の自己株式
・吸収合併存続会社が保有する吸収合併消滅会社株式(抱合せ株式) - (1) 株主資本項目の取扱いにおける原則的な会計処理(第84項(1)①ア参照)を行う場合、当該抱合せ株式等の額については、払込資本から減額する。
- (2) 株主資本項目の取扱いにおける認められる会計処理(第84項(1)①イ参照)を行う場合、当該抱合せ株式等の額については、その他資本剰余金から減額する(第411項参照)。
- 84-3. 逆取得となる吸収合併において自己株式を処分した場合、抱合せ株式等(第84-2項参照)の額については、(1)又は(2)の処理を行う。
- (1) 株主資本項目の取扱いにおける原則的な会計処理(第84項(2)①参照)を行う場合、当該抱合せ株式等の額については、第84項(2)①の差額から減額する。
- (2) 株主資本項目の取扱いにおける認められる会計処理(第84項(2)②参照)を行う場合、当該抱合せ株式等の額については、その他資本剰余金から減額する(第411項参照)。
(吸収合併消滅会社の新株予約権者に新株予約権等を交付した場合の会計処理)
- 84-4. 吸収合併存続会社は、吸収合併消滅会社における新株予約権の適正な帳簿価額を引き継いだうえで、合併期日において、次のように処理する(第361項参照)。
- (1) 吸収合併消滅会社の新株予約権者に対して吸収合併存続会社等の新株予約権を交付する場合
吸収合併存続会社が交付した新株予約権は、吸収合併消滅会社から引き継いだ新株予約権の適正な帳簿価額を付す。 - (2) 吸収合併消滅会社等の新株予約権者に対して現金を交付する場合
吸収合併消滅会社から引き継いだ新株予約権の適正な帳簿価額と交付した現金との差額は、新株予約権消却損益等、適切な科目をもって、損益に計上する。
会計処理方法の統一
- 84-5. 吸収合併存続会社と吸収合併消滅会社との間で会計処理方法に違いがある場合には、同一の環境下で行われた同一の性質の取引等については会計処理方法の変更に準じて、適切と考えられる方法に統一する。会計処理方法の統一は、日本公認会計士協会 監査・保証実務委員会実務指針第56号「親子会社間の会計処理の統一に関する監査上の取扱い」に準じて行う。
なお、退職給付に係る負債に係る会計基準変更時差異の費用処理年数が吸収合併存続会社と吸収合併消滅会社の間で異なっていても、当該差異は「同一の環境下で行われた同一の性質の取引等」には該当せず、会計処理方法の統一は求められないと解される。したがって、企業結合後においても各結合当事企業が採用していた費用処理年数をそのまま引き継ぐものとする。 - 84-6. 会計処理方法の統一のための会計処理の変更は、原則として、吸収合併存続会社(結合後企業)が行い、合併期日に会計処理方法を変更する。
会計処理方法の統一は、吸収合併存続会社又は吸収合併消滅会社が合併計画の中で合併期日前に行うことも正当な理由に基づく会計方針の変更として認められる。
複数の会計処理方法を統一する必要がある場合には、原則として、同一の事業年度に行うこととする。同一の事業年度に会計処理方法を統一できない場合には、その旨及び理由を開示する。
企業結合(合併)に要した支出額の会計処理
- 84-7. 株式交付費を含む合併に要した支出額は、発生時の事業年度の費用として処理する。
(2)結合後企業の連結財務諸表上の会計処理
- 85. 第84項の逆取得となる吸収合併が行われた後に、結合後企業が連結財務諸表を作成する場合には、吸収合併存続会社を被取得企業としてパーチェス法を適用する。具体的には、吸収合併消滅会社(取得企業)の合併期日の前日における連結財務諸表上の金額(吸収合併消滅会社が連結財務諸表を作成していない場合には個別財務諸表上の金額をいう。)に、次の手順により算定された額を加算する。[設例10]
- (1) 取得原価の算定
第36項(取得原価の算定方法の概要)と同様、原則として、取得の対価となる財の企業結合日における時価で算定する。具体的な算定方法は、第37項から第50項に準じる。
ただし、取得の対価となる財の時価は、吸収合併存続会社(被取得企業)の株主が合併後の会社(結合後企業)に対する実際の議決権比率と同じ比率を保有するのに必要な数の吸収合併消滅会社(取得企業)の株式を、吸収合併消滅会社(取得企業)が交付したものとみなして算定する(企業結合会計基準(注1))。
なお、吸収合併消滅会社(取得企業)が吸収合併直前に吸収合併存続会社(被取得企業)の株式を保有していた場合には、合併期日の吸収合併存続会社の株式の時価と吸収合併消滅会社が交付したものとみなされた株式の時価を合算して取得の対価を算定し、吸収合併直前の吸収合併存続会社の株式の帳簿価額と合併期日の時価との差額は、当期の段階取得に係る損益として処理されることとなる(第46-2項参照)。
投資会社である吸収合併消滅会社(取得企業)が持分法適用関連会社である吸収合併存続会社(被取得企業)と合併した場合には、吸収合併直前の被取得企業の株式(関連会社株式)の持分法による評価額と合併期日の時価との差額は、当期の段階取得に係る損益とし、これに見合う金額は、のれん(又は負ののれん)の修正として処理される。なお、合併期日直前の個別財務諸表上の関連会社株式の帳簿価額と持分法による評価額との差額は、のれん(又は負ののれん)の修正として処理される(第46-2項参照)。 - (2) 取得原価の配分
吸収合併存続会社(被取得企業)から受け入れた資産及び引き受けた負債の会計処理は第51項から第78項に準じて処理する。 - (3) 増加すべき株主資本の会計処理
(1)で算定された取得の対価を払込資本に加算する。ただし、連結財務諸表上の資本金は吸収合併存続会社(被取得企業)の資本金とし、これと合併直前の連結財務諸表上の資本金(吸収合併消滅会社の資本金)が異なる場合には、その差額を資本剰余金に振り替える。
(3)結合後企業が連結財務諸表を作成しない場合の注記事項の算定基礎
- 86. 逆取得となる吸収合併が行われた後に、結合後企業が連結財務諸表を作成しない場合には、第85項に準じて算定された額を基礎として、パーチェス法を適用したとした場合に個別貸借対照表及び個別損益計算書に及ぼす影響額を注記する(企業結合会計基準第50項)。
10.逆取得となる吸収分割又は現物出資の会計処理
(1)吸収分割承継会社又は現物出資の受入会社(被取得企業)の個別財務諸表上の会計処理
増加資本の会計処理
(自社の株式を交付した場合の会計処理)
- 87. 企業結合が吸収分割又は現物出資による子会社化の形式をとる場合(逆取得となる場合)、吸収分割承継会社又は現物出資の受入会社(被取得企業)の個別財務諸表上は、吸収分割会社又は現物出資会社(取得企業)の資産及び負債の移転直前の適正な帳簿価額により計上し、当該資産及び負債の差額を次のように会計処理する。なお、吸収分割承継会社又は現物出資の受入会社が受け入れた自己株式(吸収分割会社又は現物出資会社(取得企業)から移転された吸収分割承継会社株式又は現物出資の受入会社株式)は、吸収分割会社又は現物出資会社(取得企業)における適正な帳簿価額により、吸収分割承継会社又は現物出資の受入会社(被取得企業)の株主資本からの控除項目として表示する。
- (1) 新株を発行した場合の会計処理(第409項参照)
- ① 移転事業に係る株主資本相当額の取扱い
吸収分割承継会社等に移転された(又は吸収分割会社等が移転した)事業に係る資産及び負債の移転直前の適正な帳簿価額による差額から②の移転事業に係る評価・換算差額等及び新株予約権を控除した額(以下「移転事業に係る株主資本相当額」という。)を払込資本(資本金又は資本剰余金)として処理する。増加すべき払込資本の内訳項目(資本金、資本準備金又はその他資本剰余金)は、会社法の規定に基づき決定する。なお、抱合せ株式等がある場合には、第84-2項に準じて処理する。
また、移転事業に係る株主資本相当額がマイナスになる場合及び抱合せ株式等の会計処理(第84-2項参照)により株主資本の額がマイナスとなる場合には、払込資本をゼロとし、その他利益剰余金のマイナスとして処理する。 - ② 移転事業に係る評価・換算差額等の取扱い
吸収分割承継会社等に移転された(又は吸収分割会社等が移転した)事業に係る評価・換算差額等及び新株予約権(以下「移転事業に係る評価・換算差額等」という。)については、吸収分割会社又は現物出資会社の移転直前の適正な帳簿価額を引き継ぐ。
したがって、移転された事業にその他有価証券や土地再評価差額法に基づき再評価した土地が含まれ、吸収分割会社等が当該その他有価証券や土地を時価又は再評価額をもって分割期日の前日の貸借対照表価額としている場合には、吸収分割承継会社等は、分割期日の前日のその他有価証券及び土地の貸借対照表価額並びにその他有価証券評価差額金及び土地再評価差額金もそのまま引き継ぐことになる。 - (2) 自己株式を処分した場合の会計処理
逆取得となる吸収合併における自己株式の原則的な会計処理(第84項(2)①参照)に準じて処理する。なお、抱合せ株式等がある場合には、第84-3項に準じて処理する。
会計処理方法の統一
- 87-2. 吸収分割承継会社又は現物出資の受入会社(被取得企業)と吸収分割会社又は現物出資会社(取得企業)から移転される事業の間で会計処理方法に違いがある場合には、同一の環境下で行われた同一の性質の取引等については会計処理方法の変更に準じて、適切と考えられる方法に統一する。具体的な会計処理方法の統一は第84-5項及び第84-6項に準じて行う。
分割期日の前日までの結合当事企業間の取引の会計処理
- 87-3. 分割期日又は現物出資の給付日の前日までの吸収分割承継会社又は現物出資の受入会社(被取得企業)と吸収分割会社又は現物出資会社(取得企業)の間の取引は、原則として、第三者間取引として取り扱う。
会社分割又は現物出資に要した支出額の会計処理
- 87-4. 会社分割又は現物出資に要した支出額(株式交付費を含む。)は、発生時の事業年度の費用として会計処理する。
(2)吸収分割会社又は現物出資会社(取得企業)の会計処理
- 88. 企業結合が吸収分割又は現物出資による子会社化の形式をとる場合(逆取得に該当する場合)の吸収分割会社又は現物出資会社(取得企業)の個別財務諸表上及び連結財務諸表上の会計処理は、第98項及び第99項に従う。
11.分離元企業の会計処理
(1)移転した事業に係る適正な帳簿価額の算定
- 89. 分離元企業において、事業分離により移転した事業に係る資産及び負債の帳簿価額は、事業分離日の前日において一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠した適正な帳簿価額のうち、移転する事業に係る金額を合理的に区分して算定する(事業分離等会計基準第10項)。
- なお、適正な帳簿価額には、時価(又は再評価額)をもって貸借対照表価額としている場合の当該価額及び対応する評価・換算差額等の各内訳科目(その他有価証券評価差額金、繰延ヘッジ損益及び土地再評価差額金)の額が含まれることに留意する必要がある。
- 90. 前項の適正な帳簿価額の算定にあたり、投資が継続しているとみる場合には、次のように事業分離が行われないものと仮定して、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準を適用することとなる。
- (1) 繰延税金資産の回収可能性
移転する事業に係る繰延税金資産の回収可能性を検討するにあたり、収益力に基づく一時差異等加減算前課税所得等により判断する場合には、事業分離が行われないものと仮定した場合の将来年度の一時差異等加減算前課税所得の見積額による(第107項参照)。 - (2) 固定資産の減損処理
移転する事業に係る固定資産の減損の検討にあたり、将来キャッシュ・フローを見積る場合には、事業分離が行われないものと仮定した場合の経済的残存使用年数による。 - (3) 退職給付に係る負債
移転する事業に係る退職給付に係る負債は、退職給付制度の終了の例外として、事業分離が行われないものと仮定した場合の適正な帳簿価額による。
(2)事業分離に要した支出額の会計処理
- 91. 事業分離に要した支出額は、分離元企業において、発生時の事業年度の費用として処理する(事業分離等会計基準第11項)。
- ただし、個別財務諸表上、分離先企業から交付された株式等の取得原価は、取得の対価に付随費用を加算して算定する。付随費用の取扱いについては金融商品会計実務指針に従う。
(3)受取対価の時価
- 92. 移転損益を認識する場合の受取対価となる財の時価は、受取対価が現金以外の資産等の場合には、受取対価となる財の時価と移転した事業の時価のうち、より高い信頼性をもって測定可能な時価で算定することとなる(事業分離等会計基準第12項)。
- 93. 市場価格のある分離先企業の株式が受取対価とされる場合には、受取対価となる財の時価は、事業分離日の株価を基礎にして算定する(事業分離等会計基準第13項)。
- 94. 分離先企業の株式などの受取対価又は移転した事業のいずれについても、市場価格がないこと等により公正な評価額を合理的に算定することが困難と認められる場合には、次のいずれかを用いて算定された額を受取対価の額とすることができる(第393項参照)。
- (1) 事業分離日の前日における分離先企業の識別可能な資産及び負債の時価に基づく正味の評価額のうち、受取対価相当額
- (2) 事業分離日の前日における移転した事業に係る分離元企業の識別可能な資産及び負債の時価に基づく正味の評価額
- この場合、識別可能な個々の資産及び負債の時価について、市場価格がないこと等により公正な評価額を合理的に算定することが困難と認められる場合には、該当する資産及び負債について、その適正な帳簿価額を用いることができる。
12.分離先企業における企業結合が取得とされた場合の分離元企業の会計処理
(1)受取対価が現金等の財産のみである場合(事業譲渡など)の分離元企業の会計処理
子会社を分離先企業として行われた事業分離の場合
- 95. 分離元企業の子会社に事業分離し、その対価として現金等の財産のみを受け取った場合には、共通支配下の取引として取り扱う(事業分離等会計基準第14項)(第223項及び第225項参照)。
- なお、分離元企業の会計処理において、現金等の財産とは、移転した事業と明らかに異なる資産が該当し、分離先企業の株式は含まれない(この点については、事業分離等会計基準第10項(1)を参照のこと)。これには、分離先企業の支払能力に左右されない資産や、分離先企業の支払能力の影響を受けるものの、代金回収条件が明確かつ妥当であり、回収が確実と見込まれる資産が含まれる。ただし、分割比率等に端数があるために生じた交付金は現金等の財産に含めないこととする。また、利益配当の代替としての交付金の部分は、受取対価には含まれない。
子会社以外を分離先企業として行われた事業分離の場合
- 96. 分離元企業の子会社以外に事業分離し、その対価として現金等の財産のみを受け取った場合には、分離元企業は次の処理を行う(事業分離等会計基準第15項及び第16項)。
- (1) 個別財務諸表上の会計処理
分離元企業が受け取った現金等の財産は、原則として、時価に基づき計上し、移転事業に係る株主資本相当額(第87項(1)①参照)との差額は、移転損益として認識する。
ただし、一般的な売却や交換と同じように、次のような分離元企業の重要な継続的関与によって、分離元企業が移転した事業に係る成果の変動性を従来と同様に負っている場合には、移転損益を認識することはできないことに留意する必要がある(本適用指針において、移転損益を認識するとしている場合には、同様の留意が必要となる。)(事業分離等会計基準第10項及び第76項)。 - ① 移転した事業に対し買戻しの条件が付されている場合
- ② 移転した事業から生じる財貨又はサービスの長期購入契約により当該事業のほとんどすべてのコスト(当該事業の取得価額相当額を含む。)を負担する場合
- (2) 連結財務諸表上の会計処理
分離元企業の関連会社に事業を移転したことにより認識された移転損益は、持分法会計基準における未実現損益の消去に準じて処理する。
(2)受取対価が分離先企業の株式のみである場合(会社分割など)の分離元企業の会計処理
- 97. 会社分割等、事業分離の対価として分離先企業の株式のみを受け取った場合には、当該分離先企業に対する分離元企業の株式の持分比率等により、分離先企業は次のように分類される。
- (1) 事業分離により分離先企業が子会社となる場合(第98項から第99項参照)
- (2) 事業分離により分離先企業が関連会社となる場合(第100項から第102項参照)
- (3) 事業分離により分離先企業が共同支配企業の形成となる場合(第196項及び第197項参照)
- (4) 事業分離により分離先企業が(1)から(3)以外となる場合(第103項参照)
- なお、(1)の場合には、分離先企業の企業結合が分離元企業を取得企業とする「逆取得」に該当することとなる。
- 97-2. 資産を移転し移転先の企業の株式を受け取る場合(事業分離に該当する場合を除く。)において、移転元の企業の会計処理は、事業分離における分離元企業の会計処理に準じて行う(事業分離等会計基準第31項)。このため、実務対応報告第6号「デット・エクイティ・スワップの実行時における債権者側の会計処理に関する実務上の取扱い」にかかわらず、移転先の企業が子会社又は関連会社となる場合及び共通支配下の取引には、本適用指針の定めが優先して適用される。
分離先企業が子会社となる場合
(事業分離前に分離元企業が分離先企業の株式を保有していない場合)
- 98. 事業分離前に分離元企業が分離先企業の株式を保有していない場合には、分離元企業は次の処理を行う(事業分離等会計基準第17項)。[設例11-1]
- (1) 個別財務諸表上の会計処理
分離元企業が受け取った分離先企業の株式(子会社株式)の取得原価は、移転事業に係る株主資本相当額(第87項(1)①参照)に基づいて算定する。したがって、分離元企業は、移転損益を認識しない。分離先企業の株式の取得原価の算定にあたっては、移転事業に係る株主資本相当額から移転事業に係る繰延税金資産及び繰延税金負債を控除する(第108項(2)参照)ことに留意する必要がある。
なお、移転事業に係る株主資本相当額がマイナスの場合には、当該マイナスの金額を「組織再編により生じた株式の特別勘定」等、適切な科目をもって負債に計上する(第394項参照)。 - (2) 連結財務諸表上の会計処理
子会社(分離先企業)に係る分離元企業(親会社)の持分の増加額(②イの金額)と移転した事業に係る分離元企業(親会社)の持分の減少額(①アの金額)との差額は、親会社の持分変動による差額とのれん(又は負ののれん)に区分して会計処理する。 - ① 親会社の持分変動による差額の計上
次のアとイの差額を親会社の持分変動による差額とし、事業分離日の属する事業年度に資本剰余金に計上する。(連結会計基準第30項及び同(注9))。 - ア 移転した事業に係る分離元企業(親会社)の持分の減少額(移転事業に係る株主資本相当額に移転した事業に係る減少した親会社の持分比率を乗じた額)
- イ 分離元企業(親会社)の事業が移転されたとみなされる額(移転した事業の事業分離直前の時価に移転した事業に係る減少した親会社の持分比率を乗じた額)
- なお、親会社の持分変動による差額は、子会社株式(分離先企業の株式)の取得原価とこれに対応する分離元企業(親会社)の持分との差額として算定することもできる。
- ② のれん(又は負ののれん)の計上
次のアとイの差額をのれん(又は負ののれん)とし、第72項及び第76項から第78項並びに移管指針第4号「連結財務諸表における資本連結手続に関する実務指針」(以下「資本連結実務指針」という。)第40項に準じて会計処理する(第396項及び第397項参照)。 - ア 分離先企業に対して投資したとみなされる額(子会社となる分離先企業(被取得企業)の事業分離直前の時価に事業分離により増加する親会社の持分比率を乗じた額であり、①イの金額と同額となる。)
- イ これに対応する分離先企業の事業分離直前の資本(子会社となる分離先企業(被取得企業)の企業結合日における識別可能資産及び負債の時価に事業分離に関して生じた親会社の持分比率を乗じた額)
- ただし、共同新設分割による子会社の設立のように、子会社となる分離先企業の個別財務諸表上、被取得企業の事業を取得し、のれん(又は負ののれん)が計上されている場合には、分離先企業(子会社)の個別財務諸表に計上されているのれん(又は負ののれん)を連結財務諸表上もそのまま計上することができる。なお、この方法による場合ののれん(又は負ののれん)の額と、②の方法により算定されたのれん(又は負ののれん)との差額が、非支配株主持分の金額に影響を与えることになる。[設例11-2]
(事業分離前に分離元企業が分離先企業の株式を保有していた場合)
- 99. 事業分離により分離先企業が新たに分離元企業の子会社となる場合において、分離元企業が事業分離前に分離先企業の株式をその他有価証券(売買目的有価証券の場合を含む。以下同じ。)又は関連会社株式として保有していた場合には、前項に準じて処理するが、次の点に留意する。[設例11-3]
- (1) 個別財務諸表上の会計処理
分離元企業が追加的に受け取った分離先企業の株式の取得原価は、移転事業に係る株主資本相当額(第87項(1)①参照)に基づいて算定する(事業分離等会計基準第18項(1))。
また、分離元企業の個別財務諸表上、移転事業に係る株主資本相当額がマイナスの場合には、まず、事業分離前から保有していた分離先企業の株式の帳簿価額を充て、これを超えることとなったマイナスの金額を「組織再編により生じた株式の特別勘定」等、適切な科目をもって負債に計上する(第394項参照)。 - (2) 連結財務諸表上の会計処理
分離元企業の連結財務諸表上、のれん(又は負ののれん)については、次の①と②の差額として算定する(親会社の持分変動による差額については、第98項(2)①に準じて処理する。)(事業分離等会計基準第18項(2))。 - ① 分離先企業に対して投資したとみなされる額
第98項(2)②アに相当する金額に、事業分離前に分離元企業が保有していた分離先企業の株式の事業分離日の時価を加算して算定する。なお、その時価と適正な帳簿価額との差額(その他有価証券としていた場合)又はその持分法による評価額との差額(関連会社株式としていた場合)は、当期の段階取得に係る損益として処理される(第46-2項参照)。 - ② これに対応する分離先企業の事業分離直前の資本(第98項(2)②イに相当する金額となる。)
- なお、分離元企業が事業分離前に分離先企業の株式を子会社株式として保有しており、事業分離により分離先企業の株式(子会社株式)を追加取得した場合には、共通支配下の取引として取り扱う(事業分離等会計基準第19項)(第226項及び第229項参照)。
分離先企業が関連会社となる場合
(事業分離前に分離元企業が分離先企業の株式を保有していない場合)
- 100. 事業分離前に分離元企業が分離先企業の株式を保有していない場合には、分離元企業は次の処理を行う(事業分離等会計基準第20項)。[設例12-1]
- (1) 個別財務諸表上の会計処理
分離元企業が受け取った分離先企業の株式(関連会社株式)の取得原価は、移転事業に係る株主資本相当額(第87項(1)①参照)に基づいて算定する。したがって、分離元企業は、移転損益を認識しない。分離先企業の株式の取得原価の算定にあたっては、移転事業に係る株主資本相当額から移転事業に係る繰延税金資産及び繰延税金負債を控除する(第108項(2)参照)ことに留意する必要がある。
なお、移転事業に係る株主資本相当額がマイナスの場合には、第98項(1)なお書きに準じて処理する。 - (2) 連結財務諸表上の会計処理
連結財務諸表の作成にあたり、関連会社(分離先企業)に対する持分法適用において、関連会社に係る分離元企業(投資会社)の持分の増加額と、移転した事業に係る分離元企業の持分の減少額との間に生じる差額は、原則として、持分変動差額とのれん(又は負ののれん)に区分して会計処理する。ただし、持分変動差額とのれん(又は負ののれん)のいずれかの金額に重要性が乏しいと考えられる場合には、重要性のある他の金額に含めて処理することができる。
なお、持分法適用において、関連会社に係る分離元企業の持分の増加額は、持分法会計基準及び移管指針第7号「持分法会計に関する実務指針」(以下「持分法実務指針」という。)に従い、関連会社(分離先企業)に対する投資に対応する分離先企業の事業分離直前の資本(分離先企業の事業分離直前の資本(原則として、部分時価評価法の原則法により、資産及び負債を時価評価した後の評価差額を含む。)に事業分離により増加する分離元企業の持分比率を乗じた額であり、②イに相当する金額)として算定される。 - ① 持分変動差額の計上
次のアとイの差額を持分変動差額とし、原則として事業分離日の属する事業年度の特別損益に計上する。 - ア 移転した事業に係る分離元企業の持分の減少額(移転事業に係る株主資本相当額に移転した事業に係る減少した分離元企業の持分比率を乗じた額)
- イ 分離元企業の事業が移転されたとみなされる額(移転した事業の事業分離直前の時価に移転した事業に係る減少した分離元企業の持分比率を乗じた額)
- ② のれん(又は負ののれん)の計上
次のアとイの差額をのれん(又は負ののれん)として、第72項及び第76項から第78項に準じて処理する。 - ア 分離先企業に対して投資したとみなされる額(分離先企業の事業分離直前の時価に事業分離により増加する分離元企業の持分比率を乗じた額であり、①イの金額と同額となる。)
- イ これに対応する分離先企業の事業分離直前の資本(関連会社に係る分離元企業の持分の増加額)
(事業分離前に分離元企業が分離先企業の株式(その他有価証券)を保有していた場合)
- 101. 事業分離により分離先企業が新たに分離元企業の関連会社となる場合において、分離元企業が事業分離前に分離先企業の株式を有していた場合(事業分離前に分離先企業の株式をその他有価証券として保有していた場合)には、前項に準じて処理する。[設例12-2]
ただし、分離元企業の個別財務諸表上、移転事業に係る株主資本相当額がマイナスの場合には、第99項(1)また書きに準じて処理する。
また、分離元企業の連結財務諸表上、のれん(又は負ののれん)については、次の(1)と(2)の差額として算定する(持分変動差額については、前項(2)①に準じて処理する。)(事業分離等会計基準第21項)。 - (1) 分離先企業に対して投資したとみなされる額(前項(2)②アに相当する金額に、事業分離前に分離元企業がその他有価証券として保有していた分離先企業の株式の帳簿価額を加算した金額)
- (2) これに対応する分離先企業の事業分離直前の資本(その取引ごとに対応する分離先企業の資本の合計額)
なお、この(2)の額は、持分法会計基準及び持分法実務指針に従い、その取引ごとに対応する分離先企業の資本(原則として、部分時価評価法の原則法により、取得日ごとに資産及び負債を時価評価した後の評価差額を含む。)に増加する分離元企業の持分比率を乗じた額の合計として算定される。
(事業分離前に分離元企業が分離先企業の株式(関連会社株式)を保有していた場合)
- 102. 事業分離前に分離元企業が分離先企業の株式を関連会社株式として有しており、事業分離により分離先企業の株式(関連会社株式)を追加取得した場合には、第100項に準じて処理する(事業分離等会計基準第22項)。[設例12-3]
分離先企業が子会社、関連会社及び共同支配企業以外となる場合
- 103. 事業分離により分離先企業が子会社、関連会社及び共同支配企業以外となる場合(分離先企業の株式がその他有価証券に分類される場合)には、分離元企業の個別財務諸表上、原則として、移転損益を認識する。また、当該分離先企業の株式の取得原価は、移転した事業に係る時価又は当該分離先企業の株式の時価のうち、より高い信頼性をもって測定可能な時価に基づいて算定する(事業分離等会計基準第23項)。
(3)受取対価が現金等の財産と分離先企業の株式である場合の分離元企業の会計処理
分離先企業が子会社となる場合
- 104. 子会社へ事業分離する場合や事業分離により分離先企業が新たに子会社となる場合において、その対価として現金等の財産(第95項参照)と分離先企業の株式を受け取った場合には、共通支配下の取引又はこれに準じて取り扱う(事業分離等会計基準第24項)(第230項及び第232項参照)。なお、事業分離前に分離先の企業の株式を保有していた場合には、第99項に準じて処理する(事業分離等会計基準第24項(2)なお書き)。
分離先企業が関連会社となる場合
- 105. 関連会社へ事業分離する場合や事業分離により分離先企業が新たに関連会社となる場合において、その対価として現金等の財産と分離先企業の株式を受け取った場合、分離元企業は次の処理を行う(事業分離等会計基準第25項)。[設例13]
- (1) 個別財務諸表上の会計処理
分離元企業で受け取った現金等の財産は、原則として、時価により計上する。この結果、当該時価が移転事業に係る株主資本相当額(第87項(1)①参照)を上回る場合には、原則として、当該差額を移転利益として認識(受け取った分離先企業の株式の取得原価はゼロとする。)し、下回る場合には、当該差額を受け取った分離先企業の株式の取得原価とする。
なお、移転事業に係る株主資本相当額がマイナスの場合、受け取った現金等の財産の時価と等しい金額については、移転利益に計上し、マイナスとなる移転事業に係る株主資本相当額については、まず、事業分離前から保有している分離先企業の株式の帳簿価額を充て、これを超えることとなったマイナスの金額を「組織再編により生じた株式の特別勘定」等、適切な科目をもって負債に計上する(第395項参照)。 - (2) 連結財務諸表上の会計処理
事業分離により分離先企業が新たに関連会社となる場合や関連会社に事業を移転したことにより認識された移転利益は、持分法会計基準における未実現損益の消去に準じて処理する。また、関連会社に係る分離元企業の持分の増加額と移転した事業に係る分離元企業の持分の減少額との間に生じる差額は、第100項から第102項に準じ、原則として、のれん(又は負ののれん)と持分変動差額に区分して処理する。
分離先企業が子会社、関連会社及び共同支配企業以外となる場合
- 106. 子会社、関連会社及び共同支配企業以外へ事業分離した後も引き続き分離先企業が子会社、関連会社及び共同支配企業以外である場合や事業分離により分離先企業が子会社、関連会社及び共同支配企業以外となる場合(分離先企業の株式がその他有価証券に分類される場合)において、その対価として現金等の財産と分離先企業の株式を受け取った場合、分離元企業は、原則として、移転損益を認識する。
また、当該分離先企業の株式の取得原価は、移転した事業に係る時価又は当該分離先企業の株式の時価のうち、より高い信頼性をもって測定可能な時価に基づいて算定する(事業分離等会計基準第26項)。なお、その時価が移転した事業に係る時価の場合、当該分離先企業の株式の取得原価は、当該移転した事業に係る時価と対価として受け取った現金等の財産の時価との差額として算定する。
(4)分離元企業の税効果会計
分離元企業の繰延税金資産の回収可能性
- 107. 事業分離日の属する事業年度の前期末(事業分離日の前日における仮決算を含む。)において、分離元企業から移転する事業に係る資産及び負債の一時差異に対して計上する繰延税金資産の回収可能性は、次のように判断する。
- (1) 分離元企業における事業分離日以後の将来年度の収益力に基づく一時差異等加減算前課税所得等により判断し、分離先企業の将来年度の収益力に基づく一時差異等加減算前課税所得等は勘案しない(第399項参照)。
- (2) ただし、投資が継続しているとみる場合には、事業分離が行われないものと仮定した移転する事業に係る将来年度の収益力に基づく一時差異等加減算前課税所得等を勘案して判断する。
具体的には、事業分離が行われないものと仮定したときの分離元企業の将来年度の収益力に基づく一時差異等加減算前課税所得等の見積額を、移転する事業に係る額と残存する事業に係る額とに区分し、移転する事業に係る一時差異等加減算前課税所得等を基礎として回収可能性の判断を行う。また、移転する事業において一時差異等加減算前課税所得等と相殺し切れなかった将来減算一時差異が生じ、残存する事業では相殺後に一時差異等加減算前課税所得等の残余が生じている場合には、原則としてこれらを相殺することにより移転する事業に係る繰延税金資産の回収可能性を判断する。
なお、分離元企業に残存する事業に係る資産及び負債の一時差異に対して計上する繰延税金資産の回収可能性については、事業分離を考慮した実際の分離元企業における将来年度の収益力に基づく一時差異等加減算前課税所得等により判断する(第400項参照)。[設例36]
分離元企業の繰延税金資産及び繰延税金負債の計上額
- 108. 分離元企業において、事業分離により移転する事業に係る資産及び負債が、分離先企業の株式など現金以外の受取対価と引き換えられ、新たに貸借対照表上、当該受取対価が計上される場合において、これらの金額と課税所得計算上の資産及び負債の金額(税務上の帳簿価額)との間に生じる差額(一時差異)に対する税効果会計の適用については、次のように取り扱う。
- (1) 原則として、事業分離日以後最初に到来する事業年度末に適用する。したがって、期末に繰延税金資産及び繰延税金負債が計上され、その差額を期首と期末で比較した増減額が法人税等調整額として計上されることとなる(第401項参照)。
- (2) ただし、投資が継続しているとみる場合には、移転損益を認識せず、事業分離日において移転する繰延税金資産及び繰延税金負債(移転した事業に係る資産及び負債の一時差異及び当該事業分離に伴い新たに生じた一時差異(税務上の移転損益相当額)に関する繰延税金資産及び繰延税金負債の適正な帳簿価額であって、繰延税金資産については第107項(2)に準じて回収可能性があると判断されたもの。以下同じ。)の額を、分離先企業の株式の取得原価に含めずに、分離先企業の株式等に係る一時差異に対する繰延税金資産及び繰延税金負債として計上する(第402項参照)。[設例37]
この場合、当該分離先企業の株式等に係る一時差異に対する繰延税金資産については、従来の事業に係る投資が継続しているものとみて、事業分離日において移転する繰延税金資産を置き換えるものであるため、回収可能性適用指針第15項から第32項に従って判断した分類に応じて、(分類1)に該当する企業に加え、(分類2)に該当する企業(回収可能性適用指針第28項に従って(分類2)に該当するものとして取り扱われる企業を含む。)及び(分類3)に該当する企業(回収可能性適用指針第29項に従って(分類3)に該当するものとして取り扱われる企業を含む。)についても、その回収可能性があると判断できるものとする。このように取り扱う場合であっても、当該分離先企業の株式等に係る一時差異に対する繰延税金資産については、事業分離後に事業分離日において移転する繰延税金資産の額以上に計上されることはないものとする。また、事業分離後、分離元企業が(分類4)に該当する企業(回収可能性適用指針第28項に従って(分類2)に該当するものとして取り扱われる企業及び同第29項に従って(分類3)に該当するものとして取り扱われる企業を除く。)となった場合には、翌期における解消額に係る繰延税金資産の額を除き、当該繰延税金資産の回収可能性はないものと判断し、(分類5)に該当する企業となった場合には、当該繰延税金資産の回収可能性はないものと判断することに留意する必要がある。 - 109. (削 除)
13.取得とされた株式交換の会計処理
(1)株式交換完全親会社の個別財務諸表上の会計処理
子会社株式の取得原価の算定
- 110. 株式交換完全親会社が取得する株式交換完全子会社株式の取得原価は、取得の対価に付随費用を加算して算定する。付随費用の取扱いは、金融商品会計実務指針に従う。取得の対価の具体的な算定は、第37項から第50項に準じて行う。[設例14]
ただし、株式交換完全親会社が作成する連結財務諸表において、みなし取得日に株式交換が行われたものとして会計処理する場合(第117項参照)には、個別財務諸表上も第38項における企業結合日をみなし取得日と読み替えることとする。 - また、株式交換完全親会社が、株式交換日の前日に株式交換完全子会社となる企業の株式を保有していた場合、株式交換日の前日の適正な帳簿価額により、子会社株式に振り替える(第46項参照)。
株式交換完全親会社が新株予約権付社債を承継する場合等の取扱い
- 110-2. 株式交換に際して、株式交換完全親会社が株式交換完全子会社の新株予約権者に新株予約権を交付する場合、又は株式交換完全親会社が新株予約権付社債を承継する場合には、第50項に準じて、当該新株予約権又は新株予約権付社債の時価を子会社株式の取得原価に加算するとともに、同額を新株予約権又は新株予約権付社債として純資産の部又は負債の部に計上する(第404-2項参照)。
増加資本の会計処理
(株式交換完全親会社が新株を発行した場合の会計処理)
- 111. 企業結合の対価として、株式交換完全親会社が新株を発行した場合には、払込資本(資本金又は資本剰余金)の増加として会計処理する。
なお、増加すべき払込資本の内訳項目(資本金、資本準備金又はその他資本剰余金)は、会社法の規定に基づき決定する。
また、増加すべき株主資本の額は、第110項の取得の対価の算定に準じて処理する。
(株式交換完全親会社が自己株式を処分した場合の会計処理)
- 112. 企業結合の対価として、株式交換完全親会社が自己株式を処分した場合には、増加すべき株主資本の額(自己株式の処分の対価の額。新株の発行と自己株式の処分を同時に行った場合には、新株の発行と自己株式の処分の対価の額。)から処分した自己株式の帳簿価額を控除した額を払込資本の増加(当該差額がマイナスとなる場合にはその他資本剰余金の減少)として会計処理する(第388項参照)。
- なお、増加すべき払込資本の内訳項目(資本金、資本準備金又はその他資本剰余金)は、会社法の規定に基づき決定する。
- また、増加すべき株主資本の額は、第110項の取得の対価の算定に準じて算定する。
(株式交換完全親会社が自社の株式以外の財産を交付した場合の会計処理)
- 113. 企業結合の対価として、株式交換完全親会社が株式交換完全子会社の株主に対して、株式交換完全親会社の株式以外の財産を交付した場合は、当該交付した財産の時価と企業結合日の前日における適正な帳簿価額との差額を株式交換日において、株式交換完全親会社の損益に計上する。
(子会社が親会社の株式を対価として株式交換した場合の会計処理)
- 114. 子会社が親会社株式を支払対価として他の企業と株式交換を行う場合には、次のように会計処理する。
- (1) 個別財務諸表上の会計処理
前項に準じて会計処理を行う。 - (2) 連結財務諸表上の会計処理
個別財務諸表において計上された損益を、連結財務諸表上は資本取引として自己株式処分差額に振り替え、自己株式等会計基準第9項、第10項及び第12項の定めに従って処理する。
株式交換完全親会社の税効果会計
- 115. 株式交換完全親会社が受け入れた子会社株式(株式交換完全子会社の株式)に係る一時差異(取得のときから生じていたものに限る。)に関する税効果は認識しない(第404項参照)。
ただし、予測可能な期間に当該子会社株式を売却する予定がある場合(一部売却で売却後も子会社又は関連会社にとどまる予定の場合には売却により解消する部分の一時差異に限る。)、又は売却その他の事由により当該子会社株式がその他有価証券として分類されることとなる場合には、当該一時差異に対する税効果を認識する。
なお、株式交換後に当該子会社株式に生じた一時差異は、通常の税効果会計の取扱いによる。
(2)株式交換完全子会社の個別財務諸表上の会計処理
- 115-2. 株式交換に際して、株式交換完全親会社が株式交換完全子会社の新株予約権者に新株予約権を交付する場合、又は株式交換完全親会社が新株予約権付社債を承継する場合には、株式交換日の前日に株式交換完全子会社で付していた適正な帳簿価額による新株予約権又は新株予約権付社債の額を利益に計上する(第404-2項参照)。
(3)株式交換完全親会社の連結財務諸表上の会計処理
投資と資本の消去
- 116. 株式交換による企業結合が取得とされた場合の資本連結手続は、連結会計基準に従い、次の(1)と(2)を相殺消去する(連結会計基準第23項)。また、両者の消去差額であるのれん(又は負ののれん)は、第72項及び第76項から第78項に準じて会計処理する。[設例14]
- (1) 株式交換完全親会社の投資
株式交換完全親会社の投資は、第37項から第50項に準じて算定する。
なお、株式交換完全親会社が、株式交換日の前日に株式交換完全子会社となる企業の株式を保有していた場合、株式交換日の時価に基づいて子会社株式に振り替えて取得原価に加算し、その時価と適正な帳簿価額との差額は、当期の段階取得に係る損益として処理される(第46-2項参照)。[設例14-2][設例14-3]
投資会社が持分法適用関連会社と企業結合した場合には、株式交換日の前日の被取得企業の株式(関連会社株式)の持分法による評価額と株式交換日の時価との差額は、当期の段階取得に係る損益とし、これに見合う金額は、のれん(又は負ののれん)の修正として処理される。なお、株式交換日の前日の個別財務諸表上の関連会社株式の帳簿価額と持分法による評価額との差額は、のれん(又は負ののれん)の修正として処理される(第46-2項参照)。 - (2) 株式交換完全子会社の資本
株式交換完全子会社の資本は、取得原価の配分方法(第51項から第78項参照)に準じて算定された識別可能資産及び負債の差額とする。
(4)株式交換日が株式交換完全子会社の決算日以外の日である場合の取扱い
- 117. 株式交換日が株式交換完全子会社の決算日以外の日である場合には、連結会計基準 (注5)に従い、株式交換日の前後いずれかの決算日(みなし取得日)に株式交換が行われたものとみなして会計処理することができる。この場合、第38項の企業結合日をみなし取得日と読み替える。ただし、みなし取得日は、企業結合の主要条件が合意されて公表された日以降としなければならない。
14.逆取得となる株式交換の会計処理(株式交換完全子会社が取得企業となる場合)
(1)株式交換完全親会社(被取得企業)の個別財務諸表上の会計処理
増加資本の会計処理
(株式交換完全親会社が新株を発行した場合の会計処理)
- 117-2. 企業結合の対価として、株式交換完全親会社が新株を発行した場合には、払込資本(資本金又は資本剰余金)の増加として会計処理する。
なお、増加すべき払込資本の内訳項目(資本金、資本準備金又はその他資本剰余金)は、会社法の規定に基づき決定する。
また、増加すべき株主資本の額は、第118項の株式交換完全子会社株式(取得企業株式)の取得原価に準じて算定する。
(株式交換完全親会社が自己株式を処分した場合の会計処理)
- 117-3. 逆取得となる吸収合併における自己株式の原則的な会計処理(第84項(2)①参照)に準じて処理する。
子会社株式の取得原価の算定
- 118. 組織再編が株式交換の形式をとる場合において、逆取得となるとき(株式交換完全親会社が被取得企業となり、株式交換完全子会社が取得企業となるとき)には、株式交換完全親会社の個別財務諸表上、当該株式交換完全親会社が取得する株式交換完全子会社株式(取得企業株式)の取得原価は、株式交換日の前日における株式交換完全子会社(取得企業)の適正な帳簿価額による株主資本の額に基づいて算定する(企業結合会計基準第36項)。
株式交換完全親会社が新株予約権付社債を承継する場合等の取扱い
- 118-2. 株式交換に際して、株式交換完全親会社(被取得企業)が株式交換完全子会社(取得企業)の新株予約権者に新株予約権を交付する場合、又は株式交換完全親会社(被取得企業)が新株予約権付社債を承継する場合には、株式交換完全親会社は、株式交換完全子会社(取得企業)の株式交換日の前日における適正な帳簿価額による株主資本の額(第118項参照)に、株式交換完全子会社(取得企業)で認識された新株予約権の消滅に伴う利益又は新株予約権付社債の承継に伴う利益の額(税効果調整後)を加算して、子会社株式の取得原価を算定する。また、株式交換完全親会社(被取得企業)は、株式交換日の前日に株式交換完全子会社(取得企業)で付されていた適正な帳簿価額により新株予約権又は新株予約権付社債の適正な帳簿価額を純資産の部又は負債の部に計上する(第404-2項参照)。
(2)株式交換完全子会社(取得企業)の個別財務諸表上の会計処理
- 118-3. 株式交換に際して、株式交換完全親会社(被取得企業)が株式交換完全子会社(取得企業)の新株予約権者に新株予約権を交付する場合、又は株式交換完全親会社(被取得企業)が新株予約権付社債を承継する場合、株式交換完全子会社(取得企業)は、株式交換日の前日に付していた適正な帳簿価額による新株予約権又は新株予約権付社債の額を利益に計上する(第404-2項参照)。
- 118-4. 株式交換に際して、株式交換完全子会社(取得企業)が株式交換日の前日に株式交換完全親会社(被取得企業)となる企業の株式を保有していた場合、株式交換完全親会社(被取得企業)の株式を株式交換日の前日の適正な帳簿価額により、取得原価とする。
(3)株式交換後の連結財務諸表上の会計処理
- 119. 株式交換完全子会社(取得企業)は、株式交換完全親会社(被取得企業)を被取得企業としてパーチェス法を適用する。具体的には、株式交換日の前日における株式交換完全子会社(取得企業)の連結財務諸表上の金額(連結財務諸表を作成していない場合には個別財務諸表上の金額)に、次の手順により算定された額を加算する。
- (1) 取得原価の算定
第36項(取得原価の算定方法の概要)と同様、原則として、取得の対価となる財の企業結合日における時価で算定する。具体的な算定方法は、第37項から第50項に準じる。
ただし、取得の対価となる財の時価は、株式交換完全親会社(被取得企業)の株主が結合後企業(株式交換完全親会社)に対する実際の議決権比率と同じ比率を保有するのに必要な数の株式交換完全子会社(取得企業)の株式を、株式交換完全子会社(取得企業)が交付したものとみなして算定する(企業結合会計基準(注1))。
なお、株式交換完全子会社(取得企業)が株式交換日の前日に株式交換完全親会社(被取得企業)となる企業の株式を保有していた場合には、株式交換日の時価に基づく額を取得原価に加算し、その時価と適正な帳簿価額との差額は、当期の段階取得に係る損益として処理される(第46-2項参照)。
投資会社が持分法適用関連会社と企業結合した場合には、株式交換日の前日の被取得企業の株式(関連会社株式)の持分法による評価額と株式交換日の時価との差額は、当期の段階取得に係る損益とし、これに見合う金額は、のれん(又は負ののれん)の修正として処理される。なお、株式交換日の前日の個別財務諸表上の関連会社株式の帳簿価額と持分法による評価額との差額は、のれん(又は負ののれん)の修正として処理される(第46-2項参照)。 - (2) 取得原価の配分
株式交換完全親会社(被取得企業)となる企業から受け入れた資産及び引き受けた負債の会計処理は第51項から第78項に準じて処理する。 - (3) 増加すべき株主資本の会計処理
(1)で算定された取得の対価を払込資本に加算する。
ただし、連結財務諸表上の資本金は株式交換完全親会社(被取得企業)の資本金とし、これと株式交換直前の連結財務諸表上の資本金(株式交換完全子会社の資本金)が異なる場合には、その差額を資本剰余金に振り替える。
15.取得とされた株式移転の会計処理
(1)株式移転設立完全親会社の個別財務諸表上の会計処理
子会社株式の取得原価の算定
- 120. 株式移転による共同持株会社の設立の形式をとる企業結合が取得とされた場合には、取得企業の決定規準に従い、いずれかの株式移転完全子会社を取得企業として取り扱う。
- 121. 株式移転設立完全親会社が受け入れた株式移転完全子会社株式(取得企業株式及び被取得企業株式)の取得原価は、それぞれ次のように算定する。[設例15]
- (1) 子会社株式(取得企業株式)
- ① 原則的な取扱い
株式移転日の前日における株式移転完全子会社(取得企業)の適正な帳簿価額による株主資本の額に基づいて算定する。 - ② 簡便的な取扱い
株式移転日の前日における株式移転完全子会社(取得企業)の適正な帳簿価額による株主資本の額と、直前の決算日に算定された当該金額との間に重要な差異がないと認められる場合には、株式移転設立完全親会社が受け入れた子会社株式(取得企業株式)の取得原価は、株式移転完全子会社(取得企業)の直前の決算日に算定された適正な帳簿価額による株主資本の額により算定することができる(第404-3項参照)。 - (2) 子会社株式(被取得企業株式)
被取得企業株式の取得原価については、取得の対価に付随費用を加算して算定する。付随費用の取扱いは、金融商品会計実務指針に従う。取得の対価の具体的な算定方法は、第37項から第50項に準じる。
ただし、取得の対価となる財の時価は、株式移転完全子会社(被取得企業)の株主が株式移転設立完全親会社(結合後企業)に対する実際の議決権比率と同じ比率を保有するのに必要な数の株式移転完全子会社(取得企業)の株式を、株式移転完全子会社(取得企業)が交付したものとみなして算定する。
また、株式移転設立完全親会社が作成する連結財務諸表において、みなし取得日に株式移転が行われたものとして会計処理する場合(第126項参照)には、個別財務諸表上も第38項における企業結合日をみなし取得日と読み替えることとする。
株式移転設立完全親会社が新株予約権付社債を承継する場合等の取扱い
- 121-2. 株式移転に際して、株式移転設立完全親会社が株式移転完全子会社(取得企業又は被取得企業)の新株予約権者に新株予約権を交付する場合、又は株式移転設立完全親会社が新株予約権付社債を承継する場合には、株式移転設立完全親会社は、株式移転完全子会社株式(取得企業株式又は被取得企業株式)の取得原価を次のように算定する(第404-2項参照)。
- (1) 子会社株式(取得企業株式)
- ① 原則的な取扱い(第121項(1)①参照)
第121項(1)①により算定された子会社株式の取得原価に、株式移転完全子会社(取得企業)で認識された新株予約権の消滅に伴う利益又は新株予約権付社債の承継に伴う利益の額(税効果調整後)を加算する。また、株式移転設立完全親会社は、株式移転日の前日に株式移転完全子会社(取得企業)で付されていた新株予約権又は新株予約権付社債の適正な帳簿価額を純資産の部又は負債の部に計上する。 - ② 簡便的な取扱い(第121項(1)②参照)
第121項(1)②により子会社株式の取得原価を算定する場合であっても、株式移転完全子会社(取得企業)で認識された新株予約権の消滅に伴う利益又は新株予約権付社債の承継に伴う利益の額(税効果調整後)を株式移転完全子会社(取得企業)の直前の決算日に算定された適正な帳簿価額による株主資本の額に加算する。 - (2) 子会社株式(被取得企業株式)
第121項(2)により算定された子会社株式の取得原価に、当該新株予約権又は新株予約権付社債の時価を加算するとともに、同額を新株予約権又は新株予約権付社債として純資産の部又は負債の部に計上する(第50項参照)。
株式移転設立完全親会社の増加資本の会計処理
- 122. 株式移転設立完全親会社の増加すべき株主資本は、払込資本(資本金又は資本剰余金)とし、増加すべき払込資本の内訳項目(資本金、資本準備金又はその他資本剰余金)は、会社法の規定に基づき決定する。
株式移転設立完全親会社の増加すべき株主資本の額は第121項の取得の対価の算定に準じる。
株式移転設立完全親会社の税効果会計
- 123. 株式移転設立完全親会社が受け入れた子会社株式(取得企業及び被取得企業の株式)に係る一時差異(取得のときから生じていたものに限る。)に関する税効果の取扱いは第115項に準じる。[設例33]
(2)株式移転完全子会社(取得企業又は被取得企業)の個別財務諸表上の会計処理
- 123-2. 株式移転に際して、株式移転設立完全親会社が株式移転完全子会社(取得企業又は被取得企業)の新株予約権者に新株予約権を交付する場合、又は株式移転設立完全親会社が新株予約権付社債を承継する場合、株式移転完全子会社は、株式移転日の前日に付していた適正な帳簿価額による新株予約権又は新株予約権付社債の額を利益に計上する(第404-2項参照)。
- 123-3. 株式移転に際して、株式移転完全子会社(取得企業)が株式移転日の前日に他の株式移転完全子会社(被取得企業)となる企業の株式を保有していた場合、株式移転日の前日の適正な帳簿価額により、取得原価とする。
(3)株式移転設立完全親会社の連結財務諸表上の会計処理
投資と資本の消去
- 124. 株式移転による企業結合が取得とされた場合の資本連結の手続は、連結会計基準に従い、次の(1)①と②及び(2)①と②をそれぞれ相殺消去する(連結会計基準第23項)。また、(2)の消去差額であるのれん(又は負ののれん)は、第72項及び第76項から第78項に準じて会計処理する。[設例15]
- (1) 株式移転完全子会社(取得企業)に関する会計処理
- ① 株式移転設立完全親会社の取得企業に対する投資
株式移転設立完全親会社の投資は、第121項(1)により算定された子会社株式の取得原価とする。 - ② 株式移転完全子会社(取得企業)の資本
株式移転完全子会社(取得企業)の資本は、取得企業の適正な帳簿価額による株主資本とする。 - 両者はいずれも取得企業の適正な帳簿価額を基礎とした金額のため、消去差額は生じない。
- (2) 株式移転完全子会社(被取得企業)に関する会計処理
- ① 株式移転設立完全親会社の被取得企業に対する投資
株式移転設立完全親会社の投資は、第37項から第50項に準じて算定する。
なお、株式移転完全子会社(取得企業)が株式移転日の前日に他の株式移転完全子会社(被取得企業)となる企業の株式を保有していた場合、株式移転日の時価に基づく額を取得原価に加算し、その時価と適正な帳簿価額との差額は、当期の段階取得に係る損益として処理される(第46-2項参照)。
投資会社である取得企業が持分法適用関連会社である被取得企業と企業結合した場合には、株式移転日の前日の被取得企業の株式(関連会社株式)の持分法による評価額と株式移転日の時価との差額は、当期の段階取得に係る損益とし、これに見合う金額は、のれん(又は負ののれん)の修正として処理される。なお、株式移転日の前日の個別財務諸表上の関連会社株式の帳簿価額と持分法による評価額との差額を、のれん(又は負ののれん)の修正として処理される(第46-2項参照)。 - ② 株式移転完全子会社(被取得企業)の資本
株式移転完全子会社(被取得企業)の資本は、取得原価の配分(第51項から第78項参照)に準じて算定された識別可能資産及び負債の差額とする。
株式移転完全子会社(取得企業)の資産及び負債の引継ぎ
- 125. 連結財務諸表上、株式移転設立完全親会社は株式移転完全子会社(取得企業)の資産及び負債の適正な帳簿価額を、原則として、そのまま引き継ぐ。ただし、株式移転完全子会社(取得企業)が連結財務諸表を作成している場合には、株式移転完全子会社の連結財務諸表上の帳簿価額で受け入れる。[設例15]
ただし、連結財務諸表上の資本金は株式移転設立完全親会社の資本金とし、これと株式移転直前の株式移転完全子会社(取得企業)の資本金が異なる場合には、その差額を資本剰余金に振り替える。
株式移転日が株式移転完全子会社(被取得企業)の決算日以外の日である場合の取扱い
- 126. 第117項(株式交換日が株式交換完全子会社の決算日以外の日である場合の取扱い)と同様に取り扱う。
- 127. (以下、第174項まで削除)
Ⅳ.共同支配企業の形成の判定
1.共同支配企業の形成の判定規準
(1)共同支配企業の形成の判定規準の概要
- 175. 企業結合のうち、次の要件のすべてを満たすものは共同支配企業の形成と判定するとされている(企業結合会計基準第37項)。[付録:フローチャート参照]
- (1) 共同支配投資企業となる企業は、複数の独立した企業から構成されていること(以下「独立企業要件」という。)(第177項参照)
- (2) 共同支配投資企業となる企業が共同支配となる契約等を締結していること(以下「契約要件」という。)(第178項及び第179項参照)
- (3) 企業結合に際して支払われた対価のすべてが、原則として、議決権のある株式であること(以下「対価要件」という。)(第180項参照)
- (4) (1)から(3)以外に支配関係を示す一定の事実が存在しないこと(以下「その他の支配要件」という。)(第181項参照)
- (3)の対価要件については、共同支配投資企業となる企業に支払われた対価を前提とした定めであり、一般投資企業(第176項参照)に対するものは含まれない。
(2)一般投資企業が含まれる場合における共同支配企業の形成の判定
- 176. 共同支配投資企業となる企業の有する議決権の合計が、共同支配企業となる結合後企業の議決権の過半数を占めており、かつ、共同支配投資企業となる企業が第175項の要件のすべてを満たす場合には、共同支配企業へ投資する企業の中に次のいずれかに該当する企業(以下「一般投資企業」という。)が含まれていても、当該企業結合は共同支配企業の形成に該当するものとして取り扱う(第422項参照)。
- (1) 共同支配となる契約等を締結していないが共同支配企業へ投資する企業
- (2) 共同支配となる契約等を締結し、共同支配企業へ投資する企業の役割が契約書に明示されていても、事実上、共同支配企業の重要な役割を担っていないと認められる当該企業(第178項(1)参照)
2.独立企業要件の取扱い
- 177. 共同支配企業の形成の判定にあたり、共同支配企業へ投資する企業とその子会社、緊密な者及び同意している者は単一企業とみなす(緊密な者及び同意している者については、企業会計基準適用指針第22号「連結財務諸表における子会社及び関連会社の範囲の決定に関する適用指針」第8項を参照のこと。)(第423項参照)。
したがって、共同支配企業へ投資する企業がこれらの者のみから構成されている場合には、共同支配企業の形成には該当しない。
3.契約要件の取扱い
(1)共同支配となる契約等の要件
- 178. 共同支配企業の形成の判定にあたり、契約要件を満たすためには、契約等は文書化されており、次のすべてが規定されていなければならない(第424項及び第428項参照)。
- (1) 共同支配企業の事業目的が記載され、当該事業遂行における各共同支配投資企業の重要な役割分担が取り決められていること(第425項参照)
なお、各共同支配投資企業の重要な役割分担が契約書に記載されていても、実態が伴っていない場合には本要件を満たしたことにはならない。 - (2) 共同支配企業の経営方針及び財務に係る重要な経営事項の決定は、すべての共同支配投資企業の同意が必要とされていること(第426項参照)
重要な経営事項とは、一般に取締役会及び株主総会の決議事項とされるものをいい、例えば、予算及び事業計画、重要な人事、多額の出資、多額の資金調達・返済、第三者のための保証、株式の譲渡制限、取引上重要な契約、重要資産の取得・処分、事業の拡大又は撤退等があげられる。
なお、ある重要な経営事項の決議の際に賛成しなくとも積極的に反対しない限りは、その決議事項につき賛成したものとみなすこととしている場合には、原則として、「すべての共同支配投資企業の同意が必要とされていること」に該当せず、本要件を満たしたことにはならない。ただし、共同支配企業の経営への関与の仕方が他の共同支配投資企業となる企業と異ならないと認められるような場合(例えば、ある重要な経営事項の決議に係る上記の取扱いが当該共同支配投資企業の役割((1)参照)とは関連性の薄い経営事項に限定されている場合など)には、本要件を満たしたものとして取り扱う(第427項参照)。
(2)株主間の事前承認規定
- 179. 重要な経営事項を共同支配企業の意思決定機関で決議する前に、すべての共同支配投資企業の事前承認が必要である旨、規定されている場合には、第178項(2)の要件を満たすものとして取り扱う。
4.対価要件の取扱い
- 180. 共同支配企業の形成の判定にあたり、「議決権のある株式」(企業結合会計基準第37項(1))(第175項(3)参照)とは、株主総会において、第178項(2)に規定されている重要な経営事項に関する議決権が制限されていない株式をいう。
したがって、一般に、共同支配企業となる結合後企業が、企業結合の対価として、共同支配投資企業となるすべての企業に対し、議決権に関して同一の権利内容を有する株式を交付していない場合には、共同支配企業の形成には該当しないことになる(第429項参照)。
なお、企業結合の対価として、議決権のある株式以外の財産が交付された場合であっても、それが次に掲げる現金等の財産のときは、対価要件を満たしたものとして取り扱う。 - (1) 企業結合比率の端数調整のための現金
- (2) 株主からの買取請求権に基づく現金
- また、最終事業年度の配当金見合いの合併交付金等は取得の対価に該当しないため、当該交付金等が交付された場合にも、対価要件を満たしたものとして取り扱う。
- 180-2. 対価要件の判定の前提として、同時に次の要件のすべてが満たされていなければならないとされている(企業結合会計基準(注7))(第429-2項参照)。
- (1) 企業結合が単一の取引で行われるか、又は、原則として、1事業年度内に取引が完了する。
- (2) 交付株式の議決権の行使が制限されない。
なお、議決権については、第180項を参照のこと。 - (3) 企業結合日において対価が確定している。
- (4) 交付株式の償還又は再取得の取決めがない。
- (5) 株式の交換を事実上無効にするような結合当事企業の株主の利益となる財務契約がない。
なお、これには、交付株式を担保とする貸付保証契約や一方の結合当事企業の株主に実質的に一定の利回りを保証するような契約等が含まれる。 - (6) 企業結合の合意成立日前1年以内に、当該企業結合を目的として自己株式を受け入れていない。
ここで、企業結合の合意成立日とは、企業結合に関する契約書を承認する株主総会において議決権を行使できる株主が確定する日をいう。なお、企業結合を目的として自己株式を受け入れるとは、自己株式の受入れを当該企業結合の目的としていることが内部文書等により明らかな場合をいう。
また、一方の結合当事企業が他の結合当事企業の株式を受け入れる行為も同様に取り扱う。
5.その他の支配要件の取扱い
- 181. 共同支配企業の形成の判定にあたり、次のいずれにも該当しない場合には、その他の支配要件を満たしたものとされる(企業結合会計基準(注8))(第430項参照)。
- (1) いずれかの結合当事企業の役員若しくは従業員である者又はこれらであった者が、結合後企業の取締役会その他これに準ずる機関(重要な経営事項の意思決定機関)を事実上支配していること
事実上支配しているかどうかについては、構成員の過半数を占めているかどうかが重要な判断要素として考えられるため、企業結合日において、次のすべての人数等を勘案して判定する。ただし、企業結合日において構成員の変更が予定されている場合や構成員の間に緊密な関係がある場合などには、それらについても加味して判定する。 - ① 委員会設置会社の場合には、取締役の人数。なお、結合後企業に執行役会等、重要な経営事項に関する意思決定機関が設置された場合には、その構成員の人数。
- ② ①以外の会社の場合、取締役の人数。なお、結合後企業に常務会、経営会議等、重要な経営事項の意思決定機関が設置された場合には、その構成員の人数。
- ただし、いずれかの企業の役員等が代表取締役(又は代表執行役)や常勤取締役(又は執行役)の大半を占めるなど、重要な経営事項の意思決定機関において、主として業務執行に携わる役員の割合が大幅に異なる場合には、その実態を踏まえて判定する。
- (2) 重要な財務及び営業の方針決定を支配する契約等により、結合当事企業のうち、いずれかの企業が他の企業より有利な立場にあること
例えば、次のような株式が企業結合日に存在する場合には、保有者の属性、潜在株式又は種類株式の発行の経緯及び現実的な議決権の行使可能性等を踏まえ、当該株式の存在と効果を考慮して、本要件を実質的に判定する。 - ① 共同支配投資企業となる企業のうち、特定の企業に発行している潜在株式
- ② 拒否権を行使できる株式(会社法第108条第1項第8号)
- (3) 企業結合日後2年以内にいずれかの結合当事企業が投資した大部分の事業を処分する予定があること
「大部分の事業を処分」に該当するかどうかは、共同支配企業の売上、利益及びキャッシュ・フロー並びに資産及び負債に与える影響を勘案して判断する。なお、企業結合日後2年以内にいずれかの共同支配投資企業となる企業の大部分の事業を関連会社に移転する予定がある場合又は大部分の事業を分離して関連会社とする予定がある場合には、大部分の事業の処分に該当するものとして取り扱う。
また、「処分する予定」とは、いずれかの共同支配投資企業となる企業が投資した大部分の事業を処分する計画が、企業結合の一環として、あらかじめ、当該企業の取締役会等の意思決定機関で決定されている場合をいう。
Ⅴ.共同支配企業の形成の会計処理
1.共同支配企業の形成の会計処理の概要
- 182. 共同支配企業の形成において、共同支配企業は、共同支配投資企業から移転する資産及び負債を、移転直前に共同支配投資企業において付されていた適正な帳簿価額により計上する(企業結合会計基準第38項)。
- 182-2. 共同支配企業の形成において、共同支配企業に事業を移転した共同支配投資企業は次の会計処理を行う(企業結合会計基準第39項)。
- (1) 個別財務諸表上、当該共同支配投資企業が受け取った共同支配企業に対する投資の取得原価は、移転した事業に係る株主資本相当額に基づいて算定する。
- (2) 連結財務諸表上、共同支配投資企業は、共同支配企業に対する投資について持分法を適用する。
2.本適用指針で取り扱う共同支配企業の形成と判定された組織再編の形式ごとの会計処理
- 183. 本適用指針では、代表的な組織再編の形式として次の2つを取り上げ、それぞれの会計処理を示している。
- (1) 合併(吸収合併)(第184項から第191項参照)
- (2) 会社分割(吸収分割又は共同新設分割)(第192項から第199項参照)
3.共同支配企業の形成と判定された合併(吸収合併)の会計処理
(1)吸収合併存続会社(共同支配企業)の会計処理
資産及び負債の会計処理
- 184. 親会社を異にする子会社同士の吸収合併による共同支配企業の形成にあたり、吸収合併存続会社(共同支配企業)は、移転された資産及び負債を企業結合日の前日における吸収合併消滅会社の適正な帳簿価額により計上する(企業結合会計基準第38項)(第407項参照)。[設例18]
増加資本の会計処理
(新株を発行した場合の会計処理)
- 185. 吸収合併存続会社(共同支配企業)は、合併期日の前日における吸収合併消滅会社の純資産の部の各項目を次のように処理する(第408項参照)。なお、吸収合併存続会社が受け入れた自己株式(吸収合併消滅会社が保有していた吸収合併存続会社株式)は、吸収合併消滅会社における適正な帳簿価額により、吸収合併存続会社の株主資本からの控除項目として表示する(第84項なお書き参照)。また、抱合せ株式等がある場合には、第84-2項に準じて処理する。
- (1) 株主資本項目の取扱い
- ① 原則的な会計処理
吸収合併存続会社は吸収合併消滅会社の合併期日の前日の適正な帳簿価額による株主資本の額を払込資本(資本金又は資本剰余金)として会計処理する。増加すべき払込資本の内訳項目(資本金、資本準備金又はその他資本剰余金)は、会社法の規定に基づき決定する。
なお、吸収合併消滅会社の合併期日の前日の適正な帳簿価額による株主資本の額がマイナスの場合及び抱合せ株式等の会計処理(第84-2項参照)により株主資本の額がマイナスとなる場合には、払込資本をゼロとし、その他利益剰余金のマイナスとして処理する。 - ② 認められる会計処理
合併が共同支配企業の形成と判定される場合には、合併の対価は原則として自社の株式のみであり、吸収合併存続会社は、吸収合併消滅会社の合併期日の前日の資本金、資本準備金、その他資本剰余金、利益準備金及びその他利益剰余金の内訳科目(ただし、積立目的の趣旨は同じであるが、吸収合併存続会社と吸収合併消滅会社の間でその名称が形式上異なる場合に行う積立金の名称変更を除く。)を、抱合せ株式等の会計処理(第84-2項参照)を除き、そのまま引き継ぐことができる。当該取扱いは、吸収合併消滅会社の適正な帳簿価額による株主資本の額がマイナスとなる場合も同様である。
また、吸収合併の手続とともに、株主資本の計数の変動手続(会社法第447条から第452条)が行われ、その効力が合併期日に生じる場合には、合併期日において、会社の意思決定機関で定められた結果に従い、株主資本の計数を変動させることができる。なお、株主資本の計数の変動に際しては、資本剰余金と利益剰余金の混同とならないように留意する必要がある(自己株式等会計基準第19項)。 - (2) 株主資本以外の項目の引継ぎ
吸収合併存続会社は、吸収合併消滅会社の合併期日の前日の評価・換算差額等及び新株予約権の適正な帳簿価額を引き継ぐ。したがって、例えば、吸収合併消滅会社のその他有価証券評価差額金や土地再評価差額金の適正な帳簿価額もそのまま引き継ぐことになる。
(自己株式を処分した場合の会計処理)
- 186. 吸収合併存続会社(共同支配企業)は、合併期日の前日における吸収合併消滅会社の純資産の部の各項目を次のように処理する。なお、抱合せ株式等がある場合には、第84-3項に準じて処理する。
- (1) 株主資本項目の取扱いにおける原則的な会計処理
吸収合併消滅会社の合併期日の前日の適正な帳簿価額による株主資本の額から処分した自己株式の帳簿価額を控除した額を払込資本の増加(当該差額がマイナスとなる場合にはその他資本剰余金の減少)として会計処理する。 - (2) 株主資本項目の取扱いにおける認められる会計処理
吸収合併消滅会社の合併期日の前日の株主資本の構成をそのまま引き継ぎ、処分した自己株式の帳簿価額をその他資本剰余金から控除する(第410項参照)。 - なお、株主資本以外の項目については、前項(2)に準じて会計処理する。
吸収合併存続会社(共同支配企業)のその他の会計処理
- 187. 吸収合併存続会社(共同支配企業)の個別財務諸表におけるその他の会計処理は、逆取得となる吸収合併の会計処理(第84-4項から第84-7項参照)に準じて会計処理する。
結合当事企業の中に一般投資企業が含まれている場合の取扱い
- 188. ある企業結合が共同支配企業の形成と判定された場合において、吸収合併消滅会社の株主の中に一般投資企業(第176項参照)が含まれているときは、共同支配企業が一般投資企業から取得した事業(資産及び負債)に対して、パーチェス法を適用する。
(2)合併会社の株主(共同支配投資企業)の会計処理
個別財務諸表上の会計処理
- 189. ある企業の子会社と他の企業との吸収合併が共同支配企業の形成と判定された場合の合併会社の株主(合併前の親会社)の個別財務諸表上の会計処理は、次のように行う。
- (1) 当該子会社が吸収合併存続会社(結合企業)の場合
当該子会社株式の適正な帳簿価額を、そのまま共同支配企業株式へ振替処理する。 - (2) 当該子会社が吸収合併消滅会社(被結合企業)の場合
結合後企業の株式(共同支配企業株式)の取得原価は、引き換えられた被結合企業の株式(子会社株式)に係る移転直前の適正な帳簿価額に基づいて算定する。したがって、合併会社の株主の個別財務諸表上、交換損益は認識されない。
連結財務諸表上の会計処理
- 190. 連結財務諸表上、これまで連結していた子会社については、共同支配企業の形成時点の持分法による投資評価額にて共同支配企業株式へ振替処理し、持分法を適用する(企業結合会計基準第39項(2))(第431項から第433項参照)。[設例18]
(3)合併会社の株主(一般投資企業)の会計処理
- 191. 合併会社の株主のうち、一般投資企業(第176項参照)の共同支配企業の形成時(企業結合時)の会計処理は、結合当事企業の株主の会計処理に従う。
4.共同支配企業の形成と判定された会社分割(吸収分割又は共同新設分割)の会計処理
(1)吸収分割承継会社等(共同支配企業)の会計処理
資産及び負債の会計処理
- 192. 共同支配企業の形成にあたり、吸収分割承継会社等(共同支配企業)は、移転された資産及び負債を分割期日の前日における適正な帳簿価額により計上する(企業結合会計基準第38項)(第407項参照)。[設例19]
増加資本の会計処理
(新株を発行した場合の会計処理)
- 193. 吸収分割承継会社等(共同支配企業)は、移転された資産及び負債の差額を次のように会計処理する(第409項参照)。
- (1) 移転事業に係る株主資本相当額の取扱い
移転事業に係る株主資本相当額(第87項(1)①参照)を払込資本(資本金又は資本剰余金)として処理する。増加すべき払込資本の内訳項目(資本金、資本準備金又はその他資本剰余金)は、会社法の規定に基づき決定する。
なお、移転事業に係る株主資本相当額がマイナスとなる場合には、払込資本をゼロとし、その他利益剰余金のマイナスとして処理する。 - (2) 移転事業に係る評価・換算差額等の取扱い
移転事業に係る評価・換算差額等(第87項(1)②参照)については、吸収分割会社等の移転直前の適正な帳簿価額をそのまま引き継ぐ。
したがって、移転された事業にその他有価証券や土地再評価法に基づき再評価した土地が含まれ、吸収分割会社等が当該その他有価証券や土地を時価又は再評価額をもって分割期日の前日の貸借対照表価額としている場合には、吸収分割承継会社等は、分割期日の前日のその他有価証券及び土地の貸借対照表価額並びにその他有価証券評価差額金及び土地再評価差額金もそのまま引き継ぐことになる。
(自己株式を処分した場合の会計処理)
- 193-2. 会社分割の対価として吸収分割承継会社等が自己株式を処分した場合には、第186項(1)に準じて会計処理する。
吸収分割承継会社等(共同支配企業)のその他の会計処理
- 194. 吸収分割承継会社等(共同支配企業)の個別財務諸表におけるその他の会計処理は、逆取得となる吸収分割又は現物出資の会計処理(第87項なお書き及び第87-2項から第87-4項参照)に準じて会計処理する。
投資企業の中に一般投資企業が含まれている場合の取扱い
- 195. ある企業結合が共同支配企業の形成と判定された場合において、吸収分割会社等の中に一般投資企業(第176項参照)が含まれているときは、共同支配企業が一般投資企業から取得した事業(資産及び負債)に対して、パーチェス法を適用する。
(2)吸収分割会社等(共同支配投資企業)の会計処理
個別財務諸表上の会計処理
- 196. 吸収分割会社等(共同支配投資企業)は、移転した事業に係る株主資本相当額に基づいて吸収分割承継会社等に対する投資(共同支配企業株式)の取得原価を算定することとされている(企業結合会計基準第39項(1))。
具体的には、吸収分割会社等が受け入れる共同支配企業株式の取得原価は、移転事業に係る株主資本相当額(第87項(1)①参照)から移転事業に係る繰延税金資産及び繰延税金負債を控除する(第108項(2)参照)ことに留意する必要がある。
なお、当該金額がマイナスとなる場合は、当該マイナスの金額を「組織再編により生じた株式の特別勘定」等、適切な科目により負債に計上する。
連結財務諸表上の会計処理
- 197. 吸収分割会社等(共同支配投資企業)は、共同支配企業の形成にあたり事業を移転した場合には、共同支配企業に対する投資について持分法を適用する(企業結合会計基準第39項(2))(第431項から第433項参照)。[設例19]
共同支配投資企業の子会社が共同支配企業に投資している場合の会計処理
- 198. ある吸収分割会社等(共同支配投資企業)の子会社が、同一の吸収分割承継会社等(共同支配企業)に投資している場合には、当該子会社も共同支配投資企業とみなし、第196項及び第197項に準じて会計処理する(第434項参照)。
(3)吸収分割会社等(一般投資企業)の会計処理
- 199. 吸収分割会社等のうち一般投資企業(第176項参照)の共同支配企業の形成時(事業移転時)の会計処理は、分離先企業における企業結合が取得とされたときの分離元企業の会計処理に準じる(第100項から第103項参照)。
Ⅵ.共通支配下の取引等の会計処理
1.共通支配下の取引等の会計処理の概要
- 200. 企業集団内における組織再編の会計処理には、共通支配下の取引と非支配株主との取引(以下合わせて「共通支配下の取引等」という。)がある。
共通支配下の取引は、親会社の立場からは内部取引と考えられるため、個別財務諸表上、事業の移転元の適正な帳簿価額を基礎として会計処理され、連結財務諸表上は、すべて消去されることになる。
また、非支配株主との取引は、親会社が子会社を株式交換により完全子会社とする場合など、親会社が非支配株主から子会社株式を追加取得する取引等に適用される。 - なお、非支配株主との取引の個別財務諸表上の会計処理は、企業集団の最上位に位置する会社(以下「最上位の親会社」という。)が非支配株主から子会社株式を追加取得する取引等に適用される。最上位の親会社以外の親会社が非支配株主から子会社株式を追加取得する取引等には、第203項以下に定める処理が適用される。
本適用指針では、組織再編の形式が異なっていても、組織再編後の経済的実態が同じであれば、連結財務諸表上(合併の場合には個別財務諸表上)も同じ結果が得られるように会計処理を定めている(第437項参照)。
2.共通支配下の取引の範囲
- 201. 共通支配下の取引とは、親会社と子会社との合併や親会社の支配下にある子会社同士の合併など、「結合当事企業(又は事業)のすべてが、企業結合の前後で同一の株主により最終的に支配され、かつ、その支配が一時的ではない場合の企業結合をいう」(企業結合会計基準第16項)とされている。なお、支配の主体である「同一の株主」には企業に限定されず、個人も含まれる。[設例23]
また、投資会社とその関連会社との企業結合は、共通支配下の取引には該当しない(第435項参照)。 - 202. 「同一の株主」により支配されている会社の判定にあたっては、ある株主と緊密な者(自己と出資、人事、資金、技術、取引等において緊密な関係があることにより自己の意思と同一の内容の議決権を行使すると認められる者をいう。)及び同意している者(自己の意思と同一の議決権を行使することに同意している者をいう。)が保有する議決権を合わせて、結合当事企業(又は事業)のすべてが、企業結合の前後で同一の株主により最終的に支配されているかを実質的に判定する。この支配の判定は、企業会計基準適用指針第22号「連結財務諸表における子会社及び関連会社の範囲の決定に関する適用指針」に準じて行う(第436項参照)。
3.共通支配下の取引等に係る対価
(1)本適用指針における共通支配下の取引等に係る対価の前提
- 203. 本適用指針では、共通支配下の取引等に係る会計処理の定めの記載の簡略化のため、組織再編の対価について、特に断りのない限り、次の前提をおくこととする。
- (1) 組織再編の形式が合併、会社分割(分割型の会社分割を含む。)、株式交換及び株式移転の場合の対価は、特に断りのない限り、結合企業の時価のある株式(新株の発行)のみとする。
なお、自己株式を処分した場合で、自己株式の処分の対価を、時価を基礎として会計処理するとき(自己株式を非支配株主に交付するとき)は、取得の会計処理における該当する組織再編の形式に係る会計処理(例えば、第80項参照)に準じて処理する。また、適正な帳簿価額を基礎として会計処理する場合において、払込資本とする処理を適用するときは、自己株式の帳簿価額を控除した額を払込資本として処理し、吸収合併消滅会社の株主資本をそのまま引き継ぐ処理、又は、分割型の会社分割において株主資本の内訳を適切に配分した額をもって計上する処理を適用するときは、自己株式の帳簿価額をその他資本剰余金から控除して会計処理する。
このほか、結合企業の時価のある株式以外の財を交付した場合であって、それを非支配株主に交付したことにより、時価を算定する必要がある場合には、追加取得する子会社株式又は事業の取得原価は、当該株式又は事業の時価と、その取得の対価となる財の時価のうち、より高い信頼性をもって測定可能な時価で算定することとなる(企業結合会計基準第45項)。 - (2) 組織再編の形式が事業譲渡の場合の対価は、現金等の財産(第95項参照)とする。
(2)完全親子会社関係にある組織再編において対価が支払われない場合の会計処理
- 203-2. 組織再編の対価が支払われない場合であっても、以下の組織再編の形式であって、結合当事企業のすべてが同一の株主に株式のすべてを直接又は間接保有されているとき(完全親子会社関係にあるとき)は、結合当事企業は、次のように処理する(第437-2項及び第437-3項参照)。
- (1) 合併の場合(子会社と他の子会社との合併の場合)
吸収合併存続会社の株主資本項目については、合併が共同支配企業の形成と判定された場合における「認められる会計処理」(第185項(1)②参照)に準じて処理する。増加すべき払込資本の内訳項目は、会社法の規定に基づき決定する。
なお、結合当事企業の株主(親会社)は、吸収合併消滅会社の株式の帳簿価額を吸収合併存続会社の株式の帳簿価額に加算する。 - (2) 会社分割の場合
- ① 親会社の事業を子会社に移転する場合
吸収分割会社である親会社は、第233項に準じて会計処理を行い、株主資本の額を変動させる(第446項参照)。
吸収分割承継会社である子会社は、親会社で変動させた株主資本の額を、会社法の規定に基づき計上する(第234項参照)。
なお、親会社の株主は会計処理を要しない。 - ② 子会社の事業を他の子会社に移転する場合
吸収分割会社である子会社は、第255項に準じて会計処理を行い、株主資本の額を変動させる(第446項参照)。
吸収分割承継会社である他の子会社は、吸収分割会社である子会社で変動させた株主資本の額を、会社法の規定に基づき計上する(第256項参照)。
なお、吸収分割承継会社である他の子会社が分割期日に吸収分割会社である子会社の株式を保有している場合には、当該吸収分割後の吸収分割会社の財務内容等を勘案して、期末において、当該吸収分割会社の株式の帳簿価額について、相当の減額の要否を検討することとなる。
また、吸収分割会社の株主(親会社)は、受け取る吸収分割承継会社の株式とこれまで保有していた吸収分割会社の株式が実質的に引き換えられたものとみなし(第295項参照)、分割型の会社分割における吸収分割会社等の株主に係る会計処理(第294項参照)に準じて処理する。 - ③ 子会社の事業を親会社に移転する場合
吸収分割承継会社である親会社は、子会社が親会社に分割型の会社分割により事業を移転する場合の親会社の会計処理(第218項から第220項参照)に準じて処理する。ただし、移転する事業に子会社株式(親会社からみて孫会社株式)や関連会社株式が含まれている場合には、親会社は、当該子会社株式等の受入れについて、子会社が他の子会社に分割型の会社分割により事業を移転する場合の株主(親会社)の会計処理(第257項参照)に準じて処理する。
吸収分割会社である子会社は、子会社が親会社に分割型の会社分割により事業を移転する場合の子会社の会計処理(第221項参照)に準じて処理する。
4.本適用指針で取り扱う共通支配下の取引等の組織再編の形式ごとの会計処理
- 204. 本適用指針では、共通支配下の取引等として、次の組織再編を取り上げ、それぞれの会計処理を定める。
- (1) 親会社と子会社との組織再編
- ① 吸収合併(親会社(存続会社)、子会社(消滅会社))(第205項から第208項参照)
- ② 吸収合併(親会社(消滅会社)、子会社(存続会社))(第209項から第213項参照)
- ③ 会社分割(子会社の事業を親会社に移転する場合)(第214項から第217項参照)
- ④ 分割型の会社分割(子会社の事業を親会社に移転する場合)(第218項から第222項参照)
- ⑤ 事業譲渡(親会社の事業を子会社に移転する場合)(第223項から第225項参照)
- ⑥ 会社分割(親会社の事業を子会社に移転する場合)
(対価:吸収分割承継会社の株式のみの場合)(第226項から第229項参照) - ⑦ 会社分割(親会社の事業を子会社に移転する場合)
(対価:吸収分割承継会社の株式と現金等の財産からなる場合)(第230項から第232項参照) - ⑧ 分割型の会社分割(親会社の事業を子会社に移転する場合)(第233項から第235項参照)
- ⑨ 株式交換(親会社(完全親会社)、子会社(完全子会社))(第236項から第238-3項参照)
- ⑩ 株式移転(親会社と子会社が共同で完全親会社を設立する場合)(第239項から第241-3項参照)
- (2) 子会社間の組織再編
- ① 吸収合併(同一の株主(企業)により支配されている子会社同士の合併)
(対価:現金等の財産のみである場合)(第242項から第245項参照) - ② 吸収合併(同一の株主(企業)により支配されている子会社同士の合併)
(対価:吸収合併存続会社の株式のみである場合)(第246項から第249項参照) - ③ 吸収合併(同一の株主(企業)により支配されている子会社同士の合併)
(対価:吸収合併存続会社の株式と現金等の財産からなる場合)(第250項から第253項参照) - ④ 吸収合併(同一の株主(個人)により支配されている企業同士の合併)(第254項参照)
- ⑤ 会社分割(ある子会社から他の子会社に事業を移転する場合)(第254-2項から第254-4項参照)
- ⑥ 分割型の会社分割(ある子会社から他の子会社に事業を移転する場合)(第255項から第257項参照)
- (3) 企業集団内における組織再編のうち、企業結合に該当しない取引
- ① 単独株式移転による完全親会社の設立(第258項及び第259項参照)
- ② 単独新設分割による子会社の設立(第260項から第262項参照)
- なお、本適用指針では、共通支配下の取引等ではないが、単独で行われる分割型の会社分割における新設分割会社の会計処理(第263項参照)及び新設分割設立会社の会計処理(第264項参照)についても定めている。
5.親会社が子会社を吸収合併する場合の会計処理
(1)個別財務諸表上の会計処理
子会社(吸収合併消滅会社)の会計処理
- 205. 子会社は、合併期日の前日に決算を行い、資産、負債及び純資産の適正な帳簿価額を算定する。
親会社(吸収合併存続会社)の会計処理
- 206. 親会社の個別財務諸表上の会計処理は次のように行う(第438項参照)。[設例20]
- (1) 資産及び負債の会計処理
親会社が子会社から受け入れる資産及び負債は、企業結合会計基準第41項により、合併期日の前日に付された適正な帳簿価額により計上する。[設例35] - (2) 増加すべき株主資本の会計処理
- ① 株主資本の取扱い
親会社は、子会社から受け入れた資産と負債との差額のうち株主資本の額を合併期日直前の持分比率に基づき、親会社持分相当額と非支配株主持分相当額に按分し、それぞれ次のように処理する。 - ア 親会社持分相当額の会計処理
親会社が合併直前に保有していた子会社株式(抱合せ株式)の適正な帳簿価額との差額を、特別損益に計上する。 - イ 非支配株主持分相当額の会計処理
非支配株主持分相当額と、取得の対価(非支配株主に交付した親会社株式の時価)(第37項から第47項参照)との差額をその他資本剰余金とする。合併により増加する親会社の株主資本の額は、払込資本とし、第79項から第82項に準じて会計処理する。 - ② 株主資本以外の項目の取扱い
親会社は子会社の合併期日の前日の評価・換算差額等(親会社が作成する連結財務諸表において投資と資本の消去の対象とされたものを除く。)及び新株予約権の適正な帳簿価額を引き継ぐ。したがって、例えば、子会社のその他有価証券評価差額金や土地再評価差額金の適正な帳簿価額のうち、支配獲得後に当該子会社が計上したものをそのまま引き継ぐことになる。 - (3) 中間子会社に対価の支払を行う場合の取扱い
(2)において、子会社(吸収合併消滅会社)の株式を保有する親会社(吸収合併存続会社)の他の子会社(中間子会社)に合併の対価を交付する場合には、子会社から受け入れた資産と負債の差額のうち株主資本の額に合併期日の前日の持分比率を乗じて中間子会社持分相当額を算定し、その額を払込資本(資本金又は資本剰余金)として処理する。増加すべき払込資本の内訳項目(資本金、資本準備金又はその他資本剰余金)は、会社法の規定に基づき決定する(第408項参照)。
なお、この場合、中間子会社が、子会社(吸収合併消滅会社)の株式と引き換えに受け入れた親会社株式の取得原価は、当該子会社株式の適正な帳簿価額により算定する。 - (4) 子会社と孫会社との合併の場合(子会社が吸収合併存続会社となる場合)
(1)から(3)(ただし、(2)①イ(非支配株主持分相当額の会計処理)を除く。)は、子会社を吸収合併存続会社としたその子会社(以下「孫会社」という。)との合併(子会社と孫会社との合併)についても、同様に適用する(第438-2項参照)。
この場合、子会社が孫会社株式を非支配株主から追加取得する取引については、(2)①イの非支配株主持分相当額は、(3)の中間子会社持分相当額に準じて処理する。[設例29-5]
(親会社が子会社から受け入れる資産及び負債の修正処理)
- 207. 親会社と子会社が合併する場合には、親会社の個別財務諸表では、原則として、子会社の適正な帳簿価額により資産及び負債を受け入れるが(前項(1)参照)、親会社が作成する連結財務諸表において、当該子会社の資産及び負債の帳簿価額を修正しているときは、個別財務諸表上も、連結財務諸表上の金額である修正後の帳簿価額(のれんを含む。)により計上する(企業結合会計基準(注9))。
- 当該取扱いは、子会社とその子会社との合併(例えば、子会社と孫会社との合併)についても適用し、この場合の連結財務諸表上の帳簿価額とは、子会社にとっての連結財務諸表上の帳簿価額をいう。[設例29-5]
- 子会社の資産及び負債の帳簿価額を修正しているときの具体例及びその会計処理は、次のとおりである(第439項参照)。
- (1) 連結精算表上のみの修正事項[設例20]
資本連結にあたり子会社の資産及び負債を時価評価している場合には、親会社の個別財務諸表上、時価評価後の金額により受け入れる。また、連結財務諸表上、子会社株式の取得に係るのれんの未償却残高が計上されている場合には、親会社の個別財務諸表上も当該金額をのれんとして引き継ぐ。
なお、親会社が株式の取得により、ある会社を子会社化し、当該子会社をその直後に合併した場合には、親会社は、当該子会社を連結子会社とした連結財務諸表を作成していないことが考えられる。このような親会社と子会社の合併は、株式の取得と合併が一体の取引と考えられるので、親会社の個別財務諸表上は、合併期日において当該子会社を連結子会社とした場合の連結財務諸表上の帳簿価額(支配獲得時点における時価評価替後の帳簿価額をいい、当該子会社に対するのれん(又は負ののれん)の額を含む。)により資産及び負債を引き継ぐことになる。なお、子会社が他の会社の株式を取得して子会社(親会社からみて孫会社)とし、その直後に子会社が孫会社を吸収合併した場合も同様に処理する。 - (2) 未実現損益に関する修正事項[設例21]
連結財務諸表の作成にあたり、子会社の資産又は負債に含まれる未実現損益(親会社の個別財務諸表上、損益に計上された額に限る。)を消去している場合には、親会社の個別財務諸表上も、未実現損益消去後の金額で当該資産又は負債を受け入れる。親会社の個別財務諸表上、当該修正に伴う差額は、特別損益に計上する。
ただし、実務上の観点から、企業結合後、短期間に第三者に処分される見込みの棚卸資産に係る未実現損益や金額的重要性が低いものについては、未実現損益の消去をせず、子会社の適正な帳簿価額をそのまま受け入れることができる。
(連結財務諸表上の帳簿価額が算定されていない場合の取扱い)
- 207-2. 親会社(子会社とその子会社との合併の場合における子会社を含む。)が、連結財務諸表を作成していないことにより、「連結財務諸表上の帳簿価額」が算定されていない場合であっても、「連結財務諸表上の帳簿価額」を合理的に算定できるときには当該帳簿価額を用いることとし、「連結財務諸表上の帳簿価額」を合理的に算定することが困難と認められるときは、子会社の適正な帳簿価額を用いることとする。
- なお、親会社が他の会社の株式を取得して子会社化した直後に合併した場合(子会社が他の会社の株式を取得して子会社(親会社からみて孫会社)とし、その直後に子会社が孫会社を吸収合併した場合も含む。)は、通常、連結財務諸表上の帳簿価額を合理的に算定できる場合に該当するものと考えられる。
(2)連結財務諸表上の会計処理
- 208. 吸収合併が行われた後も親会社が連結財務諸表を作成する場合には、第206項(2)①アの損益は連結財務諸表上、過年度に認識済みの損益となるため、相殺消去する。子会社とその子会社との合併(子会社と孫会社の合併)においても、当該取扱いに準じて処理する。[設例20]
6.子会社が親会社を吸収合併する場合の会計処理
(1)個別財務諸表上の会計処理
親会社(吸収合併消滅会社)の会計処理
- 209. 親会社は、合併期日の前日に決算を行い、資産、負債及び純資産の適正な帳簿価額を算定する。
子会社(吸収合併存続会社)の会計処理
- 210. 子会社が吸収合併存続会社となり、親会社が吸収合併消滅会社となる合併は、共通支配下の取引に該当するため、子会社の個別財務諸表上の会計処理は次のように行う(第440項参照)。[設例22]
- (1) 資産及び負債の会計処理
子会社が親会社から受け入れる資産及び負債は、企業結合会計基準第41項により、合併期日の前日に付された適正な帳簿価額により計上する。子会社は、親会社が所有していた子会社株式を自己株式として株主資本から控除する。 - (2) 増加すべき株主資本の会計処理
移転された資産及び負債の差額は、純資産として処理する(企業結合会計基準第42項)。具体的には、第84項(逆取得となる吸収合併の会計処理)に準じて会計処理する(第408項参照)。
(子会社が親会社から受け入れる資産及び負債の修正処理)
- 211. 子会社(吸収合併存続会社)が親会社(吸収合併消滅会社)と合併する場合には、子会社の個別財務諸表上、原則として、親会社の適正な帳簿価額により資産及び負債を受け入れる(前項(1)参照)が、当該合併前に子会社が親会社に資産等を売却しており、当該取引から生じた未実現損益を連結財務諸表上、消去しているときは、子会社の個別財務諸表上、連結財務諸表上の金額である修正後の帳簿価額により親会社の資産及び負債を受け入れる(第439項参照)。
ただし、実務上の観点から、企業結合後、短期間に第三者に処分される見込みの棚卸資産に係る未実現損益や金額的重要性が低いものについては、未実現損益を消去せず、親会社の適正な帳簿価額をそのまま受け入れることができる。
なお、合併前に親会社が連結財務諸表を作成していない場合には、「連結財務諸表上の帳簿価額」に代えて、親会社の適正な帳簿価額を用いることができる。
(2)連結財務諸表上の会計処理
- 212. 吸収合併が行われた後に子会社が連結財務諸表を作成する場合には、子会社の個別財務諸表における処理を振り戻し、親会社が子会社の非支配株主から株式を取得したものとした会計処理を行う。[設例22]
具体的には、時価評価替後の資産及び負債を連結財務諸表上の帳簿価額として受け入れ、また、合併に際し子会社が受け入れた自己株式とそれに対する増加すべき株主資本は内部取引として消去する。子会社の非支配株主が保有していた子会社株式は、当該合併に際して、親会社株式との交換はないものの、連結財務諸表上、親会社株式との交換があったものとみなして、時価を基礎として取得原価を算定する(第441項参照)。
なお、連結財務諸表上の資本金は、吸収合併存続会社(子会社)の資本金とし、これと合併直前の連結財務諸表上の資本金(親会社の資本金)が異なる場合には、その差額を資本剰余金に振り替える。
子会社が連結財務諸表を作成しない場合の注記事項の算定基礎
- 213. 吸収合併が行われた後に、子会社が連結財務諸表を作成しない場合は、前項に準じて算定された額を基礎として、親会社が吸収合併存続会社であるとみなした場合の個別貸借対照表及び個別損益計算書に及ぼす影響の概算額を注記する(第441項参照)。
7.子会社が親会社に会社分割により事業を移転する場合の会計処理
(会社分割の対価が親会社株式のみの場合)
(1)個別財務諸表上の会計処理
親会社(吸収分割承継会社)の会計処理
- 214. 親会社の個別財務諸表上の会計処理は次のように行う(第442項参照)。[設例24]
- (1) 資産及び負債の会計処理
親会社が子会社から受け入れる資産及び負債は、企業結合会計基準第41項により、分割期日の前日に付された適正な帳簿価額により計上する。 - (2) 増加すべき株主資本の会計処理
移転事業に係る評価・換算差額等(第87項(1)②参照)(親会社が作成する連結財務諸表において投資と資本の消去の対象とされたものを除く。)を引き継ぐとともに、移転事業に係る株主資本相当額(第87項(1)①参照)は払込資本(資本金又は資本剰余金)として処理する。増加すべき払込資本の内訳項目(資本金、資本準備金又はその他資本剰余金)は、会社法の規定に基づき決定する(第409項参照)。
なお、移転事業に係る株主資本相当額がマイナスとなる場合には、払込資本をゼロとし、その他利益剰余金のマイナスとして処理する(第445項参照)。 - (3) 企業結合(会社分割)に要した支出額の会計処理
企業結合(会社分割)に要した支出額は、発生時の事業年度の費用として会計処理する。
(親会社が子会社から受け入れる資産及び負債の修正処理)
- 215. 親会社が子会社(吸収分割会社)から受け入れる資産及び負債は、原則として適正な帳簿価額により計上することになるが(第214項(1)参照)、親会社が作成する連結財務諸表において、当該移転事業に係る資産及び負債の帳簿価額を修正しているときは、第207項及び第207-2項に準じて会計処理する。また、個別財務諸表上も、連結財務諸表上の金額である修正後の帳簿価額(のれんを含む。)により資産及び負債を受け入れる。
子会社(吸収分割会社)の会計処理
- 216. 子会社が受け入れる親会社株式の取得原価は、企業結合会計基準第43項により、移転事業に係る株主資本相当額に基づいて算定する。
具体的には、親会社が子会社に会社分割により事業を移転する場合の会計処理(会社分割の対価が子会社株式のみの場合)の親会社の会計処理(第226項参照)に準じて処理する。 - また、事業分離(会社分割)に要した支出額は、発生時の事業年度の費用として会計処理する。
(2)連結財務諸表上の会計処理
- 217. 連結財務諸表上の会計処理は、次のように行う(第442項参照)。[設例24]
- (1) 内部取引の消去
子会社が会社分割の対価として受け入れた親会社株式のうち、分割期日の前日における親会社持分相当額とこれに対応する親会社の払込資本の増加額は、企業結合会計基準第44項により、内部取引として消去する。 - (2) 親会社株式のうち非支配株主持分相当額の振替処理
子会社が受け入れた親会社株式のうち、分割期日の前日における非支配株主持分相当額は、自己株式等会計基準第15項に従い非支配株主持分から控除する。
8.子会社が親会社に分割型の会社分割により事業を移転する場合の会計処理
(1)個別財務諸表上の会計処理
親会社(吸収分割承継会社)の会計処理
- 218.親会社の個別財務諸表上の会計処理は、次のように行う(第443項参照)。[設例25]
- (1) 資産及び負債の会計処理
親会社が子会社から受け入れる資産及び負債は、企業結合会計基準第41項により、分割期日の前日に付された適正な帳簿価額により計上する。 - (2) 増加すべき株主資本の会計処理
親会社は、子会社から受け入れた資産と負債との差額を第206項に準じて会計処理する(第448項参照)。この場合、同項(2)①アの「子会社株式の適正な帳簿価額」は親会社が会社分割直前に保有していた子会社株式(分割に係る抱合せ株式)の適正な帳簿価額のうち、受け入れた資産及び負債と引き換えられたものとみなされる額(次項参照)と読み替える。
なお、当該組織再編において、親会社は、子会社に対して新株を発行(又は自己株式を処分)すると同時に、子会社から当該株式を配当として受け取ることとなるため、親会社は発行した新株(又は処分した自己株式)を自己株式として保有することになる。会計上、親会社による新株の発行(又は自己株式の処分)と当該自己株式の取得は一体の取引とみて、親会社が受け入れた自己株式の帳簿価額はゼロとする(自己株式を処分した場合には、当該自己株式に対応する適正な帳簿価額を付す。)。 - (3) 中間子会社に対価の支払を行う場合の取扱い
(2)において、対価を中間子会社に交付する場合には、第206項(3)に準じて処理する。 - (4) 孫会社が子会社に分割型の会社分割により事業を移転する場合(子会社が吸収分割承継会社となる場合)
(1)から(3)(ただし、第206項(2)①イ(非支配株主持分相当額の会計処理)を除く。)は、子会社を吸収分割承継会社としたその子会社(孫会社)からの分割型の会社分割についても、同様に適用する。
この場合、子会社が、孫会社株式を非支配株主から追加取得する取引等については、第206項(2)①イの非支配株主持分相当額は、(3)の中間子会社持分相当額に準じて処理する。
(分割に係る抱合せ株式の適正な帳簿価額のうち、受け入れた資産及び負債と引き換えられたものとみなされる額の算定)
- 219. 分割に係る抱合せ株式の適正な帳簿価額のうち、受け入れた資産及び負債と引き換えられたものとみなされる額は、次のいずれかの方法のうち合理的と認められる方法により算定する(第443項参照)。
- (1) 関連する時価の比率で按分する方法
分割された移転事業に係る株主資本相当額(第87項(1)①参照)の時価と会社分割直前の子会社の株主資本の時価との比率により、子会社の株式の適正な帳簿価額を按分する。 - (2) 時価総額の比率で按分する方法
会社分割直前直後の子会社の時価総額の差額を分割された事業の時価とみなし、会社分割直前の子会社の時価総額との比率により、子会社の株式の適正な帳簿価額を按分する。 - (3) 関連する帳簿価額(連結財務諸表上の帳簿価額を含む。)の比率で按分する方法
分割された移転事業に係る株主資本相当額の適正な帳簿価額と会社分割直前の子会社の株主資本の適正な帳簿価額との比率により、子会社の株式の適正な帳簿価額を按分する。
(親会社が子会社から受け入れる資産及び負債の修正処理)
- 220. 親会社が子会社から会社分割により受け入れる資産及び負債は、原則として適正な帳簿価額により計上することになるが(第218項参照)、親会社が作成する連結財務諸表において、当該子会社の資産及び負債の帳簿価額を修正しているときは、第207項及び第207-2項に準じて会計処理する。また、個別財務諸表上も、連結財務諸表上の金額である修正後の帳簿価額(のれんを含む。)により資産及び負債を受け入れる。
子会社(吸収分割会社)の会計処理
- 221. 事業分離等会計基準第63項により、分割型の会社分割は、会社分割(従来は物的分割ともいわれた分社型の会社分割をいう。)と、これにより受け取った吸収分割承継会社の株式の分配という2つの取引と考えられている。このため、次のように会計処理する。[設例25]
- (1) 会社分割の会計処理
吸収分割会社である子会社は、最初に第226項に準じた会計処理を行う。 - (2) 現物配当の会計処理(株主に比例的に割当を行う場合)
次に子会社は、受け取った親会社株式(吸収分割承継会社の株式)の取得原価により株主資本を減少させる。減少させる株主資本の内訳は、取締役会等の企業の意思決定機関において定められた結果に従う(企業会計基準適用指針第2号「自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準の適用指針」(以下「自己株式等会計適用指針」という。)第10項)。
(2)連結財務諸表上の会計処理
- 222. 親会社が減少させた子会社株式(分割に係る抱合せ株式)の適正な帳簿価額及び発生した抱合せ株式消滅差額(第218項(2)参照)は、企業結合会計基準第44項により、内部取引として消去する。[設例25]
9.親会社が子会社に事業譲渡により事業を移転する場合の会計処理
(事業譲渡の対価が現金等の財産のみの場合)
(1)個別財務諸表上の会計処理
親会社(事業譲渡会社)の会計処理
- 223. 事業譲渡会社である親会社は、事業分離等会計基準第14項により、子会社から受け取った現金等の財産(第95項参照)を移転前に付された適正な帳簿価額により計上し、当該価額と移転事業に係る株主資本相当額(第87項(1)①参照)との差額は、原則として、移転損益として認識する。[設例26-1]
当該取扱いは、移転事業に係る株主資本相当額がマイナスとなる場合も同様である。 - また、当該企業結合(事業分離)に要した支出額は、発生時の事業年度の費用として会計処理する。
子会社(事業譲受会社)の会計処理
- 224. 事業譲受会社である子会社の個別財務諸表上の会計処理は、次のように行う。
- (1) 受け入れた資産及び負債の会計処理
子会社が親会社から受け入れる資産及び負債は、企業結合会計基準第41項により、親会社における移転した事業に係る資産及び負債の移転直前の適正な帳簿価額により計上する。
また、移転事業に係る株主資本相当額と交付した現金等の財産の適正な帳簿価額との差額は、のれん(又は負ののれん)として処理する。のれん(又は負ののれん)は、第72項及び第76項並びに第78項及び資本連結実務指針第40項に準じて会計処理する(第448項参照)。[設例26-1]
なお、移転事業に係る株主資本相当額がマイナスとなる場合にも同様に処理する。 - (2) 増加すべき株主資本の会計処理
株式を交付していないため、株主資本の額は増加しない。
なお、移転事業に係る評価・換算差額等(第87項(1)②参照)は、対価が現金等の財産のみの場合においても、引き継ぐことになる。 - (3) 企業結合(事業譲受)に要した支出額の会計処理
企業結合(事業譲受)に要した支出額は、発生時の事業年度の費用として会計処理する。
(2)連結財務諸表上の会計処理
- 225. 親会社の個別財務諸表上認識された移転損益は、親会社の連結財務諸表上、連結会計基準における未実現損益の消去に準じて処理する。[設例26-1]
10.親会社が子会社に会社分割により事業を移転する場合の会計処理
(会社分割の対価が子会社株式のみの場合)
(1)個別財務諸表上の会計処理
親会社(吸収分割会社)の会計処理
- 226. 親会社が会社分割により追加取得する子会社株式の取得原価は、企業結合会計基準第43項及び事業分離等会計基準第19項(1)により、移転事業に係る株主資本相当額(第87項(1)①参照)に基づいて算定する。したがって、当該会社分割により移転損益は生じない(第444項参照)。[設例26-2] 子会社株式の取得原価の算定にあたっては、移転事業に係る株主資本相当額から移転事業に係る繰延税金資産及び繰延税金負債を控除する(第108項(2)参照)ことに留意する必要がある。
なお、移転事業に係る株主資本相当額がマイナスの場合には、まず、事業分離前から保有している子会社株式の帳簿価額を充て、これを超えることとなったマイナスの金額を「組織再編により生じた株式の特別勘定」等、適切な科目をもって負債に計上する。 - また、当該企業結合(会社分割)に要した支出額は、発生時の事業年度の費用として会計処理する。
子会社(吸収分割承継会社)の会計処理
- 227. 子会社の個別財務諸表上の会計処理は次のように行う。[設例26-2]
- (1) 受け入れた資産及び負債の会計処理
子会社が親会社から受け入れる資産及び負債は、企業結合会計基準第41項により、分割期日の前日に付された適正な帳簿価額により計上する。 - (2) 増加すべき株主資本の会計処理
移転事業に係る評価・換算差額等(第87項(1)②参照)を引き継ぐとともに、移転事業に係る株主資本相当額は、払込資本(資本金又は資本剰余金)として処理する。増加すべき払込資本の内訳項目(資本金、資本準備金又はその他資本剰余金)は、会社法の規定に基づき決定する(第409項参照)。
なお、移転事業に係る株主資本相当額がマイナスとなる場合には、払込資本をゼロとし、その他利益剰余金のマイナスとして処理する(第445項参照)。 - (3) 企業結合(会社分割)に要した支出額の会計処理
企業結合(会社分割)に要した支出額は、発生時の事業年度の費用として会計処理する。
(子会社が親会社から受け入れる資産及び負債の修正処理)
- 228. 子会社(吸収分割承継会社)が親会社(吸収分割会社)から会社分割により事業を受け入れる場合には、子会社が親会社を吸収合併する場合の子会社が親会社から受け入れる資産及び負債の修正処理(第211項参照)に準じて処理する。
(2)連結財務諸表上の会計処理
- 229. 親会社の連結財務諸表上の会計処理は次のように行う。[設例26-2]
- (1) 内部取引の消去
事業の移転取引及び子会社の増資に関する取引は、企業結合会計基準第44項により、内部取引として消去する。 - (2) 親会社の持分変動による差額の計上
親会社は、事業分離等会計基準第19項(2)により、会社分割により追加取得した子会社に係る親会社の持分の増加額(追加取得持分)と移転した事業に係る親会社の持分の減少額との差額を、資本剰余金に計上する。
11.親会社が子会社に会社分割により事業を移転する場合の会計処理
(会社分割の対価が子会社株式と現金等の財産の場合)
(1)個別財務諸表上の会計処理
親会社(吸収分割会社)の会計処理
- 230. 親会社が子会社に事業を移転し、受取対価に子会社株式のほか、現金等の財産(第95項参照)が含まれている場合には、次のように処理する(事業分離等会計基準第24項)。 [設例26-3] [設例26-4]
- (1) 移転事業に係る株主資本相当額(第87項(1)①参照)がプラスの場合
- ① 受け取った現金等の財産の適正な帳簿価額が移転事業に係る株主資本相当額より小さい場合
当該差額を子会社株式の取得原価とする。 - ② 受け取った現金等の財産の適正な帳簿価額が移転事業に係る株主資本相当額より大きい場合
当該差額を移転利益に計上する。 - (2) 移転事業に係る株主資本相当額がマイナスの場合
現金等の財産の適正な帳簿価額と等しい金額については移転利益に計上し、マイナスとなる移転事業に係る株主資本相当額については、まず、事業分離前から保有している子会社株式の適正な帳簿価額を充て、これを超えることとなったマイナスの金額を「組織再編により生じた株式の特別勘定」等、適切な科目をもって負債に計上する。
子会社(吸収分割承継会社)の会計処理
- 231. 親会社が子会社に事業を移転し、子会社が、支払対価として、自社の株式の他に現金等の財産を交付した場合、当該子会社の個別財務諸表上の会計処理は、次のように行う。[設例26-3][設例26-4]
- (1) 受け入れた資産及び負債の会計処理
子会社が親会社から受け入れる資産及び負債は、企業結合会計基準第41項により、移転直前に付された適正な帳簿価額により計上する。 - (2) 増加すべき株主資本の会計処理
移転事業に係る評価・換算差額等(第87項(1)②参照)については、親会社の移転直前の適正な帳簿価額を引き継いだうえで、次のように会計処理する。 - ① 移転事業に係る株主資本相当額が交付した現金等の財産の適正な帳簿価額より大きい場合
当該差額を払込資本の増加として処理する。増加すべき払込資本の内訳項目(資本金、資本準備金又はその他資本剰余金)は、会社法の規定に基づき決定する。 - ② 移転事業に係る株主資本相当額が交付した現金等の財産の適正な帳簿価額より小さい場合
払込資本をゼロとし、当該差額をのれんに計上する。 - なお、移転事業に係る株主資本相当額がマイナスとなる場合には、払込資本をゼロとし、当該マイナス金額をその他利益剰余金のマイナスとして処理する。また、交付した現金等の財産の適正な帳簿価額と等しい金額をのれんに計上する。
のれんは、第72項及び第76項から第78項並びに資本連結実務指針第40項に準じて会計処理する(第448項参照)。 - (3) 企業結合(会社分割)に要した支出額の会計処理
企業結合(会社分割)に要した支出額は、発生時の事業年度の費用として会計処理する。
(2)連結財務諸表上の会計処理
- 232. 個別財務諸表上認識された移転利益は、連結会計基準における未実現損益の消去に準じて処理する。また、子会社に係る分離元企業の持分の増加額と、移転した事業に係る分離元企業の持分の減少額との間に生じる差額は、第229項に準じ、資本剰余金に計上する。[設例26-3][設例26-4]
12.親会社が子会社に分割型の会社分割により事業を移転する場合の会計処理
(1)個別財務諸表上の会計処理
親会社(吸収分割会社)の会計処理
- 233. 事業分離等会計基準第63項により、分割型の会社分割は、会社分割(従来は物的分割ともいわれた分社型の会社分割をいう。)と、これにより受け取った吸収分割承継会社の株式の分配という2つの取引と考えられている。このため、次のように会計処理する。
- (1) 会社分割の会計処理
吸収分割会社である親会社は、最初に第226項に準じた会計処理を行う。 - (2) 現物配当の会計処理(株主に比例的に割当を行う場合)
次に親会社は、受け取った子会社株式(吸収分割承継会社の株式)の取得原価により株主資本を変動させる。変動させる株主資本の内訳は、取締役会等の会社の意思決定機関において定められた額(自己株式等会計適用指針第10項、株主資本の内訳の配分については第446項参照)とする。
子会社(吸収分割承継会社)の会計処理
- 234. 吸収分割承継会社である子会社は、個別財務諸表上、次の処理を行う。
- (1) 資産及び負債の会計処理
子会社が親会社から受け入れる資産及び負債は、企業結合会計基準第41項により、分割期日の前日に付された適正な帳簿価額により計上する。 - (2) 増加すべき株主資本の会計処理
子会社における増加すべき株主資本は、親会社が子会社に会社分割により事業を移転する場合の会計処理(会社分割の対価が子会社株式のみの場合)における子会社の会計処理(第227項及び第228項参照)に準じて会計処理する(第445項参照)。
ただし、受け入れた資産及び負債の対価として子会社の株式のみを交付している場合には、親会社で計上されていた株主資本の内訳を適切に配分した額をもって計上することができる(第446項参照)。この場合、株主資本の内訳の配分額は、親会社が減少させた株主資本の内訳の額と一致させる(第409項参照)。 - (3) 企業結合(会社分割)に要した支出額の会計処理
企業結合(会社分割)に要した支出額は、発生時の事業年度の費用として処理する。
(2)連結財務諸表上の会計処理
- 235. 子会社が親会社から受け入れた事業の対価として親会社の株主に子会社株式を交付したことにより減少する親会社持分の金額は、連結財務諸表上の帳簿価額により非支配株主持分に振り替えることとする。
13.親会社が子会社を株式交換完全子会社とする場合の会計処理
(1)個別財務諸表上の会計処理
親会社(株式交換完全親会社)の会計処理
- 236. 親会社の個別財務諸表上の会計処理は次のように行う。[設例27]
- (1) 株式交換完全子会社株式の取得原価の算定
親会社が追加取得する株式交換完全子会社株式の取得原価は、企業結合会計基準 (注11)により、取得の対価(非支配株主に交付した株式交換完全親会社株式の時価)に付随費用を加算して算定する。付随費用の取扱いについては、金融商品会計実務指針に従う。 - (2) 株式交換完全親会社の増加すべき株主資本の会計処理
株式交換により増加する株式交換完全親会社の資本は、払込資本(資本金又は資本剰余金)として処理する。増加すべき払込資本の内訳項目(資本金、資本準備金又はその他資本剰余金)は、会社法の規定に基づき決定する。
親会社(株式交換完全親会社)が新株予約権付社債を承継する場合等の取扱い
(親会社(株式交換完全親会社)の会計処理)
- 236-2. 株式交換に際して、親会社が子会社の新株予約権者に新株予約権を交付する場合、又は親会社が新株予約権付社債を承継する場合には、親会社は、株式交換完全子会社等で認識された新株予約権の消滅に伴う利益又は新株予約権付社債の承継に伴う利益の額(税効果調整後)を加算して子会社株式の取得原価を算定する。また、親会社は株式交換日の前日に子会社で付されていた適正な帳簿価額による新株予約権又は新株予約権付社債の額を純資産の部又は負債の部に計上する(第404-2項参照)。
(子会社(株式交換完全子会社)の会計処理)
- 236-3. 親会社が子会社の新株予約権者に新株予約権を交付する場合、又は親会社が新株予約権付社債を承継する場合には、子会社は、株式交換日の前日に株式交換完全子会社で付していた適正な帳簿価額による新株予約権又は新株予約権付社債の額を利益に計上する(第404-2項参照)。
中間子会社に対価を支払う場合の取扱い
- 236-4. 株式交換に際して、親会社(株式交換完全親会社)が、株式交換完全子会社以外の子会社(中間子会社)に対価を支払う場合、親会社が中間子会社から追加取得する株式交換完全子会社株式の取得原価は、株式交換完全子会社の株式交換日の前日の適正な帳簿価額による株主資本の額に、株式交換日の前日の持分比率を乗じた中間子会社持分相当額により算定する。また、その額を払込資本として処理する。
中間子会社が、株式交換完全子会社株式と引き換えに受け入れた親会社株式の取得原価は、当該株式交換完全子会社株式の適正な帳簿価額により算定する。
子会社が孫会社を株式交換完全子会社とする場合の取扱い
- 236-5. 子会社がその子会社(孫会社)を株式交換完全子会社とする場合、子会社が追加取得する株式交換完全子会社株式(孫会社株式)の取得原価は、前項の中間子会社に対価を支払う場合における中間子会社持分相当額に準じて算定する。また、その額を払込資本として処理する。
(2)連結財務諸表上の会計処理
子会社株式の追加取得の会計処理(投資と資本の消去)
- 237. 追加取得した子会社株式の取得原価と追加取得により増加する親会社の持分(追加取得持分)又は減少する非支配株主持分の金額との差額は資本剰余金に計上する。[設例27]
株式交換日が子会社の決算日以外の日である場合の取扱い
- 238. 株式交換日が子会社の決算日以外の日である場合には、当該株式交換日の前後いずれかの決算日(みなし取得日)に株式交換が行われたものとみなして処理することができる(連結会計基準(注5))。この場合、第38項の企業結合日をみなし取得日と読み替える。ただし、みなし取得日は、主要条件が合意されて公表された日以降としなければならない。
(3)株式交換直前に子会社(株式交換完全子会社)が自己株式を保有している場合の取扱い
親会社(株式交換完全親会社)の会計処理
- 238-2. 株式交換直前に子会社が自己株式を保有しており、株式交換日において、親会社が当該自己株式(子会社株式)の取得と引き換えに子会社に対して自社の株式(親会社株式)を交付した場合の親会社の会計処理は、第236項に準じて処理するものとする。
なお、連結財務諸表上は、最初に第237項に従い会計処理し、次に、第238-3項に従い算定された株式交換完全子会社が保有する親会社株式の取得原価を自己株式に振り替える(第447-3項参照)。
子会社(株式交換完全子会社)の会計処理
- 238-3. 自己株式と引き換えに受け入れた親会社株式の取得原価は、親会社が付した子会社株式の取得原価を基礎として算定する。また、親会社株式の取得原価と自己株式の帳簿価額との差額は、自己株式処分差額としてその他資本剰余金に計上する(第447-3項参照)。
14.親会社と子会社が株式移転設立完全親会社を設立する場合の会計処理
(1)個別財務諸表上の会計処理
親会社(株式移転設立完全親会社)の会計処理
- 239. 株式移転設立完全親会社の個別財務諸表上の会計処理は次のように行う。[設例28]
- (1) 株式移転完全子会社株式の取得原価の算定
株式移転設立完全親会社が受け入れた株式移転完全子会社の株式(旧親会社の株式と旧子会社の株式)の取得原価は、それぞれ次のように算定する。 - ① 株式移転完全子会社株式(旧親会社の株式)
- ア 原則的な取扱い
株式移転完全子会社株式(旧親会社の株式)の取得原価は、株式移転完全子会社(旧親会社)の株式移転日の前日における適正な帳簿価額による株主資本の額に基づいて算定する。 - イ 簡便的な取扱い
株式移転完全子会社(旧親会社)の株式移転日の前日における適正な帳簿価額による株主資本の額と、直前の決算日において算定された当該金額との間に重要な差異がないと認められる場合には、株式移転設立完全親会社が受け入れる子会社株式(旧親会社の株式)の取得原価は、第121項(1)②と同様に、株式移転完全子会社(旧親会社)の直前の決算日に算定された適正な帳簿価額による株主資本の額により算定することができる(第404-3項参照)。 - ② 株式移転完全子会社株式(旧子会社の株式)
株式移転完全子会社株式(旧子会社の株式)の取得原価は、株式移転完全子会社(旧子会社)の株式移転日の前日における持分比率に基づき、旧親会社持分相当額と非支配株主持分相当額に区分し、次の合計額として算定する。 - ア 旧親会社持分相当額については、株式移転完全子会社(旧子会社)の株式移転日の前日における適正な帳簿価額による株主資本の額に基づいて算定する。
- イ 非支配株主持分相当額については、企業結合会計基準第45項により、取得の対価(旧子会社の非支配株主に交付した株式移転設立完全親会社の株式の時価相当額)に付随費用を加算して算定する。付随費用の取扱いについては金融商品会計実務指針に従う。株式移転設立完全親会社の株式の時価相当額は、株式移転完全子会社(旧子会社)の株主が株式移転設立完全親会社に対する実際の議決権比率と同じ比率を保有するのに必要な株式移転完全子会社(旧親会社)の株式の数を、株式移転完全子会社(旧親会社)が交付したものとみなして算定する。
- なお、株式移転設立完全親会社は、受け入れた株式移転完全子会社(旧子会社)以外の子会社(中間子会社)が有していた株式移転完全子会社株式(旧子会社の株式)の取得原価についても、旧親会社持分相当額(②ア参照)に準じて算定することとなる。
- (2) 株式移転設立完全親会社の増加すべき株主資本の会計処理
株式移転設立完全親会社の増加すべき株主資本は、払込資本(資本金又は資本剰余金)として処理する。増加すべき払込資本の内訳項目(資本金、資本準備金又はその他資本剰余金)は、会社法の規定に基づき決定する。
親会社(株式移転設立完全親会社)が新株予約権付社債を承継する場合等の取扱い
(親会社(株式移転設立完全親会社)の会計処理)
- 239-2. 株式移転に際して、株式移転設立完全親会社が株式移転完全子会社(旧親会社又は旧子会社)の新株予約権者に新株予約権を交付する場合、又は株式移転設立完全親会社が新株予約権付社債を承継する場合には、株式移転設立完全親会社は、株式移転完全子会社の株式(旧親会社の株式と旧子会社の株式)の取得原価を次のように算定する(第404-2項参照)。
- (1) 株式移転完全子会社株式(旧親会社の株式)
- ① 原則的な取扱い(第239項(1)①ア参照)
株式移転完全子会社(旧親会社)の適正な帳簿価額による株主資本の額に、株式移転完全子会社(旧親会社)で認識された新株予約権の消滅に伴う利益又は新株予約権付社債の承継に伴う利益の額(税効果調整後)を加算して子会社株式(旧親会社の株式)の取得原価を算定する。また、株式移転設立完全親会社は、株式移転日の前日の株式移転完全子会社で付されていた適正な帳簿価額による新株予約権又は新株予約権付社債の額を純資産の部又は負債の部に計上する。 - ② 簡便的な取扱い(第239項(1)①イ参照)
前項(1)①イにより子会社株式(旧親会社の株式)の取得原価を算定する場合であっても、株式移転完全子会社(旧親会社)で認識された新株予約権の消滅に伴う利益又は新株予約権付社債の承継に伴う利益の額(税効果調整後)を、株式移転完全子会社(旧親会社)の直前の決算日に算定された適正な帳簿価額による株主資本の額に加算する。 - (2) 株式移転完全子会社株式(旧子会社の株式)
株式移転設立完全親会社は、株式移転日の前日に株式移転完全子会社(旧子会社)が付していた適正な帳簿価額による新株予約権又は新株予約権付社債の額を子会社株式(旧子会社の株式)の取得原価に加算する。また、株式移転設立完全親会社は、株式移転完全子会社(旧子会社)の株式移転日の前日の適正な帳簿価額による新株予約権又は新株予約権付社債の額を純資産の部又は負債の部に計上する。
(子会社(株式移転完全子会社)の会計処理)
- 239-3. 株式移転に際して、株式移転設立完全親会社が株式移転完全子会社(旧親会社又は旧子会社)の新株予約権者に新株予約権を交付する場合、又は株式移転設立完全親会社が新株予約権付社債を承継する場合には、株式移転完全子会社(旧親会社又は旧子会社)は株式移転日の前日に付していた適正な帳簿価額による新株予約権又は新株予約権付社債の額を利益に計上する(第404-2項参照)。
子会社(旧親会社である株式移転完全子会社)の会計処理
- 239-4. 株式移転に際して、株式移転完全子会社(旧親会社)が、株式移転完全子会社(旧子会社)の株式と引き換えに受け入れた株式移転設立完全親会社株式の取得原価は、株式移転完全子会社(旧子会社)株式の株式移転直前の適正な帳簿価額により計上する。[設例28]
(2)連結財務諸表上の会計処理
- 240. 連結財務諸表上の会計処理は、次のように行う。なお、取得関連費用については費用として処理する。[設例28]
- (1) 投資と資本の消去
- ① 株式移転完全子会社(旧親会社)への投資
株式移転完全子会社(旧親会社)の株式の取得原価と株式移転完全子会社(旧親会社)の株主資本を相殺する。 - ② 株式移転完全子会社(旧子会社)への投資
企業結合会計基準第46項により、株式移転完全子会社(旧子会社)の株式の取得原価と株式移転完全子会社(旧子会社)の株主資本を相殺し、消去差額は資本剰余金に計上する。
なお、追加取得持分は、企業結合会計基準第46項並びに連結会計基準第28項及び同(注8)に従って算定する。 - (2) 連結上の自己株式への振替
株式移転完全子会社(旧親会社)が株式移転完全子会社(旧子会社)の株式との交換により受け入れた株式移転設立完全親会社株式は、連結財務諸表上、自己株式に振り替える。 - (3) 株主資本項目の調整
株式移転設立完全親会社の株主資本の額は、株式移転直前の連結財務諸表上の株主資本項目に非支配株主との取引により増加した払込資本の額を加算する。
株式移転日が子会社の決算日以外の日である場合の取扱い
- 241. 第238項(株式交換におけるみなし取得日)と同様に取り扱うこととする。
(3)株式移転直前に子会社(株式移転完全子会社)が自己株式を保有している場合の取扱い
親会社(株式移転設立完全親会社)の会計処理
- 241-2. 株式移転直前に子会社が自己株式を保有している場合の親会社の会計処理は、株式交換直前に子会社が自己株式を保有している場合の親会社の会計処理(第238-2項参照)に準じて処理する。
子会社(株式移転完全子会社)の会計処理
- 241-3. 株式移転直前に子会社が自己株式を保有している場合の子会社の会計処理は、株式交換直前に子会社が自己株式を保有している場合の子会社の会計処理(第238-3項参照)に準じて処理する。
15.同一の株主(企業)により支配されている子会社同士の合併の会計処理(合併対価が現金等の財産のみである場合)
(1)個別財務諸表上の会計処理
吸収合併消滅会社の会計処理
- 242. 吸収合併消滅会社である子会社は、合併期日の前日に決算を行い、資産及び負債の適正な帳簿価額を算定する(企業結合会計基準第41項)。[設例29-1]
吸収合併存続会社の会計処理
- 243. 吸収合併存続会社である子会社は、次の処理を行う。
- (1) 受け入れた資産及び負債の会計処理
吸収合併存続会社である子会社が吸収合併消滅会社である子会社から受け入れる資産及び負債は、企業結合会計基準第41項により、合併期日の前日に付された適正な帳簿価額により計上し、吸収合併消滅会社の株主資本の額と取得の対価として支払った現金等の財産(第95項参照)(いわゆる三角合併のように子会社が親会社株式を対価として他の子会社と吸収合併を行う場合における親会社株式を含む。以下、本項において同じ。)の適正な帳簿価額との差額を、のれん(又は負ののれん)として計上する。のれん(又は負ののれん)は、第72項及び第76項から第78項並びに資本連結実務指針第40項に準じて会計処理する(第448項参照)。[設例29-1] - (2) 増加すべき株主資本の会計処理
株式を交付していないため、株主資本の額は増加しない。なお、吸収合併消滅会社の評価・換算差額等は、対価が現金等の財産のみの場合においても、引き継ぐことになる。 - (3) 企業結合に要した支出額の会計処理
企業結合に要した支出額は、発生時の事業年度の費用として会計処理する。
結合当事企業の株主(親会社)に係る会計処理
- 244. 事業分離等会計基準第35項により、吸収合併消滅会社の株主(親会社)が受け取った現金等の財産は、移転前に付された適正な帳簿価額により計上する。この結果、当該価額と引き換えられた吸収合併消滅会社の株式の適正な帳簿価額との差額は、原則として、交換損益として認識する。[設例29-1]
- ただし、いわゆる三角合併のように子会社が親会社株式を対価として他の子会社と吸収合併を行う場合において、吸収合併消滅会社の株主(親会社)が自己株式を受け入れる場合は、引き換えられた吸収合併消滅会社の株式の適正な帳簿価額により算定する(自己株式等会計適用指針第7項)。
(2)連結財務諸表上の会計処理
- 245. 吸収合併消滅会社の株主(親会社)の個別財務諸表上認識された交換損益は、親会社の連結財務諸表上、連結会計基準における未実現損益の消去に準じて処理する。[設例29-1]
- なお、いわゆる三角合併のように子会社が親会社株式を対価として他の子会社と吸収合併を行う場合は、企業集団からみると、親会社が合併の対価として自己株式を処分する取引と同様に考えることができるため、連結財務諸表上、非支配株主に交付した自己株式の適正な帳簿価額と追加取得持分又は減少する非支配株主持分との差額を資本剰余金に計上する。
16.同一の株主(企業)により支配されている子会社同士の合併の会計処理(合併対価が吸収合併存続会社の株式のみである場合)
(1)個別財務諸表上の会計処理
吸収合併消滅会社の会計処理
- 246. 吸収合併消滅会社である子会社は、合併期日の前日に決算を行い、資産及び負債の適正な帳簿価額を算定する(企業結合会計基準第41項)。[設例29-2]
吸収合併存続会社の会計処理
- 247. 吸収合併存続会社である子会社は、次の処理を行う。[設例29-2]
- (1) 受け入れた資産及び負債の会計処理
吸収合併存続会社である子会社が吸収合併消滅会社である子会社から受け入れる資産及び負債は、企業結合会計基準第41項により、合併期日の前日に付された適正な帳簿価額により計上する。 - (2) 増加すべき株主資本の会計処理
合併が共同支配企業の形成と判定された場合の吸収合併存続会社の会計処理(第185 項参照)に準じて処理する(第408項参照)。 - (3) 抱合せ株式の会計処理
吸収合併存続会社である子会社が吸収合併消滅会社である子会社の株式(関連会社株式又はその他有価証券)を保有している場合で、新株を発行したときの吸収合併存続会社の増加すべき株主資本の会計処理は、次のいずれかの方法による。 - ① 吸収合併消滅会社の株主資本の額から当該抱合せ株式の適正な帳簿価額を控除した額を払込資本の増加(当該差額がマイナスの場合にはその他利益剰余金の減少)として処理する。
- ② 吸収合併消滅会社の株主資本を引き継いだ上で、当該抱合せ株式の適正な帳簿価額をその他資本剰余金から控除する。
- (4) 企業結合に要した支出額の会計処理
企業結合に要した支出額は、発生時の事業年度の費用として会計処理する。
結合当事企業の株主(親会社)に係る会計処理
- 248. 事業分離等会計基準第38項及び第39項により、交換損益は認識されず、吸収合併消滅会社の株主(親会社)が受け取った吸収合併存続会社の株式(子会社株式)の取得原価は、引き換えられた吸収合併消滅会社の株式(子会社株式)に係る企業結合日直前の適正な帳簿価額に基づいて計上する。[設例29-2]
(2)連結財務諸表上の会計処理
- 249. 事業分離等会計基準第38項及び第39項により、吸収合併消滅会社の株主(親会社)は、連結財務諸表上、吸収合併存続会社に係る当該株主(親会社)の持分の増加額(吸収合併消滅会社の株主としての持分比率が増加する場合は、吸収合併消滅会社に係る当該株主(親会社)の持分の増加額)と吸収合併消滅会社に係る株主(親会社)の持分の減少額(吸収合併存続会社の株主としての持分比率が減少する場合は、吸収合併存続会社に係る当該株主(親会社)の持分の減少額)との間に生じる差額を、資本剰余金に計上する。[設例29-2]
17.同一の株主(企業)により支配されている子会社同士の合併の会計処理(合併対価が吸収合併存続会社の株式と現金等の財産である場合)
(1)個別財務諸表上の会計処理
吸収合併消滅会社の会計処理
- 250. 吸収合併消滅会社である子会社は、合併期日の前日に決算を行い、資産及び負債の適正な帳簿価額を算定する(企業結合会計基準第41項)。 [設例29-3] [設例29-4]
吸収合併存続会社の会計処理
- 251. 吸収合併存続会社である子会社は、次の処理を行う。[設例29-3] [設例29-4]
- (1) 受け入れた資産及び負債の会計処理
吸収合併存続会社である子会社が吸収合併消滅会社である他の子会社から受け入れる資産及び負債は、企業結合会計基準第41項により、移転前に付された適正な帳簿価額により計上する。 - (2) 増加すべき株主資本の会計処理
企業結合会計基準第42項により、次のように会計処理する。 - ① 吸収合併消滅会社の株主資本の額がプラスの場合
吸収合併消滅会社の適正な帳簿価額による株主資本の額から、合併の対価として支払った現金等の財産(第95項参照)(いわゆる三角合併のように子会社が親会社株式を対価として他の子会社と吸収合併を行う場合における親会社株式を含む。以下、本項において同じ。)の移転前に付された適正な帳簿価額(支払った現金等の財産に係る評価・換算差額等又は新株予約権が含まれている場合には、当該金額を控除する。)を控除した額がプラスとなる場合には、当該差額を払込資本とする。
当該差額がマイナスとなる場合には、払込資本はゼロとし、のれんを計上する。
なお、のれん(又は負ののれん)は、第72項及び第76項から第78項並びに資本連結実務指針第40項に準じて会計処理する(第448項参照)。 - ② 吸収合併消滅会社の株主資本の額がマイナスの場合
合併の対価として支払った現金等の財産の移転前に付された適正な帳簿価額(支払った現金等の財産に係る評価・換算差額等又は新株予約権が含まれている場合には、当該適正な帳簿価額を控除する。)と等しい金額をのれんに計上する(第448項参照)。また、吸収合併存続会社の増加すべき株主資本については払込資本をゼロとし、その他利益剰余金のマイナスとして処理する。 - なお、いずれの場合においても、評価・換算差額及び新株予約権の適正な帳簿価額は、吸収合併存続会社にそのまま引き継ぐ。
- (3) 企業結合に要した支出額の会計処理
企業結合に要した支出額は、発生時の事業年度の費用として会計処理する。
結合当事企業の株主(親会社)に係る会計処理
- 252. 事業分離等会計基準第45項により、吸収合併消滅会社の株主(親会社)が吸収合併存続会社から受け取った現金等の財産は、原則として、移転前に付された適正な帳簿価額により計上する。この結果、当該価額が吸収合併消滅会社の株式に係る適正な帳簿価額を上回る場合には、原則として、当該差額を交換利益として認識(受け入れる吸収合併存続会社の株式の取得原価はゼロとする。)し、下回る場合には、当該差額を受け入れる吸収合併存続会社の株式の取得原価とする。 [設例29-3] [設例29-4]
- ただし、いわゆる三角合併のように、子会社が親会社株式と自社(吸収合併存続会社である子会社)の株式を対価として他の子会社と吸収合併を行う場合、吸収合併消滅会社の株主(親会社)が受け入れる自己株式の取得原価は、吸収合併消滅会社の株式の適正な帳簿価額のうち引き換えられた部分に相当する額により算定する。この結果、吸収合併消滅会社の株式に係る適正な帳簿価額から当該自己株式の取得原価を控除した額が、受け入れる吸収合併存続会社の株式の取得原価となる。
(2)連結財務諸表上の会計処理
- 253. 吸収合併消滅会社の株主(親会社)が個別財務諸表上認識した交換利益は、親会社の連結財務諸表上、連結会計基準における未実現損益の消去に準じて処理する。また、吸収合併存続会社に係る株主(親会社)の持分の増加額(吸収合併消滅会社の株主としての持分比率が増加する場合は、吸収合併消滅会社に係る当該株主(親会社)の持分の増加額)と吸収合併消滅会社に係る株主(親会社)の持分の減少額(吸収合併存続会社の株主としての持分比率が減少する場合は、吸収合併存続会社に係る当該株主(親会社)の持分の減少額)との間に生じる差額を、資本剰余金に計上する。[設例29-3] [設例29-4]
- なお、いわゆる三角合併のように、子会社が親会社株式と吸収合併存続会社である子会社の株式を対価として他の子会社と吸収合併を行う場合は、連結財務諸表上、親会社株式を対価とした部分について資本取引として扱う。
18.同一の株主(個人)により支配されている企業同士の吸収合併の会計処理
- 254. 第201項により、同一の株主により支配されている企業同士の吸収合併は、共通支配下の取引に該当するため、吸収合併存続会社は次のように処理する。[設例23]
- (1) 受け入れた資産及び負債の会計処理
吸収合併存続会社が吸収合併消滅会社から受け入れる資産及び負債は、企業結合会計基準第41項により、移転前に付された適正な帳簿価額により計上する。 - (2) 増加すべき株主資本の会計処理
合併が共同支配企業の形成と判定された場合の吸収合併存続会社の会計処理(第185 項参照)に準じて処理する(第408項参照)。ただし、合併の対価に当該子会社株式以外の財産が含まれるときは、第251項に準じて処理する。 - (3) 抱合せ株式の会計処理
吸収合併存続会社が吸収合併消滅会社の株式(関連会社株式又はその他有価証券)を保有している場合には、第247項(3)に準じて処理する。
18-2.子会社が他の子会社に会社分割により事業を移転する場合の会計処理
(1)個別財務諸表上の会計処理
吸収分割会社の会計処理
- 254-2. 吸収分割会社である子会社の会計処理は、親会社が子会社に会社分割により事業を移転する場合の親会社の会計処理(第226項参照)に準じて処理する(第447-2項参照)。[設例11-4]
吸収分割承継会社の会計処理
- 254-3. 吸収分割承継会社である他の子会社の会計処理は、親会社が子会社に会社分割により事業を移転する場合の子会社の会計処理(第227項及び第231項参照)に準じて処理する。[設例11-4]
(2)吸収分割会社である子会社の連結財務諸表上の会計処理
- 254-4. 吸収分割会社である子会社が連結財務諸表を作成する場合の会計処理は次のように行う。[設例11-4]
- (1) 吸収分割承継会社である他の子会社が吸収分割会社の子会社となる場合
- ① 内部取引の消去
事業の移転取引及び子会社の増資に関する取引は、企業結合会計基準第44項により、内部取引として消去する。 - ② 親会社の持分変動による差額の計上
吸収分割会社は、移転事業に係る株主資本相当額(第87項(1)①参照)に基づいて算定された取得した子会社株式の取得原価(第254-2項参照)と、これに対応する吸収分割承継会社の事業分離直後の資本(企業結合日における適正な帳簿価額による子会社となる吸収分割承継会社等の資本に事業分離により増加する吸収分割会社等の持分比率を乗じた額)との差額を、資本剰余金に計上する(第447-2項参照)。 - (2) 吸収分割承継会社である他の子会社が吸収分割会社の関連会社となる場合
吸収分割会社は、移転事業に係る株主資本相当額(第87項(1)①参照)に基づいて算定された受け入れた関連会社株式の取得原価(第254-2項参照)と、これに対応する吸収分割承継会社の事業分離直後の資本(企業結合日における適正な帳簿価額による関連会社となる吸収分割承継会社等の資本に事業分離により増加する吸収分割会社等の持分比率を乗じた額)との差額を、関連会社株式の持分変動差額として処理する。
19.子会社が他の子会社に分割型の会社分割により事業を移転する場合の会計処理
個別財務諸表上の会計処理
吸収分割会社の会計処理
- 255. 吸収分割会社である子会社の会計処理は、分割型の会社分割により親会社が子会社に事業を移転する場合の親会社の会計処理(第233項参照)に準じて処理する。
吸収分割承継会社の会計処理
- 256. 吸収分割承継会社である他の子会社の会計処理は、分割型の会社分割により親会社が子会社に事業を移転する場合の子会社の会計処理(第234項参照)に準じて処理する(第409項参照)。
吸収分割会社の株主(親会社)に係る会計処理
- 257. 事業分離等会計基準第49項及び第51項と同様に、吸収分割会社の株主(親会社)が受け取った吸収分割承継会社の株式は、受け取る吸収分割承継会社の株式と、これまで保有していた吸収分割会社株式とが実質的に引き換えられたものとみなし、被結合企業の株主に係る会計処理(第294項から第296項参照)に準じて処理する。
20.単独で株式移転設立完全親会社を設立した場合の会計処理
株式移転設立完全親会社の会計処理
個別財務諸表上の会計処理
- 258. 単独株式移転により株式移転設立完全親会社を設立した場合の株式移転設立完全親会社の個別財務諸表上の会計処理は、親会社と子会社が株式移転設立完全親会社を設立する場合の株式移転完全子会社株式(旧親会社の株式)の取得原価の算定(第239項(1)①参照)に準じて処理する。
連結財務諸表上の会計処理
- 259. 親会社と子会社が株式移転設立完全親会社を設立する場合の会計処理(第240項参照)に準じて処理する。
21.単独で新設分割設立子会社を設立した場合の会計処理
(1)個別財務諸表上の会計処理
親会社(新設分割会社)の会計処理
- 260. 単独新設分割により子会社を設立した場合の新設分割会社(親会社)の会計処理は、会社分割により親会社が子会社に事業を移転する場合の親会社(吸収分割会社)の会計処理(第226項参照)に準じて処理する。
子会社(新設分割設立会社)の会計処理
- 261. 単独新設分割により子会社を設立した場合の新設分割設立会社(子会社)の会計処理は、会社分割により親会社が子会社に事業を移転する場合の子会社(吸収分割承継会社)の会計処理(第227項参照)に準じて処理する(第409項参照)。
(2)連結財務諸表上の会計処理
- 262. 単独新設分割により子会社を設立した場合の新設分割会社(親会社)の連結財務諸表上、事業の移転取引及び子会社の増加すべき株主資本に関する取引は、企業結合会計基準第44項により、内部取引として消去する。
22.単独で分割型の会社分割が行われた場合の会計処理
(1)新設分割会社の個別財務諸表上の会計処理
- 263. 単独で分割型の会社分割が行われた場合の新設分割会社の会計処理は、分割型の会社分割により親会社が子会社に事業を移転する場合の親会社(吸収分割会社)の会計処理(第233項参照)に準じて処理する。
(2)新設分割設立会社の個別財務諸表上の会計処理
- 264. 単独で分割型の会社分割が行われた場合の新設分割設立会社の会計処理は、分割型の会社分割により親会社から子会社に事業を移転する場合の子会社(吸収分割承継会社)(第234項参照)に準じて処理する(第409項参照)。
Ⅶ.結合当事企業の株主に係る会計処理
1.被結合企業の株主に係る会計処理
(1)受取対価の時価
- 265. 交換損益を認識する場合の受取対価となる財の時価は、受取対価が現金以外の資産等の場合には、受取対価となる財の時価と引き換えた被結合企業の株式の時価のうち、より高い信頼性をもって測定可能な時価で算定する(事業分離等会計基準第33項)。
- 266. 市場価格のある結合企業の株式が受取対価とされる場合には、受取対価となる財の時価は、原則として、企業結合日の株価を基礎にして算定する。
- 267. 被結合企業の株主に係る会計処理上、結合企業の株式などの受取対価の時価又は移転した事業の時価の算定が必要な場合には、当該時価を算定する。
ただし、結合企業の株式などの受取対価又は引き換えられた被結合企業の株式のいずれについても、市場価格がないこと等により公正な評価額を合理的に算定することが困難と認められる場合には、次のいずれかを用いて算定された額を受取対価の額とすることができる。 - (1) 企業結合日の前日における結合企業の識別可能な資産及び負債の時価に基づく正味の評価額のうち受取対価相当額
- (2) 企業結合日の前日における被結合企業の識別可能な資産及び負債の時価に基づく正味の評価額のうち受取対価相当額
- この場合、識別可能な個々の資産及び負債の時価が、市場価格がないこと等により公正な評価額を合理的に算定することが困難と認められる場合には、該当する資産及び負債について、その適正な帳簿価額を用いることができる。
(2)受取対価が現金等の財産のみである場合の被結合企業の株主に係る会計処理
子会社を被結合企業とした企業結合の場合
- 268. ある子会社を被結合企業とし他の子会社を結合企業とする企業結合により、子会社株式である被結合企業の株式が、現金等の財産のみと引き換えられた場合には、共通支配下の取引として取り扱う(第244項及び第245項参照)。
- なお、被結合企業の株主に係る会計処理において、現金等の財産とは、引き換えられた被結合企業の株式と明らかに異なる資産が該当し、結合企業の株式は含まれない(この点については、事業分離等会計基準第32項(1)を参照のこと)。これには、結合企業の支払能力に左右されない資産や、結合企業の支払能力の影響を受けるものの、代金回収条件が明確かつ妥当であり、回収が確実と見込まれる資産が含まれる。ただし、合併比率等に端数があるために生じた交付金は現金等の財産に含めないこととする。また、利益配当の代替としての交付金の部分は、受取対価には含まれない。
- 269. 子会社を被結合企業とし子会社以外を結合企業とする企業結合により、子会社株式である被結合企業の株式が、現金等の財産のみと引き換えられた場合には、当該被結合企業の株主(親会社)に係る会計処理は、事業分離における分離元企業の会計処理に準じて、次の処理を行う(事業分離等会計基準第35項)。
- (1) 個別財務諸表上の会計処理
被結合企業の株主(親会社)が受け取った現金等の財産は、原則として、時価により計上し、引き換えられた被結合企業の株式の適正な帳簿価額との差額は、原則として、交換損益として認識する。
ただし、交換した株式に対する買戻しの条件などの被結合企業の株主の重要な継続的関与によって、交換した株式に係る成果の変動性を従来と同様に負っている場合には、交換損益を認識することはできないことに留意する必要がある(本適用指針において、交換損益を認識するとしている場合には、同様の留意が必要となる。)(事業分離等会計基準第32項及び第119項)。 - (2) 連結財務諸表上の会計処理
関連会社を結合企業とする場合には、子会社株式である被結合企業の株式が現金等の財産のみと引き換えられたことにより認識された交換損益は、持分法会計基準における未実現損益の消去に準じて処理する。
子会社以外を被結合企業とした企業結合の場合
- 270. 子会社以外を被結合企業とする企業結合により、被結合企業の株式が、現金等の財産のみと引き換えられた場合、被結合企業の株主は、次の処理を行う(事業分離等会計基準第36項及び第37項)。
- (1) 個別財務諸表上の会計処理
被結合企業の株主が受け取った現金等の財産は、原則として、時価により計上し、引き換えられた被結合企業の株式の適正な帳簿価額との差額は、原則として、交換損益として認識する。 - (2) 連結財務諸表上の会計処理
子会社又は関連会社を結合企業とする場合には、被結合企業の株式が現金等の財産のみと引き換えられたことにより認識された交換損益は、連結会計基準及び持分法会計基準における未実現損益の消去に準じて処理する。
(3)受取対価が結合企業の株式のみである場合の被結合企業の株主に係る会計処理
- 271. 結合企業の株式のみと引き換えられる企業結合において、当該被結合企業に対する持分比率等により、当該企業結合は次のように分類される。
- (1) 子会社を被結合企業とする企業結合(第272項から第276項参照)
- (2) 関連会社を被結合企業とする企業結合(第277項から第279項参照)
- (3) 共同支配企業の形成となる企業結合(第189項から第191項参照)
- (4) 子会社や関連会社以外の投資先(共同支配企業を除く。)を被結合企業とする企業結合(第280項から第281-2項参照)
子会社を被結合企業とした企業結合の場合
- 272. 子会社を被結合企業とする企業結合により、結合後企業に対する持分比率が減少する場合、当該被結合企業の株主(親会社)に係る会計処理は、事業分離における分離元企業の会計処理に準じて行う(事業分離等会計基準第38項)。企業結合前に、被結合企業の株主が被結合企業の株式(子会社株式)に加え、結合企業の株式も有しており、当該結合企業の株主としての持分比率が増加する場合、当該被結合企業の株主としての持分の増加については、追加取得に準じて処理し、当該結合企業の株主としての持分の減少については、第98項(2)①における分離元企業の会計処理に準じて行う(事業分離等会計基準第39項)。
- 273. 子会社を被結合企業とする企業結合により、結合後企業が被結合企業の株主の新たな子会社となる場合(子会社株式から子会社株式)、被結合企業の株主(親会社)は、事業分離における分離元企業の会計処理(第98項及び第99項参照)に準じて、次の処理を行う。
- (1) 個別財務諸表上、交換損益は認識せず、結合後企業の株式(子会社株式)の取得原価は、引き換えられた被結合企業の株式(子会社株式)に係る企業結合直前の適正な帳簿価額に基づいて算定する。
- (2) 連結財務諸表上、結合後企業に係る株主(親会社)の持分の増加額(企業結合直前の結合企業の時価のうち、被結合企業の株主の持分比率の増加に対応する金額)と被結合企業に係る株主(親会社)の持分の減少額との間に生じる差額については、資本剰余金に計上する。
- なお、被結合企業の株主は、結合企業を取得することになるため、連結財務諸表上、パーチェス法を適用する。
- 274. ある子会社を被結合企業とし他の子会社を結合企業とする企業結合により、結合後企業が引き続き被結合企業及び結合企業の株主の子会社である場合、共通支配下の取引として取り扱う(第248項及び第249項参照)。
- 275. 子会社を被結合企業とする企業結合により、結合後企業が関連会社となる場合(子会社株式から関連会社株式)(共同支配企業の形成の場合は含まれない。)、被結合企業の株主(親会社)は、事業分離における分離元企業の会計処理(第100項から第102項参照)に準じて、次の処理を行う。
- (1) 個別財務諸表上、第273項(1)と同様に、交換損益は認識せず、結合後企業の株式(関連会社株式)の取得原価は、引き換えられた被結合企業の株式(子会社株式)に係る企業結合直前の適正な帳簿価額に基づいて算定する。
- (2) 連結財務諸表上、これまで連結していた被結合企業の株式については、持分法へ修正するとともに、結合後企業に係る被結合企業の株主の持分の増加額と、従来の被結合企業に係る被結合企業の株主の持分の減少額との間に生じる差額は、次のように処理する。
- ① 結合企業に対して投資したとみなされる額(企業結合直前の結合企業の時価に増加する被結合企業の株主の持分比率を乗じた額)と、これに対応する企業結合直前の結合企業の資本(原則として、部分時価評価法の原則法により、資産及び負債を時価評価した後の評価差額を含む。)との間に生じる差額については、のれん又は負ののれんとして処理する。
- ② 被結合企業に対する持分が交換されたとみなされる額(交換された被結合企業の時価に減少したその株主の持分比率を乗じた額であり、①の結合企業に対して投資したとみなされる額と同額となる。)と、従来の被結合企業に係る被結合企業の株主の持分の減少額との間に生じる差額については、持分変動差額として取り扱う。
- 276. 子会社を被結合企業とする企業結合により、結合後企業が子会社や関連会社、共同支配企業以外となる場合(子会社株式からその他有価証券)、被結合企業の株主は、事業分離における分離元企業の会計処理(第103項参照)に準じて、次の処理を行う。
- (1) 個別財務諸表上、原則として交換損益を認識し、結合後企業の株式の取得原価は、その時価又は被結合企業の株式の時価のうち、より高い信頼性をもって測定可能な時価に基づいて算定する。
- (2) 連結財務諸表上、これまで連結していた被結合企業の株式は、個別貸借対照表上の帳簿価額(結合後企業の株式の時価又は被結合企業の株式の時価のうち、より高い信頼性をもって測定可能な時価)をもって評価する。
関連会社を被結合企業とした企業結合の場合
- 277. 関連会社を被結合企業とする企業結合により、当該被結合企業(関連会社)に対する持分比率が減少するが、引き続き結合後企業が当該被結合企業の株主の関連会社である場合(関連会社株式から関連会社株式)、被結合企業の株主は、次の処理を行う(事業分離等会計基準第40項)。[設例30]
- (1) 個別財務諸表上、交換損益は認識せず、結合後企業の株式(関連会社株式)の取得原価は、引き換えられた被結合企業の株式(関連会社株式)に係る企業結合直前の適正な帳簿価額に基づいて算定する。
- (2) 連結財務諸表上、持分法適用において、関連会社となる結合後企業に係る被結合企業の株主の持分の増加額と、従来の被結合企業に係る被結合企業の株主の持分の減少額との間に生じる差額は、次のように処理する。
なお、持分法適用において、関連会社となる結合後企業に係る被結合企業の株主の持分の増加額は、持分法会計基準及び持分法実務指針の追加取得の処理に従い、企業結合直前の結合企業の資本(原則として、部分時価評価法の原則法により、資産及び負債を時価評価した後の評価差額を含む。)に増加する被結合企業の株主の持分比率を乗じた額(①参照)として算定される。 - ① 被結合企業に対する持分が交換されたとみなされる額(企業結合直前の結合企業 の時価に増加する被結合企業の株主の持分比率を乗じた額)と、これに対応する企業結合直前の結合企業の資本(原則として、部分時価評価法の原則法により、資産及び負債を時価評価した後の評価差額を含む。関連会社となる結合後企業に係る被結合企業の株主の持分の増加額)との間に生じる差額については、のれん又は負ののれんとして処理する。
- ② 被結合企業の株式が交換されたとみなされる額(被結合企業の時価のうちその株主の持分の減少額であり、①の被結合企業に対する持分が交換されたとみなされる額と同額となる。)と、従来の被結合企業に係る被結合企業の株主の持分の減少額(被結合企業の株式に係る企業結合直前の適正な帳簿価額に減少した被結合企業の持分比率を乗じた額)との間に生じる差額については、持分変動差額として取り扱う。
- ただし、①と②のいずれかの金額に重要性が乏しいと考えられる場合には、重要性のある他の金額に含めて処理することができる。
- 278. 関連会社を被結合企業とする企業結合により、結合後企業が被結合企業の株主の関連会社及び共同支配企業以外となる場合(関連会社株式からその他有価証券)、被結合企業の株主は次の処理を行う(事業分離等会計基準第41項)。
- (1) 個別財務諸表上、原則として交換損益を認識し、結合後企業の株式の取得原価は、その時価又は被結合企業の株式の時価のうち、より高い信頼性をもって測定可能な時価に基づいて算定する。
- (2) 連結財務諸表上、これまで持分法を適用していた被結合企業の株式は、個別貸借対照表上の帳簿価額(結合後企業の株式の時価又は被結合企業の株式の時価のうち、より高い信頼性をもって測定可能な時価)をもって評価する。
- 279. 関連会社を被結合企業とする企業結合において、企業結合前に、被結合企業の株主が被結合企業の株式(関連会社株式)に加え、結合企業の株式(子会社株式又は関連会社株式)も有していることから、当該被結合企業の株主としての持分比率が増加(結合企業の株主としての持分比率は減少)する場合(関連会社株式から子会社株式又は関連会社株式)、当該被結合企業の株主は、次の処理を行う(事業分離等会計基準第42項)。
- (1) 個別財務諸表上、交換損益は認識せず、当該被結合企業の株主が受け取った結合企業の株式の取得原価は、引き換えられた被結合企業の株式(関連会社株式)に係る企業結合直前の適正な帳簿価額に基づいて算定する。
- (2) 連結財務諸表上、結合後企業に係る被結合企業の株主としての持分の増加については、結合後企業が関連会社となる場合には持分法適用会社の株式の追加取得に準じ、子会社となる場合には段階取得により関連会社が連結子会社になった場合における連結手続に準じて会計処理する。また、結合企業の株主としての持分の減少については、結合後企業が子会社となる場合には、第98項(2)①における分離元企業の会計処理に準じて行い、結合後企業が関連会社となる場合には、子会社の時価発行増資等により支配を喪失して関連会社になる場合における親会社の会計処理又は関連会社の時価発行増資等における投資会社の会計処理に準じて行う。
子会社や関連会社以外の投資先を被結合企業とした企業結合の場合
- 280. 子会社や関連会社以外の投資先を被結合企業とする企業結合により、結合後企業が引き続き、子会社株式や関連会社株式にも該当しない場合(その他有価証券からその他有価証券)、被結合企業の株主の個別財務諸表上、交換損益は認識されず、結合後企業の株式の取得原価は、引き換えられた被結合企業の株式に係る企業結合直前の適正な帳簿価額に基づいて算定する(事業分離等会計基準第43項)。
- 281. 子会社や関連会社以外の投資先(その他有価証券)を被結合企業とする企業結合において、企業結合前に、被結合企業の株主が被結合企業の株式に加え結合企業の株式(子会社株式又は関連会社株式)も有していることから、当該被結合企業の株主としての持分比率が増加(結合企業の株主としての持分比率は減少)し、結合後企業が当該株主の関連会社となる場合(その他有価証券から関連会社株式)、当該被結合企業の株主は、次の処理を行う(事業分離等会計基準第44項)。
- (1) 個別財務諸表上、交換損益は認識せず、当該被結合企業の株主が受け取った結合企業の株式の取得原価は、引き換えられた被結合企業の株式(その他有価証券)に係る企業結合日直前の適正な帳簿価額に基づいて算定する。
- (2) 連結財務諸表上、結合後企業に係る被結合企業の株主としての持分の増加については、段階取得による持分法の適用に準じて会計処理する。また、結合企業の株主としての持分の減少については、子会社の時価発行増資等により支配を喪失して関連会社になる場合における親会社の会計処理又は関連会社の時価発行増資等における投資会社の会計処理に準じて行う。
- 281-2. 子会社や関連会社以外の投資先(その他有価証券)を被結合企業とする企業結合において、企業結合前に、被結合企業の株主が被結合企業の株式に加え結合企業の株式(子会社株式又は関連会社株式)も有していることから、当該被結合企業の株主としての持分比率が増加(結合企業の株主としての持分比率は減少)し、結合後企業が当該株主の子会社となる場合(その他有価証券から子会社株式)、当該被結合企業の株主は、次の処理を行う(事業分離等会計基準第44項)。
- (1) 個別財務諸表上、当該被結合企業の株主が受け取った結合企業の株式は、企業結合日の前日の適正な帳簿価額に基づいて子会社株式に振り替える。
- (2) 連結財務諸表上、当該結合企業の株式の取得原価は企業結合日の時価に基づくこととし、その時価と適正な帳簿価額との差額は、当期の段階取得に係る損益として処理する。なお、結合後企業に係る被結合企業の株主としての持分の増加については、段階取得による連結手続に準じて会計処理する。また、結合企業の株式を子会社株式として有しており、結合後企業が子会社となる場合には、結合企業の株主としての持分の減少については、第98項(2)①における分離元企業の会計処理に準じて行う。
(4)受取対価が現金等の財産と結合企業の株式である場合の被結合企業の株主に係る会計処理
子会社を被結合企業とした企業結合の場合
- 282. 現金等の財産(第268項参照)と結合企業の株式を対価とする企業結合により、子会社株式である被結合企業の株式が引き換えられた場合、当該被結合企業の株主(親会社)に係る会計処理は、事業分離における分離元企業の会計処理に準じて行う(事業分離等会計基準第45項)ため、当該被結合企業の株主は次の処理を行う。
- (1) 結合後企業が子会社となる場合や結合企業が子会社である場合、共通支配下の取引として取り扱う(第252項及び第253項参照)。
- (2) 結合後企業が関連会社となる場合、事業分離における分離元企業の会計処理(第105項参照)に準じて行う。[設例31]
- (3) 結合後企業が子会社及び関連会社、共同支配企業以外となる場合には、事業分離における分離元企業の会計処理(第106項参照)に準じて行う。また、連結財務諸表上、これまで連結していた被結合企業の株式は、個別貸借対照表上の帳簿価額(結合後企業の株式の時価又は被結合企業の株式の時価のうち、より高い信頼性をもって測定可能な時価)をもって評価する。
関連会社を被結合企業とした企業結合の場合
- 283. 関連会社を被結合企業とする企業結合により、現金等の財産と結合企業の株式を対価として関連会社株式である被結合企業の株式が引き換えられ、当該被結合企業(関連会社)に対する持分比率が減少するが、結合後企業が引き続き当該被結合企業の株主の関連会社である場合(関連会社株式から関連会社株式)、被結合企業の株主は次の処理を行う(事業分離等会計基準第46項)。
- (1) 個別財務諸表上、被結合企業の株主が受け取った現金等の財産は、原則として、時価により計上する。この結果、当該時価が引き換えられた被結合企業の株式に係る適正な帳簿価額を上回る場合には、原則として、当該差額を交換利益として認識(取得する結合企業の株式の取得原価はゼロとする。)し、下回る場合には、当該差額を取得する結合企業の株式の取得原価とする。
- (2) 連結財務諸表上、交換利益は、持分法会計基準における未実現損益の消去に準じて処理する。また、関連会社となる結合企業に係る被結合企業の株主の持分の増加額と、従来の被結合企業に係る被結合企業の株主の持分の減少額との間に生じる差額は、原則として、のれん(又は負ののれん)と持分変動差額に区分して処理する。
子会社や関連会社以外の投資先を被結合企業とした企業結合の場合
- 284. 子会社や関連会社以外の投資先(共同支配企業を除く。)を被結合企業とする企業結合により、対価として子会社株式や関連会社株式以外の被結合企業の株式が、現金等の財産と結合企業の株式とに引き換えられた場合、被結合企業の株主は、金融商品会計基準に準じて会計処理する(事業分離等会計基準第47項)。
- この場合、現金等の財産は新たな資産として、結合企業の株式は残存部分として取り扱われる。このため、当該現金等の財産の時価と消滅部分の適正な帳簿価額(当該被結合企業の株式の消滅直前の適正な帳簿価額を消滅部分に対応する現金等の財産の時価と残存部分である結合企業の株式の時価の比率により按分して、消滅部分に配分された金額)との差額を当期の損益として処理する。
2.結合企業の株主に係る会計処理
(1)結合企業の株主に係る会計処理の考え方
- 285. 結合企業の株主に係る会計処理は、子会社を結合企業とする企業結合により、当該結合企業の株主の持分比率が減少する場合には、子会社を被結合企業とする企業結合における被結合企業の株主の会計処理に準じて処理し、また関連会社を結合企業とする企業結合により、当該結合企業の株主の持分比率が減少する場合には、関連会社を被結合企業とする企業結合における被結合企業の株主の会計処理に準じて処理する(事業分離等会計基準第48項(1)①)。企業結合前に、結合企業の株主が結合企業の株式に加え被結合企業の株式も有していることから、当該結合企業の株主としての持分比率が増加(被結合企業の株主としての持分比率は減少)し、結合後企業は当該株主の子会社又は関連会社となる場合には、受取対価が結合企業の株式のみである場合の被結合企業の株主に係る会計処理における被結合企業の株主としての持分比率が減少する場合の処理(第286項、第291項、第293項及び第293-2項参照)による(事業分離等会計基準第48項(2)①)。
(2)子会社を結合企業とする企業結合の場合
- 286. ある子会社を結合企業とし他の子会社を被結合企業とする企業結合により、結合後企業が引き続き被結合企業及び結合企業の株主の子会社である場合、共通支配下の取引として取り扱う(第248項及び第249項参照)。
- 287. 子会社を結合企業とする企業結合によっても、結合企業の株主(親会社)は、当該結合企業の株式を直接引き換えないが、当該企業結合により結合企業の株主(親会社)としての持分比率が減少し、結合後企業が引き続き子会社である場合(子会社株式から子会社株式)又は関連会社となる場合(子会社株式から関連会社株式)、結合企業の株主(親会社)は、次の処理を行う(事業分離等会計基準第48項(1)①)。
- (1) 個別財務諸表上、結合企業が子会社から関連会社に該当することとなった場合には、子会社株式から関連会社株式に帳簿価額で振り替える。
- (2) 連結財務諸表上、次のように処理する。
- ① 結合後企業が引き続き子会社である場合において、企業結合前に、結合企業の株主(親会社)が被結合企業の株式を子会社株式として有している場合には、第286項の処理を行う。
- ② 結合後企業が引き続き子会社である場合において、企業結合前に、結合企業の株主(親会社)が被結合企業の株式を有していない又は被結合企業の株式をその他有価証券若しくは関連会社株式として有している場合、結合後企業に係る株主(親会社)の持分の増加額(企業結合直前の被結合企業の時価のうち、結合企業の株主の持分比率の増加に対応する額)と、従来の結合企業に係る結合企業の株主(親会社)の持分の減少額との間に生じる差額は、資本剰余金に計上する。
なお、結合企業の株主は、被結合企業を取得することになるため、連結財務諸表上、パーチェス法を適用する。 - ③ 結合後企業が関連会社となる場合、これまで連結していた結合企業の株式については、持分法へ修正するとともに、結合後企業に係る結合企業の株主(親会社)の持分の増加額(企業結合直前の被結合企業の資本(原則として、部分時価評価法の原則法により、資産及び負債を時価評価した後の評価差額を含む。)に増加する結合企業の株主の持分比率を乗じた額)と、従来の結合企業に係る結合企業の株主(親会社)の持分の減少額との間に生じる差額は、のれん(又は負ののれん)と持分変動差額に区分して処理する。ただし、のれん(又は負ののれん)と持分変動差額のいずれかの金額に重要性が乏しいと考えられる場合には、重要性のある他の金額に含めて処理することができる。
- 288. 子会社を結合企業とする企業結合によっても、結合企業の株主(親会社)は当該結合企業の株式を直接引き換えないが、当該企業結合により結合企業の株主(親会社)の持分比率が減少し、結合後企業が子会社及び関連会社、共同支配企業以外となる場合(子会社株式からその他有価証券)、結合企業の株主(親会社)は、次の処理を行う(事業分離等会計基準第48項(1)①)。
- (1) 個別財務諸表上、その他有価証券に時価で振り替え、原則として損益を認識する。
- (2) 連結財務諸表上、これまで連結していた結合企業の株式は、個別貸借対照表上の帳簿価額(結合後企業の株式の時価)をもって評価する。
(3)関連会社を結合企業とする企業結合の場合
- 289. 関連会社を結合企業とする企業結合によっても、結合企業の株主は当該結合企業の株式を直接引き換えないが、当該企業結合により結合企業の株主としての持分比率が減少し、結合後企業が引き続き関連会社である場合(関連会社株式から関連会社株式)、結合企業の株主は、次の処理を行う(事業分離等会計基準第48項(1)①)。
- (1) 個別財務諸表上、何も会計処理しない。
- (2) 連結財務諸表上、結合後企業に係る結合企業の株主の持分の増加額と、従来の結合企業に係る結合企業の株主の持分の減少額との間に生じる差額は、のれん(又は負ののれん)と持分変動差額に区分して処理する。ただし、のれん(又は負ののれん)と持分変動差額のいずれかの金額に重要性が乏しいと考えられる場合には、重要性のある他の金額に含めて処理することができる。
- 290. 関連会社を結合企業とする企業結合によっても、結合企業の株主は、当該結合企業の株式を直接引き換えないが、当該企業結合により結合企業の株主としての持分比率が減少し、結合後企業が関連会社及び共同支配企業以外となる場合(関連会社株式からその他有価証券)、結合企業の株主は、次の処理を行う(事業分離等会計基準第48項(1)①)。
- (1) 個別財務諸表上、関連会社株式からその他有価証券に時価で振り替え、原則として損益を認識する。
- (2) 連結財務諸表上、これまで持分法を適用していた結合企業の株式は、個別貸借対照表上の帳簿価額(結合後企業の株式の時価)をもって評価する。
- 291. 関連会社を結合企業とする企業結合において、企業結合前に、結合企業の株主が結合企業の株式(関連会社株式)に加え被結合企業の株式(子会社株式又は関連会社株式)も有していることから、当該結合企業の株主としての持分比率が増加(被結合企業の株主としての持分比率は減少)し、結合後企業は当該株主の子会社又は関連会社となる場合(関連会社株式から子会社株式又は関連会社株式)、結合企業の株主は、次の処理を行う(事業分離等会計基準第48項(2)①)。[設例30]
- (1) 個別財務諸表上、結合企業が関連会社から子会社に該当することとなった場合には、関連会社株式から子会社株式に帳簿価額で振り替える。
- (2) 連結財務諸表上、結合企業の株主が被結合企業の株式を子会社株式として有しており、結合後企業が子会社となる場合には段階取得により関連会社が連結子会社となった場合における連結手続に準じて会計処理を行い、関連会社となる場合には第275項(2)の処理を行う。結合企業の株主が被結合企業の株式を関連会社株式として有しており、関連会社となる場合には第277項(2)の処理を行う。
(4)子会社や関連会社以外の投資先を結合企業とする企業結合の場合
- 292. 子会社や関連会社以外の投資先を結合企業とする企業結合により、結合後企業が引き続き子会社株式や関連会社株式に該当しない場合(その他有価証券からその他有価証券)、結合企業の株主は、何も会計処理しない(事業分離等会計基準第48項(1)②又は(2)②)。
- 293. 子会社や関連会社以外の投資先を結合企業とする企業結合において、企業結合前に、結合企業の株主が結合企業の株式(その他有価証券)に加え被結合企業の株式(子会社株式又は関連会社株式)も有していることから、当該結合企業の株主としての持分比率が増加(被結合企業の株主としての持分比率は減少)し、結合後企業が当該株主の関連会社となる場合(その他有価証券から関連会社株式)、結合企業の株主は、次の処理を行う(事業分離等会計基準第48項(2)①)。
- (1) 個別財務諸表上、金融商品会計実務指針第88項に準じ、その他有価証券から関連会社株式に振り替える。
- (2) 連結財務諸表上、結合企業の株主が、被結合企業の株式を子会社株式として有しており、結合後企業が関連会社となる場合には第275項(2)の処理を行う。結合企業の株主が被結合企業の株式を関連会社株式として有しており、関連会社となる場合には第277項(2)の処理を行う。
- 293-2. 子会社や関連会社以外の投資先を結合企業とする企業結合において、企業結合前に、結合企業の株主が結合企業の株式(その他有価証券)に加え被結合企業の株式(子会社株式又は関連会社株式)も有していることから、当該結合企業の株主としての持分比率が増加(被結合企業の株主としての持分比率は減少)し、結合後企業が当該株主の子会社となる場合(その他有価証券から子会社株式)、結合企業の株主は、次の処理を行う(事業分離等会計基準第48項(2)①)。
- (1) 個別財務諸表上、当該結合企業の株式は、企業結合日の前日の適正な帳簿価額に基づいて子会社株式に振り替える。
- (2) 連結財務諸表上、当該結合企業の株式の取得原価は企業結合日の時価に基づくこととし、その時価と適正な帳簿価額との差額は、当期の段階取得に係る損益として処理する。なお、結合企業の株主が、被結合企業の株式を子会社株式として有しており、結合後企業が子会社となる場合には第273項(2)の処理を行う。
3.分割型の会社分割における吸収分割会社及び新設分割会社の株主に係る会計処理
(1)受取対価が新設分割設立会社又は吸収分割承継会社の株式のみである場合の新設分割会社又は吸収分割会社の株主に係る会計処理
- 294. 分割型の会社分割における吸収分割会社等の株主に係る会計処理は、受け取る新設分割設立会社又は吸収分割承継会社の株式と、これまで保有していた吸収分割会社等の株式とが実質的に引き換えられたものとみなして、受取対価が結合企業の株式のみである場合の被結合企業の株主の会計処理(第272項から第281-2項参照)に準じて行う(事業分離等会計基準第49項)。
- 295. 第294項及び第296項を適用するにあたっては、被結合企業の株主の会計処理における被結合企業の株式に係る企業結合直前の適正な帳簿価額に代えて、会社分割直前の吸収分割会社等の株式の適正な帳簿価額のうち、合理的に按分する方法によって算定した引き換えられたものとみなされる部分の価額を用いる(事業分離等会計基準第50項)。
- 合理的に按分する方法には、次のような方法が考えられ、実態に応じて適切に用いる。
- (1) 関連する時価の比率で按分する方法
分割された移転事業に係る株主資本相当額(第87項(1)①参照)の時価と会社分割直前の吸収分割会社等の株主資本の時価との比率により、吸収分割会社等の株式の適正な帳簿価額を按分する。 - (2) 時価総額の比率で按分する方法
会社分割直前直後の吸収分割会社等の時価総額の増減額を分割された事業の時価とみなし、会社分割直前の吸収分割会社等の時価総額との比率により、吸収分割会社等の株式の適正な帳簿価額を按分する。 - (3) 関連する帳簿価額(連結財務諸表上の帳簿価額を含む。)の比率で按分
分割された移転事業に係る株主資本相当額の適正な帳簿価額と会社分割直前の吸収分割会社等の株主資本の適正な帳簿価額との比率により、吸収分割会社等の株式の適正な帳簿価額を按分する。
(2)受取対価が現金等の財産と新設分割設立会社又は吸収分割承継会社の株式である場合の新設分割会社又は吸収分割会社の株主に係る会計処理
- 296. 分割型の会社分割により吸収分割会社等の株主が、現金等の財産(第268項参照)と新設分割設立会社又は吸収分割承継会社の株式を受け取った場合、当該吸収分割会社等の株主に係る会計処理は、被結合企業の株主の会計処理(第282項から第284項参照)に準じて行う(事業分離等会計基準第51項)。
4.現金以外の財産の分配を受けた場合の株主に係る会計処理
- 297. 株主が現金以外の財産の分配を受けた場合、企業結合に該当しないが、当該株主に係る会計処理は、原則として、これまで保有していた株式が実質的に引き換えられたものとみなして、被結合企業の株主の会計処理(第268項から第281-2項参照)に準じて行う。
- この際、これまで保有していた株式のうち実質的に引き換えられたものとみなされる額は、分配を受ける直前の株式の適正な帳簿価額を合理的な方法(第295項参照)によって按分し算定する(事業分離等会計基準第52項)。
5.いわゆる三角合併などにおける結合当事企業の株主に係る会計処理
- 298. ある企業の子会社が、結合企業として、当該ある企業(親会社)の株式を対価として他の企業と企業結合する場合、当該取引の実質は、親会社と当該他の企業との企業結合である。このため、その実質に従い、当該他の企業(被結合企業)の株主は、ある企業の子会社ではなく、当該ある企業(親会社)を結合企業とみなして、被結合企業の株主の会計処理を適用する。
Ⅷ.開 示
1.貸借対照表における表示
- 299. (削 除)
- 300. (削 除)
共同支配企業への投資の表示
- 301. 共同支配投資企業は、共同支配企業に対する投資(共同支配企業株式)を次のように表示する。
- (1) 個別財務諸表上の表示
関係会社株式等の適切な科目をもって表示する。
なお、共同支配投資企業が連結財務諸表を作成していない場合には、損益等からみて重要性の乏しい共同支配企業に対する投資を除き、当該共同支配企業を形成した事業年度以後において、持分法を適用した場合の投資の金額及び投資損益を個別財務諸表に継続的に注記する。 - (2) 連結財務諸表上の表示
投資有価証券等の適切な科目をもって表示し、当該投資額を連結貸借対照表に注記する。
2.損益計算書における表示
- 302. (削 除)
(1)企業結合に係る特定勘定の取崩益の表示
- 303. 企業結合に係る特定勘定の取崩益が生じた場合には、原則として、特別利益に計上する。また、重要性が乏しい場合を除き、その内容を連結損益計算書及び個別損益計算書に注記する。
- 304. (削 除)
- 305. (削 除)
(2)段階取得に係る損益の表示
- 305-2. 連結財務諸表上、段階取得に係る損益は、原則として、特別損益に計上する。
3.注記事項
(1)企業結合に関する注記事項
取得とされた企業結合の注記事項
- 306. 取得原価の配分が完了していない場合の注記(企業結合会計基準第49項(4)③)について、繰延税金資産及び繰延税金負債に対する取得原価の配分額は、暫定的な会計処理の対象となるが、税効果会計の注記(繰延税金資産及び繰延税金負債の発生原因別の主な内訳)にあわせて記載することができる。
連結財務諸表を作成しない場合の逆取得に係る注記事項
- 307. 連結財務諸表を作成しない場合の逆取得に係る注記事項(企業結合会計基準第50項)における「影響額」の記載は、次のいずれかの方法による(第453項参照)。
- (1) パーチェス法を適用した場合との差額による記載
- ① 貸借対照表項目
資産合計、流動資産合計、固定資産合計、負債合計、流動負債合計、固定負債合計、純資産合計及びのれん - ② 損益計算書項目
売上高、営業損益、経常損益、税引前当期純損益、当期純損益、のれんの償却額(又は負ののれん)及び1株当たり当期純損益 - (2) パーチェス法を適用した場合の貸借対照表及び損益計算書の主要項目による記載
- 307-2. 企業結合会計基準第49項(1)に準じた注記事項(企業結合会計基準第50項)は、次の事項とする。
取得企業の名称及び事業の内容、事業の場合は相手企業の名称及び事業の内容、企業結合を行った主な理由、企業結合日、企業結合の法的形式、結合後企業の名称、取得された議決権比率及び取得企業を決定するに至った主な根拠 - 308. (削 除)
企業結合が当期首に完了したと仮定したときの当期の連結損益計算書への影響の概算額
- 309. 取得とされた企業結合の注記事項のうち、企業結合会計基準第49項(5)比較損益情報における「企業結合が当期首に完了したと仮定したときの当期の連結損益計算書への影響の概算額」とは、取得企業の業績推移の把握が可能となるように、次のいずれかの方法により算定されたものをいう。
- (1) 企業結合が当期首に完了したと仮定した場合の売上高及び損益情報と取得企業の連結損益計算書上の売上高及び損益情報に係る各々の差額による記載
- (2) 企業結合が当期首に完了したと仮定して算定された当該企業結合年度の売上高及び損益情報による記載
- 損益情報については、例えば、営業損益、経常損益、税金等調整前当期純損益、当期純損益及び1株当たり当期純損益などであり、実務的に算定可能な項目を開示する。
なお、企業結合が当期首に完了したと仮定したときの当期の連結損益計算書への影響の概算額の算定における基本的な考え方と前提条件の例示については、第326項及び第327項で示している。 - 310. (以下、第314項まで削除)
子会社が親会社を吸収合併した場合で、子会社が連結財務諸表を作成しないときの注記事項
- 315. 子会社が親会社を吸収合併した場合で、子会社が連結財務諸表を作成しないときの注記事項(企業結合会計基準第53項)における「影響額」の記載は、次のいずれかの方法による。
- (1) 親会社が子会社を吸収合併したものとした場合との差額による記載
- ① 貸借対照表項目
資産合計、流動資産合計、固定資産合計、負債合計、流動負債合計、固定負債合計、純資産合計及びのれん - ② 損益計算書項目
売上高、営業損益、経常損益、税引前当期純損益、当期純損益、のれんの償却額(又は負ののれん)及び1株当たり当期純損益 - (2) 親会社が子会社を吸収合併したものとした場合の貸借対照表及び損益計算書の主要項目による記載
- 316. (削 除)
- 316-2. (削 除)
(2)事業分離に関する注記事項
- 317. 事業分離が共通支配下の取引等や共同支配企業の形成に該当しない場合において、分離元企業が当該事業分離に関する注記(事業分離等会計基準第28項)を記載するにあたっては次のとおりとする。
- (1) 実施した会計処理の概要については、次の事項を記載する。
- ① 個別財務諸表においては、次の内容
- ア 移転損益を認識した場合には、その金額、移転した事業に係る資産及び負債の適正な帳簿価額並びにその主な内訳
- イ 移転損益を認識しなかった場合には、その旨、受取対価の種類、移転した事業に係る資産及び負債の適正な帳簿価額並びにその主な内訳
- ② 連結財務諸表においては、段階取得に係る損益の金額、持分変動差額の金額及び会計処理
- (2) 当期の損益計算書に計上されている分離した事業に係る損益の概算額については、売上高及び営業損益の概算額を記載する。
- (3) 分離先企業の株式を子会社株式又は関連会社株式として保有すること以外に、分離元企業の継続的関与があるものの移転損益を認識した場合については、当該継続的関与の主な概要を記載する。ただし、軽微なものについては、注記を省略することができる。なお、当該継続的関与については、例えば、次のような場合が考えられる。
- ① 分割時の財産額を限度として弁済の責任を負うこととなる個別催告を受けなかった吸収分割会社の債権者に対する重要な債務がある場合(その旨及び金額)
- ② 移転した事業に係る出向者に対して出向差額を負担する場合(ただし、明らかに移転する事業の時価の調整項目である場合を除く。)
- ③ 移転した事業から生じる財又はサービスの長期購入契約がある場合
企業結合に該当しないため結合当事企業にはあたらない分離先企業における注記
- 318. 分割型の単独新設分割における新設会社のように、企業結合に該当しないため結合当事企業にはあたらない分離先企業においても、引き継いだ資産、負債及び資本(純資産)の内訳並びに企業結合会計基準第52項(1)及び(2)に準じた注記をする。
- 319. (以下、第325項まで削除)
4.企業結合が当期首に完了したと仮定したときの当期の連結損益計算書への影響の概算額の開示
(1)基本的な考え方
- 326. 当該企業結合が当期首に完了したと仮定したときの当期の連結損益計算書への影響の概算額(以下、本項及び次項において「連結損益計算書への影響の概算額」という。)の算定にあたっては、次の事項に留意する必要がある(第454項参照)。なお、過年度の期首に企業結合が行われたものと仮定した当期の連結損益計算書への影響の概算額を追加的な情報として任意に開示する場合(企業結合会計基準第121項なお書き)も同様の考え方による。
- (1) 連結損益計算書への影響の概算額算定にあたり、金額的に重要性があると見込まれるものについては、前提条件を設定する。
この場合、取得企業の業績推移の把握に役立つ情報を提供するという趣旨を踏まえて、どのような項目について前提条件を設けるかを判断する。 - (2) 取得企業における恣意的な判断を排除する。
- ① 期首から企業結合日までの期間に被取得企業が計上した特別損益は、原則としてそのまま反映する。この場合、特別損益に重要性がある場合には、その内容を注記する。
- ② 企業結合のシナジー効果を期首に遡って算定しない。
- (3) 取得企業が通常の努力で入手可能な情報を使用する。
- ① 取得企業の期首時点における被取得企業の資産・負債の時価の再測定は行わない。
(例えば、企業結合時に生じたのれんや持分変動差額については、再計算を行う必要はない。) - ② 被取得企業の当期首から企業結合日までの期間において適正に算定された収益及び期間損益を基礎とする。
- なお、1株当たり当期純損益を注記する場合(第309項参照)には、通常の1株当たり当期純損益に次の額を適切に調整する。
ア 連結損益計算書への影響の概算額として加算した被取得企業の損益
イ アに対応した期間における被取得企業の平均株式数に企業結合による株式の交換比率を調整した株式数
(2)前提条件の例示
- 327. 連結損益計算書への影響の概算額の算定の前提条件の例示としては、次のものがあげられる。
- (1) 取得企業と被取得企業の決算期が同じ場合
- ① 当期首から企業結合日までの間の結合当事企業間における取引については消去する(内部利益相当額も消去)。
- ② 被取得企業から受け入れた重要な資産及び負債については、取得後の会計方針に基づいた調整計算(減価償却費、退職給付費用等)を行う。
- ③ 企業結合時に新たに認識された重要なのれん等の無形固定資産の償却額、負ののれんの調整計算(例:企業結合時の当該のれん等の金額に基づく年間の償却額等を算定し、結合企業が計上した償却額等を控除)を行う。
- ④ 現金を対価とした企業結合において、現金調達のための借入金額が重要である場合では、金利費用の調整計算を行う。
- ⑤ 当期純損益への影響額算定のために適用する税率は、取得企業の見積実効税率とする。
- (2) 取得企業と被取得企業の決算期が異なる場合
- ① 取得企業と被取得企業の決算期が同じ場合の考え方を基礎としつつ、被取得企業の期間損益を月数按分等の合理的な方法により、取得企業の期首から企業結合日までの期間に対応した被取得企業の適正な収益、期間損益を算定し、その上で一定の調整を行う。
- ② 調整項目は、決算期が同じ場合と同様とする。
- なお、決算期の差異が3か月を超えない場合で、企業結合後の連結財務諸表の作成において連結会計基準(注4)(決算期の異なる子会社がある場合の取扱いについて)に従う場合は、比較可能性の確保の観点から、影響の概算額の算定期間も同様の取扱いとする。
- 例えば、X2年2月に株式交換(株式交換完全親会社(取得企業)の決算期が3月期、株式交換完全子会社(被取得企業)の決算期が12月期とする。)が行われた場合には、株式交換完全親会社(取得企業)は、株式交換完全子会社(被取得企業)の直前期(X1年1月~X1年12月)の業績を基礎に連結損益計算書への影響の概算額を算定することになる。
- 328. (削 除)
- 329. (削 除)
- 330. (削 除)
Ⅸ.適用時期等
- 331. 2006年(平成18年)改正の本適用指針の適用時期は、次のとおりとする。
- (1) (2)の事項を除き、2006年(平成18年)4月1日以後開始する事業年度から適用する(企業結合会計基準第56項)(事業分離等会計基準第57項)。ただし、2006年(平成18年)改正の本適用指針公表日前の組織再編については、2005年(平成17年)公表の本適用指針(2006年(平成18年)改正前の本適用指針をいう。以下同じ。)によることができる。
- (2) 第203-2項、第206項(4)、第218項(4)、第247項(3)及び第254項(3)の取扱いは、「会社法施行規則及び会社計算規則の一部を改正する省令」(平成18年法務省令第87号)により改正後の会社計算規則(平成18年法務省令第13号)が適用される組織再編から適用する。
- 331-2. 2007年(平成19年)改正の本適用指針は、2008年(平成20年)4月1日以後の組織再編について適用する。ただし、2007年(平成19年)改正の本適用指針は、その改正日以後終了する事業年度における2008年(平成20年)3月31日以前の組織再編についても適用することができる(この場合、第331項(2)の事項に係る適用時期については、同項の定めによる。)。
- 331-3. 2008年(平成20年)改正の本適用指針は、2010年(平成22年)4月1日以後の組織再編について適用する。ただし、2009年(平成21年)4月1日以後開始事業年度において最初に実施される組織再編から適用することができる。
なお、2008年(平成20年)改正の本適用指針の適用前に行われた企業結合及び事業分離等の会計処理(持分プーリング法、株式を対価とする場合の当該対価の時価の測定日、負ののれん、段階取得、在外子会社株式の取得等により生じたのれん、取得企業の決定、共同支配投資企業の持分法に準じた処理及び取得対価の一部を研究開発費に配分し費用とする処理等)の従前の取扱いについては、同適用指針の適用後においても継続することとし、同適用指針の適用日における会計処理の見直し及び遡及的な処理は行わないものとする。 - 331-4. 2013年(平成25年)改正の本適用指針の適用時期等に関する取扱いは、次のとおりとする。
- (1) 2015年(平成27年)4月1日以後開始する事業年度の期首から適用する。なお、第70項の定めについては、2015年(平成27年)4月1日以後開始する事業年度の期首以後実施される企業結合から適用する。
- (2) (1)の定めにかかわらず、2014年(平成26年)4月1日以後開始する事業年度の期首から適用することができる。なお、その場合には、第70項の定めについては、2014年(平成26年)4月1日以後開始する事業年度の期首以後実施される企業結合から適用する。
- (3) (1)及び(2)の適用にあたっては、非支配株主との取引及び取得関連費用について過去の期間のすべてに新たな会計方針を遡及適用した場合の適用初年度の期首時点の累積的影響額を、適用初年度の期首の資本剰余金及び利益剰余金に加減し、当該期首残高から新たな会計方針を適用する。
- (4) (3)の定めによらず、2013年(平成25年)改正の本適用指針が定める新たな会計方針を適用初年度の期首から将来にわたって適用することができる。
- (5) 2013年(平成25年)改正の本適用指針の適用初年度においては、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として取り扱う。
- 331-5. 2019年(平成31年)改正の本適用指針は、2019年(平成31年)4月1日以後開始する事業年度の期首以後実施される組織再編から適用する。
- 331-6. 2019年(平成31年)改正の本適用指針の適用初年度において、これまでの会計処理と異なることとなる場合には、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として取り扱う。
- なお、2019年(平成31年)改正の本適用指針の適用前に行われた企業結合及び事業分離等の会計処理の従前の取扱いについては、同適用指針の適用後においても継続することとし、同適用指針の適用日における会計処理の見直し及び遡及的な処理は行わないものとする。
- 331-7. 2024年改正の本適用指針(以下「2024年改正適用指針」という。)の適用時期は、2024年に公表されたリース会計基準と同様とする。
ただし、2024年改正適用指針の適用前に行われた企業結合に関し、企業結合日に識別可能資産及び負債とされていなかったリースに本適用指針第61-2項を適用する場合であっても、使用権資産への取得原価の配分額の算定において、同項(1)の影響額を加減しないことができる。 - 332. 2005年(平成17年)公表の本適用指針の適用前に行われた企業結合及び事業分離等の会計処理については、同適用指針の適用後においても継続することとし、同適用指針の適用日における会計処理の見直し及び遡及的な修正は行わないものとする。
Ⅹ.議 決
- 333. 2005年(平成17年)公表の本適用指針は、第95回企業会計基準委員会に出席した委員12名全員の賛成により承認された。
- 333-2. 2006年(平成18年)改正の本適用指針は、第118回企業会計基準委員会に出席した委員11名全員の賛成により承認された。
- 333-3. 2007年(平成19年)改正の本適用指針は、第140回企業会計基準委員会に出席した委員11名全員の賛成により承認された。
- 333-4. 2008年(平成20年)改正の本適用指針は、第168回企業会計基準委員会に出席した委員12名全員の賛成により承認された。
- 333-5. 2013年(平成25年)改正の本適用指針は、第272回企業会計基準委員会に出席した委員13名全員の賛成により承認された。
- 333-6. 2019年(平成31年)改正の本適用指針は、第400回企業会計基準委員会に出席した委員13名全員の賛成により承認された。
- 333-7. 2024年改正適用指針は、第532回企業会計基準委員会に出席した委員13名全員の賛成により承認された。
結論の背景
検討の経緯
- 334. 企業会計審議会から2003年(平成15年)10月31日に公表された「企業結合に係る会計基準の設定に関する意見書」 四 3.により、企業結合会計基準を「実務に適用する場合の具体的な指針等については、今後、関係府令を整備するとともに」、「企業会計基準委員会において適切に措置していくことが適当である」とされ、また、その指針については、「合併、株式交換・株式移転、会社分割、営業譲渡・譲受等、企業再編の形式ごとの連結財務諸表上及び個別財務諸表上の適用方法」を含むとされていた。
- 335. また、当委員会は、事業分離における分離元企業の会計処理及び結合当事企業の株主に係る会計処理等を定めるため、2005年(平成17年)12月27日に事業分離等会計基準を公表した。
- 336. 当委員会では、これらの2つの会計基準の適用に関する指針を企業再編(組織再編)の形式ごとに統合したものとして、本適用指針を示している。これは、ある1つの組織再編は、企業結合及び事業分離、さらには関連する株主の会計処理にも関係することが多いため、2つの会計基準の適用に関する指針を一体として示した方が利用者の便宜に資すると考えたことによる。
- 337. 当委員会では、2005年(平成17年)7月に企業会計基準適用指針公開草案第8号「企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針(案)」を公表し、広く各界の意見を求めた。当委員会では、寄せられた意見も参考にしてさらに審議を行い、公開草案の内容を一部修正して、本適用指針を公表することとした。
- 338. (削 除)
- 338-2. 2006年(平成18年)には、2006年(平成18年)5月1日に会社計算規則が施行されたことに伴う改正(自己株式等会計基準の改正に対応する改正及び共通支配下の取引等に関する会計処理の一部改正)や、株式交換等に伴う株式交換完全子会社等の会計処理に関する定めを新設するなどの改正を行った。
- 338-3. 2007年(平成19年)には、会社法における合併等対価の柔軟化に関する規定が2007年(平成19年)5月に施行されたことに伴う改正や、株式交換に伴う株式交換完全子会社の会計処理に関する定めを追加するなどの改正を行った。
- 338-4. 2008年(平成20年)には、同年改正の企業結合会計基準、事業分離等会計基準及び連結会計基準等に対応した改正や、在外子会社株式の取得等により生じたのれんの会計処理に関する定めを追加するなどの改正を行った。
- 338-5. 2013年(平成25年)には、同年改正の企業結合会計基準、事業分離等会計基準及び連結会計基準等に対応し、少数株主持分(非支配株主持分)の取扱い、企業結合に係る取得関連費用の会計処理、暫定的な会計処理の確定に関する処理に関して改正を行った。
- 338-6. 2019年(平成31年)には、同年改正の企業結合会計基準に対応し、対価の返還を受ける場合の条件付取得対価の取扱いに関して改正を行った。また、結合当事企業の株主に係る会計処理に関する本適用指針の記載について事業分離等会計基準の記載と整合性を図るなどの改正を行った。
- 339. (以下、第353項まで削除)
Ⅰ.取得の会計処理
1.取得企業の決定
結合後企業に支配株主が存在する場合の取得企業の決定の考え方
- 354. 結合後企業に支配株主が存在するときは、次の理由により、当該株主により企業結合前から支配されていた結合当事企業(子会社)を取得企業とすることとした(第32項参照)。
- (1) 当該企業結合は、結合後企業を支配する株主の意思により行われたと考えることが合理的であり、企業結合前から子会社である結合当事企業を取得企業とすることが企業結合の実態に適合していると考えられること
- (2) 連結財務諸表上の取得企業と個別財務諸表上の取得企業とを整合させることが適当と考えられること
2.取得原価の算定方法
(1)支払対価が取得企業の株式の場合の取得の対価の算定
- 355. 本適用指針では、企業結合会計基準の趣旨に従って、支払対価として取得企業の株式が交付された場合の取得の対価の算定は当該株式の時価によることとしている(第38項参照)。
- 356. 金融商品会計基準第81-2項では、市場価格のない株式等について「たとえ何らかの方式により価額の算定が可能としても、それを時価とはしない」としているが、これは期末における評価を前提とした定めと考えられるので、取引価額の測定である取得の対価の算定においては、企業結合日における時価を用いることが合理的である。
なお、取得企業が非公開企業、被取得企業が公開企業の場合の取得の対価の算定は、原則として、被取得企業株式の市場価格に基づいて取得の対価を算定する。
以上の評価方法により取得の対価を算定した場合には、取得原価の算定と取得原価の配分(第51項参照)とは別個の手続として行われるため、通常、のれん(又は負ののれん)が生じることになる。 - 357. 非公開企業同士の株式の交換において、企業結合会計上の測定値として妥当と認められる時価純資産額が算定されている場合には、その時価純資産額を基礎にして被取得企業の時価を算定することも合理的であると考えられるため、被取得企業から受け入れた識別可能資産及び負債の正味の評価額により取得の対価を算定することができることとした。この方法によった場合には、取得原価の算定と取得原価の配分が一体の手続となるため、のれん(又は負ののれん)は発生しない。
- 358. (削 除)
- 359. (削 除)
- 360. (削 除)
(2)吸収合併存続会社が新株予約権等を交付したときの会計処理
- 361. 吸収合併消滅会社が新株予約権を発行している場合、当該新株予約権は合併の効力発生日に消滅することになるが(会社法第750条第4項)、吸収合併契約において、吸収合併存続会社が吸収合併に際して吸収合併消滅会社の新株予約権者に対して交付する当該新株予約権に代わる当該吸収合併存続会社の新株予約権又は現金に関する事項を定めなければならないとされた(会社法第749条第1項第4号及び第5号)。
- 当該吸収合併が取得とされた場合、吸収合併存続会社(取得企業)が吸収合併消滅会社の新株予約権者に対して、引き換えに交付した新株予約権又は現金は、当該吸収合併の一部として会計処理することが適当と考えられるため、取得原価に含めることとした(第50項(2)参照)。なお、当該吸収合併が共通支配下の取引等の場合には、子会社である吸収合併消滅会社の適正な帳簿価額を引き継ぐこととなる(第206項(2)②参照)。
- また、当該吸収合併が逆取得又は共同支配企業の形成と判定された場合、吸収合併存続会社は、吸収合併消滅会社の適正な帳簿価額を引き継ぐことになる。このため、会計上は、新株予約権の法的な取扱いにかかわらず、吸収合併存続会社は、合併期日において、吸収合併消滅会社の新株予約権の適正な帳簿価額をいったん引き継いだうえで、吸収合併存続会社が自社の新株予約権を交付した場合には、吸収合併存続会社が交付した新株予約権は吸収合併消滅会社の新株予約権の適正な帳簿価額を付すこととし、吸収合併存続会社が現金を交付した場合には、その差額を損益に計上することとした(第84-4項参照)。
- 当該取扱いは、吸収合併のほか、新設合併、会社分割における新株予約権に関する会計処理にも適用する。
3.取得原価の配分方法
(1)識別可能資産及び負債への取得原価の配分額の算定
- 362. 識別可能資産及び負債の時価は、企業結合日の時価を基礎として算定される。企業結合会計基準第102項では、「時価は、強制売買取引や清算取引ではなく、いわゆる独立第三者間取引に基づく公正な評価額であり、通常、それは観察可能な市場価格に基づく価額であるが、市場価格が観察できない場合には、合理的に算定された価額が時価となる」とされている。
合理的に算定された価額は、一般に、次に示すような見積方法が考えられ、資産の特性等により、これらのアプローチを併用又は選択して算定する(減損会計適用指針第28項(2)及び第109項)(第53項参照)。 - (1) コスト・アプローチ
同等の資産を受け入れるのに要するコストをもって評価する方法をいい、例えば原価法が該当する。 - (2) マーケット・アプローチ
同等の資産が市場で実際に取引される価格をもって評価する方法をいい、例えば取引事例比較法が該当する。 - (3) インカム・アプローチ
同等の資産を利用して将来における期待される収益をもって評価する方法をいい、例えば収益還元法や割引将来キャッシュ・フロー法が該当する。
(2)取得原価の配分額の算定における簡便的な取扱い
- 363. 取得原価の配分額は、受け入れた資産及び引き受けた負債の企業結合日における時価を基礎として算定することが原則であるが、実務の負担を考慮して、被取得企業の帳簿価額が適正であり、かつ、その帳簿価額と時価との差異が重要でないと見込まれる場合には、被取得企業の適正な帳簿価額を基礎として取得原価の配分額を算定できることとした。
したがって、例えば、土地など、通常、適正な帳簿価額と時価等との差異が重要になると想定される項目については、当該方法の適用について慎重に判断する必要がある。
(3)時価が一義的に定まりにくい資産への配分額の特例
- 364. 取得原価の配分額の算定にあたり、時価が一義的に定まりにくい土地をはじめとした固定資産等の資産を何らかの仮定に基づき評価すると、多額の負ののれんの発生が見込まれる場合には、企業結合条件の交渉過程で当該資産はもともと低く評価されていたと考えられるので、当該資産の評価を改めて行う意義は見出しづらい。
このため、当該資産に対する取得原価の配分額は、負ののれんが発生しない範囲で評価した額(当該資産を何らかの仮定に基づき評価した額から追加的に発生することが見込まれる負ののれんを控除した額)とすることができる。
ただし、時価が一義的に定まりにくい資産であっても、取得企業は企業結合条件の交渉過程で、利用可能な独自の情報や前提など合理的な基礎に基づき、一定の評価を行っていることが想定される。このため、本適用指針では、取得の対価の算定にあたり、その評価額が考慮されている場合には、その評価額を基礎に取得原価を配分することとした。したがって、このような場合には、当該資産に対する取得原価の配分額を備忘価額とすることは適当ではない。
なお、当該取扱いは、時価が一義的に定まりにくい資産に限定したものであるので、合理的な評価が可能である資産について、当該取扱いを適用することは認められない。
(4)無形資産への取得原価の配分
- 365. 我が国においては、無形資産に係る包括的な会計基準が存在しないため、本適用指針では、無形資産に関連する会計基準及び現在の実務慣行を参考にして無形資産に関する取扱いを示している。したがって、今後、無形資産に関する会計基準が整備された時点で、本適用指針の関連箇所は見直されることがあり得る。
- 366. (削 除)
- 367. 分離して譲渡可能な無形資産(第59項参照)であるか否かは、対象となる無形資産の実態に基づいて判断すべきであるが、例えば、ソフトウェア、顧客リスト、特許で保護されていない技術、データベース、研究開発活動の途中段階の成果(最終段階にあるものに限らない。)等についても分離して譲渡可能なものがある点に留意する。
- 367-2. 企業結合の目的の1つが、特定の無形資産の受入れにあり、その無形資産の金額が重要になると見込まれる場合には、取得企業は、利用可能な独自の情報や前提等を基礎に一定の見積方法(第53項参照)を利用し、あるいは外部の専門家も関与するなどして、通常、取締役会その他の会社の意思決定機関において、当該無形資産の評価額に関する多面的かつ合理的な検討を行い、それに基づいて企業結合が行われたと考えられる。このような場合には、当該無形資産については、識別して資産計上することが適当と考えられ、分離して譲渡可能なものとして取り扱うこととした(第59-2項参照)。
- 367-3. 企業結合により受け入れた研究開発の途中段階の成果について資産として識別した場合には、当該資産は企業のその後の使用実態に基づき、有効期間にわたって償却処理されることとなるが、その研究開発が完成するまでは、当該無形資産の有効期間は開始しない点に留意する。
(5)無形資産の認識要件を満たさないものの例
- 368. 法律上の権利など分離して譲渡可能という認識要件を満たさないため、無形資産として認識できないものの例としては、被取得企業の法律上の権利等による裏付けのない超過収益力や被取得企業の事業に存在する労働力の相乗効果(リーダーシップやチームワーク)がある。これらは識別不能な資産としてのれん(又は負ののれんの減少)に含まれることになる。
- 369. (削 除)
(6)いわゆるブランドの取扱い
- 370. 企業結合によって受け入れた、いわゆるブランドについて、のれんと区分して無形資産として認識可能かどうかという論点がある。
ブランドは、プロダクト・ブランドとコーポレート・ブランド(企業又は企業の事業全体のブランド)に分けて説明されることがある。両者は商標権又は商号として、ともに法律上の権利の要件を満たす場合が多いと考えられるが、無形資産として認識するためには、その独立した価額を合理的に算定できなければならない。このうち、コーポレート・ブランドの場合には、それが企業又は事業と密接不可分であるため、無形資産として計上することは通常困難であるが、無形資産として取得原価を配分する場合には、事業から独立したコーポレート・ブランドの合理的な価額を算定でき、かつ、分離可能性があるかどうかについて留意する必要がある。 - 371. (削 除)
(6-2)リースに係る使用権資産及びリース負債への取得原価の配分
- 371-2. 2024年9月公表のリース会計基準に係る公開草案の公表後の審議において、企業結合時における使用権資産並びにリース負債の認識及び測定に関する取扱いについて検討を行った。
識別可能資産及び負債への取得原価の配分額は、企業結合日の時価を基礎として算定する取扱いとなっている(企業結合会計基準第28項)(本適用指針第51項参照)。当該取扱いに従うと、リースに係る使用権資産及びリース負債についても企業結合日の時価を算定することになると考えられる。
しかしながら、使用権資産及びリース負債について企業結合日の時価を算定することは、時価で測定するための情報の入手が困難な場合があることや時価の算定が複雑となる場合があると考えられる。この点、IFRS第16号「リース」の結論の根拠においても同様の指摘がなされている。このため、リース負債は企業結合日現在で新規のリースであったかのように残りの借手のリース料の現在価値を基礎として取得原価の配分額を算定できることとした(本適用指針第61-2項参照)。
この場合、使用権資産は、原則としてリース負債と同額を基礎として取得原価の配分額を算定するが、リースの条件が市場の条件と比較して有利又は不利になる場合や借地権の設定に係る権利金等がある場合については、使用権資産への取得原価の配分額がより適切になるように、リース負債の額にこれらの金額を加減した金額を基礎として取得原価の配分を行うこととした(本適用指針第61-2項参照)。 - 371-3. 審議の過程において、リースの条件が市場の条件と比較して有利又は不利になる場合に市場と異なる条件の影響を調整した額を基礎として使用権資産の取得原価の配分額を算定する取扱いについて、重要性がない場合まで当該調整を行うことにならないように条件を定めるかどうかについて検討を行った。この点、重要性がない場合にまで当該調整を求める必要はないと考えられるものの、明示的に条件を定めると国際的な会計基準との差異になると考えられることから、条件を定めないこととした。
少額リース及び企業結合日において残りの借手のリース期間が12か月以内であるリース
- 371-4. リース適用指針においては、少額リースについては、重要性が乏しい場合が多いことを理由に使用権資産及びリース負債を計上しない会計処理を認めている(リース適用指針第22項)。企業結合において、少額リースが企業結合時の取得原価の配分にあたって重要な影響を与えると考えられないことから、本適用指針では、企業結合時に少額リースについて取得原価を配分しないことができるとした(本適用指針第61-3項参照)。
- 371-5. また、リース適用指針においては、短期リースについても、重要性が乏しい場合が多いことを理由に使用権資産及びリース負債を計上しない会計処理を認めている(リース適用指針第20項及び第21項)。
リース適用指針第4項(2)はリース開始日において借手のリース期間が12か月以内であるリースを短期リースとしているが、企業結合においては企業結合日の状況に基づいて会計処理を行うことが多いことから、企業結合日を起点として短期であるかどうかの判断を行うことが合理的と考えられる。したがって、本適用指針では、リース適用指針が定める短期リースではなく、企業結合日において残りの借手のリース期間が12か月以内であるリースを対象として、企業結合時に取得原価を配分しないことができることとした(本適用指針第61-3項参照)。
これに関連して、リース適用指針においては、短期リースについて、金額的に重要性のあるリース負債がオフバランスとなる可能性があるという点などから、財務諸表利用者が財政状態及び経営成績を評価するために有用な情報を提供するとして短期リースに係る費用の発生額の開示を求めている(リース適用指針第100項及びBC146項)。この点は企業結合日において残りの借手のリース期間が12か月以内であるリースについても同様と考えられることから、企業結合日後に計上した費用について、損益計算書において区分して表示していない場合、リース適用指針第100項(1)の短期リースに係る費用の発生額に含めて注記することとした(本適用指針第61-3項参照)。
(7)企業結合に係る特定勘定への取得原価の配分
- 372. 企業結合に係る特定勘定の計上は、一定の費用又は損失を負債として認識した方が、「その後の投資原価の回収計算を適切に行い得る」(企業結合会計基準第99項)ためである。すなわち、企業結合の条件交渉の過程で、被取得企業に関連して発生する可能性のある将来の費用又は損失が取得の対価に反映されている場合(取得の対価がそれだけ減額されている場合)には、被取得企業が企業結合日前に当該費用又は損失を負担したと考えられるので、これらの費用等を企業結合日以後の取得企業の業績に反映させない方が取得企業の投資原価の回収計算を適切に行うことができると考えられるからである。
- 373. 企業結合に係る特定勘定として負債計上する費用又は損失としては、例えば、次が考えられる。
- ・人員の配置転換や再教育費用
- ・割増(一時)退職金
- ・訴訟案件等に係る偶発債務
- ・工場用地の公害対策や環境整備費用
- ・資産の処分に係る費用(処分費用を当該資産の評価額に反映させた場合で、その処分費用が処分予定の資産の評価額を超過した場合には、その超過額を含む。)
- なお、これらの費用又は損失を企業結合に係る特定勘定に計上する場合は、第63項及び第64項を満たした場合に限られることに留意する必要がある。
(8)企業結合に係る特定勘定に計上できる費用又は損失の範囲
- 374. 第63項で示されているように、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準の下で認識される識別可能負債に該当する場合には、当該識別可能負債として取得原価を配分しなければならないので、企業結合に係る特定勘定として認識することはできないことに留意する必要がある。
なお、2003年(平成15年)公表の企業結合会計基準では、「取得後短期間で発生することが予測される」ものとされていたことから、2005年(平成17年)公表の本適用指針では、企業結合日後5年以内に発生するものであることとされていた。そのような費用又は損失の発生は通常5年程度以内と考えられるものの、2008年(平成20年)改正の企業結合会計基準を踏まえて、その後の投資原価の回収計算を適切に行いうるという観点から、2008年(平成20年)改正の本適用指針では、このような限度期間は示さないこととした。
また、第63項における「特定の事象に対応した費用又は損失(ただし、識別可能資産への取得原価の配分額に反映されていないものに限る。)」により、具体的な事象が特定されていない将来の営業損失については当該負債の認識の対象とはならないことと、特定の事象に対応した費用又は損失が識別可能資産への取得原価の配分額に反映されている場合には、資産の評価額がすでに減額されているため該当しないことに留意する必要がある。
さらに「被取得企業に係る費用又は損失」とされているように、パーチェス法は取得企業の観点から会計処理を行うものであること、取得の対価の算定に反映される事象は、被取得企業に関連した費用又は損失と考えることが合理的であることから、取得企業に係る将来の費用又は損失は当該負債の対象とはならず、企業結合日後に発生する被取得企業に係る費用又は損失に限定されることとなる。
(9)取得の対価の算定に反映されている場合
- 375. 企業結合に係る特定勘定に関して、実務上、企業結合条件の交渉の過程で当該事象に係る金額が対価の算定に反映されていたことが契約条項等から明らかな場合は少ないと考えられるが、第64項(1)から(3)では、「その発生の可能性が取得の対価の算定に反映されている場合」の要件を示している。2005(平成17年)公表の本適用指針は(1)と(2)のいずれかの要件を満たしている場合とされていたが、2008年(平成20年)改正の本適用指針では、同年改正の企業結合会計基準第33項を踏まえて、(3)の要件を満たす場合についても、「その発生の可能性が取得の対価の算定に反映されている場合」に含めることとした。
- 376. (削 除)
(10)企業結合日以後の企業結合に係る特定勘定の会計処理
- 377. 企業結合に係る特定勘定は、企業結合に係る「未決算勘定」としての性格が強いと考えられるので、当該負債の計上後に、引当金又は未払金など、他の負債項目としての認識要件を満たした場合には、当該負債から他の適当な負債科目に振り替える必要がある(第66項参照)。
- したがって、例えば、当該負債の認識の対象が被取得企業に係る偶発損失の場合には、当該偶発損失が発生したとき、又は発生しないことが明らかとなったときに当該負債を取り崩し、また偶発損失引当金の要件を満たしたときに当該引当金に振り替えることになる。
- なお、当該負債は、取得の対価に反映されている場合(第62項参照)を前提として計上されるため、暫定的な会計処理の対象外となる。
(11)取得原価の配分における暫定的な会計処理
- 378. 企業結合会計基準第104項により、「識別可能資産及び負債を特定し、それらに対して取得原価を配分する作業は、企業結合日以後の決算前に完了すべきであるが、それが困難な状況も考えられる」とされ、また、企業結合会計基準第49項(4)③では、「取得原価の配分が完了していない場合は、その旨及びその理由」を(連結)財務諸表に注記することが求められている。このように、暫定的な会計処理は取得原価の配分作業について困難な理由があるときに限り容認されるものと考えられる。
また、本適用指針では、第54項(取得原価の簡便的な配分処理)の要件を満たす場合には、識別可能資産及び負債に対し、その適正な帳簿価額を基礎として取得原価を配分することができるとしている。取得企業が、このような簡便的な取得原価の配分処理を適用した場合には、取得原価の配分作業について困難な理由があるときには該当しない。
よって、暫定的な会計処理が認められる項目とは、原則として、識別可能資産及び負債の企業結合日における時価と被取得企業の適正な帳簿価額が大きく異なることが想定され、その時価の算定に時間を要するものに限られると考えた。
なお、被取得企業の適正な帳簿価額を基礎として取得原価を売上債権に配分した後に発生した貸倒損失(設定された貸倒引当金を上回る損失額)は、取得企業の貸倒損失として費用計上しなければならず、当該損失をのれんに振り替え、資産計上することは認められない。 - 378-2. 2005年(平成17年)公表の本適用指針では、暫定的な会計処理の確定が、企業結合年度の翌年度に行われた場合には、企業結合年度の財務諸表が既に確定しているため、企業結合年度に暫定的な会計処理の確定による取得原価の配分の見直しが行われたとしたときの損益影響額を、企業結合年度の翌年度において、原則として、特別損益(前期損益修正)に計上することとしていた。
- しかしながら、2013年(平成25年)改正の企業結合会計基準においては、国際的な会計基準と同様に、追加的に入手した情報等に基づき企業結合年度の翌年度に行われた当該暫定的な会計処理の確定は、企業結合年度に行われたかのように会計処理を行うこととされた(企業結合会計基準(注6))ため、企業結合日におけるのれん(又は負ののれん)の額も取得原価が再配分されたものとして処理することとした(第70項参照)。同じく、繰延税金資産及び繰延税金負債への取得原価の配分額に関して、追加的に入手した情報等に基づき企業結合年度の翌年度に見直された場合も、企業結合年度に行われたかのように会計処理することとしたが、それは、企業結合年度における繰延税金資産の回収見込額の見直しを行う場合に限られることに留意する必要がある(第73項参照)。
(12)繰延税金資産及び繰延税金負債への取得原価の配分
- 378-3. のれん(又は負ののれん)については、配分残余という性格上、税効果を認識しても同額ののれん(又は負ののれん)が変動する結果となるため、あえて税効果を認識する意義は薄いと考えられる(第72項参照)。
- なお、平成18年度税制改正により、非適格合併等における税務上ののれん(資産調整勘定又は差額負債調整勘定)に関する規定が定められているが、当該税務上ののれんが認識される場合においては、その額を一時差異とみて、第71項に基づき繰延税金資産又は繰延税金負債を計上した上で、配分残余としての会計上ののれん(又は負ののれん)を算定することに留意する必要がある。
(13)繰延税金資産に対する取得原価の配分額の確定
- 379. 本適用指針では、繰延税金資産の回収可能額を見直した場合、その見直しの内容が、明らかに企業結合年度における繰延税金資産の回収見込額の見直しと考えられるときや、企業結合日に存在していた事実及び状況に関して、その後追加的に入手した情報等に基づき繰延税金資産の回収見込額の見直しを行う場合に限り、企業結合日に遡及して取得原価を再配分することとしている(第73項参照)。これは、次の理由による。
- (1) 繰延税金資産の回収可能性は、将来年度の課税所得の見積額等により判断することとなるが、企業結合日が決算の直前となる場合は取得した事業について取得した当初に合理的な見積りを行うことは困難な場合が多いと考えられる。したがって、企業結合日に存在していた事実及び状況に関して、その後追加的に入手した情報等に基づく繰延税金資産の回収見込額の見直しは、企業結合日の取得原価の再配分として処理することが適当であること
- (2) 明らかに企業結合年度における繰延税金資産の回収見込額の見直しと考えられるときは、企業結合日に遡及して取得原価を再配分するとすることにより、企業結合年度の繰延税金資産の回収見込額は適正なものとなること
- 379-2. 企業結合日後に追加的に入手した情報等に基づく繰延税金資産の回収見込額の見直しが、企業結合における取得原価の再配分の対象となるかどうかは、当該情報等が企業結合日に存在していた事実及び状況を示す内容であるかどうかに留意する必要がある。企業結合日後に新たに発生した事象に起因する情報は、見直しの対象に該当しない。また、一般的には、企業結合年度の繰延税金資産の回収見込額の見積りが十分な情報に基づくものではなく、暫定的な会計処理の対象となっていた場合に、見直し対象になると考えられる。
- 通常、追加的な情報等を入手した日と企業結合日の期間が長くなるほど、当該情報は見直し対象に該当しない可能性が高くなると考えられる。繰延税金資産の回収見込額の見直しが、企業結合日に存在していた事実及び状況を示す内容であると認められない場合は、当該見直しによる損益影響額はその見直しを行った事業年度の損益(法人税等調整額)に計上することとなる。
(14)のれんの会計処理
- 380. 本適用指針において、のれんの償却期間及び償却方法は、企業結合ごとに決定することを明確にした(第76項(6)参照)。これは企業結合ごとにのれんの発生原因が異なるためである。
また、のれんの当期償却額は販売費及び一般管理費の区分に表示することとなる(企業結合会計基準第47項)。これは、次の理由によるものと考えられる。 - (1) のれんの規則的な償却を行う方法を採用した理由として、企業結合会計基準第105項では、「企業結合の成果たる収益と、その対価の一部を構成する投資消去差額の償却という費用の対応が可能になる」こと、また、「のれんは投資原価の一部であることに鑑みれば、のれんを規則的に償却する方法は、投資原価を超えて回収された超過額を企業にとっての利益とみる考え方とも首尾一貫している」とされている。したがって、企業結合後の収益が営業収益に計上される限り、のれんを含む投資原価の償却分も営業費用に計上し、投資原価の回収状況を営業損益として表示することが企業結合会計基準の趣旨に合致するものと考えられたからである。
- (2) 従来から、連結調整勘定(借方)の当期償却額は、販売費及び一般管理費の区分に表示するとされていたことによる。
- 381. 検討状況の整理(2005年(平成17年)1月)に対するコメントの中には、企業結合に伴って発生するのれんを、発生時に一括償却し、その償却額を特別損失に計上する会計処理を認めるべきであるとの意見が寄せられた。当該意見は、のれんの効果の及ぶ期間を合理的に算定するのは困難であることから、特別損失での一括償却を認めることで、償却期間に対する恣意性の排除及び貸借対照表の健全性の早期確保が可能であること(保守主義の原則)等を論拠とするものである。
しかしながら、次の理由から、のれんを企業結合日に全額費用処理し、これを特別損失に計上することは適当ではないと考えた。 - (1) 取得企業は、被取得企業との企業結合にあたって、受け入れる資産及び引き受ける負債の純額を超える何らかの価値(例えば、被取得企業の継続企業としての要素の価値や企業結合により期待されるシナジーなど)を見出し、それに対して自社の株式等の対価を支払ったと考えられる。一方、企業結合日にのれんを全額費用処理することは、会計上、のれんの価値が消滅したものとすることと同じである。のれんに資産価値があると考えられるにもかかわらず、その価値が消滅したものとして会計処理することは、過度の保守主義(企業会計原則注解(注4))に該当し適当ではない。また、のれんは、その効果の及ぶ期間にわたり償却するとしている企業結合会計基準の定めに反することになる。
- (2) 繰延税金資産の回収見込額の算定、引当金の計上額の算定など、合理的な見積りが必要とされる会計処理は、多数存在する。また、償却期間の算定が容易ではないのは、有形固定資産の耐用年数を見積る場合にも当てはまる。一般に、償却の基礎となる資産の有効期間は、売却による回収額と利用による回収額が等しくなると考えられる時点までの期間であり、それは資産に含まれるのれんの価値が消滅するまでの期間を見積っていることにほかならない。したがって、のれんの償却期間の見積りが困難であることを理由にのれんを企業結合日に全額費用処理することは、現行の他の会計処理との整合性が図れないことになる。
- (3) 投資家に開示する企業結合後の損益情報は、取得企業が投資原価(取得原価)と比べてどれだけの利益を獲得しているかを示すことが重要である。のれんを減損処理以外の事由で企業結合日に全額費用処理し、これを特別損失に計上した場合、それ以後、のれんの償却額が発生しないため、企業結合の投資原価がその後の営業損益には反映されないことになる。この結果、企業結合後の営業損益は、企業結合の成否に関する情報としての有用性を欠くことになる。
- 382. のれんの効果の及ぶ期間を合理的に見積った結果として、稀ではあるが、のれんの償却額が企業結合年度に全額計上されることはあり得ると考えられる。ただし、この場合には、企業結合年度の営業収益でのれんにあたる無形価値への投資原価(取得原価)の回収が期待されているため、のれんの償却額は特別損失ではなく、営業費用(販売費及び一般管理費)に計上されることになる(第380項(1)参照)。
なお、実務上、のれんの償却期間の決定にあたり、企業結合の対価の算定の基礎とした投資の合理的な回収期間を参考にすることも可能である。 - 382-2. 在外子会社株式の取得により、在外子会社を資本連結する際に生じたのれんについては、従来、親会社の通貨である円貨額で固定されていると考え、為替相場の変動による影響を受けないとしていた。これに対して、のれんの主要な部分は実質的に個別の認識の要件を満たさない資産を構成するものと考えられるため、在外子会社株式の取得により生じるのれんは当該在外子会社の他の資産と同様に、在外子会社の現地通貨で発生したものとみて換算することが整合的であるとする考え方がある。また、在外子会社の子会社(在外孫会社)の連結においては、親会社が在外孫会社の財務諸表を直接換算する場合と、在外子会社の連結財務諸表として換算する場合があるが、在外孫会社を資本連結する際に生じたのれんを決算日の為替相場で換算することにより整合的に取り扱うことができることとなる。これらの考え方を踏まえて、国際的な会計基準と同様に、2008年(平成20年)改正の本適用指針では決算日の為替相場で換算することとした(第77-2項参照)。
なお、この場合でも、在外子会社の個別財務諸表には当該のれんを計上する必要はなく、在外子会社の資産の換算と同様に連結財務諸表の作成上の処理として行うこととなる。 - 383. (削 除)
4.取得企業の増加資本の会計処理
(1)新株を発行した場合の会計処理
- 384. 企業結合の対価として、取得企業が新株を発行した場合には、払込資本、すなわち、資本金又は資本剰余金を増加させることとした(第79項参照)。パーチェス法の会計処理においては、取得企業の増加すべき株主資本は払込資本を増加させることが適当と考えられるためである。したがって、留保利益である利益剰余金を増加させることはできない(第408項及び第409項参照)。
- 385. 取得企業の増加すべき株主資本は、会計上、払込資本に限定した上で、具体的にどの株主資本項目を増加させるかは、分配可能額を定める会社法の規定に基づき決定することとなる。
従来の実務では、合併又は分割型の会社分割(人的分割)において、吸収合併存続会社又は吸収分割承継会社は企業結合日において時価以下で評価された吸収合併消滅会社又は分割会社の資産及び負債を承継し、また、吸収合併消滅会社又は分割会社の分配可能な剰余金を利益剰余金等として引き継ぐ処理が一般的に行われてきた。これは、旧商法の下では、合併及び分割型の会社分割(人的分割)において剰余金の引継ぎに関する制度があり、また、企業結合に関する会計基準が整備されていなかったためと思われる。 - 386. この点に関し、会社法においては、剰余金の引継ぎに関する制度は原則として廃止され、企業結合が取得とされた場合、企業結合による増加すべき株主資本のうち、どの株主資本項目を増加させるかは、吸収合併消滅会社又は分割会社の資本構成にかかわりなく、吸収合併存続会社又は吸収分割承継会社が任意に決定できることとされた。
- 387. 本適用指針では、第384項の考え方に従い、企業結合の手続の中で剰余金が直接増加したとしても、会計上は分配可能な払込資本が増加したものと考えて、その他資本剰余金を増加させることとした。
(2)自己株式を処分した場合の会計処理
- 388. 2005年(平成17年)公表の本適用指針では、自己株式の処分のみの場合と新株の発行と併用される場合の2つの定めを設け、前者については、増加すべき株主資本の額を自己株式の処分の対価として自己株式の処分の会計処理を行い、後者については、増加すべき株主資本の額を新株の発行及び自己株式の処分の株式数の比率により按分し、処分した自己株式に相当する額については自己株式の処分の会計処理を行うこととしていた。
2006年(平成18年)改正の本適用指針では、対価が新株のみの場合の処理及び会社計算規則との整合性を考慮し、増加すべき株主資本の額(自己株式の処分の対価の額)から処分した自己株式の帳簿価額を控除した額について、払込資本(資本金又は資本剰余金)を増加(当該差額がマイナスとなる場合にはその他資本剰余金を減少)させることとし(第80項及び第112項参照)、会計上、取得企業の増加すべき株主資本を払込資本に限定した上で、具体的にどの株主資本項目を増加させるかは、分配可能額を定める会社法の規定に基づき決定することとした。
(3)取得企業の株式又は現金以外(例えば親会社株式)を対価とする場合の会計処理
- 389. 会社法では、吸収合併、吸収分割又は株式交換の場合において、吸収合併消滅会社の株主、吸収分割会社若しくはその株主又は株式交換完全子会社の株主に対して、吸収合併存続会社、吸収分割承継会社又は株式交換完全親会社の株式を交付せず、金銭その他の財産を交付することができるとされている。
企業結合会計基準第84項では、「取得原価は対価の形態にかかわらず、支払対価となる財の時価で算定される」としているため、企業結合の対価として、取得企業の株式又は現金以外の財産を交付した場合にも、取得の対価は交付した財産の時価を基礎として算定することになる。この場合、交付した財産の時価とその適正な帳簿価額との差額をどのように処理するかの論点がある。
本適用指針では、取得企業が企業結合の対価として取得企業の株式又は現金以外の財産を交付した場合には、資産の処分取引として考え、その差額は取得企業の損益に計上することとした(第81項参照)。 - 390. 子会社が親会社株式を支払対価として他の企業と企業結合する場合には、企業集団からみると、親会社が企業結合の対価として自己株式を処分する取引と同様に考えることができるため、連結財務諸表上は資本取引として取り扱うことが適当である。このため、子会社の個別財務諸表上、損益に計上した親会社株式の処分差額を連結財務諸表上は自己株式処分差額に振り替えることとした(第82項参照)。
5.吸収合併消滅会社の最終事業年度の会計処理
- 391. 合併による逆取得又は共同支配企業の形成の場合、吸収合併消滅会社は消滅するものの、会計上は持分が継続しているため、吸収合併消滅会社は、最終事業年度に資産及び負債の適正な帳簿価額を算定し、その額が吸収合併存続会社に引き継がれることになる。
これに対して、合併による企業結合が取得とされた場合、吸収合併消滅会社は会計上も清算されたとみるため、吸収合併消滅会社の最終事業年度の財務諸表は、正味売却価額に基づくことが考えられる。しかしながら、実務における費用対効果を勘案して、吸収合併消滅会社の最終事業年度の財務諸表は、吸収合併消滅会社が継続すると仮定した場合の適正な帳簿価額によることとした(第83項参照)。
6.分離元企業の会計処理
(1)分離元企業における受取対価の時価
- 392. 分離元企業において、移転した事業に対する投資が清算されたと考えられる場合でも、交付された分離先企業の株式の時価又は移転した事業の時価の算定が困難なときには、分離元企業において移転損益を認識することは適当ではないという意見がある。
しかしながら、企業結合・事業分離においては様々な事業価値評価がなされており、特に、投資が清算されたと考えられる場合は、第三者との間の外部取引であるため、何らかの形で事業の価値を算定していると考えられること、企業結合会計基準では、取得とされた企業結合(非支配株主との取引も含む。)に対して、時価の算定の困難性を理由として、帳簿価額によることができる旨の定めはないことなどから、事業分離に関する会計処理上、分離先企業の株式の時価又は移転した事業の時価の算定が必要なとき(例えば、移転損益を認識するとき)には、原則として、当該時価を算定することとした。 - 393. 分離先企業の株式などの受取対価又は移転した事業のいずれについても、市場価格がないこと等により公正な評価額を合理的に算定することが困難と認められる場合には、代替的に、識別可能な分離先企業又は移転した事業に係る資産及び負債の時価に基づく正味の評価額を用いることができる。
これは、受取対価又は移転した事業全体の公正な評価額を合理的に算定することが困難と認められる場合の取扱いであるため、当該正味の評価額にのれん(又は負ののれん)は含まれない。
(2)分離元企業における移転損益の認識
- 394. 分離先企業の株式のみを受取対価とする事業分離において、分離先企業が新たに分離元企業の子会社となる場合、経済実態として、分離元企業における当該事業に関する投資がそのまま継続していると考えられる(事業分離等会計基準第87項)。また、分離先企業が新たに関連会社となる場合も、現行の会計基準等における考え方を踏まえれば、事業分離により分離先企業が新たに子会社となる場合と同様に、移転された事業に関する投資が継続しているとみることが適当と考えられる(事業分離等会計基準第98項から第100項)。
- したがって、当該取引においては、移転損益は認識されず、当該分離元企業が受け取った分離先企業の株式(子会社株式又は関連会社株式)の取得原価は、移転事業に係る株主資本相当額(第87項(1)①参照)に基づいて算定する(第98項(1)及び第100項(1)参照)。
- なお、移転事業に係る株主資本相当額がマイナスの場合、資産の貸借対照表価額はマイナスにならないことから分離元企業が受け取った分離先企業の株式(子会社株式又は関連会社株式)の取得原価はゼロとし、当該マイナスの金額(事業分離前に分離先企業の株式を有していた場合には、まず、当該分離先企業の株式の適正な帳簿価額を充て、これを超えることとなったマイナス金額)は株式の評価的な勘定として「組織再編により生じた株式の特別勘定」等、適切な科目をもって負債に計上することが適当と考えられる。当該負債の事業分離後の会計処理は、分離元企業が当該分離先企業の株式を処分したときには損益に振り替え、現物配当(分割型の会社分割を含む。)を行ったときは株主資本を直接変動させるなど、通常の有価証券の会計処理に従うこととなる。
- 395. 事業分離等会計基準では、現金等の財産(第95項参照)と分離先企業の株式を受取対価とする事業分離において、分離元企業は、個別財務諸表上、次の処理を行うとしている。
- (1) 子会社へ事業分離する場合や分離先企業が子会社となる場合には、共通支配下の取引又は共通支配下の取引に準ずる取引として取り扱う(第104項参照)ため、分離元企業が受け取った現金等の財産は、原則として、移転前に付された適正な帳簿価額により計上し、当該価額が移転事業に係る株主資本相当額を上回る場合には、当該差額を移転利益として認識することとなる(第230項参照)。
- (2) 関連会社へ事業分離する場合や事業分離により分離先企業が新たに関連会社となる場合には、共通支配下の取引にあたらないため、分離元企業が受け取った現金等の財産は、原則として、時価で計上し、当該時価が移転事業に係る株主資本相当額を上回る場合には、原則として、当該差額を移転利益として認識することとなる(第105項参照)。
- なお、これらの場合において、移転事業に係る株主資本相当額(第87項(1)①参照)がマイナスのときには、前項と同様に、分離元企業が受け取った分離先企業の株式(子会社株式又は関連会社株式)の取得原価をゼロとしても、現金等の財産を受け取ったため、当該差額の取扱いが問題となる。受け取った分離先企業の株式が子会社株式又は関連会社株式となる場合について投資は継続しているという事業分離等会計基準の考え方を踏まえ、(1)又は(2)のように移転利益を認識するとしても、積極的に認識するわけではないため、受け取った現金等の財産の額を超えて移転利益を計上することは適当ではないと考えられる。したがって、受け取った分離先企業の株式(子会社株式又は関連会社株式)の取得原価をゼロとしても、受け取った現金等の財産の額(分離先企業が子会社の場合は移転前に付された適正な帳簿価額、分離先企業が関連会社の場合は時価)と等しい金額については、移転利益として認識せざるを得ないが、マイナスの移転事業に係る株主資本相当額(事業分離前に分離先企業の株式を有していた場合には、まず、当該分離先企業の株式の適正な帳簿価額を充て、これを超えることとなったマイナス金額)については、当該分離先企業の株式の評価的な勘定として「組織再編により生じた株式の特別勘定」等、適切な科目をもって負債に計上することとした。
(3)分離元企業の連結財務諸表上においてパーチェス法が適用されることにより計上されるのれん
- 396. 分離先企業が新たに分離元企業の子会社となる場合、分離先企業については分離元企業の連結財務諸表上、パーチェス法を適用することとなる。このため、原則として、分離元企業(親会社)の持分に相当する取得原価(分離先企業に対して投資したとみなされる額)と受け入れた資産及び引き受けた負債に配分された純額(対応する分離先企業の事業分離直前の資本)との差額は、のれんに計上されることとなる。
例えば、共同新設分割(従来の分社型)により、分離元企業(新設分割会社)A社はa事業(当該事業に係る諸資産の適正な帳簿価額480、当該事業の時価800)を、B社はb事業(当該事業に係る諸資産の適正な帳簿価額100、当該事業に係る諸資産の時価150、当該事業の時価200)を新設分割承継会社Y社に移転し、A社はY社を子会社(持分比率80%)、B社はY社を関連会社(持分比率20%)とするものとする。
A社はB社から受け入れた事業の80%を取得するため、B社の資産(及び負債)は100%支配することとなるが、のれんは80%しか買い入れていないとみる見方が考えられる。この場合には、A社の連結財務諸表上、パーチェス法を適用するにあたり、のれんは40(B社のb事業の時価200の80%と識別可能な資産(及び負債)に配分された純額150の80%との差額)(借方)が計上されることとなる。これは非支配株主持分に相当する部分ののれんについては問題があるといわれていることにも対応するものと考えられる。
ただし、共同新設分割による子会社の設立のように、まず、子会社となる分離先企業の個別財務諸表上で、取得した事業につきパーチェス法の適用により買入れのれん50が計上され、その後、分離元企業(親会社)の連結財務諸表上、子会社となった当該分離先企業の80%持分を有したと考える場合には、子会社となった分離先企業で計上した買入れのれん50をそのまま計上することができるのではないかという見方がある。
この見方においては、A社の連結財務諸表上、パーチェス法の適用による取得原価は200とみるものであり、この取得原価と識別可能な資産(及び負債)に配分された純額150との差額50(借方)としてのれんが算定されることとなることは企業結合会計基準の考え方に従っているものと考えられる。また、この場合、のれんは有償取得されているとみなされることや、当該のれんは連結会計基準が指摘するような親会社の持分について計上した額から推定して計上するわけではないこと、さらに、非支配株主持分に相当する部分10ののれんの償却額は非支配株主に帰属する当期純利益に含まれることとなるため、親会社株主に帰属する当期純利益の算定における償却額の負担についても問題となるわけではないと考えられる。 - 397. この論点は、①子会社となる分離先企業への事業の移転と、②分離先企業の株式を対価として受け取ることにより当該分離先企業が子会社化することとが、同時であることによって生じるものと思われる。すなわち、それらが同時ではない場合(例えば、子会社となる企業において他から取得した事業に係るのれんが計上されており、当該企業を取得し子会社化した場合)には、既に子会社で計上されているのれん全額を親会社の連結財務諸表において計上することとなるが、それらが同時である場合には、親会社の持分に対応するのれんの計上しか認められないかどうかという論点である。
このような場合、原則として、親会社の持分に対応するのれん40を計上するものと考えられるが、共同新設分割による子会社の設立のように、まず、子会社となる分離先企業の個別財務諸表上で、取得した事業につきパーチェス法の適用によりのれん50が計上され、その後、分離元企業(親会社)の連結財務諸表上、子会社となった当該分離先企業の持分を有したと考えられるような場合には、それらが同時に生じていても、いわば子会社で取得した事業(のれんを含む。)について持分を有するものと捉える見方も否定できないものとして、本適用指針では、子会社となった分離先企業で計上したのれんをそのまま計上することができるものとした。
なお、前者の場合には、分離元企業(親会社)の連結財務諸表上、親会社ののれんとして40が計上されているため、その償却額は非支配株主持分に負担させないが、後者の場合には、子会社となった分離先企業ののれんとして50が計上されているため、その償却額の一部は非支配株主持分に負担させることとなる。
(4)分離元企業の税効果会計
- 398. 分離元企業において、事業分離により移転する事業に係る資産及び負債が、現金以外の受取対価と引き換えられ、新たに当該受取対価が計上される場合には、一般的な交換の場合と同様に、新たに貸借対照表に計上された資産及び負債の金額と課税所得計算上の資産及び負債の金額(税務上の帳簿価額)との間に差額(一時差異)が生じる場合がある。例えば、分離先企業の株式のみを受取対価とする事業分離では、次のような場合がある。
- (1) 分離元企業において移転損益が認識されない場合、分離先企業株式の取得原価は、移転事業に係る株主資本相当額(第87項(1)①参照)に基づいて算定される(第98項参照)。適格組織再編(適格合併等、税務上、簿価引継又は簿価譲渡として取り扱われる組織再編をいう。以下同じ。)に該当する場合、税務上も、分離先企業株式の取得原価は、移転した事業に係る資産及び負債の税務上の帳簿価額に基づくため、この場合には、分離先企業株式に関して、移転した事業に係る資産及び負債の一時差異と同額の一時差異が生じる。
- (2) 分離元企業において移転損益が認識されないが、適格組織再編に該当しない場合には、税務上、分離先企業株式の取得原価は、当該株式の時価に基づくため、この場合には、基本的に、分離先企業株式に関して、移転した事業に係る資産及び負債の一時差異と同額の一時差異に加え、新たに税務上の移転損益相当額が一時差異として生じる。
- (3) 分離元企業において移転損益が認識される場合、分離先企業株式の取得原価は、当該株式の時価又は移転した事業の時価に基づいて算定される。これが適格組織再編に該当する場合、税務上、分離先企業株式の取得原価は、移転した事業に係る資産及び負債の税務上の帳簿価額に基づくため、この場合には、分離先企業株式に関して、当該株式の時価又は移転した事業の時価と移転した事業に係る資産及び負債の税務上の帳簿価額との差額が、一時差異として生じる。
- (4) 分離元企業において移転損益が認識され、適格組織再編に該当しない場合には、分離先企業株式の取得原価は時価となるが、当該株式の時価の測定時点が企業会計と課税所得計算とでは異なるなどの場合には、一時差異が生じる。
- 399. 分離元企業における税効果会計の主な論点としては、まず、事業分離日の属する事業年度の前期末(事業分離日の前日における仮決算を含む。)において、分離元企業が移転する事業に係る資産及び負債の一時差異に対して計上する繰延税金資産の回収可能性の判断をどのように行うかという論点がある。これについては、一般的な売却や交換の場合と同様に、分離元企業における事業分離日以後の将来年度の収益力に基づく一時差異等加減算前課税所得等により判断することとなり、分離先企業の将来年度の収益力に基づく一時差異等加減算前課税所得等は勘案しないものと考えられる。
- 400. ただし、投資が継続しているとみる場合(第398項(1)及び(2)参照)には、事業分離日において分離元企業で認識された繰延税金資産及び繰延税金負債は、通常、分離先企業において引き継がれるため、分離元企業から分離先企業に移転することとなる。事業分離日の直前において、分離元企業は、移転する繰延税金資産及び繰延税金負債の適正な帳簿価額を算定するが、その回収可能性は、事業分離が行われないものと仮定したときの分離元企業における将来年度の収益力に基づく一時差異等加減算前課税所得等に基づき判断することとなる。
なお、事業分離が行われないものと仮定して回収可能性を判断するのは移転する事業に係る繰延税金資産であって、残存する事業に係る繰延税金資産については、事業分離日以後は移転する事業から生じる課税所得等が分離元企業に帰属しないことから、同様の仮定をおいた課税所得等に基づいて判断するわけではなく、事業分離を考慮した実際の分離元企業における将来年度の収益力に基づく一時差異等加減算前課税所得等により判断することに留意する必要がある(第107項(2)参照)。 - 401. 次に、事業分離により移転する事業に係る資産及び負債が、分離先企業の株式など現金以外の受取対価と引き換えられ、新たに貸借対照表上、当該受取対価が計上される場合において、これらの金額と課税所得計算上の資産及び負債の金額(税務上の帳簿価額)との間に生じる差額(一時差異)に対して税効果会計をいつ適用するかが論点として挙げられる。これについては、一般的な交換の場合と同様に、分離先企業の株式のみを受取対価とする事業分離でも、原則として、事業分離日以後最初に到来する事業年度末に適用するものと考えられる。したがって、期末に繰延税金資産及び繰延税金負債が計上され、その差額を期首と期末で比較した増減額が法人税等調整額として計上されることとなる(税効果会計に係る会計基準 第二 二 3)。
- 402. しかしながら、投資が継続しているとみる場合には、事業分離日において分離元企業で認識された繰延税金資産及び繰延税金負債が分離先企業に移転することとなる(第400項参照)ため、これと同時に、分離先企業の株式等に係る一時差異に対する繰延税金資産及び繰延税金負債として、同額計上することが適当と考えられる(第108項(2)参照)。
- これは、投資が継続しているとみるため、連結財務諸表上は、当該繰延税金資産及び繰延税金負債を含めた移転する事業に係る帳簿価額が子会社に対する投資原価となるものの、個別財務諸表上、分離先企業の株式の取得原価は、移転する事業に係る資産及び負債の移転直前の適正な帳簿価額とし、税効果については、事業分離日において移転する事業に係る繰延税金資産及び繰延税金負債が引き換えられた分離先企業の株式等に係る一時差異に対する繰延税金資産及び繰延税金負債に置き換わったとみるものである。仮に個別財務諸表上、同額の繰延税金資産及び繰延税金負債を計上しない場合には、分離元企業で認識された繰延税金資産及び繰延税金負債が分離先企業に移転するため、当該金額が分離先企業株式の取得原価を構成することとなり、期末に計上される分離先企業株式に係る一時差異に対する繰延税金資産及び繰延税金負債や、それに関連する法人税等調整額が適切に算定されなくなってしまうという弊害が生じる。このため、個別財務諸表上はこのような弊害を避けるため、事業分離日において移転する事業に係る繰延税金資産及び繰延税金負債は、分離先企業の株式等に係る一時差異に対する繰延税金資産及び繰延税金負債として同額計上することとした。
- 403. (削 除)
7.取得とされた株式交換及び株式移転の会計処理
(1)株式交換完全親会社等の税効果会計の取扱い
- 404. 株式交換又は株式移転により株式交換完全親会社等は株式交換完全子会社等の株式を取得することになるが、当該企業結合にパーチェス法が適用される場合、取得した子会社株式に係る一時差異に対する税効果を認識するかどうかが論点となる。
本適用指針では、次の理由から、株式交換完全親会社等が株式交換完全子会社等の株式を継続保有する方針の場合には、株式交換又は株式移転のときから生じている子会社株式に係る一時差異について、税効果を認識しないこととした。 - (1) 継続保有を前提として新規に子会社株式を取得したにもかかわらず、税効果を通じて株式の取得時に損益を認識することは適当ではないこと
- (2) 将来における投資の売却により解消する一時差異は、親会社が売却時期を決定でき、かつ予測可能な将来の期間に売却を行う意思がない場合は税効果を認識しない(企業会計基準適用指針第28号「税効果会計に係る会計基準の適用指針」第22項及び第23項)という連結財務諸表における税効果の取扱いと整合的であること
(2)株式交換完全親会社等が新株予約権付社債を承継する場合等の結合当事企業の個別財務諸表上の会計処理
- 404-2. 株式交換又は株式移転に際し、株式交換完全親会社等が株式交換完全子会社等の新株予約権者に新株予約権を交付する場合、又は株式交換完全親会社等が新株予約権付社債を承継する場合の結合当事企業の会計処理は、次のようになる。なお、これらは株式移転を前提として記載するが、株式交換の場合も同様の考え方となる。
- (1) 株式移転完全子会社の個別財務諸表上の会計処理
株式移転完全子会社は、新株予約権又は新株予約権付社債に係る義務の履行を免れたため、株式移転日の前日に純資産の部又は負債の部に計上していた新株予約権又は新株予約権付社債の額を利益に計上する(第115-2項、第118-3項、第123-2項、第236-3項及び第239-3項参照)。 - (2) 株式移転設立完全親会社の個別財務諸表上の会計処理
- ① 株式移転完全子会社の株式を株式移転完全子会社の適正な帳簿価額による株主資本に基づいて算定する場合(第118-2項、第121-2項(1)、第236-2項及び第239-2項参照)
株式移転完全子会社が株式移転日に認識した新株予約権の消滅に伴う利益又は新株予約権付社債の承継に伴う利益の額(税効果調整後)を株式移転日の前日の適正な帳簿価額による株主資本の額に加算して、株式移転完全子会社の株式の取得原価を算定することとした。
これは、株式移転と新株予約権の交付及び新株予約権付社債の承継が同時に行われたものと考えられるため、新株予約権の消滅に伴う利益又は新株予約権付社債の承継に伴う利益の額を株式移転日の前日の株式移転完全子会社の適正な帳簿価額による株主資本の額に反映させることが適当と考えられるためである。
また、株式移転設立完全親会社では、株式移転完全子会社で付されていた適正な帳簿価額による新株予約権又は新株予約権付社債を純資産の部又は負債の部に計上することになる。 - ② 株式移転完全子会社の株式を時価で評価すべき場合(第110-2項及び第121-2項(2)参照)
当該新株予約権又は新株予約権付社債の時価を子会社株式の取得原価に含めるとともに、同額を新株予約権又は新株予約権付社債として純資産の部又は負債の部に計上することになる。 - ただし、株式移転設立完全親会社と株式移転完全子会社が、新株予約権付社債の承継の対価等として債権債務を認識すべき契約を株式移転計画の作成と同時(実質的に同時と考えられる場合を含む。)に締結することも想定される。このような場合には、実質的に当該債権債務の額だけ承継された新株予約権付社債等に係る義務の履行を免れたことにはならないため、会計上は、新株予約権付社債の承継等と当該債権債務の認識を一体として処理することが適当と考えられる。具体的には、株式移転設立完全親会社では債権を認識するとともに、同額を子会社株式の取得原価から控除し、株式移転完全子会社では債務を認識するとともに、同額を新株予約権付社債の承継等に伴う利益から控除することが適当と考えられる。
また、株式移転設立完全親会社では、株式移転完全子会社の株式の取得原価から新株予約権又は新株予約権付社債として計上すべき額を控除した額が払込資本として計上される。
(3)株式移転設立完全親会社の個別財務諸表上の子会社株式(取得企業株式)の取得原価の算定の簡便的な取扱い
- 404-3. 株式移転設立完全親会社が受け入れる株式移転完全子会社(取得企業)の株式の取得原価は、原則として、株式移転日の前日における株式移転完全子会社(取得企業)の適正な帳簿価額による株主資本の額により算定することになるが、株式移転は株式の取得による企業結合となるため、実務上、株式移転日の前日における株式移転完全子会社(取得企業)の適正な帳簿価額による株主資本の額を算定することが困難な場合が考えられる。
このため、株式移転完全子会社(取得企業)の直前の決算日後に、多額の増資、自己株式の取得等の資本取引や、重要な減損損失の認識がないなど、株式移転日の前日までの間に適正な帳簿価額による株主資本の額に重要な変動が生じていないと認められる場合には、簡便的に、株式移転設立完全親会社が受け入れる子会社株式(取得企業株式)の取得原価は、株式移転完全子会社(取得企業)の直前の決算日に算定された適正な帳簿価額による株主資本の額により算定することができることとした(第121項(1)②参照)。
Ⅱ.取得以外の会計処理
- 405. (削 除)
- 406. (削 除)
1.結合当事企業から引き継ぐ資産及び負債に含み損益がある場合の取扱い
- 407. 結合当事企業(吸収合併の場合には吸収合併消滅会社)において付された適正な帳簿価額を引き継ぐ場合(第184項及び第192項参照)、結合後企業が結合当事企業から引き継ぐ適正な帳簿価額による資産総額が負債総額を下回る場合もあり得るが、このような場合であっても、結合後企業はその適正な帳簿価額により個々の資産及び負債を引き継ぐ必要があり、企業結合に際して資産及び負債を評価替えすることは認められない。
なお、適正な帳簿価額とは、一般に公正妥当と認められる企業会計の基準に準拠して算定された帳簿価額をいうため、例えば、減損会計基準などが適用されていることが前提であることに留意する必要がある。
2.吸収合併存続会社等が新株を発行した場合の増加資本の会計処理
- 408. 吸収合併存続会社の増加すべき株主資本の取扱いについて、本適用指針では、次の企業結合の類型ごとに定めている。
- (1) 取得の場合(第79項参照)
吸収合併存続会社(取得企業)は、受け入れる資産及び負債の取得原価を、対価として交付する株式の時価で測定することになる。このため、払込資本(資本金又は資本剰余金)は、発行した新株の時価により増加することになり(第384項から第387項参照)、また、吸収合併消滅会社の株主資本以外の各項目である評価・換算差額等は吸収合併存続会社には引き継がれないことになる。 - (2) (削 除)
- (3) 吸収合併消滅会社等の資産及び負債を適正な帳簿価額で引き継ぐ場合
- ① 株主資本項目の会計処理
吸収合併存続会社等の増加すべき株主資本の会計処理は、原則として、払込資本を増加させることになると考えられる。したがって、本適用指針では、吸収合併消滅会社等の適正な帳簿価額により資産及び負債を引き継ぐこととなる場合であっても、吸収合併存続会社等は、原則として、払込資本を増加させることとした。
ただし、次の場合には、吸収合併消滅会社等の合併期日の前日の株主資本を引き継ぐことができることとした。 - ア 逆取得又は共同支配企業の形成の場合
吸収合併が逆取得となる場合(第84項(1)参照)又は共同支配企業の形成と判定された場合(第185項参照)には、移転する資産及び負債は、移転直前に移転元において付された適正な帳簿価額により計上する(企業結合会計基準第34項及び第38項)が、必ずしも、吸収合併消滅会社等の株主資本の各項目の引継ぎを禁止しているわけではないと考えられる。このため、吸収合併の対価が吸収合併存続会社の株式のみである場合には、吸収合併消滅会社の株主資本の各項目をそのまま引き継ぐことができることとした。 - イ 共通支配下の取引の場合
共通支配下の取引については、企業集団内における資産及び負債の移転であり、企業結合会計基準において株主資本の引継ぎ方法については、特に示されていないことなどから、非支配株主との取引や抱合せ株式が生じる場合(例えば、親会社が子会社を吸収合併した場合(第206項(2)参照))を除き、アと同様、吸収合併の対価が吸収合併存続会社の株式のみであるときは、吸収合併消滅会社の株主資本をそのまま引き継ぐことができることとした。
このような会計処理が適用される場合としては、子会社が親会社を吸収合併した場合(第84項を参照した第210項(2)及び第440項参照)、同一の株主(企業)により支配されている子会社同士の合併の場合(第185項を参照した第247項(2)参照)及び同一の株主(個人)により支配されている企業同士の合併の場合(第185項を参照した第254項(2)参照)がある。 - ② 株主資本以外の項目の会計処理
資産及び負債の適正な帳簿価額には、時価(又は再評価額)をもって貸借対照表価額としている場合の当該価額及び対応する評価・換算差額等の各内訳科目(その他有価証券評価差額金、繰延ヘッジ損益及び土地再評価差額金)の額が含まれると解されることから、吸収合併存続会社が交付する対価の種類にかかわらず、株主資本以外の項目については、原則として、そのまま引き継ぐこととした。
3.吸収分割承継会社等が新株を発行した場合の増加資本の会計処理
- 409. 吸収分割承継会社等の増加すべき株主資本の取扱いについて、本適用指針では、次の企業結合の類型ごとに定めている。
- (1) 取得の場合(第79項参照)
吸収分割承継会社等(取得企業)は、受け入れる資産及び負債の取得原価を、対価として交付する株式の時価で測定することになる。このため、払込資本(資本金又は資本剰余金)は、発行した新株の時価により増加することになり(第384項から第387項参照)、また、吸収分割会社等の株主資本以外の各項目である評価・換算差額等は吸収分割承継会社等には引き継がれないことになる。 - (2) 吸収分割会社等の資産及び負債を適正な帳簿価額で引き継ぐ場合
- ① 株主資本項目の会計処理
吸収分割承継会社等は、移転事業に係る株主資本相当額(第87項(1)①参照)を払込資本(資本金又は資本剰余金)として処理する。これは、吸収分割会社等では、事業移転の対価として吸収分割承継会社等の株式を受け入れ、その取得原価として移転事業に係る株主資本相当額を付すことになるため、吸収分割会社等の株主資本の額に変動はなく、吸収分割承継会社等は、吸収分割会社等の株主資本の各項目を引き継ぐことはできないためである。
吸収分割承継会社等が移転事業に係る株主資本相当額を払込資本として会計処理する場合としては、例えば、逆取得の場合(第87項(1)参照)、共同支配企業の形成の場合(第193項参照)、共通支配下の取引のうち、子会社が親会社に会社分割した場合(第214項(2)参照)、親会社が子会社に会社分割した場合(第227項(2)参照)、単独で新設分割設立子会社を設立した場合(第227項を参照した第261項参照)がある。 - ② 株主資本以外の項目の会計処理
吸収合併の会計処理の考え方(第408項(3)②参照)と同様、吸収分割承継会社等が交付する対価の種類にかかわらず、株主資本以外の項目については、原則として、そのまま引き継ぐこととした。 - (3) 分割型の会社分割において株主資本の内訳を適切に配分した額で計上できる場合
共通支配下の取引(共通支配下の取引に係る会計処理に準じて処理する新設分割による子会社の設立を含む。)において、吸収分割承継会社等が受け入れた資産及び負債の対価として吸収分割承継会社の株式のみを交付している場合には、吸収分割会社等で計上されていた株主資本の内訳を適切に配分した額をもって計上することができるものとしている(第446項参照)。
このような場合として、親会社が子会社に分割型の会社分割した場合(第234項(2)ただし書き参照)、子会社が他の子会社に分割型の会社分割した場合(第234項を参照した第256項参照)、単独で分割型の会社分割をした場合(第234項を参照した第264項参照)がある。
なお、これらの場合において、吸収分割会社等は、通常の分割型の会社分割や現物配当の処理と異なり、受け取った吸収分割承継会社等の株式の取得原価に、これに係る繰延税金資産又は繰延税金負債を加減した額により、吸収分割会社等の株主資本を変動させることになる。
これは、吸収分割承継会社等は、移転前に付された吸収分割会社等の適正な帳簿価額で受け入れた資産及び負債を計上し、かつ、吸収分割会社等で計上されていた株主資本の内訳を適切に配分した額で株主資本の内訳を計上することになるが、この処理を行うにあたって、吸収分割承継会社等の株主資本の額は、吸収分割会社等が変動させた株主資本の額と一致することとなるためである(第234項(2)ただし書き参照)。
4.吸収合併存続会社が自己株式を処分した場合の増加資本の会計処理
- 410. 吸収合併消滅会社等の資産及び負債を適正な帳簿価額で引き継ぐ場合、吸収合併存続会社は合併期日の前日における株主資本の構成を、そのまま引き継ぐことが認められている。このときに吸収合併の対価として自己株式を処分する場合には、処分する当該自己株式の帳簿価額及び処分差額の処理が問題となる。特に、新株の発行と併用された場合に、この問題は顕著となる。
2005年(平成17年)公表の本適用指針では、自己株式の処分のみの場合と新株の発行と併用される場合の2つの定めを設け、後者においては、①増加すべき株主資本の額を新株の発行及び自己株式の処分の株式数の比率により按分し、処分した自己株式に相当する額については自己株式の処分の会計処理を行う方法と、②吸収合併消滅会社の合併期日の前日における株主資本の構成をそのまま引き継いだ上で、処分した自己株式の帳簿価額をその他資本剰余金から控除する方法を認めていた。
ここで①の方法を採用した場合には、吸収合併消滅会社の株主資本のうち払込資本だけではなくそれ以外の部分(利益剰余金)の構成に影響が及ぶことになるが、対価が新株のみであるときと同様に吸収合併消滅会社の株主資本の構成をそのまま引き継いだ上で、処分した自己株式の帳簿価額を払込資本の中で処理(その他資本剰余金から控除)することがより整合的と考え、2006年(平成18年)改正の本適用指針では、合併の対価に自己株式が含まれる場合には、②の方法のみを認めることとした。これは、自己株式等会計基準により、募集株式の発行等の手続による自己株式の処分に係る差額は払込資本(その他資本剰余金)の中で処理される(自己株式等会計基準第9項及び第10項)ことや、2006年(平成18年)改正の自己株式等会計適用指針において、募集株式の発行等の手続により自己株式の処分及び新株の発行が同時に行われた場合にも払込資本の中で処理されることが明記された(自己株式等会計適用指針第11項)ことなどによる。
5.吸収合併消滅会社が保有していた当該会社の自己株式及び抱合せ株式の消滅の会計処理
- 411. 吸収合併消滅会社等の資産及び負債を適正な帳簿価額で引き継ぐ場合(第84項参照)、2003年(平成15年)公表の企業結合会計基準では、抱合せ株式(吸収合併存続会社が保有する吸収合併消滅会社の株式)の適正な帳簿価額を、吸収合併存続会社の増加すべき株主資本の額と相殺するとされていた。2005年(平成17年)公表の本適用指針では、抱合せ株式の適正な帳簿価額を合併により増加するどの株主資本項目から減額すべきかは一義的には決まらないと考えられるが、持分の結合と判定された合併の場合には、結合当事企業は過年度から1つの企業に統合されていたものと仮定し、次の4つの株式保有の類似性を検討していた。
- ① 抱合せ株式(吸収合併存続会社が保有する吸収合併消滅会社の株式)(第84-2項(2)参照)
- ② 吸収合併存続会社が受け入れた自己株式(吸収合併消滅会社が保有していた吸収合併存続会社の株式)(第84項なお書き参照)
- ③ 合併により消滅した吸収合併消滅会社の自己株式(吸収合併消滅会社が保有していた当該会社の自己株式)(第84-2項(2)参照)
- ④ 吸収合併存続会社が保有する当該会社の自己株式
- これらは、外部株主(結合当事企業以外)から株式を取得し、1つの企業とみた結合当事企業の株主資本を払い戻しているという点で経済実態は同じであり、また、法律上、どちらの企業が吸収合併存続会社になるかにより①と②及び③と④の状態は入れ替わることとなり、これらの4つの株式保有の状態について本質的な差異はないものと考えられていた。このため、2005年(平成17年)公表の本適用指針では、④の自己株式を消却した場合の会計処理に照らして、自己株式又は抱合せ株式の消滅に対応して減額する株主資本の項目は、結合後企業(吸収合併存続会社)の取締役会等、企業の意思決定機関で定められた結果に従うこととしていたが、2006年(平成18年)の自己株式等会計基準の改正に伴い、2006年(平成18年)改正の本適用指針では、その他資本剰余金とすることとした。
また、①の抱合せ株式の消滅と③の吸収合併消滅会社が保有する当該会社の自己株式の消滅の会計処理について、2005年(平成17年)公表の本適用指針においては、最初に吸収合併消滅会社から引き継ぐ剰余金から控除し、控除しきれない場合には吸収合併存続会社の剰余金から控除することとしていた。しかし、2006年(平成18年)改正の本適用指針では、持分の結合と判定された合併の場合には、結合当事企業は過年度から1つの企業に統合されていたものと仮定することを踏まえ、自己株式の消滅に対応して減額する株主資本項目は、自己株式を消却した場合の会計処理に照らし、その他資本剰余金のみであることを定め、吸収合併存続会社と吸収合併消滅会社のそれを区別せずに取り扱うこととした。
なお、上記会計処理の結果、その他資本剰余金の残高がマイナスとなった場合には、会計期間末において、その他資本剰余金をゼロとし、当該マイナスの金額をその他利益剰余金(繰越利益剰余金)から減額することとなる(自己株式等会計基準第12項)。 - 412. (以下、第419項まで削除)
Ⅲ.共同支配企業の形成の判定
1.共同支配企業の形成の判定要件
- 420. 共同支配企業の形成の判定要件として、本適用指針では、共同支配及び共同支配企業の定義並びに企業結合会計基準第8項の趣旨を踏まえ、独立企業要件及び契約要件を明示することとした。したがって、共同支配企業の形成の判定要件は、対価要件及びその他の支配要件を加えた4つの要件となる(第175項参照)。
(1)共同支配企業に対する各企業の議決権比率が相違している場合の取扱い
- 421. 企業結合会計基準により、共同支配企業に対する議決権比率は、共同支配企業の形成の判定の対象外とされているため、第175項の要件を満たしている場合には、共同支配企業に対する各企業の議決権比率が相違しても、当該企業結合を共同支配企業の形成と判定することになるが、これは、次の理由による。
- (1) 共同支配企業の意思決定に関する関与については、共同支配となる契約を締結していることから、議決権比率の大小にかかわりなく、他の共同支配投資企業と同等の取扱いとなること
- (2) 共同支配企業に対する投資資金の回収は、配当による回収のほか、共同支配企業との取引による回収(例えば、ある共同支配投資企業が共同支配企業とライセンス契約を締結し、その使用料によりリターンを得る場合)など様々な形態が考えられるため、共同支配企業に対する持分割合が相違することをもって共同支配企業の形成に該当しない(又は共同支配企業へ投資する企業が共同支配投資企業に該当しない)とすることは適当ではないこと
(2)一般投資企業が含まれる場合における共同支配企業の形成の判定
- 422. 共同支配企業は、複数の独立した企業により共同で支配されることとなるが、当該共同支配企業に投資する企業には、共同支配投資企業の他に、共同支配となる契約等を締結していないため、当該共同支配企業を共同支配しないこととなる企業(一般投資企業)が含まれている場合がある。
本適用指針では、このような一般投資企業が存在していても、共同支配投資企業となる企業の有する議決権の合計が、共同支配企業となる結合後企業の議決権の過半数を占めており、かつ、共同支配投資企業となる企業が第175項の要件のすべてを満たす場合には、当該企業結合を共同支配企業の形成と判定することとした(第176項参照)。これは共同支配企業の株主の中には、主として資金調達の役割を担うのみで、経営に関与することを目的としていないものが存在する場合(一般投資企業にとっては純投資を目的としている場合)もあり得ることから、このような株主が存在することのみをもって、共同支配企業の形成に該当しないと判定することは適当ではないと考えたためである。
2.独立企業要件の取扱い
- 423. 本適用指針では、次の理由により、共同支配企業の形成の要件の1つとして独立企業要件を明示することとした(第175項(1)参照)。
- (1) 共同支配企業とは、複数の独立した企業により共同で支配される企業(企業結合会計基準第11項)とされ、定義上、共同支配企業へ投資する企業に複数の独立した企業が含まれていること
- (2) 複数の独立した企業の存在は、重要な経営事項の決定はすべての共同支配投資企業の同意によるという契約要件の前提となるものであること
- ここで、独立した企業とは、連結会計基準及び企業会計基準適用指針第22号「連結財務諸表における子会社及び関連会社の範囲の決定に関する適用指針」による現行の連結の範囲との整合性を図ることとし、子会社、緊密な者及び同意している者のいずれにも該当しない者とした(第177項参照)。
3.契約要件の取扱い
(1)共同支配となる契約等の要件
- 424. 「共同支配企業の形成か否かの判定については、共同支配となる契約等を締結していることが必要」(企業結合会計基準第76項)とされ、議決権比率による判定の代わりに共同支配となる契約等の有無により判定することとされている。このため、契約要件は共同支配企業の形成の判定にあたり本質的な要件と考えられ、契約書等の記載を踏まえ、実質的な判定を行う必要がある。
- 425. 独立した企業同士が共同支配企業を形成する場合には、共同支配企業の事業目的を明確にした上で、各共同支配投資企業は、通常、共同支配企業における重要な役割分担に関する取決めを行い、それぞれ技術、営業網、人的資源、資金等の経営資源を拠出することが想定される。
したがって、本適用指針では、共同支配となる契約等には、共同支配企業の事業の目的及び各企業の当該事業遂行における重要な役割分担に関する取決めが明記されており、また、実態を伴っていることが必要と考えた。なお、共同支配となる契約等を締結し、共同支配投資企業の役割が契約書に明示されていても、実態が伴っていないと認められる企業は一般投資企業として取り扱われることになる。 - 426. 共同支配企業の形成の判定要件から議決権比率要件が排除されていること及びいずれの企業も単独ではその支配を獲得しないという共同支配の形態から、本適用指針では、共同支配企業の重要な経営事項の決定は、多数決による議決ではなく、すべての共同支配投資企業の同意を求めることとした。ここで、重要な経営事項とは、株主総会及び取締役会における決議事項をいう。これは、企業結合会計基準(注8)では、重要な経営事項が決議される意思決定機関として取締役会が挙げられており、これとの整合性を図るためである。
- 427. 共同支配企業の形成の判定にあたり、共同支配企業に対する各共同支配投資企業の議決権比率は要件とされていないが、共同支配企業の経営に対する各共同支配投資企業の関与の仕方は、原則として、同じであることが必要と考えられる。このため、共同支配企業へ投資する企業のうち、ある重要な経営事項の決議の際に賛成しなくとも積極的に反対しない限りはその決議事項につき賛成したものとみなすこととされた企業は、他の企業に比べ、共同支配企業への経営の関与の仕方が異なると考えられ、原則として、契約要件を満たしたことにはならない。
ただし、各共同支配投資企業は、共同支配企業の事業遂行に対してそれぞれ異なる役割を担っている場合が想定されるため、そのような取扱いが、当該共同支配投資企業の役割とは関連性の薄い経営事項に関するものに限られることなどが契約等により確認できる場合には、共同支配企業の経営への関与の仕方が異なるとはいえないと考えられるため、契約要件を満たすものとして取り扱うこととした。
(2)契約上の取決めの形態
- 428. 共同支配となる契約等は、文書化されていなければならない。当該文書は、合弁事業基本契約書、株主間協定書、株主間の覚書、共同支配企業の定款等のさまざまな名称・形態が考えられ、共同支配となる契約等は、これらのいずれかに明記されることになる。
なお、共同支配となる契約の要件ではないが、共同支配となる契約等には、本適用指針でいう重要な経営事項に関する規定のほか、通常、次のような事項が規定される。 - (1) 共同支配企業の企業形態、存続期間及び報告義務
- (2) 共同支配企業の資本金、共同支配投資企業の出資比率
- (3) 成果の配分方法
4.対価要件の取扱い
- 429. 共同支配投資企業は、共同支配企業の重要な経営事項に関する意思決定に直接参加することになるため、議決権のある株式とは、第178項(2)に規定されている重要な経営事項に関する議決権が制限されていない株式とすることとした(第180項参照)。
また、共同支配投資企業に交付する共同支配企業の株式の議決権の内容について、差異(優劣)を設けることは共同支配の趣旨に反すると考えられるため、共同支配企業の形成に該当するためには、共同支配投資企業となるすべての企業に対し、議決権に関して同一の権利内容を有する株式を交付しなければならないことになる。 - 429-2. 企業結合会計基準(注7)に示されている対価要件の判定の前提(第180-2項参照)は、企業結合の対価として、形式的には議決権のある株式を交付していても、実質的には議決権のある株式以外の財産を交付していると認められる場合には、対価要件を満たさなかったものとして取り扱う趣旨と考えられる。
このうち、企業結合の合意成立日前1年以内に当該企業結合を目的として自己株式を受け入れていないことが前提の1つとされている。企業結合会計基準(注7)で定められている対価要件の判定の前提は、限定列挙であるが、一方の結合当事企業が他の結合当事企業の株式を受け入れる行為も自己株式を受け入れることと経済効果は同様と考えられるため、本適用指針では、当該取引を自己株式を受け入れる取引に準じて取り扱うこととした(第180-2項(6)また書き参照)。
5.その他の支配要件の取扱い
- 430. その他の支配要件の取扱いのうち、結合後企業の取締役会を事実上支配していることについては、社外取締役、非常勤取締役も含む構成員の過半数を占めているかどうかを判断要素とすることに加えて、いずれかの結合当事企業の役員等が常勤取締役あるいは執行役の大半を占めるなど、主として業務執行に携わる役員の割合が大幅に異なる場合には、その実態を踏まえて判定することとした(第181項(1)参照)。また、いずれかの企業の代表者の割合が大幅に異なる場合にも、上記の取扱いに準ずることになる。代表者は単独では重要案件を決定できないものの、法律上も実務上も業務執行に関する広範な権限を有していることを考慮したためである。
Ⅳ.共同支配企業の形成の会計処理
1.共同支配投資企業の会計処理
- 431. 2003年(平成15年)公表の企業結合会計基準では、共同支配投資企業における共同支配企業への投資の性質は、これまでの関連会社に対する影響力とも異なるものであるという観点から、共同支配企業への投資の連結財務諸表上の会計処理は子会社に適用される会計処理(連結法)、あるいは、関連会社に適用される会計処理(持分法)とは異なるものとされていた。しかしながら、2008年(平成20年)改正の企業結合会計基準では、事業分離等基準における分離元企業及び結合当事企業の株主に係る会計処理との整合性を重視することとし、国際的な会計基準と同様に、連結財務諸表上、通常の持分法により処理することに変更した。
- 432. このため、共同支配投資企業は、連結財務諸表上、通常の持分法により、次の(1)と(2)の差額を処理することとなる(第190項及び第197項参照)。
- (1) 共同支配企業に対する投資の取得原価(第196項参照)
- (2) 共同支配企業の資本(第193項参照)のうち共同支配投資企業の持分比率に対応する額
- 433. 共同支配投資企業の会計処理については、比例連結法によることも認められるのではないかという論点がある。しかし、従来から、混然一体となっている合弁会社の資産、負債等を一律に持分比率で按分して連結財務諸表に計上することは不適切であるとの指摘がなされていること等を考慮して、比例連結は導入しないとされているため、企業結合会計基準でも想定されていない(企業結合会計基準第117項)。
2.共同支配投資企業の子会社が共同支配企業に投資している場合の会計処理
- 434. 共同支配投資企業の子会社が共同支配となる契約等を締結していないことをもって一般投資企業として取り扱うと、実質的に当該子会社は共同支配投資企業と一体であるにもかかわらず、共同支配企業の形成時に子会社では事業の移転損益を計上することが可能となる場合がある。このため、ある共同支配投資企業の子会社が、同一の共同支配企業に投資している場合には、当該子会社も共同支配投資企業とみなすものとした(第198項参照)。
Ⅴ.共通支配下の取引等の会計処理
1.共通支配下の取引の範囲
- 435. 企業結合会計基準では、企業集団内における企業結合を独立企業間の企業結合と区別し、共通支配下の取引として個別財務諸表上の会計処理を定めている。これは、企業結合会計基準第119項で示されているとおり、共通支配下の取引が、「親会社の立場からは企業集団内における純資産等の移転取引として内部取引」と考えられるため、連結財務諸表と同様に、個別財務諸表の作成にあたっても企業結合の前後で当該純資産等の帳簿価額が相違することにならないよう、企業集団内における移転先の企業は移転元の適正な帳簿価額により計上するためである。
このような趣旨を考えると、共通支配下の取引として扱う範囲、すなわち、支配の主体である「企業」には、親会社が公開企業である場合のほか、非公開企業や外国企業の場合も含まれるものと考えられる。また、企業集団は支配により形成されていることを考えると、支配の主体が企業であれ、個人であれ本質的な差異はない。
なお、関連会社との企業結合は、親会社及び子会社から形成される企業集団内における企業結合ではないと解されるため、共通支配下の取引には該当しない。したがって、関連会社との企業結合は、取得(第29項参照)又は共同支配企業の形成(第175項参照)のいずれかに識別されることになる。 - 436. 支配の主体が企業であれ、個人であれ本質的に差異はないとする考えから、支配の主体が個人の場合でも企業の場合と同様に支配力基準により判定が行われることになると考えられる。このため、同一の株主による支配の判定には、ある株主と緊密な者及び同意している者による議決権の保有を考慮することにより、支配の判定を実態を踏まえて行うこととした(第202項参照)。
なお、株主が個人の場合、同一の株主とみなす者の範囲として、近親者等の血縁関係を含めることが適当であるとの考え方もある。しかし、近親者等の血縁関係であれば一律に同一の株主とみなすと、共通支配下の取引を拡大しすぎる可能性もあることから、そのような考え方は採用しなかった。
2.共通支配下の取引と非支配株主との取引
- 437. 企業結合会計基準では、企業集団内における組織再編の会計処理として共通支配下の取引と非支配株主との取引(共通支配下の取引等)を定めている。
共通支配下の取引は、親会社の立場からは企業集団内における内部取引であるが、非支配株主との取引は、企業集団を構成する子会社の株主と、当該子会社を支配している親会社との間の取引であって、それは企業集団内の取引ではなく、親会社の立場からは外部取引と考えられる。 - ただし、企業集団内における組織再編のうち、例えば、親会社(吸収合併存続会社)と子会社(吸収合併消滅会社)との合併において、親会社が子会社の資産及び負債を受け入れることは企業集団内における内部取引であるが、親会社が合併の対価として交付する株式の交付先は子会社の株主(非支配株主)となるなど、共通支配下の取引と非支配株主との取引との区別は必ずしも明確ではない。したがって、企業集団内における組織再編のうち、どの取引について非支配株主との取引に準じた会計処理を適用するのかが主要な論点となる。
この論点について、本適用指針では、組織再編の形式が異なっていても、組織再編後の経済的実態が同じであれば、連結財務諸表上(合併の場合には個別財務諸表上)も同じ結果が得られるように会計処理を検討した。 - このため、本適用指針では、企業結合会計基準により会計処理が定められている株式交換等の会計処理を共通支配下の取引等の会計処理の基本とし、この他の代表的な組織再編と考えられる取引について、それと整合的な会計処理を検討した。
2-2.完全親子会社関係にある組織再編において対価が支払われない場合の会計処理
- 437-2. 同一の親会社に支配されている子会社同士(兄弟会社同士)が吸収合併し、吸収合併存続会社となる子会社が吸収合併消滅会社の株主(吸収合併存続会社の親会社)に対価を支払わない場合には、原則として、吸収合併存続会社は受け入れた資産及び負債の差額のうち株主資本の額を負ののれん(又はのれん)として会計処理することになる(第243項(1)参照)。
しかし、当該吸収合併において完全親子会社関係にある場合には、実務上、合併の対価(例えば吸収合併存続会社の株式)を吸収合併消滅会社の株主(親会社)に支払わない場合がある。これは、合併の対価を支払うか否かにかかわらず、親会社の当該子会社に対する持分比率は合併の前後で100%と変化はなく、企業集団の経済的実態には何ら影響がないためと考えることができる。
このため、完全親子会社関係にある子会社同士の吸収合併においては、対価の支払の有無が会計処理に大きな影響を与えることは適当ではないと考え、吸収合併存続会社が、吸収合併消滅会社の株主に対価を支払わなかった場合には、吸収合併消滅会社の株主資本の額を引き継ぐこととした。
なお、会社法上、吸収合併存続会社が、合併に際して株式を発行していない場合には、資本金及び準備金を増加させることは適当ではないと解されるため、会計上は、吸収合併消滅会社の株主資本の各項目を原則として引き継ぐこととしたうえで、増加すべき払込資本の内訳項目は、会社法の規定に従い、吸収合併消滅会社の資本金及び資本準備金はその他資本剰余金として引き継ぎ、利益準備金はその他利益剰余金として引き継ぐことになる。 - 437-3. 実務上、親会社に株式の100%を保有されている子会社が2社あり、一方の完全子会社(吸収分割会社)から他の完全子会社(吸収分割承継会社)に事業の移転を行い、他の完全子会社は対価を支払わないとき、あるいは親会社(吸収分割会社)が完全子会社(吸収分割承継会社)に対して事業の移転を行い、完全子会社は対価を支払わないときがある。このような場合にも、前項と同様の理由から、吸収分割会社で取り崩した株主資本の額を吸収分割承継会社は引き継ぐこととした。
また、完全子会社(吸収分割会社)が親会社(吸収分割承継会社)に対して事業の移転を行い、親会社が対価を支払わないときには、完全子会社に対する投資が回収されたものとみて、親会社の個別財務諸表上、分割会社の株式分割及び合併により、子会社が親会社に事業を移転する場合の会計処理に準じて処理することとした。ただし、移転する事業に子会社株式や関連会社株式が含まれている場合には、完全子会社に対する投資と受け入れた当該子会社株式等は、投資が継続したまま引き換えられたものとみることが適当と考えられることから、子会社が他の子会社に分割型の会社分割により事業を移転する場合の株主(親会社)の会計処理に準じて処理することとした。
前項及び上記の会計処理は、組織再編の対価が支払われるか否かは企業集団の経済的実態には影響を与えないことが前提であるため、完全親子会社関係にある場合に限り、適用することに留意する必要がある。
3.親会社が子会社を吸収合併する場合の会計処理
- 438. 共通支配下の取引等となる合併の会計処理においては、まず、子会社から受け入れた資産及び負債の差額を親会社持分相当額と非支配株主持分相当額に按分し、共通支配下の取引として扱う部分と非支配株主との取引に準じて扱う部分とを区分することとした。
これは、企業集団内における合併と株式交換は、組織再編後の経済的実態は同じと考え、合併後の財務諸表と株式交換後の連結財務諸表との整合性を図ることとしたためである。具体的には、まず、株式交換の会計処理において非支配株主との取引として取り扱われるのは、子会社の資本のうち非支配株主持分相当額に関する部分であるため、合併の会計処理においても非支配株主との取引に準じて処理し、親会社が非支配株主に交付する株式を時価で算定し、これと当該非支配株主持分相当額との差額をその他資本剰余金に計上することとした(第206項(2)①イ参照)。
次に、親会社持分相当額とこれに対する投資原価である子会社株式(抱合せ株式)の適正な帳簿価額との差額(抱合せ株式消滅差額)は、株主との資本取引から生じたものではないため、次の理由から、損益に計上した上で利益剰余金を増減させることとなる。 - (1) 抱合せ株式消滅差額が差益の場合は、投資額を上回る回収額を表し、逆に、差損の場合には投資額を下回る回収額を表すことになるので、合併を契機に、このような子会社を通じた事業投資の成果を親会社の個別損益計算書に反映させることが適当と考えられること
- (2) 抱合せ株式消滅差額が差益の場合には、子会社から配当金を受け取った後に合併した場合と、また、差損の場合には、子会社投資に係る評価損を計上した後に合併した場合と組織再編の経済的実態が同じと考えられるので、それらの取引と同様の結果が得られるように会計処理することが望ましいと考えられること
- (3) 利益剰余金の増減は、原則として当期純利益に反映されたもののみから構成されることが適当であること
- 438-2. 子会社が保有する孫会社株式は、最上位の親会社が保有する子会社株式と同様、事業投資の一形態と考えることができる。このため、子会社(吸収合併存続会社)とその子会社(吸収合併消滅会社)が合併した場合(子会社と孫会社が合併した場合)には、最上位の親会社(吸収合併存続会社)とその子会社(吸収合併消滅会社)が合併したときと同様に処理することが、共通支配下の取引の会計処理として首尾一貫しているものと考えられる。
- このため、子会社の孫会社に対する投資原価(吸収合併存続会社が保有する吸収合併消滅会社の株式(抱合せ株式)の適正な帳簿価額)と合併に伴い子会社が受け入れる資産及び負債の差額のうち当該投資原価に見合う株主資本の額との差額を損益(抱合せ株式消滅差損益)に計上することとした(第206項(4)参照)。
4.親会社が子会社から受け入れる資産及び負債の修正処理
- 439. 企業結合会計基準 (注9)において、「親会社と子会社が企業結合する場合において、子会社の資産及び負債の帳簿価額を連結上修正しているときは、親会社が作成する個別財務諸表においては、連結財務諸表上の金額である修正後の帳簿価額(のれんを含む。)により計上する。」とされている。
本適用指針では、当該修正の対象には、未実現損益が含まれるものとし、さらに、修正対象となる未実現損益は、親会社が子会社に対して行った資産等の処分により、親会社の個別財務諸表上、損益に計上したものに限定している。したがって、次の点に留意する必要がある。 - (1) 親会社(吸収合併存続会社)から子会社に資産を売却し、さらに当該子会社がこれを他の子会社(吸収合併消滅会社)に売却した後に親会社が他の子会社を吸収合併した場合には、修正対象となる未実現損益は、親会社が子会社に資産を売却したことによる損益のみとなり、子会社が他の子会社へ資産を売却したことによる損益は、修正の対象とはならない。
- (2) 親会社(吸収合併存続会社)と子会社(吸収合併消滅会社)が企業結合する場合でも、親会社が当該子会社から受け入れた資産及び負債の帳簿価額を連結財務諸表上、修正していても、親会社の適正な帳簿価額を基礎として会計処理することとなる。なお、連結財務諸表上は、当該内部取引に係る修正を引き続き行うことに留意する必要がある(企業結合会計基準第44項)。
- (3) 子会社と他の子会社との企業結合(子会社とその子会社の企業結合を除く。第207項ほか参照)においては、連結財務諸表上、当該子会社の資産又は負債の帳簿価額を修正していても、子会社の適正な帳簿価額を基礎として会計処理することとなる(企業結合会計基準第41項)。
- なお、子会社(吸収合併存続会社)が親会社(吸収合併消滅会社)を吸収合併した場合には、子会社が親会社に処分した資産を合併により子会社が再び受け入れることとなる点を重視し、企業結合前に子会社が親会社に資産等を処分したことにより生じた未実現損益を連結財務諸表上、消去している場合には、子会社は、連結財務諸表上の帳簿価額により親会社の資産及び負債を受け入れることとした(第211項参照)。
5.子会社が親会社を吸収合併する場合の会計処理
(1)個別財務諸表上の会計処理
- 440. 親会社と子会社との合併において、子会社が吸収合併存続会社となる場合であっても、共通支配下の取引に該当するため、子会社は親会社から受け入れた資産及び負債の差額は、純資産として処理することになる(企業結合会計基準第42項)。
本適用指針では、当該合併により子会社における増加すべき株主資本について、原則として、払込資本を増加させることとした。ただし、子会社が吸収合併存続会社となるのは、特殊な事情による限られた場合であると考えられること、また、子会社にとっては吸収合併により投資の回収を行ったわけではないと考えられることにより、合併が共同支配企業の形成と判定された場合の取扱いと同様に親会社の資本構成を引き継ぐことも認められることとした(第210項及び第408項参照)。
(2)連結財務諸表上の会計処理
- 441. 親会社と子会社との合併において、子会社が吸収合併存続会社(親会社が吸収合併消滅会社)となる場合は、企業集団の観点から取引の実態をみると、親会社を吸収合併存続会社とみなした吸収合併と同様に考えることができる。したがって、子会社が連結財務諸表を作成する場合は、子会社において行った個別財務諸表上の処理を振り戻し、当該合併以前の連結財務諸表における処理を合併後も継続するように会計処理することが適当と考えた。
このため、本適用指針では、時価評価替後の資産及び負債を連結財務諸表上の帳簿価額として受け入れ、また、合併に際して子会社が受け入れた自己株式(子会社が親会社から受け入れた子会社株式)とそれに対する子会社の増加すべき株主資本については内部取引として消去することとした(第212項参照)。また、合併後に子会社が連結財務諸表を作成しない場合は、経済的実態に即した情報が開示されなくなること、及び合併後も連結財務諸表を作成する場合との比較から、親会社を吸収合併存続会社とみなした場合の財務情報のうち、一定の事項について注記を求めることとした(第213項参照)。
6.子会社が親会社に会社分割により事業を移転する場合の会計処理
- 442. 会社分割により子会社(吸収分割会社)が親会社(吸収分割承継会社)に事業を移転する場合の連結財務諸表上の会計処理は、実質的に非支配株主持分相当額と考えられる部分については、次の理由により、非支配株主との取引に準じて処理することとした。具体的には、子会社に交付する親会社株式のうち実質的に非支配株主に交付したものと考えられる部分(非支配株主持分相当額)を非支配株主持分から控除することになる(第217項(2)参照)。
- (1) 当該会社分割は、形式上、親会社と非支配株主との間で取引は行われていないものの、両者は、親会社に移転された事業と子会社に交付する親会社株式が等価となるように取引条件が決定されており、その経済的効果の観点から、実質的に非支配株主との取引と考えられる部分があること
- (2) 企業集団内における当該会社分割と分割型の会社分割(第218項参照)は組織再編後の経済的実態は同じと考えられ、会社分割後の連結財務諸表と分割型の会社分割後の連結財務諸表との整合性を図ることが適当であること
- 一方、個別財務諸表における当該会社分割の会計処理は、非支配株主の出資比率にかかわらず、すべて共通支配下の取引として取り扱い、移転先企業(親会社)は移転元企業(子会社)の適正な帳簿価額に基づいて会計処理することとした。これは、親会社と子会社との取引において、非支配株主の出資比率により個別財務諸表上の会計処理を区別することは、現行の会計慣行にはないことを考慮したためである(第214項参照)。
なお、会社分割の実施と同時に子会社が受け入れた親会社株式を現物分配すると分割型の会社分割と同様の組織再編となる。したがって、会社分割後の連結財務諸表と分割型の会社分割後の連結財務諸表との整合性を図るということは、当該現物分配は連結財務諸表には影響を与えない取引であることが説明されなければならない。現行の会計基準では、連結財務諸表上、連結子会社が保有する親会社株式のうち親会社持分相当額は自己株式として株主資本から控除し、非支配株主持分相当額は非支配株主持分から控除することとされている(自己株式等会計基準第15項)。したがって、当該会社分割により子会社が受け入れた親会社株式のうち非支配株主持分相当額は、連結財務諸表上、もともと非支配株主持分から控除されているため(親会社持分相当額は、内部取引として消去される(第217項(1)参照)。)、子会社が、親会社株式を非支配株主に分配しても連結財務諸表の資産総額、純資産額(株主資本項目の内訳を含む。)等には影響を与えないことになる。したがって、本適用指針の会社分割の連結財務諸表上の会計処理は、現行会計基準と整合しているものと考えられる。
7.子会社が親会社に分割型の会社分割により事業を移転する場合の会計処理
- 443. 分割型の会社分割により子会社(吸収分割会社)が親会社(吸収分割承継会社)に事業を移転する場合の会計処理は、合併の会計処理に準じて、移転事業に係る株主資本相当額(第87項(1)①参照)を親会社持分相当額と非支配株主持分相当額に按分し、当該非支配株主持分相当額の会計処理について非支配株主との取引に準じた取引として取り扱い、親会社持分相当額は内部取引として取り扱うこととした。これは、企業集団内における合併と当該分割型の会社分割は、組織再編後の経済的実態は類似しており、合併後の財務諸表と事業の移転部分に応じた分割後の連結財務諸表との整合性を図ることとしたためである。
ただし、分割型の会社分割の場合には、合併と異なり、会社分割後も分離元企業(子会社)が存在し、その子会社では移転した事業に係る純資産が減少することになるため、親会社では、受け入れた事業と保有していた子会社株式の部分的な引き換えが行われたとみて、親会社が保有する子会社株式(分割に係る抱合せ株式)の適正な帳簿価額のうち、引き換えられたものとみなされる額を減額する会計処理が必要になる(第218項参照)。
8.親会社が子会社に会社分割により事業を移転する場合の会計処理
(1)親会社(吸収分割会社)における個別財務諸表上の会計処理
- 444. 会社分割により親会社が子会社に事業を移転する取引は、共通支配下の取引に該当するため、分離先企業(子会社)の株式のみを受取対価とする場合には、分離元企業(親会社)が受け取った分離先企業の株式(子会社株式)の取得原価は、移転事業に係る株主資本相当額(第87項(1)①参照)に基づいて算定することとなり、移転損益は認識されない(第226項参照)。
- なお、移転事業に係る株主資本相当額がマイナスとなる場合には、まず、事業分離前の子会社株式の帳簿価額を充て、これを超えることとなったマイナス金額については、当該子会社株式の評価的な勘定として「組織再編により生じた株式の特別勘定」等、適切な科目をもって負債に計上することとした(第394項参照)。
(2)子会社(吸収分割承継会社等)における個別財務諸表上の会計処理
- 445. 会社分割により親会社が子会社に事業を移転する場合においては、分離先企業(子会社) は、分離元企業(親会社)の株主資本の内訳を引き継ぐことができないため、払込資本を増加させることとなる(第227項(2)参照)。
- ただし、分離先企業である子会社において、分離元企業(親会社)の移転事業に係る株主資本相当額がマイナスとなる場合、どのように会計処理するかが問題となる。これについては、払込資本をマイナスとして表示することはないと考えられるため、移転事業に係る株主資本相当額のマイナスを過去の損益の修正とするか、当期の損益とするか、将来に繰り延べるかという見方がある。共通支配下の取引は、企業結合の前後で純資産の帳簿価額が相違することにならないような配慮がなされていること、取得以外の場合には株主資本項目の内訳を引き継ぐことも認められることなどを考慮して、移転に係る対価が当該子会社の株式のみである場合には、払込資本をゼロとし、その他利益剰余金のマイナスとすることとした。
9.親会社が子会社に分割型の会社分割により事業を移転する場合の会計処理
- 446. 分割型の会社分割は、会社分割(従来は物的分割ともいわれた分社型の会社分割をいう。)とこれにより受け取った吸収分割承継会社又は新設分割設立会社の株式の分配という2つの取引と考えられていることから、まず、吸収分割会社である親会社も吸収分割承継会社である子会社も、吸収分割会社又は吸収分割承継会社の会計処理を行うこととなる(第233項及び第234項参照)。このため、吸収分割承継会社である子会社においては、移転事業に係る株主資本相当額(第87項(1)①参照)を払込資本とすることとなる。
- しかし、吸収分割承継会社である子会社における増加すべき株主資本の会計処理においては、従来のように吸収分割会社自体が分割したものと捉え、親会社で計上されていた株主資本の内訳を配分することも認めてはどうかという実務上の要請を考慮し、本適用指針では、受け入れた資産及び負債の対価として吸収分割承継会社(子会社)の株式のみを交付している場合には、親会社で計上されていた株主資本の内訳を適切に配分した額をもって計上することができるものとした(第234項(2)ただし書き参照)。この場合には、配分に際して用いた適切な方法を吸収分割会社において注記することが望ましい。
- なお、事業分離日(分割期日)後に吸収分割承継会社(子会社)の株式が吸収分割会社の株主に交付されていたり、受け入れた資産及び負債の対価として吸収分割承継会社(子会社)の株式以外の現金等の財産(第95項参照)が含まれていたりする場合には、前段のような取扱いは認められないことに留意する必要がある(第409項参照)。
- 447. (削 除)
9-2.子会社が他の子会社に会社分割により事業を移転する場合の会計処理
- 447-2. 子会社が他の子会社に会社分割により事業を移転する場合(会社分割の対価が吸収分割承継会社である他の子会社の株式である場合)、共通支配下の取引であるため、個別財務諸表上、吸収分割会社である子会社が受け入れる、吸収分割承継会社である他の子会社の株式の取得原価は、移転事業に係る株主資本相当額に基づいて算定することとなる。したがって、吸収分割承継会社である他の子会社が、吸収分割会社である子会社の子会社及び関連会社となる場合のほか、それ以外となる場合(他の子会社の株式がその他有価証券に分類される場合)でも、移転損益を認識しない(第254-2項参照)。
また、吸収分割承継会社である他の子会社が吸収分割会社の子会社となる場合において、吸収分割会社である子会社の連結財務諸表上、会社分割前後における当該吸収分割会社である子会社の持分の差額は、資本剰余金に計上する(第254-4項(1)参照)。
9-3.株式交換等の直前に子会社(株式交換完全子会社等)が自己株式を保有している場合の取扱い
- 447-3. 株式交換又は株式移転の直前に子会社(株式交換完全子会社等)が自己株式を保有している場合、会社法上、親会社(株式交換完全親会社等)は、株式交換日又は株式移転日に当該自己株式(子会社株式)を取得し、これと引き換えに対価(親会社株式など)を子会社に交付しなければならない。この場合、子会社が受け入れた親会社株式及び親会社が取得した子会社株式に付すべき帳簿価額には、次の2つの考え方がある。
- (1) 子会社における自己株式の帳簿価額とする考え方
- (2) 親会社株式の時価とする考え方
- (1)の考え方は、当該株式交換又は株式移転を共通支配下の取引として捉えるものであるが、本適用指針では、次の理由から、(2)の考え方によることとした(第238-2項参照)。
- ① 当該株式交換又は株式移転にあたり、会社法上、親会社は、子会社が保有する自己株式に対して対価(親会社株式など)を交付し、子会社株式を取得することとなるが、もともと、株式交換日又は株式移転日に子会社が自己株式を保有するかどうか(株式交換日又は株式移転日の直前までに自己株式を消却するかどうか)は結合当事企業の意思決定の結果に依存する。このため、親会社と子会社との間で行う株式の交換は、当該株式交換又は株式移転と一体の取引として捉える必要はなく、会計上は、共通支配下の取引として処理する必然性はないこと
- ② 子会社にとっては、当該株式交換又は株式移転により、資本控除されている自己株式が親会社株式という資産に置き換わり(資本取引の対象から損益取引の対象に変わり)、その連続性はなくなることになる。このため、子会社が受け入れる親会社株式の帳簿価額に自己株式の帳簿価額を付すのではなく、新たに受け入れる親会社株式の時価を基礎として処理することによって、株式交換又は株式移転後の子会社の損益を適切に算定することができること
10.共通支配下の取引等により発生したのれんの会計処理
- 448. 企業結合が行われた場合、のれん(又は負ののれん)は、例えば、次の場合に発生する。
- (1) 取得(第51項参照)
- (2) 共通支配下の取引
- ① 吸収合併消滅会社の株主資本の額又は移転事業に係る株主資本相当額が、交付した現金等の財産の適正な帳簿価額を上回る場合(対価が現金等の財産のみ)の当該差額としての負ののれん
- ア 親会社から子会社へ事業譲渡(第224項(1)参照)
- イ 同一の株主により支配されている子会社同士の合併(第243項(1)参照)
- ② 吸収合併消滅会社の株主資本の額又は移転事業に係る株主資本相当額が、交付した現金等の財産の適正な帳簿価額を下回る場合(対価が株式のみである場合以外)
- ア 吸収合併消滅会社の株主資本の額又は移転事業に係る株主資本相当額がゼロ以上のときの交付した現金等の財産の適正な帳簿価額との差額としてののれん
・親会社から子会社へ事業譲渡(対価は現金等の財産のみ)(第224項(1)参照)
・親会社から子会社へ会社分割(対価は現金等の財産と株式)(第231項(2)②参照)
・同一の株主により支配されている子会社同士の合併(対価は現金等の財産のみ)(第243項(1)参照)
・同一の株主により支配されている子会社同士の合併(対価は現金等の財産と株式)(第251項(2)①参照) - イ 吸収合併消滅会社の株主資本相当額又は移転事業に係る株主資本相当額がゼロ未満であるときの交付した現金等の財産の適正な帳簿価額と同額ののれん
・親会社から子会社へ会社分割(対価は現金等の財産と株式)(第231項(2)②参照)
・同一の株主により支配されている子会社同士の合併(対価は現金等の財産と株式)(第251項(2)②参照) - (1)ののれん(又は負ののれん)は、時価を基礎として算定された取得原価と識別可能資産及び負債の時価を基礎とした取得原価の配分額との差額として算定される。
(2)ののれん(又は負ののれん)は、受け入れた資産及び負債の移転元の適正な帳簿価額と、対価として交付した現金等の財産の適正な帳簿価額との差額として算定される。なお、共通支配下において、現金のみを対価として子会社株式だけを受け取る場合には、これまでの実務上の取扱いに照らして、個別財務諸表上、企業結合会計基準ではなく、金融商品会計基準の定めを優先して適用することが適当と考えられる。したがって、この場合には、個別財務諸表上、のれん(又は負ののれん)は生じないこととなる。
また、逆取得の場合(第84項、第87項及び第118項参照)において現金等の財産を対価として交付したときには、個別財務諸表上、(2)に準じてのれん(又は負ののれん)が生じるものと考えられる。 - 本適用指針では、上記ののれん(又は負ののれん)は、その性格がそれぞれ異なるものの、企業結合会計基準の定めに従い、いずれも第72項及び第76項から第78項に準じて会計処理するものとした。
Ⅵ.開 示
1.企業結合に係る特定勘定の表示
- 449. (削 除)
- 450. (削 除)
- 451. 企業結合に係る特定勘定の流動・固定区分の取扱いは、実務を考慮して、認識の対象となった事象が、貸借対照表日後1年内に発生することが明らかな場合にのみ流動負債に計上することとした(第62項参照)。
2.連結財務諸表を作成しない場合の逆取得に係る注記事項
- 452. (削 除)
- 453. 企業結合会計基準第50項では、連結財務諸表を作成していない場合において、逆取得となる企業結合に、当該取得企業の資産及び負債を企業結合直前の適正な帳簿価額により計上する方法を適用した場合には、パーチェス法を適用したとした場合に個別貸借対照表及び個別損益計算書に及ぼす影響額を注記するとされている。これは、追加的な情報開示を要求しないと、経済的実態に即したパーチェス法を適用した場合の情報が一切開示されず、投資情報としての有用性が確保されないこと、また、連結財務諸表を作成している会社との比較可能性も確保されないこととなることなどから、パーチェス法を適用した場合の重要な情報について注記を求めていると解される。
これらの趣旨を踏まえ、「影響額」の記載は、貸借対照表及び損益計算書の主要項目について、被取得企業に対してパーチェス法を適用した場合との差額又はパーチェス法を適用した場合の貸借対照表及び損益計算書の主要項目を記載することとした。また、企業結合年度における注記事項と同様の情報を、重要性が乏しくなった場合を除き、継続的に開示することとした(第307項参照)。
3.企業結合が当期首に完了したと仮定したときの当期の連結損益計算書への影響の概算額の開示
- 454. 企業結合が当期首に完了したと仮定したときの当期の連結損益計算書への影響の概算額(以下、本項及び次項において「連結損益計算書への影響の概算額」という。)の算定にあたっては、その前提条件等が企業結合ごとに異なることが想定され、詳細な方法を示すことは困難と考えられる。
このため、本適用指針では、連結損益計算書への影響の概算額の算定の基本的な考え方を示すとともに、実務に配慮し、前提条件を例示している(第327項参照)。したがって、当該情報を開示する場合には、本適用指針に示されている考え方に則して、企業結合ごとに一定の判断を加えることが必要になる。 - 455. 連結損益計算書への影響の概算額の開示(企業結合会計基準第49項(5))は、企業結合により企業業績が大きく変化することが予想されることから、結合後企業の業績推移の把握に役立つ情報の開示が目的と解される。
これらの点を踏まえて、連結損益計算書への影響の概算額の記載は、次のいずれかの方法による開示を求めることとした(第309項参照)。 - (1) 企業結合が当期首に完了したと仮定した場合の売上高及び損益情報と取得企業の連結損益計算書上の売上高及び損益情報に係る各々の差額による記載
- (2) 企業結合が当期首に完了したと仮定して算定された当該企業結合年度の売上高及び損益情報による記載
- (1)については、例えば、3月決算のA社(取得企業)が9月末にB社(被取得企業)を取得した場合、A社の実際の連結損益計算書(B社の業績は10月から翌年3月末までの6か月間が反映される。)と、A社が当該事業年度の期首にB社を取得したと仮定したときのA社の連結損益計算書(B社の業績は期首から翌年3月末までの12か月間が反映される。)との差額を開示することになる。
また、連結損益計算書への影響の概算額に関する開示項目としては、財務諸表利用者が収益及び利益動向を適切に推定できるように、売上高だけでなく、実務上可能な範囲で、当期純損益や1株当たり当期純損益などの損益情報を記載することとした。なお、金額表示については、取得企業の業績推移の把握に役立つ情報という観点から、財務諸表における金額の表示単位よりも大きい単位で表示することも可能であると考えられる。
なお、連結損益計算書への影響の概算額の開示の重要性の判断については、我が国では今まで当該情報の開示慣行がないことや作成者の負担を勘案して数値基準によるガイドラインを設けるべきであるという意見もあるが、海外の基準でも数値基準によるガイドラインを設けておらず、また、我が国において、重要性の判断基準に数値基準を設けないこととしてきた経緯もあることから、業績推移の把握に役立つ情報を開示するという注記の趣旨を踏まえて判断していくこととし、数値基準によるガイドラインを設けないこととした。 - 456. (削 除)
- 457. (削 除)
Ⅶ.適用時期等
- 458. (削 除)
- 459. (削 除)
- 460. 2019年(平成31年)改正の本適用指針について、一般に、組織再編の会計処理を過去に遡って処理することは、長期にわたり相当程度の情報を入手することが必要になる場合が多く実務的な対応に困難を伴うことが考えられるため、2019年(平成31年)4月1日以後開始する事業年度の期首以後実施される組織再編から将来にわたって適用することとした(第331-5項参照)。
- 460-2. 2024年改正適用指針は2024年に公表されたリース会計基準に対応するための改正であることから、適用時期については、2024年に公表されたリース会計基準と同様とした(本適用指針第331-7項参照)。
- 460-3. リースが2024年改正適用指針適用前の企業結合日に識別可能資産及び負債とされていなかった場合に本適用指針第61-2項を遡及適用したとき、リースの条件が市場の条件と比較して有利又は不利になる場合に同項(1)の影響額を加減した金額を基礎として使用権資産への取得原価の配分額を算定すると、企業結合日におけるのれんの計上額並びに企業結合日以降におけるのれんの償却額及び減損損失の額に影響を与えることとなる。また、過去に遡ってリースの条件が市場の条件と比較して有利又は不利になるかどうかを判定することには、一定の実務上の困難さがあると考えられる。これらの遡及適用による実務上の負担に対応するため、遡及適用にあたって本適用指針第61-2項を適用した場合であっても、使用権資産への取得原価の配分額の算定において、同項(1)の影響額を加減しないことができるとする経過措置を設けることとした(本適用指針第331-7項ただし書き参照)。
2019年(平成31年)改正の本適用指針の公表による他の会計基準等についての修正
- 461. 2019年(平成31年)改正の本適用指針により、当委員会が公表した会計基準等については、次の修正を行う(下線は追加部分を示す。)。
- (略)
- 以 上
設 例
- <設例全般の留意点について>
- ・以下の設例は、本適用指針で示された内容についての理解に資するため、参考として示されたものであり、仮定として示された前提条件の記載内容は、経済環境や各企業の実情等に応じて異なることとなる。
- ・簡便化のため、特に断りのない限り、税効果は考慮していない。
- ・払込資本と表記している箇所は、貸借対照表項目に置き換えると資本金又は資本剰余金(資本準備金又はその他資本剰余金)となる。具体的にどの項目を増加させるかは、会社法の定めによることになる。
設 例
- [設例1] (削 除)
- [設例2] (削 除)
- [設例3] (削 除)
- [設例4] 取得原価の算定-段階取得(取得が複数の取引により達成された場合)の会計処理
- (取得企業が被取得企業の株式を保有していた場合)
- 1. 被取得企業の株式をその他有価証券に分類していた場合
- (1) 前提条件
- ① A社(公開企業 決算日3月31日)とB社(公開企業)は次の条件で合併に合意した。
・吸収合併存続会社:A社、吸収合併消滅会社:B社
・合併期日(企業結合日):4月1日
・B社株主に対して割り当てるA社の株式数18株 - ② 当該企業結合は取得とされ、取得企業はA社となった。
- ③ A社は過年度にB社株式を1株当たり4で10株(B社の議決権比率10%)取得し、その他有価証券(帳簿価額40)としている。
- ④ その他の条件
・合併期日(企業結合日)におけるA社の株価:1株当たり30
・合併期日(企業結合日)におけるB社の株価:1株当たり6
・決算日におけるB社の株価:1株当たり6
・合併期日(企業結合日)におけるB社の識別可能資産の時価:400 - (2) 企業結合日における取得企業A社の会計処理
- ① 個別財務諸表上の会計処理

- ・期末に時価評価されているB社株式の時価評価差額(20=(@6-@4)×10株)を振り戻す。

- ・取得原価の算定:
540(@30(合併期日のA社の株価)×18株(B社株主に対する割当株式数))(*1)+40(企業結合日直前にA社が保
有していたB社株式の帳簿価額)(*2)=580(第46項参照)。
・取得原価の配分額:400(企業結合日におけるB社の識別可能資産の時価を基礎として配分)
・のれんの算定:180(取得原価580と取得原価の配分額400との差額) - ② 連結修正仕訳

- ・A社はB社株式を保有していたため、その時価60(=@6×10株)と適正な帳簿価額40との差額20(*3)を損益とし、これに見合う金額は、のれんの修正として処理する(第46-2項参照)。
- 2. 被取得企業の株式を関連会社株式に分類していた場合(関連会社との合併)
- (1) 前提条件
- ① A社(公開企業 決算日3月31日)とB社(A社の関連会社)は次の条件で合併に合意した。
・吸収合併存続会社:A社、吸収合併消滅会社:B社
・合併期日(企業結合日):4月1日
・B社株主に対して割り当てるA社の株式数14株 - ② 当該企業結合は取得とされ、取得企業はA社となった。
- ③ A社は過年度にB社株式を1株当たり4で30株(B社の議決権比率30%)取得し、関連会社株式(帳簿価額120)としている。A社の連結財務諸表において、B社に対する合併期日(企業結合日)直前の持分法による評価額は150であった。
- ④ その他の条件
・合併期日(企業結合日)におけるA社の株価:1株当たり30
・合併期日(企業結合日)におけるB社の株価:1株当たり6
・合併期日(企業結合日)におけるB社の識別可能資産の時価:500 - (2) 企業結合日における取得企業A社の会計処理
- ① 個別財務諸表上の会計処理

- ・取得原価の算定:
420(@30(合併期日のA社の株価)×14株(B社株主に対する割当株式数))(*4)+120(企業結合日直前にA社が
保有していたB社株式の帳簿価額)(*5)=540(第46項参照)。 - ・取得原価の配分額:500(企業結合日におけるB社の識別可能資産の時価を基礎として配分)
- ・のれんの算定:40(取得原価540と取得原価の配分額500との差額)
- ② 連結修正仕訳

- ・A社は持分法適用関連会社B社と企業結合したため、持分法による評価額150と合併期日の時価180(=@6×30株)との差額30(*6)を損益とし、これに見合う金額は、のれんの修正として処理する(第46-2項参照)。

- ・合併期日(企業結合日)において消滅することとなる関連会社株式について、合併期日直前における個別財務諸表上の帳簿価額120と持分法による評価額150との差額30(*7)を、のれんの修正として会計処理する(第46-2項参照)。
- [設例5] 取得原価の算定-条件付取得対価の会計処理
- 1. 将来の業績に依存する条件付取得対価の場合
- (1)-1 対価の追加的な交付又は引渡しが行われる場合
- ① 前提条件
X1年9月30日、A社(3月決算)及びB社(12月決算)は、A社がB社を株式交換により完全子会社化する(企業結合日はX2年4月1日)ことについて、それぞれの株主総会で承認を受けた。企業結合日において認識されたのれんの金額は50であった。
企業結合契約において、B社のX2年12月31日終了事業年度の経常利益が500を上回った場合には、A社はその時点の時価相当額が100となるA社株式をB社株主に対して追加で交付する条項が含まれている。
X3年3月31日にB社のX2年12月31日終了事業年度の経常利益は1,000となることが確実となったため、A社は旧B社株主に対してA社株式を追加交付することとなった。A社は、X3年4月中に当該株式を旧B社株主に対して追加交付した。
なお、のれんの償却期間は10年とする。 - ② X3年3月31日のA社の連結財務諸表上の会計処理

- (*1) 株式発行時に払込資本へ振り替える。
- A社は、条件付取得対価の交付が確実となり、その時価が合理的に決定可能となった時点で、支払対価を取得原価として追加的に認識するとともに、のれんを追加的に認識する又は負ののれんを減額する。追加的に認識する又は減額するのれん又は負ののれんは、企業結合日(X2年4月1日)時点で認識又は減額されたものと仮定して計算し、追加認識又は減額する事業年度以前に対応する償却額は損益として処理する(第47項(1)参照)。
- (1)-2 対価の返還が行われる場合
- ① 前提条件
X1年9月30日、A社(3月決算)はB社(12月決算)の株主と、A社が現金を対価とする株式の取得によりB社を完全子会社化することについて合意した(株式の譲渡日はX2年4月1日)。企業結合日において認識されたのれんの金額は150であった。
株式譲渡契約において、取得対価の支払はX2年4月1日に行われるものの、B社のX2年12月31日終了事業年度の経常利益が1,000を下回った場合には、A社はB社株主に支払った当初の取得対価の金額から100の返還を現金で受ける条項が含まれている。
X3年3月31日に、B社のX2年12月31日終了事業年度の経常利益は500となることが確実となったため、A社は旧B社株主から100の返還を受けることとなった。その後、A社はX3年4月中に100の返還を受けた。
なお、のれんの償却期間は10年とする。 - ② X3年3月31日のA社の連結財務諸表上の会計処理

- A社は、条件付取得対価の返還が確実となり、その時価が合理的に決定可能となった時点で、返還される対価を取得原価から減額し、のれんを減額する又は負ののれんを追加的に認識する。追加的に認識する又は減額するのれん又は負ののれんは、企業結合日(X2年4月1日)時点で認識又は減額されたものと仮定して計算し、追加認識又は減額する事業年度以前に対応する償却額は損益として処理する(第47項(1)参照)。
- 2. 特定の株式又は社債の市場価格に依存する条件付取得対価の場合
(1) 株式を追加交付する場合 - ① 前提条件
X1年9月30日、A社及びB社(いずれも公開企業で決算日は3月31日)は、A社がB社を株式交換により完全子会社化する(企業結合日はX2年4月1日)ことについて、それぞれの株主総会で承認を受けた。
企業結合契約において、企業結合日後1年経過時点におけるA社の株価が契約に定めた株価を下回っている場合には、A社はB社株主が不利益を被らないように(当初合意した価額を維持するように)B社株主に対して追加でA社株式を発行する条項が含まれていたものとする。
X3年4月1日現在において、A社の株価が契約に定めた株価を下回っていたため、A社株式の追加交付が確実となったとする。 - ② X3年3月31日のA社の連結財務諸表上の会計処理

- 企業結合の対価総額は変わらないため、会計処理は不要であり、発行する株式数を増加させるだけである。
- (2) 社債を追加交付する場合
- ① 前提条件
X2年4月1日にA社は社債(額面100、時価80)10口をB社株主に交付して、B社の発行済株式のすべてを取得したものとする。また、B社のX2年4月1日の個別貸借対照表は次のとおりであったとする。 
- さらに企業結合契約において、X3年3月31日現在の当該社債の時価総額が800未満の場合、当初の合意した価額800を維持するために、A社はB社株主に対して追加で社債を交付する条項が含まれていたものとする。X3年3月31日現在において、A社の社債の時価が契約に定めた価額を下回っていたため、社債の追加交付が確実となったとする。
- なお、時価により交付したことによるA社の社債の取得価額800と社債の額面1,000の差額200(社債発行差金相当額)は社債償還期間(5年)で認識(償却)するものとする。
- のれんの償却期間は10年とする。
- ② X2年4月1日のA社の個別財務諸表上の会計処理

- (*2) 交付した社債の時価:@80×10口=800
- ③ X2年4月1日のA社の連結修正仕訳

- ④ X3年3月31日のA社の個別財務諸表上の会計処理

- (*3) X2年4月1日交付社債に係る償却原価法による差額の認識(償却):40(=200÷5年)

- (*4) のれん償却:10(=100÷10年)

- (*5) X3年3月31日現在のA社の交付した社債10口の時価総額は500であったため、X3年3月31日にA社は額面100(時価50)の社債6口(=(800-500)÷@50)を追加的に交付した。A社は、条件付取得対価の交付が確実となり、その時価が合理的に決定可能となった時点であるX3年3月31日に、追加交付する条件付取得対価を、その時点の時価で認識することになるため、追加交付した社債に係る差額:(100-50)×6口=300をX3年3月31日現在で算定するが処理は行わず、償却原価法により社債の償還期間について、将来にわたり翌年度から認識(償却)する。
また、企業結合日(X2年4月1日)現在で交付している社債をX3年3月31日時点の時価に修正し、当該修正により生じたX3年3月31日現在の社債ディスカウントの増加額300(=(80-50)×10口)(社債発行差金相当額)について、X3年3月31日時点では処理を行わず、償却原価法により社債の残存している償還期間について、将来にわたり翌年度から認識(償却)する(第47項(2)参照)。 - [設例6] 取得原価の配分-時価が一義的に定まりにくい資産への配分額
- (1) 前提条件
- A社はB社を吸収合併し、A社が取得企業とされた(取得原価を500とする。)。A社がB社から受け入れた資産に時価が一義的には定まりにくい土地が含まれており、これを評価することにより、負ののれんが多額に発生することが見込まれる。なお、その他の資産の時価は信頼性をもって評価できるものとする(ただし、簡便化のため時価と帳簿価額は等しいものとする。)。
- B社の企業結合日前日の個別貸借対照表は次のとおりであった。

- (2) 取得原価の配分額
- 土地に関し、仮に一定の条件の下で鑑定した場合の評価額1,200を用いて、識別可能資産及び負債へ取得原価を配分した場合の会計処理は、次のようになる。
- 個別財務諸表上の会計処理

- (*) △800=500(取得原価)-(200(売掛金)+200(棚卸資産)+1,200(土地)-300(負債))
- このように、受け入れた資産に時価が一義的には定まりにくい土地が含まれており、これを評価することにより、負ののれんが多額に発生することが見込まれる場合、当該資産への取得原価の配分額は、負ののれんが発生しない範囲で評価した額とすることができる(第55項参照)。したがって、次のとおり、仮に一定の条件の下で鑑定した場合の評価額1,200から負ののれんに相当する800を控除した400(=1,200-800)を土地への配分額とすることができる。
- 個別財務諸表上の会計処理

- ただし、企業結合条件の交渉過程で取得企業が利用可能な独自の情報や前提など合理的な基礎に基づき当該資産の価額を算定しており、それが取得の対価の算定にあたり考慮されている場合には、その価額を取得原価の配分額とする(第55項参照)。
- [設例7] 取得原価の配分-被取得企業においてヘッジ会計が適用されていた場合
- (1) 前提条件
- ① A社はB社をX2年4月1日に吸収合併した(取得原価400)。
- ② A社(吸収合併存続会社)、B社(吸収合併消滅会社)とも3月決算である。当該合併は取得とされ、取得企業はA社である。
- ③ 被取得企業B社は、変動利付の借入1,000(X1年4月1日からX4年3月31日までの期間3年間)を行っている。利払期間は4月1日から3月31日までであり、3月31日に期首の利率で後払いするものとする。
- ④ B社は、当該借入に対応する固定金利3%支払・変動金利受取の金利スワップ契約(想定元本1,000、期間一致)をX1年4月1日に金融機関と締結し、繰延ヘッジ処理を行っていた。
- ⑤ A社は、X2年4月1日に上記④の金利スワップ契約をヘッジ指定し、繰延ヘッジを適用した。
- ⑥ X2年3月31日の金利は2%、X3年3月31日の金利は3.5%であった。
- ⑦ X2年3月31日の金利スワップの時価は△10、X3年3月31日の時価は5であった。
- ⑧ A社はのれんを5年で償却するものとする。
- ⑨ B社の合併直前事業年度の貸借対照表は次のとおりである。

- (*1) 諸資産及び借入金の時価と簿価は等しいものとする。
- (2) 取得企業A社による企業結合日(X2年4月1日)の会計処理

- 被取得企業において繰延ヘッジ損益が計上されていても、取得企業はそれを引き継ぐことはできない(第68項参照)。
- (3) ヘッジ指定時の会計処理

- (*2) デリバティブの時価を前受利息に振り替える(第68項参照)。
- (4) 結合事業年度末(X3年3月31日)の会計処理

- (*3) 1,000×2%=20
- (*4) 1,000×(2%-3%)=△10
- (*5) 前受利息10×1年/2年(X2年4月1日~X4年3月31日)=5
- (*6) 時価の変動額:5(X3年3月31日の時価)-(△10(X2年3月31日の時価)+10((3)のヘッジ指定時の戻し))=5を繰り延べる。
- (*7) のれんの償却:210×1年/5年=42
- (5) 借入返済日(X4年3月31日)の会計処理

- (*8) 1,000×3.5%=35
- (*9) 1,000×(3.5%-3%)=5
- [設例8] 取得原価の配分-暫定的な会計処理
- (1) 前提条件
- ① X1年10月1日を企業結合日(合併期日)とし、A社(決算日3月31日)はB社を吸収合併した。取得企業はA社とされ、取得原価は600であった。
- ② 企業結合日(合併期日)以後の年度決算(X2年3月31日)において、B社の土地については、時価が入手できず、取得原価の配分作業が完了しなかったため、その時点において入手可能な合理的な情報(評価額300)に基づき暫定的な会計処理を行った。また、その他の資産の時価は信頼性をもって評価できるものとする(ただし、簡便化のため時価と帳簿価額は等しいものとする。)。
- ③ B社の企業結合日(合併期日)前日の個別貸借対照表は次のとおりである。

- ④ その後、X2年4月1日に追加的な情報を入手し、当該土地の時価が400であると算定されたとする。なお、のれんは10年で償却するものとする。
- (2) 企業結合日(合併期日)の会計処理(X1年10月1日)
- 個別財務諸表上の会計処理

- (*1) 土地への取得原価の配分は、この時点で入手可能な情報(評価額300)に基づき、暫定的に行う(第69項参照)。
- (3) 企業結合日以後の年度決算時の会計処理(X2年3月31日)
- 個別財務諸表上の会計処理

- (*2) のれんの償却:200÷10年×1/2=10
- (4) 暫定的な会計処理の確定時の会計処理(X2年6月30日)
- 暫定的な会計処理を確定させたことにより取得原価の配分額を見直した場合には、企業結合日におけるのれんの額も取得原価が再配分されたものとして会計処理を行い、企業結合年度に当該確定が行われたかのように会計処理を行う(第70項参照)。

- (*3) 400(時価)-300(暫定的な評価額)=100
- (*4) のれん(X2年4月1日からX2年6月30日分):100÷10年×1/4=2.5
- (*5) のれん償却の修正:10(X2年3月31日計上分)-100÷10年×1/2=5

- [設例9] 取得企業の増加資本の会計処理-新株の発行と自己株式の処分を併用した場合
- (1) 前提条件
- ① A社とB社はX1年4月1日を企業結合日(合併期日)として合併し、A社が吸収合併存続会社となった。当該合併は取得とされ、A社が取得企業、B社が被取得企業とされた。
- ② 合併期日のA社株式の時価は1株当たり6であり、交付した株式(総数100株)の時価総額は600となった。A社は、B社株主へのA社株式の交付(総数100株)にあたり、自己株式を10株(帳簿価額70)処分し、新株を90株(時価540)発行した。
- ③ 企業結合日(合併期日)において、B社が保有するその他有価証券の時価は170(帳簿価額150)であった。なお、その他の資産は時価と帳簿価額が同じであったものとする。
- ④ A社は、増加すべき株主資本のうち、資本金を200、資本準備金を100増加させ、残額についてはその他資本剰余金とした。
- ⑤ X1年3月31日現在のB社の個別貸借対照表は次のとおりである。

- (2) 企業結合日の個別財務諸表上の会計処理(X1年4月1日)

- (*1)・取得原価:交付した株式数100株(自己株式の処分10+新株の発行90)×@6(600÷100)=600
・取得原価の配分額(識別可能資産):諸資産200+その他有価証券170=370
・のれん:取得原価600-取得原価の配分額(識別可能資産)370=230
(*2) 増加すべき株主資本の額(新株の発行と自己株式の処分の対価の額:600)から交付した自己株式の帳簿価額70を控除して算定した額を払込資本の増加として処理し、増加すべき払込資本の内訳項目は、前提条件④により、資本金200、資本準備金100、残額をその他資本剰余金とする(第80項参照)。 - [設例10] 逆取得となる吸収合併の会計処理
- (1) 前提条件
- ① A社とB社は合併した。当該合併は、A社が吸収合併存続会社となったが、取得企業はB社とされた(逆取得)。
- ② 合併比率(A社:B社)は、1:2.5、合併期日のB社の株価は1株当たり40であった。
- ③ 発行済株式数は、A社が100株、B社が60株であった。
- ④ A社及びB社の合併期日前日の個別貸借対照表は次のとおりであったものとする。

- (*1) 企業結合日におけるA社の諸資産の時価は1,300であった。

- (2) A社(吸収合併存続会社)の個別財務諸表上の会計処理
- A社の個別財務諸表上、B社の合併期日の前日に算定した適正な帳簿価額により資産及び負債を受け入れ、資産と負債の差額のうち、B社の株主資本の額を、原則としてA社の払込資本とし、株主資本以外の項目(評価・換算差額等など)については、適正な帳簿価額を引き継ぐ。また、B社の株主資本の額については、A社の払込資本を増加させる方法に代えて、B社の合併期日の前日の資本金、資本準備金、その他資本剰余金、利益準備金及びその他利益剰余金の内訳科目をそのまま引き継ぐことができる(第84項(1)参照)。
- なお、ここでは、B社の株主資本の額をA社の払込資本とし、その全額を資本剰余金としている。

- この結果、合併後のA社の個別貸借対照表は次のようになる。

- (3) A社(吸収合併存続会社)の連結財務諸表(A社を被取得企業とした連結財務諸表)上の会計処理
- ① 取得原価の算定
合併が逆取得となる場合の取得の対価となる財の時価は、A社株主が合併後の企業(結合後企業)に対する実際の議決権比率と同じ比率を保有するのに必要な数のB社株式を、B社が交付したものとみなして算定する(第85項(1)参照)。
・A社株主の結合後企業に対する議決権比率:
合併前A社発行済株式数 100株÷合併後A社発行済株式数(100株+60株×2.5)=40%
・この議決権比率になるように、B社が交付したとみなすB社株式の数(X株)
X÷(X+60株)=40%
X=40株
・取得原価:40株×@40=1,600 - ② 取得原価の配分額:企業結合日におけるA社諸資産の時価1,300
- ③ のれん:取得原価1,600-取得原価の配分額1,300=300
のれんは、取得原価1,600から、会計上の被取得企業であるA社から受け入れた資産及び引き受けた負債の正味の時価1,300を差し引いて算定する(第85項(2)参照)。 
- ④ 増加すべき株主資本の会計処理
①で算定された取得原価1,600をB社の払込資本600に加算する。ただし、連結貸借対照表上の資本金は吸収合併存続会社A社の資本金300とし、A社の資本金300と合併直前のB社の資本金600が異なるため、その差額300を資本剰余金に振り替える(第85項(3)参照)。
この結果、A社の連結貸借対照表は次のようになる。 
- (*2) 3,300=1,300(A社諸資産の時価)+2,000(B社諸資産の帳簿価額)
- (*3) 吸収合併消滅会社B社(取得企業)の合併期日の前日の財務諸表の金額を計上するため、いったん、資本金600、利益剰余金1,300、その他有価証券評価差額金100とするが、資本金については吸収合併存続会社A社の資本金300とし、差額の300(600-300)は資本剰余金へ振り替える。
- (*4) 1,900=増加すべき株主資本1,600+(B社資本金600-A社資本金300)
- [設例11] 分離元企業の会計処理(受取対価:分離先企業の株式のみ)
- -分離先企業が新たに子会社となる場合
- [設例11-1] 事業分離前に分離元企業が分離先企業の株式を保有していない場合
- -吸収分割による場合
- (1) 前提条件
- B社は、X1年3月31日にb事業を営むY社を80(株式100株)にて設立した(設立時の諸資産の適正な帳簿価額は80(株主資本80)、諸資産の時価は80)。
- X2年3月31日に吸収分割により、分離元企業(吸収分割会社)A社は、a事業(a事業に係る諸資産の適正な帳簿価額は580(株主資本相当額480、評価・換算差額等100)、a事業に係る諸資産の時価は640、a事業の時価は800)を、B社の100%子会社である分離先企業(吸収分割承継会社)Y社(諸資産の適正な帳簿価額は100(株主資本100)、諸資産の時価は150、企業(事業)の時価は200)に移転する。
- この結果、A社はY社の株式400株(時価800、@2)を受け取り、Y社を80%子会社とする。

- (2) 考え方
- ① 分離元企業A社の個別財務諸表
これは、吸収分割による子会社化の形式をとる企業結合にあたるため、移転事業に係る株主資本相当額に基づき、分離先企業の株式(子会社株式)の取得原価を算定することとなる(第98項(1)参照)。 
- ② 分離元企業A社の連結財務諸表
- ア 分離先企業Y社の個別財務諸表

- ・A社からのa事業の受入れ(逆取得に該当する。)

- イ 分離元企業A社の連結財務諸表
- <連結修正仕訳>
- ・Y社(のb事業)にパーチェス法を適用

- (*1) 諸資産の評価差額50(=受け入れたb事業の諸資産の時価150-適正な帳簿価額100)
- (*2) 分離先企業に対して投資したとみなされる額160(Y社のb事業の時価200×80%)と、これに対応する分離先企業の事業分離直前の資本120(Y社のb事業の諸資産の時価150×80%)の差額
- (*3) A社がY社のb事業の80%を取得するため、連結上パーチェス法の適用による取得原価は160(=b事業の80%に対する取得時の時価(b事業の時価200×80%又はY社の株式価格@2×80株))
- (*4) 非支配株主持分30(=Y社の資本(諸資産の時価を基礎にした取得原価の配分後)150×20%)
- ・支配獲得後の資本連結

- (*5) 評価・換算差額等に係る非支配株主持分の振替20=移転したa事業に係る評価・換算差額等100×20%
- (*6) 子会社株式320=事業分離による取得原価480-b事業の新規取得に要した額160
- (*7) 移転したa事業に係る非支配株主持分116=96(=a事業の取得原価480×20%)+20(*5)
- (*8) 親会社となる分離元企業A社の連結上、分離元企業のa事業が移転されたとみなされる額160(=移転したa事業の時価800×20%)と、移転した事業に係る親会社の持分の減少額96(=移転したa事業の株主資本相当額480×20%)との間に生じた差額64(貸方)は、資本剰余金として処理する。なお、当該金額は、Y社株式の取得原価480(移転したa事業に係る株主資本相当額)とこれに対応する親会社の持分544(=(移転したa事業の株主資本相当額480+b事業の時価200)×80%)との差額として算定することもできる。

- *a事業の評価・換算差額等に係る記載は省略している。
- [設例11-2] 事業分離前に分離元企業が分離先企業の株式を保有していない場合
- -共同新設分割による場合
- (1) 前提条件
- 共同新設分割により、分離元企業(新設分割会社)A社は、a事業(a事業に係る諸資産の適正な帳簿価額は580(株主資本相当額480、評価・換算差額等100)、a事業に係る諸資産の時価は640、a事業の時価は800)を、B社のb事業(b事業に係る諸資産の適正な帳簿価額は100、b事業に係る諸資産の時価は150、b事業の時価は200)とともに、分離先企業(新設分割設立会社)Y社に移転する。
この結果、A社はY社の株式400株(80%)(時価800)を受け取りY社の親会社となる。なお、B社はY社の株式100株(20%)(時価200)を受け取る。 
- (2) 考え方
- ① 分離元企業A社の個別財務諸表
企業結合会計基準では、新設分割による子会社の設立は、共通支配下の取引に係る会計処理に準じて処理するとされているため、分離元企業A社の個別財務諸表上、取得する新設分割設立会社Y社の株式(子会社株式)の取得原価は、移転事業に係る株主資本相当額に基づいて算定することとなる(第98項(1)参照)。 
- ② 分離元企業A社の連結財務諸表
- ア 分離先企業Y社の個別財務諸表
- ・A社からのa事業の受入れ(共通支配下の取引に係る会計処理に準じて処理するため、移転直前
に付された適正な帳簿価額により計上する。) 
- ・B社からのb事業の受入れ(取得)

- イ 分離元企業A社の連結財務諸表
- <連結修正仕訳>
- ・分離先企業Y社の個別財務諸表に計上されているのれんをそのまま計上する方法による(第98項
(2)②ただし書き参照)。 
- (*1) 評価・換算差額等に係る非支配株主持分の振替20=移転したa事業に係る評価・換算差額等100×20%
- (*2) 非支配株主持分156=Y社の資本(a事業に係る評価・換算差額等を含む。)780×20%
- (*3) 親会社となる分離元企業A社の連結上、移転事業に係る株主資本相当額480とこれに対応する親会社の持分544との間に差額64(貸方)が生ずる。分離元企業A社のa事業は、連結上も既に支配していたものであり、B社のb事業を非支配株主から取得したと考えられることにより生じた差額64(貸方)は、支配獲得後における子会社の時価発行増資等により生じた差額と同様に、資本剰余金として処理する。
なお、新設分割設立会社Y社を連結するに際して、分離元企業A社の連結財務諸表上、パーチェス法が適用されるが、分離先企業Y社の個別財務諸表に計上されているのれんをそのまま計上する方法によるため、連結財務諸表上も50(借方)がのれんとして計上されている。 
- *a事業の評価・換算差額等に係る記載は省略している。
- [設例11-3] 事業分離前に分離元企業が分離先企業の株式をその他有価証券として保有していた場合(段階
取得) - (1) 前提条件
- b事業を営むY社は、株式を100株発行しており、A社が10株、B社が90株保有している。分離元企業A社は、当該Y社株式10株(取得原価は13(市場価格なし))をその他有価証券としている。なお、Y社株式取得時(X1年3月31日)のY社の諸資産の適正な帳簿価額は80(払込資本50、利益剰余金30)であり、諸資産の時価は80であった。
X2年3月31日に吸収分割により、分離元企業(吸収分割会社)A社は、a事業(a事業に係る諸資産の適正な帳簿価額は580(株主資本相当額480、評価・換算差額等100)、a事業に係る諸資産の時価は640、a事業の時価は700)を、分離先企業(吸収分割承継会社)Y社(諸資産の適正な帳簿価額は100(払込資本50、利益剰余金50)、諸資産の時価は150、企業(事業)の時価は200)に移転する。
この結果、A社はY社の株式350株(時価700)を受け取り、Y社を80%子会社とする。 
- (2) 考え方
- ① 分離元企業A社の個別財務諸表
これは、吸収分割による子会社化の形式をとる企業結合にあたるため、移転事業に係る株主資本相当額に基づき、分離先企業の株式の取得原価を算定することとなる(第99項参照)。 
- ② 分離元企業A社の連結財務諸表
- ア 分離先企業Y社の個別財務諸表

- ・A社からのa事業の受入れ(逆取得に該当する。)

- イ 分離元企業A社の連結財務諸表
- <連結修正仕訳>
- ・Y社(のb事業)にパーチェス法を適用

- (*1) 連結財務諸表上、分離元企業が保有していた分離先企業の株式の事業分離日の時価を加算することになり(第99項(2)①参照)、Y社株式には市場価格がないため、Y社のb事業に係る時価200の10%である20を時価とした。A社はY社株式をその他有価証券として保有していたため、その時価と適正な帳簿価額13との差額7は当期の段階取得に係る損益として処理する(第99項(2)①なお書き参照)。

- (*2) 諸資産の評価差額50(=受け入れたb事業の諸資産の時価150-適正な帳簿価額100)
- (*3) 分離先企業に対して投資したとみなされた額160(Y社のb事業の時価200の70%である140と、Y社株式10株の時価である20との合計額)と、これに対応する分離先企業の事業分離直前の資本120(Y社のb事業の諸資産の時価150の80%)の差額
- (*4) 段階取得において、連結上パーチェス法の適用による取得原価は、次の合計の160となる。
- ・当初10%取得分であるY社株式の時価20
- ・追加70%取得分である吸収分割による取得原価140(=b事業の70%に対する取得時の時価:b事業の時価200×70%又はY社の株式価格@2×70株)
- (*5) 非支配株主持分30(=Y社の資本(諸資産の時価を基礎にした取得原価の配分後)150×20%)の計上
- ・支配獲得後の資本連結

- (*6) 評価・換算差額等に係る非支配株主持分の振替20=移転したa事業に係る評価・換算差額等100×20%
- (*7) 子会社株式340= 事業分離による取得原価500(=480+20)-b事業の新規取得に要した額160(=20+140)
- (*8) 移転したa事業に係る非支配株主持分の増加116=96(=a事業の取得原価480×20%)+20(*6)
- (*9) 分離元企業のa事業が移転されたとみなされる額140(=移転したa事業の時価700×20%)と、移転した事業に係る親会社の持分の減少額96(=移転したa事業の株主資本相当額480×20%)との間に生ずる差額44(貸方)については、資本剰余金として取り扱う。

- *a事業の評価・換算差額等に係る記載は省略している。
- [設例11-4] 子会社が他の子会社に吸収分割により事業を移転する場合
- (1) 前提条件
- A社は、P社の100%子会社、B社はP社の80%子会社である。
- B社は、X1年3月31日にb事業を営むY社を設立した(設立時の諸資産の適正な帳簿価額は100(株主資本100)、諸資産の時価は100、発行済株式100株)。
- X2年3月31日に吸収分割により、分離元企業(吸収分割会社)A社は、a事業(a事業に係る諸資産の適正な帳簿価額(株主資本相当額)は480、a事業に係る諸資産の時価は640、a事業の時価は800)を、B社の100%子会社である分離先企業(吸収分割承継会社)Y社(諸資産の適正な帳簿価額は100(株主資本100)、諸資産の時価は150、企業(事業)の時価は200)に移転する。
- この結果、A社はY社の株式400株(時価800、@2)を受け取り、Y社を80%子会社とする。

- (2) 考え方
- ① 分離元企業A社の個別財務諸表
これは、吸収分割による子会社化の形式をとる企業結合にあたるため、移転事業に係る株主資本相当額に基づき、分離先企業の株式(子会社株式)の取得原価を算定することとなる(第254-2項参照)。 
- ② 分離先企業Y社の個別財務諸表

- ・A社からのa事業の受入れ(共通支配下の取引に該当する。)(第254-3項参照)

- ③ 分離元企業A社の連結財務諸表
- <連結修正仕訳>
- ・親会社の持分変動による差額の認識

- (*1) Y社の資本(事業分離前100+事業分離後(受け入れた諸資産の帳簿価額)480)×20%
- (*2) A社は企業集団の最上位の親会社ではないため、帳簿価額を基礎とした会計処理を行うことになる(第254-4項(1)参照)。親会社の持分変動による差額16(借方)(=480 -(a事業480+b事業100)×80%))を資本剰余金として処理する。

- ④ B社の個別財務諸表
- ・A社からのa事業の受入れに伴う関連会社株式への振替(100%→20%)

- ⑤ B社の連結財務諸表
- <連結修正仕訳>
- ・開始仕訳と連結から持分法への移行に伴う開始仕訳の取消し(純額では影響なし)

- ・持分変動差額の認識

- (*3) 共通支配下の取引であるため、B社は帳簿価額を基礎とした会計処理を行うことになる(第254-4項(2)参照)。したがって、関連会社株式の個別上の帳簿価額100と持分法評価額116(=Y社の資本(事業分離前100+事業分離後(受け入れた諸資産の帳簿価額)480)×20%)との差額16(貸方)を関連会社株式の持分変動差額として処理する。
- ⑥ 企業集団の最上位の親会社P社の連結財務諸表(Y社に係る部分)
- <連結修正仕訳>
- P社は、当該会社分割の結果、a事業に対する持分が、100%から96%(=100%×80%+20%×80%)に
減少するが、b事業に対する持分は80%から96%(=80%×20%+100%×80%)へと増加する。 - ・親会社の持分変動による差額の非支配株主持分への振替

- (*4) ⑤によりB社で認識したY社に係る持分変動差額16のうち、非支配株主持分に係る金額3.2(= 16×20%)を振り替える。
- (*5) 非支配株主持分は、事業分離前の20(=b事業100×20%)と事業分離後23.2(a事業480×4%=19.2とb事業100×4%=4の合計)の差額3.2として算定することもできる。

- [設例12] 分離元企業の会計処理(受取対価:分離先企業の株式のみ)
-分離先企業が関連会社となる場合 - [設例12-1] 事業分離前に分離元企業が分離先企業の株式を保有していない場合
- (1) 前提条件
- X1年3月31日に、B社はb事業を営むY社を400(株式400株)にて設立した(設立時の諸資産の適正な帳簿価額は400(株主資本400)、諸資産の時価は400)。
- X2年3月31日に吸収分割により、分離元企業(吸収分割会社)A社は、a事業(a事業に係る諸資産の適正な帳簿価額は100(株主資本相当額100)、a事業に係る諸資産の時価は150、a事業の時価は200)を、B社の100%子会社である分離先企業(吸収分割承継会社)Y社(諸資産の適正な帳簿価額は480(株主資本480)、諸資産の時価は640、企業の時価は800)に移転する。
- この結果、A社はY社の株式100株(20%)(Y社の株価@2、時価200)を受け取り、Y社を関連会社とする。

- (2) 考え方(第100項参照)
- ① 分離元企業A社の個別財務諸表
移転損益は認識されず、分離先企業Y社の株式の取得原価は、移転事業に係る株主資本相当額に基づき算定する。 
- ② 分離元企業A社の連結財務諸表
- ア 分離先企業Y社の個別財務諸表

- ・A社からのa事業の受入れ(取得)

- イ 分離元企業A社の連結財務諸表
- <連結修正仕訳>
- ・Y社株式20%の取得によるのれんの算定
関連会社となる分離先企業Y社(のb事業)に係る分離元企業の持分の増加(20%)について、持分
法適用上、部分時価評価法の適用により、のれん32(借方)(=分離先企業に対して投資したとみ
なされる額160(*1)-関連会社に係る分離元企業の持分の増加額128(*2))を算定する(第100項(2)
参照)。 
- (*1) 分離先企業に対して投資したとみなされる額160=分離先企業Y社(のb事業)の時価800×20%
- (*2) 関連会社に係る分離元企業の持分の増加額128=投資に対応する分離先企業Y社の事業分離直前の資本(640×20%)
- ・持分変動差額の認識
移転したa事業に係る分離元企業の持分の減少(80%)により生じた差額80(貸方)(=分離元企業
の事業が移転されたとみなされる額160(*3)-移転した事業に係る分離元企業の持分の減少額80
(*4))は、持分変動差額として取り扱う(第100項(2)参照)。 
- (*3) 分離元企業の事業が移転されたとみなされる額160=移転したa事業の時価200×80%(これは、(*1) 分離先企業に対して投資したとみなされる額と同額となる。)
- (*4) 移転したa事業に係る分離元企業の持分の減少額80=移転したa事業の株主資本相当額100×80%

- [設例12-2] 事業分離前に分離元企業が分離先企業の株式をその他有価証券として保有していた場合
- (1) 前提条件
- X0年4月1日に、B社はb事業を営むY社を400(株式400株)にて設立した(設立時の諸資産の適正な帳簿価額は400(株主資本400)、諸資産の時価は400)。
- X1年3月31日に、A社は当該Y社株式40株(取得原価は70)をB社から取得し、その他有価証券としている。なお、Y社株式取得時のY社の諸資産の適正な帳簿価額は600(払込資本400、利益剰余金200)であり、諸資産の時価は600であった。
- X2年3月31日に吸収分割により、分離元企業(吸収分割会社)A社は、a事業(a事業に係る諸資産の適正な帳簿価額は50(株主資本相当額50)、a事業に係る諸資産の時価は80、a事業の時価は100)を、分離先企業(吸収分割承継会社)Y社(諸資産の適正な帳簿価額は650(払込資本400、利益剰余金250)、諸資産の時価760、企業の時価は800)に移転する。
- この結果、A社はY社の株式50株(時価100)を受け取り、Y社株式を関連会社株式とする。持分法適用上、のれんは5年で償却するものとする。

- (2) 考え方(第101項参照)
- ① 分離元企業A社の個別財務諸表
移転損益は認識されず、分離先企業Y社の株式の取得原価は、移転事業に係る株主資本相当額に基づき算定する。 
- ② 分離元企業A社の連結財務諸表
- <連結修正仕訳>
- ア Y社に対する持分法の適用(当初取得分)

- (*1) 以下の合計3の剰余金が計上される。
- ・のれんの償却:2(借方)=(投資原価70-持分額(600×10%))/5年
- ・取得後剰余金:5(貸方)=(250-200)×10%
- イ 追加取得についてののれんの算定
関連会社となる分離先企業Y社(のb事業)に係る分離元企業の持分の増加(10%)について、持分法適用上、部分時価評価法の適用により、のれん4(借方)(=分離先企業に追加投資したとみなされる額80(*2)-関連会社に係る分離元企業の持分の増加額76(*3))を算定する。 
- (*2) 分離先企業に対して追加投資したとみなされる額80=Y社(のb事業)の時価800×10%
- (*3) 関連会社に係る分離元企業の持分の増加額76=追加投資に対応する分離先企業Y社の事業分離直前の資本(760×10%)
- ・持分変動差額の認識
移転したa事業に係る分離元企業の持分の減少(80%)により生じた差額40(貸方)(=分離元企業
のa事業が移転されたとみなされる額80(*4)-移転したa事業に係る分離元企業の持分の減少額
40(*5))は、持分変動差額として取り扱う。 
- (*4) 分離元企業のa事業が移転されたとみなされる額80=移転したa事業の時価100×80%(これは、(*2) 分離先企業に対して追加投資したとみなされる額と同額となる。)
- (*5) 移転したa事業に係る分離元企業の持分の減少額40=移転したa事業の株主資本相当額50×80%

- [設例12-3] 事業分離前に分離元企業が分離先企業の株式を関連会社株式として保有していた場合
- (1) 前提条件
- b事業を営むY社は、株式を400株発行しており、A社が80株(20%)、B社が320株(80%)保有している。分離元企業A社は、Y社の当該株式80株(取得原価は140)を関連会社株式としている。なお、Y社株式取得時(X1年3月31日)のY社の諸資産の適正な帳簿価額は600(払込資本400、利益剰余金200)であり、諸資産の時価は600であった。持分法適用上、のれんは5年で償却するものとする。なお、社外流出はないものとする。
- X2年3月31日に吸収分割により、分離元企業A社(吸収分割会社)は、a事業(a事業に係る諸資産の適正な帳簿価額は100(株主資本相当額100)、a事業に係る諸資産の時価は150、a事業の時価は200)を、分離先企業(吸収分割承継会社)Y社(諸資産の適正な帳簿価額は650(払込資本400、利益剰余金250)、諸資産の時価は750、企業の時価は800)に移転する。
- この結果、A社はY社の株式100株(時価200)を受け取り、Y社を36%関連会社とする。

- (2) 考え方(第102項参照)
- ① 分離元企業A社の個別財務諸表
移転損益は認識されず、分離先企業Y社の株式の取得原価は、移転した事業に係る株主資本相当額に基づき算定する。 
- ② 分離元企業A社の連結財務諸表
- <連結修正仕訳>
- ア Y社に対する持分法適用(20%)

- (*1) 次の合計6の剰余金が計上される。
- ・のれんの償却4(借方)=(投資原価140-持分額120(=600×20%))/5年
- ・取得後剰余金10(貸方)=(250-200)×20%
- イ Y社に対する16%の追加取得
- ・追加取得分についてのれんの算定
事業分離により、関連会社である分離先企業Y社(のb事業)に係る分離元企業の持分の増加額
(追加取得持分16%)について、持分法適用上、部分時価評価法の適用により、のれん8(借方)
(=分離先企業に対して追加投資したとみなされる額128(*2)-関連会社に係る分離元企業の持分
の増加額120(*3))を算定する。 
- (*2) 分離先企業に対して追加投資したとみなされる額128=分離先企業Y社(のb事業)の時価800×16%
- (*3) 関連会社に係る分離元企業の持分の増加額120=追加投資に対応する分離先企業Y社の事業分離直前の資本(750×16%)
- ・持分変動差額の認識
- 移転したa事業に係る分離元企業の持分の減少(64%)により生じた差額64(貸方)(=分離元企業
の事業が移転されたとみなされる額128(*4)-移転したa事業に係る分離元企業の持分の減少額64
(*5))は、持分変動差額として取り扱う。 
- (*4) 分離元企業のa事業が移転されたとみなされる額128=移転したa事業の時価200×64%(これは、(*2) 分離先企業に対して追加投資したとみなされる額と同額となる。)
- (*5) 移転したa事業に係る分離元企業の持分の減少額64=移転したa事業の株主資本相当額100×64%

- [設例13] 分離元企業の会計処理(受取対価:現金等の財産と分離先企業の株式の場合)-分離先企業が関連
会社である場合 - (1) 前提条件
- X1年3月31日に、A社はY社株式16株(20%)を125で取得し、関連会社株式としている(Y社株式取得時のY社の諸資産の適正な帳簿価額は420(資本金400、利益剰余金20)、諸資産の時価は600)。なお、持分法適用上、のれんは5年で償却するものとし、また、社外流出はないものとする。
- X2年3月31日に分離元企業A社は、a事業(a事業に係る諸資産の適正な帳簿価額は150(株主資本相当額150)、a事業に係る諸資産の時価は200、a事業の時価は400)を、分離先企業Y社(株主資本の適正な帳簿価額は480(資本金400、利益剰余金80)、諸資産の時価は700、企業の時価は800)に移転する。
- この結果、A社は次の対価を受け取る(事業分離後のY社に対する持分比率は、36%(=(16株+20株)/(80株+20株))となる)。
- ・新株発行 20株(時価200)
- ・他社の株式 5株(Y社の適正な帳簿価額20、時価100)
- ・現金 100
- なお、分離先企業Y社の企業結合直前の個別貸借対照表は次のとおりである。

- (2) 考え方(第105項参照)
- ① 分離元企業A社の個別財務諸表
受け取った現金等の財産は、原則として、時価により計上する。当該時価が移転事業に係る株主資本相当額を上回るため、移転利益を認識する。 
- ② 分離元企業A社の連結財務諸表
- ア 分離先企業Y社の個別財務諸表
- ・a事業の受入れ(取得)

- なお、次の持分法の適用にあたっては、その他有価証券処分益80に係る未実現利益の消去及び持分法による投資損益とする処理については、省略している。
- イ 分離元企業A社の連結財務諸表
- <連結修正仕訳>
- ・Y社に対する持分法適用(20%)

- (*1) 以下の合計11の剰余金が計上される。
- ・のれんの償却 1(借方)=(投資原価125-持分額120 (=600×20%))/5年
- ・取得後剰余金 12(貸方)=(80-20)×20%
- ・a事業に係る移転利益の修正

- (*2) 個別上認識された移転利益は、分離元企業の連結財務諸表上、持分法会計基準第13項における未実現損益の消去に準じて、投資会社の持分相当額18(=50×36%)を消去する。
- (*3) 未実現損益の消去に準じ、買手側である関連会社に対する投資の額に加減する。
- ・Y社に対する16%の追加取得
- ・追加取得分についてのれんの算定
事業分離により、関連会社である分離先企業Y社に係る分離元企業の持分の増加額(追加取得
持分16%)について、持分法適用上、部分時価評価法の適用により、のれん16(借方)(=分離先
企業に対して追加投資したとみなされる額128(*4)-関連会社に係る分離元企業の持分の増加
額112(*5))を算定する。 
- (*4) 分離先企業に対して追加投資したとみなされる額128=分離先企業Y社の時価800×16%
- (*5) 関連会社に係る分離元企業の持分の増加額112=追加取得時のY社の諸資産の時価700×16%
- ・持分変動差額の認識
- 分離元企業の事業が移転されたとみなされる額128(*6) と、移転したa事業に係る分離元企業
の持分の減少額0との間に生ずる差額128については、持分変動差額として取り扱う。 
- (*6) 分離元企業のa事業が移転されたとみなされる額128=(移転したa事業の時価400-受取対価200)×64% (これは、(*4) 分離先企業に対して追加投資したとみなされる額と同額となる。)


- [設例14] 取得-株式交換完全親会社の会計処理
- [設例14-1] 株式交換前に完全子会社となる企業の株式を保有していない場合
- (1) 前提条件
- ① A社を株式交換完全親会社、B社を株式交換完全子会社とする株式交換(交換比率は1:0.5)を行った。なお、A社の発行済株式総数は100株、B社の発行済株式総数も100株である。
- ② 当該株式交換は取得とされ、A社が取得企業、B社が被取得企業とされた。
- ③ A社はB社の株主にA社株式を交付した。なお、株式交換日のA社株式の時価は1株当たり12であり、交付した株式の時価総額は600(=@12×100株×0.5)となった。
- ④ 株式交換日におけるB社保有の有価証券の時価は170(帳簿価額150)、土地の時価は220と算定された。
- ⑤ A社は、増加すべき株主資本600のうち、100を資本金とし、残額500については剰余金とした。
- ⑥ 株式交換日の前日のB社の個別貸借対照表は次のとおりであるものとする。

- (2) A社の個別財務諸表上の会計処理
- 株式交換による企業結合の場合、株式交換完全親会社の個別財務諸表では、第37項から第50項に準じて算定された取得原価で被取得企業株式(株式交換完全子会社の株式)を計上する(第110項参照)。

- (3) A社の連結財務諸表上の会計処理
- 取得原価は、B社から受け入れた資産及び引き受けた負債のうち企業結合日時点における識別可能資産及び負債の企業結合日時点の時価を基礎として、当該資産及び負債に対して配分する(第116項参照)。


- [設例14-2] 株式交換前に完全子会社となる企業の株式をその他有価証券として保有していた場合(段階取
得) - (1) 前提条件
- ① A社を株式交換完全親会社、B社を株式交換完全子会社とする株式交換(交換比率は1:0.5)を行った。なお、A社の発行済株式総数は100株、B社の発行済株式総数も100株である。
- ② 株式交換前において、A社はB社の株式を10株保有しており(取得原価は46)、その他有価証券として処理していた。
- ③ 当該株式交換は取得とされ、A社が取得企業、B社が被取得企業とされた。
- ④ A社はB社の株主にA社株式を交付した。なお、株式交換日のA社株式の時価は1株当たり12であり、交付した株式の時価総額は540(=@12×90株×0.5)となった。また、株式交換日のB社株式の時価は、1株当たり6であった。
- ⑤ 株式交換日におけるB社保有の有価証券の時価は170(帳簿価額150)、土地の時価は220と算定された。
- ⑥ A社は、増加すべき株主資本540のうち、40を資本金とし、残額500については剰余金とした。
- ⑦ 株式交換日の前日のB社の個別貸借対照表は次のとおりであるものとする。

- (2) A社の個別財務諸表上の会計処理
- 株式交換による企業結合の場合、株式交換完全親会社の個別財務諸表では、第37項から第50項に準じて算定された取得原価で被取得企業株式(株式交換完全子会社の株式)を計上する(第110項参照)。また、取得企業が株式交換日の前日に被取得企業の株式を保有していた場合、株式交換日の前日の適正な帳簿価額により、子会社株式に振り替える(第110項また書き参照)。

- (3) A社の連結財務諸表上の会計処理
- A社は株式交換以前にB社の株式をその他有価証券として保有していたため、株式交換日の時価に基づいて子会社株式に振り替えて取得原価に加算し、その時価と適正な帳簿価額との差額は、損益として処理する(第116項(1)なお書き参照)。なお、B社から受け入れた資産及び引き受けた負債のうち企業結合日時点における識別可能資産及び負債の企業結合日時点の時価を基礎として、当該資産及び負債に対して配分する(第116項参照)。

- (*1) A社の個別財務諸表上のB社株式簿価 540+46=586
- (*2) B社株式の帳簿価額46と時価60(=@6×10株)との差額14を損益として処理する。

- [設例14-3] 株式交換前に完全子会社となる企業の株式を、株式交換完全親会社とその子会社がいずれもそ
の他有価証券として保有していた場合(段階取得) - (1) 前提条件
- ① A社を株式交換完全親会社、B社を株式交換完全子会社とする株式交換(交換比率は1:0.5)を行った。なお、A社の発行済株式総数は100株、B社の発行済株式総数も100株である。
- ② A社には100%子会社であるS社が存在する。株式交換前において、A社はB社の株式を4株(取得原価は18)、連結子会社であるS社はB社の株式を6株(取得原価は28)、それぞれ有しており、いずれもその他有価証券として処理していた。
- ③ 当該株式交換は取得とされ、A社が取得企業、B社が被取得企業とされた。
- ④ A社は、B社の株主(連結子会社であるS社を含む。)にA社株式を交付した。なお、株式交換日のA社株式の時価は1株当たり12であり、交付した株式の時価総額は576(=@12×96株×0.5)となった。また、株式交換日のB社株式の時価は、1株当たり6であった。
- ⑤ 株式交換日におけるB社保有の有価証券の時価は170(帳簿価額150)、土地の時価は220と算定された。
- ⑥ A社は、増加すべき株主資本576のうち、76を資本金とし、残額500については剰余金とした。
- ⑦ 株式交換日の前日のB社の個別貸借対照表は次のとおりであるものとする。

- (2) A社の個別財務諸表上の会計処理
- 株式交換による企業結合の場合、株式交換完全親会社の個別財務諸表では、第37項から第50項に準じて算定された取得原価で被取得企業株式(株式交換完全子会社の株式)を計上する(第110項参照)。また、取得企業が株式交換日の前日に被取得企業の株式を保有していた場合、株式交換日の前日の適正な帳簿価額により、子会社株式に振り替える(第110項また書き参照)。

- (3) S社の個別財務諸表上の会計処理
- S社の個別財務諸表上、その他有価証券として保有していたB社株式の株式交換の対価として、親会社であるA社の株式(その他有価証券)が割り当てられたため、株式交換前にB社株式に付されていた適正な帳簿価額で振り替える(第280項参照)。

- (4) A社の連結財務諸表上の会計処理
- A社は株式交換以前にB社の株式をその他有価証券として保有していたため、株式交換日の時価に基づいて子会社株式に振り替えて取得原価に加算し、その時価と適正な帳簿価額との差額は、損益として処理する(第116項(1)なお書き参照)。なお、A社の連結財務諸表においては、株式交換前にS社が保有していたB社株式についても、株式交換日の時価で測定することになるように連結上修正する。
- また、取得原価は、B社から受け入れた資産及び引き受けた負債のうち企業結合日時点における識別可能資産及び負債の企業結合日時点の時価を基礎として、当該資産及び負債に対して配分する(第116項参照)。

- (*1) A社が保有していたB社株式の帳簿価額18と時価24(=@6×4株)との差額6を連結財務諸表上、損益として処理する。
- (*2) S社が保有していたB社株式の帳簿価額28と時価36(=@6×6株)との差額8を連結財務諸表上、損益として処理する。
- (*3) A社の個別財務諸表において取得の対価として計上されたB社株式(576+18=594)
- (*4) この結果、連結財務諸表上の株主資本から控除されるS社保有のA社株式は36(=28+8)となり、株式交換によってA社がS社に交付したA社株式の時価36(=@12×6株×0.5)と一致する。

- [設例15] 取得-株式移転設立完全親会社の会計処理
- (1) 前提条件
- ① A社とB社(A社とB社に資本関係はない。)は、株式移転(交換比率は1:0.5)により株式移転設立完全親会社C社を設立した。
- ② 当該株式移転は取得とされ、A社が取得企業、B社が被取得企業とされた。
- ③ A社の株主には、A社株式1株当たりC社株式が1株交付された。また、B社の株主には、B社株式1株当たりC社株式0.5株が交付された。なお、株式移転日のA社の株価(1株当たり12)により計算したB社株主に交付した株式の時価総額は600(=@12×100株×0.5)であったものとする。また、A社及びB社の発行済株式総数はそれぞれ100株であったものとする。
- ④ 株式移転日におけるB社保有の有価証券の時価は170(帳簿価額150)、土地の時価は220と算定された。
- ⑤ 株式移転設立完全親会社C社は、増加すべき株主資本1,100のうち、資本金を300増加させ、残額については剰余金とした。
- ⑥ 株式移転日の前日のA社及びB社の個別貸借対照表は次のとおりであるものとする。

- (2) 株式移転設立完全親会社C社における個別財務諸表上の会計処理

- (*1) 取得企業A社の株式移転日の前日における適正な帳簿価額による株主資本の額500に基づいて、取得企業A社の株式(株式移転完全子会社の株式)の取得原価を算定する(第121項(1)参照)。
- (*2)第37項から第50項に準じて算定された取得原価で、被取得企業B社の株式(他の株式移転完全子会社の株式)を計上する。この場合、当該取得原価は、B社の株主がC社に対する実際の議決権比率と同じ比率を保有するのに必要な数のA社株式をA社が交付したとみなして算定する(第121項(2)参照)。
- 100株×0.5÷(100株×1+100株×0.5)=33.3%
- (150株×33.3%)×@12=600
- (*3) 増加すべき株主資本の額1,100(=600+500)-資本金への組入額300=800
- (3) 株式移転設立完全親会社C社における連結財務諸表上の会計処理
- ① 株式移転完全子会社A社(取得企業)に関する会計処理

- C社の連結財務諸表に計上される資産は株式移転完全子会社A社(取得企業)の帳簿価額により計上される(第124項(1)参照)。
- ② 株式移転完全子会社A社(取得企業)の純資産の引継ぎ

- C社の連結財務諸表上、株式移転完全子会社A社(取得企業)の利益剰余金を引き継ぐ(第125項参照)。
- ③ 株式移転完全子会社B社(被取得企業)に関する会計処理

- C社の連結財務諸表上、B社株式の取得原価はB社から受け入れた資産及び引き受けた負債のうち企業結合日時点における識別可能資産及び負債の企業結合日時点の時価を基礎として、当該資産及び負債に対して配分する。なお、取得原価と取得原価の配分額との差額はのれんとなる(第124項(2)参照)。

- [設例16](削 除)
- [設例17](削 除)
- [設例18] 共同支配企業の形成―子会社同士の合併の会計処理
- (1) 前提条件
- A社の100%子会社X社(諸資産の適正な帳簿価額は450(株主資本400、評価・換算差額等50)、諸資産の時価は500、企業の時価は600)を吸収合併消滅会社とし、B社の100%子会社Y社(株式数200株、諸資産の適正な帳簿価額は200(株主資本180、評価・換算差額等20)、諸資産の時価は300、企業の時価は400)を吸収合併存続会社とする吸収合併により、X社の株主はY社の株式300株を受け取る。この際、A社とB社はY社を共同支配する契約を締結し、当該吸収合併は共同支配企業の形成と判定されたものとする。
- この結果、合併後のY社(株式数500株)に対する持分比率は、A社が60%(300株)、B社が40%(200株)となった。
- なお、A社の子会社X社とB社の子会社Y社の企業結合直前の個別貸借対照表は、それぞれ次のとおりである。

- また、A社の保有するX社の株式の適正な帳簿価額は300、B社の保有するY社の株式の適正な帳簿価額は150であった。

- (2) 考え方
- ① Y社(共同支配企業)の個別財務諸表(共同支配企業の形成)の会計処理

- (*1) 払込資本として処理するのが原則であるが、吸収合併消滅会社の合併期日の前日の資本金、資本準備金、その他資本剰余金、利益準備金及びその他利益剰余金の内訳科目をそのまま引き継ぐこともできる(第185項参照)。
- (*2) 評価・換算差額等については、移転直前の適正な帳簿価額をそのまま引き継ぐ。
- ② A社(共同支配投資企業)の会計処理
- ア A社(共同支配投資企業)の個別財務諸表
- 移転した子会社株式Xの適正な帳簿価額300に基づいて、Y社に対する投資の取得原価を算定する。

- イ A社(共同支配投資企業)の連結財務諸表
- ・持分法の適用(第190項参照)
- 被結合企業の株主の連結財務諸表上、これまで連結していた被結合企業Xについて、Y社に対す
る投資の取得原価を共同支配企業の形成時点における持分法による投資評価額へ修正する(子会
社株式Xに関する開始仕訳とその振戻しを行うとともに、100%子会社としてX社に対して連結上
計上していた取得後剰余金100を持分法による取得後剰余金100として認識する。)。 
- ・Y社に対する60%の取得についてのれんの算定
- Y社に係るA社の持分の増加額(取得分60%)について、持分法適用上、のれん60(借方) (=Y社に
対して投資したとみなされる額240(*3)-Y社に係るA社の持分の増加額180(*4))を算定する。 
- (*3) Y社に対して投資したとみなされる額240=Y社の時価400×60%
- (*4) Y社に係るA社の持分の増加額180=企業結合直前の吸収合併存続会社Y社の資本(諸資産の時価)300×A社の持分比率の増加60%
- ・持分変動差額の認識
- 吸収合併により消滅したX社の事業に係るA社の持分の減少(40%)により生じた差額80(貸方)
(=X社の事業が移転されたとみなされる額240(*5)-X社の事業に係るA社の持分の減少額160
(*6))を算定する。 
- (*5) X社の事業が移転されたとみなされる額240=X社の時価600×40%(これは、(*3) Y社に対して投資したとみなされる額と同額となる。)
- (*6) X社の事業に係るA社の持分の減少額160=X社の株主資本400×A社の持分比率の減少40%

- (*7) 旧X社の評価・換算差額等に係る記載は省略している。
- ③ B社(共同支配投資企業)の会計処理
- ア B社(共同支配投資企業)の個別財務諸表
- 移転した子会社株式Yの適正な帳簿価額150に基づいて、Y社に対する投資の取得原価を算定する。

- イ B社(共同支配投資企業)の連結財務諸表
- ・持分法の適用(第190項参照)
- 結合企業の株主の連結財務諸表上、これまで連結していた結合企業Yについて、Y社に対する投
資の取得原価を共同支配企業の形成時点における持分法による投資評価額へ修正する(子会社株
式Yに関する開始仕訳とその振戻しを行うとともに、100%子会社としてY社に対して連結上計上
していた取得後剰余金30を持分法による取得後剰余金30として認識する。)。 
- ・X社に対する40%の取得についてのれんの算定
- 吸収合併により消滅したX社に係るB社の持分の増加額(取得分40%)について、持分法適用上、
のれん40(借方)(=X社に対して投資したとみなされる額240(*8)-X社の事業に係るB社の持分の
増加額200 (*9))を算定する。 
- (*8) X社に対して投資したとみなされる額240=X社の時価600×40%
- (*9) X社に係るB社の持分の増加額200=企業結合直前の吸収合併消滅会社X社の資本(諸資産の時価)500×B社の持分比率の増加40%
- ・持分変動差額の認識
- Y社の事業に係るB社の持分の減少(60%)により生じた差額132(貸方)(=Y社の事業が移転された
とみなされる額240(*10)-Y社の事業に係るB社の持分の減少額108(*11))を算定する。 
- (*10) Y社の事業が移転されたとみなされる額240=Y社の時価400×60%(これは、(*8) X社に対して投資したとみなされる額と同額となる。)
- (*11) Y社の事業に係るB社の持分の減少額108=Y社の株主資本180×B社の持分比率の減少60%

- (*12) Y社(合併前)の評価・換算差額等に係る記載は省略している。
- [設例19] 共同支配企業の形成-会社分割(共同新設分割)の会計処理
- (1) 前提条件
- ① X1年4月1日にA社とB社は共同新設分割によりY社を設立した。A社とB社はY社を共同支配する契約を締結し、当該共同新設分割は共同支配企業の形成と判定されたものとする。
- ② A社及びB社の移転する事業の移転直前の内容等は、次のとおりである。

- (*1) 帳簿価額を記載しており、( )内はその時価である。また、a事業の時価は660、b事業の時価は440とする。それぞれののれんは6年で償却する。
- (*2) A社が移転する事業に係る資産には、その他有価証券が含まれており、移転直前の時価を帳簿価額としている。
- ③ X2年3月期のY社の当期純利益は100であった。
- ④ A社、B社及びY社の決算期は3月31日である。
- (2) Y社(共同支配企業)の個別財務諸表上の会計処理
- 〔X1年4月1日〕

- (*3) 各共同支配投資企業から移転される資産及び負債を分割期日の前日における適正な帳簿価額により計上する(第192項参照)。
- (*4) 移転事業に係る評価・換算差額等について、移転直前の帳簿価額をそのまま引き継ぐ。
- (3) A社(共同支配投資企業)の会計処理
- 〔X1年4月1日〕
- a事業をY社へ移転する。
- 個別財務諸表上の会計処理

- (*5) 移転した事業に係る株主資本相当額400に基づいて、Y社に対する投資の取得原価を算定する(第196項参照)。
- 連結修正仕訳-持分法の適用(第197項参照)
- ・b事業に対する60%の取得についてのれんの算定
- b事業に係るA社の持分の増加額(取得分60%)について、持分法適用上、のれん24(借方)(=b事業に対して投資したとみなされる額264(*6)-b事業に係るA社の持分の増加額240(*7))を算定する。

- (*6) b事業に対して投資したとみなされる額264=b事業の時価440×60%
- (*7) b事業に係るA社の持分の増加額240=取得時のb事業の諸資産の時価400×60%
- ・持分変動差額の算定
- a事業に係るA社の持分の減少(40%)により生じた差額104(貸方)(=a事業が移転されたとみなされる額264(*8)-a事業に係るA社の持分の減少額160(*9))を算定する。

- (*8) a事業が移転されたとみなされる額264=a事業の時価660×40%
- (*9) a事業に係るA社の持分の減少額160=a事業の株主資本相当額400×40%
- 〔X2年3月31日〕
- 個別財務諸表上の会計処理

- 連結修正仕訳
- 連結上、Y社の当期純利益100のうち、持分相当額(60%)である60とのれん償却費4(=24÷6年)を持分法投資損益として取り込む。

- (4) B社(共同支配投資企業)の会計処理
- 〔X1年4月1日〕
- b事業をY社へ移転する。
- 個別財務諸表上の会計処理

- (*10) 移転した事業に係る株主資本相当額180に基づいて、Y社に対する投資の取得原価を算定する。
- 連結修正仕訳-持分法の適用(第197項参照)
- ・a事業に対する40%の取得についてのれんの算定
- a事業に係るB社の持分の増加額(取得分40%)について、持分法適用上、のれん24(借方)(=a事業に対して投資したとみなされる額264(*11)-a事業に係るB社の持分の増加額240(*12))を算定する。

- (*11) a事業に対して投資したとみなされる額264=a事業の時価660×40%
- (*12) a事業に係るB社の持分の増加額240=取得時の事業aの諸資産の時価600×40%
- ・持分変動差額の算定
- b事業に係るB社の持分の減少(60%)により生じた差額156(貸方)(=b事業が移転されたとみなされる額264(*13)-b事業に係るB社の持分の減少額108(*14))を算定する。

- (*13) b事業が移転されたとみなされる額264=b事業の時価440×60%
- (*14) b事業に係るB社の持分の減少額108=b事業の株主資本相当額180×60%
- 〔X2年3月31日〕
- 個別財務諸表上の会計処理

- 連結修正仕訳
- 連結上、Y社の当期純利益100のうち、持分相当額(40%)である40とのれん償却費4(=24÷6年)を持分法投資損益として取り込む。

- [設例20] 親会社が子会社を吸収合併した場合の会計処理-買収により取得した子会社を合併した場合
- (1) 前提条件
- ① P社(公開企業)はX1年3月31日にS社の株式の80%を1,700で取得し、子会社とした。株式取得時のS社の資産は、土地(再評価額1,000、土地再評価差額金400)と、有価証券(時価評価額500、その他有価証券評価差額金100)であり、取得時のS社の個別貸借対照表は次のとおりである。

- ② X2年3月期のS社の当期純利益は1,000であった。
- ③ P社はS社をX2年4月1日に合併した(吸収合併存続会社はP社とする)。
- ④ S社の発行済株式数は100株であり、合併比率は1:1である。
- ⑤ P社は新株をS社の非支配株主に20株(合併期日の時価600(1株当たり30))発行した。また、P社は新株発行に伴う増加すべき株主資本の全額をその他資本剰余金とした。
- ⑥ P社は連結財務諸表作成にあたり、S社株式取得時に発生したのれんの償却期間は5年としている。
- ⑦ 合併期日前日(X2年3月31日)の貸借対照表は次のとおりである。

- (*1) 取得時ののれん500(S社株式の取得原価1,700-S社の取得時の純資産の時価1,500の80%)から、X2年3月期の償却額100を控除した金額となる。
- (*2) 取得時の300(S社の取得時の純資産の時価1,500×20%)、取得後剰余金200(1,000×20%)及びその他有価証券評価差額金の増加額20(100×20%)の合計額となる。
- (*3) P社の利益剰余金1,000とS社の取得後剰余金800(1,000×80%)の合計から、のれんのX2年3月期の償却額100を控除した金額となる。
- (*4) S社のその他有価証券評価差額金の支配獲得時からの増加額のうち親会社株主持分について計上される。
- (2) P社の個別財務諸表上の会計処理

- (*5) 子会社から受け入れる資産及び負債は、連結財務諸表上の帳簿価額2,500(子会社の帳簿価額2,000+株式取得時の時価評価差額500)及びのれん未償却残高400により計上する。この際、親会社持分相当額と非支配株主持分相当額を持分比率により按分する(第206項(2)参照)。
- ・親会社持分相当額 2,500×80%=2,000(諸資産800+有価証券480+土地800-その他有価証券評価差額金80)
- ・非支配株主持分相当額 2,500×20%=500(諸資産200+有価証券120+土地200-その他有価証券評価差額金20)
- (*6) その他有価証券評価差額金のうち、投資と資本の消去の対象とされていない100(支配獲得後に増減した額)について引き継ぐ(第206項(2)②参照)。土地再評価差額金は支配獲得時に投資と資本の消去の対象とされており、引き継がない。
- (*7) のれんの未償却残高400は、親会社持分に相当するものであるため、合併時にも親会社持分相当額にのみ含める。当該金額は連結財務諸表上の帳簿価額として、親会社の個別財務諸表に引き継がれる(第207項(1)参照)。
- (*8) 親会社持分相当額(のれんの未償却残高400を含む。)2,400と親会社が合併直前に保有していた子会社株式(抱合せ株式)の帳簿価額1,700の差額700を特別損益に計上する(第206項(2)①ア参照)。なお、P社の連結財務諸表上は、過年度に認識済みの損益であるため、利益剰余金と相殺消去する(第208項参照)。
- (*9) 取得の対価(非支配株主に交付した親会社株式の時価) 600が増加すべき払込資本となる(第206項(2)①イ参照)。
- (*10) 取得の対価600と子会社から受け入れる資産及び負債の非支配株主持分相当額500との差額100(借方)をその他資本剰余金とする(第206項(2)①イ参照)。
- 合併後(X2年4月1日)のP社個別貸借対照表は次のとおりとなる。

- [設例21] 親会社が子会社を吸収合併した場合の会計処理-過年度に親会社が子会社に資産を売却している
場合 - (1) 前提条件
- ① P社(公開企業)はX1年3月31日に800を出資し、子会社S社(持分比率80%)を設立した。
- ② X2年3月期のS社の当期純利益は1,000であった。
- ③ P社はS社をX2年4月1日に合併した(吸収合併存続会社はP社とする)。
- ④ S社の発行済株式数は100株であり、合併比率は1:1である。
- ⑤ P社は新株をS社の非支配株主に20株(合併期日の時価500(1株当たり25))発行した。また、P社は新株発行に伴う増加すべき株主資本の全額をその他資本剰余金とした。
- ⑥ X1年度にP社は簿価1,000の土地をS社に1,700で売却し、売却益700を計上している。
- ⑦ 合併期日前日(X2年3月31日)の貸借対照表は次のとおりである。

- (*1) 設立時の有価証券の簿価は300であったため、すべて設立後に計上された評価差額であり、投資と資本の消去の対象とされていないものである。

- (2) P社の個別財務諸表上の会計処理

- (*2)(*3)(*4)(*5) [設例20]参照
- (*6) 子会社から未実現損益の消去後の連結財務諸表上の適切な帳簿価額で土地を受け入れるため、親会社の個別財務諸表上、当該修正に伴う差額は、特別損益に計上する(第207項(2)参照)。
- 合併後(X2年4月1日)のP社個別貸借対照表は次のとおりとなる。

- [設例22] 子会社が親会社を吸収合併した場合の会計処理
- (1) 前提条件
- ① P社(公開企業)はX1年3月31日に取得原価1,600で、S社の株式(80%)を取得し、子会社とした。取得時のS社の貸借対照表は次のとおりである。X2年3月期のS社の当期純損失は300であった。

- (*1) S社の取得時(支配獲得時)の土地の時価は1,000であった。
- ② S社はP社をX2年4月1日に合併した。吸収合併存続会社はS社である。
- ③ 合併比率は1:1とされ、S社は新株を100株発行し、P社の株主に100株割り当てた(P社株式の合併期日の時価5,000(1株当たり50))。
- ④ S社は新株発行に伴う増加すべき株主資本のうち、1,000を資本金とし、残額を剰余金とした。
- ⑤ P社は連結財務諸表を作成するにあたり、S社株式取得時点に発生したのれんの償却期間は5年としている。
- ⑥ 合併期日前日(X2年3月31日)の貸借対照表は次のとおりである。

- (*2) 連結上の土地の簿価は、支配獲得時の時価1,000となる。
- (2) S社の個別財務諸表上の合併に関する会計処理

- (*3) 共通支配下の取引であり、企業集団内を移転する資産及び負債は移転前に付された適正な帳簿価額により計上する(第210項(1)参照)。
- (*4) 移転された資産及び負債の差額は、純資産として処理する(210項(2)参照)。親会社が吸収合併消滅会社である場合、親会社の合併期日の前日の適正な帳簿価額による株主資本の額を払込資本(資本金又は資本剰余金)として処理する。また、合併の対価が新株のみである場合、親会社の資本金、資本準備金、その他資本剰余金、利益準備金及びその他利益剰余金の内訳科目を抱合せ株式等の会計処理を除き、そのまま引き継ぐことが認められる(第210項(2)参照)。ここでは、そのまま引き継ぐ処理を適用している。
- (*5) 自己株式への振替
- (3) S社の連結財務諸表上の会計処理
- S社の個別財務諸表における取引をいったん戻したうえで、改めて、S社を吸収合併消滅会社、P社を吸収合併存続会社であるとみなして連結財務諸表を作成する。S社の資産及び負債は、時価評替後の資産及び負債を連結財務諸表上の簿価として受け入れる。S社がP社の株主に交付したS社株式は内部取引であり、消去する(第212項参照)。

- (*6) P社にとっては、S社を吸収合併存続会社とする合併の経済実態は、非支配株主持分340を取得するために、対価1,000(1株当たり50×20株)をS社株主に支払った取引と考えられる。非支配株主が保有するS社株式20株は、株式の交換はないものの、連結財務諸表上は、新たに交付したものとみなして支払対価を算定する。
- (*7) 結果として、合併前の連結財務諸表で計上していた非支配株主持分340が増加すべき払込資本となる。
- (4) 合併後(X2年4月1日)の貸借対照表

- (*8) 時価評価替後の資産及び負債を連結財務諸表上の帳簿価額とする(第212項参照)。
- (*9) 連結財務諸表上の資本金は子会社の資本金とし、これと合併前の連結上の資本金が異なる場合は、その差額を資本剰余金に振り替える(第212項参照)。
- [設例23] 同一の株主(個人)により支配されている企業同士の合併の会計処理
- (1) 前提条件
- ① A社はB社を吸収合併した。
- ② A社とB社の株主及び株式の所有状況は次のとおりである。なお、甲氏とその配偶者は同一の内容の議決権を行使するものと認められるものとする。

- ③ 合併期日の前日のA社及びB社の個別貸借対照表は次のとおりである。

- ④ 合併比率等は1:0.6(B社株式1株に対してA社株式0.6株を交付)であったため、A社は、B社の株主である甲氏、その配偶者に対してそれぞれ60株(=100株×0.6)、第三者に対して30株(=50株×0.6)を交付した。
合併後のA社の株主及び株式の所有状況は次のとおりである。 

- (2) 考え方
- ① A社及びB社は、甲氏により議決権の40%を保有され、かつ甲氏の配偶者と合わせて議決権の過半数を保有されている。
- ② 甲氏の配偶者が、実質的に甲氏にとって緊密な者又は同意している者であると判断される場合、甲氏の持分と甲氏の配偶者の持分を合算した甲氏グループにより、A社及びB社は支配されていることになる。
したがって、A社とB社は甲氏グループという同一の株主により、最終的に支配されているため、A社とB社の合併は共通支配下の取引となる(第201項参照)。 - ③ A社の個別財務諸表上の会計処理

- (*1) A社とB社の合併は、甲氏グループを同一の株主とする共通支配下の取引であるため、B社から受け入れる資産及び負債は、合併期日の前日に付された適正な帳簿価額により計上する(第254項(1)参照)。
- (*2) A社は企業集団の最上位の親会社ではないため、A社が合併の対価として甲氏、甲氏の配偶者及び第三者に株式を交付する取引は、第200項の定めによる非支配株主との取引を適用せず、増加すべき株主資本の額はB社の適正な帳簿価額による株主資本の額により算定される。増加すべき株主資本の内訳は、原則として、払込資本として処理することになるが、合併の対価が株式のみの場合は、B社の資本金、資本準備金、その他資本剰余金、利益準備金及びその他利益剰余金の内訳科目を、抱合せ株式等の会計処理を除き、そのまま引き継ぐことができる。ここでは、株主資本の構成を引き継ぐ処理を採用している場合を示している(第254項(2)参照)。
- ④ 吸収合併後のA社の個別財務諸表

- [設例24] 会社分割により子会社が親会社に事業を移転する場合の会計処理
- (1) 前提条件
- ① P社(公開企業)はX1年3月31日に800を出資し、子会社S社(持分割合80%)を設立した。
- ② X2年3月期のS社の当期純利益は1,000であった。
- ③ P社はX2年4月1日にS社からS1事業(S1事業に係る諸資産の適正な帳簿価額は1,100(株主資本相当額1,000、評価・換算差額等100)、諸資産の時価1,200、事業の時価1,250)を受け入れた。
- ④ P社はS1事業の受入れの対価としてS社に新株50株を発行した(吸収分割)。分割期日の株価により計算したS社への交付株式の時価は1,250(1株当たり25)である。
- ⑤ P社は新株発行に伴う増加すべき株主資本の全額をその他資本剰余金とした。
- ⑥ 分割期日前日(X2年3月31日)の貸借対照表は次のとおりである。


- (*1) S1事業資産に含まれる有価証券に係るものであり、支配獲得後に計上されたものとする。


- <子会社S社の事業に係るP社の持分の追加取得(帳簿価額200、時価250)のイメージ>

- *評価・換算差額等に係る記載は省略している。
- (2) P社の個別財務諸表上の会計処理

- (*2) 分割期日前日に付された適正な帳簿価額により計上する(第214項(1)参照)。
- (*3) 移転事業に係る評価・換算差額等を引き継ぐとともに、移転事業に係る株主資本相当額は払込資本として処理する(第214項(2)参照)。
- (3) S社の個別財務諸表上の会計処理

- (*4) S社はS1事業の移転の対価として親会社株式(その他有価証券)を取得することになるが、当該取引は共通支配下の取引として会計処理することとなる。したがって、S社が取得するP社の株式の取得原価は、移転した事業に係る株主資本相当額に基づいて算定するため(第216項参照)、事業移転時に損益は認識しない。
- (4) P社の連結財務諸表上の会計処理

- (*5) 開始仕訳
- (*6) S社が受け入れたP社株式のうち分割期日前日における親会社持分相当額とこれに対応するP社の払込資本の増加額は、内部取引として消去する(第217項(1)参照)。
- (*7)非支配株主持分相当額は、非支配株主持分から控除する(第217項(2)参照)。
- (5) 分割後(X2年4月1日)の貸借対照表

- [設例25] 分割型の会社分割により子会社が親会社に事業を移転する場合の会計処理
- (1) 前提条件
- ① P社(公開企業)はX1年3月31日に800を出資し、子会社S社(持分割合80%)を設立した。
- ② X2年3月期のS社の当期純利益は1,000であった。
- ③ P社はX2年4月1日にS社からS1事業(S1事業に係る諸資産の適正な帳簿価額は1,100(株主資本相当額1,000、評価・換算差額等100)、諸資産の時価1,200、事業の時価1,250)を受け入れた。
- ④ P社はS1事業の受入れの対価として、S社に対して新株100株を発行し、S社は、受け取ったP社株式を、その取得と同時に配当した(分割型の会社分割)。なお、配当の内訳は、S社の非支配株主に10株、P社に90株である。また、分割期日の株価により計算したP社株式の時価は1株当たり25(S社の非支配株主への交付株式の時価は250)である。
- ⑤ P社は新株の発行に伴う増加すべき株主資本の全額をその他資本剰余金とした。
- ⑥ S社は事業移転に伴う資産の減少に対応して、利益剰余金を減少させた。
- ⑦ 分割期日前日(X2年3月31日)の貸借対照表は次のとおりである。

- (*1) S1事業資産に含まれる有価証券に係るもので、すべて設立後に計上されたものであり、投資と資本の消去の対象とされていないものである。


- (2) P社の個別財務諸表上の会計処理

- (*2) P社がS社から受け入れたS1事業に係る資産及び負債は、分割期日前日に付された適正な帳簿価額1,100により計上する(第218項(1)参照)。また、受け入れたS1事業に係る資産及び負債の差額(純資産)のうち株主資本額1,000については、親会社持分相当額と非支配株主持分相当額に按分する(第218項(2)参照)。
- ・親会社持分相当額 1,000×80%=800
- ・非支配株主持分相当額 1,000×20%=200
- 株主資本相当額以外の項目については、S社の評価・換算差額等(投資と資本の消去の対象外のもの)の適正な帳簿価額を引き継ぐため、その他有価証券評価差額金100を引き継ぐ(第218項(2)参照)。
- なお、P社は、S社に株式を発行するものの、同時にS社から当該株式が交付されるため、P社は自己株式を保有することになる。会計上、当該株式の発行と自己株式の取得は一体とみて、自己株式の帳簿価額はゼロとなる(第218項(2)参照)。
- (*3) 非支配株主に係る増加すべき株主資本は、非支配株主に交付した親会社株式の時価250で算定し、非支配株主持分相当額200(*2)との差額50はその他資本剰余金として処理する(第218項(2)参照)。
- (*4) この設例では、分割に係る抱合せ株式の帳簿価額のうち、受け入れた資産及び負債と引き換えられたものとみなされる額を、関連する帳簿価額の比率(S1事業に係る株主資本相当額の適正な帳簿価額1,000とS社の分割直前の株主資本の適正な帳簿価額との比率)50%(=1,000/(1,000+1,000))で按分する方法(第219項(3)参照)が合理的と認められる方法であるものとし、次のように、S社株式の帳簿価額のうち、受け入れた資産及び負債と引き換えられたものとみなされる額を算定する。
- ・S社株式の簿価 800×50%=400
- (*5) 受け入れた資産と負債の差額のうち株主資本の親会社持分相当額800(*2)と、分割に係る抱合せ株式の帳簿価額のうち、受け入れた資産及び負債と引き換えられたものとみなされる額400(*4)との差額400を特別損益に計上する(第218項(2)参照)。
- (3) S社の個別財務諸表上の会計処理
- S社は、事業移転に伴う資産の減少に対応して、利益剰余金を減少させたものと仮定しているため、移転したS1事業に係る資産及び負債の帳簿価額1,000に基づき利益剰余金を減少させる。

- (*6) P社株式の取得価額は、S1事業に係る株主資本相当額(ただし、当該事業に係る繰延税金資産及び繰延税金負債を控除した額)に基づいて算定する(第221項(1)参照)。
- (*7) S社は受け取ったP社株式の取得価額により、株主資本を減少させる。減少させる株主資本の内訳は、取締役会等の企業の意思決定機関において定められた結果に従う(第221項(2)参照)。
- (4) P社の連結財務諸表上の会計処理

- (*8) 開始仕訳(投資と資本の相殺消去)
- (*9) 開始仕訳(取得後剰余金の非支配株主持分への振替)
- (*10) P社が減少させたS社株式の帳簿価額及び抱合せ株式消滅差益は、内部取引として消去する(第222項参照)。
- (*11) 移転した事業に係る持分の追加取得に伴う非支配株主持分の減少(親会社持分の増加)について振替処理を行う(一種の非支配株主への配当(S社によるP社株式の現物分配)が生じていると考えることができるため、非支配株主持分を調整する。)。
- (5) 分割後(X2年4月1日)の貸借対照表



- [設例26] 事業譲渡又は会社分割により親会社が子会社に事業を移転する場合の会計処理
- [設例26-1] 移転に係る対価が現金等の財産のみである場合
- (1) 前提条件
- 分離元企業(親会社)P社は、p事業(p事業に係る諸資産の適正な帳簿価額は150(株主資本相当額100 、評価・換算差額等50)、p事業の時価は200)を、分離先企業(60%子会社)S社(諸資産の適正な帳簿価額は600(資本金400、利益剰余金200))に移転する。この結果、P社は現金200を受け取る(事業分離又は事業移転後のS社に対する持分比率は、P社60%のままである。)。
- なお、分離先企業(子会社)S社の企業結合直前の個別貸借対照表は次のとおりである。

- また、P社は、S社の設立時からS社の株式を保有しており、その適正な帳簿価額は240であったものとする。

- (2) 考え方
- ① 分離元企業P社の個別財務諸表上の会計処理

- (*1) P社は、S社から受け取った現金等の財産を移転前に付された適正な帳簿価額により計上し、当該価額とp事業に係る株主資本相当額との差額は、原則として移転損益として認識する(第223項参照)。
- ② 分離元企業P社の連結財務諸表
- ア 分離先企業S社の個別財務諸表上の会計処理
- ・P社のp事業を子会社S社に事業分離(共通支配下の取引)

- (*2) P社におけるp事業に係る資産及び負債の移転前に付された適正な帳簿価額(p事業に係る評価・換算差額等を含む。)により計上する。p事業に係る株主資本相当額と交付した現金等の財産の適正な帳簿価額との差額はのれんとして処理する(第224項(1))。
- イ 分離元企業P社の連結財務諸表上の会計処理
- <連結修正仕訳>
- ・子会社株式(S社株式)に関する開始仕訳

- (*3) 取得後の利益剰余金200のうち、40%分は非支配株主持分へ振り替える。
- (*4) S社の資本600のうち、40%分は非支配株主持分に相当する。
- ・p事業に係る移転損益の修正

- (*5) 個別上認識された移転損益は、分離元企業(親会社)の連結財務諸表上、連結会計基準における未実現損益の消去に準じて処理する(第225項参照)。
- (*6) S社で認識されたのれんの消去

- (*7) 評価・換算差額等50のうち、P社持分60%の30が評価・換算差額等として計上され、40%の20が非支配株主持分に計上される。
- [設例26-2] 移転に係る対価が子会社株式のみである場合
- (1) 前提条件
- b事業を営むS社は、株式を100株発行しており、P社が60株、B社が40株それぞれ保有している。分離元企業(親会社)P社は、当該S社株式60株(取得原価は98)を子会社株式としている。なお、S社株式取得時(X1年3月31日)のS社の諸資産の適正な帳簿価額は80(資本金50、利益剰余金30)であり、諸資産の時価は130であった。のれんは5年で償却するものとする。なお、剰余金の分配による社外流出はないものとする。
- X2年3月31日に吸収分割により、分離元企業(吸収分割会社)P社は、p事業(p事業に係る諸資産の適正な帳簿価額は140(株主資本相当額120、評価・換算差額等20)、p事業に係る諸資産の時価は150、p事業の時価は200)を、分離先企業(吸収分割承継会社となる子会社)S社(諸資産の適正な帳簿価額は100(資本金50、利益剰余金50)、諸資産の時価は160、企業の時価は200)に移転する。
- この結果、P社はS社の株式100株(S社の株価@2、時価200)を受け取り、S社を80%子会社とする。

- (2) 考え方
- ① 分離元企業P社の個別財務諸表上の会計処理
共通支配下の取引として、移転した事業に係る株主資本相当額に基づき、取得する分離先企業S社の株式(子会社株式)の取得原価を算定する(第226項参照)。 
- ② 分離元企業P社の連結財務諸表
- ア 分離先企業S社の個別財務諸表上の会計処理

- ・P社からのp事業の受入れ

- (*1) S社がP社から受け入れる資産及び負債は、分割期日前日に付された適正な帳簿価額により計上する(第227項(1)参照)。
- (*2) p事業に係る評価・換算差額等を引き継ぐとともに、p事業に係る株主資本相当額は払込資本として処理する(第227項(2)参照)。
- イ 分離元企業P社の連結財務諸表上の会計処理
- <連結修正仕訳>
- ・S社に対する連結(60%)の開始仕訳
- ・S社の資産を時価評価

- (*3) 資産の評価差額の計上 50=130-80
- ・S社に対する連結による60%の持分の認識(投資と資本の相殺消去)

- (*4) 取得原価98
- (*5)非支配株主持分52(=S社の資本(評価差額計上後)130×40%)
- ・のれんの償却

- (*6) のれんの償却 4(借方)=20/5年
- ・非支配株主に帰属する当期純利益の処理

- (*7) 非支配株主に帰属する当期純利益 8=(50-30)×40%
- ・親会社の持分変動による差額の計上

- (*8) 子会社に係る親会社の持分の増加額(追加取得持分)30(=追加投資に対応する分離先企業(子会社)の事業分離直前の資本(150×20%))と移転した事業に係る親会社の持分の減少額24(=移転したp事業の株主資本相当額120×20%)との差額6(貸方)を、資本剰余金に計上する(第229項参照)。
- ・支配獲得後の資本連結

- (*9) 事業分離による取得原価120

- *p事業の評価・換算差額等に係る記載は省略している。
- [設例26-3] 移転に係る対価が子会社株式と現金等の財産である場合-分離元企業が受け取った現金等の財
産の移転前に付された適正な帳簿価額が、移転事業に係る株主資本相当額を上回る場合 - (1) 前提条件
- 分離元企業(親会社)P社は、p事業(p事業に係る諸資産の適正な帳簿価額は100(株主資本相当額100)、p事業の時価は200)を、分離先企業(60%子会社)S社(株式数80株、諸資産の適正な帳簿価額は600(払込資本400、利益剰余金200)、企業の時価は800)に移転する。
- この結果、P社は次の対価を受け取る(分離後のS社に対する持分比率は、60%から62.4%(=(80株×60%+5株)/(80株+5株))となる。)。
- ・新株発行 5株(時価50)
- ・現金 150
- なお、分離先企業(子会社)S社の企業結合直前の個別貸借対照表は次のとおりである。

- また、P社の保有するS社の株式の適正な帳簿価額は240であったものとする。

- (2) 考え方
- ① 分離元企業P社の個別財務諸表上の会計処理

- (*1) 受け取った現金等の財産の帳簿価額がp事業に係る株主資本相当額よりも大きい場合、当該差額を移転利益に計上する(第230項(1)②参照)。
- ② 分離元企業P社の連結財務諸表
- ア 分離先企業S社の個別財務諸表上の会計処理
- ・P社のp事業を子会社S社に事業分離(共通支配下の取引)

- (*2) 共通支配下の取引により企業集団内を移転する資産及び負債は、原則として、移転前に付された適正な帳簿価額により計上する(第231項(1)参照)。
- (*3) p事業に係る株主資本相当額が交付した現金等の財産より小さい場合、払込資本をゼロとし、当該差額をのれんに計上する(第231項(2)②参照)。
- イ 分離元企業P社の連結財務諸表上の会計処理
- <連結修正仕訳>
- ・子会社株式(S社株式)に関する開始仕訳

- (*4) 非支配株主持分600×40%+S社株式240-払込資本400=80
- ・p事業に係る移転利益の修正

- (*5) 個別上認識された移転利益は、分離元企業(親会社)の連結財務諸表上、連結会計基準における未実現損益の消去に準じて処理する(第232項参照)。
- (*6) S社で認識されたのれんの消去
- ・親会社の持分変動による差額の計上

- (*7) 移転した事業には現金による対価が支払われているため、移転した事業に係る分離元企業の持分の減少額は生じない。このため、子会社に係る分離元企業の持分の増加額14(=600×(62.4%-60%))が資本剰余金となる(第232項参照)。


- [設例26-4] 移転に係る対価が子会社株式と現金等の財産である場合-分離元企業が受け取った現金等の財
産の移転前に付された適正な帳簿価額が、移転事業に係る株主資本相当額を下回る場合 - (1) 前提条件
- 分離元企業(親会社)P社は、p事業(p事業に係る諸資産の適正な帳簿価額は100、p事業の時価は200)を、分離先企業(60%子会社)S社(株式数80株、諸資産の適正な帳簿価額は600(資本金400、利益剰余金200)、企業の時価は800)に移転する。
- この結果、P社は次の対価を受け取る(分離後のS社に対する持分比率は、60%から66.3%(=(80株×60%+15株)/(80株+15株))となる。)。
- ・ 新株発行 15株(時価150)
- ・ 現金 50
- なお、分離先企業(子会社)S社の企業結合直前の個別貸借対照表は、次のとおりである。

- また、P社の保有するS社の株式の適正な帳簿価額は240であったものとする。

- (2) 考え方
- ① 分離元企業P社の個別財務諸表上の会計処理

- (*1) 受け取った現金等の財産の帳簿価額がp事業に係る株主資本相当額より小さい場合、当該差額を子会社株式の取得原価とする(第230項(1)①参照)。
- ② 分離元企業P社の連結財務諸表
- ア 分離先企業S社の個別財務諸表上の会計処理
- ・P社のp事業を子会社S社に事業分離(共通支配下の取引)

- (*2) 共通支配下の取引により企業集団内を移転する資産及び負債は、原則として、移転前に付された適正な帳簿価額により計上する(第231項(1)参照)。
- (*3) p事業に係る株主資本相当額が交付した現金等の財産より大きい場合、当該差額を払込資本の増加として処理する(第231項(2)①参照)。
- イ 分離元企業P社の連結財務諸表上の会計処理
- <連結修正仕訳>
- ・子会社株式(S社株式)に関する開始仕訳

- (*4) 非支配株主持分600×40%+S社株式240-払込資本400=80
- ・p事業に係る移転損益の修正

- ・親会社の持分変動による差額の計上

- (*5) 移転した事業(諸資産の簿価100)に対して現金による対価50が支払われているため、移転した事業に係る分離元企業の持分の減少額は、17(=(100-50)×33.7%)となる。このため、子会社に係る分離元企業の持分の増加額38(=600×(66.3%-60%))と、移転した事業に係る分離元企業の持分の減少額17との差額21が資本剰余金となる(第232項参照)。
- ・支配獲得後の資本連結

- (*6) 事業移転によるS社株式の取得原価50


- [設例27] 株式交換により親会社が子会社を株式交換完全子会社とする場合の会計処理
- (1) 前提条件
- ① P社(公開企業)はX1年3月31日に800を出資し、子会社S社(持分割合80%)を設立した。
- ② X2年3月期のS社の当期純利益は1,000であった。
- ③ P社はX2年4月1日に株式交換によりS社を完全子会社化した。
- ④ 株式の交換比率は1:1であり、P社は新株をS社の非支配株主に20株(株式交換日の時価500(1株当たり25))を発行した。
- ⑤ P社は株式交換の手続の中で、債権者保護手続を実施し、P社は新株の発行に伴う増加資本の全額をその他資本剰余金とした。
- ⑥ 株式交換日直前(X2年3月31日)の貸借対照表は次のとおりである。

- (2) P社の個別財務諸表上の会計処理

- (*1) 株式交換完全子会社株式の取得原価は、取得の対価(非支配株主に交付した親会社株式の時価500)で算定される(第236項(1)参照)。
- (3) P社の連結財務諸表上の会計処理

- (*2) 開始仕訳
- (*3) 追加取得した株式交換完全子会社株式の取得原価500と減少する非支配株主持分の金額400との差額を資本剰余金として処理する(第237項参照)。
- (4) 株式交換後(X2年4月1日)の貸借対照表

- [設例28] 株式移転により親会社と子会社が株式移転設立完全親会社を設立する場合の会計処理
- (1) 前提条件
- ① P社(公開企業)はX1年3月31日に800を出資し、子会社S社(持分割合80%)を設立した。
- ② X2年3月期のS社の当期純利益は1,000であった。
- ③ P社とS社はX2年4月1日に株式移転により株式移転設立完全親会社HD社を設立した。
- ④ 株式の移転比率は1:1であり、HD社は新株を200株発行し、P社の株主に100株、S社の株主に100株(うち、P社に80株、S社の非支配株主に20株)割り当てた。株式移転日のP社株式の株価により算定した、S社の非支配株主に交付したHD社株式の時価は500(1株当たり25)であった。
- ⑤ HD社は株式移転の手続の中で、債権者保護手続を実施し、HD社は新株発行に伴う増加すべき株主資本のうち、資本金を1,000、残額をその他資本剰余金とした。
- ⑥ 株式移転の日直前(X2年3月31日)の貸借対照表は次のとおりである。

- (2) HD社の個別財務諸表上の会計処理

- (*1) 株式移転完全子会社株式(旧親会社P社株式)の取得原価は、P社の株式移転日の前日における適正な帳簿価額による株主資本の額2,000で算定する(第239項(1)①参照)。
- (*2) 株式移転完全子会社株式(旧子会社S社株式)の取得原価のうち、P社が所有していた持分相当額(80%)については、S社の適正な帳簿価額による株主資本の額2,000により算定する(第239項(1)②ア参照)。
- (*3) 株式移転完全子会社株式(旧子会社 S社株式)の取得原価のうち、非支配株主持分相当額(20%)の取得原価は、S社の非支配株主に交付した完全親株式HD社の時価500で算定される(第239項(1)②イ参照)。
- (3) P社の個別財務諸表上の会計処理

- (*4) P社は株式移転設立完全親会社株式(その他有価証券)を取得することになるが、当該取引は共通支配下の取引として会計処理する。したがって、P社が取得するHD社の株式の取得原価は、S社株式の適正な帳簿価額とし(第239-4項参照)、株式移転時の株式の交換による損益は認識しない。
- (4) HD社の連結財務諸表上の会計処理

- (*5) 投資と資本の相殺消去
- (*6) S社株式の取得原価(支払対価の時価)500と減少する非支配株主持分相当額の金額400との差額100を資本剰余金として処理する。
- (*7) P社が受け入れたHD社株式は、連結財務諸表上、自己株式に振り替える(第240項(2)参照)。
- (*8) HD社の資本は、株式移転直前の連結財務諸表の資本項目に非支配株主との取引により増加した払込資本の額を加算するように調整する(第240項(3)参照)。
- (5) 株式移転直後(X2年4月1日)の貸借対照表は次のとおりとなる。

- [設例29] 同一の株主(企業)により支配されている子会社同士の合併の会計処理
- [設例29-1] 合併の対価が現金等の財産のみである場合
- (1) 前提条件
- P社は期首に、80%子会社S1社(諸資産の適正な帳簿価額は100(株主資本100)、企業の時価は200)を吸収合併消滅会社とし、60%子会社S2社(諸資産の適正な帳簿価額は600(株主資本600)、企業の時価は800)を吸収合併存続会社とする合併をさせる。この結果、S1社の株主は現金200を受け取る(合併後のS2社に対する持分比率は、P社が60%のままである。)。
- なお、P社の子会社S1社と子会社S2社の企業結合直前の個別貸借対照表は、それぞれ次のとおりである。

- また、P社の保有するS1社の株式の適正な帳簿価額は64、S2社の株式の適正な帳簿価額は240とする。

- (2) 考え方
- ① 吸収合併消滅会社S1社の株主P社の個別財務諸表上の会計処理

- (*1) 200×80%=160 P社が受け取った現金等の財産は、移転前に付された適正な帳簿価額により計上する(第244項参照)。
- (*2) (*1)と引き換えられたS1社の株式の適正な帳簿価額との差額は、原則として交換損益として認識する(第244項参照)。
- ② 吸収合併消滅会社の株主P社の連結財務諸表
- ア 吸収合併存続会社S2社の個別財務諸表上の会計処理
- ・P社の子会社S2社が子会社S1社を合併(共通支配下の取引)

- (*3) S2社がS1社から受け入れる資産及び負債は、合併期日の前日に付された適正な帳簿価額により計上し、S1社の株主資本と取得の対価として支払った現金等の財産の適正な帳簿価額との差額をのれんとして計上する(第243項(1)参照)。
- イ 吸収合併消滅会社S1社の個別財務諸表上の会計処理
- ・P社の子会社S1社は子会社S2社との合併により消滅

- ウ 吸収合併消滅会社S1社の株主P社の連結財務諸表上の会計処理
- <連結修正仕訳>
- ・子会社株式(S1社株式)に関する開始仕訳

- ・子会社株式(S2社株式)に関する開始仕訳

- ・子会社株式(S1社株式)に関する開始仕訳の振戻し(S1社はS2社に合併されているため)

- ・子会社株式(S1社株式)の交換損益の修正及び親会社の持分変動

- (*4) 個別上、認識された交換損益に係る取引は、被結合企業の株主の連結財務諸表上、連結会計基準における未実現損益の消去に準じて処理する(第245項参照)。
- (*5) S1社を連結していたことにより生じていた親会社P社に係る取得後剰余金16(=20×80%又は20-4)の認識
- (*6) S2社で認識されたのれん100を消去し、そのうち20%分の20は親会社の持分変動により生じた差額であり、資本剰余金となる。
- ・資本剰余金の利益剰余金への振替

- (*7) 親会社の持分変動により資本剰余金が負の値となるため、資本剰余金を零とし、利益剰余金を減額する(連結会計基準第30-2項)。


- [設例29-2] 合併の対価が子会社株式のみである場合
- (1) 前提条件
- P社の80%子会社S1社(諸資産の適正な帳簿価額は100(株主資本100)、企業の時価は200)を吸収合併消滅会社とし、60%子会社S2社(株式数80株、諸資産の適正な帳簿価額は600(株主資本600)、企業の時価は800)を吸収合併存続会社とする吸収合併により、S1社の株主はS2社の株式20株を受け取る。
- この結果、合併後のS2社(株式数100株)に対する持分比率は、P社が64%(64株)、P社以外の旧S1社の株主が4%(4株)、P社以外の旧S2社の株主が32%(32株)となるものとする。
- なお、P社の子会社S1社と子会社S2社の企業結合直前の個別貸借対照表は、それぞれ次のとおりである。

- また、P社の保有するS1社の株式の適正な帳簿価額は64、S2社の株式の適正な帳簿価額は240であった。

- (2) 考え方
- ① 吸収合併消滅会社S1社の株主P社の個別財務諸表上の会計処理

- (*1) P社が受け取ったS2社株式の取得原価は、引き換えられたS1社の株式に係る企業結合日直前の適正な帳簿価額に基づいて計上する(第248項参照)。
- ② 吸収合併消滅会社S1社の株主P社の連結財務諸表
- ア 吸収合併存続会社S2社の個別財務諸表上の会計処理
- ・P社の子会社S2社が子会社S1社を合併

- (*2) S1社から受け入れる資産及び負債は、合併期日の前日に付された適正な帳簿価額により計上する(第247項(1)参照)。
- (*3) 株主資本項目については、S2社は、S1社の合併期日前日に付された適正な帳簿価額による株主資本を払込資本として計上する。対価が株式のみの場合は、S1社の資本金、資本準備金、その他資本剰余金、利益準備金及びその他利益剰余金の内訳科目を、抱合せ株式等の会計処理を除き、そのまま引き継ぐことができる。株主資本以外の項目については、S1社の評価・換算差額等の適正な帳簿価額を引き継ぐ(第247項(2)参照)。
- イ 吸収合併消滅会社S1社の個別財務諸表上の会計処理
- ・P社の子会社S1社は子会社S2社との合併により消滅

- ウ 吸収合併消滅会社S1社の株主P社の連結財務諸表上の会計処理
- <連結修正仕訳>
- ・子会社株式(S1社株式)に関する開始仕訳

- ・子会社株式(S2社株式)に関する開始仕訳

- ・子会社株式(S1社株式)に関する開始仕訳の振戻し(S1社はS2社に合併されているため)

- ・親会社の持分変動
- 吸収合併消滅会社S1社の株主(親会社)P社の連結上減少する非支配株主持分24(=S2社の諸資産
の適正な帳簿価額600×4%)と、被結合企業S1社に係る被結合企業の株主P社の持分の減少額16
(被結合企業S1社に係る帳簿価額による株主資本額100に減少した株主P社の持分比率16%を乗じ
た額)との間に生ずる差額8については、資本剰余金に計上する(第249項参照)。 
- (*4) 企業結合によるS2社株式の取得原価(=S1社株式の帳簿価額)64
- (*5) 被結合企業S1社に係る非支配株主持分36(=S1社の諸資産の適正な帳簿価額100×36%)と連結上減少する非支配株主持分24との差額12
- (*6) S1社を連結していたことにより生じていた親会社P社に係る取得後剰余金16(=20×80%又は20-4)の認識


- [設例29-3] 合併の対価が子会社株式と現金等の財産である場合
-結合当事企業の株主(親会社)が受け取った現金等の財産の移転前に付された適正な帳簿価額
が、吸収合併消滅会社の適正な帳簿価額による株主資本の額を上回る場合(1) - (1) 前提条件
- P社の80%子会社S1社(諸資産の適正な帳簿価額は100(株主資本100)、純資産の時価は150、企業の時価は200)を吸収合併消滅会社とし、60%子会社S2社(株式数80株、諸資産の適正な帳簿価額は600(株主資本600)、企業の時価は800)を吸収合併存続会社とする吸収合併をさせる。この結果、S1社の株主は次の対価を受け取る(合併後のS2社に対する持分比率は、P社が60%から61.2%(=(80株×60%+5株×80%)/(80株+5株)となる))。
- ・新株発行 5株(時価50)
- ・現金 150
- なお、P社の子会社である吸収合併消滅会社S1社と吸収合併存続会社S2社の企業結合直前の個別貸借対照表は、それぞれ次のとおりである。

- また、P社の保有するS1社の株式の適正な帳簿価額は64、S2社の株式の適正な帳簿価額は240であったものとする。

- (2) 考え方
- ① 吸収合併消滅会社S1社の株主P社の個別財務諸表上の会計処理

- (*1) P社がS2社から受け取った現金等の財産は、原則として、移転前に付された適正な帳簿価額により計上する。当該価額がS1社の株式に係る適正な帳簿価額を上回る場合、原則として、当該差額を交換利益として認識し、S2社の株式の取得価額はゼロとする(第252項参照)。
- ② 吸収合併消滅会社S1社の株主P社の連結財務諸表
- ア 吸収合併存続会社S2社の個別財務諸表上の会計処理
- ・P社の子会社S2社が子会社S1社を合併(共通支配下の取引)

- (*2) 共通支配下の取引により、移転前に付された適正な帳簿価額による(第251項(1)参照)。
- (*3) S1社の適正な帳簿価額による株主資本の額から合併の対価として支払った現金等の財産の移転前に付された適正な帳簿価額を控除した額がマイナスとなる場合は、払込資本をゼロとし、のれんを計上する(第251項(2)①参照)。
- イ 吸収合併消滅会社S1社の個別財務諸表上の会計処理
- ・P社の子会社S1社は子会社S2社との合併により消滅

- ウ 吸収合併消滅会社S1社の株主P社の連結財務諸表上の会計処理
- <連結修正仕訳>
- ・子会社株式(S1社株式)に関する開始仕訳

- ・子会社株式(S2社株式)に関する開始仕訳

- ・子会社株式(S1社株式)に関する開始仕訳の振戻し

- ・子会社株式(S1社株式)の交換利益の修正及び親会社の持分変動

- (*4) 個別上、認識された交換利益に係る取引は、被結合企業の株主の連結財務諸表上、連結会計基準における未実現損益の消去に準じて処理する(第253項参照)。
- (*5) S1社を連結していたことにより生じていた親会社P社に係る取得後剰余金16(=20×80%又は20-4)の認識
- (*6) S2社で認識されたのれん50を消去し、そのうち20%分の10は親会社の持分変動により生じた差額であり、資本剰余金となる。
- ・親会社の持分変動

- (*7) 減少した非支配株主持分7=600×(40%-38.8%)
- (*8) S2社に係る持分の増加額7(=600×(61.2%-60%))を資本剰余金に計上する。
- ・資本剰余金の利益剰余金への振替

- (*9) 親会社の持分変動により資本剰余金が負の値となるため、資本剰余金を零とし、利益剰余金を減額する(連結会計基準第30-2項)。


- [設例29-4] 合併の対価が子会社株式と現金等の財産である場合
-結合当事企業の株主(親会社)が受け取った現金等の財産の移転前に付された適正な帳簿価額が、
吸収合併消滅会社の適正な帳簿価額による株主資本の額を上回る場合 (2) - (1) 前提条件
- P社の80%子会社S1社(諸資産の適正な帳簿価額は100(株主資本100)、純資産の時価は150、企業の時価は200)を吸収合併消滅会社とし、60%子会社S2社(株式数80株、諸資産の適正な帳簿価額は600(株主資本600)、企業の時価は800)を吸収合併存続会社とする吸収合併をさせる。この結果、S1社の株主は次の対価を受け取る(合併後のS2社に対する持分比率は、P社が60%から62.2%(=(80株×60%+10株×80%)/(80株+10株)となる。))。
- ・S2社株式(自己株式) 10株(S2社の適正な帳簿価額60、時価100)
- ・X社株式(他社の株式) 10株(S2社の適正な帳簿価額10、時価20)
- ・現金 80
- なお、P社の子会社である吸収合併消滅会社S1社と吸収合併存続会社S2社の企業結合直前の個別貸借対照表は次のとおりである。

- また、P社の保有するS1社の株式の適正な帳簿価額は64、S2社の株式の適正な帳簿価額は240とする。

- (2) 考え方
- ① 吸収合併消滅会社の株主P社の個別財務諸表上の会計処理

- (*1) 子会社の自己株式を受け入れても、新株発行による株式受入れと同様に考えるため、移転前に付された適正な帳簿価額では計上しない。
- (*2) P社がS2社から受け取った現金等の財産は、原則として、移転前に付された適正な帳簿価額により計上する。当該価額がS1社の株式の適正な帳簿価額を上回る場合には、原則として、当該差額を交換利益として認識し、取得するS2社株式の取得価額はゼロとする(第252項参照)。
- ② 吸収合併消滅会社の株主P社の連結財務諸表
- ア 吸収合併存続会社S2社の個別財務諸表上の会計処理
- ・P社の子会社S2社が子会社S1社を合併(共通支配下の取引)

- (*3) S1社より受け入れる資産及び負債は、移転前に付された適正な帳簿価額により計上する(第251項(1)参照)。
- (*4) S1社の適正な帳簿価額による株主資本の額から合併の対価として支払った現金等の財産の移転前に付された適正な帳簿価額(その他有価証券評価差額金は控除する)を控除した額がプラスである場合、当該差額を払込資本とする(第251項(2)①参照)が、自己株式を処分しているため、交付した自己株式の移転前に付された適正な帳簿価額を控除して自己株式処分差額を算出する。
- イ 吸収合併消滅会社S1社の個別財務諸表上の会計処理
- ・P社の子会社S1社は子会社S2社との合併により消滅

- ウ 吸収合併消滅会社の株主P社の連結財務諸表上の会計処理
- <連結修正仕訳>
- ・子会社株式(S1社株式)に関する開始仕訳

- ・子会社株式(S2社株式)に関する開始仕訳

- ・子会社株式(S1社株式)に関する開始仕訳の振戻し

- ・子会社株式(S1社株式)の交換利益の修正

- (*5) 個別上、認識された交換利益は、被結合企業の株主の連結財務諸表上、連結会計基準における未実現損益の消去に準じて処理する(第253項参照)。
- (*6) S1社を連結していたことにより生じていた親会社P社に係る取得後剰余金16(=20×80%又は20-4)のうち、8を認識
- ・親会社の持分変動

- (*7) 合併の受入時に計上された金額
- (*8) 子会社株式(S2社株式)の追加取得により減少した非支配株主持分13(=600×(40%-37.8%))と、S1社の純資産の受入れによる増加すべき株主資本の額4(=10×37.8%)との差額9を認識
- (*9) S1社を連結していたことにより生じていた親会社P社に係る取得後剰余金16(=20×80%又は20-4)のうち、未計上の8を認識


- [設例29-5] 子会社とその子会社との合併(子会社と孫会社との合併)
- (1) 前提条件
- ① P社が100%子会社のS1社を100で設立し、その後、S1社がS2社の株式の80%を取得原価100で一括取得した。
- ② S1社がS2社を取得した時点のS2社の個別貸借対照表は、次のとおりである。

- (*1) 諸資産のうち、土地は10(簿価)であり、S1社がS2社を取得した日の当該土地の時価(S1社の連結財務諸表上の帳簿価額)は30であった(評価差額20)。
- なお、S1社がS2社の株式の80%を取得したときに発生したのれん60(=100-(30+20)×80%)は合併期日の前日時点では償却済みであるものとする。
- ③ S1社(P社の100%子会社、発行済株式数200株、時価200)は、S2社(時価100)(S1社が株式の80%保有(S1社における帳簿価額100))を吸収合併した。
- ④ S1社は、合併にあたり、S2社の非支配株主に新株を20株交付した。S1社は、合併による増加すべき株主資本の全額をその他資本剰余金とした。
- ⑤ P社、S1社及び子会社S2社の合併期日の前日の個別貸借対照表は、それぞれ次のとおりである。


- (2) 考え方
- ① 合併直前のP社の連結財務諸表上の会計処理
- ・子会社株式(S1社株式)に関する開始仕訳

- ・子会社株式(S2社株式)に関する開始仕訳

- (*2) S1社がS2社を取得した日の土地の評価差額20
- (*3) S1社がS2社を取得した時に生じたのれんの償却額60
- (*4) 取得後利益剰余金のうち、非支配株主への振替分6=30×20%
- (*5) (S2社資本金30+S2社利益剰余金30+土地の評価差額20)×20%=16

- (*6) S1社諸資産60+S2社諸資産60+土地の評価差額20=140
- (*7) S1社利益剰余金60+S2社利益剰余金30-のれん償却額60-非支配株主振替分6=24
- ② 合併の会計処理
- ・子会社S1社における吸収合併の会計処理

- (*8) 子会社S1社が孫会社S2社から受け入れる資産及び負債は、子会社にとっての連結財務諸表上の帳簿価額(80=60+20)によることになる(第207項参照)。
- (*9) 受け入れた資産と負債の差額のうち株主資本のS1社持分相当額と、S1社が合併直前に保有していたS2社株式の適正な帳簿価額との差額を、特別損益に計上する(第206項(4)参照)。
- (*10) S1社が合併の対価としてS2社の非支配株主にS1社の株式を交付する取引は、企業集団の最上位の親会社であるP社との取引ではないため、S1社の増加すべき株主資本の額は、連結財務諸表上の帳簿価額(80=60+20)に持分比率(20%)を乗じて算定する(第206項(4)参照)。

- ③ 合併後のP社の連結財務諸表上の会計処理
- ・S1社の合算

- ・S1社における合併仕訳の消去

- ・S1社株式に関する開始仕訳

- ・S2社の合併期日の前日の個別貸借対照表の合算

- ・S2社株式に関する開始仕訳

- ・親会社の持分変動

- (*11) S2社の非支配株主持分への振替9=(S2社の株主資本の帳簿価額60+評価差額20)×(20%-9.09%)
- (*12) S1社に対する非支配株主持分の増加5.5=(S1社の株主資本の帳簿価額160-S2社株式の帳簿価額100)×9.09%

- (*13) S1社諸資産60+S2社諸資産60+土地の評価差額20=140
- (*14) S1社利益剰余金60+S2社利益剰余金30-のれん償却額60-S2社の企業結合前の非支配株主振替分6=24

- [設例30] 被結合企業の株主に係る会計処理-受取対価が結合企業の株式のみの場合
- (1) 前提条件
- A社の40%関連会社X社(諸資産の適正な帳簿価額は100(株主資本100)、諸資産の時価は150、企業の時価は200)を吸収合併消滅会社とし、30%関連会社Y社(株式数80株、諸資産の適正な帳簿価額は600(株主資本600) (時価も同額)、企業の時価は800)を吸収合併存続会社とする吸収合併により、X社の株主はY社の株式20株を受け取る。
- この結果、合併後のY社(株式数100株)に対する持分比率は、A社が32%(32株)、A社以外の旧X社の株主が12%(12株)、A社以外の旧Y社の株主が56%(56株)となるものとする。
- なお、A社の関連会社である吸収合併消滅会社X社と吸収合併存続会社Y社の企業結合直前の個別貸借対照表は、それぞれ次のとおりである。

- また、A社の保有するX社の株式の適正な帳簿価額は32、Y社の株式の適正な帳簿価額は120であった。

- (2) 考え方
- ① 吸収合併消滅会社の株主A社の個別財務諸表上の会計処理(第277項(1)参照)

- ② 吸収合併消滅会社の株主A社の連結財務諸表
- ア 吸収合併存続会社Y社の個別財務諸表上の会計処理(第277項(2)参照)
- ・A社の関連会社Y社が関連会社X社を合併(取得)

- イ 吸収合併消滅会社X社の個別財務諸表上の会計処理
- ・A社の関連会社X社は関連会社Y社との合併により消滅

- ウ 吸収合併消滅会社の株主A社の連結財務諸表上の会計処理
- <連結修正仕訳>
- ・関連会社株式(X社株式)に関する開始仕訳

- ・関連会社株式(Y社株式)に関する開始仕訳

- ・Y社株式の取得によるのれんの算定(30%から32%へ)
- 合併により、Y社に対するA社の持分が30%から32%に増加した。追加取得に準じて会計処理す
るため、持分法適用上、部分時価評価法の原則法の適用により、のれん4(=吸収合併存続会社
Y社に対して追加投資したとみなされる額16 (*1)-追加取得によるA社の持分の増加額12(*2))
を算定する。 
- (*1) 追加投資したとみなされる額16=合併前のY社の時価800×2%
- (*2) 追加取得によるA社の持分の増加額12=合併前のY社の追加取得時の資産及び負債の時価による株主資本600×2%
- ・持分変動差額の認識(40%から32%へ)
- 合併により、吸収合併存続会社Y社の株主A社の連結上、被結合企業X社に対する持分が交換さ
れたとみなされる額16 (*3)と、被結合企業X社に係る株主A社の持分の減少額8 (*4)との間に
生ずる差額8については、持分変動差額として取り扱う。 
- (*3) 被結合企業X社に対する持分が交換されたとみなされる額16(上記の結合企業に対する追加投資額と同額となる。)
- =交換された被結合企業X社の時価200×減少した株主A社の持分比率8%
- (*4) 被結合企業X社に係る株主A社の持分の減少額8
- =被結合企業X社に係る帳簿価額による株主資本100×減少した株主A社の持分比率8%


- [設例31] 被結合企業の株主に係る会計処理-受取対価が現金等の財産と結合企業の株式の場合
- (1) 前提条件
- A社の80%子会社X社(諸資産の適正な帳簿価額は100(株主資本100)、諸資産の時価は150、企業の時価は200)を吸収合併消滅会社とし、40%関連会社Y社(株式数80株、諸資産の適正な帳簿価額は600(株主資本600)、諸資産の時価は700、企業の時価は800)を吸収合併存続会社とする吸収合併を行う。この結果、X社の株主は次の対価を受け取る(合併後のY社に対する持分比率は、A社が40%から44.4%(=(80株×40%+10株×80%)/(80株+10株)となる。))。
- ・Y社株式(自己株式) 10株(Y社の適正な帳簿価額60、時価100)
- ・B社株式(他社の株式)10株(Y社の適正な帳簿価額10、時価20)
- ・現金 80
- なお、A社の子会社である吸収合併消滅会社X社と、A社の関連会社である吸収合併存続会社Y社の企業結合直前の個別貸借対照表は、それぞれ次のとおりである。

- また、A社の保有するX社の株式の適正な帳簿価額は64、Y社の株式の適正な帳簿価額は160であったものとする。

- (2) 考え方
- ① 吸収合併消滅会社の株主A社の個別財務諸表上の会計処理(第282項(2)参照)

- (*1) A社で受け取った現金等の財産が、引き換えられたX社株式の適正な帳簿価額を上回るため、当該差額を交換利益として記載する(Y社株式の取得原価はゼロとする。)。
- (*2) 共通支配下の取引には該当しないため、A社で受け取った現金等の財産は、原則として、時価により計上する。
- ② 吸収合併消滅会社の株主A社の連結財務諸表(第282項(2)参照)
- ア 吸収合併存続会社Y社の個別財務諸表上の会計処理
- ・A社の関連会社Y社が子会社X社を合併(取得)

- (*3) 受け入れる資産の時価
- (*4) 取得の対価に用いた有価証券評価差額を実現益として計上。なお、次の持分法の適用にあたっては、その他有価証券処分益に係る未実現利益の消去及び持分法による投資損益とする処理については、省略している。
- (*5) 交付した株式の時価100、有価証券の時価20、現金80の計200を取得原価とする。
- イ 吸収合併消滅会社X社の個別財務諸表上の会計処理
- ・A社の子会社X社は関連会社Y社との合併により消滅

- ウ 吸収合併消滅会社の株主A社の連結財務諸表上の会計処理
- <連結修正仕訳>
- ・子会社株式(X社株式)に関する開始仕訳

- ・関連会社株式(Y社株式)に関する開始仕訳

- ・子会社株式(X社株式)に関する開始仕訳の振戻し

- ・子会社株式(X社株式)の交換損益の修正

- (*6) 個別財務諸表上、認識された交換利益は、被結合企業の株主の連結財務諸表上、連結会計基準における未実現損益の消去に準じて、投資会社の持分相当額7(16×44.4%)を消去
- (*7) X社を連結していたことにより生じていた親会社A社に係る取得後剰余金16(=20×80%又は20-4)のうち、7を認識
- ・X社株式に関する取得後剰余金の認識
- X社を連結していたことにより生じていた親会社A社に係る取得後剰余金16(=20×80%又は20
-4)のうち、9を認識 
- ・Y社株式の追加取得(40%→44.4%)によるのれんの算定
- A社がY社の4.4%を追加取得するため、持分法適用上、部分時価評価法の適用により、のれん4
(借方) (=結合企業に対して投資したとみなされる額35(*8)-これに対応する企業結合直前の結
合企業の資本31(*9))を算定する。 
- (*8) Y社の事業の時価800×4.4%=35
- (*9) Y社の諸資産の時価700×4.4%=31
- ・持分変動差額の認識

- (*10) (200-100)×35.6%(80%-44.4%)=35


- [設例32] 取得とされた吸収合併の取得企業(吸収合併存続会社)の税効果会計
- 1. 非適格合併の場合の税効果会計
- (1) 前提条件
- Y社はA社を吸収合併した。この合併は取得とされた。
- ① 取得原価 1,000
- ② 被取得企業の識別可能資産aの時価(取得原価の配分額)800
- ③ 資産aの税務上の取得価額 1,000(=取得企業における税務上の取得原価)
- ④ 法定実効税率 40%
- ⑤ 取得企業の繰延税金資産は全額回収可能と見込まれる。
- ⑥ 税務上の適格合併に該当しない。
- (2) 取得企業における税効果会計の考え方
- 取得企業は、企業結合日において、被取得企業から受け入れた資産及び負債等に関して生じた一時差異等(識別可能資産aに対する取得原価の配分額800と当該資産の税務上の取得価額1,000との差額200(将来減算一時差異))について税効果80を認識するが、のれん120については税効果を認識しない(第71項及び第72項参照)。
- 被取得企業における繰延税金資産の計上額にかかわらず、取得企業における繰延税金資産の回収可能性の判断に基づき、繰延税金資産を計上する(第75項参照)。
- 企業結合日における会計処理

- なお、本設例では、企業結合日において繰延税金資産は全額回収可能と見込んでいるが、企業結合日の状況に基づく回収可能性を見直した場合には、企業結合日における繰延税金資産及びのれんの額を 取得原価が再配分されたものとして会計処理する(第73項参照)。
- また、企業結合日における繰延税金資産の回収可能性は、企業結合日後1年以内(原則として、1年を経過する日以後最初に到来する決算期)に確定させるため、企業結合年度の翌年度において回収見込額を見直した場合は、企業結合年度に当該見直しが行われたかのように、当該年度(企業結合年度の翌年度)の会計処理を行う (第73項参照)。
- 2. 適格合併の場合の税効果会計
- (1) 前提条件
- Y社はA社を吸収合併した。この合併は取得とされた。
- ① 取得原価 1,000
- ② 被取得企業の識別可能資産aの時価(取得原価の配分額)800
- ③ 資産aの税務上の帳簿価額 700(=被取得企業における税務上の帳簿価額であり、取得企業における税務上の引継価額)
- ④ 被取得企業における税務上の繰越欠損金 200
- ⑤ 法定実効税率 40%
- ⑥ 取得企業の繰延税金資産は全額回収可能と見込まれる。
- ⑦ 税務上の適格合併に該当する。
- (2) 取得企業における税効果会計の考え方
- 取得企業は、企業結合日において、被取得企業から受け入れた資産及び負債等に関して生じた一時差異等(識別可能資産aに対する取得原価の配分額800と当該資産の税務上の引継価額700との差額100(将来加算一時差異)及び被取得企業から引き継いだ税務上の繰越欠損金200)について税効果を認識するが、のれん160については税効果を認識しない(第71項及び第72項参照)。
- 被取得企業における繰延税金資産の計上額にかかわらず、取得企業における繰延税金資産の回収可能性の判断に基づき、繰延税金資産を計上する(第75項参照)。
- 企業結合日における会計処理

- なお、企業結合日後の繰延税金資産の回収可能性の見直し及び確定の手続は上記1.(2)と同様である。
- [設例33] 取得とされた株式移転における株式移転設立完全親会社の税効果会計
- (1) 前提条件
- ① 株式移転により、A社(取得企業)とB社(被取得企業)は株式移転設立完全親会社C社を設立した。
- ② 法定実効税率は40%とする。
- ③ A社株式の時価を基礎に株式の交換比率を考慮して算定したB社株式の時価は600であった。
- ④ 株式移転日の前日の個別貸借対照表は次のとおりである。

- (*1) 税務上の簿価は600とする。

- (*2) 税務上の簿価は500とする。
- (2) C社(株式移転設立完全親会社)の処理
- ① 株式移転時の会計処理

- (*3) A社株式の取得原価は、株式移転日の前日における取得企業(A社)の適正な帳簿価額による株主資本の額により算定する(第121項(1)参照)。なお、 税務上の簿価は600である。
- (*4) B社株式の取得原価は、C社が交付した株式の時価により算定する(第121項(2)参照)。なお、税務上の簿価は500である。
- 株式移転設立完全親会社が株式移転完全子会社株式を継続して保有するのであれば、取得時点から生じている一時差異について、税効果を認識しない。ただし、当該株式移転完全子会社株式について予測可能な期間に売却する予定がある場合(一部売却で売却後も子会社又は関連会社となる予定の場合は売却により解消する部分の一時差異に限る)、又は売却その他の事由によって当該株式移転完全子会社株式がその他有価証券として分類されることとなった場合で、かつ、回収可能性があると判断された場合には、当該一時差異に対する税効果を計上する(第123項(第115項)及び第404項参照)。
- ② 期末の会計処理

- [設例34](削 除)
- [設例35] 共通支配下の取引における吸収合併存続会社の税効果会計
- (1) 前提条件
- ① P社(親会社)はS社(子会社(P社の持株比率80%))を合併した(吸収合併存続会社はP社とする。)。
- ② P社は株式(時価500)をS社の非支配株主に交付した。
- ③ 法定実効税率は40%とする。
- ④ 合併期日前日の個別貸借対照表は次のとおりである。

- (*1) 税務上の簿価は2,300とする。
- (2) P社の会計処理
- ① 企業結合日における会計処理
P社が、S社に係る資産及び負債の合併期日の前日に付された適正な帳簿価額を引き継ぐ場合には、繰延税金資産についても、P社における回収可能性の有無にかかわらず合併期日の前日に付された適正な帳簿価額をそのまま引き継ぐ(第206項(1)参照)。 
- (*2) 資産を2分割しているのは会計処理の説明のためである。
- なお、受け入れた諸資産に係る一時差異に対する繰延税金資産の回収可能性は、通常と同様に、期末において見直される。
- ② 回収可能性がある場合の期末における会計処理

- ③ 回収可能性がない場合の期末における会計処理

- [設例36] 事業分離日の属する事業年度の前期末の分離元企業における繰延税金資産の回収可能性(投資が継続する場合)
- 1. 残存事業に係る一時差異等加減算前課税所得の見積額が残存事業に係る将来減算一時差異の額を上回る場合
- (1) 前提条件
- ① a事業及びb事業を営む分離元企業X社が、翌事業年度に会社分割によりa事業を移転する。事業分離後もX社のa事業に関する投資は継続し、会計上の移転損益は認識されない。
- ② 分離元企業X社の実際の残存事業bに係る一時差異等加減算前課税所得の見積額は、税務上の移転損益を含め150とする。
- ③ 分離元企業X社の将来減算一時差異は200(うちa事業100、b事業100)とする。
- ④ 事業分離が行われないと仮定した場合の分離元企業X社の一時差異等加減算前課税所得の見積額は190(うちa事業80、b事業110)とする。
- ⑤ a事業及びb事業の将来減算一時差異はすべて翌事業年度に解消するものとし、一時差異等加減算前課税所得の見積額は事業分離が行われないと仮定した場合の翌事業年度の見積額とする。
- (2) 事業分離日の属する事業年度の前期末における繰延税金資産の回収可能性の判断
- ① 移転事業aに係る繰延税金資産の回収可能性の判断(第107項(2)参照)
移転する事業に係る課税所得等と相殺し切れなかった将来減算一時差異20(=100-80)が生じている。したがって、残存事業bに係る一時差異等加減算前課税所得の見積額110と残存事業bに係る将来減算一時差異100を相殺した残余10を移転事業aに係る一時差異等加減算前課税所得の見積額80に加算した額90を基礎として、移転事業aに係る繰延税金資産の回収可能性を判断する。 - ② 残存事業bに係る繰延税金資産の回収可能性の判断(第107項なお書き参照)
残存事業bに係る繰延税金資産の回収可能性については、事業分離がないと仮定した場合の残存事業bに係る一時差異等加減算前課税所得の見積額110にかかわらず、事業分離をする分離元企業X社の一時差異等加減算前課税所得の見積額150を基礎として判断する。 - ③ X社全体の繰延税金資産の回収可能性の判断
①及び②の結果、分離元企業X社は、X社全体の将来減算一時差異200のうち190(=a事業90+b事業100)の将来減算一時差異に係る繰延税金資産が回収可能と判断される。 
- (*) 移転事業a欄及び残存事業b欄の金額は事業分離がないと仮定した場合の金額である。
- 2. 残存事業に係る一時差異等加減算前課税所得の見積額が残存事業に係る将来減算一時差異の額を下回る場合
- (1) 前提条件
- ① a事業及びb事業を営む分離元企業X社が、翌事業年度に会社分割によりa事業を移転する。事業分離後もX社のa事業に関する投資は継続し、会計上の移転損益は認識されない。
- ② 分離元企業X社の実際の残存事業bに係る一時差異等加減算前課税所得の見積額は、税務上の移転損益を含め10とする。
- ③ 分離元企業X社の将来減算一時差異は200(うちa事業100、b事業100)とする。
- ④ 事業分離が行われないと仮定した場合の分離元企業X社の一時差異等加減算前課税所得の見積額は120(うちa事業130、b事業△10)とする。
- ⑤ a事業及びb事業の将来減算一時差異はすべて翌年度に解消するものとし、一時差異等加減算前課税所得の見積額は事業分離が行われないと仮定した場合の翌年度の見積額とする。
- (2) 事業分離日の属する事業年度の前期末における繰延税金資産の回収可能性の判断
- ① 移転事業aに係る繰延税金資産の回収可能性の判断(第107項(2)参照)
移転する事業に係る課税所得等と相殺し切れなかった将来減算一時差異は生じていない。したがって、移転事業aに係る繰延税金資産の回収可能性は、移転事業aに係る一時差異等加減算前課税所得の見積額130を基礎として判断する。 - ② 残存事業bに係る繰延税金資産の回収可能性の判断(第107項なお書き参照)
残存事業bに係る繰延税金資産の回収可能性については、事業分離がないと仮定した場合の残存事業bに係る一時差異等加減算前課税所得の見積額△10にかかわらず、事業分離をする分離元企業X社の一時差異等加減算前課税所得の見積額10を基礎として判断する。 - ③ X社全体の繰延税金資産の回収可能性の判断
①及び②の結果、分離元企業X社については、X社全体の将来減算一時差異200のうち110(=a事業100+b事業10)の将来減算一時差異に係る繰延税金資産が回収可能と判断される。 
- (*) 移転事業a欄及び残存事業b欄の金額は事業分離がないと仮定した場合の金額である。
- [設例37] 事業分離日の分離元企業における税効果会計の適用(投資が継続する場合)
- (1) 前提条件
- ① 吸収分割により、分離元企業P社(親会社)はp事業を分離先企業S社(P社の100%子会社)に移転し、対価としてS社株式を受け取った。当該取引は共通支配下の取引であり、P社において移転損益は認識されない(投資が継続する)。
- ② 税務上、当該会社分割は適格分社型分割に該当するものとする。このため、P社におけるS社株式の取得原価は、移転した事業に係る資産及び負債の税務上の帳簿価額に基づくため、分離先企業株式に関して、移転したp事業に係る資産及び負債について生じていた一時差異と同額の一時差異が生ずる。
- ③ 法定実効税率は40%とする。
- ④ P社における移転前の貸借対照表、S社に移転するp事業の内容等は次のとおりである。

- ・説明の便宜上、繰延税金資産と繰延税金負債は両建て表示している。
- (*1) 会計上の帳簿価額及び税務上の帳簿価額は100とする。
- (*2) 税務上の帳簿価額は100とする。

- S社に移転するp事業(評価・換算差額等及び繰延税金資産及び負債を含めて記載している。)

- (2) P社におけるp事業移転に関する会計処理

- ・仕訳を分割しているのは、会計処理の理解のためである。
- ・P社が取得するS社株式の取得原価は、移転事業に係る株主資本相当額(移転事業に係る繰延税金資産及び負債を含まない(第108項(2)参照)。)により算定する(第226項参照)。
- (3) S社におけるp事業受入れに関する会計処理

- ・仕訳を分割しているのは、会計処理の理解のためである。
- ・共通支配下の取引のため、P社における適正な帳簿価額により資産及び負債(繰延税金資産及び負債を含む(第87項(1)参照)。)並びに評価・換算差額等を受け入れる(第227項参照)。
- ・移転事業に係る株主資本相当額を払込資本の増加として処理する(第227項参照)。
- (4) P社における連結修正仕訳

- (*3) 開始仕訳
- (*4) 資本連結上の投資原価は移転する事業の移転直前の適正な帳簿価額(当該事業に係る繰延税金資産及び繰延税金負債を含む(第402項参照)。)であるとし、その投資原価とS社の資本を消去する。
- (5) p事業移転後のP社の連結貸借対照表


