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企業会計基準適用指針第30号収益認識に関する会計基準の適用指針
目 的
- 1. 本適用指針は、企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準」(以下「会計基準」という。)を適用する際の指針を定めることを目的とする。
適用指針
Ⅰ.範 囲
- 2. 本適用指針を適用する範囲は、会計基準における範囲と同様とする。
Ⅱ.用語の定義
- 3. 本適用指針における用語の定義は、会計基準における用語の定義と同様とする。
Ⅲ.会計処理
1.収益の認識基準
(1)履行義務の識別
- 4. 契約を履行するための活動は、当該活動により財又はサービスが顧客に移転する場合を除き、履行義務ではない。例えば、サービスを提供する企業が契約管理活動を行う場合には、当該活動によりサービスが顧客に移転しないため、当該活動は履行義務ではない。
(2)別個の財又はサービス
- 5. 顧客が次の(1)又は(2)のいずれかを行うことができる場合には、会計基準第34項(1)に定める財又はサービスが別個のものとなる可能性があることに該当する([設例5-1]、[設例6-3]及び[設例25])。
- (1) 財又はサービスの使用、消費、あるいは廃棄における回収額より高い金額による売却
- (2) 経済的便益を生じさせる(1)以外の方法による財又はサービスの保有
- 6. 会計基準第34項(2)に従って、財又はサービスを顧客に移転する約束が、契約に含まれる他の約束と区分して識別できるかどうかを判定するにあたっては、当該約束の性質が、契約において、当該財又はサービスのそれぞれを個々に移転するものか、あるいは、当該財又はサービスをインプットとして使用した結果生じる結合後のアウトプットを移転するものかを判断する。
- 財又はサービスを顧客に移転する複数の約束が区分して識別できないことを示す要因には、例えば、次の(1)から(3)がある([設例5]、[設例6]、[設例16]、[設例24-2]及び[設例25])。
- (1) 当該財又はサービスをインプットとして使用し、契約において約束している他の財又はサービスとともに、顧客が契約した結合後のアウトプットである財又はサービスの束に統合する重要なサービスを提供していること
- (2) 当該財又はサービスの1つ又は複数が、契約において約束している他の財又はサービスの1つ又は複数を著しく修正する又は顧客仕様のものとするか、あるいは他の財又はサービスによって著しく修正される又は顧客仕様のものにされること
- (3) 当該財又はサービスの相互依存性又は相互関連性が高く、当該財又はサービスのそれぞれが、契約において約束している他の財又はサービスの1つ又は複数により著しく影響を受けること
- 7. 約束した財又はサービスが別個のものではない場合には、別個の財又はサービスの束を識別するまで、当該財又はサービスを他の約束した財又はサービスと結合する。
(3)履行義務の充足による収益の認識
- 8. 財又はサービス(本適用指針において、顧客との契約の対象となる財又はサービスについて、以下「資産」と記載することもある。)に対する支配が顧客に移転しているかどうかを判断するにあたっては、当該資産を買い戻す契約が存在するかどうか及びその契約条件を考慮する(第69項から第74項参照)。
(4)一定の期間にわたり充足される履行義務
(顧客による便益の享受)
- 9. 会計基準第38項(1)の要件に該当するかどうかを判定するにあたっては、仮に他の企業が顧客に対する残存履行義務を充足する場合に、企業が現在までに完了した作業を当該他の企業が大幅にやり直す必要がないときには、企業が顧客との契約における義務を履行するにつれて、顧客が便益を享受するものとする([設例7])。
- 他の企業が作業を大幅にやり直す必要がないかどうかを判定する場合には、次の(1)及び(2)の仮定を置く。
- (1) 企業の残存履行義務を他の企業に移転することを妨げる契約上の制限又は実務上の制約は存在しない。
- (2) 残存履行義務を充足する他の企業は、企業が現在支配する資産からの便益を享受しない。また、当該他の企業は、履行義務が当該他の企業に移転した場合でも企業が支配し続けることになる当該資産の便益を享受しない。
(履行により、別の用途に転用することができない資産が生じること)
- 10. 会計基準第38項(3)①に定める資産を別の用途に転用することができるかどうかの判定は、契約における取引開始日に行う。契約における取引開始日後は、履行義務を著しく変更する契約変更がある場合を除き、当該判定を見直さない。
- 資産を別の用途に転用することができない場合とは、企業が履行するにつれて生じる資産又は価値が増加する資産を別の用途に容易に使用することが契約上制限されている場合、あるいは完成した資産を別の用途に容易に使用することが実務上制約されている場合である([設例7]及び[設例8-2])。
(履行を完了した部分について、対価を収受する強制力のある権利を有していること)
- 11. 会計基準第38項(3)②に定める履行を完了した部分について対価を収受する強制力のある権利を有しているかどうかの判定は、契約条件及び当該契約に関連する法律を考慮して行う。
- 履行を完了した部分について対価を収受する強制力のある権利を有している場合とは、契約期間にわたり、企業が履行しなかったこと以外の理由で顧客又は他の当事者が契約を解約する際に、少なくとも履行を完了した部分についての補償を受ける権利を企業が有している場合である([設例7]及び[設例8])。
- 12. 履行を完了した部分についての補償額は、合理的な利益相当額を含む、現在までに移転した財又はサービスの販売価格相当額である。合理的な利益相当額に対する補償額は、次の(1)又は(2)のいずれかである([設例7])。
- (1) 契約に基づき履行を完了した部分について合理的に見積った利益相当額の一定割合
- (2) 対象となる契約における利益相当額が、同様の契約から通常予想される利益相当額より多額の場合には、当該同様の契約から予想される合理的な利益相当額
- 13. 履行を完了した部分について対価を収受する権利の有無及び当該権利の強制力の有無を判定するにあたっては、契約条件及び当該契約条件を補足する又は覆す可能性のある法令や判例等を考慮する。当該考慮にあたっては、例えば、次の(1)から(3)を評価することが含まれる。
- (1) 当該権利について、契約上明記されていない場合であっても、法令や判例等により確認されるかどうか。
- (2) 判例等により、同様の契約における当該権利について、法的拘束力がないことが示されているかどうか。
- (3) 当該権利を強制しないことを選択する企業の取引慣行があることにより、当該権利は法的に強制力があるとはいえない結果が生じるかどうか。
ただし、同様の契約において企業が当該権利を放棄することを選択する場合であっても、顧客との契約により、履行を完了した部分について対価を収受する権利に引き続き強制力があるときには、当該権利を有していることとなる。
(5)一時点で充足される履行義務
- 14. 会計基準第40項(1)から(5)の支配の移転を検討する際の指標については、次を考慮する。
- (1) 顧客が企業から提供された資産に関する対価を支払う現在の義務を企業に対して負っている場合には、顧客が当該資産の使用を指図し、当該資産からの残りの便益のほとんどすべてを享受する能力を有していることを示す可能性がある。
- (2) 顧客が資産に対する法的所有権を有している場合には、顧客が当該資産の使用を指図し、当該資産からの残りの便益のほとんどすべてを享受する能力又は他の企業が当該便益を享受することを制限する能力を有していることを示す可能性があり、顧客が資産に対する支配を獲得していることを示す可能性がある。
なお、顧客の支払不履行に対して資産の保全を行うためにのみ企業が法的所有権を有している場合には、当該権利は、顧客が資産に対する支配を獲得することを妨げない。 - (3) 顧客が資産を物理的に占有する場合には、顧客が当該資産の使用を指図し、当該資産からの残りの便益のほとんどすべてを享受する能力又は他の企業が当該便益を享受することを制限する能力を有していることを示す可能性がある。
ただし、買戻契約(本適用指針第69項から第74項参照)、委託販売契約(本適用指針第75項及び第76項参照)、請求済未出荷契約(本適用指針第77項から第79項参照)等、物理的占有が資産に対する支配と一致しない場合がある。 - (4) 資産の所有に伴う重大なリスクと経済価値を顧客に移転する場合には、顧客が当該資産の使用を指図し、当該資産からの残りの便益のほとんどすべてを享受する能力を獲得することを示す可能性がある。
- (5) 顧客が資産を検収した場合には、顧客が当該資産の使用を指図し、当該資産からの残りの便益のほとんどすべてを享受する能力を獲得したことを示す可能性がある(本適用指針第80項から第83項参照)。
(6)履行義務の充足に係る進捗度
- 15. 完全な履行義務の充足に向けて財又はサービスに対する支配を顧客に移転する際の企業の履行を描写する進捗度(以下「履行義務の充足に係る進捗度」という。)の適切な見積り(会計基準第41項)の方法には、アウトプット法(本適用指針第17項から第19項参照)とインプット法(本適用指針第20項から第22項参照)があり、その方法を決定するにあたっては、財又はサービスの性質を考慮する。
- 16. 履行義務の充足に係る進捗度の見積り(会計基準第41項)にあたっては、履行義務を充足する際に顧客に支配が移転する財又はサービスの影響を当該進捗度の見積りに反映するが、顧客に支配が移転しない財又はサービスの影響は当該進捗度の見積りに反映しない。
(アウトプット法)
- 17. アウトプット法は、現在までに移転した財又はサービスの顧客にとっての価値を直接的に見積るものであり、現在までに移転した財又はサービスと契約において約束した残りの財又はサービスとの比率に基づき、収益を認識するものである。
- アウトプット法に使用される指標には、現在までに履行を完了した部分の調査、達成した成果の評価、達成したマイルストーン、経過期間、生産単位数、引渡単位数等がある。
- 18. 選択したアウトプットが履行義務の充足に係る進捗度を忠実に描写するような方法で、アウトプット法を適用する。例えば、生産単位数又は引渡単位数に基づくアウトプット法において、企業の履行により顧客が支配する仕掛品又は製品が決算日に生産されているが、当該仕掛品又は製品がアウトプットの見積りに含まれていない場合には、企業の履行を忠実に描写していない。
- 19. 提供したサービスの時間に基づき固定額を請求する契約等、現在までに企業の履行が完了した部分に対する顧客にとっての価値に直接対応する対価の額を顧客から受け取る権利を有している場合には、請求する権利を有している金額で収益を認識することができる([開示例2-1])。
(インプット法)
- 20. インプット法は、履行義務の充足に使用されたインプットが契約における取引開始日から履行義務を完全に充足するまでに予想されるインプット合計に占める割合に基づき、収益を認識するものである。
- インプット法に使用される指標には、消費した資源、発生した労働時間、発生したコスト、経過期間、機械使用時間等がある。企業のインプットが履行期間を通じて均等に費消される場合には、収益を定額で認識することが適切となることがある。
- 21. 財又はサービスに対する支配を顧客に移転する際の企業の履行を描写しないものの影響は、インプット法に反映しない。
- 22. コストに基づくインプット法を使用するにあたっては、次の(1)又は(2)の状況において、履行義務の充足に係る進捗度の見積りを修正するかどうかを判断する。
- (1) 発生したコストが、履行義務の充足に係る進捗度に寄与しない場合
例えば、契約の価格に反映されていない著しく非効率な履行に起因して発生したコストに対応する収益は認識しない。 - (2) 発生したコストが、履行義務の充足に係る進捗度に比例しない場合
インプット法を修正して、発生したコストの額で収益を認識するかどうかを判断する。例えば、契約における取引開始日に次の①から④の要件のすべてが満たされると見込まれる場合には、企業の履行を忠実に描写するために、インプット法に使用される財のコストの額で収益を認識することが適切となる可能性がある([設例9])。 - ① 当該財が別個のものではないこと
- ② 顧客が当該財に関連するサービスを受領するより相当程度前に、顧客が当該財に対する支配を獲得することが見込まれること
- ③ 移転する財のコストの額について、履行義務を完全に充足するために見込まれるコストの総額に占める割合が重要であること
- ④ 企業が当該財を第三者から調達し、当該財の設計及び製造に対する重要な関与を行っていないこと(ただし、第39項から第47項に従うと、企業が本人に該当する場合)
2.収益の額の算定
(1)変動対価
- 23. 会計基準第50項に定める変動対価が含まれる取引の例として、値引き、リベート、返金、インセンティブ、業績に基づく割増金、ペナルティー等の形態により対価の額が変動する場合や、返品権付きの販売等がある。
- 24. 変動対価は、契約条件に示される場合もあれば、次の(1)又は(2)のいずれかの状況によって示される場合もある。
- (1) 企業の取引慣行や公表した方針等に基づき、契約の価格よりも価格が引き下げられるとの期待を顧客が有していること
- (2) 顧客との契約締結時に、価格を引き下げるという企業の意図が存在していること([設例2])
- 25. 変動対価の額に関する不確実性が事後的に解消される際に、解消される時点までに計上された収益の著しい減額が発生しない可能性が高いかどうか(会計基準第54項)を判定するにあたっては、収益が減額される確率及び減額の程度の両方を考慮する。収益が減額される確率又は減額の程度を増大させる可能性のある要因には、例えば、次の(1)から(5)がある([設例4]、[設例11]、[設例12]及び[設例13])。
- (1) 市場の変動性又は第三者の判断若しくは行動等、対価の額が企業の影響力の及ばない要因の影響を非常に受けやすいこと
- (2) 対価の額に関する不確実性が長期間にわたり解消しないと見込まれること
- (3) 類似した種類の契約についての企業の経験が限定的であるか、又は当該経験から予測することが困難であること
- (4) 類似の状況における同様の契約において、幅広く価格を引き下げる慣行又は支払条件を変更する慣行があること
- (5) 発生し得ると考えられる対価の額が多く存在し、かつ、その考えられる金額の幅が広いこと
- 26. 知的財産のライセンスを供与した際に、売上高又は使用量に基づくロイヤルティを受け取る場合、その対価については、第67項の定めを適用する。
(2)契約における重要な金融要素
- 27. 会計基準第56項に従って、金融要素が契約に含まれるかどうか及び金融要素が契約にとって重要であるかどうかを判断するにあたっては、次の(1)及び(2)を含む、関連するすべての事実及び状況を考慮する。
- (1) 約束した対価の額と財又はサービスの現金販売価格との差額(本適用指針第28項(3)参照)
- (2) 約束した財又はサービスを顧客に移転する時点と顧客が支払を行う時点との間の予想される期間の長さ及び関連する市場金利の金融要素に対する影響
- 28. 前項の判断にかかわらず、次の(1)から(3)のいずれかに該当する場合には、顧客との契約は重要な金融要素を含まないものとする。
- (1) 顧客が財又はサービスに対して前払いを行い、顧客の裁量により当該財又はサービスの顧客への移転の時期が決まること
- (2) 対価が売上高に基づくロイヤルティである場合等、顧客が約束した対価のうち相当の金額に変動性があり、当該対価の金額又は時期が、顧客又は企業の支配が実質的に及ばない将来の事象が発生すること又は発生しないことに基づき変動すること
- (3) 約束した対価の額と財又はサービスの現金販売価格との差額(前項(1)参照)が、顧客又は企業に対する信用供与以外の理由(例えば、顧客又は企業が契約上の義務の一部又は全部を適切に完了できないことに対する保全を支払条件により契約の相手方に提供する場合)で生じており、当該差額がその理由に基づく金額となっていること
- 29. 会計基準第57項に従って、重要な金融要素の影響について約束した対価の額を調整するにあたっては、契約における取引開始日において企業と顧客との間で独立した金融取引を行う場合に適用されると見積られる割引率を使用する。契約における取引開始日後は、金利の変動や顧客の信用リスクの評価の変動等について割引率を見直さない。
- 当該割引率は、約束した対価の現在価値が、財又はサービスが顧客に移転される時の現金販売価格と等しくなるような利率である。
(3)顧客に支払われる対価
- 30. 顧客に支払われる対価が顧客から受領する別個の財又はサービスと交換に支払われるものである場合(会計基準第63項)には、当該財又はサービスを仕入先からの購入と同様の方法で処理する。ただし、顧客に支払われる対価が顧客から受領する別個の財又はサービスの時価を超えるときには、当該超過額を取引価格から減額する([設例14])。
- なお、顧客から受領する財又はサービスの時価を合理的に見積ることができない場合には、顧客に支払われる対価の全額を取引価格から減額する。
(4)履行義務への取引価格の配分
- 31. 財又はサービスの独立販売価格を直接観察できない場合(会計基準第69項)の当該独立販売価格の見積方法には、例えば、次の(1)から(3)の方法がある。
- (1) 調整した市場評価アプローチ
財又はサービスが販売される市場を評価して、顧客が支払うと見込まれる価格を見積る方法 - (2) 予想コストに利益相当額を加算するアプローチ
履行義務を充足するために発生するコストを見積り、当該財又はサービスの適切な利益相当額を加算する方法 - (3) 残余アプローチ
契約における取引価格の総額から契約において約束した他の財又はサービスについて観察可能な独立販売価格の合計額を控除して見積る方法。この方法は、次の①又は②のいずれかに該当する場合に限り、使用できる([設例15-2]及び[設例15-3])。 - ① 同一の財又はサービスを異なる顧客に同時又はほぼ同時に幅広い価格帯で販売していること(すなわち、典型的な独立販売価格が過去の取引又は他の観察可能な証拠から識別できないため、販売価格が大きく変動する。)
- ② 当該財又はサービスの価格を企業が未だ設定しておらず、当該財又はサービスを独立して販売したことがないこと(すなわち、販売価格が確定していない。)
- 32. 財又はサービスの独立販売価格を直接観察できない場合(会計基準第69項)に、当該財又はサービスのうち複数の独立販売価格が大きく変動する又は確定していないときには、前項における複数の方法を組み合わせて、独立販売価格を見積る。
- 33. 会計基準第71項に従って、契約における1つ又は複数の履行義務に値引きを配分する場合には、当該値引きを配分した後に、本適用指針第31項(3)における残余アプローチにより、財又はサービスの独立販売価格を見積る([設例15-2])。
3.特定の状況又は取引における取扱い
(1)財又はサービスに対する保証
- 34. 約束した財又はサービスに対する保証が、当該財又はサービスが合意された仕様に従っているという保証のみである場合、当該保証について、企業会計原則注解(注18)に定める引当金として処理する([設例16])。
- 35. 約束した財又はサービスに対する保証又はその一部が、当該財又はサービスが合意された仕様に従っているという保証に加えて、顧客にサービスを提供する保証(当該追加分の保証について、以下「保証サービス」という。)を含む(第37項参照)場合には、保証サービスは履行義務であり、取引価格を財又はサービス及び当該保証サービスに配分する。
- 36. 財又はサービスに対する保証が、当該財又はサービスが合意された仕様に従っているという保証と保証サービスの両方を含む場合で、それぞれを区分して合理的に処理できないときには、両方を一括して単一の履行義務として処理し、取引価格の一部を会計基準第65項から第73項に従って当該履行義務に配分する。
- 37. 財又はサービスに対する保証が、当該財又はサービスが合意された仕様に従っているという保証に加えて、保証サービスを含むかどうかを判断するにあたっては、例えば、次の(1)から(3)の要因を考慮する。
- (1) 財又はサービスに対する保証が法律で要求されているかどうか
財又はサービスに対する保証が法律で要求されている場合には、当該法律は、通常、欠陥のある財又はサービスを購入するリスクから顧客を保護するために存在するものであるため、当該保証は履行義務でないことを示している。 - (2) 財又はサービスに対する保証の対象となる期間の長さ
財又はサービスに対する保証の対象となる期間が長いほど、財又はサービスが合意された仕様に従っているという保証に加えて、保証サービスを顧客に提供している場合が多く、この場合には、当該保証サービスは履行義務である。 - (3) 企業が履行を約束している作業の内容
財又はサービスが合意された仕様に従っているという保証を提供するために、欠陥のある商品又は製品に係る返品の配送サービス等、特定の作業を行う必要がある場合には、当該作業は、通常、履行義務を生じさせない。 - 38. 本適用指針第34項から第37項の定めにかかわらず、顧客が財又はサービスに対する保証を単独で購入するオプションを有している場合(例えば、財又はサービスに対する保証が個別に価格設定される又は交渉される場合)には、当該保証は別個のサービスであり、会計基準第32項から第34項に従って履行義務として識別し、取引価格の一部を会計基準第65項から第73項に従って当該履行義務に配分する。
(2)本人と代理人の区分
- 39. 顧客への財又はサービスの提供に他の当事者が関与している場合において、顧客との約束が当該財又はサービスを企業が自ら提供する履行義務であると判断され、企業が本人に該当するときには、当該財又はサービスの提供と交換に企業が権利を得ると見込む対価の総額を収益として認識する([設例18]、[設例19]、[設例20]及び[設例30])。
- 40. 顧客への財又はサービスの提供に他の当事者が関与している場合において、顧客との約束が当該財又はサービスを当該他の当事者によって提供されるように企業が手配する履行義務であると判断され、企業が代理人に該当するときには、他の当事者により提供されるように手配することと交換に企業が権利を得ると見込む報酬又は手数料の金額(あるいは他の当事者が提供する財又はサービスと交換に受け取る額から当該他の当事者に支払う額を控除した純額)を収益として認識する([設例17]、[設例20]及び[設例30])。
- 41. 本人と代理人の区分の判定は、顧客に約束した特定の財又はサービスのそれぞれについて行われる。特定の財又はサービスとは、顧客に提供する別個の財又はサービス(あるいは別個の財又はサービスの束)(会計基準第34項)である。顧客との契約に複数の特定の財又はサービスが含まれている場合には、企業は、一部の特定の財又はサービスについて本人に該当し、他の特定の財又はサービスについて代理人に該当する可能性がある([設例20])。
- 42. 顧客との約束の性質が、財又はサービスを企業が自ら提供する履行義務であるのか、あるいは財又はサービスが他の当事者によって提供されるように企業が手配する履行義務であるのかを判定するために、次の(1)及び(2)の手順に従って判断を行う([設例17]、[設例18]、[設例19]、[設例20]及び[設例30])。
- (1) 顧客に提供する財又はサービスを識別すること(例えば、顧客に提供する財又はサービスは、他の当事者が提供する財又はサービスに対する権利である可能性がある。)
- (2) 財又はサービスのそれぞれが顧客に提供される前に、当該財又はサービスを企業が支配しているかどうか(会計基準第37項)を判断すること
- 43. 顧客への財又はサービスの提供に他の当事者が関与している場合、財又はサービスが顧客に提供される前に企業が当該財又はサービスを支配しているときには、企業は本人に該当する。他の当事者が提供する財又はサービスが顧客に提供される前に企業が当該財又はサービスを支配していないときには、企業は代理人に該当する。
- 44. 顧客への財又はサービスの提供に他の当事者が関与している場合、次の(1)から(3)のいずれかを企業が支配しているときには、企業は本人に該当する。
- (1) 企業が他の当事者から受領し、その後に顧客に移転する財又は他の資産([設例19])
- (2) 他の当事者が履行するサービスに対する権利
他の当事者が履行するサービスに対する権利を企業が獲得することにより、企業が当該他の当事者に顧客にサービスを提供するよう指図する能力を有する場合には、企業は当該権利を支配している([設例18]及び[設例20])。 - (3) 他の当事者から受領した財又はサービスで、企業が顧客に財又はサービスを提供する際に、他の財又はサービスと統合させるもの
例えば、他の当事者から受領した財又はサービスを、顧客に提供する財又はサービスに統合する重要なサービス(第6項(1)参照)を企業が提供する場合には、企業は、他の当事者から受領した財又はサービスを顧客に提供する前に支配している。 - 45. 企業が財に対する法的所有権を顧客に移転する前に獲得したとしても、当該法的所有権が瞬時に顧客に移転される場合には、企業は必ずしも当該財を支配していることにはならない([設例30])。
- 46. 財又はサービスを提供する履行義務を企業が自ら充足する場合のみならず、企業に代わり外注先等の他の当事者に履行義務の一部又は全部を充足させる場合も、企業が本人に該当する可能性がある。
- 47. 第43項における企業が本人に該当することの評価に際して、企業が財又はサービスを顧客に提供する前に支配しているかどうかを判定するにあたっては、例えば、次の(1)から(3)の指標を考慮する([設例17]、[設例18]、[設例19]、[設例20]及び[設例30])。
- (1) 企業が当該財又はサービスを提供するという約束の履行に対して主たる責任を有していること。これには、通常、財又はサービスの受入可能性に対する責任(例えば、財又はサービスが顧客の仕様を満たしていることについての主たる責任)が含まれる。
企業が財又はサービスを提供するという約束の履行に対して主たる責任を有している場合には、当該財又はサービスの提供に関与する他の当事者が代理人として行動していることを示す可能性がある。 - (2) 当該財又はサービスが顧客に提供される前、あるいは当該財又はサービスに対する支配が顧客に移転した後(例えば、顧客が返品権を有している場合)において、企業が在庫リスクを有していること
顧客との契約を獲得する前に、企業が財又はサービスを獲得する場合あるいは獲得することを約束する場合には、当該財又はサービスが顧客に提供される前に、企業が当該財又はサービスの使用を指図し、当該財又はサービスからの残りの便益のほとんどすべてを享受する能力を有していることを示す可能性がある。 - (3) 当該財又はサービスの価格の設定において企業が裁量権を有していること
財又はサービスに対して顧客が支払う価格を企業が設定している場合には、企業が当該財又はサービスの使用を指図し、当該財又はサービスからの残りの便益のほとんどすべてを享受する能力を有していることを示す可能性がある。
ただし、代理人が価格の設定における裁量権を有している場合もある。例えば、代理人は、財又はサービスが他の当事者によって提供されるように手配するサービスから追加的な収益を生み出すために、価格の設定について一定の裁量権を有している場合がある。
(3)追加の財又はサービスを取得するオプションの付与
- 48. 顧客との契約において、既存の契約に加えて追加の財又はサービスを取得するオプションを顧客に付与する場合には、当該オプションが当該契約を締結しなければ顧客が受け取れない重要な権利を顧客に提供するときにのみ、当該オプションから履行義務が生じる。この場合には、将来の財又はサービスが移転する時、あるいは当該オプションが消滅する時に収益を認識する。
- 重要な権利を顧客に提供する場合とは、例えば、追加の財又はサービスを取得するオプションにより、顧客が属する地域や市場における通常の値引きの範囲を超える値引きを顧客に提供する場合をいう([設例21]、[設例22]及び[設例31])。
- 49. 顧客が追加の財又はサービスを取得するオプションが、当該財又はサービスの独立販売価格を反映する価格で取得するものである場合には、顧客に重要な権利を提供するものではない。この場合には、既存の契約の取引価格を追加の財又はサービスに対するオプションに配分せず、顧客が当該オプションを行使した時に、当該追加の財又はサービスについて、会計基準に従って収益を認識する。
- 50. 履行義務への取引価格の配分は、独立販売価格の比率で行うこととされており(会計基準第66項)、追加の財又はサービスを取得するオプションの独立販売価格を直接観察できない場合には、オプションの行使時に顧客が得られるであろう値引きについて、次の(1)及び(2)の要素を反映して、当該オプションの独立販売価格を見積る([設例22])。
- (1) 顧客がオプションを行使しなくても通常受けられる値引き
- (2) オプションが行使される可能性
- 51. 契約更新に係るオプション等、顧客が将来において財又はサービスを取得する重要な権利を有している場合で、当該財又はサービスが契約当初の財又はサービスと類似し、かつ、当初の契約条件に従って提供される場合は、前項の定めに基づいたオプションの独立販売価格を見積らず、提供されると見込まれる財又はサービスの予想される対価に基づき、取引価格を当該提供されると見込まれる財又はサービスに配分することができる([設例21])。
(4)顧客により行使されない権利(非行使部分)
- 52. 会計基準第78項に従って、将来において財又はサービスを移転する(あるいは移転するための準備を行う)履行義務については、顧客から支払を受けた時に、支払を受けた金額で契約負債を認識する。財又はサービスを移転し、履行義務を充足した時に、当該契約負債の消滅を認識し、収益を認識する。
- 53. 顧客から企業に返金が不要な前払いがなされた場合、将来において企業から財又はサービスを受け取る権利が顧客に付与され、企業は当該財又はサービスを移転するための準備を行う義務を負うが、顧客は当該権利のすべては行使しない場合がある。本適用指針においては、顧客により行使されない権利を「非行使部分」という。
- 54. 契約負債における非行使部分について、企業が将来において権利を得ると見込む場合には、当該非行使部分の金額について、顧客による権利行使のパターンと比例的に収益を認識する。
- 契約負債における非行使部分について、企業が将来において権利を得ると見込まない場合には、当該非行使部分の金額について、顧客が残りの権利を行使する可能性が極めて低くなった時に収益を認識する。
- 55. 契約負債における非行使部分について、企業が将来において権利を得ると見込むかどうかを判定するにあたっては、会計基準第54項及び第55項の定めを考慮する。
- 56. 顧客により行使されていない権利に係る顧客から受け取った対価について、法律により他の当事者への支払が要求される場合には、収益ではなく負債を認識する。
(5)返金が不要な契約における取引開始日の顧客からの支払
- 57. 契約における取引開始日又はその前後に、顧客から返金が不要な支払を受ける場合には、履行義務を識別するために、当該支払が約束した財又はサービスの移転を生じさせるものか、あるいは将来の財又はサービスの移転に対するものかどうかを判断する。
- 58. 前項の返金が不要な顧客からの支払が、約束した財又はサービスの移転を生じさせるものでない場合には、将来の財又はサービスの移転を生じさせるものとして、当該将来の財又はサービスを提供する時に収益を認識する。ただし、契約更新オプションを顧客に付与する場合において、当該オプションが重要な権利を顧客に提供するもの(第48項参照)に該当するときは、当該支払について、契約更新される期間を考慮して収益を認識する。
- 59. 第57項の返金が不要な顧客からの支払が、約束した財又はサービスの移転を生じさせるものである場合には、当該財又はサービスの移転を独立した履行義務として処理するかどうかを判断する。
- 60. 契約締結活動(例えば、契約のセットアップに関する活動)又は契約管理活動で発生するコストの一部に充当するために、返金が不要な支払を顧客に要求する場合がある。当該活動が履行義務ではない(第4項参照)場合、履行義務の充足に係る進捗度をコストに基づくインプット法により見積る(第22項参照)にあたっては、当該活動及び関連するコストの影響を除く。
(6)ライセンスの供与
- 61. ライセンスは、企業の知的財産に対する顧客の権利を定めるものである。ライセンスを供与する約束が、顧客との契約における他の財又はサービスを移転する約束と別個のものでない場合には、ライセンスを供与する約束と当該他の財又はサービスを移転する約束の両方を一括して単一の履行義務として処理し、会計基準第35項から第40項の定めに従って、一定の期間にわたり充足される履行義務であるか、又は一時点で充足される履行義務であるかを判定する。
- 62. ライセンスを供与する約束が、顧客との契約における他の財又はサービスを移転する約束と別個のものであり、当該約束が独立した履行義務である場合には、ライセンスを顧客に供与する際の企業の約束の性質が、顧客に次の(1)又は(2)のいずれを提供するものかを判定する(第66項参照)。
- (1) ライセンス期間にわたり存在する企業の知的財産にアクセスする権利([設例25])
- (2) ライセンスが供与される時点で存在する企業の知的財産を使用する権利([設例23]及び[設例24-2])
- ライセンスを供与する約束については、ライセンスを供与する際の企業の約束の性質が(1)である場合には、一定の期間にわたり充足される履行義務として処理する。企業の約束の性質が(2)である場合には、一時点で充足される履行義務として処理し、顧客がライセンスを使用してライセンスからの便益を享受できるようになった時点で収益を認識する。
(企業の約束の性質の判定)
- 63. ライセンスを供与する際の企業の約束の性質は、次の(1)から(3)の要件のすべてに該当する場合には、顧客が権利を有している知的財産の形態、機能性又は価値が継続的に変化しており、前項(1)に定める企業の知的財産にアクセスする権利を提供するものである([設例23]、[設例24-2]及び[設例25])。
- (1) ライセンスにより顧客が権利を有している知的財産に著しく影響を与える活動を企業が行うことが、契約により定められている又は顧客により合理的に期待されていること(第65項参照)
- (2) 顧客が権利を有している知的財産に著しく影響を与える企業の活動により、顧客が直接的に影響を受けること
- (3) 顧客が権利を有している知的財産に著しく影響を与える企業の活動の結果として、企業の活動が生じたとしても、財又はサービスが顧客に移転しないこと
- 64. 前項のいずれかに該当しない場合には、ライセンスを供与する際の企業の約束の性質は、第62項(2)に定める企業の知的財産を使用する権利を提供するものである。
- 65. 次の(1)又は(2)のいずれかに該当する場合には、企業の活動は、第63項(1)に定める顧客が権利を有している知的財産に著しく影響を与えるものとする([設例25])。
- (1) 当該企業の活動が、知的財産の形態(例えば、デザイン又はコンテンツ)又は機能性(例えば、機能を実行する能力)を著しく変化させると見込まれること
- (2) 顧客が知的財産からの便益を享受する能力が、当該企業の活動により得られること又は当該企業の活動に依存していること(例えば、ブランドからの便益は、知的財産の価値を補強する又は維持する企業の継続的活動から得られるかあるいは当該活動に依存していることが多い。)
- 66. 第62項に定めるライセンスを供与する際の企業の約束の性質を判定するにあたっては、次の(1)及び(2)の要因を考慮しない。
- (1) 時期、地域又は用途の制限
- (2) 企業が知的財産に対する有効な特許を有しており、当該特許の不正使用を防止するために企業が提供する保証
(売上高又は使用量に基づくロイヤルティ)
- 67. 知的財産のライセンス供与に対して受け取る売上高又は使用量に基づくロイヤルティが知的財産のライセンスのみに関連している場合、あるいは当該ロイヤルティにおいて知的財産のライセンスが支配的な項目である場合には、会計基準第54項及び第55項の定めを適用せず、次の(1)又は(2)のいずれか遅い方で、当該売上高又は使用量に基づくロイヤルティについて収益を認識する([設例25])。
- (1) 知的財産のライセンスに関連して顧客が売上高を計上する時又は顧客が知的財産のライセンスを使用する時
- (2) 売上高又は使用量に基づくロイヤルティの一部又は全部が配分されている履行義務が充足(あるいは部分的に充足)される時
- 68. 売上高又は使用量に基づくロイヤルティについて、前項に該当しない場合には、会計基準第50項から第55項の定めを適用する。
(7)買戻契約
(企業が商品又は製品を買い戻す義務(先渡取引)あるいは企業が商品又は製品を買い戻す権利(コール・オプション))
- 69. 企業が商品又は製品を買い戻す義務(先渡取引)あるいは企業が商品又は製品を買い戻す権利(コール・オプション)を有している場合には、顧客は当該商品又は製品に対する支配を獲得していない。
- 商品又は製品の買戻価格が当初の販売価格より低い場合には、当該契約を企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」(以下「リース会計基準」という。)に従ってリースとして処理する。ただし、契約に、企業が販売した商品又は製品の当該企業による顧客からのリース(以下「リースバック」という。)が含まれる場合、当該契約を金融取引として処理する。
- 商品又は製品の買戻価格が当初の販売価格以上の場合には、当該契約を金融取引として処理する。
- 買戻価格を販売価格と比較する際には、金利相当分の影響を考慮する([設例26-1])。
- 70. 買戻契約を金融取引として処理する場合には、商品又は製品を引き続き認識するとともに、顧客から受け取った対価について金融負債を認識する。顧客から受け取る対価の額と顧客に支払う対価の額との差額については、金利(あるいは加工コスト又は保管コスト等)として認識する。
- 71. オプションが未行使のまま消滅する場合には、コール・オプションに関連して認識した負債の消滅を認識し、収益を認識する。
(企業が顧客の要求により商品又は製品を買い戻す義務(プット・オプション))
- 72. 企業が顧客の要求により商品又は製品を当初の販売価格より低い金額で買い戻す義務(プット・オプション)を有している場合には、契約における取引開始日に、顧客が当該プット・オプションを行使する重要な経済的インセンティブを有しているかどうかを判定する。
- 顧客が当該プット・オプションを行使する重要な経済的インセンティブを有している場合には、当該契約をリース会計基準に従ってリースとして処理する。ただし、当該契約にリースバックが含まれる場合、当該契約を金融取引として処理する。
- 重要な経済的インセンティブを有していない場合には、当該契約を返品権付きの販売(本適用指針第84項から第89項参照)として処理する。
- 重要な経済的インセンティブを有しているかどうかを判定するにあたっては、買戻価格と買戻日時点での商品又は製品の予想される時価との関係やプット・オプションが消滅するまでの期間等を考慮する。例えば、買戻価格が商品又は製品の時価を大幅に上回ると見込まれる場合には、顧客がプット・オプションを行使する重要な経済的インセンティブを有していることを示す可能性がある。
- 買戻価格を販売価格と比較する際には、金利相当分の影響を考慮する([設例26-2])。
- 73. 商品又は製品の買戻価格が当初の販売価格以上であり、かつ、当該商品又は製品の予想される時価よりも高い場合には、当該契約を金融取引として、第70項と同様に処理する。
- 商品又は製品の買戻価格が当初の販売価格以上で、当該商品又は製品の予想される時価以下であり、かつ、顧客がプット・オプションを行使する重要な経済的インセンティブを有していない場合には、当該契約を返品権付きの販売(第84項から第89項参照)として処理する。
- 買戻価格を販売価格と比較する際には、金利相当分の影響を考慮する。
- 74. オプションが未行使のまま消滅する場合には、プット・オプションに関連して認識した負債の消滅を認識し、収益を認識する。
(8)委託販売契約
- 75. 商品又は製品を最終顧客に販売するために、販売業者等の他の当事者に引き渡す場合には、当該他の当事者がその時点で当該商品又は製品の支配を獲得したかどうかを判定する。当該他の当事者が当該商品又は製品に対する支配を獲得していない場合には、委託販売契約として他の当事者が商品又は製品を保有している可能性があり、その場合、他の当事者への商品又は製品の引渡時に収益を認識しない。
- 76. 契約が委託販売契約であることを示す指標には、例えば、次の(1)から(3)がある。
- (1) 販売業者等が商品又は製品を顧客に販売するまで、あるいは所定の期間が満了するまで、企業が商品又は製品を支配していること
- (2) 企業が、商品又は製品の返還を要求することあるいは第三者に商品又は製品を販売することができること
- (3) 販売業者等が、商品又は製品の対価を支払う無条件の義務を有していないこと(ただし、販売業者等は預け金の支払を求められる場合がある。)
(9)請求済未出荷契約
- 77. 請求済未出荷契約とは、企業が商品又は製品について顧客に対価を請求したが、将来において顧客に移転するまで企業が当該商品又は製品の物理的占有を保持する契約である。
- 78. 商品又は製品を移転する履行義務をいつ充足したかを判定するにあたっては、顧客が当該商品又は製品の支配をいつ獲得したかを考慮する。
- 79. 請求済未出荷契約においては、会計基準第39項及び第40項の定めを適用したうえで、次の(1)から(4)の要件のすべてを満たす場合には、顧客が商品又は製品の支配を獲得する。
- (1) 請求済未出荷契約を締結した合理的な理由があること(例えば、顧客からの要望による当該契約の締結)
- (2) 当該商品又は製品が、顧客に属するものとして区分して識別されていること
- (3) 当該商品又は製品について、顧客に対して物理的に移転する準備が整っていること
- (4) 当該商品又は製品を使用する能力あるいは他の顧客に振り向ける能力を企業が有していないこと
(10)顧客による検収
- 80. 顧客による財又はサービスの検収は、顧客が当該財又はサービスの支配を獲得したことを示す可能性がある。
- 契約において合意された仕様に従っていることにより財又はサービスに対する支配が顧客に移転されたことを客観的に判断できる場合には、顧客の検収は、形式的なものであり、顧客による財又はサービスに対する支配の時点に関する判断に影響を与えない。例えば、顧客の検収が、所定の大きさや重量を確認するものである場合には、それらの大きさや重量は顧客の検収前に企業が判断できる。
- 81. 顧客の検収前に収益が認識される場合には、他の残存履行義務があるかどうかを判定する。
- 82. 顧客に移転する財又はサービスが契約において合意された仕様に従っていると客観的に判断することができない場合には、顧客の検収が完了するまで、顧客は当該財又はサービスに対する支配を獲得しない。
- 83. 商品又は製品を顧客に試用目的で引き渡し、試用期間が終了するまで顧客が対価の支払を約束していない場合、顧客が商品又は製品を検収するまであるいは試用期間が終了するまで、当該商品又は製品に対する支配は顧客に移転しない。
(11)返品権付きの販売
- 84. 顧客との契約においては、商品又は製品の支配を顧客に移転するとともに、当該商品又は製品を返品して、次の(1)から(3)を受ける権利を顧客に付与する場合がある。
- (1) 顧客が支払った対価の全額又は一部の返金
- (2) 顧客が企業に対して負う又は負う予定の金額に適用できる値引き
- (3) 別の商品又は製品への交換
- 85. 返品権付きの商品又は製品(及び返金条件付きで提供される一部のサービス)を販売した場合は、次の(1)から(3)のすべてについて処理する([設例11])。
- (1) 企業が権利を得ると見込む対価の額((2)の返品されると見込まれる商品又は製品の対価を除く。)で収益を認識する。
- (2) 返品されると見込まれる商品又は製品については、収益を認識せず、当該商品又は製品について受け取った又は受け取る対価の額で返金負債を認識する。
- (3) 返金負債の決済時に顧客から商品又は製品を回収する権利について資産を認識する。
- 86. 前項における企業が権利を得ると見込む対価の額を算定するにあたっては、会計基準第47項から第64項の定めを適用する。
- 87. 商品又は製品の販売後、各決算日に、企業が権利を得ると見込む対価及び返金負債の額を見直し、認識した収益の額を変更する。
- 88. 返金負債の決済時に顧客から商品又は製品を回収する権利として認識した資産の額は、当該商品又は製品の従前の帳簿価額から予想される回収費用(当該商品又は製品の価値の潜在的な下落の見積額を含む。)を控除し、各決算日に当該控除した額を見直す。
- 89. 正常品と交換するために欠陥のある商品又は製品を顧客が返品することができる契約は、第34項から第38項に従って処理する。
4.工事契約等から損失が見込まれる場合の取扱い
- 90. 工事契約について、工事原価総額等(工事原価総額のほか、販売直接経費がある場合にはその見積額を含めた額)が工事収益総額を超過する可能性が高く、かつ、その金額を合理的に見積ることができる場合には、その超過すると見込まれる額(以下「工事損失」という。)のうち、当該工事契約に関して既に計上された損益の額を控除した残額を、工事損失が見込まれた期の損失として処理し、工事損失引当金を計上する([設例32])。
- 91. 受注制作のソフトウェアについても、工事契約に準じて前項の定めを適用する。
5.重要性等に関する代替的な取扱い
(1)契約変更
(重要性が乏しい場合の取扱い)
- 92. 会計基準第30項及び第31項の定めにかかわらず、契約変更による財又はサービスの追加が既存の契約内容に照らして重要性が乏しい場合には、当該契約変更について処理するにあたり、会計基準第30項又は第31項(1)若しくは(2)のいずれの方法も適用することができる。
(2)履行義務の識別
(顧客との契約の観点で重要性が乏しい場合の取扱い)
- 93. 会計基準第32項の定めにかかわらず、約束した財又はサービスが、顧客との契約の観点で重要性が乏しい場合には、当該約束が履行義務であるのかについて評価しないことができる。顧客との契約の観点で重要性が乏しいかどうかを判定するにあたっては、当該約束した財又はサービスの定量的及び定性的な性質を考慮し、契約全体における当該約束した財又はサービスの相対的な重要性を検討する。
(出荷及び配送活動に関する会計処理の選択)
- 94. 会計基準第32項の定めにかかわらず、顧客が商品又は製品に対する支配を獲得した後に行う出荷及び配送活動については、商品又は製品を移転する約束を履行するための活動(本適用指針第4項参照)として処理し、履行義務として識別しないことができる。
(3)一定の期間にわたり充足される履行義務
(期間がごく短い工事契約及び受注制作のソフトウェア)
- 95. 会計基準第38項の定めにかかわらず、工事契約について、契約における取引開始日から完全に履行義務を充足すると見込まれる時点までの期間がごく短い場合には、一定の期間にわたり収益を認識せず、完全に履行義務を充足した時点で収益を認識することができる。
- 96. 受注制作のソフトウェアについても、工事契約に準じて前項の定めを適用することができる。
(船舶による運送サービス)
- 97. 会計基準第32項及び第41項の定めにかかわらず、一定の期間にわたり収益を認識する船舶による運送サービスについて、一航海の船舶が発港地を出発してから帰港地に到着するまでの期間が通常の期間(運送サービスの履行に伴う空船廻航期間を含み、運送サービスの履行を目的としない船舶の移動又は待機期間を除く。)である場合には、複数の顧客の貨物を積載する船舶の一航海を単一の履行義務としたうえで、当該期間にわたり収益を認識することができる。
(4)一時点で充足される履行義務
(出荷基準等の取扱い)
- 98. 会計基準第39項及び第40項の定めにかかわらず、商品又は製品の国内の販売において、出荷時から当該商品又は製品の支配が顧客に移転される時(会計基準第35項から第37項、第39項及び第40項の定めに従って決定される時点、例えば顧客による検収時)までの期間が通常の期間である場合には、出荷時から当該商品又は製品の支配が顧客に移転される時までの間の一時点(例えば、出荷時や着荷時)に収益を認識することができる。
- 商品又は製品の出荷時から当該商品又は製品の支配が顧客に移転される時までの期間が通常の期間である場合とは、当該期間が国内における出荷及び配送に要する日数に照らして取引慣行ごとに合理的と考えられる日数である場合をいう。
(5)履行義務の充足に係る進捗度
(契約の初期段階における原価回収基準の取扱い)
- 99. 会計基準第45項の定めにかかわらず、一定の期間にわたり充足される履行義務について、契約の初期段階において、履行義務の充足に係る進捗度を合理的に見積ることができない場合には、当該契約の初期段階に収益を認識せず、当該進捗度を合理的に見積ることができる時から収益を認識することができる。
(6)履行義務への取引価格の配分
(重要性が乏しい財又はサービスに対する残余アプローチの使用)
- 100. 第31項の定めにかかわらず、履行義務の基礎となる財又はサービスの独立販売価格を直接観察できない場合で、当該財又はサービスが、契約における他の財又はサービスに付随的なものであり、重要性が乏しいと認められるときには、当該財又はサービスの独立販売価格の見積方法として、第31項(3)における残余アプローチを使用することができる。
(7)契約の結合、履行義務の識別及び独立販売価格に基づく取引価格の配分
(契約に基づく収益認識の単位及び取引価格の配分)
- 101. 会計基準第27項、第32項及び第66項の定めにかかわらず、次の(1)及び(2)のいずれも満たす場合には、複数の契約を結合せず、個々の契約において定められている顧客に移転する財又はサービスの内容を履行義務とみなし、個々の契約において定められている当該財又はサービスの金額に従って収益を認識することができる。
- (1) 顧客との個々の契約が当事者間で合意された取引の実態を反映する実質的な取引の単位であると認められること
- (2) 顧客との個々の契約における財又はサービスの金額が合理的に定められていることにより、当該金額が独立販売価格と著しく異ならないと認められること
(工事契約及び受注制作のソフトウェアの収益認識の単位)
- 102. 会計基準第27項及び第32項の定めにかかわらず、工事契約について、当事者間で合意された実質的な取引の単位を反映するように複数の契約(異なる顧客と締結した複数の契約や異なる時点に締結した複数の契約を含む。)を結合した際の収益認識の時期及び金額と当該複数の契約について会計基準第27項及び第32項の定めに基づく収益認識の時期及び金額との差異に重要性が乏しいと認められる場合には、当該複数の契約を結合し、単一の履行義務として識別することができる。
- 103. 受注制作のソフトウェアについても、工事契約に準じて前項の定めを適用することができる。
(8)その他の個別事項
(電気事業及びガス事業における毎月の検針による使用量に基づく収益認識)
- 103-2. 電気事業及びガス事業において、毎月、月末以外の日に実施する検針による顧客の使用量に基づき顧客に対する請求が行われる場合、会計基準第35項の定めに従った収益を認識するために、決算月に実施した検針の日から決算日までに生じた収益を見積る必要がある。
- 当該収益の見積りは、通常、同種の契約をまとめた上で、使用量又は単価(若しくはその両方)を見積って行われるものと考えられる。当該使用量の見積りについては、決算月の月初から月末までの送配量を基礎として、その月の日数に対する未検針日数の割合に基づき日数按分により見積ることができる。また、当該単価の見積りについては、使用量等に応じた単価ではなく、決算月の前年同月の平均単価を基礎とすることができる。
(有償支給取引)
- 104. 企業が、対価と交換に原材料等(以下「支給品」という。)を外部(以下「支給先」という。)に譲渡し、支給先における加工後、当該支給先から当該支給品(加工された製品に組み込まれている場合を含む。以下同じ。)を購入する場合がある(これら一連の取引は、一般的に有償支給取引と呼ばれている。)。有償支給取引に係る処理にあたっては、企業が当該支給品を買い戻す義務を負っているか否かを判断する必要がある。
- 有償支給取引において、企業が支給品を買い戻す義務を負っていない場合、企業は当該支給品の消滅を認識することとなるが、当該支給品の譲渡に係る収益は認識しない。
- 一方、有償支給取引において、企業が支給品を買い戻す義務を負っている場合、企業は支給品の譲渡に係る収益を認識せず、当該支給品の消滅も認識しないこととなるが、個別財務諸表においては、支給品の譲渡時に当該支給品の消滅を認識することができる。なお、その場合であっても、当該支給品の譲渡に係る収益は認識しない。
Ⅳ.開 示
1.表 示
- 104-2. 会計基準第78-2項は、顧客との契約から生じる収益を、適切な科目をもって損益計算書に表示することとしている。顧客との契約から生じる収益については、例えば、売上高、売上収益、営業収益等として表示する。
- 104-3. 会計基準第79項は、契約資産、契約負債又は顧客との契約から生じた債権を、適切な科目をもって貸借対照表に表示することとしている。契約資産については、例えば、契約資産、工事未収入金等として表示する。契約負債については、例えば、契約負債、前受金等として表示する。顧客との契約から生じた債権については、例えば、売掛金、営業債権等として表示する。
- 105. 返金負債の決済時に顧客から商品又は製品を回収する権利として認識した資産(第85項(3)参照)は、返金負債と相殺表示しない([設例11])。
- 106. 第90項に従って計上された工事損失引当金は、貸借対照表の流動負債の区分に、その内容を示す科目をもって表示する。また、当該工事損失引当金の繰入額は、損益計算書の売上原価として表示する。なお、同一の工事契約に関する棚卸資産と工事損失引当金がともに計上されることとなる場合には、貸借対照表の表示上、相殺して表示することができる。
- 106-2. 受注制作のソフトウェアについても、工事契約に準じて前項の定めを適用する。
2.注記事項
(1)収益の分解情報
- 106-3. 会計基準第80-10項では、当期に認識した顧客との契約から生じる収益を、収益及びキャッシュ・フローの性質、金額、時期及び不確実性に影響を及ぼす主要な要因に基づく区分に分解して注記することとしている。収益の分解情報の注記において、収益を分解する程度については、企業の実態に即した事実及び状況に応じて決定する。その結果、複数の区分に分解する必要がある企業もあれば、単一の区分のみで足りる企業もある。
- 106-4. 収益の分解に用いる区分を検討する際に、次のような情報において、企業の収益に関する情報が他の目的でどのように開示されているのかを考慮する。
- (1) 財務諸表外で開示している情報(例えば、決算発表資料、年次報告書、投資家向けの説明資料)
- (2) 最高経営意思決定機関が事業セグメントに関する業績評価を行うために定期的に検討している情報
- (3) 他の情報のうち、上記(1)及び(2)で識別された情報に類似し、企業又は企業の財務諸表利用者が、企業の資源配分の意思決定又は業績評価を行うために使用する情報
- 106-5. 収益を分解するための区分の例として次のものが挙げられる。
- (1) 財又はサービスの種類(例えば、主要な製品ライン)
- (2) 地理的区分(例えば、国又は地域)
- (3) 市場又は顧客の種類(例えば、政府と政府以外の顧客)
- (4) 契約の種類(例えば、固定価格と実費精算契約)
- (5) 契約期間(例えば、短期契約と長期契約)
- (6) 財又はサービスの移転の時期(例えば、一時点で顧客に移転される財又はサービスから生じる収益と一定の期間にわたり移転される財又はサービスから生じる収益)
- (7) 販売経路(例えば、消費者に直接販売される財と仲介業者を通じて販売される財)
(2)履行義務の充足時点に関する情報
- 106-6. 会計基準第80-18項(1)に掲げる履行義務を充足する通常の時点(収益を認識する通常の時点)には、例えば、商品又は製品の出荷時、引渡時、サービスの提供に応じて、あるいはサービスの完了時が挙げられる。これには、請求済未出荷契約において履行義務がいつ充足されるのかも含まれる。
- 106-7. 会計基準第80-18項(2)に掲げる収益を認識するために使用した方法を注記するにあたっては、例えば、使用したアウトプット法(本適用指針第17項から第19項参照)又はインプット法(本適用指針第20項から第22項参照)の記述及び当該方法をどのように適用しているのかの記述を行う。
(3)契約資産及び契約負債の残高の重要な変動
- 106-8. 会計基準第80-20項(3)では、当期中の契約資産及び契約負債の残高の重要な変動について注記することとしている。契約資産及び契約負債の残高の変動の例として、次のものが挙げられる。
- (1) 企業結合による変動
- (2) 進捗度の見積りの変更、取引価格の見積りの見直し(取引価格に含まれる変動対価の額が制限されるのかどうかの評価の変更を含む。)又は契約変更等による収益に対する累積的な影響に基づく修正のうち、対応する契約資産又は契約負債に影響を与えるもの
- (3) 対価に対する権利が無条件となるまでの通常の期間の変化
- (4) 履行義務が充足されるまでの通常の期間の変化
- なお、当期中の契約資産及び契約負債の残高の重要な変動を注記するにあたり、必ずしも定量的情報を含める必要はない。
(4)工事契約等から損失が見込まれる場合
- 106-9. 第90項の工事損失に関しては、次の事項を注記する。
- (1) 当期の工事損失引当金繰入額
- (2) 同一の工事契約に関する棚卸資産と工事損失引当金がともに計上されることとなる場合には、次の①又は②のいずれかの額(該当する工事契約が複数存在する場合には、その合計額)
- ① 棚卸資産と工事損失引当金を相殺せずに両建てで表示した場合
その旨及び当該棚卸資産の額のうち工事損失引当金に対応する額 - ② 棚卸資産と工事損失引当金を相殺して表示した場合
その旨及び相殺表示した棚卸資産の額 - 106-10. 受注制作のソフトウェアについても、工事契約に準じて前項の定めを適用する。
Ⅴ.適用時期等
- 107. 2021年改正の本適用指針(以下「2021年改正適用指針」という。)の適用時期等は、2020年改正の会計基準(以下「2020年改正会計基準」という。)と同様とする。
- 107-2. 2024年改正の本適用指針(以下「2024年改正適用指針」という。)の適用時期は、2024年に公表されたリース会計基準の適用時期と同様とする。
Ⅵ.議 決
- 108. 2018年公表の本適用指針(以下「2018年適用指針」という。)は、第381回企業会計基準委員会に出席した委員13名全員の賛成により承認された。
- 108-2. 2020年改正の本適用指針(以下「2020年改正適用指針」という。)は、第428回企業会計基準委員会に出席した委員14名全員の賛成により承認された。
- 108-3. 2021年改正適用指針は、第454回企業会計基準委員会に出席した委員14名全員の賛成により承認された。
- 108-4. 2024年改正適用指針は、第532回企業会計基準委員会に出席した委員13名全員の賛成により承認された。
結論の背景
経 緯
- 109. 当委員会は、収益認識に関する包括的な会計基準を定めるため、2018年(平成30年)3月に企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準」を公表し、合わせて2018年適用指針を公表した。
- 109-2. 2020年改正適用指針では、2020年改正会計基準公表に伴う所要の改正を行った。
- 109-3. 2021年改正適用指針では、第176-2項に記載した要望に対応し、代替的な取扱いの追加を行った。2021年改正適用指針は、2020年12月に公表した企業会計基準適用指針公開草案第70号(企業会計基準適用指針第30号の改正案)「収益認識に関する会計基準の適用指針(案)」に対して寄せられた意見を踏まえて検討を行い、公表するに至ったものである。
- 109-4. 2024年改正適用指針では、2024年のリース会計基準の公表に伴い、買戻契約の取扱いに関する改正を行った。
- 110. 本適用指針の会計処理については、会計基準第100項に記載のとおり、次の構成としている。
- (1) 基本的にIFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」(以下「IFRS第15号」という。)の会計基準の内容を基礎とした定め
本適用指針のうち第4項から第89項 - (2) 追加的に定めた代替的な取扱い
本適用指針のうち第92項から第104項
Ⅰ.会計処理
(IFRS第15号の定め及び結論の根拠を基礎としたもの)
- 111. 前項に記載したとおり、本適用指針の本文のうち、会計処理に関する第4項から第89項の定めは、基本的にIFRS第15号における会計基準及びガイダンスの内容を基礎としており、結論の背景についても、第112項から第161項は、IFRS第15号における会計基準、ガイダンス及び結論の根拠を基礎としている。
1.収益の認識基準
(1)別個の財又はサービス
- 112. 財又はサービスを顧客に移転する約束が、契約の観点において別個のものとなるかどうか(会計基準第34項(2))の判断においては、当該財又はサービスを移転する義務の履行に係るリスクが、他の約束の履行に係るリスクと区分できるかどうかが判断の基礎となる。財又はサービスを顧客に移転する複数の約束が区分して識別できないことを示す要因(本適用指針第6項(1)から(3)参照)は、いずれも当該基礎に基づくものであり、当該要因は相互に排他的なものではなく、そのうちの複数が該当する可能性もある。
- 113. 財又はサービスをインプットとして使用し、契約において約束している他の財又はサービスとともに、顧客が契約した結合後のアウトプットである財又はサービスの束に統合する重要なサービス(第6項(1)参照)とは、顧客に対する企業の約束の相当部分が、個々の財又はサービスを結合後のアウトプットに確実に組み込むことであり、個々の財又はサービスの移転に係るリスクを区分できないことを示している。そのため、例えば、著しい修正を伴わないソフトウェアの単純なインストール・サービス等は、重要な統合サービスには該当しない。
- また、重要な統合サービスによって生じるアウトプットは、必ずしも単一のアウトプットとなるわけではなく、複数の単位を有する場合がある。例えば、新製品の開発のために複数の試作品を実験結果に応じて設計を見直しつつ製造する契約においては、アウトプットである試作品は複数生じるが、試作品の設計及び製造を統合するサービスは、すべてのアウトプットに関連する。
- 114. 財又はサービスの相互依存性又は相互関連性が高く、当該財又はサービスのそれぞれが、契約において約束している他の財又はサービスの1つ又は複数により著しく影響を受けること(第6項(3)参照)とは、例えば、企業が当該財又はサービスのそれぞれを独立して移転することにより約束を履行することができないため、複数の財又はサービスが相互に著しく影響を受ける場合であり、当該要因は、第6項(1)又は(2)の要因に該当するかどうかが不明確となる場合があるために定めている。
(2)一定の期間にわたり充足される履行義務
(顧客による便益の享受)
- 115. 企業が顧客との契約における義務を履行するにつれて、顧客が便益を享受する履行義務(会計基準第38項(1))の単純な例は、日常的又は反復的なサービス(例えば、清掃サービス)に関するものである。顧客が便益を享受するかどうかを容易に識別できない場合には、本適用指針第9項の定めを考慮する。
(履行により、別の用途に転用することができない資産が生じること)
- 116. 会計基準第38項(3)①に定める資産を別の用途に転用することができるかどうかを判定する(本適用指針第10項参照)にあたっては、顧客との契約が解約される可能性を考慮しない。また、当該判定を継続的に見直すことにより収益認識の方法が随時変更されると、有用な情報が提供されなくなるため、当該判定は契約における取引開始日に実施し、その後は見直さない。
- 117. 資産を別の用途に容易に使用することが契約上制限されている場合(第10項参照)とは、当該契約上の制限が実質的な場合である。企業が資産を別の用途に使用する場合に、顧客が約束された資産に対する権利を強制できるときには、当該契約上の制限は実質的である。ただし、例えば、契約に違反することなく、かつ、多額のコストが生じることなく、他の資産で代替できる資産を別の顧客に移転できる場合には、契約上の制限は実質的でない。
- 118. 資産を大幅に顧客仕様のものとする場合には、当該資産を別の顧客に販売するために多額のコストが生じる(又は著しく値下げしなければ当該資産を販売できない)ことが見込まれるため、当該資産を別の用途に転用できないことが多い。
- ただし、汎用性のある資産であっても、契約が締結されることで、当該資産を別の顧客に移転することが実質的に契約上制限される場合もあるため、顧客仕様の程度は、資産を別の用途に転用できるかどうかを判定する際の有用な要因ではあるが、決定的な要因ではない。
- 119. 資産を別の用途に容易に使用することが実務上制約されている場合(第10項参照)とは、当該資産を別の用途に使用するために重要な経済的損失が生じる場合である。重要な経済的損失は、企業が当該資産に手を加えるために重要なコストが生じること又は重要な損失が生じる売却しかできないことのいずれかの理由により生じる可能性がある。例えば、顧客仕様の資産又は遠隔地にある資産を別の用途に使用することは、実務上制約されている可能性がある。
- 120. 資産を別の用途に容易に使用することが実務上制約されているかどうかを判定するにあたっては、資産を別の用途に転用できない期間ではなく、最終的に移転される資産を重要なコストを生じさせることなく別の用途に転用できるかどうかが要因となるため、最終的に顧客に移転される資産の性質を考慮する。例えば、製品の基本設計は汎用的であるものの、大幅に顧客仕様のものとなる最終製品を製造する契約においては、最終製品を別の用途に転用するにあたって、大幅な手直しが必要となるかどうかを検討する。
(履行を完了した部分について、対価を収受する強制力のある権利を有していること)
- 121. 会計基準第38項(3)②に定める履行を完了した部分について対価を収受する強制力のある権利を有しているかどうかを判定する(本適用指針第11項参照)にあたっては、企業が履行しなかったこと以外の理由で契約が解約される際に、履行を完了した部分に対する支払を要求又は保持する強制力のある権利を有しているかどうかを考慮する。当該権利は、支払に対する現在の無条件の権利である必要はない。無条件の権利は、通常、顧客と合意した目標に到達した時点又は履行義務を完全に充足した時点で得られ、対価を受け取る期限が到来する前に必要となるのが時の経過のみのもの(会計基準第150項)である。
- 122. 契約で示される支払予定は、顧客が支払う対価の時期及び金額を定めるものであるが、必ずしも、企業が履行を完了した部分について対価を収受する強制力のある権利を有しているかどうかを示すものではない。例えば、契約により顧客から受け取った対価が、企業が履行しなかったこと以外の理由により返金されることが定められている場合がある。
- 122-2. 2018年適用指針においては、第11項における「履行を完了した部分について対価を収受する強制力のある権利を有している場合」の説明について、「契約期間にわたり、企業が履行しなかったこと以外の理由で契約が解約される際に、少なくとも履行を完了した部分についての補償を受ける権利を有している場合である。」としていたが、2020年改正適用指針において、契約を解約する主体が「顧客又は他の当事者」であることを明記した。これは、2020年改正会計基準の審議の過程において聞かれた意見を踏まえ、IFRS第15号に倣い変更したものである。この点、2018年適用指針においても、顧客側から解約されることを想定しており、IFRS第15号の内容と異なる取扱いを定めることを意図していたものではない。したがって、当該変更は、2018年適用指針における第11項の取扱いを変えることを意図するものではない。
(3)履行義務の充足に係る進捗度
(アウトプット法)
- 123. アウトプット法(第17項参照)は、選択したアウトプットが、支配が顧客に移転している財又はサービスの一部を見積っていない場合には、企業の履行を忠実に描写していない(第18項参照)。
- アウトプット法の欠点は、履行義務の充足に係る進捗度を見積るために使用されるアウトプットが直接的に観察できない場合があり、過大なコストを掛けないとアウトプット法の適用に必要な情報が利用できない場合があることである。
- 124. 生産単位数又は引渡単位数に基づくアウトプット法は、顧客が支配する仕掛品がアウトプットの見積りに含まれないため、当該仕掛品が契約又は財務諸表全体のいずれかに対して重要性がある場合には、企業の履行を忠実に描写していない(第18項参照)。
(インプット法)
- 125. インプット法(第20項参照)の欠点は、インプットと財又はサービスに対する支配の顧客への移転との間に直接的な関係がない場合があることである。例えば、履行義務を充足するために生じた想定外の金額の材料費、労務費又は他の資源の仕損のコストは、契約の価格に反映されていない著しく非効率な企業の履行に起因して発生したコストであるため、当該コストに対応する収益は認識しない(第21項及び第22項参照)。
2.収益の額の算定
(1)変動対価
- 126. 変動対価の額に関する不確実性が事後的に解消される際に、解消される時点までに計上された収益の著しい減額が発生しない可能性が高いかどうか(会計基準第54項)を判定するにあたって、単一の履行義務に固定対価と変動対価の両方が含まれる場合、収益の減額の程度が著しいかどうかの判断(本適用指針第25項参照)は、変動対価について生じ得る減額を、固定対価及び変動対価の合計額と比較して行う。これは、変動対価について生じ得る減額が、履行義務について計上した収益の累計額に対して著しいかどうかを判断するためである。
(2)契約における重要な金融要素
- 127. 顧客又は企業が契約上の義務の一部又は全部を適切に完了できないことに対する保全を支払条件により契約の相手方に提供する場合(第28項(3)参照)とは、例えば、契約の完了時又は所定の目標の達成時にのみ支払われる対価の一部を顧客が留保する場合や、限定的な財又はサービスの将来における提供を確保するために顧客が対価の一部を前払いすることを要求される場合である。このような支払条件の主な目的は、顧客又は企業にそれぞれ信用供与の便益を提供することではなく、各当事者に財又はサービスの価値を保証することである場合がある。
- 128. 金融要素が重要かどうかの判断は、契約単位で行う(第27項参照)。そのため、金融要素の影響が個々の契約単位で重要性に乏しい場合には、当該影響を集計した場合に重要性があるとしても、金融要素の影響について約束した対価の額を調整しない。
(3)履行義務への取引価格の配分
- 129. 財又はサービスの独立販売価格を直接観察できない場合の独立販売価格の見積方法の1つである調整した市場評価アプローチ(第31項(1)参照)には、他の企業における類似した財又はサービスの価格を参照して、企業のコストと利益相当額を考慮して当該価格を調整することも含まれる。
- 130. 財又はサービスの独立販売価格を直接観察できない場合に、当該財又はサービスのうち複数の独立販売価格が大きく変動する又は確定していないときには、本適用指針第31項における複数の方法を組み合わせて独立販売価格を見積る(本適用指針第32項参照)。これは、例えば、まず、独立販売価格が大きく変動する又は確定していない複数の約束した財又はサービスの独立販売価格の合計額の見積りについて残余アプローチを使用し、次に、個々の財又はサービスの独立販売価格の見積りについて残余アプローチ以外の方法を使用して、残余アプローチによる当該独立販売価格の合計額の見積りに対して比例的に見積る場合である。契約における約束した財又はサービスのそれぞれの独立販売価格を、複数の方法を組み合わせて見積る場合には、取引価格をそのように見積った独立販売価格で配分することにより、会計基準第65項(取引価格の配分の目的)及び会計基準第69項(独立販売価格に基づく配分)に従っているかどうかを評価する。
3.特定の状況又は取引における取扱い
- 131. 特定の状況又は取引における取扱いは、会計基準を適用する際の補足的な指針とは別に、特定の状況又は取引について適用される指針である。
(1)財又はサービスに対する保証
- 132. 財又はサービスに対する保証には、財又はサービスが合意された仕様に従っていることにより、各当事者が意図したとおりに機能することを顧客に提供する保証と、当該保証に加えて顧客にサービスを提供する保証(保証サービス)がある(第35項参照)。
- 133. 顧客が財又はサービスに対する保証を単独で購入するオプションを有している場合には、契約に記載された機能性を有する財又はサービスに加えて、企業がサービスを顧客に提供することを約束しているため、当該保証は別個のサービスである(第38項参照)。
- 134. 財又はサービスが危害又は損害を生じさせた場合に賠償金の支払を企業に要求する法律は、履行義務を生じさせるものではない。例えば、製造業者がある地域において製品を販売し、その地域では法律により、企業の想定どおりに製品を使用している消費者に生じるいかなる損害についても製造業者が責任を負うものとしている場合がある。
- また、財又はサービスによる特許権、著作権、商標権又はその他の権利侵害から生じる負債及び損害について顧客に補償するという企業の約束は、履行義務を生じさせるものではない。
- これらの義務については、企業会計原則注解(注18)に従って引当金の計上の要否を判断する。
(2)本人と代理人の区分
- 135. 収益の総額表示又は純額表示については、企業が本人に該当する場合と代理人に該当する場合における履行義務が異なることを考慮して、企業が本人に該当するか代理人に該当するかを判定する。
- 本人は、財又はサービスが顧客に提供される前に当該財又はサービスを支配し、本人の履行義務は、当該財又はサービスを自ら顧客に提供することである。この場合には、財又はサービスの提供と交換に企業が権利を得ると見込む対価を忠実に描写するために、対価の総額を収益として認識する。
- 代理人は、他の当事者が提供する財又はサービスが顧客に提供される前に当該財又はサービスを支配しておらず、代理人の履行義務は、当該財又はサービスが他の当事者によって提供されるように企業が手配することである。この場合には、企業が代理人として手配することと交換に権利を得ると見込む報酬又は手数料の金額(あるいは他の当事者が提供する財又はサービスと交換に受け取る額から当該他の当事者に支払う額を控除した純額)を収益として認識する。
- なお、自ら財を製造する場合又はサービスを提供する企業が当該財又はサービスに対する支配を顧客に移転する場合には、当該企業は本人であり、本人と代理人の区分を判定しない。
- 136. 第47項における指標は、特定の財又はサービスの性質及び契約条件により、財又はサービスに対する支配への関連度合いが異なり、契約によっては、説得力のある根拠を提供する指標が異なる可能性がある。また、当該指標による評価は、支配の評価を覆すものではなく、単独で行われるものでもない。
- なお、信用リスクについては、代理人であるという判定を覆すために利用される可能性があり、企業が財又はサービスを支配しているかどうかを判定するうえで有用な指標とならない可能性があるため、企業が本人に該当することの評価における指標に含めていない。
- 137. 会計基準第40項の履行義務の充足時点に関する指標と本適用指針第47項の指標は、両者とも財又はサービスに対する支配に関するものであるが、会計基準第40項の指標は、顧客が財又はサービスに対する支配をいつ獲得したのかを判断するための指標であるのに対して、本適用指針第47項の指標は、企業が財又はサービスを顧客に移転する前に支配しているかどうかを判断するための指標である点で異なる。
- 138. 契約における企業の履行義務及び契約上の権利を他の企業が引き受け、企業が特定の財又はサービスを顧客に提供する履行義務を充足する責務を有していないこととなる(すなわち、企業が本人として行動しなくなる)場合には、当該履行義務について収益を認識しない。
(3)追加の財又はサービスを取得するオプションの付与
- 139. 追加の財又はサービスを無料又は値引価格で取得するオプションには、販売インセンティブ、顧客特典クレジット、ポイント、契約更新オプション、将来の財又はサービスに対するその他の値引き等が含まれる。
- 140. 顧客との契約において、既存の契約に加えて追加の財又はサービスを取得するオプションを顧客に付与する場合に、当該オプションが顧客に重要な権利を提供するときには、顧客は実質的に将来の財又はサービスに対して企業に前払いを行っているため、将来の財又はサービスが移転する時、あるいは当該オプションが消滅する時に収益を認識する(第48項参照)。
(4)返金が不要な契約における取引開始日の顧客からの支払
- 141. 契約によっては、契約における取引開始日又はその前後に、顧客に返金が不要な支払を課す場合があり、例えば、スポーツクラブ会員契約の入会手数料、電気通信契約の加入手数料、サービス契約のセットアップ手数料、供給契約の当初手数料等がある。
- 142. 返金が不要な契約における取引開始日の顧客からの支払は、通常、企業が契約における取引開始日又はその前後において契約を履行するために行う活動に関連するが、当該活動は約束した財又はサービスを顧客に移転させるものではない(第4項参照)。
(5)ライセンスの供与
- 143. 知的財産のライセンスには、例えば、次のものに関するライセンスがある。
- (1) ソフトウェア及び技術
- (2) 動画、音楽及び他の形態のメディア・エンターテインメント
- (3) フランチャイズ
- (4) 特許権、商標権及び著作権
- 144. 顧客との契約が、財又はサービスを移転する約束に加えて、ライセンスを供与する約束を含む場合には、他の種類の契約と同様に、会計基準第32項から第34項の定めに従って、当該契約における履行義務を識別する(本適用指針第61項及び第62項参照)。
- 145. 本適用指針では、ライセンスを顧客に供与する際の企業の約束の性質が、企業の知的財産にアクセスする権利と企業の知的財産を使用する権利のいずれを提供するものかを判定する(第62項参照)ことを求めており、そのための要件を定めている。当該要件は、厳密には支配に係る定めに従ったものではないが、企業の約束の性質を識別しない場合には、ライセンスを供与する約束における財又はサービスに対する支配を顧客がいつ獲得するか判断することが困難であることを踏まえ、ライセンスを2つの種類に区分するために定めている。
- 146. ライセンスを供与する際の企業の約束の性質が、ライセンス期間にわたり存在する企業の知的財産にアクセスする権利である場合(本適用指針第62項(1)参照)には、企業の知的財産へのアクセスを提供するという企業の履行からの便益を、企業の履行が生じるにつれて顧客が享受する(会計基準第38項(1))ため、ライセンスを供与する約束を一定の期間にわたり充足される履行義務として処理する。
- 147. ライセンスを供与する際の企業の約束の性質が、ライセンスが供与される時点で存在する企業の知的財産を使用する権利である場合(本適用指針第62項(2)参照)には、当該知的財産はライセンスが顧客に供与される時点で形態と機能性の観点で存在しており、その時点で顧客がライセンスの使用を指図し、当該ライセンスからの残りの便益のほとんどすべてを享受することができるため、ライセンスを供与する約束を一時点で充足される履行義務として処理し、履行義務が充足される時点を会計基準第40項に基づき判断する。
- この場合、顧客がライセンスを使用してライセンスからの便益を享受できる期間の開始前には収益を認識しない(本適用指針第62項参照)。例えば、ソフトウェアの使用に必要なコードを顧客に提供する前にソフトウェアのライセンス期間が開始する場合、コードを提供する前には収益を認識しない。
- 148. ライセンスを供与する際の企業の約束の性質を判定するにあたっては、その時期、地域又は用途の制限は、約束したライセンスの属性を明確にするものであり、履行義務を一定の期間にわたり充足するのか又は一時点で充足するのかを明確にするものではないため、考慮しない。
- また、特許の不正使用を防止するという約束は履行義務ではなく、そのための活動は企業の知的財産の価値を保護し、供与されるライセンスが契約で合意された仕様に従っているという保証を顧客に提供するものであるため、知的財産に対する有効な特許の不正使用を防止するために企業が提供する保証も、ライセンスを供与する際の企業の約束の性質を判定するにあたって考慮しない(第66項参照)。
(企業の約束の性質の判定)
- 149. ライセンスにより顧客が権利を有している知的財産に著しく影響を与える活動を企業が行うことが、顧客により合理的に期待されていること(第63項(1)参照)を示す可能性のある要因としては、企業の取引慣行や公表した方針等がある。顧客が権利を有している知的財産についての企業と顧客との間での経済的利益の共有(例えば、売上高に基づくロイヤルティ)の存在も、企業がそのような活動を行うことが、顧客により合理的に期待されていることを示す可能性がある。
- 150. 顧客が権利を有している知的財産が重要な独立した機能性を有する場合には、当該知的財産の便益の実質的な部分が当該機能性から得られるため、顧客が知的財産からの便益を享受する能力は、企業の活動が知的財産の形態又は機能性を著しく変化させない限り、企業の活動による著しい影響は受けない。重要な独立した機能性を有することが多いライセンスには、例えば、ソフトウェア、薬品の製法、並びに映画、テレビ番組及び音楽作品の録音物等のメディア・コンテンツがある(第65項参照)。
(売上高又は使用量に基づくロイヤルティ)
- 151. 売上高又は使用量に基づくロイヤルティについては、不確実性が解消されるまで(すなわち、顧客が売上高を計上する時又は顧客が知的財産のライセンスを使用する時まで)、当該ロイヤルティに係る収益を認識しない(第67項参照)。なお、売上高又は使用量に基づくロイヤルティの収益認識に係る第67項の定めは、売上高又は使用量に基づくロイヤルティにのみ適用されるものであり、他の種類の変動対価に適用することはできない。
- 152. 売上高又は使用量に基づくロイヤルティにおいて知的財産のライセンスが支配的な項目である場合(第67項参照)とは、例えば、ロイヤルティが関連する財又はサービスの中で、ライセンスに著しく大きな価値を顧客が見出すことを、企業が合理的に予想できる場合である。
(6)買戻契約
- 153. 買戻契約とは、企業が商品又は製品を販売するとともに、同一の契約又は別の契約のいずれかにより、当該商品又は製品を買い戻すことを約束するあるいは買い戻すオプションを有する契約である。買い戻す商品又は製品は、当初において顧客に販売した商品又は製品である場合、当該商品又は製品と実質的に同一のものである場合、あるいは当初において販売した商品又は製品を構成部分とする商品又は製品である場合がある。
- 買戻契約には、通常、次の3つの形態がある。
- (1) 企業が商品又は製品を買い戻す義務(先渡取引)
- (2) 企業が商品又は製品を買い戻す権利(コール・オプション)
- (3) 企業が顧客の要求により商品又は製品を買い戻す義務(プット・オプション)
(企業が商品又は製品を買い戻す義務(先渡取引)あるいは企業が商品又は製品を買い戻す権利(コール・オプション))
- 154. 企業が商品又は製品を買い戻す義務(先渡取引)あるいは企業が商品又は製品を買い戻す権利(コール・オプション)を有している場合には、たとえ顧客が当該商品又は製品を物理的に占有しているとしても、顧客が当該商品又は製品の使用を指図する能力や当該商品又は製品からの残りの便益のほとんどすべてを享受する能力が制限されているため、顧客は当該商品又は製品に対する支配を獲得していない(第69項参照)。
- 155. 企業が先渡取引又はコール・オプションを有している場合、買戻価格と当初の販売価格との関係に応じて、当該取引をリース又は金融取引として処理する。商品又は製品を当初の販売価格より低い金額で買い戻す義務又は権利を有する場合には、実質的に当該商品又は製品を一定の期間にわたり使用する権利の対価が企業に支払われることになるため、当該契約をリースとして処理する。ただし、当該契約にリースバックが含まれる場合、当該契約をリースとして処理し、その後、リースバックとして処理することを要求することは適切でないと考えられるため、リース会計基準の公表に伴い、契約にリースバックが含まれる場合、当該契約は金融取引として処理する定めを追加した。また、商品又は製品を当初の販売価格以上の金額で買い戻す義務又は権利を有する場合には、企業は実質的に金利を支払うことになるため、当該契約を金融取引として処理する(本適用指針第69項参照)。
(企業が顧客の要求により商品又は製品を買い戻す義務(プット・オプション))
- 156. 企業が顧客の要求により商品又は製品を買い戻す義務(プット・オプション)を有している場合には、顧客は、当該商品又は製品を返還する義務も、また返還に備える義務も有しておらず、当該商品又は製品の使用を指図する能力や当該商品又は製品からの残りの便益のほとんどすべてを享受する能力を有しており、当該商品又は製品に対する支配を獲得している。この場合、企業は当該商品又は製品の買戻しに備える義務を、返品権付きの販売として処理する(第72項参照)。
- 157. 企業が顧客の要求により商品又は製品を当初の販売価格より低い金額で買い戻す義務を有しており、顧客がプット・オプションを行使する重要な経済的インセンティブを有している場合には、顧客は、プット・オプションを有していることにより、当該商品又は製品の使用を指図する能力や当該商品又は製品からの残りの便益のほとんどすべてを享受する能力が実質的に制限されるため、当該商品又は製品に対する支配を獲得していない。この場合、顧客が当該プット・オプションを行使すると、実質的に当該商品又は製品を一定の期間にわたり使用する権利の対価が企業に支払われることになるため、当該契約をリースとして処理する。なお、リース会計基準の公表に伴い、企業が先渡取引又はコール・オプションを有している場合と同様の理由により、当該契約にリースバックが含まれる場合、当該契約を金融取引として処理する定めを追加した(本適用指針第72項参照)。
- 158. 商品又は製品の買戻価格が当初の販売価格以上であり、かつ、当該商品又は製品の予想される時価よりも高い場合には、前項と同様の理由から、顧客は当該商品又は製品に対する支配を獲得していない。この場合、企業は実質的に金利を支払うことになるため、当該契約を金融取引として処理する(第73項参照)。
(7)請求済未出荷契約
- 159. 請求済未出荷契約(第77項参照)は、例えば、顧客に商品又は製品の保管場所がない場合や、顧客の生産スケジュールの遅延等の理由により締結されることがある。
- 160. 請求済未出荷の商品又は製品の販売による収益を認識する場合には、取引価格の一部を配分する残存履行義務(例えば、顧客の商品又は製品に対する保管サービスに係る義務)を有しているかどうかについて、会計基準第32項から第34項に従って判断する。
(8)返品権付きの販売
- 161. 返品受入期間中に返品される商品又は製品の受入れに備えるという約束は、返金を行う義務とは別の履行義務として処理しない。
(IFRS第15号の定め及び結論の根拠を基礎としたもの以外のもの)
1.工事契約等に関する取扱い
(1)決算日における工事進捗度を見積る場合
- 161-2. 決算日における工事進捗度の見積方法として原価比例法を用いる際、工事原価が複数の通貨建てで発生する場合には、通貨間の為替相場の変動が工事進捗度の算定結果に影響を及ぼすため、適切に工事進捗度を表さないことがある。このような場合には、会計基準の適用により廃止される企業会計基準適用指針第18号「工事契約に関する会計基準の適用指針」(以下「工事契約適用指針」という。)における工事契約に複数の通貨が関わる場合の取扱いを踏襲して、工事契約の内容や状況に応じて、為替相場の変動の影響を排除するための調整が必要となると考えられる。
(2)工事契約等から損失が見込まれる場合
- 162. 当委員会では、会計基準が、顧客との契約から生じる収益認識を取り扱っていることを踏まえ、顧客との契約から損失が見込まれる場合の取扱いを検討したが、現状では、包括的な引当金の会計基準が定められていないことを踏まえ、企業会計基準第15号「工事契約に関する会計基準」(以下「工事契約会計基準」という。)における工事損失引当金の定めを踏襲しており(本適用指針第90項参照)、本適用指針における工事損失引当金の認識の単位は、工事契約会計基準と同様に、工事契約の収益認識の単位と同一である。その他の顧客との契約から損失が見込まれる場合の取扱いについては、企業会計原則注解(注18)に従って引当金の計上の要否を判断することが考えられる。
- なお、本適用指針第90項の適用に際しては、会計基準の適用により廃止される工事契約適用指針における工事契約に複数の通貨が関わる場合の取扱いを踏襲して、見込まれる工事損失の中に為替相場の変動による部分が含まれている場合であっても、その部分を含めて、同項に基づく会計処理の要否の判断及び計上すべき工事損失引当金の額の算定を行うことになると考えられる。
- 163. 受注制作のソフトウェアについては、工事契約会計基準において、工事契約に準じて適用することとされており、本適用指針第161-2項及び第162項と同様に、工事契約会計基準の取扱いを踏襲することとした(本適用指針第91項参照)。
2.重要性等に関する代替的な取扱い
- 164. 本適用指針では、これまで我が国で行われてきた実務等に配慮し、財務諸表間の比較可能性を大きく損なわせない範囲で、IFRS第15号における取扱いとは別に、個別項目に対する重要性の記載等、代替的な取扱いを定めている。
- なお、当該代替的な取扱いを適用するにあたっては、個々の項目の要件に照らして適用の可否を判定することとなるが、企業による過度の負担を回避するため、金額的な影響を集計して重要性の有無を判定する要件は設けていない。
(1)契約変更
(重要性が乏しい場合の取扱い)
- 165. 会計基準では、契約変更について、所定の要件に基づき複数の処理を定め、独立した契約として処理する場合に加え、独立した契約として処理しない場合には、既存の契約を解約して新しい契約を締結したものと仮定して処理する又は既存の契約の一部であると仮定して処理することとしている(会計基準第30項及び第31項)。ただし、契約変更による財又はサービスの追加が既存の契約内容に照らして重要性が乏しい場合には、独立した契約として処理する方法、既存の契約を解約して新しい契約を締結したものと仮定して処理する方法、又は既存の契約の一部であると仮定して処理する方法のいずれで処理しても、財務諸表間の比較可能性を大きく損なうものではないと考えられるため、代替的な取扱いを定めている(本適用指針第92項参照)。
(2)履行義務の識別
(顧客との契約の観点で重要性が乏しい場合の取扱い)
- 166. 会計基準では、契約における取引開始日に、顧客との契約において約束した財又はサービスを評価し、顧客に別個の財又はサービスを移転する約束のそれぞれを履行義務として識別することとしている(会計基準第32項)。米国会計基準では、企業による過度の負担を回避するために、約束した財又はサービスが顧客との契約の観点で重要性が乏しい場合には、当該約束した財又はサービスが履行義務であるのかについて評価しないことができる定めが設けられている。本適用指針においても、約束した財又はサービスが顧客との契約の観点で重要性が乏しい場合には、当該約束を履行義務として識別しないとしても、財務諸表間の比較可能性を大きく損なうものではないと考えられるため、米国会計基準を参考とした代替的な取扱いを定めている(本適用指針第93項参照)。
(出荷及び配送活動に関する会計処理の選択)
- 167. 会計基準では、契約における取引開始日に、顧客との契約において約束した財又はサービスを評価し、顧客に別個の財又はサービスを移転する約束のそれぞれを履行義務として識別することとしており(会計基準第32項)、顧客が商品又は製品に対する支配を獲得した後に行う出荷及び配送活動は、当該商品又は製品の移転とは別の履行義務として識別される。米国会計基準では、実務におけるコストと便益の比較衡量の結果として、顧客が商品又は製品に対する支配を獲得した後に行う出荷及び配送活動について、履行義務として識別しないことを会計処理の選択として認めている。本適用指針においても、我が国の実務におけるコストと便益の比較衡量の結果、米国会計基準を参考とした代替的な取扱いを定めている(本適用指針第94項参照)。
(3)一定の期間にわたり充足される履行義務
(期間がごく短い工事契約及び受注制作のソフトウェア)
- 168. 工事契約会計基準では、「工期がごく短いものは、通常、金額的な重要性が乏しいばかりでなく、工事契約としての性格にも乏しい場合が多いと想定される。このような取引については、工事進行基準を適用して工事収益総額や工事原価総額の按分計算を行う必要はなく、通常、工事完成基準を適用することになると考えられる。」とされていた。本適用指針では、この記載にあるように、工期がごく短いものは、通常、金額的な重要性が乏しいと想定され、完全に履行義務を充足した時点で収益を認識しても財務諸表間の比較可能性を大きく損なうものではないと考えられるため、代替的な取扱いを定めている(本適用指針第95項参照)。
- 169. 受注制作のソフトウェアについては、工事契約会計基準において、工事契約に準じて適用することとされており、本適用指針では、前項と同様に、工事契約会計基準の取扱いを踏襲し、契約における取引開始日から完全に履行義務を充足すると見込まれる時点までの期間がごく短い場合には、完全に履行義務を充足した時点で収益を認識する代替的な取扱いを定めている(本適用指針第96項参照)。なお、当該代替的な取扱いの定めは、現行の取扱いを踏襲するものであり、当該取扱いの範囲を変更することは意図していないため、工事契約及び受注制作のソフトウェアのみに適用することができるものであり、一定の期間にわたり収益を認識するその他の契約に適用することはできない。
(船舶による運送サービス)
- 170. 一定の期間にわたり収益を認識する船舶による運送サービスについて、一航海の船舶が発港地を出発してから帰港地に到着するまでの期間が内航海運又は外航海運における通常の期間である場合には、当該期間は短期間であると想定され、複数の顧客の貨物を積載する船舶の一航海を単一の履行義務としたうえで、当該期間にわたり収益を認識しても財務諸表間の比較可能性を大きく損なうものではないと考えられるため、代替的な取扱いを定めている(第97項参照)。
(4)一時点で充足される履行義務
(出荷基準等の取扱い)
- 171. これまでの実務では、売上高を実現主義の原則に従って計上するにあたり、出荷基準が幅広く用いられてきている。会計基準では、一時点で充足される履行義務については、資産に対する支配を顧客に移転することにより当該履行義務が充足される時に、収益を認識することとしている(会計基準第39項及び第40項)。ただし、商品又は製品の国内における販売を前提として、商品又は製品の出荷時から当該商品又は製品の支配が顧客に移転される時までの期間が通常の期間である場合には、出荷時に収益を認識しても、商品又は製品の支配が顧客に移転される時に収益を認識することとの差異が、通常、金額的な重要性に乏しいと想定され、財務諸表間の比較可能性を大きく損なうものではないと考えられるため、代替的な取扱いを定めている(本適用指針第98項参照)。
- なお、商品又は製品の出荷時から当該商品又は製品の支配が顧客に移転される時までの期間が通常の期間である場合とは、当該期間が国内における出荷及び配送に要する日数に照らして取引慣行ごとに合理的と考えられる日数である場合をいうとしているが、国内における配送においては、数日間程度の取引が多いものと考えられる。
(5)履行義務の充足に係る進捗度
(契約の初期段階における原価回収基準の取扱い)
- 172. 会計基準では、一定の期間にわたり充足される履行義務について、履行義務の充足に係る進捗度を合理的に見積ることができないが、当該履行義務を充足する際に発生する費用を回収することが見込まれる場合には、履行義務の充足に係る進捗度を合理的に見積ることができる時まで、原価回収基準により処理することとしている(会計基準第45項)。ただし、詳細な予算が編成される前等、契約の初期段階においては、その段階で発生した費用の額に重要性が乏しいと考えられ、当該契約の初期段階に回収することが見込まれる費用の額で収益を認識しないとしても、財務諸表間の比較可能性を大きく損なうものではないと考えられるため、代替的な取扱いを定めている(本適用指針第99項参照)。
(6)履行義務への取引価格の配分
(重要性が乏しい財又はサービスに対する残余アプローチの使用)
- 173. 本適用指針では、財又はサービスの独立販売価格を直接観察できない場合の独立販売価格の見積方法として、契約における取引価格の総額から契約において約束した他の財又はサービスについて観察可能な独立販売価格の合計額を控除して見積る方法(残余アプローチ)を示しているが、当該方法は所定の要件に該当する場合に限り使用できることとしている(第31項(3)参照)。ただし、履行義務の基礎となる財又はサービスが、契約における他の財又はサービスに付随的なものであり、重要性が乏しいと認められるときには、残余アプローチを使用しても財務諸表間の比較可能性を大きく損なうものではないと考えられるため、代替的な取扱いを定めている(第100項参照)。
(7)契約の結合、履行義務の識別及び独立販売価格に基づく取引価格の配分
(契約に基づく収益認識の単位及び取引価格の配分)
- 174. 工事契約会計基準では、工事契約に係る収益認識の単位について、「工事契約に係る認識の単位は、工事契約において当事者間で合意された実質的な取引の単位に基づく。工事契約に関する契約書は、当事者間で合意された実質的な取引の単位で作成されることが一般的である。」とされていた。
- IFRS第15号では、契約の結合、履行義務の識別及び独立販売価格に基づく取引価格の配分について定められており、契約書の記載とは異なる収益認識の単位の識別及び取引価格の配分が求められる可能性がある。この点について、我が国においては、契約書は、企業と顧客が諸条件を合意したものであり、その履行に法的責任を伴うものであるため、契約書に客観的な合理性を認め、企業による過度の負担を回避するために、契約に基づく収益認識の単位及び取引価格の配分(すなわち、複数の契約を結合せず、個々の契約において定められている顧客に移転する財又はサービスの内容を履行義務とみなし、個々の契約において合理的に定められている当該財又はサービスの金額に従って収益を認識すること)を認めるべきであるとの意見が聞かれている。一方、契約に基づく収益認識の単位及び取引価格の配分を無条件に認めると、IFRS第15号における契約の結合、履行義務の識別及び独立販売価格に基づく取引価格の配分による結果と乖離することへの懸念も示されている。
- これらを踏まえ、本適用指針では、顧客との個々の契約が当事者間で合意された取引の実態を反映する実質的な取引の単位であると認められること、及び顧客との個々の契約における財又はサービスの金額が合理的に定められていることにより、当該金額が独立販売価格と著しく異ならないと認められることの2つの要件を満たす場合には、契約に基づく収益認識の単位及び取引価格の配分を認めることを定めている(本適用指針第101項参照)。なお、契約における財又はサービスの金額が独立販売価格と著しく異なる可能性がある場合とは、例えば、収益認識時点が異なる商品の販売とサービスの提供が1つの契約に含まれており、当該商品の販売とサービスの提供のそれぞれが独立して行われる際の価格の合計額が、1つの契約に含まれる商品の販売とサービスの提供の価格の合計額を著しく超えるものであり、その超過額(契約における著しい値引き)が1つの契約における商品の販売又はサービスの提供のいずれかの金額にのみ配分されている場合である。
(工事契約及び受注制作のソフトウェアの収益認識の単位)
- 175. 工事契約会計基準では、工事契約に係る収益認識の単位について、「工事契約に係る認識の単位は、工事契約において当事者間で合意された実質的な取引の単位に基づく。工事契約に関する契約書は、当事者間で合意された実質的な取引の単位で作成されることが一般的である。ただし、契約書が当事者間で合意された実質的な取引の単位を適切に反映していない場合には、これを反映するように複数の契約書上の取引を結合し、又は契約書上の取引の一部をもって工事契約に係る認識の単位とする必要がある。」とされていた。
- 会計基準では、同一の顧客(当該顧客の関連当事者を含む。)と同時又はほぼ同時に締結した複数の契約について、所定の要件に該当する場合には、当該複数の契約を結合することとしているが(会計基準第27項)、工事契約について、例えば、異なる顧客と締結した複数の契約や異なる時点に締結した複数の契約を結合した際の収益認識の時期及び金額と当該複数の契約について会計基準第27項及び第32項の定めに基づく収益認識の時期及び金額との差異に重要性が乏しいと認められる場合には、当該複数の契約を結合して単一の履行義務として識別するとしても財務諸表間の比較可能性を大きく損なうものではないと考えられるため、代替的な取扱いを定めている(本適用指針第102項参照)。
- 176. 受注制作のソフトウェアについては、工事契約会計基準において、工事契約に準じて適用することとされており、前項と同様の契約の結合及び履行義務の識別に対する代替的な取扱いを定めている(本適用指針第103項参照)。
(8)その他の個別事項
(電気事業及びガス事業における毎月の検針による使用量に基づく収益認識)
- 176-2. 2021年改正適用指針の公表時点においては、電気事業及びガス事業において、毎月、月末以外の日に実施する検針による顧客の使用量に基づき収益の計上が行われ、決算月に実施した検針の日から決算日までに生じた収益が翌月に計上される実務が見られる(いわゆる検針日基準)。会計基準第35項の定めに従えば、決算月に実施した検針の日から決算日までに生じた収益を見積ることになるが、これが実務的に困難であるとの理由で、検針日基準を代替的な取扱いとして認めて欲しいとの要望が電気事業及びガス事業より寄せられた。
- 176-3. 審議の結果、検針日基準による収益認識を認めた場合、財務諸表間の比較可能性を大きく損なわせない(本適用指針第164項参照)とは認められないと判断し、会計基準の定めどおり、決算月に実施した検針の日から決算日までに生じた収益を見積ることが必要であるとの結論に至った。ただし、決算日時点での販売量実績が入手できないことにより、見積りと実績を事後的に照合する形で見積りの合理性を検証することができないなど、見積りの適切性を評価することが困難であるとの意見が財務諸表作成者及び監査人から寄せられたため、見積方法について財務諸表間の比較可能性を大きく損なわせない範囲で代替的な取扱いを定めることとした。
- 176-4. 電気事業及びガス事業における決算月に実施した検針の日から決算日までに生じた収益の見積りは、通常、同種の契約をまとめた上で(例えば、電気事業であれば電圧別に)、使用量又は単価(若しくはその両方)を見積って行われるものと考えられる。
- ここで、未検針となっている使用量の見積りについては、決算月の月初から月末までの送配量を基礎として、気温、曜日等を加味して見積ることが考えられるが、気温、曜日等を加味することは実務的に困難である可能性があるため、その月の日数に対する未検針日数の割合に基づき日数按分により見積ることができることとした。
- また、電気事業及びガス事業では、契約の種類、使用量、時間帯等によって単価が変動する料金体系を採用していることがあり、単価の見積りについては、使用量等に応じて、それらの構成比の変動等を調整することが考えられるが、このような調整を行うことは実務的に困難である可能性があるため、決算月の前年同月の平均単価を基礎とすることができることとした(第103-2項参照)。
- 176-5. 前項の見積方法を定めることにより、見積りの適切性の評価における財務諸表作成者及び監査人の負担が軽減されると考えられる。
(有償支給取引)
- 177. 企業が、対価と交換に原材料等(以下「支給品」という。)を外部(以下「支給先」という。)に譲渡し、支給先における加工後、当該支給先から当該支給品(加工された製品に組み込まれている場合を含む。以下同じ。)を購入する場合がある(これら一連の取引は、一般的に有償支給取引と呼ばれている。)。このような有償支給取引では、企業から支給先へ支給品が譲渡された後の取引や契約の形態は、さまざまであり、会計上、企業が当該支給品を買い戻す義務を有しているか否かを判断する必要がある(第69項参照)。
- 178. 例えば、有償支給取引において、支給先によって加工された製品の全量を買い戻すことを支給品の譲渡時に約束している場合には、企業は当該支給品を買い戻す義務を負っていると考えられるが、その他の場合には、企業が支給品を買い戻す義務を負っているか否かの判断を取引の実態に応じて行う必要がある。
- 179. 有償支給取引において、企業が支給品を買い戻す義務を負っていない場合には、企業は当該支給品の消滅を認識することとなるが、支給品の譲渡に係る収益と最終製品の販売に係る収益が二重に計上されることを避けるために、当該支給品の譲渡に係る収益は認識しないことが適切と考えられる。
- 180. 一方、有償支給取引において、企業が支給品を買い戻す義務を負っている場合には、支給先が当該支給品を指図する能力や当該支給品からの残りの便益のほとんどすべてを享受する能力が制限されているため、支給先は当該支給品に対する支配を獲得していないこととなる(第154項参照)。この場合、企業は支給品の譲渡に係る収益を認識せず、当該支給品の消滅も認識しないこととなる(第69項参照)。
- 181. しかしながら、譲渡された支給品は、物理的には支給先において在庫管理が行われているため、企業による在庫管理に関して実務上の困難さがある点が指摘されており、この点を踏まえ、個別財務諸表においては、支給品の譲渡時に当該支給品の消滅を認識することができることとした(第104項参照)。なお、その場合、第179項に記載したとおり、支給品の譲渡に係る収益と最終製品の販売に係る収益が二重に計上されることを避けるために、当該支給品の譲渡に係る収益は認識しないことが適切と考えられる。
(9)代替的な取扱い等を設けなかった項目
(会計基準による収益の額及び認識時期が現行の我が国の実務と大きく異なる可能性がある項目)
- 182. 割賦販売における割賦基準に基づく収益計上、顧客に付与するポイントについての引当金処理、返品調整引当金の計上等については、当委員会が公表した「収益認識に関する包括的な会計基準の開発についての意見の募集」に対して、IFRS第15号の定めによる収益の額及び認識時期が現行の我が国の実務と大きく異なる可能性があるとの意見が寄せられ、当委員会において課題として抽出し審議を行った。
- 審議の結果、国際的な比較可能性の確保の観点から、代替的な取扱いを追加的に定める場合、国際的な比較可能性を大きく損なわせないものとすることを基本とし、これらの項目については、本適用指針において代替的な取扱いを定めないこととした。
(変動対価における収益金額の修正)
- 183. 会計基準では、契約において、顧客と約束した対価に変動対価が含まれる場合、財又はサービスの顧客への移転と交換に企業が権利を得ることとなる対価の額を見積り(会計基準第50項)、見積られた変動対価の額については、変動対価の額に関する不確実性が事後的に解消される際に、解消される時点までに計上された収益の著しい減額が発生しない可能性が高い部分に限り、取引価格に含めることとしている(会計基準第54項)。
- 審議の過程で、我が国において、財又はサービスを顧客に移転する時に変動対価の額を見積ることが極めて困難な取引があるとの懸念が聞かれており、代替的な取扱いを検討したが、半年ごとに不確実性が解消される変動対価であれば、6か月ごとより高い頻度で期中財務諸表を作成する場合のみの限定的な取扱いとなることや、交渉によって対価の額が確定する取引については、変動対価の額を見積ることが実務上困難なものも存在すると想定されるが、その見積りの判断に資する要件を一意的に定めることが困難であると考えられることを踏まえ、本適用指針において代替的な取扱いを定めないこととした。
(契約金額からの金利相当分の区分処理)
- 184. 会計基準では、顧客との契約に重要な金融要素が含まれる場合には、約束された対価の額に含まれる金利相当分の影響を調整し、財又はサービスに対して顧客が支払うと見込まれる現金販売価格を反映する金額で収益を認識することとしている(会計基準第57項)。また、本適用指針では、金融要素が契約に含まれるかどうか及び金融要素が契約にとって重要であるかどうかを判断するにあたっては、関連するすべての事実及び状況を考慮することとしている(本適用指針第27項参照)。
- 審議の過程で、長期の工事契約に対する重要な金融要素の有無の判断の困難さについて検討する必要があるとの意見が聞かれており、代替的な取扱いを検討したが、我が国の工事契約は個別性が高く、また出来高払いの条件は一般的ではなく、顧客から契約期間内に定期的に支払を受けるとしても、顧客からの支払と企業の履行の程度との関係が必ずしも明確であるとはいえず、約束した対価の額と現金販売価格との差額を識別することが困難であること等により、重要な金融要素の有無の判断に資する要件を一意的に定めることが困難であると考えられることを踏まえ、本適用指針において代替的な取扱いを定めないこととした。
(売上高又は使用量に基づくロイヤルティ)
- 185. 本適用指針では、売上高又は使用量に基づくロイヤルティについて、当該ロイヤルティが知的財産のライセンスのみに関連している場合、又は当該ロイヤルティにおいて知的財産のライセンスが支配的な項目である場合には、次の(1)又は(2)のいずれか遅い方で、当該売上高又は使用量に基づくロイヤルティについて収益を認識することとしている(第67項参照)。
- (1) 知的財産のライセンスに関連して顧客が売上高を計上する時又は顧客が知的財産のライセンスを使用する時
- (2) 売上高又は使用量に基づくロイヤルティの一部又は全部が配分されている履行義務が充足(あるいは部分的に充足)される時
- 2017年7月に公表された企業会計基準公開草案第61号「収益認識に関する会計基準(案)」及び企業会計基準適用指針公開草案第61号「収益認識に関する会計基準の適用指針(案)」(以下合わせて「2017年公開草案」という。)に対して、海外における売上高又は使用量に基づくロイヤルティ等、収益額を算定する際に発生時の計算基礎の入手が実務上困難であり、継続して契約によりロイヤルティ収入を受け取る場合には、現金を受け取る時点での収益認識を認める代替的な取扱いを要望する意見が寄せられた。審議の結果、現金を受け取る時点で収益を認識することは、一般的に比較可能性を損なわせる可能性があると考えられることを踏まえ、本適用指針において代替的な取扱いを定めないこととした。
(顧客に付与するポイントに関する取引価格の配分)
- 186. 本適用指針では、顧客との契約において既存の契約に加えて追加の財又はサービスを取得するオプションを顧客に付与する場合、当該オプションが当該契約を締結しなければ顧客が受け取れない重要な権利を顧客に提供するときにのみ、当該オプションから履行義務が生じることとしており(第48項参照)、そのときには、当該履行義務に独立販売価格の比率で取引価格を配分することとしている(第50項参照)。
- 2017年公開草案に対して、このような顧客に付与するポイントの会計処理について、履行義務として識別して独立販売価格の比率に基づく取引価格の配分を行うことの困難さから、代替的な取扱いを要望する意見が寄せられた。この点、本適用指針に基づく処理及び現行の実務におけるポイント引当金の処理の両方において、一定の見積計算を伴う点では同様であり、必ずしも本適用指針に基づく処理の方がコストがかかるとはいえないと考えられ、さらに、本適用指針においては、顧客との契約の観点で重要性が乏しい場合の代替的な取扱い(第93項参照)を定めているため、実務における負担が軽減される可能性があると考えられる。審議の結果、これらの点を踏まえ、本適用指針において代替的な取扱いを定めないこととした。
(商品券等の発行の会計処理)
- 187. 本適用指針では、顧客により行使されない権利である非行使部分について、企業が将来において権利を得ると見込む場合には、当該非行使部分の金額について、顧客による権利行使のパターンと比例的に収益を認識することとしている(第54項参照)。
- 2017年公開草案に対して、この商品券等の発行の会計処理について、第54項の定めによらず、一定期間経過後の一時点で負債の消滅を認識して収益を計上するこれまでの実務を認める代替的な取扱いを要望する意見が寄せられた。本適用指針によると、商品券等の発行について、現行の実務における処理から会計処理が変わる可能性があるが、本適用指針に基づく非行使部分の見積りについては、実務において著しく困難となるとの意見が聞かれていないことを踏まえ、本適用指針において代替的な取扱いを定めないこととした。
(削 除)
- 188. (削 除)
(設例を示さなかった項目)
- 189. 本適用指針では、会計基準及び本適用指針で示された内容の理解を深めるための参考として、IFRS第15号の設例を基礎とした設例に加えて、我が国に特有な取引等についての設例を示している。
- 2017年公開草案に対して、例えば、さまざまなケースにおけるポイントの付与の会計処理、別個の財又はサービスの識別、原価回収基準等について、具体的な設例を追加する要望が聞かれた。
- この点について、事実及び状況に応じて処理が異なり得るにもかかわらず、設例を示すことは、設例で示した特定の処理を要求しているという誤解を生じさせる可能性があるため、適切ではないと考えられる。また、審議の過程で、実務上の判断が困難な点については、上記の要望が聞かれたものも含め、会計基準及び本適用指針の記載から適切な処理を判断できるように、結論の背景を中心に記載を追加している。さらに、これらの取引は、必ずしも我が国に特有な取引ではないと考えられること等の理由から、2017年公開草案に寄せられた要望に対応する設例は追加しないこととした。
Ⅱ.開 示
1.注記事項
(1)収益の分解情報
- 190. 本適用指針第106-3項では、企業が顧客との契約から生じる収益を分解するために使用できる適切な区分を決定する方法についての指針を定めている。同項では、適切な区分は企業の実態に即した事実及び状況に応じて決まるとしている。ただし、財務諸表外で開示している情報や業績評価を行うために定期的に検討している情報において収益を分解している場合には、その区分が財務諸表利用者に有用であり、会計基準第80-10項に示す収益を分解する区分に適うものである可能性があるため、これらの情報において収益をどのように分解しているのかを考慮する。本適用指針では、収益を分解するための区分の例を示しているが、この例示は多くのさまざまな企業、業種及び契約に適用できる例として示しているものであるため、チェックリスト又は網羅的なリストとして利用されることを意図していない。
- 191. なお、企業会計基準第17号「セグメント情報等の開示に関する会計基準」に基づいて開示される売上高に関する情報が、会計基準における収益の会計処理の定めに基づいており、かつ、収益及びキャッシュ・フローの性質、金額、時期及び不確実性に影響を及ぼす主要な要因に基づく区分に分解した情報として十分であると判断される場合には、セグメント情報に追加して収益の分解情報を注記する必要はないものと考えられる。
(2)契約資産及び契約負債の残高の重要な変動
- 192. 会計基準第80-20項(3)では、当期中の契約資産及び契約負債の残高に重要な変動がある場合には、その内容について注記することとしている。
- IFRS第15号においては、当該注記には、定性的情報と定量的情報を含めなければならないとされている。しかしながら、例えば、契約資産及び契約負債の残高の重要な変動が一つの要因で発生している場合に、金額的な影響額を開示しなくても、当該要因が重要な変動の主要因であることを開示することにより、財務諸表利用者に有用な情報が開示される場合もあると考えられるため、当該注記には必ずしも定量的情報を含める必要はないこととした(本適用指針第106-8項参照)。
- また、IFRS第15号においては、契約資産の変動の例として、契約資産の減損が挙げられている。この点に関して、契約資産について認識する減損については、IFRS第9号「金融商品」における金融資産の減損に関する定めと、我が国における貸倒引当金繰入額及び貸倒損失額に関する定めが異なっている。2020年改正会計基準公表時点では、企業会計基準第10号「金融商品に関する会計基準」(以下「金融商品会計基準」という。)の見直しを行っているところであるため、契約資産の変動の例として契約資産の減損を示すか否かについては金融商品会計基準の見直しと合わせて検討することとし、本適用指針においては示さないこととした。
- 会計基準第80-20項また書きでは、過去の期間に充足(又は部分的に充足)した履行義務から、当期に認識した収益(例えば、取引価格の変動)がある場合には、当該金額を注記することとしている。この点に関して、履行義務の充足に係る進捗度を合理的に見積ることができないが、当該履行義務を充足する際に発生する費用を回収することが見込まれる場合には、履行義務の充足に係る進捗度を合理的に見積ることができる時まで、一定の期間にわたり充足される履行義務について原価回収基準により処理することとしている(会計基準第45項)。また、一定の期間にわたり充足される履行義務について、契約の初期段階において、履行義務の充足に係る進捗度を合理的に見積ることができない場合には、当該契約の初期段階に収益を認識せず、当該進捗度を合理的に見積ることができる時から収益を認識することができるとする代替的な取扱いを設けている(本適用指針第99項参照)。
- 審議の過程で、例えば、本適用指針第99項の代替的な取扱いを適用した際に、会計基準第80-20項また書きの金額に代替的な取扱いを適用したことにより発生する影響も含めるべきか否かが明確ではないとの意見が聞かれた。この点に関して、当該影響も、過去の期間に充足(又は部分的に充足)した履行義務から、当期に認識した収益であることに違いはないため、当該影響を含めることにより有用な情報が開示されるものと考えられる。
(3)工事契約等から損失が見込まれる場合
- 193. 工事契約会計基準は、会計基準が適用される時(2021年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首)に廃止される(会計基準第90項)こととなるため、工事契約会計基準に定める注記事項について本適用指針に含めるべきか否かの検討を行った。
- そのうち、「当期の工事損失引当金繰入額」の注記事項については、その記載がない場合には、売上原価に工事損失がどの程度含まれているのかという、これまで提供されていた情報が開示されなくなる。また、「同一の工事契約に関する棚卸資産と工事損失引当金がともに計上されることとなる場合」の注記事項については、その記載がない場合には、当該棚卸資産と工事損失引当金を総額表示又は相殺表示のいずれの方法を採用しているのか、工事損失引当金に対応する棚卸資産がどの程度発生しているのかという、これまで提供されていた情報が開示されなくなる。
- このように、工事契約会計基準に定める注記事項について本適用指針に含めない場合、財務諸表利用者にとっての情報が減少することになるため、工事契約会計基準における注記事項の定めを踏襲することとした(本適用指針第106-9項参照)。
- なお、工事契約会計基準に定める注記事項のうち、「工事契約に係る認識基準」及び「決算日における工事進捗度を見積るために用いた方法」の記載については、通常、会計基準の注記事項における「履行義務の充足時点に関する情報」(会計基準第80-18項)に含めて注記することになると考えられるため、工事契約会計基準の廃止に伴って追加する注記事項の検討対象に含めないこととした。
設 例
- <設例全般の留意点について>
- 本適用指針の設例は、会計基準及び本適用指針で示された内容についての理解を深めるために参考として示されたものであり、次の点に留意する必要がある。
- ・ 仮定として示された前提条件の記載内容は、経済環境や各企業の実情等に応じて異なり得るものであり、異なる前提条件のもとでは会計処理が変わる可能性がある。
- ・ 設例における勘定科目の名称は便宜的に示したものであり、取引の実態に即して決定することとなる。
- ・ 我が国に特有な取引等についての設例([設例29]から[設例32])については、IFRS第15号の解釈を示すものではなく、IFRS第15号を適用する場合には、結果が異なり得る。
Ⅰ.基本となる原則に関する設例
- [設例1] 収益を認識するための5つのステップ(商品の販売と保守サービスの提供)
- 1.前提条件
- (1) 当期首に、A社はB社(顧客)と、標準的な商品Xの販売と2年間の保守サービスを提供する1つの契約を締結した。
- (2) A社は、当期首に商品XをB社に引き渡し、当期首から翌期末まで保守サービスを行う。
- (3) 契約書に記載された対価の額は12,000千円である。
- 2.収益を認識するための5つのステップによる検討
- (1) 会計基準では、基本となる原則についての関係者の理解に資するために、基本となる原則に従って収益を認識するための5つのステップ(会計基準第17項)を示している。本設例では、収益を認識するための5つのステップの順に、商品Xの販売と保守サービスの提供に係る契約への適用例を示す。
ステップ1:顧客との契約を識別する。
ステップ2:商品Xの販売と保守サービスの提供を履行義務として識別し、それぞれを収益認識の単位とする。
ステップ3:商品Xの販売及び保守サービスの提供に対する取引価格を12,000千円と算定する。
ステップ4:商品X及び保守サービスの独立販売価格に基づき、取引価格12,000千円を各履行義務に配分し、商品Xの取引価格は10,000千円、保守サービスの取引価格は2,000千円とする。
ステップ5:履行義務の性質に基づき、商品Xの販売は一時点で履行義務を充足すると判断し、商品Xの引渡時に収益を認識する。また、保守サービスの提供は一定の期間にわたり履行義務を充足すると判断し、当期及び翌期の2年間にわたり収益を認識する。 - (2) 以上の結果、企業が当該契約について当期(1年間)に認識する収益の額は次のとおりである。

- (3) 次の図表は、当該契約に5つのステップを適用した場合のフローを示すものである。

Ⅱ.IFRS第15号の設例を基礎とした設例
1.契約の識別
- [設例2] 対価が契約書の価格と異なる場合
- 1.前提条件
- (1) A社は、医薬品1,000個を1,000千円で、X国のB社(顧客)に販売する契約を締結した。X国は深刻な不況下にあり、A社は、これまでX国の企業との取引実績がないことから、B社から1,000千円全額は回収することができないと予想した。ただし、A社は、X国の経済は2年から3年で回復し、B社との関係がX国での潜在的な顧客との関係構築に役立つ可能性があると判断した。
- (2) A社は、会計基準第19項(5)の要件に該当するかどうかを判定する際に、会計基準第47項及び本適用指針第24項(2)も考慮し、事実及び状況の評価に基づき、B社から対価の全額ではなく、その一部を回収することを見込んだ。したがって、A社は、取引価格は1,000千円(固定対価)ではなく変動対価であると判断し、当該変動対価として400千円に対する権利を得ると判断した。
- (3) A社は、B社の対価を支払う意思と能力を考慮し、X国は不況下にあるが、B社から400千円を回収する可能性は高いと判断した。したがって、A社は、会計基準第19項(5)の要件が、変動対価の見積額400千円に基づいて満たされると判断した。さらに、A社は、契約条件並びに他の事実及び状況の評価に基づき、会計基準第19項における他の要件も満たされると判断した。
- 2.会計処理
- 医薬品の販売時

- (*1) A社は、B社との契約について会計基準第19項の要件をすべて満たしていると判断したため、変動対価としてB社から回収する可能性が高いと見積った400千円の収益を認識する。
2.契約変更
- [設例3] 契約変更後の取引価格の変動
- 1.前提条件
- (1) A社(3月決算会社)は、X1年10月1日に、2つの別個の製品X及び製品Yを販売する契約をB社(顧客)と締結した。A社は、製品XをX1年10月1日に、製品YをX2年4月30日にB社に引き渡す。また、製品X及び製品Yの独立販売価格は同額である。
- (2) 契約の価格には、1,000千円の固定対価に加えて、200千円増額される可能性がある変動対価が含まれている。A社は、変動対価の額に関する不確実性が事後的に解消される時点までに、計上された収益の著しい減額が発生しない可能性が高いと判断し、当該変動対価の見積りを取引価格に含めた(会計基準第54項)。
- (3) A社とB社は、X1年11月30日に契約の範囲を変更し、まだB社に引き渡されていない製品Yに加えて、製品ZをX2年6月30日にB社に引き渡す約束を追加するとともに、契約の価格を300千円(固定対価)増額した。ただし、製品Zの独立販売価格は300千円ではなく、製品X及び製品Yの独立販売価格と同額であった。
まだB社に引き渡されていない製品Y及び製品Zは、契約変更前に引き渡した製品Xとは別個のものであり、製品Zの対価300千円は製品Zの独立販売価格を表していないため、A社は、この契約変更について、既存の契約を解約して新しい契約を締結したものと仮定して処理すると判断した(会計基準第31項(1))。 - (4) A社は、X2年3月31日(決算日)において、権利を得ると見込む変動対価の額の見積りを、当初見積った200千円から240千円に変更した。A社は、変動対価の額に関する不確実性が事後的に解消される時点までに、計上された収益の著しい減額が発生しない可能性が高いため、当該変動対価の見積りの変更を取引価格に含めることができると判断した(会計基準第54項及び第55項)。
- 2.会計処理
- (1) X1年10月1日(製品Xの引渡時)

- (*1) 製品X及び製品Yの独立販売価格は同額であり、変動対価を履行義務の両方ではなく一方に配分することを要求する会計基準第72項の要件に該当しないため、A社は、取引価格1,200千円(=固定対価1,000千円+変動対価200千円)について、製品Xに係る履行義務と製品Yに係る履行義務に、600千円(=1,200千円÷2)ずつ均等に配分する。したがって、A社は製品Xについて600千円の収益を認識する。
- (2) X1年11月30日(契約変更時)

- (*2) 条件変更後の契約の取引価格は900千円(=製品Yに配分された取引価格600千円+条件変更により増額された固定対価300千円)であり、A社は、当該金額を製品Yに係る履行義務と製品Zに係る履行義務に、450千円(=900千円÷2)ずつ均等に配分する。
- (3) X2年3月31日(決算日)

- (*3) A社は、契約変更を会計基準第31項(1)に従って、既存の契約を解約して新しい契約を締結したものと仮定して処理するが、取引価格の増加額40千円(=240千円-200千円)は当初見積った変動対価に起因する。したがって、A社は、40千円を製品Xに係る履行義務と製品Yに係る履行義務に、契約における取引開始日と同じ基礎で配分するため、引渡済みの製品Xに係る収益20千円(=40千円÷2)を取引価格の変動が生じたX2年3月期に認識する(会計基準第76項(1))。
- また、製品Yは契約変更時においてB社に引き渡されていないため、製品Yに帰属する取引価格の変動である残りの20千円(=40千円-製品Xに配分された20千円)は、契約変更時の残存履行義務に配分される。
- (4) X2年4月30日(製品Yの引渡時)

- (*4) 製品Y及び製品Zの独立販売価格は同額であり、変動対価を両方の履行義務ではなく一方の履行義務に配分することを要求する会計基準第72項の要件に該当しないため、A社は、変更後の契約についての取引価格の増加額20千円も、製品Yに係る履行義務及び製品Zに係る履行義務に均等に配分する。したがって、製品Yに係る履行義務及び製品Zに係る履行義務に配分される取引価格の額は10千円(=20千円÷2)増加して460千円(=450千円+10千円)となる。
- そのため、A社は製品Yについて460千円の収益を認識する。
- (5) X2年6月30日(製品Zの引渡時)

- (*5) A社は製品Zについて460千円(=450千円+10千円)の収益を認識する。
- [設例4] 累積的な影響に基づき収益を修正する契約変更
- 1.前提条件
- (1) A社(3月決算の建設会社であり、6か月ごとより高い頻度で期中財務諸表を作成している。)は、X1年度に、B社(顧客)の所有する土地にB社のための商業ビルを建設する契約をB社と締結した。契約における固定対価は1,000,000千円であるが、建物が24か月以内に完成した場合には、A社は200,000千円の割増金を受け取る。
- (2) A社は、当該建設工事は天候や規制上の承認等の影響を非常に受けやすく、かつ、類似した契約についての経験が少ないことから、変動対価の額に関する不確実性が事後的に解消される時点までに、計上された収益の著しい減額が発生しない可能性が高いとは判断できないため、200,000千円の割増金は取引価格に含めないこととした(会計基準第54項)(本適用指針第25項参照)。契約における取引開始日のA社の見積額は次のとおりであった。

- (3) A社は、B社が建設中の建物を支配しており、約束した財又はサービスの束を一定の期間にわたり充足される単一の履行義務として処理するものと判断した(会計基準第38項(2))。また、発生した原価を基礎としたインプットに基づき、履行義務の充足に係る進捗度を適切に見積ることができると判断した。
- (4) X1年度末までに発生した原価は420,000千円であった。A社は、変動対価に関する見積りを見直し、依然として、計上された収益の著しい減額が発生しない可能性が高いとは判断できないと結論付けた(会計基準第54項及び第55項)。
- (5) X2年度の4月1日から6月30日までの期中会計期間に、A社とB社は、建物の間取りを変更するため、契約を変更することに合意した。その結果、固定対価は150,000千円、見積工事原価は120,000千円増加し、契約変更後の対価の総額は最大で1,350,000千円(=固定対価1,150,000千円+割増金200,000千円)となった。なお、X2年度の期首から契約変更時までに原価は発生していない。
- (6) 当該契約変更により、A社が割増金の200,000千円を受け取る条件となる期間も6か月延長され、建物が30か月以内に完成した場合に変更された。A社は、当該契約変更日において、履行すべき残りの作業は主として建物内部に係るものであるため気象条件の影響を受けないことや、自らの経験から、変動対価の額に関する不確実性が事後的に解消される時点までに、計上された収益の著しい減額が発生しない可能性が高いと判断し、200,000千円(当該割増金の額)について取引価格に含めると判断した(会計基準第54項)(本適用指針第25項参照)。
- (7) A社は、当該契約変更を評価する際に、会計基準第34項(2)及び本適用指針第6項の諸要因に基づき、変更後の契約により移転する残りの財又はサービスが、契約変更日以前に移転した財又はサービスと別個のものではないと判断し、この契約を引き続き単一の履行義務として処理すると判断した。
- 2.会計処理
- (1) X1年度における工事収益の計上(工事原価の計上については省略する。)

- (*1) 1,000,000千円×X1年度末時点の工事進捗度60%(420,000千円÷700,000千円×100%)=600,000千円
- (2) X2年度の4月1日から6月30日までの期中会計期間(契約変更時)

- (*2) A社は、契約変更を既存の契約の一部であると仮定して処理し、契約変更日において収益の額を累積的な影響に基づき修正する(会計基準第31項(2))。
- (変更後の取引価格)
- 固定対価1,150,000千円+割増金200,000千円=1,350,000千円
- (変更後の工事進捗度)
- 発生した実際原価420,000千円÷変更後の見積工事原価820,000千円(当初の見積工事原価700,000千円+契約変更により増加した見積工事原価120,000千円)×100%=51.2%(小数点以下第2位を四捨五入している。)
- (追加で認識する収益の額)
- 91,200千円(=1,350,000千円×51.2%-変更時までに認識した収益の額600,000千円)
3.履行義務の識別
- [設例5] 財又はサービスが別個のものではない場合
- [設例5-1] 重要な統合サービス(病院の建設)
- 1.前提条件
- (1) A社(建設会社)は、病院を建設する契約をB社(顧客)と締結した。A社は、プロジェクトの全般的な管理に対する責任を負っている。
- (2) 当該契約には、設計、現場の清掃、基礎工事、調達、建設、配管と配線、設備の据付け及び仕上げが含まれる。これらの財又はサービスの多くは、A社又は同業他社により、他の顧客に対して日常的に独立して提供されている。
- 2.財又はサービスが別個のものであるかどうかの判定
- (1) A社は、約束した財又はサービスは、会計基準第34項(1)及び本適用指針第5項に従って別個のものとなり得ると判断した。すなわち、A社は、B社が当該財又はサービスから単独であるいはB社が容易に利用できる他の資源と組み合わせて便益を享受することができ、また、B社が個々の財又はサービスから、それらの使用、消費、売却又は保有によって経済的便益を生み出すことができると判断した。
- (2) しかし、A社は、財又はサービス(インプット)をB社が契約した目的である病院(結合後のアウトプット)に統合する重要なサービスを提供するため、当該財又はサービスを移転する約束は、会計基準第34項(2)及び本適用指針第6項の諸要因に従って、契約に含まれる他の約束と区分して識別できないと判断した。
- (3) (1)及び(2)による判断の結果、会計基準第34項における要件の両方が満たされるわけではないため、A社は、当該財又はサービスは別個のものではなく、契約で約束した財又はサービスのすべてを単一の履行義務として処理すると判断した。
- [設例5-2] 重要な統合サービス(特殊仕様の装置)
- 1.前提条件
- (1) A社は、複雑な特殊仕様の装置の複数のユニットを引き渡す契約をB社(顧客)と締結した。当該装置のそれぞれのユニットは、他のユニットと独立して稼働させることができる。
- (2) A社は、契約により、ユニットを製造するための製造プロセスを確立することが求められている。装置の仕様は、B社が自社で有する設計に基づく特殊なものであり、装置を引き渡す契約とは別の契約に基づいて開発されたものである。
- (3) A社は、契約の全体的な管理に対する責任を負っており、当該契約により、材料の調達、外注業者の選定と管理、製造、組立及び試験を含むさまざまな活動を実施することやそれらを統合することが求められている。
- 2.財又はサービスが別個のものであるかどうかの判定
- (1) A社は、契約における約束を評価し、それぞれのユニットが他のユニットと独立して機能し得ることから、B社はそれぞれのユニットから単独で便益を享受することができるため、約束したユニットはそれぞれ会計基準第34項(1)に従って別個のものとなり得ると判断した。
- (2) A社は、自らの約束の性質は、B社と契約した特殊仕様の装置の複数のユニットを製造して提供することであることに着目し、自らが責任を負うのは、契約の全体的な管理と、さまざまな財又はサービス(インプット)を全体的なサービス及びその成果物である装置(結合後のアウトプット)に統合する重要なサービスの提供であるため、装置及び当該装置を製造するためのさまざまな財又はサービスを提供する約束は、会計基準第34項(2)及び本適用指針第6項に従って、契約に含まれる他の約束と区分して識別できないと判断した。
- (3) さらに、A社が提供する製造プロセスはB社との契約に特有のものであり、A社の履行とさまざまな活動の重要な統合サービスの性質は、装置を製造するA社の活動のうちの1つが変化すると、複雑な特殊仕様の装置の製造に要する他の活動に重要な影響を与えるため、A社の活動は相互依存性及び相互関連性が非常に高いと判断した。
- (4) したがって、A社は、会計基準第34項(2)の要件が満たされないため、A社が提供する財又はサービスは別個のものではないと判断し、契約で約束した財又はサービスのすべてを単一の履行義務として処理すると判断した。
- [設例6] 財又はサービスが別個のものであるかどうかの判定
- [設例6-1] インストール・サービス
- 1.前提条件
- (1) A社(ソフトウェア開発業者)は、B社(顧客)に対してソフトウェア・ライセンスを移転するとともに、インストール・サービスを行い、また、ソフトウェア・アップデート及びオンラインや電話によるテクニカル・サポートを2年間提供する契約を締結した。
- (2) A社は、ソフトウェア・ライセンス、インストール・サービス及びテクニカル・サポートを独立して提供している。インストール・サービスには、利用者の使用目的(例えば、販売、在庫管理、情報技術)に応じてウェブ画面を変更することも含まれる。なお、ソフトウェアは、アップデートやテクニカル・サポートがなくても機能し続けるものである。
- (3) A社が提供するインストール・サービスは、同業他社も日常的に行っているものであり、ソフトウェアを著しく修正するものではない。
- 2.財又はサービスが別個のものであるかどうかの判定
- (1) A社は、財又はサービスが会計基準第34項に従って別個のものであるかを判定するために、B社に約束した財又はサービスを評価した。
- (2) A社は、まず、ソフトウェアは他の財又はサービスが提供される前に引き渡され、ソフトウェア・アップデートやテクニカル・サポートがなくても機能し続けることに着目した。また、B社は、契約における取引開始日に移転されるソフトウェア・ライセンスと組み合わせることにより、その後のソフトウェア・アップデートから便益を享受することができる。したがって、A社は、B社が財又はサービスのそれぞれから単独であるいはB社が容易に利用できる他の資源と組み合わせて便益を享受することができるため、会計基準第34項(1)の要件は満たされると結論付けた。
- (3) A社は、本適用指針第6項の原則及び諸要因を考慮し、財又はサービスを顧客に移転する約束について、契約に含まれる他の約束と区分して識別できることを求める会計基準第34項(2)の要件が満たされているのかどうかを判定するために、次のことを考慮した。
- ① ソフトウェア・ライセンスはインストール・サービスによりB社のシステムに統合されるが、インストール・サービスは、同業他社から日常的に購入することができるものであり、B社がソフトウェア・ライセンスを使用して便益を享受する能力に著しい影響を与えない。
- ② ソフトウェア・アップデートは、B社がライセンス期間中にソフトウェア・ライセンスを使用して便益を享受する能力に著しい影響を与えない。
- ③ 約束した財又はサービスのいずれも、一方を著しく修正する又は顧客仕様のものとするものではなく、A社はソフトウェアとサービスを結合後のアウトプットに統合する重要なサービスを提供していない。
また、A社は、当初のソフトウェア・ライセンスを移転する約束を、その後にインストール・サービス、ソフトウェア・アップデート又はテクニカル・サポートを提供する約束と独立して履行することができ、かつ、ソフトウェアとこれらのサービスは互いに著しい影響を与えないため、相互依存性及び相互関連性は高くないと結論付けた。 - (4) A社は、(3)の評価を踏まえ、それぞれの財又はサービスについて、会計基準第34項(2)の要件が満たされると判断した。
- (5) A社は、上記の判断に基づき、契約における次の財又はサービスのそれぞれについて履行義務を識別する。
- ① ソフトウェア・ライセンス
- ② インストール・サービス
- ③ ソフトウェア・アップデート
- ④ テクニカル・サポート
- (6) A社は、インストール・サービス、ソフトウェア・アップデート及びテクニカル・サポートについての履行義務のそれぞれが、一定の期間にわたり充足されるものか又は一時点で充足されるものかを判定する(会計基準第35項から第40項)。また、ソフトウェア・ライセンスを移転するという自らの約束の性質についても本適用指針第63項に従って評価する([設例23]参照)。
- [設例6-2] インストール・サービス(顧客仕様のソフトウェア)
- 1.前提条件
- [設例6-1]の1.前提条件(3)に替えて次の前提条件を置く。その他の前提条件は[設例6-1]と同様とする。
- インストール・サービスにより、ソフトウェアはB社仕様のものに修正され、B社が使用している他のB社仕様のソフトウェア・アプリケーションとのインターフェースを可能とする大幅な新機能の追加が契約において定められている。A社が提供するインストール・サービスは、同業他社も提供できるものである。
- 2.財又はサービスが別個のものであるかどうかの判定
- (1)及び(2)は[設例6-1]と同様の前提条件を置く。
- (3) A社は、本適用指針第6項の原則及び諸要因を考慮し、財又はサービスを顧客に移転する約束について、契約に含まれる他の約束と区分して識別できることを求める会計基準第34項(2)の要件が満たされているかどうかを判定するために、次のことを考慮した。
- ① 契約条件により、B社仕様のインストール・サービスの履行によって、ライセンスを供与したソフトウェアを既存のソフトウェア・システムに統合する重要なサービスを提供する約束が生じる。つまり、A社は、ソフトウェア・ライセンスとB社仕様のインストール・サービスを、契約に定められた結合後のアウトプット(すなわち、機能的かつ統合されたソフトウェア・システム)を生み出すためのインプットとして使用している。
- ② ソフトウェアはインストール・サービスにより著しく修正され、B社仕様のものとされている。
- (4) A社は、(3)の評価を踏まえ、ソフトウェア・ライセンスとB社仕様のインストール・サービスは、会計基準第34項(2)の要件を満たさず、別個のものではないと判断した。
- (5) また、A社は、[設例6-1]と同様に、ソフトウェア・アップデートとテクニカル・サポートは、別個のものであると判断した。
- (6) A社は、上記の判断に基づき、契約における次の財又はサービスのそれぞれについて履行義務を識別する。
- ① ソフトウェア・カスタマイズ(ソフトウェア・ライセンスとB社仕様のインストール・サービスから構成される。)
- ② ソフトウェア・アップデート
- ③ テクニカル・サポート
- (7) A社は、履行義務のそれぞれが、一定の期間にわたり充足されるものか又は一時点で充足されるものかを判定する(会計基準第35項から第40項)。
- [設例6-3] 据付サービス
- 1.前提条件
- A社は、設備Xの販売と据付サービスを提供する契約をB社(顧客)と締結した。設備XはB社独自の仕様のものではなく、単独で稼働できる。設備Xに必要な据付サービスは複雑なものではなく、同業他社も当該サービスを提供することができる。
- 2.財又はサービスが別個のものであるかどうかの判定
- (1) A社は、契約における2つの約束した財又はサービス、すなわち、設備Xと据付サービスを識別した。A社は、それぞれの約束した財又はサービスが別個のものであるかどうかを判定するため、会計基準第34項の要件を次のとおり評価した。
- (2) A社は、B社が、設備Xの使用又は廃棄における回収額より高い金額で設備Xを売却することにより、単独で又はB社が容易に利用できる他の資源(例えば、A社以外の企業から購入できる据付サービス)と組み合わせて便益を享受することができると判断した(本適用指針第5項参照)。また、B社は、既にA社から取得した他の資源と組み合わせることにより、据付サービスから便益を享受することができるため、設備Xと据付サービスはそれぞれ会計基準第34項(1)の要件を満たしていると判断した。
- (3) 次に、A社は、本適用指針第6項の原則及び諸要因を考慮し、財又はサービスを顧客に移転する約束について、契約に含まれる他の約束と区分して識別できることを求める会計基準第34項(2)の要件が満たされているかどうかを、次のとおり評価した。
- ① A社は、設備Xを引き渡し、その後に据え付けることを約束しており、設備Xを移転する約束を、その後に設備を据え付ける約束とは別に履行できるため、重要な統合サービスを提供していない。A社の約束は、設備Xと据付サービスを結合後のアウトプットに統合することではない。
- ② A社の据付サービスは、設備Xを著しく修正する又は顧客仕様のものとするものではない。
- ③ B社は、設備Xに対する支配を獲得した後にのみ据付サービスから便益を享受することができるものの、A社は、設備Xを移転する約束を、据付サービスを提供する約束とは別に履行できるため、据付サービスは設備Xに著しい影響を与えるものではない。設備Xと据付サービスは、それぞれ他方に対し著しい影響を与えないため、相互依存性及び相互関連性は高くない。
- (4) A社は、(3)の評価を踏まえ、設備Xを移転する約束と据付サービスを提供する約束は、会計基準第34項(2)に従って、それぞれ区分して識別できると判断した。
- (5) A社は、上記の判断に基づき、契約における次の財又はサービスについて履行義務を識別する。
- ① 設備X
- ② 据付サービス
- (6) A社は、履行義務のそれぞれが、一定の期間にわたり充足されるものか又は一時点で充足されるものかを判定する(会計基準第35項から第40項)。
- [設例6-4] 特別仕様の消耗品
- 1.前提条件
- A社は、B社(顧客)と、特別仕様ではない(すなわち、B社独自の仕様ではなく、単独で稼働できる)設備Xを提供するとともに、当該設備で使用するための特別仕様の消耗品Yを今後3年間、所定の時期に提供する契約を締結した。当該消耗品は、A社だけが製造しているものの、独立して販売されているものである。
- 2.財又はサービスが別個のものであるかどうかの判定
- (1) A社は、次の理由から、設備Xと消耗品Yはそれぞれ会計基準第34項(1)に従って別個のものとなり得ると判断した。
- ① 消耗品Yは、A社により日常的に独立して販売されている。このため、B社は、容易に利用できる消耗品Yと組み合わせることにより、設備Xから便益を享受することができる。
- ② B社は、契約に基づき当初においてB社に引き渡された設備Xと組み合わせることにより、契約に基づき引き渡される消耗品Yから便益を享受することができる。
- (2) A社は、次の理由から、設備Xを移転する約束と消耗品Yを3年間にわたり提供する約束は、会計基準第34項(2)及び本適用指針第6項に従って、それぞれ契約に含まれる他の約束と区分して識別できると判断した。
- ① 設備Xと消耗品Yを結合後のアウトプットに変換する重要な統合サービスを提供していないことを考慮すると、設備Xと消耗品Yは、この契約における結合後のアウトプットの元となるインプットではない。
- ② 設備Xと消耗品Yはいずれも、他方を著しく修正する又は顧客仕様のものとするものではない。
- ③ A社は、設備Xと消耗品Yは互いに著しい影響を与えないため、相互依存性及び相互関連性は高くないと結論付けた。B社がこの契約において消耗品Yから便益を享受することができるのは、設備Xに対する支配を獲得した後のみであり、また、契約における約束のそれぞれを他方の約束と独立して履行できる(すなわち、A社は、仮にB社が消耗品Yを購入しなかったとしても設備Xを移転する約束を履行することができ、また、仮にB社が設備Xを別に取得したとしても消耗品Yを提供する約束を履行することができる。)ため、消耗品Yは設備Xを機能させるために必要なものではあるものの、設備Xと消耗品Yはそれぞれ互いに著しい影響を与えない。
- (3) A社は、上記の判断に基づき、契約における次の財又はサービスについて履行義務を識別する。
- ① 設備X
- ② 消耗品Y
- (4) A社は、履行義務のそれぞれが、一定の期間にわたり充足されるものか又は一時点で充足されるものかを判定する(会計基準第35項から第40項)。
4.一定の期間にわたり充足される履行義務
- [設例7] 資産の別の用途への転用の可能性及び対価を収受する強制力のある権利の評価
- 1.前提条件
- (1) A社は、コンサルティング・サービスを提供する契約をB社(顧客)と締結した。当該契約に基づき、A社は、B社に固有の事実及び状況に関する専門的意見を提供する。
- (2) A社が約束どおりに契約を履行できなかったこと以外の理由で、B社が契約を解約する場合には、A社に生じた費用に15%の利益相当額を加算した金額をB社が補償することが契約で定められている。この15%の利益相当額は、A社が類似の契約から得る利益相当額に近似するものである。
- 2.一定の期間にわたり充足される履行義務かどうかの判定
- (1) A社は、会計基準第38項(1)の要件と本適用指針第9項の定めを考慮して、A社が契約における義務を履行するにつれて、B社が便益を享受するかどうかを次のとおり判定した。
- ① A社が義務を履行できず、B社が他のコンサルティング企業と新たに契約する場合には、当該他のコンサルティング企業はA社が履行した仕掛中の業務の便益を享受しないため、A社が現在までに完了していた作業を大幅にやり直すことが必要となる。
- ② 専門的意見の性質として、B社は専門的意見を受け取った時にしかA社の履行の便益を享受できない。
- ③ したがって、A社は、自らの履行義務は会計基準第38項(1)の要件に該当しないと判断した。
- (2) さらに、A社は、会計基準第38項(3)を考慮して、自らの履行義務が一定の期間にわたり充足される履行義務かどうかを判定した。
- ① 専門的意見はB社に固有の事実及び状況に関するものであるため、当該専門的意見の形成は、A社が別の用途に転用できる資産を生じさせず、A社が当該資産を別の顧客に容易に使用することは実務上制約されている(本適用指針第10項参照)。
- ② A社は、現在までに履行を完了した部分について、費用に合理的な利益相当額(他の契約における利益相当額に近似する額)を加えた対価を収受する強制力のある権利を有している(本適用指針第11項から第13項参照)。
- ③ したがって、A社は、自らの履行義務は会計基準第38項(3)の要件に該当し、一定の期間にわたり充足される履行義務であると判断した。
- (3) これらを踏まえ、A社は、会計基準第41項から第45項に従って、履行義務の充足に係る進捗度を見積り、一定の期間にわたり収益を認識する。
- [設例8] 履行義務が一定の期間にわたり充足されるのか一時点で充足されるのかの判定
- [設例8-1] 履行を完了した部分について対価を収受する強制力のある権利を有していない場合
- 1.前提条件
- (1) A社は多区画の住宅団地を開発しており、建設中の特定の区画について拘束力のある販売契約をB社(顧客)と締結した。各区画は同様の間取り及び広さであるが、団地の中での各区画の場所等、他の属性は異なる。
- (2) B社が契約締結時に支払う預け金は、A社が契約どおりに当該区画の建設を完了できなかった場合にのみ返金される。契約額の残りの部分は、契約における取引完了時に支払われ、その時点でB社が区画を物理的に占有する。B社が区画の完成前に債務不履行となる場合には、A社はB社からの預け金を留保する権利を有するだけとなる。
- 2.一定の期間にわたり充足される履行義務かどうかの判定
- (1) A社は、契約における取引開始日に、会計基準第38項(3)に従って、区画を建設してB社に移転する約束が一定の期間にわたり充足される履行義務かどうかを判定する。
- (2) A社は、区画の建設が完了するまでは、B社からの預け金に対する権利のみを有しているため、履行を完了した部分についての補償を受ける権利を有しておらず、履行を完了した部分について対価を収受する強制力のある権利を有していないと判断した(本適用指針第11項から第13項参照)。
- (3) したがって、A社の履行義務は、会計基準第38項(3)②の要件を満たしていないため、会計基準第38項(3)①を満たすか否かにかかわらず、一定の期間にわたり充足される履行義務ではないことから、A社は、当該履行義務を会計基準第39項及び第40項に従って、一時点で充足される履行義務として処理すると判断した。
- [設例8-2] 履行を完了した部分について対価を収受する強制力のある権利を有している場合
- 1.前提条件
- (1) A社は多区画の住宅団地を開発しており、建設中の特定の区画について拘束力のある販売契約をB社(顧客)と締結した。各区画は同様の間取り及び広さであるが、団地の中での各区画の場所等、他の属性は異なる。
- (2) 契約締結時に、B社は、返金が不要な預け金を支払い、区画の建設中にA社に中間支払を行う。契約には、A社が区画を別の顧客に使用させることを実質的に禁止する条件がある。また、A社が契約どおりに履行できない場合を除いて、B社は契約を解約する権利を有していない。
- (3) B社が中間支払の期限到来時に支払を行うことができないことにより債務不履行となる場合に、A社が区画の建設を完了しているときには、A社は、契約で約束された対価のすべてを受け取る権利を有する。
- (4) 開発業者が契約に基づく義務を履行していることを条件に、顧客に債務の履行を求める権利を開発業者に与えるとした判例が存在する。
- 2.一定の期間にわたり充足される履行義務かどうかの判定
- (1) A社は、契約における取引開始日に、会計基準第38項(3)に従って、区画を建設してB社に移転する約束が一定の期間にわたり充足される履行義務かどうかを判定する。
- (2) A社は、契約により所定の区画を別の顧客に移転することは禁止されているため、A社の履行によって生じた資産(区画)は別の用途に転用できないと判断した(本適用指針第10項参照)。なお、当該資産を別の顧客に使用させることができるかどうかを判定する際には、契約の解約の可能性は考慮しない。
- (3) A社は、B社が債務不履行となった場合に、A社が約束どおりに履行を継続するならば、約束された対価のすべてに対して強制力のある権利を有するため、本適用指針第11項から第13項に従って、履行を完了した部分について対価を収受する強制力のある権利も有している。
- (4) したがって、契約条件及び慣行により、A社は履行を完了した部分について対価を収受する強制力のある権利を有していることが示されているため、会計基準第38項(3)の要件を満たし、A社は、会計基準第41項から第45項に従って、履行義務の充足に係る進捗度を見積り、一定の期間にわたり収益を認識すると判断した。
なお、多区画の住宅団地の建設では、開発業者は、団地内の個々の区画の建設について個々の顧客と多数の契約を有している場合がある。そのような場合には、開発業者は、契約ごとに処理することになるが、建設の性質に応じて、基礎工事等の当初の建設作業を行う際の義務の履行を、共有区域の建設とともに、各契約における履行義務の充足に係る進捗度を見積る際に反映することが必要となる可能性がある。 - [設例8-3] 履行を完了した部分について対価を収受する強制力のある権利を有している場合(顧客の債務
不履行時に契約を解約できる場合) - 1.前提条件
- [設例8-2]の1.前提条件(3)に替えて次の前提条件とする。その他の前提条件は[設例8-2]と同様とする。
- A社は、B社が債務不履行となる場合に、契約に定める支払の履行をB社に求めるか、又は建設中の資産及び契約額の一定割合の違約金と交換に契約を解約することを選択することができる。
- 2.一定の期間にわたり充足される履行義務かどうかの判定
- (1) A社が区画の建設中に契約を解約する場合、B社がA社に対して負う義務は、部分的に完成した資産に対する支配をA社に移転し、所定の違約金を支払うことに限定される。しかし、A社は、契約に基づく全額を受け取る権利を求めることも選択できるため、本適用指針第11項から第13項に従って、履行を完了した部分について対価を収受する強制力のある権利を有している。なお、B社が債務不履行となった場合にA社が契約の解約を選択できるという事実は、評価に影響を与えない。
- (2) したがって、A社がB社に契約で約束した対価の支払の継続を求める権利に強制力があることを前提として、A社は、会計基準第41項から第45項に従って、履行義務の充足に係る進捗度を見積り、一定の期間にわたり収益を認識すると判断した。
5.履行義務の充足に係る進捗度
- [設例9] 履行義務の充足に係る進捗度の見積り(インプット法)
- 1.前提条件
- (1) A社(12月決算会社)は、X1年11月に、3階建ての建物を改装して新しいエレベーターを設置する契約を5,000千円の対価でB社(顧客)と締結した。
- (2) 取引価格と予想原価は、次のとおりであった。

- (3) A社は本適用指針第39項から第47項に従って、エレベーターをB社に移転する前にエレベーターに対する支配を獲得し、自らは本人に該当すると判断した。
- (4) A社は、履行義務の充足に係る進捗度を見積るために、コストに基づくインプット法を使用した。A社は、本適用指針第21項及び第22項に従って、エレベーターを調達するために発生したコストが、履行義務の充足に係る進捗度に比例しているかどうかを次のとおり評価した。
- ① A社は、エレベーターの設置を含む約束した改装サービスは、一定の期間にわたり充足される単一の履行義務であると判断した。
- ② B社は、X1年12月にエレベーターが現地に引き渡された時にエレベーターに対する支配を獲得するが、エレベーターはX2年6月までは建物に設置されない。
- ③ エレベーターの調達原価(1,500千円)は、履行義務を完全に充足するための合計予想原価(4,000千円)の総額に比して重要である。
- ④ A社は、エレベーターの設計や製造には関与しない。
- (5) したがって、A社は、エレベーターの調達原価を進捗度の見積りに含めると、自らの履行の程度を過大に表示することになると判断し、本適用指針第21項及び第22項に従って、進捗度の見積りにおいて、エレベーターの調達原価1,500千円を発生したコスト及び取引価格から除外する。また、A社は、エレベーターの移転に係る収益をエレベーターの調達原価1,500千円と同額(すなわち、利益相当額はゼロ)で認識する。
- (6) X1年12月31日現在で、発生したその他の原価(エレベーターを除く。)は500千円であった。
- 2.会計処理
- A社のX1年12月31日現在(決算日)の仕訳は、次のとおりである。
- (1) 収益の計上

- (*1) (取引価格5,000千円-エレベーターの調達原価1,500千円)×工事進捗度20%(500千円÷2,500千円×100%)+エレベーターの調達原価1,500千円=2,200千円
- (2) 原価の計上

- (*2) 発生したその他の原価500千円+エレベーターの調達原価1,500千円=2,000千円
6.変動対価
- [設例10] 変動対価の見積り
- 1.前提条件
- (1) A社(12月決算会社)は、顧客仕様の建物を建設する契約をB社(顧客)と締結した。A社は、当該建物を移転する約束は、一定の期間にわたり充足される履行義務であると判断した。
- (2) 約束された対価は2,500,000千円であるが、建物の完成がX2年3月31日より1日遅れるごとに対価が10,000千円減額され、X2年3月31日より1日早まるごとに対価が10,000千円増額される。
- (3) さらに、建物の完成時に、第三者による検査で、契約で定められた方法に基づく評点が付けられる。建物に所定の評点が付いた場合には、A社は150,000千円の報奨金を受け取る権利を得る。
- 2.取引価格の算定
- (1) A社は、取引価格を算定する際に、権利を得ることとなる変動対価の各要素について、会計基準第51項における次の①及び②の方法を用いて見積りを行った。
- ① A社は、建物の完成時期に応じた対価の増額又は減額に関連する変動対価を見積るために、権利を得ることとなる対価の額をより適切に予測できる方法として、期待値による方法を使用することを決定した。
- ② A社は、建物の検査の評価に係る報奨金に関連する変動対価を見積るにあたり、考え得る結果が2つ(150,000千円又はゼロ)のみであるため、権利を得ることとなる対価の額をより適切に予測できる方法として、最頻値による方法を使用することを決定した。
- (2) A社は、変動対価の見積りの一部又は全部を取引価格に含めるべきかどうかについて、会計基準第54項及び本適用指針第25項の定めを考慮して決定する。
- [設例11] 返品権付きの販売
- 1.前提条件
- (1) A社は、製品Xを1個100千円で販売する100件の契約を複数の顧客と締結し(100千円×100個=10,000千円)、製品Xに対する支配を顧客に移転した時に現金を受け取った。A社の取引慣行では、顧客が未使用の製品Xを30日以内に返品する場合、全額返金に応じることとしている。A社の製品Xの原価は60千円である。
- (2) この契約では顧客が製品Xを返品することが認められているため、A社が顧客から受け取る対価は変動対価である。A社が権利を得ることとなる変動対価を見積るために、A社は、当該対価の額をより適切に予測できる方法として期待値による方法(会計基準第51項)を使用することを決定し、製品X97個が返品されないと見積った。
- (3) A社は、本適用指針第25項の諸要因を考慮して、返品は自らの影響力の及ばない要因の影響を受けるが、製品X及びその顧客層からの返品数量の見積りに関する十分な情報を有していると判断した。さらに、返品数量に関する不確実性は短期間(すなわち、30日の返品受入期間)で解消されるため、A社は、変動対価の額に関する不確実性が事後的に解消される時点までに、計上された収益の額9,700千円(=100千円×返品されないと見込む製品X97個)の著しい減額が発生しない可能性が高いと判断した(会計基準第54項)。
- (4) A社は、製品Xの回収コストには重要性がないと見積り、返品された製品Xは利益が生じるように原価以上の販売価格で再販売できると予想した。
- 2.会計処理
- 顧客への製品Xに対する支配の移転に関する仕訳は、次のとおりである。
- (1) 収益の計上

- (*1) 返品されると見込む製品X3個(=100個-97個)については収益を認識せず、9,700千円の収益を認識する(本適用指針第85項参照)。
- (*2) 返品されると見込む製品X3個について、300千円(=100千円×3個)の返金負債を認識する(会計基準第53項)(本適用指針第85項参照)。
- (2) 原価の計上

- (*3) 60千円×100個=6,000千円
- (*4) 返金負債の決済時に顧客から製品Xを回収する権利について180千円(=60千円×3個)を認識する(本適用指針第85項、第88項及び第105項参照)。
- [設例12] 価格の引下げ
- [設例12-1] 変動対価の見積りが制限されない場合
- 1.前提条件
- (1) A社は、X1年12月1日に、B社(顧客)と製品Xを1個当たり100千円で1,000個販売する契約を締結した(100千円×1,000個=100,000千円)。B社は販売業者であり、B社からA社への支払は、B社が製品Xを最終顧客に販売する時点までに行われる。B社は、通常、製品Xを取得してから90日以内に最終顧客に販売する。製品Xに対する支配は、X1年12月1日にB社に移転する。
- (2) A社は、過去の慣行に基づき、また、B社との関係を維持するため、B社に対し、価格の引下げを行うことを見込んでいる。これにより、B社が製品Xの値引きを行い、製品Xを流通させることが容易になるからである。したがって、この契約における対価は変動対価である。A社は、製品X及び類似の製品Yの販売について十分な経験を有している。
- (3) A社は、権利を得ることとなる変動対価を見積るために、当該対価の額をより適切に予測できる方法として、期待値による方法(会計基準第51項)を使用することを決定した。
- (4) これまでA社が製品X及び類似の製品Yについて約20%の価格の引下げを行ったという観察可能なデータがあり、A社は、現在の市場環境を勘案すると、製品Xを流通させるためには、20%の価格の引下げで十分であると判断した。A社は、長年にわたり、20%を大きく超える価格の引下げを行ったことはない。
A社は、期待値による方法を使用して、取引価格を80,000千円(=100千円×(100%-20%)×1,000個)と見積った。 - (5) 次に、A社は、変動対価の見積額80,000千円を取引価格に含めることができるかどうかを判断した(会計基準第54項)。A社は、本適用指針第25項の諸要因を考慮して、見積りの裏付けとなる製品X及び現在の市場環境についての過去の経験を十分に有していると考えた。さらに、A社の影響力の及ばない範囲で若干の不確実性があるが、現在の市場の見積りに基づいて、A社は、当該価格の不確実性は短期間で解消されると予想した。
したがって、A社は、変動対価の額に関する不確実性が事後的に解消される時点までに計上された収益の著しい減額が発生しない可能性が高いと判断した。 - 2.会計処理
- A社は、X1年12月1日に80,000千円の収益を認識する。なお、A社は、決算日に取引価格の見積りの見直しを行う(会計基準第55項)。
- [設例12-2] 変動対価の見積りが制限される場合
- 1.前提条件
- (1)から(3)は[設例12-1]と同様の前提条件を置く。
- (4) 製品Xは陳腐化のリスクが高く、A社には製品Xの価格を大きく変更した実績がある。これまでA社が製品Xに類似する製品Yについて20%から60%の大きな幅で価格の引下げを行った観察可能なデータがあり、現在の市場環境を勘案すると、製品Xを流通させるためには15%から50%の幅で価格の引下げが必要となる可能性がある。
A社は、期待値による方法(会計基準第51項)を使用して、40%の値引きを行うと見込み、60,000千円(=100千円×(100%-40%)×1,000個)を変動対価として見積った。 - (5) 次に、A社は、変動対価の見積額60,000千円の一部又は全部を取引価格に含めることができるかどうかを判断した(会計基準第54項)。
- ① A社は、本適用指針第25項の諸要因を考慮して、変動対価の額はA社の影響力の及ばない要因(すなわち、陳腐化のリスク)の影響を受けやすく、製品Xを流通させるためには大幅な価格の引下げが必要となる可能性が高いと考えた。したがって、A社は、変動対価の額に関する不確実性が事後的に解消される時点までに計上された収益の著しい減額が発生しない可能性が高いという結論を下せないため、60,000千円(すなわち、40%の値引き)の見積りを取引価格に含めることはできないと判断した。
- ② A社における過去の類似の取引における実績は、その当時の市場と整合的なものであったため、現在の市場環境を考慮し、A社は、50,000千円(=100千円×(100%-50%)×1,000個)を取引価格に含め、収益を当該金額で認識する場合には、変動対価の額に関する不確実性が事後的に解消される時点までに計上された収益の著しい減額が発生しない可能性が高いと判断した。
- 2.会計処理
- A社は、X1年12月1日に50,000千円の収益を認識する。なお、A社は、決算日に取引価格の見積りの見直しを行う(会計基準第55項)。
- [設例13] 数量値引きの見積り
- 1.前提条件
- (1) A社(12月決算会社であり、6か月ごとより高い頻度で期中財務諸表を作成している。)は、製品Xを1個当たり100千円で販売する契約をX1年1月1日にB社(顧客)と締結した。この契約における対価には変動性があり、B社がX1年12月31日までに製品Xを1,000個よりも多く購入する場合には、1個当たりの価格を遡及的に90千円に減額すると定めている。
- (2) X1年1月1日から3月31日までの期中会計期間に、A社は製品X75個をB社に販売した。A社は、X1年12月31日までのB社の購入数量は1,000個を超えないであろうと判断した。
- (3) A社は、会計基準第54項及び本適用指針第25項の定めを考慮し、A社は製品X及びB社の購入実績に関する十分な経験を有しており、変動対価の額に関する不確実性が事後的に解消される時点(すなわち、購入の合計額が判明する時)までに計上された収益(すなわち、1個当たり100千円)の著しい減額が発生しない可能性が高いと判断した。
- (4) X1年5月に、B社が他の企業を買収し、A社は、X1年4月1日から6月30日までの期中会計期間において、追加的に製品X500個をB社に販売した。A社は、新たな事実を考慮して、B社の購入数量はX1年12月31日までに1,000個を超えるであろうと見積り、1個当たりの価格を90千円に遡及的に減額することが必要になると判断した(会計基準第74項)。
- 2.会計処理
- (1) X1年3月31日

- (*1) A社は、X1年1月1日から3月31日までの期中会計期間に、7,500千円(=1個当たり100千円×75個)の収益を認識する。
- (2) X1年6月30日

- (*2) A社は、X1年4月1日から6月30日までの期中会計期間に、44,250千円(=45,000千円-750千円)の収益を認識する。
- (X1年4月1日から6月30日までの期中会計期間における製品Xの売上高)
- 45,000千円=1個当たり90千円×500個
- (X1年1月1日から3月31日までの期中会計期間に販売した製品X75個に対する売上高の減額についての取引価格の変動(会計基準第74項))
- 750千円=10千円の値引き×75個
7.顧客に支払われる対価
- [設例14] 顧客に支払われる対価
- 1.前提条件
- (1) 消費者向け製品Xを製造しているA社は、X1年1月に、大手の小売チェーンであるB社(顧客)に製品Xを1年間販売する契約を締結した。契約では、B社が1年間に少なくとも15,000千円分の製品Xを購入すること及びA社が契約における取引開始日にB社に対して返金が不要な1,500千円の支払を行うことが定められている。この1,500千円の支払は、B社がA社の製品Xを収容するために棚に変更を加えることについての補償である。
- (2) 会計基準第63項及び本適用指針第30項に従って、A社がB社の棚への何らかの権利に対する支配を獲得するものではないため、B社への支払は、A社がB社から受領する別個の財又はサービスとの交換によるものではないとA社は判断した。したがって、A社は、この1,500千円の支払は取引価格から減額すると判断した。
- (3) A社は、会計基準第64項に従って、B社に支払われる対価1,500千円は、A社が製品Xの販売に対する収益を認識する時に、取引価格の減額として処理すると結論付けた。
- (4) A社は、X1年1月に製品Xを2,000千円販売した。
- 2.会計処理
- X1年1月におけるA社の仕訳は、次のとおりである。
- (1) 契約における取引開始日

- (2) 製品Xの販売時

- (*1) 2,000千円×10%(1,500千円÷15,000千円×100%)=200千円
- (*2) 請求額2,000千円-B社に支払われた対価200千円=1,800千円
- A社は、製品XをB社に販売するにつれて、製品Xについての取引価格を10%減額する。
8.履行義務への取引価格の配分
- [設例15] 値引きの配分
- [設例15-1] 値引きを1つ又は複数の履行義務に配分する場合
- 1.前提条件
- (1) A社は、通常、製品X、Y及びZを独立して販売しており、次の独立販売価格を設定している。

- (2) また、A社は、通常、製品YとZを組み合わせて60千円で販売している。
- (3) A社は、製品X、Y及びZを100千円で販売する契約をB社(顧客)と締結した。A社は、それぞれの製品に係る履行義務を異なる時点で充足する。
- 2.取引価格の配分
- (1) 契約には、取引全体に対する40千円(=140千円-100千円)の値引きが含まれており、仮に会計基準第70項に従って取引価格を独立販売価格の比率に基づき配分する場合には、3つの履行義務すべてに比例的に値引きを配分することになる。しかし、A社は、通常、製品YとZを組み合わせて60千円で販売し、製品Xを40千円で販売しているため、会計基準第71項に従って、値引き40千円については製品Y及びZを移転する約束に配分すべきとの証拠がある。
- (2) 仮にA社が製品Y及びZに対する支配を同じ時点で移転する場合には、A社は、実務上、それらの製品の移転を単一の履行義務として処理することができる。すなわち、A社は取引価格100千円のうち60千円をその単一の履行義務に配分して、製品Y及びZを同時にB社に移転する時には60千円の収益を認識することができる。
- (3) 一方、仮にA社が製品Y及びZを異なる時点で移転する場合には、配分された金額60千円は、製品Y(独立販売価格55千円)及び製品Z(独立販売価格45千円)を移転する約束に次のとおり配分される(会計基準第66項)。

- [設例15-2] 残余アプローチが認められる場合
- 1.前提条件
- (1) [設例15-1]の1.前提条件に加えて、契約には製品Wを移転する約束も含まれており、契約における取引価格は130千円とする。その他の前提条件は[設例15-1]と同様とする。
- (2) A社は、製品Wをさまざまな顧客に幅広い価格帯(15千円から45千円)で販売している。
- 2.取引価格の配分
- (1) 製品Wの独立販売価格は大きく変動するため、A社は、残余アプローチを使用して製品Wの独立販売価格を見積る(本適用指針第31項(3)参照)。
- (2) A社は、残余アプローチを使用して製品Wの独立販売価格を見積る前に、会計基準第71項及び本適用指針第33項に従って、値引きを契約における他の履行義務に配分すべきかどうかを決定する。
- (3) [設例15-1]と同様に、A社は、通常、製品YとZを組み合わせて60千円で販売し、製品Xを40千円で販売しているため、会計基準第71項に従って、取引価格130千円のうち、100千円はそれら3つの製品に配分し、40千円の値引きは製品Y及びZを移転する約束に配分すべきであるという観察可能な証拠がある。A社は、残余アプローチを使用して、製品Wの独立販売価格を次のとおり30千円と見積った。

- (4) A社は、製品Wに配分した30千円は、観察可能な販売価格の範囲内(15千円から45千円)であると確認した。したがって、A社は、この配分結果は、会計基準第65項の取引価格の配分の目的及び会計基準第69項の定めと整合的であると判断した。
- [設例15-3] 残余アプローチが認められない場合
- 1.前提条件
- [設例15-2]の1.前提条件に替えて、契約における取引価格は130千円ではなく105千円とする。したがって、製品Wに残余アプローチを使用する場合には、製品Wの独立販売価格は、取引価格105千円から、製品X、Y及びZに配分された100千円を控除した5千円となる。その他の前提条件は[設例15-2]と同様とする。
- 2.取引価格の配分
- (1) A社は、5千円は、製品Wの独立販売価格(15千円から45千円の範囲内)に近似していないため、A社が製品Wを移転する履行義務の充足と交換に権利を得ると見込む対価の額を適切に描写しないと判断した。
- (2) したがって、A社は、製品Wの独立販売価格を他の適切な方法を使用して見積るため、販売や利益に関する報告書を含め、観察可能なデータを確認し、会計基準第65項から第69項並びに本適用指針第31項及び第32項に従って、取引価格105千円を製品X、Y、Z及びWに各製品の独立販売価格の比率に基づき配分すると判断した。
9.財又はサービスに対する保証
- [設例16] 財又はサービスに対する保証
- 1.前提条件
- (1) A社(製造業者)は、製品Xの販売とともに製品Xに対する保証を提供する契約をB社(顧客)と締結した。
- (2) 製品Xに対する保証は、購入日から1年間にわたり製品Xが合意された仕様に従って機能するという保証に加えて、追加的な支払なしに、製品Xの操作方法について20時間以内の訓練サービスを受ける権利をB社に提供するものである。
- (3) A社は通常、訓練サービスを付けずに製品Xを独立して販売している。
- 2.財又はサービスが別個のものであるかどうかの判定
- (1) A社は、契約における財又はサービスを評価して、それらが別個のものであるかどうかを判定する。
- (2) まず、B社は訓練サービスなしに製品Xから単独で便益を享受することができ、またA社が既に提供した製品Xと組み合わせて訓練サービスから便益を享受することができるため、製品Xと訓練サービスは、会計基準第34項(1)に従って、別個のものとなり得る。
- (3) 次に、A社は、製品Xを移転する約束と訓練サービスを提供する約束が、会計基準第34項(2)及び本適用指針第6項に従って、契約に含まれる他の約束と区分して識別できるかどうかを次のとおり評価した。
- ① A社は、製品Xと訓練サービスを統合する重要なサービスを提供していない。
- ② 製品Xと訓練サービスのいずれも、他方を著しく修正又は顧客仕様のものとするものではない。
- ③ A社は、製品Xを移転する約束を、その後に訓練サービスを提供する労力とは別に履行することができ、また過去に製品Xを取得した顧客に訓練サービスを提供することができるため、製品Xと訓練サービスは、相互依存性及び相互関連性が高くない。
- ④ したがって、A社は、製品Xを移転する約束と訓練サービスを提供する約束は結合後のアウトプットの元となるインプットではなく、それぞれ区分して識別できると結論付けた。
- (4) (2)及び(3)より、会計基準第34項に従って、製品Xと訓練サービスはそれぞれ別個のものであり、2つの履行義務を生じさせるとA社は判断した。
- (5) さらに、A社は、保証を提供する約束を評価し、当該保証は製品Xが1年間にわたり合意された仕様に従って機能するという保証をB社に提供することに着目した。A社は、本適用指針第34項から第38項に従って、B社への保証は、製品Xが合意された仕様に従って機能するという保証以外のサービスをB社に提供していないと結論付けた。したがって、A社は、当該保証を履行義務としてではなく、企業会計原則注解(注18)における引当金の定めに従って処理すると判断した。
- (6) 以上から、A社は、取引価格を2つの履行義務(製品X及び訓練サービス)に配分し、それらの履行義務の充足時に(又は充足するにつれて)収益を認識する。
10.本人と代理人の区分
- [設例17] 企業が代理人に該当する場合
- 1.前提条件
- (1) A社はウェブサイトを運営しており、顧客は当該ウェブサイトを通じて、多くの供給者から製品を直接購入することができる。A社は、B社(供給者)との契約条件に基づき、B社の製品Xが当該ウェブサイトを通じて販売される場合には、製品Xの販売価格の10%に相当する手数料を得る。製品Xの販売価格はB社によって設定されており、当該ウェブサイトにより、B社と顧客との間の決済が容易となる。A社は、注文が処理される前に顧客に支払を求めており、すべての注文について返金は不要である。A社は、顧客に製品Xが提供されるように手配した後は、顧客に対してそれ以上の義務を負わない。
- (2) A社の履行義務が製品Xを自ら提供すること(すなわち、A社は本人に該当する。)なのか又はB社によって製品Xが提供されるように手配すること(すなわち、A社は代理人に該当する。)なのか(本適用指針第39項及び第40項参照)を判断するために、A社は、顧客に提供する特定の財又はサービスを識別し、当該財又はサービスが顧客に提供される前に自らが当該財又はサービスを支配しているのかどうかを判定する(本適用指針第42項及び第43項参照)。
A社は、次の①から③を踏まえ、自らは当該取引における代理人であり、自らの履行義務はB社によって製品Xが提供されるように手配することであると結論付けた。 - ① A社が運営するウェブサイトは、供給者が製品を提供し、当該製品を顧客が購入する市場である。したがって、A社は、顧客に提供する特定の財は、B社が提供する製品Xであり、他の財又はサービスの提供を顧客に約束していないことに着目した。
- ② A社は、どの時点においても顧客に提供される製品Xの使用を指図する能力を有していないため、当該ウェブサイトを通じて注文する顧客に製品Xが提供される前に製品Xを支配していないと結論付けた。例えば、A社は、製品Xを顧客以外の当事者に提供されるように手配することはできず、B社が製品Xを顧客に提供することを禁止することもできない。A社は、当該ウェブサイトを通じた顧客の注文を履行するために使用されるB社の製品Xの在庫を支配していない。
- ③ A社は、製品Xが顧客に提供される前にそれを支配していないと結論付ける際に、次の指標も考慮した(本適用指針第47項参照)。
- ア B社は、顧客に製品Xを提供するという約束の履行に対して主たる責任を有している。一方、A社は、B社が製品Xを顧客に提供できない場合に製品Xを提供する義務はなく、製品Xを提供するという約束の履行に対する責任も負わない。
- イ A社は、製品Xが顧客に提供される前後のどの時点においても在庫リスクを有していない。A社は、製品Xを顧客が購入する前に製品XをB社から取得する約束をしておらず、製品Xの損傷又は返品に対する責任も負っていない。
- ウ 製品Xの価格の設定においてA社には裁量権がない。販売価格はB社によって設定される。
- 2.会計処理
- 顧客がウェブサイトを通じて1,000千円の製品Xを購入した日におけるA社の収益に関する仕訳は、次のとおりである。

- (*1) B社により製品Xが顧客に提供されるよう手配するという約束をA社が充足する時に、A社は自らが権利を得る手数料の金額100千円(=1,000千円×10%)を収益として認識する(本適用指針第40項参照)。
- [設例18] 企業が本人に該当する場合(オフィス・メンテナンス・サービスの提供)
- 1.前提条件
- (1) A社は、B社(顧客)に対してオフィス・メンテナンス・サービスを提供する契約を締結した。A社とB社は、サービスの範囲について合意し、価格を交渉する。A社は、契約条件に従ったサービスの提供を確保することに責任を負い、合意した価格に基づき毎月10日の支払条件で顧客に請求する。
- (2) A社は、オフィス・メンテナンス・サービスを顧客に提供するために、外部業者を定期的に利用している。A社はB社との契約を獲得する際に、外部業者C社と契約を締結する。B社に対するオフィス・メンテナンス・サービスは、A社の指図によりC社が提供する。A社とC社との契約における支払条件は、通常、A社とB社との契約における支払条件と整合している。しかし、A社は、仮にB社がA社に支払を行うことができない場合であっても、C社に対する支払義務がある。
- (3) A社は、自らが本人に該当するのか又は代理人に該当するのか(本適用指針第39項及び第40項参照)を判断するために、B社に提供する特定の財又はサービスを識別して、当該財又はサービスがB社に提供される前に自らが当該財又はサービスを支配しているのかどうかを判定する(本適用指針第42項及び第43項参照)。
A社は、次の①から④を踏まえ、自らは当該取引における本人に該当すると判断した。 - ① A社は、B社に提供する特定の財又はサービスは、B社と契約したオフィス・メンテナンス・サービスであり、他の財又はサービスの提供をB社に約束していないことに着目した。A社は、B社との契約締結後に、C社からオフィス・メンテナンス・サービスに対する権利を獲得するが、当該権利はB社には移転されない。すなわち、A社は、当該権利の使用を指図する能力及び当該権利からの残りの便益のほとんどすべてを享受する能力を有する(本適用指針第44項(2)参照)。例えば、A社は、C社に対し、オフィス・メンテナンス・サービスの提供先を指図できる。B社は、A社と合意していないサービスの履行をC社に指図する能力を有していない。したがって、A社がC社から獲得するオフィス・メンテナンス・サービスに対する権利は、B社との契約における特定の財又はサービスではない。
- ② A社は、当該サービスがB社に提供される前に自らがそれを支配していると結論付けた。A社がオフィス・メンテナンス・サービスの権利に対する支配を獲得するのは、B社との契約締結後ではあるが、当該サービスがB社に提供される前である。A社とC社との契約条件により、A社は、当該サービスをA社に代わってC社が提供するように指図する能力を有している。
- ③ A社は、当該サービスがB社に提供される前にそれを支配していると結論付ける際に、次の指標も考慮した(本適用指針第47項参照)。
- ア A社は、オフィス・メンテナンス・サービスを提供する約束の履行に主たる責任を有している。A社は、B社に約束したサービスを提供するためにC社を利用するが、C社がB社のために履行したサービスに対する責任を負うのはA社である(すなわち、A社がサービスを自ら提供するのか、サービスを提供するために外部業者を利用するのかにかかわらず、A社は契約における約束の履行に責任を負う。)。
- イ A社は、B社へのサービスの価格の設定に裁量権を有している。
- ④ A社は、B社との契約締結前にC社からサービスを獲得することを約束していないため、当該サービスについての在庫リスクが軽減されているが、上記③の状況に基づき、当該サービスがB社に提供される前にそれを支配していると結論付けた。
- 2.会計処理
- A社がB社と合意した価格が150千円、C社と合意した価格が120千円である場合に、オフィス・メンテナンス・サービスが履行された日における仕訳は、次のとおりである。
- (1) 収益の計上

- (*1) A社は、B社に提供するオフィス・メンテナンス・サービスと交換にB社から権利を得る対価の総額150千円を収益として認識する(本適用指針第39項参照)。
- (2) 費用の計上

- [設例19] 企業が本人に該当する場合(航空券の販売)
- 1.前提条件
- (1) A社は、主要な航空会社と交渉し、一般の顧客に直接販売される航空券の価格より安く航空券を購入している。A社は、航空会社から一定数の航空券を購入することに同意しており、それらを再販売できるかどうかにかかわらず、航空会社に航空券の代金を支払うこととされている。A社がそれぞれの航空券に対して支払う価格は、航空会社との事前の交渉により合意されている。
- (2) A社は、自らの顧客に航空券を販売する価格を決定し、航空券の販売時に顧客から対価を回収する。
- (3) また、A社は、航空会社の提供するサービスへの顧客の不満を解決するサポートを行っている。しかし、顧客に提供したサービスへの不満に対する改善策の提示を含め、航空券に関する義務の履行に対する責任は各航空会社にある。
- (4) A社の履行義務が特定の財又はサービスを自ら提供すること(すなわち、A社は本人に該当する。)なのか、あるいは当該財又はサービスが他の当事者によって提供されるように手配すること(すなわち、A社は代理人に該当する。)なのか(本適用指針第39項及び第40項参照)を判断するために、A社は、顧客に提供する特定の財又はサービスを識別し、当該財又はサービスが顧客に提供される前に自らが当該財又はサービスを支配しているのかどうかを判定する(本適用指針第42項及び第43項参照)。
A社は、次の①から③を踏まえ、自らは当該取引における本人に該当すると結論付けた。 - ① A社は、航空会社から購入することを約束している航空券という形式で特定のフライトに搭乗する権利に対する支配を獲得し、その後に、その権利に対する支配を顧客に移転すると結論付けた(本適用指針第44項(1)参照)。A社は、顧客に提供する特定の財又はサービスは、A社が支配している特定のフライトの座席に対する権利であると判断した。なお、A社は、他の財又はサービスの提供を顧客に約束していないことに着目した。
- ② A社は、顧客との契約を履行するために航空券を使用すべきかどうか及び航空券を使用する場合にはどの契約を履行するのかを決定することにより、フライトに対する権利の使用を指図する能力を有しているため、それぞれのフライトに対する権利を顧客に移転する前に当該権利を支配していると判断した。A社は、航空券を転売して当該売却による収入のすべてを獲得するか、あるいは航空券を自ら使用することによって、当該権利からの残りの便益を享受する能力も有していると判断した。
- ③ A社は、フライトに対する権利(航空券)が顧客に移転される前に当該権利を支配していると結論付ける際に、次の指標も考慮した(本適用指針第47項参照)。
- ア A社は、航空券を販売するという顧客との契約を獲得する前に、航空会社から航空券を購入することを約束しており、A社が航空券を転売するための顧客を獲得できるかどうか及び当該航空券について有利な価格で購入できるかどうかにかかわらず、フライトに対する権利について航空会社に対する支払義務があるため、航空券について在庫リスクを有している。
- イ A社は、航空券に対して顧客が支払う価格を設定する。
- 2.会計処理
- A社が航空会社から100千円で購入した航空券を、120千円で顧客に現金で販売した日における仕訳は、次のとおりである。
- (1) 収益の計上

- (*1) A社は、顧客に移転する航空券と交換に顧客から権利を得る対価の総額120千円を収益として認識する(本適用指針第39項参照)。
- (2) 費用の計上

- [設例20] 同一の契約において企業が本人と代理人の両方に該当する場合
- 1.前提条件
- (1) A社はB社(顧客)と、B社における役職の候補となる求職者の効率的な人選を支援する求人サービスを提供する契約を締結した。A社は、求職者との面談などの複数のサービスを自ら提供する。
- (2) B社は、この契約の一環として、求職者に関する情報について、外部業者C社のデータベースにアクセスする権利を提供するライセンスを獲得する。A社は、B社による当該ライセンスの獲得についてC社に手配するが、ライセンス契約はB社とC社との間で締結される。A社は、C社に代わって、B社からC社への支払をB社への請求の一部として回収する。
- (3) C社は当該ライセンスについてB社に対する価格を設定する。また、C社は、B社にテクニカル・サポートを提供するとともに、データベースへのアクセス障害又は他の技術的問題により発生するB社への値引きに対する責任を負う。
- (4) A社は、自らが本人に該当するのか又は代理人に該当するのか(本適用指針第39項及び第40項参照)を判断するために、B社に提供する特定の財又はサービスを識別し、当該財又はサービスがB社に提供される前に自らが当該財又はサービスを支配しているのかどうかを判定する(本適用指針第42項及び第43項参照)。
- (5) A社は、求人サービスとデータベースにアクセスする権利を提供するサービスは、会計基準第34項及び本適用指針第5項から第7項に従って、それぞれ別個のものであると結論付けた。したがって、B社に提供すべき2つの特定の財又はサービス(すなわち、C社のデータベースにアクセスする権利を提供するサービスとA社が自ら提供する求人サービス)が存在している(本適用指針第41項参照)。
- (6) A社は、次の①及び②を踏まえ、C社のデータベースにアクセスする権利を提供するサービスに関しては、自らは代理人に該当すると結論付けた。
- ① B社はライセンスについてC社と直接契約しており、A社はどの時点においてもライセンスの使用を指図する能力を有していないため、A社は、C社のデータベースにアクセスする権利がB社に提供される前に当該権利を支配していないと結論付けた(本適用指針第44項(2)参照)。例えば、A社は、B社以外の当事者にC社のデータベースにアクセスする権利を付与することや、C社がB社にC社のデータベースにアクセスする権利を提供することを禁止することができない。
- ② A社は、C社のデータベースにアクセスする権利を当該権利がB社に提供される前に支配していないと結論付ける際に、次の指標も考慮した(本適用指針第47項参照)。
- ア A社は、C社のデータベースにアクセスする権利を提供する約束の履行に対して責任を負っていない。B社はライセンスについてC社と直接契約しており、C社は、例えばテクニカル・サポート又はサービスに対する値引きをB社に提供することによって、データベースにアクセスする権利を提供するという約束の履行に対して責任を負う。
- イ B社がC社のデータベースにアクセスする権利についてC社と直接契約する前に、C社のデータベースにアクセスする権利を購入しておらず、また購入する約束もしていないため、A社は在庫リスクを有していない。
- ウ データベースへのアクセスに関するB社との価格設定はC社が行うため、A社は価格設定において裁量権を有していない。
- (7) A社は、求人サービスに関しては、当該サービスを自ら提供し、他の当事者は当該サービスのB社への提供に関与しないため、自らは本人に該当すると結論付けた。
- 2.会計処理
- 求人サービスの対価及びデータベースにアクセスする権利の手配に対する手数料が150千円、データベースにアクセスする権利を提供するライセンスの対価が50千円である場合に、当該サービス及びライセンスが提供された期間における仕訳は、次のとおりである。

- (*1) 1.前提条件(2)より、A社は、C社のデータベースにアクセスする権利に対するB社のライセンスの支払については、C社に代わって、B社への請求の一部として回収する。
11.追加の財又はサービスを取得するオプションの付与
- [設例21] 重要な権利を顧客に与えるオプション(更新オプション)
- 1.前提条件
- (1) A社は、X1年度において1年間の製品Xのメンテナンス・サービスを1,000千円で提供する契約を100件締結した。契約条件により、各顧客は、X1年度末に1,000千円を追加で支払うことによって、X2年度において当該契約を更新できるオプションを有している。X2年度について契約を更新する顧客には、X2年度末に1,000千円を追加で支払うことにより、X3年度においても当該契約を更新できるオプションが与えられる。
- (2) A社は、製品Xの購入時にメンテナンス・サービス契約を締結していない顧客には、同様のメンテナンス・サービスについて著しく高い額(X2年度に3,000千円、X3年度に5,000千円)を請求する。
- (3) A社は、顧客がX2年度又はX3年度にのみメンテナンス・サービス契約を締結することを選択する場合には価格が著しく高くなるため、メンテナンス・サービスを更新できるオプションは、契約を締結しなければ顧客が受け取れない重要な権利(本適用指針第48項参照)を顧客に提供すると結論付けた。
- (4) 顧客がX1年度に支払う1,000千円の一部は、実質的には、その後の年度に提供されるサービスに対する返金が不要な前払いであるため、A社は、オプションを提供する約束は履行義務であると結論付けた。
- (5) この更新オプションはメンテナンス・サービスを継続するためのものであり、当該サービスは既存の契約と同じ条件で提供される。A社は、更新オプションの独立販売価格を直接見積らず、本適用指針第51項に従って、A社が提供すると見込まれるサービスと交換に受け取ると予想される対価を算定し、取引価格の配分を行った。
- (6) A社は、メンテナンス・サービス契約を締結した100名の顧客のうち、90名がX1年度末に契約を更新し、さらにX1年度末に契約を更新した顧客のうち81名がX2年度末にも契約を更新すると見込んだ。
- (7) A社は、契約における取引開始日に、契約全体の予想される対価総額を271,000千円(=1,000千円×100件+1,000千円×90件+1,000千円×81件)と見積った。また、A社は、予想されるコストの総額に対して発生したコストの比率に基づいて収益を認識することが、顧客へのサービスの移転を描写すると判断した。3年間の1契約あたりの予想コストは次のとおりであった。

- 2.会計処理
- (1) 1.前提条件より、A社は、取引開始日に予想される収益認識のパターンを、次のとおり見積る。

- (2) 契約における取引開始日

- A社は、受け取った対価100,000千円(=1,000千円×100件)のうち、(1)の収益認識のパターンに基づいて算定した77,986千円をX1年度に予想される収益に、22,014千円(=100,000千円-77,986千円)をX1年度末に予想される更新オプションに配分する。
- (3) X1年度末
- A社の予想に変化がなく、予想どおり90名の顧客が更新したと仮定する。

- A社は、X1年度末までに受け取った対価190,000千円(=100,000千円+1,000千円×90件)のうち、77,986千円をX1年度の収益として認識する。
- また、X1年度末の契約負債の残高は112,014千円(=100,000千円-77,986千円+90,000千円)となる。なお、契約負債の残高112,014千円は、X2年度に予想される収益に87,734千円、X2年度末に予想される更新オプションに24,280千円(=112,014千円-87,734千円)配分される。
- なお、実際の契約更新数が、A社が予想したものと異なる場合には、A社は、取引価格及び認識した収益を見直す。
- [設例22] カスタマー・ロイヤルティ・プログラム
- 1.前提条件
- (1) A社は、A社の商品を顧客が10円分購入するごとに1ポイントを顧客に付与するカスタマー・ロイヤルティ・プログラムを提供している。顧客は、ポイントを使用して、A社の商品を将来購入する際に1ポイント当たり1円の値引きを受けることができる。
- (2) X1年度中に、顧客はA社の商品100,000円を現金で購入し、将来のA社の商品購入に利用できる10,000ポイント(=100,000円÷10円×1ポイント)を獲得した。対価は固定であり、顧客が購入したA社の商品の独立販売価格は100,000円であった。
- (3) A社は商品の販売時点で、将来9,500ポイントが使用されると見込んだ。A社は、本適用指針第50項に従って、顧客により使用される可能性を考慮して、1ポイント当たりの独立販売価格を0.95円(合計額は9,500円(=0.95円×10,000ポイント))と見積った。
- (4) 当該ポイントは、契約を締結しなければ顧客が受け取れない重要な権利を顧客に提供するものであるため、A社は、顧客へのポイントの付与により履行義務が生じると結論付けた(本適用指針第48項参照)。
- (5) A社はX2年度末において、使用されるポイント総数の見積りを9,700ポイントに更新した。
- (6) 各年度に使用されたポイント、決算日までに使用されたポイント累計及び使用されると見込むポイント総数は次のとおりである。

- 2.会計処理
- (1) 商品の販売時

- (*1) A社は、取引価格100,000円を商品とポイントに独立販売価格の比率で次のとおり配分する。

- (2) X1年度末

- (*2) X1年度末までに使用されたポイント4,500ポイント÷使用されると見込むポイント総数9,500ポイント×8,676円=4,110円
- (3) X2年度末

- (*3) (X2年度末までに使用されたポイント累計8,500ポイント÷使用されると見込むポイント総数9,700ポイント×8,676円)-X1年度末に収益を認識した4,110円=3,493円
12.ライセンスの供与
- [設例23] 知的財産を使用する権利
- 1.前提条件
- [設例6-1]と同じ前提条件に基づき、A社は、B社との契約において約束した財又はサービスを評価した結果、次の財又はサービスについて履行義務を識別したものとする。
- (1) ソフトウェア・ライセンス
- (2) インストール・サービス
- (3) ソフトウェア・アップデート
- (4) テクニカル・サポート
- 2.ソフトウェア・ライセンスの会計処理
- (1) A社は、本適用指針第63項に従って、次の①及び②を考慮して、ソフトウェア・ライセンスを移転する約束の性質を評価した。なお、ソフトウェア・アップデートを提供する約束は、B社への追加的な財又はサービスの移転を生じさせるものであるため、考慮の対象としない(本適用指針第63項(3)参照)。
- ① A社は、ソフトウェア・アップデート及びテクニカル・サポートの他に、ライセンス期間中にソフトウェアの機能性を変化させる活動を行う義務を契約上も黙示的にも負っていない。
- ② 当該ソフトウェアはソフトウェア・アップデート及びテクニカル・サポートがなくても機能するため、B社が当該ソフトウェアの便益を享受する能力は、実質的にA社の継続的な活動から得られるものではなく、A社の活動に依存するものでもない。
- (2) 上記の評価に基づき、A社は、ソフトウェア・アップデート及びテクニカル・サポートとは別に、ソフトウェアに著しく影響を与える活動を自ら行うことは、契約上も定められておらず、B社も合理的に期待していないと結論付けた。また、A社は、ライセンスが関係するソフトウェアは重要な単独の機能性を有しており、本適用指針第63項の要件を満たさないと結論付けた。
- (3) したがって、A社は、ライセンスを移転するA社の約束の性質は、一時点で存在するA社の知的財産を使用する権利を提供することであると結論付け、ライセンスを一時点で充足される履行義務として処理すると判断した(本適用指針第62項及び第64項参照)。
- [設例24] 別個のライセンスの識別
- [設例24-1] ライセンスが別個のものではない場合
- 1.前提条件
- (1) A社(製薬会社)は、10年間にわたり、認可された複合薬Xに対する特許権のライセンスをB社(顧客)に供与するとともに、B社のために複合薬Xを製造する契約を締結した。複合薬Xは成熟した製品であり、A社は複合薬Xをサポートする活動を行わない。これはA社の通常の取引慣行である。
- (2) 複合薬Xの製造プロセスは非常に特殊なものであるため、他の企業は複合薬Xを製造することができない。その結果、B社は製造サービスと独立してライセンスを購入することはできない。
- 2.財又はサービスが別個のものであるかどうかの判定
- (1) A社は、会計基準第34項に従って、財又はサービスが別個のものかを判定するため、B社と約束した財又はサービスを評価する。
- (2) B社は製造サービスなしにはライセンスから便益を享受することができないため、会計基準第34項(1)の要件は満たされないとA社は判断した。
- (3) したがって、A社は、ライセンスと製造サービスは別個のものではないと判断し、ライセンスと製造サービスは単一の履行義務であると判断した。
- (4) A社は、履行義務(すなわち、ライセンスと製造サービスの束)が一時点で充足されるものか又は一定の期間にわたり充足されるものかを判断する(会計基準第35項から第40項)。
- [設例24-2] ライセンスが別個のものである場合
- 1.前提条件
- [設例24-1]の1.前提条件(2)に替えて次の前提条件とする。その他の前提条件は[設例24-1]と同様とする。
- 複合薬Xの製造プロセスは、固有のものでも特殊なものでもなく、A社以外の企業も複合薬Xを製造することができる。
- 2.財又はサービスが別個のものであるかどうかの判定
- (1) A社は、会計基準第34項に従って、財又はサービスが別個のものかを判定するため、B社に約束した財又はサービスを評価する。
- (2) A社は、製造サービスを提供できる他の企業が存在することから、A社が提供する製造サービス以外の容易に利用できる資源と組み合わせてB社がライセンスからの便益を享受することができ、かつ、契約における取引開始日にB社に移転されるライセンスと組み合わせてB社が製造サービスからの便益を享受することができるため、会計基準第34項(1)の要件は満たされていると結論付けた。
- (3) A社は、本適用指針第6項の原則及び諸要因を考慮し、会計基準第34項(2)の要件が満たされているのかどうかを判定した。その際、次の点を考慮した。
- ① B社は、ライセンスから便益を享受する能力に著しく影響を与えることなく、ライセンスを独立して購入できる。
- ② ライセンスも製造サービスも、他方を著しく修正するものでも顧客仕様のものとするものでもなく、A社は、それらを結合後のアウトプットに統合する重要なサービスを提供していない。
- ③ A社は、ライセンスを移転する約束を、その後にB社のために複合薬Xを製造する約束とは別に履行することができるため、ライセンスと製造サービスの相互依存性及び相互関連性は高くない。同様に、この契約における製造サービスは必然的にライセンスに依存する(すなわち、A社はB社がライセンスを獲得しなければ製造サービスを提供しないであろう。)が、A社は、B社が仮に過去にライセンスを獲得してその時点で他の製造業者を利用していたとしても、B社のために複合薬Xを製造することができるため、ライセンスと製造サービスは互いに著しい影響を与えるものではない。
- ④ これらの点を踏まえ、A社は、ライセンスと製造サービスは、この契約における結合後のアウトプットの元となるインプットではないため、会計基準第34項(2)の要件を満たし、ライセンスを供与する約束と製造サービスを提供する約束は区分して識別できると判断した。
- (4) したがって、A社は、会計基準第34項の要件はライセンスと製造サービスのそれぞれについて満たされていると判断し、ライセンスを供与する約束と製造サービスを提供する約束は別個のものであり、次の2つの履行義務があると結論付ける。
- ① 特許権のライセンス
- ② 製造サービス
- (5) A社は、製造サービスについて一時点で充足されるものか又は一定の期間にわたり充足されるものかを判断する(会計基準第35項から第40項)。また、特許権のライセンスについては、3.ライセンスの会計処理で検討する。
- 3.ライセンスの会計処理
- (1) A社は、本適用指針第63項に従って、次の①から③を考慮し、ライセンスを供与する自らの約束の性質を評価した。
- ① 製造サービスの提供を約束するという履行義務は、考慮の対象としない。
- ② 複合薬Xは成熟した製品である(すなわち、認可済みであり、現在製造されており、過去数年にわたり市販されている。)。このような成熟した製品については、A社の取引慣行ではサポートする活動を行わない。また、複合薬Xには重要な独立した機能性(すなわち、ある病気又は状態を治療する薬を作り出す能力)がある。したがって、B社は、複合薬Xの便益の相当部分を、A社の継続的な活動からではなく、当該機能性から享受する。
- ③ A社は、B社が権利を有する知的財産に著しく影響を与える活動を自ら行うことが契約により定められておらず、B社もそれを合理的に期待していないことから、本適用指針第63項の要件は満たされないと結論付けた。
- (2) したがって、A社は、ライセンスを移転するA社の約束の性質は、B社に供与する時点で存在する形態及び機能性により、A社の知的財産を使用する権利を提供することであると結論付け、ライセンスを一時点で充足される履行義務として処理すると判断した(本適用指針第62項及び第64項参照)。
- [設例25] フランチャイズ権
- 1.前提条件
- (1) A社(フランチャイザー)は、B社(顧客)に対し、10年間にわたり、A社の商号を使用し、A社の製品を販売する権利を提供するフランチャイズのライセンスを供与する契約を締結した。契約にはライセンスのほか、B社のフランチャイズ店舗の運営に必要な設備をA社が提供することも含まれる。
- (2) A社は、ライセンスの供与と交換に、B社の毎月の売上高の5%のロイヤルティを受け取る。設備の対価は150,000千円で固定されており、設備の引渡時に支払われる。
- (3) A社は、フランチャイザーの取引慣行として、フランチャイズの評判を高めるため、顧客の嗜好の分析や、製品の改善、価格戦略、販促キャンペーン及び運営面の効率化の実施などの活動を行う。
- 2.財又はサービスが別個のものであるかどうかの判定
- (1) A社は、会計基準第34項に従って、財又はサービスが別個のものであるのかどうかを判定するために、B社に約束した財又はサービスを評価する。
- (2) A社は、顧客の嗜好の分析などの活動は、ライセンスを供与するというA社の約束の一部であるため、B社に財又はサービスを直接的に移転するものではないと結論付け、契約にはライセンスを供与する約束及び設備を移転する約束の2つが含まれると判断した。
- (3) B社はライセンスからの便益を、フランチャイズ開店前に引き渡される設備とともに享受することができ、当該設備はフランチャイズで使用するか又は廃棄における回収額ではない金額で売却することができる。そのため、B社はライセンス及び設備からの便益を、単独で又はB社が容易に利用できる他の資源と組み合わせて享受することができると判断した(会計基準第34項(1))(本適用指針第5項参照)。
- (4) また、A社は、会計基準第34項(2)及び本適用指針第6項の要件に従って、次の①及び②を考慮し、フランチャイズのライセンスを供与する約束と設備を移転する約束は区分して識別できると判断した。
- ① A社は、ライセンスと設備を結合後のアウトプットに統合する重要なサービスを提供しておらず(すなわち、ライセンスの対象となる知的財産は設備の構成部分ではなく、設備を著しく修正するものでもない。)、ライセンスと設備は、結合後のアウトプットの元となるインプットではないことから、実質的にB社への単一の約束を履行しているものではない。
- ② A社は、フランチャイズのライセンスを供与する約束又は設備を移転する約束を他方とは独立して履行することができるため、ライセンスと設備は、相互依存性及び相互関連性が高くない。
- (5) したがって、A社は、ライセンスを供与する約束と設備を移転する約束は、それぞれ別個のものであり、次の2つの履行義務があると結論付けた。
- ① フランチャイズのライセンス
- ② 設備
- 3.取引価格の配分
- (1) A社は、取引価格は150,000千円の固定対価とB社の売上高の5%の変動対価を含んでいると判断した。設備の独立販売価格は150,000千円であり、A社は、通常、顧客の売上高の5%を受け取るのと交換に、フランチャイズのライセンスを供与する。
- (2) A社は、会計基準第72項に従って、変動対価の全体をフランチャイズのライセンスを移転する履行義務に配分すべきかどうかを判断し、変動対価(売上高に基づくロイヤルティ)の全額を、次の理由から、フランチャイズのライセンスを供与する履行義務に配分すべきであると結論付けた。
- ① 変動対価の全体が、フランチャイズのライセンスを供与するというA社の約束に関係している。
- ② 150,000千円を設備に配分し、売上高に基づくロイヤルティをフランチャイズのライセンスに配分することは、類似の契約におけるA社の独立販売価格の比率に基づく配分と整合的である。
- 4.ライセンスの会計処理
- (1) A社は、本適用指針第63項及び第65項に従って、次の①から③を考慮し、ライセンスを供与する自らの約束の性質を評価した。
- ① A社がフランチャイズの評判を高めるために、顧客の嗜好の分析などの活動をA社が行う取引慣行があるため、B社が権利を有している知的財産から便益を享受する能力は、実質的にA社の活動により得られるか又は当該活動に依存する。
さらに、A社は、報酬の一部がB社の売上高に基づくロイヤルティであり、B社の売上高に左右されるため、A社が自らの利益を最大化するように活動することをB社は期待し、B社と共通の経済的な利害があるという点に着目した。
このため、A社は、B社が権利を有している知的財産に著しく影響を与える活動をA社が行うことを、B社は合理的に期待していると結論付けた。 - ② B社は、フランチャイズのライセンスにより、A社が行う活動から生じるあらゆる変化に対応することが要求されるため、当該活動の影響を受ける。
- ③ B社はライセンスで付与される権利によりA社の活動からの便益を享受する可能性があるが、A社の活動が生じたとしても、財又はサービスはB社に移転しない。
- (2) A社は、これらの点を踏まえ、本適用指針第63項の要件が満たされているため、A社の約束の性質は、ライセンス期間全体にわたりA社の知的財産へのアクセスを最新の形態でB社に提供することであり、ライセンスを移転する約束は、一定の期間にわたり充足される履行義務であると結論付けた(本適用指針第62項参照)。
- (3) また、A社は、売上高に基づくロイヤルティの形式による対価はフランチャイズのライセンスに明確に関係するものであるため、本適用指針第67項を適用すると結論付けた。A社は、フランチャイズのライセンスの履行義務の充足に係る進捗度を合理的に描写するために、フランチャイズのライセンスを移転した後に、B社の売上高が生じるにつれて又は生じる時に収益を認識する。
13.買戻契約
- [設例26] 買戻契約
- [設例26-1] コール・オプションの場合(金融取引)
- 1.前提条件
- (1) A社は、X1年1月1日に、製品Xを1,000千円でB社(顧客)に販売する契約を締結した。契約には、X1年12月31日以前に製品Xを1,100千円で買い戻す権利をA社に与えるコール・オプションが含まれている。
- (2) X1年12月31日に、オプションは未行使のまま消滅した。
- 2.会計処理
- (1) X1年1月1日

- (*1) A社が製品Xを買い戻す権利を有しているため、B社が製品Xの使用を指図する能力や製品Xからの残りの便益のほとんどすべてを享受する能力が制限されていることから、製品Xに対する支配は、X1年1月1日にB社に移転しない。また、買戻価格(1,100千円)は当初の販売価格(1,000千円)以上であるため、A社は当該取引を金融取引として処理する(本適用指針第69項参照)。A社は、本適用指針第70項に従って、製品Xの消滅を認識せず、受け取った現金を借入金として認識する。
- (2) X1年12月31日

- (*2) 買戻価格と受け取った現金との差額100千円(=1,100千円-1,000千円)について、支払利息を認識するとともに、借入金を増額する。
- (3) X1年12月31日(オプションの消滅時)

- (*3) オプションは未行使のまま消滅したため、A社は、負債の消滅を認識し、1,100千円の収益を認識する。
- [設例26-2] プット・オプションの場合(リース)
- 1.前提条件
- (1) A社は、X1年1月1日に、製品Xを1,000千円でB社(顧客)に販売する契約を締結した。契約には、B社の要求により、X1年12月31日以前に製品Xを900千円で買い戻す義務をA社が負うプット・オプションが含まれている。X1年12月31日時点で予想される製品Xの市場価値は750千円であった。
- (2) A社は、契約における取引開始日に、製品Xの移転の会計処理を決定するため、B社がプット・オプションを行使する重要な経済的インセンティブを有しているかどうかを判定する(本適用指針第72項及び第73項参照)。
- (3) A社は、買戻価格(900千円)が買戻日時点での製品Xの予想市場価値(750千円)を大幅に上回るため、B社がプット・オプションを行使する重要な経済的インセンティブを有していると結論付けた。また、A社は、B社がプット・オプションを行使する重要な経済的インセンティブを有しているかどうかを判定する際に検討すべき他の関連する要因はないと判断した。
- (4) したがって、A社は、B社が製品Xの使用を指図する能力や製品Xからの残りの便益のほとんどすべてを享受する能力が制限されていることから、製品Xに対する支配はB社に移転しないと結論付けた。
- 2.会計処理
- A社は、本適用指針第72項に基づき、当該取引をリース会計基準に従ってリースとして処理する。
14.契約資産、契約負債及び顧客との契約から生じた債権
- [設例27] 履行により契約資産が認識される場合
- 1.前提条件
- (1) A社がB社(顧客)に製品X及び製品Yを合わせて1,000千円で販売する契約を締結した。当該契約では、まず製品Xを引渡し、製品Xの引渡しに対する支払は製品Yの引渡しを条件とすると定められている。すなわち、1,000千円の対価は、A社が製品Xと製品Yの両方をB社に移転した後にはじめて支払われる。したがって、A社は、製品Xと製品Yの両方が顧客に移転されるまで、対価に対する無条件の権利(顧客との契約から生じた債権)を有さない(会計基準第79項)。
- (2) A社は、製品Xと製品Yを移転する約束のそれぞれを履行義務として識別し、両者の独立販売価格に基づいて、製品Xを移転する履行義務に400千円、製品Yを移転する履行義務に600千円を配分する。A社は、製品に対する支配がB社に移転する時に、それぞれの履行義務について収益を認識する。
- 2.会計処理
- (1) 製品Xの移転時

- (2) 製品Yの移転時

- [設例28] 履行により顧客との契約から生じた債権が認識される場合
- 1.前提条件
- (1) A社は、製品をB社(顧客)に1個当たり150千円で販売する契約をB社と締結する。契約上、B社が一定の期間内に30個超の製品を購入する場合には、単価を1個当たり125千円に遡及的に減額することが定められている。
- (2) 製品に対する支配がB社に移転する時に、B社に支払義務が発生する。したがって、A社は、遡及的な減額が適用される前まで(すなわち、31個の購入前まで)は、1個当たり150千円の対価に対する無条件の権利(すなわち、顧客との契約から生じた債権)を有している。
- (3) 取引価格を算定する際に、A社は、契約における取引開始日にB社が一定の期間内に30個超の製品を購入するであろうと見込み、したがって、取引価格は1個当たり125千円であると見積る。
- 2.会計処理
- 製品6個の移転時

- 返金負債は、購入数量に基づくリベートとしてB社に提供されると予想される1個当たり25千円の返金(すなわち、契約に基づきA社が無条件の権利として有している150千円と算定された取引価格125千円との差額)を表す(会計基準第53項及び第150項)。
Ⅲ.我が国に特有な取引等についての設例
- [設例29] 消費税等
- 1.前提条件
- (1) 消費税の課税事業者であるA社は、B社(顧客)に商品Xを100千円で販売した。
- (2) 商品Xの販売は消費税の課税取引に該当し、A社は、商品XをB社に販売した時に100千円及び売上に係る消費税等を現金でB社から受け取った。
- (3) 売上に係る消費税等は、第三者である国や都道府県に納付するため、第三者に支払うために顧客から回収する金額に該当することから、取引価格には含まれない(会計基準第47項)。
- (4) 本設例において、「消費税等」とは、消費税(国税)及び地方消費税の合計をいい、消費税等の税率は10%とする。
- 2.会計処理
- B社に商品Xを販売した時点におけるA社の仕訳は、次のとおりである。

- (*1) 100千円×10%=10千円
- なお、課税期間中の売上に係る消費税等と仕入に係る消費税等の相殺や、その相殺により生じた差額の納付又は還付の会計処理については、本設例では示していない。
- [設例30] 小売業における消化仕入等
- 1.前提条件
- (1) 小売業を営むA社は、仕入先より商品を仕入れ、店舗に陳列し、個人顧客に対し販売を行っている。
- (2) 仕入先との契約は、通常の商品売買契約(買取仕入契約)のほか、消化仕入契約がある。
- ① 買取仕入契約では、A社は店舗への商品納品時に検収を行い、その時点で商品の法的所有権はA社に移転する。商品に関する保管管理責任はA社にあり、商品に関するリスクもA社が負っている。なお、一部の契約では、一定期間に限りA社に責任が帰属する不良品以外の商品の返品が認められている返品条件付買取仕入契約がある。
- ② 一方、消化仕入契約では、A社は、店舗への商品納品時には検収を行わず、店舗にある商品の法的所有権は仕入先が保有している。また、商品に関する保管管理責任及び商品に関するリスクも仕入先が有している。A社は、店舗に並べる商品の種類や価格帯等のマーチャンダイジングについて一定の関与を行うが、個々の消化仕入商品の品揃えや販売価格の決定権は仕入先にある。
顧客への商品販売時に、商品の法的所有権は仕入先からA社に移転し、同時に顧客に移転する。A社は、商品の販売代金を顧客から受け取り、販売代金にあらかじめ定められた料率を乗じた金額について、仕入先に対する支払義務を負う。 - (3) A社の履行義務が商品を自ら提供することである(そのため、A社は本人に該当する。)のか又は商品が仕入先によって提供されるように手配することである(そのため、A社は代理人に該当する。)のか(本適用指針第39項及び第40項参照)を判定するために、A社は顧客に提供する財又はサービスを識別し、当該財又はサービスを顧客に提供する前に支配しているのかどうかを評価した(本適用指針第42項及び第43項参照)。
- ① (返品条件付)買取仕入契約においては、商品が店舗へ納品された時点でその法的所有権はA社に移転している。A社は、一定期間の不良品以外の商品の返品が可能な場合でも、自社の責任による不良品は返品できず、棚卸ロス等の在庫リスクを有しており、また、当該商品について、顧客に販売されるまでの期間においてその使用を指図する能力を有しており、商品の残りの便益のほとんどすべてを享受する能力を有するため、顧客に提供される前に支配していると判断した(本適用指針第47項参照)。したがって、A社は、(返品条件付)買取仕入契約においては、自らの履行義務は商品を顧客に提供することであり、自らは本人に該当すると判断した。
- ② 一方、消化仕入契約においては、A社は、商品の法的所有権を、顧客に移転される前に一時的に獲得しているものの、在庫リスクを一切負っておらず、また、当該商品について、顧客に販売されるまでのどの時点においてもその使用を指図する能力を有しておらず、商品を支配していないため、当該商品について顧客に提供される前に支配していないと判断した(本適用指針第45項及び第47項参照)。したがって、A社は、消化仕入契約においては、自らの履行義務は商品が提供されるように手配することであり、自らは代理人に該当すると判断した。
- 2.会計処理
- (1) 買取仕入契約による商品の販売
- ① A社が商品を購入した日
A社は、自社の店舗で顧客に商品を販売するため、買取仕入契約の対象の商品Xを5,000円で購入した。 
- ② A社が顧客に商品Xを販売した日
ア A社は、自社の店舗で商品Xを10,000円で顧客に現金で販売した。 
- (*1) A社は本人として、商品Xを顧客に販売したことにより受け取った対価の総額を収益として認識する(本適用指針第39項参照)。なお、返品権については別途処理する。
- イ A社は、販売した商品の売上原価への振替を行う。

- (2) 消化仕入契約による商品の販売
- A社は、消化仕入契約の対象の商品Yを10,000円で顧客に現金で販売した。同時に、商品Yの仕入先B社との消化仕入契約に基づき買掛金を8,000円で計上した。

- (*2) A社は代理人として、B社により提供された商品を顧客に販売したことにより受け取った対価10,000円からB社に支払う対価8,000円を控除した純額を収益として認識する(本適用指針第40項参照)。この結果、手数料収入は純額の2,000円で計上される。
- [設例31] 他社ポイントの付与
- 1.前提条件
- (1) 小売業を営むA社は、第三者であるB社が運営するポイントプログラムに参加している。プログラムの下では、A社は、A社の店舗で商品を購入した顧客に対し、購入時に当該ポイントプログラムのメンバーであることが表明された場合には、購入額100円につきB社ポイントが1ポイント付与される旨を伝達する。同時に、A社は、B社に対してその旨を連絡し、B社はA社の顧客に対してB社ポイントを付与する。その後、A社はB社に対し、1ポイントにつき1円を支払う。
A社の顧客に対して付与されたB社ポイントは、A社に限らず、B社が運営するポイントプログラムに参加する企業において利用できる。また、それらの企業における商品の購入で獲得されたB社ポイントも、A社で利用できる。
A社とB社との間に、上記以外の権利及び義務は発生しない。 - (2) A社は、A社の観点からは、B社ポイントの付与は顧客に重要な権利(本適用指針第48項参照)を提供していないと判断した。A社は、B社ポイントが顧客に対して付与される旨をB社に連絡し、同時にB社ポイントに相当する代金をB社に対して支払う義務を有するのみであり、A社はB社ポイントを支配していないと結論付けた。
- 2.会計処理
- (1) 商品の販売時(B社ポイントの付与時)
A社は、自社の店舗で商品を顧客に現金100円で販売するとともに、顧客に対してB社ポイントが1ポイント付与される旨を伝達した。同時に、A社はB社に対してポイント付与の旨を連絡した。 
- (*1) A社は、顧客に対する商品販売の履行義務に係る取引価格の算定において、第三者であるB社のために回収した金額(すなわち、100円のうち1円)を除外する(会計基準第47項)。なお、商品の売上原価への振替の仕訳は省略する。
(*2) B社に対する未払金を認識する。 - (2) A社からB社に対するポイント相当額の支払時

- [設例32] 工事損失引当金
- 1.前提条件
- (1) 工事契約の施工者であるA社は、X1年度の期首に、橋梁の建設についての契約を締結した。契約で取り決められた当初の工事収益総額は10,000百万円である。A社の工事原価総額の当初見積額は9,500百万円である。
- (2) 橋梁の建設には3年を要する予定である。
- (3) X1年度末及びX2年度末において、A社の工事原価総額の見積額はそれぞれ9,600百万円及び10,500百万円に増加したが、工事契約金額の見直しは行われなかった。
- (4) A社は、決算日における工事進捗度を原価比例法により算定している。各年度での見積られた工事収益総額、工事原価総額及び決算日における工事進捗度は次のとおりである。

- (*1) X1年度の進捗度 25%(=2,400百万円÷9,600百万円×100%)
(*2) X2年度の進捗度 72%(=7,560百万円÷10,500百万円×100%) - 2.会計処理
- (1) X1年度の会計処理
工事収益2,500百万円(=10,000百万円×25%)及び工事原価2,400百万円が計上され、工事損失引当金は計上されない。 - (2) X2年度の会計処理
工事収益4,700百万円(=10,000百万円×72%-2,500百万円)及び工事原価5,160百万円が計上され、工事損失引当金が次のとおり計上される(本適用指針第90項参照)。 
- (3) X3年度の会計処理
工事収益2,800百万円(=10,000百万円-(2,500百万円+4,700百万円))及び工事原価2,940百万円が計上され、工事損失引当金が次のとおり取り崩される。 
Ⅳ.参考(開示例)
- 本適用指針の開示例は、会計基準及び本適用指針で示された内容についての理解を深めるために参考として示されたものであり、記載方法及び記載内容は各企業の実情等に応じて異なることに留意する必要がある。
Ⅳ.参考(開示例)
- [開示例1] 収益の分解情報
- 1.前提条件
- (1) A社は、企業会計基準第17号「セグメント情報等の開示に関する会計基準」に従って、消費者製品、輸送及びエネルギーの各セグメントについて報告している。
- (2) A社は、投資家向けの説明資料を作成する際に、収益を、主たる地域市場、主要な財又はサービスのライン及び収益認識の時期(一時点で移転される財又は一定の期間にわたり移転されるサービス)に分解している。A社は、本適用指針第106-3項から第106-5項に基づき、投資家向けの説明資料で使用している区分を、会計基準第80-10項に示す収益を分解する区分(収益及びキャッシュ・フローの性質、金額、時期及び不確実性に影響を及ぼす主要な要因に基づく区分)として使用できると判断した。
- (3) 次の表では、主たる地域市場、主要な財又はサービスのライン及び収益認識の時期による分解情報の例を示している。また、この例示では、会計基準第80-11項に従って、分解した収益が消費者製品、輸送及びエネルギーの各セグメントとどのように関連しているのかに関する調整表を提供している。
- 2.注記例

- [開示例2] 残存履行義務に配分した取引価格の注記
- [開示例2-1] 現在までに企業の履行が完了した部分に対する顧客にとっての価値に直接対応する対価の額
を顧客から受け取る権利を有している場合 - 1.前提条件
- (1) A社は、X1年6月30日に、サービスを提供するためにB社(顧客)と2年の解約不能期間を有する契約を締結する。A社は、X1年12月31日現在の残存履行義務に配分した取引価格の注記に含めるべき情報を決定する際に、会計基準第80-21項から第80-24項の定めを検討する。
- (2) A社は、今後2年間にわたり、通常、少なくとも1か月に1回、清掃サービスを提供する。B社は、当該サービスに対して1時間当たり2,500円の料金を支払う。
- 2.注記事項の判断
- (1) A社は、提供したサービスについて1時間ごとに固定金額を請求している。A社は、現在までにA社の履行が完了した部分に対するB社にとっての価値に直接対応する対価の額をB社から受け取る権利を有していることから、本適用指針第19項に従って、請求する権利を有している金額で収益を認識している。したがって、A社は、会計基準第80-22項(2)の定めを適用し、当該契約について、残存履行義務に配分した取引価格の注記に含めないことができる。
- (2) A社が当該契約について、残存履行義務に配分した取引価格の注記に含めないことを選択した場合には、会計基準第80-24項における注記の定めに従って、会計基準第80-22項(2)の定めを適用している旨及び会計基準第80-21項の注記に含めていない履行義務の内容を注記する。
- [開示例2-2] 経過期間に基づいて進捗度を見積っている場合(固定対価)
- 1.前提条件
- (1)は[開示例2-1]と同様の前提条件を置く。
- (2) A社は、清掃サービス及び芝生のメンテナンス・サービスを、今後2年間にわたり、最大で1か月に4回、必要に応じてB社に提供する。
- (3) B社は、両方のサービスに対して1か月当たり40千円の固定価格を支払う。
- (4) A社は、経過期間に基づいて、履行義務の充足に係る進捗度を見積る。
- 2.注記例
- (1) A社は、収益としてまだ認識していない取引価格を、A社が当該金額をいつ収益として認識すると見込んでいるのかを示す期間により表形式で注記する(会計基準第80-21項)。注記に含まれる当該契約の情報は、次のとおりである。

- [開示例2-3] 経過期間に基づいて進捗度を見積っている場合(変動対価)
- 1.前提条件
- (1)は[開示例2-1]と同様の前提条件を置く。
- (2) A社は、今後2年間にわたり必要に応じて清掃サービスを提供する。
- (3) B社は、1か月当たり10千円の固定対価に加えて、B社の施設の規制上の審査及び認定に対応する0円から100千円までの範囲の1回限りの変動対価(すなわち、業績ボーナス)を支払う。A社は、業績ボーナスに関して、変動対価84千円に対する権利を得ると見積っており、本適用指針第25項の諸要因に関する評価に基づき、変動対価の見積額84千円を取引価格に含める。これは、変動対価の額に関する不確実性が事後的に解消される際に、解消される時点までに計上された収益の著しい減額が発生しない可能性が高いためである(会計基準第54項)。
- (4) A社は、経過期間に基づいて、履行義務の充足に係る進捗度を見積る。
- 2.注記例
- (1) A社は、収益としてまだ認識していない取引価格を、いつ収益として認識すると見込んでいるのかを示す期間により表形式で注記する(会計基準第80-21項)。注記に含まれる当該契約の情報は、次のとおりである。

- (2) また、A社は、会計基準第54項の変動対価の見積りの制限の定めに従って業績ボーナスの一部を取引価格に含めていないため、会計基準第80-23項における注記の定めに従って、残存履行義務に配分した取引価格の注記に含めていないものがある旨を注記する。
- [開示例3] 残存履行義務に配分した取引価格の注記-定性的情報
- 1.前提条件
- (1) A社は、B社(顧客)とX2年1月1日に1,000百万円の固定対価で商業ビルを建設する契約を締結する。
- (2) A社は、当該ビルの建設は、一定の期間にわたり充足する単一の履行義務であると判断している。
- (3) X2年12月31日現在、A社は320百万円の収益を認識している。A社は、X3年に当該ビルの建設が完了すると見積っているが、X4年の前半になる可能性もあると判断している。
- 2.注記例
- (1) X2年12月31日に、A社は、収益としてまだ認識していない取引価格を、残存履行義務に配分した取引価格の注記において開示する。
- (2) また、A社は、残存履行義務に配分した取引価格に係る金額をいつ収益として認識すると見込んでいるのかに関する説明を注記する。当該説明は、残存履行義務の残存期間に最も適した期間による定量的情報と定性的情報のいずれかにより行うことができる。
- (3) 当該契約の収益の認識時期に不確実性があるため、A社は、この情報を次のように定性的に注記する(会計基準第80-21項)。

- 以 上
