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企業会計基準第29号収益認識に関する会計基準
目 的
- 1. 本会計基準は、本会計基準の範囲(本会計基準第3項及び第4項参照)に定める収益に関する会計処理及び開示について定めることを目的とする。なお、本会計基準の範囲に定める収益に関する会計処理及び開示については、「企業会計原則」に定めがあるが、本会計基準が優先して適用される。
- 2. 本会計基準の適用にあたっては、企業会計基準適用指針第30号「収益認識に関する会計基準の適用指針」(以下「適用指針」という。)も参照する必要がある。
会計基準
Ⅰ.範 囲
- 3. 本会計基準は、次の(1)から(7)を除き、顧客との契約から生じる収益に関する会計処理及び開示に適用される。
- (1) 企業会計基準第10号「金融商品に関する会計基準」(以下「金融商品会計基準」という。)の範囲に含まれる金融商品に係る取引
- (2) 企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」(以下「リース会計基準」という。)の範囲に含まれるリース
- (3) 保険法(平成20年法律第56号)における定義を満たす保険契約
- (4) 顧客又は潜在的な顧客への販売を容易にするために行われる同業他社との商品又は製品の交換取引(例えば、2つの企業の間で、異なる場所における顧客からの需要を適時に満たすために商品又は製品を交換する契約)
- (5) 金融商品の組成又は取得に際して受け取る手数料
- (6) 移管指針第10号「特別目的会社を活用した不動産の流動化に係る譲渡人の会計処理に関する実務指針」(以下「不動産流動化実務指針」という。)の対象となる不動産(不動産信託受益権を含む。)の譲渡
- (7) 資金決済に関する法律(平成21年法律第59号。以下「資金決済法」という。)における定義を満たす暗号資産及び金融商品取引業等に関する内閣府令(平成19年内閣府令第52号。以下「金商業等府令」という。)における定義を満たす電子記録移転有価証券表示権利等に関連する取引
- 4. 顧客との契約の一部が前項(1)から(7)に該当する場合には、前項(1)から(7)に適用される方法で処理する額を除いた取引価格について、本会計基準を適用する。
Ⅱ.用語の定義
- 5. 「契約」とは、法的な強制力のある権利及び義務を生じさせる複数の当事者間における取決めをいう。
- 6. 「顧客」とは、対価と交換に企業の通常の営業活動により生じたアウトプットである財又はサービスを得るために当該企業と契約した当事者をいう。
- 7. 「履行義務」とは、顧客との契約において、次の(1)又は(2)のいずれかを顧客に移転する約束をいう。
- (1) 別個の財又はサービス(あるいは別個の財又はサービスの束)
- (2) 一連の別個の財又はサービス(特性が実質的に同じであり、顧客への移転のパターンが同じである複数の財又はサービス)
- 8. 「取引価格」とは、財又はサービスの顧客への移転と交換に企業が権利を得ると見込む対価の額(ただし、第三者のために回収する額を除く。)をいう。
- 9. 「独立販売価格」とは、財又はサービスを独立して企業が顧客に販売する場合の価格をいう。
- 10. 「契約資産」とは、企業が顧客に移転した財又はサービスと交換に受け取る対価に対する企業の権利(ただし、顧客との契約から生じた債権を除く。)をいう。
- 11. 「契約負債」とは、財又はサービスを顧客に移転する企業の義務に対して、企業が顧客から対価を受け取ったもの又は対価を受け取る期限が到来しているものをいう。
- 12. 「顧客との契約から生じた債権」とは、企業が顧客に移転した財又はサービスと交換に受け取る対価に対する企業の権利のうち無条件のもの(すなわち、対価に対する法的な請求権)をいう。
- 13. 「工事契約」とは、仕事の完成に対して対価が支払われる請負契約のうち、土木、建築、造船や一定の機械装置の製造等、基本的な仕様や作業内容を顧客の指図に基づいて行うものをいう。
- 14. 「受注制作のソフトウェア」とは、契約の形式にかかわらず、特定のユーザー向けに制作され、提供されるソフトウェアをいう。
- 15. 「原価回収基準」とは、履行義務を充足する際に発生する費用のうち、回収することが見込まれる費用の金額で収益を認識する方法をいう。
Ⅲ.会計処理
1.基本となる原則
- 16. 本会計基準の基本となる原則は、約束した財又はサービスの顧客への移転を当該財又はサービスと交換に企業が権利を得ると見込む対価の額で描写するように、収益を認識することである。
- 17. 前項の基本となる原則に従って収益を認識するために、次の(1)から(5)のステップを適用する(適用指針[設例1])。
- (1) 顧客との契約を識別する(本会計基準第19項から第31項参照)。
本会計基準の定めは、顧客と合意し、かつ、所定の要件を満たす契約に適用する。 - (2) 契約における履行義務を識別する(本会計基準第32項から第34項参照)。
契約において顧客への移転を約束した財又はサービスが、所定の要件を満たす場合には別個のものであるとして、当該約束を履行義務として区分して識別する。 - (3) 取引価格を算定する(本会計基準第47項から第64項参照)。
変動対価又は現金以外の対価の存在を考慮し、金利相当分の影響及び顧客に支払われる対価について調整を行い、取引価格を算定する。 - (4) 契約における履行義務に取引価格を配分する(本会計基準第65項から第76項参照)。
契約において約束した別個の財又はサービスの独立販売価格の比率に基づき、それぞれの履行義務に取引価格を配分する。独立販売価格を直接観察できない場合には、独立販売価格を見積る。 - (5) 履行義務を充足した時に又は充足するにつれて収益を認識する(本会計基準第35項から第45項参照)。
約束した財又はサービスを顧客に移転することにより履行義務を充足した時に又は充足するにつれて、充足した履行義務に配分された額で収益を認識する。履行義務は、所定の要件を満たす場合には一定の期間にわたり充足され、所定の要件を満たさない場合には一時点で充足される。 - 18. 本会計基準の定め(適用指針第92項から第104項に定める重要性等に関する代替的な取扱いを含む。)は、顧客との個々の契約を対象として適用する。
- ただし、本会計基準の定めを複数の特性の類似した契約又は履行義務から構成されるグループ全体を対象として適用することによる財務諸表上の影響が、当該グループの中の個々の契約又は履行義務を対象として適用することによる影響と比較して重要性のある差異を生じさせないことが合理的に見込まれる場合に限り、当該グループ全体を対象として本会計基準の定めを適用することができる。この場合、当該グループの規模及び構成要素を反映する見積り及び仮定を用いる。
2.収益の認識基準
(1)契約の識別
- 19. 本会計基準を適用するにあたっては、次の(1)から(5)の要件のすべてを満たす顧客との契約を識別する。
- (1) 当事者が、書面、口頭、取引慣行等により契約を承認し、それぞれの義務の履行を約束していること
- (2) 移転される財又はサービスに関する各当事者の権利を識別できること
- (3) 移転される財又はサービスの支払条件を識別できること
- (4) 契約に経済的実質があること(すなわち、契約の結果として、企業の将来キャッシュ・フローのリスク、時期又は金額が変動すると見込まれること)
- (5) 顧客に移転する財又はサービスと交換に企業が権利を得ることとなる対価を回収する可能性が高いこと
当該対価を回収する可能性の評価にあたっては、対価の支払期限到来時における顧客が支払う意思と能力を考慮する(適用指針[設例2])。 - 20. 契約とは、法的な強制力のある権利及び義務を生じさせる複数の当事者間における取決めをいう(第5項参照)。契約における権利及び義務の強制力は法的な概念に基づくものであり、契約は書面、口頭、取引慣行等により成立する。顧客との契約締結に関する慣行及び手続は、国、業種又は企業により異なり、同一企業内でも異なる場合がある(例えば、顧客の属性や、約束した財又はサービスの性質により異なる場合がある。)。そのため、それらを考慮して、顧客との合意が強制力のある権利及び義務を生じさせるのかどうか並びにいつ生じさせるのかを判断する。
- 21. 本会計基準は、契約の当事者が現在の強制力のある権利及び義務を有している契約期間を対象として適用される。
- 22. 契約の当事者のそれぞれが、他の当事者に補償することなく完全に未履行の契約を解約する一方的で強制力のある権利を有している場合には、当該契約に本会計基準を適用しない。
- 完全に未履行の契約とは、次の(1)及び(2)のいずれも満たす契約である。
- (1) 企業が約束した財又はサービスを顧客に未だ移転していない。
- (2) 企業が、約束した財又はサービスと交換に、対価を未だ受け取っておらず、対価を受け取る権利も未だ得ていない。
- 23. 顧客との契約が契約における取引開始日において第19項の要件を満たす場合には、事実及び状況の重要な変化の兆候がない限り、当該要件を満たすかどうかについて見直しを行わない。
- 24. 顧客との契約が第19項の要件を満たさない場合には、当該要件を事後的に満たすかどうかを引き続き評価し、顧客との契約が当該要件を満たしたときに本会計基準を適用する。
- 25. 顧客との契約が第19項の要件を満たさない場合において、顧客から対価を受け取った際には、次の(1)又は(2)のいずれかに該当するときに、受け取った対価を収益として認識する。
- (1) 財又はサービスを顧客に移転する残りの義務がなく、約束した対価のほとんどすべてを受け取っており、顧客への返金は不要であること
- (2) 契約が解約されており、顧客から受け取った対価の返金は不要であること
- 26. 顧客から受け取った対価については、前項(1)又は(2)のいずれかに該当するまで、あるいは、第19項の要件が事後的に満たされるまで(第24項参照)、将来における財又はサービスを移転する義務又は対価を返金する義務として、負債を認識する。
(2)契約の結合
- 27. 同一の顧客(当該顧客の関連当事者を含む。)と同時又はほぼ同時に締結した複数の契約について、次の(1)から(3)のいずれかに該当する場合には、当該複数の契約を結合し、単一の契約とみなして処理する。
- (1) 当該複数の契約が同一の商業的目的を有するものとして交渉されたこと
- (2) 1つの契約において支払われる対価の額が、他の契約の価格又は履行により影響を受けること
- (3) 当該複数の契約において約束した財又はサービスが、第32項から第34項に従うと単一の履行義務となること
(3)契約変更
- 28. 契約変更は、契約の当事者が承認した契約の範囲又は価格(あるいはその両方)の変更であり、契約の当事者が、契約の当事者の強制力のある権利及び義務を新たに生じさせる変更又は既存の強制力のある権利及び義務を変化させる変更を承認した場合に生じるものである。
- 契約の当事者が契約変更を承認していない場合には、契約変更が承認されるまで、本会計基準を既存の契約に引き続き適用する。
- 29. 契約の当事者が契約の範囲の変更を承認したが、変更された契約の範囲に対応する価格の変更を決定していない場合には、第50項から第52項及び第54項に従って、当該契約変更による取引価格の変更を見積る。
- 30. 契約変更について、次の(1)及び(2)の要件のいずれも満たす場合には、当該契約変更を独立した契約として処理する。
- (1) 別個の財又はサービス(第34項参照)の追加により、契約の範囲が拡大されること
- (2) 変更される契約の価格が、追加的に約束した財又はサービスに対する独立販売価格に特定の契約の状況に基づく適切な調整を加えた金額分だけ増額されること
- 31. 契約変更が前項の要件を満たさず、独立した契約として処理されない場合には、契約変更日において未だ移転していない財又はサービスについて、それぞれ次の(1)から(3)のいずれかの方法により処理する。
- (1) 未だ移転していない財又はサービスが契約変更日以前に移転した財又はサービスと別個のものである場合には、契約変更を既存の契約を解約して新しい契約を締結したものと仮定して処理する。残存履行義務に配分すべき対価の額は、次の①及び②の合計額とする(適用指針[設例3])。
- ① 顧客が約束した対価(顧客から既に受け取った額を含む。)のうち、取引価格の見積りに含まれているが収益として認識されていない額
- ② 契約変更の一部として約束された対価
- (2) 未だ移転していない財又はサービスが契約変更日以前に移転した財又はサービスと別個のものではなく、契約変更日において部分的に充足されている単一の履行義務の一部を構成する場合には、契約変更を既存の契約の一部であると仮定して処理する。これにより、完全な履行義務の充足に向けて財又はサービスに対する支配(本会計基準第37項参照)を顧客に移転する際の企業の履行を描写する進捗度(以下「履行義務の充足に係る進捗度」という。)及び取引価格が変更される場合は、契約変更日において収益の額を累積的な影響に基づき修正する(適用指針[設例4])。
- (3) 未だ移転していない財又はサービスが(1)と(2)の両方を含む場合には、契約変更が変更後の契約における未充足の履行義務に与える影響を、それぞれ(1)又は(2)の方法に基づき処理する。
(4)履行義務の識別
- 32. 契約における取引開始日に、顧客との契約において約束した財又はサービスを評価し、次の(1)又は(2)のいずれかを顧客に移転する約束のそれぞれについて履行義務として識別する(第7項参照)。
- (1) 別個の財又はサービス(第34項参照)(あるいは別個の財又はサービスの束)
- (2) 一連の別個の財又はサービス(特性が実質的に同じであり、顧客への移転のパターンが同じである複数の財又はサービス)(第33項参照)
- 33. 前項(2)における一連の別個の財又はサービスは、次の(1)及び(2)の要件のいずれも満たす場合には、顧客への移転のパターンが同じであるものとする。
- (1) 一連の別個の財又はサービスのそれぞれが、第38項における一定の期間にわたり充足される履行義務の要件を満たすこと
- (2) 第41項及び第42項に従って、履行義務の充足に係る進捗度の見積りに、同一の方法が使用されること
(別個の財又はサービス)
- 34. 顧客に約束した財又はサービスは、次の(1)及び(2)の要件のいずれも満たす場合には、別個のものとする(適用指針[設例5]、[設例6]、[設例16]、[設例24]及び[設例25])。
- (1) 当該財又はサービスから単独で顧客が便益を享受することができること、あるいは、当該財又はサービスと顧客が容易に利用できる他の資源を組み合わせて顧客が便益を享受することができること(すなわち、当該財又はサービスが別個のものとなる可能性があること)
- (2) 当該財又はサービスを顧客に移転する約束が、契約に含まれる他の約束と区分して識別できること(すなわち、当該財又はサービスを顧客に移転する約束が契約の観点において別個のものとなること)
(5)履行義務の充足による収益の認識
- 35. 企業は約束した財又はサービス(本会計基準において、顧客との契約の対象となる財又はサービスについて、以下「資産」と記載することもある。)を顧客に移転することにより履行義務を充足した時に又は充足するにつれて、収益を認識する。資産が移転するのは、顧客が当該資産に対する支配を獲得した時又は獲得するにつれてである。
- 36. 契約における取引開始日に、第38項及び第39項に従って、識別された履行義務のそれぞれが、一定の期間にわたり充足されるものか又は一時点で充足されるものかを判定する。
- 37. 資産に対する支配とは、当該資産の使用を指図し、当該資産からの残りの便益のほとんどすべてを享受する能力(他の企業が資産の使用を指図して資産から便益を享受することを妨げる能力を含む。)をいう。
(一定の期間にわたり充足される履行義務)
- 38. 次の(1)から(3)の要件のいずれかを満たす場合、資産に対する支配を顧客に一定の期間にわたり移転することにより、一定の期間にわたり履行義務を充足し収益を認識する(適用指針[設例7])。
- (1) 企業が顧客との契約における義務を履行するにつれて、顧客が便益を享受すること
- (2) 企業が顧客との契約における義務を履行することにより、資産が生じる又は資産の価値が増加し、当該資産が生じる又は当該資産の価値が増加するにつれて、顧客が当該資産を支配すること(適用指針[設例4])
- (3) 次の要件のいずれも満たすこと(適用指針[設例8])
- ① 企業が顧客との契約における義務を履行することにより、別の用途に転用することができない資産が生じること
- ② 企業が顧客との契約における義務の履行を完了した部分について、対価を収受する強制力のある権利を有していること
(一時点で充足される履行義務)
- 39. 前項(1)から(3)の要件のいずれも満たさず、履行義務が一定の期間にわたり充足されるものではない場合には、一時点で充足される履行義務として、資産に対する支配を顧客に移転することにより当該履行義務が充足される時に、収益を認識する。
- 40. 資産に対する支配を顧客に移転した時点を決定するにあたっては、第37項の定めを考慮する。また、支配の移転を検討する際には、例えば、次の(1)から(5)の指標を考慮する。
- (1) 企業が顧客に提供した資産に関する対価を収受する現在の権利を有していること
- (2) 顧客が資産に対する法的所有権を有していること
- (3) 企業が資産の物理的占有を移転したこと
- (4) 顧客が資産の所有に伴う重大なリスクを負い、経済価値を享受していること
- (5) 顧客が資産を検収したこと
(履行義務の充足に係る進捗度)
- 41. 一定の期間にわたり充足される履行義務については、履行義務の充足に係る進捗度を見積り、当該進捗度に基づき収益を一定の期間にわたり認識する。
- 42. 一定の期間にわたり充足される履行義務については、単一の方法で履行義務の充足に係る進捗度を見積り、類似の履行義務及び状況に首尾一貫した方法を適用する。
- 43. 履行義務の充足に係る進捗度は、各決算日に見直し、当該進捗度の見積りを変更する場合は、会計上の見積りの変更(企業会計基準第24号「会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」(以下「企業会計基準第24号」という。)第4項(7))として処理する。
- 44. 履行義務の充足に係る進捗度を合理的に見積ることができる場合にのみ、一定の期間にわたり充足される履行義務について収益を認識する。
- 45. 履行義務の充足に係る進捗度を合理的に見積ることができないが、当該履行義務を充足する際に発生する費用を回収することが見込まれる場合には、履行義務の充足に係る進捗度を合理的に見積ることができる時まで、一定の期間にわたり充足される履行義務について原価回収基準により処理する。
3.収益の額の算定
(1)取引価格に基づく収益の額の算定
- 46. 履行義務を充足した時に又は充足するにつれて、取引価格(第54項の定めを考慮する。)のうち、当該履行義務に配分した額について収益を認識する。
(2)取引価格の算定
- 47. 取引価格とは、財又はサービスの顧客への移転と交換に企業が権利を得ると見込む対価の額(ただし、第三者のために回収する額を除く。)をいう(本会計基準第8項参照)(適用指針[設例29]及び[設例31])。取引価格の算定にあたっては、契約条件や取引慣行等を考慮する。
- 48. 顧客により約束された対価の性質、時期及び金額は、取引価格の見積りに影響を与える。取引価格を算定する際には、次の(1)から(4)のすべての影響を考慮する。
- (1) 変動対価(第50項から第55項参照)
- (2) 契約における重要な金融要素(第56項から第58項参照)
- (3) 現金以外の対価(第59項から第62項参照)
- (4) 顧客に支払われる対価(第63項及び第64項参照)
- 49. 取引価格を算定する際には、財又はサービスが契約に従って顧客に移転され、契約の取消、更新又は変更はないものと仮定する。
(変動対価)
- 50. 顧客と約束した対価のうち変動する可能性のある部分を「変動対価」という。契約において、顧客と約束した対価に変動対価が含まれる場合、財又はサービスの顧客への移転と交換に企業が権利を得ることとなる対価の額を見積る。
- 51. 変動対価の額の見積りにあたっては、発生し得ると考えられる対価の額における最も可能性の高い単一の金額(最頻値)による方法又は発生し得ると考えられる対価の額を確率で加重平均した金額(期待値)による方法のいずれかのうち、企業が権利を得ることとなる対価の額をより適切に予測できる方法を用いる(適用指針[設例10]、[設例11]及び[設例12])。
- 52. 変動対価の額に関する不確実性の影響を見積るにあたっては、契約全体を通じて単一の方法を首尾一貫して適用する。また、企業が合理的に入手できるすべての情報を考慮し、発生し得ると考えられる対価の額について合理的な数のシナリオを識別する。
- 53. 顧客から受け取った又は受け取る対価の一部あるいは全部を顧客に返金すると見込む場合、受け取った又は受け取る対価の額のうち、企業が権利を得ると見込まない額について、返金負債を認識する。返金負債の額は、各決算日に見直す(適用指針[設例11]及び[設例28])。
- 54. 本会計基準第51項に従って見積られた変動対価の額については、変動対価の額に関する不確実性が事後的に解消される際に、解消される時点までに計上された収益の著しい減額が発生しない可能性が高い部分に限り、取引価格に含める(適用指針[設例3]、[設例4]、[設例11]、[設例12]及び[設例13])。
- 55. 見積った取引価格は、各決算日に見直し、取引価格が変動する場合には、本会計基準第74項から第76項の定めを適用する(適用指針[設例3]、[設例4]及び[設例12])。
(契約における重要な金融要素)
- 56. 契約の当事者が明示的又は黙示的に合意した支払時期により、財又はサービスの顧客への移転に係る信用供与についての重要な便益が顧客又は企業に提供される場合には、顧客との契約は重要な金融要素を含むものとする。
- 57. 顧客との契約に重要な金融要素が含まれる場合、取引価格の算定にあたっては、約束した対価の額に含まれる金利相当分の影響を調整する。収益は、約束した財又はサービスが顧客に移転した時点で(又は移転するにつれて)、当該財又はサービスに対して顧客が支払うと見込まれる現金販売価格を反映する金額で認識する。
- 58. 契約における取引開始日において、約束した財又はサービスを顧客に移転する時点と顧客が支払を行う時点の間が1年以内であると見込まれる場合には、重要な金融要素の影響について約束した対価の額を調整しないことができる。
(現金以外の対価)
- 59. 契約における対価が現金以外の場合に取引価格を算定するにあたっては、当該対価を時価により算定する。
- 60. 現金以外の対価の時価を合理的に見積ることができない場合には、当該対価と交換に顧客に約束した財又はサービスの独立販売価格を基礎として当該対価を算定する。
- 61. 現金以外の対価の時価が変動する理由が、株価の変動等、対価の種類によるものだけではない場合(例えば、企業が顧客との契約における義務を履行するにつれて時価が変動する場合)には、第54項の定めを適用する。
- 62. 企業による契約の履行に資するために、顧客が財又はサービス(例えば、材料、設備又は労働)を企業に提供する場合には、企業は、顧客から提供された財又はサービスに対する支配を獲得するかどうかを判定する。顧客から提供された財又はサービスに対する支配を獲得する場合には、当該財又はサービスを、顧客から受け取る現金以外の対価として処理する。
(顧客に支払われる対価)
- 63. 顧客に支払われる対価は、企業が顧客(あるいは顧客から企業の財又はサービスを購入する他の当事者)に対して支払う又は支払うと見込まれる現金の額や、顧客が企業(あるいは顧客から企業の財又はサービスを購入する他の当事者)に対する債務額に充当できるもの(例えば、クーポン)の額を含む。
- 顧客に支払われる対価は、顧客から受領する別個の財又はサービスと交換に支払われるものである場合を除き、取引価格から減額する。顧客に支払われる対価に変動対価が含まれる場合には、取引価格の見積りを本会計基準第50項から第54項に従って行う(適用指針[設例14])。
- 64. 顧客に支払われる対価を取引価格から減額する場合には、次の(1)又は(2)のいずれか遅い方が発生した時点で(又は発生するにつれて)、収益を減額する(適用指針[設例14])。
- (1) 関連する財又はサービスの移転に対する収益を認識する時
- (2) 企業が対価を支払うか又は支払を約束する時(当該支払が将来の事象を条件とする場合も含む。また、支払の約束は、取引慣行に基づくものも含む。)
(3)履行義務への取引価格の配分
- 65. それぞれの履行義務(あるいは別個の財又はサービス)に対する取引価格の配分は、財又はサービスの顧客への移転と交換に企業が権利を得ると見込む対価の額を描写するように行う。
- 66. 財又はサービスの独立販売価格の比率に基づき、契約において識別したそれぞれの履行義務に取引価格を配分する。ただし、本会計基準第70項から第73項の定めを適用する場合を除く(適用指針[設例15-1])。
- 67. 契約に単一の履行義務しかない場合には、第68項から第73項の定めを適用しない。ただし、第32項(2)に従って一連の別個の財又はサービスを移転する約束が単一の履行義務として識別され、かつ、約束された対価に変動対価が含まれる場合には、第72項及び第73項の定めを適用する。
(独立販売価格に基づく配分)
- 68. 第66項に従って財又はサービスの独立販売価格の比率に基づき取引価格を配分する際には、契約におけるそれぞれの履行義務の基礎となる別個の財又はサービスについて、契約における取引開始日の独立販売価格を算定し、取引価格を当該独立販売価格の比率に基づき配分する。
- 69. 財又はサービスの独立販売価格を直接観察できない場合には、市場の状況、企業固有の要因、顧客に関する情報等、合理的に入手できるすべての情報を考慮し、観察可能な入力数値を最大限利用して、独立販売価格を見積る。類似の状況においては、見積方法を首尾一貫して適用する。
(値引きの配分)
- 70. 契約における約束した財又はサービスの独立販売価格の合計額が当該契約の取引価格を超える場合には、契約における財又はサービスの束について顧客に値引きを行っているものとして、当該値引きについて、契約におけるすべての履行義務に対して比例的に配分する。
- 71. 前項の定めにかかわらず、次の(1)から(3)の要件のすべてを満たす場合には、契約における履行義務のうち1つ又は複数(ただし、すべてではない。)に値引きを配分する(適用指針[設例15])。
- (1) 契約における別個の財又はサービス(あるいは別個の財又はサービスの束)のそれぞれを、通常、単独で販売していること
- (2) 当該別個の財又はサービスのうちの一部を束にしたものについても、通常、それぞれの束に含まれる財又はサービスの独立販売価格から値引きして販売していること
- (3) (2)における財又はサービスの束のそれぞれに対する値引きが、当該契約の値引きとほぼ同額であり、それぞれの束に含まれる財又はサービスを評価することにより、当該契約の値引き全体がどの履行義務に対するものかについて観察可能な証拠があること
(変動対価の配分)
- 72. 次の(1)及び(2)の要件のいずれも満たす場合には、変動対価及びその事後的な変動のすべてを、1つの履行義務あるいは本会計基準第32項(2)に従って識別された単一の履行義務に含まれる1つの別個の財又はサービスに配分する(適用指針[設例25])。
- (1) 変動性のある支払の条件が、当該履行義務を充足するための活動や当該別個の財又はサービスを移転するための活動(あるいは当該履行義務の充足による特定の結果又は当該別個の財又はサービスの移転による特定の結果)に個別に関連していること
- (2) 契約における履行義務及び支払条件のすべてを考慮した場合、変動対価の額のすべてを当該履行義務あるいは当該別個の財又はサービスに配分することが、企業が権利を得ると見込む対価の額を描写すること
- 73. 前項の要件を満たさない残りの取引価格については、第65項から第71項の定めに従って配分する。
(4)取引価格の変動
- 74. 取引価格の事後的な変動については、契約における取引開始日後の独立販売価格の変動を考慮せず、契約における取引開始日と同じ基礎により契約における履行義務に配分する。取引価格の事後的な変動のうち、既に充足した履行義務に配分された額については、取引価格が変動した期の収益の額を修正する(適用指針[設例13])。
- 75. 第72項の要件のいずれも満たす場合には、取引価格の変動のすべてについて、次の(1)又は(2)のいずれかに配分する。
- (1) 1つ又は複数の(ただし、すべてではない。)履行義務
- (2) 第32項(2)に従って識別された単一の履行義務に含まれる1つ又は複数の(ただし、すべてではない。)別個の財又はサービス
- 76. 契約変更によって生じる取引価格の変動は、本会計基準第28項から第31項に従って処理する。契約変更が本会計基準第30項の要件を満たさず、独立した契約として処理されない場合(本会計基準第31項参照)、当該契約変更を行った後に生じる取引価格の変動について、本会計基準第74項及び第75項の定めに従って、次の(1)又は(2)のいずれかの方法で配分する。
- (1) 取引価格の変動が契約変更の前に約束された変動対価の額に起因し、当該契約変更を本会計基準第31項(1)に従って処理する場合には、取引価格の変動を契約変更の前に識別した履行義務に配分する(適用指針[設例3])。
- (2) 当該契約変更を本会計基準第31項(1)に従って処理しない場合には、取引価格の変動を契約変更の直後に充足されていない又は部分的に充足されていない履行義務に配分する。
4.契約資産、契約負債及び顧客との契約から生じた債権
- 77. 顧客から対価を受け取る前又は対価を受け取る期限が到来する前に、財又はサービスを顧客に移転した場合は、収益を認識し、契約資産又は顧客との契約から生じた債権を貸借対照表に計上する。
- 本会計基準に定めのない契約資産の会計処理は、金融商品会計基準における債権の取扱いに準じて処理する。また、外貨建ての契約資産に係る外貨換算については、企業会計審議会「外貨建取引等会計処理基準」(以下「外貨建取引等会計処理基準」という。)の外貨建金銭債権債務の換算の取扱いに準じて処理する。
- 78. 財又はサービスを顧客に移転する前に顧客から対価を受け取る場合、顧客から対価を受け取った時又は対価を受け取る期限が到来した時のいずれか早い時点で、顧客から受け取る対価について契約負債を貸借対照表に計上する。
Ⅳ.開 示
1.表 示
- 78-2. 顧客との契約から生じる収益を、適切な科目をもって損益計算書に表示する。なお、顧客との契約から生じる収益については、それ以外の収益と区分して損益計算書に表示するか、又は両者を区分して損益計算書に表示しない場合には、顧客との契約から生じる収益の額を注記する。
- 78-3. 顧客との契約に重要な金融要素が含まれる場合(第56項参照)、顧客との契約から生じる収益と金融要素の影響(受取利息又は支払利息)を損益計算書において区分して表示する。
- 79. 企業が履行している場合や企業が履行する前に顧客から対価を受け取る場合等、契約のいずれかの当事者が履行している場合等には、企業は、企業の履行と顧客の支払との関係に基づき、契約資産、契約負債又は顧客との契約から生じた債権を計上する。また、契約資産、契約負債又は顧客との契約から生じた債権を、適切な科目をもって貸借対照表に表示する(適用指針[設例27])。
- なお、契約資産と顧客との契約から生じた債権のそれぞれについて、貸借対照表に他の資産と区分して表示しない場合には、それぞれの残高を注記する。また、契約負債を貸借対照表において他の負債と区分して表示しない場合には、契約負債の残高を注記する(本会計基準第80-20項(1)参照)。
2.注記事項
- 80. (削 除)
(1)重要な会計方針の注記
- 80-2. 顧客との契約から生じる収益に関する重要な会計方針として、次の項目を注記する。
- (1) 企業の主要な事業における主な履行義務の内容(第80-14項参照)
- (2) 企業が当該履行義務を充足する通常の時点(収益を認識する通常の時点)(第80-18項(1)参照)
- 80-3. 前項の項目以外にも、重要な会計方針に含まれると判断した内容については、重要な会計方針として注記する。
(2)収益認識に関する注記
(開示目的)
- 80-4. 収益認識に関する注記における開示目的は、顧客との契約から生じる収益及びキャッシュ・フローの性質、金額、時期及び不確実性を財務諸表利用者が理解できるようにするための十分な情報を企業が開示することである。
- 80-5. 前項の開示目的を達成するため、収益認識に関する注記として、次の項目を注記する。
- (1) 収益の分解情報(第80-10項及び第80-11項参照)
- (2) 収益を理解するための基礎となる情報(第80-12項から第80-19項参照)
- (3) 当期及び翌期以降の収益の金額を理解するための情報(第80-20項から第80-24項参照)
- ただし、上記の項目に掲げている各注記事項のうち、前項の開示目的に照らして重要性に乏しいと認められる注記事項については、記載しないことができる。
- 80-6. 収益認識に関する注記を記載するにあたり、どの注記事項にどの程度の重点を置くべきか、また、どの程度詳細に記載するのかを第80-4項の開示目的に照らして判断する。重要性に乏しい詳細な情報を大量に記載したり、特徴が大きく異なる項目を合算したりすることにより有用な情報が不明瞭とならないように、注記は集約又は分解する。
- 80-7. 収益認識に関する注記を記載するにあたり、第80-10項から第80-24項において示す注記事項の区分に従って注記事項を記載する必要はない。
- 80-8. 第80-2項及び第80-3項に従って重要な会計方針として注記している内容は、収益認識に関する注記として記載しないことができる。
- 80-9. 収益認識に関する注記として記載する内容について、財務諸表における他の注記事項に含めて記載している場合には、当該他の注記事項を参照することができる。
(収益の分解情報)
- 80-10. 当期に認識した顧客との契約から生じる収益を、収益及びキャッシュ・フローの性質、金額、時期及び不確実性に影響を及ぼす主要な要因に基づく区分に分解して注記する(適用指針[開示例1])。
- 80-11. 企業会計基準第17号「セグメント情報等の開示に関する会計基準」(以下「セグメント情報等会計基準」という。)を適用している場合、前項に従って注記する収益の分解情報と、セグメント情報等会計基準に従って各報告セグメントについて開示する売上高との間の関係を財務諸表利用者が理解できるようにするための十分な情報を注記する(適用指針[開示例1])。
(収益を理解するための基礎となる情報)
- 80-12. 顧客との契約が、財務諸表に表示している項目又は収益認識に関する注記における他の注記事項とどのように関連しているのかを示す基礎となる情報として、次の事項を注記する。
- (1) 契約及び履行義務に関する情報
- (2) 取引価格の算定に関する情報
- (3) 履行義務への配分額の算定に関する情報
- (4) 履行義務の充足時点に関する情報
- (5) 本会計基準の適用における重要な判断
契約及び履行義務に関する情報
- 80-13. 収益として認識する項目がどのような契約から生じているのかを理解するための基礎となる情報を注記する。この情報には、次の事項が含まれる。
- (1) 履行義務に関する情報
- (2) 重要な支払条件に関する情報
- 80-14. 前項(1)に掲げる履行義務に関する情報を注記するにあたっては、履行義務の内容(企業が顧客に移転することを約束した財又はサービスの内容)を記載する。
また、例えば、次の内容が契約に含まれる場合には、その内容を注記する。 - (1) 財又はサービスが他の当事者により顧客に提供されるように手配する履行義務(すなわち、企業が他の当事者の代理人として行動する場合)(適用指針第39項から第47項)
- (2) 返品、返金及びその他の類似の義務(本会計基準第63項、第64項等参照)(適用指針第84項から第89項等)
- (3) 財又はサービスに対する保証及び関連する義務(適用指針第34項から第38項)
- 80-15. 第80-13項(2)に掲げる重要な支払条件に関する情報を注記するにあたっては、例えば、次の内容を記載する。
- (1) 通常の支払期限
- (2) 対価に変動対価が含まれる場合のその内容(第50項から第55項参照)
- (3) 変動対価の見積りが第54項に従って通常制限される場合のその内容
- (4) 契約に重要な金融要素が含まれる場合のその内容(第56項から第58項参照)
取引価格の算定に関する情報
- 80-16. 取引価格の算定方法について理解できるよう、取引価格を算定する際に用いた見積方法、インプット及び仮定に関する情報を注記する。例えば、次の内容を記載する。
- (1) 変動対価の算定(本会計基準第50項から第55項参照)
- (2) 変動対価の見積りが本会計基準第54項に従って制限される場合のその評価
- (3) 契約に重要な金融要素が含まれる場合の対価の額に含まれる金利相当分の調整(本会計基準第56項から第58項参照)
- (4) 現金以外の対価の算定(本会計基準第59項から第62項参照)
- (5) 返品、返金及びその他の類似の義務の算定(本会計基準第63項、第64項等参照)(適用指針第84項から第89項等)
履行義務への配分額の算定に関する情報
- 80-17. 取引価格の履行義務への配分額の算定方法について理解できるよう、取引価格を履行義務に配分する際に用いた見積方法、インプット及び仮定に関する情報を注記する。例えば、次の内容を記載する。
- (1) 約束した財又はサービスの独立販売価格の見積り(第65項から第69項参照)
- (2) 契約の特定の部分に値引きや変動対価の配分を行っている場合の取引価格の配分(第70項から第73項参照)
履行義務の充足時点に関する情報
- 80-18. 履行義務を充足する通常の時点(収益を認識する通常の時点)の判断及び当該時点における会計処理の方法を理解できるよう、次の事項を注記する。
- (1) 履行義務を充足する通常の時点(収益を認識する通常の時点)(第35項から第45項参照)
- (2) 一定の期間にわたり充足される履行義務について、収益を認識するために使用した方法及び当該方法が財又はサービスの移転の忠実な描写となる根拠(第38項及び第41項から第45項参照)
- (3) 一時点で充足される履行義務について、約束した財又はサービスに対する支配を顧客が獲得した時点を評価する際に行った重要な判断(第39項及び第40項参照)
本会計基準の適用における重要な判断
- 80-19. 本会計基準を適用する際に行った判断及び判断の変更のうち、顧客との契約から生じる収益の金額及び時期の決定に重要な影響を与えるものを注記する。
(当期及び翌期以降の収益の金額を理解するための情報)
契約資産及び契約負債の残高等
- 80-20. 履行義務の充足とキャッシュ・フローの関係を理解できるよう、次の事項を注記する。
- (1) 顧客との契約から生じた債権、契約資産及び契約負債の期首残高及び期末残高(区分して表示していない場合)(第79項なお書き参照)
- (2) 当期に認識した収益の額のうち期首現在の契約負債残高に含まれていた額
- (3) 当期中の契約資産及び契約負債の残高の重要な変動がある場合のその内容
- (4) 履行義務の充足の時期(第80-18項(1)参照)が通常の支払時期(第80-13項(2)参照)にどのように関連するのか並びにそれらの要因が契約資産及び契約負債の残高に与える影響の説明
- また、過去の期間に充足(又は部分的に充足)した履行義務から、当期に認識した収益(例えば、取引価格の変動)がある場合には、当該金額を注記する。
残存履行義務に配分した取引価格
- 80-21. 既存の契約から翌期以降に認識することが見込まれる収益の金額及び時期について理解できるよう、残存履行義務に関して次の事項を注記する。
- (1) 当期末時点で未充足(又は部分的に未充足)の履行義務に配分した取引価格の総額
- (2) (1)に従って注記した金額を、企業がいつ収益として認識すると見込んでいるのか、次のいずれかの方法により注記する。
- ① 残存履行義務の残存期間に最も適した期間による定量的情報を使用した方法(適用指針[開示例2-2]及び[開示例2-3])
- ② 定性的情報を使用した方法(適用指針[開示例3])
- 80-22. 次のいずれかの条件に該当する場合には、前項の注記に含めないことができる。
- (1) 履行義務が、当初に予想される契約期間(本会計基準第21項参照)が1年以内の契約の一部である。
- (2) 履行義務の充足から生じる収益を適用指針第19項に従って認識している(適用指針[開示例2-1])。
- (3) 次のいずれかの条件を満たす変動対価である。
- ① 売上高又は使用量に基づくロイヤルティ(適用指針第67項)
- ② 本会計基準第72項の要件に従って、完全に未充足の履行義務(あるいは本会計基準第32項(2)に従って識別された単一の履行義務に含まれる1つの別個の財又はサービスのうち、完全に未充足の財又はサービス)に配分される変動対価
- 80-23. 顧客との契約から受け取る対価の額に、取引価格に含まれない変動対価の額等、取引価格に含まれず、結果として本会計基準第80-21項の注記に含めていないものがある場合には、その旨を注記する(本会計基準第54項参照)(適用指針[開示例2-3])。
- 80-24. 本会計基準第80-22項のいずれかの条件に該当するため、本会計基準第80-21項の注記に含めていないものがある場合には、本会計基準第80-22項のいずれの条件に該当しているか、及び本会計基準第80-21項の注記に含めていない履行義務の内容を注記する(適用指針[開示例2-1])。
前段の定めに加え、本会計基準第80-22項(3)のいずれかの条件に該当するため、本会計基準第80-21項の注記に含めていないものがある場合には、次の事項を注記する。 - (1) 残存する契約期間(本会計基準第21項参照)
- (2) 本会計基準第80-21項の注記に含めていない変動対価の概要(例えば、変動対価の内容及びその変動性がどのように解消されるのか)
3.連結財務諸表を作成している場合の個別財務諸表における表示及び注記事項
- 80-25. 連結財務諸表を作成している場合、個別財務諸表においては、第78-2項、第78-3項及び第79項の表示及び注記の定めを適用しないことができる。
- 80-26. 連結財務諸表を作成している場合、個別財務諸表においては、収益認識に関する注記として掲げている第80-5項から第80-24項の定めにかかわらず、第80-5項に掲げる項目のうち、(1)「収益の分解情報」及び(3)「当期及び翌期以降の収益の金額を理解するための情報」について注記しないことができる。
- 80-27. 連結財務諸表を作成している場合、個別財務諸表においては、第80-5項(2)「収益を理解するための基礎となる情報」の注記を記載するにあたり、連結財務諸表における記載を参照することができる。
Ⅴ.適用時期等
1.適用時期
- 81. 2020年に改正した本会計基準(以下「2020年改正会計基準」という。)は、2021年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用する。
- 82. ただし、2020年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から2020年改正会計基準を適用することができる。
- 83. 前項の定めに加え、2020年4月1日に終了する連結会計年度及び事業年度から2021年3月30日に終了する連結会計年度及び事業年度までにおける年度末に係る連結財務諸表及び個別財務諸表から2020年改正会計基準を適用することができる。この適用にあたって、早期適用した連結会計年度及び事業年度の翌年度に係る四半期(又は中間)連結財務諸表及び四半期(又は中間)個別財務諸表においては、早期適用した連結会計年度及び事業年度の四半期(又は中間)連結財務諸表及び四半期(又は中間)個別財務諸表について、2020年改正会計基準を当該年度の期首に遡って適用する。
- 83-2. 2018年に公表した本会計基準(以下「2018年会計基準」という。)は、2018年会計基準第82項に定められていたとおり、2021年3月31日以前に開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用することができる(2020年改正会計基準を適用している場合を除く。)。
- 83-3. 2024年改正の本会計基準(以下「2024年改正会計基準」という。)の適用時期は、2024年に公表されたリース会計基準の適用時期と同様とする。
2.経過措置
(1)2018年会計基準を適用せずに2020年改正会計基準を適用する場合の経過措置
- 83-4. 2018年会計基準を適用せずに2020年改正会計基準を適用する場合の経過措置は、第84項から第89-3項に定めるとおりとする。
- 84. 2020年改正会計基準の適用初年度においては、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として取り扱い、原則として、新たな会計方針を過去の期間のすべてに遡及適用する(以下「原則的な取扱い」という。)。
- ただし、適用初年度の期首より前に新たな会計方針を遡及適用した場合の適用初年度の累積的影響額を、適用初年度の期首の利益剰余金に加減し、当該期首残高から新たな会計方針を適用することができる。
- 85. 2020年改正会計基準を原則的な取扱いに従って遡及適用する場合、次の(1)から(4)の方法の1つ又は複数を適用することができる。
- (1) 適用初年度の前連結会計年度及び前事業年度の期首より前までに従前の取扱いに従ってほとんどすべての収益の額を認識した契約について、適用初年度の前連結会計年度の連結財務諸表及び四半期(又は中間)連結財務諸表(注記事項を含む。)並びに適用初年度の前事業年度の個別財務諸表及び四半期(又は中間)個別財務諸表(注記事項を含む。)(以下合わせて「適用初年度の比較情報」という。)を遡及的に修正しないこと
- (2) 適用初年度の期首より前までに従前の取扱いに従ってほとんどすべての収益の額を認識した契約に変動対価が含まれる場合、当該契約に含まれる変動対価の額について、変動対価の額に関する不確実性が解消された時の金額を用いて適用初年度の比較情報を遡及的に修正すること
- (3) 適用初年度の前連結会計年度内及び前事業年度内に開始して終了した契約について、適用初年度の前連結会計年度の四半期(又は中間)連結財務諸表及び適用初年度の前事業年度の四半期(又は中間)個別財務諸表を遡及的に修正しないこと
- (4) 適用初年度の前連結会計年度及び前事業年度の期首より前までに行われた契約変更について、すべての契約変更を反映した後の契約条件に基づき、次の①から③の処理を行い、適用初年度の比較情報を遡及的に修正すること
- ① 履行義務の充足分及び未充足分の区分
- ② 取引価格の算定
- ③ 履行義務の充足分及び未充足分への取引価格の配分
- 86. 第84項ただし書きの方法を選択する場合、適用初年度の期首より前までに従前の取扱いに従ってほとんどすべての収益の額を認識した契約に、新たな会計方針を遡及適用しないことができる。
- また、第84項ただし書きの方法を選択する場合、契約変更について、次の(1)又は(2)のいずれかを適用し、その累積的影響額を適用初年度の期首の利益剰余金に加減することができる。
- (1) 適用初年度の期首より前までに行われた契約変更について、すべての契約変更を反映した後の契約条件に基づき、前項(4)の①から③の処理を行うこと
- (2) 適用初年度の前連結会計年度及び前事業年度の期首より前までに行われた契約変更について、すべての契約変更を反映した後の契約条件に基づき、前項(4)の①から③の処理を行うこと
- 87. 第84項から第86項の定めにかかわらず、国際財務報告基準(IFRS)又は米国会計基準を連結財務諸表に適用している企業(又はその連結子会社)が当該企業の個別財務諸表に2020年改正会計基準を適用する場合には、2020年改正会計基準の適用初年度において、IFRS第15号「顧客との契約から生じる収益」(以下「IFRS第15号」という。)又はFASB Accounting Standards Codification(米国財務会計基準審議会(FASB)による会計基準のコード化体系。以下「FASB-ASC」という。)のTopic 606「顧客との契約から生じる収益」(以下「Topic 606」という。)のいずれかの経過措置の定めを適用することができる。
- また、第84項から第86項の定めにかかわらず、IFRSを連結財務諸表に初めて適用する企業(又はその連結子会社)が当該企業の個別財務諸表に2020年改正会計基準を適用する場合には、2020年改正会計基準の適用初年度において、IFRS第1号「国際財務報告基準の初度適用」(以下「IFRS第1号」という。)における経過措置に関する定めを適用することができる。
- 88. (削 除)
- 89. 第47項の定めに従って、2020年改正会計基準の適用初年度において、消費税及び地方消費税(以下「消費税等」という。)の会計処理を税込方式から税抜方式に変更する場合には、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として取り扱う。この場合、適用初年度の期首より前までに税込方式に従って消費税等が算入された固定資産等の取得原価から消費税等相当額を控除しないことができる。
- 89-2. 2020年改正会計基準の適用初年度においては、適用初年度の比較情報について、新たな表示方法に従い組替えを行わないことができる。
- 89-3. 2020年改正会計基準の適用初年度においては、第78-2項、第79項なお書き及び第80-2項から第80-27項に記載した内容を適用初年度の比較情報に注記しないことができる。
(2)2018年会計基準を適用したうえで2020年改正会計基準を適用する場合の経過措置
- 89-4. 2018年会計基準を適用したうえで2020年改正会計基準を適用する場合、将来にわたり新たな会計方針を適用することができる。2020年改正会計基準の適用初年度においては、2020年改正会計基準の適用により表示方法(注記による開示も含む。)の変更が生じる場合には、企業会計基準第24号第14項の定めにかかわらず、適用初年度の比較情報について、新たな表示方法に従い組替えを行わないことができる。この場合、企業会計基準第24号第16項(3)における「組替えられた過去の財務諸表の主な項目の金額」について注記しないことができる。また、本会計基準第78-2項、第79項なお書き及び第80-2項から第80-27項に記載した内容を適用初年度の比較情報に注記しないことができる。
3.その他
- 90. 本会計基準第81項の適用により、次の企業会計基準、企業会計基準適用指針及び実務対応報告は廃止する。
- (1) 企業会計基準第15号「工事契約に関する会計基準」(以下「工事契約会計基準」という。)
- (2) 企業会計基準適用指針第18号「工事契約に関する会計基準の適用指針」(以下「工事契約適用指針」という。)
- (3) 実務対応報告第17号「ソフトウェア取引の収益の会計処理に関する実務上の取扱い」(以下「ソフトウェア取引実務対応報告」という。)
Ⅵ.議 決
- 91. 2018年会計基準は、第381回企業会計基準委員会に出席した委員13名全員の賛成により承認された。なお、出席した委員は以下のとおりである。
- (略)
- 91-2. 2020年改正会計基準は、第428回企業会計基準委員会に出席した委員14名全員の賛成により承認された。なお、出席した委員は以下のとおりである。
- (略)
- 91-3. 2024年改正会計基準は、第532回企業会計基準委員会に出席した委員13名全員の賛成により承認された。なお、出席した委員は、以下のとおりである。
- (略)
結論の背景
経 緯
2018年会計基準の公表
- 92. 我が国においては、企業会計原則に、「売上高は、実現主義の原則に従い、商品等の販売又は役務の給付によって実現したものに限る。」(企業会計原則 第二 損益計算書原則 三 B)とされているものの、収益認識に関する包括的な会計基準はこれまで開発されていなかった。
- 一方、国際会計基準審議会(IASB)及び米国財務会計基準審議会(FASB)は、共同して収益認識に関する包括的な会計基準の開発を行い、2014年(平成26年)5月に「顧客との契約から生じる収益」(IASBにおいてはIFRS第15号、FASBにおいてはTopic 606)を公表している。両基準は、文言レベルで概ね同一の基準となっており、当該基準の適用後、IFRSと米国会計基準により作成される財務諸表における収益の額は当該基準により報告されることとなる。
- 売上高、営業収入等、その呼称は業種や取引の種類により異なるが、収益は、企業の主な営業活動からの成果を表示するものとして、企業の経営成績を表示するうえで重要な財務情報と考えられる。
- これらの状況を踏まえ、当委員会は、2015年(平成27年)3月に開催された第308回企業会計基準委員会において、IFRS第15号を踏まえた我が国における収益認識に関する包括的な会計基準の開発に向けた検討に着手することを決定し検討を開始した。
- 93. 当委員会では、検討の初期の段階で適用上の課題や今後の検討の進め方に対する意見を幅広く把握するため、2016年(平成28年)2月に「収益認識に関する包括的な会計基準の開発についての意見の募集」(以下「意見募集文書」という。)を公表した(2016年(平成28年)4月に一部改訂している。)。
- 意見募集文書では、次の事項を、収益認識に関する包括的な会計基準の開発の意義として掲げている。
- (1) 我が国の会計基準の体系の整備
- (2) 企業間の財務諸表の比較可能性の向上
- (3) 企業により開示される情報の充実
- 意見募集文書に対して33通のコメント・レターが寄せられ、コメント・レターの大半はIFRS第15号の内容を出発点とした当該基準の開発を全般的には支持するものであったが、適用上の課題も多く寄せられた。
- 当委員会では、これらの意見募集文書に寄せられた意見を踏まえ、課題の抽出を行い、それらを検討したうえで、2017年(平成29年)7月に企業会計基準公開草案第61号「収益認識に関する会計基準(案)」及び企業会計基準適用指針公開草案第61号「収益認識に関する会計基準の適用指針(案)」(以下合わせて「2017年公開草案」という。)を公表して広く意見を求めた。2018年会計基準は、2017年公開草案に対して寄せられた意見を踏まえて検討を行い、2017年公開草案の内容を一部修正したうえで公表するに至ったものである。
- 94. なお、当委員会は、2016年(平成28年)8月に中期運営方針を公表している。当該中期運営方針においては、我が国の上場企業等で用いられる会計基準の質の向上を図るために、日本基準を高品質で国際的に整合性のとれたものとして維持・向上を図ることを方針として掲げており、2018年会計基準の内容は、当該中期運営方針に沿ったものである。
- 95. また、本会計基準の適用により、次の企業会計基準、企業会計基準適用指針及び実務対応報告は廃止される。
- (1) 工事契約会計基準
- (2) 工事契約適用指針
- (3) ソフトウェア取引実務対応報告
- 96. 2018年会計基準の実務への適用を検討する過程で、2018年会計基準における定めが明確であるものの、これに従った処理を行うことが実務上著しく困難な状況が市場関係者により識別され、その旨当委員会に提起された場合には、公開の審議により、別途の対応を図ることの要否を当委員会において判断することとした。
2020年改正会計基準の公表
- 96-2. 2018年会計基準においては、2018年会計基準を早期適用する場合の必要最低限の注記(企業の主要な事業における主な履行義務の内容及び企業が当該履行義務を充足する通常の時点(収益を認識する通常の時点))のみを定め、財務諸表作成者の準備期間を考慮したうえで、2018年会計基準が適用される時(2021年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首)までに、注記事項の定めを検討することとしていた。
また、収益認識の表示に関する次の事項についても同様に、財務諸表作成者の準備期間を考慮したうえで、2018年会計基準が適用される時までに検討することとしていた。
(1) 収益の表示科目
(2) 収益と金融要素の影響(受取利息又は支払利息)の区分表示の要否
(3) 契約資産と債権の区分表示の要否
当委員会では、検討を重ねたうえで、2019年10月に企業会計基準公開草案第66号(企業会計基準第29号の改正案)「収益認識に関する会計基準(案)」等(以下「2019年公開草案」という。)を公表して広く意見を求めた。2020年改正会計基準は、2019年公開草案に寄せられた意見を踏まえて検討を行い、2019年公開草案の内容を一部修正したうえで公表するに至ったものである。
また、2020年改正会計基準においては、2020年改正会計基準の開発過程で識別された一部の論点について、2018年会計基準の見直しを行っている。
2024年改正会計基準の公表
- 96-3. 2024年改正会計基準においては、2024年のリース会計基準の公表に伴い、結論の背景における「範囲」の記載の一部を削除した。
開発にあたっての基本的な方針
2018年会計基準
- 97. 当委員会では、収益認識に関する会計基準の開発にあたっての基本的な方針として、IFRS第15号と整合性を図る便益の1つである国内外の企業間における財務諸表の比較可能性の観点から、IFRS第15号の基本的な原則を取り入れることを出発点とし、会計基準を定めることとした。また、これまで我が国で行われてきた実務等に配慮すべき項目がある場合には、比較可能性を損なわせない範囲で代替的な取扱いを追加することとした。
- 98. 前項の方針の下、連結財務諸表に関して、次の開発の方針を定めた。
- (1) IFRS第15号の定めを基本的にすべて取り入れる。
- (2) 適用上の課題に対応するために、代替的な取扱いを追加的に定める。代替的な取扱いを追加的に定める場合、国際的な比較可能性を大きく損なわせないものとすることを基本とする。
- (1)の方針を定めた理由は、次のとおりである。
- ① 収益認識に関する包括的な会計基準の開発の意義の1つとして、国際的な比較可能性の確保が重要なものと考えられること
- ② IFRS第15号は、5つのステップに基づき、履行義務の識別、取引価格の配分、支配の移転による収益認識等を定めており、部分的に採用することが困難であると考えられること
- 99. 連結財務諸表に関する方針を前項のとおり定めたうえで個別財務諸表の取扱いについて審議がなされた。審議の過程では、次のとおり、さまざまな意見が聞かれた。
- (1) 経営管理の観点からは、連結財務諸表と個別財務諸表の取扱いは同一の内容とすることが好ましい。
- (2) IFRS又は米国会計基準により連結財務諸表を作成している企業にとっては、個別財務諸表も、IFRS第15号又はTopic 606を基礎とした内容とすることが好ましい。
- (3) 個別財務諸表については、中小規模の上場企業や連結子会社を含むさまざまな企業に影響を及ぼすため、可能な限り簡素な定めとして、本会計基準の導入時及び適用時のコストを軽減すべきである。
- (4) 個別財務諸表における金額は、関連諸法規等に用いられ、特に法人税法上の課税所得計算の基礎となるため、法人税との関係に配慮すべきである。
- この点、次を理由に、基本的には、連結財務諸表と個別財務諸表において同一の会計処理を定めることとした。
- ① 当委員会において、これまでに開発してきた会計基準では、基本的に連結財務諸表と個別財務諸表において同一の会計処理を定めてきたこと
- ② 連結財務諸表と個別財務諸表で同一の内容としない場合、企業が連結財務諸表を作成する際の連結調整に係るコストが生じる。一方、連結財務諸表と個別財務諸表で同一の内容とする場合、中小規模の上場企業や連結子会社等における負担が懸念されるが、重要性等に関する代替的な取扱いの定めを置くこと等により一定程度実務における対応が可能となること
- 100. 本会計基準の会計処理の定めについては、上記の基本的な方針の下で開発しており、次の構成としている。
- (1) 基本的にIFRS第15号の会計基準の内容を基礎とした定め
- ① 本会計基準のうち第16項から第78項
- ② 適用指針のうち第4項から第89項
- (2) 追加的に定めた代替的な取扱い
適用指針のうち第92項から第104項 - 101. なお、他の会計基準と同様に、重要性が乏しい取引には、本会計基準を適用しないことができる。
2020年改正会計基準
- 101-2. 2020年改正会計基準に定める注記事項に関して、本会計基準の開発過程において、IFRS第15号と同様の定めを取り入れるべきであるとの意見が寄せられた一方で、IFRS第15号と同様の定めを取り入れることについて懸念する意見も寄せられた。
この点、2018年会計基準の会計処理の定めを開発するにあたっての基本的な方針として、当委員会では、IFRS第15号と整合性を図る便益の1つである、国内外の企業間における財務諸表の比較可能性を確保する観点から、IFRS第15号の定めを基本的にすべて取り入れることとしており、その結果として、収益認識に関する会計処理についてはIFRS第15号及びTopic 606と同様の基準となっている。 - 101-3. これまで国際的な整合性を図る観点から会計基準等の開発を行う際に、会計処理については、開発する会計基準に準拠して行われる会計処理により得られる財務情報が国際的な会計基準に基づく財務情報と大きく異ならないように開発を行った場合であっても、注記事項については、必ずしも会計処理と同様の対応を行っていない。
ここで、収益は、企業の主な営業活動からの成果を表示するものとして企業の経営成績を表示するうえで重要な財務情報と考えられ、収益に関する情報によって、財務諸表利用者は、企業の顧客との契約及び当該契約から生じる収益を適切に理解できるようになり、より適切な将来キャッシュ・フローの予測ができるようになることから、より適切な経済的意思決定ができるようになると考えられる。 - 101-4. したがって、収益に関する注記事項は、注記全体の中でも重要性が高いものであり、本会計基準においては、会計処理に関する定めと同様に、注記事項についても原則としてIFRS第15号及びTopic 606と同様の内容を取り入れることとした。仮にIFRS第15号及びTopic 606と同様の注記事項を定めなかったとした場合、比較可能性が損なわれるだけでなく、日本基準に基づいて作成された財務諸表について十分な注記がなされていないとの指摘がなされる可能性があると考えられる。
- 101-5. 一方で、注記が大幅に増加することに対する懸念から、個別の注記事項ごとに有用性を検討し取り入れるものを決めるべきとの意見も寄せられた。しかしながら、有用性が認められることから注記が必要とされる情報は契約の類型によって異なるものであるため、さまざまな契約の類型を考慮して注記事項を定めることとした場合、ある場合には有用な情報を開示することになっても、他の場合には有用な情報を開示することにならない等、すべての状況において有用な情報を開示するようにこれを定めることは困難であると考えられる。
- 101-6. したがって、開示目的を定めたうえで、企業の実態に応じて、企業自身が当該開示目的に照らして注記事項の内容を決定することとした方が、より有用な情報を財務諸表利用者にもたらすことができると考えられる。
これらの点を踏まえ、本会計基準では、注記事項の開発にあたっての基本的な方針として、次の対応を行うこととした。 - (1) 包括的な定めとして、IFRS第15号と同様の開示目的及び重要性の定めを含める。また、原則としてIFRS第15号の注記事項のすべての項目を含める。
- (2) 企業の実態に応じて個々の注記事項の開示の要否を判断することを明確にし、開示目的に照らして重要性に乏しいと認められる項目については注記しないことができることを明確にする。
Ⅰ.範 囲
- 102. 本会計基準で取り扱う範囲は、IFRS第15号と同様に、顧客との契約から生じる収益とし、顧客との契約から生じるものではない取引又は事象から生じる収益は、本会計基準で取り扱わないこととした。
- 契約の相手方が、対価と交換に企業の通常の営業活動により生じたアウトプットである財又はサービスを得るために当該企業と契約した当事者である顧客(第6項参照)である場合にのみ、本会計基準が適用される。
- 103. 顧客との契約から生じる収益のうち、金融商品会計基準の範囲に含まれる利息、金融商品の消滅の認識時に発生する利益等の金融商品に係る取引は、IFRS第15号と同様に、本会計基準の適用範囲に含めないこととした(本会計基準第3項(1)参照)。
- 104. 顧客との契約から生じる収益のうち、リース会計基準の範囲に含まれるリース(貸手の会計処理)は、IFRS第15号と同様に、本会計基準の適用範囲に含めないこととした(本会計基準第3項(2)参照)。
- 104-2. 2024年改正会計基準は、2024年のリース会計基準及び企業会計基準適用指針第33号「リースに関する会計基準の適用指針」(以下「リース適用指針」という。)の公表に伴って改正を行ったものである。
- 2020年改正会計基準においては、「ライセンスの供与については、本会計基準の適用範囲に含まれるが、リース会計基準に従って処理される契約の取扱いを変えることを意図するものではない」としていた。
- この点、リース会計基準では、リース会計基準第3項(2)ただし書きを適用する場合を除き、本会計基準の範囲に含まれる貸手が供与する知的財産のライセンスをリース会計基準の範囲に含めないこととした(リース会計基準第3項(2))。この結果、貸手による知的財産のライセンスの供与による収益が顧客との契約から生じる収益に該当する場合、本会計基準が適用されることになる(本会計基準第3項(2)参照)ため、「ライセンスの供与については、本会計基準の適用範囲に含まれるが、リース会計基準に従って処理される契約の取扱いを変えることを意図するものではない」とする記載を削除することとした。
- 104-3. 2020年改正会計基準においては、割賦基準による収益認識が認められていないことを受けて、貸手のファイナンス・リースの会計処理についてリース会計基準の改正時に対応を行う予定である旨を記載していた。
- この点、2024年公表のリース適用指針では、貸手のファイナンス・リースの会計処理について企業会計基準適用指針第16号で定めていたリース期間中の各期の受取リース料を売上高として計上する方法を廃止することとしたため、貸手の会計処理について企業会計基準第13号の改正時に対応を行う予定であるとする記載を削除した。
- 105. 保険契約については、現行の我が国における会計基準においてその会計処理を定めたものはないが、IFRS第15号と同様に、本会計基準の適用範囲に含めないこととした(第3項(3)参照)。
- 106. 顧客又は潜在的な顧客への販売を容易にするために行われる同業他社との商品又は製品の交換取引については、商品又は製品を交換する同業他社は、企業の通常の営業活動により生じたアウトプットを獲得するために企業と契約しているため、顧客の定義に該当するが、IFRS第15号と同様に、本会計基準の適用範囲に含めないこととした(第3項(4)参照)。IFRS第15号においては、同業他社との棚卸資産の交換について収益を認識し、その後で再び最終顧客に対する棚卸資産の販売について収益を認識すると、収益及び費用を二重に計上することになり、財務諸表利用者が企業による履行及び粗利益を評価することが困難となるため適切ではないとされている。我が国においては、棚卸資産の交換取引に関する会計処理の定めが明示されていないが、IFRS第15号と同様に、同業他社との棚卸資産の交換について収益を認識することは適切ではないと考えられる。
- 107. 2020年改正会計基準公表時点で、当委員会は金融商品会計基準について見直しを行っているところである。顧客との契約から生じる収益に該当する金融商品の組成又は取得に際して受け取る手数料については、金融商品会計基準の見直しと合わせて検討を行う予定である(本会計基準第3項(5)参照)。
- 108. IFRSにおいては、企業の通常の営業活動により生じたアウトプットではない固定資産の売却について、IFRS第15号と同様の収益の認識を行うようIAS第16号「有形固定資産」が改正されたが、本会計基準においては、企業の通常の営業活動により生じたアウトプットではない固定資産の売却については、論点が異なり得るため改正の範囲に含めておらず、本会計基準の適用範囲に含まれない。また、企業の通常の営業活動により生じたアウトプットとなる不動産の売却は、本会計基準の適用範囲に含まれるが、当該不動産の売却のうち、不動産流動化実務指針の対象となる不動産(不動産信託受益権を含む。)の譲渡に係る会計処理は、連結の範囲等の検討と関連するため、本会計基準の適用範囲から除外している(本会計基準第3項(6)参照)。
- 108-2. 2019年公開草案に寄せられたコメントの中には、資金決済法における仮想通貨に関連する取引と本会計基準との関係について見直すべきとの意見があった。
これに対し、資金決済法における定義を満たす暗号資産及び金商業等府令における定義を満たす電子記録移転有価証券表示権利等について、私法上の取扱いが明確ではないものがあり、また、当委員会においてこれらに関連する取引の会計処理の検討を行っているため、2020年改正会計基準では、これらに関連する取引を本会計基準の範囲から除外することとした(本会計基準第3項(7)参照)。
ここで、関連する取引が実務対応報告第38号「資金決済法における暗号資産の会計処理等に関する当面の取扱い」又は実務対応報告第43号「電子記録移転有価証券表示権利等の発行及び保有の会計処理及び開示に関する取扱い」の範囲に含まれる場合には、これに従って会計処理することになり、そうでない場合には、関連する会計基準等の定めが明らかではない場合として、企業が会計方針を定めることになる。 - 109. 本会計基準では、棚卸資産や固定資産等、コストの資産化等の定めがIFRSの体系とは異なるため、IFRS第15号における契約コスト(契約獲得の増分コスト及び契約を履行するためのコスト)の定めを範囲に含めていない。
- ただし、IFRS又は米国会計基準を連結財務諸表に適用している企業が当該企業の個別財務諸表に本会計基準を適用する場合には、契約コストの会計処理を連結財務諸表と個別財務諸表で異なるものとすることは実務上の負担を生じさせると考えられるため、個別財務諸表においてIFRS第15号又はFASB-ASCのSubtopic 340-40「その他の資産及び繰延コスト―顧客との契約」(以下「Subtopic 340-40」という。)における契約コストの定めに従った処理をすることは妨げられないものとした。
- また、IFRS又は米国会計基準を連結財務諸表に適用している企業の連結子会社が当該連結子会社の連結財務諸表及び個別財務諸表に本会計基準を適用する場合にも、契約コストの会計処理を親会社の連結財務諸表における会計処理と異なるものとすることは実務上の負担を生じさせると考えられるため、連結財務諸表及び個別財務諸表においてIFRS第15号又はSubtopic 340-40における契約コストの定めに従った処理をすることは妨げられないものとした。
- 109-2. 2020年改正会計基準の審議の過程において、前項の記載は選択適用を認めているものであり、IFRS第15号又はSubtopic 340-40における契約コストの定めに従うことを選択した場合には、重要な会計方針の注記に記載することを本会計基準において定めるべきであるという意見が聞かれた。この点につき、IFRS第15号又はSubtopic 340-40と同様の契約コストの会計処理を選択している場合でも、その旨を重要な会計方針として注記するか否かについては、企業の実態に応じて判断するものであると考えられること、また、仮に重要な会計方針としての注記を求めた場合、企業が認識した契約コストの重要性が乏しい場合でも、重要な会計方針としての注記がなされることになるため、一律に注記を求める必要はないと考えた。
ただし、契約コストの定めを適用している旨について重要な会計方針に含まれると判断される場合には、重要な会計方針として注記することになる。
また、IFRS第15号及びSubtopic 340-40においては、契約コストに関する注記事項の定めが設けられている。この点に関して、契約コストに関する注記事項が第80-4項の開示目的を達成するために必要な情報であると判断される場合には、IFRS第15号及びSubtopic 340-40の注記の定めを参考として、必要な注記を行うことになる。
Ⅱ.用語の定義
- 110. 本会計基準では、IFRS第15号における用語の定義のうち、必要と考えられるものについて、本会計基準の用語の定義に含めている(第5項から第12項参照)。
- 111. 本会計基準は、顧客との契約から生じる収益に関する会計処理及び開示に適用される(顧客の定義は第6項参照)。例えば、企業の通常の営業活動により生じたアウトプットである財又はサービスを獲得するためではなく、リスクと便益を契約当事者で共有する活動又はプロセス(提携契約に基づく共同研究開発等)に参加するために企業と契約を締結する当該契約の相手方は、顧客ではなく、当該契約に本会計基準は適用されない。
- 112. 工事契約については、工事契約会計基準における定義を踏襲している(本会計基準第13項参照)。なお、請負契約ではあっても専らサービスの提供を目的とする契約や、外形上は工事契約に類似する契約であっても、工事に係る労働サービスの提供そのものを目的とするような契約は、工事契約会計基準と同様に、工事契約に含まれない。
- 113. 受注制作のソフトウェアの範囲については、工事契約会計基準と同様に、「研究開発費等に係る会計基準」(1998年(平成10年)3月 企業会計審議会)及びソフトウェア取引実務対応報告を踏襲している(本会計基準第14項参照)。
Ⅲ.会計処理
(IFRS第15号の定め及び結論の根拠を基礎としたもの)
- 114. 第100項に記載したとおり、本会計基準の本文のうち第16項から第78項は、基本的にIFRS第15号における会計基準の内容を基礎としており、結論の背景についても、第115項から第150-3項は、IFRS第15号における会計基準及び結論の根拠を基礎としている。
1.基本となる原則
- 115. 本会計基準では、IFRS第15号と同様に、顧客との契約から生じる収益及びキャッシュ・フローの性質、金額、時期及び不確実性に関する有用な情報を財務諸表利用者に報告するために、基本となる原則を示している(第16項参照)。また、本会計基準では、市場関係者の理解に資するために、基本となる原則に従って収益を認識するための5つのステップを示している(第17項参照)。
- 116. 本会計基準の定め(適用指針第92項から第104項に定める重要性等に関する代替的な取扱いを含む。)は、顧客との個々の契約を対象として適用する。ただし、企業が多数の類似した契約又は履行義務を有していることもあり、実務的な方法として、本会計基準を特性の類似した契約又は履行義務から構成されるグループ全体に適用する(例えば、当該グループを収益認識の単位又は収益の額の算定単位として用いる。)ことによる財務諸表上の影響が、当該グループの中の個々の契約又は履行義務を対象として本会計基準の定めを適用することによる影響と比較して重要性のある差異を生じさせないことが合理的に見込まれる場合に限り、個々の契約又は履行義務を対象とせず、当該グループ全体を対象として本会計基準の定めを適用することを認めている(本会計基準第18項参照)。
- 例えば、特性の類似した複数の契約に含まれる財及びサービスのそれぞれが履行義務として識別され、当該履行義務に取引価格を配分する際には、原則として、個々の契約について、財及びサービスのそれぞれの独立販売価格の比率に基づくこととなる。ただし、個々の契約に基づき配分された取引価格との差異が財務諸表上の重要性のある影響を生じさせないことが合理的に見込まれる場合には、類似した複数の契約を1つのグループとし、当該グループに含まれる財及びサービスの独立販売価格の合計と取引価格の合計との比率を用いて、当該グループに含まれる各契約の財及びサービスの独立販売価格から当該財及びサービスに配分される取引価格を算定する方法も認められる。
2.収益の認識基準
(1)契約の識別
- 117. 本会計基準が適用される顧客との契約は、第19項に定める5つの要件のすべてを満たす顧客との契約である。当該要件の1つである顧客に移転する財又はサービスと交換に企業が権利を得ることとなる対価を回収する可能性が高いこと(第19項(5)参照)を評価する際に、企業が顧客に価格の引下げを提供する可能性があることにより対価に変動性がある場合には、企業が権利を得ることとなる対価の額は契約に記載される価格よりも低くなることを考慮する。
- なお、対価を回収する「可能性が高い」ことについて、IFRS第15号では“probable”という表現が用いられている。ここで、IFRSにおける“probable”の意味に照らすと、対価を回収する可能性の方が回収できない可能性よりも高いこと(more likely than not)を示すこととなるが、我が国の実務では、契約の締結可否を判断するにあたって回収可能性を検討する際に、それよりも高い閾値に基づき判断していることに鑑み、「可能性が高い」という表現を用いている。
- 118. 顧客から対価を回収する可能性を評価する際には、顧客の財務上の支払能力及び顧客が対価を支払う意思を考慮する(第19項(5)参照)。顧客が対価を支払う意思の評価にあたっては、対価の支払期限が到来している(すなわち、対応する履行義務が充足され、企業が権利を有する対価が変動しない。)と仮定したうえで、顧客又は同種の顧客グループの過去の慣行を含むすべての事実及び状況を考慮する必要がある。
- 119. 契約の中には、固定された契約期間がなく、契約の当事者のそれぞれがいつでも終了又は変更できるものや、契約に定められた一定期間ごとに自動更新となるものがあるが、本会計基準は、契約の当事者が現在の強制力のある権利及び義務を有している契約期間を対象として適用される(第21項参照)。
- 119-2. 本会計基準第21項の「契約期間」について、2018年会計基準では「契約の存続期間」という表現を用いていたが、2020年改正会計基準において変更している(また、この変更にあわせて、本会計基準及び適用指針における関連する用語を変更している。)。これは、本会計基準第80-22項(1)の「当初に予想される契約期間」及び本会計基準第80-24項(1)の「残存する契約期間」における「契約期間」の定義について、本会計基準第21項を参照することとした際に、より正確に趣旨が伝わるように変更したものであり、2018年会計基準第21項の取扱いを変えることを意図するものではない。
- 120. 顧客との契約が契約における取引開始日において第19項の要件を満たす場合には、事実及び状況の重要な変化の兆候がない限り、当該要件を満たすかどうかについて見直しを行わない(第23項参照)が、例えば、顧客が対価を支払う能力が著しく低下した場合には、顧客に移転する残りの財又はサービスと交換に企業が権利を得ることとなる対価を回収する可能性が高いかどうかについて見直しを行う。なお、既に認識した収益、顧客との契約から生じた債権又は契約資産は、当該見直しの対象とはならない。
(2)契約の結合
- 121. 複数の契約は、区分して処理するか単一の契約として処理するかにより収益認識の時期及び金額が異なる可能性があるため、第27項の要件を満たす場合には、複数の契約を結合して単一の契約として処理する。
(3)契約変更
- 122. 契約変更は、契約の当事者による承認により生じるものであり、当該承認は、書面や口頭による合意で行われる場合もあれば、取引慣行により含意される場合もある。
- 契約の当事者が契約変更の範囲又は価格(あるいはその両方)について合意していない場合や、契約の当事者が契約の範囲の変更を承認したが、変更された契約の範囲に対応する価格の変更を決定していない場合でも、契約変更は生じる可能性がある。契約変更により新たに生じる又は変化する権利及び義務が強制力のあるものかどうかを判定するにあたっては、契約条件並びにすべての関連する事実及び状況を考慮する。
- 123. 第30項(1)及び(2)の要件のいずれも満たす契約変更は、追加的に約束した財又はサービスに関する独立した契約を締結した場合と取引の実態に相違がないため、当該契約変更を独立した契約として処理する。
- 124. 契約変更を独立した契約として処理する要件の1つとして、変更される契約の価格が、追加的に約束した財又はサービスに対する独立販売価格に特定の契約の状況に基づく適切な調整を加えた金額分だけ増額されること(第30項(2)参照)がある。このような調整としては、例えば、類似の財又はサービスを新規顧客に販売する際に生じる販売費を企業が負担する必要がないため、顧客が受ける値引きについて独立販売価格を調整することがある。
- 125. 契約変更が独立した契約として処理されない場合で、第31項(1)の要件に該当するときには、当該契約変更は既存の契約の後で交渉され、新たな事実及び状況に基づくものと考えられるため、当該契約変更を将来に向かって会計処理し、過去に充足した履行義務に係る収益を修正しない。また、第31項(2)の要件に該当するときには、既存の契約で約束した財又はサービスとは別個の追加的な財又はサービスを移転しないため、履行義務の充足に係る進捗度及び取引価格を変更し、当該変更による累積的な影響に基づき、契約変更日において収益の額を修正する。
- 126. 契約変更から生じる取引価格の変更と、変動対価の見積りの変更は、異なる経済事象の結果である。変動対価の見積りの変更は、契約における取引開始日に識別され合意された変数の変化から生じるものであるが、契約変更から生じる取引価格の変更は、契約の当事者間での独立した事後的な交渉から生じるものである。
(4)履行義務の識別
- 127. 顧客との契約は、通常、企業が顧客に移転することを約束した財又はサービスを明示する。しかし、顧客との契約には、契約締結時に、企業が財又はサービスを移転するという顧客の合理的な期待が生じる場合において、取引慣行、公表した方針等により含意されている約束が含まれる可能性があり、顧客との契約において識別される履行義務は、当該契約において明示される財又はサービスに限らない可能性がある。
- 128. 第32項(2)の定めは、特性が実質的に同じ複数の別個の財又はサービスを提供する場合に、当該複数の別個の財又はサービスを単一の履行義務として識別するものであり、当該別個の財又はサービスを顧客に移転する約束のそれぞれについて履行義務として識別することは、コストと比較して便益が小さいため設けている。この定めは、例えば清掃サービス契約のように、同質のサービスが反復的に提供される契約等に適用できる場合がある。
(別個の財又はサービス)
- 129. 約束した財又はサービスには、例えば、次のものがある。
- (1) 企業が製造した財の販売(例えば、製造業者の製品)
- (2) 企業が購入した財の再販売(例えば、小売業者の商品)
- (3) 企業が購入した財又はサービスに対する権利の再販売(例えば、企業が再販売するチケット)
- (4) 契約上合意した顧客のための作業の履行
- (5) 財又はサービスを提供できるように待機するサービス(例えば、利用可能となった時点で適用されるソフトウェアに対する不特定のアップデート)あるいは顧客が使用を決定した時に顧客が財又はサービスを使用できるようにするサービスの提供
- (6) 財又はサービスが他の当事者によって顧客に提供されるように手配するサービスの提供(例えば、他の当事者の代理人として行動すること)
- (7) 将来において顧客が再販売する又はその顧客に提供することができる財又はサービスに対する権利の付与(例えば、小売店に製品を販売する企業が、当該小売店から製品を購入する個人に追加的な財又はサービスを移転することを約束すること)
- (8) 顧客に代わって行う資産の建設、製造又は開発
- (9) ライセンスの供与
- (10) 追加の財又はサービスを取得するオプションの付与(当該オプションが重要な権利を顧客に提供する場合)
- 130. 顧客は、財又はサービスから単独で便益を享受することができる場合や、顧客が容易に利用できる他の資源を組み合わせることによってのみ財又はサービスから便益を享受することができる場合がある(第34項(1)参照)。容易に利用できる資源とは、企業又は他の企業が独立して販売する財又はサービス、あるいは、顧客が企業から既に獲得した資源(企業が契約に基づき既に顧客に提供している財又はサービスを含む。)又は他の取引若しくは事象から既に獲得した資源である。
- さまざまな要因により、財又はサービスから単独で顧客が便益を享受できること、あるいは、財又はサービスと顧客が容易に利用できる他の資源を組み合わせて顧客が便益を享受することができることが示される可能性がある。例えば、それは、企業が特定の財又はサービスを通常は独立して販売するという事実により示される可能性がある。
- 131. 財又はサービスから単独で顧客が便益を享受することができるかどうか(第34項(1)参照)を判定するにあたっては、顧客が当該財又はサービスをどのように使用するかは考慮せず、当該財又はサービス自体の特性を考慮する。そのため、たとえ顧客が企業以外から容易に利用できる資源を獲得することが契約によって制限されていたとしても、そのような契約上の制限は考慮しない。
(5)履行義務の充足による収益の認識
- 132. 第37項における支配の移転は、財又はサービスを提供する企業、あるいは当該財又はサービスを受領する顧客のいずれの観点からも判定でき、企業が支配を喪失した時、又は顧客が支配を獲得した時のいずれかとなる。通常、両者の時点は一致するが、企業が顧客への財又はサービスの移転と一致しない活動に基づき収益を認識することがないよう、顧客の観点から支配の移転を検討する。
- 133. 財又はサービスは、瞬時であるとしても、受け取って使用する時点では資産である。資産に対する支配とは、当該資産の使用を指図し、当該資産からの残りの便益のほとんどすべてを享受する能力(他の企業が資産の使用を指図して資産から便益を享受することを妨げる能力を含む。)であり(第37項参照)、資産からの便益とは、例えば、次の方法により直接的又は間接的に獲得できる潜在的なキャッシュ・フロー(インフロー又はアウトフローの節減)である。
- (1) 財の製造又はサービスの提供のための資産の使用
- (2) 他の資産の価値を増大させるための資産の使用
- (3) 負債の決済又は費用の低減のための資産の使用
- (4) 資産の売却又は交換
- (5) 借入金の担保とするための資産の差入れ
- (6) 資産の保有
(一定の期間にわたり充足される履行義務)
- 134. 多くのサービス契約では、サービスから生じる資産を顧客が受け取るのと同時に消費しており、企業の履行により生じた資産は瞬時にしか存在しない。これは、当該サービス契約において、企業が顧客との契約における義務を履行するにつれて、顧客が便益を享受する(第38項(1)参照)ことを意味する。
- 135. 第38項(1)の要件は、企業の履行によって顧客が便益を直ちに享受しない契約に適用されることを意図しておらず、企業の履行によって仕掛品等の資産が生じる又は資産の価値が増加する契約については、第38項(2)又は(3)の要件を満たすかどうかを判定する。
- 136. 第38項(2)の要件を満たすかどうかを判定するにあたっては、第37項の定めを考慮する。企業が顧客との契約における義務を履行することにより生じる資産又は価値が増加する資産は、有形又は無形のいずれの場合もある。例えば、顧客の土地の上に建設を行う工事契約の場合には、通常、顧客は企業の履行から生じる仕掛品を支配する。
- 137. 一部の財又はサービスについては、第38項(1)又は(2)の要件を満たすことが困難な場合があるため、第38項(3)の要件を定めている。
- 138. 第38項(3)の要件において、企業が顧客との契約における義務を履行することにより、別の用途に転用することができない資産が生じることのみでは、顧客が資産を支配していると判断するのに十分ではないため、企業が顧客との契約における義務の履行を完了した部分について、対価を収受する強制力のある権利を有していることも要件として追加している。これは、一般的な交換取引に係る契約において、財又はサービスに対する支配を顧客が獲得した場合にのみ、顧客が支払義務を負うことと整合している。
(履行義務の充足に係る進捗度)
- 139. 履行義務の充足に係る進捗度を合理的に見積ることができる場合にのみ、一定の期間にわたり充足される履行義務について収益を認識する(第44項参照)。履行義務の充足に係る進捗度を合理的に見積ることができない場合とは、進捗度を適切に見積るための信頼性のある情報が不足している場合である。
3.収益の額の算定
(1)取引価格の算定
(変動対価)
- 140. 変動対価の額の見積りにあたっては、最頻値又は期待値による方法のいずれかのうち、企業が権利を得ることとなる対価の額をより適切に予測できる方法を用いる(第51項参照)。最頻値は、契約において生じ得る結果が2つしかない場合(例えば、割増金の条件を達成するか否かのいずれかである場合)には、変動対価の額の適切な見積りとなる可能性がある。期待値は、特性の類似した多くの契約を有している場合には、変動対価の額の適切な見積りとなる可能性がある。
- 141. 変動対価の額の見積りに使用する情報は、通常、入札や提案等の過程及び財又はサービスの価格設定において経営者が使用する情報と同様のものである(第52項参照)。
- 142. 最頻値による方法については、実務上、可能性の低いシナリオの結果を数値化する必要はない。また、期待値による方法についても、実務上、企業が大量のデータを有し、多くの結果を識別できる場合であっても、複雑なモデルを用いてすべてのシナリオの結果を考慮する必要はない。一定数のシナリオの結果及びその確率が入手できる場合には、生じ得る結果の分布を合理的に見積ることができることが多い(第51項及び第52項参照)。
- 143. 変動対価の額に関する不確実性が事後的に解消される際に、解消される時点までに計上された収益の著しい減額が発生しない「可能性が高い」(第54項参照)とは、計上された収益の著しい減額が発生しない可能性が発生する可能性よりも高いという状況に比べ、発生しない可能性が著しく高い状況を示し、IFRSにおける“highly probable”と同程度の可能性を示している。
- なお、2017年公開草案では、IFRS第15号における“highly probable”については、「可能性が非常に高い」との表現を用いていた。2017年公開草案に寄せられたコメントの中には、当該表現が示す可能性の程度を明確にすべきであるとの意見があった。当該意見を踏まえ、「可能性が非常に高い」を「可能性が高い」に変更しているが、当該変更は、我が国の他の会計基準等で用いられている表現への変更であり、2017年公開草案から可能性の程度を下げることを意図したものではない。
(契約における重要な金融要素)
- 144. 重要な金融要素は、信用供与の約束が契約に明記されているか、契約の当事者が合意した支払条件に含意されているかにかかわらず、存在する可能性がある(第56項参照)。
(顧客に支払われる対価)
- 145. 顧客に支払われる対価は、顧客から企業の財又はサービスを購入する他の当事者に企業が支払う対価を含む(第63項参照)。例えば、企業が販売業者又は流通業者に商品又は製品を販売し、その後に当該販売業者又は流通業者の顧客に企業が支払を行う場合がある。
(2)履行義務への取引価格の配分
(独立販売価格に基づく配分)
- 146. 独立販売価格の最善の見積りは、企業が同様の状況において独立して類似の顧客に財又はサービスを販売する場合における当該財又はサービスの観察可能な価格である。財又はサービスの契約上の価格や定価は、当該財又はサービスの独立販売価格となる場合があるが、そのように推定されるわけではない。
- 独立販売価格を直接観察できない場合には、第65項の定めと整合するような取引価格の配分となる独立販売価格を見積る。
(値引きの配分)
- 147. 第71項(1)から(3)の要件のすべてを満たす場合を除き、契約におけるすべての履行義務に対して値引きを比例的に配分すること(第70項参照)は、基礎となる別個の財又はサービスの独立販売価格の比率に基づき、それぞれの履行義務に取引価格を配分することと整合している。
(変動対価の配分)
- 148. 契約において約束された変動対価は、契約全体に帰属する場合もあれば、次のいずれかのように契約の特定の一部に帰属する場合(第72項参照)もある。
- (1) 契約における履行義務のうち1つ又は複数(ただし、すべてではない。)(例えば、割増金の受取りが、企業が約束した財又はサービスを所定の期間内において移転することを条件とする場合)
- (2) 第32項(2)に従って識別された単一の履行義務に含まれる1つ又は複数の別個の財又はサービス(例えば、2年間の清掃サービスの2年目において約束された対価が、所定の物価上昇率の変動に基づき増額される場合)
(3)取引価格の変動
- 149. 取引価格は、契約における取引開始日後にさまざまな理由で変動する可能性があり、これには、不確実な事象が確定することや他の状況の変化により、約束した財又はサービスの顧客への移転と交換に企業が権利を得ると見込む対価の額を変動させるものが含まれる(第74項参照)。
4.契約資産、契約負債及び顧客との契約から生じた債権
- 150. 顧客との契約から生じた債権とは、企業が顧客に移転した財又はサービスと交換に受け取る対価に対する企業の権利のうち無条件のものをいう(本会計基準第12項参照)。対価に対する企業の権利が無条件であるとは、当該対価を受け取る期限が到来する前に必要となるのが時の経過のみであるものをいう。したがって、例えば、受け取る対価に対する現在の権利を有している場合には、当該金額が将来において返金の対象となる可能性があるとしても、顧客との契約から生じた債権を認識する(適用指針[設例28])。
- 対価に対する無条件の権利は、通常、履行義務を充足して顧客に請求した時に生じる。ただし、顧客への支払の請求は企業が対価に対する無条件の権利を有することを示すものではなく、対価を受け取る期限が到来した時に対価に対する無条件の権利を有する場合がある。
- なお、「顧客との契約から生じた債権」について、2018年会計基準は「債権」という表現を用いていたが、債権は、通常、顧客との契約から生じた債権以外のものも含む表現であると考えられることから、2020年改正会計基準において表現を変更している(本会計基準第12項参照)。
- 150-2. 顧客から対価を受け取る企業の権利は当該企業の履行が条件とされ、同様に、企業は顧客が支払を行う限りにおいてのみ履行することから、顧客との契約により生じる企業の権利と義務は相互依存的である。こうした相互依存性は、残存する権利と義務を貸借対照表において純額で会計処理して表示することによって最も適切に反映されるため、契約の中の残存する権利及び義務は、契約資産又は契約負債のいずれかとして、純額で表示する。ここで、個々の契約から生じた契約資産と契約負債は純額で表示するものの、その結果として認識された複数の契約から生じた契約資産と契約負債は貸借対照表において相殺して表示しない。
- 150-3. 本会計基準の適用により廃止される工事契約会計基準の第17項では、「工事進行基準を適用した結果、工事の進行途上において計上される未収入額については、金銭債権として取り扱う」こととしていた。2018年会計基準においては、工事契約会計基準第17項の取扱いを引き継ぎ、契約資産を金銭債権として取り扱うこととしていた。また、このように取り扱うことにより、工事の進行途上において計上される未収入額の貸倒引当金の会計処理及び外貨換算の取扱いが明確になっていた。
一方、IFRS第15号は、契約資産が金融資産に該当するか否かについて言及しないこととしたうえで、契約資産の減損の測定、表示及び開示については、IFRS第9号「金融商品」及びIFRS第7号「金融商品:開示」に従って、金融資産と同じ基礎で行うことを要求している。
この点、本会計基準においても契約資産が金銭債権に該当するか否かについて言及しないことにより、IFRS第15号が必ずしも言及していない契約資産の性質について、本会計基準において金銭債権とすることにより発生し得る意図しない帰結を回避することが可能となるものと考えられる。また、契約資産とは、企業が顧客に移転した財又はサービスと交換に受け取る対価に対する企業の無条件ではない権利であり(本会計基準第10項参照)、無条件の権利である顧客との契約から生じた債権(本会計基準第12項参照)とは性質が異なる。
これらの点を踏まえ、2019年公開草案において、2018年会計基準第77項の「契約資産は、金銭債権として取り扱うこととし、金融商品会計基準に従って処理する。」の記載を削除することを提案した。また、契約資産に係る貸倒引当金の会計処理は金融商品会計基準における債権の取扱いを適用すること及び外貨建ての契約資産に係る外貨換算については外貨建取引等会計処理基準の外貨建金銭債権債務の換算の取扱いを適用することを提案した。
当該2019年公開草案に対して、契約資産の消滅等に関しての会計処理を明確にすべきであるとの意見が寄せられ、本会計基準に定めのない契約資産の会計処理は、金融商品会計基準における債権の取扱いに準じて処理することとし、その旨を明確にすることとした(本会計基準第77項参照)。
(IFRS第15号の定め及び結論の根拠を基礎としたもの以外のもの)
1.収益の認識基準
(1)契約の結合
- 151. 契約の結合の定めにおける関連当事者(本会計基準第27項参照)とは、企業会計基準第11号「関連当事者の開示に関する会計基準」に定める関連当事者をいう。
(2)履行義務の充足による収益の認識
- 152. IFRS第15号では、収益の認識時期を、財又はサービスに対する顧客の支配の獲得により判断するとされている(第35項参照)。審議の過程では、この支配の移転の考え方について、工事進行基準は活動を基礎として業績を測定するものであり支配の移転の考え方と相容れず、基準内で整合性が図られていないのではないかとの懸念を示す意見が聞かれた。
- この点、IFRS第15号の開発過程において、市場関係者から、工事進行基準の適用が認められない場合には工事契約に関する有用な情報が提供されなくなるとの懸念が寄せられたことを受けて、IASBは支配の移転の考え方を維持しつつ、一定の期間にわたり充足される履行義務の枠組みの下で工事契約への具体的な適用を整理したとされている。
- 当委員会では、これらのIFRS第15号の開発の経緯及び国際的な比較可能性を考慮して、工事契約についてもIFRS第15号における会計処理を取り入れることとした。
(履行義務の充足に係る進捗度)
- 153. IFRS第15号では、履行義務の充足に係る進捗度を合理的に見積ることができないが、当該履行義務を充足する際に発生する費用を回収することが見込まれる場合には、履行義務の充足に係る進捗度を合理的に見積ることができる時まで、原価回収基準により処理することとされている(第45項参照)。審議の過程では、この取扱いに関して、工事契約に係る財務指標を歪め期間比較を困難にするおそれがある等の意見が聞かれたが、履行義務の充足が進捗しているという事実を反映するために一定の額の収益を認識すべきとのIFRS第15号における論拠を否定するまでには至らないと考えられ、IFRS第15号における会計処理を取り入れることとした。
- 154. 工事契約適用指針では、「工事進行基準の適用要件を満たすと判断された工事契約について、事後的な事情の変化により成果の確実性が失われた場合には、その後の会計処理については工事完成基準を適用することになる。」とされていた。審議の過程で、本会計基準において、履行義務の充足に係る進捗度を合理的に見積ることができる場合にのみ、一定の期間にわたり充足される履行義務について収益を認識する(本会計基準第44項参照)こととしているが、事後的に当該進捗度を合理的に見積ることができなくなった場合の取扱いを示すことを求める意見が聞かれた。
- この点、本会計基準では、履行義務の充足に係る進捗度は各決算日に見直す(本会計基準第43項参照)こととしており、当該進捗度を合理的に見積ることができるか否かについても各決算日に見直すことになる。当該見直しにおいて、契約における取引開始日後に状況が変化し、履行義務の充足に係る進捗度を合理的に見積ることができなくなった場合で、当該履行義務を充足する際に発生する費用を回収することが見込まれるときには、その時点から原価回収基準により処理する(本会計基準第45項参照)。
Ⅳ.開 示
1.表 示
- 155. 審議の過程において、顧客との契約から生じる収益を、適切な科目をもって損益計算書に表示すると定めるのみでは、表示科目の決定に際して判断が困難であると考えられるため、具体的な指針を示すべきとの意見が聞かれた。しかしながら、次を理由に、表示科目を決定するための具体的な指針を示さないこととした(本会計基準第78-2項参照)。
- (1) 仮に具体的な表示科目を示すとすれば、これまでの実務慣行等を踏まえると、財の販売から生じる収益を「売上高」、サービスの提供から生じる収益を「営業収益」、代理人として獲得する収益を「手数料収益」などとする等の指針を示すことが考えられる。しかしながら、現行の実務において、サービスの提供から生じる収益や、代理人としての手数料を「売上高」として表示している企業も存在しており、また、複数の性質の収益が生じている場合に、1つの表示科目にまとめて表示している企業や、複数の表示科目に分けて表示している企業も存在している。これらの表示方法は、各々の業種、企業によって、これまで実態に応じて適切な表示科目が用いられてきたものと考えられ、一定の表示科目に統一することのコンセンサスを得ることは難しいものと考えられる。
- (2) 国際的な会計基準を適用した海外の企業の財務諸表においても、「収益」、「顧客との契約から生じる収益」、「売上高」など、さまざまな表示科目が用いられていると考えられる。
- (3) これまでも実態に応じて適切な表示科目が選択されてきたものと考えられる。
- なお、適用指針第104-2項において、顧客との契約から生じる収益の適切な科目については、例えば、売上高、売上収益、営業収益等として表示することとした。
- 156. 2019年公開草案において、「顧客との契約から生じる収益」について、それ以外の収益と区分して損益計算書に表示するか又は顧客との契約から生じる収益の額を注記することを提案した。これに対し、「顧客との契約から生じる収益」の範囲が必ずしも明らかではないとの意見が寄せられた。この点、本会計基準は、第3項に掲げる7項目を除く顧客との契約から生じる収益に関する会計処理及び開示に適用される(第3項参照)ことから、第78-2項の「顧客との契約から生じる収益」は、第3項に掲げる7項目を除く顧客との契約から生じる収益を指し、当該収益とそれ以外の収益を区分して損益計算書に表示するか又は顧客との契約から生じる収益の額を注記することになる。
- 157. 2018年会計基準においては、損益計算書における顧客との契約から生じる収益と金融要素の影響(受取利息又は支払利息)の区分表示の要否について、2018年会計基準が適用される時までに検討することとしていた。
- 2020年改正会計基準の審議の過程において、我が国においては欧米とは異なり、毎月出来高を企業と顧客で確認して企業が月次で顧客に請求する実務慣行は多くは見られないこと、また、金融要素の提供の意図はないにもかかわらず、約束した財又はサービスを顧客に移転する時点と顧客が支払を行う時点の間が1年以上であると見込まれる場合もあると考えられることから、損益計算書上、重要な金融要素の影響を顧客との契約から生じる収益に含めて計上したうえで、当該影響の注記のみを求めることの是非についての意見が聞かれた。
- 検討の結果、2018年会計基準では、国際的な比較可能性等を考慮し、金融要素が含まれる場合の取扱いについて、IFRS第15号と同様の処理を行うこととしていること、また、損益計算書上、顧客との契約から生じる収益に金融要素の影響を含めて計上して当該影響を注記する場合には、財務諸表本表における国際的な比較可能性が損なわれる可能性があると考えられることから、2020年改正会計基準において、損益計算書上、顧客との契約から生じる収益と金融要素の影響を区分して表示することとした(第78-3項参照)。
- なお、区分処理することとした金融要素の影響の表示については、その表示又は注記の方法を定めていないことから、他の金融要素の影響(受取利息又は支払利息)と合算して表示すること、また合算して表示した場合において追加の注記をしないことは妨げられないと考えられる。
- 158. IFRS第15号において要求されている顧客との契約から生じた債権又は契約資産について認識した減損損失の開示に関しては、IFRS第9号「金融商品」における金融資産の減損に関する定めと、我が国における貸倒引当金繰入額及び貸倒損失額に関する定めが異なっているため、同様の開示を求めることは困難であると判断した。2020年改正会計基準公表時点で、金融商品会計基準については見直しを行っているところである。当該開示については金融商品会計基準の見直しと合わせて検討することとし、本会計基準において求めないこととした。
- 159. 本会計基準では、契約資産と顧客との契約から生じた債権のそれぞれについて貸借対照表に他の資産と区分して表示しない場合には、それぞれの残高を注記することとしている(第79項なお書き参照)。
- 2018年会計基準第88項においては、第79項の定めにかかわらず、契約資産と債権を貸借対照表において区分表示せず、かつ、それぞれの残高を注記しないことができることとし、当該区分表示及び注記の要否は、2018年会計基準が適用される時までに検討することとしていた。この取扱いを踏まえ、2020年改正会計基準においては、契約資産と顧客との契約から生じた債権のそれぞれについて貸借対照表に他の資産と区分して表示するか、貸借対照表に他の資産と区分して表示しない場合は、それぞれの残高を注記することの要否を検討した。
- 契約資産とは、企業が顧客に移転した財又はサービスと交換に受け取る対価に対する企業の無条件ではない権利であり(第10項参照)、無条件の権利である顧客との契約から生じた債権(第12項参照)とは性質が異なるため、契約資産と顧客との契約から生じた債権について、区分表示又は注記を求めることが適当であると考えられる。また、仮に契約資産と顧客との契約から生じた債権の区分表示又は注記を求めない場合には、契約資産に固有の注記(第80-20項参照)も求めないことが考えられるが、そのように注記事項を減らすことは、国際的な比較可能性を損なわせる可能性もあると考えられる。
- 検討の結果、IFRS第15号と同様に、契約資産と顧客との契約から生じた債権のそれぞれについて、貸借対照表に他の資産と区分して表示するか、貸借対照表において区分して表示しない場合には、それぞれの残高を注記することとした。また、2018年会計基準第88項を削除することとした。
2.注記事項
(1)重要な会計方針の注記
- 160. 重要な会計方針の注記について、企業会計原則注解(注1-2)においては、「財務諸表には、重要な会計方針を注記しなければならない。会計方針とは、企業が損益計算書及び貸借対照表の作成に当たつて、その財政状態及び経営成績を正しく示すために採用した会計処理の原則及び手続並びに表示の方法をいう。」とされている。ただし、「代替的な会計基準が認められていない場合には、会計方針の注記を省略することができる。」ともされている。また、企業会計基準第24号第4項(1)において、「『会計方針』とは、財務諸表の作成にあたって採用した会計処理の原則及び手続をいう。」と定義している。このように、既に会計方針に関する定めがある中で、本会計基準に基づく収益認識に関する注記と重要な会計方針の注記が重複する場合があると考えられることから、これらの関係を整理することとした。
- 161. 本会計基準の審議の過程で、重要な会計方針として注記する内容については、原則として、企業会計原則注解及び企業会計基準第24号に照らして企業が判断することとし、何が会計方針に該当して、どの会計方針が重要な会計方針であるかについて定めないことを検討した。
- 162. しかしながら、主として次の理由から、重要な会計方針として注記する内容を定めることが望ましいとの意見が聞かれた。
- (1) 本会計基準の基本となる原則に従って収益を認識するための5つのステップは、本会計基準を適用する企業においてはすべて適用されることから、企業会計原則注解(注1-2)における代替的な会計基準が認められていない場合に該当し、収益認識に関する重要な会計方針の注記は省略し得ることになる。
- (2) 企業の判断により重要な会計方針に関する注記を記載する場合には、企業の実態に即した記載が可能となると考えられる一方で、重要な会計方針に関する注記と収益認識に関する注記のいずれに記載されるのかについて、企業間でばらつきが生じる可能性が高い。
- 163. 前項の意見を踏まえ、本会計基準においては、重要な会計方針として少なくとも注記する内容を定めることとした。この点、2018年会計基準の早期適用時に注記を求めた企業の主要な事業における主な履行義務の内容(本会計基準第80-14項参照)及び企業が当該履行義務を充足する通常の時点(収益を認識する通常の時点)(本会計基準第80-18項(1)参照)については、会計方針に含めて記載することにより、財務諸表利用者の収益に対する理解可能性を高めるために最も有用となると考えられるため、それらについて重要な会計方針として注記を求めることとした(本会計基準第80-2項参照)。
- なお、本会計基準第80-2項(2)の「企業が当該履行義務を充足する通常の時点」と「収益を認識する通常の時点」は、通常は同じであると考えられる。しかし、例えば、適用指針第98項における代替的な取扱い(出荷基準等の取扱い)を適用した場合には、両時点が異なる場合がある。そのような場合には、重要な会計方針として「収益を認識する通常の時点」について注記する。
- 164. また、重要な会計方針として注記する内容は、第80-2項の2つの項目に限定することを意図して定めているものではなく、これら2つの項目以外にも、重要な会計方針に含まれると判断した内容については、重要な会計方針として注記することとした(第80-3項参照)。
- 165. 本会計基準第80-2項及び第80-3項に従って重要な会計方針として注記した内容を変更する場合、企業会計基準第24号第4項(5)及び企業会計基準適用指針第24号「会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準の適用指針」第8項に従い、会計方針の変更に該当するか否かの検討が必要になる。
(2)収益認識に関する注記
(開示目的)
- 166. 本会計基準では、第101-6項の注記事項の開発にあたっての基本的な方針を踏まえて、顧客との契約から生じる収益に関する情報を注記するにあたっての包括的な定めを開示目的として示している(第80-4項参照)。この開示目的を達成するための収益認識に関する注記として、次の項目を示している(第80-5項参照)。
- (1) 収益の分解情報
- (2) 収益を理解するための基礎となる情報
- (3) 当期及び翌期以降の収益の金額を理解するための情報
- 167. 本会計基準では、IFRS第15号で要求されている注記事項を本会計基準に取り入れるにあたり、IFRS第15号において、個々の注記事項が設けられた意図を理解することがより有用であると考えた。前項に掲げる項目は、開示目的との関連、すなわち、どのように開示目的が達成されることが想定されるのかを踏まえて、IFRS第15号の項目を再分類したものである。
- そのうえで、開示目的を達成する方法として、IFRS第15号を参考として前項の項目ごとに具体的な注記事項を定めているが(第80-10項から第80-24項参照)、IFRS第15号の注記事項の取扱いと同様に、これらの注記事項は最低限の注記のチェックリストとして用いられることを意図したものではない。特定の注記が財務諸表利用者の意思決定に影響を及ぼすか否かについては、契約の類型により異なると考えられる。必要な注記を検討するにあたっては、開示目的に照らして重要性を考慮すべきであると考えられるため、本会計基準では、重要性に乏しい情報の注記をしないことができることを明確にしている(第80-5項ただし書き参照)。
- 168. なお、開示目的に照らして重要性に乏しいと認められるか否かの判断は、定量的な要因と定性的な要因の両方を考慮する必要がある。その際、定量的な要因のみで判断した場合に重要性がないとは言えない場合であっても、開示目的に照らして重要性に乏しいと判断される場合もあると考えられる。
収益認識に関する注記の記載方法
- 169. 我が国においては、注記事項は、個別の会計基準で定める個々の注記事項の区分に従って記載がなされていることが多いが、収益認識に関する注記を記載するにあたっては、本会計基準で示す注記事項の区分に従って注記事項を記載する必要はないとしている(第80-7項参照)。
- 170. ここで、財務諸表利用者の理解が困難となるような体系で収益認識に関する注記が記載されることは想定されず、収益認識に関する注記の開示目的に照らして、企業の収益及びキャッシュ・フローを理解するために適切であると考えられる方法で注記を記載することが考えられる。例えば、収益の分解情報の区分に関連付けて、履行義務に関する情報等の必要な項目を記載することが考えられる。
- 171. また、収益認識に関する注記についてどのような詳細さで記載すべきかについては、第80-4項に定める開示目的に照らして企業が適切に判断するものであると考えられる(第80-6項参照)。
収益認識に関する注記を財務諸表における他の注記事項に含めて記載している場合
- 172. 収益認識に関する注記として記載する内容について、既存のセグメント情報におけるセグメントの区分が、本会計基準第80-10項に示す収益を分解する区分に適うと判断される場合(適用指針第191項)等、財務諸表における他の箇所に記載している注記事項により収益認識に関する注記の開示目的が満たされると判断される場合がある。また、セグメント情報の注記に含めて収益の分解情報を示す等、財務諸表における他の箇所に記載している注記事項に関連づけて収益認識に関する注記として求められている内容を記載することが、財務諸表利用者の理解に資すると判断される場合がある。
- 173. 前項に示すような状況において、収益認識に関する注記として記載する内容について、財務諸表における他の注記事項に含めて記載している場合には、当該他の注記事項を参照することができることとした(第80-9項参照)。
(収益の分解情報)
- 174. 損益計算書において認識される、顧客との契約から生じる収益は、さまざまな財又はサービスの移転及びさまざまな種類の顧客又は市場に関わる契約から生じる可能性があるため、顧客との多くの契約から生じた複合的な金額である。本会計基準では、当期に認識した顧客との契約から生じる収益の内訳を財務諸表利用者が理解できるようにするために、収益の分解情報の注記を求めることとした(第80-10項参照)。
- 175. IFRS第15号では、収益の分解情報を開示する目的は、顧客との契約から認識した収益を、収益及びキャッシュ・フローの性質、金額、時期及び不確実性がどのように経済的要因の影響を受けるのかを描写する区分に分解することであるとされている。これを踏まえて、本会計基準においては、IFRS第15号を参考に、どのように収益の分解情報を注記するのかを定めることとした(第80-10項参照)。
- 176. ただし、IFRS第15号においては、「経済的要因」の意味するところについては詳細に説明されていない。また、IFRS第15号においては、収益の最も有用な分解は、さまざまな企業固有又は業種固有の要因に左右されることから、収益の分解の基礎として使用すべき特定の要因は定めていないとされている。
- ここで、IFRS第15号では、「経済的要因」の意味するところを理解するための指針として、企業が業績評価の目的で利用している区分や財務諸表利用者とのコミュニケーションにおいて開示している区分を考慮することとされている。また、収益の分解情報として適切である可能性のある区分の例が示されている。
- 177. 本会計基準においても、このような契約の類型の区分の例示として、IFRS第15号と同様の指針を適用指針に設けることとした(適用指針第106-3項から第106-5項)。
- 178. また、収益の分解情報は、単一の区分により開示される場合もあれば、複数の区分により開示される場合(例えば、製品別の収益の分解と地域別の収益の分解)もあると考えられる。一方で、企業の収益及びキャッシュ・フローの性質、金額、時期及び不確実性に影響を及ぼす要因のすべてを考慮する必要がないことを明確にするために、本会計基準では、「主要な」要因に基づく区分による収益の分解情報を求めることとした。
(収益を理解するための基礎となる情報)
- 179. 第80-12項から第80-19項に掲げる「収益を理解するための基礎となる情報」には、企業が認識する収益を財務諸表利用者が理解するための基礎となる情報が含まれる。「収益を理解するための基礎となる情報」では、第17項のステップ1からステップ5に関連して、次の情報を注記する。
- (1) 契約及び履行義務に関する情報(ステップ1及びステップ2)
- (2) 取引価格の算定に関する情報(ステップ3)
- (3) 履行義務への配分額の算定に関する情報(ステップ4)
- (4) 履行義務の充足時点に関する情報(ステップ5)
- (5) 本会計基準の適用における重要な判断
- 180. 収益を理解するための基礎となる情報において注記する情報は、顧客と締結した契約の内容と、それらの内容がどのように収益及び関連する財務諸表の項目に反映されているかに関する情報を開示するものである。この情報を記載するにあたって、単に本会計基準等における取扱いを記載するのではなく、企業の置かれている状況が分かるようにすることで、財務諸表利用者に有用な情報を開示することになると考えられる。
契約及び履行義務に関する情報(ステップ1及びステップ2)
- 181. 第80-13項から第80-15項に掲げる「契約及び履行義務に関する情報」においては、収益として認識している項目がどのような契約から生じているのかを理解するための情報を注記することとしている。この情報には、収益認識に関する注記における他の注記事項を理解するために必要な情報も含まれる。本会計基準では、「契約及び履行義務に関する情報」について、契約から生じる企業の義務と権利に着目して、(1)「履行義務に関する情報」と(2)「重要な支払条件に関する情報」とに区分したうえで、区分したそれぞれについて記載する内容又は関連して記載する内容を例示している。
- 182. 企業は、顧客と約束した財又はサービスの内容に基づき契約及び履行義務を識別し、会計処理を決定する。第80-14項の履行義務に関する情報として注記する「履行義務の内容」は、顧客との契約における企業の履行義務の理解に資する情報、すなわち、企業が顧客に移転することを約束した財又はサービスの内容並びに収益及びキャッシュ・フローの金額、時期及び不確実性を理解するために必要な基礎となる情報を開示するものである。したがって、本会計基準では、「履行義務の内容」を重要な会計方針の注記に記載することとした(第80-2項(1)参照)。
- 183. また、本会計基準においては、契約に次のような内容が含まれており、かつ、収益及びキャッシュ・フローの金額、時期及び不確実性に重要な影響がある場合には、その情報を記載することが企業の収益及びキャッシュ・フローの理解に有用であると考えられるため、注記するものとして例示している(第80-14項参照)。
- (1) 財又はサービスが他の当事者により顧客に提供されるように手配する履行義務
- (2) 返品、返金及びその他の類似の義務
- (3) 財又はサービスに対する保証及び関連する義務
- 184. 「重要な支払条件に関する情報」は、対価に対する企業の権利に関する情報であり、支払条件により、主に収益の金額及び不確実性に重要な影響が生じる契約がある場合に、その契約内容を記載することが考えられる。
- 185. また、次のような契約を有しており、かつ、収益及びキャッシュ・フローの金額、時期及び不確実性に重要な影響がある場合には、重要な支払条件に関する情報を記載することが企業の収益及びキャッシュ・フローの理解に有用であると考えられるため、重要な支払条件について記載することを本会計基準に例示している(第80-15項参照)。
- (1) 対価が変動する可能性のある契約
- (2) 変動対価の見積りの制限に関する定めが適用される契約
- (3) 重要な金融要素が含まれる契約
取引価格の算定に関する情報(ステップ3)
- 186. 第80-16項に掲げる「取引価格の算定に関する情報」では、「契約及び履行義務に関する情報」で提供した情報を踏まえ、取引価格をどのように算定したかを理解するために役立つ情報を開示する。
- 187. 企業が、変動対価が含まれる契約を有しており、かつ、当該契約により、収益の金額及び不確実性等に重要な影響が生じる場合には、当該契約における取引価格の見積りにあたって用いた方法、インプット及び仮定に関する情報を開示することが、企業の収益及びキャッシュ・フローの金額、時期及び不確実性の理解に有用であると考えられる。第80-16項ではまた、どのような項目に対して、これらの情報を開示することが考えられるかについて、例を示している。
履行義務への配分額の算定に関する情報(ステップ4)
- 188. 第80-17項に掲げる「履行義務への配分額の算定に関する情報」では、「契約及び履行義務に関する情報」で提供した情報を踏まえ、取引価格の履行義務への配分額の算定の理解に役立つ情報を注記する。
- 189. 企業が複数の履行義務により構成される契約を有しており、履行義務への取引価格の配分に関連して、収益の金額、時期及び不確実性に重要な影響が生じるような契約がある場合には、「取引価格の算定に関する情報」と同様に、その取引価格の配分に用いた方法、インプット及び仮定に関する情報を注記することが考えられる。また、第80-17項では、どのような項目に対して、これらの情報を注記することが考えられるかについて、例を示している。
履行義務の充足時点に関する情報(ステップ5)
- 190. 第80-18項に掲げる「履行義務の充足時点に関する情報」では、「契約及び履行義務に関する情報」で注記した情報を踏まえ、企業が履行義務を充足する通常の時点(収益を認識する通常の時点)をどのように判断し、どのように会計処理しているのかに関する情報を注記する。本会計基準では、第80-18項(1)に掲げる「履行義務を充足する通常の時点(収益を認識する通常の時点)」を重要な会計方針として注記することとした(第80-2項(2)参照)。
本会計基準の適用における重要な判断
- 191. 本会計基準では、本会計基準を適用する際に行った判断及び判断の変更のうち、顧客との契約から生じる収益の金額及び時期の決定に重要な影響を与えるものを注記することとしている(第80-19項参照)。
- IFRS第15号においては、IFRS第15号の適用における重要な判断及び判断の変更に関して特に注記が求められる事項として、「履行義務の充足の時期」並びに「取引価格及び履行義務への配分額」を決定する際に用いた判断及び判断の変更が挙げられている。企業がこれらの事項を「収益を理解するための基礎となる情報」に掲げる事項又は内容を踏まえて注記している場合には、本会計基準を適用する際に行った判断及び判断の変更の項目を改めて設けて記載する必要はないと考えられるため、本会計基準においては、第80-19項の「本会計基準の適用における重要な判断」において改めて明示しないこととした。
(当期及び翌期以降の収益の金額を理解するための情報)
契約資産及び契約負債の残高等
- 192. 本会計基準では、契約資産及び契約負債の残高等について注記することとしている(第80-20項参照)。本会計基準の審議の過程において、契約資産及び契約負債の残高等の注記について、財務諸表作成者からは、当該注記、特に定量的な情報を開示することによるコスト負担についての懸念や、当該注記により有用な情報が開示されるかどうかについての疑問が示された。
- IFRS第15号を開発する過程において、契約資産及び契約負債の期首から期末への合計額の調整を表形式で開示することが提案されたが、IFRS第15号においては、表形式での開示を求めることはせず、契約資産及び契約負債の重要な変動について説明することとされた。
- 本会計基準においても、契約資産及び契約負債の残高等について注記を求めることにより、実務上の負担が生じることになるが、当該注記により有用な情報が開示されること、また、IFRSと同様に、契約資産及び契約負債の期首から期末への合計額の調整を表形式で注記することを求めないことにより、実務上の負担にも配慮していること、さらに、このような中、開示を緩和する追加の措置を定める場合、契約資産及び契約負債の残高等の注記情報の有用性が低下する可能性があることから、本会計基準においては、IFRS第15号と同様に、契約資産及び契約負債の残高等について注記することとした(第80-20項参照)。
残存履行義務に配分した取引価格
残存履行義務に配分した取引価格の注記を設けるか否かの検討
- 193. 残存履行義務に配分した取引価格の注記(以下「残存履行義務の注記」という。)については、次のとおり、本会計基準の注記に含めることについて意見が聞かれた。
- (1) 残存履行義務の注記を会計数値として開示するために、未充足の履行義務を有するすべての契約に関する情報(いつ収益として認識すると見込んでいるのかに関する情報を含む。)を収集するためのシステムや社内プロセスの構築に時間とコストを要する。
- (2) 投資家向けの情報(IR)や有価証券報告書における「経営者による財政状態、経営成績及びキャッシュ・フローの状況の分析(MD&A)」等を通じて受注実績等の情報が記載されている。投資家にとってはそれらの情報で十分であり、本会計基準の注記の定めとして設ける必要はないのではないかと考えられる。
- 194. 前項の意見を踏まえ、残存履行義務の注記を本会計基準に含めるかどうかの検討を行った。
- 残存履行義務の注記は、企業の既存の契約から認識すると見込んでいる収益の金額と時期に関する情報を開示するものであり、企業の将来の収益を予測するうえで有用な情報を開示するものである。この観点から、残存履行義務の注記は、「顧客との契約から生じる収益及びキャッシュ・フローの性質、金額、時期及び不確実性を財務諸表利用者が理解できるようにするための十分な情報を企業が開示する」という第80-4項の開示目的に適う情報であると考えられる。
- また、残存履行義務の注記について、IFRS第15号においても実務上の負担があることは認識されており、一定の実務上の便法を設けたうえで、当該注記を要求しているものである。さらに、国際的な会計基準に基づく財務諸表における残存履行義務の注記の実務において、企業は、開示目的に照らして企業の事業及び契約内容に即した注記の内容及びその記載方法を決定している。
- 本会計基準においても、一定の実務上の便法を認めること、また、企業が開示目的に照らして企業の事業及び契約内容に即した注記の内容及びその記載方法を決定することになることを考慮すると、すべての事業及び契約に対して一律に注記を求めることに比して、残存履行義務の注記にかかる負担は一定程度軽減されると考えられる。
- IRやMD&Aで記載される情報で十分ではないかという意見に対しては、財務諸表外で記載されている受注実績については、「受注」の定義が存在しないため、受注実績に含まれる契約の範囲や金額の算定方法が必ずしも明確ではなく、他の企業との比較可能性が損なわれる可能性があると考えられる。
- これらの検討を踏まえ、本会計基準においては、IFRS第15号と同様の残存履行義務の注記を定めることとした(第80-21項参照)。なお、残存履行義務の注記について、実務における対応を考慮して、開示目的に照らして判断する際の考え方を第205項に記載している。
第80-22項(1)の実務上の便法
- 195. 第80-22項(1)では、当初に予想される契約期間が1年以内の契約の一部である履行義務について、残存履行義務の注記から除外することを認めている。IFRS第15号において第80-22項(1)に相当する実務上の便法が設けられたのは、残存履行義務の注記の作成コストに対する負担を軽減するためであり、残存履行義務の開示は、契約が長期である場合に決定的に重要であるとの意見が寄せられたためであるとされている。本会計基準の審議の過程では、当該実務上の便法を適用した場合、既存の契約から認識することが見込まれる将来の収益に関する情報が完全には開示されないことから、翌期に収益が認識される予定の金額の分析や、当期の収益との比較から決算日時点で何年分の契約を既に有しているのかに関する分析等を行うには不十分であり、当該情報の有用性が限定的となる可能性があるとの意見が聞かれた。
- 196. IFRS第15号で示されているように、残存履行義務の注記は、長期の契約を有している事業を有する企業を評価するにあたって重要な情報であると考えられる。そのような企業においては、当初に予想される契約期間が1年以内の契約も含めて注記することが有用であると考えられるため、本会計基準の審議の過程においては、第80-22項(1)の実務上の便法を設けない(すなわち、当初に予想される契約期間が1年以内の契約も含めて注記する。)とすることも検討した。しかしながら、当該注記に対する実務負担を懸念する意見が寄せられている中、国際的な会計基準より厳しい注記事項の定めを設けることは困難であると考えられる。
- 197. 第80-22項(1)の実務上の便法を導入した場合、特に短期の受注に応じて商品又は製品を出荷した時点で収益を認識するような企業にとっては、実務負担の大幅な軽減になると考えられるため、残存履行義務の注記を本会計基準に含めるにあたっては、IFRS第15号と同様に第80-22項(1)の実務上の便法を設けることとした。当該便法が適用された場合、残存履行義務の注記の有用性が低下する可能性はあるが、長期の契約について当該注記が重要な情報となりうるという財務諸表利用者の要望には適うものとなると考えられる。
- 198. なお、第80-22項(1)の実務上の便法を採用するかどうかは任意であり、企業が収益認識に関する開示目的に照らして、当初に予想される契約期間が1年以内の契約も含めて注記することがより有用であると判断する場合には、当初に予想される契約期間が1年以内の契約も含めて注記することが望ましいと考えられる。
第80-22項(2)の実務上の便法
- 199. 一定の期間にわたって充足される履行義務の進捗度の見積りにあたってアウトプット法を適用する場合には、原則として、契約で約束した財又はサービスとの比率に基づいて現在までに移転した財又はサービスの顧客にとっての価値を見積ることになる。この点について、適用指針では、アウトプット法における実務上の便法として、現在までに企業の履行が完了した部分に対する顧客にとっての価値に直接対応する対価の額を顧客から受け取る権利を有している場合(例えば、提供したサービスの時間に基づき固定額を請求する契約等)に、請求する権利を有している金額で収益を認識することを認めている(適用指針第19項)。また、IFRS第15号では、適用指針第19項に相当する定めが適用される取引についても残存履行義務の注記から除外することを認める実務上の便法が設けられている。
- 200. 適用指針第19項が適用される取引においては、現在までに移転した財又はサービスの顧客にとっての価値を見積るにあたって契約の取引価格の総額を算定する必要はないものの、残存履行義務の注記に関してIFRS第15号で定められている実務上の便法を設けないとした場合には、注記のために取引価格の総額を算定することが求められることになる。このような契約において注記のために取引価格の総額を算定することの便益は限定的であると考えられることから、本会計基準においても、IFRS第15号と同様に本会計基準第80-22項(2)の実務上の便法を設けることとした。
第80-22項(3)の実務上の便法
- 201. Topic 606においては、本会計基準第80-22項(1)及び(2)の実務上の便法に加え、次のいずれかの条件を満たす変動対価についても、残存履行義務の注記から除外することを認めるとする実務上の便法が設けられている。
- (1) 売上高又は使用量に基づくロイヤルティ(適用指針第67項)
- (2) 本会計基準第72項の要件に従って、完全に未充足の履行義務(あるいは本会計基準第32項(2)に従って識別された単一の履行義務に含まれる1つの別個の財又はサービスのうち、完全に未充足の財又はサービス)に配分される変動対価
- なお、残存履行義務の注記に含めなくてもよいとされているのは、変動部分についてのみであり、固定部分については注記の対象となるとされている。
- 202. Topic 606において上記の実務上の便法が追加されたのは、第80-22項(2)の実務上の便法と同様に、収益の認識時点で変動対価の見積りが要求されていないものにつき、注記のみのために見積りが要求されることになることを回避するためであるとされている。これらの実務上の便法についても、第80-22項(2)の実務上の便法と同様に、注記のみのために収益の認識時点で要求されていない見積りを企業に求めることのないように、本会計基準に含めることとした。
残存履行義務の注記に含めていないものがある場合の注記
- 203. 本会計基準では、第80-21項における残存履行義務の注記に含めていないものがある場合に、企業間の比較可能性を担保し、残存履行義務の注記に含まれている金額の理解に役立つよう、一定の注記を行うこととしている(第80-23項及び第80-24項参照)。第80-23項は、残存履行義務の注記に含めていない対価の額(例えば、第54項に従って変動対価の見積りが制限される場合)がある場合に、その旨を注記することを求めるものである。また、第80-24項前段は、第80-22項(1)から(3)の実務上の便法を使用した場合の注記を求めるものである。
- 204. 本会計基準では、第201項及び第202項に記載のとおり、残存履行義務の注記に関してTopic 606に定められている実務上の便法も含めることとしている(第80-22項(3)参照)。これに伴い、Topic 606に基づく実務上の便法を適用した場合には、Topic 606に基づく注記を求めることとした(第80-24項後段参照)。
残存履行義務の注記に含めるか否かを判断する単位
- 205. 残存履行義務の注記は、長期の契約を有している事業を有する企業を評価するにあたって重要な情報である(第196項参照)。しかし、企業は複数の事業を営んでいる場合があり、事業により日常的に長期の契約を締結している場合もあれば、そうでない場合もある。したがって、第80-4項の開示目的に照らして第80-21項の注記に含めるか否かを決定するにあたっては、第80-10項における収益の分解情報を区分する単位(分解区分)ごと(複数の分解区分を用いている場合には分解区分の組み合わせ)又はセグメントごとに判断することも考えられる。
- なお、特定の分解区分(特定の分解区分の組み合わせ)又は特定のセグメントに関する残存履行義務についてのみ第80-21項の注記に含めることとした場合には、第80-21項の注記に含めた分解区分等を注記することが考えられる。
3.連結財務諸表を作成している場合の個別財務諸表における表示及び注記事項
- 206. これまで当委員会では、原則として、会計基準等の開発を行う際に、会計処理については、連結財務諸表と個別財務諸表の両方に同様に適用されるものとして開発してきているが、注記事項については、個々の会計基準ごとに、個別財務諸表において連結財務諸表の内容をどの程度取り入れるかを定めてきている。
一方、金融商品取引法に基づき作成される個別財務諸表については、2013年6月20日に企業会計審議会から公表された「国際会計基準(IFRS)への対応のあり方に関する当面の方針」の内容を踏まえ簡素化が図られてきている。 - 207. 本会計基準における連結財務諸表を作成している場合の個別財務諸表の表示及び注記事項については、当該簡素化の趣旨、財務諸表利用者が個別財務諸表における収益の状況を分析できるようにする観点及び財務諸表作成者の負担等を考慮し、第80-2項及び第80-3項に記載した重要な会計方針に加えて、第80-5項(2)に記載した「収益を理解するための基礎となる情報」について注記を求めることとした(第80-26項参照)。
Ⅴ.適用時期等
1.適用時期
- 208. 2020年改正会計基準は、顧客との契約から生じる収益に関して、主に表示及び注記事項の定めを改正するものである。2018年会計基準は、顧客との契約から生じる収益に関して、主として会計処理を定めたものであるが、2020年改正会計基準を公表した時点で適用時期を迎えていない。関連する会計処理と表示及び注記事項の定めは、同じ時期に適用することとすることが適切であると考えられることから、2020年改正会計基準も2021年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用することとした(第81項参照)。
- 209. また、2018年会計基準を早期適用している企業が、2020年改正会計基準を早期適用するニーズや、2018年会計基準を適用せずに2020年改正会計基準を早期適用するニーズがあると考えられることから、2020年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から2020年改正会計基準を適用することができることとした(第82項参照)。
- 210. さらに、12月末等を決算期末とする企業のニーズを勘案し、2020年4月1日に終了する連結会計年度及び事業年度から2021年3月30日に終了する連結会計年度及び事業年度までにおける年度末に係る連結財務諸表及び個別財務諸表から2020年改正会計基準を適用することができることとした。この場合、比較可能性を確保する観点から、早期適用した連結会計年度及び事業年度の翌年度に係る四半期(又は中間)連結財務諸表及び四半期(又は中間)個別財務諸表においては、早期適用した連結会計年度及び事業年度の四半期(又は中間)連結財務諸表及び四半期(又は中間)個別財務諸表について、2020年改正会計基準を当該年度の期首に遡って適用することとした(第83項参照)。
2.経過措置
(1)2018年会計基準を適用せずに2020年改正会計基準を適用する場合の経過措置
(2018年会計基準より引き継いだ経過措置)
- 211. IFRS第15号及びTopic 606においては、適用初年度における実務上の負担を軽減するために、さまざまな経過措置が設けられている。2018年会計基準においても、適用初年度における実務上の負担を軽減するため、IFRS第15号及びTopic 606を参考とした経過措置を定めることとした(第84項から第86項参照)。
- また、IFRS又は米国会計基準を連結財務諸表に適用している企業(又はその連結子会社)が当該企業の個別財務諸表に2018年会計基準を適用する場合には、当該企業における実務上の負担を軽減するため、IFRS第15号又はTopic 606のいずれかの経過措置を適用することができるとの定めを2018年会計基準に含めることとした。さらに、IFRSを連結財務諸表に初めて適用する企業(又はその連結子会社)が当該企業の個別財務諸表に2018年会計基準を適用する場合には、当該企業における実務上の負担を軽減するため、IFRS第1号における収益に関する経過措置を適用することができるとの定めを2018年会計基準に含めることとした(第87項参照)。
- 212. 2018年会計基準では、取引価格とは、財又はサービスの顧客への移転と交換に企業が権利を得ると見込む対価の額(ただし、第三者のために回収する額を除く。)をいう(第47項参照)としており、我が国の売上に係る消費税等は、第三者に支払うために顧客から回収する金額に該当することから、2018年会計基準における取引価格には含まれない。
- 2017年公開草案に対して、非課税取引が主要な部分を占め、消費税等の負担者と認められる等の理由により、消費税等の税込方式を採用する企業から、税込方式を容認すべきであるとの意見が寄せられた。審議の結果、税込方式を認める場合、2018年会計基準における取引価格の定義に対する例外を設けることになり、また非課税取引が主要な部分を占める企業における売上に係る消費税等の額は重要性に乏しい等の理由により、代替的な取扱いを定めないこととした。
- ただし、2018年会計基準の適用初年度において、消費税等の会計処理を税込方式から税抜方式に変更する場合には、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更として、過去の期間に消費税等が算入された固定資産等の取得原価を修正することとなるが、相当の期間にわたり情報を入手することが必要となり、実務的な対応に困難を伴うことが想定されるため、適用初年度の期首より前までに消費税等が算入された固定資産等の取得原価から消費税等相当額を控除しないことができることとした(第89項参照)。
(2020年改正会計基準において追加した経過措置)
- 213. 2020年改正会計基準を適用する場合、2020年改正会計基準の適用初年度において、第89-3項の定めを設けない場合には、適用初年度の比較情報において、第78-2項、第79項なお書き及び第80-2項から第80-27項に記載した内容を注記することが求められる場合がある。
ただし、次の理由から、適用初年度の比較情報についての注記事項に関する情報を入手し集計することは実務上煩雑である可能性があるため、当該実務上の負担に配慮し、2020年改正会計基準の適用初年度においては、第78-2項、第79項なお書き及び第80-2項から第80-27項に記載した内容を、適用初年度の比較情報に注記しないことができることとした(第89-3項参照)。 - (1) 2020年改正会計基準は顧客との契約から生じる収益に関して、主として表示及び注記事項の定めを改正するものであるが、当該注記に関する情報を入手し集計するために、企業において経営管理及びシステム対応を含む業務プロセスを変更する必要性が生じる可能性がある。
- (2) 2020年改正会計基準が2021年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用される(第81項参照)ことを考慮すると、適用初年度の比較情報についても2020年改正会計基準第78-2項、第79項なお書き及び第80-2項から第80-27項に定める事項の注記を求める場合には、準備期間が十分ではない可能性があり、実務上の負担が大きい可能性がある。
- (3) 2020年改正会計基準の適用初年度においては、新たな会計方針を過去の期間のすべてに遡及適用することを原則的な取扱いとする一方、適用初年度の期首より前に新たな会計方針を遡及適用した場合の適用初年度の累積的影響額を、適用初年度の期首の利益剰余金に加減し、当該期首残高から新たな会計方針を適用することができるとしている(第84項ただし書き参照)。
- 214. IFRS第15号の経過措置においては、実務上の便法を適用して遡及適用した場合には、適用した実務上の便法、及び当該便法のそれぞれの適用について見積った影響の定性的評価を合理的に可能な範囲で開示することが求められている。
- 日本基準においては、企業会計基準第24号第10項(3)における経過的な取扱いにより会計処理を行った場合、その旨及び当該経過的な取扱いの概要を注記することが求められているため、本会計基準第83-4項から第89項の経過措置を使用した場合には、その概要を注記する必要がある。一方で、当該経過措置のそれぞれの適用について見積った影響の定性的評価の注記は、次の理由から、必ずしも必要ではないと考えられるため、当該経過措置を設けないこととした。
- (1) 企業会計基準第24号においては、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更に関して、同様の注記を求めていない。
- (2) 経過措置のそれぞれの適用について見積った影響を通常、定量的に算定することができないことを考えると、当該注記の有用性は高いものではない可能性があると考えられる。
- (3) 当該注記は、2020年改正会計基準を適用する初年度のみに求められるものであることから、当該注記を求めないとしても、国際的な比較可能性は大きく損なわれるものではないと考えられる。
- 215. IFRS第15号は、IFRS第15号の適用開始による累積的影響額を適用開始日に認識する方法で遡及適用する場合には、財務諸表の各表示科目が、当報告期間にIFRS第15号の適用によって影響を受ける金額及び著しい変動の理由の開示を経過措置により求めている。
- 2020年改正会計基準第84項ただし書きに定める方法を適用して、適用初年度の期首より前に新たな会計方針を遡及適用した場合の適用初年度の累積的影響額を、適用初年度の期首の利益剰余金に加減し、当該期首残高から新たな会計方針を適用した場合、日本基準においては、企業会計基準第24号第10項(5)により、実務上算定が可能な、影響を受ける財務諸表の主な表示科目に対する影響額を注記することとなる。しかしながら、財務諸表の各表示科目が、当報告期間に2020年改正会計基準の適用によって影響を受ける金額及び著しい変動の理由について注記を求められていない。
- この点、当該注記を求めることにより有用な情報が開示される可能性があると考えられるが、企業会計基準第24号は、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更に関して、同様の注記を求めていない。また、企業会計基準第24号は、会計基準等の改正に伴う会計方針の変更により影響を受ける財務諸表の主な表示科目に対する影響額を注記することを求めており、適用初年度の比較情報として表示される財務諸表の数値との比較可能性は確保されていると考えられる。さらに、当該注記は、2020年改正会計基準を適用する初年度のみに注記されることから一過性のものであり、当該注記を求めないとしても、国際的な比較可能性は大きく損なわれるものではないと考えられる。これらを踏まえ、2020年改正会計基準においては、IFRS第15号と同様の経過措置を設けないこととした。
(2)2018年会計基準を適用したうえで2020年改正会計基準を適用する場合の経過措置
- 216. 第213項と同様の理由により、第78-2項、第79項なお書き及び第80-2項から第80-27項に記載した内容を適用初年度の比較情報に注記しないことができることとした(第89-4項参照)。
2020年改正会計基準の公表による他の会計基準等についての修正
- 2020年改正会計基準の公表により、当委員会が公表した会計基準等については、次の修正を行う(下線は追加部分を示す。)。
- (略)
- 以 上
