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移管指針第9号金融商品会計に関する実務指針
Ⅰ 金融商品会計に関する実務指針
はじめに
- 1. これまで、金融商品の会計処理では、一部の取引につき時価会計が採用されていたが、多くの取引については取得原価会計に基づいて損益の認識が行われてきた。他方、先物取引、オプション取引及び市場性のある有価証券に係る時価情報の開示が行われ、企業の保有する金融商品に内在するリスク及びそれが将来の損益及びキャッシュ・フローに与える影響を判断するための情報を提供してきた。しかしながら、最近の証券・金融市場のグローバル化及び取引の高度化・複雑化に対処するために、注記による時価情報の提供にとどまらず、金融商品そのものの時価評価に係る会計処理をはじめ、新たに開発された金融商品や取引手法等についての会計処理の基準の整備が必要とされる状況にたち至っていると考えられることから、1999年1月22日に企業会計審議会は、「金融商品に係る会計基準」を公表した。また、企業会計基準委員会は、貸借対照表の純資産の部の表示を定めた企業会計基準第5号「貸借対照表の純資産の部の表示に関する会計基準」や会社法及び会社法への対応として公表された複数の会計基準等を踏まえ、金融商品会計基準に最小限必要な改正を行い、2006年8月11日に企業会計基準第10号「金融商品に関する会計基準」(以下「金融商品会計基準」という。)として公表した。
- 2. 金融商品会計基準を実務に適用する場合の具体的な指針等について、日本公認会計士協会は、金融商品の範囲、それらの発生及び消滅の認識、評価方法、ヘッジ会計並びに複合金融商品の会計処理を明確にすることを目的に、金融商品会計に関する実務指針を取りまとめた。
- 本実務指針は、金融商品会計基準が適用される企業の金融商品に係る取引についての会計処理を取り扱っている。なお、金融機関等が業務として行う金融商品に係る取引のうち特殊なもの及び高度なヘッジ手法を用いて行う取引の具体的な会計処理は、別途取り扱う。
金融商品の範囲、認識及び消滅
金融商品の範囲
金融商品
- 3. 金融商品会計基準第52項によれば、「金融資産、金融負債及びデリバティブ取引に係る契約を総称して金融商品ということにする」とされている。これは、取引当事者の一方の企業から見た定義である。2企業間で締結される契約である金融商品を中心に言い換えれば、金融商品とは、一方の企業に金融資産を生じさせ他の企業に金融負債を生じさせる契約及び一方の企業に持分の請求権を生じさせ他の企業にこれに対する義務を生じさせる契約(株式その他の出資証券に化体表章される契約である。)ということになる。
金融資産
- 4. 金融資産とは、現金、他の企業から現金若しくはその他の金融資産を受け取る契約上の権利、潜在的に有利な条件で他の企業とこれらの金融資産若しくは金融負債を交換する契約上の権利、又は他の企業の株式その他の出資証券である。
金融負債
- 5. 金融負債とは、他の企業に金融資産を引き渡す契約上の義務又は潜在的に不利な条件で他の企業と金融資産若しくは金融負債(他の企業に金融資産を引き渡す契約上の義務)を交換する契約上の義務である。
デリバティブ
- 6. デリバティブとは、次のような特徴を有する金融商品である。
- (1) その権利義務の価値が、特定の金利、有価証券価格、現物商品価格、外国為替相場、各種の価格・率の指数、信用格付け・信用指数、又は類似する変数(これらは基礎数値と呼ばれる。)の変化に反応して変化する①基礎数値を有し、かつ、②想定元本か固定若しくは決定可能な決済金額のいずれか又は想定元本と決済金額の両方を有する契約である。
- (2) 当初純投資が不要であるか、又は市況の変動に類似の反応を示すその他の契約と比べ当初純投資をほとんど必要としない。
- (3) その契約条項により純額(差金)決済を要求若しくは容認し、契約外の手段で純額決済が容易にでき、又は資産の引渡しを定めていてもその受取人を純額決済と実質的に異ならない状態に置く。
商品等の売買又は役務の提供に係る契約
- 7. 売買は、取引当事者の一方(売手)が一定の財産権を相手方に与えることを約し、相手方(買手)がこれに代金を払うことを約することによって成立する契約である(民法第555条)。売買契約は、売手の財産権移転義務と買手の財産支払義務が生じる有償・双務契約の典型であり、対価として金銭を与えることが売買の特色とされている。
- しかし、現行の会計基準の下では、商品等の売買又は役務の提供に係る契約が締結されたときには、その権利義務は等価であり現金又はその他の金融資産を授受すべき会計上の金銭債権債務は生じていないから、当該金銭債権債務を認識しない。当該商品等の受渡し又は役務提供の完了時に、契約条件に従い、初めてその対価として現金又はその他の金融資産を授受する片務的な権利又は義務に変わるから、この時点で金銭債権債務を認識する。
有価証券として取り扱うもの及び有価証券として取り扱わないもの
- 8. 金融商品取引法に定義する有価証券に該当しないが、これに類似するもので活発な市場があるもの(例えば、国内CD)は、有価証券として取り扱う。
- 一方、金融商品取引法に定義する有価証券に該当しても、信託受益権(金融商品取引法第2条第2項第1号及び第2号に該当するものに限る。)は、有価証券として取り扱わない。
有価証券の消費貸借契約・消費寄託契約
- 9. 有価証券の消費貸借契約及び消費寄託契約は、金融商品であり金融商品会計基準の対象である。
建設協力金等の差入預託保証金及び預り預託保証金
- 10. 将来返還される建設協力金等の差入預託保証金及び預り預託保証金は、金融商品であり、金融商品会計基準の対象である。なお、企業会計基準適用指針第33号「リースに関する会計基準の適用指針」に定めがある場合、当該定めを適用する。
商品ファンド
- 11. 商品ファンドは、満期日又は期前償還日に現金で回収されるので、商品ファンドは金融商品会計基準の対象である。
ゴルフ会員権等
- 12. ゴルフ会員権等のうち株式又は預託保証金から構成されるものは、金融商品会計基準の対象である。
保険契約
- 13. 保険者が特定の事故の発生によって生じる損害額等(損害保険又は生命保険)を通常保険金支払の形で填補することを約する一方、保険契約者が保険料の支払義務を負う保険契約は、金融商品会計基準の対象外である。
退職給付債務
- 14. 退職給付債務は、金融負債であるが、企業会計基準第26号「退職給付に関する会計基準」(以下「退職給付会計基準」という。)に従って処理されるため、金融商品会計基準の対象外とする。
債務保証契約
- 15. 債務保証契約(信用状による与信を含む。)は、金融商品であり、金融商品会計基準の対象である。
クレジット・デリバティブ
- 16. クレジット・デリバティブは、金融商品であり、金融商品会計基準の対象である。
ウェザー・デリバティブ
- 17. ウェザー・デリバティブは、金融商品であり、金融商品会計基準の対象である。
リース
- 18. リースは、企業会計基準第34号「リースに関する会計基準」(以下「リース会計基準」という。)に従って処理されるため、金融商品会計基準の対象外である。ただし、リースにより認識されたリース債権及びリース投資資産のうち将来のリース料を収受する権利に係る部分(リース会計基準BC57項)又はリース負債は、金融資産又は金融負債として、その消滅の認識や貸倒見積高の算定等につき金融商品会計基準に従って処理する。また、リースに組み込まれたデリバティブには金融商品会計基準が適用される。
当座貸越契約及び貸出コミットメント
- 19. 当座貸越契約(これに準ずる契約を含む。)及び貸出コミットメントは、金融機関等が顧客と合意した一定の限度まで現金を貸し付けることを約する契約であり、金融商品会計基準の対象である。
現物商品に係るデリバティブ取引(コモディティ・デリバティブ取引)
- 20. 現物商品に係るデリバティブ取引(排出クレジットを基礎数値とするものを含む。)のうち、通常差金決済により取引されるものとは、商品先物市場、ロンドン金属取引所(LME)における取引のほか、コモディティ・スワップ、原油取引におけるブック・アウト(BOOK-OUT)取引等、当事者間で通常、差金(差額)決済取引(活発な市場があるため現物商品の引渡しを定めていてもその受取人を純額決済と実質的に異ならない状態に置くものを含む。)が予定されているものをいい、金融商品会計基準のデリバティブ取引に該当するものとして取り扱う。
- ただし、トレーディング目的(企業会計基準第9号「棚卸資産の評価に関する会計基準」第60項)以外の将来予測される仕入、売上又は消費を目的として行われる取引で、当初から現物を受け渡すことが明らかなものは、金融商品会計基準の対象外である。この場合、取引の当初から文書化を行い当該取引部門の責任者の承認を受けていることが必要である。
不動産の証券化
- 21. 不動産又は不動産信託受益権等を譲り受けた特別目的会社が発行した社債、優先出資証券及びコマーシャル・ペーパーは、通常将来の特定期日に現金で償還される有価証券であり、金融商品会計基準の対象である。
- 特別目的会社が譲り受けた不動産の譲渡人にとって、証券化の対象となった不動産は金融資産ではないから、当該証券化は金融商品会計基準の対象外である。譲渡人が不動産信託を活用した仕組みの中で、当該信託受益権を特別目的会社に売却する取引も、同様に譲渡人にとって金融商品会計基準の対象外である。
金融資産及び金融負債の発生の認識
有価証券の売買契約の認識
- 22. 有価証券の売買契約については、約定日から受渡日までの期間が市場の規則又は慣行に従った通常の期間である場合、売買約定日に買手は有価証券の発生を認識し、売手は有価証券の消滅の認識を行う(以下「約定日基準」という。)。ただし、約定日基準に代えて保有目的区分ごとに買手は約定日から受渡日までの時価の変動のみを認識し、また、売手は売却損益のみを約定日に認識する修正受渡日基準によることができる[設例1]。
- 約定日から受渡日までの期間が通常の期間よりも長い場合、売買契約は先渡契約であり、買手も売手も約定日に当該先渡契約による権利義務の発生を認識する。
受渡しに係る通常の期間
- 23. 受渡しに係る通常の期間とは、原則として、我が国の上場有価証券については、証券取引所の定める約定日から受渡日までの日数など、金融商品の種類ごとに、かつ、市場又は取引慣行ごとに、通常受渡しに要する日数をいう。例えば、上場株式の発行日取引や発行前に約定される債券の店頭取引等については、個別具体的なケースごとに市場の慣行であると合理的に考えられる日数をいう。
有価証券の信用取引の認識
- 24. 有価証券の信用取引は、当該有価証券に関する限り現物の売買取引と同一であるから、原則として売買した有価証券に準じて認識する。
- 信用取引による買付けは、有価証券を買入れ後直ちに担保に差し入れたものとし、その買付代金は当該信用取引を行った証券会社からの債務として処理する。売付けは、有価証券の借入れと当該有価証券の売却取引とが同時に行われたものであり、その売付代金は当該信用取引を行った証券会社に対する担保差入金(預け金)として処理する。また、信用取引による買入有価証券又は借入有価証券は、売買目的有価証券に準じて処理を行い、買入有価証券と保有有価証券との簿価通算は要しない。
- なお、信用取引(売付け)は、ヘッジ手段として利用することができる(第165項参照)。
有価証券の空売りの認識
- 25. 有価証券の空売りは、有価証券の売却の認識に準じて処理する。この場合、未収入金及び売付有価証券として売却時の時価である売却価額をもってそれぞれ借方及び貸方に計上する。
- 売付有価証券は、売買目的有価証券に準じて処理する。なお、有価証券の空売りは、ヘッジ手段として利用することができる(第165項参照)。
貸付金及び借入金の認識
- 26. 貸付金及び借入金は、資金の貸借日にその発生を認識し、その返金日に消滅を認識する。
有価証券の消費貸借契約・消費寄託契約
- 27. 有価証券の消費貸借契約及び消費寄託契約(以下「消費貸借契約等」という。)は、借手が有価証券を売却又は担保という方法で自由に処分できる権利を有するため、貸手はその旨及び貸借対照表価額を注記し、借手はその旨及び貸借対照表日の時価を注記する。
- ただし、この場合であっても、借手は借入れ又はその約定をした有価証券を売却したときは、第22項に定める約定日基準又は修正受渡日基準のうち、認識基準として採用する基準により受入れ及び売却処理を行い、返還義務を時価で負債として認識しなければならない。なお、当該返還義務については、その旨及び時価の注記を行わない。
- 有価証券の借手は、注記の対象となったものについては、自己保有部分と担保差入部分とに区分して注記しなければならない。
自由処分権を有する担保受入金融資産
- 28. 融資等に関連し、貸手が金融資産を担保として受渡しを受け、売却又は再担保という方法で自由に処分できる権利を有する場合には、貸手はその旨及び貸借対照表日の時価を注記する。
- ただし、貸手は担保受入れ又はその約定をした担保受入金融資産を売却したときは、受渡日に(ただし、有価証券については、第22項に定める約定日基準又は修正受渡日基準のうち、認識基準として採用する基準により)担保受入金融資産の時価での受入れ及び売却処理を行い、返還義務を負債として認識しなければならない。なお、売却により担保受入金融資産の返還義務が貸借対照表に計上されたものについては、その旨及び時価の注記を行わない。
- 注記の対象となったものについては、自己保有部分と再担保差入部分とに区分して注記しなければならない。
- なお、短期的な通知により担保差入金融資産を入れ替えることができる権利を借手(担保差入者)が有する場合には、貸手に売却又は再担保による担保受入金融資産の自由処分権はないものとして扱う。また、オーバーナイトの融資等に関連して貸手が担保として受け入れた金融資産については、受入れと同時に当該資産を売却する場合を除き実質的に売却又は再担保できないから、自由処分権はないものとみなす。
当初認識時の測定
- 29. 金融資産又は金融負債の当初認識は、当該金融資産又は金融負債の時価により測定する。なお、付随費用については第56項を参照のこと。
金融資産の消滅の認識
権利に対する支配が移る場合における金融資産の財務構成要素
- 30. 財務構成要素アプローチにおける財務構成要素には、将来の現金の流入、回収サービス権、信用リスク及びその他の要素がある。
- 将来の現金の流入は市場リスクにさらされており、回収サービス権は当該金融資産の管理・回収業務に係るものである。
譲受人の契約上の権利が譲渡人及びその債権者から法的に保全されていること
- 31. 譲渡された金融資産に対する譲受人の契約上の権利が譲渡人及びその債権者から法的に保全されているかどうかについては、次の点を考慮して判定する。
- ① 契約又は状況により譲渡人は譲渡を取り消すことができるか否か。
- ② 譲渡人が破産、会社更生法、民事再生法等の下に置かれた場合、管財人が当該譲渡金融資産に対し返還請求権を行使できるか否か。
- 上記②に関して現行法制の下においては、第三者対抗要件を満たす場合に譲渡金融資産は「法的に保全」されているものとして取り扱う。
支配の移転が認められる譲渡制限
- 32. 譲渡制限があっても譲渡人から譲受人への支配の移転が認められる場合の譲渡制限とは、次のようなものである。
- ① 譲受人に最も有利な第三者からの購入の申込みと同一条件による譲渡人の優先的買戻権の存在
- ② 譲受人が売却又は担保差入れをする場合における譲渡人の承認(回収が不経済となったり、債務者を困難な状況に置くことがないか検討するための承認である。したがって、譲渡人の利益のため不合理に留保する場合を除く。)
- ③ 譲受人が譲り受けた資産を多数の第三者に売却することができる場合における譲渡人の競争相手への売却禁止(当該競争相手が唯一の潜在的な買手である場合を除く。)
支配の移転が認められる譲渡人の買戻権
- 33. 譲渡人に買戻権がある場合でも、譲渡金融資産が市場でいつでも取得することができるとき、又は買戻価格が買戻時の時価であるときは、当該金融資産に対する支配が移転している。他方、譲渡金融資産が市場で容易に取得できないもので、かつ、買戻価格が固定価格であるものは、当該金融資産に対する支配は移転していない。
- また、流動化資産の残高が当初金額の一定割合を下回った結果、回収サービス業務コストの見合いから譲渡人が当該残高を買い戻すクリーンアップ・コールは、支配の移転が認められる買戻権である。
割引手形及び裏書譲渡手形
- 34. 受取手形は、その割引又は裏書譲渡時に消滅を認識する。また、輸出荷代金取立てのための荷為替手形(DP手形又はDA手形)は、外国為替取扱銀行においてその買取りを受けた時に、手形債権の発生と消滅を同時に認識する。
特別目的会社の事業
- 35. 金融商品会計基準(注4)にいう特別目的会社(以下「特別目的会社」という。)の事業は、適正な価額で譲り受けた金融資産から生じる収益を当該会社が発行する証券の保有者に享受させる目的に従って適正に遂行されている必要がある。当該目的に従い又は付随して発生する次のような取引を行った場合には事業目的に従って適正に遂行されていると考えられる。
- ① 資産処分により収益をあげ、証券の保有者へこれを享受させる場合
- ② 証券の保有者への配当、利払い及び償還等の時期まで余資を運用して収益を高める場合
- ③ 事業目的を遂行する上でデリバティブによりキャッシュ・フローを調整する場合
- ④ 事業目的を遂行する上でキャッシュ・フローを調整するための借入れ(例えば、証券を完売するまでの借入れ、又は証券の保有者への配当、利払い及び償還等のための借入れ)を行う場合
- ⑤ 事業目的に従い、一部の金融資産の回収に伴い譲渡人から新たな金融資産を譲り受けることを繰り返す場合、又は当初譲り受けた金融資産をすべて回収した後、譲渡人から再度新たな金融資産を譲り受ける場合
金融資産の消滅時に何らかの権利・義務が存在する場合における「残存部分」と「新たな資産・負債」の判定基準
- 36. 金融資産が消滅した時に、譲渡人に何らかの権利・義務が存在する場合がある。それが消滅した金融資産と実質的に同様の資産若しくはその構成要素(譲渡とみなされない場合の代替資産を含む。)、例えば特別目的会社の発行する証券等の金融資産(デリバティブを除く。)であるか、又は回収サービス権であれば「残存部分」であり、異種の資産であれば「新たな資産」の取得となる。また、それが何らかの義務であれば「新たな負債」となり、さらにデリバティブであれば「新たな資産又は負債」の発生となる。
金融資産の消滅時に譲渡人に何らかの権利・義務が存在する場合の損益の計上基準
- 37. 金融資産の消滅時に譲渡人に何らかの権利・義務が存在する場合の譲渡損益は、次のように計算した譲渡金額から譲渡原価を差し引いたものである。譲渡金額は、譲渡に伴う入金額に新たに発生した資産の時価を加え、新たに発生した負債の時価を控除したものである。譲渡原価は、金融資産の消滅直前の帳簿価額を譲渡した金融資産の譲渡部分の時価と「残存部分」の時価で按分した結果、譲渡部分に配分されたものである。
- 譲渡金融資産の帳簿価額のうち按分計算により残存部分に配分した金額を当該残存部分の計上価額とし、新たに発生した資産及び負債は譲渡時の時価により計上する[設例2]。
金融資産の消滅時に何らかの権利・義務が存在する場合における「残存部分」と「新たな資産・負債」の時価を合理的に測定できない場合
- 38. 削 除
金融資産の消滅に伴う回収サービス業務資産又は負債の認識
- 39. 金融資産の消滅に伴って留保した回収サービス業務について、管理回収等のサービス業務提供に伴う実際の回収サービス業務収益が通常得べかりし収益を上回る場合には、第37項に従って残存部分である回収サービス業務資産の計上価額を決定し、実際の収益が通常得べかりし収益を下回る場合には、下回る部分の時価を新たに発生した回収サービス業務負債として認識する。ただし、重要性のない場合には、回収サービス業務資産及び負債の計上は要しない。
- 回収サービス業務資産又は負債は、未収収益又は前受収益(サービス期間が1年超の場合には長期未収収益又は長期前受収益)として計上し、サービスの対象となる残高又は件数に比例して、サービス期間にわたり償却する。
- 資産計上後、回収サービス業務資産に著しい価値の下落があった場合には回収可能額まで評価減する。また、回収サービス業務負債が著しく増加する場合には、当該増加を当期の損失として認識する。
金融資産の譲渡人が譲渡先である特別目的会社が発行する証券等を保有する場合
- 40. 特別目的会社を用いた証券化において、譲渡人が、金融資産の譲渡対価の全部又は一部として特別目的会社の発行する証券等(信託の受益権、組合の出資金、株式、会社の出資金、社債、劣後債等)の全部又は一部を保有することになる場合、金融商品会計基準(注4)により証券等の保有者が譲受人とみなされ、譲渡人が譲受人となるから当該保有部分の譲渡はなかったものとする。したがって、当該全部又は一部に対応する譲渡金融資産の全部又は一部は、「残存部分」として取り扱い、金融資産の消滅の認識を行わない。
ローン・パーティシペーションのオフバランス化の要件
- 41. ローン・パーティシペーションとは、金融機関等からの貸出債権に係る権利義務関係を移転させずに、原貸出債権に係る経済的利益とリスクを原貸出債権の原債権者から参加者に移転させる契約である(移管指針第1号「ローン・パーティシペーションの会計処理及び表示」第2項)。
- ローン・パーティシペーションは金融商品会計基準第42項の経過措置として認められているが、債権の消滅を認識する方法の1つである「債権に係るリスクと経済的利益のほとんどすべてが譲渡人から譲受人に移転している場合」等一定の要件とは、移管指針第1号「ローン・パーティシペーションの会計処理及び表示」に記載の要件と同じである。なお、特別目的会社を参加者とするローン・パーティシペーションの場合、原債権者は債権の消滅を認識することはできない。
クロス取引
- 42. 金融資産を売却した直後に同一の金融資産を購入した場合又は金融資産を購入した直後に同一の金融資産を売却した場合で、譲渡人が譲受人から譲渡した金融資産を再購入又は回収する同時の契約があるときは、金融商品会計基準第9項(3)の金融資産の消滅の認識要件を満たさないので、売買として処理しない。したがって、購入の直後に売却された場合、当該購入金融資産と保有する同一銘柄との簿価通算はできない。譲渡価格と購入価格が同一の場合、又は譲渡の決済日と購入の決済日とに期間があり当該期間に係る金利調整が行われた価格である場合、譲渡人が譲受人から再購入又は回収する同時の契約があると推定する。
- ただし、売買目的有価証券については、同一銘柄のものも頻繁に売買取引を繰り返すので、結果として同一価格になることもあるが、これはクロス取引に当たらない。
金融負債の消滅の認識
金融負債の消滅の認識要件
- 43. 金融負債の消滅の認識要件は、次のとおりである。
- ① 債務者が債権者に通常、現金その他の金融資産で支払うことにより契約上の義務を履行する。
- ② 契約上の義務が消滅する。
- ③ 債務者が、法的な手続により又は債権者により当該負債(又はその一部)に係る第一次債務者の地位から法的に免除される。
金融負債の消滅時に原債務者に何らかの権利・義務が存在する場合の損益の計上基準
- 44. 金融負債の消滅時に原債務者に何らかの権利・義務が存在する場合の債務引渡損益は、次のように計算した債務引渡しに伴う対価から引渡原価を差し引いたものである。債務引渡しに伴う対価は、債務引渡しに伴う支払額に新たに発生した負債の時価を加え、新たに発生した資産の時価を控除したものである。引渡原価は、金融負債の消滅直前の帳簿価額を引き渡した金融負債の引渡部分の時価と「残存部分」の時価で按分した結果、引渡部分に配分されたものである。
- 引渡金融負債の帳簿価額のうち按分計算により残存部分に配分した金額を当該残存部分の計上価額とし、新たに発生した資産及び負債は引渡時の時価により計上する。
債務引渡しに係る二次的責任
- 45. 債務の第三者引受けに際し当該第三者が倒産等に陥ったときに原債務者が負うこととなる二次的な責任である単純保証については、第三者による債務引受時に原債務者は当該二次的責任を新たな金融負債として時価により認識する。なお、二次的責任に係る金融負債の計上価額は、前受保証料に準じて各期の純損益に合理的に配分する。
- 金融負債消滅後の二次的責任に係る金融負債の時価は、時間の経過、債務金額の減少、信用リスクの変化等に伴って変化するが、当該金融負債は、デリバティブに該当しないため、時価評価せず、二次的責任につき損失を被る可能性が高くなったときに債務保証に準じて引当金を計上する。
実質的ディフィーザンスとデット・アサンプション
- 46. 信託を含む第三者への支払(信託への支払は、実質的ディフィーザンスと呼ばれる。)は、法的免責がなければ、債務者にとって債権者からの第一次的債務の免責はなく、金融負債の消滅に該当しない。デット・アサンプションは実質的ディフィーザンスの一種であるが、経過措置として一定の要件を満たしたものについて当分の間社債の消滅の認識が認められている。
- デット・アサンプションに係る原債務の消滅の認識要件は、取消不能で、かつ社債の元利金の支払に充てることを目的とした他益信託等を設定し、当該元利金が保全される高い信用格付けの金融資産(例えば、償還日がおおむね同一の国債又は優良格付けの公社債)を拠出することである。
- この場合、社債の発行体又はデット・アサンプションの受託機関に倒産の事実が発生しても、当該発行体の当該社債権者以外の債権者等が、信託した金融資産に対していかなる権利も有しないことが必要である。
- なお、金融商品会計基準第42項(2)における「信託契約等」の「信託」とは我が国の信託法に基づいた信託で、「等」とは海外の信託で我が国の信託法に基づく信託と同等のものをいい、信託財産が委託者及び受託者の倒産から隔離され分離保全されているものをいう。
金融資産及び金融負債の評価及び会計処理
金融資産及び金融負債の評価
時価の定義
- 47. 金融資産及び金融負債の「時価」の定義については、金融商品会計基準第6項に従う。
市場価格に基づく価額
- 48. 削 除
- 49. 削 除
- 50. 削 除
- 51. 削 除
- 52. 削 除
合理的に算定された価額
- 53. 削 除
- 54. 削 除
- 55. 削 除
付随費用の取扱い
- 56. 金融資産(デリバティブを除く。)の取得時における付随費用(支払手数料等)は、取得した金融資産の取得価額に含める。ただし、経常的に発生する費用で、個々の金融資産との対応関係が明確でない付随費用は、取得価額に含めないことができる。
評価額及び評価差額の定義
- 57. 本実務指針で用いる評価額等に係る用語の定義は、以下のとおりとする。
- (1) 取得価額とは、金融資産の取得にあたって支払った対価の支払時の時価に手数料その他の付随費用を加算したものをいう。なお、債券を流通市場から購入する場合に支払う前利払日から債券の受渡日までの経過利子は、原則として債券の取得価額に含めない。
- (2) 取得原価とは、一定時点における同一銘柄の金融資産の取得価額の合計額から、前回計算時点より当該一定時点までに売却した部分に一定の評価方法を適用して計算した売却原価を控除した価額をいう。
- (3) 償却原価とは、金融資産又は金融負債を債権額又は債務額と異なる金額で計上した場合において、当該差額が主に金利の調整部分に該当するときに、これを弁済期又は償還期に至るまで毎期一定の方法で取得価額に加減した後の価額をいう。
- (4) 帳簿価額とは、一定時点において帳簿上に記載している金融資産又は金融負債の価額(取得原価又は償却原価から評価性引当金を控除した後の金額)をいう。
- (5) 貸借対照表価額とは、期末において貸借対照表に計上している金融資産又は金融負債の価額をいう。なお、貸借対照表上、貸倒引当金がある場合には、債権から当該残高を控除した後の金額が貸借対照表価額となる。
- (6) 評価差額とは、期末において貸借対照表に計上した金融資産又は金融負債の時価とその帳簿価額(取得原価又は償却原価から評価性引当金を控除した後の金額)との差額をいう。
有価証券
有価証券の範囲
- 58. 金融商品取引法第2条第1項及び第2項においては、有価証券の種類を限定列挙する形で有価証券の定義が行われているが、本実務指針では、金融商品取引法に定義する有価証券以外のものであっても、企業会計上、有価証券として取り扱うことが適当と認められるものについては、有価証券として取り扱うこととする。これに該当するものとしては、例えば、国内CDがある(第8項参照)。
- また、金融商品取引法に定義する有価証券であっても、企業会計上、有価証券として取り扱うことが適当であるとは認められないものについては、有価証券として取り扱わないこととする。これには、信託受益権(金融商品取引法第2条第2項第1号及び第2号に該当するものに限る。)が該当する。ただし、信託受益権が優先劣後等のように質的に分割されており、信託受益権の保有者が複数である場合(第100項(2)参照)など、有価証券(債券、株式等)とみなして取り扱われるものは、結果的に有価証券として取り扱うこととなる。
- 本実務指針で「有価証券」という場合、特に断りがない限り、有価証券として取り扱うものを含み、有価証券として取り扱わないものを含まない。
有価証券の保有目的による区分
- 59. 金融商品会計基準では、有価証券を保有目的等の観点から、(1)売買目的有価証券、(2)満期保有目的の債券、(3)子会社株式及び関連会社株式、(4)その他有価証券に区分し、それぞれの区分に応じて、貸借対照表価額、評価差額等の処理を定めている。このうち売買目的有価証券及び満期保有目的の債券については、その定義及び要件を明確かつ限定的に定めておく必要がある。その他有価証券には上記(1)から(3)に該当しないものとして幅広く定義されたものが含まれることになる。なお、会社の資金運用方針等に基づき、同一銘柄の有価証券を異なる保有目的区分で保有することも認められる。
- また、有価証券の各保有目的区分を構成する銘柄が当該保有目的区分の定義及び要件を満たしているかどうかについては、取得時に判断するだけでなく、取得後も継続してその要件を満たしていることを検討することが必要である。
有価証券の時価評価等
株式の時価評価
- 60. 削 除
債券の時価評価
- 61. 削 除
投資信託の時価評価
- 62. 削 除
時価を把握することが極めて困難と認められる有価証券の範囲
- 63. 削 除
投資信託及び合同運用の金銭の信託の評価
- 64. 投資信託及び合同運用の金銭の信託のうち預金と同様の性格を有するものは、取得原価をもって貸借対照表価額とする。
売買目的有価証券
売買目的有価証券の定義
- 65. 金融商品会計基準第15項でいう「時価の変動により利益を得ることを目的として保有する」とは、短期間の価格変動により利益を得ることを目的として保有することをいい、通常は同一銘柄に対して相当程度の反復的な購入と売却が行われるものをいう。したがって、売買目的有価証券とは、いわゆるトレーディング目的の有価証券を指す。一般に、企業が保有する有価証券を売買目的有価証券として分類するためには、有価証券の売買を業としていることが定款の上から明らかであり、かつ、トレーディング業務を日常的に遂行し得る人材から構成された独立の専門部署(関係会社や信託を含む。)によって売買目的有価証券が保管・運用されていることが望ましい。
- 上記の要件を満たす売買目的有価証券の典型的な例としては、金融機関の特定取引勘定に属する有価証券、運用を目的とする金銭の信託財産構成物である有価証券(本実務指針第97項参照)が挙げられる。
- しかしながら、定款上の記載や明確な独立部署をもたなくても、有価証券の売買を頻繁に繰り返している場合には、当該有価証券は売買目的有価証券に該当する。
売買目的有価証券の会計処理
(評価差額の処理)
- 66. 金融商品会計基準第15項によれば、売買目的有価証券は、「時価をもって貸借対照表価額とし、評価差額は当期の損益として処理する。」とされている。具体的には、当期において時価の変動した銘柄について、貸借対照表日における時価により当該有価証券の評価を行い、評価差額を当期の損益に計上する[設例3]。
(売却原価の算定)
- 67. 売買目的有価証券を売却した場合、売却時点で付されている帳簿価額に基づき売却原価(ただし、直近の貸借対照表日に計上された売買目的有価証券に係る評価差額は、当期において、切放処理により売却原価に含めることもできる。)を算定し、当該売却原価と売却価額との差額を当期の売却損益として処理する。
- なお、同一銘柄の有価証券を売買目的有価証券の区分とその他有価証券の区分とで保有している場合に、当該有価証券の一部を売却したときは、これらが組織上、明確に分別管理されていなければ、まず売買目的有価証券を売却したものと推定する。
満期保有目的の債券
満期保有目的の債券の定義
- 68. 債券は、国、地方公共団体、事業会社その他の法人が、不特定多数又は特定の投資家から資金を借り入れるために発行する有価証券であり、その発行者が所有者に対して償還する義務を負う負債証券である。ここでいう債券には、国債、地方債、社債、転換社債型新株予約権付社債(2001年改正旧商法施行前の決議に基づき発行された転換社債と経済的実質が同一であると考えられるものをいい、会社法によるものは企業会計基準適用指針第17号「払込資本を増加させる可能性のある部分を含む複合金融商品に関する会計処理」(以下「適用指針第17号」という。)第3項、及び旧商法によるものは実務対応報告第1号「旧商法による新株予約権及び新株予約権付社債の会計処理に関する実務上の取扱い」(以下「実務対応報告第1号」という。)Q2 A2 (2)。以下同じ。)、転換社債型新株予約権付社債以外の新株予約権付社債(会社法によるものは適用指針第17号第21項、及び旧商法によるものは実務対応報告第1号Q2 A2 (2))、コマーシャル・ペーパー、その他債務が証券化されたもの、一定額で償還される株式(償還株式)などが含まれる。償還株式は厳密には債券ではないが、一定額で償還されるという債券との類似性に着目してその範囲に含めるものとする。なお、一定額で償還されない償還株式は持分証券(株式)として取り扱う。
- 債券を満期保有目的の債券に分類するためには、あらかじめ償還日が定められており、かつ、額面金額による償還が予定されていることを要する。したがって、債券であっても、その属性から満期保有目的の条件を満たさないものは、この区分に含めることはできない。
- 例えば、転換社債型新株予約権付社債は、債券の一種であるが、その性質上、満期まで保有するメリットが少なく、満期前に株式に転換することが期待されているため、基本的には満期保有目的にはなじまない。
- 前者の「あらかじめ償還日が定められた」という条件について、満期の定めのない永久債は、属性としては満期保有目的の条件を満たさない。ただし、償還する権利を発行者がコール・オプションとして有しているものについては、その契約条項等からみて、償還が実行される可能性が極めて高いと認められれば、満期保有目的の条件を満たすものといえる。
- その他、抽選償還が特約として付されている債券又は期前償還する権利を発行者がコール・オプションとして有している債券(いわゆるコーラブル債)も、満期到来前に償還される可能性があるとしても、満期保有目的の条件を損なうものではない。
- 後者の「額面金額による償還」という条件について、債券が属性として有する元本リスク(信用リスク、為替リスク等)は満期保有目的の条件を否定するものではない。しかしながら、例えば、償還時の平均株価等によって償還元本が増減することが約定された株価リンク債、償還時の為替相場によって償還元本が増減する為替リンク債等の仕組債については、そのスキーム上リスクが元本に及ぶものであるため、複合金融商品として組込デリバティブ部分を区分処理するとしても満期保有目的の条件を満たさない。
満期保有目的の債券の要件
- 69. 金融商品会計基準第16項の「満期まで所有する意図をもって保有する」とは、企業が償還期限まで所有するという積極的な意思とその能力に基づいて保有することをいう。保有期間が漠然と長期であると想定し保有期間をあらかじめ決めていない場合、又は市場金利や為替相場の変動等の将来の不確定要因の発生いかんによっては売却が予測される場合には、満期まで所有する意思があるとは認められない。また、満期までの資金繰り計画等から見て、又は法律等の障害により継続的な保有が困難と判断される場合には、満期まで所有する能力があるとは認められない。
- なお、満期まで所有する意図は取得時点において判断すべきものであり、いったん、他の保有目的で取得した債券について、その後保有目的を変更して満期保有目的の債券に振り替えることは認められない。
満期保有目的の債券の会計処理
(償却原価の算定)
- 70. 金融商品会計基準第16項では、満期保有目的の債券は、「債券を債券金額より低い価額又は高い価額で取得した場合において、取得価額と債券金額との差額の性格が金利の調整と認められるときは、償却原価法に基づいて算定された価額をもって貸借対照表価額としなければならない。」とされている。取得価額と債券金額との差額(以下「取得差額」という。)が発生する要因には、クーポンレートと取得時の市場利子率との調整に基づくものと債券の発行体の信用力の変動や減損及びその他の要因があるが、償却原価法の対象となるのは、取得差額が金利の調整部分(以下「金利調整差額」という。)により生じた場合に限定される。
- 償却原価法は、有価証券利息をその利息期間(受渡日から償還日まで)にわたって期間配分する方法であり、以下の利息法と定額法の2つの方法がある。原則として利息法によるものとするが、継続適用を条件として、簡便法である定額法を採用することができる[設例4]。
- (1) 利息法とは、債券のクーポン受取総額と金利調整差額の合計額を債券の帳簿価額に対し一定率(以下「実効利子率」という。)となるように、複利をもって各期の純損益に配分する方法をいい、当該配分額とクーポン計上額(クーポンの現金受取額及びその既経過分の未収計上額の増減額の合計額)との差額を帳簿価額に加減する。
- (2) 定額法とは、債券の金利調整差額を取得日(又は受渡日)から償還日までの期間で除して各期の純損益に配分する方法をいい、当該配分額を帳簿価額に加減する。
(売却原価の算定)
- 71. 第83項のただし書きに該当する事由により、満期保有目的の債券を償還期限前に売却した場合は、売却価額と売却時の償却原価との差額を当期の売却損益に計上する。この場合、償却原価法として利息法を採用しているときの売却原価の算定は先入先出法による。
- なお、抽選償還又は発行者のコール・オプションの行使により期限前償還が行われた場合の償還時の償却原価と償還額との差額は、原則として、償還された期の有価証券利息に含める。
その他有価証券
その他有価証券の定義
- 72. その他有価証券は、売買目的有価証券、満期保有目的の債券、子会社株式及び関連会社株式以外の有価証券をいう。その中には、長期的な時価の変動により利益を得ることを目的として保有する有価証券や業務提携等の目的で保有する有価証券が含まれることになるから、その他有価証券は長期的には売却することが想定される有価証券である。
その他有価証券の会計処理
(評価差額の処理)
- 73. 金融商品会計基準第18項では、その他有価証券は、「時価をもって貸借対照表価額とし、評価差額は洗い替え方式に基づき、次のいずれかの方法により処理する。」とされている。なお、評価差額を算出する上で時価と比較される取得原価には、時価が著しく下落したときに帳簿価額を時価まで評価替えした当該評価額が含まれる。
- ① 評価差額(評価差益及び評価差損)の合計額を純資産の部に計上する全部純資産直入法
- ② 時価が取得原価を上回る銘柄に係る評価差額(評価差益)は純資産の部に計上し、時価が取得原価を下回る銘柄に係る評価差額(評価差損)は当期の損失として処理する部分純資産直入法
- 原則として、全部純資産直入法を適用するが、継続適用を条件として部分純資産直入法を適用することもできる。また、株式、債券等の有価証券の種類ごとに両方法を区分して適用することも認められる。
- なお、資産の評価替えにより生じた評価差額が直接純資産の部に計上され、かつ、課税所得の計算に含まれていない場合、当該評価差額の対象となった有価証券の簿価修正額は税効果会計上の一時差異に該当し(税効果会計に係る会計基準(第二 一 2 (1) ②))、純資産の部に計上される評価差額は税効果額を評価差額から控除した純額とされている(同第二 二 3)。この場合、評価差額から税効果額(評価差益に係るものは繰延税金負債に、評価差損に係るものは繰延税金資産に計上する。)を控除した後の金額(全部純資産直入法を適用している場合には、評価差益部分と評価差損部分の純額)は、その他有価証券評価差額金として記載する。その他、評価差額に係る税効果会計の適用にあたっては、税効果会計に係る会計基準、企業会計基準適用指針第26号「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」及び企業会計基準適用指針第28号「税効果会計に係る会計基準の適用指針」(以下「税効果適用指針」という。)を参照する必要がある[設例5]。さらに、資産の評価替えにより生じた評価差額が直接純資産の部に計上され、かつ、課税所得の計算に含まれている場合(過年度に課税された場合を含む。)には、純資産の部に計上される評価差額について企業会計基準第27号「法人税、住民税及び事業税等に関する会計基準」(以下「法人税等会計基準」という。)を参照し、評価差額から当該法人税、住民税及び事業税等を控除した後の金額で記載する。
- また、連結財務諸表においては、純資産の部に計上される評価差額の当期変動額をその他の包括利益として、企業会計基準第25号「包括利益の表示に関する会計基準」(以下「包括利益会計基準」という。)に従い、連結包括利益計算書又は連結損益及び包括利益計算書(以下「連結包括利益計算書等」という。)に表示する必要がある。
(償却原価法の適用)
- 74. その他有価証券のうち、取得差額が金利調整差額と認められる債券にまず償却原価法を適用し、取得原価と償却原価との差額を有価証券利息の修正として処理する。その上で、時価のある債券については、償却原価と時価との差額を評価差額として処理する[設例6]。
- なお、時価が未収利息を反映して算定されている債券に関しては、当該時価評価額から未収利息として計上された金額を控除した後の時価を基礎にして、評価差額を算定する。
(市場価格の適用)
- 75. 削 除
(売却原価の算定)
- 76. その他有価証券の評価差額は洗替方式により処理される(金融商品会計基準第18項)ため、それを売却した場合には、売却前の取得原価又は償却原価に移動平均法、先入先出法等を適用して算定した売却原価と売却価額との差額を当期の売却損益として処理する。
有価証券の消費貸借契約等の会計処理
- 77. 有価証券の消費貸借契約等は、借手に売却又は担保という方法で自由に処分できる権利を与え、貸手に貸し付けた有価証券の使用を拘束するから、貸手は有価証券を貸し付けている旨及び貸借対照表価額を注記する。なお、当該有価証券については、貸し付ける直前の有価証券の保有目的区分に従った評価及び会計処理を継続する。
- 借手は、借り入れた有価証券を売却又は担保という方法で自由に処分できる権利を有するから、売却により受入処理を行ったものを除き、自己保有部分と担保差入部分とに区分し、その旨及び貸借対照表日の時価を注記する。なお、借手が売却した場合、保管有価証券(有価証券の発生要件を満たすため取得として認識したものを含む。以下同じ。)の発生と同時に消滅の認識を行う。
- 債券に係る消費貸借契約等で、返済条件が償還日に額面に相当する額を現金をもって返済するとされているときには、貸手は債券の消滅の認識を行うため、借手は債券の取得を認識して時価で計上するとともに、現金による返済義務を当該時価で未払計上する。この結果生じる、受け入れた債券の取得時の時価と額面との差額については、償却原価法により、債券の取得日から償還日に至るまで毎期一定の方法で償却する(第126項参照)。
- 借手は、再借手に売却又は担保という方法で自由に処分できる権利を付与する債券の貸付けを行った場合、貸し付けている旨及び貸借対照表価額を注記により開示する。
- 借手が、借り入れた有価証券を、空売りした有価証券の引渡しに充当する場合は、それを資産として認識し、同時に返還義務を時価で負債として認識した上で、充当時における借り入れた有価証券の時価額を売付有価証券の帳簿価額と相殺し、差額を当期の純損益に計上する[設例7]。
有価証券の信託
- 78. 有価証券の信託は、保有する有価証券を信託財産として、その「管理」、「運用」又は「処分」を委託するものであるが、当該信託を構成する有価証券は、自己で保有していたときと同一の保有目的区分に分類し、それに従って評価及び会計処理を行う。ただし、有価証券の信託時に保有目的区分を変更した場合には、本実務指針の第80項から第89項までの有価証券の保有目的区分の変更に係る取扱いに準拠しなければならない。
- なお、有価証券を購入と同時に信託した場合には、その時点で保有目的区分を決定し、それに従った評価及び会計処理を行う。
売却原価の算定区分
- 79. 同一銘柄の有価証券を異なる保有目的区分に分類した場合、売却原価の算定は、これを通算しないで保有目的区分ごとに行う。
- なお、同一銘柄の有価証券のうち、自己で保有している有価証券(貸付有価証券として注記されているものを含む。)及び有価証券の信託で保有している有価証券を同一の保有目的区分に分類した場合には、これらを通算(簿価通算)して売却原価を算定する。
有価証券の保有目的区分の変更
有価証券の保有目的区分の変更理由
- 80. 有価証券の保有目的区分は、正当な理由がなく変更することはできない。保有目的区分の変更が認められるのは、以下の場合に限られる。
- ① 資金運用方針の変更又は特定の状況の発生に伴って、保有目的区分を変更する場合
- ② 本実務指針により、保有目的区分の変更があったとみなされる場合
- ③ 株式の追加取得又は売却により持分比率等が変動したことに伴い、子会社株式又は関連会社株式区分から他の保有目的区分に又はその逆の保有目的区分に変更する場合
- ④ 法令又は基準等の改正又は適用により、保有目的区分を変更する場合
有価証券の保有目的区分等変更時の評価及び会計処理
(保有目的区分等の変更時期)
- 81. 有価証券の保有目的区分を変更して振替を行う場合のうち本実務指針第87項から第89項については、期中に変更の決定が行われ又は変更すべき事実の発生があったとしても、変更が期首(直前期中決算日、第二種中間連結財務諸表及び第二種中間財務諸表を作成する場合の直前中間決算日又は直前のその他の適切に決算が行われた日の翌日を含む。)になされたものとみなして、振替の処理を行うことができる。部分純資産直入法から全部純資産直入法への変更又は全部純資産直入法から部分純資産直入法への変更は、同一の保有目的区分における評価差額に係る会計処理方法の変更であり、会計方針の変更に該当するため、企業会計基準第24号「会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」(以下「企業会計基準第24号」という。)に従って会計処理を行う。
(売買目的有価証券又はその他有価証券から満期保有目的の債券への振替)
- 82. 満期保有目的の債券への分類はその取得当初の意図に基づくものであるので、取得後の満期保有目的の債券への振替は認められない。
(満期保有目的の債券から売買目的有価証券又はその他有価証券への振替)
- 83. 満期保有目的の債券に分類された債券について、その一部を売買目的有価証券又はその他有価証券に振り替えたり、償還期限前に売却を行った場合は、満期保有目的の債券に分類された残りのすべての債券について、保有目的の変更があったものとして売買目的有価証券又はその他有価証券に振り替えなければならない。さらに、保有目的の変更を行った事業年度を含む2事業年度においては、取得した債券を満期保有目的の債券に分類することはできないものとする。
- ただし、一部の債券について、以下のような状況が生じた場合又は生じると合理的に見込まれる場合には、当該債券を保有し続けることによる損失又は不利益を回避するため、一部の満期保有目的の債券を他の保有目的区分に振り替えたり、償還期限前に売却しても、残りの満期保有目的の債券について、満期まで保有する意思を変更したものとはしない。したがって、これらの債券を売買目的有価証券又はその他有価証券へ振り替える必要はない。
- ① 債券の発行者の信用状態の著しい悪化
- ② 税法上の優遇措置の廃止
- ③ 法令の改正又は規制の廃止
- ④ 監督官庁の規制・指導
- ⑤ 自己資本比率等を算定する上で使用するリスクウェイトの変更
- ⑥ その他、予期できなかった売却又は保有目的の変更をせざるを得ない、保有者に起因しない事象の発生
- 満期保有目的の債券を、担保差入れ、現先取引、レポ取引又は証券貸借取引の対象とした場合であっても、その契約期間が債券の償還期限と同じか又はそれより前となるとき及び返還される債券が実質的に同一であるときには、満期保有目的の区分を変更しない。
- 84. 満期保有目的の債券について、その保有目的が変更され、又はその一部を売却したため残りの銘柄の満期保有目的が否定されたことにより、保有目的区分を売買目的有価証券又はその他有価証券に変更するときは、変更時の償却原価をもって振り替える。
(売買目的有価証券からその他有価証券への振替)
- 85. 売買目的有価証券への分類はその取得当初の意図に基づいて行われるものであるから、取得後におけるその他有価証券への振替は認められない。ただし、資金運用方針の変更又は法令若しくは基準等の改正若しくは適用に伴い、有価証券のトレーディング取引を行わないこととした場合には、すべての売買目的有価証券をその他有価証券に振り替えることができる。この場合、振替時の時価をもって振り替え、評価差額は振替時の純損益に計上する[設例3]及び[設例8]。
(その他有価証券から売買目的有価証券への振替)
- 86. その他有価証券への分類はその取得当初の意図に基づいて行われるものであるから、取得後における売買目的有価証券への振替は認められない。ただし、資金運用方針の変更又は法令若しくは基準等の改正若しくは適用により有価証券のトレーディング取引を開始することとした場合、又は有価証券の売買を頻繁に繰り返したことが客観的に認められる場合には、売買目的有価証券への振替を行わなければならない。この場合、振替時の時価をもって売買目的有価証券に振り替え、振替時の評価差額は、その他有価証券の評価差額について採用していた会計処理方法にかかわらず、振替時の純損益に計上する[設例8]。
(売買目的有価証券から子会社株式又は関連会社株式への振替)
- 87. 株式の追加取得により持分比率が増加し、子会社株式又は関連会社株式に該当することとなった場合には、その該当することとなった日の時価で振り替える。この場合、振替時の評価差額は、振替時の純損益に計上する[設例8]。
(その他有価証券から子会社株式又は関連会社株式への振替)
- 88. 株式の追加取得により持分比率が増加し、その他有価証券が子会社株式又は関連会社株式に該当することとなった場合には、帳簿価額で振り替える。ただし、その他有価証券の評価差額の会計処理として部分純資産直入法を採用しており、当該有価証券について評価差損を計上している場合には、時価による評価後の価額で振り替える[設例8]。
(子会社株式又は関連会社株式から売買目的有価証券又はその他有価証券への振替)
- 89. 子会社株式又は関連会社株式の売却により持分比率が減少し、子会社株式又は関連会社株式に該当しなくなった場合には、帳簿価額をもって変更後の区分に振り替える。なお、子会社又は関連会社を結合企業とする企業結合により自己の持分比率が減少し、結合後企業が子会社又は関連会社以外となる場合における子会社株式又は関連会社株式からその他有価証券への振替の会計処理は、企業会計基準適用指針第10号「企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針」第288項又は第290項を適用して行う。
(その他有価証券に係る評価差額処理方法の変更)
- 90. 削 除
有価証券の減損処理
時価のある有価証券の減損処理
- 91. 売買目的有価証券以外の有価証券(子会社株式及び関連会社株式を含む。本実務指針第92項において同じ。)のうち時価のあるものについて時価が著しく下落したときは、回復する見込みがあると認められる場合を除き、当該時価をもって貸借対照表価額とし、評価差額を当期の損失として処理(以下「減損処理」という。)しなければならない(金融商品会計基準第20項)。なお、その他有価証券については、期末日の時価により帳簿価額を付け替えて取得原価を修正し、以後、当該修正後の取得原価と毎期末の時価とを比較して評価差額を算定することになる。
- 時価のある有価証券の時価が「著しく下落した」ときとは、必ずしも数値化できるものではないが、個々の銘柄の有価証券の時価が取得原価に比べて50%程度以上下落した場合には「著しく下落した」ときに該当する。この場合には、合理的な反証がない限り、時価が取得原価まで回復する見込みがあるとは認められないため、減損処理を行わなければならない。
- 上記以外の場合には、状況に応じ個々の企業において時価が「著しく下落した」と判断するための合理的な基準を設け、当該基準に基づき回復可能性の判定の対象とするかどうかを判断する。
- なお、個々の銘柄の有価証券の時価の下落率がおおむね30%未満の場合には、一般的には「著しく下落した」ときに該当しないものと考えられる。
- 時価の下落について「回復する見込みがある」と認められるときとは、株式の場合、時価の下落が一時的なものであり、期末日後おおむね1年以内に時価が取得原価にほぼ近い水準にまで回復する見込みのあることを合理的な根拠をもって予測できる場合をいう。この場合の合理的な根拠は、個別銘柄ごとに、株式の取得時点、期末日及び期末日後における市場価格の推移及び市場環境の動向、最高値・最安値と購入価格との乖離状況、発行会社の業況等の推移等、時価下落の内的・外的要因を総合的に勘案して検討することが必要である。ただし、株式の時価が過去2年間にわたり著しく下落した状態にある場合や、株式の発行会社が債務超過の状態にある場合又は2期連続で損失を計上しており、翌期もそのように予想される場合には、通常は回復する見込みがあるとは認められない。他方、債券の場合は、単に一般市場金利の大幅な上昇によって時価が著しく下落した場合であっても、いずれ時価の下落が解消すると見込まれるときは、回復する可能性があるものと認められるが、格付けの著しい低下があった場合や、債券の発行会社が債務超過や連続して赤字決算の状態にある場合など、信用リスクの増大に起因して時価が著しく下落した場合には、通常は回復する見込みがあるとは認められない。
- 上記の結果、回復する見込みがあると判断された銘柄以外の有価証券については、減損処理を行わなければならない[設例5]。
- また、その他有価証券について、「著しく下落した」ときを判断するにあたっての、時価が取得原価に比べ50%程度以上下落したかどうか、及び時価の下落率がおおむね30%未満であるかどうかの検討に際しては、期末前1か月の市場価格の平均に基づいて算定された価額を用いることを妨げない。この期末前1か月の市場価格の平均とは、原則として期末日以前1か月の各日の終値(終値がなければ気配値)の単純平均値とする。当該方法の適用は、株式、債券等の有価証券の種類ごとに行うことができるが、毎期継続して適用することが要件となる。
市場価格のない株式等の減損処理
- 92. 市場価格のない株式等は取得原価をもって貸借対照表価額とするとされている(金融商品会計基準第19項)が、当該株式の発行会社の財政状態の悪化により実質価額が著しく低下したときは、相当の減額を行い、評価差額は当期の損失として処理(減損処理)しなければならない(金融商品会計基準第21項)。
- 財政状態とは、一般に公正妥当と認められる会計基準に準拠して作成した財務諸表を基礎に、原則として資産等の時価評価に基づく評価差額等を加味して算定した1株当たりの純資産額をいい、財政状態の悪化とは、この1株当たりの純資産額が、当該株式を取得したときのそれと比較して相当程度下回っている場合をいう。なお、この際に基礎とする財務諸表は、決算日までに入手し得る直近のものを使用し、その後の状況で財政状態に重要な影響を及ぼす事項が判明していればその事項も加味する。通常は、この1株当たりの純資産額に所有株式数を乗じた金額が当該株式の実質価額であるが、会社の超過収益力や経営権等を反映して、1株当たりの純資産額を基礎とした金額に比べて相当高い価額が実質価額として評価される場合もある。
- また、市場価格のない株式等の実質価額が「著しく低下したとき」とは、少なくとも株式の実質価額が取得原価に比べて50%程度以上低下した場合をいう。ただし、市場価格のない株式等の実質価額について、回復可能性が十分な証拠によって裏付けられる場合には、期末において相当の減額をしないことも認められる。
時価を把握することが極めて困難と認められる(市場価格がなく、かつ、時価を合理的に算定できない)債券の評価及び会計処理
- 93. 削 除
有価証券の未収配当金・利息等
- 94. その他利益剰余金の処分による株式配当金(配当財産が金銭である場合に限る。)は、原則として次のように会計処理する。
- (1) 市場価格のある株式については、各銘柄の配当落ち日(配当権利付き最終売買日の翌日)をもって、前回の配当実績又は公表されている1株当たり予想配当額に基づいて未収配当金を見積計上する。その後、配当金の見積計上額と実際配当額とに差異があることが判明した場合には、判明した事業年度に当該差異を修正する。ただし、配当金は、(2)の市場価格のない株式と同様の処理によることも、継続適用を条件として認められる。
- (2) 市場価格のない株式については、発行会社の株主総会、取締役会又はその他決定権限を有する機関において行われた配当金に関する決議の効力が発生した日の属する事業年度に計上する。ただし、決議の効力が発生した日の後、通常要する期間内に支払を受けるものであれば、その支払を受けた日の属する事業年度に認識することも、継続適用を条件として認められる。
- 95. 債券利息は、その利息計算期間(約定日からではなく、受渡日から起算される。)に応じて算定し、当該事業年度に属する利息額を計上する。したがって、期末日に利払日が到来していない分に対応する当期の利息額は、未収利息として計上しなければならない。なお、債権の未収利息の不計上の判定と処理に係る取扱い(第119項参照)は、債券の未収利息についても適用する。
- 96. 投資信託の収益分配金は、次のように会計処理する。
- (1) 追加型投資信託のうち(2)に該当する場合を除き、その収益に係る計算期間が終了する日の属する事業年度に計上する。ただし、その支払を受けた日の属する事業年度に計上することも、継続適用を条件として認められる。
- (2) 追加型投資信託のうち、購入後短期間に計算期間の末日が到来するものについて、収益分配金のうち払込資金からの払戻しに相当するものとして区分されている場合、又は区分されていなくてもそのほとんどが払込資金からの払戻しと認められる場合には、払込資金の払戻相当額については当該投資信託の取得原価を減額処理する。
金銭の信託
金銭の信託の範囲と構成物の処理
金銭の信託の保有目的区分
- 97. 金銭の信託は金銭を財産として委託する信託であり、運用を目的とする金銭の信託は信託財産の短期的な売買等で信託財産の価値を上昇させ、受益者に帰属させるものである。金銭の信託(合同運用を除く。以下同じ。)は、以下のように保有目的により運用目的、満期保有目的又はその他に区分することができるが、これらの判定と会計処理は信託契約の単位ごとに行うものとする。
- 金銭の信託は一般に運用を目的とするものと考えられ、運用目的以外の目的とするためには、それが客観的に判断できることが必要である。したがって、金銭の信託を満期保有目的に区分し、信託財産構成物である債券を満期保有目的の債券として会計処理するためには、信託契約において、原則として受託者に財産の売却を禁止しており、かつ、信託期日と債券の償還期限とが一致していることなどが明確である必要がある。
- また、信託財産構成物である有価証券をその他有価証券として区分するためには、信託契約時において、企業が当該信託を通じて有価証券等を保有する目的が、運用目的又は満期保有目的のいずれにも該当しないという積極的な証拠によって裏付けられ、かつ、信託財産構成物である有価証券の売買を頻繁に繰り返していないという事実に基づかなければならない。
金銭の信託の会計処理
- 98. 信託財産構成物は、本実務指針に従って評価及び会計処理を行ったとした場合の評価額を付し、それらの合計額をもって信託契約に係る貸借対照表価額とする。運用を目的とする信託財産構成物である有価証券は、売買目的有価証券とみなして評価及び会計処理を行う。したがって、運用を目的とする信託財産構成物の評価差額は当期の純損益として処理する。
- なお、信託財産構成物の取得原価は、企業の保有する同一資産から簿価分離された取得原価に基づき、信託契約ごとに算出する。
- また、金銭の信託の計算期間にかかわらず、原則として、企業の各事業年度に属する純損益を、本実務指針に従い当該事業年度に計上しなければならない[設例9]。
信託財産の受入れ
- 99. 金銭の信託の終了時等に信託財産構成物である有価証券を現状のまま受け入れるときの受入価額は、受入時点において受入構成物に付されている帳簿価額とする。ただし、受入時点において保有目的区分を変更する場合には、本実務指針第80項から第89項までの有価証券の保有目的区分の変更に係る取扱いに準じて取り扱うこととする。
金融資産の信託受益権の保有者の会計
- 100. 金融資産の信託受益権(金銭の信託及び有価証券の信託を除く。)の保有者は、信託受益権を次のとおり評価する。
- (1) 信託受益権が質的に単一の場合には、信託財産構成物を受益者が持分に応じて直接保有するのと同様の評価を行う。ただし、信託受益権の保有者が多数で、信託財産を持分に応じて直接保有するのと同様の評価を行うことが困難な場合には、(2)のように信託を実体のある事業体とした評価を行うことができる。
- (2) 信託受益権が優先劣後等のように質的に分割されており、信託受益権の保有者が複数である場合には、信託を一種の事業体とみなして、当該受益権を信託に対する金銭債権(貸付金等)の取得又は信託からの有価証券(債券、株式等)の購入とみなして取り扱う。ただし、企業が信託財産構成物である金融資産の委託者である場合で、かつ、信託財産構成物が委託者たる譲渡人にとって金融資産の消滅の認識要件を満たす場合には、譲渡人の保有する信託受益権は新たな金融資産ではなく、譲渡金融資産の残存部分として評価する。
デリバティブ取引
上場デリバティブ取引の時価評価
- 101. 削 除
非上場デリバティブ取引の時価評価
時価評価の方法
- 102. 削 除
時価評価における留意事項
- 103. 削 除
公正な評価額を算定することが極めて困難と認められるデリバティブ取引の会計処理
- 104. 削 除
債 権
債務者の信用リスクを反映した債権の取得価額と償却原価法
- 105. 債権の支払日までの金利を反映して債権金額と異なる価額で債権を取得した場合には、取得時に取得価額で貸借対照表に計上し、取得価額と債権金額との差額(以下「取得差額」という。)について償却原価法に基づき処理を行う。この場合、将来キャッシュ・フローの現在価値が取得価額に一致するような割引率(実効利子率)に基づいて、債務者からの入金額を元本の回収と受取利息とに区分する。償却原価法の適用については利息法によることを原則とするが、契約上、元利の支払が弁済期限に一括して行われる場合又は規則的に行われることとなっている場合には、定額法によることができる。
- なお、債権の取得価額が、債務者の信用リスクを反映して債権金額より低くなっている場合には、信用リスクによる価値の低下を加味して将来キャッシュ・フローを合理的に見積った上で償却原価法を適用する[設例11]。
債権の区分
債権区分の原則法
- 106. 金融商品会計基準第27項では、貸倒見積高の算定に当たり、債務者の財政状態及び経営成績等に応じて、債権(未収利息を含む。以下同じ。)を一般債権、貸倒懸念債権、破産更生債権等の3つに区分することとしている。この区分において、銀行等金融機関の資産の自己査定における債権区分とある程度整合性をもたせることは合理的であるが、一般事業会社がすべての取引先の財務状況を把握することは困難であるため債権区分を厳密に行うことは難しく、また、その必要度が低い場合も多いことから、必ずしも厳密な対応関係をもたせる必要はない。ただし、銀行等金融機関の関係会社でなくても、貸金業(一般事業会社の連結又は持分法適用の子会社又は関連会社を含む。)においては、銀行等金融機関に準じた債権管理が要求されるため、ある程度厳密な債権区分を行わなければならない。
債権区分の簡便法
- 107. 一般事業会社においては、すべての債務者について、業況の把握及び財務内容に関する情報の入手を行うことは困難であることが多い。この場合、原則的な区分方法に代えて、例えば、債権の計上月(売掛金等の場合)又は弁済期限(貸付金等の場合)からの経過期間に応じて債権区分を行うなどの簡便な方法も認められる。
関係会社債権の区分
- 108. 一般事業会社の連結子会社並びに持分法適用の子会社及び関連会社については、まず当該会社が保有する債権を第106項の分類に基づき区分して本実務指針に基づく貸倒見積高の算定をした上で、債務者の財務状況の把握と債務弁済能力の検討を行い、当該子会社又は関連会社に対する債権の区分の判定を行う。
一般債権
一般債権の定義
- 109. 一般債権とは、経営状態に重大な問題が生じていない債務者に対する債権をいう(金融商品会計基準第27項(1))。
- 具体的には、貸倒懸念債権及び破産更生債権等以外の債権として区分されることとなる。なお、重要な債務者については、債務の弁済について問題となる兆候が見られる場合はもちろん、それ以外の場合でも一定期間ごとに業況及び財務内容を調査した上で、債務弁済能力を検討することが必要である。
一般債権の貸倒見積高の算定
(貸倒実績率法)
- 110. 金融商品会計基準第28項(1)では、一般債権について、債権全体又は同種・同類の債権ごとに、債権の状況に応じて求めた過去の貸倒実績率等合理的な基準により貸倒見積高を算定することとしている(以下「貸倒実績率法」という。)。
- 債権を同種・同類の債権に区分する場合、同種とは売掛金・受取手形・貸付金・未収金等の別における同一のものをいい、また、同類とは同種よりもより大きな区分、すなわち、営業債権と営業外債権の別における同一のもののほか、短期と長期の期間別区分をいう。
- 債権の状況に応じて求めた過去の貸倒実績率とは、一般債権においても個々の債権が有する信用リスクの程度には差があるため、与信管理目的で債務者の財政状態・経営成績等に基づいて債権の信用リスクのランク付け(内部格付け)が行われている場合に、当該信用リスクのランクごとに区分して過去の実績から算出した貸倒実績率をいう。
- 貸倒実績率は、ある期における債権残高を分母とし、翌期以降における貸倒損失額を分子として算定するが、貸倒損失の過去のデータから貸倒実績率を算定する期間(以下「算定期間」という。)は、一般には、債権の平均回収期間が妥当である。ただし、当該期間が1年を下回る場合には、1年とする。なお、当期末に保有する債権について適用する貸倒実績率を算定するにあたっては、当期を最終年度とする算定期間を含むそれ以前の2~3算定期間に係る貸倒実績率の平均値による[設例12]。
(その他の方法)
- 111. 企業の保有する一般債権の信用リスクが毎期同程度であれば、将来発生する損失の見積りにあたって過去の貸倒実績率を用いることが最も適切であるが、期末日現在に保有する債権の信用リスクが、企業の債権に影響を与える外部環境等の変化により、過去に有していた債権の信用リスクと著しく異なる場合には、過去の貸倒実績率を補正することが必要である。
- また、企業が新規業態に進出した場合等、過去の貸倒実績率を用いることができない場合又は適切でない場合には、同業他社の引当率や経営上用いている合理的な貸倒見積高を採用することが必要となることもある。
貸倒懸念債権
貸倒懸念債権の定義
- 112. 貸倒懸念債権とは、経営破綻の状況には至っていないが、債務の弁済に重大な問題が生じているか又は生じる可能性の高い債務者に対する債権をいう(金融商品会計基準第27項(2))。
- 債務の弁済に重大な問題が生じているとは、現に債務の弁済がおおむね1年以上延滞している場合のほか、弁済期間の延長又は弁済の一時棚上げ及び元金又は利息の一部を免除するなど債務者に対し弁済条件の大幅な緩和を行っている場合が含まれる。
- 債務の弁済に重大な問題が生じる可能性が高いとは、業況が低調ないし不安定、又は財務内容に問題があり、過去の経営成績又は経営改善計画の実現可能性を考慮しても債務の一部を条件どおりに弁済できない可能性の高いことをいう。財務内容に問題があるとは、現に債務超過である場合のみならず、債務者が有する債権の回収可能性や資産の含み損を考慮すると実質的に債務超過の状態に陥っている状況を含む。
貸倒懸念債権の貸倒見積高の算定
(貸倒見積高の算定方法の概要)
- 113. 貸倒懸念債権については、債権の状況に応じて、次のいずれかの方法により貸倒見積高を算定することとされている(金融商品会計基準第28項(2))。
- (1) 担保又は保証が付されている債権について、債権額から担保の処分見込額及び保証による回収見込額を減額し、その残額について債務者の財政状態及び経営成績を考慮して貸倒見積高を算定する方法(以下「財務内容評価法」という。)
- (2) 債権の元本の回収及び利息の受取に係るキャッシュ・フローを合理的に見積ることができる債権について、債権の発生又は取得当初における将来キャッシュ・フローと債権の帳簿価額との差額が一定率となるような割引率を算出し、債権の元本及び利息について、元本の回収及び利息の受取が見込まれるときから当期末までの期間にわたり、債権の発生又は取得当初の割引率で割り引いた現在価値の総額と債権の帳簿価額との差額を貸倒見積高とする方法(以下「キャッシュ・フロー見積法」という。)
(財務内容評価法)
- 114. 財務内容評価法を採用する場合には、債務者の支払能力を総合的に判断する必要がある。債務者の支払能力は、債務者の経営状態、債務超過の程度、延滞の期間、事業活動の状況、銀行等金融機関及び親会社の支援状況、再建計画の実現可能性、今後の収益及び資金繰りの見通し、その他債権回収に関係のある一切の定量的・定性的要因を考慮することにより判断される。一般事業会社においては、債務者の支払能力を判断する資料を入手することが困難な場合もあり、例えば、貸倒懸念債権と初めて認定した期には、担保の処分見込額及び保証による回収見込額を控除した残額の50%を引き当て、次年度以降において、毎期見直す等の簡便法を採用することも考えられる。ただし、個別に重要性の高い貸倒懸念債権については、可能な限り資料を入手し、評価時点における回収可能額の最善の見積りを行うことが必要である。
- 担保には、預金及び市場性のある有価証券など信用度、流通性の高い優良な担保をはじめ、不動産、財団等処分に時間を要するものまで様々あるが、担保の処分見込額を求めるにあたっては、合理的に算定した担保の時価に基づくとともに、当該担保の信用度、流通性及び時価の変動の可能性を考慮する必要がある。なお、簡便法として、担保の種類ごとに信用度、流通性及び時価の変動の可能性を考慮した一定割合の掛目を適用する方法が認められる。
- 保証による回収見込額を求めるにあたっては、保証人の資産状況等から保証人が保証能力を有しているか否かを判断するとともに、個人にあっては保証意思の確認、法人にあっては保証契約など保証履行の確実性について検討する必要がある。
- 担保の処分見込額及び保証による回収見込額については、定期的に担保の評価や保証人の資産状況等について見直しを行う必要がある。
- なお、清算配当等により回収が可能と認められる金額については、担保の処分見込額及び保証による回収見込額と同様に債権額から減額することができる。清算配当等により回収が可能と認められる金額とは、債務者の資産内容、他の債権者に対する担保の差入状況を正確に把握して当該債務者の清算貸借対照表を作成し、それに基づく清算配当等の合理的な見積りが可能である場合における、当該清算配当見積額をいう。
(キャッシュ・フロー見積法)
- 115. キャッシュ・フロー見積法を採用する場合に、債権の元利回収に係る契約上の将来キャッシュ・フローが予定どおり入金されないおそれがあるときは、支払条件の緩和が行われていれば、それに基づく将来キャッシュ・フローを用い、それが行われていなければ、回収可能性の判断に基づき入金可能な時期と金額を反映した将来キャッシュ・フローの見積りを行った上で、それを債権の発生当初の約定利子率又は取得当初の実効利子率で割り引く。
- 将来キャッシュ・フローの見積りは、少なくとも各期末に更新し、貸倒見積高を洗い替える。割引効果の時間の経過による実現分のうち貸倒見積高の減額分は、原則として、受取利息に含めて処理する。ただし、それを受取利息に含めないで貸倒引当金戻入額として営業費用又は営業外費用から控除するか営業外収益に計上することもできる[設例13]。
破産更生債権等
破産更生債権等の定義
- 116. 破産更生債権等とは、経営破綻又は実質的に経営破綻に陥っている債務者に対する債権をいう(金融商品会計基準第27項(3))。
- 経営破綻に陥っている債務者とは、法的、形式的な経営破綻の事実が発生している債務者をいい、例えば、破産、清算、会社整理、会社更生、民事再生、手形交換所における取引停止処分等の事由が生じている債務者である。
- 実質的に経営破綻に陥っている債務者とは、法的、形式的な経営破綻の事実は発生していないものの、深刻な経営難の状態にあり、再建の見通しがない状態にあると認められる債務者である。
破産更生債権等の貸倒見積高の算定
(財務内容評価法)
- 117. 金融商品会計基準第28項(3)では、破産更生債権等について、債権額から担保の処分見込額及び保証による回収見込額を減額し、その残額を貸倒見積高とすることとしている(財務内容評価法)。
- 清算配当等により回収が可能と認められる金額は、担保の処分見込額及び保証による回収見込額と同様に債権額から減額することができる。清算配当等により回収が可能と認められる金額とは、清算人等から清算配当等として通知を受けた金額のほか、債務者の資産内容、他の債権者に対する担保の差入状況を正確に把握して当該債務者の清算貸借対照表を作成し、それに基づく清算配当等の合理的な見積りが可能である場合における当該清算配当見積額を含む。
- なお、担保及び保証の取扱いについては、貸倒懸念債権における当該取扱いに準ずる。
劣後債権等
劣後債権等の残存部分に係る帳簿価額及び貸倒見積高の算定
- 118. 劣後債権、劣後受益権及び資産担保型証券等債権の内容が特殊なものは、特定の条件下において通常の債権を上回る高い信用リスクを生じるため、劣後債権等の債務者の財政状態及び経営成績にかかわらず、その発生し得る損失見積額に基づいて貸倒見積高を算定する。
- 例えば、保有する貸付金を消滅の認識要件を満たして特別目的会社に譲渡するとともに、その対価の一部として特別目的会社の発行する劣後債権を保有する場合、当該劣後債権は、貸付金の消滅時に譲渡人に残存する部分に該当し、他に新たに発生した資産又は負債がなければ、貸付金の譲渡に伴う入金額が譲渡金額となり、貸付金の消滅直前の帳簿価額を譲渡し消滅した部分の時価と劣後債権の時価の比率で按分した結果、譲渡部分に配分された金額が譲渡原価となる(第37項参照)。ただし、貸付金の帳簿価額は、貸付額から貸倒引当金を控除した後の金額である(第57項(4)参照)。
- 以上により帳簿価額を時価の比率で按分した結果、残存部分に配分された金額が劣後債権の帳簿価額となり、期末時に、残存部分について見積られた回収可能見込額が帳簿価額を下回った場合には、当該下回った額をもって劣後債権に対する貸倒見積高とする[設例14]。
債権の未収利息
不計上の判定と処理
- 119. 金融商品会計基準(注9)では、債務者から契約上の利払日を相当期間経過しても利息の支払を受けていない債権及び破産更生債権等については、既に計上されている未収利息を当期の損失として処理するとともに、それ以後の期間に係る利息を計上してはならないとしている。
- 未収利息を不計上とする延滞期間は、延滞の継続により未収利息の回収可能性が損なわれたと判断される程度の期間であり、一般には、債務者の状況等に応じて6か月から1年程度が妥当と考えられる。
- また、利息の支払を契約どおりに受けられないため利払日を延長したり、利息を元本に加算することとした場合にも、未収利息の回収可能性が高いと認められない限り、未収利息を不計上とする。
- 未収利息を不計上とした債権については、既に計上されている未収利息の残高を損失として処理しなければならない。この処理方法としては次のいずれかによる。
- (1) 原則法
当期に対応する利息は受取利息の計上を取り消し、前期以前に計上された部分については、貸倒損失の計上又は貸倒引当金の目的使用として処理する。 - (2) 簡便法
多数の債権を有し、継続的に未収利息不計上債権が発生することが避けられず、原則法を適用することが実務上困難な企業については、受取利息からの控除として処理することができる。
一部入金の処理
- 120. 未収利息を不計上とした債権について入金があった場合、入金額の全部又は一部について当該契約に基づく利息の支払であることが明確であれば、利息部分は利息の入金として処理し、そうでない部分は元本の入金として処理する。
再計上の要件
- 121. いったん未収利息を不計上とした債権は、実質的に元利の回収可能性が回復したと認められることとなった時点で、未収利息を計上する債権に戻す。具体的には、次のすべての条件を満たすことが必要である。
- ① 債権が一般債権に区分される条件を満たしていること。
- ② 債権が元利とも原契約の条件で延滞を解消していること。
したがって、元本又は利息の受取の条件を緩和したことにより延滞を形式的に解消しただけでは、この条件を満たしたことにはならない。ただし、債権元本の一部放棄等により貸倒損失を認識し、又は原契約を変更して金利を減免し、かつ、残債権が元利とも回収可能性に懸念のない状態になった場合には、それ以後に発生する利息を未収利息として計上する。
貸倒引当金の会計処理
貸倒見積高の引当方法
- 122. 債権の貸倒見積高を算出する方法には、個々の債権ごとに見積る方法(以下「個別引当法」という。)と債権をまとめて過去の貸倒実績率により見積る方法(以下「総括引当法」という。)とがあるが、貸倒引当金の繰入れ及び取崩しの処理は、引当の対象となった債権の区分ごとに行わなければならない。
直接減額による取崩し
- 123. 債権の回収可能性がほとんどないと判断された場合には、貸倒損失額を債権から直接減額して、当該貸倒損失額と当該債権に係る前期貸倒引当金残高のいずれか少ない金額まで貸倒引当金を取り崩し、当期貸倒損失額と相殺しなければならない。なお、この場合に、当該債権に係る前期末の貸倒引当金が当期貸倒損失額に不足する場合、当該不足額をそれぞれの債権の性格により原則として営業費用又は営業外費用に計上する。
直接減額後の回収
- 124. 貸倒見積高を債権から直接減額した後に、残存する帳簿価額を上回る回収があった場合には、原則として営業外収益として当該期間に認識する。
繰入額と取崩額の相殺表示
- 125. 当事業年度末における貸倒引当金のうち直接償却により債権額と相殺した後の不要となった残額があるときは、これを取り崩さなければならない。ただし、当該取崩額はこれを当期繰入額と相殺し、繰入額の方が多い場合にはその差額を繰入額算定の基礎となった対象債権の割合等合理的な按分基準によって営業費用(対象債権が営業上の取引に基づく債権である場合)又は営業外費用(対象債権が営業外の取引に基づく債権である場合)に計上するものとする。また、取崩額の方が大きい場合には、企業会計基準第24号第55項に従って、原則として営業費用又は営業外費用から控除するか営業外収益として当該期間に認識する。
金銭債務
- 126. 金融商品会計基準第26項では、支払手形、買掛金、借入金、社債その他の債務について、時価評価は行わないものとし、原則として、債務額をもって貸借対照表価額とするものとしている。ただし、負債に計上された社債等について、「社債を社債金額よりも低い価額又は高い価額で発行した場合など、収入に基づく金額と債務額とが異なる場合には、償却原価法に基づいて算定された価額をもって、貸借対照表価額としなければならない。」としている。すなわち、資産に計上された債券の処理方法である償却原価法の処理は、負債に計上された社債等にも適用される。
その他の金融資産及び金融負債
運用結果が元利に反映される社債等の会計処理
- 127. 元利が資産の運用実績に基づいて毎月増減し、配当・償還する社債等については、その保有目的により売買目的有価証券又はその他有価証券として処理する。
自由処分権を有する担保受入金融資産の会計処理
- 128. 融資等に関連し、貸手が金融資産を担保として受渡しを受け、売却又は再担保という方法で自由に処分できる権利を有する場合には、処分自由な担保受入金融資産について、その旨及び貸借対照表日の時価を注記する。また、借手(担保差入者)は、当該担保差入金融資産の使用を拘束されることとなるため、その旨及び貸借対照表価額を注記する。
- 担保受入者である貸手が、担保受入れ又はその約定をした担保受入金融資産を売却したときは、受渡日に(ただし、有価証券については、約定日基準又は修正受渡日基準のうち、認識基準として採用する基準により)、担保受入金融資産の時価での受入れと対応する返還義務の認識を行った上で、受入価額を売却原価に振り替える。また、貸手が、担保受入金融資産である有価証券を空売りした有価証券の引渡しに充当する場合は、上記と同様にいったん受入処理を行った上で、担保受入有価証券を売付有価証券と相殺し、差額を当期の純損益に計上する。
- なお、負債に計上した担保受入金融資産の返還義務は、毎期末、時価により評価し、差額を当該期間の純損益に計上する。
現先取引及び現金担保付債券貸借取引の会計処理
- 129. 現先取引及び現金担保付債券貸借取引は、金融取引(資金取引)として処理する。現先取引及び現金担保付債券貸借取引に関連して授受される有価証券は売却又は再担保可能であっても、有価証券の受入者はこれを貸借対照表に計上しない。ただし、受け入れた有価証券は一般に自由処分権を有するため、当該有価証券を売却して返還義務を貸借対照表に計上した場合を除き、担保受入金融資産として注記を行わなければならない[設例7]。
売上債権等に含まれる金利部分の会計処理
- 130. 売上債権(受取手形を含む。)等に重要な金利部分が含まれている場合、当該債権を取得したときにその時価(現在価値)で計上し、決済期日までの期間にわたって償却原価法(利息法又は定額法)により金利部分を各期の純損益に配分する[設例16]。
利息の支払時期又は支払額が不規則な貸付金、借入金、社債等の会計処理
- 131. 利息の支払時期又は支払額が不規則な貸付金、借入金、社債等については、第105項の取得した債権の処理に準じて、元本と利息の合計額の将来キャッシュ・フローの現在価値が取得価額又は調達価額に一致するような割引率(実効利子率)に基づいて、債務者からの入金額又は債権者への支払額を元本と利息とに区分する。
任意組合、匿名組合、パートナーシップ、リミテッド・パートナーシップ等への出資の会計処理
- 132. 本実務指針第134項に定める商品ファンドへの投資を除き、任意組合すなわち民法上の組合、匿名組合、パートナーシップ、及びリミテッド・パートナーシップ等(以下「組合等」という。)への出資については、原則として、組合等の財産の持分相当額を出資金(金融商品取引法第2条第2項により有価証券とみなされるものについては有価証券)として計上し、組合等の営業により獲得した純損益の持分相当額を当期の純損益として計上する。ただし、任意組合、パートナーシップに関し有限責任の特約がある場合にはその範囲で純損益を認識する。
- なお、組合等の構成資産が金融資産に該当する場合には金融商品会計基準に従って評価し、組合等への出資者の会計処理の基礎とする。例えば、組合の保有するその他有価証券の評価差額金に対する持分相当額は、その他有価証券評価差額金に計上されることになる。
- 132-2. 前項の定めにかかわらず、次の要件を満たす組合等への出資は、当該組合等の構成資産に含まれるすべての市場価格のない株式(出資者である企業の子会社株式及び関連会社株式を除く。)について時価をもって評価し、組合等への出資者の会計処理の基礎とすることができる。この場合、評価差額の持分相当額は純資産の部に計上する。
- (1) 組合等の運営者は出資された財産の運用を業としている者であること
- (2) 組合等の決算において、組合等の構成資産である市場価格のない株式について時価をもって評価していること
- 132-3. 前項の定めの適用にあたり、組合等への出資者である企業は、前項の定めを適用する組合等の選択に関する方針を定め、当該方針に基づき、組合等への出資時に前項の定めの適用対象かどうか決定する。前項の定めを適用することとした組合等への出資の会計処理は、出資後に取りやめることはできない。
- 132-4. 第132-2項の定めを適用する組合等の構成資産である市場価格のない株式については、市場価格のない株式等の減損処理に関する定め(第92項参照)に代わり、時価のある有価証券の減損処理に関する定め(第91項参照)に従って減損処理を行い、組合等への出資者の会計処理の基礎とする。
- 132-5. 本実務指針第132-2項の定めを適用する組合等への出資については、企業会計基準適用指針第31号「時価の算定に関する会計基準の適用指針」(以下「時価算定適用指針」という。)第24-16項で定める事項の注記に併せて、次の事項を注記する。なお、連結財務諸表において注記している場合には、個別財務諸表において記載することを要しない。
- (1) 本実務指針第132-2項の定めを適用している旨
- (2) 本実務指針第132-2項の定めを適用する組合等の選択に関する方針
- (3) 本実務指針第132-2項の定めを適用している組合等への出資の貸借対照表計上額の合計額
建設協力金等の差入預託保証金の会計処理
- 133. 削 除
商品ファンドの会計処理
- 134. 商品ファンドの設定形態には、信託型、匿名組合型、パートナーシップ型及び任意組合型があるが、投資家の運用目的は同一なので、商品ファンドへの投資について短期運用目的のものは売買目的有価証券として、中長期の運用目的のものはその他有価証券として会計処理する。また、他ファンド収益連動型についても同様の処理を行う。
- なお、商品ファンドの構成資産が金融資産に該当する場合には金融商品会計基準に従って評価し、商品ファンドの保有者における会計処理の基礎とする。
ゴルフ会員権等の会計処理
- 135. 施設利用権を化体した株式及び預託保証金であるゴルフ会員権等は、取得価額をもって計上する。それらに市場価格があるものについて著しい市場価格の下落が生じた場合、又は市場価格がないものについて当該株式の発行会社の財政状態が著しく悪化した場合には有価証券に準じて減損処理を行う。また、預託保証金の回収可能性に疑義が生じた場合には債権の評価勘定として貸倒引当金を設定する。
割引手形及び裏書譲渡手形の会計処理
- 136. 割引手形及び裏書譲渡手形については、原則として新たに生じた二次的責任である保証債務を時価評価して認識するとともに、割引による入金額又は裏書による決済額から保証債務の時価相当額を差し引いた譲渡金額から、譲渡原価である帳簿価額を差し引いた額を手形売却損益として処理する[設例16]。
- なお、金融機関による割引手形の会計処理は、別途定める。
債務保証契約及び保証料の授受に関する会計処理
- 137. 債務保証については、金融資産又は金融負債の消滅の認識の結果生じるものを除いて時価評価は行わず、監査・保証実務委員会実務指針第61号「債務保証及び保証類似行為の会計処理及び表示に関する監査上の取扱い」によって処理する。保証料は、受取保証料又は支払保証料として収益又は費用に計上し、期末には発生主義に基づき未収若しくは前受け又は未払若しくは前払を計上する。
- 金融商品会計基準により金融資産又は金融負債の消滅の認識の結果生じる保証債務は、発生時の時価をもって計上するが、その後の時価評価は行わず、本実務指針第45項に従って処理する。
クレジット・デリバティブ及びウェザー・デリバティブの会計処理
- 138. 削 除
当座貸越契約及び貸出コミットメントの開示方法並びにコミットメント・フィーの授受に関する会計処理
- 139. 当座貸越契約(これに準ずる契約を含む。)及び貸出コミットメントについて、貸手である金融機関等は、その旨及び極度額又は貸出コミットメントの額から借手の実行残高を差し引いた額を注記する。
- コミットメント・フィーは、期末には発生主義に基づき、当期に対応する部分を受取手数料又は支払手数料として収益又は費用に計上する。
相殺表示
- 140. 金融資産と金融負債は貸借対照表において総額で表示することを原則とするが、以下のすべての要件を満たす場合には相殺して表示できる。
- ① 同一の相手先に対する金銭債権と金銭債務であること。
- ② 相殺が法的に有効で、企業が相殺する能力を有すること。
- ③ 企業が相殺して決済する意思を有すること。
- ただし、同一相手先とのデリバティブ取引の時価評価による金融資産と金融負債については、法的に有効なマスターネッティング契約(1つの契約について債務不履行等の一括清算事由が生じた場合に、契約の対象となるすべての取引について、単一通貨の純額で決済することとする契約)を有する場合には、その適用範囲で相殺可能とする。
- 相殺表示に関する方針は、毎期継続して適用する。
ヘッジ会計
ヘッジ会計の適用要件
ヘッジ取引
- 141. ヘッジ取引には、相場変動を相殺するものとキャッシュ・フローを固定するものとがある。
- 相場変動を相殺するヘッジ取引は、ヘッジ対象が相場変動リスクにさらされており、かつ、ヘッジ対象の相場変動とヘッジ手段の相場変動との間に密接な経済的相関関係があり、ヘッジ手段がヘッジ対象の相場変動リスクを減少させる効果を持つものである。
- また、キャッシュ・フローを固定するヘッジ取引は、ヘッジ対象がキャッシュ・フロー変動リスクにさらされており、かつ、ヘッジ対象のキャッシュ・フロー変動とヘッジ手段のキャッシュ・フロー変動との間に密接な経済的相関関係があり、ヘッジ手段がヘッジ対象のキャッシュ・フローの変動リスクを減少させる効果を持つものである。
具体的要件
- 142. ヘッジ会計の適用にあたっては、金融商品会計基準に定めるヘッジ取引時の要件及びヘッジ取引時以降の要件を満たす必要がある。これらの要件の適用に際しては本実務指針第143項から第159項に示す指針による。
(ヘッジ取引開始時(事前テスト))
- 143. 企業はヘッジ取引開始時に、次の事項を正式な文書によって明確にしなければならない。
- (1) ヘッジ手段とヘッジ対象
企業は一般的に市場リスク、すなわち、事業活動に伴う為替変動、金利変動、価格変動のリスクにさらされている。ヘッジ会計を適用するためには、ヘッジ対象のリスクを明確にし、これらのリスクに対していかなるヘッジ手段を用いるかを明確にする必要がある。ヘッジ対象とヘッジ手段の対応関係として、具体的には、例えば、外貨建取引(金銭債権債務、有価証券、予定取引等)の為替変動リスクに対して為替予約取引、通貨オプション取引、通貨スワップ取引等を、株式の株価変動リスクに対して株式オプション等を、固定金利又は変動金利の借入金・貸付金、利付債券等の金利変動リスク(相場変動リスク又はキャッシュ・フロー変動リスク)に対して金利スワップ、金利オプション(キャップ及びフロアーを含む。)、金利先渡、金利先物等を、非鉄金属、食糧、食品、燃料等の商品価格変動リスクに対して国内外の商品取引所における商品先物取引・商品オプション取引等をヘッジ手段として用いることが考えられるので、これらの関係を正式な文書によって明確にしなければならない。なお、他に適当なヘッジ手段がない場合には、ヘッジ対象と異なる類型のデリバティブ取引をヘッジ手段として用いることもできる(金融商品会計基準第102項)。また、ヘッジ手段に関しては、その有効性について事前に予測しておく必要がある。 - (2) ヘッジ有効性の評価方法
ヘッジ有効性の評価方法が適切であるかどうかは、リスクの内容、ヘッジ対象及びヘッジ手段の性質に依存する。
企業は、ヘッジ開始時点で相場変動又はキャッシュ・フロー変動の相殺の有効性を評価する方法を明確にしなければならない。これには、本実務指針第171項に述べるオプションの時間的価値等の処理方法などが含まれる。企業は、ヘッジ期間を通して一貫して当初決めた有効性の評価方法を用いてそのヘッジ関係が高い有効性をもって相殺が行われていることを確認しなければならない。
個別ヘッジの場合はヘッジ対象とヘッジ手段が単純に一対一の関係にあるので、ヘッジ対象とヘッジ手段の相場変動又はキャッシュ・フロー変動を直接結び付けてヘッジ有効性を判定する。これに対し、ヘッジ対象が複数であり、相場変動又はキャッシュ・フロー変動をヘッジ手段と個別に関連付けることが困難な場合、本実務指針第152項の要件を満たすものに限り、ヘッジ手段をヘッジ対象と包括的に対応させる方法(包括ヘッジ)も採用できる。企業は個別ヘッジによるか包括ヘッジによるかを事前に明示しなければならない。
また、通常、同種のヘッジ関係には同様の有効性の評価方法を適用すべきであり、同種のヘッジ関係に異なる有効性の評価方法を用いるべきではない。 - 144. 金融商品会計基準第31項では、ヘッジ会計の適用要件の1つとして、ヘッジ取引時の要件(事前要件)を次のように定めている。
- ヘッジ取引時において、ヘッジ取引が企業のリスク管理方針に従ったものであることが、次のいずれかによって客観的に認められること。
- (1) 当該取引が企業のリスク管理方針に従ったものであることが、文書により確認できること。
- (2) 企業のリスク管理方針に関して明確な内部規定及び内部統制組織が存在し、当該取引がこれに従って処理されることが期待されること。
- 145. 前項(1)による確認は、企業が次のような比較的単純な形でヘッジ取引を行っている場合に可能である。
- ① 個々のヘッジ取引を行う際に、企業の所定の方針に従って適切な社内承認手続が行われ、それが文書化されている場合
- ② 特定の種類の取引については自動的に特定のデリバティブによるヘッジを行う方針が文書化されており、それに従ってヘッジ取引が行われている場合
- これに対し、多数のヘッジ取引を行っており、個別のヘッジ取引とリスク管理方針との関係を具体的に文書化することが困難な場合には、前項(2)のように、リスク管理に関する内部規定及び内部統制組織が適切に運用され、ヘッジ取引がそれに従って処理されていることが必要である。具体的には、ヘッジのためのデリバティブ取引を実行する部門とは分離されたリスク管理部門を設け、ヘッジ取引の実行を適切に管理するシステムが確立されている必要がある。
(ヘッジ取引時以降(事後テスト))
- 146. 企業は、指定したヘッジ関係について、ヘッジ取引時以降も継続してヘッジ指定期間中、高い有効性が保たれていることを確かめなければならない。すなわち、ヘッジ対象の相場変動又はキャッシュ・フロー変動とヘッジ手段の相場変動又はキャッシュ・フロー変動との間に高い相関関係があったかどうか(ヘッジ対象の相場変動又はキャッシュ・フロー変動がヘッジ手段によって高い水準で相殺されたかどうか)をテストしなければならない。
- 企業は、決算日には必ずヘッジ有効性の評価を行い、少なくとも6か月に一回程度、有効性の評価を行わなければならない。
- ヘッジ有効性の評価は、文書化されたリスク管理方針・管理方法と整合性が保たれていなければならない。
リスク管理方針文書の記載事項
- 147. リスク管理方針として、少なくとも、管理の対象とするリスクの種類と内容、ヘッジ方針、ヘッジ手段の有効性の検証方法等のリスク管理の基本的な枠組みを文書化し、企業の環境変化等に対応して見直しを行う必要がある。
- (1) ヘッジ方針においては、リスク・カテゴリー別のヘッジ比率、ヘッジ対象の識別方法、リスク・カテゴリー別のヘッジ手段の選択肢などを記載することが必要である。
- (2) ヘッジ手段の有効性の検証方法には、ヘッジ対象とするリスク・カテゴリーとの価格変動の相関関係の測定方法のほか、当該ヘッジ手段に十分な流動性が期待できるか否かの検討も含めることが望ましい。また、ヘッジの有効性テストの結果は、同一ヘッジ取引につきその後のヘッジに係る事前テストに反映しなければならない。
ヘッジ対象の識別
ヘッジ会計が適用されるヘッジ対象
- 148. 相場変動による損失の可能性がある資産又は負債(予定取引から生じると見込まれるものを含む。以下同じ。)で、当該資産又は負債に係る相場変動が評価に反映されていないか、又は評価に反映されてはいるが評価差額が純損益として処理されていないものは、原則として、相場変動を相殺するヘッジ対象となり得る。固定金利の借入金・貸付金は、市場金利の変動により時価の変動が生じ、その変動額が借入金・貸付金の評価に反映されないから、ヘッジ対象に該当する。
- 149. 資産又は負債に伴うキャッシュ・フローが変動するもの、例えば、変動利付の貸付金は、キャッシュ・フローを固定するヘッジ対象となり得る。
ヘッジ指定
- 150. ヘッジ対象は、ヘッジを行うに際して、リスクを有する資産又は負債等の中からヘッジを意図する期間にわたりヘッジ指定によって識別し、識別したヘッジ対象は当該ヘッジ手段と対応させる。ヘッジ指定は、ヘッジ取引日、識別したヘッジ対象とリスクの種類、選択したヘッジ手段、ヘッジ割合、ヘッジを意図する期間などが第145項に示すような形で確認できるものでなければならない。
- ヘッジ指定は、ヘッジ対象の金額の一定割合又はヘッジ対象の保有期間の一部の期間のみを対象として行うこともできる。
- 151. ヘッジ対象の識別は、資産又は負債等について取引単位で行うことが原則であるが、市場におけるヘッジ手段の最低取引単位が対象とする資産又は負債等の取引単位より大きい場合やヘッジ取引のコスト又は信用リスクを軽減しようとする場合に、企業内部の部門ごと又はその企業において、リスク(例えば、金利変動リスク)の共通する資産又は負債等をグルーピングした上で、ヘッジ対象を識別する方法(包括ヘッジ)もある。
包括ヘッジの要件
- 152. 金融商品会計基準(注11)にいう「個々の資産又は負債が共通の相場変動等による損失の可能性にさらされており、かつ、その相場変動等に対して同様に反応することが予想されるもの」とは、リスク要因(金利リスク、為替リスク等)が共通しており、かつ、リスクに対する反応が同一グループ内の個々の資産又は負債との間でほぼ一様であることを意味するものと解される。
- したがって、例えば、金利変動に伴う時価変動が生じることにおいては個々の資産又は負債が共通していても、満期日が著しく相違することなどにより、金利変動に伴う時価変動の割合が個々の資産又は負債との間で一様でないような場合には、金融商品会計基準(注11)の要件を満たさないので、包括ヘッジの対象として扱うことはできない。個々の資産又は負債の時価の変動割合又はキャッシュ・フローの変動割合が、ポートフォリオ全体の変動割合に対して、上下10%を目安にその範囲内にある場合には、個々の資産又は負債はリスクに対する反応がほぼ一様であるものとして取り扱う。
- 複数銘柄による株式ポートフォリオの時価変動を株価指数先物取引などでヘッジしようとする場合には、個々の銘柄の株価が株価指数先物価格と同様に反応するとはいえず、株式ポートフォリオは一般的に包括ヘッジの対象とはならない。
ヘッジ取引とヘッジ対象の紐付け
- 153. 識別したヘッジ対象とヘッジ手段はヘッジ取引時にヘッジ指定によって紐付けを行い、有効性評価とヘッジ損益の処理のためヘッジ会計の終了まで区分管理しなければならない。紐付けは、原則として、ヘッジ対象とヘッジ手段を直接対応させて行う。
- 154. 削 除
ヘッジ有効性の評価方法
ヘッジ有効性の評価方法の基本的考え方
(有効性の評価方法の一貫性)
- 155. 企業が当初決めた有効性の評価方法を変更した場合には、ヘッジ関係の指定の見直しを行い、新たにヘッジ会計の要件を満たすと判定されたヘッジ関係についてはその時点からヘッジ会計の適用を開始し、ヘッジ会計の要件を満たさなくなったものについては、第180項に従って処理しなければならない。
(有効性の判定基準)
- 156. ヘッジ有効性の判定は、原則としてヘッジ開始時から有効性判定時点までの期間において、ヘッジ対象の相場変動又はキャッシュ・フロー変動の累計とヘッジ手段の相場変動又はキャッシュ・フロー変動の累計とを比較し、両者の変動額等を基礎にして判断する。両者の変動額の比率がおおむね80%から125%までの範囲内にあれば、ヘッジ対象とヘッジ手段との間に高い相関関係があると認められる。オプション取引については、ヘッジ方針に従い、オプション価格の変動額とヘッジ対象の時価変動額を比較するか又はオプションの基礎商品の時価変動額とヘッジ対象の時価変動額を比較して判定を行う。
- 例えば、ヘッジ手段の損失額が80でヘッジ対象の利益額が100ならば、相殺は100分の80で80%と測定され、また、ヘッジ手段の利益額が100でヘッジ対象の損失額が80ならば、相殺は80分の100で125%と測定され、これらのヘッジ手段とヘッジ対象には高い相関関係がありヘッジは有効であるといえる[設例17]。
- なお、ヘッジ対象の相場変動又はキャッシュ・フロー変動の要因となるリスク要素(金利、為替、信用等)のうち特定の要素のみ(例えば、外貨建株式の為替リスクのみ)をヘッジすることを意図している場合において、変動額をリスク要素別に区分して把握できるときは、ヘッジの対象として意図されたリスク要素に起因する変動額に基づいて判定する。
- ヘッジ取引開始時に行ったヘッジ効果の事前確認の結果がヘッジ手段の高い有効性を示している限り、たとえ上記により算出した変動額の比率が高い相関関係を示していなくても、その原因が変動幅が小さいことによる一時的なものと認められるときは、ヘッジ会計の適用を継続することができる。
ヘッジ有効性の評価に係る具体的検討事項
(時間的価値等)
- 157. ヘッジの有効性の評価方法を明確化するにあたって、企業は、ヘッジ手段の損益すべてをその評価対象に含めるのか、又は時間的価値等(例えば、オプションの時間的価値、スポット価格と先物・先渡価格の差額等)を除いて評価するのかを各ヘッジ取引の特性に応じてあらかじめ決めなければならない。
(高い有効性があるとみなされる場合)
- 158. 一般的にヘッジ手段とヘッジ対象の資産・負債又は予定取引に関する重要な条件が同一である場合には、ヘッジ開始時及びその後も継続して、相場変動又はキャッシュ・フロー変動を完全に相殺するものと想定することができる。例えば、次のすべてに該当するような先渡契約によってヘッジされた予定購入取引は、ヘッジに高い有効性があるといえる。このような場合には、第156項による有効性の判定は省略することができる。
- ① 先渡契約が、ヘッジ対象となるべき予定購入と同一商品、同量、同時期、同一場所である。
- ② ヘッジ開始時の先渡契約の時価がゼロである。
- ③ 先渡契約のディスカウント又はプレミアムの変動がヘッジの有効性評価から除かれている、又は予定取引のキャッシュ・フロー変動がその商品の先物価格に依存している。
- なお、金利スワップについては、第178項の特例処理の要件に該当すると判定される場合、その判定をもって有効性の判定に代えることができる。
(ヘッジ有効性の評価が複雑であり、非有効部分がある場合)
- 159. 次のような場合、ヘッジ非有効部分が存在する可能性があるのでヘッジの有効性評価は複雑であり、十分な検討が必要になる。
- ① ヘッジ手段とヘッジ対象の想定元本、期限、取引量、場所、引渡日等の重要な条件が相違する。
- ② ヘッジ手段とヘッジ対象の通貨が異なり、両者の為替相場変動が完全には連動していない。例えば、カナダドル建ての変動利付債券(その他有価証券に区分されているものとする。)の為替相場変動リスクを米ドルの為替売予約でヘッジする場合などである。
その他有価証券の価格変動リスクのヘッジ
- 160. その他有価証券をヘッジ対象とするヘッジ取引の会計処理方法として、繰延ヘッジ又は時価ヘッジのいずれかを選択することができる。繰延ヘッジでは、ヘッジ手段の損益又は評価差額を繰延ヘッジ損益として繰り延べる(第174項参照)。
- 時価ヘッジを採用する場合、へッジ対象たるその他有価証券の時価の変動要因のうち特定のリスク要素(金利、為替、信用等)のみをヘッジの目的としているときは、ヘッジ取引開始以後に生じた時価の変動のうち当該リスク要素の変動に係る時価の変動額を当期の純損益に計上し、その他のリスク要素の変動に係る時価の変動額は純資産の部に計上する。他方、ヘッジ手段の損益又は評価差額は発生時に当期の純損益に計上する。その結果、ヘッジ手段から生じる時価変動額とヘッジ対象の中のヘッジ目的とされたリスク要素から生じる時価変動額が当期純損益の計算上相殺される[設例18]。
満期保有目的の債券のヘッジ対象としての適格性
- 161. 満期保有目的の債券は、原則として金利変動リスク(相場変動リスク又はキャッシュ・フロー変動リスク)に関するヘッジ対象とすることはできない。ただし、債券取得の当初から金利スワップの特例処理の要件(第178項参照)に該当する場合にはヘッジ対象とすることができるものとする。したがって、ヘッジ会計を適用するためには、ほぼ満期日まで金利スワップが締結されていなければならない。債券の満期日の前にスワップを解約した場合には、満期保有目的の債券の売却があった場合と同様に、第83項に準じて、当該債券を含む満期保有目的の債券全体を他の保有目的区分に振り替えなければならない。
ヘッジ対象となり得る予定取引の判断基準
- 162. 金融商品会計基準(注12)における「契約は成立していないが、取引予定時期、取引予定物件、取引予定量、取引予定価格等の主要な取引条件が合理的に予測可能であり、かつ、それが実行される可能性が極めて高い取引」に該当するか否かを判断する際には、例えば、以下の項目を総合的に吟味する必要がある。
- (1) 過去に同様の取引が行われた頻度
当該取引と同様の取引が過去において一度も行われていない場合には、他の要素を十分に吟味する。 - (2) 企業が当該予定取引を行う能力を有しているか。
企業が、法的、制度的及び資金的に当該取引を実行する能力を有しない場合には、ヘッジ対象になり得ないものとする。 - (3) 当該予定取引を行わないことが企業に不利益をもたらすか。
当該取引を行わないことが企業に不利益をもたらさない場合には、他の要素を十分に吟味する。 - (4) 当該予定取引と同等の効果・成果をもたらす他の取引がないか。
当該取引と同等の効果・成果をもたらす他の取引がある場合には、他の要素を十分に吟味する。 - (5) 当該予定取引発生までの期間が妥当か。
予定取引発生までの期間が長い場合ほど実行される可能性は低くなると考えられる。特に当該期間がおおむね1年以上である場合には、他の要素を十分に吟味する。 - (6) 予定取引数量が妥当か。
過去において行った同様の取引の数量を超過する部分については、他の要素を十分に吟味する。 - なお、金融商品会計基準(注12)における「未履行の確定契約に係る取引」について、当該契約を解除する場合の対価が全く不要か又は軽微である場合は、上記と同様の検討を行い、ヘッジ対象になり得るか否かを判断する。
連結会社間取引のヘッジの可否
- 163. 連結会社間取引をヘッジ対象として個別財務諸表上繰延処理されたヘッジ手段に係る損益又は評価差額については、連結上、修正を行い、ヘッジ関係がなかったものとみなして当期の純損益として処理する。
- ただし、連結会社間取引のうち、外貨建の適格な予定取引における為替変動リスクをヘッジする目的で保有するヘッジ手段については、ヘッジ会計を適用することができる。
- 連結上消去される連結会社間取引が、一方の会社が外部に対して有する特定の資産又は負債のリスクを相殺するものである場合には、他方の会社の個別財務諸表において連結会社間取引のヘッジに指定されているヘッジ手段を、連結決算上、外部取引に係るヘッジとしてあらかじめ指定することができる。
- 164. 連結会社間で行っているデリバティブ取引が、個別財務諸表上でヘッジ手段として指定されている場合、連結上は当該デリバティブ取引を消去し、ヘッジ関係がなかったものとして処理する。ただし、一方の会社が外部と行っているデリバティブ取引が、連結会社間のデリバティブ取引と個別対応するものである場合には、その外部とのデリバティブ取引を連結上のヘッジ手段としてあらかじめ指定することができる。
デリバティブ取引以外のヘッジ手段
- 165. デリバティブ取引以外のヘッジ手段としては、次のいずれかのみについてヘッジ会計の適用を認める。
- (1) 次の外貨建取引等の為替変動リスクをヘッジする目的の外貨建金銭債権債務又は外貨建有価証券
- ① 予定取引
- ② その他有価証券
- ③ 在外子会社等に対する持分への投資
例えば、外貨による固定資産購入(予定取引に該当する。)に係る為替変動によるキャッシュ・フロー変動リスクに備えて、当該取引実行時までの外貨建社債又は外貨建預金の保有がヘッジ手段として考えられる。 - (2) 保有するその他有価証券の相場変動をヘッジする目的の信用取引(売付け)又は有価証券の空売り
売建オプションによるヘッジの可否
- 166. 売建オプション(買建オプションとの相殺の結果、売り持ちとなる場合を含む。)は、損失削減の効果がオプション料の範囲に限定されているため、リスクの有効な減殺とはいえないのでヘッジ手段とは認められない。
- ただし、金利カラー取引のように買建オプションと売建オプションとの組み合わせによりリスクを限定する効果を有する取引で、正味の受取オプション料がないもの(すなわち、合計のオプション料がゼロ又は支払であるもの)については、ヘッジ会計の対象となり得る。また、複合金融商品(企業会計基準適用指針第12号「その他の複合金融商品(払込資本を増加させる可能性のある部分を含まない複合金融商品)に関する会計処理」第3項により区分処理されるものを除く。)に組み込まれている買建オプションを相殺する売建オプションも、ヘッジ会計の対象となり得る。
外貨建取引に係るヘッジ
外貨建金銭債権債務及び外貨建有価証券に対するヘッジ
- 167. 決算日レートで換算される外貨建金銭債権債務及び外貨建有価証券について、為替予約等(通貨オプション、通貨スワップ等を含む。)により為替変動リスクのヘッジを行った場合、「外貨建取引等会計処理基準」(以下「外貨基準」という。)の規定により、次のいずれかの方法で処理することとなる。
- ① デリバティブである為替予約等を金融商品会計基準に従って処理する。
- ② 為替予約等をヘッジ対象である外貨建金銭債権債務等に振り当てる(振当処理)。
振当処理が認められるのは「当分の間」とされており、ヘッジ会計の要件を満たすことが適用の条件となっている。 - 168. 原則的処理である前項①による場合、ヘッジ手段とヘッジ対象にそれぞれ通常の会計処理を適用することにより、ヘッジ取引の効果が自動的に当期純損益の計算に反映される。すなわち、ヘッジ手段である為替予約等を金融商品会計基準に従って時価評価し、ヘッジ対象である外貨建金銭債権債務又は外貨建有価証券を外貨基準の原則に従い決算日レートで換算することにより、純損益への計上時期が一致する。したがって、この処理を採用する場合にはヘッジ会計の対象外であり、ヘッジ会計の要件を満たすか否かの判定は要しない。
- ただし、ヘッジ対象が外貨建のその他有価証券である場合に、為替換算差損益を純資産の部に直接計上しているときは、そのままではヘッジ手段とヘッジ対象から生じる損益又は評価差額の純損益への計上時期が一致しないため、ヘッジ会計が必要となる。この場合には、その他有価証券のヘッジに関する指針(本実務指針第160項参照)を適用する。また、在外子会社等に対する持分への投資をヘッジ対象とする為替リスクのヘッジ手段に係る損益又は評価差額については、個別財務諸表上繰延ヘッジ損益として繰り延べる(本実務指針第174項参照)。これらについては、ヘッジ手段として、デリバティブ以外に外貨建金銭債務を指定することもできる(本実務指針第165項参照)。
外貨による予定取引の為替リスクのヘッジ
- 169. 外貨による予定取引についての為替変動リスクのヘッジは、金融商品会計基準に従って処理し、ヘッジ会計の要件を満たす場合にはヘッジ手段に係る損益又は評価差額を繰延ヘッジ損益として繰り延べる(本実務指針第174項参照)。
- ただし、将来の外貨建貸付け・借入れ又は外貨建有価証券(その他有価証券及び子会社・関連会社株式を除く。)の取得のための為替変動によるキャッシュ・フローを固定する手段に係る損益又は評価差額は、外貨建金銭債権債務又は外貨建有価証券の換算差額と同様の性格を有するものと考えられるため、当期の純損益に計上するものとし、ヘッジ会計の処理をすることはできない。
予定取引実行時の処理
- 170. 予定取引のヘッジについてヘッジ会計を適用したことにより繰り延べられたヘッジ手段に係る損益(繰延ヘッジ損益)は、当該予定取引の実行時において、次のように処理する[設例19]及び[設例20]。
- (1) 予定取引により純損益が直ちに発生する場合
ヘッジ対象とされた予定取引が、売上や金利など純損益が直ちに発生するものである場合には、当該取引の実行時に、繰延ヘッジ損益を当期の純損益として処理する。この場合の勘定科目は、原則としてヘッジ対象取引に係る損益科目(売上高、支払利息など)とする。ただし、為替リスクのヘッジによる損益については、為替差損益とすることができる。 - (2) 予定取引が資産の取得である場合
ヘッジ対象とされた予定取引が、棚卸資産や有形固定資産などの資産の購入である場合には、繰延ヘッジ損益はこれらの資産の取得価額に加減し、当該資産の取得価額が費用計上される期の純損益に反映させる。例えば、購入した資産が棚卸資産である場合には販売時の売上原価又は低価基準の適用による評価損、固定資産である場合には減価償却費にそれぞれ含まれることとなる。
ただし、取得する資産が貸付金等の利付金融資産である場合には、受取利息の発生に対応させるため、繰延ヘッジ損益として処理することができる。 - (3) 予定取引が利付負債の発生である場合
ヘッジ対象とされた予定取引が、社債、借入金等の利付負債の発生である場合には、繰延ヘッジ損益は、引き続き純資産の部に計上し、償却原価法により当該負債に係る利息費用の発生に対応するように各期の純損益に配分する。
オプションの時間的価値及びプレミアム・ディスカウントの処理
- 171. ヘッジ手段として用いられるオプションの時間的価値及び先渡契約に係るプレミアム・ディスカウント(以下「時間的価値等」という。)については、次の2つの処理方法が考えられるが、いずれの方法によることも認められる[設例21]。
- ① ヘッジ手段の時価変動のうち時間的価値等の変動を除いた部分(本源的価値の変動)のみを繰延処理の対象とし、時間的価値等の変動を直ちに当期の純損益に計上する方法
- ② 時間的価値等を含めたヘッジ手段の時価変動の全体を繰延処理の対象とする方法
- いずれの方法を採用する場合においても、ヘッジの有効性判定においては時間的価値等の変動を除外して判定することができる。
ヘッジ非有効部分の処理
- 172. ヘッジ全体が有効と判定され、ヘッジ会計の要件が満たされている場合には、ヘッジ手段に生じた損益のうち結果的に非有効となった部分についても、ヘッジ会計の対象として繰延処理することができる。
- なお、非有効部分を合理的に区分できる場合には、非有効部分を繰延処理の対象とせずに当期の純損益に計上する方針を採用することができる。
包括ヘッジ(複数の資産・負債から構成されるヘッジ対象のヘッジ)
- 173. ヘッジ対象が複数の資産又は負債から構成されている場合における、ヘッジ手段に係る損益又は評価差額の配分は、各ヘッジ対象に対するヘッジの効果を反映する配分基準に基づいて行う。その配分方法としては、次のような方法がある[設例22]。
- ① ヘッジ取引開始時又は終了時における各ヘッジ対象の時価を基礎とする方法
- ② ヘッジ取引終了時における各ヘッジ対象の帳簿価額を基礎とする方法
- ③ ヘッジ取引開始時からヘッジ取引終了時までの間における各ヘッジ対象の相場変動幅を基礎とする方法
繰延ヘッジ損益の会計処理
- 174. 繰延ヘッジ損益は、純資産の部に計上する。なお、繰延ヘッジ損益を純資産の部に計上するにあたっては、これらに関する、当期までの期間に課税された法人税等及び繰延税金資産又は繰延税金負債の額を控除した金額で計上する(企業会計基準第5号「貸借対照表の純資産の部の表示に関する会計基準」第8項)。
- また、連結財務諸表においては、純資産の部に計上される繰延ヘッジ損益の当期変動額をその他の包括利益として、包括利益会計基準に従い、連結包括利益計算書等に表示する必要がある。
- 175. 削 除
繰延ヘッジ損益の損益計上時における処理科目
- 176. ヘッジ対象の損益認識時に繰延ヘッジ損益を純損益に計上するに当たり、繰延ヘッジ会計においては、原則としてヘッジ対象の損益区分と同一区分で表示する。すなわち、繰延ヘッジ損益は、ヘッジ対象が商品であれば売上原価、株式であれば有価証券売却損益、利付資産・負債であれば利息の調整として損益に戻入処理する。ただし、第170項(1)ただし書きのように、為替リスクのヘッジによるヘッジ損益については、為替差損益として処理することができる。
金利スワップの特例処理の対象
- 177. 金融商品会計基準(注14)は、「資産又は負債に係る金利の受払条件を変換することを目的として利用されている金利スワップが金利変換の対象となる資産又は負債とヘッジ会計の要件を充たしており、かつ、その想定元本、利息の受払条件(利率、利息の受払日等)及び契約期間が当該資産又は負債とほぼ同一である場合には、金利スワップを時価評価せず、その金銭の受払の純額等を当該資産又は負債に係る利息に加減して処理することができる。」としている[設例23]。
- 178. 金利スワップについて特例処理が認められるためには、次の条件をすべて満たす必要がある。なお、売買目的有価証券及びその他有価証券は特例処理の対象としない。
- ① 金利スワップの想定元本と貸借対照表上の対象資産又は負債の元本金額がほぼ一致していること
- ② 金利スワップの契約期間とヘッジ対象資産又は負債の満期がほぼ一致していること
- ③ 対象となる資産又は負債の金利が変動金利である場合には、その基礎となっているインデックスが金利スワップで受払される変動金利の基礎となっているインデックスとほぼ一致していること
- ④ 金利スワップの金利改定のインターバル及び金利改定日がヘッジ対象の資産又は負債とほぼ一致していること
- ⑤ 金利スワップの受払条件がスワップ期間を通して一定であること(同一の固定金利及び変動金利のインデックスがスワップ期間を通して使用されていること)
- ⑥ 金利スワップに期限前解約オプション、支払金利のフロアー又は受取金利のキャップが存在する場合には、ヘッジ対象の資産又は負債に含まれた同等の条件を相殺するためのものであること
- 上記①の条件に関し、金利スワップの想定元本と対象となる資産又は負債の元本については、いずれかの5%以内の差異であれば、ほぼ同一であると考えて、この特例処理を適用することができる。なお、金利スワップについて特例処理の要件を満たさない場合であってもヘッジ会計の要件を満たすときは、繰延ヘッジの方法によりヘッジ会計を適用することができる[設例24]。
- 179. 支払金利に係るキャップ取引及び受取金利に係るフロアー取引は、金利スワップに準じて特例処理の対象とすることができる。この場合、前項に定める条件を満たす必要がある。取引開始時に受渡しされるオプション料相当額については、利息の調整額として、ヘッジ対象である資産又は負債の契約期間にわたって配分する。
ヘッジ会計の要件を満たさなくなった場合の会計処理
- 180. 企業は次のような事態が発生した場合、ヘッジ会計の適用を中止しなければならない。
- ① 当該ヘッジ関係が企業のヘッジ有効性の評価基準を満たさなくなった。
- ② ヘッジ手段が満期、売却、終了又は行使のいずれかの事由により消滅した。
- 上記の事態が発生した場合には、その時点までのヘッジ手段に係る損益又は評価差額はヘッジ対象に係る損益が純損益として認識されるまで繰り延べる。また、①の場合に、ヘッジ会計の中止以降のヘッジ手段に係る損益又は評価差額は発生した会計期間の純損益に計上しなければならない。
- なお、ヘッジ手段が債券、借入金等の利付金融商品の金利リスク(相場変動又はキャッシュ・フロー変動)をヘッジするものであった場合において、ヘッジ会計の適用中止の時点まで繰り延べていたヘッジ手段に係る損益又は評価差額は、ヘッジ対象の満期までの期間にわたり金利の調整として純損益に配分する。
ヘッジ会計の終了
- 181. ヘッジ対象が消滅したとき又はヘッジ対象である予定取引が実行されないことが明らかになったときは、繰り延べられていたヘッジ手段に係る損益又は評価差額を当期の純損益として処理しなければならない。
ヘッジ会計終了時点における損失の見積り
- 182. 金融商品会計基準第33項によれば、ヘッジ会計の要件を満たさなくなったことによりヘッジ会計の適用を中止した場合、ヘッジ対象に係る含み益が減少することによりヘッジ会計の終了時点で重要な損失が生じるおそれがあるときは、当該損失部分を見積り、当期の損失として処理しなければならない[設例25]。
- 183. 「ヘッジ対象に係る含み益が減少することによりヘッジ会計の終了時点で重要な損失が生じるおそれがあるとき」(金融商品会計基準第33項)とは、ヘッジ会計の適用を中止した後の相場変動等により、ヘッジ対象に係る含み益が減少して、ヘッジ手段に係る損失又は評価差額(評価差損)に対して重要な不足額が生じている場合をいうものとする。この場合に損失部分の見積額として損失処理すべき金額は、当該不足額のうち、ヘッジ会計の適用を中止した後におけるヘッジ対象の相場変動に相当する部分の金額とする。
- 184. ヘッジ会計の終了時点で生じるおそれのある損失が重要であるかどうかの判断は、当該金額が企業の経営成績及び財政状態に与える影響を総合的に考慮して行う。
時価ヘッジの適用対象
- 185. 金融商品会計基準第32項ただし書きに規定された「ヘッジ対象である資産又は負債に係る相場変動等を損益に反映させることにより、その損益とヘッジ手段に係る損益とを同一の会計期間に認識する」方法は、「ヘッジ対象である資産又は負債に係る相場変動等を損益に反映させることができる場合」(金融商品会計基準第106項)に適用できる。
- したがって、この処理方法の適用対象は、ヘッジ対象の時価を貸借対照表価額とすることが認められているものに限定され、金融商品会計基準の規定との関係上、現時点ではその他有価証券のみであると解釈される。
複合金融商品
払込資本を増加させる可能性のある部分を含む複合金融商品の会計処理
新株予約権付社債の会計処理
- 185-2. 会社法施行日前に発行決議があった新株予約権付社債の会計処理については、実務対応報告第1号及び実務対応報告第11号「外貨建転換社債型新株予約権付社債の発行者側の会計処理に関する実務上の取扱い」を適用して行う。会社法施行日以降に発行決議があった新株予約権付社債の会計処理については、適用指針第17号を適用して行う。
発行体における新株引受権付社債の新株引受権の区分処理
- 186. 新株引受権付社債(2002年3月31日以前の発行決議により発行されたもの。以下同じ。)について、その発行時に発行価額を社債と新株引受権の合理的算定額に基づき社債の対価部分と新株引受権の対価部分とに区分し、社債の対価部分のうち社債の額面金額を「社債」に、また、社債の対価部分と社債の額面金額との差額を「社債発行差金」に計上し、新株引受権の対価部分は「新株予約権」に含めて、純資産の部に計上する。この場合、その旨及び金額を注記することが適当である。なお、本項及び次項の適用にあたっては、社債発行差金の償却額は社債利息に含めて表示し、社債発行差金は社債から控除して表示することとなる(実務対応報告第19号「繰延資産の会計処理に関する当面の取扱い」4(2)③)。
- 新株引受権の行使により行使価額の払込みが行われた場合、当該行使価額の払込時に行使部分に対応する新株引受権を資本準備金に振り替える。行使請求期間に新株引受権の行使が行われなかった場合には、行使請求期間満了時に新株引受権を「新株予約権戻入益」に含めて、原則として、特別利益に計上する。この場合も、その旨及び金額を注記することが適当である。
発行体における転換社債の株式転換権の区分処理
- 187. 転換社債(2002年3月31日以前の発行決議により発行されたもの。以下同じ。)について、その株式転換権を区分処理する場合には、新株引受権付社債の区分処理に準じて次のように処理する。
- 転換社債の発行時に、その発行価額を社債と株式転換権の合理的算定額に基づき社債の対価部分と株式転換権の対価部分とに区分し、社債の対価部分のうち社債の額面金額を「社債」に、また社債の対価部分と社債の額面金額との差額を「社債発行差金」に計上し、株式転換権の対価部分は「新株予約権」に含めて、純資産の部に計上する。この場合、その旨及び金額を注記することが適当である。
- 株式転換権の行使により株式への転換が行われた場合、転換時に転換部分に対応する株式転換権と社債の額面金額の合計に社債発行差金の未償却残高を加減した額を資本金及び資本準備金に振り替える。転換請求期間に株式転換権の行使が行われなかった場合には、転換請求期間満了時に株式転換権を「新株予約権戻入益」に含めて、原則として、特別利益に計上する。この場合も、その旨及び金額を注記することが適当である。
その他の複合金融商品の会計処理
組込デリバティブの区分処理
- 188. 削 除
- 189. 削 除
組込デリバティブのリスクが現物の金融資産又は金融負債に及ぶこと
- 190. 削 除
組込デリバティブのリスクが現物の金融資産又は金融負債に及ぶ可能性がある例
- 191. 削 除
損益を調整する複合金融商品
- 192. 削 除
区分処理した組込デリバティブの損益又は評価差額の表示
- 193. 削 除
組込デリバティブを区別して測定することができない場合の会計処理
- 194. 削 除
適 用
適 用
- 195. 本実務指針は、2000年4月1日以後開始する事業年度から適用する。
- その他有価証券については、2000年4月1日以後開始する事業年度は帳簿価額と期末時価との差額について税効果を適用した場合の注記を行うこととし、時価評価については2001年4月1日以後開始する事業年度から実施する。ただし、時価評価については、2000年4月1日以後開始する事業年度から適用することができる。
- 本実務指針のうち、金融商品の評価基準に関係しない金融資産及び金融負債の発生又は消滅の認識、貸倒見積高の算定方法については、2000年4月1日前に開始する事業年度から適用することができる。
- 195-2. 「会計制度委員会報告第14号「金融商品会計に関する実務指針(中間報告)」の改正について」(2001年3月30日)は、2001年4月1日以後開始する事業年度から適用する。ただし、2001年4月1日前に開始する事業年度から早期適用することができる。
- 改正後の第129項では、「現先取引及び現金担保付債券貸借取引に関連して授受される有価証券は売却又は再担保可能であっても、有価証券の受入者はこれを貸借対照表に計上する必要はない。ただし、受け入れた有価証券は一般に自由処分権を有するため、担保受入金融資産に準じて注記を行わなければならない。」と定めているが、現先取引及び現金担保付債券貸借取引について、取引制度の見直しが行われていることを踏まえ、2001年4月1日以後最初に開始する事業年度の期首日から1年以内に限り、改正前の第129項の方法又は第210項にいう現行の会計実務により処理することができる。また、第128項に定める自由処分権を有する担保受入金融資産についても同様の取扱いとする。なお、第77項に定める消費貸借契約等により借り入れた有価証券については、2001年4月1日以後最初に開始する事業年度の期首日から1年以内に限り、改正前の第77項の方法により処理することができる。
- 195-3. 「会計制度委員会報告第14号「金融商品会計に関する実務指針(中間報告)」の改正について(その2)」(2001年7月3日)は、2001年4月1日以後開始する事業年度から適用する。
- 195-4. 「会計制度委員会報告第14号「金融商品会計に関する実務指針」の改正について(その3)」(2002年9月17日)は、2002年4月1日から適用する。ただし、第61項に係る改正(売買参考統計値)については、2002年8月5日報告分(8月6日付け発表分)から適用する。
- なお、第186項及び第187項は、2002年3月31日以前の発行決議に基づき発行された新株引受権付社債及び転換社債(商法等の一部を改正する法律(平成13年法律第128号)附則第7号)の会計処理を定めたものであり、これらが償還等により消滅するまでの間における経過的な取扱いである。
- 195-5. 「新株引受権付社債の発行体における会計処理及び表示」(会計制度委員会 1994年2月22日)は、2002年9月17日をもって廃止する。
- 195-6. 「会計制度委員会報告第14号「金融商品会計に関する実務指針」の改正について」(2006年4月27日)は、次のとおり適用する。
- ① 本実務指針第83項、第88項、第89項、第283項及び設例8については、「企業結合に係る会計基準」及び企業会計基準第7号「事業分離等に関する会計基準」並びに企業会計基準適用指針第10号「企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針」の適用に合わせて、2006年4月1日以後開始する事業年度から適用する。
なお、過年度に改正前の本実務指針第88項を適用し、その他有価証券を子会社株式又は関連会社株式に振り替えた際に計上したその他有価証券評価差額金及び繰延税金資産又は繰延税金負債は、2006年4月1日以後最初に開始する事業年度において振り戻す。 - ② 本実務指針第188項から第194項、第354項から第356項及び設例27の削除については、企業会計基準適用指針第12号「その他の複合金融商品(払込資本を増加させる可能性のある部分を含まない複合金融商品)に関する会計処理」を適用した事業年度から適用する。
- ③ ①及び②以外については、会社法(平成17年法律第86号)施行日以後終了する中間連結会計期間及び中間会計期間に係る中間連結財務諸表及び中間財務諸表並びに連結会計年度及び事業年度に係る連結財務諸表及び財務諸表から適用する。
- 195-7. 「会計制度委員会報告第14号「金融商品会計に関する実務指針」の改正について」(2006年10月20日)は、金融商品会計基準の適用にあわせて、2006年8月11日以後に終了する事業年度及び中間会計期間から適用する。ただし、会社法施行日(2006年5月1日)以後2006年8月11日前に終了した事業年度及び中間会計期間から適用することができる。
- 195-8. 「会計制度委員会報告第14号「金融商品会計に関する実務指針」の改正について」(2007年7月4日)は、金融商品取引法の施行日以後に終了する事業年度及び中間会計期間から適用する。
- 195-9. 「会計制度委員会報告第14号「金融商品会計に関する実務指針」の改正について」(2008年3月25日)は、次のとおり適用する。
- ① 本実務指針第18項及び第228項については、企業会計基準第13号「リース取引に関する会計基準」及び企業会計基準適用指針第16号「リース取引に関する会計基準の適用指針」を適用する事業年度及び四半期会計期間又は中間会計期間から適用する。
- ② 本実務指針第63項、第91項、第92項、第93項、第104項、第259項、第285項及び第285-2項については、2008年3月改正の企業会計基準第10号「金融商品に関する会計基準」及び企業会計基準適用指針第19号「金融商品の時価等の開示に関する適用指針」を適用する事業年度及び四半期会計期間又は中間会計期間から適用する。
- ③ 上記以外については、2008年3月25日以後終了する事業年度及び四半期会計期間又は中間会計期間から適用する。ただし、同日前に終了した事業年度及び中間会計期間から適用することができる。
- 195-10. 「会計制度委員会報告第14号「金融商品会計に関する実務指針」の改正について」(2009年6月9日)は、2008年12月改正の企業会計基準第21号「企業結合に関する会計基準」及び企業会計基準適用指針第10号「企業結合会計基準及び事業分離等会計基準に関する適用指針」を適用する事業年度及び四半期会計期間又は中間会計期間から適用する。
- 195-11. 「会計制度委員会報告第14号「金融商品会計に関する実務指針」の改正について」(2011年3月29日)は、2011年3月29日から適用する。ただし、第81項、第90項、第115項、第123項、第124項、第125項については、2011年4月1日以後開始する事業年度の期首以後に行われる会計上の変更及び過去の誤謬の訂正から適用する。なお、適用初年度より前の事業年度に行われている会計上の変更及び過去の誤謬の訂正については遡及処理しない。
- 195-12. 「会計制度委員会報告第14号「金融商品会計に関する実務指針」の改正について」(2014年11月28日)は、2014年11月28日から適用する。
- 195-13. 「会計制度委員会報告第14号「金融商品会計に関する実務指針」の改正について」(2015年4月14日)は、2015年4月14日から適用する。
- 195-14. 「会計制度委員会報告第14号「金融商品会計に関する実務指針」の改正について」(2016年3月25日)は、企業会計基準適用指針第26号「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」を適用する事業年度から適用する。
- 195-15. 「会計制度委員会報告第14号「金融商品会計に関する実務指針」の改正について」(2018年2月16日)は、2018年に公表された税効果適用指針を適用する連結会計年度及び事業年度から適用する。
- 195-16. 「会計制度委員会報告第14号「金融商品会計に関する実務指針」の改正について」(2019年7月4日)は、2019年7月改正の金融商品会計基準を適用する連結会計年度及び事業年度から適用する。
- 195-17. 「会計制度委員会報告第14号「金融商品会計に関する実務指針」の改正について」(2022年10月28日)は、2022年10月改正の法人税等会計基準、包括利益会計基準及び税効果適用指針を適用する連結会計年度及び事業年度から適用する。
- 195-18. 移管指針第9号「金融商品会計に関する実務指針」は、公表日以後適用する。
- 195-19. 2024年9月改正の本実務指針の適用時期は、2024年に公表されたリース会計基準の適用時期と同様とする。
- 195-20. 2025年改正の本実務指針(以下「2025年改正実務指針」という。)は、2026年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用する。ただし、2025年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から2025年改正実務指針を適用することができる。
適用初年度の経過措置
金融資産及び金融負債の発生及び消滅の認識
- 196. 金融資産及び金融負債の発生及び消滅の認識は、適用初年度の期首日以後に締結した契約である金融商品に適用する。
有価証券
保有目的区分による分類
- 197. 削 除
低価法の適用
- 198. 削 除
償却原価法の適用
- 199. 削 除
評価差額の処理
- 200. 削 除
金銭の信託
保有目的による分類
- 201. 削 除
時価評価及び償却原価法の適用
- 202. 削 除
デリバティブ取引
- 203. 削 除
債 権
償却原価法の適用
- 204. 削 除
売上債権等に含まれる金利部分
- 205. 売上債権等に重要な金利部分が含まれている場合、当該債権を取得したときにその現在価値で計上するが、この処理は適用初年度の期首日以後に取得したものに適用する。ただし、過年度に遡って適用することができる。
その他の金融資産及び金融負債
任意組合、匿名組合、パートナーシップ、リミテッド・パートナーシップ等への出資の会計処理
- 205-2. 2025年改正実務指針の適用初年度において、組合等の構成資産である市場価格のない株式について第132-2項の定めを適用する場合、適用初年度の期首時点において組合等への出資者である企業が定めた方針に基づいて第132-2項の定めを適用する組合等を決定し、次の会計処理を行う。
- (1) 適用初年度の期首時点において、第132-2項の定めを適用する組合等の構成資産に含まれるすべての市場価格のない株式(出資者である企業の子会社株式及び関連会社株式を除く。)について時価をもって評価し、組合等への出資者の会計処理の基礎とする。この場合、適用初年度の期首時点での評価差額の持分相当額を適用初年度の期首のその他の包括利益累計額又は評価・換算差額等に加減する。
- (2) 適用初年度の期首時点において、第132-2項の定めを適用する組合等の構成資産に含まれるすべての市場価格のない株式(出資者である企業の子会社株式及び関連会社株式を除く。)について時価のある有価証券の減損処理に関する定め(第91項参照)に従って減損処理を行い、組合等への出資者の会計処理の基礎とする。この場合、減損処理による損失の持分相当額を適用初年度の期首の利益剰余金に加減する。
ヘッジ会計の適用
- 206. 削 除
その他の経過措置
有価証券の売買契約の認識
- 207. 削 除
譲渡資産の消滅の認識
- 208. 第31項では、「第三者対抗要件を満たす場合に譲渡金融資産は「法的に保全」されているものとして取り扱う。」と定めているが、第三者対抗要件を満たしていなくても、その具備留保が適切に行われていることを条件に譲渡した金融資産の消滅の認識を、適用初年度の期首日から1年以内に限り認めることとする。
有価証券の減損処理
- 209. 削 除
新会計処理システムの対応が困難な場合の経過措置
- 210. 削 除
議 決
議 決
- 210-A1. 2025年改正実務指針は、第542回企業会計基準委員会に出席した委員13名全員の賛成により承認された。
Ⅱ 結論の背景
金融商品の範囲、認識及び消滅
金融商品の範囲
金融商品
- 211. 金融商品会計基準を適用する金融商品の範囲を決定するためには、金融商品とはどのようなものか理解する必要がある。
- 金融商品会計基準第52項では、「金融資産、金融負債及びデリバティブ取引に係る契約を総称して金融商品ということにするが、金融商品には複数種類の金融資産又は金融負債が組み合わされているもの(複合金融商品)も含まれる。」とされている。
- 契約は、原則として2企業間で生じるものである。金融資産に係る契約には、所有する株券等に化体表章される持分の請求権に係る契約とその他の金融資産に係る契約がある。持分の請求権に係る契約は、一方の企業に、他の企業の総資産から総負債を差し引いた後の残余財産に対する請求権を生じさせ、当該他の企業にこれに対する義務を生じさせる契約である。その他の金融資産に係る契約は、一方の企業に現金又はその他の金融資産を受け取る権利を生じさせ他の企業に現金又はその他の金融資産を引き渡す義務を生じさせる契約である。金融負債に係る契約とは、一方の企業に現金又はその他の金融資産を引き渡す義務を生じさせ他の企業に現金又はその他の金融資産を受け取る権利を生じさせる契約であり、その他の金融資産に係る契約の取引相手先からみたものである。また、デリバティブ取引に係る契約は、契約対象となった基礎数値の変化の結果として、一方の企業に金融資産を生じさせ他の企業に金融負債を生じさせる契約又はその逆の状態を生じさせる契約である。
- 212. 金融商品として金融商品会計基準の対象となるか否かは、金融商品の定義を満たすかどうかで判断することになる。
- 213. 本実務指針の想定する企業とは、金融商品の契約当事者をいい、その中には個人、パートナーシップ、法人組織及び政府機関等が含まれる。
金融資産
- 214. 預金は、預金者にとって金融機関から現金を引き出す契約上の権利である。
- 受取手形、売掛金及び貸付金等の金銭債権並びに公社債等は、元本又は元本及び利息につき将来の一定期日に他の企業から現金を受け取る契約上の権利である。
- デリバティブ取引により生じる正味の債権(契約を構成する権利と義務の価値の純額)は、反対取引による清算又は損益確定、差額決済等により現金を受け取る契約上の権利である。
- 他の企業の株式その他の出資証券は、これを所有する企業にとって、配当又は第三者への売却により現金又はその他の金融資産を受け取り、また、当該他の企業が清算した場合、残余財産の持分相当額を清算配当として受け取る契約上の権利を表象するものである。
- 215. 金融資産を性質別に整理すれば、次のとおりである(一定の条件付きのものを含む。)。
- (1) 現金(外国通貨を含む。)
- (2) 金銭債権(証券化した債権を含む。)
- (3) 他の企業の持分の請求権の所有権(以下「他の企業の持分権」という。)
- (4) 金銭債権又は他の企業の持分権の受領権
- (5) 潜在的に有利な条件で、現金、金銭債権、他の企業の持分権、金銭債権若しくは他の企業の持分権の受領権又はそれらの引渡義務を交換する契約上の権利
金融負債
- 216. 支払手形、買掛金、借入金及び社債等の金銭債務は、将来一定期日に他の企業に対し現金を引き渡す契約上の義務である。
- デリバティブ取引により生じる正味の債務(契約を構成する権利と義務の価値の純額)は、反対取引による清算又は損益確定、差額決済等により現金を引き渡す契約上の義務である。
- 217. 金融負債を性質別に整理すれば、次のとおりである(一定の条件付きのものを含む。)。
- (1) 金銭債務
- (2) 金銭債権の引渡義務
- (3) 金銭債務の引受義務
- (4) 他の企業の持分権の引渡義務
- (5) 潜在的に不利な条件で、現金、金銭債権、他の企業の持分権、金銭債権若しくは他の企業の持分権の受領権又はそれらの引渡義務を交換する契約上の義務
デリバティブ
- 218. デリバティブは、派生金融商品又は派生現物商品とも呼ばれ、基礎数値の変化に対応して時価が変化する。
- 先物契約又は先渡契約のように双務契約である場合、通常、契約時に当該権利と義務は等価であり、両者の純額すなわち価値はゼロであるから、当初純投資額はゼロである。オプションのように片務契約である場合、買手はオプション料を支払うが、オプションの対象そのものを購入した場合と比べ、はるかに少ない金額で購入することができる。
- 先物契約については、取引所があり原則として差金決済が行われる。先渡契約、オプション取引等については、契約上又は特約により純額決済が行われる活発な市場がある場合もある。また、金融資産又は現物商品を受け渡す場合であっても、当該金融資産又は現物商品に活発な市場があるため当該市場から購入又は売却することにより引渡人及び受取人を純額決済と実質的に異ならない状態に置くものもある。
- デリバティブ取引は、契約上の期日に純額又は実質的に純額で、現金、その他の金融資産又はデリバティブを授受する権利若しくは義務が生じる契約である。
有価証券として取り扱うもの及び有価証券として取り扱わないもの
- 219. 国内CDは、金融商品取引法に定義する有価証券に該当しないが、有価証券である海外CDと同一の性質を有するので、有価証券として取り扱う。
- 一方、金融商品取引法第2条第2項第1号及び第2号に該当する信託受益権については、信託の構成物等に応じて適切な会計処理が異なり、一律に有価証券として取り扱うことが適当でないと考えられるため、本実務指針では、信託受益権が優先劣後等のように質的に分割されており、信託受益権の保有者が複数である場合(第100項(2)参照)などを除き、有価証券として取り扱わないものとした。
有価証券の消費貸借契約・消費寄託契約
- 220. 有価証券の消費貸借契約は金融資産の消費貸借に係る契約であり、消費寄託契約は金融資産の消費寄託に係る契約であるから、金融商品である。
建設協力金
- 221. 建設協力金は、建物建設時に消費寄託する建物等の賃貸に係る預託保証金であり、契約に定めた期日に預託金受入企業が現金を返還し差入企業がこれを受け取る契約であるから金融商品である。
商品ファンド
- 222. 商品ファンドは、運用状況に応じて現金配当があり、満期日に又は期前償還権がある場合にはその実行期日に現金で償還される契約であるので、金融商品である。
- 商品ファンドの設立形態には、信託型、匿名組合型、パートナーシップ型、任意組合型があるが、先物投資型(投資対象による分類)の運用対象は、基本的に同一で、安定運用部分である金の現先取引(金融取引)と、積極的運用部分である現物商品及び金融商品の先物取引を含むデリバティブ取引である。現物投資型の運用対象は、原則として映画、競走用馬等の現物資産であるが、一部の資金又は余資を先物投資型と同じように運用する場合もある。
ゴルフ会員権等
- 223. ゴルフ会員権等は、運営会社の発行する株式、当該会社に対する預託保証金又は入会金から構成されており、施設利用権が化体されている。株式及び預託保証金は金融資産なので、これらから構成されるゴルフ会員権等については、金融商品会計基準の対象とした。
保険契約
- 224. 損害保険契約においては、被保険者が損害を被ることが要件となり、かつ支払われる保険金はその損害額を上限とする。言い換えれば、被保険者に損失が発生しない限り、保険金は発生しない。
- 満期返戻金のない契約(掛け捨てのもの)は、金融商品ではない。これに対し満期返戻金のある契約は、保険事由が発生しない限り満期に返戻金が支払われる。しかし、後者は純粋な保険部分と積立金部分が組み合わされているから、両者の区分計算が必要となるが、保険契約と密接な関係にあり区分計算は極めて困難であるため、金融商品会計基準の対象外とした。
債務保証契約
- 225. 債務保証契約は、独立した第三者間では通常、債務保証の対価として被保証人から保証人に対して保証料が支払われ、被保証先が債務不履行など一定の要件を満たした場合、保証している企業は保証債務を履行し現金を支払わなければならないから、債務保証契約は金融商品の1つである。
クレジット・デリバティブ
- 226. クレジット・デリバティブとは、当事者が元本として定めた金額(想定元本)について、当該当事者間で取り決めた者の信用状態等を反映する利子率若しくは価格に基づき金銭の支払を相互に約する契約、当該当事者間で取り決めた者の信用状態等に係る事象の発生に基づき金銭の支払若しくは金融資産の移転を相互に約する契約、又はこれらに類似する契約をいうから、金融商品である。
- クレジット・デリバティブには次のようなものがある。
- (1) 第三者(参照当事者)の倒産、信用格付けのダウングレードなどの信用事由が発生すると、現金の支払又は現物の受渡しが行われるものをクレジット・デフォルト・オプションという。信用格付けに係るものは、ダウングレード・オプションともいわれている。
- (2) 一方の当事者が有する取引上の地位(例えば、有価証券の保有)に基づいて発生するキャッシュ・フローと、金利の支払等他のキャッシュ・フローを交換するものをトータル・レート・オブ・リターン・スワップという。この契約により、特定の取引上の地位の信用リスクのみならず、市場リスク等のすべてのリスクと経済的価値は当事者間で交換されることになる。
- (3) (1)又は(2)のクレジット・デリバティブを組み込んだクレジット・リンク債(クレジット・デリバティブと呼ばれる場合もある。)は複合金融商品である。
- これらの取引は、保険や保証と類似した経済効果を有する。しかし、クレジット・デリバティブは、保険契約ではないので代位請求権が発生しない。また、履行される債務の内容が、必ずしも主債務ではないこと、代位請求権が発生しないことから保証とはいえない。ただし、クレジット・デフォルト・オプションは、特約で実質的な求償債権が付いたものもある。
- また、特定の利子率、有価証券の価格、現物商品の価格、信用格付け、外国為替相場、価格・金利の指数等の変動に対応して支払が生じる金融保証契約は、クレジット・デリバティブの一種と考えられる。
ウェザー・デリバティブ
- 227. ウェザー・デリバティブは、平均気温や降雪量等の自然現象等にリンクしたデリバティブ取引である。ウェザー・デリバティブには海外で上場されているものもある。このような取引は、経済効果として保険契約と類似した部分はあるものの、保険契約とは異なり損失填補性がない。
リース取引
- 228. 削 除
当座貸越契約及び貸出コミットメント
- 229. 貸手である金融機関等の当座貸越契約(これに準ずる契約を含む。)及び貸出コミットメントは、借手にとって将来における借入実行可能な与信枠である。当座貸越契約及び貸出コミットメントは、借手が借入実行の通知をしたとき又は現金を受領したときに金額が確定し金銭消費貸借契約が成立する。この場合、借入実行通知時又は借入実行時における変動金利が適用される通常の契約では、当座貸越契約及び貸出コミットメントに市場リスクはない。
- しかし、貸手の信用リスク管理上、与信として扱われるほか、これらの契約は貸手の将来のキャッシュ・フローに影響を与える可能性があるため、金融商品会計基準の対象であるとした。
- なお、当座貸越契約においてこれに準ずる契約とは、信販会社、クレジット会社、消費者金融会社などにおけるカードローンやクレジットカードに附帯するキャッシングが該当する。これらについては、顧客に付与した限度額の範囲内で現金が自由に引き出される可能性があり、その実質的な内容は銀行における当座貸越契約と変わるところがないものと考えられるため、これに準ずるものとした。
- 貸出コミットメントの売買も諸外国では行われている。この場合はデリバティブ取引となる。
現物商品に係るデリバティブ取引
- 230. コモディティ・スワップ取引は、その対象となった現物商品の市場変動差損益が現金で決済されるので、金融商品会計基準の対象である。
- 原油取引におけるブック・アウト(BOOK-OUT)取引は、当初から差額決済を予定して行うものと、現物の売買として始めたものが結果として引渡しが行われず、差額決済することとなるものとがある。
金融資産及び金融負債の発生の認識
有価証券の売買契約の認識
- 231. 有価証券の買手は約定日からその市場変動リスク等にさらされているため、約定日に有価証券を認識することに異論はないが、売手については、伝統的な会計処理基準の考え方に基づき有価証券を引き渡したときに初めて消滅するという有力な見解がある。現物を引き渡さなければ支配の移転はなく、さらに、買手が約定日から受渡日の間に破産に至った場合又は決済代金を用意できなかった場合、有価証券を引き渡すことなく消滅もしないことになるから、受渡日基準で資産の消滅を認識すべきであるというものである。
- 232. これに対し、通常の期間内に受け渡す有価証券の売買については、約定日から受渡日までの期間に、売手はオーバーナイトの現先取引等一部の極めて限られた運用ができるだけであって、実質的に自由処分権は喪失しており、当該有価証券に対する支配、言い換えれば当該有価証券から生じるキャッシュ・フロー等の権利は買手に移転し、売手は現金の入金と引き換えに当該有価証券を引き渡す義務を負っているのみであるから、約定日に認識すべきものであるという見解がある。この見解によれば、買手が約定日から受渡日の間に破産に至った場合、売手にペナルティーが生じることなく契約は無効とされるから、約定日後に生じた第一の後発事象として、売手は約定日に認識した処理を取り消せばよいことになる。また、伝統的な受渡日基準を適用している場合に受渡しが期末を越えるとき、売手は当該有価証券について期末に時価又は償却原価で評価することになるが、このような処理は、売手が市場変動リスクにさらされておらず、売却損益が確定している事実に反することになる。
- 233. 金融資産の契約上の権利又は金融負債の契約上の義務を生じさせる契約を締結したときは、原則として、当該金融資産又は金融負債の発生を認識しなければならない(金融商品会計基準第7項)とされている。これは、厳密には当該売買契約自体を認識するのであって、契約日と受渡日が異なる固定価格による売買契約は先渡契約であるから当該売買契約そのものを先渡契約として認識し、市場相場の変動に伴う当該契約の権利義務から生じる価値を金融資産又は金融負債として認識すべきことを意味しており、売買対象となった金融資産又は金融負債そのものを認識するのではないと解される。
- 234. 金融資産の売買の契約は市場の規則又は慣行により設定された期間(通常の期間)に当該金融資産の受渡しを行うことを定めている。通常の受渡期間による売買契約を締結した有価証券については、受渡期間が短いため、現物は受渡日まで売手にあるが、金融資産の消滅の認識における法的保全の要件(現物を引き渡さなければ第三者対抗要件がないこと。)を満たしていなくとも、短期間に受渡しが履行され法的要件を満たすと同時に対価を受領すること、受渡しの履行結果も約定日後短期間に明らかとなること、与信管理を行っていれば通常、不履行のリスクは極めて低いこと、また、売買契約締結により売手の当該有価証券の将来キャッシュ・フローに対する支配は実質的に買手に移転しており、売買約定日から時価の変動リスク又は発行者の財政状態等に基づく信用リスク等が買手に生じることから、有価証券の売買取引について売手も買手も原則として約定日に有価証券の発生又は消滅を認識すべきものとした。
- 235. 実務的な会計処理として、買手については、約定日に有価証券と未払金を計上する約定日基準とともに、簡便法として継続適用を条件に、有価証券自体は計上せず時価変動差額を有価証券に計上するとともに当期の純損益又は純資産の部のその他有価証券評価差額金として計上する修正受渡日基準を認めることとした。したがって、期中は受渡日基準により処理し、決算日に約定済みで未受取となっている有価証券の時価変動差額のみを処理することも認められる。
- また、売手についても、約定日に有価証券の消滅とともに未収入金及び有価証券売却損益を計上する約定日基準と、継続適用を条件として、有価証券自体の消滅を認識せず、売却損益を、貸借対照表上、有価証券の時価変動差額として処理する一方、損益計算書上、有価証券売却損益として計上する修正受渡日基準(この処理により当該有価証券は売却価額により評価される。)を認めることとした。したがって、期中は受渡日基準により処理し、決算日に約定済みで未引渡しになっている有価証券の売却損益のみを処理することも認められる。
- なお、市場取引も相対取引も取引内容は同一なので、同一処理を行う。
- 236. 約定日から受渡日までの期間が通常の期間よりも長い場合、市場性ある有価証券については、通常の期間内に受け渡す有価証券の売買価格に受渡日までの期間の金利等が反映された先渡価格が売買価格となるとともに、売手は、通常、受渡期限まで所有している当該有価証券の経済的便益を享受できるので、売買契約を買手も売手も先渡契約として約定日に認識し、決算日における未決済の先渡契約をデリバティブ取引として時価評価し、評価差額を当期の純損益として計上する。ただし、当該先渡契約が、売手にとって売却対象である有価証券に関しヘッジ会計の要件を満たしている場合には、ヘッジ会計を適用する。
- また、当該先渡契約が、買手にとって予定取引に係るヘッジ会計の要件を満たしている場合には、ヘッジ会計を適用する。
有価証券の信用取引の認識
- 237. 信用取引は、顧客が有価証券の売買取引を行うときに、証券会社から当該取引に必要な資金又は有価証券を借り入れて行う取引である。有価証券の買付けを行う顧客は、資金を借りて有価証券を買い付け、その有価証券を証券会社に担保として差し入れ、通常6か月以内に担保に差し入れた有価証券を売却するか、他から借り入れ、当初の借入資金を返済する。一方、売付けを行う顧客は有価証券を借り受けてこれを売却し、売却代金を担保として証券会社に差し入れておき、後日、差し入れた資金又は新たに借り入れた資金により買い付けた有価証券を返却して決済する。
- この取引の特徴は、証券会社と顧客との間の取引は資金又は有価証券の貸借による信用取引であるが、市場での売買取引は現物取引であるから、先物取引とは異なる。
貸付金及び借入金の認識
- 238. 貸付金及び借入金については、契約日に、貸手には受渡日に現金を引き渡す義務と当該受渡しを実行した場合決済日に現金を受け取る権利が発生し、借手には受渡日に現金を受け取る権利と当該受渡しが実行された場合決済日に現金を返済する義務が生じる。また、金銭消費貸借契約を締結した当事者である貸手と借手には、約定日から経済的には時価(金利相場)の変動リスクや借手の信用リスクが契約当事者に生じるため、厳密には契約締結日に先渡契約としてその発生を認識すべきものである。
- 239. これに対し、伝統的な会計処理基準の考え方に基づき現金の受渡しがなければ、貸付金又は借入金は発生せず認識しないという考え方がある。これは貸借契約が要物契約であることに基づく。要物契約であれば、契約締結日は資金貸借日と同一日となるが、現実には契約締結日と資金貸借日が異なる場合もある。この場合、契約を締結したときを現金受渡しの実行日と解釈することになる。また、貸手側の金融資産である現金の消滅は、現金に対する支配が他に移転したときであるから、現金の受渡しがない場合、支配が移転していないので貸付金を認識できないと主張する。
- 240. 消費貸借は、借主が貸主から一定の金銭その他の代替物を受け取り、これと同種・同等・同量の返還を約することによって成立する契約である(民法第587条)。すなわち、借主が金銭その他のものを受け取ることによって初めて成立する。したがって、この契約からは借主の返還義務が生じるだけであって、貸主の義務(貸すべき義務)は生じない片務契約であると解されている。しかし、要物性を厳重にいうと今日の実際の取引にあたって極めて不自由なことになる。例えば、公正証書を作成し抵当権の設定登記を済ませる等すべての手続が済んでから銀行は資金を渡すが、厳格にいうと消費貸借は資金を渡したときに初めて成立するから、このような手続では公正証書も抵当権も無効となる。それでは実務上堪えられないことになる。学説・判例は、このような事情を背景として、次第に消費貸借の要物性を緩和する傾向を示すに至っている。両当事者の単純な合意、すなわち貸主が金を貸すと約し、借主が返還すると約しただけで消費貸借が成立する(諾成的消費貸借)という考え方、言い換えれば、契約によって、貸主は貸す義務を負担し、借主は借りないうちは返還しないという抗弁権を伴う返還義務を負担するという理論を前提としないと要物性の緩和策を説明できないから、このような範囲の契約の自由はこれを認めても何ら不都合がないものとする考え方もある。
- 241. 固定金利の貸付金又は借入金につき、約定日から受渡日までの期間が通常の期間よりも長い場合には、金利先物の先物価格と同様に、通常の期間内に受け渡す現金の貸付利子率に受渡日までの期間の金利等が反映された先渡利子率となるので、本来、先渡契約として約定日に認識し、決算日における受渡日の先渡利子率で時価評価すべきものである。しかし、金融商品会計基準はそこまでの時価評価を要求していないと考えられる。
- 金融商品会計基準によれば、金銭債権も金銭債務も償却原価を貸借対照表価額とし、両者とも市場リスク及び信用リスクを反映せず時価評価しないから、契約日と受渡日との評価額は同一となる。また、継続的な取引を行っている場合、金銭消費貸借の約定日と現金の受渡日は通常同一である。そこで、金融商品会計基準の趣旨に沿い貸付金と借入金は受渡しの実行日に認識するものとした。
有価証券の消費貸借契約等
- 241-2. 有価証券の消費貸借契約等は、借手が有価証券を売却又は担保という方法で自由に処分できる権利を有するが、受入日には自由処分可能な借り入れた有価証券と対応する返還義務を認識する必要はなく、その時価を注記すれば足りるものとした。ただし、当該借り入れた有価証券を売却した場合には、その返還義務を負債として計上する必要があるため、時価でもって受入処理を行い、これについては時価の注記対象から除くこととした。
- 借り入れた有価証券を売却して受入処理する時期については、有価証券の認識基準として約定日基準を採用していれば、約定日に受入処理を行わなければならないこととした。
- また、担保差入の場合には、受入処理を行う必要はなく、自己保有部分と区分して担保差入有価証券の時価を注記することとした。ただし、借り入れた有価証券の担保差入部分について、担保受入有価証券の再担保差入部分と区分することが困難な場合には、それらの合計額で注記を行うことができる。
自由処分権を有する担保受入金融資産
- 242. 担保として現金を受け入れた場合には、当該現金と対応する返還義務を実質的な金融取引として計上する。
- 融資等に関連し、貸手が現金以外の金融資産を受け入れ、それについて売却又は再担保という方法で自由に処分できる権利を有する場合には当該金融資産を売却又は再担保することができ、売却又は再担保した場合には返還義務のみが残るが、担保受入日には自由処分可能な担保受入金融資産と対応する返還義務を認識する必要はなく、その時価を注記すれば足りるものとした。ただし、当該担保受入金融資産を売却した場合には、その返還義務を負債として計上する必要があるため、時価でもって受入処理を行い、これについては時価の注記対象から除くこととした。
- 担保受入金融資産を売却して受入処理する時期については、通常はその受渡日に消滅の認識要件を満たすため、受渡日に担保金融資産の受入れと売却処理を行うことを原則とするが、有価証券についてはその認識基準として約定日基準を採用している場合、約定日に受入処理を行わなければならないこととした。
- また、再担保の場合には、受入処理を行う必要はなく、自己保有部分と区分して再担保差入金融資産の時価を注記することとした。ただし、担保受入有価証券の再担保差入部分について、借り入れた有価証券の担保差入部分と区分することが困難な場合には、それらの合計額で注記を行うことができる。
当初認識時の測定
- 243. 取引を実行するために必要な知識を持つ自発的な独立第三者の当事者が金融資産又は金融負債の売買、交換又は引受けを行う場合、当該取引は時価に基づく等価交換により行われる。
- したがって、取得した金融資産又は引き受けた金融負債の時価が支払った対価又は受け取った対価と異なる場合には、当該差額は、その取引の実態に応じて処理する。
金融資産の消滅の認識
金融資産の財務構成要素
- 244. 金融資産を一体としてそのリスクと経済的価値のほとんどすべてが第三者に移転した場合に当該金融資産の消滅を認識する「リスク・経済価値アプローチ」に対し、「財務構成要素アプローチ」は、金融資産を構成する財務構成要素の一部に対する支配が第三者に移転した場合に移転した当該財務構成要素の消滅を認識し、留保される財務構成要素の存続を認識する。
- 財務構成要素には、将来の現金の流入、回収コスト又は信用リスク及びその他の要素として期限前償還リスク等がある。
- 財務構成要素アプローチの考え方は、元利のある債券又は債権について、元本部分と金利部分を分離して流動化したり、債権又は金利の一部を譲渡する時代の要請に適合する。
譲受人の契約上の権利が譲渡人及びその債権者から法的に保全されていること
- 245. 契約又は状況により譲渡人は譲渡を取り消すことができる場合、又は譲渡人が破産、会社更生法、民事再生法等の下に置かれたときに管財人が譲渡金融資産に対し返還請求権を行使できる場合は、譲渡された金融資産に対する譲受人の契約上の権利が譲渡人及びその債権者から法的に保全されていない。したがって、このような場合、金融資産の消滅を認識しない。
- 246. 「法的に保全されている」とは、譲渡人に倒産等の事態が生じても譲渡人やその債権者等が譲渡金融資産に対して取り戻す権利を有していないこと等、譲渡された金融資産が譲渡人の倒産等のリスクから確実に引き離されていることが必要とされている。したがって、第三者対抗要件の具備留保では、この要件を満たしていない。また、譲渡人の債権者には、譲渡金融資産に係る債務者が譲渡人に対する債権を有する場合の当該債務者も含まれ、当該債務者は当該債権と譲渡された金融資産とを相殺することができると解されていることから、第三者対抗要件を満たした上で、債務者対抗要件を満たす必要があることになる。なお、債務者対抗要件を満たした時点で存在する債務者の譲渡人に対する債権は譲渡された金融資産と相殺できると解されている。
- しかし、動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律(以下「債権譲渡特例法」という。)では容易に第三者対抗要件を満たす方法が定められているが、債務者対抗要件については債務者の保護の立場から、そのような措置を採っていない。現状では債務者対抗要件を満たす行為は一般的ではなく、手間も費用もかかる。金融商品会計基準は法的保全として第三者対抗要件を想定していると解され、また、債権譲渡特例法による債権の流動化については、債権流動化の促進を阻害しないため債務者対抗要件を満たしていない場合でも例外的に債権の消滅を認めてよいと考えた。
- 247. 指名債権の譲渡は、民法第467条により、譲渡人が債務者に通知し、又は債務者がこれを承諾しなければ、これをもって債務者その他の第三者に対抗することを得ないとし、当該通知又は承諾は確定日付のある証書をもってしなければ債務者以外の第三者に対抗することを得ないとしている。したがって、民法の下では第三者対抗要件を満たせば同時に債務者対抗要件を満たすことになる。
- 一方、債権譲渡特例法に基づき指名債権であって金銭の支払を目的とした債権を譲渡した場合、同法第4条により、当該債権の譲渡につき債権譲渡登記ファイルに譲渡の登記がされたときは、当該債権の債務者以外の第三者については、民法第467条の規定による確定日付のある証書による通知があったものとみなされ、当該登記の日付をもって確定日付とされる。しかし、債務者対抗要件を満たすには、債務者譲渡登記証明書の交付による通知又は債務者の承諾が必要である。
- 248. 譲渡された金融資産が譲渡人及びその債権者の返還請求権の対象となる状態にあるかどうかは、法的観点から判断されることになるが、個々の状況において法的に有効かどうか判断することであり、高度な法律上の解釈を要する場合には、弁護士等法律の専門家の意見を聴取する必要がある。
支配の移転が認められる譲渡制限
- 249. 譲受人に最も有利な第三者からの購入の申込みと同一条件による譲渡人の優先的買戻権がある場合には、譲受人にとって第三者に売却するのと同じ結果が得られる。譲受人が売却又は担保差入時に回収又は債務者の不都合にならないかどうかについて譲渡人の事前の承認を要する場合には、不合理に留保する場合を除いて、譲受人に譲渡制限があるというほどのものではない。
- また、譲受人が譲り受けた金融資産を多数の第三者に売却することができる場合、譲渡人の競争相手へ売却を禁止しても、当該競争相手以外に自由に売却できるので譲渡制限がない場合と同様の結果が得られる。しかし、当該競争相手が唯一の潜在的な買手である場合には制約となるため、支配の移転とは認められない。
支配の移転が認められる譲渡人の買戻権
- 250. 譲渡人に買戻権がある場合でも、譲渡金融資産が市場からいつでも取得することができるときには、譲受人は売却など当該金融資産を自由に処分しても、譲渡人から買戻権の行使を受けたときに市場からいつでも取得して売り戻すことができる。また、たとえ譲渡金融資産を市場からいつでも取得することができるとは限らない場合であっても、再取得価格が、譲渡人が買い戻す時の時価であるときは、譲受人は第三者に対して売却する場合と同一の現金を獲得できる。したがって、このような場合は当該金融資産に対する支配が移転していると考えることができる。
- 他方、譲渡金融資産が市場からいつでも取得できるものでなく、かつ、譲渡人の買戻価格が固定価格であるものについては、譲受人は、いつ譲渡人から買戻権の行使を受けるかわからないので当該金融資産を自由に処分することができず、また、買戻価格も固定価格で確定している場合、譲受人は当該金融資産の契約上の権利を通常の方法で享受できないから、支配は移転していない。
- また、流動化した金融資産の残高が当初金額の一定割合を下回った結果、回収サービス業務コストの不経済性から譲渡人が当該残高を買い戻すクリーンアップ・コールについては、重要性の観点から支配の移転を認めることとした。
割引手形及び裏書譲渡手形
- 251. 手形割引は、手形の所持人が満期前に第三者に手形を譲渡し、その対価として譲渡の日以後満期に至るまでの金利相当額(割引料と呼ばれる。)を手形額面金額から差し引いた金額を受け取る取引である。手形を譲り受けた金融機関は、満期日まで所持し手形債務者から手形代金を取り立てることもできるし、また、満期前に当該手形を他の金融機関に譲渡(再割引という。)して、資金を回収することもできる。
- このような場合、手形行為そのものとしては、通常、裏書譲渡が行われる。
- 252. 銀行取引約定書(ひな型)には、手形割引の法律構成を売買とすることが明示されていた。当該約定書の「差引計算」においては、「弁済期にある割引人の預金その他の債権と割引人の銀行に対する債務とを、その債務の期限が未到来であっても、割引人は相殺できる。」とした上で、「満期前の割引手形について、割引人が前項により相殺する場合には、割引人は手形面記載の金額の買戻債務を負担して相殺できるものとする。ただし、銀行が他に再譲渡中の割引手形については相殺することができない。」とされていた。
- この規定により割引人に買戻権があると解する考え方がある。この割引人の買戻権は買戻額が手形額面金額であることから割引人にとって経済的に不利であり、本実務指針が前提としている譲渡人の譲渡金融資産に係る買戻権とは性質を異にしている。また、ただし書きで「銀行が他に再譲渡中の割引手形については相殺することができない」とされていることから、割り引いた手形に係る自由処分権は銀行にあることは明白である。したがって、手形に対する支配は割引時に移転したものと考えられる。
- 253. 企業が輸出取引に係る為替手形を為替銀行へ取り組むと、当該銀行は当該手形を買い取り、輸出先の取引銀行に取立てに出し代金を回収する。したがって、企業は、為替手形を為替銀行に取り組んだ時点で手形債権の発生と消滅の認識を同時に行う。
金融資産の消滅時に何らかの権利・義務がある場合における「残存部分」と「新たな資産・負債」の時価を合理的に測定できない場合
- 254. 削 除
クロス取引
- 255. 同一の金融資産が売却の直後に購入された場合又は購入の直後に売却された場合で、かつ、譲受人から譲渡した金融資産を再購入又は回収する同時の契約がある場合には、金融商品会計基準第9項(3)「譲渡人が譲渡した金融資産を当該金融資産の満期日前に買戻す権利及び義務を実質的に有していないこと」を満たしていないので、取引所取引、相対取引にかかわらず、金融資産の契約上の権利に対する支配が他に移転していない。
- 契約書上、買戻す権利及び義務を取り決めていない場合又は売却と購入が別々の契約であっても、譲渡価格と購入価格が同一の場合、又は譲渡の決済日と購入の決済日との期間の金利調整が行われた価格である場合には、譲渡人は再購入又は回収する同時の契約があると推定することとした。
金融資産及び金融負債の評価及び会計処理
金融資産及び金融負債の評価
時価の定義
- 256. 削 除
市場価格に基づく価額
- 257. 削 除
合理的に算定された価額
- 258. 削 除
- 259. 削 除
- 260. 削 除
付随費用の取扱い
- 261. デリバティブを除く金融資産の取得時における付随費用を、取得した金融資産の取得価額に含めることとしたのは、金融資産以外の資産の場合、原則としてその付随費用を資産の取得価額に計上しており、金融資産についてもその処理方法と同様にすることが適当であると考えたからである。
有価証券
有価証券の範囲
- 262. 金融商品取引法による規制の対象外とされている金融資産の中にも、金融商品会計基準に定める有価証券として取り扱うことが適当と認められるものがあるため、本実務指針では、金融商品会計基準に従いこれらを有価証券として取り扱うこととした。また、金融商品取引法による規制上の有価証券であっても、企業会計上の有価証券として取り扱うことが適当であるとは認められないものは、有価証券として取り扱わないこととした。ただし、この取扱いは、金融商品取引法における有価証券の定義について新たな解釈を示したり、その種類を追加・除外することを意図しているものではない。
有価証券の保有目的区分
- 263. 金融商品会計基準第64項では、金融資産について、「一般的には、市場が存在すること等により客観的な価額として時価を把握できるとともに、当該価額により換金・決済等を行うことが可能である。」ため、これを時価評価し、適切に財務諸表に反映することが必要であるという立場が取られている。ただし、金融資産の属性及びその保有目的に鑑み、実質的に価格変動リスクが認められない場合や、売買・換金を行うことが事業の遂行上から制約される場合も考えられることから、時価評価を基本としながらも、保有目的に応じて、売買目的有価証券、満期保有目的の債券、子会社株式及び関連会社株式並びにその他有価証券の各区分への分類を行うこととし、それぞれについて評価及び会計処理の方法を定めている。
- このように、有価証券の保有目的区分を決めるにあたっては、経営者の保有意図に基づくものとしているため、取得時にその保有目的に基づいて各区分に分類された有価証券は、取得後においても継続してその分類区分の要件を満たしていることが必要であり、各保有目的区分の定義・要件に反する売買取引事実が認められたならば、分類の見直しを行うことになる。
有価証券の時価評価等
株式の時価評価
- 264. 削 除
債券の時価評価
- 265. 削 除
投資信託の時価評価
- 266. 削 除
- 267. 削 除
売買目的有価証券
売買目的有価証券の定義
(売買目的有価証券に分類すべきもの)
- 268. 企業が、時価の変動による価格差に基づいた利益を得るために有価証券を取得する目的には、短期的な差益の獲得に狙いを置くこともあれば、中長期的な値上がりを見込んでいる場合も考えられるが、本実務指針では、取得後、主として短期間の価格の変動に基づいて利益を獲得するために保有する有価証券を売買目的有価証券とすることとした。したがって、一般的なトレーディング取引の性格から同一銘柄の有価証券の売買が繰り返されることを想定しているが、相場の変動等によっては単発的な取引として売買が行われることもあり得る。
- 金融商品会計基準第70項では、売買目的有価証券は、売却することについて事業遂行上等の制約がないものとしているが、経営者の意図だけでいつでも売却可能であることを判定することは恣意的になる可能性があるため、本実務指針では、上記に加えて独立の専門部署によってトレーディングが行われているという外形的な状況を備えることが望ましいものとした。他方、独立部署を有していなくとも、有価証券を短期的に頻繁に売買し、売却益を目的とする大量の取引を行っていると認められる客観的状況を備えている場合にも、当該有価証券は売買目的有価証券に区分することとした。
(売買目的有価証券に準ずるもの)
- 269. 金銭債権等の金融資産のうち、トレーディング目的で保有するものについては、売買目的有価証券に準じて取り扱うものとする。ただし、この対象となる金融資産は、流動性が高く、かつ、時価の算定が容易なものでなければならない。
売買目的有価証券の会計処理
(評価差額の処理)
- 270. 売買目的有価証券の時価の変動(評価差額)は、実現したものではないが、その発生した期間における企業の財務活動の成果を表すものであり、実現の要件をほぼ満たすものであるため、実現損益に準ずる性格のものとして当期純損益に含めるものとした。
(売却原価の算定)
- 271. 同一銘柄の有価証券を複数の保有目的区分に分類して保有することは禁止されない(第59項参照)が、売買目的有価証券の区分を含む複数の区分に分類されている銘柄の有価証券を売却した場合に、どの保有目的区分の有価証券の売却であるか明確に判断できないと損益の操作が容易となるため、これについての何らかの基準が必要となる。トレーディング部門の管理の下に保有されている銘柄と同一の有価証券が、他の資金運用部門等によってその他有価証券として保有されている場合のように、各保有目的区分の有価証券が明確にそれぞれの組織で分別して管理されている環境であれば、売却した有価証券を特定化することが可能である。しかしながら、本実務指針では、それぞれの保有目的区分の有価証券が独立した専門部署等によって明確に分別管理されていない状況にあっては、同一銘柄の有価証券を売却した場合に、いずれの区分の有価証券を売却したかについての任意の選択処理を認めないこととするため、まず売買目的有価証券から売却したものと推定することとした。
満期保有目的の債券
満期保有目的の債券の定義
- 272. 債券は、すべてが満期保有目的として認められるのではなく、満期保有目的の債券への分類を可能にするためには、価格変動のリスクがないことが必要である。そこで、満期保有目的の債券の適格要件として、あらかじめ定められた償還日において額面金額による償還が予定されていることとした。したがって、当該要件を満たせば、約定金利については固定利付若しくは変動利付、又はゼロ・クーポン債であっても満期保有の要件に抵触しない。
- 債券のうち転換社債型新株予約権付社債については、償還日において額面金額による償還が予定されているが、株価が行使価格を超えて上昇した際に売却又は株式転換権の行使請求を行わないことは企業にとって合理的な投資行動とはいえず、一般的には満期まで保有することを想定しにくいため、基本的には満期保有目的になじまないとした。ただし、転換社債型新株予約権付社債であっても、株価が行使価格に比して大幅に下落したため、株式転換権の行使が将来的に全く期待し得ない状況において、転換社債型新株予約権付社債を普通社債と同様に最終利回りに着目して取得する場合には、満期保有の条件を満たすこともある。
- なお、永久債であっても、その契約条項等からみて償還が実行される可能性が高ければ、当該償還予定日を満期日に準ずる日とみなすことができるため、満期保有目的の条件を満たし得るものとした。また、抽選償還の特約がある債券やコーラブル債については、その償還が保有者側の意図に基づくものではないことから、中途償還が実行される可能性があるとしても満期保有の条件が否定されるものではないとした。他方、プッタブル債のように、保有者側の権利として償還権が付与されている場合には、満期保有の意思が否定されることになる。
満期保有目的の債券の要件
- 273. 株式と同様に、債券も本来は価格変動リスクを負っているが、金融商品会計基準では、満期まで所有する意図をもって保有する債券については、満期までの金利の変動による価格変動のリスクにさらされることがないことから、取得原価をもって貸借対照表価額とするものとされている。したがって、これは債券の保有に伴うキャッシュ・フローを満期まで保有することによりあらかじめ確定させようとする企業の合理的な投資行動を、時価評価の例外的な取扱いとして認める趣旨である。このため、「満期まで所有する積極的な意思」という主観的な要件だけでなく、「満期まで所有する能力」という外形的な要件も必要であるとして、満期保有目的を厳格に定義することとした。
- なお、安易に満期保有目的の債券に分類することによって時価評価から逃れることを抑止するため、満期保有目的の要件は債券の取得時点に備えていることが必要であり、他の保有目的で取得した債券について、例えば、時価が下落して評価損が発生したことを理由に、満期保有目的の債券へ振り替えることは認められない。
満期保有目的の債券の会計処理
(償却原価の算定)
- 274. 債券の取得の際に生じる取得差額の要因としては、クーポンレートと取得時の市場利子率との調整に基づくものが通常であるが、発行後に発行体の信用力の重要な低下により市場価格が下落した債券を購入した場合には、取得差額は金利調整差額以外の部分から構成されることになる。償却原価法においては、債券が予定された期日に債券金額で償還されることが前提とされている点から、本実務指針では、取得差額が金利調整差額から構成されている場合のみ償却原価法を適用できることとした。なお、満期保有目的の債券は、当該保有目的区分へ分類するための要件から、信用リスクの高くない債券が対象となるため、一般に、取得差額は金利調整差額のみから構成されるものとみなすことができる。
- 以上のように、取得差額のうち償却原価法の対象とされるのはクーポンレートと市場利子率との調整部分であるから、その適用によって取得価額に加減する金額の性格は有価証券利息にほかならない。したがって、償却原価法の処理方法は、利息の合理的な期間配分を目的とする利息法によることを原則とすべきであるが、当該方法の計算の複雑性を考慮して、継続適用を条件として、簡便法である定額法によることもできることとした。
(売却原価の算定)
- 275. 有価証券の評価方法としては、個別法、先入先出法及び平均法のいずれかを適用することが考えられる。このうち、個別法は売却対象銘柄の選定において恣意性が働く可能性を否定できないため、採り得ないものとした。したがって、償却原価法を適用するにあたって、定額法を採用する場合には、先入先出法又は平均法のいずれかを採用することになるが、利息法の場合には、その特質から、売却原価の算定方法として平均法では適用が困難なため、先入先出法によることとした。
その他有価証券
- 276. その他有価証券のうち、金利の調整(クーポンレートと取得時の市場利子率との調整)と認められる取得差額が生じている債券については、満期保有目的の債券と同様に、利息の合理的な期間配分を目的として償却原価法を適用して有価証券利息の修正を行うこととした。したがって、その他有価証券に係る評価差額の処理方法として、全部純資産直入法と部分純資産直入法のいずれを採用していても、償却原価法により有価証券利息の修正として処理された金利調整差額部分は、当期の純損益に含められることになる。時価のある債券については、取得後も市場利子率の変動等に起因して時価が変動するため、時価と償却原価との差額が評価差額として計上されることになるが、当該評価差額については、企業が採用する全部純資産直入法又は部分純資産直入法のいずれかの方法により処理する。
有価証券の消費貸借契約等の会計処理
- 277. 貸手は、返還期日に貸し付けた有価証券と同一種類の有価証券の返還を受ける権利を有するので、貸付期間中の現物の自由処分権はないものの、返還を受けた後は貸手にとって当該有価証券を保有していた場合と同一結果となるから、保有していた有価証券の評価方法を継続適用することが妥当である。ただし、有価証券を貸し付けている旨と金額(貸借対照表価額)の注記を行わなければならないこととした。
- 借手は、借り入れた有価証券を自由処分権に基づき売却又は担保差入れができるが、受け入れた有価証券について担保受入金融資産と異なる取扱いをする合理的な理由はないため、売却により未収入金の計上又は現金の受入れがあるまで、その返還義務を貸借対照表に計上する必要はないものとした。また、担保受入金融資産に準じて、注記対象となるものについても、自己保有部分と担保差入部分とに区分しなければならないものとした。
- 消費貸借は、借手にとって借り入れた有価証券と同一銘柄、同一グループに属するもの(証券番号は違っていてもよい。)を同量返還することを約する契約であるため、法律上は譲渡と解されている。債券に係る消費貸借契約等で、償還日に額面に相当する額を現金をもって返済する取決めが行われている場合には、金融資産の消滅の認識要件(金融商品会計基準第8項及び第9項)を満たしているため、貸手は、貸付時に当該債券の売却処理を行う必要があり、借手も、債券の取得として認識しなければならないこととなる。
- 他方、使用貸借・賃貸借は、借手にとって借り入れた有価証券と同一銘柄、同一証券(証券番号も同一)のものを返還することを約する契約であるため、通常、借手は売却できないが、担保差入れ、再使用貸借又は再賃貸借はできる。したがって、担保差入れ等という自由処分権がある旨及び貸借対照表日の時価の注記が必要である。
- 借り入れた有価証券の売却時に、借手が、いったん借方に保管有価証券を、貸方に売却借入有価証券を時価で計上する一方で、別途、借方に未収入金又は現金を、貸方に売付有価証券を計上し、売付有価証券を時価評価すると、同一の有価証券に係る負債が売却借入有価証券と売付有価証券とで二重計上されることとなるので、保管有価証券と売付有価証券とは相殺し、売却時の時価(保管有価証券の計上額)と売却価額(売付有価証券の計上額)との差額を、純損益に計上することとした。
有価証券の信託
- 278. 有価証券の信託は、有価証券を保有するという点で金銭の信託との類似性が高いことを理由に金銭の信託に準ずるとする考え方もあるが、有価証券の信託は、自己の保有していた有価証券を主に管理のために信託設定するものである。したがって、信託の器としての性質から有価証券を直接保有する場合との類似性を優先して、その場合と同様の判定基準によって保有目的区分ごとに信託財産構成物である有価証券の分類を行うとともに、評価及び会計処理を行わなければならないこととした。
- ただし、退職給付に充てるために年金資産を積み立てることを目的として退職給付信託を設定し、事業主の保有する株式等を当該信託に拠出した場合の会計処理については、本実務指針の対象外であるため、退職給付会計基準及び企業会計基準適用指針第25号「退職給付に関する会計基準の適用指針」に従う必要がある。
売却原価の算定区分
- 279. 同一銘柄の有価証券を複数の保有目的区分に分類した場合に、売却原価の算定においてこれらを通算することは、金融商品会計基準が売買目的有価証券、満期保有目的の債券、子会社株式及び関連会社株式並びにその他有価証券の各保有目的に着目して、それぞれ異なった評価方法及び処理方法を定めている趣旨に反することになるため、売却原価は保有目的区分ごとに一定の評価方法を適用して算定することとした。
有価証券の保有目的区分の変更
有価証券の保有目的区分の変更理由
- 280. 保有目的区分が変更されるケースとして、第80項では4つの場合を挙げているが、具体的には、次のような状況が考えられる。
- (1) 資金運用方針の変更又は特定の状況の発生に伴って、保有目的区分を変更する場合
企業環境等の外部要因や経営者の交替などに伴って、例えば、有価証券の短期的な売買(以下「トレーディング取引」という。)を開始することとした場合に、自己の保有するその他有価証券の一部を売買目的有価証券へ振り替えることが想定される。逆に、有価証券のトレーディング取引を行わないこととした場合には、すべての売買目的有価証券がその他有価証券に振り替えられる。ただし、売買目的有価証券の一部の銘柄のみを他の保有目的区分へ振り替えることは認められない。
また、第83項では、特定の状況(①から⑥)が生じた場合には、満期保有目的の債券を他の保有目的区分へ振り替えることを認めている。 - (2) 本実務指針により、保有目的区分の変更があったとみなされる場合
第83項では、満期保有目的の債券の一部を正当な理由なく他の保有目的区分の有価証券に振り替えたり、償還期限前に売却したときは、満期保有目的の債券に属する他の債券について保有目的の変更があったものとして、他の保有目的区分に振り替えなければならないとしている。 - (3) 株式の追加取得又は売却により持分比率等が変動したことに伴い、保有目的区分を変更する場合
株式の追加取得や増資の引受け等により持分比率が増加して、従来子会社又は関連会社でなかった会社が子会社又は関連会社に該当するようになった場合や、株式の一部売却等により持分比率が低下して、子会社又は関連会社でなくなった場合が考えられる。 - (4) 法令又は基準等の改正により、保有目的区分を変更する場合
法令又は基準等の改正があったことにより、保有目的区分の変更が求められる場合に、当該法令又は基準等の改正に従って保有目的区分を変更することがこれに該当する。
有価証券の保有目的区分等変更時の評価及び会計処理
(保有目的の変更が禁止される場合)
- 281. 本実務指針では、保有目的区分を厳格にすることにより判断の恣意性を排除することとしており、原則として取得当初の保有目的を取得後に変更することは認めず、第80項に示すとおり、保有目的区分の変更が認められる場合を限定している。このため、例えば、売却可能性が否定できなかったためその他有価証券にいったん分類した債券を、その後満期まで保有することに意思決定を行ったとしても、満期保有目的の債券に振り替えることはできないものとした。
- 282. 満期保有目的の債券の要件を厳格に定義したことから、その一部の他の保有目的区分への振替又は償還期限前の売却に制限を設けている。ただし、以下の状況において売却した場合には、売却価額が満期償還金額とほぼ同額となるため、満期の到来に基づく償還とすることができる。
- ① 債券の売却が満期日に極めて近い時点で行われていること。
- ② 割賦償還等により取得時の元本のうちの大部分が償還された銘柄について、残りの債券を売却すること。
(保有目的等の変更が認められる場合の評価及び会計処理)
- 283. 有価証券の保有目的区分の変更を行う場合における振替時の評価額は、原則として、変更前の保有目的区分に係る評価基準によるものとした。したがって、貸借対照表価額として時価を付していた売買目的有価証券から他の保有目的区分への変更の場合には時価で振り替え、振替時に生じる評価差額は、売買目的有価証券に係る評価差額として当期の純損益に計上することになる。また、償却原価で処理していた満期保有目的の債券を売買目的有価証券又はその他有価証券へ振り替える場合には償却原価で振り替え、取得原価で処理していた子会社株式又は関連会社株式を売買目的有価証券又はその他有価証券へ振り替える場合には取得原価で振り替えることになる。
- このような考え方によれば、株式の追加取得等によりその他有価証券を子会社株式又は関連会社株式へ振り替える場合には、該当時の時価で振り替えることになると考えられる。しかし、企業会計基準第21号「企業結合に関する会計基準」第25項において、「個別財務諸表上、支配を獲得するに至った個々の取引ごとの原価の合計額をもって、被取得企業の取得原価とする。」とされていることから、当該会計処理と整合性を保つため、その他有価証券を子会社株式又は関連会社株式へ振り替える場合には、例外的に、変更前の保有目的区分に係る評価基準による評価額ではなく、帳簿価額で振り替えることとした。
- また、その他有価証券から売買目的有価証券へ振り替える場合も、例外的に振替後の保有目的区分に係る処理に準ずることとした。
有価証券の減損処理
- 283-2. 時価又は実質価額が取得原価を大幅に下回ったことにより当期の純損益として評価損を認識する有価証券の減損について、取得原価の強制的な切下げを伴うことから、「強制評価減」と称されていた。
- 金融商品会計基準により、売買目的有価証券及びその他有価証券について、原則的に時価をもって貸借対照表価額とされ、毎期末に時価評価が強制されることとなった。本実務指針における「減損」は、この強制評価と区別するために、評価差額が純損益に計上される売買目的有価証券以外の有価証券に係る時価又は実質価額の著しい下落に伴って、当該時価又は実質価額を翌期首の取得原価とするために、取得原価を強制的に切下処理し、当該切下額を当期の損失として認識すべき場合を指す用語として用いることとした。
時価のある有価証券の減損処理
- 284. 売買目的有価証券以外の時価のある有価証券について、時価が取得原価に比べて50%程度以上下落した場合には、合理的な反証がない限り、回復する見込みのないほど著しい下落があったものとみなして、減損処理を行わなければならないものとした。
- さらに、たとえ50%程度を下回る下落率であっても、状況によっては時価の回復可能性がないとして減損処理を要する場合があることから、時価の著しい下落があったものとして、回復可能性の判定の対象とされることもある。この場合、時価の著しい下落率についての固定的な数値基準を定めることはできないため、状況に応じ個々の企業において時価が「著しく下落した」と判定するための合理的な基準を設け、当該基準に基づき回復可能性の判定の対象とするかどうかを判断するものとした。
- なお、個々の銘柄の有価証券の時価の下落率がおおむね30%未満の場合には、一般的には「著しく下落した」ときに該当しないものと考えられるとした。これは、その程度の下落率は、発行会社の業績の悪化ではなく市場要因などによって生じることがあり、したがって、容易に時価が取得原価の水準にまで回復することがあると考えられるからである。しかしながら、たとえ30%未満の下落率であっても、発行会社の業績の悪化や信用リスクの増大などによって生じることもあるため、30%未満の下落率を合理的な基準として設定することを妨げない。
- 時価が「著しく下落した」と判断するための合理的な基準については、時価の下落率のほか、債権管理目的上の対象会社の信用リスクに係る評価結果等を加味して設定することができるものとする。恣意性を排除するために、「合理的な基準」については文書をもって設定しておき、毎期継続的に適用することが必要である。また、設定した「合理的な基準」については、その内容を注記において説明することが望ましい。
- 個々の銘柄の有価証券のうち合理的な基準に該当するものについては、時価の回復可能性の判定を行い、減損処理の要否を決定しなければならない。
- 株式の場合の回復可能性については、当該銘柄に回復する見込みがあるとする合理的な根拠を示し得ることが必要であるとし、漠然とした回復可能性の期待に依拠した楽観的な判断は認めないこととした。本実務指針第91項では、時価が回復する見込みがあるとは認められない状況を例示しているが、これらの状況は通常回復する見込みが少ないと一般的に考えられる例示であるので、十分な根拠に基づいて反証できるのであればこの限りではない。例えば、保有株式についての時価の下落が、特定の銘柄について、対象会社固有の要因や当該会社が属する業界や地域などに特有の要因で変動が生じているものであれば、個別に回復可能性の判定を行うべきであるが、短期的な景気循環や市場における金利や為替等の諸要因の変動によって、おおむね株式市場全体について生じている場合などで、固有の変動要因等がない銘柄については回復する見込みがあると通常は判断できる。
- 一方、債券の場合の回復可能性については、下落の原因により判定することとし、単に市場金利の上昇に起因し、保有期間中いずれ時価の下落が解消する見込みがある場合には回復可能性があると認め、他方、信用リスクの増大に起因する場合には、十分な根拠に基づいて反証ができる場合を除き、回復可能性はないと判断するものとした。
- 2019年に金融商品会計基準が改正されたことによって、その他有価証券の期末の貸借対照表価額に期末前1か月の市場価格の平均に基づいて算定された価額を用いることができる定めは削除されたが、2019年の金融商品会計基準の改正は時価の算定方法を変更するものであり、減損を行うか否かの判断基準を変更するものではないため、減損の判断が合理的な範囲で幅のある定めとなっていることを踏まえて、減損処理における時価の下落率の判断にあたっては、期末前1か月の市場価格の平均に基づいて算定された価額を用いることができる取扱いを踏襲するものとした。
市場価格のない株式等の減損処理
- 285. 市場価格のない株式等の実質価額の算定の基礎となる発行会社の財政状態を算定するにあたっては、発行会社の財務諸表を無条件に使用するのではなく、原則として、資産等の時価評価に基づく評価差額等を加味して算定するものとした。これは、時価評価に基づくより実態に近い財政状態を算定した上で、その悪化についての判定を行うという趣旨である。したがって、発行会社の財務諸表において資産等の時価評価が行われていない場合には、時価評価のための資料が合理的に入手可能である限り、それに基づいて財務諸表を修正する必要がある。
- なお、市場価格のない株式等であっても、子会社や関連会社等(特定のプロジェクトのために設立された会社を含む。)の株式については、実質価額が著しく低下したとしても、事業計画等を入手して回復可能性を判定できることもあるため、回復可能性が十分な証拠によって裏付けられる場合には、期末において相当の減額をしないことも認められるとした。ただし、事業計画等は実行可能で合理的なものでなければならず、回復可能性の判定は、特定のプロジェクトのために設立された会社で、当初の事業計画等において、開業当初の累積損失が5年を超えた期間経過後に解消されることが合理的に見込まれる場合を除き、おおむね5年以内に回復すると見込まれる金額を上限として行うものとする。また、回復可能性は毎期見直すことが必要であり、その後の実績が事業計画等を下回った場合など、事業計画等に基づく業績回復が予定どおり進まないことが判明したときは、その期末において減損処理の要否を検討しなければならない。
時価を把握することが極めて困難と認められる(市場価格がなく、かつ、時価を合理的に算定できない)債券の評価及び会計処理
- 285-2. 削 除
有価証券の未収配当金・利息等
- 286. 市場価格のある株式については、期末において時価で評価されるが、理論的には、株式の時価は、配当権利付き最終売買日の翌日で1株当たりの配当金相当額だけ下落している(以下「配当落ち」という。)。したがって、当該株式を保有することによる合理的な貸借対照表価額を算定するためには、受取配当金を同一の事業年度で認識することにより配当落ちによる時価の下落の影響を相殺させることが必要となる。そこで、市場価格のある株式については、各銘柄の配当落ち日(配当権利付き最終売買日の翌日)をもって未収配当金を見積計上することを原則的処理とした。なお、配当金の見積りは、前回の配当実績又は公表されている1株当たり予想配当額に基づいて行う。
- その他利益剰余金の処分による株式配当金(配当財産が金銭である場合に限る。)は、原則として受取配当金として計上されるが、これを受取配当金として計上すると、明らかに合理性を欠くと考えられる場合がある。例えば、帳簿価額に比して実質価額が低下しているものの減損処理に至っていない株式について、投資後に行われた資本金又は資本準備金による欠損てん補の額に満たない留保利益を原資とする配当を受領したような場合である。このような場合、配当を受領した株主は、重要性が乏しい場合を除き、有価証券の帳簿価額を減額処理することが適当である。
- 287. 投資信託を、期末において基準価格で評価する場合、当該基準価格は、計算期間の末日で収益分配金相当額だけ下落している(以下「分配落ち」という。)。したがって、株式の配当落ちと同様に、分配落ちによる時価の下落と収益分配金の計上とを同一の事業年度で認識することにより、投資信託に係る合理的な貸借対照表価額の算定を行わせることが必要となる。そこで、計算期間の末日をもって保有する投資信託に係る収益分配金を計上する方法を原則的処理とした。
- なお、追加型投資信託については、追加購入者の購入価格は追加設定時の基準価格を基礎として決定されるため、基準価格が元本を上回っている場合には、元本に上乗せ部分を加算した金額を払い込むことになる。したがって、追加購入者が受け取る収益分配金には、実質的に払込金からの払戻しの性格を有するものが含まれていることになる。しかし、収益分配金のうちどの部分が実質的に払込金からの払戻しに該当するかは、追加設定の時期、信託財産の運用状況、収益分配金の源泉等によって異なり、払戻相当額が明らかにされていない限り、これを特定することは難しい。そこで、購入後短期間に計算期間の末日が到来する場合で、収益分配金のほとんどが払込資金からの払戻しと認められる場合には、収益分配金を収益として計上せずに、当該投資信託の取得原価を減額処理するものとした。
金銭の信託
金銭の信託の範囲と構成物の処理
金銭の信託の保有目的区分
- 288. 金銭の信託は信託開始時に委託する財産が金銭である信託であり、金銭以外の財産である有価証券の信託、金銭債権の信託、不動産の信託は金銭の信託ではない。
- 運用を目的とする金銭の信託(合同運用を除く。以下同じ。)は、当該信託財産構成物である金融資産及び金融負債について、金融商品会計基準により付されるべき評価額を合計した額をもって貸借対照表価額とし、評価差額は当期の純損益として処理する(金融商品会計基準第24項)。また、運用目的の信託財産構成物である有価証券は、売買目的有価証券とみなし、時価で評価することとされている(金融商品会計基準(注8))。このため、金銭の信託が運用目的であるか否かが、信託財産構成物である有価証券の評価に影響を与える。金融商品会計基準は「運用」目的の内容を定義していないが、本実務指針では信託財産構成物の短期的な売買等で信託財産の価値を上昇させ、受益者に帰属させるものをいうとした。
- 金融商品会計基準第87項では、「特定金銭信託又は指定金外信託等については、一般に運用を目的とするものと考えられるので、有価証券の管理目的等運用以外の目的であることが明確である場合を除き、運用を目的とする金銭の信託と推定される。」とされており、金銭の信託を運用以外の目的に区分することを制限している。したがって、運用目的以外の区分の金銭の信託とするためには、それが客観的に判断できることが必要である。
- 運用以外の目的の例として、直接保有する債券との簿価通算を回避しながら満期保有目的の債券に投資する目的等が考えられるが、満期保有目的に区分するためには、信託契約において、原則として受託者に信託財産構成物の売却を禁止しており、かつ、信託期日と債券の償還期限とが一致していることなどが明確になっている必要がある。
- また、信託財産構成物である有価証券をその他有価証券に区分するためには、企業が当該信託を通じて有価証券等を保有する目的が運用目的又は満期保有目的のいずれにも該当しないという積極的な証拠を必要とする。金銭の信託については一般に運用目的と推定する旨が金融商品会計基準で定められているため、信託財産構成物である有価証券をその他有価証券に区分する場合には、現物有価証券をその他有価証券に区分する場合よりも強い根拠が必要であり、さらに、当該証拠は信託契約時に存在していることが必要である。また、信託設定後において、信託財産構成物である有価証券の売買を頻繁に繰り返していないという要件を付加しているが、これは実態的にも本実務指針第65項の売買目的有価証券の要件に該当しないことが必要であることを明らかにしたものである。なお、信託財産構成物である有価証券をその他有価証券に区分する場合には、評価差額を企業が直接保有するその他有価証券のそれと同様に処理する。
金銭の信託の会計処理
- 289. 特定金銭信託等の信託財産構成物の取得原価は、企業の保有する同一資産及び他の信託契約から簿価分離された取得原価に基づくこととした。運用目的以外の目的は客観的に判断できることを求めており、信託財産構成物である有価証券と企業が直接保有する有価証券の保有目的の共通性は低いものと考えられ、簿価分離することとした。
- なお、金銭の信託に係る損益は、本来、企業の各事業年度に合わせて計上すべきであるが、企業の期間損益を著しく歪めなければ、継続して信託の計算期間に基づき損益を計上することができる。
信託財産の受入れ
- 290. 金銭の信託の全部又は一部を解約して信託財産構成物である有価証券を現状のまま受け入れる場合、信託においては、その時点で改めて評価が行われないため、信託終了時の現状交付の受入価額は、受入時点において付されている帳簿価額とし、受入時点で評価差額は計上しないものとした。また、その時点で受入構成物について保有目的の変更を行う場合には、保有有価証券の保有目的区分の変更に伴う取扱いに準じることとした。
金融資産の信託受益権の保有者の会計
- 291. 金融商品会計基準は合同運用を除く金銭の信託のうち、運用を目的とするものについてのみ会計処理を定めている。本実務指針では、金銭の信託についての指針を本実務指針第97項から第99項で示し、有価証券の信託に関する指針を本実務指針第78項で示した。しかし、信託される金融資産は多様であり、金銭でも有価証券でもない金融資産(貸付金、保証金等)の信託受益権の評価方法を示す必要がある。その場合、信託を実体のある事業体として考えるのか、信託財産構成物の直接保有を擬制するのかが論点となる。
- 企業が自ら保有する金融資産を委託者兼受益者として信託した場合のように、信託受益者が単独の場合には、受益者が信託財産構成物を直接保有する場合と同様の評価方法によって受益権を評価することが適切である。また、受益者が複数であっても、受益権の性質が単一であれば、信託財産に対する持分に応じて信託財産構成物を直接保有する場合と同様の評価方法によって受益権を評価することが適切と考えられる。他方、受益者が多数の場合には、信託財産の部分的直接保有を擬制した評価が困難なことも考えられる。このような場合には、信託を実体のある事業体とし、その持分に投資しているものとした評価を行うこととした。
- 企業が自ら保有する金融資産を信託するとともに、信託受益権を優先と劣後に分割し、その劣後受益権を自らが保有して優先受益権を第三者に譲渡する場合、優先受益権を売却処理するためには、優先受益権が消滅の認識要件を満たして譲渡される必要がある。また、その際に自らが保有する劣後受益権は、新たな金融資産の購入としてではなく、信託した金融資産の残存部分として評価する必要がある。
- なお、信託の連結の要否及び金融資産以外の信託財産(例えば、不動産)に係る信託受益権売却の委託者にとっての会計処理は本実務指針の対象外である。
デリバティブ取引
非上場デリバティブ取引の時価評価
時価評価の方法
- 292. 削 除
時価評価の留意事項
- 293. 削 除
債 権
債務者の信用リスクを反映した債権の取得価額と償却原価法
- 294. 債権を債権金額と異なる価額で取得した場合において、債権金額と取得原価との差額が金利の調整だけでなく、信用リスクによって生じているときには、信用リスクによる部分を将来キャッシュ・フローの合理的な見積りに反映した上で、見積キャッシュ・フロー合計額と取得原価との差額について実効利子率を求め、償却原価法(利息法又は定額法)を適用することとした。償却原価法の適用に際して、割引率として実効利子率を用いるのは、一般には、債権の取得価額の決定において、それが取得時の市場利子率をおおむね反映しているものとみなされるからである。
- なお、債権のうちトレーディング目的で保有するものについては、売買目的有価証券に準じて取り扱われるため(第269項参照)、本実務指針の償却原価法及び貸倒見積高の算定は適用されない。
債権の区分
債権区分の原則法
- 295. 金融検査マニュアルにおいては、債務者をまず正常先・要注意先・破綻懸念先・実質破綻先・破綻先の5段階に区分することとしている(債務者区分)。そして当該債務者区分と担保保全の状態に応じてⅠ分類(非分類)・Ⅱ分類・Ⅲ分類・Ⅳ分類の4段階に債権を分類し、貸倒引当の方法について検査のためのガイドラインを示している。
- 金融商品会計基準における債権の区分と金融検査マニュアルの債務者区分との対応関係は、一般債権が正常先・要注意先に、貸倒懸念債権が破綻懸念先に、破産更生債権等が実質破綻先・破綻先におおむね相当する。また、金融再生法における要管理債権(3か月以上延滞債権・条件緩和債権)は要注意先に対する債権の一部であることから、一般債権に含まれることになる。
- しかしながら、一般事業会社では金融機関のような厳格な債権管理が行われていないのが通常であると考えられるため、金融機関の資産の自己査定における債務者区分と厳密に対応させる必要はないこととした。
債権区分の簡便法
- 296. 一般事業会社における債権管理は、債権の計上月又は弁済期限からの経過期間に応じて債権を区分した年齢調べ表等を用いて行われているのが一般的であり、このような簡便な債権の区分も実務的であり、合理的なものとした。なお、当該簡便な区分による場合、債務者の信用度合いに応じて、例えば、上場会社や一定以上の格付けを得ている会社は一般債権として、あらかじめ上記の区分の対象から除外しておくなどの考慮を行い、機械的な区分が行われないように留意することが必要である。
一般債権
一般債権の貸倒見積高の算定
(貸倒実績率法)
- 297. 一般債権には、経営状態に全く問題のない債務者に対する債権から、経営状態に軽微な問題はあるが貸倒懸念先には該当しない債務者に対する債権まで、信用リスクの幅広く異なる債権が含まれる。
- 金融商品会計基準第28項では、一般債権について、「債権全体又は同種・同類の債権ごとに、債権の状況に応じて求めた過去の貸倒実績率等合理的な基準により貸倒見積高を算定する。」こととされている。したがって、一般債権に信用リスクの異なる債権が含まれている場合には、債権全体について1つの引当率で貸倒見積高を算定することが適切ではないため、信用リスクのランク付けを行って、それぞれのリスクに応じた引当を実施することが望ましい。
- 債権の貸倒損失は、債権を計上した後その平均回収期間にわたり発生するものであるため、貸倒実績率は、ある期における債権残高を分母とし、平均回収期間内に発生した貸倒損失額を分子として算定するものとした。なお、一般事業会社の営業債権の平均回収期間は数か月程度である場合が多いが、このような場合でも、貸倒損失の過去のデータを算定する算定期間は、最低ラインとして1年とした。
- 当期末に保有する債権について適用する貸倒実績率は、任意の算定期間に係るものを使用することは望ましくない。当期を最終年度とする算定期間に係る貸倒実績率を用いるとともに、各算定期間ごとの変動を平準化するために、当該算定期間を含む2~3算定期間に係る貸倒実績率の平均値によることとした。
(その他の方法)
- 298. 金融商品会計基準第28項(1)における貸倒実績率等の「等」には、過去の貸倒実績率の補正(期末日現在に保有する債権の信用リスクが、会社の債権に影響を与える外部環境等の変化により、過去に有していた債権の信用リスクと著しく異なる場合)、新規業態に進出した場合の同業他社の引当率や経営上用いている合理的な貸倒見積高が含まれる。
貸倒懸念債権
貸倒懸念債権の貸倒見積高の算定
- 299. 金融商品会計基準における合理的に見積られた将来キャッシュ・フローとは、債務者の実現可能性の高い将来の事業計画や収支見通しを裏付けとした客観性のあるものをいう。合理的な将来キャッシュ・フローの見積りを行うためには、会社が担当者を置くなどして債権管理を継続的に行うことが前提となる。将来キャッシュ・フローを合理的に見積ることが可能であり、かつ、実際の回収が担保処分によるのではなく、債務者の収益を回収原資とする方針である場合は、財務内容評価法よりもキャッシュ・フロー見積法によることが望ましい。
- なお、債権の発生又は取得後に将来キャッシュ・フローの見積りを更新した場合において、帳簿価額と比較するための現在価値を算定する際に適用すべき割引率は、債権の発生当初の約定利子率とし、取得した債権の場合には実効利子率とした。これを見積時点の改定約定利子率又は市場利子率としないのは、当該処理が、債権を時価で評価し直すために行われるのではなく、債権の取得価額のうち当初の見積キャッシュ・フローからの減損額を算定することを目的として行われるからである。
劣後債権等
劣後債権等の残存部分に係る帳簿価額及び貸倒見積高の算定
- 300. 保有する債権の流動化を促進するために、特別目的会社に譲渡した債権を担保として外部投資家に発行した証券に対する元利金の弁済を優先し、信用補完のために自己が当該特別目的会社から譲渡資産の対価の一部として取得した債権又は債券の回収を劣後させる条件を付していることがある。このような場合、劣後債権等の債務者である特別目的会社の財政状態及び経営成績にかかわらず、自己が保有する劣後債権等の回収リスクに備えた引当を行う必要がある。
- なお、劣後債権等が時価のある有価証券の場合には、取得後の会計処理は保有目的の区分に応じて行うものとする。
債権の未収利息
- 301. 未収利息について債務者から契約上の利払日を相当期間経過しても支払を受けていない場合に、未収利息を不計上とする延滞期間は、一般には、債務者の状況等に応じて6か月から1年程度が妥当であるとした。これは、債権には、利払いが毎月のように短期的に発生するものから、年に一度しか行われないものまで様々なものがあるため、その実態に合った未収利息不計上の延滞期間を決定すべきことを明らかにしたものである。
- 未収利息を不計上とした債権について、債務者との間で契約変更が行われている場合に、当該変更契約に基づき入金があったときは、契約に従い受取利息又は元本の入金として処理しなければならない。これに対し、契約変更が行われないまま支払を受けた場合には、入金額の全部又は一部が契約に基づく利息の支払であることが明確であれば、まず利息の入金として処理する必要がある。それ以外の部分又は入金の内訳が不明である場合には、当該部分を元本の入金として処理することとした。
貸倒引当金の会計処理
- 302. 貸倒引当金は、債権の評価勘定として、期末債権について将来顕在化する損失のうち、期末までにその原因が発生しているものの損失見込額を計上するものである。
- 貸倒引当金の設定方法には、対象となった債権のグルーピングとの対応関係で個別引当法と総括引当法とがあるが、貸倒引当金の繰入れ、貸倒損失の発生やその後の回収に伴う貸倒引当金の取崩しの処理は、グルーピングした債権とそれに対応する貸倒引当金ごとに行わなければならない。
- 第123項に定める貸倒損失額を対象となる債権額から直接減額処理する要件として、「債権の回収可能性がほとんどないと判断された場合」とは、必ずしも契約上の債権の全部又は一部が消滅する場合だけでなく、会社の実質判断によるものを含む。また、債権を売却処分した場合の売却損も貸倒損失額に準じて貸倒引当金の目的使用の対象となる。
金銭債務
- 303. 会社法では債務額以外の適正な価格をもって負債の貸借対照表価額とすることができることとされたことから、金融商品会計基準では社債等についても償却原価法を用いることとした。これにより社債発行差金の計上は認められなくなった。
その他の金融資産及び金融負債の会計処理
自由処分権を有する担保受入金融資産の会計処理
- 304. 貸手(担保受入者)に、法律上又は契約上、売却又は再担保という方法による自由処分権がある場合、担保受入金融資産を自由に売却又は再担保することができるが、貸手は当該金融資産とその返還義務を、売却による未収入金の計上又は現金の受入れがあるまで貸借対照表には計上せず、毎期末の時価を注記することとした。
- ただし、担保受入金融資産を、担保受入約定後に売却した場合には、担保の受渡しを受けているかどうかにかかわらず、受渡日に(ただし、有価証券については、認識基準として約定日基準と修正受渡日基準の選択が認められているため、貸手(担保受入者)が採用するいずれかの基準により)、当該金融資産とそれに対応する返還義務の時価での認識を行った上で、売却の処理を行うこととした。
- その際に負債に計上した担保受入金融資産の返還義務は、金融資産を時価により取得して返還する義務を表すものであり、時価の変動にさらされているため、毎期末、時価により評価し、差額を当該期間の純損益に計上することとした。
- また、借手(担保差入者)は、当該担保差入金融資産の使用を拘束されることとなるため、その旨及び貸借対照表価額を注記することとした。
- なお、法律上又は契約上、担保差入者の承諾なしに売却又は再担保できない担保受入金融資産は、担保受入者における注記の対象外である。
現先取引及び現金担保付債券貸借取引の会計処理
- 305. 現先取引(株式現先取引を含む。)は、譲渡人が譲渡した有価証券を当該有価証券の満期日前に買い戻す権利及び義務を有しているので有価証券の契約上の権利は他に移転していない。また、現金担保付債券貸借取引(株式貸借取引を含む。)は、有価証券の貸借と同時に現金担保を授受し、当該有価証券の返済日に反対取引が行われるので、有価証券の契約上の権利は他に移転していない。
- 現先取引は、法律上、買戻(売戻)条件付きの有価証券譲渡取引であるが、金融取引としてのそれは、金銭の借手が貸手に担保として売買取引の対象となった有価証券を担保として差し入れ、金銭の貸手に売却又は再担保という自由処分権を与えているので、当該貸手は、受け入れた有価証券について、自由処分権を有する担保受入金融資産としてその旨及び貸借対照表日の時価を注記することになる。また、現金担保付債券貸借取引は、担保として授受した現金を金融取引として処理するため、消費貸借契約に基づき授受した有価証券を担保とみなすこととなる。したがって、資金の貸手は受け入れた有価証券について自由処分権を有するため、現先取引と同様に注記する。なお、いずれの場合も、現金の受け手は見返りに有価証券を差し入れており、当該差入有価証券は使用が拘束されているため、担保差入資産として注記を行う必要がある。
売上債権等に含まれる金利部分の会計処理
- 306. 延払債権、割賦債権等の売上債権又はその他の金銭債権に金利要素が含まれている場合、1999年に企業会計審議会が公表した「金融商品に係る会計基準」の適用前の会計実務では、金利部分を区分して処理する方法と区分しない処理方法が認められてきた。キャッシュ・フロー概念の導入、債権の流動化の進展に伴い、金利部分を区分して処理することにより、整合性ある会計処理が構築できることになる。例えば、割引手形の割引料は、売手にとって厳密には2つの要素から構成されている。それは当該手形の取得時における満期日までの金利相当額の未経過部分と金利相場の変動部分である。後者は譲渡に伴う損益である。前者は本来、手形取得時に期日までの期間について手形額面額を現在価値に割り引いて計上すべきものであり、そのように処理していれば発生しないものである。したがって、受取手形に含まれる利息相当額に重要性がある場合には、受取手形の発生の認識時に現在価値に割り引いて受取手形を計上する必要がある。
- ただし、すべての債権に含まれる利息部分を区分処理することは実務上、煩瑣と考えられるので、重要性があるものについて区分処理を行うこととした。
利息の支払が不規則な貸付金、借入金、社債等の会計処理
- 307. 利息の支払が不規則な貸付金、借入金、社債等は、キャッシュ・フローを操作した結果であり、契約上の利息額を利息として処理することは不適切なので、キャッシュ・フローを内部収益率を用いて現在価値まで割り引く方法により、実質的な利息を計算して処理すべきものとした。
任意組合、匿名組合、パートナーシップ、リミテッド・パートナーシップ等への出資の会計処理
- 308. 任意組合、パートナーシップについては、法律上その財産は組合員又はパートナーの共有とされていることを考慮して、組合財産のうち持分割合に相当する部分を出資者の資産及び負債として貸借対照表に計上し、損益計算書についても同様に処理する実務もある。しかし、出資者が単なる資金運用として考えている場合、又は有限責任の特約が付いている場合など、多くの場合には、匿名組合、リミテッド・パートナーシップと同様に貸借対照表及び損益計算書双方について持分相当額を純額で取り込む方法が適切と考えられることから、その方法を原則とした。特に、投資事業有限責任組合又はそれに類する組合への出資で金融商品取引法第2条第2項により有価証券とみなされるものについては、これに当てはまる場合が多いと考えられる。また、状況によっては貸借対照表について持分相当額を純額で、損益計算書については損益項目の持分相当額を計上する方法も認められると考える。
- 他方、匿名組合及びリミテッド・パートナーシップについては、それらが実質的に匿名組合出資者等の計算で営業されている場合もあり得るため、貸借対照表及び損益計算書双方について持分相当額を純額で取り込む方法が妥当でないことも想定される。
- このような多様な実情を踏まえ、組合等への出資(有価証券とみなされるものを含む。)については、その契約内容の実態及び経営者の意図を考慮して、経済実態を適切に反映する会計処理及び表示を選択することとなる。
- 308-2. 本実務指針第132項は、企業が投資する組合等への出資の評価に関して、当該組合等の構成資産が金融資産に該当する場合には金融商品会計基準に従って評価し、当該組合等への出資者である企業の会計処理の基礎とするとしている。この点、金融商品会計基準は、市場価格のない株式について取得原価をもって貸借対照表価額とする(金融商品会計基準第19項)としているため、企業が投資する組合等の構成資産が市場価格のない株式である場合、これらについても取得原価で評価することとなる。
- 当該定めに関して、近年、ファンドに非上場株式を組み入れた金融商品が増加しており、これらの非上場株式を時価評価することによって、財務諸表の透明性が向上し、投資家に対して有用な情報が開示及び提供されることになり、その結果、国内外の機関投資家からより多くの成長資金がベンチャーキャピタルファンド等に供給されることが期待されるとして、ベンチャーキャピタルファンドに相当する組合等の構成資産である市場価格のない株式を時価評価するように速やかに会計基準を改正すべきとの要望が聞かれた。
- こうした状況を受けて、企業会計基準諮問会議から提言がなされ、これを踏まえ、2023年12月に開催された第516回企業会計基準委員会において、ベンチャーキャピタルファンドに相当する組合等の構成資産である市場価格のない株式を中心とする範囲に限定し、上場企業等が保有するベンチャーキャピタルファンドの出資持分に係る会計上の取扱いの検討を開始することとした。
- 308-3. まず、対象となる組合等の範囲に関して、ベンチャーキャピタルファンドに相当する組合等とそれ以外の組合等を明確に区分することは困難と考えられたため、ベンチャーキャピタルファンドに相当する組合等を直接的に定義することは行わないこととした。一方、組合等の構成資産である市場価格のない株式の時価の信頼性を担保するために、(1)組合等の運営者は出資された財産の運用を業としている者であること、(2)組合等の決算において、組合等の構成資産である市場価格のない株式について時価をもって評価していることを要件とすることとした(本実務指針第132-2項参照)。
- 要件(1)は、市場価格のない株式の時価の信頼性を担保するためには、組合等の構成資産である市場価格のない株式の評価者に十分な能力が備わっている必要があると考えられることから、組合等の運営者が市場価格のない株式に対する投資を業として行っている者に限定すべきとして設けた要件である。ここで「組合等の運営者」とは、我が国におけるベンチャーキャピタルファンドの多くで用いられている投資事業有限責任組合の形態においては、無限責任組合員が該当すると考えられる。また、他の法形態に基づく組合等については、投資事業有限責任組合における無限責任組合員と類似の業務を執行する者が該当すると考えられる。
- 要件(2)は、我が国の実務における市場価格のない株式の時価評価に関する体制の整備状況についての懸念が監査人、財務諸表作成者及び財務諸表利用者から聞かれている中、組合等の決算において、組合等の構成資産である市場価格のない株式について時価をもって評価している場合には、市場価格のない株式の時価評価に関する体制の整備がなされていることが期待できることから、時価評価に関する懸念を一定程度緩和できるとして設けた要件である。ここで、「時価をもって評価している」場合とは、組合等が適用している会計基準により市場価格のない株式について時価評価が求められている場合のほか、市場価格のない株式について時価評価する会計方針を採用している場合が含まれると考えられる。また、時価評価の方法としては、企業会計基準第30号「時価の算定に関する会計基準」に基づいた時価で評価する場合のほか、国際財務報告基準(IFRS)第13号「公正価値測定」又はFASB Accounting Standards Codification(米国財務会計基準審議会(FASB)による会計基準のコード化体系)のTopic 820「公正価値測定」に基づいた公正価値で測定している場合が含まれると考えられる。
- 308-4. 次に、組合等の構成資産である市場価格のない株式について時価をもって評価し、組合等への出資者の会計処理の基礎とした場合における評価差額の持分相当額を当期の損益として処理するか又は純資産の部に計上するかについて審議を行った。この点、組合等の解散までに現金で清算されることが見込まれるため、組合等への出資者の貸借対照表において、組合等の構成資産である市場価格のない株式について時価をもって評価したものを組合等への出資者の会計処理の基礎とするのは、最終的に得られるキャッシュ・インフローの予測に資する観点から有用と組合等への出資者である企業が判断する場合があると考えられる。一方、評価差額の持分相当額を当期の損益として処理するか又は純資産の部に計上するかについては、両者とも支持する意見が聞かれた。審議の結果、その他有価証券に関する会計処理など、他の現行基準との内的整合性を重視する観点から、市場価格のない株式の評価差額の持分相当額を純資産の部に計上することとした(第132-2項参照)。
- 308-5. 審議において、組合等の構成資産である市場価格のない株式の時価評価について、範囲に含まれるすべての組合等を適用対象とするか、組合等の単位で選択できるようにするかについて議論を行った。この点、組合等への出資の目的や性質が異なる場合があると考えられることから、範囲に含まれるすべての組合等について一律に適用対象とするのは必ずしも適切でないと考えられる。このため、組合等への出資者である企業が本実務指針第132-2項の定めを適用する組合等の選択に関する方針を定め、当該方針に基づき、組合等への出資時に本実務指針第132-2項の定めの適用対象かどうか決定することとした。ここで適用対象とされた組合等については、原則として、構成資産に含まれるすべての市場価格のない株式について時価をもって評価し、組合等への出資者の会計処理の基礎とすることになる。ただし、本プロジェクトにおいて、組合等の構成資産に出資者である企業の子会社株式及び関連会社株式が含まれることは想定しておらず、また、子会社株式及び関連会社株式については取得原価をもって貸借対照表価額とすることとされていること(金融商品会計基準第17項)を踏まえ、出資者である企業の子会社株式及び関連会社株式は時価をもって評価する対象から除くことを明確化した(本実務指針第132-2項参照)。
- なお、企業が直接出資する組合等について本実務指針第132-2項の定めを適用することを選択しており、かつ、ファンド・オブ・ファンズのように組合等が別の組合等に出資しているケースにおいては、組合等が出資する別の組合等ごとに本実務指針第132-2項(1)及び(2)の要件を満たすか判定を行い、要件を満たした別の組合等についてのみ、その構成資産に含まれるすべての市場価格のない株式(出資者である企業の子会社株式及び関連会社株式を除く。)について時価をもって評価し、その組合等への出資者の会計処理の基礎とすることになると考えられる。
- これに合わせて、企業の意思により自由に本実務指針第132-2項の適用を終了することを認めることは、会計処理の透明性や比較可能性の観点から適切ではないと考えられるため、本実務指針第132-2項の会計処理を出資後に取りやめることはできないこととした(本実務指針第132-3項参照)。
- なお、本実務指針第132-2項の定めを適用する組合等の選択に関する方針については、原則として継続して適用すると考えられるものの、従来行っていなかった種類の組合等への新規の出資や重要な企業結合など、大きな状況の変化により見直すことはあり得ると考えられる。ここで、組合等への出資時に本実務指針第132-2項の定めの適用対象かどうか決定することとしていることから、見直し後の方針は、方針を見直す前に出資された組合等には適用されず、方針を見直した後に出資された組合等に適用されると考えられる。
- 308-6. また、審議において、本実務指針第132-2項の定めを適用する場合における組合等の構成資産である市場価格のない株式の減損処理について議論を行った。
- この点、組合等の構成資産が金融資産に該当する場合には金融商品会計基準に従って評価し、組合等への出資者の会計処理の基礎とするため(本実務指針第132項参照)、組合等の構成資産である市場価格のない株式について、この定めに従うと、市場価格のない株式等の減損処理に関する定め(本実務指針第92項参照)に従って減損処理を行い、組合等への出資者の会計処理の基礎とすることとなる。
- ここで、組合等の構成資産である市場価格のない株式について時価をもって評価していることを踏まえると、市場価格のない株式等の減損処理に関する定め(本実務指針第92項参照)を適用するのは必ずしも適切でないと考えられる。一方、時価のある有価証券の減損処理に関する定め(本実務指針第91項参照)は、市場価格のない株式に対して適用することを想定して定められたものではないため、組合等の構成資産である市場価格のない株式に係る減損処理について適用する定めとして最善とはいえないとも考えられる。
- 審議の結果、本実務指針第132-2項の定めを適用した場合についてのみ適用する減損処理に関する新たな定めを設けるのは過度な対応と考えられることから既存の定めを活用するとして、本実務指針第132-2項の定めを適用する場合、組合等の構成資産である市場価格のない株式については、時価のある有価証券の減損処理に関する定め(本実務指針第91項参照)に従って減損処理を行い、組合等への出資者の会計処理の基礎とすることとした(本実務指針第132-4項参照)。
- 308-7. 開示に関して、時価算定適用指針第24-16項は、貸借対照表に持分相当額を純額で計上する組合等への出資(本実務指針第132項及び第308項参照)については、時価の注記を要しないこととし、その場合、注記していない旨及び時価算定適用指針第24-16項の取扱いを適用した組合等への出資の貸借対照表計上額の合計額を注記することとしている。
- ここで、本実務指針第132-2項の定めを適用する場合には、これらの注記に併せて、当該定めを適用した影響を財務諸表利用者が理解できるように、本実務指針第132-2項の定めを適用している旨、当該定めを適用する組合等の選択に関する方針、及び当該定めを適用している組合等への出資の貸借対照表計上額の合計額を注記することとした(本実務指針第132-5項参照)。なお、本実務指針第132-2項の定めを適用している組合等への出資の貸借対照表計上額の合計額は、時価算定適用指針第24-16項の取扱いを適用した組合等への出資の貸借対照表計上額の合計額の内数に該当すると考えられる。
建設協力金等の差入保証金等の会計処理
- 309. 削 除
商品ファンドの会計処理
- 310. 商品ファンドは、投資家の金銭による投資に対して運用結果に基づき金銭による持分の償還を行う契約である。投資家は運用を目的としているが、通常、合同運用であり、投資家にとって保有する有価証券と同一の目的をもった投資対象である。また、商品ファンドには有価証券である社債型と投資信託型もある。従来、匿名組合型等の商品ファンドは有価証券の定義に含まれていなかったものの、このような実態を考慮し、有価証券に準じて会計処理するものとしていたが、金融商品取引法においては、みなし有価証券とされていることから、有価証券として取り扱うこととなる。しかし、そのスキームの性格から満期保有有価証券としての処理は認められない。
ゴルフ会員権等の会計処理
- 311. ゴルフ会員権は、施設利用権を化体した株式又は預託保証金であっても、本来、時価があれば有価証券に準じ時価で評価し、預託保証金そのものは原則として金銭債権として処理すべきとの意見がある。ゴルフ会員権について、日刊新聞に定期的に又はゴルフ会員権取扱店で相場が提示されている。しかし、当該相場は、価格の信頼性と実現可能性を確保できるほどの市場の厚みがなく上場株式と同列には論じられないという批判があるので、時価評価の対象とならず減損会計によるべきとの意見もある。
- 有価証券の減損処理及び貸倒引当金は金融商品会計基準に含まれているので、ゴルフ会員権についても減損会計を採用し、有価証券に準じ、著しい価値の下落による評価減の対象とすることとした。上記相場は減損の判定に使用し、著しい価値の下落が生じ、かつ、回復可能性が合理的に立証できなければ、当該相場まで減損処理するものとした。預託保証金の時価の著しい下落については、預託保証金額を上回る部分は直接評価損を計上し、下回る部分については貸倒引当金を設定する。
- 預託保証金については、通常の金銭債権とは異なり施設利用権を化体する部分があり、相場が預託保証金を上回れば当該相場金額で売却できるため、償却原価法はなじまないものと考えられる。
- なお、投資目的のものも、使用目的のものも、著しい価値の下落に該当する場合、価値の喪失に違いはないので、両者とも評価減すべきものと考えた。
当座貸越契約及び貸出コミットメントの開示方法並びにコミットメント・フィーの授受に関する会計処理
- 311-2. 当座貸越契約(これに準ずる契約を含む。)及び貸出コミットメントの注記対象となるものには、契約上原則として無条件で取消し可能なもの(例えば、CPバックアップライン等)も含まれる。ただし、支払承諾として貸借対照表に計上されている額は注記の対象からは除かれる。
- このように、当座貸越契約及び貸出コミットメントは、原則としてすべてのものが注記の対象となるが、一般にはその注記金額の一部しか借手が実行せず、当該金額の全体について貸手に支払義務が生じるものではないことから、財務諸表の読者の誤解を招かないようにするため、金額の注記に加えて、その旨の補足説明(定性情報)を付すことができる。
- 当座貸越契約及び貸出コミットメントの借手においては、将来の借入余力を示すキャッシュ・フロー情報として有用であるところから、その旨及び借入枠から実行残高を差し引いた額を注記するのが望ましい。
相殺表示
- 312. 金融資産と金融負債は総額で貸借対照表に表示することが原則であるが、同一相手先と多数の取引があり、契約ごとの金銭債権と金銭債務を総額で表示すると、いたずらに総資産及び総負債が大きく表示されることとなる場合があるため、本実務指針に示した3要件をすべて満たした場合に、相殺表示を認めることとした。
- 相殺が法的に有効で、会社が相殺する能力を有することとは、当事者の債務不履行等がない場合であっても、金銭債権との相殺によって、企業の有する金銭債務の全部又は一部を決済することが法律上問題ないことを指す。
- また、企業が相殺して決済する意思を有することとは、実際に金銭債務の決済時に、金銭債権と相殺して純額決済する意思を有することを指す。
- ただし、デリバティブ取引の時価評価による金融資産と金融負債については、債権・債務として確定しておらず、相手先の債務不履行等がない限り相殺して決済する意思がない場合であっても、法的に有効なマスターネッティング契約を有する場合には、その適用範囲で相殺可能とした。これは、信用リスク軽減のためのマスターネッティング契約の効力を、財務会計上も考慮するためである。現状では、例えば、ISDA(国際スワップデリバティブ協会)のマスターネッティング契約が該当すると考えられる。
- 上場デリバティブ取引の時価評価による金融資産と金融負債については、同種のデリバティブにつき取引所単位での相殺表示ができると考えられる。
ヘッジ会計
ヘッジ会計の適用要件
正式な文書によるヘッジ取引の明確化
- 313. 同一の取引であっても、ある企業にとってはヘッジ取引であるが他の企業にとっては非ヘッジ取引であることがあり、また、同一の企業でも同じ取引が、ある場合はヘッジ取引で、別の場合には非ヘッジ取引であることがあり、それらは企業の個々の状況により異なる。このような状況で企業が第三者に理解できる正式な文書によりヘッジ取引を明確化しないとすれば、ヘッジ会計が適用できるか否かを決定するために、企業のすべての資産及び負債(予定取引を含む。)、デリバティブ取引の間のヘッジ関係についてヘッジ会計適用の可能性を調べなければならず、実務上極めて煩雑な問題が発生する。したがって、ヘッジ会計適用の要件として企業は正式な文書によりヘッジ取引を明確に指定する必要がある。
リスク管理方針文書の記載事項
- 314. さらされているリスクの種類、大きさ、複雑さ等は、企業の規模や事業の内容等によって異なると考えられる。経営者は、相場変動等による損失発生により不測の事態を招かないために、さらされているリスクの種類と内容を識別し、リスク管理方針を策定し、それに基づいて、内部統制としてリスク管理体制を整備し、企業全体のリスクを管理していくことが求められる。
- ヘッジ取引はヘッジ対象のリスクを相殺することにより、その後の相場変動による損失発生を減殺させると期待されるが、一方で、機会利益を喪失させるなどヘッジ・コストを伴う。したがって、リスクに対してどのようなヘッジ行動を取るかは、当然に経営上の判断を要する事項である。また、ヘッジ行動には経営者の主観的要素が介在するため、遡及的なヘッジ指定やヘッジ指定の取消しへの誘因が生じる可能性がある。
- このため、ヘッジ行動が取締役会等の経営意思決定機関で承認されたリスク管理方針として文書化されたヘッジ方針に基づいて行われ、かつ、ヘッジ取引時にあらかじめ定められたルールに従ってヘッジとして指定され、ヘッジの終了時までヘッジ対象と対応させて定期的又は随時にヘッジの有効性を評価するような内部統制が不可欠となる。
- ヘッジは企業のリスク量のコントロール手段の1つである。経営者はリスク管理の一環として、リスク・モニタリング・システムを整備して、定期又は随時にリスクの状況をモニターするものと考えられる。
- ヘッジ手段に用いるデリバティブは常に市場における流動性が確保される保証はなく、需給関係により基礎商品の相場の動きとの相関関係が変化したり、極端な場合には市場が消滅する可能性もある。
- したがって、あるリスク・カテゴリーに対するヘッジ手段として新たなデリバティブを用いる場合には、事前テストとして、その基礎商品の相場変動等に対する価格変動特性とヘッジ対象カテゴリーの価格変動特性の類似度合い、ヘッジ損益を実現させるために十分な市場の流動性が期待できるか等を分析し、ヘッジ手段としての有効性を予測しておくことが必要である。ヘッジ手段の有効性の事前予測の方法としては、第156項に示した比率分析の手法のほか、回帰分析の利用も考えられる。
- 314-2. 金融商品会計基準第102項では、「他に適当なヘッジ手段がなく、ヘッジ対象と異なる類型のデリバティブ取引をヘッジ手段として用いるいわゆるクロスヘッジもヘッジ会計の対象となる。」とされており、利用可能なデリバティブ取引に制約がある場合には、ヘッジ対象と価格変動が類似する商品のデリバティブ取引をヘッジ手段として利用することが認められている。例えば、石油関連商品をヘッジ対象としてヘッジを行う場合に、流動性が高く価格変動が類似する原油関連のデリバティブを用いる場合などが該当する可能性がある。この場合、ヘッジ手段とヘッジ対象の経済的な関係や価格変動の推移から、ヘッジの有効性を事前に予測しておく必要がある。
- 315. 企業がさらされるリスクには、為替、金利、債券、株式等の市場リスク、信用リスク、リーガル・リスク、システム・リスク、事務リスク等、様々なものが考えられ、リスク管理方針にはこれらが包括的に定められるものと思われるが、ヘッジ会計の適用のため文書化を要するリスクは、為替、債券、株式等の市場リスク、信用リスクや金利リスクのように市場価格その他の変動に対する資産又は負債等の時価やキャッシュ・フローの変化が合理的に定量化できるリスクである。
- ここでいうリスク管理方針は、経営者が企業活動においてさらされているリスクの種類と内容を識別し、これらを許容し得るレベルに管理するために策定したものであって、取締役会等の意思決定機関において、原則として毎期、承認を受け文書化したものである。
- 316. 高度なリスク管理が必要な場合には、さらにリスクの定量化の方法やその許容限度について文書化することが必要となる。リスク量は、通常、相場変動に伴う資産又は負債等の時価又はキャッシュ・フローの変化として定義される。ある時点における限界リスク量は、例えば、ベーシス・ポイント・バリュー、バリュー・アット・リスクやアーニング・アット・リスクで定量化される。リスク量の許容限度は、予想期間利益、自己資本の一定割合など一定期間内に許容し得る最大累積損失額等で示される。
内部統制組織
- 317. 経営者は、リスク管理方針に基づいて経営組織を整備し、各組織にリスクを取る権限とその許容限度を付与してリスク管理の責任を割り当て、各リスク・カテゴリーに対するヘッジ手段の選定、ヘッジ対象の識別、ヘッジ指定並びに事後管理の仕組み、各組織別及び企業全体のリスクの状況のモニタリングの仕組み等を含む内部統制組織と諸規定を定めて、これらを運用していくことが求められる。
- 318. デリバティブ取引を活発に行う企業の場合、内部統制組織としてデリバティブ取引を実行する部門(フロント・オフィス)とこれとは別に分離独立したリスク管理を行う部門(バック・オフィス)が必要である。フロント・オフィスは、一般的に経営者に対し社内規定に従い事前に取引目的(ヘッジ目的又はトレーディング目的)、取引枠、相手先、損失限度等の市場リスクに関する申請を行い、また、バック・オフィスは経営者に定期的にデリバティブ取引の実行状況を、さらにヘッジ目的取引についてはそのヘッジ有効性を確認し報告しなければならない。すなわち、バック・オフィスはデリバティブ取引の口座開設、基本契約の締結、成約確認、資金決済及び受渡し、残高確認、ポジションの状況等に関する管理資料を作成し、さらにヘッジ関係が有効に機能しているかどうかを評価するシステムを持つことが必要である。また、企業がトレーディング目的でデリバティブ取引を行う場合は、ヘッジ目的のデリバティブ取引と明確に区分できる管理体制を取っていることが重要である。
ヘッジ対象の識別
- 319. 企業は、価格変動リスク、金利変動リスク、為替変動リスク等、さらされているリスクに対してリスク管理方針に基づいて種々のヘッジ行動をとっているが、ヘッジ行動の態様は、さらされているリスクの種類と規模及びポジション、組織分掌、リスク管理体制等によって様々である。
- ヘッジ対象とヘッジ手段の対応関係が最も明確となる識別方法は、取引単位で識別する方法であるが、金融商品会計基準ではヘッジ対象が複数の資産又は負債から構成されている場合も想定している。
- 320. 金融商品会計基準(注11)の規定において、「共通の相場変動等による損失の可能性にさらされており」という要件は、リスク要因が共通していることを意味し、「かつ、その相場変動等に対して同様に反応することが予想される」という要件は、リスクに対する反応がほぼ一様であることを意味するものと解釈される。この場合、ヘッジ対象である各構成資産・負債の時価の変動率がおおむね上下各10%の範囲内にあることを「同様に反応することが予想される」ことの条件とした。したがって、満期日が著しく異なる複数の債権や、複数銘柄による株式ポートフォリオは、それを構成する個々の資産が相場変動等に対して同様に反応するとはいえないので、1つのヘッジ対象とみることはできない。
- 資産と負債のリスクが互いに相殺されるような場合、ネット・ポジションをヘッジするという考え方もあり得るが、ヘッジ対象が特定されない場合、ヘッジ対象となり得る資産・負債の一部に売却・決済等があったときに、ヘッジ手段から生じた損益又は評価差額の配分が恣意的にならざるを得ないなどの問題が生じる。したがって、金融商品会計基準のヘッジ会計の枠組みでは、具体的なヘッジ対象として資産又は負債を識別することが前提となると解される。
- なお、金融商品会計基準第99項において、多種・多数の金融資産・負債を有する金融機関等については、リスクの減殺効果をより適切に財務諸表に反映する高度なヘッジ手法を用いていると認められる場合には、金融商品会計基準の趣旨を踏まえ、当該ヘッジ手法の効果を財務諸表に反映させる処理を行うことができることとされているが、別途の検討を要するため、本実務指針では、高度なヘッジ手法に係る会計処理には言及せずに、基本的に一般事業会社の行うヘッジ取引を対象としている。
ヘッジ対象の識別の例示
- 321. 個別取引単位の識別としては、以下のようなものがある。
- (1) A社は、2年前に10年物の変動利付社債(額面10億円)を発行しているが、金利上昇による調達コストの増加を回避すべく、正規の社内決裁を経て、社債の満期まで金利スワップ(想定元本10億円、変動金利受取、固定金利支払)でヘッジした。
- (2) B社は、ドル建て5年間の延払条件で機械を輸出したが、円高による為替リスクを回避するため、正規の社内決裁を経て、輸出債権全額について取引銀行と為替予約(B社のドル売り)を締結した。
- 322. グルーピングによる識別としては、以下のようなものがある。
- C社が取締役会で承認を受けた今年度の経営計画では、資材部のドル建ての原料輸入代金の決済額は、各月合計で1億ドル程度である。資材部は円安による為替リスクに備えて取りあえず向こう6か月間について各月5,000万ドルの輸入に対する為替予約(C社のドル買い、各月間のデリバリーオプション付き)を締結した。
ヘッジ有効性の評価
- 323. 金融商品会計基準第31項では、ヘッジ取引時以降の要件(事後テスト)として「ヘッジ対象とヘッジ手段の損益が高い程度で相殺される状態又はヘッジ対象のキャッシュ・フローが固定されその変動が回避される状態が引き続き認められることによって、ヘッジ手段の効果が定期的に確認されていること」が要求されている。
- 本実務指針では、「高い程度で相殺される状態」の具体的な判断基準として、ヘッジ対象の時価変動額とヘッジ手段の時価変動額との比率がおおむね80%から125%の範囲内にあれば高い相関関係があると認めるものとし、キャッシュ・フロー変動のヘッジについても同様の考え方によることとした。ただし、ヘッジ対象の相場変動又はキャッシュ・フロー変動の全体でなく特定のリスク要素(金利、為替、信用等)のみのヘッジを意図している場合には、当該リスク要素に係る変動によって判定する。
- 事前の有効性予測の方法としては、本実務指針第314項に述べたように回帰分析等の統計的手法の利用も考えられるが、事後テストには必ずしも適さないものと考えられるため、本実務指針では、事後テストにおいては上記のような比率分析の方法のみを想定している。
- なお、相場変動又はキャッシュ・フロー変動はヘッジ取引開始以降の累計により判定するものとしているが、ヘッジ対象の相場変動(又はキャッシュ・フロー変動)の幅が比較的小さい場合、ヘッジ手段の側の変動額との差異の絶対額は小さくても、比率が異常値となって上記の範囲を外れることがある。この場合、ヘッジ取引開始前の有効性予測(本実務指針第314項参照)において有効性が事前に確認済みであることを条件に、ヘッジ取引の有効性が持続しているものとしてヘッジ会計の適用を継続することができることを明確にした。
その他有価証券の価格変動リスクのヘッジ
- 324. 削 除
満期保有目的の債券のヘッジ対象としての適格性
- 325. 金融商品会計基準第71項でも述べられているとおり、満期保有目的の債券は「満期までの間の金利変動による価格変動のリスクを認める必要がない」ものであり、したがって会計処理においてもこれを反映し、「時価が算定できるものであっても、(中略)償却原価法に基づいて算定された価額をもって貸借対照表価額とする」こととされている。このような趣旨に鑑みて、満期保有目的の債券に対して、金利変動による価格変動リスクをヘッジする取引に会計上特別なヘッジ会計を認めることは、論理的に整合しない。したがって、原則としてこれを認めないこととした。
- 一方で、変動利付債券については満期保有目的の債券に区分できることになっていることから、固定利付債券を購入当初から金利スワップで実質変動利付に変えている場合についても同様に扱ってよいのではないかとの意見があった。他方、金利スワップによるヘッジを債券の保有期間中に開始又は中止する場合、実質的に債券の入替えを行うことと同様の効果をもたらすこととなり、保有意図を前提とした満期保有目的の債券に関する取扱いそのものに矛盾を生じさせるおそれがある。
- こうした考慮により、金利スワップの特例処理の要件という一定の制限の下で、満期保有目的の債券の金利変動リスク(相場変動リスク又はキャッシュ・フロー変動リスク)のヘッジについてもヘッジ会計を認めることとした。この場合において金利スワップを中途解約することは、変動金利の債券を固定金利のものと入れ替える取引又はその逆の取引と実質的に同様の結果となる。したがって、この場合には本実務指針第83項に準じて、当該債券を含む満期保有目的の債券全体を他の保有目的区分に変更しなければならないものとした。ただし、金利スワップの解約が、取引相手先の信用状態の著しい悪化等のやむを得ない理由によるものである場合は、この限りでない。また、債券の取得後において中途から金利スワップを付する場合にも、やはり債券の入替えと同様の結果となるため、金利スワップは債券の取得の当初からヘッジ手段として指定していることを要するものとした。
- 326. 外貨建の満期保有目的の債券に係る為替リスクのヘッジについては、ヘッジ対象が決算時の為替相場で換算され、換算差額が当期の純損益に計上されるためヘッジ会計の必要はないが、ヘッジ会計の要件を満たす場合には振当処理の対象となり得る。
ヘッジ対象となり得る予定取引の判断基準
過去に同様の取引が行われた頻度
- 327. 過去において会社が予定取引と同様の取引を頻繁に行っている場合は、そうでない場合に比べ一般的に予定取引が実行される可能性が高いと考えられる。過去において一度も同様の取引が行われていない場合には、当該取引が予定どおり行われることを客観的に示すことが一般に困難であり、第328項から第332項に示した事項を十分に吟味すべきものとした。
当該予定取引を行う能力を有しているか
- 328. 法的、制度的、資金的に、又はその他社内・社外における他の制約等から判断して企業が当該予定取引を実行する能力があるか否かを判断する必要がある。実行する能力を有しない場合には、当然ヘッジ対象になり得ないものとした。なお、制度の変更等により、現在は実行可能であるが、実行予定日には実行不能であることが予見される場合にも、ヘッジ対象になり得ない。
当該予定取引を行わないことが企業に不利益をもたらすか
- 329. 当該予定取引を行わないことにより企業に不利益が生じる場合は、そうでない場合に比べ一般的に実行可能性が高いと考えられる。当該取引を行わないことが企業に不利益をもたらさない場合には、他の判断要素(過去の取引実績、数量、期間等)を十分に吟味し、当該予定取引の実行可能性を判断すべきこととした。
当該予定取引と同等の効果・成果をもたらす他の取引がないか
- 330. 当該予定取引と同等の効果や成果をもたらす他の取引がある場合は、そうでない場合に比べ一般的に実行可能性が低いと考えられる。例えば、単に資金調達を予定している場合には、新規借入れのほか、増資が考えられる。したがって、当該予定取引と同等の効果や成果をもたらす他の取引がある場合は、他の判断要素(過去の取引実績、数量、期間等)を十分に吟味し、当該予定取引の実行可能性を判断すべきこととした。
当該予定取引実行までの期間が妥当か
- 331. 予定取引は将来の予測事象であるため、実行までの期間が長ければ長いほどその実行可能性は一般的に低くなる。例えば、5年後に小麦を購入する予定取引は、1か月後に小麦を購入する予定取引より一般的には実行可能性が低いと考えられ、また、その予定取引の実行に経済的合理性を見いだしにくくなる。企業の経営計画等は企業により様々であり、一概に何年以内の計画であれば実行可能性が極めて高いとはいえないため、企業ごとに合理的基準を設定することになる。一方で、これを無制限に認めることにより、恣意性の余地を大幅に残すことは望ましくないため、予定取引の発生までの期間として1年を1つの目安とした。
予定取引数量が妥当か
- 332. 予定取引数量が少なければ少ないほどその実行可能性は一般的には高くなると考えられる。例えば、毎年100単位の小麦を購入している企業が翌年に10単位の小麦を購入する可能性は100単位の小麦を購入する可能性よりも一般的には高いと考えられる。予定取引が過去において行った同様の取引の最大量を超過している場合には、当該取引が予定どおり行われることを客観的に示すことが一般に困難であり、超過部分に関しては、原則としてヘッジ対象になり得ないものとした。
連結会社間取引のヘッジの可否
- 333. 連結会社間取引をヘッジ対象として、ヘッジ会計を適用した場合、親会社又は子会社の個別決算上は、両者に有効なヘッジ関係が成立していればヘッジ会計の適用が可能であるが、連結上、当該取引は内部取引として消去され、ヘッジ対象となるリスクも存在しないこととなる。したがって、この場合には、個別財務諸表上認識された繰延ヘッジ損益を連結上はヘッジ会計の適用がないものとして、連結決算手続において当期の純損益に振り戻す処理が必要となる。
- ただし、外貨建の予定取引に関するヘッジについては、為替変動に係るエクスポージャーは消去されずに残るので、当該予定取引はヘッジ対象になり得る。この場合には、ヘッジ会計の中止又は終了(第180項及び第181項参照)に該当することとならない限り、ヘッジ手段に係る損益又は評価差額を取引実行まで繰り延べることになる。
- また、連結上消去される内部取引が一方の会社の外部取引と紐付きになっている場合において、他方の会社が内部取引についてヘッジを行っているときは、そのヘッジ手段を連結決算上で外部取引に係るヘッジに改めて指定することも認めるものとした。この取扱いは、外部取引と内部取引との個別対応が明確である場合に限られる。
- なお、連結会社間のデリバティブ取引をヘッジ手段としている場合についても、外部とのデリバティブ取引との個別対応を条件に同様の取扱いを認めるものとした。
デリバティブ取引以外のヘッジ手段
- 334. デリバティブ取引以外の現物資産について、広くヘッジ手段としての適格性を認めるとすると、その評価基準は一様でないため、多くの例外処理を認めることとなり、会計基準としての統一性を欠く結果となるおそれがある。
- したがって、ヘッジの効果を適切に財務諸表に反映するために、ヘッジ会計の適用が不可避なもののみにヘッジ手段を限定することにより、評価基準の例外を最低限に止めることとした。
売建オプションによるヘッジの可否
- 335. オプションの売建ては、獲得可能な利益が限定されている一方で、潜在的に不利な取引の履行義務が伴うため、積極的にリスクを削減する効果よりもリスクを負う効果がより強く発生する。
- 例えば、現物資産と組み合わせてコールオプションを売却する取引(カバードコール)の場合、受取オプション料の範囲内で、保有資産の価格が下落した場合の損失を削減する効果はあるものの、損失発生のリスクを限定する効果はない。
- このように、オプションの売建てについては、全体としてリスクを有効に減殺するものとは認め難いため、ヘッジ手段として適格ではないものとした。
- ただし、金利カラー取引のように売建オプションと買建オプションが組み合わされた取引については、不利な相場変動等によるリスクが限定され、リスクの有効な減殺と認め得るものがあると考えられる。しかし、売建オプションと買建オプションとの組み合わせについて無制限にヘッジ会計の適用を認めることとした場合、実質的に売建オプション単独の取引と大差のないようなものまでがヘッジ会計の対象に含まれてしまうおそれがある。例えば、支払金利について現在の金利に近い水準に下限を設定し、通常予想されないような高金利を上限とするような場合は、実質的な効果が売建オプション単独の場合とほとんど同じであるので、ヘッジ会計の対象とすべきではない。こうしたことを考慮し、複合オプション取引についてヘッジ会計の適用を認めるための簡明かつ明確な判断基準として、損失発生のリスクが限定されるとともに、正味の受取オプション料がないこと(支払オプション料が受取オプション料と同額又はそれ以上であること)を条件とするものとした。なお、売建ての契約額を買建ての契約額よりも大きくしたゼロ・コスト・オプションのように、リスクを限定する効果が生じない取引は、ヘッジ手段として適格ではない。
- また、複合金融商品に買建オプションが組み込まれている場合に、売建オプションでそれを相殺する取引については、買建オプションが組み込まれていない状態に戻すのと同じことであるため、売建オプションの評価差額を純損益に反映させる必要はないと考えられるので、ヘッジ会計の対象となり得るものとした。
外貨建取引に係るヘッジ
- 336. 外貨基準により、外貨建取引に係るヘッジ会計も金融商品会計基準のヘッジ会計の規定に原則として従うこととなった。これによる処理は以下のようになる。
- (1) ヘッジ対象の換算差額が当期の純損益に計上されるものである場合
ヘッジ対象が決算日レートで換算され換算差額が当期の純損益として計上される場合、ヘッジ手段である為替予約等を時価評価することにより、ヘッジ対象に係る換算差額とヘッジ手段に係る評価差額が同時に当期の純損益に計上され、ヘッジ取引の効果を自動的に反映させることができる。これはヘッジ手段とヘッジ対象の双方に、ヘッジ関係が存在しない場合と全く同じ原則的会計処理を適用することにすぎないため、特別な会計処理としてのヘッジ会計ではない。したがって、外貨建取引についてこの処理による場合には、ヘッジ会計の要件の検討は要しない。 - (2) 外貨建のその他有価証券のヘッジ
ヘッジ対象が外貨建のその他有価証券である場合には、換算は決算日レートで行われるものの、換算差額は原則として純資産の部に直接計上されるため、ヘッジ手段に係る損益又は評価差額を当期の純損益に計上すると純損益への計上時期が一致しなくなる。したがって、これについてはヘッジ会計の対象とする必要があるが、外貨建以外のその他有価証券の場合と同様に本実務指針第160項により処理することとした。なお、外貨基準注解(注10)により、その他有価証券に属する債券については、外国通貨による時価を決算時の為替相場で換算した金額のうち、外国通貨による時価の変動に係る差額を評価差額とし、換算差額については為替差損益として処理することができる。 - (3) 在外子会社及び持分法適用の関連会社に対する持分への投資のヘッジ
ヘッジ対象が在外子会社及び持分法適用の関連会社に対する持分への投資である場合、外貨基準注解(注13)において、連結上、ヘッジ手段から生じた為替換算差額(評価差額)を、ヘッジ対象たる投資から生じた為替換算調整勘定と相殺する処理が認められた。一方、個別財務諸表においては、外貨建の子会社株式及び関連会社株式は取得時の為替相場で円換算され、換算差損益が当期の純損益に計上されないため、これに対するヘッジ手段に係る損益又は評価差額についてヘッジ会計を認める必要がある。 - (4) 振当処理
外貨基準注解(注6)において当分の間認めることとされた振当処理の具体的取扱いについては、移管指針第2号「外貨建取引等の会計処理に関する実務指針」において別途検討することとしている。
振当処理を適用した場合には、ヘッジ対象を予約レートで換算し、ヘッジ手段とヘッジ対象の評価差額及び換算差額を計上しない点で上記(1)の処理と相違することとなる。しかし、外貨基準注解(注7)により、予約レートと直物レートとの差額を期間配分することとされているため、一般的には、為替予約等を時価評価した場合と純損益の計算上では重要な差異は生じないものと考えられる。 - 337. 将来の外貨建貸付け、借入れ又は外貨建有価証券(その他有価証券及び子会社・関連会社株式を除く。)の取得について、取得・発生時の為替変動リスクによるキャッシュ・フローを固定することを意図したヘッジ取引(例えば、外貨建借入れの入金額を固定するための為替予約)は、ヘッジ会計の対象とはしないものとした。こうした取引は、為替ポジションの面からみれば、当該外貨建金融商品を既に取得した場合と同様の効果が生じているので、当該ヘッジ取引による損益又は評価差額は当該外貨建金融商品の換算差損益と同様に処理することが妥当と考えられるからである。
予定取引実行時の処理
- 338. ヘッジ会計は、ヘッジ対象に係る損益とヘッジ手段に係る損益を同一の会計期間に認識し、ヘッジの効果を当期純損益の計算に反映させるための会計処理であり、予定取引のヘッジによりヘッジ手段に生じた損益又は評価差額は、ヘッジ対象に係る損益が純損益として認識されるまで繰延ヘッジ損益として繰り延べる(第174項参照)。
- この原則に従い、繰延ヘッジ損益の処理は、予定取引の種類ごとに次のようになる。
- (1) 予定取引により損益が直ちに発生する場合
この場合には、ヘッジ対象である予定取引に係る損益は、予定取引の実行時に認識されるので、繰延ヘッジ損益もその時に純損益として認識することとなる。ヘッジ手段の損益を認識する際の計上科目は、原則としてヘッジ対象取引に係る損益科目とすることが適当と考えられる。例えば、ヘッジ対象とされた予定取引が販売取引である場合には売上高、金利の受払である場合には支払利息又は受取利息とすることになる。ただし、ヘッジ取引が為替リスクのヘッジである場合には、ヘッジ対象別に損益を把握する処理が著しく煩雑となる場合も考えられることから、簡便的に為替差損益として処理することも認めることとした。 - (2) 予定取引が資産の取得である場合
この場合には、予定取引に係る損益は直ちに発生せず、購入した資産が売上原価、減価償却費などの形で費用化されることとなる。したがって、繰延ヘッジ損益の純損益への認識もこれに対応させる必要がある。この場合、繰延ヘッジ損益を引き続き純資産の部に計上する方法も考えられるが、次の理由により、購入資産の取得価額に加減することが合理的である。
・ 資産の取得に伴う損益と解釈でき、取得価額の一部としての性格を認め得ること
・ 別科目とするよりも、資産の取得価額に加減した方が、購入資産の費用化との期間対応を容易に達成でき、会計処理も簡便であると考えられること
ただし、取得する資産が貸付金等の利付金融資産である場合には、受取金利を予定取引としたヘッジと考えるべき場合もあることから、繰延ヘッジ損益を引き続き純資産の部に計上することも許容するものとした。 - (3) 予定取引が社債、借入金等の利付負債を生じるものである場合
この場合も上記(2)と同様、損益は直ちには発生せず、発生した利付負債に係る損益は支払利息の形で発生する。したがって、支払金利を予定取引としたヘッジと解釈できるので、繰延ヘッジ損益を引き続き純資産の部に計上し、当該支払利息に対応するように各期の純損益に反映させることとなる。
オプションの時間的価値及びプレミアム・ディスカウントの処理
- 339. 通常、ヘッジ対象の相場変動又はキャッシュ・フロー変動は、基礎商品の直物価格の変動によるものであり、ヘッジ手段として使用されるデリバティブの時価変動のうち、時間的価値等の変動を除いた部分(本源的価値の変動)と対応する。したがって、時間的価値等の変動を含めたデリバティブ全体の価格変動をヘッジ対象の相場変動と対応させるようなヘッジ手法(デルタ・ヘッジ)を採用している場合を除き、理論的には、時間的価値等の変動を除外したところで有効性判定を行い、時間的価値等の変動については繰延処理の対象とせず直ちに当期の純損益として計上することがより合理的である。
- しかし、以下の点を考慮して、時間的価値等を一括して処理することも認めることとした。
- ① 常に区分処理を要求することは実務的に煩雑となる場合があること
- ② オプション取引及び先渡取引が最も多く利用される外貨建金銭債権債務のヘッジについては、ヘッジ手段の評価差額を純損益に計上する方法又は振当処理が適用されるため、いずれにしても繰延処理の対象とはならないこと
- ③ 予定取引のヘッジについては、ヘッジ取引のコストたる時間的価値等の変動を予定取引に対応させて認識することにも一定の合理性を認め得ると考えられること
- 340. 時間的価値等を区分処理する場合において、時価評価を行わずに、一定の方法で規則的に償却するという考え方もある。しかし、金融商品会計基準では、デリバティブは時価をもって貸借対照表価額とすることが定められており、繰延ヘッジ会計はヘッジ手段に係る損益又は評価差額の処理の例外規定であって評価に関する例外規定ではないと解されるので、ヘッジ手段の貸借対照表価額は時価評価によるべきである。
- 341. ヘッジの有効性評価に関しては、時間的価値等の区分処理を行うか否かにかかわらず、時間的価値等の変動を除外して判定することができる。ただし、時間的価値等を含めたデリバティブ全体の時価変動をヘッジ対象と対応させるヘッジ戦略を採っている場合には、時間的価値等の変動を除外せずに判定する。
ヘッジ非有効部分の処理
- 342. ヘッジ取引の開始時点において、ヘッジ対象に係る相場変動又はキャッシュ・フロー変動の100%をヘッジすることを意図したヘッジ取引について、ヘッジ手段の有効性の限界のために、ヘッジ手段に係る相場変動又はキャッシュ・フロー変動がヘッジ対象に生じた変動を超え、結果として非有効部分が生じる場合がある。例えば、他通貨によるクロスヘッジや、実際のヘッジ対象と異なる標準物を基礎商品とする先物契約によるヘッジなどの場合である。
- このような場合に、非有効部分の区分を要求することとすると、多数のヘッジ取引を行っている企業では実務上の処理が非常に煩雑となるおそれがあることを考慮し、ヘッジ会計の要件が満たされている限りにおいては、非有効部分の区分を要求しないこととした。
- ただし、有効性判定の結果に基づいて、合理的に区分された非有効部分を繰延処理の対象とせずに純損益に計上することは、合理的な会計処理と考えられるので、方針として一貫して適用する限りは、これを妨げないものとした。
- なお、非有効部分を繰延処理することを認めるのは、当該ヘッジ取引全体がヘッジ会計の要件を満たしている場合のみであり、事後テストにより有効性が認められないこととなった場合には、金融商品会計基準上、ヘッジ会計の適用は認められていない。このような場合には、ヘッジ手段に係る損益又は評価差額(有効性が認められた期間に係るものを除く。)はすべて当期の純損益に計上することとなる。
包括ヘッジ(複数の資産・負債から構成されるヘッジ対象のヘッジ)
- 343. 複数の資産・負債から構成されるヘッジ対象に対するヘッジ手段に係る損益又は評価差額の配分基準については、おおむね、企業会計審議会が1990年5月に公表した「先物・オプション取引等の会計基準に関する意見書」の設例における見解を踏襲し、①帳簿価額、②時価、③時価の変動幅の3つの配分基準を示した。リスクに対する反応がほぼ一様という前提の下では、いずれの方法を採用しても大差はないものと考えられる。
繰延ヘッジ損益の表示方法
- 344. 削 除
繰延ヘッジ損益の損益認識時における処理科目
- 345. ヘッジ対象の純損益認識に合わせて繰延ヘッジ損益を当期の純損益に計上する際の科目処理として、ヘッジ手段に係る損益又は評価差額をその取引種類ごとに別個に損益計算書上表示する方法もあり得るが、ヘッジ取引をヘッジ対象取引に付随するものとして考えると、ヘッジ対象が純損益として認識されるときに処理される勘定科目に基づいて、ヘッジ手段の損益を認識することが妥当である。ただし、第338項(1)で述べた理由により、為替リスクのヘッジによる損益については為替差損益として処理することを認めることとした。
- なお、第170項(2)において、予定取引に係る繰延ヘッジ損益を資産の取得価額に加減する処理を定めているが、これは繰延処理終了後の処理としてヘッジに係る損益を取得価額の構成要素とするものであり、ヘッジ会計の継続中における処理とは性格が異なる。
金利スワップの特例処理の対象
- 346. 金融商品会計基準(注14)に定める金利スワップの特例処理(金利の変換としての処理)は、ヘッジ会計の要件を満たしていることが条件とされており、さらに、想定元本、利息の受払条件(利子率、利息の受払日)及び契約期間がヘッジ対象となる資産又は負債とほぼ同一であることが要求されている。
- この処理は、金融商品会計基準の基本原則であるデリバティブの時価評価に例外を設けるものであることから、拡張解釈を避け、金利スワップがヘッジ対象たる資産又は負債とほとんど一体とみなせる場合に限るものとした。これにより、特例処理の適用要件を充足すればヘッジ有効性の要件は自動的に満たされると考えられるため、本実務指針第178項の条件に合致する金利スワップについては、改めて有効性判定を行うことを要しないものとした(本実務指針第158項参照)。
- 本実務指針第178項に定めた条件は、特例処理の適用要件であり、これに該当しない金利スワップについて必ずしもヘッジ会計の適用を排除するものではない。特例処理の適用要件を満たさない金利スワップであっても、ヘッジ会計の要件を満たすことはあり得る。その場合には、原則的なヘッジ会計の方法(繰延ヘッジ)によって処理することとなる。
- なお、金融商品会計基準では言及されていないが、支払金利のキャップ及び受取金利のフロアーについては、キャッシュ・フローを固定して不利な変動を回避する効果が認められ、金利スワップと同様の効果を有すると考えられることから、金利スワップの特例処理を準用することとした。
- 347. 金融商品会計基準では明確には言及していないが、基準の異なる変動金利(例えば、ロンドン市場の金利と東京市場の金利)を交換するベーシス・スワップが貸借対照表上の資産と負債の金利インデックスを一致させることを目的としている場合には、特例処理の適用を認めてよいと考えられる。ベーシス・スワップは、資産及び負債に係る異なる変動金利の受払の変動を相殺する場合にのみキャッシュ・フロー・リスクを減じる効果があり、この場合にはヘッジ会計の要件を満たすものといえる。すなわち、これは変換後の金利インデックスが、当該資産に対応する負債調達金利又は当該負債に対応する資産運用金利のインデックスと一致する場合(すなわち、利付負債を財源とする資産運用の利鞘を確定させる場合)に限られる。
ヘッジ会計の中止と終了
- 348. 本実務指針第180項に定めている各ケースは、ヘッジ対象が引き続き存在している場合において、ヘッジ会計の対象とすべきヘッジ関係が存在しなくなったケースである。本実務指針第180項及び第182項から第184項においては、これをヘッジ会計の「中止」と呼んでいる。これに対し、ヘッジ対象が存在しなくなった場合(本実務指針第181項参照)は、金融商品会計基準において「ヘッジ会計の終了」と呼ばれている。金融商品会計基準の定めるとおり、ヘッジ会計の中止においては過去に繰り延べたヘッジ手段に係る損益又は評価差額の繰延べが継続され、ヘッジ対象に係る損益(金利を含む。)の認識に伴って繰り延べたヘッジ損益又は評価差額を中止以後の純損益に計上するのに対し、ヘッジ会計の終了においては繰り延べたヘッジ手段に係る損益又は評価差額は当期の純損益として処理される。
ヘッジ会計終了時点における損失の見積り
- 349. ヘッジ手段に係る損失又は評価差額(評価差損)は、ヘッジ対象に生じた含み益(未実現評価益)にほぼ対応しているはずであり、ヘッジ会計の要件を満たしている間は、繰り延べた金額には回収可能性があると考えられる。しかし、ヘッジ会計の要件を満たさなくなってヘッジ会計の適用を中止した場合、ヘッジ対象に係る含み益はその後も増減するため、繰り延べている金額と対応しなくなる。ここでヘッジ対象に係る含み益が大きく減少した場合には、繰り延べている金額がヘッジ対象に係る含み益を上回り、回収可能性が高いとはいえなくなる。「ヘッジ対象に係る含み益が減少することによりヘッジ会計の終了時点で重要な損失が生じるおそれがあるとき」とは、このような場合を指しているものと解される。
- こうした場合における、ヘッジ会計の終了時点で生じるおそれのある損失の見積りについては、現時点のヘッジ対象の含み益を、ヘッジ損失の回収可能額とみなして、当該回収可能額に対する不足額のうち、ヘッジ会計の適用を中止した後におけるヘッジ対象の時価の変動に相当する金額を、損失の見積額とすることが合理的と考えられる。
- ただし、ヘッジ取引がヘッジ対象の資産又は負債の価格変動リスクの一部のみをヘッジするものであった場合には、この取扱いにおけるヘッジ対象の「含み益」及び「時価の変動」は、当該リスク要因のみについて計算したものによることができる。例えば、外貨建のその他有価証券の為替リスクのみを繰延ヘッジによりヘッジしていた場合、為替相場は上昇したが、外貨によるその他有価証券の時価が下落している場合であっても当該その他有価証券の換算差益が繰延ヘッジ損失を上回っていれば、損失の見積計上を要しない。
- なお、その他有価証券をヘッジ対象とする繰延ヘッジ取引について、ヘッジ会計の適用を中止した後にヘッジ対象であるその他有価証券の時価が下落したときは、第350項(1)に照らして、損失計上の要否を検討する必要がある。
- 350. ヘッジ取引の開始時においてヘッジ対象に含み損益が存在する場合には、繰り延べたヘッジ手段に係る損失又は評価差額(評価差損)とヘッジ対象の含み損益とが対応しないこととなるが、これについては、次のように解釈される。
- (1) ヘッジ対象に含み益が存在していた場合
ヘッジ会計の適用中止後にヘッジ対象の時価が下落していても、純資産の部において繰り延べたヘッジ手段に係る損失又は評価差額(評価差損)の額をヘッジ対象の含み益が上回っている場合には、「ヘッジ会計の終了時点で重要な損失が生じるおそれがある」場合には該当しないと考えられるため、損失の見積計上を要しない。 - (2) ヘッジ対象に含み損が存在していた場合
この場合には、繰り延べたヘッジ手段に係る損失又は評価差額(評価差損)の額が、ヘッジ取引の開始当初からヘッジ対象に係る含み益を下回ることとなる。しかし、ヘッジ取引開始前に発生していたヘッジ対象の含み損については、ヘッジ取引とはもともと無関係であり、ヘッジ取引を行わなかった場合にも認識されないものであるため、損失の見積計上を要しない。
複合金融商品
払込資本を増加させる可能性のある部分を含む複合金融商品の会計処理
発行体における新株引受権付社債の新株引受権の区分処理
- 351. 新株引受権付社債には新株引受権が付されているため、新株引受権付社債の利子率は普通社債を発行した場合の利子率と比べ低く設定されている。行使されないで償還する場合の元利のキャッシュ・フローを普通社債の利子率で現在価値に引き直したものが、発行時における普通社債相当部分の価額である。この発行時の普通社債相当額と新株引受権付社債の発行価額との差額は、新株引受権というオプションの売建てに係る受取オプション料であり、両者を区分して計上することになる。
発行体における転換社債の株式転換権の区分処理
- 352. 転換社債には株式転換権が付されているため、転換社債の利子率は普通社債を発行した場合の利子率と比べ低く設定されている。転換されないで償還する場合の元利のキャッシュ・フローを普通社債の利子率で現在価値に引き直したものが、発行時における普通社債相当部分の価額である。この発行時の普通社債相当額と転換社債の発行価額との差額は、株式転換権というオプションの売建てに係る受取オプション料である。区分処理の場合、両者を区分して計上することになる。
新株引受権及び株式転換権の会計処理
- 353. 削 除
その他の複合金融商品の会計処理
組込デリバティブのリスクが現物の金融資産又は金融負債に及ぶこと
- 354. 削 除
組込デリバティブのリスクが現物の金融資産又は金融負債に及ぶ可能性がある例
- 355. 削 除
- 356. 削 除
適 用
適 用
- 357. 第132-2項の定めを適用するにあたり、組合等への出資者である企業が定めた第132-2項の定めを適用する組合等の選択に関する方針によっては、方針に合致するすべての組合等を対象として、その構成資産に含まれるすべての市場価格のない株式(出資者である企業の子会社株式及び関連会社株式を除く。)について時価をもって評価し、組合等への出資者の会計処理の基礎とする準備を行うのに時間を要する可能性があると考えられる。このため、十分な準備期間を確保するように、2025年改正実務指針については、2026年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用することとした(第195-20項参照)。
- 一方、第308-2項に記載のとおり、2025年改正実務指針の検討は、国内外の機関投資家からより多くの成長資金がベンチャーキャピタルファンド等に供給されること等を副次的な目的として開始されたものであり、できるだけ速やかに適用可能とすることへのニーズは一定程度あると考えられる。このため、2025年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から2025年改正実務指針を適用することができることとした(第195-20項参照)。
適用初年度の経過措置
その他の金融資産及び金融負債
任意組合、匿名組合、パートナーシップ、リミテッド・パートナーシップ等への出資の会計処理
- 358. 第132-2項の定めを適用するにあたり、2025年改正実務指針は、組合等への出資者である企業が第132-2項の定めを適用する組合等の選択に関する方針を定め、当該方針に基づき、組合等への出資時に第132-2項の定めの適用対象かどうか決定し、第132-2項の定めを適用することとした組合等への出資の会計処理は出資後に取りやめることはできないこととしている(第132-3項参照)。ここで、組合等への出資者である企業が定めた方針に合致する組合等を過去に遡って決定することを求めるのは、実際には行っていなかった判断を事後的に求めることになることから、適切でないと考えられる。このため、2025年改正実務指針の適用初年度においては、2025年改正実務指針の適用初年度の期首時点において、組合等への出資者である企業が定めた方針に基づいて第132-2項の定めを適用する組合等を決定することとした(第205-2項参照)。
- 次に、会計処理の遡及適用に関しては、市場価格のない株式の時価の算定には見積りの要素が多く含まれ、事後的判断を利用せずに市場価格のない株式の時価を遡及的に算定することは実務上困難であると考えられること、及び過去に遡ってどの時点で時価のある有価証券の減損処理に関する定め(第91項参照)に基づく減損処理が必要であったか識別することは困難であると考えられることから、2025年改正実務指針については、遡及適用を求めず、適用初年度の期首から将来にわたって適用することとした。この場合、2025年改正実務指針の適用後の当期純利益等への影響が適切となるように、経過措置を設けることとした(第205-2項(1)及び(2)参照)。
Ⅲ 設例による解説
- 以下では、本実務指針による会計処理等について、理解を深めるために設例による解説を示すこととする。
- 設例は、本実務指針で示されたすべての会計処理等を網羅しているわけではなく、前提条件に示された状況に適合するものである。したがって、前提条件が異なれば、それに適合する会計処理等も異なる場合があり、この場合には本実務指針で示されている会計処理等を参照することが必要となる。なお、設例で示された金額や比率などの数値は、特別な意味を有するものではなく、説明の便宜のために用いられているにすぎない。
- (注) 以下に示す設例による解説のうち、勘定科目は例示である。
設例
- [設例1] 有価証券売買取引
- 1. 前提条件
- A社(買手)はB社(売手)と有価証券(普通社債、額面10,000)の売買契約を締結した。その詳細は次のとおりである。
- (1) 約定日:X1年3月30日
売買価額:10,000
3月29日現在の時価:9,900
B社のその他有価証券の償却原価(3月29日現在):9,000 - (2) 決算日(X1年3月31日)の時価:10,010
- (3) 受渡日:X1年4月2日
- (4) 決算日(X2年3月31日)の時価:10,030
- (5) 当設例の趣旨を明らかにするため、付随費用の発生、有価証券利息・経過利息の計上及び評価差額の税効果は、考慮していない。
- 2. 会計処理
- 有価証券売買取引に係る買手及び売手各々の約定日基準及び修正受渡日基準による仕訳は、次のようになる。
- (1) 買 手
- ① 約定日基準

- (注)評価差額の洗替えによる期首振戻しの仕訳である。
- ② 修正受渡日基準

- (注)評価差額の洗替えによる期首振戻しの仕訳である。
- (2) 売 手
- 満期保有目的の債券については、原則として売却しないこととされているので、設例は作成しない。
- ① 約定日基準

- * その他有価証券の売却益は、売却額と償却原価の差額である(10,000-9,000
- =1,000)。
- ② 修正受渡日基準

- (注1)売買目的有価証券については、売却時に時価(売却価額)評価する。しかし、実務上は、帳簿価額のままとし、期末に売却価額で評価することも認められる。
- (注2)その他有価証券については、期末に時価評価するので、そのときに売却損益を認識する。すなわち、未引渡しのものについて、売却時の時価(売却価額)で評価し、売却益を計上する。
- [設例2] 金融資産の消滅に係る会計処理
- 1. 前提条件
- (1) A社が帳簿価額1,000の債権を、下記(2)の契約条件で第三者に1,050の現金を対価として譲渡した。
- (2) A社は、買戻権(譲受人から買い戻す権利)を持ち、延滞債権を買い戻すリコース義務を負い、また、譲渡資産の回収代行を行う。
- (3) 取引は、支配の移転のための条件を満たしている。
- (4) 現金収入、回収サービス業務資産、買戻権及びリコース義務のそれぞれの時価は次のとおりである。

- 2. 譲渡資産の売却原価及び残存部分の原価の算定
- 上記前提条件に基づく譲渡資産の売却原価及び残存部分の原価は、次のとおりである。

- 3. 譲渡損益の算定

- 4. 仕 訳
- 上記譲渡資産の売却原価及び残存部分の原価の算定の結果に基づく、譲渡人の仕訳は次のとおりである。

- [設例3] 売買目的有価証券の評価及び会計処理
- 1. 前提条件
- X社は以下の銘柄の上場株式を売買目的で保有しており、その取得原価及び各年度における時価は次のとおりである。

- (注1)A株式をX2年度の期中において、1,600で売却した。
- (注2)X3年度の期中において、資金運用方針の変更に伴い、有価証券の短期的な売買(トレーディング取引)を行わないことを取締役会で決議したため、B株式及びC株式を決議日の時価(B株式600、C株式700)でその他有価証券へ振り替えた。
- (注3)売買目的有価証券は、本来は頻繁に売買がなされるものであるが、設例の便宜上、ある期間保有しているものとしている。
- 2. 会計処理
① X1年度期末 
- * 売買目的有価証券の貸借対照表価額はA株式、B株式及びC株式の時価の合計額3,100となり、これとこれらの取得原価の合計額3,000との差額(評価差額)100を当期の純損益(勘定科目は有価証券運用損益)として計上する。なお、本設例では、評価差額に係る税効果は発生しないことを前提にしている(以下同じ。)。
② X2年度期首
- (注)前期末に計上した売買目的有価証券の評価差額は、翌期において洗替処理又は切放処理のいずれによることもできる(第67項参照)が、本設例では切放処理によることとし、X2年度期首に、X1年度期末に計上した評価差額の振戻仕訳は行わない。
③ X2年度期中(売却日)
- * A株式を売却した。売却時の帳簿価額はX1年度期末の貸借対照表価額1,400であり、これと売却価額1,600との差額200が売却損益(勘定科目は有価証券運用損益)となる。
④ X2年度期末
- * 売買目的有価証券の貸借対照表価額はB株式及びC株式の時価の合計額1,500となり、これとこれらのX1年度期末貸借対照表価額の合計額1,700(800+900)との差額(評価差額)200を当期の純損益(勘定科目は有価証券運用損益)として計上する。
⑤ X3年度期中(振替日)
- * 資金運用方針の変更に伴い、有価証券の短期的な売買(トレーディング取引)を行わないことを取締役会で決議したため、B株式及びC株式について、売買目的有価証券からその他有価証券へ時価で振り替えた。振替価額は振替時の時価の合計額 1,300であるが、売買目的有価証券の帳簿価額はX2年度期末の時価の合計額1,500であるため、これらの差額200を売買目的有価証券に係る振替損益(勘定科目は有価証券運用損益)として処理する。
- [設例4] 満期保有目的の債券の会計処理
- 1. 前提条件
- X社(3月決算)は、X1年1月1日に既発のA社社債を9,400で取得した。この債券は、満期まで所有する意図をもって保有するものである。なお、取得価額と債券金額(額面)との差額(取得差額)は、すべて金利の調整部分(金利調整差額)である。
- (1) 額 面:10,000
- (2) 満 期:X3年12月31日
- (3) クーポン利子率:年利6%
- (4) 利払日:毎年6月末日及び12月末日 年2回
- 2. 会計処理
- (1) 原則法である利息法による場合
利息法とは、債券のクーポン受取総額と金利調整差額の合計額(この合計額が実質的な有価証券利息の総額となる。)を債券の帳簿価額に対し一定率(実効利子率)になるように、複利をもって各期の純損益に配分する方法をいい、当該配分額とクーポン計上額(クーポンの現金受取額及びその既経過分の未収計上額の増減額の合計額)との差額を帳簿価額に加減する(第70項参照)。したがって、利息法を適用する場合には、まずこの実効利子率を求める必要がある。 - この実効利子率は、次の算式が成立するような率として求められる。

- この算式を解くと、実効利子率r=8.3%が求められる。
- 各利払日における利息及び償却原価の計算表は、次のとおりである。

- (注)実効利子率 年8.3%
- ① X1年1月1日(取得日)

- ② X1年3月31日(決算日)

- ③ X1年6月30日(第1回利払日)

- ④ X1年9月30日(中間決算日)

- 以後の各期も同様の会計処理を行う。
- ⑤ X3年12月31日(満期日)
- (最終利払)

- (満期償還)

- (2) 簡便法である定額法による場合
定額法とは、債券の金利調整差額を取得日から償還日までの期間で除して各期の純損益に配分する方法をいい、当該配分額を帳簿価額に加減する(第70項参照)。
したがって、利息法と異なり、償却は利払日に行う必要はなく、期末のみ行えばよい。 - ① X1年1月1日(取得日)

- ② X1年3月31日(決算日)

- ③ X1年6月30日(第1回利払日)

- ④ X1年9月30日(中間決算日)

- 以後の各期も同様の会計処理を行う。
- ⑤ X3年12月31日(満期日)
- (最終利払)

- (満期償還)

- [設例5] その他有価証券(株式)の評価及び会計処理
- 1. 前提条件
- (1) X社は以下の銘柄の上場株式を各1,000株保有しており、その取得原価及び各年度における時価は次のとおりである。

- (注1)A株式はX2年度の期中において、1,000で売却した。
- (注2)C株式はX1年度末において時価が著しく下落し、かつ、取得原価まで回復する見込みがあるとは認められないと判断し、減損処理を行った。
- (2) X社は、保有しているすべての株式をその他有価証券の区分に分類している。
- (3) その他有価証券の帳簿価額と税務上の資産計上額との差額は一時差異に該当し、税効果会計を適用する。実効税率は40%であり、X社は繰延税金資産の回収可能性に問題はないものとする。なお、評価差額の処理方法として部分純資産直入法を採用する場合の評価差損に係る税効果の仕訳は、一般に他の一時差異に係る税効果の仕訳と合算して行われるため、本設例では省略している。
- 2. 会計処理
- (1) 全部純資産直入法
その他有価証券の評価差額の合計額(評価差益及び評価差損)を純資産の部に計上する方法 - ① X1年度期末

- * C株式は、X1年度末において時価が著しく下落し、かつ、取得原価まで回復する見込みがあるとは認められないため、評価差額を当期の損失として処理する(減損処理)。なお、当該評価差額については、発生時に税務上の損金処理が認められることを前提にしている。400-1,000=-600

- A株式及びB株式については評価差益が生じているため、評価差額は税効果額を控除した上で純資産の部に計上する。
- *1 評価差益部分(800-500)+(1,200-800)=700
- *2 税効果額部分(繰延税金負債)700×40%=280
- *3 資本計上額(その他有価証券評価差額金)700-280=420

- D株式については評価差損が生じているため、評価差額は税効果額を控除した上で純資産の部に計上する。
- *1 評価差損部分 1,500-2,000=-500
- *2 税効果額部分(繰延税金資産) -500×40%=-200
- *3 資本計上額(その他有価証券評価差額金) -500-(-200)=-300
- ② X2年度期首

- * A株式、B株式及びD株式の評価差額の計上は洗替処理によるため、X1年度期末に計上した評価差額120(420-300)、繰延税金資産200及び繰延税金負債280を振り戻し、帳簿価額を取得原価とする。
- ただし、C株式は減損処理を行っているので、その評価差額は振り戻さない。
- ③ X2年度期中(売却日)

- * A株式を売却した。売却時の帳簿価額は取得原価500であり、これと売却価額1,000の差額500が売却損益となる。
- ④ X2年度期末

- C株式は、X1年度期末に減損処理を行い、その後時価が一部回復して評価差益が生じているため、評価差額は税効果額を控除した上で純資産の部に計上する。
- *1 評価差益部分 500-400=100
- *2 税効果額部分(繰延税金負債) 100×40%=40
- *3 資本計上額(その他有価証券評価差額金) 100-40=60

- B株式及びD株式については評価差損が生じているため、評価差額は税効果額を控除した上で純資産の部に計上する。
- *1 評価差損部分 (700-800)+(1,300-2,000)=-800
- *2 税効果額部分(繰延税金資産) -800×40%=-320
- *3 資本計上額(その他有価証券評価差額金) -800-(-320)=-480
- (2) 部分純資産直入法
- 時価が取得原価を上回る銘柄に係る評価差額(評価差益)は純資産の部に計上し、時価が取得原価を下回る銘柄に係る評価差額(評価差損)は当期の損失として処理する方法
- ① X1年度期末

- * C株式の減損処理は(1)の場合と同じ。

- * A株式及びB株式に係る評価差額(評価差益)の処理は(1)と同じ。

- * D株式は評価差額がマイナスのため当期の損失として処理する。
- 1,500-2,000=-500
- ② X2年度期首

- * A株式及びB株式の評価差額の計上は洗替処理によるため、X1年度期末に計上した評価差額420及び繰延税金負債280を振り戻し、帳簿価額を取得原価とする。

- * D株式の評価差額も同様に洗替処理によるが、X1年度期末に計上した評価損500を評価益として振り戻し、帳簿価額を取得原価とする。
- ③ X2年度期中(売却日)

- * A株式を売却した。売却時の帳簿価額は取得原価500であり、これと売却価額1,000の差額500が売却損益となる。
- ④ X2年度期末

- C株式は、X1年度期末に減損処理を行い、その後時価が一部回復して評価差益が生じているため、評価差額は税効果額を控除した上で純資産の部に計上する。
- *1 評価差益部分 500-400=100
- *2 税効果額部分(繰延税金負債) 100×40%=40
- *3 資本計上額(その他有価証券評価差額金) 100-40=60

- * B株式及びD株式については評価差損が生じているため、当期の損失として処理する。(700-800)+(1,300-2,000)=-800
- [設例6] その他有価証券(債券)の評価及び会計処理
- 1. 前提条件
- (1) X社は、債券を9,800(額面10,000)で取得し、その他有価証券として分類した。
- (2) 償却原価法の適用による決算日の金利調整差額(償却額):45
- (3) 当該債券の決算日の時価:9,900
- (4) その他有価証券の帳簿価額と時価との差額(評価差額)は一時差異に該当し、税効果会計を適用する。実効税率は40%であり、X社は繰延税金資産の回収可能性に問題はないものとする。
- (5) 評価差額の会計処理方法は全部純資産直入法である。
- (6) 有価証券の売買の認識は約定日基準で行うこととされている(第22項参照)が、償却原価法の適用は利息期間(受渡しベース)にわたって行うこととされている(第70項参照)ため、本設例では、説明の便宜上、有価証券の受渡しベースで会計処理を行っている。
- (7) 本設例では、クーポンの計上に係る仕訳を省略している。
- 2. 会計処理
- ① 取得日

- * 取得価額で計上する。
- ② 決算日

- * その他有価証券のうち金利調整差額が生じている債券については、まず償却原価法を適用する(第70項参照)。償却原価法適用後の帳簿価額(償却原価)は次のとおりである。9,800+45=9,845

- その他有価証券のうち債券については、評価差額は時価と償却原価との差額として算定する。
- *1 9,900-9,845=55
- *2 税効果額部分(繰延税金負債) 55×40%=22
- *3 資本計上額(その他有価証券評価差額金) 55-22=33
- ③ 翌年度期首

- * その他有価証券の評価差額の計上は洗替処理によるため、決算日に計上した評価差額33及び繰延税金負債22を振り戻す。ただし、償却原価法による金利調整差額の償却額は振り戻さない。
- [設例7] 有価証券貸借取引及び有価証券現先取引の仕訳例
- <ケース1> 有価証券の借手がその売却又は再担保という自由処分権を有しない場合
- 1. 前提条件
- (1) 3月1日に有価証券(社債)を保有(帳簿価額99)しているA社(貸手)とB社(借手)は、額面100(時価101)の有価証券の貸借を約定(受渡日3月4日)した。当該貸借に係る現金担保は105である。なお、A社は当該有価証券を売買目的で所有している。
- (2) 3月4日に有価証券及び現金の受渡しを行う。
- (3) 3月31日(決算日)の有価証券の時価は103である。
- (4) 9月30日(中間決算日)の有価証券の時価は104である。
- (5) 10月31日に有価証券及び現金の返還を行う。
- (6) 担保付の有価証券貸借取引の内容を明示するため、品貸(借)料、利息の処理は省略する。
- 2. 会計処理

- (注)有価証券の借手に売却又は再担保という方法で自由に処分できる権利を与えないが、有価証券の貸手は自己の有価証券の使用が拘束されているため、借入金に対する担保差入有価証券とみなして、決算日及び中間決算日とも、その旨及び貸借対照表価額を注記する。
- <ケース2> 有価証券の借手が、その売却又は再担保という自由処分権を有し、当該有価証券を売却した場合
- 1. 前提条件
- ケース1の前提条件に次の前提条件を追加する。
- (1) B社は、6月1日に有価証券を第三者に104で売却する約定を締結する。受渡しは同月4日である。
- (2) B社は、借入有価証券を返還するため10月27日に有価証券を107で買い付ける約定を締結する。受渡しは同月31日である。
- (3) B社は、有価証券の認識基準として約定日基準を採用している。
- (4) 洗替法による期首振戻しの仕訳は、仕訳数が増加するので、この設例では、評価差額の純変動額を計上する仕訳とする(以下同じ。)。
- 2. 会計処理

- (注)有価証券の貸手は、貸し付けた有価証券の使用が拘束されているため、決算日及び中間決算日とも、その旨及び貸借対照表価額を注記する。これに対し、有価証券の借手は、受け入れた有価証券について売却又は再担保という方法で自由に処分できる権利を有するため、決算日において、その旨及び貸借対照表日の時価を注記する。ただし、中間決算日においては、保管有価証券を売却し、その返還義務(売却借入有価証券)が貸借対照表に計上されているため、注記は不要である。
- <ケース3> 有価証券の借手がその売却又は再担保という自由処分権を有し、当該有価証券を売付有価証券の決済(ショートカバー)に使用した場合
- 1. 前提条件
- ケース1の前提条件に次の前提条件を追加する。
- (1) B社は、3月1日に有価証券を第三者に102で売却する約定を締結する。受渡しは同月4日である。これを決済するために、ケース1の前提条件(1)の約定を行った。
- (2) B社は、借入有価証券を返還するため10月27日に有価証券を107で買い付ける約定を締結する。受渡しは同月31日である。
- (3) B社は、有価証券の認識基準として約定日基準を採用している。
- 2. 会計処理

- (注)有価証券の貸手は、貸し付けた有価証券の使用が拘束されているため、決算日及び中間決算日とも、その旨及び貸借対照表価額を注記する。これに対し、有価証券の借手は、有価証券を売却してその返還義務(売却借入有価証券)が貸借対照表に計上されているため、決算日及び中間決算日とも注記は不要である。
- <ケース4> 現先取引の対象となった有価証券の買手がその売却又は再担保という自由処分権を有し、当該有価証券を売付有価証券の決済(ショートカバー)に使用した場合
- 1. 前提条件
- ケース3の前提条件の有価証券貸借取引を現先取引に置き換える。
- (1) B社は、3月1日に有価証券を第三者に102で売却する約定を締結する。受渡しは同月4日である。これを決済するために、3月1日に有価証券(社債)を保有(帳簿価額99)しているA社(現先有価証券の売手)とB社(現先有価証券の買手)は、額面100(時価101)の有価証券の現先取引(現物価額105、先渡価額105)を約定(受渡日3月4日)した。
- (2) 3月4日に有価証券及び現金の受渡しを行う。
- (3) 3月31日(決算日)の有価証券の時価は103である。
- (4) 9月30日(中間決算日)の有価証券の時価は104である。
- (5) B社は、売却した担保受入有価証券を返還するため10月27日に有価証券を107で買い付ける約定を締結する。受渡しは同月31日である。
- (6) 10月31日に有価証券の現先取引が終了し先渡取引の有価証券と現金が授受される。
- (7) 有価証券現先取引の内容を明示するため、現物価額と先渡価額とは同一とした。
- (8) B社は、有価証券の認識基準として約定日基準を採用している。
- 2. 会計処理
- 有価証券の現先取引は金融処理するが、その場合、現先有価証券の買手は貸付けを行い、有価証券を担保受入金融資産として受領することになる。売手は借入れを行い、その担保として有価証券を差し入れることになる。

- (注)現先有価証券の売手は、担保として差し入れた有価証券の使用が拘束されているため、決算日及び中間決算日とも、その旨及び貸借対照表価額を注記する。これに対し、現先有価証券の買手は、有価証券を売却してその返還義務(売却担保有価証券)が貸借対照表に計上されているため、決算日及び中間決算日とも注記は不要である。
- [設例8] 有価証券の保有目的区分等変更時の会計処理
- 1. 前提条件
- (1) 使用する勘定科目
売買目的有価証券の損益:有価証券運用損益
その他有価証券の評価差額:有価証券評価損益(当期純損益)
その他有価証券評価差額金(純資産の部) - (2) 有価証券評価損益(当期純損益)に係る税効果の仕訳は省略している。
- 2. 会計処理
- (1) 売買目的有価証券からその他有価証券への振替
前期末の時価(貸借対照表価額):500
振替時の時価:400
当期末の時価(貸借対照表価額):300
実効税率:40% - ① 振替処理

- * 振替時の時価で振り替えるため、当該金額400と前期末の貸借対照表価額500との差額100を有価証券運用損益に計上する。
- ② 期末評価
- (全部純資産直入法)

- * 振替時の時価400と当期末の時価300との差額100のうち税効果額40を控除した金額60をその他有価証券評価差額金に計上する。
- (部分純資産直入法)

- * 振替時の時価400と期末の時価300との差額100を有価証券評価損益に計上する。
- (2) その他有価証券から売買目的有価証券への振替
取得原価:100
前期末の時価(貸借対照表価額):90
振替時の時価:70
当期末の時価(貸借対照表価額):65
実効税率:40% - ① 期首洗替処理
- (全部純資産直入法)

- * 前期末に計上した評価差額を振り戻す。
- (部分純資産直入法)

- * 前期末に計上した評価損益を振り戻す。
- ② 振替処理

- * 振替時の時価で振り替えるため、当該金額70と取得原価100との差額30を有価証券評価損益に計上する。
- ③ 期末評価

- * 振替時の時価70と当期末の時価65との差額5を有価証券運用損益に計上する。
- (3) 売買目的有価証券から子会社・関連会社株式への振替
前期末の時価(貸借対照表価額):100
振替時の時価:120 - ① 振替処理

- * 振替時の時価で振り替えるため、当該金額120と前期末の時価100との差額20を有価証券運用損益に計上する。
- ② 期末評価

- * 子会社・関連会社株式については、期末評価は行わない。
- (4) その他有価証券から子会社・関連会社株式への振替
取得原価:100
前期末の時価(貸借対照表価額):90
振替時の時価:70
実効税率:40% - ① 期首洗替処理
- (全部純資産直入法)

- * 前期末に計上した評価差額を振り戻す。
- (部分純資産直入法)

- * 前期末に計上した評価損益を振り戻す。
- ② 振替処理
- (全部純資産直入法)

- * 帳簿価額で振り替える。
- (部分純資産直入法)

- * 部分純資産直入法を採用しており、当該有価証券について評価差損を計上している場合には、時価による評価後の価額で振り替えるため、当該金額90と取得原価100との差額10を有価証券評価損益に計上する。
- ③ 期末評価

- * 子会社・関連会社株式については、期末評価は行わない。
- [設例9] 金銭の信託の会計処理
- 1. 前提条件
- 期首及び期末における運用目的の特定金銭信託の信託財産構成物は次のとおりであった。

- 2. 会計処理

- ・ 運用目的の金銭の信託中の株式は売買目的有価証券とみなすため、時価評価する。
・ 預金利息は会社の事業年度に合わせて発生主義で算定する。
・ 金銭の信託の貸借対照表価額は、各金融資産及び金融負債を時価で評価した合計額となる。
・ 運用目的の金銭の信託の信託財産構成物の評価差額は当期の純損益として処理する。 - [設例10] 非上場デリバティブ取引の時価評価
- 削 除
- [設例11] 債務者の信用リスクを反映した債権の取得価額と債務者からの入金額の処理
- 1. 前提条件
- (1) A社は次の債権を取得した。
取得日 :期首(X1年4月1日)
債権金額:100,000,000
取得価額: 40,000,000 - (2) この債権について債務者の信用リスクを反映して見積った将来キャッシュ・フローは次のとおりである。

- 2. 会計処理
- 将来キャッシュ・フローの現在価値が取得価額に一致するような割引率(実効利子率)を求める。

- この算式を解くと、実効利子率r=7.93%が得られる。
- この割引率に基づき、入金額を次のとおり元本と利息に配分する。

- ① X1年4月1日(取得日)

- * 債権を取得価額40,000,000で計上する。
- ② X2年3月31日

- * 発生する利息は、取得価額40,000,000を元本として、実効利子率7.93%を乗じた3,172,000となるため、入金額10,000,000との差額6,828,000を元本の入金として処理する。
- 以後の各期も同様の会計処理を行う。
- [設例12] 一般債権の貸倒実績率法に基づく貸倒見積高の算定
- <ケース1> 債権の平均回収期間が3年の場合
- 1. 前提条件
- (1) T-5期からT期までの、債権の発生、回収及び貸倒れに関するデータは、次のとおりである。

- (注1)債権の平均回収期間は3年とする。
- (注2)貸倒損失は、回収年度の2年目と3年目に発生するものとする。ただし、T-5期の残高にはT-6期以前に発生した債権が含まれているため、T-4期においても貸倒損失が発生している。
- (2) 貸倒実績率は、当初債権残高に対する、翌期以降3年間(算定年度)の貸倒損失発生累計額の割合とする。
- (3) 当期に適用する貸倒実績率は、過去3算定年度に係る貸倒実績率の平均値とする。
- (4) 以上の条件より、貸倒実績率を算定する算定期間の基準となる年度は、T-5期、T-4期及びT-3期とする。
- 2. 会計処理
- (1) 発生年度ごとの貸倒実績率の平均値による方法
この方法では、当期末に残高のある債権の基準年度元本残高に、当期に適用する貸倒実績率を乗じて貸倒損失総発生額を見積り、そこから当期発生額を控除して貸倒引当金計上額を算定する。
まず、基準となる各算定期間に係る貸倒実績率を算定する。
・ T-5期を基準年度とする貸倒実績率=45/4,500=1.00%
・ T-4期を基準年度とする貸倒実績率=19/1,800=1.06%
・ T-3期を基準年度とする貸倒実績率=24/2,100=1.14%
上記の3算定期間に係る貸倒実績率の平均値を計算して、T期の貸倒見積高の算定に適用する貸倒実績率を算定する。 - (1.00+1.06+1.14)/3=1.07%
- 当期の貸倒引当金計上額を算定する。
- (2,400+2,700+3,000)×1.07%-10=76

- (2) 合計残高ごとの貸倒実績率の平均による方法
この方法では、当期末に残高のある債権の合計期末残高に、当期に適用する貸倒実績率を乗じて貸倒損失総発生額を見積り、貸倒引当金計上額を算定する。
まず、基準となる各算定期間に係る貸倒実績率を算定する。
・ T-5期を基準年度とする貸倒実績率=(20+15+17)/4,500=1.16%
・ T-4期を基準年度とする貸倒実績率=(15+17+21)/4,800=1.10%
・ T-3期を基準年度とする貸倒実績率=(17+21+25)/4,800=1.31%
上記の3算定期間に係る貸倒実績率の平均値を計算して、T期の貸倒見積高の算定に適用する貸倒実績率を算定する。
(1.16+1.10+1.31)/3=1.19%
当期の貸倒引当金計上額を算定する。
5,600×1.19%=67
この方法では、ある基準年度に係る貸倒実績率を算定するための貸倒発生額に、翌基準年度に発生した債権に係る貸倒損失額が含まれるため、貸倒実績率が過大に算定されることとなる。例えば、T-5期を基準年度とする貸倒実績率を算定するための分子の貸倒発生額のうち、3年目(T-2期)の17には、T-4期の債権に係る7が含まれている。したがって、厳密な計算を行うためには、分子となる貸倒発生額から基準年度の債権に関連のない貸倒損失を除外する必要がある(ただし、本設例では、これを除外せずに貸倒実績率の算定を行っている。)。 
- <ケース2> 債権の平均回収期間が1年未満の場合
- 1. 前提条件
- (1) 一般債権である営業債権における過去3期間の貸倒れの発生状況は、次のとおりである。

- (注)債権の平均回収期間は3か月とする。
- (2) 貸倒実績率は、期首債権残高に対する、翌期1年間(算定期間)の貸倒損失発生の割合とする。
- (3) 当期に適用する貸倒実績率は、過去3算定年度に係る貸倒実績率の平均値とする。
- (4) 以上の条件より、貸倒実績率を算定する算定期間の基準となる年度は、T-3期、T-2期及びT-1期とする。
- 2. 会計処理
まず、基準となる各算定期間に係る貸倒実績率を算定する。
・ T-3期を基準年度とする貸倒実績率=20/5,500=0.36%
・ T-2期を基準年度とする貸倒実績率=10/6,000=0.17%
・ T-1期を基準年度とする貸倒実績率=30/6,500=0.46%
上記の3算定期間に係る貸倒実績率の平均値を計算して、T期の貸倒見積高の算定に適用する貸倒実績率を算定する。
(0.36+0.17+0.46)/3=0.33%
当期の貸倒引当金計上額を算定する。
7,000×0.33%=23 
- [設例13] 貸倒懸念債権のキャッシュ・フロー見積法に基づく貸倒見積高の算定
- 1. 前提条件
- A社がB社に対し有する債権金額1,000,000、約定利子率年5%(年1回毎期末後払い)、残存期間5年(期限一括返済)の債権について、X1年3月31日の利払後にB社から条件緩和の申し出があり、A社は、約定利子率を年2%に引き下げることに合意した。
- 2. 会計処理

- 各利払日において予想される条件緩和後の将来キャッシュ・フローの見積りが、条件緩和時と同じである場合における当初約定利子率で割り引いた現在価値

- X1年3月31日(条件緩和時)

- * 条件緩和に伴い、債権金額1,000,000と予想される将来キャッシュ・フローを当初約定利子率(5%)で割り引いた現在価値870,117との差額129,883を貸倒引当金に計上する。
- (1) 第1法(時の経過による貸付金の変動額を受取利息として処理する方法)
- ① X2年3月31日

- * 発生する利息は、予想される将来キャッシュ・フローを当初約定利子率(5%)で割り引いた870,117を元本として、当初の約定利子率年5%を乗じた43,506となるため、入金額20,000との差額23,506の貸倒引当金を取り崩す。この結果、貸倒引当金残高は106,377となる。なお、将来キャッシュ・フローの見積りはX1年3月31日と変わらず、当初約定利子率で割り引いた現在価値の合計は893,623であるため、貸倒引当金は債権金額と現在価値額との差額に一致する。
- 以後の各期も同様の処理を行う。
- ② X6年3月31日(期限)

- (2) 第2法(時の経過による貸付金の変動額を貸倒引当金戻入益として処理する方法)
- ① X2年3月31日

- * 入金額20,000を受取利息に計上する一方、当初約定利子率で割り引いた現在価値の合計は893,623であるため、X1年3月31日における現在価値合計870,117との差額23,506を貸倒引当金の取崩しとして処理する。
- 以後の各期も同様の処理を行う。
- ② X6年3月31日(期限)

- [設例14] 劣後債権に対する貸倒見積高の算定
- (1) 原貸付債権が一般債権の場合

- (注1)債権の回収は譲渡分に劣後する旨の特約付き。
- (注2)原貸付債権は今期生じたものであり、貸倒引当金は計上されていないものとする。
- ① 譲渡時

- *1 1,000,000×70,000/970,000=72,165
- *2 優先部分の譲渡原価 1,000,000×900,000/970,000=927,835
- 売却損 900,000-927,835=27,835
- ② 期末時

- * 68,000(回収可能見込額)-72,165(劣後債権の帳簿価額)=-4,165となり、回収可能見込額が劣後債権の帳簿価額を下回っているため、当該下回った金額を貸倒引当金に計上する。
- (2) 原貸付債権が貸倒懸念債権の場合

- (注1)簡便化のために、ここでは時価が回収リスクのみを反映したものと考えている。
- (注2)債権の回収は譲渡分に劣後する旨の特約付き。
- (注3)前期末に貸倒引当金を計上済みとする。
- ① 譲渡時

- *1 (1,000,000-200,000)×100,000/800,000=100,000
- *2 優先部分の譲渡原価 (1,000,000-200,000)×700,000/800,000=700,000
- 売却損 700,000-700,000=0
- ② 期末時
- 120,000(回収可能見込額)-100,000(劣後債権の帳簿価額)=20,000となり、回収可能見込額が劣後債権の帳簿価額を上回っているため、貸倒引当金の計上は必要ない。
- [設例15] 建設協力金の会計処理
- 削 除
- [設例16] 受取手形及び割引手形に関する会計処理
- 1. 前提条件
- A社(決算日:各年3月31日)は、X1年4月1日に、プロジェクトの機械装置を完成納入し、プロジェクトの売上代金1,000,000(約定金額)に関し、2年先期日の受取手形にて代金回収を行った。受取手形の額面は、売上元本額に年利5%(年複利)による2年間の金利相当額102,500を加算した、合計1,102,500であった。
- 受取手形受領時点の状況は次のとおりである。なお、消費税は考慮していない。

- 2. 会計処理
- (1) この手形を保有し続けた場合の売上時及びその後最初の決算日(X2年3月31日)における仕訳は、次に掲げる方式1から方式3を採用した場合、以下のようになる。なお、最初の決算日において、当該受取手形に対して、額面に対して1%の貸倒引当金を計上する。
- (2) この受取手形をX2年4月1日に、割引料66,150(割引率、年利6%前払)を控除され、1,036,350にて銀行で割り引いた。割引時における保証債務(受取手形遡及義務)の時価は、11,025(額面の1%)と評価された。この受取手形は、手形満期日に無事決済された。
方式1:受取手形に含まれる金利部分を別処理しない方式
方式2:受取手形に含まれる金利部分を別処理する方式(利息認識は利息法による。)
方式3:受取手形に含まれる金利部分を別処理する方式(利息認識は簡便法である定額法による。) - <方式1:金利部分を別処理しない方式>
- ① 売上時点(X1年4月1日)

- ② 決算日(X2年3月31日)

- ③ 割引時点(X2年4月1日)

- (注)保証債務費用と貸倒引当金戻入益は相殺して表示する(監査・保証実務委員会実務指針第61号「債務保証及び保証類似行為の会計処理及び表示に関する監査上の取扱い」4 (4) ④)。
- ④ 手形満期日(X3年3月31日)]

- <方式2:金利部分を別処理する方式(利息法)>
- ① 売上時点(X1年4月1日)

- ② 決算日(X2年3月31日)

- * 1,000,000×5%=50,000
- ③ 割引時点(X2年4月1日)

- (注)保証債務費用と貸倒引当金戻入益は相殺して表示する。
- ④ 手形満期日(X3年3月31日)

- <方式3:金利部分を別処理する方式(簡便法である定額法)>
- ① 売上時点(X1年4月1日)

- ② 決算日(X2年3月31日)

- * 102,500×1/2=51,250
- ③ 割引時点(X2年4月1日)

- (注)保証債務費用と貸倒引当金戻入益は相殺して表示する。
- ④ 手形満期日(X3年3月31日)

- [設例17] ヘッジ有効性の評価方法(事後テスト)の具体例
- <予定取引のヘッジ>
- 1. 前提条件
- B社(3月決算)は、3か月後に変動金利(ユーロ円ベース:LIBOR+0.5%)による100億円の借入れ(期間3か月、期日一括返済、利息後払い)を予定している。この借入れの金利変動リスクを回避するため、2月1日にヘッジ効果の事前確認によりLIBORとの高い相関が見込まれた日本円短期金利先物(100契約)を、約定価格97.80で売り建て、ヘッジ指定した。借入実行日の5月1日にこの金利先物を97.62で買い戻し、予定どおり借入れを実行した。日本円短期金利先物及びLIBORは次のように推移した。
- なお、B社は値洗基準を採用している(証拠金、手数料、税金等は考慮外としている。)。

- 2. ヘッジ有効性の判定

- 上記のとおり決算日(3月31日)と金利先物の手仕舞い日のいずれの時点においても高い有効性があると判断できる。
- (注)この場合は、ヘッジ手段の名目元本がヘッジ対象である予定取引の金額と同一であるため、金利の変動幅で比較しても金利の金額で比較しても結果は同じである。
- <商品先物による製品価格のヘッジ>
- 1. 前提条件
- (1) A社は製品Xを保有しているが、市況の悪化が予想されたので、3月1日に標準物の商品先物売契約を締結し、ヘッジ指定した。製品X及び商品先物に関するデータは次のとおりである。なお、A社は3月決算である(証拠金、手数料、税金等は考慮外としている。)。
- ① 製品Xに関するデータ

- ② 商品先物に関するデータ

- (2) ヘッジ効果の事前確認により、製品Xと商品先物の相場変動には高い相関が見込まれた。
- (3) 最近の製品X及び商品先物の時価の変動を要約すると次のとおりである。

- 2. ヘッジ有効性の判定
- (1) 3月31日(決算日)
- ヘッジ取引開始後の現物時価変動額に対する先物時価変動額の比率は50/60=83.3%であり、この比率であれば高い有効性があると判断できる。A社がヘッジを開始した日は3月1日であるので、この時点からヘッジ対象とヘッジ手段の時価変動の累計額を比較して有効性判定(事後テスト)を行う。
- (2) 9月30日(中間決算日)
- ヘッジ開始時から判定時までの現物時価変動額に対する先物時価変動額の比率は80/100=80.0%であり、ヘッジに高い有効性があると判断できる。
- (3) 10月30日
- 最終的なヘッジ対象とヘッジ手段の累計時価変動額の比率は100/120=83.3%であり、高い有効性があると判断できる。
- [設例18] その他有価証券の価格変動リスクをヘッジした場合の会計処理
- 1. 前提条件
- (1) A社発行の固定利付社債を購入し、これをその他有価証券に区分した。購入と同時に、当該社債の金利変動による価格変動リスクをヘッジするため、固定支払・変動受取の金利スワップを締結した。期末時点の市場金利が購入時のそれより上昇していたため、A社社債及び金利スワップの時価はそれぞれ次のように変化した。なお、A社に信用悪化があるため、その影響も時価に反映している。

- (2) この場合、金利スワップでヘッジしている社債のリスクは金利変動による価格変動リスクだけであり、信用の悪化に伴う社債の価格変動リスクはヘッジしていない。この場合の繰延ヘッジと時価ヘッジによる仕訳は次のとおりである。
- (3) 税効果は便宜上考慮していない。
- 2. 会計処理
- (1) 繰延ヘッジ(原則法)

- (2) 時価ヘッジ

- [設例19] 予定取引実行時の処理(予定取引が資産の取得である場合)
- 1. 前提条件
- (1) A社(3月決算)は、X1年4月に予定されている原材料のドル建て輸入に関して、円安によるコスト増加を懸念して、X1年1月末にこの取引をヘッジするための為替予約(ドル買い)を行った。この輸入取引は実行される可能性が極めて高いものであり、ヘッジ会計の要件も満たしている。
- (2) 取引量及び価格の予想に基づいて、代金決済の予想時期である5月末を決済期日とする為替予約を10百万ドル行い、予約レートは1ドル=110円であった。その後の直物レートの推移は次のとおりである。4月30日に予想と同額の10百万ドルの輸入取引が実行され、5月31日に為替予約と輸入代金が決済された。
なお、単純化のため、先物レートは直物レートと同一であったものとしている。また、洗替処理は採用せず、評価差額の純変動額を計上している。
決算日(3月31日) 107円
取引実行日(4月30日)112円
決済期日(5月31日) 114円 - (3) 法定実効税率は40%とする。
- 2. 会計処理(繰延ヘッジ)

- [設例20] 予定取引が利付負債の発生である場合のヘッジの処理方法
- 1. 前提条件
- X1年11月1日に、1,000,000,000をX2年2月1日(3か月後)から同年8月1日までの6か月間借り入れることを予定している。会社は、借入れまでの金利上昇に対するリスクをヘッジするため、3か月後から6か月間について、契約金利3.1%で金利先渡契約(FRA)を買うことにした。FRAの利子率決定日はX2年1月29日(決済日である2月1日の2営業日前)であり、この時点のLIBORは3.5%であった。
- LIBORが契約金利を上回っているため、X2年2月1日に決済金額を次のとおり1,987,000受け取ることになる。また、借入金の金利は3.55%に決定し、利息の支払は満期日に行われる。
- なお、借入金利息計算及び金利の期間配分は、計算の便宜上、月割りで計算している。

- ND:契約金額
- DP:契約日数
- L :利子率決定日のLIBOR
- R :契約利子率
- また、税効果は便宜上考慮していない。
- 洗替処理は採用せず、評価差額の純変動額を計上している。
- 2. 会計処理
- FRAの損益は借入発生時まで繰延ヘッジ損益として繰り延べ、借入金の利息認識に合わせて償却する。
- ① X2年2月1日(FRA決済日及び借入日)

- (注)FRAの決済受取額は、ヘッジ対象である借入金の支払利息の認識と合わせるため、繰延べを行う。

- ② X2年3月31日(決算日)

- ③ X2年8月1日(借入金返済日)

- [設例21] 通貨オプションによる予定取引のヘッジ
- 1. 前提条件
- A社(3月決算)は、X1年2月28日に、10百万ドルで製品を輸出する契約を締結した。出荷は4月末、代金受取は5月末に予定しているが、契約締結の時点で、円高により輸出代金が減少するリスクを回避するために、通貨オプション契約によるヘッジを行うこととし、契約日の直物レートと同額の1ドル=110円を行使価格、5月末を行使期日とするプット・オプションを1ドル当たり3.60円のオプション料で購入した。
- その後の直物レート及びオプション価格の変動は、次のとおりである。

- なお、税効果は便宜上考慮していない。また、洗替処理は採用せず、評価差額の純変動額を計上している。
- 2. 会計処理


- [設例22] 包括ヘッジにおけるヘッジ手段に係る損益の配分
- 1. 前提条件
- (1) A社(3月決算)は、X1年2月1日に、その他有価証券として保有している債券15銘柄(帳簿価額合計12,000)の相場変動をヘッジするため、債券先物120単位(1単位当たり100)の売建取引を行った。X1年3月1日に、債券のうち一銘柄(帳簿価額1,800)を1,850で売却した。
- (2) 債券及び債券先物取引の時価の推移は、次のとおりである。

- (3) 税効果は便宜上考慮していない。
- 2. 会計処理(繰延ヘッジ)
- (1) ヘッジ有効性の判定
- 180/200=90% … 有効性は高いと判定された。
- (2) X1年3月1日
- ① ヘッジ手段の評価差額の繰延処理

- ② 債券売却時

- ③ 売却した債券への繰延ヘッジ損益の配分(ヘッジ取引終了時の帳簿価額を基礎とする場合)

- * 180×1,800/12,000=27
- (注)その他の配分基準による場合の損益の配分額は、次のようになる。
- a.ヘッジ取引開始時の時価を基礎とする場合
- 180×1,792/11,900=27
- b.ヘッジ取引終了時の時価を基礎とする場合
- 180×1,820/12,100=27
- c.ヘッジ取引開始時からヘッジ取引終了時までの間の相場変動幅を基礎とする場合
- 180×28/200=25
- [設例23] 金利スワップの特例処理の対象
- 1. 前提条件
- (1) X1年7月1日に期間5年、6か月LIBORプラス0.5%で100,000の変動借入れを行った。変動金利を固定金利に変換するため、LIBORプラス0.5%の変動金利を受け取り、2%の固定金利を支払う、期間5年、想定元本100,000のスワップ契約を同日に締結した。現在の市場レートを反映した変動金利は1.75%であり、会社は手数料として0.25%を上乗せした固定金利を支払うことになる。借入金及び金利スワップの利息は、いずれも後払いで6月30日と12月31日に支払われる。決算日は、3月31日である。また、6か月LIBORは次のとおりであり、支払金利は支払日から6か月前の水準が適用される。

- (2) 上記の金利スワップ及び対象となっている借入金については、金利スワップの想定元本と借入金の元本金額が同一であり、金利の受払条件及び満期も全く同一である。したがって、金利スワップの特例処理により処理することが認められる。
- 2. 会計処理
- 特例処理により、金利スワップの受払の純額が借入金の利息に加減される。
- ① X1年7月1日(借入れ及びスワップ契約締結日)

- ② X1年12月31日(利払日)

- *1 借入金利息:100,000×1.75%×6/12=875
- *2 スワップ契約純支払額:100,000×(2.00%-1.75%)×6/12=125
- ③ X2年3月31日(決算日)

- *1 借入金未払利息:100,000×2.12%×3/12=530
- *2 スワップ契約純受取額:100,000×(2.12%-2.00%)×3/12=30
- ④ X2年6月30日(利払日)

- 上記は、借入実行及びスワップ契約の締結から1年間の取引の仕訳であるが、残存期間の4年間についても同様な仕訳が行われる。X2年3月31日(決算日)までの支払利息の合計(スワップ契約の純受払額をネット後)は1,500となり、これはスワップ契約により借入金利息を2%の固定金利(1,500=100,000×2.00%×9/12)で確定し、キャッシュ・フローを固定したことになる。
- [設例24] 金利スワップによるヘッジ会計の適用
- 1. 前提条件
- (1) X1年4月1日に期間3年、100,000,000の変動借入れ(東京銀行間金利(TIBOR))
を行った。変動金利を固定金利に変換するため、LIBORの変動金利を受け取り、2%の固定金利を支払う、期間3年、想定元本100,000,000のスワップ契約を締結した。借入金及び金利スワップの利息は、前年の4月1日の金利水準により翌年の3月31日に後払いされる。決算日は3月31日である。借入金と金利スワップの変動金利の基礎となっているインデックスが異なるが、有効性を含めヘッジ会計の適用要件は満たしているものとする。 - (2) TIBORとLIBORの推移は、次のとおりである。

- (3) 金利スワップの時価は、次のとおりである。

- (4) 税効果は便宜上考慮していない。また、洗替処理は採用せず、評価差額の純変動額を計上している。
- 2. 会計処理
- ① X1年4月1日(借入れ及びスワップ契約締結日)

- ② X2年3月31日(決算日及び利払日)

- * 借入金利息:100,000,000×2.20%=2,200,000
- (注)スワップ契約純受払額:100,000,000×(2.00%-2.00%)=0(受払なし)

- ③ X3年3月31日(決算日及び利払日)

- *1 借入金利息:100,000,000×2.80%=2,800,000
- *2 スワップ契約純受払額:100,000,000×(2.50%-2.00%)=500,000

- * 金利スワップの時価増加額7,162(970,874-963,712)を認識する。
- ④ X4年3月31日(決算日及び利払日)

- *1 借入金利息:100,000,000×3.40%=3,400,000
- *2 スワップ契約純受払額:100,000,000×(3.00%-2.00%)=1,000,000

- [設例25] ヘッジ会計終了時点における損失の見積り
- 1. 前提条件
- A社は、保有するB商品の価格変動リスクをヘッジするために商品先物の売建契約(10単位)を行ったが、B商品の価格が上昇して先物価格が1単位当たり150上昇したため、先物契約に1,500の損失が生じた。この時点で、今後もB商品の価格が上昇すると予測したため、先物契約を解約して決済した。この損失は、ヘッジ会計の要件が満たされていた間に発生したものであるので、先物契約の解約後も引き続き繰延ヘッジ損益として繰り延べている。
- しかし、その後、B商品の価格が下落してB商品の含み益が大きく減少し、繰延ヘッジ損益として繰り延べた金額を著しく下回ることとなり、この商品の売却時点で重要な損失が生じるおそれがあると判断された。
- B商品の取得原価:1単位当たり1,200
- B商品の時価(1単位当たり):

- なお、税効果は便宜上考慮していない。
- 2. 会計処理
- (1) ケース1(ヘッジ取引開始時にヘッジ対象に含み損が存在していた場合)
- ① 先物契約解約時

- ② 決算期末

- * (1,300-1,220)×10単位=800
- (2) ケース2(ヘッジ取引開始時にヘッジ対象に含み益が存在していた場合)
- ① 先物契約解約時

- ② 決算期末

- * 1,500-(1,280-1,200)×10単位=700
- [設例26] 転換社債の会計処理(区分処理)
- 削 除
- [設例27] 複合金融商品(通貨オプション付定期預金)の会計処理(区分処理)
- 削 除
- 以 上
