ASSET-ASBJ

実務対応報告第1号旧商法による新株予約権及び新株予約権付社債の会計処理に関する実務上の取扱い
目 的
- 平成13年11月28日に公布された「商法等の一部を改正する法律(平成13年法律第128号)」(以下「平成13年改正旧商法」という。)により、新株予約権及び新株予約権付社債の概念が導入された。新株引受権付社債及び転換社債に関する会計処理については、平成11年1月22日に企業会計審議会から公表された「金融商品に係る会計基準の設定に関する意見書」及び「金融商品に係る会計基準」(以下合わせて「改正前金融商品会計基準」という。また、これを改正した企業会計基準第10号「金融商品に関する会計基準」を以下「金融商品会計基準」という。)並びに平成12年1月31日に日本公認会計士協会から公表された「金融商品会計に関する実務指針」において明らかにされているが、平成13年改正旧商法における新株予約権及び新株予約権付社債に関する会計処理をどのように行うかという質問が多かったことから、企業会計基準委員会(以下「当委員会」という。)は、上記の会計基準等に則して当面の取扱いを明らかにするために、平成14年3月29日に本実務対応報告を公表した。
- 当委員会は、平成17年12月9日に企業会計基準第5号「貸借対照表の純資産の部の表示に関する会計基準」(以下「純資産会計基準」という。)を公表し、新株予約権の表示区分を変更している。また、平成17年12月27日に企業会計基準第8号「ストック・オプション等に関する会計基準」を公表し、従業員等に対するインセンティブとして新株予約権を付与した場合の当該新株予約権の会計処理を定めている。このため、当委員会では、本実務対応報告に所要の改正を行うこととした。
- なお、本実務対応報告は、会社法(平成17年法律第86号)施行日前に発行の決議があった会社法施行日前の商法(以下「旧商法」という。)による新株予約権及び新株予約権付社債の会計処理についての当面の取扱いを明らかにすることを目的としている。一方、会社法による新株予約権及び新株予約権付社債の会計処理については、平成17年12月27日公表の実務対応報告第16号「会社法による新株予約権及び新株予約権付社債の会計処理に関する実務上の取扱い」の定めによることとされ、さらに企業会計基準適用指針第17号「払込資本を増加させる可能性のある部分を含む複合金融商品に関する会計処理」(以下「企業会計基準適用指針第17号」という。)の公表日以後に終了する事業年度及び中間会計期間からは企業会計基準適用指針第17号が適用される。
- 平成17年12月27日改正の本実務対応報告は、第95回企業会計基準委員会に出席した委員11名全員の賛成により承認された。
会計処理
- Q1.

- A
- 1. 新株予約権の概要
- 旧商法における新株予約権は、新株予約権を有する者(以下「新株予約権者」という。)が会社に対してこれを行使したときに、会社が新株予約権者に対して新株を発行し、又は新株の発行に代えて会社の有する自己の株式を移転する義務を負うもの(旧商法第280条ノ19)とされている。会社は、取締役会(定款で株主総会が決議する旨を定めている場合には株主総会)の決議により、その決議の内容に従い新株予約権を発行することができる(旧商法第280条ノ20第1項及び第2項)。新株予約権は、取締役や従業員等に対するインセンティブとしていわゆるストック・オプションを付与する場合に限らず、一般的に発行することが認められており、また、社債の発行とは別に単独で発行することも認められている。一方、会社は、新株予約権の発行決議において消却事由を定め、かつ、当該消却事由が生じたときに限り取締役会の決議により新株予約権を消却することができる(旧商法第280条ノ36第1項)。
- 2. 新株予約権の会計上の性格
- 新株予約権は、新株予約権者が権利を行使したときに、会社が、新株を発行する義務又は新株の発行に代えて自己株式を移転する義務を負うものであり、以前の新株引受権と比較した場合、新株予約権には新株の発行に代えて自己株式を移転することができる点で相違がある。しかし、それは交付する株式の発行時期の相違に過ぎず、新株予約権者の権利行使に伴い行使価額の払込みを条件として株式を発行又は移転する義務を負うという点でその経済的実質は同一であるものと考えられる。
- 3. 新株予約権の会計処理
- (1) 発行者側の会計処理
- 改正前金融商品会計基準は、新株引受権を単独で発行した場合の会計処理については明示していないが、上記2の整理と新株引受権付社債の会計処理を勘案すれば、新株予約権を以下のように会計処理することが適当であると考えられる。
- 「新株予約権の発行価額は負債の部に計上し、権利が行使されたときは資本金又は資本金及び資本準備金に振り替え、権利が行使されずに権利行使期限が到来したときは利益として処理する。ただし、純資産会計基準の適用後は、新株予約権の発行価額は純資産の部に計上することになるので、負債の部に計上している新株予約権の帳簿価額は純資産の部に振り替える。」
- なお、新株予約権が行使された場合、その発行価額は株式発行の対価としての性格が認められる。このため、旧商法では新株予約権の発行価額とその行使に伴う払込金額との合計額の一株当たりの額をその新株一株の発行価額とみなしており(旧商法第280条ノ20第4項)、新株の発行価額中資本に組み入れない額を決議している場合(旧商法第280条ノ20第2項第10号)には、新株の発行価額を資本及び資本準備金に組み入れる(旧商法第284条ノ2第2項及び第288条ノ2第1項第1号)が、それ以外の場合には新株の発行価額の総額を資本に組み入れる(旧商法第284条ノ2第1項)ことに留意する必要がある。
- また、新株予約権が行使され、自己株式を処分する場合の自己株式処分差額の会計処理は、自己株式を募集株式の発行等の手続により処分する場合に準じて取り扱う(企業会計基準第1号「自己株式及び準備金の額の減少等に関する会計基準」(最終改正平成17年12月27日)第9項から第11項)。なお、自己株式処分差額を計算する際の自己株式の処分の対価は、新株予約権の発行に伴う払込金額と新株予約権の行使に伴う払込金額の合計とする。
- (2) 取得者側の会計処理
- 改正前金融商品会計基準は、新株引受権を単独で取得した場合の会計処理については明示していないが、新株予約権を以下のように会計処理することが適当であると考えられる。
- 「新株予約権は、有価証券の取得として処理するものとする。権利を行使したときは株式に振り替える。」
- これは、新株予約権証券が新株引受権証書と同様に、有価証券に該当する(証券取引法第2条第1項第6号)ため、金融商品会計基準及び移管指針第9号「金融商品会計に関する実務指針」(以下「金融商品会計実務指針」という。)の有価証券に係る規定により認識・測定されるという考え方に基づいている。したがって、新株予約権は、取得時に時価で測定し(金融商品会計実務指針第29項)、保有目的の区分に応じて売買目的有価証券又はその他有価証券として会計処理する。また、新株予約権の権利が行使されたときは、保有目的区分に応じて、売買目的有価証券の場合には行使時の時価で、その他有価証券の場合には帳簿価額(金融商品会計実務指針第57項(4))で株式に振り替え、権利行使されずに権利行使期限が到来したときは、帳簿価額(金融商品会計実務指針第91項に基づき減損処理している場合には、減損処理後の帳簿価額)を損失として処理する。なお、時価の算定については、新株予約権が株式に対するコール・オプションとしての性格を有するため、デリバティブ取引に対する評価方法に準じて行うことが適当と考えられる。
- (3) 新株予約権の消却に係る会計処理
- 新株予約権が権利行使期限到来前に消却された場合には、その効力が生じたときに消滅を認識する(金融商品会計基準第10項)。
- Q2.

- A
- 1. 新株予約権付社債の概要
- 会社は、新株予約権を付した社債(以下「新株予約権付社債」という。)を発行することができる(旧商法第341条ノ2第1項)。新株予約権付社債については、新株予約権又は社債が消滅した場合を除き、新株予約権又は社債の一方のみを分離譲渡することは禁止されている(旧商法第341条ノ2第4項)。新株予約権付社債を発行する場合には、会社は取締役会(定款で株主総会が決議する旨を定めている場合には株主総会)で旧商法第341条ノ3第1項第1号から第10号までの事項を決議しなければならない。なお、旧商法第341条ノ3第1項第7号及び第8号の決議を行う場合には、社債の発行価額と新株予約権の行使に際して払い込むべき額の全額とが同額でなければならない(旧商法第341条ノ3第2項)。
- 2. 新株予約権付社債の会計上の性格
- (1) 代用払込が認められる新株予約権付社債
- 新株予約権を行使しようとする新株予約権者から請求があったときに新株予約権付社債の全額を償還することに代えて権利行使に際し払い込むべき額の全額につき代用払込があったものとする旨(旧商法第341条ノ3第1項第7号)を決議した新株予約権付社債(以下「代用払込が認められる新株予約権付社債」という。)の場合には、新株予約権者が権利行使に際して払い込むべき額の全額につき代用払込の請求を行ったときに限り代用払込があったものとして処理されるので、新株予約権者に払込方法の選択を認めるものである。
- 以前の非分離型新株引受権付社債は、社債と新株引受権が分離譲渡できないものであるが、発行決議において新株引受権の行使に際して代用払込を選択することも認められていた。このため、代用払込が認められる新株予約権付社債は、以前の非分離型新株引受権付社債とその経済的実質は同一であると考えられる。
- (2) 代用払込の請求があったとみなす新株予約権付社債
- 新株予約権の行使があったときに代用払込の請求があったものとみなす旨(旧商法第341条ノ3第1項第8号)を決議した新株予約権付社債(以下「代用払込の請求があったとみなす新株予約権付社債」という。)の場合には、新株予約権者が権利行使したときに新株予約権の行使に際して払い込むべき額の全額につき代用払込の請求があったものとみなして処理されるので、新株予約権者に払込方法の選択を認めないものである。
- 以前の転換社債は、株式への転換権の分離譲渡ができず、社債の発行価額と転換権の行使に際して払い込むべき額を同額とした上で、転換権を行使するときは、必ず社債が償還されて、社債の償還額が転換権の行使に際して払い込むべき額に充てられるものである。したがって、代用払込の請求があったとみなす新株予約権付社債は、以前の転換社債に相当するものとして定められたものであると考えられる。ただし、新株予約権が消却された場合又は社債が繰上償還された場合には、社債と新株予約権がそれぞれ単独で存在し得る可能性があるので、そのような場合には以前の転換社債の性格は失われると考えられる。したがって、代用払込の請求があったとみなす新株予約権付社債の経済的実質が以前の転換社債と同一であると考えられるためには、社債と新株予約権がそれぞれ単独で存在し得ないことが明確にされていることが必要であり、例えば、以下のいずれかが社債要項等に照らして明らかである必要がある。
- ① 新株予約権について消却事由を定めておらず、かつ、社債についても繰上償還を定めていないこと。
- ② 新株予約権について消却事由を定めている場合には、新株予約権が消却されたときに社債も同時に償還されること、かつ、社債について繰上償還を定めている場合には、社債が繰上償還されたときに新株予約権も同時に消却されること。
- 一方、代用払込の請求があったとみなす新株予約権付社債のうち、社債と新株予約権がそれぞれ単独で存在し得ないことがあらかじめ明確にされていないものについては、以前の転換社債と同様の性格をもたないと考えられる。
- 3. 新株予約権付社債の会計処理
- (1) 代用払込が認められる新株予約権付社債の会計処理
- 改正前金融商品会計基準では、新株引受権付社債の会計処理について、分離型あるいは非分離型を区別することなく、発行者側及び取得者側ともに社債の対価部分と新株引受権の対価部分に区分して処理する方法(区分法)を適用するものとしている。したがって、代用払込が認められる新株予約権付社債は、以前の非分離型新株引受権付社債に準じて、以下のように区分法により会計処理することが適当であると考えられる。
- 発行者側の会計処理
「代用払込が認められる新株予約権付社債の発行価額(社債と新株予約権のそれぞれの発行価額の合計額)は、社債の対価部分と新株予約権の対価部分に区分する。社債の対価部分は、普通社債の発行に準じて処理する。新株予約権の対価部分は、新株予約権の発行者側の会計処理に準じて処理するものとする。」 - 取得者側の会計処理
「代用払込が認められる新株予約権付社債の取得価額は、社債の対価部分と新株予約権の対価部分に区分する。社債の対価部分は、普通社債の取得に準じて処理する。新株予約権の対価部分は、新株予約権の取得者側の会計処理に準じて処理するものとする。」 - なお、代用払込が認められる新株予約権付社債の発行価額又は取得価額を社債の対価部分と新株予約権の対価部分に区分する場合には、金融商品会計基準(注15)のいずれかの方法に準じて処理することができる。しかしながら、それぞれの発行価額が明らかに経済的に合理的な額と乖離する場合には、このいずれかの方法のうち当該発行価額の比率で配分する方法を適用することは適当でない。このため、区分法における他の方法を適用することになり、社債と新株予約権を個々に会計処理した場合と異なる結果になる場合があることに留意する必要がある。
- (2) 代用払込の請求があったとみなす新株予約権付社債の会計処理
- ① 代用払込の請求があったとみなす新株予約権付社債で以前の転換社債と経済的実質が同一であると考えられるもの
改正前金融商品会計基準では、転換社債の発行者側の会計処理については、転換社債の発行価額を社債の対価部分と転換権の対価部分に区分せず普通社債の発行に準じて処理する(一括法)又は新株引受権付社債に準じて処理する(区分法)としている。
また、取得者側の会計処理については、転換社債の取得価額を社債の対価部分と転換権の対価部分に区分せず普通社債の取得に準じて処理し、権利を行使したときは株式に振り替えるものとしている。
転換社債の会計処理として一括法を認める理由は、転換社債については転換権が行使されると社債は消滅し、社債の償還権と転換権が同時にそれぞれ存在し得ないことから、それぞれの部分を区分して処理する必要性は乏しいと考えられることに求められる。この考え方は、代用払込の請求があったとみなす新株予約権付社債で社債と新株予約権がそれぞれ単独で存在し得ないことがあらかじめ社債要項等で明確にされているもの、すなわち、以前の転換社債と経済的実質が同一と考えられるものについても適用されると考えられるので、以下のように会計処理することが適当である。
発行者側の会計処理
「代用払込の請求があったとみなす新株予約権付社債で以前の転換社債と経済的実質が同一であると考えられるものの発行価額は、社債と新株予約権のそれぞれの発行価額を合算し、普通社債の発行に準じて処理する。又は、代用払込が認められる新株予約権付社債の会計処理に準じて処理する。」
取得者側の会計処理
「代用払込の請求があったとみなす新株予約権付社債で以前の転換社債と経済的実質が同一であると考えられるものの取得価額は、社債の対価部分と新株予約権の対価部分に区分せず、普通社債の取得に準じて処理し、権利を行使したときは株式に振り替える。」 - ② 代用払込の請求があったとみなす新株予約権付社債で以前の転換社債と経済的実質が同一であると考えられないもの
代用払込の請求があったとみなす新株予約権付社債で社債と新株予約権がそれぞれ単独で存在し得ないことがあらかじめ社債要項等で明確にされていないものは、以前の転換社債と経済的実質が同一であると考えられないので、以下のように会計処理することが適当である。
「発行者側及び取得者側ともに、代用払込が認められる新株予約権付社債と同様に、区分法により会計処理する。」 - Q3.

- A
- 社債と新株予約権は別々に証券が発行されるので発行後には個別に流通することになるが、社債と新株予約権を同時に募集し、かつ、両者を同時に割り当てる場合には発行時において両者は実質的に一体のものとみられるため、その経済的実質は以前の分離型新株引受権付社債と同一であるものと考えられる。改正前金融商品会計基準では、新株引受権付社債について区分法を適用するものとしているので、その会計処理はそれぞれの発行価額を合計した上で区分法(Q2のA3(1)参照)により行うことが適当であると考えられる。
- なお、社債と新株予約権を同時に募集していない場合又は両者を同時に割り当てていない場合でも、実質的に一体のものとみられるときは以前の分離型新株引受権付社債と同一であると考え、社債と新株予約権を個々に会計処理せずに、それぞれの発行価額を合計した上で区分法(Q2のA3(1)参照)を適用することに留意する必要がある。例えば、社債と新株予約権を同時に募集していない場合とは一部の割当てを時間的にずらしているような場合であり、両者を同時に割り当てていない場合とは一部の社債と新株予約権の割当てを別々の者に行うような場合である。

