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企業会計基準第28号「税効果会計に係る会計基準」の一部改正
目 的
- 1. 本会計基準は、企業会計審議会が平成10年10月に公表した「税効果会計に係る会計基準」(以下「税効果会計基準」という。)及び「税効果会計に係る会計基準注解」(以下「税効果会計基準注解」という。)のうち開示に関する事項を改正することを目的とする。
会計基準
開 示
表 示
- 2. 税効果会計基準の「第三 繰延税金資産及び繰延税金負債等の表示方法」1.及び2.の定めを次のとおり改正する。
1. 繰延税金資産は投資その他の資産の区分に表示し、繰延税金負債は固定負債の区分に表示する。
2. 同一納税主体の繰延税金資産と繰延税金負債は、双方を相殺して表示する。
異なる納税主体の繰延税金資産と繰延税金負債は、双方を相殺せずに表示する。
ただし、グループ通算制度を適用する場合の連結財務諸表における繰延税金資産と繰延税金負債の表示については、実務対応報告第42号「グループ通算制度を適用する場合の会計処理及び開示に関する取扱い」第27項に定める取扱いを適用する。
注記事項
- 3. 税効果会計基準の「第四 注記事項」1.の定めを次のとおり改正する。
1. 繰延税金資産及び繰延税金負債の発生原因別の主な内訳(注8・9) - 4. 税効果会計基準注解(注8)の定めを次のとおり改正する。
- (注8) 繰延税金資産の発生原因別の主な内訳における評価性引当額の取扱いについて
- (1) 繰延税金資産の発生原因別の主な内訳を注記するにあたっては、繰延税金資産から控除された額(評価性引当額)(注5に係るもの)を併せて記載する。繰延税金資産の発生原因別の主な内訳として税務上の繰越欠損金を記載している場合であって、当該税務上の繰越欠損金の額が重要であるときは、繰延税金資産から控除された額(評価性引当額)は、税務上の繰越欠損金に係る評価性引当額と将来減算一時差異等の合計に係る評価性引当額に区分して記載する。
なお、将来減算一時差異等の合計に係る評価性引当額の区分には、繰越外国税額控除や繰越可能な租税特別措置法上の法人税額の特別控除等を含める。 - (2) 繰延税金資産から控除された額(評価性引当額)に重要な変動が生じている場合、当該変動の主な内容を記載する。なお、連結財務諸表を作成している場合、個別財務諸表において記載することを要しない。
- 5. 税効果会計基準注解(注9)の定めを次のとおり追加する。
- (注9) 繰延税金資産の発生原因別の主な内訳として税務上の繰越欠損金を記載している場合であって、当該税務上の繰越欠損金の額が重要であるときの取扱いについて
繰延税金資産の発生原因別の主な内訳として税務上の繰越欠損金を記載している場合であって、当該税務上の繰越欠損金の額が重要であるときは、次の事項を記載する。なお、連結財務諸表を作成している場合、個別財務諸表において記載することを要しない。 - (1) 繰越期限別の税務上の繰越欠損金に係る次の金額
- ① 税務上の繰越欠損金の額に納税主体ごとの法定実効税率を乗じた額
- ② 税務上の繰越欠損金に係る繰延税金資産から控除された額(評価性引当額)
- ③ 税務上の繰越欠損金に係る繰延税金資産の額
- (2) 税務上の繰越欠損金に係る重要な繰延税金資産を計上している場合、当該繰延税金資産を回収可能と判断した主な理由
適用時期等
- 6. 本会計基準は、平成30年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用する。ただし、平成30年3月31日以後最初に終了する連結会計年度及び事業年度の年度末に係る連結財務諸表及び個別財務諸表から適用することができる。
- 7. 本会計基準の適用初年度においては、企業会計基準第24号「会計方針の開示、会計上の変更及び誤謬の訂正に関する会計基準」(以下「企業会計基準第24号」という。)第14項の定めにかかわらず、本会計基準第3項から第5項に定める税効果会計基準注解(注8)(同注解(注8)(1)に定める繰延税金資産から控除された額(評価性引当額)の合計額を除く。)及び同注解(注9)に記載した内容を、適用初年度の連結財務諸表及び個別財務諸表に併せて表示される前連結会計年度における連結財務諸表(注記事項を含む。)及び前事業年度における個別財務諸表(注記事項を含む。)(以下合わせて「比較情報」という。)に記載しないことができる。
議 決
- 8. 本会計基準は、第378回企業会計基準委員会に出席した委員14名全員の賛成により承認された。なお、出席した委員は以下のとおりである。
- (略)
結論の背景
経 緯
- 9. 平成25年12月に開催された第277回企業会計基準委員会において、公益財団法人財務会計基準機構内に設けられている基準諮問会議より、日本公認会計士協会における税効果会計に関する実務指針(会計に関する部分)について当委員会で審議を行うことが提言された。この提言を受けて、当委員会は、税効果会計専門委員会を設置して、平成26年2月から審議を開始した。
- その後、当委員会は、繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針を先行して開発することとし、平成27年12月に、企業会計基準適用指針第26号「繰延税金資産の回収可能性に関する適用指針」(以下「回収可能性適用指針」という。)を公表した。
- 10. 当該回収可能性適用指針の公開草案を公表する前における審議の過程において、税効果会計基準及び同注解では繰延税金資産の回収可能性に関連する注記事項として、繰延税金資産の発生原因別の主な内訳等が定められているものの、財務諸表利用者から、計上されている繰延税金資産や評価性引当額の内容を十分に理解することが困難であるとの意見が聞かれた。これを受けて、回収可能性適用指針の公開草案(平成27年5月に公表)においては、注記事項に関する質問項目を設けて、コメントを募集した。
- 11. 当委員会では、寄せられたコメントを踏まえ、税効果会計に関する表示及び注記事項の見直しについて検討を行い、平成29年6月に企業会計基準公開草案第60号「『税効果会計に係る会計基準』の一部改正(案)」を公表して広く意見を求めた。本会計基準は、公開草案に寄せられた意見を踏まえて検討を行い、公開草案の内容を一部修正した上で公表するに至ったものである。
表 示
- 12. 本会計基準による改正前の税効果会計基準 第三 1.では、「繰延税金資産及び繰延税金負債は、これらに関連した資産・負債の分類に基づいて、繰延税金資産については流動資産又は投資その他の資産として、繰延税金負債については流動負債又は固定負債として表示しなければならない。ただし、特定の資産・負債に関連しない繰越欠損金等に係る繰延税金資産については、翌期に解消される見込みの一時差異等に係るものは流動資産として、それ以外の一時差異等に係るものは投資その他の資産として表示しなければならない。」とされていた。
- 13. これに対し、国際財務報告基準(IFRS)では、国際会計基準(IAS)第1号「財務諸表の表示」(以下「IAS第1号」という。)において、繰延税金資産(負債)を財政状態計算書に表示する場合、流動資産(負債)として分類してはならないとされている。また、米国会計基準では、平成27年11月に、FASB Accounting Standards Codification(米国財務会計基準審議会による会計基準のコード化体系)のTopic 740「法人所得税」が改正され、繰延税金資産又は繰延税金負債を非流動区分に表示するとされている。
- 14. ここで、回収可能性適用指針の公開草案に寄せられたコメントでは、財務諸表作成者の負担の観点から、国際的な会計基準と整合性を図り、繰延税金資産又は繰延税金負債をすべて非流動区分(投資その他の資産及び固定負債に分類されるものを含む。以下同じ。)に表示すべきとの意見があったことを踏まえ、流動又は非流動区分に表示する取扱いを国際的な会計基準に整合させるか否かについて、検討を行った。
- 15. この点、繰延税金資産及び繰延税金負債を、これらに関連した資産及び負債の分類に基づいて流動又は非流動区分に表示するという現行の取扱いは、一時差異等に関連した資産及び負債と、その税金費用に関する資産及び負債(当該一時差異等に係る繰延税金資産及び繰延税金負債)が同時に取り崩されるという特徴を踏まえており、同一の区分に表示することに一定の論拠があると考えられる。
- 一方、繰延税金資産は換金性のある資産ではないことや、決算日後に税金を納付する我が国においては、1年以内に解消される一時差異等について、1年以内にキャッシュ・フローは生じないことを勘案すると、すべてを非流動区分に表示することにも一定の論拠があると考えられる。
- 16. また、繰延税金資産及び繰延税金負債をすべて非流動区分に表示する場合、従来のように流動又は非流動区分に分ける必要がないため、財務諸表作成者の負担は比較的軽減されるとの意見も聞かれる。
- 17. 我が国の会計基準の取扱いを国際的な会計基準に整合させることは、一般的に、財務諸表の比較可能性が向上することが期待され、財務諸表利用者に一定の便益をもたらすと考えられる。流動又は非流動区分に表示する取扱いもすべてを非流動区分に表示する取扱いも一定の論拠があることや、すべてを非流動区分に表示する場合、財務諸表作成者の負担が軽減されることに加え、我が国の東京証券取引所市場第一部に上場している企業を対象にデータ分析を行った範囲では、変更による流動比率に対する影響は限定的であり財務分析に影響が生じる企業は多くないと考えられることも勘案し、繰延税金資産又は繰延税金負債の表示については国際的な会計基準に整合させ、すべてを非流動区分に表示することとした(第2項参照)。
- 18. なお、本会計基準による改正前の税効果会計基準 第三 2.では、「ただし、異なる納税主体の繰延税金資産と繰延税金負債は、原則として相殺してはならない。」とされていたが、異なる納税主体において繰延税金資産と繰延税金負債を相殺して表示する実務は見られないと考えられることから、「原則として」という表現を削除している。
注記事項
注記事項に追加すべき項目の検討
- 19. 税効果会計基準では、税効果会計に関する注記事項として、次の事項が定められている。
- (1) 繰延税金資産及び繰延税金負債の発生原因別の主な内訳(以下「発生原因別の注記」という。)
- (2) 税金等調整前当期純利益又は税引前当期純利益(以下「税引前純利益」という。)に対する法人税等(法人税等調整額を含む。)の比率(以下「税負担率」という。)と法定実効税率との間に重要な差異があるときは、当該差異の原因となった主要な項目別の内訳(以下「税率差異の注記」という。)
- (3) 税率の変更により繰延税金資産及び繰延税金負債の金額が修正されたときは、その旨及び修正額
- (4) 決算日後に税率の変更があった場合には、その内容及びその影響
- 20. ここで、注記事項の追加を検討するにあたっては、財務諸表利用者が税効果会計に関連する注記事項を利用する目的やその分析内容、実際に利用している情報を検討した上で、現状において不足している情報を明確にすべきと考えられるため、主として株価予測を行う財務諸表利用者と主として企業の信用力の評価を行う財務諸表利用者を中心に、その分析内容及び現状において不足している情報の検討を行った。
- 21. 主として株価予測を行う財務諸表利用者は、一般的に、6か月から1年後程度の株価を予想し、当該株価に対して現在の株価が割安か割高かについての分析を行っているが、将来の株価については、主に株価収益率(PER)、株価純資産倍率(PBR)、ディスカウント・キャッシュ・フロー(DCF)、又はそれらのうち複数を用いて予想しているものと考えられる。これらの分析においては、将来2年から5年後の予想財務諸表(貸借対照表、損益計算書及びキャッシュ・フロー計算書)を用いて将来の1株当たり利益(EPS)若しくは1株当たり純資産(BPS)又はDCFを算出するため、将来の税負担率の予測が重要となる。この税負担率を予測する過程においては、必要に応じて、繰延税金資産の回収可能性に関する不確実性の評価を行い税金費用の金額を予測することもある。
- 他方、主として企業の信用力の評価を行う財務諸表利用者は、一般的に、上記の分析に加えて企業の財務の安全性や債務の返済能力についても分析を行っているものと考えられる。具体的には、自己資本比率や債務償還年数を検証しており、これらの分析においても、繰延税金資産の回収可能性に関する不確実性の評価や税負担率の予測が必要となる。
- 22. このように、財務諸表利用者が税負担率の予測の観点及び繰延税金資産の回収可能性に関する不確実性の評価の観点から分析を行うことに着目し、実際に利用している情報を検討した結果、現状において不足している情報として、評価性引当額の内訳に関する情報、税務上の繰越欠損金に関する情報及び税法の改正による影響額が識別された。
- 23. このうち評価性引当額の内訳に関する情報及び税務上の繰越欠損金に関する情報については、現状において情報が不足している理由及び追加する注記事項の内容を第25項以降に記載している。
- なお、税法の改正による影響額については、財務諸表利用者が、当年度の税負担率から一過性の原因により生じたものを除いて将来の税負担率を予測する場合、税率の変更による影響のみならず、当該影響を含む税法の改正による影響を考慮することとなると考えられるため、当該情報の注記を追加すべき項目とするか否かについて検討した。検討の結果、税法の改正の内容を注記する場合、繰延税金資産及び繰延税金負債に重要な影響を与えるものを特定した上で、税法の改正を考慮していないことを前提にした繰延税金資産及び繰延税金負債を算定する必要があり、特に在外子会社の税制は多様であることから当該算定が煩雑であるとの意見が聞かれたため、コストと便益の比較の観点から、税法の改正による影響額を注記事項に追加しないこととした。
- 24. 公開草案に寄せられたコメントでは、本会計基準第4項及び第5項で定める注記事項について、IFRSでは必ずしも求められていないものが含まれるため、追加すべきではないとの意見があった。
- この点については、注記事項の追加に関する多数の論点を検討するにあたり、第20項から第22項に記載のとおり、財務諸表利用者が税負担率の予測の観点及び繰延税金資産の回収可能性に関する不確実性の評価の観点から分析を行うことに着目することとし、その分析内容及び実際に利用している情報を十分に検討した上で必要となる注記事項を定めたものであり、国際的な会計基準については、参考にはするものの、国際的な会計基準の定めがある項目に合わせることはしていない。
評価性引当額の内訳に関する情報
評価性引当額の内訳に関する数値情報
(評価性引当額の内訳に関する数値情報の有用性)
- 25. 第21項及び第22項に記載したように、財務諸表利用者が税効果会計に関連する注記事項を利用する場合、一般的に、税負担率の予測の観点及び繰延税金資産の回収可能性に関する不確実性の評価の観点から分析を行うと考えられるため、それぞれの観点から現状において不足している情報について検討を行った。
- 26. 財務諸表利用者が税負担率の予測の観点から分析を行う場合、一般的に、税率差異の注記により、法定実効税率と税負担率との差異のうち一過性の原因により生じたものを除いて実施することが多いと考えられる。この予測にあたって、法定実効税率と税負担率との差異が大きく、かつ、税率差異の注記に「評価性引当額の増減」が記載されている場合、従来の発生原因別の注記では評価性引当額の合計額のみが記載されているため、「評価性引当額の増減」の内容の理解が困難であることから、当年度において法定実効税率と税負担率との差異が大きい理由及び将来の税負担率に与える影響の予測が困難となっていたと考えられる。
- 特に、税負担率の実績と予測が乖離する原因として、税務上の繰越欠損金が生じたときに将来において課税所得が生じる見込みがないため評価性引当額を計上するケースや、税務上の繰越欠損金に係る評価性引当額を計上していたときに、課税所得が生じ税務上の繰越欠損金を利用したことにより評価性引当額が減少するケース等、税務上の繰越欠損金に関連することが挙げられることが多いため、当該税務上の繰越欠損金に係る評価性引当額は有用な情報となると考えられる。
- 27. また、財務諸表利用者が繰延税金資産の回収可能性に関する不確実性の評価の観点から分析を行う場合、従来の発生原因別の注記には、どの一時差異等に対する評価性引当額が計上されているのかが記載されていないため、当該評価が困難となっていたと考えられる。
- ここで、評価性引当額を項目別に算定し記載する場合、将来減算一時差異等の各項目に係る評価性引当額については一定の仮定を置いた計算等により按分して算定せざるを得ないケースが生じると考えられるが、当該按分により算定された将来減算一時差異等の各項目に係る評価性引当額は、個々の将来減算一時差異等の解消の順序が定められていない中で、必ずしも有用な情報とはならないと考えられる。
- 一方、税務上の繰越欠損金に係る繰延税金資産は、他の将来減算一時差異等に係る繰延税金資産よりも一般的に回収可能性に関する不確実性が高いとされているため、当該税務上の繰越欠損金に係る評価性引当額は、比較的、回収可能性に関する不確実性が高い繰延税金資産の額を理解する上で有用な情報となると考えられる。
- 28. これらを踏まえ、発生原因別の注記として税務上の繰越欠損金を記載している場合であって、当該税務上の繰越欠損金の額が重要であるときは、これまで発生原因別の注記に記載されていた評価性引当額の合計額について、税務上の繰越欠損金に係る評価性引当額と将来減算一時差異等の合計に係る評価性引当額に区分して記載することを定めることとした(第4項に定める税効果会計基準注解(注8)(1)参照)。
(評価性引当額の内訳に関する数値情報の記載の要否に関する重要性の判断)
- 29. 評価性引当額の内訳に関する数値情報は、第25項から第28項に記載したように、税負担率の予測の観点及び繰延税金資産の回収可能性に関する不確実性の評価の観点の双方から追加している点を勘案すると、「繰延税金資産の発生原因別の主な内訳として税務上の繰越欠損金を記載している場合であって、当該税務上の繰越欠損金の額が重要であるとき」における「重要であるとき」とは、次のとおりと考えられる。
- 30. 税負担率の予測の観点からは、税務上の繰越欠損金の繰越期間にわたり課税所得(税務上の繰越欠損金控除前のもの。本項において同じ。)が生じる場合、当該繰越期間の税負担率に影響が生じる可能性があるため、「重要であるとき」には、例えば、税務上の繰越欠損金の控除見込額(課税所得との相殺見込額)が将来の税負担率に重要な影響を及ぼす場合が含まれると考えられる。
- 他方、繰延税金資産の回収可能性に関する不確実性の評価の観点からは、税務上の繰越欠損金に係る評価性引当額の記載により、当該税務上の繰越欠損金に係る繰延税金資産の額を理解することができるため、「重要であるとき」には、例えば、純資産の額に対する税務上の繰越欠損金の額(納税主体ごとの法定実効税率を乗じた額)の割合が重要な場合が含まれると考えられる。
- 31. ただし、企業が置かれた状況によって重要性は異なるため、一律に重要性の基準を定めることは適切ではないと考えられ、第30項の考え方を目安として、連結財務諸表における注記及び個別財務諸表における注記のそれぞれについて、企業の状況に応じて適切に判断することが考えられる。
(評価性引当額の注記の対象となる範囲)
- 32. 審議の過程では、繰越外国税額控除や繰越可能な租税特別措置法上の法人税額の特別控除等に係る繰延税金資産について、繰延税金資産から控除された額(評価性引当額)を注記の対象とするか否かが必ずしも明らかではないとの意見が聞かれたことから、これらについても評価性引当額に関する注記の対象となることを明らかにした(第4項に定める税効果会計基準注解(注8)(1)参照)。
- なお、子会社に対する投資に係る連結財務諸表固有の将来減算一時差異について、企業会計基準適用指針第28号「税効果会計に係る会計基準の適用指針」(以下「税効果適用指針」という。)第22項(1)を満たさないことにより繰延税金資産を計上していない場合、当該将来減算一時差異に係る繰延税金資産が存在しないため、繰延税金資産から控除された額(評価性引当額)も存在しないと考えられる。また、組織再編に伴い受け取った子会社株式又は関連会社株式(以下「子会社株式等」という。)(事業分離に伴い分離元企業が受け取った子会社株式等を除く。)に係る将来減算一時差異のうち、当該株式の受取時に生じていたものについて、予測可能な将来の期間に、その売却等を行う意思決定及び実施計画が存在しない場合に、税効果適用指針第8項(1)ただし書きにより繰延税金資産を計上していないときについても同様であると考えられる。
評価性引当額の内訳に関する定性的な情報
(評価性引当額の合計額に重要な変動が生じている場合における変動内容の記載の有用性)
- 33. 評価性引当額の合計額に重要な変動が生じている場合、税負担率に重要な影響が生じていることが多い。しかしながら、当該変動の内容が理解できないことに起因し、税負担率に影響が生じている原因を分析できず、結果として税負担率の実績と予測が大きく乖離することが少なくないとの意見が聞かれた。このため、財務諸表利用者が評価性引当額の変動の内容を理解し、税負担率に影響が生じている原因を分析することに資するように、定性的な情報として当該変動の主な内容についての注記事項を定めることとした(第4項に定める税効果会計基準注解(注8)(2)参照)。
- 34. 審議の過程では、当該定性的な情報については、複数の連結会社の数値が合算された評価性引当額の合計額に重要な変動が生じている場合もあることから、当該変動の内容が注記されたとしても、財務諸表利用者にとって必ずしも有用な情報にはならないとの意見や、仮に評価性引当額に重要な変動が生じている連結会社を特定してその変動の内容が注記されたとしても、当該連結会社の将来の業績予測が開示されない場合には財務諸表利用者にとって必ずしも有用な情報にはならないとの意見が聞かれた。
- 一方で、各企業においては、法定実効税率と税負担率の差異が大きく、当該差異のうち「評価性引当額の増減」の割合が大きい場合、評価性引当額の合計額の変動の主な内容について、当年度の業績を分析する過程で一定程度は把握していると考えられ、当該情報は財務諸表利用者にとって有用であるとの意見も聞かれた。
- 35. この点、本会計基準では、第10項及び第20項に記載のとおり、財務諸表利用者が税効果会計に関連する注記事項を利用し分析を行う際に現状において不足している情報を補うことを目的としていることを踏まえ、評価性引当額(合計額)に重要な変動が生じている場合、当該変動の主な内容を注記事項に追加することとした。
- なお、当該変動の主な内容は企業の置かれている状況により様々であると考えられるため、当該変動の主な内容にどのような事項を記載するかについて、特段定めていない。
(評価性引当額の変動内容の記載の要否に関する重要性の判断)
- 36. 評価性引当額の変動の主な内容(第4項に定める税効果会計基準注解(注8)(2)参照)については、主として税負担率の分析に資する情報であることを踏まえると、「重要な変動が生じている場合」には、例えば、税負担率の計算基礎となる税引前純利益の額に対する評価性引当額(合計額)の変動額の割合が重要な場合が含まれると考えられる。
- ただし、企業が置かれた状況によって重要性は異なるため、一律に重要性の基準を定めることは適切ではないと考えられ、本項前段の考え方を目安として、企業の状況に応じて適切に判断することが考えられる。
- また、税負担率と法定実効税率との間に重要な差異がなく、税率差異の注記を省略している場合(例えば、当該差異が法定実効税率の100分の5以下である場合)、当該変動の主な内容を注記することは要しないと考えられる。
関連する国際的な会計基準の定め
- 37. 第4項に関連して、IFRSでは、IAS第12号「法人所得税」(以下「IAS第12号」という。)において、一時差異等(税務上の繰越欠損金及び繰越税額控除を含む。)の種類ごとの、財政状態計算書に認識した繰延税金資産の額(IAS第12号第81項(g))並びに繰延税金資産を認識していない将来減算一時差異、税務上の繰越欠損金及び繰越税額控除の額(及び、もしあれば、失効日)(IAS第12号第81項(e))を開示することが定められている。
- また、IAS第1号においては、企業は、報告期間の末日における、将来に関して行う仮定及び見積りの不確実性の他の主要な発生要因のうち、翌年度中に資産及び負債の帳簿価額に重要性のある修正を生じる重要なリスクがあるものに関する情報を開示しなければならないとされており、当該資産及び負債に関して、その内容及び報告期間の期末日現在の帳簿価額の詳細を記載しなければならないとされている(IAS第1号第125項)。
税務上の繰越欠損金に関する情報
税務上の繰越欠損金に関する数値情報
(税務上の繰越欠損金に関する繰越期限別の数値情報の有用性)
- 38. 税負担率の予測の観点から、第26項に記載したように、税負担率の実績と予測が乖離する原因として、税務上の繰越欠損金に関連することが挙げられることが多い。特に、税務上の繰越欠損金に係る繰延税金資産を計上していない場合で、当該税務上の繰越欠損金の繰越期限が到来するときに、将来の税負担率に与える影響の予測が困難となっていたと考えられる。
- 39. このため、税務上の繰越欠損金の繰越期間にわたって課税所得又は税務上の欠損金が生じたときの税負担率の予測に資するように、税務上の繰越欠損金に関する数値情報として、繰越期限別に、税務上の繰越欠損金の額に納税主体ごとの法定実効税率を乗じた額(発生原因別の注記に記載されている額)、当該税務上の繰越欠損金に係る評価性引当額及び当該税務上の繰越欠損金に係る繰延税金資産の額についての注記事項を定めることとした(第5項に定める税効果会計基準注解(注9)(1)参照)。
- 40. 当該注記事項により、例えば、税務上の繰越欠損金に係る繰延税金資産を計上していない場合で、1年以内に当該税務上の繰越欠損金の繰越期限が到来し2年目以降に課税所得が見込まれるときは、2年目以降の税負担率が法定実効税率に近い値になることを予測することができると考えられる。
- 41. 公開草案に寄せられたコメントでは、税務上の繰越欠損金に関する数値情報について、事業内容や税制、繰延税金資産の回収可能性が異なる複数の連結会社の数値が合算されているため、財務諸表利用者が税負担率の予測又は繰延税金資産の回収可能性に関する不確実性の評価を行う上で有用な情報とならないとの意見や、税務上の繰越欠損金の増減については他の開示情報からも読み取ることができる情報であるため、税務上の繰越欠損金に関する数値情報については追加すべきでないとの意見があった。
- この点、第26項に記載したように、税負担率の実績と予測が乖離する原因として、税務上の繰越欠損金に関連することが多く、第21項に記載したとおり、財務諸表利用者がPERやDCFによる分析又は債務償還年数の検証を行う上での税負担率の予測や財務諸表利用者が自己資本比率の検証を行う上での繰延税金資産の回収可能性に関する不確実性の評価において、税務上の繰越欠損金に関する数値情報は、有用な情報となると考えられる。また、税務上の繰越欠損金に関する数値情報が複数の連結会社の数値が合算された情報であるとしても、財務諸表利用者は、第5項における税務上の繰越欠損金に係る繰延税金資産を回収可能と判断した主な理由の記載や第4項における評価性引当額の変動の主な内容の記載を参照することにより、税負担率の予測や税務上の繰越欠損金に係る繰延税金資産の回収可能性に関する不確実性の評価に重要な影響を及ぼす事項については、その影響や内容について相当程度理解し得ると考えられる。
(税務上の繰越欠損金に関する数値情報を繰越期限別に記載する場合の年度の区切り方)
- 42. 税務上の繰越欠損金に関する数値情報を繰越期限別に記載するにあたっては、第21項に記載したように、主として株価予測を行う財務諸表利用者が将来2年から5年後の予想財務諸表を用いて税負担率の予測を行っていることを踏まえ、5年以内に繰越期限が到来する場合には比較的短い年度に区切ることが考えられる。一方で、企業における税務上の繰越欠損金の発生状況は様々であり、また、在外子会社の税制は多様であるため、繰越期間の年数や有無は様々であると考えられる。これらの点を考慮すると、年度の区切り方については、企業が有している税務上の繰越欠損金の状況に応じて適切に設定することが考えられるため、本会計基準においては特段定めていない。
税務上の繰越欠損金に関する定性的な情報
(税務上の繰越欠損金に係る繰延税金資産を回収可能と判断した主な理由の有用性)
- 43. 繰延税金資産の回収可能性に関する不確実性の評価の観点から、第27項に記載したように、税務上の繰越欠損金に係る繰延税金資産は、他の将来減算一時差異等に係る繰延税金資産よりも一般的に回収可能性に関する不確実性が高いとされているものの、従来の注記事項には、当該繰延税金資産の計上額やその回収可能性の判断理由が記載されていないため、当該評価は困難となっていたと考えられる。
- 44. このため、税務上の繰越欠損金に関する繰越期限別の数値情報の他に、財務諸表利用者による税務上の繰越欠損金に係る繰延税金資産の回収可能性に関する不確実性の評価に資するように、定性的な情報として当該繰延税金資産を回収可能と判断した主な理由についての注記事項を定めることとした(第5項に定める税効果会計基準注解(注9)(2)参照)。
- 45. 審議の過程では、当該定性的な情報については、繰延税金資産を回収可能と判断した理由として、企業固有の情報は記載されず、将来の収益力に基づく課税所得見込みを考慮した結果等、一般的な記載しかなされない可能性があり、財務諸表利用者にとって必ずしも有用な情報にはならないとの意見が聞かれた。
- 一方、各企業においては、税務上の繰越欠損金に係る重要な繰延税金資産を計上している場合、回収可能と判断した主な理由について、当年度の業績を分析する過程で一定程度は把握していると考えられ、当該情報は財務諸表利用者にとって有用であるとの意見も聞かれた。
- 46. この点、第35項と同様に、本会計基準では、財務諸表利用者にとって現状において不足している情報を補うことを目的としていることを踏まえ、税務上の繰越欠損金に係る重要な繰延税金資産を計上している場合、当該繰延税金資産を回収可能と判断した主な理由を注記事項に追加することとした。
- なお、回収可能と判断した主な理由は、企業の置かれている状況により様々であると考えられるため、当該理由にどのような事項を記載するかについて、特段定めていない。
(税務上の繰越欠損金に係る繰延税金資産を回収可能と判断した主な理由の記載の要否に関する重要性の判断)
- 47. 税務上の繰越欠損金に係る繰延税金資産を回収可能と判断した主な理由は、主として繰延税金資産の回収可能性に関する不確実性の評価に資する情報であることを踏まえると、「税務上の繰越欠損金に係る重要な繰延税金資産を計上している場合」における「重要な」場合には、例えば、純資産の額に対する税務上の繰越欠損金に係る繰延税金資産の額の割合が重要な場合が含まれると考えられる。
- ただし、企業が置かれた状況によって重要性は異なるため、一律に重要性の基準を定めることは適切ではないと考えられ、本項前段の考え方を目安として、企業の状況に応じて適切に判断することが考えられる。
関連する国際的な会計基準の定め
- 48. 第5項に関連して、IFRSでは、IAS第12号において、一時差異等(税務上の繰越欠損金及び繰越税額控除を含む。)の種類ごとの、財政状態計算書に認識した繰延税金資産の額(IAS第12号第81項(g))、繰延税金資産を認識していない将来減算一時差異、税務上の繰越欠損金及び繰越税額控除の額(及び、もしあれば、失効日)(IAS第12号第81項(e))、並びに繰延税金資産を活用できるかどうかが将来加算一時差異の解消により生じる所得を上回る将来の課税所得の有無に依存しており、かつ、企業が当該繰延税金資産に関係する課税法域において当期又は前期に損失が生じている場合に、当該繰延税金資産の額とその認識の根拠となる証拠の内容(IAS第12号第82項)を開示することが定められている。
個別財務諸表における注記事項
- 49. 財務諸表利用者は、税効果会計に関する注記事項を利用し分析を行う場合、連結財務諸表における注記事項については、税制の異なる複数の連結会社の情報が集計され、理解が相当程度困難であることから、個別財務諸表における注記事項を参考として分析を行っているものと考えられる。
- 本会計基準では、評価性引当額の内訳に関する情報及び税務上の繰越欠損金に関する情報を連結財務諸表における注記事項に追加しており、それらの情報により連結財務諸表に計上されている繰延税金資産や評価性引当額の内容について財務諸表利用者の理解が深まると考えられるが、コストと便益の比較の観点から、個別財務諸表においてもこれらの注記事項を追加すべきかどうかについて論点となった。
- 50. この論点に関して、次の事項については、財務諸表提出会社の個別財務諸表において、従来から税効果会計基準に定められている注記事項及び財務情報以外についての開示等から理解し得る部分も少なくないことから、財務諸表利用者の分析において、連結財務諸表における注記事項の理解に重要な影響が生じることは比較的限定的であると考えられるため、連結財務諸表を作成している場合、個別財務諸表において当該注記事項の記載を要しないこととした。
- (1) 評価性引当額の合計額に重要な変動が生じている場合の変動の主な内容
個別財務諸表における評価性引当額は、回収可能性適用指針に従って計上されていることから、評価性引当額の合計額に重要な変動が生じている場合の変動の主な内容は、発生原因別の注記においてスケジューリング可能なものか不能なものかを推測することによりある程度理解し得ることが少なくないと考えられる。 - (2) 税務上の繰越欠損金に関する繰越期限別の数値情報
税務上の繰越欠損金に係る評価性引当額が記載されている場合、税務上の繰越欠損金に係る繰延税金資産の額を算定することができる。また、我が国の税法に基づくため、個別財務諸表における発生原因別の注記の推移や財務情報以外における一定期間の業績推移の開示により、重要な税務上の欠損金が生じた時期が特定できれば、どの時期に繰越期限となるかについて、理解し得ることがあると考えられる。 - (3) 税務上の繰越欠損金に係る重要な繰延税金資産を計上している場合、当該繰延税金資産を回収可能と判断した主な理由
税務上の繰越欠損金に係る重要な繰延税金資産を回収可能と判断した主な理由については、財務諸表提出会社においては個別財務諸表が開示されていることに加えて、子会社に比べると財務情報以外についての開示も比較的多く、将来の収益力について開示されていることもあるため、これらの情報と併せて分析することにより、理解し得ることが少なくないと考えられる。 - 51. 一方で、評価性引当額の内訳に関する数値情報については、財務諸表提出会社の個別財務諸表において、従来から税効果会計基準に定められている注記事項及び財務情報以外についての開示等から推測することは困難であると考えられるため、個別財務諸表において税務上の繰越欠損金に係る評価性引当額と将来減算一時差異等に係る評価性引当額の情報を開示することが適当と考えられる。
- したがって、連結財務諸表を作成している場合、個別財務諸表における税効果会計に関する注記事項については、評価性引当額の内訳に関する数値情報のみを追加することとした。
- 52. なお、公開草案に寄せられたコメントでは、個別財務諸表における開示については、開示制度全体で議論すべき事項であり、単体開示の簡素化が図られてきている状況に鑑み、第51項に記載した追加の開示を行うべきではないとの意見があった。
- この点、審議の過程では、財務諸表利用者が税負担率の予測の観点及び繰延税金資産の回収可能性に関する不確実性の評価の観点から分析を行う際に現状において不足している情報(財務諸表利用者のニーズ)を重視して検討を進めており、第49項に記載しているとおり、財務諸表利用者は、連結財務諸表の分析を行うにあたり、連結財務諸表における注記事項に加えて、個別財務諸表における注記事項を参考として分析を行っているものと考えられる。特に、企業の業績が悪化して税務上の欠損金が生じた場合、個別財務諸表の重要性が相対的に高まり、一般に財務諸表利用者はより慎重な分析を行うことになり、例えば、財務諸表利用者は次のような分析を併せて実施しているものと考えられる。
- (1) 税務上の繰越欠損金が親会社に生じているのか又は子会社に生じているのかを理解した上で、連結財務諸表における将来の税負担率の予測を行う。
- (2) 親会社が主要な事業を行っている場合には主要な事業の分析の一環として親会社の個別財務諸表の分析を行い、親会社における将来の税負担率の予測を行う。
- (3) 債権の回収見込額の評価は連結グループ全体の信用力の評価に限らず、債務者単体での支払能力をより重視した評価を行うため、個別財務諸表に計上された繰延 税金資産の回収可能性の不確実性の評価に着目した分析を行う。
- このように、企業の業績が悪化し税務上の欠損金が生じた場合には、個別財務諸表の重要性が相対的に高まり、財務諸表利用者にとって有用な情報を提供すると考えられるため、個別財務諸表においても評価性引当額の内訳に関する数値情報の注記事項の記載を求めることとした。
- ただし、第29項から第31項に記載のとおり、「繰延税金資産の発生原因別の主な内訳として税務上の繰越欠損金を記載している場合であって、当該税務上の繰越欠損金の額が重要であるとき」に該当しない場合には、個別財務諸表における評価性引当額の内訳に関する数値情報の注記事項の記載は要しない。
- 53. (削 除)
注記事項に追加しなかった項目
- 54. 平成27年5月に公表した回収可能性適用指針の公開草案において設けた税効果会計全体の注記事項に関する質問項目に対しては、上記で検討を行った評価性引当額の内訳に関する情報及び税務上の繰越欠損金に関する情報のほか、次の項目についても注記事項とすべきとのコメントが寄せられた。
- (1) 国内企業の分類に関する注記
国内企業においては回収可能性適用指針第15項から第32項に従って要件に基づき企業を分類し当該分類に応じて繰延税金資産を計上するため、分類が注記される場合、企業の状況や、繰延税金資産について何年程度の課税所得の見積額に基づき計上しているか等を理解できる。 - (2) 回収可能性適用指針における合理的な説明に関する注記
回収可能性適用指針において原則とは異なる取扱いについて合理的な説明が必要とされることを定めたことから、次の注記が必要である。 - ① (分類2)に該当する企業が、スケジューリング不能な将来減算一時差異に係る繰延税金資産を計上している場合、その旨及びその根拠
- ② (分類3)に該当する企業が、5年を超える見積可能期間においてスケジューリングされた一時差異等に係る繰延税金資産を計上している場合、その旨及びその根拠
- ③ (分類4)に該当する企業が、(分類2)又は(分類3)に該当するものとして取り扱われる場合、その旨及びその根拠
- (3) その他
上記のほか、税負担率を予測する観点から税金等調整前当期純損失又は税引前当期純損失(以下「税引前純損失」という。)が生じている場合における税率差異の調整表やIFRSにおいて開示が要求されている法定実効税率の計算基礎に関する情報等、多くの情報を要望する意見が聞かれた。 - 55. これらの意見に関して、第54項(1)「国内企業の分類に関する注記」については、将来の税金費用の増減の予測に役立つ可能性があるとの意見が聞かれたものの、分類は繰延税金資産の回収可能性を判断する過程の一部に過ぎず、同一の分類であっても課税所得の見積りなどにより回収可能な金額は異なることや、国内企業のみの繰延税金資産に関する情報であることから、分類そのものの情報が注記されたとしても当該情報のみでは連結財務諸表における将来の税金費用を分析することは困難であると考えられ、注記事項に追加しないこととした。
- 56. 本会計基準第54項(2)「回収可能性適用指針における合理的な説明に関する注記」については、回収可能性適用指針に定める原則とは異なる取扱いにより繰延税金資産が計上されたことの理解可能性が高まるため、有用性があるとの意見が聞かれた一方で、課税所得に関する将来の不確実性は分類によって異なるため、情報の有用性も分類によって異なり、財務諸表利用者に必ずしも繰延税金資産の回収可能性に関する有用な情報を提供することにはならないとの意見も聞かれた。
- この点、次に挙げた事項を理由として、これらの注記を要求することは適切ではないと判断し、注記事項に追加しないこととした。
- (1) これらの注記は、第55項で追加しないこととした国内企業の分類に関する注記が前提となる。
- (2) 繰延税金資産の計上の根拠を説明する場合、企業の置かれている経営環境や一時差異等の多寡等を踏まえた様々な記載が考えられるが、それらの記載がなされていない中で、合理的な説明に関する取扱いによった国内の一部の連結会社のみに当該記載を求めたとしても、連結財務諸表における将来の税金費用の分析等に資することは限定的であると考えられる。
- 57. 第54項(3)「その他」に記載した事項のうち、税引前純損失が生じている場合における税率差異の注記については、当該差異の内訳として示される数値が意味の乏しい情報となることが多く、開示の連続性を確保したとしても、税金費用の分析は困難なものとなると考えられる。また、一般的に、税引前純損失が生じている場合は税務上の繰越欠損金を有するため、税務上の繰越欠損金に関する情報(第38項から第48項参照)の注記により必要な情報を把握することが可能であることからも、注記事項に追加しないこととした。
- また、法定実効税率の計算基礎に関する情報について、我が国においては、法定実効税率の計算方法に選択の余地はないことから、当該情報の意義は乏しく、注記事項に追加しないこととした。
- 上記に挙げた情報以外にも、複数の項目について開示を要望する意見が聞かれたが、各項目の有用性を検討し注記事項に追加しないこととした。
適用時期等
- 58. 本会計基準は、税効果適用指針に併せて公表するものであることから、同適用指針と同様に、平成30年4月1日以後開始する連結会計年度及び事業年度の期首から適用することとした。
- ただし、繰延税金資産及び繰延税金負債を非流動区分に表示する変更については当該変更による流動比率に対する影響は限定的であると考えられるため、また、注記事項の追加については当該追加により財務諸表利用者に対してより有用な情報を提供することになるため、平成30年3月31日以後最初に終了する連結会計年度及び事業年度の年度末に係る連結財務諸表及び個別財務諸表から適用することができることとした(本会計基準第6項参照)。
- 59. 本会計基準の適用初年度において、本会計基準の適用は表示方法の変更として取り扱われるため、適用初年度の比較情報においては、企業会計基準第24号第14項の定めに従って、本会計基準第2項に定める繰延税金資産及び繰延税金負債の表示及び本会計基準第4項及び第5項に定める注記事項を記載することとなる。
- この点について、多数の子会社を有している企業において、本会計基準の適用初年度の比較情報として、すべての子会社から、評価性引当額の内訳に関する情報及び税務上の繰越欠損金に関する情報を入手し集計することは、実務上煩雑であり、特に在外子会社の税制は多様であるため前年度に遡って当該数値を算定することが煩雑であることを懸念する意見が聞かれた。
- 審議の結果、適用初年度における実務上の負担に配慮し、本会計基準の適用初年度においては、企業会計基準第24号第14項の定めにかかわらず、本会計基準第3項から第5項に定める税効果会計基準注解(注8)(同注解(注8)(1)に定める繰延税金資産から控除された額(評価性引当額)の合計額を除く。)及び同注解(注9)に記載した内容を、適用初年度の比較情報に記載しないことができることとした(本会計基準第7項参照)。なお、繰延税金資産の発生原因別の主な内訳を注記するにあたって、税効果会計基準注解(注8)に記載されている注記事項のうち繰延税金資産から控除された額(評価性引当額)の合計額については、これまでと同様に適用初年度の比較情報に記載する。
参 考
- 次の開示例は、本会計基準に示された内容について理解を深めるために参考として示したものであり、記載方法及び記載内容は各企業の実情等に応じて異なることに留意する必要がある。
[開示例] 税効果会計に関する注記例
- 1. 前提条件
- (1) A社は、グループ通算制度を適用していない。
- (2) A社は、当連結会計年度において、繰延税金資産の発生原因別の主な内訳として税務上の繰越欠損金を記載し、当該税務上の繰越欠損金の額が重要であると判断している。
- (3) A社は、当連結会計年度において、税率の変更により繰延税金資産及び繰延税金負債の金額が修正されている。
- 2. 注記例
- (税効果会計関係)
- 1. 繰延税金資産及び繰延税金負債の発生原因別の主な内訳

- (*1) (繰延税金資産から控除された額(評価性引当額)に重要な変動が生じている場合、当該変動の主な内容を記載する。)
- (*2) 税務上の繰越欠損金及びその繰延税金資産の繰越期限別の金額
- (前連結会計年度)

- (a) 税務上の繰越欠損金は、法定実効税率を乗じた額である。
- (当連結会計年度)

- (b) 税務上の繰越欠損金は、法定実効税率を乗じた額である。
- (c) (税務上の繰越欠損金に係る重要な繰延税金資産を計上している場合、当該繰延税金資産を回収可能と判断した主な理由を記載する。)
- 2. 法定実効税率と税効果会計適用後の法人税等の負担率との間に重要な差異があるときの、当該差異の原因となった主要な項目別の内訳

- 3. 法人税等の税率の変更による繰延税金資産及び繰延税金負債の金額の修正
税法の改正に伴い、翌連結会計年度以降に解消が見込まれる一時差異等に係る繰延税金資産及び繰延税金負債については、法定実効税率をXX%からXX%に変更し計算している。
この変更により、当連結会計年度の繰延税金資産(繰延税金負債の金額を控除した金額)の金額はXXX百万円減少し、法人税等調整額がXXX百万円増加している。
(注)税率の変更による繰延税金資産及び繰延税金負債の金額の修正額は、期末における一時差異等の残高に、改正後の税率と改正前の税率の差を乗じて算出する。 - 4. 決算日後における法人税等の税率の変更
- (略)
本会計基準の公表による他の会計基準等についての修正
- 本会計基準により、当委員会が公表した会計基準等については、次の修正を行う(下線は追加部分、取消線は削除部分を示す。)。
- (略)
- 以 上
